【実施例】
【0082】
実験セクション
スキーム1
【化2】
G−1の合成は、Org. Biomol. Chem., 2010,8, 2252-2259に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれ、スキーム1に示されている。無水アセトニトリル(2.0cm
3)中の触媒量のSc(OTf)
3(0.492g、1.0mmol)を、アセトニトリル(25cm
3)中の6−ブロモピペロナール(2.30g、10.0mmol)、p−アミノアセトフェノン(1.30g、10.0mmol)、およびシクロペンタジエン(3.30g、50.0mmol)の混合物に加えた。反応混合物を周囲温度(約23℃)で2.0時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去した。残留物を、酢酸エチル−ヘキサン(10:90)を使用する分取シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、G−1(4.03g、98%、d.r.=94:6)を白色固体として得た。微量のジアステレオマーを、再結晶によって実質的に除去し、SRR G−1とRSS G−1とのラセミ混合物を得た。
【0083】
(実施例1)
SRR G−1およびRSS G−1エナンチオマーの単離
Tocris Bioscienceから購入した、高度に精製されたG−1の試料、すなわち,(±)1−(4−(6−ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−(3aS*,4R*,9bR*)−テトラヒドロ−3H−シクロペンタ[c]キノリン−8−イル)エタン−1−オン(純度99.4%)から始め、この材料を、90:10:0.1(体積/体積/体積)メチルtert−ブチルエーテル/エタノール/ジエチルアミン中に溶解し、Chrialpak1A樹脂を充填したカラムを使用した分取クロマトグラフィーにかけた。溶出は90:10:0.1(体積/体積/体積)メチルtert−ブチルエーテル/エタノール/ジエチルアミンを用いて行い、各エナンチオマーに対応する画分を収集し、濃縮して固体にした。単結晶X線構造解析により、早期に溶出するエナンチオマーが、SRR G−1エナンチオマーであると決定した。
【0084】
(実施例2)
SRR G−1多形スクリーニング
実施例1に従って調製されたSRR G−1から始めて、固体のスラリーから単離された固体、または溶液の急速および緩慢蒸発による固体、ならびに冷却による固体を分析する多形スクリーニング研究を行った(表1)。形態Aと呼ばれる無水形態と形態Bと呼ばれるモノジクロロメタン溶媒和物の2つの結晶形態を特定した。高温にさらされると、形態Bの結晶形態が脱溶媒和して形態Cの結晶形態を形成する。非晶質材料を、2つの異なる方法で精製されたSRR G−1から生成した;SRR G−1のジエチルエーテル溶液を迅速蒸発させるか、またはSRR G−1のジクロロメタン溶液(の溶液)から回転蒸発させる。
【0085】
【表1】
【0086】
SRR G−1の単結晶構造決定(形態B)
実施例1に従って調製したSRR G−1から始めて、好適な単結晶をジクロロメタン溶液から成長させ、単結晶X線回折法によって分析した。構造を決定することに成功した。
【0087】
蒸発ステップ後、ジクロロメタンの溶液から単結晶を生成した。およそ0.19×0.14×0.03mm
3の寸法の無色薄板状物を、ランダム配向でポリマーループに取り付けた。予備検査およびデータ収集を、銅アノードマイクロフォーカス密閉型X線管(Cu Kα λ=1.54184Å)およびDectris Pilatus3 R200Kハイブリッドピクセルアレイ検出器を備えたRigaku SuperNova回折計で実施した。データ収集のためのセル定数および配向マトリックスを、3.4920°<θ<77.1910°の範囲の6979反射の設定角度を使用した最小二乗法精密化によって得た。空間群を、プログラムCRYSALISPROによって、P2
12
12
1(国際表記一覧表 19番)であると決定した。データを、室温で155.132°の最大回折角(2θ)まで収集した。
【0088】
フレームを、CRYSALISPROにより積算した。合計10119反射を収集し、そのうち4368が特有のものであった。ローレンツおよび偏光補正をデータに適用した。Cu Kα線について線形吸収係数は5.144mm
-1である。CRYSALISPROを使用して経験的吸収補正を適用した。透過係数は0.676〜1.000の範囲であった。等価の反射強度を平均化した。平均化の一致因子(agreement factor)は、強度に基づいて3.4%であった。
構造を、SHELXTを使用して直接法によって解析した。残りの原子は、後続の差フーリエ合成により位置を決定した。構造を、SHELXL−2014を使用して精密化した。SRR G−1の水素原子を、独立して精密化した。ジクロロメタンの水素原子は精密化に含まれていたが、それらが結合している原子に乗るように拘束した。構造を、関数:
【0089】
【数1】
を最小化することにより、完全行列最小二乗法にて精密化し、
ここで、重みwは1/[σ
2(F
o2)+(0.0464P)
2+(0.1905P)](式中、P=(F
o2+2F
c2)/3)として定義される。散乱因子は、「国際結晶学データ集(International Tables for Crystallography)」から採用した。精密化に使用された4368反射のうち、強度が不確かさの2倍より大きい[I>2σ(I)]、4071反射のみを、フィット残差Rの計算に使用した。精密化の最終サイクルには334の変数パラメーターが含まれ、拘束0であり、
【0090】
【数2】
の、それぞれ重み付けのない一致因子および重み付した一致因子で最終サイクルを収束させた。単位重み(適合度)の観測値の標準偏差は1.07であった。最終差フーリエにおける最高ピークは、電子密度が0.398e/Å
3であった。最小負ピーク値は−0.438e/Å
3であった。
【0091】
計算によるX線粉末回折(XRPD)パターン。MERCURY、ならびに単結晶データからの原子座標、空間群および単位胞パラメーターを使用して、Cu線についての計算によるXRPDパターンを生成させた。原子変位楕円体およびパッキング図原子変位楕円体図を、MERCURYを使用して作成した。原子を50%確率異方性熱的楕円体として表している。パッキング図および追加の図をMERCURYにより生成した。水素結合は、破線で表す。キラル中心の評価を、PLATONを使用して実施した。絶対配置は、分子キラリティー指定則を使用して評価する。
【0092】
結晶系は直方晶系であり、空間群はP2
12
12
1である。セルパラメーターおよび計算による体積は:a=6.43156(10)Å、b=13.0752(2)Å、c=25.2941(4)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、V=2127.09(6)Å
3、である。標準不確かさは、結晶学的括弧表記で書かれおり、例えば、0.123(4)は0.123±0.004に相当する。式量は497.20g mol
-1、Z=4であり、計算による密度は1.553g cm
-3になる。結晶データおよび結晶学的データ収集パラメーターのさらなる詳細は、表2にまとめられている。得られた構造の品質は、のフィット残差R 0.0348(3.48%)によって示されるように、高い。2%〜6%の範囲のR因子は、最も確実に決定される構造であると言われている。
【0093】
【表2】
【0094】
SSR G−1ジクロロメタン溶媒和物の原子変位楕円体図を
図1に示す。単結晶構造の非対称単位において観察された分子は、SSRエナンチオマーの提案された分子構造と一致している。
図1に示す非対称単位には、1つのSSR G−1分子および1つのジクロロメタン分子が含まれている。
a、b、およびcの結晶軸に沿って見たパッキング図を、それぞれ
図2〜4に示す。
図5に示すように、アミンから、隣接する分子のカルボニルへの水素結合により、b軸に沿って1次元の水素結合ネットワークが生成される。
【0095】
絶対構造は、結晶によるX線異常散乱の分析を通じて決定することができる。異常散乱は、フリーデル対間の強度差によって評価される。反射データをθ
