(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
μオピオイド受容体の正のアロステリックモジュレーター及びサイレントアロステリックモジュレーターとして作用する化合物が本明細書に開示される。本明細書に開示されるアロステリックモジュレーターを製造及び使用するための方法も提供される。
β−アレスチン−1/2動員、アデニル酸シクラーゼ活性の阻害、ERK1/2のリン酸化、及びGタンパク質活性化のうちの1つ又は複数を増強する、請求項19に記載の化合物。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
[0087] 本開示の実施は、特段の記載がない限り、有機化学、合成化学、生化学、薬理学、細胞生物学、毒物学、分子生物学、細胞培養、組換えDNAの分野、及び当該技術の範囲内である関連分野における標準的な方法及び従来の技術を使用する。そのような技術は、文献に記載されているため、当業者は利用可能である。
【0051】
[0088] 別特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料は、本明細書に記載される組成物及び化合物の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料が本明細書に記載される。
【0052】
[0089] 本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。加えて、材料、方法、及び例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に記載の組成物及び化合物の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0053】
[0090] MOR PAM及びMOR SAMとして作用する化合物が本明細書に開示される。本明細書に開示されるMOR PAM及びMOR SAMは、内因性MORリガンド(例えば、EM−1及びEM−2)及び様々な非内因性オルソステリックリガンド(例えば、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ロペラミド)の両方に対して機能する。本明細書に開示される特定のMOR PAM及びMOR SAMは、選択的シグナルバイアスを示す;即ち、それらは、他よりも強く特定のリガンド誘導性MOR下流シグナル伝達活性に影響を与える。例えば、特定のMOR PAMは、β−アレスチン動員よりもアデニル酸シクラーゼ阻害に強い影響を及ぼす。β−アレスチン動員は、非内因性オピオイドの使用で経験する副作用により強く寄与すると考えられているため、アデニル酸シクラーゼ阻害を誘導する(且つβ−アレスチン動員を回避する)選択的なシグナルバイアスを有するMOR PAMは、鎮痛及び疼痛管理で使用するための改善された治療法を提供する。
【0054】
[0091] EM1(内因性MORリガンド)の非存在下では、本明細書に開示されるMOR PAMは、MOR活性化(本明細書の他の部分に記載)についてのアッセイにおいてアゴニスト活性もアンタゴニスト活性も示さず、従って純粋なPAM機構を実証する。本明細書に開示されるMOR PAMは、EM1のシルト回帰分析で左シフトを実証し、これらが、内因性リガンドであるエンドモルフィン−1のα値、β値、及びτ−B値に対して影響を有することを実証する。Kenakin & Willilams (2014) Biochem. Pharmacol. 87:40-63。本明細書に開示される特定のMOR PAMは、DOR及びKORサブタイプに対してPAM活性を有していないことが実証されたため、オルソステリックリガンドで達成するのが困難なレベルの選択性を実証している。
【0055】
[0092] 本明細書に開示されるMOR PAMは、内因性オルソステリックリガンドEM1及びEM2に対して選択的であるが、一部は、オキシコドンなどの非天然オルソステリックリガンドに対しても活性を保持する。例えば、本明細書に開示される特定のMOR PAMSは、非内因性リガンドであるオキシコドンについてのシルト回帰分析で左シフトを実証し、これらが、α値、β値、及びτ−B値に対して影響を有することを実証する。この予想外の結果は、治療に関連する化合物を同定するためのMOR PAMアプローチの多様性を実証する。以前に同定されたMOR PAMとは異なり、本明細書に記載の化合物は、インビボ試験への適合性を示す動物の薬物動態特性を示す。最後に、本明細書に記載の化合物は、急性疼痛の動物モデルにおける鎮痛効果の有効性及び持続時間に影響を及ぼす。
【0056】
[0093] 疼痛管理のための本明細書に記載のMOR PAMの使用は、アロステリックリガンド及び選択的シグナルバイアスの概念を組み合わせたものである。GPCRのアロステリックリガンドは、内因性リガンドが結合するオルソステリック部位とは異なる受容体上の部位に結合する。Burford et al. (2011) supra;Kenakin (2009) Trends Pharmacol Sci. 30:460-469。アロステリックモジュレーター(AM)は、多数のプロセス;例えば、限定されるものではないが、オルソステリック部位でのリガンドの結合親和性、オルソステリック部位に結合するリガンドの解離速度(dissociative off rate)、オルソステリックリガンドの結合に利用可能な7回膜貫通ドメイン(7TM)タンパク質の形態、及び/又は細胞外から細胞内コンパートメントにシグナルを伝達する7TMタンパク質の形態に影響を与えることによって標的タンパク質において様々な活性を示し得る。正のアロステリックモジュレーター(PAM)は、アゴニストの親和性(β)及び/又は有効性(α)を高めることができ、これらの作用機序を区別することが有利な治療設定が存在する。例えば、機能不全の生理系を再生する必要がある場合、有効性効果(α>1)のみが有益である;しかしながら、正常に機能する系の強化が必要な場合は、α効果又はβ効果のいずれかで十分であり、一般に、分子は、αβの積パラメーターで特徴付けることができる。本明細書に記載の正のアロステリックモジュレーター(PAM)は、固有のアゴニスト活性を有していないが、オルソステリックリガンド(内因性又はその他)と協力して受容体に結合すると、オルソステリックアゴニスト又は部分的アゴニストの結合親和性又は有効性(又は両方)を改善する。記載されているサイレントアロステリックモジュレーター(SAM)は、固有のアゴニスト活性を有していないが、オルソステリックリガンド(内因性又はその他)と協力して受容体に結合すると、PAMSの結合を阻害することができ;それによって、PAMの活性をブロックすることにより競合的アゴニストとして作用する。
