(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-531833(P2021-531833A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を検出するためのグレード分類モデルおよびその応用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6886 20180101AFI20211029BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20211029BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20211029BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20211029BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12M1/00 A
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2021-529506(P2021-529506)
(86)(22)【出願日】2019年7月29日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月29日
(86)【国際出願番号】CN2019098209
(87)【国際公開番号】WO2020024911
(87)【国際公開日】20200206
(31)【優先権主張番号】201810860667.7
(32)【優先日】2018年8月1日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521045597
【氏名又は名称】リセン インプリンティング ダイアグノステックス ウーシー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LISEN IMPRINTING DIAGNOSTICS WUXI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100124659
【弁理士】
【氏名又は名称】白洲 一新
(72)【発明者】
【氏名】チェン,トン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャウ,ニン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC02
4B029DG10
4B029FA10
4B029HA09
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR55
4B063QR56
4B063QS32
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、甲状腺腫瘍の良悪性の程度を検出するためのグレード分類モデルおよびその応用を提供し、前記モデルがインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量およびインプリンティング遺伝子総発現量を計算することによって、甲状腺腫瘍におけるインプリンティング遺伝子の変化をグレードに分類する。本発明の前記検出モデルおよび装置は、直感的な方法で甲状腺腫瘍患者の組織および細胞サンプルにおけるインプリンティング遺伝子発現を表現し、インプリンティング遺伝子へのin situマーキング方法を通じて、インプリンティング(刷り込み)遺伝子の変化を客観的、直感的、早期、正確に検出し、定量的なモデルを提供することができ、甲状腺腫瘍の診断に大きく貢献する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲状腺腫瘍におけるインプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量の変化を計算することによって、インプリンティング遺伝子の発現状況についてグレード分類を行う甲状腺腫瘍に用いられるインプリンティング遺伝子グレード分類モデルであって、
前記インプリンティング遺伝子は、Z1、Z11またはZ16のうちいずれかまたは少なくとも2つの組み合わせであり、前記インプリンティング遺伝子Z1がGnasであり、前記インプリンティング遺伝子Z11がGrb10であり、前記インプリンティング遺伝子Z16がSnrpn/Snurfであるモデル。
【請求項2】
前記モデルのインプリンティング遺伝子を計算するための方法は、次の通りであり、
Z1、Z11またはZ16のうちいずれかを計算し、好ましくはZ1またはZ16を計算し、より好ましくはZ1を計算する請求項1に記載のモデル。
【請求項3】
前記モデルのインプリンティング遺伝子を計算するための方法は、Z1、Z11またはZ16の任意の2つのインプリンティング遺伝子の組み合わせを計算し、好ましくはZ1およびZ16の組み合わせまたはZ1およびZ11の組み合わせを計算する請求項1または2に記載のモデル。
【請求項4】
前記インプリンティング遺伝子は、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10またはZ13のうちいずれかまたは少なくとも2つの組み合わせであり、前記インプリンティング遺伝子Z3は、Peg10であり、前記インプリンティング遺伝子Z4はIgf2r、前記インプリンティング遺伝子Z5はMest、前記インプリンティング遺伝子Z6はPlagl1、前記インプリンティング遺伝子Z8はDcn、前記インプリンティング遺伝子Z10はGatm、前記インプリンティング遺伝子Z13はSgceである請求項1〜3のいずれか一項に記載のモデル。
【請求項5】
前記モデルのインプリンティング遺伝子を計算するための方法は、インプリンティング遺伝子の組み合わせを計算し、Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16の10つのインプリンティング遺伝子の組み合わせを計算する請求項1〜4のいずれか一項に記載のモデル。
【請求項6】
インプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量を計算するための式は、以下の通りであり、
総発現量=(b+c+d)/(a+b+c+d)×100%、
通常インプリンティング遺伝子発現量=b/(b+c+d)×100%、
インプリンティング遺伝子消失の遺伝子発現量(LOI)=c/(b+c+d)×100%、
インプリンティング遺伝子コピー数異常の遺伝子発現量(CNV)=d/(b+c+d)×100%、
ここで、aは細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核内にマーカーがなく、インプリンティング遺伝子が発現されていない細胞核であることを示し、bは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に1つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が存在する細胞核であることを示し、cは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が消失している細胞核であることを示し、dは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つ以上の赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子コピー数が異常な細胞核であることを示す、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のモデル。
【請求項7】
前記インプリンティング遺伝子消失発現量、前記インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および前記インプリンティング遺伝子総発現量は、5つのグレードに分けられる請求項1〜6のいずれか一項に記載のモデル。
【請求項8】
前記5つのグレードは、Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16の10つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量およびインプリンティング遺伝子総発現量をそれぞれ5つのグレードに分類し、
前記Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を分ける5つのグレードは、次の通りであり、
グレード0:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、12%未満、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1%未満または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が25%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードI:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、12〜20%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が25〜35%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードII:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、20〜25%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が35〜45%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIII:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、25〜30%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3〜5%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が45〜60%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIV:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、30%超、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が5%超または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が60%超のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
