(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532136(P2021-532136A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】がんの治療のための免疫調節粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 31/765 20060101AFI20211029BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20211029BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20211029BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20211029BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20211029BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20211029BHJP
A61K 33/242 20190101ALI20211029BHJP
A61K 33/38 20060101ALI20211029BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20211029BHJP
A61K 33/44 20060101ALI20211029BHJP
A61K 31/745 20060101ALI20211029BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20211029BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20211029BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20211029BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20211029BHJP
A61K 9/51 20060101ALN20211029BHJP
A61K 9/14 20060101ALN20211029BHJP
【FI】
A61K31/765
A61K45/00
A61P35/00
A61P37/02
A61K33/26
A61K33/30
A61K33/242
A61K33/38
A61K33/24
A61K33/44
A61K31/745
A61P35/02
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K9/51
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2021-504155(P2021-504155)
(86)(22)【出願日】2019年7月31日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月4日
(86)【国際出願番号】US2019044454
(87)【国際公開番号】WO2020028544
(87)【国際公開日】20200206
(31)【優先権主張番号】62/788,569
(32)【優先日】2019年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/712,604
(32)【優先日】2018年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】521029416
【氏名又は名称】オンコア ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】プイシス,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA65
4C076BB01
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4C085GG02
4C086AA01
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4C086MA58
4C086MA59
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4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
【課題】がんの治療のための免疫調節粒子に関する。
【解決手段】本開示は、腫瘍成長及び転移の促進に関連する骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球、単球及び/または腫瘍関連間質の活性を調節するために免疫調節粒子をがん治療薬、例えばチェックポイント阻害剤またはバイオ薬剤と併用してがん及び増殖性疾患を治療する方法を提供する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんまたは増殖性疾患を治療する方法であって、
負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて前記対象に投与すること
を含み、前記粒子が、
結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤
を含有しない、前記方法。
【請求項2】
前記投与が、腫瘍部位において骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球及び/または単球を変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与が前記対象において腫瘍サイズ及び/または腫瘍成長を低減する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与が抗腫瘍免疫応答を調節する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記投与ががん幹細胞及び/または間葉系幹細胞を変化させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記投与が腫瘍関連間質を変化させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記投与が前記腫瘍関連間質中の線維芽細胞、脂肪細胞、内皮細胞、間葉系間質細胞及び/またはECMを変化させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記負に帯電した粒子が、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリスチレン粒子、もしくはポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)粒子、ダイヤモンド粒子、または鉄、亜鉛、カドミウム、金もしくは銀粒子である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記負に帯電した粒子がポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)粒子である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子が、
約50:50、約80:20から約100:0までのポリ乳酸:ポリグリコール酸、または
約50:50から、約80:20から約100:0までのポリグリコール酸:ポリ乳酸
を含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子が50:50のポリ乳酸:ポリグリコール酸を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子がカルボキシル化されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子が、−100mV〜−1mVのゼータ電位を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子が、−80mV〜−30mVのゼータ電位を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記負に帯電した粒子の直径が0.1μm〜10μmである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記負に帯電した粒子の直径が400nm〜800nmである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、脳腫瘍、皮膚癌、眼部癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、子宮頸癌、肝臓癌、結腸癌、大腸癌、直腸癌、骨癌、子宮癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、口腔癌、甲状腺癌、腎臓癌、精巣癌、白血病、リンパ腫及び中皮腫からなる群から選択されるがんを有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記がん治療薬が、成長阻害剤、DNA複製阻害剤、キナーゼ阻害剤、シグナル伝達カスケード阻害剤、血管新生阻害剤、代謝阻害剤、アミノ酸合成阻害剤、発がん性タンパク質の選択的阻害剤、転移の阻害剤、抗アポトーシス因子の阻害剤、アポトーシス誘導剤、酵素阻害剤、ヌクレオシドシグナル伝達阻害剤及びDNA損傷剤からなる群から選択される化学療法薬である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記がん治療薬が、サイトカイン、酵素、血管新生阻害剤、免疫チェックポイント調節剤及びモノクローナル抗体からなる群から選択される1つ以上のバイオ薬剤を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記サイトカインが、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン及びインターロイキンからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫チェックポイント調節剤が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、プログラム細胞死タンパク質リガンド−1(PD−L1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有−3(TIM−3)、リンパ球活性化遺伝子−3(LAG−3)及び/またはTIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)を標的とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫チェックポイント調節剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブ及びデュルバルマブからなる群から選択される抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記モノクローナル抗体が、単一特異性、二重特異性、三重特異性、または二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記モノクローナル抗体が、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、デノスマブ、イブリツモマブ、トラスツズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ及びリツキシマブを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記モノクローナル抗体が、受容体チロシンキナーゼ、EGFR、VEGF、VEGFR、PDGF、PDGFR、TGF−β、TGF−β−LAP、SIRP−α、CD47、CD39、CD73及び/または線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的とする、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記がん治療薬が、養子細胞移入、腫瘍内浸潤白血球療法、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR−T)、NK細胞療法及び幹細胞療法からなる群から選択される1つ以上の細胞ベース療法を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記がん治療薬がホルモン療法である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記がん治療薬が1つ以上の抗体薬物複合体を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