特表2021-531849(P2021-531849A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-531849眼圧測定および/またはモニタリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-531849(P2021-531849A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】眼圧測定および/またはモニタリング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20211029BHJP
【FI】
   A61B3/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-500166(P2021-500166)
(86)(22)【出願日】2018年7月6日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2018068338
(87)【国際公開番号】WO2020007482
(87)【国際公開日】20200109
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】519447905
【氏名又は名称】センシメド ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルボニ、サシャ
(72)【発明者】
【氏名】シュルンド、マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリデル、ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】フリチ、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】パラシヴ、アドリアン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA20
4C316AB14
4C316FC04
4C316FC07
4C316FC14
(57)【要約】
本発明は、内面101および外面102を有するコンタクトレンズ10と、コンタクトレンズ10と一体となって、コンタクトレンズ10がユーザーに装着された時に、ユーザーの眼8の眼圧を感知するために眼8に対して適用されるように配置された圧力センサ2とを含んだ、眼圧計測および/またはモニタリング装置1に関する。コンタクトレンズ10は、軟質部11と硬質部12とを含む。硬質部12は、コンタクトレンズ10の内面101の中心部が少なくとも部分的に堅くなるようにされて、少なくとも圧力センサ2と接触する眼の表面の部位を平らにするように堅くなった内面の曲率を維持するものであり、かつ、それにより、コンタクトレンズ10がユーザーに装着された時に、圧力センサ2の周囲が圧力平衡に達するようにするものである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面(101)および外面(102)を有するコンタクトレンズ(10)と、
前記コンタクトレンズ(10)と一体となって、前記コンタクトレンズ(10)がユーザーに装着された時に、ユーザーの眼(8)の眼圧を感知するために前記眼(8)に対して適用されるように配置された圧力センサ(2)と、を含む眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)であって、
前記コンタクトレンズ(10)が軟質部(11)と硬質部(12)とを含み
前記硬質部(12)は、前記コンタクトレンズ(10)の内面(101)の中心部が少なくとも部分的に堅くなるようにされて、少なくとも圧力センサ(2)と接触する眼の表面の部位を平らにするように堅くなった内面の曲率を維持するものであり、かつ、それにより、コンタクトレンズ(10)がユーザーに装着された時に、圧力センサ(2)の周囲が圧力平衡に達するようにするものであることを特徴とする眼圧測定および/またはモニタリング装置。
【請求項2】
コンタクトレンズ(10)は、ソフトコンタクトレンズであり、そして硬質部(12)は硬質インサートであることを特徴とする請求項1記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置。
【請求項3】
軟質部(11)が、少なくとも部分的に硬質部(12)を囲んでいることを特徴とする請求項1または2記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置。
【請求項4】
前記硬質部(12)が、一般的なメニスカスまたは凹凸レンズ形状を有することを特徴とする請求項2記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項5】
前記硬質部(12)が、軟質部(11)と比較して小寸法であり、そして前記コンタクトレンズの中心に配置されていることを特徴とする請求項3または4記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項6】
前記硬質部(12)が、複数の貫通穴(123)を含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項7】
前記コンタクトレンズが、前記硬質部(12)の貫通穴(123)を通した柔らかい材料による内面と外面との間の接続を含むことを特徴とする請求項6記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項8】
堅くなった内面(101)の曲率半径の少なくとも1つが、外面(102)の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置。
【請求項9】
複数の圧力センサ(2)を含むことを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置。
【請求項10】
