(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-531982(P2021-531982A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】材料剪断における制御されたクラック伝播のための入射放射線による表面下損傷
(51)【国際特許分類】
B23K 26/53 20140101AFI20211029BHJP
【FI】
B23K26/53
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2021-527028(P2021-527028)
(86)(22)【出願日】2019年7月26日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月29日
(86)【国際出願番号】US2019043774
(87)【国際公開番号】WO2020023929
(87)【国際公開日】20200130
(31)【優先権主張番号】62/703,642
(32)【優先日】2018年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521035831
【氏名又は名称】ハロー インダストリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HALO INDUSTRIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】イアンク、アンドレイ テオドル
(72)【発明者】
【氏名】ルディ、チャールズ ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB01
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA43
4E168EA14
4E168JA12
4E168JA13
(57)【要約】
剪断システムのシェーパは、ワークピースを定義された幾何学的形状に成形する。次に、ポジショナは、内部準備システムが剪断面に分離層を生成可能なようにワークピースを位置決めする。内部準備システムは、ワークピースの内部においてレーザービームを焦点に集束させ、剪断面を横切るように焦点をスキャンすることによって分離層を生成する。外部準備システムは、分離層と一致する位置でワークピースの外面に切り込みを入れる。剪断機は、分離層に沿って外面のクラックを伝播させることによってワークピースを剪断する。クロッパーは、必要に応じて剪断片を幾何学的形状に成形する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料のワークピースを剪断するための方法であって、前記方法は、
内部準備システムによって生成されたレーザーを使用して、前記ワークピース内に前記ワークピースの残りの材料とは異なる材料特性を有する分離層を生成することと、
外部準備システムを使用して前記ワークピースに切り込みを入れ、前記分離層と一致する少なくとも一点において前記ワークピースの外面にクラックを生成することと、
剪断機を使用して前記ワークピースを剪断し、前記分離層に沿って前記クラックを伝播させる、前記分離層の少なくとも一部に垂直な引張力を前記ワークピースに発生させることにより、剪断片を生成することと、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、
成形システムを使用して、前記剪断片が定義された幾何学的形状の断面に等しい境界を有するように、前記ワークピースを前記定義された幾何学的形状に成形することをさらに含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、
コントローラを使用して、前記ワークピース内の剪断面の位置を決定することと、
ポジショナを使用して、前記剪断面と前記分離層とが一致するように前記ワークピースを位置決めすることと、をさらに含む方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記分離層を生成することは、
前記ワークピースの内部のフットプリントに前記レーザーを集束させることであって、前記レーザーのパルスは、前記フットプリントにおいて前記ワークピースの材料特性を局所的に変化させることをさらに含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記分離層を生成することは、
前記ワークピース内で前記レーザーの焦点を移動させて前記分離層を生成することであって、前記分離層は、前記ワークピース内での移動に伴って前記焦点において局所的に変化された材料の集合体として形成されることをさらに含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記ワークピースを剪断することは、
前記ワークピースの両端に前記剪断機を取り付けることと、
前記分離層に沿って前記クラックを伝播させる引張力を生成することであって、前記引張力は、前記ワークピースの両端間で前記分離層の少なくとも一部に垂直に生成されることと、を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記剪断機は前記ワークピースの両端に静電的に取り付けられている方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、
クロッパーを使用して、前記剪断片を特定の幾何学的形状に切り取ることをさらに含む方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、
前記レーザーを使用して、前記ワークピース内に異なる材料特性を有する別の分離層を生成することをさらに含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記方法は、
前記剪断機を使用して、前記別の分離層に沿って前記ワークピースを剪断し、別の剪断片を生成することをさらに含む方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記レーザーはパルスレーザーであり、前記内部準備システムは少なくとも100kHzの繰り返し率でレーザーパルスを生成する方法。
【請求項12】
材料のワークピースを剪断するためのシステムであって、前記システムは、
前記ワークピース内に分離層を生成するためのレーザービームを生成するように構成された内部準備システムであって、前記分離層は前記ワークピースの残りの材料とは異なる材料特性を有する内部準備システムと、
前記分離層と一致する少なくとも一点において前記ワークピースの表面にクラックを生成するように、前記ワークピースに切り込みを入れるように構成された外部準備システムと、
前記分離層に沿って前記クラックを伝搬させる、前記分離層の少なくとも一部に垂直な引張力を前記ワークピースに発生させることにより、前記ワークピースの剪断片を生成するように構成された剪断機と、を備えるシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記システムは、