記がん治療薬が1つ以上のがんワクチンを含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記がん治療薬が、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍溶解性細菌もしくは他の細菌構成物、カルメット−ゲラン桿菌(BCG)、微生物叢調節剤、STING経路調節剤及び/またはtoll様受容体(TLR)作動薬を含む免疫療法である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記粒子及びまたは前記がん治療薬が、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、または年に1回投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記粒子が、静脈内、経口、経鼻、筋肉内、眼内、経皮または皮下投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象がヒトである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与が増殖性障害の前記がんの1つ以上の症候を改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の症候が、前記対象の腫瘍サイズまたは腫瘍負担、腫瘍転移、及び前記腫瘍中の炎症細胞のレベルからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記投与が、前記腫瘍サイズまたは腫瘍負担を10%、20%、30%またはそれ以上低減する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記投与が、前記腫瘍において単球、マクロファージ、顆粒球及び/または好中球の数を減少させる、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記粒子が、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物に製剤化される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記がん治療薬が、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物に製剤化される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、総じて、免疫調節粒子をがん治療薬、例えばチェックポイント調節薬、小分子またはバイオ薬剤と併用して腫瘍微小環境において骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球及び単球を変化させることによってがん及び増殖性疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独特な骨髄由来細胞集団が腫瘍微小環境の一部であることが今日広く認識されている。これらの細胞には、単球、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)及び樹状細胞が含まれる(Kumar et al.,Trends Immunol.,37(3):208−220(2016)、Richards et al.,Cancer Microenviron.,6(2):179−91(2013))。重要な研究は、これらの細胞が腫瘍部位及び転移部位へ積極的に動員されて、そこで局所環境をきっかけにして免疫抑制的微小環境を助長するように変化する可能性があることを示唆している(Kumar et al.,Trends Immunol.,37(3):208−220(2016)、Kitamura et al.,Front Immunol.,8:2004(2018)、Kitamura et al.,J Exp Med.,212(7):1043−59(2015))。これらの細胞の免疫抑制活性は、腫瘍成長、増殖、血管新生、転移及び腫瘍免疫回避を促進することが示されている。さらに、腫瘍微小環境(TME)におけるMDSC及びTAMの存在は、好ましくない疾患転帰と相関している(Gabrilovich et al.,Nat Rev Immunol.,12(4):253−68(2012)、Ouzounova et al.,Nat Comm.,8:14979(2017)、Marvel et al J Clin Invest.,125(9):3356−64(2015))。
【0003】
免疫細胞に加えて腫瘍間質も、腫瘍微小環境を形成する上で、ならびに腫瘍成長及び進行に影響を与える上で役割を果たしている。線維芽細胞、間葉系間質細胞、脂肪細胞、内皮、及び細胞外マトリックス(ECM)を含めて腫瘍関連間質を構成する細胞要素及び分子要素は全て、腫瘍発生の一因となっていることが示されている(Valkenburg et al.,Nat Rev Clin Oncol.,15(6):366−381(2018))。組織に内在する、及び骨髄間葉系幹細胞(MSC)に由来するがん関連線維芽細胞(CAF)は、抗腫瘍免疫応答を変化させ腫瘍成長及び転移を促進する成長因子ならびにタンパク質を分泌することが示されている(Valkenburg et al.,Nat Rev Clin Oncol.,15(6):366−381(2018)、Shiga et al.,Cancers,7,2443−2548(2015))。同様に、ECMタンパク質、間葉系間質細胞、内皮細胞及び脂肪細胞は、抗腫瘍免疫性を弱めて腫瘍進行を促すことが報告されている(Lu et al.,J Cell Biol.,196(4):395−406(2012)、Kumar et al.,Cancer Cell 32(5):654−668.e5(2017)、Quante et al.,Cancer Cell.,19,257−272(2011)、Park et al.,Endocr Rev.,32(4):550−70(2011)、Young et al.,Cancer Immunol Immunother.,61(10):1609−16(2012)、Hida et al.,Int J Mol Sci.,19(5):1272(2018))。
【0004】
新規な抗がん治療薬の開発には大きな進歩があったが、これらの治療薬の有効性は、それらの標的が、抗腫瘍免疫機能を阻害し腫瘍進行を促進する腫瘍微小環境(TME)中の免疫抑制因子ではなく腫瘍であるという事実ゆえに、大して有望でない。
【0005】
免疫チェックポイント受容体(例えば、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1)及びCTLA−4)及びそれらのリガンド(例えば、PD−L1)を介したシグナル伝達は細胞傷害性T細胞の活性を調節し、炎症性免疫応答の調節において決定的な役割を果たすことが示されている。重要なことに、T細胞媒介性抗腫瘍免疫応答を逃れるためにPD−1/PD−L1及びCTLA−4免疫チェックポイントシグナル伝達経路を乗っ取る幾多の腫瘍タイプが知られている。このため、モノクローナル抗体のような特異的阻害剤を使用した免疫チェックポイントシグナル伝達経路の標的化が幾多のがんにおける魅力的な最先端の治療選択肢として出現した(Alsaab et al.,Front Pharmacol 8:561(2017))。しかしながら、腫瘍関連間質に加えて、腫瘍微小環境における骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)及び腫瘍関連マクロファージ(TAM)の存在は、抗PD1モノクローナル抗体のような免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍有効性を弱めることが示された(Weber et al.,Front Immunol.,9:1310,(2018)、Highfill et al.,Sci Transl Med.,6(237):237ra67(2014)、Zhao et al.,Cancer Immunol Res.,6(12):1459−1471(2016)、Wang et al.,Nat Commun.,9(1):3503(2018))。
【0006】
免疫調節粒子(IMP)は、免疫調節特性を有する負に帯電したナノ粒子である(例えば、米国特許公開第US20150010631号、第US20130323319号を参照されたい)。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、抗原または他の生物活性剤を含有せず対象において単球及び他の食細胞を抑制することができる免疫調節粒子を、がん療法と組み合わせて投与することを含む、がん及び増殖性疾患を治療する方法を提供する。理論に拘泥しないが、IMPは腫瘍微小環境中の免疫抑制単球由来細胞を変化させ、それが今度は他のがん療法の有効性を対象への施行時に増強することになる、という仮説が立てられる。腫瘍細胞を標的とすることができるのみならず、MDSC、TAM、好中球、他の単球由来細胞、及び腫瘍関連間質を標的とすることで免疫抑制的腫瘍微小環境に打ち勝つこともできる、IMPとがん治療薬とを使用する併用療法は、免疫チェックポイント阻害剤などのがん治療薬による単独療法と比較して増強された治療利益を提供できる可能性があることが本明細書において示唆される。
【0008】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が、腫瘍部位において骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球、単球、樹状細胞及び/または間質の集団を変化させる、当該方法を提供する。
【0009】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が、腫瘍関連間質を変化させる、当該方法を提供する。
【0010】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が、間質結合組織、線維芽細胞、内皮、脂肪組織、細胞外マトリックス、周皮細胞、がん幹細胞、間葉系幹細胞及び/または間葉系間質細胞を変化させる、当該方法を提供する。
【0011】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が腫瘍サイズ及び/または腫瘍成長を低減する、当該方法を提供する。様々な実施形態において、投与は、腫瘍細胞による直接的な粒子取込みによって腫瘍細胞死、アポトーシス及び/または壊死を誘導する。
【0012】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が抗腫瘍免疫応答を調節する、当該方法を提供する。
【0013】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が腫瘍特異的免疫応答を変化させるまたは調節する、当該方法を提供する。
【0014】
様々な実施形態において、本開示は、対象における増殖性疾患を治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が、腫瘍部位において骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、樹状細胞、好中球及び/または単球の集団を変化させる、当該方法を提供する。
【0015】
様々な実施形態において、本開示は、対象における増殖性疾患を治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が腫瘍関連間質を変化させる、当該方法を提供する。
【0016】
様々な実施形態において、本開示は、対象における増殖性疾患を治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が、間質結合組織、線維芽細胞、内皮、脂肪組織、細胞外マトリックス、周皮細胞、間葉系幹細胞及び/または間葉系間質細胞を変化させる、当該方法を提供する。
【0017】
様々な実施形態において、本開示は、対象における増殖性疾患を治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が腫瘍サイズ及び/または腫瘍成長を低減する、当該方法を提供する。
【0018】
様々な実施形態において、本開示は、対象における増殖性疾患を治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が抗腫瘍免疫応答を調節する、当該方法を提供する。
【0019】
様々な実施形態において、本開示は、対象における増殖性疾患を治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合したペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与が腫瘍特異的免疫応答を調節する、当該方法を提供する。