コンタクトレンズにおける軟質部(11)材料の柔らかい縁部が、この軟質部(11)の形状を眼(8)の形状に適合させるとともに、ユーザーがコンタクトレンズ(10)を装着している時に、コンタクトレンズ(10)を眼(8)の中心に配置し、かつコンタクトレンズを接線すべり方向に安定させるように構成されていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項11】
前記コンタクトレンズ(10)の前記軟質部(11)が、ハイドロゲルと、シリコーンハイドロゲルと、シリコーンとを含むグループから選択された材料により作製されたものであることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項12】
前記コンタクトレンズ(10)の前記硬質部(12)が、ポリマー、セラミック、ガラス、金属、RGPなどのを含むグループから選択された材料により作製されたものであることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項13】
前記コンタクトレンズ(10)の軟質部(11)と硬質部(12)とのいずれか1つが、調整可能な剛性、または剛性勾配を有する材料により作製されたものであることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項14】
前記コンタクトレンズ(10)が、遠隔的な電力供給とデータ転送とのためのアンテナ(4)とマイクロプロセッサ(5)とをさらに含むことを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項15】
圧力センサ(2)は、この圧力センサ(2)の出力値への温度の影響が特殊な電気回路により補償されるように温度補償された圧力センサであることを特徴とする請求項1から14までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項16】
前記圧力センサ(2)は、ユーザーが前記コンタクトレンズ(10)を装着している時にユーザーの眼に直接接触するものであることを特徴とする請求項1から15までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項17】
前記圧力センサ(2)は、ユーザーが前記コンタクトレンズ(10)を装着している時にユーザーの眼に間接的に接触するものであることを特徴とする請求項1から15までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項18】
前記硬質部(12)の凹面内側に形成されたくぼみ(121)内に、前記圧力センサ(2)が配置され、前記くぼみ(121)には前記圧力センサ(2)を覆う圧力伝達充填剤(122)が充填されており、充填剤(122)の層が圧力センサ(2)とコンタクトレンズ(10)内面との間に配置されていることを特徴とする請求項17記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項19】
前記充填剤(122)が硬質部(12)よりも柔らかい材料にて構成されていることを特徴とする請求項18記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項20】
前記充填剤(122)が前記軟質部(11)の材料よりも堅いものであることを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項21】
前記充填剤(122)が前記軟質部(11)の材料よりも柔らかいものであることを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項22】
前記充填剤(122)が前記軟質部(11)と同じ柔らかさのものであることを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項23】
前記充填剤(122)が前記軟質部(11)と同じ材料にて構成されていることを特徴とする請求項22記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項24】
前記充填剤(122)が液体であることを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項25】
前記くぼみ(121)が前記硬質部(12)の中心に形成されていることを特徴とする請求項18から24までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項26】
コンタクトレンズ(10)の前記くぼみ(121)の下の前記内面(101)が、硬質部(12)の下の他の内面(101)と比べて柔らかい表面を呈するものであることを特徴とする請求項18から25までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項27】
コンタクトレンズ(10)の前記くぼみ(121)の下の前記内面(101)が、硬質部(12)の下の他の内面(101)と同等の柔らかさの表面を呈するものであることを特徴とする請求項17から25までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項28】
コンタクトレンズ(10)の前記堅くなった内面(101)が、柔らかい材料で製作されたコンタクトレンズの縁部(13)で囲まれていることを特徴とする請求項1から27までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項29】
コンタクトレンズ(10)における堅くなった内面(101)に備えられた環状溝(14)をさらに含むことを特徴とする請求項1から28までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)。
【請求項30】
請求項1から29までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)と、
前記眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)と通信するため、および前記眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)から受けたデータを保存するための携帯式の記録装置(6)と、