前記Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を分ける5つのグレードは、次の通りであり、
グレード0:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、10%未満、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードI:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、10〜15%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードII:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、15〜20%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIII:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、20〜25%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIV:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、25%超、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせである、
請求項7に記載のモデル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のモデルを用い、
(1)被験サンプルを取得するためのサンプリングユニットと、
(2)インプリンティング遺伝子配列に基づいて特異的プライマーを設計するためのプローブ設計ユニットと、
(3)ステップ(2)のプローブと被験サンプルを、その場でin situハイブリダイズさせるための検出ユニットと、
(4)顕微鏡イメージングでインプリンティング遺伝子の発現状況を解析するための解析ユニットと、
を含む甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を検出するための装置であって、
前記解析ユニットは、請求項1〜8のいずれかに記載のモデルを介してインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を計算することで、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量のグレードによって甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定する装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のモデルまたは請求項9に記載の装置を用いて、
(1)被験サンプルを取得するステップと、
(2)インプリンティング遺伝子配列に基づいて特異的プライマーを設計するステップと、
(3)前記ステップ(2)のプローブと被験サンプルを、その場でin situハイブリダイズさせるステップと、
(4)顕微鏡イメージングでインプリンティング遺伝子の発現状況を解析することで、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断するステップと、
を含む甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を検出するための方法であって、
前記解析ユニットは、請求項1〜8のいずれかに記載のモデルを介してインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を計算することで、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量のグレードによって甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断する方法。
【請求項11】
前記ステップ(1)の前記被験サンプルは、ヒトの組織および/または細胞に由来する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記被験サンプルは、組織のパラフィン切片および/または甲状腺穿刺細胞塗抹標本である請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記in situハイブリダイゼーションは、RNAscope in situハイブリダイゼーション方法を用いる請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記RNAscope in situハイブリダイゼーション方法は、シングルチャネルまたはマルチチャネルの発色キット或いはシングルチャネルまたはマルチチャネルの蛍光キットを使用し、好ましくはシングルチャネル赤色/茶色の発色キットまたはマルチチャネル蛍光キットを使用する請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の判定は、良性腫瘍、甲状腺癌の増殖能、早期甲状腺癌、進行甲状腺癌および末期甲状腺癌に分類される請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が均しくグレードIよりも小さく、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIである場合、良性腫瘍であり、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16うち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであることのうちいずれか状況である場合、甲状腺癌の増殖能と判定され、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであることのうちいずれか状況である場合、早期甲状腺癌であり、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVであることのうちいずれか状況である場合、進行甲状腺癌であり、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVである場合、末期甲状腺癌である、
請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
甲状腺腫瘍検出における請求項1〜8のいずれか一項に記載のモデルおよび/または請求項9に記載の装置の使用。
【請求項18】
甲状腺腫瘍治療薬の調製または機器における請求項1〜8のいずれか一項に記載のモデルおよび/または請求項9に記載の装置の用途。
【請求項19】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度は、良性腫瘍、甲状腺癌の増殖能、早期甲状腺癌、進行甲状腺癌および末期甲状腺癌に分類される請求項17または18に記載の用途。
【請求項20】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が均しくグレードIよりも小さく、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIである場合、良性腫瘍であり、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであることのうちいずれか状況である場合、甲状腺癌の増殖能と判定され、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであることのうちいずれか状況である場合、早期甲状腺癌と判定され、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVであることのうちいずれか状況である場合、進行甲状腺癌であり、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVである場合、末期甲状腺癌である、
請求項17〜19のいずれか一項に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子診断分野などのバイオテクノロジー分野に関し、特に、グレード分類モデルおよびその応用、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を検出するためのグレード分類モデルおよびその応用、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度検出における1セットのインプリンティング遺伝子のグレード分類モデルおよびそれで構成される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関の統計によると、甲状腺癌の新規症例は、2012年に世界中で298,100人、中国で約90,000人、米国で約25,520人であった。ほとんどの甲状腺癌の分化度が高く、予後良好であり、5年生存率が95%以上であるが、腫瘍が非常に小さい時期に転移する甲状腺癌もある。なお、低分化型甲状腺癌は、致命的であり、生存期間の中央値が4ヶ月〜5年の範囲である。甲状腺癌の現在の病理診断の難しさには、濾胞性甲状腺腺腫(FTA)と濾胞性甲状腺癌(FTC)との鑑別、および甲状腺の好酸性細胞腫瘍(HCT)の良性、悪性の判定が含まれ、現在唯一のBRAF遺伝子検出は、甲状腺乳頭癌の検出にのみ使用でき、FTCとHCTとの診断にとって効果が薄い。中国では過去10年間で甲状腺癌の発症率は、4.6倍に増加し、現在も伸びで続けている。現在、毎年約10万人の甲状腺癌の新規患者がいて、うち診断が難しい濾胞性甲状腺癌および甲状腺の好酸性細胞腫瘍は、約10%を占め、3〜4倍の疑われる症例を加えると、毎年約4〜5万の症例を明確に診断する必要があると予測され、さらに世界中の患者を加算すると、この数字が10万以上になるため、より精度の高い検出技術の開発が急務となっている。
【0003】
良性・悪性細胞に対する従来の病理診断は、細胞の大きさ、形態、浸潤性および周囲細胞組織の間の関係に基づくものとする。これは、細胞(癌)の変化の早期発見には大きな限界があるため、細胞分子レベルでの癌診断方法はかつて研究のホットスポットになっていた。分子生物学分野での研究の継続的深化につれ、ますます多くの分子検出技術が癌の診断に活用されてきた。
【0004】