【0020】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんまたは増殖性障害を治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分または他の生物活性剤を含有せず、投与ががん幹細胞を調節する、当該方法を提供する。
【0021】
様々な実施形態において、負に帯電した粒子は、ポリグリコール酸(PGA)粒子、ポリ乳酸(PLA)粒子、ポリスチレン粒子、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)粒子、ダイヤモンド粒子、または鉄、亜鉛、カドミウム、金もしくは銀粒子、またはそれらの組合せである。
【0022】
いくつかの実施形態において、負に帯電した粒子はポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)粒子である。様々な実施形態において、粒子は、約50:50、約80:20から約100:0までのポリ乳酸:ポリグリコール酸、または約50:50から、約80:20から約100:0までのポリグリコール酸:ポリ乳酸を含む。様々な実施形態において、粒子は50:50のポリ乳酸:ポリグリコール酸を含む。様々な実施形態において、粒子は約99:1から約1:99までのポリ乳酸:ポリグリコール酸を含み、なお、これらの値の間にある全ての値及び範囲を含める。
【0023】
様々な実施形態において、粒子は表面が官能化されている。様々な実施形態において、表面官能化はカルボキシル化によって成し遂げられる。さらなる実施形態では、表面官能化は、指向性薬剤の付加によって成し遂げられる。いくつかの実施形態では、指向性薬剤は、ポリペプチド、抗体、核酸、脂質、小分子、炭水化物及び界面活性剤を含む。様々な実施形態において、表面官能化ナノ粒子は、単球、好中球、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞、NK細胞、NK T細胞、線維芽細胞、がん関連線維芽細胞、内皮細胞、脂肪細胞、周皮細胞、内皮、脈管系、リンパ管、腫瘍関連脈管系、間葉系間質細胞、間葉系幹細胞及び/または細胞外マトリックスを優先的に指向する。
【0024】
様々な実施形態において、粒子は、−100mV〜−1mVのゼータ電位を有する。様々な実施形態において、粒子は、−80mV〜−30mVのゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子のゼータ電位は、約−100mV〜約−40mV、約−75mV〜約−40mV、約−70mV〜約−30mV、約−60mV〜約−35mV、または約−50mV〜約−40mVである。様々な実施形態において、ゼータ電位は、約−30mV、−35mV、−40mV、−45mV、−50mV、−55mV、−60mV、−65mV、−70mV、−75mV、−80mV、−85mV、−90mV、−95mVまたは−100mVであり、なお、これらの値の間にある全ての値及び小範囲を含める。
【0025】
様々な実施形態において、負に帯電した粒子の直径は0.1〜10μmである。様々な実施形態において、粒子の平均直径は、約0.2μm〜約2μm、約0.3μm〜約5μm、約0.5μm〜約3μm、または約0.5μm〜約1μmである。いくつかの実施形態では、粒子の直径は約100〜1500nm、約200〜2000nm、約100〜10000nm、約300〜1000nm、約400〜800nm、または約200〜700nmである。様々な実施形態において、粒子の平均直径は、約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nm、1200nm、1300nm、1400nm、1500nmまたは2000nmであり、なお、これらの値の間にある全ての値及び小範囲を含める。いくつかの実施形態では、負に帯電した粒子の直径は400〜800nmである。
【0026】
様々な実施形態において、対象は、脳腫瘍、皮膚癌、眼部癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、子宮頸癌、肝臓癌、結腸癌、大腸癌、直腸癌、骨癌、子宮癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、口腔癌、甲状腺癌、腎臓癌、精巣癌、白血病、リンパ腫及び中皮腫からなる群から選択されるがんを有する。方法に関して企図されるさらなるがんは、発明を実施するための形態の中で開示されている。
【0027】
様々な実施形態において、がん治療薬は、成長阻害剤、DNA複製阻害剤、キナーゼ阻害剤、シグナル伝達カスケード阻害剤、血管新生阻害剤、代謝阻害剤、アミノ酸合成阻害剤、発がん性タンパク質の選択的阻害剤、転移の阻害剤、抗アポトーシス因子の阻害剤、アポトーシス誘導剤、ヌクレオシドシグナル伝達阻害剤、酵素阻害剤及びDNA損傷剤からなる群から選択される化学療法薬である。
【0028】
様々な実施形態において、がん治療薬は、サイトカイン、血管新生阻害剤、酵素、免疫チェックポイント調節剤及びモノクローナル抗体からなる群から選択される1つ以上のバイオ薬剤を含む。
【0029】
様々な実施形態において、サイトカインは、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン及びインターロイキンからなる群から選択される。例示的なサイトカインとしては、IFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17、IL−18、IL−21、形質転換成長因子ベータスーパーファミリーのメンバー、例えば、TGF−β1、TGF−β2及びTGF−β3、腫瘍壊死因子アルファ、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
様々な実施形態において、モノクローナル抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、または二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)抗体である。
【0031】
様々な実施形態において、モノクローナル抗体は、抗腫瘍免疫応答を誘導する免疫細胞共刺激分子作動薬である。例示的な共刺激分子としては、ICOS(誘導性T細胞共刺激分子)(CD278)、OX40(CD134)、41BB、GITR(グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体)、CD40及びCD27が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
様々な実施形態において、免疫チェックポイント調節剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1)、プログラム細胞死タンパク質リガンド−1(PD−L1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有−3(TIM−3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG−3)及び/またはTIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)を標的とする。様々な実施形態において、免疫チェックポイント調節剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブ及びデュルバルマブからなる群から選択される抗体である。
【0033】
様々な実施形態において、方法に有用なモノクローナル抗体は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、デノスマブ、イブリツモマブ、トラスツズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ及びリツキシマブを含む群から選択される。様々な実施形態において、方法に有用なモノクローナル抗体は、受容体チロシンキナーゼ、EGFR、VEGF、VEGFR、PDGF、PDGFR、TGF−β、TGF−β−LAP、SIRP−α、CD47、CD39、CD73及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的とする。
【0034】
様々な実施形態において、がん治療薬は酵素を含む。様々な実施形態において、がん治療薬は、T細胞、B細胞、APC、マクロファージ、樹状細胞、単球、MDSC、TAM、好中球、他の単球由来細胞、腫瘍関連間質、がん幹細胞、間葉系幹細胞、細胞外マトリックス及びアミノ酸を標的とする酵素を含む。様々な実施形態において、がん治療薬は、アスパラギナーゼ、キヌレニナーゼ(kynurininase)、L−アルギニンデイミナーゼ、L−メチオニン−γ−リアーゼ、1つ以上のアミノ酸分解酵素、及び1つ以上のヌクレオシド分解酵素を含む群から選択される酵素を含む。
【0035】
様々な実施形態において、がん治療薬は、養子細胞移入、腫瘍内浸潤白血球療法、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR−T)、NK細胞療法及び幹細胞療法からなる群から選択される1つ以上の細胞ベース療法を含む。
【0036】
様々な実施形態において、細胞ベース療法は自家患者由来細胞の養子移入である。様々な実施形態において、細胞ベース療法は同種異系ドナー由来細胞の養子移入である。
【0037】
様々な実施形態において、細胞ベース療法は、患者特異的ではなく長期保存に適した普遍的なドナー由来または人工多能性幹細胞由来細胞の移入である。そのような療法を「既製の」療法とも呼ぶ。
【0038】
様々な実施形態において、がん治療薬はホルモン療法である。様々な実施形態において、がん治療薬は1つ以上の抗体薬物複合体を含む。様々な実施形態において、がん治療薬は1つ以上のがんワクチンを含む。様々な実施形態において、がんワクチンは、タンパク質、ポリペプチド、核酸ワクチン及び/または樹状細胞ワクチンである。
【0039】
様々な実施形態において、がん治療薬は、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍溶解性細菌もしくは他の細菌構成物、カルメット−ゲラン桿菌(BCG)、微生物叢調節剤及び/またはtoll様受容体(TLR)作動薬を含む群から選択される免疫療法である。様々な実施形態において、TLR作動薬は、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12及び/またはTLR13作動薬である。様々な実施形態において、TLR作動薬は、ウイルス由来のもの、細菌由来のもの、及び/または合成によって作られたものである。様々な実施形態において、免疫療法はSTING経路調節剤である。
【0040】
様々な実施形態において、がん治療薬はウイルスベクターまたは細菌ベクターを含む。様々な実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、改変アンカラウイルス、水疱性口炎ウイルス、ピコルナウイルス、タバコモザイクウイルス、ジャガイモxウイルス、コモウイルス、またはキュウリモザイクウイルスを含む群から選択される。様々な実施形態において、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。様々な実施形態において、ウイルスは、キメラウイルス、人工ウイルス、モザイクウイルスまたは偽型化ウイルスである。
【0041】
方法に使用するために企図されるさらなるがん治療薬は、発明を実施するための形態の中で提示されている。
【0042】
様々な実施形態において、粒子及び/またはがん治療薬は、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、または年に1回投与される。
【0043】
様々な実施形態において、粒子及び/またはがん治療薬は、静脈内、経口、経鼻、筋肉内、眼内、経皮または皮下投与される。
【0044】
様々な実施形態において、対象は哺乳動物である。様々な実施形態において、対象はヒトである。
【0045】
様々な実施形態において、投与はがんまたは増殖性障害の1つ以上の症候を改善する。様々な実施形態において、1つ以上の症候は、対象の腫瘍サイズまたは腫瘍負担、腫瘍転移、及び腫瘍または腫瘍微小環境での炎症細胞のレベルからなる群から選択される。様々な実施形態において、投与は、腫瘍サイズまたは腫瘍負担を10%、20%、30%またはそれ以上低減する。様々な実施形態において、投与は、腫瘍において単球、マクロファージ、顆粒球、樹状細胞及び/または好中球を減少させる。
【0046】
様々な実施形態において、粒子は、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物に製剤化される。様々な実施形態において、がん治療薬は、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物に製剤化される。様々な実施形態において、粒子及びがん治療薬は、同じ組成物または別個の組成物に製剤化され得る。
【0047】
さらには、炎症ならびにがん及び/または増殖性疾患に関連して本明細書に記載の障害のいずれかを治療するための、本開示の上記粒子もしくはがん治療組成物のいずれかを含む組成物、または医薬の調製におけるその使用が企図される。
