特表2021-532040(P2021-532040A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532040(P2021-532040A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】荷役車両用の油圧システム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/22 20060101AFI20211029BHJP
   F15B 21/14 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   B66F9/22 C
   F15B21/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2021-524113(P2021-524113)
(86)(22)【出願日】2019年7月11日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2019068769
(87)【国際公開番号】WO2020011959
(87)【国際公開日】20200116
(31)【優先権主張番号】1811366.2
(32)【優先日】2018年7月11日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521016346
【氏名又は名称】パーカー ハネフィン・エメア・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルクス,アンドリース
(72)【発明者】
【氏名】リードリー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】マッカン,トーマス
【テーマコード(参考)】
3F333
3H089
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333BD01
3F333FB00
3F333FH03
3F333FH04
3F333FH08
3H089AA23
3H089AA60
3H089AA74
3H089BB03
3H089BB04
3H089CC01
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA14
3H089DA20
3H089DB03
3H089DB13
3H089DB44
3H089DB45
3H089DB48
3H089DB49
3H089DB63
3H089EE05
3H089EE14
3H089EE36
3H089FF09
3H089GG02
3H089JJ09
(57)【要約】
荷役車両用の油圧システム(1、50)は:荷揚げアクチュエータ(2、C1)であって、負荷が上記アクチュエータ上で誘起される荷揚げモード、及び上記メイン油圧アクチュエータが油圧動力P1を上記油圧システムに供給する荷降ろしモードで動作する、荷揚げアクチュエータを備える。補助油圧アクチュエータ(4、6、8、C2)も設けられ、これは動作時に油圧動力需要P2を有する。油圧ポンプ(10、58)は、油圧動力を上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと配向する。上記油圧システムは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、またP1がP2以上である場合に、油圧動力を上記油圧荷揚げアクチュエータから上記補助油圧アクチュエータへと直接送ることができ、これにより、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが、上記ポンプを用いずに、上記油圧荷揚げアクチュエータからの上記油圧動力によって完全に作動させられるように、構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役車両用の油圧システムであって、
前記システムは:
荷揚げモード及び荷降ろしモードで動作するように配設及び構成された、油圧荷揚げアクチュエータであって、前記荷降ろしモードでは、前記メイン油圧アクチュエータは油圧動力P1を前記油圧システムに供給する、油圧荷揚げアクチュエータ;
動作時に油圧動力需要P2を有する、少なくとも1つの補助油圧アクチュエータ;
油圧動力を前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと配向するよう配設された、油圧ポンプ
を備え、
前記油圧システムは、前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、またP1がP2以上である場合に、油圧動力を前記油圧荷揚げアクチュエータから前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと直接送ることができ、従って前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが、前記油圧荷揚げアクチュエータからの前記油圧動力によって完全に作動させられるように、構成される、油圧システム。
【請求項2】
前記油圧ポンプは油圧ポンプ/モータであり、前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであるときに前記油圧荷揚げアクチュエータから油圧動力を受け取るように配設される、請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
モータ/発電機、及び電力貯蔵デバイスを更に備え、
前記モータ/発電機は、駆動モードではモータ/発電機がモータとして動作し、前記ポンプ/モータに動力を供給して、前記ポンプ/モータをポンプとして動作させ、再生モードでは前記ポンプ/モータがモータとして動作し、前記モータ/発電機を駆動して発電機として動作させ、前記エネルギ貯蔵デバイスに供給される電力を生成するように、前記油圧ポンプ/モータに接続される、請求項2に記載の油圧システム。
【請求項4】
前記油圧システムは、前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、またP1がP2より大きい場合に、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが必要としない過剰な油圧動力を、前記ポンプ/モータを前記再生モードで駆動するために配向できるように構成される、請求項3に記載の油圧システム。
【請求項5】
前記油圧システムは、リザーバタンクを更に備え、また、前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、P1がP2より大きく、また再生が必要ない場合に、前記少なくとも1つの補助アクチュエータが必要としない前記油圧荷揚げアクチュエータからの過剰な油圧流を、前記油圧ポンプ/モータを回避するように前記リザーバタンクに直接送るように、構成される、請求項3又は4に記載の油圧システム。
【請求項6】
前記油圧システムは、リザーバタンクを更に備え、また、前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、P1がP2未満である場合に、前記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流を、前記油圧ポンプ/モータを回避するように前記リザーバタンクに直接送り、前記油圧ポンプ/モータを前記駆動モードで動作させて、前記少なくとも1つの油圧アクチュエータを作動させるように、構成される、請求項3又は4に記載の油圧システム。
【請求項7】
前記油圧荷揚げアクチュエータへの及び前記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流体の流れを制御するよう配設された、荷揚げ弁を更に備え、
前記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流が前記リザーバタンクに直接送られる場合、前記荷揚げ弁は、前記油圧荷揚げアクチュエータから前記リザーバタンクへの流体の流れを可変的に制限することにより、前記油圧荷揚げアクチュエータの下降速度を制御するよう、動作可能である、請求項6に記載の油圧システム。
【請求項8】
前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータの動作が必要ない場合、全ての前記油圧動力P1は、前記ポンプ/モータを前記再生モードで駆動するために配向される、請求項3〜7のいずれか1項に記載の油圧システム。
【請求項9】
前記油圧荷揚げアクチュエータを前記荷揚げモードで動作させることと、前記少なくとも1つの補助シリンダを動作させることとが同時に必要である場合、前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記少なくとも1つの補助シリンダはいずれも、前記駆動モードでポンプとして動作する前記ポンプ/モータによって駆動される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の油圧システム。
【請求項10】
前記油圧荷揚げアクチュエータへの及び前記油圧荷揚げアクチュエータからの流れを制御するための荷揚げ弁と、前記補助油圧アクチュエータへの、及び補助油圧アクチュエータからの、流れを制御するための補助弁とを更に備え、
前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記補助油圧アクチュエータが前記ポンプ/モータによって同時に駆動され、前記油圧荷揚げアクチュエータに対する負荷が前記補助油圧アクチュエータに対する負荷より大きい場合、前記補助弁を絞ることによって、前記油圧荷揚げアクチュエータを前記補助油圧アクチュエータと同時に動作させることができるようにするために十分な背圧を生成する、請求項9に記載の油圧システム。
【請求項11】
前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記補助油圧アクチュエータが前記ポンプ/モータによって同時に駆動されており、前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記補助油圧アクチュエータの合計速度が前記ポンプ/モータの最大速度を超える場合、前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記補助油圧アクチュエータのうちの一方の動作を優先して必要な速度を持続させながら、他方を絞ることによって、前記合計速度を、前記ポンプ/モータの速度範囲以下のレベルに低減する、請求項9又は10に記載の油圧システム。
【請求項12】
前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、P1がP2より大きいものの、前記油圧荷揚げアクチュエータの荷降ろし速度が前記補助油圧アクチュエータの要求速度未満である場合、前記油圧荷揚げアクチュエータからの前記油圧流を、前記油圧ポンプ/モータを回避するように前記リザーバタンクに直接送ることができ、前記油圧ポンプ/モータを前記駆動モードで動作させて、前記少なくとも1つの油圧アクチュエータを作動させる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の油圧システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の油圧システムを備える、荷役車両。
【請求項14】
荷役車両用の油圧システムを動作させる方法であって、
前記システムは:
油圧荷揚げアクチュエータであって、前記アクチュエータに対して負荷が誘起される荷揚げモード、及び前記メイン油圧アクチュエータが油圧動力P1を前記油圧システムに供給する荷降ろしモードで動作するように配設及び構成された、油圧荷揚げアクチュエータ;
動作時に油圧動力需要P2を有する、少なくとも1つの補助油圧アクチュエータ;並びに
油圧動力を前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと配向するよう配設された、油圧ポンプを備え、
前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、またP1がP2以上である場合に、前記方法は、油圧動力を前記油圧荷揚げアクチュエータから前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと直接送ることによって、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが、前記油圧荷揚げアクチュエータからの前記油圧動力によって完全に作動させられるように、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを作動させるステップを含む、方法。
【請求項15】