【0057】
[0094] アロステリックリガンドは、同じファミリー内のGPCRのサブタイプ間で、オルソステリックリガンドと比較してより高い選択性を示し得る。これは、代謝型グルタミン酸受容体、アデノシン受容体、及びムスカリン受容体を含むいくつかのGPCRで実証されている。Birdsall (2005) Mini Reviews in Medicinal Chemistry 5:523-543;Bruns & Fergus (1990) Mol. Pharmacol. 38:939-949;Conn et al. (2009) Trends Pharmacol. Sci. 30:148-155;Gao et al. (2005) Mini Reviews in Medicinal Chemistry 5:545-553;Harrington et al. (2010) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 20:5544-5547。この高い選択性は、同じ内因性オルソステリックリガンドに結合する、密接に関連する受容体サブタイプ間のオルソステリック部位に課された進化抑制に基づいていると仮説が立てられている。この進化抑制は、アロステリック部位には必要ないであろう。カルシウム感知受容体の正のアロステリックモジュレーターが同定されており、細胞のカルシウム濃度の維持に臨床的に適切であることが示されている。Harrington et al., supra。
【0058】
[0095] 炎症組織における内因性オピオイドの継続的な利用可能性が、リサイクルを増加させ、感覚ニューロンにおけるMORのシグナル伝達を維持することを示すデータが存在する。これは、末梢オピオイド耐性の発生を妨げると考えられる。結果として、炎症性疼痛の長期処置のための末梢作用性オピオイドの使用(任意選択により、本明細書に記載のMOR−PAM及び/又はMOR SAMと組み合わせられる)は、必ずしもオピオイド耐性をもたらすとは限らない。Zollner et al. (2008) J. Clin. Investig. 118:1065-1073。
【0059】
[0096] オピオイド受容体サブタイプに対して高度に選択的なオルソステリックアゴニストリガンドが存在する一方、本明細書に記載のPAMはさらなる利点を提供する。PAMは、アロステリックアゴニストとは異なり、オルソステリックアゴニストの非存在下で受容体に結合すると効果がない可能性がある。従って、調節は、オルソステリックアゴニストが受容体に結合しているときにのみ発生する。インビボでは、これは、内因性オルソステリックアゴニストによって媒介される細胞シグナル伝達及び鎮痛反応の時間的及び空間的特徴の維持をもたらす;これは、特に、脳と腸神経系との複雑な神経回路網でのシグナル伝達にとって重要である。加えて、天然受容体シグナル伝達の時間的及び空間的側面を維持することにより、PAMの使用は、外因性オルソステリックアゴニストによってもたらされる持続的な受容体活性化によって引き起こされる受容体のダウンレギュレーション及びその他の代償機構を回避するのに役立つ。Zollner et al., supra。
【0060】
[0097] 上記のような内因性オルソステリックアゴニストの時間的及び空間的に制限された活性を増強するためのMOR PAMの使用とは対照的に;外因性オルソステリックアゴニストは、所望及び不所望の組織において、所望及び不所望の受容体を長期間活性化する能力を有し、それによって標的外の効果をもたらす。
【0061】
[0098] 疼痛に応答して、ヒト及びげっ歯類の両方が、いくつかの異なる機構を介して発生する同時の内因性オピオイドリガンド輸送と共に、損傷部位でORを産生する。Przewlocki et al. (1992) Neuroscience 48:491-500;Rittner et al. (2001) Anesthesiology 95:500-508;Mousa et al., supra;Martin-Schild et al., supra;Li et al. (2005) Arthritis and Rheumatism 52: 3210-3219;Straub, et al., supra。オピエートの長期全身投与は、場合によっては、耐性及び依存症;並びに呼吸抑制、便秘、及び異痛症などの他の急性受容体介在性副作用の発症を引き起こすことが知られている。Waldhoer et al., supra;McNicol et al., supra。
【0062】
[0099] 従って、内因性オピオイドアゴニストに対してプローブ依存性(probe dependency)を有する本明細書に開示されるPAMは、体の自然な疼痛反応機構を利用し、主に体に痛みがあるときに作用し、従って内因性疼痛緩和の一時的な恩恵を維持する。対照的に、従来のアゴニストリガンドの使用は、(投与計画に基づいた)長期間の受容体活性化をもたらし、しばしば、長期刺激によって引き起こされる受容体応答の脱感作又は受容体媒介性副作用などの有害作用をもたらす。本明細書に開示されるMOR PAMSの使用は、オルソステリックリガンドのアゴニスト効果の効力を増加させることによってこの長期の受容体刺激を減少させる。結果として、オピオイド受容体PAMは、外因性オルソステリックアゴニストよりも低い耐性及び依存性をもたらし(Zollner et al., supra);オルソステリックリガンドと比較して、PAMの乱用の可能性が低下すると予想される。
【0063】
[0100] 本明細書に開示されるPAMの別の利点は、(濃度応答曲線の左シフトによって示されるように)オルソステリックアゴニストの効力を限られた量だけ増加させる能力である。Burford et al. (2015), supra。この有限の効力のシフトにより、必要なレベルの効果を超えることがないPAMの設計が可能になり;それにより安全性が向上する。
【0064】