maxまで測定した場合、フリーデルカバレッジは95%であった。フラックパラメーターとして知られる精密化パラメーターxは、反転双晶の2つの構成成分の相対的存在量をコード化する。この構造は、精密化モデルを1−xの割合、およびそれを反転したものをx含む。低い標準不確かさが得られた場合、フラックパラメーターは、解析した構造が正しい場合は0に近く、反転モデルが正しい場合には1に近いはずである。
図1に示すSSR G−1ジクロロメタン溶媒和物の構造の測定されたフラックパラメーターは−0.018であり、標準不確かさは0.013であり、これは反転を識別する力が強いことを示している。
【0096】
絶対構造に関する追加情報は、ベイズ統計学をバイフット差に適用することによって評価することができる。この分析は、絶対構造のさまざまな仮説に対する一連の確率を提供する。この分析により、ホーフト yパラメーターが生成され、これは、フラック xパラメーターと同じように解釈される。加えて、この分析によって、絶対構造が正しいか、正しくないか、またはラセミ双晶であるという3つの確率が得られる。今回のデータセットの場合、(フラックと同等である)ホーフト yパラメーターは−0.020(11)であり、構造が正しい確率は1.000であり、構造が正しくないか、またはラセミ双晶である確率はどちらも10
-200未満である。
絶対配置は、
図6にラベル付けされている。これは、SRR G−1の構成と一致している。
図7は、単結晶構造から生成されたSRR G−1ジクロロメタン溶媒和物の計算によるXRPDパターンを示す。計算によるXRPDパターンは、表1にまとめられている多形スクリーニング研究において形態BのXRPDパターンを示していると特定されたバルク試料に割り当てられたものと同一である。
位置パラメーターおよびそれらの推定標準偏差、異方性変位因子係数(anisotropic displacement factor coefficients)、結合距離、結合角、水素結合および角度、ならびにねじれ角についての表が示されている。
【0097】
【表3-1】
【表3-2】
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】
【表7】
【0102】
【表8】
【0103】
実施例1に従って調製したSRR G−1から始めて、形態A 結晶形態の好適な単結晶をイソプロパノール溶液から成長させ、単結晶X線回折法によって分析した。構造を決定することに成功した。単結晶X線分析は、およそ0.203×0.137×0.033mm
3の寸法の無色プレートを、ランダム配向でポリマーループに取り付けて、このプレート上で実施した。予備検査およびデータ収集を、銅アノードマイクロフォーカス密閉型X線管(Cu Kα λ=1.54184Å)およびDectris Pilatus3 R200Kハイブリッドピクセルアレイ検出器を備えたRigaku SuperNova回折計で実施した。データ収集のためのセル定数および配向マトリックスを、4.7640°<θ<77.3860°の範囲の9009反射の設定角度を使用した最小二乗法精密化によって得た。空間群を、プログラムCRYSALISPROによって、P2
12
12
1であると決定した。データを、室温で155.264°の最大回折角(2θ)まで収集した。
【0104】
フレームを、CRYSALISPROにより積算した。合計17299の反射を収集し、そのうち7561が特有のものであった。ローレンツおよび偏光補正をデータに適用した。Cu Kα線の線形吸収係数は3.206mm
-1である。CRYSALISPROを使用して経験的吸収補正を適用した。透過係数は0.733〜1.000の範囲であった。等価の反射強度を平均化した。平均化の一致因子は、強度に基づいて2.74%であった。
構造を、SHELXTを使用して直接法によって解析した。残りの原子は、後続の差フーリエ合成により位置を決定した。構造を、SHELXL−2014を使用して精密化した。水素原子を、独立して精密化した。構造を、関数:
【0105】
【数3】
を最小化することにより、完全行列最小二乗法にて精密化し、
ここで、重みwは、1/[σ
2(F
o2)+(0.0401P)
2+(0.3205P)](式中、P=(F
o2+2F
c2)/3)として定義される。散乱因子は、「国際結晶学データ集」から採用した。精密化に使用された7561の反射のうち、強度が不確かさの2倍より大きい[I>2σ(I)]、6752の反射のみを、フィット残差Rの計算に使用した。精密化の最終サイクルには613の変数パラメーターが含まれ、拘束0であり、
【0106】
【数4】
の、それぞれ重み付けのない一致因子および重み付した一致因子により最終サイクルを収束させた。単位重み(適合度)の観測値の標準偏差は1.04であった。最終差フーリエにおける最高ピークは、電子密度が0.319e/Å
3であった。最小負ピーク値は−0.454e/Å
3であった。
【0107】
結晶系は直方晶系であり、空間群はP2
12
12
1である。セルパラメーターおよび計算による体積は:a=6.50106(9)Å、b=17.3547(2)Å、c=32.6957(4)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、V=3688.85(9)Å
3、である。分子量は412.27g mol
-1、Z=8であり、計算による密度は1.485g cm
-3になる。結晶データおよび結晶学的データ収集パラメーターのさらなる詳細は、表9にまとめられている。形態Aの原子変位楕円体図を
図8に示す。示されている非対称単位には、2つのエナンチオピュアなSRR G−1分子が含まれている。構造から、絶対配置を確定的に決定した。SRR G−1には、C114(C214)、C113(C213)、およびC19(C29)に位置する3つのキラル中心が含まれており、それぞれR、S、およびR配置で結合している。単結晶構造から生成された形態Aの計算によるXRPDパターンを
図9に示し、実験パターンと比較する。
【0108】
【表9】
【0109】
(実施例3)
形態および多形データ
SRR G−1は、2つの特徴的な多形すなわち形態AおよびC;溶媒和物、すなわち形態B;ならびに非晶質材料を形成する。結晶形態のXRPDパターンを、
図10において比較する。形態Bは、100〜120℃間の高温にさらされると脱溶媒和して形態CになるモノDCM溶媒和物である。脱溶媒和物である形態Cは、129℃付近で融解開始を示す。形態Aは、すべての温度で熱力学的に安定な形態であり(形態Cにモノトロピックに関連する)、178℃付近で融解開始を示す。非晶質材料は物理的に安定ではなく、高温または高湿度のいずれかにさらされると、結晶化して形態Aになる。形態については、以下の後続のセクションにてより詳細に説明する。
【0110】
結晶形態A
形態Aは、は無水であり、178℃付近で融解を開始する。形態Aは、熱力学的に最も安定した形態であり、形態Cにモノトロピックに関係する。形態Aは、ジクロロメタン以外の種々の有機溶媒および有機/水溶媒系を利用した複数の結晶化技術から決まって得られた。
結晶形態Aについて観察されたXRPDピークを、表10に列挙する。
【0111】
【表10-1】
【表10-2】
【0112】
形態Aのサーモグラムを、
図11に示す。熱重量分析(TGA)データは、最高266℃まで質量損失がないことを示しており、無水形態に一致している。DSCは、176℃(68J/g)付近で開始する単一の吸熱を示す。事象を、ホットプレート上で融解として視覚的に確認した。分解によると思われる変色が、融解時に認められた。
形態Aの動的蒸気収着等温線は、この形態が低い吸湿性を呈することを示している(
図12)。収着/脱着サイクルによる質量変化は、0.3質量%未満であった。ヒステリシスは観察されなかった。動的蒸気収着実験から回収された材料は、XRPDによると形態Aであった。
【0113】
結晶形態B
形態Bは、DCMから形態C(脱溶媒和形態)との混合物として決まって生成されるモノジクロロメタン溶媒和物である。形態Bは、100〜120℃間の高温にさらされると完全に脱溶媒和して形態Cになる。
形態Bの単結晶構造は既知である。結晶系は直方晶系であり、空間群はP2