を含むキット。
【請求項31】
前記携帯式の記録装置(6)は、無線誘導通信チャンネル(15)によって眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)に電力を供給するように構成されていることを特徴とする請求項30記載のキット。
【請求項32】
請求項1から29までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)を有し、前記携帯式の記録装置(6)は、前記2つの眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)と通信するように構成され、および/または前記2つの眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)から受けたデータを保存するように構成されていることを特徴とする請求項30または31記載のキット。
【請求項33】
請求項1から29までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)と、
前記眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)と通信するため、および前記眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)から受けたデータを保存するための携帯式の記録装置(6)と、
この携帯式の記録装置(6)からデータを受け、および/またはこのデータを処理し、および/またはこのデータを保存するために、携帯式の記録装置(6)と通信するよう構成された演算装置(7)と、
を含むことを特徴とする眼圧モニタリングシステム。
【請求項34】
前記携帯式の記録装置(6)は、前記圧力測定および/またはモニタリング装置(1)に、無線誘導通信チャンネル(15)によって電力を供給するように構成されていることを特徴とする請求項33記載の眼圧モニタリングシステム。
【請求項35】
請求項1から29までのいずれか1項記載の眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)を2つ有し、前記携帯式の記録装置(6)は、前記2つの眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)と通信するように構成されるとともに、前記2つの眼圧測定および/またはモニタリング装置(1)から受けたデータを保存するように構成されていることを特徴とする請求項33または34記載の眼圧モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼圧(IOP:intraocular pressure)を測定および/またはモニタリングするための装置に関する。本発明は特に眼圧を長時間、例えば8時間、12時間、24時間またはより長い時間、モニターするために、ユーザーの眼に取り付けることができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は上昇した眼圧(IOP)により特徴づけられる広範囲にわたる疾患である。この上昇した眼圧は、周辺視野の段階的な喪失を生じさせる。したがって信頼できる診断を提供するために、または新しい治療法を設定するために、緑内障患者の詳細な眼圧情報が必要となる。
【0003】
米国特許第4922913号明細書は、湾曲した支持体に据付けられたピエゾ抵抗歪みゲージセルを有する眼圧センサを記載している。この支持体は、歪みゲージセルにおける、圧力を検知可能な平面状の表面を、眼の表面に位置決めするのに役立つ。このセンサは眼球の硬化した部位(強膜)に配置されるように特化して設計され、このため圧力を検知可能な表面が眼の白い部位を押す。センサは小さく、このため、強膜上に配置された時、眼に対して中心からずれており、角膜を覆わない。湾曲した支持体はハードコンタクトレンズと同じように製作される。
【0004】
この眼圧測定センサの欠点は、中断なしに長時間装着することができないことであり、なぜなら、ハードコンタクトレンズように、そのような剛な支持体が耐えがたい不快感を急激に引き起こすためである。さらにセンサは電線によって外部の記録/モニタリング器具に接続されていて、これは不快であり、さらに記録/モニタリング器具がユーザーの頭の近くに維持されることを要求する。
【0005】
米国特許第4922913号明細書のもう1つの欠点は、中心からずれた堅くて小さい湾曲した支持体が、著しくすべって眼球上で移動し、したがって結果として測定条件が制御不能に変化し、それによって眼圧測定の精度が損なわれることである。著しい変位を避けて、眼球との良好な接触を保つために、米国特許第4922913号明細書の湾曲した支持体は、まぶたの下に配置されなければならない。
【0006】
まだそのうえ、この眼圧センサのもう1つの欠点は、剛な支持体が個々のユーザーのために製造され、または少なくとも特化して改造されなければならないことにある。堅い支持体は、装着された時に適切に取りついてユーザーを妨害しないように、ユーザーの眼球の特定形状とサイズに実際に完全に適合しなければならない。このセンサの個別化は、したがって製造コストの増加につながる。
【0007】
本発明は、このため、外部形状のわずかな修正で多数の患者に簡単に適合させることができ、そして一般的でない眼のサイズに適合するために、異なるサイズで同じアプリケーションを考慮できる眼圧モニタリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、24時間のような長時間、中断することなくユーザーが装着するのに快適な眼圧モニタリング装置を提供することを目的とする。
【0009】
また欧州特許文献第11764227号は、ソフトコンタクトレンズと圧力センサとが、例えばソフトコンタクトレンズへの圧力センサの埋め込みにより、1つにまとまったものを記載している。そしてソフトコンタクトレンズがユーザーに装着された時に、圧力センサがユーザーの眼に着けられて眼圧を感知するように配置され、そのソフトコンタクトレンズは眼の表面より柔らかく、コンタクトレンズの下の涙膜による毛細管力により発生した吸引力の効果によりその形状を眼の形状に適合して、ユーザーがコンタクトレンズを装着している時に圧力センサを眼の上に保持するように構成されている。