[0101] ヒト(Stein et al. (1993), supra;Troung et al., supra)及び非ヒト(Borzsei (2008) Neuroscience 152:82-88)の両方において、疼痛に反応した末梢組織においてオピオイド受容体が時間的に調節されて産生されることが十分に立証されている。加えて、オピオイド受容体の内因性リガンドは、動物モデルにおいて疼痛刺激時に放出されることが立証されている。Mousa et al., supra;Martin-Schild et al., supra;Yang et al., supra。ORの天然及び非天然リガンドの有効性、効力、作用の持続時間などを増強する、本明細書に開示されるPAMの発見及び開発は、現代の創薬及び疼痛管理の状態における重要な進歩を意味する。
【0065】
リガンド結合及びオピオイド受容体活性についてのアッセイ
[0102] 本明細書で使用される「天然リガンド誘導活性」は、エンドモルフィン−1、エノドモフィン−2、又は他の内因的に産生されるペプチドによるMORの活性化を指す。本明細書で使用される「非天然リガンド誘導活性」は、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、又は他の非内因的に産生されるオピエートによるMORの活性化を指す。任意の数の終点を使用して活性を評価して、OR活性を測定することができる。一般に、天然又は非天然リガンド誘導活性のいずれかによってMOR媒介シグナル伝達を調節する化合物を試験するためのアッセイは、直接又は間接的にORの影響下にある任意のパラメーター、例えば、機能的、物理的、又は化学的影響の決定を含む。機能的影響の例には、受容体でのGTP/GDP交換、ERKのリン酸化、β−アレスチン(β−アレスチン1又はβ−アレスチン2のいずれか又は両方)の受容体への動員、アデニル酸シクラーゼの阻害(細胞内cAMPレベルの低下をもたらす)、及び既に受容体に結合しているプローブ(例えば、放射性標識)の移動が含まれる。物理的影響の例には、受容体のコンフォメーション変化、リガンド結合の親和性及び/又は特異性の変化、受容体の二量体化(ホモ二量体化又はヘテロ二量体化)への影響、受容体の三量体化(ホモ三量体化又はヘテロ三量体化)への影響、受容体の分解、及び受容体の転位が含まれる。化学的影響の例には、活性部位の水素結合ネットワークの利用可能性への影響が含まれる。潜在的な活性化因子、阻害因子、又はモジュレーターで処理されたORを含むサンプル又はアッセイは、阻害剤、活性化因子、又はモジュレーターを含まない対照サンプルと比較され、活性化、阻害、又は調節の程度が調べられる。
【0066】
[0103] ORの機能に対する本明細書に記載の化合物の影響を、上記のパラメーターのいずれかを調べることによって測定することができる。OR活性に影響を与える任意の適切な生理学的変化を使用して、OR及び天然又は非天然のリガンド媒介性OR活性に対する化合物の影響を評価することができる。無傷の細胞又は動物を使用して機能的結果を決定する場合、cAMPなどの細胞内セカンドメッセンジャーのレベルの変化などの様々な影響を測定することも可能である。
【0067】
[0104] OR活性のモジュレーターは、組換え又は天然に存在する上記のORポリペプチド(例えば、μOR、κOR、δOR、及びORL1)を使用して試験される。タンパク質は、単離する、細胞で発現させる、細胞に由来する膜で発現させる、組織で発現させる、又は動物で発現させることができる。例えば、神経細胞、免疫系の細胞、形質転換細胞、又は膜を使用して、本明細書に記載のGPCRポリペプチドを試験することができる。調節は、本明細書に記載又は当技術分野で公知のインビトロ又はインビボアッセイを使用して試験される。シグナル伝達は、異種シグナル伝達ドメインに共有結合した受容体の細胞外ドメイン、又は受容体の膜貫通ドメイン及び/又は細胞質ドメインに共有結合した異種細胞外ドメインなどのキメラ分子を使用して、溶解状態又は固体状態の反応を用いてインビトロで調べることができる。さらに、目的のタンパク質のリガンド結合ドメインは、リガンド結合をアッセイするために、溶解状態又は固体状態の反応においてインビトロで使用することができる。
【0068】
[0105] OR、ORドメイン、又はキメラタンパク質に結合するリガンドは、いくつかの形式で試験することができる。結合は、溶液中、二分子膜中、固相に付着して、脂質単層中、又は小胞中で行うことができる。本明細書に記載の特定のアッセイでは、天然リガンドのその受容体への結合は、候補モジュレーターの存在下で測定される。或いは、候補モジュレーターの結合は、天然リガンドの存在下で測定することができる。天然リガンドの受容体への結合と競合する化合物の能力を測定する競合アッセイを使用することができる。正のアロステリックモジュレーター(PAM)の結合と競合する化合物の能力を測定する競合アッセイもまた、例えば、潜在的なサイレントアロステリックモジュレーター(SAM)を同定するために使用することができる。結合は、例えば、分光学的特性(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)の変化、流体力学的(例えば、形状)変化、又はクロマトグラフ特性若しくは溶解特性の変化を測定することによって試験することができる。
【0069】
[0106] モジュレーターはまた、β−アレスチン動員を含むアッセイを用いて同定することができる。β−アレスチンは、非活性化細胞の細胞質全体に分布するタンパク質である。適切なORに結合するリガンドは、細胞質から細胞表面へのβ−アレスチンの再分布をもたらし、そこでORと結合する。従って、受容体の活性化、及びリガンドが誘導する受容体の活性化に対する候補モジュレーターの効果を、細胞表面へのβ−アレスチン動員をモニタリングすることによって評価することができる。
【0070】
[0107] MOR活性化についての他のアッセイも当技術分野で公知である。例えば、国際公開第2012/129495号を参照されたい。
【0071】
化合物
[0108] 本明細書で提供されるMOR PAM及びMOR SAMは、構造:
【化1】
を有する化合物であり、
式中、
[0109] A1は、存在しないか、CH
2、CHR
1、CR
2R
3、CH、CR
4、CO、O、S、SO、SO
2、NH、又はNR
5であり;
[0110] A2は、存在しないか、CH
2、CHR
6、CR
7R
8、CH、CR
9、CO、O、S、SO、SO
2、NH、又はNR
10であり;
[0111] A3は、存在しないか、CH
2、CHR
11、CR
12R
13、CH、CR
14、CO、O、S、SO、SO