【0048】
本明細書に記載の各々の特徴または実施形態または組合せが、本発明の態様のいずれかの非限定的な例示的一例であり、それゆえ本明細書に記載の他の任意の特徴または実施形態または組合せと組み合わせることができることを意図していることは、理解される。例えば、特徴を「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「さらなる実施形態」、「具体的な例示的実施形態」及び/または「別の実施形態」などの表現で記載する場合、これらの類の実施形態は各々、本明細書に記載の他の任意の特徴または特徴の組合せと組み合わせることを意図した特徴の非限定的な一例であり、可能な全ての組合せが列挙されている必要はない。そのような特徴または特徴の組合せは、本開示の態様のいずれかに適合する。範囲の中に入る値の例を開示している場合、これらの例のいずれかを可能な範囲の端点として企図し、そのような端点の間のありとあらゆる数値を企図し、上端及び下端のありとあらゆる組合せを想定している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】IMP及びチェックポイント阻害剤抗PD−1抗体の投与のための処置スケジュール例を提示する。
【
図2】IMPと抗PD−1との併用療法がLLC細胞において単剤療法処置と比較して腫瘍成長の低減の改善を呈することを示す。
【
図3A】単独で、または抗PD1チェックポイント阻害剤抗体と組み合わせて投与する場合のIMPの抗腫瘍有効性を示す。マウスにMC38腫瘍細胞を移植し、触診可能な腫瘍が形成された後に生理食塩水対照、IMP、抗PD1、またはIMP+抗PD1のいずれかによる処置を行った。対照処置と比較してIMPによる処置は腫瘍成長を阻害した。IMPの有効性は抗PD1処置と同程度であった。IMP+抗PD1による処置は、腫瘍成長の阻害を増強する相乗作用を実証した。
【
図3B】単独で、または抗PD1チェックポイント阻害剤抗体と組み合わせて投与する場合のIMPの抗腫瘍有効性を示す。マウスにMC38腫瘍細胞を移植し、触診可能な腫瘍が形成された後に生理食塩水対照、IMP、抗PD1、またはIMP+抗PD1のいずれかによる処置を行った。対照処置と比較してIMPによる処置は生存期間を延ばした。IMPによる生存有効性は抗PD1よりも優れていた。IMP+抗PD1による処置は、対照及びそれぞれの単独療法と比較して生存期間を延ばす相乗作用を実証した。
【発明を実施するための形態】
【0050】
IMPは、循環系中で免疫抑制単球を特異的に指向し、それらの免疫抑制活性が腫瘍成長、増殖及び転移を促進する腫瘍部位にそれらが輸送されるのを防ぐ、魅力的な好機を提供する。IMP療法による免疫抑制的腫瘍微小環境の破壊/改変を、抗PD1モノクローナル抗体のような他の抗がん治療薬と組み合わせることで、腫瘍のみを標的とする単独療法に勝る大きな利益がもたらされると予期される。
【0051】
定義:
本明細書中で引用される刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献の各々は、参照によりその全体が、本開示と矛盾しない範囲で援用される。
【0052】
本明細書及び別記の特許請求の範囲の中で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は文脈が明確に別段の規定をしていない限り複数形の意味を含むことをここに記しておく。
【0053】
「粒子」は、本明細書中で使用される場合、物質の任意の非組織由来構成物を指し、それは球状もしくは球様の実体、ビーズまたはリポソームであり得る。「粒子」という用語、「免疫調節粒子」という用語、及び「ビーズ」という用語は文脈に応じて交換可能に使用され得る。加えて、「粒子」という用語は、ビーズ及び球を包含して使用され得る。
【0054】
「表面が官能化された」とは、本明細書中で使用される場合、粒子の表面への化学官能基の導入を意味する。表面官能化粒子は、カルボン酸、リン酸、ヒドロキシル、スルホン酸、ホスホン酸、及びアミンまたはアンモニウム基ならびに他の官能基を有する疎水性モノマーのフリーラジカル共重合によって調製され得る。表面官能化ナノ粒子を作る一般的方法は、例えば、Froimowicz et al.,Curr Org.Chem 17:900−912,2013に記載されている。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「生分解性は、例えば官能基が溶液中の水と反応した結果による分解を受け得るポリマーを含む粒子を指す。「分解」という用語は、本明細書中で使用する場合、分子量の減少か、疎水性基の親水性基への変換かのどちらかによって可溶性になることを意味する。生分解性粒子は体内に長期間存在し続けることがなく、完全分解に要する時間は制御することができる。本発明に有用な生体適合性の生分解性ポリマーとしては、カプロラクトン、カーボネート、アミド、アミノ酸、オルトエステル、アセタール、シアノアクリレート及び分解性ウレタンのポリマーまたはコポリマー、ならびにこれらと直鎖型または分岐型の置換または無置換アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アルケニルまたは芳香族ヒドロキシ−もしくはジ−カルボン酸とのコポリマーが挙げられる。加えて、反応性側鎖基を有する生物学的に重要なアミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、チロシン及びシステイン、またはそれらのエナンチオマーを上記材料のいずれかとのコポリマーに含ませて、抗原ペプチド及びタンパク質または複合化部分との複合化のための反応性基を形成してもよい。本発明に適する生分解性材料としては、ダイヤモンド、PLA、PGA、ポリプロピレンスルフィド及びPLGAポリマーならびに金属、例えば、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、金または銀が挙げられる。生体適合性であるが非生分解性である材料も本明細書に記載の粒子に使用され得る。例えば、アクリレート、エチレン酢酸ビニル、アシル置換酢酸セルロース、非分解性ウレタン、スチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルイミダゾール、クロロスルホン化オレフィン、エチレンオキシド、ビニルアルコール、テフロン(登録商標)(DuPont,Wilmington,Del.)及びナイロンの非生分解性ポリマーが採用され得る。
【0056】
「負に帯電した粒子」は、本明細書中で使用される場合、ゼロ未満の正味の表面電荷を帯びるように改質された粒子を指す。
【0057】
ゼータ電位は、固体表面とその液体媒体と界面に発達する電荷である。「負のゼータ電位」は、ゼータ電位を算出する当技術分野で既知の装置、例えば、NanoBrook ZetaPlusゼータ電位分析機またはMalvern Zetasizerで測定されるミリボルト(mV)で表される粒子表面のゼータ電位を有する粒子を指す。
【0058】
「カルボキシル化粒子」または「カルボキシル化ビーズ」または「カルボキシル化球状物」には、1つ以上のカルボキシル基を粒子表面に付加する改質または表面官能化がなされた任意の粒子が含まれる。いくつかの実施形態では、カルボキシル基の付加は、循環系からの粒子の食作用/単球取込みを例えばMARCOなどのスカベンジャー受容体との相互作用によって増強する。粒子のカルボキシル化は、ポリ(エチレン−無水マレイン酸)(PEMA)を含めるがこれに限定されないカルボキシル基を付加する任意の化合物を使用して成し遂げられ得る。
【0059】
「調節する」または「変化させる」という用語は、本明細書中で使用される場合、腫瘍部位または腫瘍微小環境での免疫応答の改変、調整または変化を意味する。免疫応答の改変または変化の例としては、腫瘍部位もしくは腫瘍微小環境における免疫抑制細胞の数もしくは活性の低減、腫瘍部位もしくは腫瘍微小環境における免疫抑制免疫細胞浸潤の軽減、腫瘍部位もしくは腫瘍微小環境における炎症促進性免疫細胞数の増加、腫瘍部位もしくは腫瘍微小環境における炎症促進性免疫細胞浸潤の増進、腫瘍部位もしくは腫瘍微小環境における炎症促進性免疫細胞の活性もしくは機能の向上、腫瘍部位もしくは腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫細胞数の増加、腫瘍部位もしくは腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫細胞浸潤の増進、腫瘍部位もしくは腫瘍微小環境における免疫細胞の抗腫瘍活性もしくは機能の向上、及び/または免疫抑制に関連する細胞の殺滅が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
「腫瘍微小環境」(TME)という用語は、本明細書中で使用される場合、腫瘍細胞を取り囲み栄養を与える細胞、分子及び血管を指す(National Cancer Institute Dictionary of Cancer Terms)。腫瘍微小環境は、免疫細胞、例えば、骨髄由来炎症細胞、骨髄単球細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、腫瘍関連マクロファージ、樹状細胞、ならびにリンパ球、間質、線維芽細胞、シグナル伝達分子及び細胞外マトリックス(ECM)を含む(Joyce et al.,Science 348:74−80,2015)。
【0061】
「対象」は、本明細書中で使用される場合、本明細書に記載の粒子が投与される哺乳動物または霊長類を含めたヒトまたは非ヒト動物を指す。対象には、動物、例えば、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ならびにヒト及び他の霊長類が含まれ得る。
【0062】
「治療的有効量」という用語は、治療する疾患または障害の1つ以上の症候または兆候を改善または軽減するのに有効な本開示の標的特異的組成物の量を表して使用される。
【0063】
「治療する」、「治療される」、「治療すること」及び「治療」という用語は、本発明の方法に関して使用される場合、事象、疾患または症状の1つ以上の臨床症候、徴候または進行を一時的あるいは永久的に、部分的あるいは完全に除去、軽減、抑制または改善することを意味する。そのような治療が完全に有用である必要はない。
【0064】
チェックポイント調節剤
プログラム細胞死タンパク質1(PD−1)は、分化抗原279(CD279)としても知られるが、活性化されたT細胞上、B細胞上及びマクロファージ上に発現する細胞表面共刺激受容体であり、免疫チェックポイント遮断の構成要素である(Shinohara et al.,Genomics.,23(3):704,(1994)、Francisco et al.,Immunol Rev.,236:219,(2010))。PD−1は、その2つのリガンドであるPD−L1(B7−H1、CD274としても知られる)及びPD−L2(B7−DC、CD273)との相互作用時にT細胞の活性を制限する(Postow et al.,J Clin Oncol.,33:9,(2015))。PD−1とPD−L1及びPD−L2との相互作用は、T細胞増殖、サイトカイン産生及び細胞傷害活性を低減する(Freeman GJ et al.,J Exp Med.,192:1027−34,(2000)、Brown JA et al.,J Immunol.,170:1257−66,(2003))。
【0065】
2つのモノクローナル抗体がPD−1阻害免疫療法のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。ペンブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標)、Merck Sharp &Dohme Corp.)は転移性メラノーマにおいて使用が承認されており、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)は転移性メラノーマ及び転移性扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)において使用が承認されている。これらの抗体はどちらもPD−1受容体に結合し、そのリガンドであるPD−L1及びPD−L2とそれとの相互作用を遮断する。様々な実施形態において、抗PD−1抗体は、PD−1受容体とそのリガンドPD−L1及びPD−L2のうちの片方または両方との結合を阻害または遮断する。
【0066】
PD−1に対するさらなる抗体は、米国特許第8,735,553号、第8,617,546号、第8,008,449号、第8,741,295号、第8,552,154号、第8,354,509号、第8,779,105号、第7,563,869号、第8,287,856号、第8,927,697号、第8,088,905号、第7,595,048号、第8,168,179号、第6,808,710号、第7,943,743号、第8,246,955号及び第8,217,149号に記載されている。
【0067】