【0010】
米国特許出願公開第2002/0159031号明細書は、基本的には眼圧計であり眼圧を測定するための装置であって、柔らかいか堅いかのいずれかであるコンタクトレンズのようなベースボディに埋め込まれている圧力センサ含む装置を記載している。この装置の特別な特徴は、装置が眼の表面と直接接触しており、その接触面は角膜の中心でいかなる半径方向の力をも除くことを可能にする曲率半径を有することにある。しかしながらこの装置の問題点は、ハードまたはソフトコンタクトレンズを使用することで得られることを意図した接触では、ユーザーに眼圧出力を届けないことである。なぜならコンタクトレンズのアプリケーションにおいてデータ転送を示すものの記載がなく、センサの出力を利用できるようにする方法が完全に説明されずに放置されているためである。
【0011】
さらに硬いおよび/または準剛性のあるコンタクトレンズは、人の眼の角膜および/または強膜の上に配置された時に、たいていそれらの形状を保持する。したがって、仮にハードコンタクトレンズの形状が眼球の形状に完全に適合しなければ、そのハードコンタクトレンズは、局所的に変形し、および/またはユーザーの目を傷つける。その上、コンタクトレンズは簡単に眼球の表面上を滑り、そして/または眼から飛び出る。
【0012】
一方で、ソフトコンタクトレンズは、人の眼の角膜よりも剛性が低い、または柔らかい。したがって眼球の上に配置された時、ソフトコンタクトレンズの形状はユーザーの角膜の形状に適合し、そのためにコンタクトレンズの下の涙膜による毛細管力にもとづき発生した吸引力の効果によって、ユーザーへの擾乱を最小にして眼へのコンタクトレンズの付着が最大になる。しかしながら、コンタクトレンズが柔らかいと、ユーザーの眼に適合していないフィッティングとなっているときの毛細管力と、眼の寸法の変化との両者によって、一般的に時間とともにコンタクトレンズを曲げる結果となる。センサを機械的に絶縁するための剛な要素が存在しないことで、ソフトコンタクトレンズの半径方向の変形がセンサに働いているという効果のもとで、眼圧の読みとりができなくなる。
【0013】
この点で、本発明の主要な目的は、上述の課題を解決して、より具体的には、長期間にわたり精密に眼圧を測定する圧力検出装置であって、さらにデータを無線転送することができる同装置を提供することにある。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズとの両方の利点を、それらの欠点なしに提供するところの、コンタクトレンズ状の新しい圧力検出装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0015】
上記の課題は、本発明により解決される。
【0016】
本発明の第1の態様は、内面および外面を有するコンタクトレンズと、このコンタクトレンズと一体となって、このコンタクトレンズがユーザーに装着された時に、ユーザーの眼の眼圧を感知するために眼に対して適用されるように配置された圧力センサとを含む眼圧測定および/またはモニタリング装置であって、コンタクトレンズが軟質部と硬質部とを含み、硬質部は、コンタクトレンズの内面の中心部が少なくとも部分的に堅くなるように適合されて、少なくとも圧力センサと接触する眼の表面の部位を平らにするように堅くなった内面の曲率を維持するものであり、かつ、それにより、コンタクトレンズがユーザーに装着された時に、圧力センサの周囲が圧力平衡に達するようにしたものであることを特徴とする。このおかげで、長期間にわたって精密に眼圧を測定する圧力検知装置を得ることができる。なぜなら、同装置は、圧力センサの周囲に有益な感知領域を備える一方において角膜表面で安定するためである。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態によると、コンタクトレンズはソフトコンタクトレンズであり、そして硬質部が硬質インサートである。これによれば、眼と接触している表面はソフトコンタクトレンズであり、そして圧力センサと硬質部との両者は、そのコンタクトレンズの内部に封入されている。
【0018】
好ましくは、軟質部が、少なくとも部分的に硬質部を囲む。したがって、角膜と強膜との寸法にかかわらずコンタクトレンズが多様な眼の形状に適合することができる。
【0019】
好ましくは、硬質部が、メニスカスレンズに類似した一般的な形状を有する。このようなものであると、硬質部がコンタクトレンズと類似の一般的な形状を有し、そして眼の一般的な形状に対してより密に接する。
【0020】
有利には、硬質部が、軟質部と比較して寸法が小さく、そしてコンタクトレンズの中心部に配置されている。これによると、コンタクトレンズは中心部の方がより厚いため、硬質部をより簡単にコンタクトレンズの内部に配置することができる。
【0021】
本発明の好ましい態様によると、硬質部が、多数の貫通穴を含む。これによると、硬質インサートによる眼の低酸素状態を防止することができ、そして硬質インサートをコンタクトレンズ内側に「リベッティング」することもできる。
【0022】
本発明の好ましい態様によると、堅くなった内面の曲率半径が、外面の曲率半径よりも大きい。したがって、本発明の装置は、多様な眼の寸法に対応して適合することができる。
【0023】
複数の圧力センサを有することが有利である。このようなものであると、検出結果を比較することによって、測定精度を向上させることができる。
【0024】
好ましくは、コンタクトレンズにおける軟質部の材料が、この軟質部の形状を眼の形状に適合させるとともに、ユーザーがコンタクトレンズを装着している時に、コンタクトレンズを眼の中心に配置し、かつコンタクトレンズを接線すべり方向に安定させるように構成されている。これにより、使用時の快適性が向上される。
【0025】
前記コンタクトレンズの軟質部が、ハイドロゲルと、シリコーンハイドロゲルと、シリコーンと含むグループから選択された材料により作製されたものであることが好ましい。