12
12
1である。セルパラメーターおよび計算による体積は:a=6.43156(10)Å、b=13.0752(2)Å、c=25.2941(4)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、V=2127.09(6)Å
3、である。式量は497.20g mol
-1、Z=4であり、計算による密度は1.553g cm
-3になる。非対称単位には、1つのエナンチオピュアなSSR G−1分子および1つのジクロロメタン分子が含まれている。この構造には、C8、C9、およびC13に位置する3つのキラル中心が含まれており(
図13を参照)、これらは、それぞれR、S、およびR配置で結合している。単結晶構造から生成された形態Bの計算によるXRPDパターンを
図14に示し、実験パターンと比較する。
結晶形態態Bについて観察されたXRPDピークを、表11に列挙する。
【0114】
【表11】
【0115】
形態Bのサーモグラムを、
図15に示す。熱重量分析(TGA)曲線は、177℃までで約15.3%の質量損失を呈し、これは、0.9mol/mol DCMの揮発に一致している。損失は、DSCサーモグラムにおいて脱溶媒和吸熱(最大104℃)および再結晶発熱(最大140℃)と同時に発生する。再結晶した材料は、形態Aの融解と一致する176℃付近で開始する最終的な融解吸熱を呈する。形態Bと形態Cとの混合物のDSCサーモグラムを
図16に示す。混合物は、脱溶媒和吸熱(最大101℃)を呈し、続いて、脱溶媒和形態である形態Cの融解吸熱(128℃付近で開始)を呈する。
形態Bの物理的安定性を調査した。120℃にさらされると、形態Cへの完全な脱溶媒和が起こった。90〜100℃に25分間さらすと、ほぼ完全な脱溶媒和が明らかになった。70℃(またはそれ未満)での減圧においては、脱溶媒和が起こるのに十分ではなかった。
【0116】
結晶形態C
形態Cは、形態B(モノDCM溶媒和物)の脱溶媒和によって生成され、129℃付近で融解開始を伴う脱溶媒和物である。
形態CのXRPDパターンでは、インデクシングに成功し、このことは、形態Cが単結晶相から構成されていることを示唆している(
図17)。化学組成が正しいと仮定すると、これは、SRR G−1の4つの分子を含む直方晶系の単位胞を有する。したがって、インデクシングの結果から計算された462.88Å
3の式単位体積は、計算による密度が1.479g cm
-3の無水形態に一致する。
結晶形態態Cについて観察されたXRPDピークを、表12に列挙する。
【0117】
【表12】
【0118】
形態Cの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを、
図18に示す。DSCは、129℃(23J/g)付近で開始する単一の吸熱を呈する。事象を、ホットプレート上で融解として視覚的に確認した。
非晶質
精製されたSRR G−1から生成した非晶質材料の物理的安定性を調査した。非晶質材料は、高温(60℃で4日以内)または高湿度(75%RHで12日以内)のいずれかにさらされると、結晶化して形態Aになった。このことは、非晶質材料が評価された条件で安定ではないということを示している。
結晶形態の相対的熱力学的安定性
【0119】
固体の相転移は、熱力学的に可逆的または不可逆的であり得る。特定の転移温度で可逆的に変態する結晶形態は、エナンチオトロピック多形と呼ばれる。結晶形態がこれらの条件下で相互変換できない場合、系はモノトロピックである(1つの熱力学的に安定な形態)。いくつかの規則は、多形の相対的熱力学的安定性を予測すること、および多形間の関係がエナンチオトロピックであるかモノトロピックであるかを予測することに役立つ。ここでは、統計力学的根拠に基づいて正当化された密度規則および融解熱規則を、モノトロピーまたはエナンチオトロピーの指針として使用する。
【0120】
分子結晶の最密充填についてのKitaigorodskiiの原理に基づく密度規則によれば、絶対零度での非水素結合系の場合、より強い分子間ファン・デル・ワールス相互作用のために、最も安定な多形が最も高い密度を有するという。したがって、この規則によれば、最も効率的な充填を備えた結晶構造はまた、自由エネルギーが最も低い。このことは、水素結合(長距離効果)が結晶充填の主要パラメーターではないと想定している。形態Aの単結晶構造および形態Cのインデクシング結果から決定された密度は、絶対零度で、形態Aが形態Cよりも安定であることを示唆している(それぞれ1.485および1.479g cm
-3)。
熱量測定データから得られた融解開始および融解熱は、すべての温度における形態の相対的物理的安定性を推定するのに有用である(
図11および18)。融解熱の規則から、より高い融解形態の方が、融解熱がより低い場合、2つの形態はエナンチオトロピックであり、そうでない場合、それらはモノトロピックである。この系の密度および融解熱の規則は、モノトロピック関係と一致しているように見える。
【0121】
相互変換実験を実施して、形態Aと形態Cとの間の熱力学的関係を実験的に試験した。相互変換または競合スラリー実験は、溶解性のより低い(より安定な)結晶がより溶解性の高い結晶形態を犠牲にして成長するための経路を提供する溶液媒介プロセスである。溶媒和物の形成または分解の他に、相互変換実験から得られるより安定な多形は、熱力学的により安定な多形であるほどエネルギーがより低く、したがって溶解度が低いため、使用する溶媒に依存しない。溶媒の選択は、多形変換の反応速度論に影響し、多形間の熱力学的関係には影響しない。飽和溶液を生成し、次にほぼ等量の2つの多形からなる混合物に加えた。試料を9日間スラリー化し、固体を採取してXRPDにより分析した。相互変換研究の結果により、形態Aが、形態Cと比較して室温で熱力学的に、より安定であることが確認される。実験的に測定された室温での相対安定性、密度規則に基づいて提示された絶対零度での相対安定性、および融解熱規則によって決定されたモノトロピズムはすべて、形態Aがどの温度でも形態Cよりも安定であることを意味する。
SRR G−1 形態Aの溶解度
【0122】
【表13】
SRR G−1(形態A) pH緩衝液中での溶解度測定
溶解度測定を、37℃で24時間、pH緩衝液(2.0〜8.0)中のSRR G−1(結晶形態態A)について実施した。結果を表14にまとめた。XRPDパターンを、
図19および
図20に示す。24時間後、すべてのpH緩衝液中において化合物の形態変化は観察されなかった。SRR G−1のpH2.0〜8.0での溶解度は0.72μg/mL未満であった。
【0123】
【表14】
【0124】
SRR G−1(形態A) 生体関連(BioRelovent)媒体中での溶解度測定
速度論的溶解度測定を、3つの生体関連媒体(SGF(pH1.8)、FaSSIF(pH6.5)およびFeSSIF(pH5.0))中において、37℃にて1、2、4および24時間でSRR G−1(結晶形態A)について実施した。結果を表15および
図21にまとめた。湿ケーキのXRPDパターンを、
図22〜24に示す。3つの生体関連媒体中における1、2、4、および24時間後の試料では、形態の変化は観察されなかった。SRR G−1の最高の溶解度は、FeSSIF(約0.037mg/mL)中で観察された。
【0125】
【表15】
化合物SRR G−1のpKa、LogD
7.4およびLogPを、MarvinSketch5.6.0.2によって予測し、結果は、SRR G−1のpKaが1.90(塩基、0〜14のpH範囲)、LogD
7.4は5.32、LogPは5.32であると示された。pKa滴定試験では、pKa値が3〜11の範囲で観察されなかったことが示され、これは予測結果と一致していた。LogD
7.4を、pH7.4のリン酸緩衝液およびn−オクタノールの溶媒系を使用してフラスコ振とう法により測定した。LogD
7.4およびLogPの詳細な結果を表16に示した。水相へのSRR G−1遊離塩基の溶解度は<0.82μg/mLよりも低かったため、pKa値が小さいことを考慮して、LogD
7.4を>3.22、LogPを>3.22と決定した。
【0126】
【表16】
【0127】
装置的技法
示差走査熱量測定(DSC)