癌の発生は、時間の経過とともに蓄積されたエピジェネティックな変化と遺伝子変異によって引き起こされる制御不可能な細胞の成長/分裂である。従来の病理診断は、細胞と組織の大きさ、形態および構造的変化に基づいて甲状腺腫瘍の良悪性を判定している。分子生物学の発展と進化に伴い、甲状腺癌の検出に益々多くの分子検出技術が応用されている。癌の進展過程から解析すると、分子的側面(エピジェネティクスと遺伝学)での変化は、細胞の形態と組織構造の変化よりもはるかに早い。したがって、分子生物学的検出は、癌の早期検出に対してより敏感である。
【0005】
上記の原因によれば、現在の甲状腺癌の診断では、患者の検体に基づいて、細胞側面に存在する甲状腺癌分子マーカーの変化を解析し、これをもってより正確な事前診断および診断情報を提供するための新しい検出システムと検出モデルが必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を検出するためのインプリンティング遺伝子のグレード分類モデルと診断方法およびその応用を提供することを目的とする。
【0007】
本出願では、上記目的を達成するために、次の発明を提供する。
本発明は、甲状腺腫瘍に用いられるインプリンティング遺伝子グレード分類モデルを提供し、前記モデルは甲状腺癌におけるインプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量の変化を計算することによって、インプリンティング遺伝子の発現状況についてグレード分類を行う。
ここで、前記インプリンティング遺伝子は、Z1、Z11またはZ16のうちいずれかまたは少なくとも2つの組み合わせであり、前記インプリンティング遺伝子Z1がGnasであり、前記インプリンティング遺伝子Z11がGrb10であり、前記インプリンティング遺伝子Z16がSnrpn/Snurfである。
【0008】
前記インプリンティング(刷り込み)消失は、インプリンティング(刷り込み)遺伝子内の元々サイレント状態であった対立遺伝子が活性化(脱メチル化)されることをいい、癌の最も一般的で初期発生するエピジェネティックな変化であり、かつこの特性は病理学的マーカーとして使用できる。対照的に、健康な細胞の検出では、刷り込みの消失の割合は非常に低く、前記インプリンティング遺伝子と刷り込み遺伝子は同じ概念を持っているため、同じことを意味し、置き換えることができる。
【0009】
本発明者らは、Z1、Z11およびZ16のうちいずれかのインプリンティング遺伝子の甲状腺腫瘍におけるインプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量を計算することによって、甲状腺癌に対する診断感度が64.3%以上に達することができることを見出した。
【0010】
本明細書の一実施例において、予備検出でインプリンティング遺伝子が1つだけ検出された場合、Z1、Z11およびZ16のうちいずれかのインプリンティング遺伝子を検出することができる。
【0011】
本明細書の一実施例において、予備検出でインプリンティング遺伝子が1つだけ検出された場合、Z1またはZ11のうちいずれかのインプリンティング遺伝子を検出することができる。
【0012】
本明細書の一実施例において、予備検出でインプリンティング遺伝子が1つだけ検出された場合、Z1を検出することができる。
【0013】
本発明者らは、インプリンティング遺伝子Z1が単独で検出された場合、甲状腺癌に対する診断感度が84.8%以上に達することができ、インプリンティング遺伝子Z11が単独で検出された場合、甲状腺癌に対する診断感度が66.7%以上に達することができ、インプリンティング遺伝子Z16が単独で検出された場合、甲状腺癌に対する診断感度が64.3%以上に達することができることを見出した。
【0014】
本明細書の一実施例において、前記モデルのインプリンティング遺伝子を計算するための方法は、インプリンティング遺伝子の2つのインプリンティング遺伝子の組み合わせが検出された場合、前記組み合わせがZ1、Z11およびZ16の任意の2つであり得、好ましくはZ1とZ11の組み合わせ、Z1とZ16の組み合わせである。
【0015】
本発明者らは、2つ以上のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量を計算することによって、感度をさらに向上させ、インプリンティング遺伝子Z1、Z11およびZ16のうちの任意の2つの組み合わせを検出すると、甲状腺癌に対する診断感度が84.6%以上に達することができ、インプリンティング遺伝子Z1とZ16の組み合わせを検出すると、甲状腺癌に対する診断感度が92.9%以上に達することができ、インプリンティング遺伝子Z1とZ11の組み合わせを検出すると、甲状腺癌に対する診断感度が97.5%以上に達することができることを見出した。
【0016】
本明細書の一実施例において、前記インプリンティング遺伝子は、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10またはZ13のうちいずれかまたは少なくとも2つの組み合わせであり、ここで、前記インプリンティング遺伝子Z3は、Peg10であり、前記インプリンティング遺伝子Z4はIgf2r、前記インプリンティング遺伝子Z5はMest、前記インプリンティング遺伝子Z6はPlagl1、前記インプリンティング遺伝子Z8はDcn、前記インプリンティング遺伝子Z10はGatm、前記インプリンティング遺伝子Z13はSgceである。
【0017】
本発明者らは、Z1、Z11およびZ16遺伝子検出の使用を踏まえ、さらにZ3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z13遺伝子を追加して復合診断を行うと、検出の精度が向上するだけでなく、かつ診断の補助としてその他のプローブを追加すると偽陽性の出現を防ぎ、検出の精度をさらに向上させて、すべての甲状腺腫瘍サンプルの正確なグレード分類および判断を実現できる。
【0018】
本明細書の一実施例において、前記モデルのインプリンティング遺伝子を計算するための方法は、インプリンティング遺伝子の組み合わせを計算することであり、すなわちZ1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16遺伝子の組み合わせを計算する。
【0019】
前記インプリンティング遺伝子消失は、細胞をヘマトキシリンで染色した後の細胞核内に2つの赤色/茶色のマーカーがあることを意味し、前記インプリンティング遺伝子コピー数異常が細胞をヘマトキシリンで染色した後の細胞核内に2つ以上の赤色/茶色マーカーがあることを意味し、前記コピー数異常が癌細胞における遺伝子の異常複製により、この遺伝子が三倍体またはさらに高い倍数体として発現した。
【0020】
本明細書の一実施例において、インプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量を計算するための式は、以下の通りである。
総発現量=(b+c+d)/(a+b+c+d)×100%、
通常インプリンティング遺伝子発現量=b/(b+c+d)×100%、
インプリンティング遺伝子消失の遺伝子発現量(LOI)=c/(b+c+d)×100%、
インプリンティング遺伝子コピー数異常の遺伝子発現量(CNV)=d/(b+c+d)×100%、
ここで、aは細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核内にマーカーがなく、インプリンティング遺伝子が発現されていない細胞核であることを示し、bは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に1つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が存在する細胞核であることを示し、cは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が消失している細胞核であることを示し、dは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つ以上の赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子コピー数が異常な細胞核であることを示す。
【0021】
本明細書の一実施例において、前記ヘマトキシリン染色後のマーカーは、赤色または茶色から選択されるが、これらに限定されず、他の色で染色されたマーカーもインプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量の計算に使用されることもできる。
【0022】
本明細書の一実施例において、プローブをその場でハイブリダイズさせること、およびHemotoxy(ヘマトキシリン)核染色によりシグナルを増幅し、40xまたは60xの顕微鏡下で、各細胞核内のインプリンティング遺伝子の存在、インプリンティング遺伝子の消失またはコピー数異常を判断し、インプリンティング遺伝子消失遺伝子発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量を計算することによって、該サンプルの腫瘍良性度・悪性度を判定し、切片がわずか10μmであるため、顕微鏡で見た細胞核は20%程度あり、不完全な細胞核であり、すなわち一部偽陰性の可能性がある。
【0023】
本明細書の一実施例において、インプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量は、5つのグレードに分けられ、サンプル内の各プローブ発現の最も陽性の領域で少なくとも1200個の細胞を数え、Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16の10つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量およびインプリンティング遺伝子総発現量を5つのグレードに分ける。
【0024】
本明細書の一実施例において、Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を分ける5つのグレードは、次の通りであり、