前記剪断片が定義された幾何学的形状の断面に等しい境界を有するように、前記ワークピースを前記定義された幾何学的形状に成形するように構成されたシェーパをさらに備えるシステム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムであって、前記システムは、
前記ワークピース内の剪断面の位置を決定するように構成されたコントローラと、
前記剪断面と前記分離層とが一致するように前記ワークピースを位置決めするように構成されたポジショナとをさらに備えるシステム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムであって、前記内部準備システムは、
前記ワークピースの内部のフットプリントにレーザーを集束させるように構成された集束システムをさらに備え、前記レーザーのパルスは、前記フットプリントにおいて前記ワークピースの材料特性を局所的に変化させるシステム。
【請求項16】
請求項12に記載のシステムであって、前記内部準備システムは、
前記ワークピース内でレーザーの焦点を移動させて前記分離層を生成するように構成された集束システムをさらに備え、前記分離層は、前記ワークピース内での移動に伴って前記焦点において局所的に変化された材料の集合体として形成されるシステム。
【請求項17】
請求項12に記載のシステムであって、前記剪断機はさらに、前記ワークピースの両端に取り付けられるとともに、前記分離層に沿って前記クラックを伝播させる引張力を生成するように構成され、前記引張力は、前記ワークピースの両端間で前記分離層の少なくとも一部に垂直に生成されるシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記剪断機は、前記ワークピースの両端に静電的に取り付けられるように構成されているシステム。
【請求項19】
請求項12に記載のシステムであって、前記システムは、
前記剪断片を特定の幾何学的形状に切り取るように構成されたクロッパーをさらに備えるシステム。
【請求項20】
請求項12に記載のシステムであって、前記内部準備システムはさらに、レーザーを使用して、前記ワークピース内に異なる材料特性を有する別の分離層を生成するように構成されているシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムであって、前記剪断機はさらに、前記別の分離層に沿って前記ワークピースを剪断し、別の剪断片を生成するように構成されているシステム。
【請求項22】
請求項12に記載のシステムであって、前記内部準備システムによって生成される前記レーザービームは、少なくとも100kHzの繰り返し率で生成されるパルスを有するパルスレーザービームであるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して材料処理に関し、より具体的には、入射放射線を使用して剪断用のワークピース及びワークピースの剪断を準備することに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体は、その独自の特性、多くの用途、そして現在広く使用されていることから、エレクトロニクス及び太陽光発電業界において重要かつ価値のある材料である。半導体はしばしばウェハの形で使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在のウェハの製造方法には無駄があり、最大50%の材料損失が生じる場合がある。大きな半導体インゴット/ブロックを薄いウェハの形に機械的にワイヤソーイングすることは業界標準であるが、ソーワイヤによるカーフロスは避けられない。ソーイングはまた、結果物のウェハの表面に損傷を残すため、多くの用途に必要とされる高品質のウェハを実現するために、損傷した材料の除去及びそれに続く表面仕上げが必要となる。ウェハの表面を仕上げるために研磨及び機械的研削がよく使用されるが、これらの後処理ステップによってウェハからさらに多くの材料が除去され、全体的な材料損失がさらに増加する。半導体ウェハの製造中の材料損失が大きくなると、目的の用途に使用可能な半導体材料が少なくなり、ウェハあたりのコストが高くなる。同様の議論は、様々な用途で幅広い産業において使用される高品質の絶縁体(例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等)についても適用され得る。
【0004】
クラック伝播による材料ワークピースの剪断は、材料損失がほとんどないため、現在のウェハ処理方法の有望な代替手段である。さらに、このタイプの剪断は、より高品質のウェハ表面をもたらし、高品質の表面仕上げを達成するための後処理ステップの必要性を潜在的に低減または排除することがわかっている。しかしながら、そのような剪断方法によってウェハを効率的に製造することは非常に難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の技術と比較して少ない力でワークピースを一つ以上の剪断片に正確に剪断するための剪断システムについて記載する。剪断システムは、シェーパ、ポジショナ、内部準備システム、外部準備システム、剪断機、及びクロッパーを含む。
【0006】
剪断システムは、剪断片を生成するための様々な方法を採用し得る。例えば、シェーパはワークピースを円柱等の定義された幾何学的形状に成形する。このようにして剪断システムによって生成された剪断片はいずれも、定義された幾何学的形状(例えば、円)の断面を有し得る。剪断システムは、ワークピース内部の剪断面の位置を決定する。次に、ポジショナは、内部準備システムが剪断面に分離層を生成可能なようにワークピースを位置決めする。
【0007】
分離層を生成するために、内部準備システムは、焦点においてワークピースの内部にレーザービームを集束させ、機械的特性が変化したワークピース内の局所領域(フットプリント)を生成する。内部準備システムは、剪断面を横切るようにレーザービームをスキャンし、多くのフットプリントを生成することで分離層を生成する。分離層は、分離層を囲む材料とは構造的に異なるワークピース内の材料の層である。分離層と周囲の材料との間の構造的相違により、ワークピースを剪断片に剪断することが容易となる。ワークピースの内部に複数の分離層が生成されてもよい。
【0008】
外部準備システムは、分離層と一致する位置でワークピースの外面に切り込みを入れる。次に、剪断機は、分離層に沿ってその外面のクラックを伝播させることにより、ワークピースを剪断する。より具体的には、剪断システムはワークピースの両端に引張力を加え、それが分離層の異なる材料に沿ってクラックを伝播させ、それによって剪断片が生成される。クロッパーは、必要に応じて剪断片を任意の幾何学的形状に成形する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による、ワークピースを剪断するためのシステムを示す。