【0026】
前記コンタクトレンズの硬質部が、ポリマー、セラミック、ガラス、金属、RGPなどを含むグループから選択された材料により作製されたものであることが有利である。
【0027】
上記に代えて、前記コンタクトレンズの軟質部と硬質部とのいずれか1つが、剛性を調節可能な材料または剛性勾配を有する材料により作製されたものとすることができる。
【0028】
本発明の好ましい態様によると、コンタクトレンズは、遠隔的な電力供給とデータ転送とのためのマイクロプロセッサをさらに有する。このようなものであると、データの無線転送が可能となる。
【0029】
圧力センサは、この圧力センサの出力値への温度の影響が特殊な電気回路により補償されるように温度補償された圧力センサであることが好ましい。好ましくは、特殊な電気回路は、1つ、またはそれより多くの抵抗のような分離された部品にて構成される。したがって、測定の精度が向上する。
【0030】
ユーザーがコンタクトレンズを装着している時に、圧力センサがユーザーの眼に直接に接触することが有利である。このようなものであると、圧力センサと測定のための接触面との間に有益な接触が成立して、検出能力が向上する。
【0031】
本発明の好ましい態様によると、ユーザーがコンタクトレンズを装着している時に、圧力センサがユーザーの眼に間接的に接触する。したがって、圧力センサが眼の表面と直接に接触することから保護され、快適性が向上する。これにより、眼は、より適切な材料と接触し得る。
【0032】
好ましい形態においては、硬質インサートの凹面内側に形成されたくぼみ内に圧力センサが配置され、このくぼみには圧力センサを覆う圧力透過性充填剤が充填されていて、ユーザーがコンタクトレンズを装着している時に、圧力センサとコンタクトレンズ内面との間に充填剤の層が配置されるようになっている。これによれば、圧力センサは硬質インサートに直接接触しない。
【0033】
好ましくは、充填剤は、硬質部よりも柔らかい材料にて構成される。したがって、圧力センサを完全に機械的に絶縁することができる。
【0034】
本発明の好ましい態様によると、充填剤は軟質部の材料よりも柔らかい。このようなものであると、コンタクトレンズにおける軟質材料から伝達される径方向の力は、圧力センサでの影響または減衰を受けない。
【0035】
好ましい態様では、充填剤が軟質部と同じ材料にて構成されている。これによれば、本発明の装置がより簡単に製造される。
【0036】
本発明の好ましい態様によると、くぼみが、硬質部の中心に形成されている。したがって、コンタクトレンズのより厚い部位にくぼみが設けられる。
【0037】
好ましくは、くぼみの下におけるコンタクトレンズの内面が、硬質部の下における他の内面と比べて柔らかい表面を呈する。このようなものであると、減衰が低減された状態で眼圧が伝達される。
【0038】
本発明の好ましい態様によると、コンタクトレンズのくぼみの下の内面が、硬質部の下の他の内面と同等の柔らかさである。これによれば、圧力センサと眼との間の材料の不連続性無しに、硬質インサートからの機械的絶縁を達成する。
【0039】
有利には、コンタクトレンズの堅くなった内面が、柔らかい材料で製作されたコンタクトレンズの縁部で囲まれている。したがって、コンタクトレンズを簡単に眼の中心に配置することができる。
【0040】
圧力センサは、絶対圧センサまたはゲージ圧センサとすることができる。
【0041】
本発明の好ましい態様によると、コンタクトレンズの堅くなった内面に備えられた環状溝をさらに含む。このようなものであると、吸引力が付与される。
【0042】
吸引力を発生させる毛細管力は、液体―空気界面での引張力と、涙膜での圧力降下とにより与えられる。毛細管力の主要な要素は、涙膜の圧力降下により、そしてそのため吸引力は以下により近似される。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、Atear filmは、コンタクトレンズの内部にある涙膜により湿った領域、γは涙膜の表面張力、Θは涙膜とコンタクトレンズとの間の接触角、そしてtは涙膜の厚みである。
【0045】
本発明の第2の態様はキットに関し、このキットは、本発明の第1の態様である眼圧測定および/またはモニタリング装置を含むとともに、眼圧測定および/またはモニタリング装置と通信するため、および眼圧測定および/またはモニタリング装置から受けたデータを保存するための、携帯式の記録装置を含む。本発明におけるこのキットの特に有利な点は、本発明の第1の態様の装置の有利な点と類似している。この点についての説明はここでは繰り返さない。
【0046】
好ましくは、携帯式の記録装置は、無線誘導通信チャンネルによって、眼圧測定および/またはモニタリング装置に電力を供給するように構成される。したがって、これにより、眼の中に侵入する配線を使用することが防止される。
【0047】
上記に代えて、コンタクトレンズは、その内部への埋め込み式の小形化された電源を含むようにすることができる。
【0048】
本発明の第3の態様は、眼圧モニタリングシステムに関する。この眼圧モニタリングシステムは、本発明の第1の態様の眼圧測定および/またはモニタリング装置と、眼圧測定および/またはモニタリング装置との間で通信するための、および眼圧測定および/またはモニタリング装置から受けたデータを保存するための、携帯式の記録装置と、この携帯式の記録装置からデータを受け、および/またはこのデータを処理し、および/またはこのデータを保存するために、携帯式の記録装置と通信するよう構成された演算装置とを含む。本発明によるこのシステムの特に有利な点は、本発明の第1の態様の装置の有利な点と類似している。この点についての説明はここでは繰り返さない。
【0049】
携帯式の記録装置は、無線誘導通信チャンネルによって圧力測定および/またはモニタリング装置に電力を供給するように構成されていることが好ましい。
【0050】
好ましくは、眼圧モニタリングシステムは本発明の第1の態様の眼圧測定および/またはモニタリング装置を2つ含み、携帯式の記録装置は、2つの眼圧測定および/またはモニタリング装置と通信するように構成されるとともに、2つの眼圧測定および/またはモニタリング装置から受けたデータを保存するように構成される。