DSCを、Mettler−Toledo DSC3+またはDSC822e示差走査熱量計を使用して実施した。タウラグ(tau lag)調整を、インジウム、スズ、亜鉛を用いて実施する。温度およびエンタルピーを、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、亜鉛を用いて調整する。次に、調整を、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、亜鉛を用いて検証する。試料を密閉したアルミニウムDSCパンに入れ、質量を正確に記録した。次に、パンをDSCセル内に挿入した。試料パンとして構成された秤量したアルミニウムパンを、セルの基準側に置いた。試料分析の前に、パンの蓋に穴を開けた。試料を、10℃/分で−30℃から250℃まで分析した。DSCサイクル法により、0℃/分で−30℃から100℃まで加熱し、−30℃に戻り、次いで250℃まで加熱した。
【0128】
動的蒸気収着/脱着(DVS)
水分収着/脱着データを、VTI SGA−100蒸気収着分析器で収集した。較正標準としてNaClおよびPVPを使用した。分析前に試料を乾燥させなかった。収着および脱着データを、窒素パージ下にて10%RH間隔で5%〜95%RHの範囲にわたって収集した。分析に使用した平衡基準は、5分での質量変化が0.0100%未満であり、最長平衡化時間は3時間であった。試料の初期水分含有量についてはデータを補正しなかった。
【0129】
熱重量分析(TGA)
Mettler−Toledo TGA/DSC3分析計を使用して、熱重量分析を実施した。温度およびエンタルピーの調整を、インジウム、スズ、および亜鉛を使用して実施し、インジウムを用いて検証した。平衡を、シュウ酸カルシウムを用いて検証した。試料をアルミニウムオープンパンに入れた。パンを密閉し、蓋に穴を開け、次にTG炉内に挿入した。試料パンとして構成された秤量したアルミニウムパンを、基準プラットフォーム上に置いた。炉を窒素下で加熱した。各試料を、10℃/分で周囲温度から350℃まで加熱した。サーモグラムは参照温度(x軸)でプロットされているが、結果は試料温度に従って報告する。
【0130】
X線粉末回折(XRPD)
XRPDパターンを、長い微小焦点源を使用して生成されたCu放射線の入射ビームを使用するPANalytical X’Pert PRO MPDまたはPANalytical Empyrean回折計により収集した。楕円傾斜型多層膜ミラー(elliptically graded multilayer mirror)を使用して、Cu Kα 試料を通過したX線の焦点を、検出器上に合わせた。分析の前に、シリコン標本(NIST SRM 640e)を分析して、Si 111ピークの観測位置がNIST認定位置と一致していることを確認した。試料の標本を3μm厚フィルム間に挟み、透過形状で分析した。ビームストップ、短い散乱防止エクステンション(short antiscatter extension)、および散乱防止ナイフエッジを使用して、空気によって発生するバックグラウンドを最小限に抑えた。入射ビームおよび回折ビーム用のソーラースリットを使用して、軸発散によるブロードニングおよび非対称性を最小限に抑えた。回折パターンを、標本から240mmの位置にある走査式位置検知型検出器(X’Celerator)およびData Collectorソフトウェアv.2.2bまたは5.5を使用して収集した。
【0131】
(実施例4)
塩データ
結晶性および無水SRR G−1ベシル酸塩、カンシル酸塩、およびナプシル酸塩を単離することに成功した。3つすべてを、1:1の化学量論的塩として得た。これらの場合、変色しない結晶性塩を高収率で提供するには、種晶添加が非常に重要であった。
図25において、塩のXRPDパターンを、遊離塩基形態Aと比較する。スケールアップおよび塩の特性評価については、以下の後続のセクションにてより詳細に説明する。
SRR G−1ベシル酸塩 形態A
SRR G−1ベシル酸塩 形態Aは、無水1:1化学量論的塩であり、186℃付近で見かけの融解を開始する。水中の塩の不均化は明らかではなかった。
【0132】
SRR G−1ベシル酸塩 形態Aの単結晶構造を決定することに成功した。したがって、およそ0.23×0.09×0.04mm
3の寸法の無色の針状物を、ランダム配向でポリマーループに取り付けた。予備検査およびデータ収集を、銅アノードマイクロフォーカス密閉型X線管(Cu Kα λ=1.54184Å)およびDectris Pilatus3 R200Kハイブリッドピクセルアレイ検出器を備えたRigaku SuperNova回折計で実施した。データ収集のためのセル定数および配向行列を、4.2570°<θ<77.0580°の範囲の13177反射の設定角度を使用して、最小二乗法精密化によって得た。空間群を、プログラムCRYSALISPROによって、P2
1であると決定した。データを、室温で155.242°の最大回折角(2θ)まで収集した。
【0133】
フレームを、CRYSALISPROにより積算した。合計26894の反射を収集し、そのうち10520が特有のものであった。ローレンツおよび偏光補正をデータに適用した。Cu Kα線の線形吸収係数は3.323mm
-1である。CRYSALISPROを使用して経験的吸収補正を適用した。透過係数は0.837〜1.000の範囲であった。等価の反射強度を平均化した。平均化の一致因子は、強度に基づいて3.3%であった。
構造を、SHELXTを使用して直接法によって解析した。残りの原子は、後続の差フーリエ合成により位置を決定した。構造を、SHELXL−2014を使用して精密化した。水素原子を、独立して精密化した。構造を、関数:
【0134】
【数5】
を最小化することにより、完全行列最小二乗法にて精密化し、
ここで、重みwは1/[σ
2(F
o2)+(0.0401P)
2+(0.3205P)](式中、P=(F
o2+2F
c2)/3)として定義される。散乱因子は、「国際結晶学データ集」から採用した。精密化に使用された10520の反射のうち、強度が不確かさの2倍より大きい[I>2σ(I)]、9411の反射のみを、フィット残差Rの計算に使用した。精密化の最終サイクルには723の変数パラメーターが含まれ、拘束1であり、
【0135】
【数6】
の、それぞれ重み付けのない一致因子および重み付した一致因子で最終サイクルを収束させた。単位重み(適合度)の観測値の標準偏差は1.05であった。最終差フーリエにおける最高ピークは、電子密度が0.311e/Å
3であった。最小負ピーク値は−0.280e/Å
3であった。
【0136】
結晶系は単斜晶系であり、空間群はP2
1である。セルパラメーターおよび計算による体積は:a=14.1207(3)Å、b=8.74139(11)Å、c=21.5361(4)Å、α=90°、β=106.1889(19)°、γ=90°、V=2552.89(8)Å
3、である。式量は570.44g mol
-1、Z=4であり、計算による密度は1.484g cm
-3になる。結晶データおよび結晶学的データ収集パラメーターの詳細は、表17にまとめられている。ベシル酸塩 形態Aの原子変位楕円体図を
図26に示す。示されている非対称単位には、2つのSRR G−1カチオンおよび2つのベシレートアニオンが含まれている。−SO
3部分は、両アニオンの回転障害によりモデル化した。MERCURY、並びに単結晶構造からの原子座標、空間群および単位胞パラメーターを使用して生成された、Cu線についての計算によるXRPDパターンを
図27に提供し、実験パターンと比較する。
【0137】
【表17】
SRR G−1ベシル酸塩 形態Aについて観察されたXRPDピークを、表18に列挙する。
【0138】
【表18】
溶液の
1H NMRスペクトルは、SRR G−1およびベンゼンスルホン酸の1:1の化学量論的塩と一致している。残留溶媒は明らかではなく、非溶媒和形態と一致している。
【0139】
SRR G−1ベシル酸塩 形態Aのサーモグラムを、
図28に提供する。186℃まで質量損失はごくわずかであることがTGAによって明らかであり、無水形態と一致している。DSCは、186℃付近で開始する鋭い吸熱を呈す。この事象は、分解と同時に融解が起こったことに起因すると思われる。164℃付近の小さな吸熱もまた、明らかである。この吸熱の性質は不明である。