グレード0:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、12%未満、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1%未満または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が25%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードI:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、12〜20%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が25〜35%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードII:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、20〜25%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が35〜45%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIII:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、25〜30%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3〜5%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が45〜60%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIV:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、30%超、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が5%超または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が60%超のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量は、互いに独立している。
【0025】
本明細書の一実施例において、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を分ける5つのグレードは、次の通りであり、
グレード0:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、10%未満、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードI:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、10〜15%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードII:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、15〜20%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIII:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、20〜25%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIV:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、25%超、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量は、互いに独立している。
【0026】
本明細書の一実施例において、本発明は、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を検出するための装置を提供し、前記装置が上記モデルを用い、
(1)被験サンプルを取得するためのサンプリングユニットと、
(2)インプリンティング遺伝子配列に基づいて特異的プライマーを設計するためのプローブ設計ユニットと、
(3)ステップ(2)のプローブと被験サンプルを、その場でハイブリダイズさせるための検出ユニットと、
(4)顕微鏡イメージングでインプリンティング遺伝子の発現状況を解析するための解析ユニットと、
を含み、
ここで、前記解析ユニットは、第1の態様に記載のモデルを介してインプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量を計算することで、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量のグレードによって甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定する。
【0027】
前記インプリンティング遺伝子消失は、細胞をヘマトキシリンで染色した後の細胞核内に2つの赤色/茶色のマーカーがあることを意味し、前記インプリンティング遺伝子コピー数異常が細胞をヘマトキシリンで染色した後の細胞核内に2つ以上の赤色/茶色マーカーがあることを意味し、前記コピー数異常が癌細胞における遺伝子の異常複製により、この遺伝子が三倍体またはさらに高い倍数体として発現した。
【0028】
前記ヘマトキシリン染色後のマーカーは、赤色または茶色から選択されるが、これらに限定されず、他の色で染色されたマーカーもインプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量の計算に使用されることもできる。
【0029】
検出装置は、細胞および組織レベルでの甲状腺腫瘍のインプリンティング(刷り込み)遺伝子の変化を腫瘍の良性度および悪性度を判定し、早期甲状腺腫瘍の患者に最も有利な治療機会を提供するために用いられる。
本明細書の一実施例において、本発明は、前記モデルまたは前記装置を用いて、
(1)被験サンプルを取得するステップと、
(2)インプリンティング遺伝子配列に基づいて特異的プライマーを設計するステップと、
(3)ステップ(2)のプローブと被験サンプルを、その場でハイブリダイズさせるステップと、
(4)顕微鏡イメージングでインプリンティング遺伝子の発現状況を解析することで、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断するステップと、
を含む甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を検出するための方法を提供し、
ここで、前記解析ユニットは、前記モデルを介してインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を計算することで、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量のグレードによって甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を診断する。
【0030】
本明細書の一実施例において、ステップ(1)の前記被験サンプルは、ヒトの組織および/または細胞に由来する。
【0031】
前記被験サンプルは、RNAが直ちに固定処理を行われば実現可能性があり、当業者がニーズに応じて選択でき、ここで特に限定されない。本発明の前記被験サンプルは、組織のパラフィン切片、甲状腺穿刺細胞塗抹標本のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせが挙げられる。
【0032】
組織のパラフィン切片の具体的操作ステップは、ヒト腫瘍組織のサンプルを取得し、直ちに10%中性ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、厚さ10μmに切断し、正に帯電したガラススライドを使用して組織スライドを作製することであり、厚さはわずか10μmであるため、顕微鏡で見た細胞核の一部が不完全であるため、一部偽陰性の遺伝子消失が出る。
【0033】
甲状腺穿刺細胞塗抹標本の具体的操作ステップは、穿刺によってヒト細胞を取得し、直ちに10%中性ホルマリンで固定することである。
【0034】
穿刺生検は、患者に与える侵襲が少なく、サンプリング過程が簡単であり、血液循環特性と比較して、穿刺生検も位置付けることができ、穿刺生検は、実験サンプルとして特別な利点がある。
【0035】
本明細書の一実施例において、前記被験サンプルは、甲状腺穿刺細胞塗抹標本である。
【0036】
本明細書の一実施例において、前記インプリンティング遺伝子は、Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16であり、前記インプリンティング遺伝子Z1は、Gnasであり、前記インプリンティング遺伝子Z3はPeg10であり、前記インプリンティング遺伝子Z4はIgf2rであり、前記インプリンティング遺伝子Z5はMestであり、前記インプリンティング遺伝子Z6はPlagl1であり、前記インプリンティング遺伝子Z8はDcnであり、前記インプリンティング遺伝子Z10はGatmであり、前記インプリンティング遺伝子Z11はGrb10であり、前記インプリンティング遺伝子Z13はSgceであり、前記インプリンティング遺伝子Z16はSnrpn/Snurfである。
【0037】
前記インプリンティング遺伝子Z1(Gnas)、Z3(Peg10)、Z4(Igf2r)、Z5(Mest)、Z6(Plagl1)、Z8(Dcn)、Z10(Gatm)、Z11(Grb10)、Z13(Sgce)、Z16(Snrpn/Snurf)は、正常な腫瘍細胞や組織において異なる程度の発現があり、悪性病変が発生すると、発現量とインプリンティング状態が明らかに変化する。
【0038】
前記プローブは、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13、およびZ16、すなわちGnas、Peg10、Igf2r、Mest、Plagl1、Dcn、Gatm、Grb10、Sgce、およびSnrpn/Snurfに基づいて設計されたものであり、具体的に各遺伝子のイントロンからプローブとして部分配列を選択し、具体的にプローブはAdvanced Cell Diagnosticsによって設計された。
【0039】
本明細書の一実施例において、前記in situハイブリダイゼーションは、RNAscope in situハイブリダイゼーション方法を用いる。
【0040】
本明細書の一実施例において、前記RNAscope in situハイブリダイゼーション方法は、シングルチャネルまたはマルチチャネルの発色キット或いはシングルチャネルまたはマルチチャネルの蛍光キットを使用し、好ましくはシングルチャネル赤色/茶色の発色キットまたはマルチチャネル蛍光キットを使用する。
【0041】
前記マルチチャネル発色キットまたはマルチチャネル蛍光キットには、2チャンネル以上の発色キットまたは蛍光キットが含まれ、前記2チャンネルの発色キットまたはマルチチャネルの蛍光キットが2つのインプリンティング遺伝子プローブまたはインプリンティング遺伝子およびその他の遺伝子の共発現、さらに複数のインプリンティング遺伝子と非インプリンティング遺伝子の包括的な発現を使用できる。
【0042】
本明細書の一実施例において、前記モデルにおけるインプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量を計算するための式は、以下の通りであり、
総発現量=(b+c+d)/(a+b+c+d)×100%、
通常インプリンティング遺伝子発現量=b/(b+c+d)×100%、