【
図2】一実施形態による、ワークピースを剪断するための剪断システムを示す。
【
図3】一実施形態による、内部準備システムを示す。
【
図5】一実施形態による、ワークピースを剪断するためのプロセスフローである。
【
図6】一実施形態による、ワークピースの内部に分離層を生成するためのプロセスフローである。
【
図7A】一実施形態による、ワークピースの内部の分離層の生成を示す。
【
図7B】一実施形態による、ワークピースの内部の分離層の生成を示す。
【
図7C】一実施形態による、ワークピースの内部の分離層の生成を示す。
【
図7D】一実施形態による、ワークピースの内部の分離層の生成を示す。
【
図8A】一実施形態による、ワークピース内に分離層を生成するフットプリントを示す。
【
図8B】一実施形態による、ワークピースの内部の分離層を示す。
【
図8C】一実施形態による、ワークピースの内部の分離層を示す。
【
図9】一実施形態による、複数の分離層を有するワークピースを示す。
【
図10A】一つ以上の分離層140に沿って剪断されたワークピースの例を示す。
【
図10B】一つ以上の分離層140に沿って剪断されたワークピースの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これらの図は、例示のみを目的としており、本発明の様々な実施形態を示している。当業者は、以下の説明から、本明細書に記載の本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に示す構造及び方法の代替の実施形態を採用可能であることを容易に認識するであろう。
【0011】
システム概要
図1は、一実施形態による、ワークピース130を剪断するためのシステム環境100を示している。環境100は、システムコントローラ120、剪断システム110、及びワークピース130を含む。環境100内において、システムコントローラ120は、ワークピース130の剪断面160を決定する。システムコントローラ120は、剪断システム110を制御して、剪断面160に沿ってワークピース130内に分離層140を生成する。そのために、剪断システム110はワークピース130内にフットプリント150を生成し、これにより、ワークピース130を剪断する剪断システム110の動作を促進する。次に、システムコントローラ120は、分離層140に沿ってワークピースを剪断するように剪断システム110を制御する。
【0012】
剪断システム
図2は、環境100内の剪断システム110を示している。剪断システム110は、ワークピース130を二つ以上の断片に剪断する。ワークピース130が半導体インゴットである場合、剪断システム110は、半導体インゴットを一つ以上の半導体ウェハに剪断することができる。
【0013】
剪断システム110は、シェーパ210、ポジショナ220、内部準備システム230、外部準備システム240、剪断機250、及びクロッパー260を含む。
シェーパ210は、ワークピース130が剪断システム110によって剪断され得るように、ワークピース130を成形する。ワークピース130の成形は、ワークピース130を、円柱形状、矩形プリズム、または他の何らかの形状のような既知の幾何学的形状に成形することを含み得る。いくつかの例では、ワークピース130の成形は、ワークピース130からの材料の追加または除去のいずれかを含み得る。ワークピース130からの材料の除去は、鋸、グラインダー、エッチングプロセス、またはワークピース130から材料を除去可能な他の何らかの器具またはプロセスによって実現することができる。ワークピース130への材料の追加は、化学蒸着、熱酸化、原子層堆積、またはワークピースに材料を追加する他の任意の方法によって実現することができる。場合によっては、成形されたワークピース130は、外部の供給元またはベンダーから受け取ってもよい。いずれにせよ、成形されたワークピース130は、剪断システム110によって剪断可能な形状を有する。
【0014】
ワークピース130の形状は、剪断片の所望の形状に基づいて選択される。いくつかの例には、同じ形状の断片を生成するための、円形、長方形、正方形、または疑似正方形の断面積を有するワークピース130が含まれる。他の例では、ワークピース130の形状は、生成された断片の形状とは異なる。商業的に実行可能な断片(例えば、ウェハ)の形成においては、業界標準に準拠することが好ましい場合がある。例えば、4インチ(100ミリメートル)の円形ウェハは標準化された一般的に使用されるタイプのウェハであるため、このようなウェハを形成するために使用されるワークピース130は、4インチ(100ミリメートル)の直径の円の断面積を有する円柱形となるであろう。円形ウェハのその他の標準的な直径には、1インチ(25ミリメートル)、2インチ(51ミリメートル)、3インチ(76ミリメートル)、5.9インチ(150ミリメートル)、7.9インチ(200ミリメートル)、11.8インチ(300ミリメートル)、及び17.7インチ(450ミリメートル)が含まれる。疑似正方形ウェハの標準的な一辺の長さには、125ミリメートル及び156ミリメートルがあり、それぞれ直径165ミリメートル及び210ミリメートルの円柱形の断片から製造される。さらに、ワークピース130は、業界標準によるノッチまたはフラットを含み得る。これらの特徴は、単結晶の場合、材料の結晶構造の方向を示すことができる。例えば、n−ドープ(100)シリコンウェハは、互いに平行な二つのフラットを有しており、円柱形状の長さの両側に二つの平行なフラットが切断形成された円柱形のワークピース130から生成することができる。
【0015】
さらに、クロッパー260は、剪断機250がワークピース130を剪断した後、剪断片を所望の幾何学的形状に正確に切り取ることができる。これにより、剪断システム110は、ある形状であるワークピース130を剪断して、最終的な幾何学的形状の剪断片を生成することができる。例えば、剪断機250は、正方形のワークピース130を剪断するように構成される。このように、シェーパ210はワークピース130を正方形に成形して、ワークピース130を正方形のウェハに剪断する。しかしながら、この場合において、ウェハの望ましい形状は円形である。よって、クロッパー260は、正方形のウェハを所望の幾何学的形状である円形のウェハの形に切り取る。クロッパー260は、レーザー切断、ウェハソーイング、化学エッチング、ウォータージェット切断等を含むがこれらに限定されない、ウェハから材料を除去する任意の方法を通じてその機能を達成する。
【0016】
さらに、ワークピース130は、ワークピース130の二つの表面が剪断面160に平行になるように成形することができる。剪断面160は、分離層140によって事前定義されるとともに、システムコントローラ120によって決定され、剪断機250がそれに沿って剪断を行うワークピース130の面である。様々な実施形態において、剪断面は、二次元面以外のトポロジー面であり得る。二つの表面は、剪断機250がワークピース130をより効率的に剪断することができるように、剪断面160に平行であり得る。このプロセスの例は、