前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、またP1がP2より大きい場合に、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが必要としない過剰な油圧動力を、ポンプ/モータを再生モードで駆動するために送ることによって、電力を生成するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、P1がP2より大きく、また電力再生が必要ない場合に、前記少なくとも1つの補助アクチュエータが必要としない前記油圧荷揚げアクチュエータからの過剰な油圧流を、前記油圧ポンプ/モータを回避するように、リザーバタンクに直接送るステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、またP1がP2未満である場合に、前記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流を、前記油圧ポンプ/モータを回避するように、前記リザーバタンクに直接送り、前記油圧ポンプ/モータを駆動モードで動作させて、少なくとも1つの油圧アクチュエータを作動させるステップを更に含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流が前記リザーバタンクに直接送られる場合、前記油圧荷揚げアクチュエータから前記リザーバタンクへの流体の流れを可変的に制限することにより、前記油圧荷揚げアクチュエータの荷降ろし速度を制御するよう動作するように、荷揚げ弁を動作させるステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータの動作が必要ない場合、全ての前記油圧動力P2を、前記ポンプ/モータを前記再生モードで駆動するために配向するステップを更に含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記油圧荷揚げアクチュエータを前記荷揚げモードで動作させることと、前記少なくとも1つの補助シリンダを動作させることとが同時に必要である場合、前記ポンプ/モータを駆動モードで動作させて、前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記少なくとも1つの補助シリンダの両方を駆動するステップを含む、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記油圧システムは、前記油圧荷揚げアクチュエータへの、及び前記油圧荷揚げアクチュエータからの、流れを制御するための荷揚げ弁と、前記補助油圧アクチュエータへの、及び補助油圧アクチュエータからの、流れを制御するための補助弁とを含み、
前記方法は、前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記補助油圧アクチュエータが前記ポンプ/モータによって同時に駆動され、前記油圧荷揚げアクチュエータに対する負荷が前記補助油圧アクチュエータに対する負荷より大きい場合、前記補助弁を絞ることによって、前記油圧荷揚げアクチュエータを前記補助油圧アクチュエータと同時に動作させることができるようにするために十分な背圧を生成するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記補助油圧アクチュエータが前記ポンプ/モータによって同時に駆動されており、前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記補助油圧アクチュエータの合計速度が前記ポンプ/モータの最大速度を超える場合、前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記補助油圧アクチュエータのうちの一方の動作を優先し、優先された前記動作を必要な速度で持続させながら、他方を絞ることによって、前記合計速度を、前記ポンプ/モータの速度範囲以下のレベルに低減するステップを含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、P1がP2より大きいものの、前記油圧荷揚げアクチュエータの荷降ろし速度が前記補助油圧アクチュエータの要求速度未満である場合、前記油圧荷揚げアクチュエータからの前記油圧流を、前記油圧ポンプ/モータを回避するように前記リザーバタンクに直接送り、前記油圧ポンプ/モータを前記駆動モードで動作させて、前記少なくとも1つの油圧アクチュエータを作動させるステップを含む、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
荷役車両用の油圧システムであって、
前記システムは:
荷揚げモード及び荷降ろしモードで動作するように配設及び構成された、油圧荷揚げアクチュエータであって、前記荷降ろしモードでは、前記油圧荷揚げアクチュエータ上で負荷が誘起される、油圧荷揚げアクチュエータ;
動作時に圧力需要を有する、少なくとも1つの補助油圧アクチュエータ;並びに
油圧動力を前記油圧荷揚げアクチュエータ及び前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと配向するよう配設された、油圧ポンプ
を備え、
前記油圧システムは、前記油圧荷揚げアクチュエータが前記荷降ろしモードであり、前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要がある場合に、前記油圧荷揚げアクチュエータ上の誘起圧力が前記需要圧力以上であれば、前記誘起圧力を用いて前記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを動作させることができる、油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、電動フォークリフトトラック、オーダーピッカー等の荷役車両のための油圧システムに関する。特に本発明は、補助油圧機能に動力供給するために、荷降ろし中に油圧荷揚げアクチュエータからの油圧エネルギを利用する、手段に関する。
【背景技術】
【0002】
電動フォークリフトトラック又は電動オーダーピッカー等の電動荷役車両は、車両に運動を提供するための電気駆動手段と、フォークリフトの荷揚げ回路等の油圧アクチュエータに動力を提供するための油圧システムとを含む。電動フォークリフトトラックは、積荷の垂直な荷揚げ及び荷降ろしのための一次油圧アクチュエータを含む。一次荷揚げアクチュエータは、一次油圧回路を介して油圧ポンプ/モータによって駆動される。一次油圧回路は典型的には、一次油圧アクチュエータが最大負荷圧力下で動作する際に、加圧された油圧流体をポンプから一次アクチュエータに直接供給するように配設される。積荷の垂直な荷揚げ及び荷降ろしに加えて、荷役車両は通常、積荷の前方及び後方へのリーチ(reach)、又は横方向及び/若しくは横断方向の傾斜といった更なる機能を実施するための、補助油圧アクチュエータを含む。
【0003】
電気荷役車両に、積荷の油圧荷降ろし中にエネルギを再生する能力を設けることが知られている。このようなシステムでは、積荷の荷降ろし中の誘起油圧を用いてポンプ/モータを駆動し、発電機として動作させることによって、電力を生成でき、この電力を、車両の駆動に使用でき、又は車両のバッテリに貯蔵できる。
【0004】
一次シリンダ及び補助シリンダの流体供給需要は異なっており、多くの場合同時に発生する。現行のシステムでは、積荷の荷降ろし中に補助シリンダの使用が必要となると、ポンプ/モータは補助シリンダの駆動のために動作しなければならず、電力再生のためには使用できない。一次シリンダからのエネルギはタンクへと戻されて失われる。補助シリンダの動作時に荷降ろしされる積荷からの圧力を用いてポンプ/モータをブーストし、それによってポンプ/モータをより効率的に動作させることができる、特定のシステムが知られている。しかしながらこれは、荷降ろしされる積荷からのエネルギを効率的に回収することはできず、エネルギの多くが熱として失われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、積荷の荷降ろし中に、同時に1つ以上の補助シリンダを動作させながら一次油圧シリンダからエネルギを効率的に回収でき、及び/又は全体的な改善を提供する、フォークリフトトラックにおいて油圧エネルギを回収するための改良された方法及びシステムを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある実施形態では、荷役車両用の油圧システムが提供され、上記システムは:荷揚げモード及び荷降ろしモードで動作するように配設及び構成された、油圧荷揚げアクチュエータであって、上記荷降ろしモードでは、上記メイン油圧アクチュエータ上で負荷が誘起され、上記メイン油圧アクチュエータは油圧動力P1を上記油圧システムに供給する、油圧荷揚げアクチュエータ;動作時に油圧動力需要P2を有する、少なくとも1つの補助油圧アクチュエータ;並びに油圧動力を上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと配向するよう配設された、油圧ポンプを備える。上記油圧システムは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、またP1がP2以上である場合に、油圧動力を上記油圧荷揚げアクチュエータから上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと直接送ることができ、従って上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが、上記ポンプを用いずに、上記油圧荷揚げアクチュエータからの上記油圧動力によって完全に作動させられるように、構成される。この動作モードでは、上記ポンプは上記補助アクチュエータを駆動する必要がなく、バッテリからエネルギが引き出されない。これにより、上記システムの効率は、積荷を荷降ろしして荷揚げ用アクチュエータからの流体がタンクへと戻される際に油圧流体への熱として消費されるはずだった誘起負荷の油圧動力の油圧再生によって、改善される。
【0007】
上記油圧ポンプは好ましくは油圧ポンプ/モータであり、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであるときに上記油圧荷揚げアクチュエータから油圧動力を受け取るように配設される。更に上記システムは、モータ/発電機、及び電力貯蔵デバイスを含んでよい。上記モータ/発電機は、駆動モードではモータ/発電機がモータとして動作し、上記ポンプ/モータに動力を供給して、上記ポンプ/モータをポンプとして動作させ、再生モードでは上記ポンプ/モータがモータとして動作し、上記モータ/発電機を駆動して発電機として動作させ、上記エネルギ貯蔵デバイスに供給される電力を生成するように、上記油圧ポンプ/モータに接続できる。従って、動作パラメータによって許容される場合、荷降ろしされる積荷からの油圧動力を用いて、油圧再生に加えて電力再生を提供できる。
【0008】
上記油圧システムは好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、またP1がP2より大きい場合に、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが必要としない過剰な油圧動力を、上記ポンプ/モータを上記再生モードで駆動するために配向できるように構成される。従って、油圧再生に使用されない過剰な油圧動力を用いて電力再生を駆動するハイブリッド再生が可能となる。
【0009】
上記油圧システムは好ましくは、リザーバタンクを更に備え、また、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助アクチュエータを同時に動作させる必要があり、P1がP2より大きく、また再生が必要ない場合に、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが必要としない上記油圧荷揚げアクチュエータからの過剰な油圧流を、上記油圧ポンプ/モータを回避するように上記リザーバタンクに直接送るように、構成される。
【0010】
上記油圧システムは好ましくは、リザーバタンクを更に備え、また、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、P1がP2未満である場合に、上記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流を、上記油圧ポンプ/モータを回避するように上記リザーバタンクに直接送り、上記油圧ポンプ/モータを上記駆動モードで動作させて、上記少なくとも1つの油圧アクチュエータを作動させるように、構成される。
【0011】