インプリンティング遺伝子消失の遺伝子発現量(LOI)=c/(b+c+d)×100%、
インプリンティング遺伝子コピー数異常の遺伝子発現量(CNV)=d/(b+c+d)×100%、
ここで、aは細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核内にマーカーがなく、インプリンティング遺伝子が発現されていない細胞核であることを示し、bは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に1つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が存在する細胞核であることを示し、cは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が消失している細胞核であることを示し、dは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つ以上の赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子コピー数が異常な細胞核であることを示す。
【0043】
前記ヘマトキシリン染色後のマーカーは、赤色または茶色から選択されるが、これらに限定されず、他の色で染色されたマーカーもインプリンティング遺伝子発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量の計算に使用されることもできる。
【0044】
プローブをその場でハイブリダイズさせること、およびHemotoxy(ヘマトキシリン)核染色によりシグナルを増幅し、40xまたは60xの顕微鏡下で、各細胞核内のインプリンティング遺伝子の存在、インプリンティング遺伝子の消失またはコピー数異常を判断し、インプリンティング遺伝子消失遺伝子発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量およびインプリンティング遺伝子総発現量を計算することによって、該サンプルの腫瘍良性度・悪性度を判定し、切片がわずか10μmであるため、顕微鏡で見た細胞核は20%程度あり、不完全な細胞核であり、すなわち一部偽陰性の可能性がある。
【0045】
本明細書の一実施例において、インプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量およびインプリンティング遺伝子総発現量は、5つのグレードに分けられる。
【0046】
前記5つのグレードがサンプル内の各プローブ発現の最も陽性の領域で少なくとも1200個の細胞を数え、Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16の10つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量をそれぞれ分類する。
【0047】
本明細書の一実施例において、前記Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を分ける5つのグレードは、次の通りであり、
グレード0:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、12%未満、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1%未満または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が25%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードI:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、12〜20%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が25〜35%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードII:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、20〜25%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が35〜45%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIII:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、25〜30%、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3〜5%または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が45〜60%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIV:前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量は、30%超、前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が5%超または前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16の総発現量が60%超のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
前記インプリンティング遺伝子Z1とZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量は、互いに独立している。
【0048】
前記Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量を分ける5つのグレードは、次の通りであり、
グレード0:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、10%未満、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードI:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、10〜15%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードII:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、15〜20%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIII:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、20〜25%、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
グレードIV:前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量は、25%超、前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超または前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13の総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
前記インプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11およびZ13のインプリンティング遺伝子消失発現量、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量および総発現量は、互いに独立している。
【0049】
本明細書の一実施例において、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の判定は、良性腫瘍、甲状腺癌の増殖能、早期甲状腺癌、進行甲状腺癌および末期甲状腺癌に分類され、
本明細書の一実施例において、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が均しくグレードIよりも小さく、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIである場合、良性腫瘍であり、
【0050】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16うち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであることのうちいずれか状況である場合、甲状腺癌の増殖能と判定され、
【0051】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであることのうちいずれか状況である場合、早期甲状腺癌であり、
【0052】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVであることのうちいずれか状況である場合、進行甲状腺癌であり、
【0053】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVである場合、末期甲状腺癌である。
【0054】
本明細書の一実施例において、本発明は、甲状腺腫瘍検出における前記モデルまたは前記装置の使用を提供する。
【0055】
本明細書の一実施例において、本発明は、甲状腺癌治療薬の調製または機器における前記モデルまたは前記装置の用途を提供する。
【0056】
本明細書の一実施例において、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の判定は、良性腫瘍、甲状腺癌の増殖能、早期甲状腺癌、進行甲状腺癌および末期甲状腺癌に分類される。
【0057】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が均しくグレードIよりも小さく、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIである場合、良性腫瘍であり、
【0058】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであることのうちいずれか状況である場合、甲状腺癌の増殖能と判定され、
【0059】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであることのうちいずれか状況である場合、早期甲状腺癌と判定され、
【0060】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVであることのうちいずれか状況である場合、進行甲状腺癌であり、