水中の不均化の可能性を調査した。SRR G−1ベシル酸塩 形態Aを、水中で4日間スラリー化した。過剰な固体を回収し、遊離塩基またはベンゼンスルホン酸の形跡についてXRPDによって再分析した。回収された材料はSRR G−1ベシル酸塩 形態Aであり、評価された条件下で不均化が起こらなかったことを示している。
【0140】
以下では、SRR G−1ベシル酸塩 形態Aを生成するための1グラムスケール手順を説明する。モル当量0.50gのベンゼンスルホン酸一水和物を、1.17gのSRR G−1遊離塩基形態Aを含む容器に加えた。さらに、少量のSRR G−1ベシル酸塩 形態Aを種晶として加えた。酢酸エチル7mLを加え、続いて超音波処理した。固体の大部分が溶解し、黄色の溶液が得られたが、直後に白色固体の沈殿を得た。スラリーの移動および濾過を容易にするために、酢酸エチルをさらに3mL加えた。固体を減圧濾過により回収し、4mLの酢酸エチルですすぎ、続いて室温で終夜減圧下に置いた。およそ0.99グラムのSRR G−1ベシル酸塩 形態Aを得た。
SRR G−1カンシル酸塩 形態A
SRR G−1カンシル酸塩 形態Aは、無水1:1化学量論的塩であり、172℃で見かけの融解を開始する。
【0141】
SRR G−1カンシル酸塩 形態AのXRPDパターンでは、インデクシングに成功し、このことは、形態Aが主に単結晶相から構成されていることを示唆している(
図29)。SRR G−1カンシル酸塩 形態Aは、2つのSRR G−1カチオンおよび2つのカンシレートアニオンを収容することができる三斜晶系単位胞を有する。インデクシングの結果から計算された737.9Å
3の式単位体積は、計算による密度が1.451g cm
-3の無水形態に一致する。XRPDパターンには、SRR G−1カンシル酸塩 形態A、遊離塩基の既知の多形、または(1S)−(+)−カンファー−10−スルホン酸に関連しない少数の微小ピークも含まれている。これらの追加のピークを、
図30においてアスタリスクにより強調表示している。
【0142】
SRR G−1カンシル酸塩 形態Aについて観察されたXRPDピークを、表19に列挙する。
【0143】
【表19】
【0144】
溶液の
1H NMRスペクトルは、SRR G−1および(1S)−(+)−カンファー−10−スルホン酸の1:1の化学量論的塩と一致している。残留溶媒は明らかではなく、非溶媒和形態と一致している。
SRR G−1カンシル酸塩 形態Aのサーモグラムを、
図31に提供する。171℃まで質量損失はごくわずかであることがTGAによって明らかであり、無水形態と一致している。DSCは、172℃付近で開始する鋭い吸熱を呈する。この事象は、分解と同時に融解が起こったことに起因すると思われる。
以下では、SRR G−1カンシル酸塩 形態Aを生成するための750mgスケール手順を説明する。モル当量(0.9)未満、0.43gの(1S)−(+)−カンファー−10−スルホン酸を、0.86gのSRR G−1遊離塩基形態Aおよび酢酸エチル10mLで構成される懸濁液を含む容器に加え、少量の未溶解の固体を含む黄色の懸濁液を提供した。SRR G−1カンシル酸塩 形態Aの種晶を加え、懸濁液を超音波処理して即座に沈殿させた。試料をさらに約10分間超音波処理した後、およそ1時間放置してスラリー化した。白色固体を減圧濾過により回収し、2mLの酢酸エチルですすぎ、続いて室温で終夜減圧下に置いた。およそ0.75グラムのSRR G−1カンシル酸塩 形態Aを得た。
【0145】
SRR G−1ナプシル酸塩 形態A
SRR G−1ナプシル酸塩 形態Aは、無水1:1化学量論的塩であり、194℃で見かけの融解を開始する。水性スラリーからのXRPDの結果に基づくと、塩の不均化は水中で起こる。
SRR G−1ナプシル酸塩 形態AのXRPDパターンでは、インデクシングに成功し、このことは、形態Aが主に単結晶相から構成されていることを示唆している(
図32)。SRR G−1ナプシル酸塩 形態Aは、4つのSRR G−1カチオンおよび4つのナプシレートアニオンを収容することができる単斜晶系単位胞を有する。インデクシングの結果から計算された707.3Å
3の式単位体積は、計算による密度が1.457g cm
-3の無水形態に一致する。XRPDパターンには、4.4°(2θ)付近に、SRR G−1ナプシル酸塩 形態A、遊離塩基の既知の多形、またはナフタレン−2−スルホン酸に関連しない小さな弱いピークも含まれている。
SRR G−1ナプシル酸塩 形態Aについて観察されたXRPDピークを、表20に列挙する。
【0146】
【表20】
溶液の
1H NMRスペクトルは、SRR G−1およびナフタレン−2−スルホン酸の1:1の化学量論的塩と一致している。残留溶媒は明らかではなく、非溶媒和形態と一致している。
【0147】
SRR G−1ナプシル酸塩 形態Aのサーモグラムを、
図33に提供する。193℃までで質量損失がおよそ0.5%であることがTGAによって明らかである。損失の大部分は約100℃を超えて発生する。上述のNMRでは有機溶媒は観察されなかったため、損失は、約0.2mol/molの水の揮発によるものと想定される。このことは、塩が限定された吸湿性を呈する場合があることを示唆している。DSCは、194℃付近で開始する鋭い吸熱を呈する。この事象は、分解と同時に融解が起こったことに起因すると思われる。
【0148】
水中の不均化の可能性を調査した。SRR G−1ナプシル酸塩 形態Aを、水中で5日間スラリー化した。過剰な固体を回収し、遊離塩基またはナフタレン−2−スルホン酸(napthtlane−2−sulfonic acid)の形跡についてXRPDによって再分析した。回収された材料は遊離塩基 形態Aであり、評価された条件下で不均化が起こらなかったことを示している。
以下では、SRR G−1ナプシル酸塩 形態Aを生成するための600mgスケール手順を説明する。SRR G−1ナプシル酸塩 形態Aの種晶およびモル当量0.39gのナフタレン−2−スルホン酸を、0.73gのSRR G−1遊離塩基形態Aおよび9mLの酢酸エチルの懸濁液を含む容器に加えた。少量の未溶解固体を含む黄色の懸濁液を超音波処理し、白色の沈殿が起こった。スラリーをさらに約5分間超音波処理し、次に固体を減圧濾過により回収し、2mLの酢酸エチルですすぎ、室温にて終夜減圧下で乾燥させた。およそ0.63グラムのSRR G−1ナプシル酸塩 形態Aを得た。
【0149】
(実施例5)
YUMM1.7増殖アッセイ
YUMM1.7細胞を、解凍後少なくとも1回継代培養し、5%FBS(Invitrogen)および1%抗生物質−抗真菌剤(gibco)を含むDMEM中で37℃、5%CO
2にて培養した。増殖アッセイは、15,000個の細胞を12ウェルプレートにプレーティングし、試験される条件ごとに5反復して実施した。培地および薬物を、2日目にリフレッシュした。4日目に、細胞を、0.25mlの0.05%トリプシンをEDTA(Invitrogen)と共に使用して5分間トリプシン処理してプレートから分離し、0.75mlの培養培地と混合し、血球計算盤を使用して計数した。
【0150】
500nMの各組成物を用いて実施したYUMM1.7増殖アッセイにおける4日間の増殖後の平均細胞数を、表21に示す。同一データを、
図34にグラフ形式で示す。細胞計数は数万になる(つまり、100は約1,000,000である)。開始細胞数は15,000であった。RSS G−1は、倍加数がビヒクルとほぼ同一数であった。ラセミG−1は、倍加数がビヒクルで見られるものの約半分に減少した。驚くべきことに、SRR G−1では、倍加数が、G−1によってもたらされた減少から予想された、ビヒクルで見られたもののちょうど1/4ではなく1/10未満に減少した。
【0151】
【表21】
【0152】
(実施例6)
前臨床ラットの薬物動態結果
ラットにおけるSRR G−1遊離塩基、SRR G−1ベシル酸塩、およびSRR G−1ナプシル酸塩の血漿濃度を、経口投与後に測定した。3匹の絶食した雄ラットを、10mg/kgSRR G−1遊離塩基、SRR G−1ベシル酸塩、またはSRR G−1ナプシル酸塩を0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、99.5%水中の懸濁液として経口送達させて処置した。SRR G−1投与の0.5、1、2、4、8、および24時間後に血漿を単離し、LC−MS/MSを使用して血漿濃度を測定した。結果をそれぞれ表22〜24に示す。このデータのグラフ表示を