PD−L1の阻害剤も、膀胱癌、頭頸部癌及び消化器癌において固形腫瘍を阻害するのに有効であることが示されている(Herbst RS et al.,J Clin Oncol.,31:3000(2013)、Heery CR et al.,J Clin Oncol.,32:5s,3064(2014)、Powles T et al.,J Clin Oncol,32:5s,5011(2014)、Segal NH et al.,J Clin Oncol.,32:5s,3002(2014))。
【0068】
CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)(CD152)は、制御性T細胞に恒常的に発現しているが通常のT細胞では活性化後にのみ上方制御されるタンパク質受容体である。CTLA−4は、T細胞シグナル伝達及びAPC活性化のCTLA−4/CD28;B7−1/B7−2共刺激経路のメンバーであり(Grosso et al.,Cancer Immun.13:5,2013)、B7−1またはB7−2に結合してT細胞応答を減弱することによってT細胞活性化の負の調節物質として機能する。CTLA−4は、免疫チェックポイントとして機能するという仮説が立てられている。CTLA−4に特異的な抗体としては、トレメリムマブ、及びメラノーマの治療のために承認されているイピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))が挙げられる。
【0069】
LAG−3(リンパ球活性化遺伝子3)(CD223)は、活性化T細胞を含めた複数の免疫細胞に発現する細胞表面受容体である。LAG−3はCD8
+T細胞の負の調節物質であり、その欠乏はCD8
+T細胞増殖の増強と関連している(Workman et al.J Immunol 174:688−695(2005))。重要なことに、LAG−3は、前臨床腫瘍モデル及びがん患者試料の両方において腫瘍内浸潤リンパ球上及び疲弊T細胞上にPD−1と共発現し、腫瘍の免疫回避を促進することが示されている(Andrews et al.,Immunol Rev.,276(1):80−96(2017)、Le Mercier et al.Front Immunol.,6:418(2015)、Woo et al.Cancer Res.,15;72(4):917−27(2011)、Zhou et al.Oncoimmunology 7(7):e1448332(2018))。LAG−3阻害は、前臨床モデルにおいて治療方策として有望であることが示されており(Grosso et al.J Clin Invest.,117(11):3383−92(2007)、Woo et al.Cancer Res.,15;72(4):917−27(2011))、モノクローナル抗体を、単独で、または他のチェックポイント阻害剤抗体、例えばニボルマブ(登録商標)及びペンブロリズマブ(登録商標)と組み合わせて使用するLAG−3の阻害は、現在幾多のがんのための臨床試験で評価されているところである。
【0070】
TIM−3(T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有−3)は、終末分化及び活性化T細胞上に発現することが分かっている膜貫通タンパク質であり、T細胞応答及び炎症性サイトカイン、例えばIFN−γの発現を阻害する一因となっている。TIM−3は腫瘍内浸潤リンパ球上にPD−1と共発現し、その発現は、T細胞疲弊、及びT細胞応答抑制と相関している(Linhares et al.,Front Immunol.,9:1909(2018)、Das et al.Immunol Rev.276(1):97−111(2017))。CD8
+T細胞上での高レベルのTIM−3発現は腫瘍の免疫回避に関連し、がん患者の好ましくない予後と相関している(Anderson et al.Immunity 17;44(5):989−1004(2016)、Das et al.Immunol Rev.276(1):97−111(2017))。さらに、PD−1が発現している腫瘍内浸潤リンパ球におけるTIM−3の上方制御は、抗PD−1治療薬に対する抵抗性を媒介することが示されている(Koyama et al.,Nat Commun.,7:10501(2016))。これらの見解と一致して、抗PD−1と併せたTIM−3のモノクローナル抗体媒介共遮断はいくつかの前臨床腫瘍モデルにおいて有望な抗腫瘍効果を示し(Ngiow et al.,Cancer Res.,3540−3551(2011)、Anderson et al.Immunity 17;44(5):989−1004(2016))、抗TIM−3モノクローナル抗体の単独での、またはチェックポイント阻害剤抗体と組み合わせたときの有効性を評価するいくつかの臨床試験が現在進行中である。
【0071】
免疫調節粒子
いくつかの実施形態では、本開示は、会合している抗原、ペプチドまたは他の生物活性物質を含有せず負のゼータ電位を有する粒子の、治療方法における使用を提供する。様々な実施形態において、粒子は表面官能化粒子である。
【0072】
粒子は多様な材料から形成することができる。粒子は、生物学的用途に適した材料からなることが好ましい。例えば、粒子は、ガラス、シリカ、ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、ジカルボン酸のポリ無水物、またはヒドロキシカルボン酸とジカルボン酸とのコポリマー、及び生体適合性金属からなり得る。様々な実施形態において、粒子は、直鎖型もしくは分岐型の、置換もしくは無置換の、飽和もしくは不飽和の、線形もしくは架橋型のアルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アラルケニル、ヘテロアリールもしくはアルコキシヒドロキシ酸のポリエステル、または直鎖型もしくは分岐型の、置換もしくは無置換の、飽和もしくは不飽和の、線形もしくは架橋型のアルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アラルケニル、ヘテロアリールもしくはアルコキシジカルボン酸のポリ無水物からなり得る。加えて、粒子は、量子ドットポリスチレン粒子などの量子ドットであり得る、または量子ドットからなり得る(Joumaa et al.(2006)Langmuir 22:1810−6)。エステル結合と無水物結合との混合物(例えば、グリコール酸とセバシン酸とのコポリマー)を含む粒子を採用してもよい。例えば、粒子は、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸ポリマー(PLA)、ポリセバシン酸ポリマー(PSA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)コポリマー(PLGAまたはPLG、当該用語は交換可能である)、[rho]oly(乳酸−co−セバシン酸)コポリマー(PLSA)、ポリ(グリコール酸−co−セバシン酸)コポリマー(PGSA)、ポリプロピレンスルフィドポリマー、ポリ(カプロラクトン)、キトサンなどを含む材料を含み得る。本発明に有用な他の生体適合性の生分解性ポリマーとしては、カプロラクトン、カーボネート、アミド、アミノ酸、オルトエステル、アセタール、シアノアクリレート及び分解性ウレタンのポリマーまたはコポリマー、ならびにこれらと直鎖型または分岐型の置換または無置換アルカニル、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アルケニルまたは芳香族ヒドロキシ−もしくはジ−カルボン酸とのコポリマーが挙げられる。加えて、反応性側鎖基を有する生物学的に重要なアミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、チロシン及びシステイン、またはそれらのエナンチオマーを上記材料のいずれかとのコポリマーに含ませて、抗原ペプチド及びタンパク質または複合化部分との複合化のための反応性基を形成してもよい。本発明に適する生分解性材料としては、ダイヤモンド、PLA、PGA、ポリプロピレンスルフィド及びPLGAポリマーならびに金属、例えば、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、金(Au)または銀(Ag)が挙げられる。生体適合性であるが非生分解性である材料も本明細書に記載の粒子に使用され得る。例えば、アクリレート、エチレン酢酸ビニル、アシル置換酢酸セルロース、非分解性ウレタン、スチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルイミダゾール、クロロスルホン化オレフィン、エチレンオキシド、ビニルアルコール、テフロン(登録商標)(DuPont,Wilmington,Del.)及びナイロンの非生分解性ポリマーが採用され得る。
【0073】
本開示の粒子は、当該技術分野で知られている任意の手段で製造され得る。粒子を製造する例示的な方法としては、マイクロエマルジョン重合、界面重合、沈澱重合、エマルジョン蒸発、エマルジョン拡散、溶媒置換及び塩析が挙げられるが、これらに限定されない(Astete and Sabliov,J.Biomater.Sci.Polymer Edn.,17:247−289(2006))。本明細書において企図される、粒子を作る方法は、米国特許第9,616,113号及び国際特許公開第WO/2017/143346号に開示されている。PLGA粒子の製造プロセスの操作によって粒子特性(例えば、粒径、粒径分布、ゼータ電位、形態、疎水性/親水性、ポリペプチド捕捉など)を制御することができる。粒子の大きさは、ポリマー、例えばPLGAの濃度、粒子の製造に使用する溶媒、有機相の性質、製造に使用する界面活性剤、連続及び不連続相の粘度、使用する溶媒の性質、使用する水の温度、超音波処理、蒸発速度、添加剤、剪断応力、滅菌、ならびにカプセル封入された何らかの抗原またはポリペプチドの性質を含めるがこれらに限定されない複数の因子によって影響を受ける。
【0074】
様々な実施形態において、粒子は、ポリマー、コポリマー、デンドリマー、ダイヤモンドナノ粒子、ポリスチレンナノ粒子または金属を含む。様々な実施形態において、粒子は、ポリグリコール酸ポリマー(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリスチレン、PGAとPLAとのコポリマー(ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA))、ダイヤモンド(PLGA)、リポソーム、PEG、シクロデキストラン、または金属、例えば、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、金(Au)または銀(Ag)を含むことが企図される。
【0075】
様々な実施形態において、粒子は、約50:50から、約80:20から約100:0までのポリ乳酸:ポリグリコール酸、または約50:50から、約80:20から約100:0までのポリグリコール酸:ポリ乳酸のモル比を有するコポリマーである。いくつかの実施形態では、粒子はポリ(乳酸−co−グリコール酸)粒子である。様々な実施形態において、粒子は50:50のポリ乳酸:ポリグリコール酸を含む。様々な実施形態において、粒子は約99:1から約1:99までのポリ乳酸:ポリグリコール酸を含み、なお、これらの値の間にある全ての値及び範囲を含める。
【0076】
いくつかの実施形態では、粒子のゼータ電位は約−100mV〜約−1mVである。いくつかの実施形態では、粒子のゼータ電位は、約−100mV〜約−40mV、約−80mV〜約−30mV、約−75mV〜約−40mV、約−70mV〜約−30mV、約−60mV〜約−35mV、または約−50mV〜約−40mVである。様々な実施形態において、ゼータ電位は、約−30mV、−35mV、−40mV、−45mV、−50mV、−55mV、−60mV、−65mV、−70mV、−75mV、−80mV、−85mV、−90mV、−95mVまたは−100mVであり、なお、これらの値の間にある全ての値及び範囲を含める。
【0077】
いくつかの実施形態では、粒子は約0.1μm〜約10μmの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は0.2μm〜約2μmの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は約0.3μm〜約5μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は約0.5μm〜約3μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は約0.5μm〜約1μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は約100〜1500nm、約200〜2000nm、約100〜10000nm、約300〜1000nm、約400〜800nm、または約200〜700nmの直径を有し、なお、これらの値の間にある全ての値及び範囲を含める。
【0078】