上記油圧システムは好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータへの及び上記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流体の流れを制御するよう配設された、荷揚げ弁を更に備え、上記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流が上記リザーバタンクに直接送られる場合、上記荷揚げ弁は、上記油圧荷揚げアクチュエータから上記リザーバタンクへの流体の流れを可変的に制限することにより、上記油圧荷揚げアクチュエータの下降速度を制御するよう、動作可能である。
【0012】
好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータの動作が必要ない場合、全ての上記油圧動力P1は、上記ポンプ/モータを上記再生モードで駆動するために配向される。
【0013】
好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータを上記荷揚げモードで動作させることと、上記少なくとも1つの補助シリンダを動作させることとが同時に必要である場合、これらはいずれも、上記駆動モードでポンプとして動作する上記ポンプ/モータによって駆動される。
【0014】
上記油圧システムは好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータへの及び上記油圧荷揚げアクチュエータからの流れを制御するための荷揚げ弁と、上記補助油圧アクチュエータへの、及び補助油圧アクチュエータからの、流れを制御するための補助弁とを更に備え、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記補助油圧アクチュエータが上記ポンプ/モータによって同時に駆動され、上記油圧荷揚げアクチュエータに対する負荷が上記補助油圧アクチュエータに対する負荷より大きい場合、上記補助弁を絞ることによって、上記油圧荷揚げアクチュエータを上記補助油圧アクチュエータと同時に動作させることができるようにするために十分な背圧を生成する。
【0015】
好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記補助油圧アクチュエータが上記ポンプ/モータによって同時に駆動されており、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記補助油圧アクチュエータの合計速度が上記ポンプ/モータの最大速度を超える場合、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記補助油圧アクチュエータのうちの一方の動作を優先して必要な速度を持続させながら、他方を絞ることによって、上記合計速度を、上記ポンプ/モータの速度範囲以下のレベルに低減する。
【0016】
好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、P1がP2より大きいものの、上記油圧荷揚げアクチュエータの荷降ろし速度が上記補助油圧アクチュエータの要求速度未満である場合、上記油圧荷揚げアクチュエータからの上記油圧流を、上記油圧ポンプ/モータを回避するように上記リザーバタンクに直接送ることができ、上記油圧ポンプ/モータを上記駆動モードで動作させて、上記少なくとも1つの油圧アクチュエータを作動させる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、荷役車両用の油圧システムが提供され、上記システムは:荷揚げモード及び荷降ろしモードで動作するように配設及び構成された、油圧荷揚げアクチュエータであって、上記荷降ろしモードでは、上記メイン油圧アクチュエータに対して負荷が誘発される、油圧荷揚げアクチュエータ;少なくとも1つの補助油圧アクチュエータ;並びに油圧動力を上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと配向するよう配設された、油圧ポンプを備える。上記油圧システムは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要がある場合に、上記油圧荷揚げアクチュエータ上の誘起負荷を用いて、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを動作させることができる。
【0018】
本発明の別の態様では、上述のような油圧システムを備える、フォークリフトトラック等の荷役車両が提供される。
【0019】
本発明の別の実施形態では、荷役車両用の油圧システムを動作させる方法が提供され、上記システムは:油圧荷揚げアクチュエータであって、上記アクチュエータに対して負荷が誘起される荷揚げモード、及び上記メイン油圧アクチュエータが油圧動力P1を上記油圧システムに供給する荷降ろしモードで動作するように配設及び構成された、油圧荷揚げアクチュエータ;動作時に油圧動力需要P2を有する、少なくとも1つの補助油圧アクチュエータ;並びに油圧動力を上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと配向するよう配設された、油圧ポンプを備え、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、またP1がP2以上である場合に、上記方法は、油圧動力を上記油圧荷揚げアクチュエータから上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータへと直接送ることによって、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが、上記油圧荷揚げアクチュエータからの上記油圧動力によって完全に作動させられるように、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを作動させるステップを含む。
【0020】
上記方法は好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、またP1がP2より大きい場合に、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータが必要としない過剰な油圧動力を、ポンプ/モータを再生モードで駆動するために送ることによって、電力を生成するステップを含む。
【0021】
上記方法は好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に動作させる必要があり、P1がP2より大きく、また電力再生が必要ない場合に、上記少なくとも1つの補助アクチュエータが必要としない上記油圧荷揚げアクチュエータからの過剰な油圧流を、上記油圧ポンプ/モータを回避するように、リザーバタンクに直接送るステップを含む。
【0022】
上記方法は好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、またP1がP2未満である場合に、上記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流を、上記油圧ポンプ/モータを回避するように、上記リザーバタンクに直接送り、上記油圧ポンプ/モータを駆動モードで動作させて、少なくとも1つの油圧アクチュエータを作動させるステップを含む。
【0023】
上記方法は好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータからの油圧流が上記リザーバタンクに直接送られる場合、上記油圧荷揚げアクチュエータから上記リザーバタンクへの流体の流れを可変的に制限することにより、上記油圧荷揚げアクチュエータの荷降ろし速度を制御するよう動作するように、荷揚げ弁を動作させるステップを含む。
【0024】
上記方法は好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータの動作が必要ない場合、全ての上記油圧動力P2を、上記ポンプ/モータを上記再生モードで駆動するために配向するステップを含む。
【0025】
上記方法は好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータを上記荷揚げモードで動作させることと、上記少なくとも1つの補助シリンダを動作させることとが同時に必要である場合、上記ポンプ/モータを駆動モードで動作させて、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記少なくとも1つの補助シリンダの両方を駆動するステップを含む。
【0026】
好ましくは、上記油圧システムは、上記油圧荷揚げアクチュエータへの及び上記油圧荷揚げアクチュエータからの流れを制御するための荷揚げ弁と、上記補助油圧アクチュエータへの及び補助油圧アクチュエータからの流れを制御するための補助弁とを含み、上記方法は、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記補助油圧アクチュエータが上記ポンプ/モータによって同時に駆動され、上記油圧荷揚げアクチュエータに対する負荷が上記補助油圧アクチュエータに対する負荷より大きい場合、上記補助弁を絞ることによって、上記油圧荷揚げアクチュエータを上記補助油圧アクチュエータと同時に動作させることができるようにするために十分な背圧を生成するステップを含む。
【0027】
上記方法は好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記補助油圧アクチュエータが上記ポンプ/モータによって同時に駆動されており、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記補助油圧アクチュエータの合計速度が上記ポンプ/モータの最大速度を超える場合、上記油圧荷揚げアクチュエータ及び上記補助油圧アクチュエータのうちの一方の動作を優先し、優先された上記動作を必要な速度で持続させながら、他方を絞ることによって、上記合計速度を、上記ポンプ/モータの速度範囲以下のレベルに低減するステップを含む。
【0028】
本方法は好ましくは、上記油圧荷揚げアクチュエータが上記荷降ろしモードであり、上記少なくとも1つの補助油圧アクチュエータを同時に作動させる必要があり、P1がP2より大きいものの、上記油圧荷揚げアクチュエータの荷降ろし速度が上記補助油圧アクチュエータの要求速度未満である場合、上記油圧荷揚げアクチュエータからの上記油圧流を、上記油圧ポンプ/モータを回避するように上記リザーバタンクに直接送り、上記油圧ポンプ/モータを上記駆動モードで動作させて、上記少なくとも1つの油圧アクチュエータを作動させるステップを含む。
【0029】
上述の油圧システムで使用するための制御弁組立体は、フォークリフト等の荷役車両を備える。上記制御弁は、穿孔を有する弁体と、上記穿孔内に配置され、少なくとも2つの動作構成の間で上記穿孔に沿って軸方向に可動であるスプールとを備える。サービスポートが上記弁体に形成され、油圧アクチュエータ等の油圧消費部品に接続されるように配設される。圧力ポートも上記弁体に形成され、ポンプ等の油圧動力供給部品に接続されるように配設される。更にタンクポートが上記弁体に形成され、油圧タンクリザーバに接続されるように配設される。上記弁は、第1の動作構成と第2の動作構成との間で再構成可能である。上記第1の動作構成では、上記スプールは、第1の流れ方向において流体が上記圧力ポートから上記サービスポート及び上記タンクポートへと流れることができ、第2の流れ方向において流体が上記サービスポートから上記圧力ポート及び上記タンクポートへと流れることができるように、上記ポンプポート、上記サービスポート、及び上記タンクポートを接続する流体経路を画定するよう、構成及び配設され、上記スプールは、上記タンクポートへの流れを可変的に制限するように制御可能である。上記第2の動作構成では、上記スプールは、上記タンクポートを閉鎖して、上記圧力ポートと上記アクチェータポートとを接続する流体経路を画定するよう、構成及び配設され、上記スプールは、上記圧力ポートと上記アクチュエータポートとの間の流れを可変的に制限するように制御可能である。
【0030】
第1の動作モードでは、荷揚げ圧力による負荷なしに上記ポンプを動作させるオフロードポンプ始動が可能である。上記タンクポートは始動時に完全に開放できるため、油圧の制限がなく、従って上記ポンプは負荷なしに動作する。この構成により、従来技術の構成で見られるような別個のバイパス弁の必要が回避される。更に、上記第1の動作構成において、上記タンクポートを可変的に制限するように上記スプールを動作させることができるため、製造元が推奨する最低動作速度での動作時に、上記アクチュエータの流れ需要が上記ポンプの出力流未満である場合に不要である過剰な流れをタンクに流すこともできるようにしながら、上記アクチュエータへの流れを開始させることができる。第1及び第2の動作構成によって提供される機能を単一のスプール弁に組み込むことにより、複数のカートリッジ弁及び大幅に複雑な制御システムを用いて同一の機能を提供する従来技術の構成に対して、大幅な改良が提供される。
【0031】