2、NH、NR
15であり;
[0112] A4は、存在しないか、CH
2、CHR
16、CR
17R
18、CH、CR
19、CO、O、S、SO、SO
2、NH、NR
20であり;
[0113] A5は、存在しないか、CH
2、
CHR21、CR
22R
23、CH、CR
24、CO、O、SO、SO
2、NH、NR
25であり;
[0114] A6は、CH又はCR
26であり;
[0115] A7は、SO
2R
27、SOR
28、CHR
29、R
30、CH
2R
31、COR
32、CONHR
33、CONR
34R
35、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、環状、置換環状、複素環、置換複素環、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、又は小さな置換基であり;
[0116] A8は、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、環状、置換環状、複素環、置換複素環、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ビアリール、置換ビアリール、ヘテロビアリール、置換ヘテロビアリール、又は小さな置換基であり;
[0117] R1〜R35は独立に、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、分岐ハロゲン化アルキル、分岐アルキルカルボニル、ハロゲン化アルキルカルボニル、分岐ハロゲン化アルキルカルボニル、アリールカルボニルアルケニル、置換アルケニル、アルキニル、エーテル、又は小さな置換基であり;さらに、A1〜A5のうちの4つ以下が存在しない。
【0072】
[0118] 特定の実施形態では、A1、A2、A3、A4、A5、又はA6に結合した水素原子の1つ又は複数を、重水素(D)原子で置き換えることができる。
【0073】
[0119] 2つ以下のヘテロ原子(例えば、O、N、S)がA1〜A4に存在することができ;A1〜A6内のO−O結合、S−O結合、S−S結合、及びS−N結合は除外される。
【0074】
[0120] 特定の実施形態では、A7、A8、又はR1〜R35のいずれか1つ又は複数は、シアノ、ハロゲン、低級アルキル(例えば、C1〜C3アルキル)、分岐低級アルキル(例えば、イソプロピル)、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、オキシアルキル、アルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、F、Cl、Br、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、n−Pr、n−Bu、i−Bu、sec−Bu、iPr、t−Bu、CN、OH、OMe、OEt、O−iPr、OCF
2H、OCF
3、NH
2、NHMe、NMe
2、メトキシカルボニル、メタンスルホニル、フェニル、ベンジル、MeSO
2、ホルミル、又はアセチルから選択される小さな置換基である。
【0075】
[0121] 分子内の二重結合の分布が安定した構造をもたらすのであれば、NとA1間、A1とA2間、A2とA3間、A3とA4間、A4とA5間、A5とA6間、及びA6とN間の結合のうちのいずれか1つ又は複数が二重結合であり得る。
【0076】
[0122] 特定の実施形態では、式Iの化合物は、置換基A7及びA8を有する6員の窒素含有環(即ち、ピペリジン環)である。
【0077】
[0123] 特定の実施形態では、式Iの化合物は、第2の環に融合されてスピロ環、架橋二環、又は縮合二環を形成する4、5、6、又は7員環である。
【0078】
[0124] 本明細書で提供される特定の二環式化合物では、スピロ二環が形成される。スピロ二環の場合、第2の環の結合点はA1〜A5のいずれかであり得る。第2の環は、環のサイズが3、4、5、若しくは6の任意の炭素環、置換炭素環、ヘテロ炭素環、又は置換ヘテロ炭素環であり得る。適切な炭素環の非限定的なリストを表2に示す。式1の例示的なスピロ二環を以下に示す:
【化2】
【0079】
[0125] 本明細書で提供される特定の二環式化合物では、架橋二環が形成され、A1が炭素架橋によってA4、A5又はA6のいずれかに結合され得るか、又はA6が炭素架橋によってA4又はA2に結合され得る。炭素架橋は、例えば、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、又はプロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)架橋、又はそれらの置換型であり得る。A1又はA6で終端する架橋の場合、ヘテロ原子は架橋に存在できない。
【0080】
[0126] 本明細書で提供されるさらなる二環式化合物では、A2は、炭素、酸素、又は窒素架橋によってA5に結合されている。炭素架橋は、例えば、メチレン、エチレン、又はプロピレン架橋、又はそれらの置換型であり得る。酸素架橋は、例えば、エーテル(−O−)架橋であり得;且つ窒素架橋は、例えば、アミン架橋(例えば、−NH−又は−NR
36−)であり得る。
【0081】
[0127] アミン架橋では、R36は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、分岐ハロゲン化アルキル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、ハロゲン化アルキルカルボニル、分岐ハロゲン化アルキルカルボニル、アリールカルボニルアルケニル、置換アルケニル、アルキニル、アルコキシカルボニル、エーテル、又は小さな置換基のうちの1つであり得る。小さな置換基は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、F、Cl、Br、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、n−Pr、n−Bu、i−Bu、sec−bu、i−Pr、t−Bu、CN、OH、OMe、OEt、O−iPr、OCF
2H、OCF
3、NH
2、NHMe、NMe
2、メトキシカルボニル、メタンスフロニル、フェニル、ベンジル、MeSO
2、ホルミル、及びアセチルから選択される。
【0082】
[0128] 式1の例示的な架橋二環を以下に示す:
【化3】
【0083】
[0129] 本明細書で提供される特定の二環式化合物では、縮合二環が形成される。第2の環の結合点は、A1〜A2、A2〜A3、A3〜A4、A2〜A4(A3が存在しない場合)、又はA4〜A5のいずれかであり得る。第2の環は、環のサイズが3、4、5、若しくは6の任意の炭素環、置換炭素環、ヘテロ炭素環、又は置換ヘテロ炭素環であり得る。適切な炭素環の非限定的なリストを表2に示す。第2の環はまた、任意のアリール、置換アリール、ヘテロアリール、又は置換ヘテロアリールであり得る。第2の環の例の非限定的なリストを表1に示す。式1の例示的な縮合二環を以下に示す:
【化4】
【0084】
[0130] スピロ環式及び縮合二環式化合物の場合、第2の環は、例えば、アリール、フェニル、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、ピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェン、又はピリダジンであり得る。
【0085】
[0131] 本明細書に開示されるスピロ環式及び縮合二環式化合物では、環のいずれか又は両方を、例えば、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、ホルミル、アセチル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、又は小さな置換基のうちの1つ又は複数で置換することができる。小さな置換基は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、オキシアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、F、Cl、Br、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、n−Pr、n−Bu、i−Bu、sec−Bu、i−Pr、t−Bu、CN、OH、OMe、OEt、O−iPr、OCF
2H、OCF
3、NH
2、NHMe、NMe
2、メトキシカルボニル、メタンスフロニル、フェニル、ベンジル、MeSO
2、ホルミル、及びアセチルから選択される。
【0086】
[0132] 特定の実施形態では、構造
【化5】
を有する化合物が本明細書で提供され、
A1、A2、A4〜A8、R1〜R10、R16〜R35、及び「小さな置換基」の定義は、上記の式Iで説明した通りである。
【0087】
[0133] 式Iaの化合物では、分子内の二重結合の分布が安定した構造をもたらすのであれば、NとA1間、A1とA2間、A2とA4間、A4とA5間、A5とA6間、及びA6とN間の結合のうちのいずれか1つ又は複数が二重結合であり得る。
【0088】
[0134] 特定の実施形態では、式Iaの化合物は、置換基A7及びA8を有する6員の窒素含有環である。
【0089】
[0135] 特定の実施形態では、式Iの化合物は、式1に関して上記したように、第2の環に融合されてスピロ環、架橋二環、又は縮合二環を形成する4、5、6又は7員環である。
【0090】
[0136] 追加の実施形態では、A8が芳香族(アリール)又はヘテロ芳香族(ヘテロアリール)環である式Iaの化合物が本明細書で提供される。例示的なアリール又はヘテロアリール環には、フェニル、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジンが含まれる。
【0091】
[0137] 追加の実施形態では、構造
【化6】
を有する化合物が本明細書で提供され、
A1、A2、A4、A6、A7、R1〜R10、R16〜R20、R26〜R35、及び「小さな置換基」の定義は、上記の式Iで説明した通りであり、A8は、芳香族(アリール)又はヘテロ芳香族(ヘテロアリール)環である。例示的なアリール又はヘテロアリール環には、フェニル、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジンが含まれる。
【0092】
[0138] さらなる実施形態では、構造
【化7】
を有する化合物が本明細書で提供され、
A1、A2、A4、A6、A7、R1〜R10、R16〜R20、R26〜R35、及び「小さな置換基」の定義は上記の式Iで説明した通りであり、A8は、芳香族(アリール)又はヘテロ芳香族(ヘテロアリール)環である。例示的なアリール又はヘテロアリール環には、フェニル、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジンが含まれる。
【0093】
[0139] さらなる実施形態では、N、A1、A2、A4、及びA6を含む環が架橋二環式環系の一部である式1aの化合物が本明細書で提供される。これらの架橋二環式化合物では、A1を、炭素架橋によってA4、A5、又はA6のいずれかに結合してもよいし、又はA6を、炭素架橋によってA4又はA2に結合してもよい。炭素架橋は、例えば、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、又はプロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)架橋、又はそれらの置換型であり得る。A1又はA6で終端する架橋の場合、ヘテロ原子は架橋中に存在できない。
【0094】
[0140] 式1aの追加の架橋二環式化合物では、A2は、炭素、酸素、又は窒素架橋によってA5に結合されている。炭素架橋は、例えば、メチレン、エチレン、又はプロピレン架橋又はそれらの置換型であり得る。酸素架橋は、例えば、エーテル(−O−)架橋であり得;窒素架橋は、例えば、アミン架橋(例えば、−NH−又はNR
36−)であり得る。
【0095】
[0141] アミン架橋では、R36は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、分岐ハロゲン化アルキル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、ハロゲン化アルキルカルボニル、分岐ハロゲン化アルキルカルボニル、アリールカルボニルアルケニル、置換アルケニル、アルキニル、アルコキシカルボニル、エーテル、又は小さな置換基のうちの1つであり得る。小さな置換基は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、F、Cl、Br、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、n−Pr、n−Bu、i−Bu、sec−bu、i−Pr、t−Bu、CN、OH、OMe、OEt、O−iPr、OCF