図7A〜
図8Cに関連してより詳細に説明されている。一般に、これら二つの表面または面は、ワークピース130の対向する端部にある。例えば、インゴットの長軸が(100)結晶面に垂直である円柱形の単結晶シリコンインゴットであるワークピース130の場合、シェーパ210はワークピース130を、インゴットの両端に同じ(100)結晶学的方向を有する二つの面を有するように成形することができる。
【0017】
成形されたワークピース130の外面は、表面に粗さが残っている場合がある。よって、いくつかの構成では、シェーパ210はその表面の粗さを低減することによって、剪断のためにワークピース130の表面を準備する。様々な実施形態において、シェーパ210は、機械的研磨、化学機械的研磨、ウェットエッチングプロセス(例えば、化学エッチングプロセス)、ドライエッチングプロセス(例えば、反応性イオンエッチング)、熱表面リフロープロセス、または剪断のためにワークピース130の表面を準備可能な他の任意のプロセスを使用して表面を準備する。
【0018】
ポジショナ220は、剪断プロセス中にワークピース130及び/または剪断システム110を位置決めする。一例では、ポジショナ220は、剪断システム110を静止させたままで、ワークピース130を位置決めする。あるいは、ポジショナ220は、ワークピース130を静止させたままで、剪断システム110を位置決めする。場合によっては、ポジショナ220は、剪断システム110及びワークピース130の両方を同時に位置決めする。最も一般的には、ポジショナ220は、剪断システム110及びワークピース130を適切に位置合わせすることによって、ワークピース130の剪断を容易にする。ポジショナ220は、ワークピース130または剪断システム110を位置決めすることが可能な任意の数の要素であり得る。例えば、ポジショナ220は、ワークピース130及び剪断システム110の位置を検出するための適切な感知要素、並びに後続の処理のためにそれらを正確に位置決めするために必要な制御システムとともに、モータ、位置決めステージ、圧電素子、及び取り付け固定具等の構成要素を含み得る。
【0019】
内部準備システム230は、分離層140を生成することによって、剪断のためにワークピース130を準備する。分離層140は、分離層140の平面に沿った剪断を容易にする、周囲の材料とは異なるワークピース130内の材料の層である。一般に、分離層140は剪断面160と同一平面上にあるか、またはそれと同じ配向を有する。分離層140を生成するために、内部準備システム230はレーザービームを生成し、ワークピース130の内部の焦点(すなわち、フットプリント150)にレーザービームを集束させる。他の構成では、内部準備システムは、ワークピース130の内部にフットプリント150を生成し得る他の任意のタイプの入射放射線を生成することができる。一般に、レーザーはフットプリント150においてワークピース130の構造を変化させて、材料を局所的に弱くし、それによってクラック伝播のための好ましい位置を生成する。ワークピース130の構造は、フットプリント150以外のいかなる位置でも実質的に変化されていない。一例として、内部準備システム230は、フットプリント150において、その領域のワークピース130の材料を溶融する量の熱エネルギーを生成することができる。
【0020】
ポジショナ220と連携して動作する内部準備システム230は、剪断面160に沿ってワークピース130内にフットプリント150を生成する。このように、フットプリント150は、全体として剪断面160内のワークピース130の構造を変化させて、分離層140を生成する。分離層140内のワークピース130の構造は分離層140を囲む構造とは異なるため、ワークピース130は分離層140の面に沿って剪断されやすい。分離層140を生成するプロセスは、
図6に関連してより詳細に説明されている。
【0021】
図3は、内部準備システム230をより詳細に示している。内部準備システム230は、レーザー光源310、ビームシェーパ320、フットプリント位置決め要素330、及びワークピース形状補正光学系340を含む。
【0022】
レーザー光源310は、ある繰り返し率で放射線のパルスを生成する。繰り返し率は通常少なくとも100kHzであるが、より低い繰り返し率とすることもできる。レーザーパルスは、コリメートされた対称レーザービームを形成する。レーザービームは、ワークピース130の材料の電子バンドギャップよりも長い波長を有しており、その結果、レーザーがワークピース130に入る時、ワークピース130の材料は電子的に励起されない。一般に、レーザー光源310は、例えば0.2〜20μmの間の波長を有する。これにより、内部準備システム230は、例えば0.1〜10eVの間の電子バンドギャップを有するワークピース130のための分離層140を生成することができる。
【0023】
一実施形態では、ビームシェーパ320は、非対称レーザービームを生成する。ビームシェーパ320の光学系は、非対称レーザービームを生成する円筒形テレスコープとして動作することができる。非対称レーザービームは、ワークピース130に焦点を合わせた時に、より大きなフットプリント150を生成することを可能にする。単一のパルスからより大きなフットプリント150を生成することにより、同じレーザー繰り返し率で分離層140をより速く製造することが可能となる。非対称ビームはまた、より薄い分離層140の生成を可能にし得る。より薄い分離層140は、剪断機250がより弱い力を利用してワークピース130を剪断することを可能にし、結果として分離された表面に生じる粗さをより少なくする。一実施形態では、非対称レーザービームの長軸は、ワークピース130の長軸に平行である。別の実施形態では、非対称レーザービームの長軸は、ワークピース130の長軸に垂直である。レーザービームは、ビームシェーパ320の後に再コリメートされ得る。一部のワークピース形状では、非対称レーザービームは必要ない場合もある。
【0024】
フットプリント位置決め要素330は、ワークピース130内のフットプリント150にレーザービームを集束させる。一般に、剪断面160内のフットプリント150の幾何学的形状は構成可能なものであり、分離層140の厚さを決定するフットプリント150の厚さは、例えば20μm未満であるが、他の任意のサイズであってもよい。一実施形態では、フットプリント位置決め要素330は、回転対称な正の焦点距離の光学系である。フットプリント位置決め要素330は、レーザービームの伝搬軸に沿って移動可能である。この軸に沿ったフットプリント位置決め要素330の移動は、ワークピース130内のフットプリント150の深さを同じ軸に沿って変化させることを可能にする。
【0025】