上記油圧アクチュエータの流れ需要が上記ポンプの最小出力流以上になる時点において、上記スプールを上記第2の動作構成で動作させることができ、この第2の動作構成では、タンクへの流れが閉鎖され、上記アクチュエータへの流れが、上記ポンプの速度を制御することによって制御される。上記第2の動作構成は、エネルギ再生のために上記ポンプを通る流れが必要となる荷降ろし中にも使用できる。上記スプールを上記第2の動作構成で動作させることにより、圧力ポートと上記サービスポートとの間の流れを可変的に制限できるため、上記アクチュエータから上記ポンプへの流れを制御できる。
【0032】
好ましくは、上記弁は第3の動作構成へと再構成可能であり、この第3の動作構成では、上記スプールは、上記圧力ポートを閉鎖して、上記サービスポートと上記タンクポートとの間の流体経路を画定するよう構成及び配設され、上記スプールは、上記サービスポートと上記タンクポートとの間の流れを可変的に制限するように制御可能である。これにより有利なことに、流れが上記アクチュエータからタンクへと直接流れる状態での、重力による荷降ろしが可能となる。流路を可変的に制限できることにより、荷降ろし速度を制御できる。第3の動作構成で達成される機能をスプール弁に組み込むことにより、従来技術に対する更なる利点が提供され、同一の機能を達成するために従来技術では採用されていた追加の弁及び制御用構成が必要なくなる。
【0033】
上記スプールは好ましくは、上記第1の動作構成において、上記タンクポートへの流れが可変的に制御されるときに、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の上記流路が完全に開放されたままとなるように構成される。
【0034】
好ましくは、上記スプールの軸方向位置を制御するために、コントローラを設ける。従って上記コントローラは、上記第1、第2、及び第3の構成位置の間で上記スプールを移動させるよう構成される。
【0035】
上記制御弁組立体は更に、上記スプールを上記第1の動作構成へと偏移させる偏移手段を備えてよい。従って、上記タンクポートが完全に開放されている上記第1の動作構成は、上記スプールのデフォルト静止位置となる。上記コントローラは、上記スプールを、上記偏移部材の作用に対抗して動作させて、上記第1の動作構成において上記タンクポートを可変的に制限するように上記スプールを移動させ、また上記スプールを上記第2及び第3の動作構成へと移動させる。
【0036】
好ましくは、上記ポンプの起動中に上記スプールが上記第1の動作構成に配置される第1の供給動作モードでは、上記タンクポートが開放されており、これにより、ポンプ起動中の上記圧力ポートから上記タンクポートへの流れが可能となる。これは、上記アクチュエータへの流れが存在しない完全なオフロード始動位置に対応する。
【0037】
上記スプールが上記第1の動作構成である第2の供給動作モードでは、上記コントローラは、上記作動ポートへの流れが開始され、かつ上記アクチュエータへの必要な供給流が、上記ポンプの最小供給流より少ない場合に、上記タンクポートを比例的に閉鎖して上記作動ポートと上記タンクポートとの間で流れを共有するように、上記スプールを制御するよう構成される。この状況では、上記ポンプからの流れは上記アクチュエータの需要を超えている。流れは上記アクチュエータに向かって始まり、過剰な流れはタンクに配向される。
【0038】
第3の供給動作モードでは、上記コントローラは、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流以上である場合に、上記スプールを上記第2の動作構成に配置して、上記タンクポートを閉鎖することにより、上記圧力ポートからの全ての流れを上記作動ポートへと配向するように構成できる。
【0039】
上記コントローラは好ましくは、上記タンクポートが完全に閉鎖され、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流を超えたときに、上記ポンプを制御して速度を上昇させるよう構成される。
【0040】
第4の供給動作モードでは、上記コントローラは好ましくは、必要なシステム圧力が上記アクチュエータへの必要な供給圧力を超える場合に、上記スプールを上記第2の動作構成に配置し、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の流路を比例的に閉鎖して、上記ポンプから上記アクチュエータへの流れを絞るよう構成される。これにより、一次アクチュエータよりも高い圧力で補助アクチュエータを動作させることができる、単純かつ効率的な手段が提供される。
【0041】
第5の再生荷降ろし動作モードでは、上記コントローラは、上記スプールを制御して上記第2の動作構成へと移動させることにより、流体を上記アクチュエータから上記ポンプへと流すことができるよう、構成できる。この構成では、上記タンクポートは閉鎖され、上記アクチュエータと上記ポンプとの間の直接の流路が形成される。
【0042】
上記第5の再生荷降ろしモードでは、上記コントローラは、上記スプールを制御して、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の流体流路を比例的に閉鎖することにより、上記アクチュエータから上記ポンプへの流れを絞るよう構成される。これにより、エネルギ再生中に上記ポンプへの流れを制限して、上記バッテリの過充電を防止できる。
【0043】
好ましくは、第6の重力荷降ろし動作モードでは、上記コントローラは、上記ポンプを介したエネルギ再生が必要ない場合、上記スプールを上記第3の動作構成に配置して、流体が上記サービスポートから上記タンクポートへと直接流れるようにするよう構成される。
【0044】
上記第6の重力荷降ろし動作モードでは、上記コントローラは、上記スプールを制御して、上記サービスポートと上記タンクポートとの間の流体流路を比例的に閉鎖することで、上記アクチュエータから上記タンクへの流れを絞ることにより、上記アクチュエータの下降を制御するよう、構成できる。
【0045】
上記弁体は好ましくは、上記スプール弁の運動を制御するための加圧流体を受け取るよう配設されたパイロットポートを含む。上記パイロットポートへの上記加圧流体の供給は、上記コントローラによって制御される。
【0046】
上記制御弁組立体は更に、上記パイロットポートにおける流体圧力を制御するための、上記パイロットポートに接続された比例的減圧弁を備えてよい。上記比例的減圧弁を上記コントローラで制御して、上記パイロットポートへの上記加圧流体の供給を制御する。
【0047】
上記スプールは好ましくは、第1の端部に荷重面を含み、これは、上記圧力ポートに入った加圧流体が上記荷重面に力を印加して、上記スプールの第1の方向の軸方向移動を引き起こすように配設され、また上記偏移手段は上記スプールの第2の端部に配置され、上記スプールに、軸方向に対向する第2の方向の偏移力を付与するよう配設される。
【0048】
また、荷役車両用の油圧制御システムも提供できる。上記システムは:油圧アクチュエータ;ポンプ;タンクリザーバ;及び上述のような弁組立体を備える。上記ポンプは、上記弁の上記圧力ポートに流体接続され、上記油圧アクチュエータは上記サービスポートに接続され、上記タンクリザーバは上記タンクポートに接続される。
【0049】
また、第1の油圧アクチュエータ;ポンプ;タンクリザーバ;及び上述のような弁組立体を備える荷役車両のための、流れ制御方法も提供できる。上記ポンプは、上記弁の上記圧力ポートに流体接続され、上記油圧アクチュエータは上記サービスポートに接続され、上記タンクリザーバは上記タンクポートに接続される。上記方法は、上記スプールを、上述の3つの動作構成の間で、上記穿孔に沿って軸方向に選択的に移動させるステップを含む。
【0050】
上記方法は更に、第1の供給動作モードにおいて、上記タンクポートが開放されることにより、ポンプ起動中の上記ポンプから上記タンクへの流れが可能となるように、上記スプールを上記第1の動作構成に配置して上記ポンプを起動するステップを含む。
【0051】
上記方法は好ましくは、第2の供給動作モードにおいて、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流未満である場合に、上記ポンプの起動後に、上記スプールを制御して上記タンクポートを比例的に閉鎖することにより、上記アクチュエータと上記タンクとの間で流れを共有するステップを含む。
【0052】
上記方法は好ましくは、第3の供給動作モードにおいて、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流以上である場合、上記第1の動作構成にあるときに上記スプールを制御して上記タンクポートを閉鎖し、上記ポンプからの全ての流れを上記アクチュエータに配向するステップを含む。
【0053】
上記方法は好ましくは、上記タンクポートが完全に閉鎖され、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流より多い場合に、上記ポンプの速度を上昇させるステップを含む。
【0054】
上記荷役車両は好ましくは、上記ポンプによって流体が供給される少なくとも1つの第2の油圧アクチュエータを更に備え、上記方法は更に、第4の供給動作モードにおいて、上記第2のアクチュエータが必要とする圧力が、上記第1のアクチュエータへの必要な供給圧力より高い場合、上記スプールを上記第2の動作構成に配置し、上記スプールを制御して、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の流路を比例的に閉鎖することにより、上記ポンプから上記第1のアクチュエータへの流れを絞るステップを含む。
【0055】
上記方法は更に、第5の再生荷降ろし動作モードにおいて、上記スプールを上記第2の動作構成に配置して、流体が上記アクチュエータから上記ポンプに流れることができるようにするステップを含んでよい。
【0056】
上記ポンプは好ましくはポンプ発電機であり、上記方法は更に、上記アクチュエータからの上記流体の流れを用いて上記ポンプ発電機を駆動し、上記ポンプ発電機を動作させて電力を生成するステップを含んでよい。
【0057】
上記方法は更に、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の上記流体の流路を比例的に閉鎖して、上記アクチュエータから上記ポンプへの流れを絞ることにより、上記アクチュエータの下降を制御するステップを含んでよい。
【0058】
上記方法は更に、第6の重力荷降ろし動作モードにおいて、エネルギ再生が必要ない場合、上記スプールを制御して上記スプールを上記第3の動作構成に配置し、流体が上記サービスポートから上記タンクポートに流れることができるようにするステップを含んでよい。
【0059】
上記方法は更に、上記スプールを制御して、上記サービスポートと上記タンクポートとの間の上記流体の流路を比例的に閉鎖することにより、上記アクチュエータから上記タンクへの流れを絞ることによって、上記アクチュエータの下降を制御するステップを含んでよい。
【0060】
上記弁体は好ましくはパイロットポートを含み、上記方法は更に、加圧流体を上記パイロットポートに供給して、上記スプールの運動を制御するステップを含む。
【0061】
これより、以下の説明用の図面を参照して、単なる例として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、油圧システムの回路図である。
図2図2は、本発明の油圧システムで使用するための弁の概略図である。
図3図3は、第1の動作構成における弁の概略図である。
図4図4は、第2の動作構成における弁の概略図である。
図5図5は、第3の動作構成における弁の概略図である。
図6図6は、本発明による油圧システムの概略図である。
図7図7は、図6の油圧システムの動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、フォークリフトトラック等の荷役車両用の油圧回路1である。上記回路は一次油圧アクチュエータ2を備え、これは使用時に、車両のマストに可動設置されたフォークリフトトラックの荷揚げ用フォークに接続される。上記回路はまた、第1の補助油圧アクチュエータ4を含み、これは、フォークをマストに対して前方及び後方に移動させるリーチ機能を実行するために配設される。第2の補助油圧シリンダ6は、車両のマストを傾斜させて、前方及び後方の方向における積荷の角度を変化させるために配設される。第3の補助油圧シリンダ8は、フォークをマストに対して横方向に端から端まで移動させるために配設される。これは補助機能の一構成の例であること、及び上記回路は車両の動作要件に応じて、追加の又はより少数の補助油圧シリンダを含んでよいことが理解されるだろう。
【0064】
ポンプモータ10は、一次油圧シリンダ及び補助油圧シリンダを動作させるために設けられる。供給動作モードでは、ポンプモータ10は、第1の供給方向に回転して、電気モータからの機械的シャフト動力を油圧動力に変換することにより、油圧システム1に油圧流/圧力を供給するよう構成される。ポンプモータ10は再生モードで動作するようにも構成され、この再生モードでは、ポンプモータ10はシステムから油圧流/圧力を受け取り、ポンプを第2の再生方向に回転させる。油圧動力は機械的シャフト動力に変換され、これは電気エネルギへと変換できる。この双方向ポンプ構成は、2象限(2 Quadrant)ポンプと呼ばれる。油圧システム1は更にタンクリザーバ12を含む。