【0051】
さらに、本発明の眼圧測定および/またはモニタリング装置は、個々のユーザーに応じてカスタマイズされる必要はない。なぜなら、同装置は、異なる眼の形状とサイズとに容易に適合するように外形形状が変更された、可能な範囲の複数のサイズを備えることによって、多数の患者に適合させることができるためである。眼圧測定および/またはモニタリング装置は、ユーザーが不快感なく長期間装着することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】従来の眼圧計の原理を表す図である。
図2】圧力計を含む従来のコンタクトレンズの原理を表す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態を概略的に表す図である。
図4】本発明の第1の実施の形態をより詳細に表す図である。
図5】本発明の第2の実施の態様を概略的に表す図である。
図6】本発明の第3の実施の態様を概略的に表す図である。
図7】本発明の眼圧モニタリングシステムの例を概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明のさらなる特定の利点および特徴は、以下の、添付の図面を参照した本発明の少なくとも1つの実施の形態についての、以下の非限定的な説明から、より明らかになる。
【0054】
以下の詳細な説明は、本発明を非限定的な方法で例示することを意図する。なぜなら、以下の実施の形態におけるいずれの特徴も、異なる実施の形態における他の特徴と有利な方法によって組み合わせることができるためである。
【0055】
図1は従来技術においてよく知られた従前の眼圧計を示す。この眼圧計は、眼8の眼圧を検出するために眼の角膜に適用された力センサを含む。上記にて説明したように、この装置の欠点は、剛でしかも不快な性質であり、さらに単一の離散的な測定しか行えず、そして長時間の測定を行えないことである。
【0056】
図2は圧力センサを含んだ従来のコンタクトレンズを示し、これは、圧力センサを眼の角膜に接触して設置することで眼の眼圧を検知するところの、眼圧計として動作する。この図は、上述した先行技術文献である米国特許出願公開第2002/0159031号明細書と欧州特許文献第11764227.4号との装置に類似している。
【0057】
図3は本発明にもとづくコンタクトレンズ10の一般的でとても概略的な図を示し、このコンタクトレンズ10は、堅くされた中心部12と、軟質部11と、縁部13とを含んで、眼8の上に設置されている。内側の堅くされた表面の曲率半径が眼8の曲率半径よりも大きいことが明確に現れており、それによって使用時に眼の角膜を平らにして、圧力センサ2の周りで圧力平衡に達するようにされている。
【0058】
図3には、硬質部と圧力センサとは示されていない。そのようにすることで、レンズの拡大力に影響するところの、堅くされた内面101の曲率半径が、外面102曲率半径よりも大きいことを、明確に見ることができるためである。この図は、コンタクトレンズの縁部13に囲まれた、コンタクトレンズ10の堅くなった内面101もまた、明確に描いている。縁部13は、コンタクトレンズを中心に配置させるとともに安定させるところの柔らかい材料により製作されている。
【0059】
図4は測定および/またはモニタリング装置1をより詳細に示す。本発明の第1の実施の形態によれば、この装置はソフトコンタクトレンズのようなコンタクトレンズ10と圧力センサ2とを有する。コンタクトレンズ10は、内面101と外面102とを有する。圧力センサ2は、コンタクトレンズ10と一体となって、コンタクトレンズ10がユーザーに装着された時に、ユーザーの眼8の眼圧を感知するように眼8に対して適用されるように配置されている。
【0060】
コンタクトレンズ10は軟質部11と硬質部12とを含む。硬質部12は、好ましくは図4に示されるような硬質インサートであって、コンタクトレンズ10の内面101を少なくとも部分的に堅くするようにされるとともに、コンタクトレンズ10がユーザーに装着された時に圧力センサ2の周囲が圧力平衡に達するように眼の表面における少なくとも圧力センサ2と接触する部位を平らにするために、堅くなった内面101に曲率半径を付与している。
【0061】
コンタクトレンズ10の堅くなった内面のちょうど外側において、コンタクトレンズ10の内面101に環状溝14が形成されている。
【0062】
圧力センサ2は、例えば、セラミック、ガラス、またはシリコーンキャリア上のピエゾ感圧式の微細加工圧力センサにて構成された、小形化された圧力センサである。圧力センサ2は、絶対圧センサまたはゲージ圧センサのいずれかである。
【0063】
本発明の圧力モニタリング装置にゲージ圧センサを使用する利点は、仮に隔膜の後ろ側の近傍の圧力が周囲圧力または大気圧に相当すれば、圧力センサにより測定された圧力は、本質的には眼圧に相当し、例えば高度および/または天気の条件の変化による周囲圧力または大気圧に影響されないことにある。
【0064】
一方、本発明の圧力モニタリング装置に絶対圧センサを使用する利点は、製造時にコンタクトレンズの中に埋め込むことがより簡単となることにある。
【0065】
図示のように、軟質部11は硬質部12を少なくとも部分的に囲む。硬質部12は、一般的にメニスカスまたは凹凸レンズ形状を有し、そして軟質部11と比較して小寸法であり、そしてコンタクトレンズの中心に位置される。好ましくは、コンタクトレンズ10の軟質部11の材料は、ユーザーがコンタクトレンズ10を装着している時に、眼8の形状に適合した形状とされ、コンタクトレンズ10を眼8の中心に配置させ、そしてコンタクトレンズを接線すべり方向に安定させる。
【0066】
ここで、硬質部12という語は、コンタクトレンズの部位を堅くするためにコンタクトレンズ内に埋め込まれた実際の硬質インサートを意味するが、堅くなり得る部位をも意味することを理解すべきである。堅くなり得る部位は、好ましくはレンズの中心にあり、インサートまたは堅くなった部位により実際に堅くされる。
【0067】
軟質部の好ましい材料は、任意の好ましくは透明で柔らかい材料を含む一群から選択されたいずれか1つである。このような透明で柔らかい材料としては、ハイドロゲル、シリコーンハイドロゲル、シリコーン、コンタクトレンズにふさわしい他の柔らかい材料、を含むグループが挙げられる。