一実施形態では、ワークピース130及びワークピース形状補正光学系340は、フットプリント位置決め要素330に対して一斉に移動されて、ワークピース130内のフットプリント150の深さをも変化させることができる。場合によっては、ワークピース130内のフットプリント150の深さは、例えば1mmをはるかに超えた値であり得る。ワークピース130内のフットプリント150の深さは、ワークピース130の材料の光透過率と、平均パワー、ピークパワー、及び波長等のレーザーパラメータとによってのみ制限される。ワークピース130の材料特性は、ワークピース130内におけるフットプリント150の生成を可能にするレーザーパラメータ(すなわち、波長、ピークパワー、平均パワー)に影響を与える。例えば、第一の波長を有するレーザーを使用して第一の材料のワークピースにフットプリントを生成し、第二の波長を有するレーザーを使用して第二の材料のワークピースに同様のフットプリントを生成することができる。他の例も可能である。
【0026】
ワークピース形状補正光学系340は、ワークピース130の表面の形状を補正し、フットプリント位置決め要素330の様々な位置について非点収差等の収差の影響を低減し、ワークピース130内にフットプリント150を生成するために必要なフルエンスを維持する。ワークピース形状補正光学系340は、単一の収差または多くの収差を補正するために複数の要素を含み得る。この光学系は、ワークピースの形状によっては必要ない場合もある。
【0027】
全体として、内部準備システム230及びポジショナ220は、ワークピース130内の任意の位置にフットプリント150を生成するように構成される。さらに、内部準備システム230の構成は、フットプリント150の形状及び寸法を制御する。例えば、内部準備システム230の一つの構成が分離層140において4μm×20μmの楕円であるフットプリント150を生成する一方、別の構成が分離層140において直径20μmの円であるフットプリント150を生成する。前述したように、フットプリント150の厚さは主にビームシェーパ320及びフットプリント位置決め要素330の構成によって決定されるが、一般に20μm未満である。
【0028】
内部準備システム230は、同様に機能する他のいくつかの光学系の組み合わせを有し得る。例えば、屈折光学素子は、反射光学系(曲面鏡)に置き換えることができる。ビームシェーパ320は、円筒形テレスコープの代わりにアナモルフィックプリズム対とすることができる。ワークピース形状補正光学系340は、ワークピース130の形状を補正することに加えて、以前の光学系によって引き起こされた収差を補正するのに役立つ自由曲面光学系に置き換えることができる。
【0029】
外部準備システム240は、ワークピース130の外面に切り込みを入れることによって、剪断のためにワークピース130を準備する。ワークピース130の外面に切り込みを入れると、ワークピース130にクラックが生じる。剪断機250は、分離層140に沿ってワークピース130を通してクラックを伝播させて、ワークピース130を複数の断片に剪断する。一般に、外部準備システム240は、切断が望まれる分離層140と同じ位置(例えば、同一平面上の位置、一致する位置等)でワークピース130に切り込みを入れるが、必要に応じて他の位置でワークピース130に切り込みを入れてもよい。切り込みの位置は、必要に応じて一つの点、複数の点、一本の線、または複数本の線とすることができる。例えば、切り込み位置はおおよそ、ワークピース130の外面に沿った円周方向のスクライブである。一実施形態では、外部準備システム240の機能は、内部準備システム230の構成要素のいくつかまたはすべてによって実行される。
【0030】
外部準備システム240は、いくつかの方法でワークピース130に切り込みを入れることができる。例えば、外部準備システム240は、ワークピース130の材料をレーザーで切除すること、(機械的スクライブ、鋸、ノミ等で)ワークピース130の材料を物理的に除去すること、(ガス、化学薬品、プラズマ等で)ワークピース130をエッチングすること、またはワークピース130に切り込みを入れることが可能な他の任意のプロセスによって、ワークピース130に切り込みを入れることができる。
【0031】
外部準備システム240が分離層140と同じ位置でワークピース130に切り込みを入れる場合、表面に切り込みを入れることによって、分離層140の周囲においてクラックを部分的に伝播させることができる。部分的に伝播されたクラックは、ワークピース130が剪断される時に、分離層140を通してさらに伝播される。例えば、内部準備システム230は、シリコンワークピース130の(100)面上に分離層140を生成する。外部準備システム240は、分離層140の周囲に沿ってシリコンワークピース130に切り込みを入れ、(100)面にクラックを入れる。よって、剪断機250がシリコンワークピース130を剪断する時、クラックは(100)面に沿って分離層140全体を通して伝播する。クラックが分離層140に沿って伝播する程度は、分離層140の特性(例えば、厚さ、均一性等)、ワークピース130に切り込みを入れる方法(例えば、アブレーション、物理的除去等)、及びワークピース130の材料及び配向(例えば、結晶学的方向、組成等)に依存する。
【0032】
剪断機250は、ワークピース130を一つ以上の断片に剪断する。一例では、剪断機250は、分離層140に垂直な機械的引張力440を加えてワークピース130を剪断する。一実施形態では、機械的引張力440は、ワークピース130の両端に取り付けられた静電クランプ410を介してワークピース130に加えられる。静電クランプ410とワークピース130との間に電圧416を印加して、それらをしっかりと固定する。ワークピース130は、機械的引張力440が加えられて静電クランプ410が制御された方法で引き離された時に剪断される。
【0033】
図4は、剪断機250(例えば、容量性クランプ410)を用いてワークピース130を剪断する例示的なプロセスを示している。容量性クランプ410は、非導電性層414及び導電性本体412を含む。非導電性層414は、導電性本体412の一つの面に近接して配置されている。いくつかの実施形態では、非導電性層414は、それらが化学的に接着されるように、導電性本体412の面に直接堆積される。多くの実施形態では、導電性本体412の他の面は、ある種の支持体430に固定されている。これは、二つの材料を機械的または化学的に固定または取り付けするための任意の適切な手段によって行うことができる。支持体430が金属または他の導電性材料からなる場合、非導電性の取り付け方法を使用することにより、導電性本体412に印加される電圧416が支持体430にも印加され、潜在的に短絡または他の障害を生じさせることを防止する。一実施形態では、ワークピース130はエポキシまたは他のタイプの接着剤を使用してクランプ420に固定することができ、クランプ410がワークピース130から複数の断片を繰り返し切断する間、クランプ420はワークピース130に永久的に固定されたままとすることができる。いくつかの実施形態では、容量性クランプ410の形状は、ワークピース130の断面形状と一致する。
【0034】