【0065】
第1のマニホルド14は、ポンプ10から一次油圧シリンダ2への流れを制御するよう構成される。補助油圧シリンダへの流れを制御するために、第2のマニホルド15及び第3のマニホルド17も設けられる。第1のマニホルド14は、第1の圧力ポート16及び第2の圧力ポート17を含む。供給モードでは、第1の圧力ポート16はポンプ10の出口ポートであり、第2のポート17は、流れをタンク12からポンプ10に供給するポンプ入口である。第1の圧力ポート16は、流れチャネル19を介して、流れをインテリジェントに共有するよう構成されたスプール弁18に接続される。スプール弁18は、ポンプ10から第1の油圧アクチュエータ2への流れを制御する。スプール弁18は、流れチャネル22を介して、第1の油圧アクチュエータ2に接続される。油圧負荷保持弁24が、スプール弁18と第1の油圧アクチュエータ2との間に設けられる。弁24は、非起動位置及び起動位置で動作するよう構成される。非起動位置では、弁24は、第1の油圧アクチュエータ2からスプール弁18への流れを遮断しながら、スプール弁18から第1の油圧アクチュエータ2への逆方向の流れを可能とする。これにより、第1の油圧アクチュエータ2に対する負荷を所定の位置で保持できる。起動位置では、流れを第1の油圧アクチュエータ2からポンプ10又はタンク12へと通過させることができる。
【0066】
安全機能として、キャビテーション防止逆止弁20を第1のマニホルドに設ける。流体回路はまた、制御システムの電気的故障等のシステム故障の際に積荷を安全に荷降ろしするために、第1の油圧アクチュエータ2からタンク12への流れの絞りを提供するよう構成された、緊急荷降ろし弁23を含む。
【0067】
フォークに対する積荷の圧力を測定するために、油圧変換器25を設ける。油圧変換器25は、制御アルゴリズムを更に進化させて特定の油圧弁の起動/停止を最適化するために、制御システムへの入力としても使用できる。入口ポート28、30、及び出口ポート32を有する、油圧シャトル弁26も設ける。弁26は、ポンプ10又は第1の油圧アクチュエータ2それぞれから来る2つの入口ポート28、30からの最高圧力を、スプール弁18への供給を行う出口ポート32に交互に送る。
【0068】
図2は、スプール弁18の説明用の概略図である。弁18は、軸方向穿孔を軸方向に有する弁体と、上記穿孔に内包されたスプール36とを備える。スプール36は上記穿孔内で軸方向に可動である。3つの動作構成がスプール36に概略的に示されているが、これらは、スプールの、圧力ポートP、サービスポートA及びタンクポートTに対する、穿孔に沿った異なる軸方向位置に対応する、3つの動作位置それぞれにおける流れの状態を示している。スプール弁18はパイロット式で動作し、パイロットポート40がスプール36の第1の軸方向端部に設けられており、これは、シャトル弁26の出口32から流体を受け取るよう配設される。パイロットポート40への流れは比例的減圧弁(PPRV)42によって制御され、この比例的減圧弁(PPRV)42は、パイロットポート40における圧力を、弁42内のコイルに供給される電気制御信号に基づいて、比例的に変化させる。
【0069】
PPRV42はコントローラによって制御され、上記コントローラは、油圧システムの流れ需要及び現在の動作パラメータに基づいて、スプール36の位置を制御するよう構成された、制御アルゴリズムを動作させる。パイロットポート40における圧力はスプール36に作用して、スプール36を第1の軸方向に、パイロットポート40から離れるように軸方向移動させる。偏移部材44がスプール36の反対側の端部に設けられ、これは、パイロット圧力と反対の軸方向の偏移力を提供するよう配設される。偏移部材44は、圧縮ばね又はいずれの好適な偏移手段であってよい。偏移部材44は、スプール36を、パイロットポートに向かって第2の軸方向に偏移させる。スプール36を偏移部材44に向かって第1の方向に移動させるために、パイロット圧力は、偏移部材44の偏移ばね力を上回る必要がある。
【0070】
弁体34は、流れチャネル19を介してポンプ10に接続された圧力ポートP、流れチャネル22を介して第1の油圧アクチュエータ2に接続されたサービスポートA、及びタンクリザーバ12に接続されたタンクポートTを備える。スプール36は、パイロット信号の制御下において3つの異なる動作位置の間で軸方向に移動するよう構成される。スプール36は、3つの動作位置において、ポートP、A、Tの間に異なる流れ経路を画定するよう構成される。
【0071】
図3に示されている第1の動作位置では、スプール36は、圧力ポートP、サービスポートA、及びタンクポートTを接続する流体経路を画定するよう構成及び配設される。この第1の位置では、第1の流れ方向において流体が圧力ポートPからサービスポートA及びタンクポートTへと流れることができ、かつ第2の流れ方向において流体がサービスポートAから圧力ポートP及びタンクポートTへと流れるように、3つのポート全てが接続される。下で更に説明するように、第1の位置にあるとき、タンクポートTへの流れを可変的に制限するために、スプール36をパイロット信号によって制御できる。
【0072】
第1の位置では、スプール36は第1の動作モードで機能して、オフロードポンプ始動を促進する。油圧システムでは、油圧ポンプを「オフロード(off‐load)」で始動させること、即ちポンプが回転を始める間、ポンプに荷揚げ圧力による負荷がかからないことが望ましい。従って油圧ポンプを一定の速度で回転させた後で、負荷圧力を導入して徐々に増大させることができる。従来技術の構成では、これは一般にバイパス弁を用いて達成されていたが、追加のバイパス弁を含めると、油圧システムにコスト及び複雑さが追加される。フォークリフト業界におけるコスト競争力のため、バイパス弁は油圧システムから除外されることが多い。その結果、油圧ポンプはオンロード(on‐load)で始動され、負荷が徐々に導入されることはなく、これは油圧ポンプの早期摩耗につながる。
【0073】
スプール弁36の第1の動作モードは、圧力ポートP、タンクポートT、及びサービスポートAが開放されるように制御される。従って、ポンプ10が始動して回転を始めるとき、流体はタンク12へと流れることができるため、ポンプ10に負荷がかからない。第1の油圧アクチュエータ2に負荷がかかっているため、サービスポートAへの流れは、このポートが開放されているにもかかわらず存在しない。タンクポートTが完全に開放されているため、油圧の制限は存在せず、ポンプ10は負荷なしに動作する。このようにポンプ10をオフロードで始動させることができることにより、別個のバイパス弁と同一の機能が提供される。全ての出力流がタンク12へと迂回されるため、油圧ポンプ10は第1の動作モードにおいて、負荷を与えることなく、最小回転速度、例えば5lpmの出力流に相関する回転速度まで上昇させることができる。
【0074】
ポンプの起動後、ポンプ10が、ポンプ製造元が推奨する最小回転速度に対応する速度で動作している状態で、サービスポートAを介した第1の油圧アクチュエータ2への流れを開始できる。サービスポートAにおける出力流は、2つの条件下で提供され得る。第1の条件は、第1の油圧アクチュエータ2の流れ需要がポンプ10の最小出力流未満であることであり、第2の条件は、第1の油圧アクチュエータ2の流れ需要がポンプ10の最小出力流以上であることである。スプール36は、これら両方の条件下の流れ需要を満たすように、パイロット信号の制御下で動作可能である。
【0075】
ポンプ10が、ポンプ製造元が推奨する最小回転速度に対応する速度で動作しており、サービスポートAにおいて必要な出力流が最小出力流、即ち(ポートTへと戻る)バイパス流未満である、図4に示されている第2の動作モードでは、ポンプ10からの流れの総量がサービスポートAにおける需要を超えているため、ポンプ10の流れ全てをサービスポートAに配向することはできない。
【0076】
従って、スプール36を制御して、必要な流れがサービスポートAに再配向され、過剰な流れがタンクポートTに流れ続けるよう、タンクポートTを比例的に閉鎖する。このようにして、スプール36はタンクポートTを、圧力ポートPとタンクポートTとの間の可変流量オリフィスとして動作させる。タンクポートTを比例的に閉鎖することにより、ポートAとポートTとの間での流れの共有が形成され、ポートPは入口又は流れ供給口となる。スプール36は、アクチュエータの需要に応じてタンクポートTが閉鎖される程度を比例的に変更するために、パイロット信号によって制御可能である。
【0077】
第2の動作モードでは、サービスポートAへの流れを、ゼロとポンプ10の最小出力流との間、例えば0〜5LPMで制御する。これにより、サービスポートAにおけるアクチュエータ流が、ポンプ10の必要な最小出力流(最小回転速度)未満となる、フォークのクリープ速度を、ポンプに損傷を与えることなく実現できる。例えば、全負荷下での外接歯車ポンプの最小回転速度は500RPMであり得、この速度は、損傷を防止するための軸受の十分な潤滑が保証されるように設定される。典型的なフォークリフトでは、23.0cc/revのポンプ変位を使用できる。500RPMでは、これは11.5LPMの理論上の出力流を提供することになる。サービスポートAにおける必要な出力流が11.5LPM未満であり、ポンプがこの速度で動作させられる場合、ポンプは早期に摩耗する恐れがある。
【0078】
サービスポートAへの流れがポンプ10の最小の流れに等しくなる第3の動作モードでは、タンクポートTを完全に閉鎖できる。サービスポートAにおいて必要な出力流がポンプ10の最小出力流以上となると、タンク12への流れは不要となる。コントローラの制御アルゴリズムは、ポートPで提供される流入流を、タンクポートTへのバイパス流からサービスポートAにおけるアクチュエータ流へと比例的にシフトさせるために、スプール36を制御し始める。
【0079】
圧力ポートPにおける全ての供給流がサービスポートAへと再配向され、タンクポートTが完全に閉鎖されると、サービスポートAへの流れがポンプ10の速度によって完全に制御される。サービスポートAにおける流れ需要がポンプ10の最小出力流を超える場合、ポンプ10の速度を上昇させて、サービスポートAへの流れを増大させる。
【0080】
図4に示されている第2の動作位置では、スプール36は、流れチャネルが圧力ポートPとサービスポートAとの間に確立され、かつタンクポートTが閉鎖されるように、構成される。スプール36をパイロット信号によって制御して、圧力ポートP及び/又はサービスポートAを比例的に閉鎖することにより、ポンプ10と第1の油圧アクチュエータ2との間に制御オリフィスを形成する。従って、スプール36を制御することにより、圧力ポートPとサービスポートAとの間の流れを比例的に絞ることができる。第4の動作モードでは、圧力ポートPとサービスポートAとの間の流れの絞りは、第1の油圧アクチュエータ2と補助アクチュエータ4、6、8のうちの1つ以上との間での流れ共有状態が必要となる場合に、実装できる。この絞りを行わないと、油圧ポンプによって供給される油圧油は常に、抵抗が最小である経路を選択することになる。従って、第1のアクチュエータ2の流れ需要を超える圧力での補助シリンダ4、6、8への流れが必要である場合、第1のアクチュエータ2への流れを絞ることによって、システム圧力を、補助需要圧力のレベルまで上昇させることができなければならない。
【0081】
一例として、積荷を積載したフォークを持ち上げるために第1のアクチュエータ2が100バールを必要とする一方で、補助シリンダ4がリーチ機能を動作させるために150バールを必要とする場合、いずれの流れ共有論理の不在下では、ポンプ10が供給する全ての油が第1の油圧アクチュエータ2の荷揚げ機能へと配向されることになる。これにより、荷揚げ機能が予想外に速度超過となる一方で、リーチ機能が全く動作しなくなる。大半の油圧システムではこれは非常に望ましくないことであり、同時機能が必要とされる場合、何らかの流れ共有論理を回路内に構築する必要がある。しかしながら、流れ共有機能のために必要な追加の部品は典型的には、より複雑で高価なシステムをもたらす。本発明の第4の動作モードでは、流れの共有は、スプール36を制御してサービスポートAへの流れを絞ることにより、システム圧力を補助需要圧力まで上昇させることによって達成される。上述の例では、これには、サービスポートAへの流れに対して50バールの絞りを適用して、ポンプを150バールで動作させながらサービスポートAへの供給を100バールとすることが必要である。これにより、IFSスプール弁18に対して絞りによる50バールの損失が発生するものの、単一のポンプを使用して、複雑で高価な追加の弁及び制御システムを必要とすることなく、一次機能及び補助機能(即ち荷揚げ及びリーチ)を同時に実現できる。
【0082】