2H、OCF
3、NH
2、NHMe、NMe
2、メトキシカルボニル、メタンスフロニル、フェニル、ベンジル、MeSO
2、ホルミル、及びアセチルから選択される。
【0096】
[0142] 式1aの例示的な架橋二環を以下に示す:
【化8】
【0097】
[0143] さらなる実施形態では、構造
【化9】
を有する化合物が本明細書で提供され、
A1、A2、A4、A6、R1〜R10、R16〜R20、R26〜R35、及び「小さな置換基」の定義は、上記の式Iで説明した通りであり、A8は、芳香族(アリール)又はヘテロ芳香族(ヘテロアリール)環である。例示的なアリール又はヘテロアリール環には、フェニル、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジンが含まれる。
【0098】
[0144] 追加の実施形態では、構造
【化10】
を有する化合物が本明細書で提供され、
A1、A2、A4、A6、R1〜R10、R16〜R20、R26〜R35、及び「小さな置換基」の定義は、上記の式Iで説明した通りであり、A8は、芳香族(アリール)又はヘテロ芳香族(ヘテロアリール)環である。例示的なアリール又はヘテロアリール環には、フェニル、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジンが含まれる。
【0099】
[0145] 式1d及び1eの化合物では、R37は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルオキシ、オキシアルキル、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、分岐ハロゲン化アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、ハロゲン化アルキルカルボニル、分岐ハロゲン化アルキルカルボニル、アリールカルボニルアルケニル、置換アルケニル、アルキニル、アルコキシカルボニル、エーテル、又は小さな置換基のうちの1つであり得る。小さな置換基は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、F、Cl、Br、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、n−Pr、n−Bu、i−Bu、sec−bu、i−Pr、t−Bu、CN、OH、OMe、OEt、O−iPr、OCF
2H、OCF
3、NH
2、NHMe、NMe
2、メトキシカルボニル、メタンスフロニル、フェニル、ベンジル、MeSO
2、ホルミル、及びアセチルから選択される。
【0100】
[0146] さらなる実施形態では、N、A1、A2、A4、及びA6を含む環が架橋二環系の一部である式1aの化合物が本明細書で提供され;A8は、アリール又はヘテロアリールであり;A7は−SO
2R
37である。例示的なアリール又はヘテロアリール環には、フェニル、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジンが含まれる。R37は、式1d及び1eの化合物の上記定義と同じである。
【0101】
[0147] これらの架橋二環式化合物では、A1を、炭素架橋によってA4、A5、又はA6のいずれかに結合してもよいし、又はA6を、炭素架橋によってA4又はA2に結合してもよい。炭素架橋は、例えば、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、又はプロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)架橋、又はそれらの置換型であり得る。A1又はA6のいずれかで終端する架橋の場合、ヘテロ原子は架橋中に存在できない。
【0102】
[0148] 式1aの追加の架橋二環式化合物では、A2は、炭素、酸素、又は窒素架橋によってA5に結合されている。炭素架橋は、例えば、メチレン、エチレン、又はプロピレン架橋、又はそれらの置換型であり得る。酸素架橋は、例えば、エーテル(−O−)架橋であり得;窒素架橋は、例えば、アミン架橋(例えば、−NH−又は−NR
36−)であり得る。
【0103】
[0149] アミン架橋では、R36は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、分岐ハロゲン化アルキル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、ハロゲン化アルキルカルボニル、分岐ハロゲン化アルキルカルボニル、アリールカルボニルアルケニル、置換アルケニル、アルキニル、アルコキシカルボニル、エーテル、又は小さな置換基のうちの1つであり得る。小さな置換基は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、F、Cl、Br、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、n−Pr、n−Bu、i−Bu、sec−bu、i−Pr、t−Bu、CN、OH、OMe、OEt、O−iPr、OCF
2H、OCF
3、NH
2、NHMe、NMe
2、メトキシカルボニル、メタンスフロニル、フェニル、ベンジル、MeSO
2、ホルミル、及びアセチルから選択される。
【0104】
[0150] これらの前述の二環式化合物では、環のいずれか又は両方を、例えば、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、ホルミル、アセチル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、又は小さな置換基のうちの1つ又は複数で置換することができる。小さな置換基は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、F、Cl、Br、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、n−Pr、n−Bu、i−Bu、sec−Bu、i−Pr、t−Bu、CN、OH、OMe、OEt、O−iPr、OCF
2H、OCF
3、NH
2、NHMe、NMe