【0068】
一方で、硬質部の好ましい材料は、任意の好ましくは透明な材料を含む一群から選択されたいずれか1つである。このような透明な材料としては、それらの形状を角膜に押しつけるのに十分な剛性を有するところの、ポリマー、セラミック、ガラス、金属、RGPなどが挙げられる。この材料は、組み立てられる(硬質インサート)前に成形されることができるか、または組み立て工程時に成型されることができる。
【0069】
上記に代えて、前記コンタクトレンズの軟質部と硬質部とのいずれか1つは、剛性を調整可能な材料、もしくは剛性勾配を有する材料より作製される。そのような材料の例は、エラストマー複合材料の弾性剛性を可逆的に調整するために相変化金属合金または形状記憶ポリマーが埋め込まれたエラストマー複合材料を含み得る。例えば、低融点のフィールドの金属と、液相ガリウム−インジウム−スズ合金(Galinstan:登録商標)の蛇行流路とで構成される電気ジュールヒーターとのシートを埋め込むことができる。室温では、埋め込まれたフィールドの金属は個体であり、複合材は弾性的に剛のままである。ジュール加熱によって、フィールドの金属を溶かして、囲んでいるエラストマーを自由に伸ばしたり曲げたりすることを許容する。
【0070】
もう1つの例として、剛性を調整可能なシリコーンエラストマーが挙げられる。ここで、シリコーン材料の剛性を調整する能力は、配合物の化学的性質、ネットワーク形成、および架橋密度を注意深く制御することによって作られる。
【0071】
図4では、ユーザーがコンタクトレンズ10を装着している時に圧力センサ2がユーザーの眼と直接接触しており、このような場合のコンタクトレンズ10の内面101が示されている。
【0072】
しかしながら、これは必ずしも必須のものではない。なぜなら図5に示すように、硬質部12の凹面内側に形成されたくぼみ121内に圧力センサ2を配置することができ、そしてくぼみ121に透明な圧力充填剤122が充填されて圧力センサ2を覆うことで、ユーザーがコンタクトレンズ10を装着している時に、充填剤122の層が圧力センサ2と眼8の表面との間に配置されるためである。この場合、ユーザーがコンタクトレンズ10を装着している時、圧力センサ2は、間接的に眼と接触している。充填剤122は、硬質部12よりも柔らかい材料とすることができ、軟質部11よりも柔らかい材料とすることもできる。この場合、コンタクトレンズ10のくぼみ121の下の内面101が、硬質部12の下の他の内面101と比べて柔らかい表面を呈する。これに代えて、充填剤122は、軟質部11と同じ柔らかさとすることができ、軟質部11と同じ材料とすることもできる。
【0073】
図6は、多数の貫通穴123を含む硬質部12の特定の態様を示す。この図に示されるように、コンタクトレンズ10はマイクロプロセッサ5とアンテナ4とをさらに含み、これらは、遠隔的な電力の供給と、演算ユニットとの間におけるデータ転送とのためのものである。
【0074】
図6に描かれた態様では、圧力センサ2はコンタクレンズ10の中心部に配置されている。この態様によれば、関連して、圧力センサ2は、例えばコンタクトレンズ10の中心部に形成された例えば円、くぼみに配置される。これに代えて、くぼみ121は、コンタクトレンズ10に対して非対称であり(表示されていない)、例えば円形の中心部からずれたくぼみ、環状に近い形の溝、または他のいずれかの適合形状とすることができる。この場合は、マイクロプロセッサ5は例えばコンタクトレンズ10の中側に配置される。
【0075】
しかしながら、圧力センサ2、および/または、圧力測定および/またはモニタリング装置1の他の要素をコンタクトレンズ10に配置するために、本発明の範囲において他のくぼみ形状および/または配置とすることが可能である。
【0076】
また、この図では、圧力センサ2は、この圧力センサの出力値への温度の影響が特殊電気回路により補償されるように温度補償された圧力センサである。この例では、これは溝21の中に配置された1つ以上の抵抗のような、分離された部品にて構成される。もちろん、これはほんの一例であり、他のいずれかの配置型式の補償回路を使用することもできる。
【0077】
ここには表現されていないが、本発明の装置は、精密な測定のために複数の圧力センサ2を含むことができる。
【0078】
実験データにもとづいて、本発明の発明者らは、温度が測定結果を変更してしまう可能性があることに気づいた。したがって圧力センサ2は、この圧力センサ2の出力値への温度の影響が特殊な電気回路により補償されるところの、温度補償圧力センサであることが好ましい。
【0079】
好ましい実施の形態では、眼圧測定および/またはモニタリング装置1は、特にマイクロプロセッサ5および/または圧力センサ2は、例えば携帯式の記録装置6によりアンテナを通じて無線誘導で電力が供給される。異なる実施の態様では、圧力測定および/またはモニタリング装置は、マイクロプロセッサ5および/または圧力センサ2に電力供給するために、例えばバッテリー、または小型燃料電池、または赤外線電池もしくは太陽電池のようなエネルギ源、といった電源を含む。
【0080】
本発明のもう1つの態様は、上述の眼圧測定および/またはモニタリング装置1と、この眼圧測定および/またはモニタリング装置1との間で通信し、および、眼圧測定および/またはモニタリング装置1から受けたデータを保存するように構成された携帯式の記録装置6とを含むキットである。好ましくは、携帯式の記録装置6は、無線誘導式の通信チャンネル15によって眼圧測定および/またはモニタリング装置1に電力を供給するように構成される。もしキットが2つ以上の圧力センサ含んでいたら、携帯式の記録装置6は、すべての眼圧測定および/またはモニタリング装置1と通信するように、およびすべての眼圧測定および/またはモニタリング装置1から受けたデータを保存するように構成される。
【0081】
本発明のもう1つの実施態様は、上述の眼圧測定および/またはモニタリング装置1と、この眼圧測定および/またはモニタリング装置1と通信するように、および眼圧測定および/またはモニタリング装置1から受けたデータを保存するように構成された携帯式の記録装置6と、この携帯式の記録装置6との間で通信するように構成されて、この携帯式の記録装置6からデータを受け、および/または処理し、および/または保存するように構成された演算装置7とを含む眼圧モニタリングシステムである。