ほとんどの流れ共有回路において、流れの共有は、負荷感知論理によって達成され、この負荷感知論理は、パイロット信号を変化させることによってそれ自体を横断する圧力差を絞ることができるパイロット式動作論理素子を制御する。油圧システムでは、ポンプの出口ポートから、負荷感知信号が拾われることになるシステム内の地点までに、圧力の降下が常に存在する。この圧力降下をオフセットするために、ばねによる偏移を論理要素に導入することにより、必要ないときには論理要素を閉鎖したままとする必要がある。いくつかのシステムでは、この偏移ばね力は20バールもの高さとする必要がある場合がある。これらの弁の動作はかなり単純であるものの、これらはある大きな欠点を有する。同時機能が必要ない場合、システムの効率を最大化するためには、論理要素による圧力降下を最小化しなければならない。本発明では、偏移用のばねは不要である。というのは、弁の位置を、パイロット信号の制御下で、スプール36によって直接絞ることができるためである。偏移用のばねが不要であるため、同時機能が必要ないときには弁を最大開放位置に位置決めでき、これによりシステム効率を大幅に向上させることができる。
【0083】
第2の動作位置では、流れ方向を反転させて、サービスポートAから圧力ポートPへの流れを提供できる。スプール36は、圧力ポートPとサービスポートAとの間の流れを双方向に絞るように動作可能であり、従ってサービスポートAから圧力ポートPへと流れる際の流れを、圧力ポートPからポートAへの流れに関して上述したものと同一の様式で絞ることができ、これは、ポートPからポートAへ、及びポートAからポートPへの流れを絞ることを意味する。
【0084】
第5の動作モードでは、サービスポートAから圧力ポートPに供給することによって、第1の油圧アクチュエータ2からの加圧流体を荷降ろし中に使用して、エネルギ再生のためにポンプ10を駆動でき、ここでポンプモータ10は油圧モータとして動作して、油圧動力を機械的シャフト動力に変換する。これらの条件下では、例えば油圧ユニットが、動力学的性能が良好でない誘導モータ等の電気モータ/発電機で駆動される場合に、ポンプ10への負荷を制御下で開始できることが望ましい。スプール弁18は、スプール36を用いてサービスポートAから圧力ポートPへの流れを絞ることにより、完全に油圧式で、フォークの初期下降を達成できる。この重力荷降ろし段階の間に、電気モータ/発電機の回転を無負荷状態で開始させることができ、これにより、トルクを上昇させた後で再生モータ/発電機ユニットを徐々に開始させることができる。より一般には、スプール弁18の使用により、特にクリープ速度の低下が望ましい場合に、制御性を改善できる。
【0085】
ポンプモータ10を用いて、再生荷降ろし中にバッテリに貯蔵される電気エネルギを生成できる。再生荷降ろし中、上昇する負荷によって加圧される油圧流体からの運動エネルギは、ポンプモータ10を発電機ユニットとして駆動することによって、電気エネルギから変換される。例えばフォークリフトが主に荷降ろしを実施し、荷揚げ動作が限定的である場合等の、特定の動作条件下では、エネルギ再生が電気エネルギ消費を上回るため、バッテリを満充電状態とすることができる。バッテリパックの充電状態が100%になると、過充電によってバッテリが損傷する恐れがある。このシナリオでは、負荷をポンプモータ10から除去してエネルギ再生を停止するように、荷降ろし用の流れを絞ることができる。従ってスプール弁18は、安全で制御された様式での積荷の荷降ろしを可能としながら、バッテリの過充電の保護を提供する。従来技術の構成では、油圧システムは、サービスポートAから圧力ポートPへの流れの絞りを実現するために別個の論理要素弁を必要とする。というのは、このような論理要素弁は一方向にしか制御できないためであり、これにより追加の部品が更に必要となり、システムに複雑さ及びコストが付加される。
【0086】
第6の動作モードでは、第2の動作位置において、サービスポートAから圧力ポートPへの流れチャネルを完全に開放できる。サービスポートAから圧力ポートPへの流れチャネルを完全に開放することにより、スプール弁18による圧力降下を最小化して、システム効率を最大化する。サービスポートAから圧力ポートPへの流れチャネルが完全開放状態となるようにスプール36を制御することにより、積荷から得られる全ての運動エネルギを、モータ/発電機が電気エネルギ回収に使用でき、これにより従来技術のシステムに比べてエネルギ節約の可能性が最大化される。
【0087】
第3の動作位置では、図5に示されているように、スプール36は、サービスポートAとタンクポートTとの間に流れチャネルを画定し、圧力ポートPを閉鎖するよう構成される。スプール36はパイロット信号によって制御されて、タンクポートT及び/又はサービスポートAを比例的に閉鎖することにより、タンク12と第1の油圧アクチュエータ2との間に制御オリフィスを形成する。従って、積荷の荷降ろし中にスプール36を制御して、サービスポートAとタンクポートTとの間の流れを比例的に絞ることができる。
【0088】
第3の動作位置は、エネルギ再生を伴わない、従来のものに近い積荷の重力荷降ろし手段を提供する。重力荷降ろし中、サービスポートAとタンクポートTとの間のオリフィスを制御することにより、誘起圧力を大気圧まで絞ることによって、全ての利用可能な運動エネルギを油中の熱へと変換する。第1の油圧アクチュエータ2からの全ての流れは、ポンプ10を通らずに直接タンク12に至る。エネルギ回収動作モードに比べて効率は大幅に低いものの、第3の動作位置には重力荷降ろしによって達成できる特定の利点が存在する。
【0089】
重力荷降ろし中の流れの絞りによって生成される熱エネルギは、一般には望ましくない。というのは、油圧油の加熱は、油圧力学上のより強力な冷却システムを必要とするためである。しかしながら、フォークリフトトラックを冷蔵環境で使用する場合、荷降ろしからの運動エネルギを用いて油圧油の温度をその動作ゾーンに可能な限り迅速に移行させるための高効率のシステムに戻すことが可能である可能性がある。エネルギ回収システムをフォークリフトトラックに実装する場合、荷降ろしからのエネルギは有用な電気エネルギに変換され、これによって、油へと伝達される熱の量が本質的に低減される。
【0090】
上述のように、特定の状況においては、バッテリが満充電されてしまうため、再生荷降ろしが不可能である。第2の動作位置での絞りを伴う重力荷降ろし及び油圧ポンプ10の自由な回転の代わりに、スプール弁18を、荷降ろし用の流れが絞られてタンク12へと直接向かう第3の動作位置に切り替えることができる。このようにすると、ポンプ10は回転する必要がなくなり、ポンプ10の動作が削減され、システムのノイズが最小化される。
【0091】
更なる利点として、本発明のIFS弁は、4象限ポンプ技術を必要とすることなく、荷降ろし中の補助シリンダの動作を可能とする。第1の油圧シリンダ2の下降中、「リーチ」等の同時補助機能が必要となる場合がある。再生荷降ろし中にポンプ10を使用して、利用可能な運動エネルギを捕捉し、これを用いてバッテリを充電する。再生荷降ろしイベント中に同時補助機能が必要となる場合、第1の油圧シリンダ2上の誘起負荷を用いて(この圧力が補助需要を満たすために十分なものである場合に)この補助機能を動作させることができる。しかしながら、第1の油圧シリンダ2上の誘起負荷が十分でない場合、補助機能を動作させるためにポンプ10が必要となる。ポンプの戻りラインに負荷をかけることにより、荷降ろし用の流れがポンプを通過する際に、ポンプを動作させて、下降するシリンダからの圧力をブーストできる。しかしながら、これには2Q(2象限)ポンプ技術から4Q(4象限)ポンプ技術への変更が必要であり、これはコスト及び複雑さを大幅に増大させ、このようなエネルギ回収システムで使用できるポンプ技術を制限する。
【0092】
積荷の荷降ろし中に補助シリンダに供給を行うためにポンプ動作が必要である本発明では、スプール36を第3の位置に移動させることによって、第1のアクチュエータ2からタンク12への流れを可能とし、これはポンプ10をバイパスし、ポンプ10を補助需要に対する供給を行うために動作させることができる。
【0093】
図6は、インテリジェントな流れ共有用スプール弁18を組み込んだ油圧回路50の簡略化した概略図を示す。上記システムは、メインアクチュエータシリンダC1及び第2のアクチュエータシリンダC2を含む。メインシリンダC1は、単一作用型の荷揚げ用アクチュエータシリンダであり、ここでは、作動流体は積荷を荷揚げするためだけにピストンの片側に作用する。逆方向において、積荷の荷降ろしは積荷の重さによって作動される。補助アクチュエータシリンダC2は二重作用型アクチュエータシリンダであり、ここでは、作動流体はピストンの両側に交互に作用する。
【0094】
上記システムは、電気モータ/発電機56、油圧ポンプ/モータ58、及びバッテリ等のエネルギ貯蔵デバイス60を備える動力伝達系を含む。モータ/発電機56及びポンプ/モータ58は、方向矢印Mで示されている前方方向、及び方向矢印Gで示されている逆方向に作動できる。前方方向Mでは、モータ/発電機56はエネルギ貯蔵デバイス60からのエネルギを消費する。逆方向Gでは、モータ/発電機56はポンプ/モータ58によって駆動されて電気エネルギを生成し、この電気エネルギはエネルギ貯蔵デバイス60に戻される。
【0095】
メインアクチュエータシリンダC1への、及びメインアクチュエータシリンダC1からの油圧流体の流れは、スプール弁18によって制御される。しかしながら、スプール弁はメインアクチュエータシリンダC1を制御する最も効果的かつ効率的な手段を提供するとはいえ、他の弁手段又は弁手段の組み合わせを使用してもよいことが理解されるだろう。補助アクチュエータシリンダC2への、及び補助アクチュエータシリンダC2からの油圧流体の流れは、第2の油圧制御弁62によって制御される。
【0096】
スプール弁18は、3つのポート:圧力ポートP1、サービスポートA1、及び戻りポートT1を有する。弁18の圧力ポートP1は、ポンプ/モータ58によって供給を受ける。サービスポートA1は、メインアクチュエータシリンダC1への供給を行い、戻りポートT1は油圧タンクリザーバ12に接続される。メインアクチュエータシリンダC1が重力に対抗して作用する単一作用型シリンダであるため、スプール弁18は単一のサービスポートA1しか必要としない。メインアクチュエータシリンダC1の伸長は、サービスポートA1を介して油圧流体をメインアクチュエータシリンダC1に供給することによって達成される。メインアクチュエータシリンダC1の引き込みは、同一のポートA1を通した、重力によって誘起される逆方向の流れによって達成される。
【0097】
第2の油圧制御弁62は、4つの油圧ポート:圧力ポートP2、戻りポートT2、及びシリンダを双方向に動作させるために必要な2つの制御下サービスポートA2、B2を有する。補助シリンダC2は2つのポート66、68を有する。第1のポート66は第1のサービスポートA2に接続され、第2のポート68は第2のサービスポートに接続される。圧力供給ポートP2は、ポンプ/モータ58によって供給を受け、戻りポートT2は油圧リザーバ(T)へと戻るようにタンク12に接続され、2つの制御下出力ポート(A2、B2)はアクチュエータC2へとつながる。補助シリンダC2を伸長させるためには、第1のサービスポートA2を介して流体を第1のポート66に供給する。流体は第2のポート68から第2のサービスポートB2を介して戻りポートT2へと流れる。補助シリンダC2を引き込むためには、第2のサービスポートB2を介して流体を第2のポート68に供給する。流体は第1のポート66から第1のサービスポートA2を介して戻りポートT2へと流れる。
【0098】
スプール弁18及び第2の油圧制御弁62を比例的に制御することにより、弁を通る流れが制限される程度を変化させることができる。スプール弁18に関しては、圧力ポートP1とサービスポートA1との間の流路を、双方向の流れに関して比例的に制限できる。また、サービスポートA1と戻りポートT1との間の流れも可変的に制限できる。第2の油圧制御弁62を制御することにより、補助シリンダC2を伸長させるか引き込むかに応じて、それぞれP2からA2又はP2からB2への流れを比例的に制限できる。
【0099】
上記システムは、メインアクチュエータシリンダC1へと向かう流れQ1、及びメインアクチュエータシリンダC1を動作させるために必要な圧力PT1を決定するための手段を含む。これは、流れセンサ70及び圧力センサ72の形態のデータ取得デバイスを備えてよい。同様に、補助シリンダC2のポートの流れ及び圧力要件を決定するために流れセンサ74、76及び圧力センサ78、80を設けてもよい。
【0100】
メインアクチュエータシリンダC1を動作させるために必要なモータ速度、及びメインアクチュエータシリンダC1からの荷降ろし用の流れによって生成される逆方向再生モータ速度は、それぞれ矢印方向M1、G1で示されている。補助シリンダC2を動作させるために必要なモータ速度は、矢印M2で示されている。M1、G1、M2は、所与の機能のためのモータの等価動作速度を決定する変数として組み合わされる。例えば、メインアクチュエータシリンダC1及び補助シリンダC2を特定の速度で同時に動作させる場合、合計モータ速度MはM1とM2との和、即ちM=M1+M2となる。
【0101】