容量性クランプ410は、平行板コンデンサのプレートが受けるような静電力を生成することによって、ワークピース130を固定する。導電性本体412を高電圧に通電するために電圧供給源416が使用される一方、ワークピース130は反対の極性に通電されるか、または接地される。さらに、非導電性層414は、電荷が導電性本体412からワークピース130に、またはその逆方向に通過することを防止する。よって電荷は、導電性本体412及びワークピース130の両方の最も近い面に集まる。これらの電荷は反対であり、従って引き付けられるので、電界が非導電性層414内に生成され、関連して静電力も生成される。
【0035】
ワークピース130を容量性クランプ410に固定するために必要な静電力の強さは変化し得るが、加えられる圧縮応力は通常、10
6〜10
8Paのオーダーである。この応力は通常、非導電性層414の厚さ及び誘電特性に応じて、100V〜500kVを含むがこれに限定されない範囲で電圧416を印加することによって生成される。例えば、厚さ100nmのHfO
2の非導電性層414に100Vのバイアスをかけると、約10
8Paの圧縮応力が発生する。同様に、厚さ500μmの石英の非導電性層414に500kVのバイアスをかけると、約10
7Paの圧縮応力が発生する。破壊力学的解析によれば、クラック404を伝播させるために必要な応力は、主に初期のクラックの深さ及びクラックの先端の鋭さに依存することが示されている。例えば、クラック404が内部準備システム230によって生成された分離層140に沿って部分的に伝播された場合、ワークピース130を剪断するのに必要な力の量は少なくなるであろう。初期のクラック404の深さの柔軟性は、必要な静電力、従って伝播に必要な電圧416の柔軟性をもたらす。
【0036】
容量性クランプ410の表面の仕上げは、容量性クランプ410とワークピース130との間の静電力の強度及び均一性に影響を及ぼし得る。空気は非導電性層414に使用される材料よりも低い誘電率を有するため、ワークピース130と非導電性層414との間のエアギャップは、ワークピース130と導電性本体412との間に存在する電界を低減し、結果として生じる静電力を低減し得る。さらに、エアギャップがランダムに位置すると、導電性本体412とワークピース130との間の電界の均一性に影響が及び、その結果、静電力の均一性が低下する可能性がある。このような影響を低減するために、非導電性層414の接触面を(例えば、研磨等の方法を使用して)可能な限り原子的に平坦にして、容量性クランプ410とワークピース130との間の空気の存在を低減することができる。非導電性層414に使用される材料がワークピース130よりも硬い場合、研磨によってワークピース130への損傷を防ぐこともできる。いくつかの実施形態では、表面仕上げは、導電性本体412及び非導電性層414に使用される材料に依存する。いくつかの実施形態では、導電性本体412は、半導体材料からなる。
【0037】
非導電性層414に使用される材料は、ワークピース130を剪断するのに必要な静電力の大きさのために、容量性クランプ410の動作に影響を及ぼし得る。容量性クランプ410がコンデンサのように機能するためには、非導電性層414は誘電体材料でなければならない。これらの材料が破壊される、または絶縁特性を失う電界の大きさは、絶縁耐力として知られている。非導電性層414が受ける電界は容量性クランプによって生成される静電力に比例するため、高い絶縁耐力を有する材料を使用することが有利である。必要な大きさの電界に耐え得ることがわかっている材料には、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ニオブ、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸リチウム、酸化アルミニウム、フッ化カルシウム、炭化ケイ素、及びこれらの任意の組み合わせがある。しかしながら、同様に高い絶縁耐力を持つ他の材料もこの目的で機能する可能性があるため、このリストに限定されるものではない。二次誘電体材料の考慮事項は、誘電率にある。誘電率の値が高くなるほど電圧が低くなるため、同じ大きさの静電力を実現するために印加する必要のある電界が低減される。よって、非導電性層414に使用される理想的な材料は、高い絶縁耐力及び高い誘電率の両方を備えたものである。
【0038】
いくつかの実施形態では、非導電性層414に使用される誘電体材料は、異なる材料の薄層でコーティングされている。誘電体材料が硬すぎてクランプ中にワークピース130に損傷を与える場合、薄層コーティングは、ワークピース130を損傷しないより柔らかい誘電体材料とすることができる。誘電体が柔らかすぎてクランプ中に損傷を受ける場合、薄層コーティングは、クランプに関連する力に耐えるより硬い誘電体材料とすることができる。
【0039】
ワークピース
このシステムは特に半導体製造に適用可能であるが、ワークピース130は、半導体材料以外の材料で作られてもよい。様々な実施形態では、ワークピース130は、電圧416がワークピース130と導電性本体412との間に印加された時に、電荷が容量性クランプ410と嵌合するワークピース130の表面に流れることができるように、導電性または半導電性でなければならない。これらの要件を満たすワークピース130の材料の例には、シリコン、炭化ケイ素、リン化インジウム、リン化ガリウム、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム等の多くの半導体が含まれる。ワークピース130に使用される材料がこれらの要件を満たすのに十分な導電性を有しない場合、より小さな静電力が生成され、容量性クランプ410は、剪断プロセスに必要なほど強くワークピース130を固定できない可能性がある。しかしながら、これらの特性は依然として、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化マグネシウム等の絶縁材料で作られたワークピース130によって達成することができる。例えば一実施形態では、シェーパ210は、絶縁材料の表面に強く結合された薄い導電性コーティングを適用することができる。強力に結合しているとみなされるには、薄い導電性コーティングが、剪断プロセスに使用される静電力及び引張力の適用中に絶縁材料の表面に結合したままであることが必要である。
【0040】
ワークピース130内の分離層140の配置は、得られるウェハの結晶方向を決定することができる。多くの実施形態では、分離層140は、ワークピース130内の特定の結晶学的平面と位置合わせされている。よって、得られるウェハの結晶方向は、選択された結晶面に一致する。結晶シリコンの標準的な結晶方向には、(100)、(111)、及び(110)が含まれる。
【0041】
システムコントローラ
様々な実施形態において、システムコントローラ120は、ワークピース130を剪断するために剪断システム110の様々な要素を制御する。
【0042】