【0061】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVである場合、末期甲状腺癌である。
【0062】
従来技術と比較して、本明細書の実施例において、前記検出モデルおよび装置を利用し、直感的な方法で甲状腺腫瘍患者サンプルにおけるインプリンティング遺伝子発現を表現し、インプリンティング遺伝子へのin situマーキング方法を通じて、インプリンティング(刷り込み)遺伝子の変化を客観的、直感的、早期、正確に検出し、定量的なモデルを提供することができ、分子病理学的診断に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1は、本発明のヘマトキシリンで染色された細胞核の甲状腺癌の病理切片であり、ここで、aは細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核内にマーカーがなく、インプリンティング遺伝子が発現されていないことを示し、bは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に1つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が存在することを示し、cは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が消失していることを示し、dは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つ以上の赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子コピー数が異常であることを示す。
【0064】
図2(a)は、グレード0甲状腺腫瘍の病理切片における10つの遺伝子発現状況を示し、
図2(b)は、グレードI甲状腺癌の病理切片における10つの遺伝子発現状況を示し、
図2(c)は、グレードII甲状腺癌の病理切片における10つの遺伝子発現状況を示し、
図2(d)は、グレードIII甲状腺癌の病理切片における10つの遺伝子発現状況を示し、
図2(e)は、グレードIV甲状腺癌の病理切片における10つの遺伝子発現状況を示す。
【0065】
図3(a)は、甲状腺癌のインプリンティング消失に対するインプリンティング遺伝子Z1、Z11およびZ16の強度を示し、
図3(b)は、甲状腺癌のコピー数異常に対するインプリンティング遺伝子Z1、Z11およびZ16の強度を示し、
図3(c)は、甲状腺癌の総発現量に対するインプリンティング遺伝子Z1、Z11およびZ16の強度を示し、
図3(d)は、甲状腺癌のインプリンティング消失に対するインプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10およびZ13の強度を示し、
図3(e)は、甲状腺癌のコピー数異常に対するインプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10およびZ13の強度を示し、
図3(f)は、甲状腺癌の総発現量に対するインプリンティング遺伝子Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10およびZ13の強度を示し、ここで、LOIは、インプリンティング遺伝子消失の遺伝子発現量であり、CNVがインプリンティング遺伝子コピー数異常の遺伝子発現量であり、TEがインプリンティング遺伝子の総発現量である。
【0066】
図4(a)は、インプリンティング遺伝子Z1のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(b)は、インプリンティング遺伝子Z11のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(c)は、インプリンティング遺伝子Z16のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(d)は、インプリンティング遺伝子Z3のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(e)は、インプリンティング遺伝子Z4のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(f)は、インプリンティング遺伝子Z5のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(g)は、インプリンティング遺伝子Z6のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(h)は、インプリンティング遺伝子Z8のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(i)は、インプリンティング遺伝子Z10のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、
図4(j)は、インプリンティング遺伝子Z13のインプリンティング消失、コピー数異常および総発現量の強度を示し、ここで、LOIは、インプリンティング遺伝子消失の遺伝子発現量であり、CNVがインプリンティング遺伝子コピー数異常の遺伝子発現量であり、TEがインプリンティング遺伝子の総発現量である。
【0067】
図5(a)は、インプリンティング遺伝子Z1が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(b)は、インプリンティング遺伝子Z11が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(c)は、インプリンティング遺伝子Z16が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(d)は、インプリンティング遺伝子Z3が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(e)は、インプリンティング遺伝子Z4が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(f)は、インプリンティング遺伝子Z5が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(g)は、インプリンティング遺伝子Z6が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(h)は、インプリンティング遺伝子Z8が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(i)は、インプリンティング遺伝子Z10が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、
図5(j)は、インプリンティング遺伝子Z13が41例の甲状腺癌の病理切片に応用された場合、インプリンティング消失とコピー数異常の分布範囲およびグレード分類基準を示し、ここで、LOIは、インプリンティング遺伝子消失の遺伝子発現量であり、CNVがインプリンティング遺伝子コピー数異常の遺伝子発現量であり、TEがインプリンティング遺伝子の総発現量である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明が講じた技術的手段およびその効果をさらに説明するため、以下は添付図面を参照しつつ具体的実施形態を通じて本発明の技術的手段をさらに説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0069】
ゲノムインプリンティングは、エピジェネティクスにおける遺伝子調節の方法である。その特徴は、特定の親由来の対立遺伝子をメチル化することにより、特定の遺伝子の一方の対立遺伝子のみが発現され、他方はサイレント状態になることである。この種の遺伝子は、刷り込み(インプリンティング)遺伝子と呼ばれる。刷り込み消失は、刷り込み遺伝子の脱メチル化により、サイレント状態であった対立遺伝子が活性化され、遺伝子発現を開始するエピジェネティックな変化である。多数の研究により、この現象(刷り込み消失)は様々な種類の癌に一般的に存在し、細胞および組織の形態の変化よりも早く発生することが示されている。同時に、健康な細胞において、癌細胞とは対照的に、刷り込み消失の割合は極めて低くなっている。このため、刷り込み遺伝子のメチル化状態は、病理学的マーカーとして特定の分子検出技術を通じて細胞の異常状態を解析することができる。
【0070】
本発明の検出モデルおよび装置は、直感的な方法で甲状腺腫瘍患者サンプルにおけるインプリンティング遺伝子発現を表現し、インプリンティング遺伝子へのin ituマーキング方法を通じて、インプリンティング(刷り込み)遺伝子の変化を客観的、直感的、早期、正確に検出し、定量的なモデルを提供することができ、甲状腺腫瘍の診断に大きく貢献し、
本発明の検出装置は、甲状腺腫瘍患者の手術前の穿刺生検を通じて、甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定することができるため、手術および精密な治療に根拠を提供する。これは細胞分子分野における甲状腺腫瘍診断の革新的なブレークスルーであり、
本発明は、甲状腺腫瘍のタイプを正確に判断することができ、インプリンティング遺伝子の複合検出を通じて、甲状腺腫瘍の悪性度について明確なグレード分類を行い、甲状腺癌の早期かつ明確な診断を大幅に向上し、特に早期スクリーニングおよび癌の術後訪問(特に再発が疑われる患者のフォローアップ・訪問)に使用すると、時間を稼ぎ、患者の命を救うことに大きく貢献することができ、
本発明は、甲状腺の好酸性細胞腫瘍(HCT)の良性、悪性を分子レベルから正確に鑑別することができ、現在の組織細胞形態学が甲状腺の好酸性細胞腫瘍の良性、悪性を鑑別することが難しいという問題に解決手段を提供し、同時に濾胞性甲状腺腺腫(FTA)と濾胞性甲状腺癌(FTC)を鑑別することもでき、世界の形態学的診断の難しさを解決する。
【0071】
本発明の検出方法は、免疫組織化学的方法とは異なり、偽陽性および他の負の影響を低減するだけでなく、甲状腺腫瘍関連のインプリンティング遺伝子消失部位の発見を通じて遺伝子を沈黙させ、ノックアウトし、再配列することができる標的薬または技術方法が後の治療および投薬を導くために使用できる。
【実施例1】
【0072】
甲状腺癌のインプリンティング遺伝子の解析
前記インプリンティング遺伝子の検出方法は、次のステップを含む。すなわち、
(1)甲状腺癌の組織細胞切片(10ミクロン)を取得し、RNA分解を防ぐため、10%中性ホルマリン溶液に入れて固定し、固定時間は24時間で、パラフィンに包埋(FFPE)し、ガラススライドが正電荷で取り外し、切片を40℃のオーブンで3時間以上焼くステップ、
(2)RNASCopeのサンプル処理方法に従ってサンプル内の内因性ペルオキシダーゼ活性をブロッキングし、透過性を高め、RNA分子を露出させるステップ、