図35〜37に示す。
図38は、3つの結果すべての比較を示す。
【0153】
【表22】
【0154】
【表23】
【0155】
【表24】
【0156】
(実施例7)
SRR G−1およびRSS G−1のADME毒性
ADME−Tox:インビトロ吸収
薬物トランスポーター(蛍光分析による阻害)
対照のパーセントは、以下の式を使用して計算した。阻害のパーセントは、100から対照のパーセントを差し引くことによって計算した。IC
50値(対照値の50%阻害をもたらす濃度)を、ヒルの式を使用した濃度反応曲線の非線形回帰分析によって決定した。
【0157】
【数7】
化合物は、試験化合物の存在下での個々の読み取り値である。T1は、試験化合物の非存在下での平均読み取り値である。バックグラウンド(P−gpおよびBCRPの場合)は、参照阻害剤の最高有効濃度の存在下での平均読み取り値である。バックグラウンド(OATP1B1、OATP1B3、OAT1、OAT3、およびOCT2の場合)は、試験化合物と基質の両方の非存在下での平均読み取り値である。
【0158】
ADME−Tox:インビトロ代謝
シトクロムP450阻害(HPLC−UV/VISおよびHPLC−MS/MS検出)
各基質の代謝産物に対応するピーク面積を記録した。次に、対照活性のパーセントを、試験化合物の存在下で得られたピーク面積を試験化合物の非存在下で得られたピーク面積と比較することによって計算した。続いて、阻害パーセントは、各化合物の100から対照活性パーセントを差し引くことによって計算した。IC
50値(対照値の50%阻害をもたらす濃度)を、ヒルの式曲線フィッティングを使用した濃度反応曲線の非線形回帰分析によって決定した。
トランスポーター阻害結果 − 10μMのSRR G−1またはRSS G−1を用いてアッセイした場合、以下のトランスポーターは50%を超えて阻害された。SRR G−1の場合:OATP1B1 82.5%。RSS G−1の場合:OCT2 − 53.2%、OATP1B1 − 91.2%、およびOATP1B3 − 74.3%。
【0159】
シトクロムP450阻害結果 − 10μMのSRR G−1またはRSS G−1を用いてアッセイした場合、以下のものは50%を超えて阻害された。SRR G−1の場合:CYP2D6 − 74.3%およびCYP2C8 − 66.7%。RSS G−1の場合:CYP2C9 − 50.4%。
シトクロムP450誘導結果 − 3つの異なるヒト細胞株からの肝細胞を、SRR G−1またはRSS G−1と共に1μM、10μM、および100μMでインキュベートした。SRR G−1の場合:CYP1A2は、3つの細胞株のうち1つのみにおいて1μMと10μMの両方で誘導され、CYP3A4は、3つの細胞株のうち2つにおいて10μMのみで誘導された。RSS G−1の場合:CYP1A2は、3つの細胞株のうち2つにおいて10μMと100μMの両方で誘導された。
【0160】
(実施例8)
オフターゲット選択性アッセイ
GPCR cAMP調節
細胞処理 − cAMP Hunter細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞を、総量20μmで白色壁の384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。cAMP調節を、DiscoverX HitHunter cAMP XS+アッセイを使用して測定した。
Gsアゴニストフォーマット − アゴニスト測定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。培地を細胞から吸引し、15μLの2:1 HBSS/10mM Hepes:cAMP XS+ Ab試薬と交換した。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中の4×試料を生成した。4.5μLの4×試料を細胞に加え、37℃または室温で30または60分間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。
【0161】
Giアゴニストフォーマット − アゴニスト測定のために、細胞を、EC
80フォルスコリンの存在下で試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。培地を細胞から吸引し、15μLの2:1 HBSS/10mM Hepes:cAMP XS+ Ab試薬と交換した。試料ストックの中間希釈を実施して、4×EC
80フォルスコリンを含むアッセイ緩衝液中の4×試料を生成した。4.5μLの4×試料を細胞に加え、37℃または室温で30または60分間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。
アンタゴニストフォーマット − アンタゴニスト測定のために、細胞を試料と共にプレインキュベートし、続いてEC
80濃度でアゴニストチャレンジを行った。培地を細胞から吸引し、10μLの1:1 HBSS/Hepes:cAMP XS+ Ab試薬に交換した。5μLの4×化合物を細胞に加え、37℃または室温で30分間インキュベートした。4.5μLの4×EC
80アゴニストを細胞に加え、37℃または室温で30または60分間インキュベートした。Gi共役型GPCRの場合、EC
80フォルスコリンが含まれていた。
シグナル検出 − 適切な化合物のインキュベーション後、20μLのcAMP XS+ ED/CL溶解カクテルとの1時間のインキュベーション、続いて20μLのcAMP XS+ EA試薬との室温での3時間のインキュベーションによってアッセイシグナルを生成した。化学発光シグナル検出のためにPerkinElmer Envision(商標)装置を使用して、シグナル生成後にマイクロプレートを読み取った。
【0162】
データ分析 − 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。Gsアゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(試験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(最大対照の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)。Gsアンタゴニストモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(試験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(EC
80対照の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)。Giアゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(1−(試験試料の平均RLU−MAX対照の平均RLU)/(ビヒクル対照の平均RLU−最大対照の平均RLU))。Giアンタゴニストまたはネガティブアロステリックモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(試験試料の平均RLU−EC
80対照の平均RLU)/(フォルスコリン陽性対照の平均RLU−EC
80対照の平均RLU)。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0163】
カルシウム動員
細胞処理 − 細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞(10,000細胞/ウェル)を、総量50μL(200細胞/L)で黒色壁の透明底ポリ−D−リシンコーティング384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。すべての読み出しのDMSO濃度は≦0.2%である。