2、メトキシカルボニル、メタンスフロニル、フェニル、ベンジル、MeSO
2、ホルミル、及びアセチルから選択される。
【0105】
[0151] さらなる実施形態では、構造
【化11】
を有する化合物が本明細書で提供され、
式中、A9及びA10はC又はNであり;R38〜R43は、H、D、Cl、F、Br、CF
3、−OCF
3、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、n−Pr、i−Pr、n−Bu、iso−Bu、sec−Bu、t−Bu、−CN、−OH、−OCH
3、−OCH
2CH
3、O−iPr、OCF
2H、OCHF
2、OCF
3、NH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、メトキシカルボニル、メタンスルホニルMeSO
2、ホルミル、又はアセチルである;又はR43は、A10がNの場合、存在しない。
【0106】
[0152] 特定の実施形態では、式2の化合物では、A9及びA10は、C又はNであり;R38は、Br、Cl、CF
3、又は−OCF
3であり;R39は、H、Cl、又はFであり;R40は、H又はFであり;R41は、H又はD(重水素)であり;R42は、H又はFであり;R43は、A10がCの場合、H又はFであり;R43は、A10がNの場合、存在しない。
【0107】
[0153] 式2の化合物の追加の実施形態では、A9はCであり;A10はNであり;R38はClであり;R39はFであり;R40はHであり;R41はHであり;R42はHであり;R43は存在しない。
【0108】
[0154] 式2の化合物の追加の実施形態では、A9はNであり;A10はCであり;R38はCF
3であり;R39はHであり;R40はHであり;R41はHであり;R42はFであり;R43はHである。
【0109】
[0155] 式2の化合物の追加の実施形態では、A9はNであり;A10はCであり;R38は−OCF
3であり;R39はHであり;R40はHであり;R41はHであり;R42はFであり;R43はHである。
【0110】
[0156] 式2の化合物の追加の実施形態では、A9はNであり;A10はCであり;R38はCF
3であり;R39はHであり;R40はHであり;R41はHであり;R42はHであり;R43はHである。
【0111】
[0157] 式2の化合物の追加の実施形態では、A9はNであり;A10はCであり;R38はCF
3であり;R39はHであり;R40はHであり;R41はHであり;R42はHであり;R43はFである。
【0112】
[0158] 式2の化合物の追加の実施形態では、A9はCであり;A10はCであり;R38はBrであり;R39はFであり;R40はFであり;R41はHであり;R42はHであり;R43はHである。
【0113】
[0159] 式2の化合物の追加の実施形態では、A9はCであり;A10はCであり;R38はBrであり;R39はFであり;R40はFであり;R41はDであり;R42はHであり;R43はHである。
【0114】
[0160] 式2の化合物の追加の実施形態では、A9はCであり;A10はCであり;R38はCF
3であり;R39はHであり;R40はFであり;R41はDであり;R42はHであり;R43はFである。
【0115】
[0161] さらなる実施形態では、構造
【化12】
を有する化合物が本明細書に提供され、
式中、A11は、C又はNであり;R44〜R49は、H、D、Cl、F、Br、CF
3、−OCF
3、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、n−Pr、i−Pr、n−Bu、iso−Bu、sec−Bu、t−Bu、−CN、−OH、−OCH
3、−OCH
2CH
3、O−iPr、OCF
2H、OCHF
2、OCF
3、NH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、メトキシカルボニル、メタンスルホニルMeSO
2、ホルミル、又はアセチルである。
【0116】
[0162] 特定の実施形態では、式3の化合物では、A11は、C又はNであり;R44はCl、Br、又はCF
3であり;R45は、H、Cl、F、又はOCF
3であり;R46は、H又はFであり;R47は、H又はD(重水素)であり;R48は、H又はFであり;R49は、存在しないか、=CH、又はFである。
【0117】
[0163] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はClであり;R45はFであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0118】
[0164] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はBrであり;R45はFであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0119】
[0165] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はFであり;R45はFであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0120】
[0166] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はNであり;R44はCF
3であり;R45はHであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0121】
[0167] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はCF
3であり;R45はHであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はFであり;R49は存在しない。
【0122】
[0168] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はCF3であり;R45はHであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はFであり;R49は=CHである。
【0123】