システムコントローラ120は、剪断片の所望の形状に基づいて、ワークピース130の形状を決定する。例えば、剪断片の所望の形状が円形である場合、コントローラ120はシェーパ210を制御して、ワークピース130を円柱形に成形する。一実施形態では、システムコントローラ120はオプションのクロッパー260のサブシステムをさらに制御して、剪断片を最終的な所望の幾何学的形状に切り取る。一般に、シェーパ210の制御には、ワークピース130を成形可能なシェーパ210の様々な要素を制御するための電気信号を生成することが含まれる。同様に、クロッパー260の制御には、電気信号を生成して、剪断片を特定の最終的な幾何学的形状に切り取り可能なクロッパー260の様々な要素を制御することが含まれる。
【0043】
システムコントローラ120は、ワークピース130が剪断のために準備されている間、及び剪断されている間、ワークピース130、外部準備システム240、及び内部準備システム230の位置を決定する。位置を決定することには、ワークピース130の剪断面160が内部準備システム230によって照射されるように、ワークピース130または剪断システム110の要素の空間的位置を決定することが含まれ得る。位置が決定されると、システムコントローラ120は、ワークピース130または剪断システム110の要素を位置決めするポジショナ220のための制御信号を生成することができる。同様に、システムコントローラ120は、ポジショナ220が剪断システム110またはワークピース130の他の任意の要素を位置決めするように制御信号を生成することができる。
【0044】
システムコントローラ120は、内部準備システム230の動作特性を決定及び調整する。一例では、システムコントローラ120は、レーザー光源310によって放出されるレーザービームの特性を決定及び調整する。一つ以上のレーザービーム特性は、例えばワークピース130の特性、分離層140の位置等に基づいて決定することができる。レーザー光源310及びレーザービームの特性には、波長、出力、パルスレート等が含まれ得る。さらに、システムコントローラ120は、様々な光学素子の適切な位置を決定及び調整して、ワークピース130の内部にフットプリント150及び分離層140を生成することができる。光学素子は、フットプリント150のサイズ、形状、及び位置を制御するようにさらに構成することができる。
【0045】
システムコントローラ120は、外部準備システム240の動作特性を決定及び調整する。一例では、システムコントローラ120は、ワークピース130の外側に切り込みを入れる時に、ワークピース130及び外部準備システム240の位置を決定及び調整する。システムコントローラ120はまた、入れられるクラックの深さ、幅、及び全体的な形状を決定及び調整することもできる。
【0046】
システムコントローラ120は、剪断機250の動作を制御する。すなわち、システムコントローラは、剪断機250がワークピース130を剪断するために必要な電圧及び信号を生成する。一実施形態では、システムコントローラ120は、
図4に示される容量性クランプの設計に基づいて剪断機250を制御する。
【0047】
剪断プロセス
図5は、剪断システム110を用いてワークピース130を剪断するためのプロセス500のフロー図である。
【0048】
システムコントローラ120は、剪断片の所望の形状に基づいて、ワークピース130の形状を決定する。決定された形状に基づいて、シェーパ210は、ワークピース130を所望の形状に成形する(510)。例えば、成形されたワークピース130が正方形となることが期待される場合、シェーパ210はワークピース130を、剪断プロセスの残りを首尾よく達成するために必要な幾何学的仕様及び公差を備えた正方形プリズムに成形する(510)。
【0049】
システムコントローラ120は、ワークピース130内の剪断面160の位置を決定する。内部準備システム230は、ワークピース130内の所望の剪断面160に分離層140を生成することによって、ワークピース130を内部的に準備する(520)。場合によっては、内部準備システム230は、ワークピース130内に複数の分離層140を生成する。これらのプロセスは、
図6に関連してより詳細に説明されている。
【0050】
システムコントローラ120は、ワークピース130にクラックを入れる位置を決定する。外部準備システム140は、剪断された時に分離層140に沿ってワークピース130を通して伝播する外面のクラック404を生成することによって、ワークピース130を外部的に準備する(530)。一般に、クラック404は、内部準備システム230によって準備された分離層140の境界(perimeter)または境界の一部に沿っている。場合によっては、外部準備システム140は、ワークピース130の外面に沿っていくつかのクラック404を入れる。
【0051】
システムコントローラ120は、剪断機250がワークピース130を剪断する(540)ための信号を生成する。一実施形態では、ワークピース130の剪断には、ワークピース130の両端に機械的引張力440を生成することによって、分離層140に沿ってクラック404を伝播させることが含まれる。すなわち、ワークピース130は、分離層140でワークピース130を二つの断片に引き離すことによって剪断される。一般に、ワークピース130は、剪断面がワークピース130の長軸に直交するように剪断される。別の実施形態では、ワークピース130の剪断には、クラック404が分離層140に沿って優先的に伝播されるように制御された剪断力をワークピースに適用することによって、ワークピース130の内部に応力を生成してクラック404を伝播させることが含まれる。さらに別の実施形態では、ワークピース130の剪断には、クラック404が分離層140に沿って優先的に伝搬されるように、ワークピース130の内部に圧縮、張力、剪断、曲げ、ねじり、または疲労応力の可変の組み合わせからなる一般的な機械的応力を生成することによってクラック404を伝播させることが含まれる。さらに別の実施形態では、ワークピース130の剪断(540)には、ワークピース130の急速な加熱または冷却によって実現可能な熱応力を加えることにより、分離層140に沿ってクラック404を伝播させることが含まれる。さらに別の実施形態では、ワークピース130の剪断(540)には、圧電アクチュエータ、磁歪アクチュエータ、またはワークピース130内に強力な音波を生成する同様のデバイスを通して実現可能な強力な振動を加えることにより、分離層140に沿ってクラック404を伝播させることが含まれる。さらに別の実施形態では、ワークピース130の剪断(540)は、上記の方法の任意の組み合わせによって達成することができる。
【0052】
システムは、ワークピース130を何度も剪断すること(540)ができる。様々な実施形態では、これは、ワークピース130の内部的な準備(520)、ワークピースの外部的な準備(530)、及びワークピース130の任意の回数の剪断(540)を含み得る。これらのステップは異なる順序で発生してもよく、剪断システム110の構成に基づいて何度も繰り返すことができる。
【0053】
内部準備
図6は、内部準備システム230を用いて内部的にワークピース130を準備するためのプロセス600のフロー図である。