本明細書に記載の粒子をヒトまたは他の哺乳動物に投与するために、粒子は、1つ以上の無菌の薬学的に許容される担体を含む無菌組成物に製剤化され得る。「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、以下に記載されるような当技術分野でよく知られている経路を用いて投与されたときにアレルギー性または他の副作用を生じさせない分子実体及び組成物を意味する。「薬学的に許容される担体」には、臨床的に有用なありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張化及び吸収遅延剤などが含まれる。
【0079】
本明細書の粒子を含有する本開示の医薬組成物は、投与経路に応じて無菌の薬学的に許容される担体または添加剤を含有し得る。そのような担体または添加剤の例としては、水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアガム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学的に許容される界面活性剤などが挙げられる。使用する添加剤は、限定されないが、本発明の剤形に応じて適宜、上記またはその組合せから選択される。液剤または乳剤の場合、好適な担体としては、例えば、生理食塩水及び緩衝培地を含めた水溶液またはアルコール溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル溶液、または固定油が含まれ得る。静注用ビヒクルには、様々な添加剤、保存剤、または流体、栄養もしくは電解質補給剤が含まれ得る。様々な水性担体、例えば、無菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどが好適であり、軽度な化学修飾などに供された他のタンパク質、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどを安定性の強化のために含んでいてもよい。
【0080】
粒子は界面活性剤をさらに含み得ることが企図される。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性または非イオン性であり得る。粒子合成には一般にポロキサマー及びポロキサミンのファミリーの界面活性剤が使用される。使用され得る界面活性剤としては、PEG、Tween−80、ゼラチン、デキストラン、プルロニックL−63、PVA、メチルセルロース、レシチン、DMAB及びPEMAが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、生分解性及び生体適合性界面活性剤としては、ビタミンE TPGS(D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート)が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、2つの界面活性剤を使用する。例えば、粒子を二重エマルジョン法で製造する場合、2つの界面活性剤は、第1エマルジョンのための疎水性界面活性剤、及び第2エマルジョンのための疎水性界面活性剤を含み得る。
【0081】
粒子の治療製剤は、保存のために、所望の純度を有する粒子と、任意選択の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))とを混合することによって凍結乾燥製剤または水性液剤の形態で調製される。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、採用される投薬量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた酸化防止剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含めた単糖、二糖及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;または金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)を含む。
【0082】
粒子の調製物は凍結乾燥によって安定化され得る。トレハロースなどの凍結保護剤を添加することによって凍結乾燥時の粒子の凝集を減らすことができる。任意の好適な凍結乾燥及び再構成技術を採用することができる。当業者であれば、凍結乾燥及び再構成が様々な度合いの抗体活性損失を招き得ること、ならびに使用レベルを調節して埋め合わせねばならない場合があることを理解するであろう。
【0083】
使用方法
本明細書では、対象におけるがんまたは増殖性障害を治療する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて投与することを含み、上記粒子が、結合しているペプチドもしくは抗原性部分を含有せず、投与が、腫瘍部位において骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球、樹状細胞及び/または単球の集団を変化させる、当該方法を提供する。
【0084】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんまたは増殖性障害を治療する方法であって、本明細書に記載の負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、投与が腫瘍関連間質を変化させる、及び/または投与が間質結合組織、線維芽細胞、内皮、脂肪組織、細胞外マトリックス、周皮細胞、間葉系幹細胞及び/または間葉系間質細胞を変化させる、及び/または投与が腫瘍サイズ及び/または腫瘍成長を低減する、及び/または投与が抗腫瘍免疫応答を調節する、及び/または投与が腫瘍特異的免疫応答を調節する、当該方法を提供する。
【0085】
様々な実施形態において、本開示は、対象におけるがんまたは増殖性障害を治療する方法であって、本明細書に記載の負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含み、投与ががん幹細胞を調節する、当該方法を提供する。
【0086】
免疫細胞に対する治療薬の効果を見極めるのに有用な方法としては、顕微鏡分析、組織学的アッセイ、細胞学的アッセイ、フローサイトメトリー、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、RNAシーケンス解析(RNA−seq)、1細胞RNAシーケンス解析(scRNA−seq)、次世代シーケンス解析、全エクソームシーケンス解析、エピジェネティックシーケンス解析、ATAC−seq、マイクロアレイ分析、及びマスサイトメトリーまたはCyTOFが挙げられるが、これらに限定されない。免疫細胞の評価のために単独で、または組み合わせて使用され得るバイオマーカーとしては、細胞表面マーカー及び分泌タンパク質が挙げられる。例示的なバイオマーカーとしては、CD45、CD3、CD4、CD8、CD25、CD44、CD134、CD252、CD137、CD79、CD39、FOXP3、PD−1、LAG−3、TIM−1、IFN−γ、グランザイム、パーフォリン、CD11b、CD11c、Ly6C、Ly6G、CD14、CD16、CD80、MARCO、CD68、CD115、CD204、CD205、CD206、CD163、CD103、CD103c、F4/80、PD−L1、PD−L2、アルギナーゼ、iNOS、ROS、TNF−α、TGF−β、MHC−I、MHC−II、NK1.1、NKG2D、CD244、Ki67、CD19、CD20、CCR2、CXCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR10、CCL2、CCL5、Cx3CR1、CCL10、ICOS、CD40、CD40L、IL1α、IL1β、IL2、IL4、IL5、IL6、IL8、IL12、IL15、IL17、IL21、IL22、TCRγ/δ、TCRα/β、STAT3、ROR1c及びRORγtが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
がん幹細胞(CSC)は、固形及び造血器腫瘍内に見つかる腫瘍原性であり自己再生、分化を可能とする細胞のサブセットであるという見方がなされている。いくつかの報告には、様々な腫瘍の発病、療法後の腫瘍再発及び治療抵抗性の発達におけるCSCの重要性が記載されている。複数の細胞表面マーカーが、固形及び造血腫瘍内のCSCを判別するために使用され得る。CSCマーカーとしては、CD19、CD20、CD24、CD34、CD38、CD44、CD90、CD133、アルデヒド脱水素酵素1、CEACAM−6/CD66c、BMI−1、コネキシン43/GJA1、DLL4、EpCAM/TROP1、GLI−1、GLI−2、インテグリン、PON1、PTEN、ALCAM/CD166、DPPIV/CD26、Lgr5、Musashi−1、A20、ABCG2、CD15、フラクタルカイン、HIF−2α、L1CAM、c−MAF、ネスチン、ポドプラニン、SOX2、CD96、CD117、FLT3、AFP、CD13、CD90、NF2/マーリン、ABCB5、NGFR、シンデカン−1、エンドグリン、STRO−1、及びPON1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
細胞レベル及び分子レベルで腫瘍を特性評価するために考案された複数の診断ツールがFDAによって承認され市販されている。承認されている診断法の例としては、FOUNDATIONONE(登録商標)CDX、FOUNDATIONONE(登録商標)LIQUID、FOUNDATIONONE(登録商標)HEME、BRACAnalysis CDx、therascreen EGFR RGQ PCRキット、cobase EGFR突然変異検査v2、PD−L1 IHC 22C3 pharmDx、AbbottリアルタイムIDH1、MRDx BCR−ABL検査、VENTANA ALK(D5F3)CDxアッセイ、AbbottリアルタイムIDH2、Praxis拡張RASパネル、Oncomine Dx標的検査、LeukoStrat CDx FLT3突然変異アッセイ、FoundationFocus CDxBRCAアッセイ、Vysis CLL FISHプローブキット、KIT D816V突然変異検出、PDGFRB FISH、cobas KRAS突然変異検査、therascreen KRAS RGQ PCRキット、FerriScan、Dako c−KIT pharmDx、INFORM Her−2/neu、PathVysion HER−2 DNAプローブキット、SPOT−LIGHT HER2 CISHキット、Bond Oracle HER2 IHCシステム、HER2 CISH pharmDxキット、INFORM HER2 DUAL ISH DNAプローブカクテル、HercepTest、HER2 FISH pharmDxキット、THXID BRAFキット、Vysis ALK Break Apart FISHプローブキット、cobas 4800 BRAF V600突然変異検査、VENTANA PD−L1(SP142)アッセイ、therascreen FGFR RGQ RT−PCRキット、及びtherascreen PIK3CA RGQ PCRキットが挙げられる。
【0089】
任意選択的にがん治療薬と組み合わせた、本明細書に記載の負に帯電した粒子による治療の後、バイオマーカーの1つ以上のレベルは約1.1倍〜約10倍の範囲、例えば、約1.1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5または約10倍の量に上昇することが本明細書において企図される。本明細書に記載の表面官能化粒子による治療の後、バイオマーカーの1つ以上のレベルは約1.1分の1〜約10分の1の範囲、例えば、約1.1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5または約10分の1の量に低下する。
【0090】