メインアクチュエータシリンダC1に対する負荷が低下しているときに、補助アクチュエータシリンダC2によって作動される補助機能が必要となる場合、メインアクチュエータシリンダC1上の誘起負荷によって生成される圧力を用いて(この圧力が補助需要を満たすために十分なものである場合に)この補助機能を動作させることができる。補助アクチュエータシリンダC2の負荷要件に応じて、メインアクチュエータシリンダC1の誘起負荷からの油圧動力の一部又は全てを補助アクチュエータC2に配向して、補助アクチュエータシリンダC2に動力供給できる。油圧動力が補助アクチュエータシリンダC2の要件を上回る場合、過剰な動力を、電気エネルギの再生のためにポンプ/モータ58に配向してよい。
【0102】
メインアクチュエータシリンダC1が、下降速度G1の荷降ろしエネルギ再生モードで動作する場合、合計モータ速度Mは、ポンプを通る逆方向の流れであるメインアクチュエータシリンダC1の下降速度G1と、補助アクチュエータシリンダC2の速度M2との合計に左右される。従って、M=−G1+M2である。速度M2がG1より大きい場合、即ちメインアクチュエータシリンダC1からのエネルギ回収が、補助シリンダC2に必要な流れ未満である場合、モータは正方向に回転してM=−G1+M2となり、エネルギがバッテリから取り出される(E+)。M2<G1である場合、即ちC2に必要な流れが、C1から回収されるエネルギ未満である場合、電気モータは逆方向(G)に回転し、G=−G1+M2となる。
【0103】
以下で説明される油圧システム50の動作の様々な機能モードを説明するフローチャートが図7に提供されている。
【0104】
機能F1
オペレータは、(図7ではC1として示されている)メインアクチュエータシリンダC1を伸長させる必要がある単一の機能をリクエストする。これは典型的には荷揚げ状態となる。スプール弁18は完全に開放され、P1からA1への流れが可能となる。従って、メインアクチュエータシリンダC1の伸長速度は、モータとして動作するモータ/発電機56と、ポンプとして動作するポンプ/モータとの速度によって直接制御されることになる。第2の油圧制御弁62は完全に閉鎖され、従って補助アクチュエータシリンダC2への流れが防止される。
【0105】
エネルギは、速度コマンド及び荷揚げされている積荷に比例して、モータ/発電機56によってバッテリ60から引き出される。
【0106】
機能F2
オペレータは、メインアクチュエータシリンダC1を引き込む必要がある単一の機能、即ち荷降ろし状態をリクエストする。メインアクチュエータシリンダC1の引き込み速度は、モータ/発電機56を発電機として動作させ、ポンプ/モータ58をモータとして速度制御下で動作させることによって、直接制御される。メインアクチュエータシリンダC1の伸長速度は、A1からP1への流体経路を完全に開放することによって制御される。絞りを行わないため、エネルギ損失は最小限に抑えられる。第2の油圧制御弁62は完全に閉鎖され、従って補助アクチュエータシリンダC2への流れが防止される。
【0107】
荷降ろしされる積荷に由来する位置エネルギは全て電気エネルギへと再生され、これは荷降ろし速度コマンド、及び荷降ろし中に重力によって誘起される負荷の大きさに比例する。位置エネルギは回路内の他の場所には全く再配向されないため、この機能は完全電気エネルギ再生とみなすことができる。
【0108】
機能F3
オペレータは、補助アクチュエータシリンダC2が伸長する必要がある単一の機能(通常はリーチ、傾斜、又は側方シフト等の補助機能状態)をリクエストする。補助アクチュエータシリンダC2の伸長速度は、モータ/発電機56をモータとして動作させ、ポンプ/モータ58をポンプとして速度制御下で動作させることによって、直接制御される。スプール弁18を完全に閉鎖されるように制御して、P1からA1への流れを防止し、第2の油圧制御弁62を完全に開放して、P2からA2への流れを可能にする。ここでもまた、この完全に開放された状態によって、エネルギ損失は最小限に抑えられる。いくつかのシナリオでは、P2からA2への流れを絞ることによって、負荷の超過を防止するため又は機能の安定性を改善するために必要となり得る、負荷に対する十分な背圧を生成できる。
【0109】
バッテリ60から引き出されるエネルギは、速度コマンド、及び補助アクチュエータシリンダC2によって動かされる積荷、並びに上述のシナリオにおける、ある程度の潜在的な追加の絞り損失に比例する。
【0110】
機能F4
オペレータは、補助アクチュエータシリンダC2を引き込む必要がある単一の機能(通常はリーチ、傾斜、又は側方シフト等の補助機能状態)をリクエストし、メインアクチュエータシリンダの伸長速度は、モータ/発電機56をモータとして動作させ、ポンプ/モータ58をポンプとして速度制御下で動作させることによって、直接制御される。スプール弁18を完全に閉鎖されるように制御して、P1からB1への流れを防止し、第2の油圧制御弁62を完全に開放して、P2からB2への流れを可能にする。ここでもまた、この完全に開放された状態によって、エネルギ損失は最小限に抑えられる。いくつかのシナリオでは、P2からB2への流れを絞ることによって、負荷の超過を防止するため又は機能の安定性を改善するために必要となり得る、負荷に対する十分な背圧を生成できる。
【0111】
機能F5
オペレータは、メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2の両方が伸長する必要がある、二重の同時機能をリクエストする。これは典型的には、リーチ、傾斜、又は側方シフト等の補助機能状態を伴う、荷揚げ状態である。弁の制御は、メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷条件に左右される。
【0112】
メインアクチュエータシリンダC1に対する負荷が、補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷未満である(PT1<PT2)場合、スプール弁18をP1からA1への流れに関して絞ることにより、同時機能を動作させるために十分な背圧を形成する。このようにしなければ、油は抵抗が最小の経路を通り、これにより、補助アクチュエータシリンダC2は非動作状態となり、メインアクチュエータシリンダC1は入力コマンドよりも速いオーバーラン状態となる。
【0113】
第2の油圧制御弁62を(P2からA2への流れに関して)完全に開放されるように制御して、エネルギ損失を最小化する。必要に応じて、P2からA2への流れを絞ることにより、例えば負荷の超過を防止するため又は機能の安定性を改善するための、負荷に対する十分な背圧を生成できる。
【0114】
メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2の速度は、モータ/発電機56をモータとして動作させ、ポンプ/モータ58をポンプとして速度制御下で動作させることによって、制御される。モータ56の合計速度Mは、部分速度コマンドM1、M2両方を組み合わせたものとなり、従ってM=M1+M2である。
【0115】
M1+M2が、ポンプ/モータ58が動作する最大許容速度を下回ったままである場合、機能C1、C2はいずれも、リクエストされた速度で動作する。M1+M2がこの最大速度を超えると、スプール弁18に対する絞りコマンドを変化させることによって、メインアクチュエータシリンダC1又は補助アクチュエータC2が優先される。必ずではないが通常、補助アクチュエータシリンダC2が優先され、即ちその速度が影響を受けないままとされる。この動作は、絞り荷揚げ動作による流れ共有荷揚げと呼ぶことができる。
【0116】
バッテリ60から引き出されるエネルギは、合計速度コマンド、並びにメインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2によって動かされる積荷、並びに上述のシナリオにおける、ある程度の潜在的な追加の絞り損失に比例する。
【0117】
機能F6
オペレータは、メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2の両方が伸長する必要がある、二重の同時機能、即ちリーチ、傾斜、又は側方シフト等の補助機能状態を伴う、荷揚げ状態をリクエストする。弁の制御は、メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷条件に左右される。
【0118】
メインアクチュエータシリンダC1に対する負荷が、補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷以上である(PT1≧PT2)場合、第2の油圧制御弁62をP2からA2への流れに関して絞ることにより、同時機能を動作させるために十分な背圧を形成する。このようにしなければ、油は抵抗が最小の経路を通り、これにより、C1は非動作状態となり、補助アクチュエータシリンダC2は入力コマンドよりも速いオーバーラン状態となる。
【0119】
スプール弁18を(P1からA1への流れに関して)完全に開放されるように制御して、エネルギ損失を最小化する。必要に応じて、P1からA1への流れを絞ることにより、例えば負荷の超過を防止するため又は機能の安定性を改善する必要がある場合に、負荷に対する十分な背圧を生成できる。
【0120】
メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2の速度は、モータ/発電機56をモータとして動作させ、ポンプ/モータ58をポンプとして速度制御下で動作させることによって、直接制御される。モータの合計速度Mは、部分速度コマンドM1、M2両方を組み合わせたものとなり、従ってM=M1+M2である。
【0121】
M1+M2が、P/Mが動作する最大許容速度を下回ったままである場合、機能C1、C2はいずれも、リクエストされた速度で動作する。M1+M2がこの最大速度を超えると、スプール弁18に対する絞りコマンドを変化させることによって、メインアクチュエータシリンダC1又は補助アクチュエータC2が優先される。必ずではないが通常、補助アクチュエータシリンダC2が優先され、即ちその速度が影響を受けないままとされる。この動作は、絞り補助動作による流れ共有荷揚げと呼ぶことができる。
【0122】
バッテリ60から引き出されるエネルギは、合計速度コマンド、並びにメインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2によって動かされる積荷、並びに上述のシナリオにおける、ある程度の潜在的な追加の絞り損失に比例する。
【0123】
機能F7
オペレータは、メインアクチュエータシリンダC1が伸長する必要があり、かつ補助アクチュエータシリンダC2が引き込まれる必要がある、二重の(同時)機能、即ちリーチ、傾斜、又は側方シフト等の補助機能状態を伴う荷揚げ状態をリクエストする。弁の制御は、メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷条件に左右される。
【0124】
メインアクチュエータシリンダC1に対する負荷が、補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷未満である(PT1<PT3)場合、スプール弁18をP1からA1への流れに関して絞ることにより、同時機能を動作させるために十分な背圧を形成する。このようにしなければ、油は抵抗が最小の経路を通り、これにより、補助アクチュエータシリンダC2は非動作状態となり、メインアクチュエータシリンダC1は入力コマンドよりも速いオーバーラン状態となる。
【0125】
第2の油圧制御弁62を(P2からB2への流れに関して)完全に開放されるように制御して、エネルギ損失を最小化する。必要に応じて、P2からB2への流れを絞ることにより、例えば負荷の超過を防止するため又は機能の安定性を改善する必要がある場合に、負荷に対する十分な背圧を生成できる。
【0126】
メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2の速度は、モータ/発電機56をモータとして動作させ、ポンプ/モータ58をポンプとして速度制御下で動作させることによって、直接制御される。モータの合計速度Mは、部分速度コマンドM1、M2両方を組み合わせたものとなり、従ってM=M1+M2である。M1+M2が、ポンプ/モータ58が動作する最大許容速度を下回ったままである場合、機能C1、C2はいずれも、リクエストされた速度で動作する。M1+M2がこの最大速度を超えると、スプール弁18に対する絞りコマンドを変化させることによって、メインアクチュエータシリンダC1又は補助アクチュエータC2が優先される。必ずではないが通常、補助アクチュエータシリンダC2が優先され、即ちその速度が影響を受けないままとされる。この動作は、絞り荷揚げ動作による流れ共有荷揚げと呼ぶことができる。
【0127】
バッテリ60から引き出されるエネルギは、合計速度コマンド、並びにメインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2によって動かされる積荷、並びに上述のシナリオにおける、ある程度の潜在的な追加の絞り損失に比例する。
【0128】
機能F8