(3)インプリンティング遺伝子配列に基づいて特異的プライマーを設計するプローブ設計ステップ、
前記プローブは、インプリンティング遺伝子Z1(Gnas)、Z3(Peg10)、Z4(Igf2r)、Z5(Mest)、Z6(Plagl1)、Z8(Dcn)、Z10(Gatm)、Z11(Grb10)、Z13(Sgce)およびZ16(Snrpn/Snurf)に基づいて設計されたものであり、具体的に各遺伝子のイントロンからプローブとして部分配列を選択し、具体的にプローブはAdvanced Cell Diagnosticsによって設計された。
【0073】
(4)ステップ(3)のプローブと被験サンプルをキットによってRNA SCopein situハイブリダイゼーションを実施するステップ、
(5)シグナル増幅およびヘマトキシリン染色を行い、顕微鏡イメージングでインプリンティング遺伝子の発現状況を解析するステップ、
前記モデルにおけるインプリンティング遺伝子総発現量、インプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量を計算するための式は、以下の通りであり、
総発現量=(b+c+d)/(a+b+c+d)×100%、
通常インプリンティング遺伝子発現量=b/(b+c+d)×100%、
インプリンティング遺伝子消失の遺伝子発現量(LOI)=c/(b+c+d)×100%、
インプリンティング遺伝子コピー数異常の遺伝子発現量(CNV)=d/(b+c+d)×100%、
ここで、a、b、c、dは、
図1に示ように、aは細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核内にマーカーがなく、インプリンティング遺伝子が発現されていない細胞核であることを示し、bは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に1つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が存在する細胞核であることを示し、cは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つの赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子が消失している細胞核であることを示し、dは、細胞をヘマトキシリンで染色した後、細胞核に2つ以上の赤色/茶色マーカーがあり、インプリンティング遺伝子コピー数が異常な細胞核であることを示す。
【0074】
図2(a)〜
図2(e)から分かるように、グレード0からグレードIVまでのサンプルにおいて、インプリンティング消失(核内に2つのシグナル点がある)およびコピー数異常(核内に3つ以上のシグナル点がある)の細胞の割合は、悪性度の増加とともに徐々に増加する。
【実施例2】
【0075】
甲状腺穿刺生検サンプルのインプリンティング遺伝子の解析
前記甲状腺穿刺生検サンプルは、疑わしい病変組織を穿刺で取り出し、10%中性ホルマリン溶液で24時間以上固定し、その他の検出方法が実施例1と同じである。
【0076】
図3(a)〜
図3(f)から分かるように、各遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13、Z16の甲状腺癌に対する感受性または甲状腺癌の発現に対応するインプリンティング消失の強度および状況は、異なる。
【0077】
具体的に各インプリンティング遺伝子の甲状腺癌に対する感受性は、
図4(a)〜
図4(j)に示されている。
図4(a)〜
図4(c)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z1のインプリンティング消失および発現量の増加は、悪性ポテンシャルが現れ始め、早期甲状腺癌で急速に非常に高いレベルに増加し、進行・末期甲状腺癌で維持し続け、インプリンティング遺伝子Z1のインプリンティングコピー数異常は、悪性ポテンシャルで急速に非常に高いレベルに上昇し、早期甲状腺癌から末期甲状腺癌にかけて維持し続け、インプリンティング遺伝子Z11のインプリンティング消失、コピー数異常および発現量の増加は、悪性ポテンシャル段階で低いレベルで、早期甲状腺癌段階から進行甲状腺癌段階にかけてゆっくりと増加し、末期甲状腺癌段階で急速に非常に高いレベルに上昇し、インプリンティング遺伝子Z16のインプリンティング消失、コピー数異常および発現量の増加は、悪性ポテンシャルから進行甲状腺癌段階にかけて急速に増加し、末期甲状腺癌段階で非常に高いレベルを維持し、
【0078】
図4(d)〜
図4(j)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z3のインプリンティング消失およびコピー数異常は、悪性ポテンシャルおよび早期甲状腺癌段階で有意に増加せず、進行甲状腺癌でゆっくりと増加し、末期甲状腺癌では上昇速度が増加し、より高いレベルに達し、インプリンティング遺伝子Z3の発現量増加が悪性ポテンシャル段階で現れ始め、甲状腺癌の進展過程でゆっくりと上昇し、末期甲状腺癌段階でまだ低いであり、インプリンティング遺伝子Z4のインプリンティング消失およびコピー数異常は、甲状腺癌の進展過程でゆっくりと上昇し、末期甲状腺癌段階でまだ低いであり、インプリンティング遺伝子Z4の発現量増加は、悪性ポテンシャル段階で現れ始め、早期甲状腺癌で有意に増加せず、進行甲状腺癌で急速に上昇するが、末期甲状腺癌段階でより高い感受性に達し、インプリンティング遺伝子Z5のインプリンティング消失およびコピー数異常は、進行期甲状腺癌段階で現れ始め、末期甲状腺癌段階でレベルがそれほど高くはなく、インプリンティング遺伝子Z5の発現量増加が早期甲状腺癌段階で現れ始め、甲状腺癌の進展過程で徐々に上昇し、末期甲状腺癌段階でレベルがそれほど高くはなく、インプリンティング遺伝子Z6のインプリンティング消失は、進行甲状腺癌段階で現れ始め、末期甲状腺癌である程度上昇するが、レベルがそれほど高くはなく、インプリンティング遺伝子Z6のコピー数異常が甲状腺癌の増殖能段階で現れ始め、早期と進行甲状腺癌で安定したままであり、末期甲状腺癌段階で急速に比較的高いレベルに上昇し、インプリンティング遺伝子Z6の発現量増加が早期甲状腺癌段階で現れ始め、進行甲状腺癌段階で安定したままであり、末期甲状腺癌段階では急速に比較的高いレベルに上昇し、インプリンティング遺伝子Z8のインプリンティング消失は、進行甲状腺癌段階で急速に上昇し、末期甲状腺癌段階で比較的高いレベルに上昇し、インプリンティング遺伝子Z8のコピー数異常が進行甲状腺癌段階で急速に比較的高いレベルに上昇し、末期甲状腺癌で非常に高いレベルに上昇し続け、インプリンティング遺伝子Z8の発現量増加が末期甲状腺癌段階で現れ始め、かつ比較高いレベルに達し、インプリンティング遺伝子Z10のインプリンティング消失、コピー数異常および発現量増加は、末期甲状腺癌段階で現れ始め、かつ非常に高いレベルに達し、インプリンティング遺伝子Z13のインプリンティング消失は、早期甲状腺癌段階で現れ始め、進行甲状腺癌および末期甲状腺癌段階でゆっくりと上昇し、インプリンティング遺伝子Z13のコピー数異常が早期甲状腺癌段階で現れ始め、進行甲状腺癌段階でゆっくりと上昇し、末期甲状腺癌段階では急速に上昇すると共に比較的高いレベルに達し、インプリンティング遺伝子Z13の発現量増加が悪性ポテンシャル段階で現れ始め、早期と進行甲状腺癌段階で有意に上昇せず、末期甲状腺癌段階で急速に比較的高いレベルに上昇する。
【実施例3】
【0079】
甲状腺腫瘍サンプル41例のインプリンティング遺伝子の解析
穿刺生検細胞サンプルを含む41例の甲状腺癌患者の組織を取得し、検出方法は、実施例1と同じである。
【0080】
図5(a)〜
図5(j)から分かるように、甲状腺腫瘍組織サンプル41例における10つのプローブのインプリンティング消失およびコピー数異常の割合は、低いものから高いものへの分布を示し、異なるプローブの分布傾向に基づいて、図内の破壊で示したグレード分類基準を算出し、各プローブのインプリンティング消失およびコピー数異常を低から高の5つグレードに分けることができる。
【0081】
具体的グレード分類は、次の通りであり、
図5(a)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z1について、インプリンティング遺伝子消失発現量が12%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が25%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が12〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が25〜35%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が35〜45%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25〜30%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3〜5%またはインプリンティング遺伝子総発現量が45〜60%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が30%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が5%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が60%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0082】
図5(b)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z11について、インプリンティング遺伝子消失発現量が10%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が10〜15%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%またはインプリンティング遺伝子総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が15〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0083】