色素ローディング−アッセイを、HBSS/20mM Hepes中の1×色素(DiscoverX、カルシウムNo WashPLUSキット、カタログ番号90−0091)、1×添加剤A、および2.5mM プロベネシドからなる1×色素ローディング緩衝液で実施した。プロベネシドを、新たに調製した。試験前に、細胞に色素を添加した。培地を細胞から吸引し、25μLの色素ローディング緩衝液と交換した。細胞を、37℃で45分間、次に室温で20分間インキュベートした。
【0164】
アゴニストフォーマット − アゴニスト測定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。色素添加後、細胞をインキュベーターから取り出し、FLIPR Tetra(MDS)を使用してHBSS/20mM Hepes中の25μLの2×化合物を加えた。化合物を加え、アゴニスト活性をFLIPR Tetraで測定した。カルシウム動員を2分間監視し、5秒ベースラインを読み取った。
アンタゴニストフォーマット − 細胞を試料と共にプレインキュベートし、色素を添加し、FLIPR Tetra(MDS)に移し、次いで、EC
80濃度のアゴニストでチャレンジを行った。カルシウム動員を2分間監視し、5秒ベースラインを読み取った。
【0165】
データ分析 − FLIPR読み取り − 曲線下の面積を、2分読み取り全体について計算した。化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。アゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(試験試料の平均RFU−ビヒクル対照の平均RFU)/(平均最大RFU対照リガンド−ビヒクル対照の平均RFU)。アンタゴニストモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(試験試料の平均RFU−ビヒクル対照の平均RFU)/(EC
80対照の平均RFU−ビヒクル対照の平均RFU)。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0166】
核内ホルモン受容体
細胞処理 − PathHunter NHR細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞を、総量20μLで白色壁の384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。アッセイ培地には、存在するホルモンのレベルを下げるために、チャコール−デキストラン濾過を行った血清が含まれていた。
アゴニストフォーマット − アゴニスト測定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中の5×試料を生成した。3.5μLの5×試料を細胞に加え、37℃または室温で3〜16時間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。
【0167】
アンタゴニストフォーマット − アンタゴニスト測定のために、細胞をアンタゴニストと共にプレインキュベートし、続いてEC
80濃度でアゴニストチャレンジを行った。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中の5×試料を生成した。3.5μLの5×試料を細胞に加え、37℃または室温で60分間インキュベートした。ビヒクル濃度は1%であった。4.5μLのアッセイ緩衝液中の6×EC
80アゴニストを細胞に加え、37℃または室温で3〜16時間インキュベートした。
シグナル検出 − アッセイシグナルを、12.5または15μL(50%体積/体積)のPathHunter検出試薬カクテルの単回添加、続いて室温での1時間のインキュベーションによって生成した。化学発光シグナル検出のためにPerkinElmer Envision(商標)装置を使用して、シグナル生成後にマイクロプレートを読み取った。
【0168】
データ分析 − 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。アゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(試験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(平均最大対照リガンド−ビヒクル対照の平均RLU)。アンタゴニストモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(1−(試験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(EC
80対照の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU))。選択性アッセイでは、リガンド応答により受容体活性が低下する(構成的に活性な標的を有するインバースアゴニスト)ことに注意すべきである。これらのアッセイの場合、インバースアゴニスト活性は、以下の式を使用して計算した:インバースアゴニスト活性%=100%×((ビヒクル対照の平均RLU−試験試料の平均RLU)/(ビヒクル対照の平均RLU−MAX対照の平均RLU))。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0169】
KINOMEscan結合アッセイ
タンパク質発現 − ほとんどのアッセイにおいて、キナーゼタグ付きT7ファージ株を、24ウェルブロック内でBL21株由来の大腸菌宿主において並行して増殖させた。大腸菌を、対数増殖期まで増殖させ、凍結ストックからのT7ファージに感染させ(感染多重度=0.4)、溶解するまで32℃で振とうしながらインキュベートした(90〜150分)。溶解液を遠心分離(6,000×g)し、濾過(0.2μm)して細胞破片を除去した。残りのキナーゼをHEK−293細胞で産生させ、その後qPCR検出のためにDNAでタグ付けした。
捕捉リガンド産生 − ストレプトアビジンコーティング磁性ビーズを、ビオチン化小分子リガンドで室温にて30分間処理して、キナーゼアッセイ用のアフィニティ樹脂を生成させた。リガンド結合ビーズを過剰なビオチンでブロックし、ブロッキング緩衝液(SeaBlock(Pierce)、1% BSA、0.05% Tween20、1mM DTT)で洗浄して、非結合リガンドを除去し、非特異的ファージ結合を減少させた。
【0170】
結合反応集合体 − 1×結合緩衝液(20% SeaBlock、0.17×PBS、0.05% Tween20、6mM DTT)中でキナーゼ、リガンド結合アフィニティビーズ、および試験化合物を合わせることによって、結合反応を組み立てた。すべての反応を、ポリプロピレン384ウェルプレート内にて最終体積0.02mLで実施した。アッセイプレートを室温で1時間振とうしながらインキュベートし、アフィニティビーズを洗浄緩衝液(1×PBS、0.05% Tween20)により洗浄した。次に、ビーズを溶出緩衝液(1×PBS、0.05% Tween20、0.5μM非ビオチン化アフィニティリガンド)中に再懸濁し、室温で30分間振とうしながらインキュベートした。溶出液中のキナーゼ濃度を、qPCRによって測定した。
【0171】
シグナル検出 − 溶出液中のキナーゼ濃度を、qPCRによって測定した。qPCR反応物を、2.5μLのキナーゼ溶出液を、0.15μMのアンプリコンプライマーおよび0.15μMのアンプリコンプローブを含む7.5μLのqPCRマスターミックスに加えることによって組み立てた。qPCRプロトコルは、95℃での10分間のホットスタート、それに続く95℃で15秒間、60℃で1分間の35サイクルで構成されていた。
データ分析 − 応答計算パーセント
【0172】
【数8】
試験化合物=SRR G−1
陰性対照=DMSO(100%対照)
陽性対照=対照化合物(0%対照)
対照のパーセントは、次の式を使用して応答パーセントに変換した:応答パーセント=(100−対照パーセント)。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
データ分析 − 結合定数(Kds)
結合定数(Kds)は、ヒルの式:
【0173】
【数9】
を使用して標準的用量反応曲線により計算した。ヒル勾配を−1に設定した。