本発明の方法を用いて治療され得る例示的な疾患、症状または障害としては、がん、例えば、食道癌、膵臓癌、転移性膵臓癌、膵臓の転移性腺癌、膀胱癌、胃癌、線維性癌、神経膠腫、悪性神経膠腫、びまん性橋膠腫、再発性小児脳新生物腎細胞癌腫、淡明細胞型転移性腎細胞癌腫、腎臓癌、前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌、ステージIV前立腺癌、転移性メラノーマ、メラノーマ、悪性メラノーマ、皮膚の再発性メラノーマ、メラノーマ脳転移、ステージIIIA皮膚メラノーマ;ステージIIIB皮膚メラノーマ、ステージIIIC皮膚メラノーマ;ステージIV皮膚メラノーマ、頭頸部の悪性メラノーマ、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮非小細胞肺癌、乳癌、再発性転移性乳癌、肝細胞癌腫、ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、進行B細胞NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含むHL、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、寛解時の成人急性骨髄性白血病;Inv(16)(p13.1q22)を伴う成人急性骨髄性白血病;CBFB−MYH11;t(16;16)(p13.1;q22)を伴う成人急性骨髄性白血病;CBFB−MYH11;t(8;21)(q22;q22)を伴う成人急性骨髄性白血病;RUNX1−RUNX1T1;t(9;11)(p22;q23)を伴う成人急性骨髄性白血病;MLLT3−MLL;t(15;17)(q22;q12)を伴う成人急性前骨髄球性白血病;PML−RARA;アルキル化剤関連急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、リヒター症候群;ワルデンストレームマクログロブリン血症、成人神経膠芽腫;成人神経膠肉腫、再発性神経膠芽腫、再発性小児横紋筋肉腫、再発性オーイング肉腫/末梢性未分化神経外胚葉腫瘍、再発性神経芽腫;再発性骨肉腫、大腸癌、MSI陽性大腸癌;MSI陰性大腸癌、鼻咽頭非角化型癌腫;再発性鼻咽頭未分化癌腫、子宮頸部腺癌;子宮頸部腺扁平上皮癌腫;子宮頸部扁平上皮癌腫;再発性子宮頸部癌腫;ステージIVA子宮頸癌;ステージIVB子宮頸癌、肛門管扁平上皮癌腫;転移性肛門管癌腫;再発性肛門管癌腫、再発性頭頸部癌;癌腫、頭頸部の扁平上皮、頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)、卵巣癌腫、結腸癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、進行消化器癌、胃腺癌;胃食道結合部腺癌、骨新生物、軟組織肉腫;骨肉腫、胸腺癌腫、尿路上皮癌腫、再発性メルケル細胞癌腫;ステージIIIメルケル細胞癌腫;ステージIVメルケル細胞癌腫、骨髄異形成症候群及び再発性菌状息肉症及びセザリー症候群が挙げられる。様々な実施形態において、がんは、脳腫瘍、皮膚癌、眼部癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、子宮頸癌、肝臓癌、骨癌、子宮癌、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、口腔癌、甲状腺癌、腎臓癌、精巣癌、白血病、リンパ腫及び中皮腫から選択される。
【0091】
本発明の方法が対象の腫瘍サイズまたは腫瘍負担を低減する及び/または対象における転移を低減することが企図される。様々な実施形態において、方法は、腫瘍サイズを10%、20%、30%またはそれ以上低減する。様々な実施形態において、方法は、腫瘍サイズを10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%低減し、なお、これらの値の間にある全ての値及び範囲を含める。
【0092】
様々な実施形態において、本開示は、腫瘍部位からの免疫抑制細胞の数の減少を、それらの脾臓内及び/または肝臓内への隔離、ならびに対象におけるアポトーシスの誘導によってもたらす方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0093】
様々な実施形態において、対象における粒子の投与は、腫瘍部位または腫瘍微小環境の単球、マクロファージ、顆粒球及び/または好中球の原因となっている病理の蓄積を防止する。
【0094】
様々な実施形態において、本開示は、腫瘍において単球、マクロファージ、顆粒球及び/または好中球の数を減少させる方法を提供する。様々な実施形態において、単球、マクロファージ、顆粒球及び/または好中球の数は腫瘍において約2、3、4、5、6、7、8、9または10分の1またはそれ未満に減少する。
【0095】
様々な実施形態において、本開示は、対象における抗腫瘍免疫応答を変化させる方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含む、当該方法を提供する。様々な実施形態において、変化は、抗腫瘍APC、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞、NK T細胞及び/またはNK細胞のレベルまたは活性を増大させる。
【0096】
様々な実施形態において、対象における粒子の投与は、腫瘍部位または腫瘍微小環境における免疫細胞の活性及び/または機能を変化させる。様々な実施形態において、粒子の投与は、腫瘍部位または腫瘍微小環境において炎症性免疫細胞の数を増加させる。様々な実施形態において、対象における粒子の投与は、腫瘍部位または腫瘍微小環境における免疫細胞の抗腫瘍炎症機能または活性を増進する。
【0097】
様々な実施形態において、本開示は、腫瘍関連間質を変化させる方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0098】
様々な実施形態において、対象における粒子の投与は、腫瘍部位または腫瘍関連間質において線維芽細胞、癌関連線維芽細胞、脂肪細胞、内皮細胞、周皮細胞、間葉系間質細胞及び/またはECMを変化させる。
【0099】
様々な実施形態において、本開示は、対象における腫瘍サイズ及び/または腫瘍成長を低減する方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0100】
様々な実施形態において、本開示は、がん幹細胞及び/または間葉系幹細胞を変化させる方法であって、負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて対象に投与することを含む、当該方法を提供する。
【0101】
様々な実施形態において、対象における粒子の投与は、直接的な粒子取込みによって腫瘍細胞死、腫瘍細胞アポトーシス、及び/または腫瘍細胞壊死を誘導する。
【0102】
投与及び投薬
がんまたは増殖性障害に罹患している対象に治療を行うために本明細書に記載の負に帯電した粒子をがん治療薬と組み合わせて投与することを含む方法が本明細書において企図される。
【0103】
本開示の方法は、治療薬を直接的または間接的に哺乳動物対象に導入するための任意の医学的に許容される手段、例えば、限定されないが注射、経口内服、鼻腔内、局所、経皮、非経口、吸入スプレー、膣内または直腸投与を用いて実施される。本明細書中で使用する非経口という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、腹腔内、クモ膜下腔内及び脳槽内注射、ならびにカテーテルまたは輸注技術を含む。様々な実施形態において粒子は静脈内投与されるが、他の投与経路で、例えば、限定されないが皮内、皮下、皮膚上、経口、関節内及びクモ膜下腔内に投与されてもよい。様々な実施形態において、組成物は腫瘍の部位に投与される。
【0104】
様々な実施形態において、粒子は約0.1〜約10mg/kgの用量で投与される。様々な実施形態において、粒子は、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、8.0mg/kgまたは10mg/kgの用量で投与される。様々な実施形態において、粒子は約8.0mg、80mg、320mg、640mgまたは800mgの用量で投与される。列挙された用量端点の内に入る及び間にある値も企図される。これらの濃度は、単一の剤形として、または複数の用量として投与され得る。
【0105】
がん治療薬は、既知のがん治療薬である場合、製造者及び治療医によって指示されるとおりに投与されることを企図する。粒子及びがん治療薬を同一の製剤で投与する場合には、それらは本明細書に記載のとおりに製剤化され得る。
【0106】
所与の投薬における免疫調節剤またはバイオ薬剤がん治療薬の量は、療法を投与される個体の大きさ、及び治療する障害の特徴によって様々であり得る。例示的な治療では、約1mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、500mg/日または1000mg/日を投与する必要があり得る。最初に動物モデル、その後に臨床試験で行われる標準的な用量−奏効試験によって、特定の疾患状態及び患者集団に最適な投薬量が明らかになる。
【0107】
様々な実施形態において、チェックポイント調節剤、例えば、PD−1抗体、CTLA−4抗体またはPD−L1抗体を0.1〜15mg/kgの用量範囲で投与する。これらの濃度は、単一の剤形として、または複数の用量として投与され得る。
【0108】
本開示の方法で治療することができる症状は、好ましくは、哺乳動物に現れるものである。哺乳動物としては、例えば、ヒト及び他の霊長類、ならびにイヌ及びネコなどのペットまたは伴侶動物、ラット、マウス及びウサギなどの実験動物、ならびにウマ、ブタ、ヒツジ及びウシなどの畜産動物が挙げられる。様々な実施形態において、対象はヒトである。
【0109】
様々な実施形態において、粒子は、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、または年に1回投与される。
【0110】
本開示はさらに、本明細書に記載の粒子、がん治療薬及び薬学的に許容される担体を含む無菌の医薬組成物を企図する。
【0111】
本開示はさらに、本明細書に記載の粒子及び薬学的に許容される担体を含む無菌の医薬組成物を企図する。
【0112】
本開示はさらに、がん治療薬及び薬学的に許容される担体を含む無菌の医薬組成物を企図する。
【0113】
適切な使用説明書が任意選択的に添付された、上記抗体または組成物のいずれかを含んでいるシリンジ、例えば使い捨てもしくは充填済みのシリンジ、無菌の密閉された入れ物、例えば、バイアル、ボトル、容器、及び/またはキットもしくは包装品も企図される。
【0114】
併用療法
増殖性障害のがんを治療するために本明細書に記載の粒子をがん治療薬と組み合わせて投与することを企図する。様々な実施形態において、がん治療薬は、化学療法薬、バイオ薬剤、細胞ベース療法、ホルモン療法、抗体薬物複合体、腫瘍溶解性ウイルスまたはがんワクチンである。ホルモン療法としては、乳癌のためのタモキシフェン、乳癌及び前立腺癌のためのゾラデックス、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(anastrazole)、レトロゾール、エキセメスタン)が挙げられる。抗体薬物複合体としては、リンパ腫のためのブレンツキシマブ ベドチン(抗CD30 mAB+モノメチルアウリスタチンE)、乳癌のためのアドトラスツズマブ エムタンシン(entansine)(抗Her2/Neu+メイタンシノイド)、及びALLのためのイノツズマブ オゾガマイシン(Ozagamicin)(抗CD22+カリキアマイシン)が挙げられる。腫瘍溶解性ウイルスとしてはイムリジック(Amgen(登録商標))が挙げられる。がんワクチンとしては、前立腺癌のためのシプロイセルTが挙げられる。いくつかのがんワクチンは開発中であり、タンパク質、ポリペプチド、核酸及び樹状細胞ワクチンを含むが、これらに限定されない。
【0115】
様々な実施形態において、がん治療薬は、成長阻害剤、細胞毒性剤、DNA複製阻害剤、キナーゼ阻害剤、シグナル伝達カスケード阻害剤、血管新生阻害剤、代謝阻害剤、アミノ酸合成阻害剤、発がん性タンパク質の選択的阻害剤、転移の阻害剤、抗アポトーシス因子の阻害剤、アポトーシス誘導剤、ヌクレオシドシグナル伝達阻害剤、酵素阻害剤及びDNA損傷剤からなる群から選択される化学療法薬である。
【0116】
細胞毒性剤は、細胞の機能を阻害もしくは妨害する及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。当該用語は、放射性同位体(例えば、I131、I125、Y90及びRe186)、化学療法剤、及び毒素、例えば、細菌由来、真菌由来、植物由来もしくは動物由来の酵素活性毒素または合成毒素またはその断片を含むことを意図する。非細胞毒性剤は、細胞の機能を阻害もしくは妨害しない及び/または細胞の破壊を引き起こさない物質を指す。非細胞毒性剤には、活性化されて細胞毒性になることができる薬剤が含まれ得る。
【0117】
本開示の方法に使用するために企図される化学療法剤には、表Iに列挙するものが含まれるが、これらに限定されない。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0118】
がん治療薬が1つ以上のバイオ薬剤、例えば、サイトカイン、血管新生阻害剤、免疫チェックポイント調節剤及びモノクローナル抗体を含むことも企図される。サイトカインとしては、インターフェロン(IFN)及びインターロイキン(IL)、例えば、IFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17、IL−18、IL−21、形質転換成長因子ベータスーパーファミリーのメンバー、例えば、TGF−β1、TGF−β2及びTGF−β3、腫瘍壊死因子アルファ、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)が挙げられる。
【0119】