【0054】
ここで、システムコントローラ120は、ワークピース130の剪断面160を決定している。このように、システムコントローラ120は、内部準備システム230を構成して(610)、ワークピース130内の所望の剪断面160に分離層140を生成する。内部準備システム230の構成には、内部準備システム230がワークピース130内に適切なフットプリント150を生成するように、光学系を位置決めすること、ワークピース130を位置決めすること、レーザー光源310のパラメータを構成すること等が含まれ得る。
【0055】
次に、システムコントローラ120は、レーザー光源310を制御して、ワークピース130に向けてレーザービームを投射する(620)。レーザービームは、内部準備システム230の様々な光学系によってワークピース130内に集束される。レーザービームは、所望の剪断面160に沿ってワークピース130の内部にフットプリント150を生成し(630)、その領域におけるワークピース130の構造を変化させる。
【0056】
フットプリント150の生成(630)によって剪断のためにワークピース130を内部的に準備する例が、
図7A及び
図7Bに示されている。
図7Aは内部準備中のワークピース130の等角図であり、
図7Bは内部準備中のワークピース130の断面図である。
【0057】
この例では、剪断片が円形になることが期待されるため、ワークピース130は円柱形のインゴットとされている。剪断面160は、ワークピース130の長軸に直交している。レーザービーム710は、ワークピース130の表面に入射し、フットプリント150に集束される。フットプリント150は、剪断面160と同一平面上にあるか、または剪断面160と同様に配向されている。
【0058】
図6に戻ると、システムコントローラ120は、内部準備システム230を再び構成する(610)。この例では、内部準備システム230の構成には、ワークピース130内のフットプリント150が剪断面160上の異なる位置に位置するように光学系を再配置することが含まれる。内部準備システム230が再構成されると、システムコントローラ120は、集束されたビームを投射して(620)、新しいフットプリント150を生成する(630)。このプロセスは、
図7C及び
図7Dに示されている。
【0059】
特に、
図7A〜
図7Dは、ワークピース130を内部的に準備するために使用されるレーザービームの伝搬方向がワークピース130の長軸に垂直である例を示しているが、レーザービームの方向の他の例も可能である。例えば、レーザービームの伝搬方向は、ワークピースの長軸に平行であり得る。この場合、レーザービームは、ワークピースの側面ではなく、ワークピースの上面からワークピースに入射する。
【0060】
フットプリント150を生成するプロセスは、フットプリント150が全体として分離層140を生成するまで繰り返し続けられる。
図8Aは、ワークピース130の剪断面160上に分離層140を形成するフットプリント150の例を示している。剪断面160は、ページの面に等しい。他の実施形態では、分離層140は、様々なフットプリント150の密度を有することができる。すなわち、いくつかの例では、フットプリント150は、いくらかのオーバーラップを有するか、またはフットプリント150の間に追加の間隔を有していてもよい。さらに、システムコントローラ120は、特定のフットプリント150のパターンを使用して分離層140を生成することができる。例えば、システムコントローラ120は、一方の側から他方の側へのラスターパターン、中心から始まり外側に向かってらせん状を描くパターン、フットプリント150の同心リングを形成するパターン等を使用してフットプリント150を生成することができる。パターン及び密度がどうであれ、フットプリント150は分離層140を生成する。
図8B及び
図8Cは、分離層140の等尺の断面図を示している。
【0061】
図6に戻ると、システムコントローラ120は、別の分離層140の位置を決定する。このように、システムコントローラ120は、ポジショナ220にワークピース130及び/または内部準備システム230を再配置させて、別の分離層140を生成する。一般に、ポジショナ250は、ワークピース130をその長軸に沿って移動させて、第一の分離層140に平行な別の分離層140を生成するようにワークピース130を位置決めする(640)。ワークピース130及び内部準備システム230が適切に位置決めされると、内部準備システム230は、別の分離層140を生成する。複数の分離層140を生成した後のワークピース130の例が、
図9に示されている。分離層140の間の距離は、剪断後に生成される剪断片の厚さを示す。分離層の間の距離は、分離層140の厚さによって制限され得る。例えば、分離層は厚さt´を有し得、ワークピース内の二つの隣接する分離層の中心間の距離は、例えばt´よりも長い。一般に、製造されるウェハの厚さは10μmよりも厚いが、10μm未満となることもある。別の実施形態では、複数の分離層140は、その前のフットプリント150が新しいフットプリント150の生成において干渉を生じさせないような方法で並行して製造される。
【0062】
図10Aは、分離層140に沿って剪断されたワークピース130の例を示している。ワークピース130は、この例では剪断面160と同一平面上にある分離層140に沿って、上部片1010と下部片1030とに剪断される。ここで、上部片1010の底面1020は分離層140上にあった。同様に、下部片1030の上面1040は分離層140上にあった。
【0063】
図10Bは、いくつかの分離層140に沿って剪断されたワークピース130の例を示している。この例では、ワークピースは、上部片1050、中間片1060、及び下部片1070に剪断される。それ以前に接合されていた表面は、剪断面160及び同一平面上の分離層140の位置にあった。様々な実施形態では、剪断システム110は、ワークピース130を任意の数の断片に剪断することができる。各断片は、分離層140及び剪断面160の近接性に基づいて、任意の所望の厚さを有することができる。
【0064】
本発明の実施形態についての前述の説明は、例示の目的で提示された。それは、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。関連技術の当業者は、上記の開示に照らして多くの修正及び変形を行うことが可能であることを理解することができる。
【0065】
最後に、本明細書で使用される用語は、主に読みやすさ及び教示の目的のために選択されており、本発明の主題を描写または制限するためには選択されていない場合がある。よって、本発明の範囲はこの詳細な説明によってではなく、本明細書に基づく出願に関して発行される特許請求の範囲によって制限されることが意図されている。よって、本発明の実施形態の開示は、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を例示することを意図しているが、これを限定することは意図していない。
【国際調査報告】