オペレータは、メインアクチュエータシリンダC1が伸長する必要があり、かつ補助アクチュエータシリンダC2が引き込まれる必要がある、二重の同時機能、即ちリーチ、傾斜、又は側方シフト等の補助機能状態を伴う荷揚げ状態をリクエストする。弁の制御は、メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷条件に左右される。
【0129】
メインアクチュエータシリンダC1に対する負荷が、補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷以上である(PT1≧PT3)場合、第2の油圧制御弁62をP2からB2への流れに関して絞ることにより、同時機能を動作させるために十分な背圧を形成する。このようにしなければ、油は抵抗が最小の経路を通り、これにより、メインアクチュエータシリンダC1は非動作状態となり、補助アクチュエータシリンダC2は入力コマンドよりも速いオーバーラン状態となる。
【0130】
スプール弁18を(P1からA1への流れに関して)完全に開放されるように制御して、エネルギ損失を最小化する。また、P1からA1への流れを絞ることにより、例えば負荷の超過を防止するため又は機能の安定性を改善するための、負荷に対する十分な背圧を生成できる。メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2の速度は、モータ/発電機56をモータとして動作させ、ポンプ/モータ58をポンプとして速度制御下で動作させることによって、直接制御される。モータの合計速度Mは、部分速度コマンドM1、M2両方を組み合わせたものとなり、従ってM=M1+M2である。M1+M2が、ポンプ/モータ58が動作する最大許容速度を下回ったままである場合、機能C1、C2はいずれも、リクエストされた速度で動作する。M1+M2がこの最大速度を超えると、スプール弁18に対する絞りコマンドを変化させることによって、メインアクチュエータシリンダC1又は補助アクチュエータC2が優先される。必ずではないが通常、補助アクチュエータシリンダC2が優先され、即ちその速度が影響を受けないままとされる。この動作は、絞り補助動作による流れ共有荷揚げと呼ぶことができる。
【0131】
バッテリ60から引き出されるエネルギは、速度コマンド、並びにメインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2によって動かされる積荷、並びに上述のシナリオにおける、ある程度の潜在的な追加の絞り損失に比例する。
【0132】
機能F9
オペレータは、メインアクチュエータシリンダC1が引き込まれる必要があり、かつ補助アクチュエータシリンダC2が伸長する必要がある、二重の(同時)機能、即ちリーチ、傾斜、又は側方シフト等の補助機能状態を伴う荷降ろし状態をリクエストする。弁の制御は、メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷条件に左右される。
【0133】
メインアクチュエータシリンダC1に対する負荷が、補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷未満である(PT1<PT2、又はPT1<PT3)場合、メインアクチュエータシリンダC1に対する負荷は、補助アクチュエータシリンダC2への供給を行うには不十分である。このシナリオでは、システムは「従来の油圧システム」に戻り、メインアクチュエータシリンダC1からの誘起負荷を絞ってタンク12に迂回させる。これは通常、重力荷降ろしと呼ばれ、スプール弁(ポートA1からT1への流れ)を比例的に制御することによって達成される。全ての位置エネルギは、油中の熱へと変換される。
【0134】
補助アクチュエータシリンダC2は、補助アクチュエータシリンダC2を伸長させる(F3)か引き込む(F4)かに応じて、機能F3及び機能F4で説明したように制御される。
【0135】
バッテリ60から引き出されるエネルギは、合計速度コマンド、及び補助アクチュエータシリンダC2によって動かされる積荷、並びに上述のシナリオにおける、ある程度の潜在的な追加の絞り損失に比例する。メインアクチュエータシリンダC1の負荷及び速度は、電気油圧式動力伝達系によるエネルギ消費/再生に影響を及ぼさない。その代わり、メインアクチュエータシリンダC1上で誘起される位置エネルギを、スプール弁18を通してタンクに対して絞り、全てのエネルギを油圧油中の熱へと消費される。この動作は、重力荷降ろしによる流れ共有荷降ろしと呼ぶことができる。
【0136】
機能F10〜F12
オペレータは、メインアクチュエータシリンダC1が引き込まれる必要があり、かつ補助アクチュエータシリンダC2が伸長する必要がある、二重の同時機能、即ちリーチ、傾斜、又は側方シフト等の補助機能状態を伴う荷降ろし状態をリクエストする。弁の制御は、メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷条件、並びにメインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2に関する速度コマンドに左右される。
【0137】
メインアクチュエータシリンダC1に対する負荷が、補助アクチュエータシリンダC2上で誘起される負荷以上である(PT1≧PT2)場合、第2の油圧制御弁62をP2からA2への流れに関して絞ることにより、同時機能を制御下で動作させるために十分な背圧を形成する。このようにしなければ、油はメインアクチュエータシリンダC1から補助アクチュエータシリンダC2へと「制御できない状態で(uncontrollably)」流れ、誘起負荷が大きく異なる場合、これはC2の危険な、過剰に速い動作を引き起こす可能性がある。スプール弁18を(A1からP1への流れに関して)完全に開放されるように制御して、エネルギ損失を最小化する。
【0138】
メインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2の速度は、モータ/発電機56を発電機として動作させ、ポンプ/モータ58をモータとして速度制御下で動作させることによって、直接制御される。モータの合計速度Mは、部分速度コマンドG1、M2両方を組み合わせたものとなり、従ってM=G1+M2である。
【0139】
PT1がPT2より大きい場合、速度制御に関して3つのシナリオが存在する。
【0140】
機能F10
第1の選択肢では、メインアクチュエータシリンダC1の引き込み速度G1は補助アクチュエータシリンダC2の伸長速度M2より低い。誘起圧力がC2への供給を直接行うために十分なものであっても、メインアクチュエータシリンダC1引き込み速度コマンドが遅すぎるため、これはC2伸長速度に影響を及ぼす。従って制御システムは従来のシステムに戻り、スプール弁18は、A1からT1への負荷を絞り、エネルギを熱として消費するために使用される。これは、一時的な油圧エネルギ消費を伴う流れ共有と呼ぶことができる。
【0141】
あるいは第2の選択肢では、メインアクチュエータシリンダC1からの誘起圧力及び流れ(即ちC1動力)を用いて、補助アクチュエータシリンダC2を直接駆動できる。このシナリオでは、第2の油圧制御弁62を(P2からA2への流れに関して)絞り、スプール弁18を(A1からP1への流れに関して)完全に開放して、エネルギ再生を最大化する。この動作は、100%の油圧エネルギ回収を伴う流れ共有と呼ぶことができる。
【0142】
第1の選択肢又は第2の選択肢のいずれを選択するかは、エンドユーザに依存し、これらはいずれも同一のハードウェアを用いて実装できる。エネルギの節約が最も重要である場合には、第2の選択肢が好ましいものとなる。しかしながら生産性がより重要な場合には、第1の選択肢がより良好な選択肢となる。また、バッテリの充電の状態に応じて制御アルゴリズムを「動作中に(on‐the‐fly)」変更することもできる。
【0143】
第1の選択肢では、速度コマンド、及び補助アクチュエータシリンダC2によって動かされる負荷、並びに上記シナリオにおけるある程度の潜在的な追加の絞り損失に比例して、バッテリ60からエネルギが取り出される。C1の負荷及び速度は、電気油圧動力伝達系を通したエネルギ消費/再生に影響を及ぼさず、モータ/発電機56は、P/Mをポンプ(P)として駆動するモータとして動作させる。
【0144】
第2の選択肢では、メインアクチュエータシリンダC1上で誘起される負荷及び速度が補助アクチュエータシリンダC2に直接供給されるものの、補助アクチュエータシリンダC2が通常よりゆっくりと動作することになるため、エネルギがバッテリ60から取り出されない。モータ/発電機56はC2の駆動に使用されない。この動作は、制限された補助速度動作、及び100%の油圧エネルギ回収を伴う、流れ共有荷降ろしと呼ばれる。
【0145】
機能F11
この機能は、メインアクチュエータシリンダC1の引き込み速度G1が補助アクチュエータシリンダC2の伸長速度M2と等しいシナリオに関連する。
【0146】
このシナリオでは、メインアクチュエータシリンダC1からの油圧動力は、補助アクチュエータシリンダC2に直接伝達される。補助アクチュエータシリンダC2は、メインアクチュエータシリンダC1からの油圧動力のみによって作動する。メインアクチュエータシリンダC1上で誘起される負荷及び速度が補助アクチュエータシリンダC2の速度とちょうど一致して、これに対する供給を行うため、バッテリ60からエネルギが引き出されない。これら2つの負荷を一致させてオーバーランを防止するために、第2の油圧制御弁62によって多少の絞りを提供してもよい。モータ/発電機56は、メインアクチュエータシリンダC1引き込み速度又は補助アクチュエータシリンダC2伸長速度のいずれの駆動にも使用されない。メインアクチュエータシリンダC1引き込み速度は、C2を伸長させるための第2の油圧制御弁62による絞りによって制御される。
【0147】
この機能は、完全に速度が一致した補助動作、及び100%の油圧エネルギ回収を伴う、流れ共有荷降ろしと呼ばれる。
【0148】
機能F12
この機能は、メインアクチュエータシリンダC1の引き込み速度G1が補助アクチュエータシリンダC2の伸長速度M2を超えるシナリオに関連する。
【0149】
このシナリオでも、メインアクチュエータシリンダC1からの油圧動力は、補助アクチュエータシリンダC2に直接伝達される。補助アクチュエータシリンダC2は、メインアクチュエータシリンダC1からの油圧動力のみによって作動する。メインアクチュエータシリンダC1上で誘起される負荷及び速度が補助アクチュエータシリンダC2の動力要件を超えるため、バッテリ60からエネルギが引き出されない。補助アクチュエータシリンダC2の速度は、油圧流体をメインアクチュエータシリンダC1から補助アクチュエータシリンダC2に直接送る第2の油圧制御弁62を絞ることによって制御され、これは動作のうちの油圧エネルギ回収部分である。メインアクチュエータシリンダC1の速度は、メインアクチュエータシリンダC2の伸長又は引き込み速度を超える。従って、補助アクチュエータシリンダC2が必要としない過剰な油圧流体がポンプ/モータ58へと配向されることにより、モータ/発電機56が発電機として駆動されて、バッテリ60に貯蔵される電気エネルギが再生される。
【0150】
この機能は、複合/ハイブリッド型電気‐油圧エネルギ回収を伴う流れ共有荷降ろしと呼ばれる。
【0151】
油圧システムコントローラの制御アルゴリズムは、オペレータからのコマンドリクエスト、並びにメインアクチュエータシリンダC1及び補助アクチュエータシリンダC2のシステム状態を常に監視する。コントローラは、利用可能な負荷に応じてエネルギ効率及び生産性を最適化するために、上述の複数の機能間の切り替えをインテリジェントに決定するようプログラムできる。コントローラは、異なる複数の動作モードを「動作中に(on‐the‐fly)」切り替えることができる。例えばオペレータは、F2に対応する単一の動作で積荷を荷降ろしし始めてよい。これに続いて補助コマンドを追加してよい。メインアクチュエータシリンダC1上の負荷に応じて、コントローラは、速度コマンドに応じた機能F9又はF10/F11/F12への切り替えを行う。例えばオペレータが、ゆっくりとしたメインアクチュエータシリンダC1引き込みコマンドと、迅速な補助アクチュエータシリンダC2伸長コマンドとを提供する場合、これは機能F10を必要とする。メインアクチュエータシリンダC1引き込み速度コマンドが上昇するとすぐに、システムは必要に応じて、F11及びF12への切り替えを行うことができる。補助アクチュエータシリンダC2がストロークの終点に到達すると、補助アクチュエータシリンダC2コマンドは無効となり、システムは機能F2に戻る。コマンド及び制御アルゴリズムの機能のこのようなあらゆる切り替えの間、補助アクチュエータシリンダC2の引き込みは一定であるが、エネルギ流路は、完全電気エネルギ回収(F2)から完全油圧エネルギ回収(F10/F11)へ、そしてハイブリッド電気‐油圧エネルギ回収(F12)へと切り替えられ、再び完全電気エネルギ回収(F2)へと戻るように切り替えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】