曲線は、Levenberg−Marquardtアルゴリズムを用いた非線形最小二乗フィッティングを使用してフィッティングさせた。
【0174】
イオンチャネルアッセイ
細胞処理 − 細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞を、総量20μLで黒色壁の透明底ポリ−D−リシンコーティング384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。
色素ローディング−アッセイを、1×色素および該当する場合2.5mMプロベネシドからなる1×色素ローディング緩衝液で実施した。プロベネシドを、新たに調製した。試験前に、細胞に色素を添加した。細胞を、37℃で30〜60分間インキュベートした。
アゴニスト/オープナーフォーマット − アゴニスト測定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中で2〜5×試料を生成した。10〜25μLの2〜5×試料を細胞に加え、37℃または室温で30分間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。
【0175】
アンタゴニスト/ブロッカーフォーマット − アンタゴニスト測定のために、細胞を試料と共にプレインキュベートした。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中で2〜5×試料を生成した。色素添加後、細胞をインキュベーターから取り出し、必要に応じてEC
80アゴニストの存在下で10〜25μLの2〜5×試料を細胞に加えた。プレート温度を平衡化するために、細胞を、暗所で室温にて30分間インキュベートした。ビヒクル濃度は1%であった。
シグナル検出 − 化合物活性をFLIPR Tetra(MDS)で測定した。
データ分析 − 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。アゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(試験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(平均最大対照リガンド−ビヒクル対照の平均RLU)。アンタゴニストの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(1−(試験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(EC
80対照の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU))。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0176】
トランスポーターアッセイ
細胞処理 − 細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞を、総量25μLで黒色壁の透明底ポリ−D−リシンコーティング384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。
ブロッカー/アンタゴニストフォーマット − 細胞プレーティングおよびインキュベーション後、培地を除去し、1×HBSS/0.1%BAS中の25μLの1×化合物を加えた。化合物を、細胞と共に37℃で30分間インキュベートした。
色素ローディング−アッセイを、1×色素、および1×HBSS/20mM Hepesからなる1×色素ローディング緩衝液で実施した。化合物のインキュベーション後、25μLの1×色素をウェルに加えた。細胞を、37℃で30〜60分間インキュベートした。
【0177】
シグナル検出 − 色素インキュベーション後、マイクロプレートを、蛍光シグナル検出のためにPerkinElmer Envision(商標)機器に移した。
データ分析 − 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。ブロッカーモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(1−(試験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(陽性対照の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU))。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
酵素アッセイ
酵素調製物−酵素調製物を、種々のベンダーから調達した − AChE(R&D Systems)、COX1およびCOX2(BPS Bioscience)、MAOA(Sigma)、PDE3AおよびPDE4D2(Signal Chem)。
【0178】
酵素活性アッセイ − 酵素アッセイでは、基質の消費または生成物の生成のいずれかを経時的に測定することによって酵素活性を決定する。各酵素アッセイにおいて異なる検出方法を使用して、基質および生成物の濃度を測定した。AChE:基質を加える前に、酵素および試験化合物を室温で15分間プレインキュベートした。アセチルチオコリンおよびDTNBを加え、室温で30分間インキュベートした。405nmでの吸光度を測定することによりシグナルを検出した。COX1およびCOX2:酵素ストックを、アッセイ緩衝液(40mM Tris−HCl、1×PBS、0.5mM フェノール、0.01% Tween20+100nM ヘマチン)で希釈し、室温で30分間化合物と平衡化させた(結合インキュベーション)。アラキドン酸(1.7μM)およびAmpliflu Red(2.5μM)を調製し、反応プレートに分注した。プレートを、590nmおよび励起波長544nmでの発光検出を用いた蛍光光度計で直ちに読み取った。MAOA:基質を加える前に、酵素および試験化合物を37℃で15分間プレインキュベートした。キヌラミンを加えることにより反応を開始させ、37℃で30分間インキュベートした。NaOHを加えることにより反応を停止させた。形成された4−ヒドロキシキノリン(4−hydroquioline)の量を、380nmおよび励起波長310nmでの発光検出を用いた分光蛍光測定法により測定した。PDE3AおよびPDE4D2:基質を加える前に、酵素および試験化合物を室温で15分間プレインキュベートした。cAMP基質(EC
80に等しい濃度で)を加え、室温で30分間インキュベートした。9mM IBMXを加えることにより、酵素反応を停止させた。HitHunter(登録商標)cAMP検出キットを使用して、シグナルを検出した。
【0179】
シグナル検出 − 各アッセイについて、マイクロプレートを、PerkinElmer Envision(商標)機器に移し、記載されているように読み取った。
データ分析 − 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。酵素活性アッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(1−(試験試料の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU)/(陽性対照の平均RLU−ビヒクル対照の平均RLU))。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0180】
オフターゲット選択性アッセイの結果
SRR G−1およびRSS G−1の両方について、10μMまでの濃度での用量反応フォーマットでの78のアッセイにおいて、潜在的なオフターゲットに対する選択性について試験した。SRR G−1のみについては、測定可能なIC
50またはEC
50は、カンナビノイド受容体1での2.5μM、HTR2Bでの8.2μM、OPRD1での0.87μM、およびOPRM1での6.68μMであった。RSS G−1のみについては、測定可能なIC
50またはEC
50は、カンナビノイド受容体1での3.1μM、ADRA2Aでの2.07μM、HTR1Aでの2.1μM、およびARでの4.76μMであった。