図5(c)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z16について、インプリンティング遺伝子消失発現量が12%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が25%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が12〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が25〜35%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が35〜45%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25〜30%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3〜5%またはインプリンティング遺伝子総発現量が45〜60%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が30%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が5%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が60%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0084】
図5(d)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z3について、インプリンティング遺伝子消失発現量が10%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が10〜15%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%またはインプリンティング遺伝子総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が15〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0085】
図5(e)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z4について、インプリンティング遺伝子消失発現量が10%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が10〜15%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%またはインプリンティング遺伝子総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が15〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0086】
図5(f)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z5について、インプリンティング遺伝子消失発現量が10%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が10〜15%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%またはインプリンティング遺伝子総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が15〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0087】
図5(g)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z6について、インプリンティング遺伝子消失発現量が10%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が10〜15%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%またはインプリンティング遺伝子総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が15〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0088】
図5(h)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z8について、インプリンティング遺伝子消失発現量が10%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が10〜15%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%またはインプリンティング遺伝子総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が15〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0089】
図5(i)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z10について、インプリンティング遺伝子消失発現量が10%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が10〜15%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%またはインプリンティング遺伝子総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が15〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVであり、
【0090】
図5(j)から分かるように、インプリンティング遺伝子Z13について、インプリンティング遺伝子消失発現量が10%未満、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5%未満またはインプリンティング遺伝子総発現量が15%未満のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのは、グレード0であり、インプリンティング遺伝子消失発現量が10〜15%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が0.5〜1%またはインプリンティング遺伝子総発現量が15〜20%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が15〜20%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が1〜2%またはインプリンティング遺伝子総発現量が20〜30%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が20〜25%、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が2〜3%またはインプリンティング遺伝子総発現量が30〜40%のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子消失発現量が25%超、インプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が3%超またはインプリンティング遺伝子総発現量が40%超のうちいずれか1種または少なくとも2種であるのはグレードIVである。
【0091】
甲状腺腫瘍サンプル61例の包括的な解析から次の通りに得られる。
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度の判定は、良性腫瘍、甲状腺癌の増殖能、早期甲状腺癌、進行甲状腺癌および末期甲状腺癌に分類され、
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のインプリンティング遺伝子消失発現量およびインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量が均しくグレードIよりも小さく、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIである場合、良性腫瘍であり、
【0092】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16うち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであることのうちいずれか状況である場合、甲状腺癌の増殖能と判定され、
【0093】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであることのうちいずれか状況である場合、早期甲状腺癌であり、
【0094】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIIIであり、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIIIであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、かつインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち1つ以下のインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVであることのうちいずれか状況である場合、進行甲状腺癌であり、
【0095】
甲状腺腫瘍の良性度・悪性度を判定した結果は、インプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子消失発現量がグレードIVであり、またはインプリンティング遺伝子Z1、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z10、Z11、Z13およびZ16のうち少なくとも2つのインプリンティング遺伝子のインプリンティング遺伝子コピー数異常発現量がグレードIVである場合、末期甲状腺癌である。
【0096】
以上をとりまとめると、本発明の検出モデルおよび装置は、直感的な方法で甲状腺腫瘍患者サンプルにおけるインプリンティング遺伝子発現を表現し、インプリンティング遺伝子へのin situマーキング方法を通じて、インプリンティング(刷り込み)遺伝子の変化を客観的、直感的、早期、正確に検出し、定量的なモデルを提供することができ、甲状腺腫瘍の診断に大きく貢献する。
【0097】
出願人は、本発明が上記実施例を通じて本発明の詳細な方法を説明することを表明するが、本発明は上記詳細な方法に限定されず、すなわち本発明の実施が上記詳細な方法に依存しなければならないことを意味しない。当業者は、本発明の改善、本発明の製品の各原料の均等範囲内での置換および補助成分の添加、具体的形態の選択などが、本発明の保護および開示の範囲内に網羅されることを理解すべきである。
【国際調査報告】