【0082】
図7は、本発明の眼圧測定よび/またはモニタリング装置1を用いた代表的な眼圧モニタリングシステムを概略的に示す。図示の実施の形態の眼圧モニタリングシステムは、本発明の眼圧測定および/またはモニタリング装置1と、この眼圧測定および/またはモニタリング装置1と通信するため、および眼圧モニタリング期間中に収集した情報を保存するための携帯式の記録装置6と、この携帯式の記録装置6によって収集されかつ保存されたデータを、保存し、および/または解析し、および/または表示するための、例えばパーソナルコンピュータである演算装置7とを含む。
【0083】
携帯式の記録装置6は、眼圧測定および/またはモニタリング装置1と通信するための第1の通信インターフェースを含む。この第1の通信インターフェースは、例えば無線通信インターフェースで、眼圧測定および/またはモニタリング装置1がユーザーに装着された時にコンタクトレンズの近くに有利に配置されるアンテナ60を含む。アンテナ60は、図の中には表現されていないが、例えば眼鏡に統合されたものであり、および/または、これも図には表現されていないが、例えば使い捨てで折り曲げ可能な低刺激性の眼帯であって、眼圧モニタリング期間中にユーザーにより装着されるものである。しかしながら、眼圧測定および/またはモニタリング装置1がユーザーに装着された時にこの装置1から適当な距離をおいた位置にアンテナ60を設置するようにした他の手段も、本発明の範囲内とすることができる。携帯式の記録装置6は、さらに、演算装置7と通信するための第2の通信インターフェースを含む。
【0084】
眼圧をモニタリングする時、ユーザーは、ちょうど通常のコンタクトレンズのように、本発明にもとづくコンタクトレンズを眼に配置することで、圧力測定および/またはモニタリング装置1を装着するとともに、携帯式の記録装置6を携行する。アンテナ60は、圧力測定および/またはモニタリング装置1と記録装置6との間の第1の無線通信チャンネル15を成立させるために、圧力測定および/またはモニタリング装置1を装着しているユーザーの眼に対して可能な限り近くに配置される。好ましくは、アンテナ60は、本発明の圧力測定および/またはモニタリング装置1のアンテナの面に対して可能な限り平行な面に方向を合わせられる。これは、例えば近距離誘導通信チャンネル15のような通信チャンネル15を通じてマイクロプロセッサ5および/または圧力センサ2に効率の良い電力供給を行うことができるようにするためである。アンテナは、例えば眼鏡および/または眼を囲む眼帯の中に、例えば使い捨てで、折り曲げ可能で、しかも低刺激性の眼帯の中に、および/または、ユーザーに装着される帽子や衣服における別の部分やアクセサリーの中に、統合される。好ましくは、圧力測定および/またはモニタリング装置1と携帯式の記録装置6との両方がユーザーに装着されている時に、アンテナ60は、圧力測定および/またはモニタリング装置1のアンテナと中心を合わせられる。携帯式の記録装置6のアンテナ60の直径は、好ましくは圧力測定および/またはモニタリング装置1の直径よりも大きい。携帯式の記録装置6のアンテナ60の形状は、例えば円形、楕円形、矩形、または他のいずれかの適当な形状である。携帯式の記録装置6のアンテナ60の形状は、好ましくはそれが取り付けられている例えば眼鏡、眼帯、衣類の一部などの部材の形状に適合される。
【0085】
本発明の実施の形態によれば、眼圧をモニタリングしている時に、携帯式の記録装置6は、例えば一定の時間間隔で第1の通信チャンネル15を通じて圧力測定および/またはモニタリング装置1に電力を供給し、また圧力測定および/またはモニタリング装置1のアンテナを通じてマイクロプロセッサ5から送信されたデータを収集する。収集されたデータは、例えば圧力センサ2のゲージの電気抵抗値、および/または圧力測定および/またはモニタリング装置1のマイクロプロセッサ5により演算された眼圧値を含む。収集されたデータは、携帯式の記録装置6の内部メモリーに保存される。眼圧は、例えば5から10分ごとに、10から60秒間に、10から20Hzの頻度で測定される。これにより、ユーザーが寝ている間の夜を含む、長時間にわたる眼圧変化の正確なモニタリングを可能とする。
【0086】
時間内のいくつかの好ましい所定の時点、例えば日に1度、週に1度、月に1度に、ユーザーおよび/または施術者が、携帯式の記録装置6に、例えばパソコンである演算装置7を、好ましくは例えばブルートゥース通信チャンネルのような無線式の第2の通信チャンネル16で接続する。第2の通信チャンネル16は、しかしながら、例えばUSBや他のいずれかの適当な通信チャンネルによる配線式の通信チャンネルとすることもできる。携帯式の記録装置6の内部メモリーに収集されて保存されたデータは、次いで、ユーザーおよび/または施術者により、さらなる解析および/または演算のために、第2の通信チャンネル16を通じて演算装置7に転送される。
【0087】
他の実施の形態では、眼圧モニタリングシステムは、例えば長時間、患者の両目を同時にモニタリングするための2つの圧力測定および/またはモニタリング装置1を含む。好ましくは、両方の圧力測定および/またはモニタリング装置1は、同時および/または、交互に、例えば2つのアンテナに接続された、および/または2つのアンテナを含む、同一の携帯式の記録装置6と通信する。これによって、携帯式の記録装置6は、好ましくは両方の眼圧測定および/またはモニタリング装置1から受けたデータを保存または記録する。
【0088】
実施の形態が数ある形態の結合で表現されたが、当該技術分野の当業者にとっては、多くの代替、修正、変更は、明白なものであろう、または明白である。したがって、本開示は、同開示の範囲内のすべてのそのような代替、修正、同等、変更のすべてを包含することを意図している。これは、例えば、使用することができる別の装置の場合について特に当てはまる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】