免疫チェックポイント調節剤などのバイオ薬剤は、PD1、PD−L1、CTLA−4、TIMP−3、LAG−3、及び/またはTIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)を標的とする。様々な実施形態において、免疫チェックポイント調節剤は、PD−1、PD−L1またはCTLA−4に特異的な抗体である。チェックポイントタンパク質に特異的な抗体としては、CTLA−4に結合するイピリムマブ(ヤーボイ(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Company)及びトレメリムマブ;PD−1に対する抗体、例えばペンブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標)、Merck Sharp &Dohme Corp)及びニボルマブ(オプジーボ(登録商標)、Bristol−Myers Squibb);ならびにPD−L1を標的とする抗体、例えば、アテゾリズマブ(テセントリク(登録商標))、アベルマブ(バベンチオ(登録商標))及びデュルバルマブ(イミフィンジ(登録商標))(尿路上皮癌腫及び非小細胞肺癌腫の治療のために承認済み)、セミプリマブ(リブタヨ(登録商標))(皮膚扁平上皮癌腫のために承認済み)が挙げられる。
【0120】
様々な実施形態において、方法に有用なモノクローナル抗体は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、デノスマブ、イブリツモマブ、トラスツズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ及びリツキシマブを含む群から選択される。様々な実施形態において、方法に有用なモノクローナル抗体は、受容体チロシンキナーゼ、EGFR、VEGF、VEGFR、PDGF、PDGFR、TGF−β、TGF−β−LAP、SIRP−α、CD47、CD39、CD73及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的とする。
【0121】
バイオ薬剤としては、単一特異性、二重特異性、三重特異性、または二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)であるモノクローナル抗体が挙げられる。がんの治療に有用なモノクローナル抗体としては、VEGF−Aに対する抗体であるベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genetech);EGFRに作用するチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブ(タルセバ(登録商標)、Genentech and OSI Pharmaceuticals)、経口Bcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤であるダサチニブ(スプリセル(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Company);IL−21;ペグ化IFN−α2b;チロシンキナーゼ阻害剤であるアキシチニブ(インライタ(登録商標)、Pfizer,Inc.);及びMEK阻害剤であるトラメチニブ(メキニスト(登録商標)、GlaxoSmithKline)(Philips and Atkins,Int Immunol.,27(1):39−46(2015)、これを参照により本明細書に援用する)が挙げられる。がんを治療するのに有用な二重特異性抗体は、ブリナツモマブ及びカツマキソマブを含めてKrishnamurthy et al.(Pharmacol Ther.2018 May;185:122−134)、及びYu et al.,(J.Hematol Oncol 2017,10:155)に記載されている。
【0122】
方法は、がん治療薬が1つ以上の細胞ベース療法、例えば、養子細胞移入、腫瘍内浸潤白血球療法、キメラ抗原受容体T細胞療法、NK細胞療法及び幹細胞療法を含むことも可能にする。
【0123】
がん治療薬は1つ以上の免疫療法、例えば、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍溶解性細菌もしくは他の細菌構成物、微生物叢調節剤、カルメット−ゲラン桿菌、TLR作動薬、微生物叢調節剤、STING経路調節剤及びがんワクチンを含むことが企図される。方法は、がん治療薬がウイルスベクターまたは細菌ベクターを含むことも可能にする。様々な実施形態において、TLR作動薬は、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12及び/またはTLR13作動薬である。様々な実施形態において、TLR作動薬は、ウイルス由来のもの、細菌由来のもの、及び/または合成によって作られたものである。
【0124】
様々な実施形態において、がん治療薬は酵素を含む。様々な実施形態において、がん治療薬は、T細胞、B細胞、APC、単球、MDSC、TAM、好中球、他の単球由来細胞、腫瘍関連間質、がん幹細胞、間葉系幹細胞、細胞外マトリックス及びアミノ酸を標的とする酵素を含む。様々な実施形態において、がん治療薬は、アスパラギナーゼ、キヌレニナーゼ(kynurininase)、L−アルギニンデイミナーゼ、L−メチオニン−γ−リアーゼ、1つ以上のアミノ酸分解酵素、及び1つ以上のヌクレオシド分解酵素を含む群から選択される酵素を含む。
【0125】
粒子及びがん治療薬は同時進行的、同時、または逐次的に与えられ得ることが企図される。2つの治療剤の同時進行的投与は、薬剤がそれらの治療効果を働かせている期間に重複がある限りにおいて、薬剤を同時にまたは同じ経路で投与することを必要としない。異なる日または週における投与と同様に、同時または逐次的投与が企図される。
【0126】
粒子及びがん治療薬を同一の製剤で同時に与えてもよいことが企図される。さらには、薬剤を別個の製剤で投与する及び同時進行的に投与することが企図され、同時進行的にとは、薬剤を互いの30分以内に与えることを意味する。
【0127】
別の態様では、がん治療薬を粒子組成物の投与に先行して投与する。先行投与は、粒子による治療の1週間前から粒子の投与の30分前までの範囲内にがん治療薬を投与することを指す。さらには、がん治療薬を粒子組成物の投与の後に投与することが企図される。後の投与は、粒子治療の30分後から投与の1週間後までの投与を表すことを意味する。
【0128】
キット
さらなる態様として、本開示は、1つ以上の化合物または組成物を本開示の方法の実施のためのそれらの使用が容易になるように包装して含んでいるキットを含む。一実施形態では、そのようなキットは、入れ物、例えば密閉されたボトルまたは容器に入った本明細書に記載の化合物または組成物(例えば、粒子を単独で、またはがん治療薬と組み合わせて含む組成物)を含み、方法を実施する際の化合物または組成物の使用について記載したラベルが入れ物に貼付されまたは包装の中に入っている。化合物または組成物は単位剤形で包装されていることが好ましい。キットは、特定投与経路による粒子、がん治療薬もしくは組成物の投与、またはスクリーニングアッセイの実施に適した装置をさらに含んでいてもよい。キットは、阻害剤組成物の使用について記載したラベルを含んでいることが好ましい。
【0129】
本開示のさらなる態様及び詳細は、限定的ではなく例示的なものであることを意図した以下の実施例から明らかとなろう。
【実施例】
【0130】
実施例1
IMP療法を免疫チェックポイント阻害剤抗PD−1モノクローナル抗体と組み合わせて用いる腫瘍の治療標的化
PD−1モノクローナル抗体(mAb)と組み合わせたIMP療法の抗腫瘍有効性を見極めるためには、Kumar et al.(Cancer Cell 32,654−668,(2017]))が記載しているように、6〜8週齢のC57BL/6マウスを使用して同所性または同系腫瘍モデルを確立することになる。例えば、マウスにLLC(ルイス肺癌)、MC38またはEL4(9,10−ジメチル−1,2−ベンズアントラセン誘導マウス胸腺腫)細胞を皮下注射によって移植して、下記のとおりに各々4つの処置群に無作為に分割することになる:
【0131】
群1:対照処置(n=7)
【0132】
群2:IMPのみ(n=10)
【0133】
群3:抗PD1 mAbのみ(n=10)
【0134】
群4:IMP+抗PD1 mAb(n=7)。
【0135】
腫瘍細胞の皮下注射から24時間後、マウスにIMP(静脈内に1mg)及び/または抗PD1 mAb(腹腔内に100μg)による処置を行う。以下の処置スケジュールに従い、また、その例を
図1に示す:
【0136】
0日目:LLC細胞またはEL4細胞の皮下注射。
【表A】
【0137】
対照処置を受けているマウスには、IMP及び抗PD1 mAbの代わりに静脈内及び/または腹腔内に生理食塩水を与える。0、14、19、22、25及び29日目に標準的なキャリパーを使用して腫瘍面積を測定することによって、各処置群における腫瘍成長を評価する。
【0138】
生理食塩水処置を受けているマウスは、処置期間の最後までに面積500〜600mm
2の範囲の大きな腫瘍を発達させ、そのため安楽死が保証される。反対に、IMPと抗PD1 mAbとの両方による併用療法は、腫瘍成長の低減、その完全な排除をもたらすと予想される。併用処置群では、腫瘍は40日経っても5〜10mm
2の面積にしか成長しない可能性がある。
【0139】
IMPのみ、または抗PD1 mAbのみによる処置を行ったマウスは、生理食塩水処置マウスと比較して腫瘍成長が有意に遅くなる中等度の効果を示すと予想される。これらの群では治療の終了に向かって面積100〜150mm
2の範囲の腫瘍が認められると予想されるという仮説が立てられる。これらの処置群において腫瘍は200〜250mm
2の面積にまで成長する可能性があるが、生理食塩水処置マウスに認められる腫瘍の大きさに達するとは予想されない。
【0140】
最初の実験では、0日目にLLC腫瘍細胞を皮下注射によってマウスに接種した。LLC腫瘍細胞(ATCC(登録商標))は、10%のFBS(Atlanta Biologicals)、5nMのグルタミン、25mMのHEPES及び1%の抗生物質(Invitrogen)が補充されたDMEM(Corning CellGro(登録商標)、10−013−CV)の中に単層培養で維持された。0.5×10
6個のLLC細胞の浮遊液を調製し、7〜10週齢のC57BL/6マウスの右側下腹部に注射した。1日目にマウスを無作為に処置群に割り当て、以下のスケジュールに従って処置を行った。0、14、19、22、25及び29日目に標準的なキャリパーを使用して腫瘍面積を測定することによって、各処置群における腫瘍成長を評価した。IMPはPLGA粒子であった。
【表B】
【0141】
結果を
図2に示す。予想通り、生理食塩水処置(対照)マウスは29日目までに大きな腫瘍を発達させた。抗PD1のみ、またはIMPのみによる単独療法は同程度の抗腫瘍効果を示して腫瘍成長の阻害が生理食塩水処置と比較して中等度であった。IMPと抗PD1 mAbとによる併用療法は相乗効果をもたらし、生理食塩水処置またはIMPもしくは抗PD−1 mAbによる単独療法と比較して腫瘍成長の阻害を増強した。
【0142】
実施例2
単独で、または抗PD1と組み合わせて投与するIMPの治療効果
同系腫瘍モデルに対するIMP併用処置の効果を見極めるために6〜8週齢のC57BL/6マウスにMC38(結腸腺癌)腫瘍細胞を側腹への皮下注射によって移植した。MC38マウス腫瘍細胞は、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)及び2mMのL−グルタミンが補充されたDMEMの中に単層培養で、5%CO
2の組織培養インキュベータ内で37℃に維持された。触診可能な腫瘍(約100mm
3の大きさ)が形成された後、動物を以下のとおりに4つの処置群のうちの1つに無作為に割り当てた:
【0143】
群1:対照処置(n=10)
【0144】
群2:IMP(n=10)
【0145】
群3:抗PD1(n=10)
【0146】
群4:IMP+抗PD1(n=10)。
【0147】
0.1mLの無血清DMEMの中に再浮遊させた1×10
6個の95%生細胞の単細胞浮遊液を調製し、動物の右側下腹部に注射した。処置は腫瘍サイズがおよそ100mm
3の大きさに達した後に開始した。以下の処置スケジュールに従って、IMP(PLGA粒子)(1mg)を静脈内(i.v)注射によって投与し、抗PD−1(100μg)を腹腔内(i.p)注射によって投与した:
【表C】
【0148】
キャリパーを使用して二次元の腫瘍サイズを測定することによって、腫瘍成長を評価した。a及びbをそれぞれ腫瘍の長径及び短径とした式V=0.5×a×b
2を用いて腫瘍体積を算出した。腫瘍サイズはmm
3で表した。
【0149】
図3Aに示すように、IMPによる処置は、対照処置と比較して腫瘍成長の強力な阻害につながった。IMPの有効性は抗PD1処置と同程度であった。組み合わせたIMPと抗PD1とによる処置は相乗作用を実証し、それぞれの単独療法と比較して腫瘍成長の阻害の増進につながった。IMPによる処置は、腫瘍成長に対するその効果を反映して、MC38腫瘍保有マウスの生存期間の延長につながった。IMPによる生存有効性は抗PD1よりも優れ、IMPと抗PD1とによる併用療法は、それぞれの単独療法と比較して生存期間の増加をもたらす相乗効果を実証した(
図3B)。
【0150】
上記の例示的な実施例に示される本開示において幾多の改変形態及び変形形態を当業者が考え付くと予想される。それゆえ、本開示に対しては別記の特許請求の範囲の中で現れるような限定のみがなされるべきである。
【国際調査報告】