[0169] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はCF3であり;R45はHであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はFであり;R49はFである。
【0124】
[0170] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はCF
3であり;R45はHであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0125】
[0171] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はCF
3であり;R45はClであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0126】
[0172] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はBrであり;R45は−OCF
3であり;R46はHであり;R47はHであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0127】
[0173] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はBrであり;R45はClであり;R46はHであり;R47はHであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0128】
[0174] 式3の化合物の追加の実施形態では、A11はCであり;R44はCF
3であり;R45はHであり;R46はFであり;R47はDであり;R48はHであり;R49は存在しない。
【0129】
[0175] さらなる実施形態では、構造
【化13】
を有する化合物が本明細書で提供され、
式中、A12は、C又はNであり;A13は、CH
2、NH、又は存在しない;R50〜R57は、H、D、Cl、F、Br、CF
3、−OCF
3、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、n−Pr、i−Pr、n−Bu、iso−Bu、sec−Bu、t−Bu、−CN、−OH、−OCH
3、−OCH
2CH
3、O−iPr、OCF
2H、OCHF
2、OCF
3、NH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、メトキシカルボニル、メタンスルホニルMeSO
2、ホルミル、又はアセチルである。加えて、R50とR51は一緒になって、A12含有環に融合した第2の環(アリール又はヘテロアリール)を形成し得る。特定の実施形態では、式4の化合物では、A12は、C又はNであり;A13は、CH
2又は存在しない;R50は、Cl、Br、又はCF
3であり;R51は、H、F、又はClであり;R52は、H又はFであり;R53は、H、F、又はCH
3であり;R54は、H又はDであり;R55は、H又はFであり;R56は、H又はClであり;R57は、H又はClである。
【0130】
[0176] さらなる実施形態では、構造
【化14】
を有する化合物が本明細書で提供され、
式中、A14は、C又はNであり;R58〜R60は、H、D、Cl、F、Br、CF
3、−OCF
3、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、n−Pr、i−Pr、n−Bu、iso−Bu、sec−Bu、t−Bu、−CN、−OH、−OCH
3、−OCH
2CH
3、O−iPr、OCF
2H、OCHF
2、OCF
3、NH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、メトキシカルボニル、メタンスルホニルMeSO
2、ホルミル、又はアセチルである。
【0131】
[0177] 特定の実施形態では、式5の化合物では、A14は、C又はNであり;R58は、Cl、Br、又はCF
3であり;R59は、H、F、又はClであり;R60は、H、F、又はCF
3である。
【0132】
[0178] さらなる実施形態では、構造
【化15】
を有する化合物が本明細書に提供され、
式中、A15は、C又はNであり;R61〜R66は、H、D、Cl、F、Br、CF
3、−OCF
3、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、n−Pr、i−Pr、n−Bu、iso−Bu、sec−Bu、t−Bu、−CN、−OH、−OCH
3、−OCH
2CH
3、O−iPr、OCF
2H、OCHF
2、OCF
3、NH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、メトキシカルボニル、メタンスルホニルMeSO
2、ホルミル、又はアセチルである。
【0133】
[0179] 特定の実施形態では、式6の化合物では、A15は、C又はNであり;R61は、Cl、Br、又はCF
3であり;R62は、H、F、Cl、又は−OCH
3であり;R63は、H又はFであり;R64は、H又はFであり;R65は、H又はClであり;R66は、H又はClである。
【0134】
[0180] さらなる実施形態では、構造
【化16】
を有する化合物が本明細書で提供され、
式中、A16は、C又はNであり;A17は、CH
2、NH、又は存在しない;R67〜R69は、H、D、Cl、F、Br、CF
3、−OCF
3、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、n−Pr、i−Pr、n−Bu、iso−Bu、sec−Bu、t−Bu、−CN、−OH、−OCH
3、−OCH
2CH
3、O−iPr、OCF
2H、OCHF
2、OCF
3、NH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、メトキシカルボニル、メタンスルホニルMeSO
2、ホルミル、又はアセチルである。
【0135】
[0181] 特定の実施形態では、式7の化合物では、A16は、CH又はNであり;A17は、CH
2又は存在しない;R67は、H、Cl、F、−OCH
3、又はOCF
3であり;R68は、Cl、Br、CH
3、又はCF
3であり;R69は、A17が存在しない場合、−CH
3である。
【0136】
[0182] さらなる実施形態では、構造
【化17】
を有する化合物が本明細書に提供され、
式中、Xは、C、O、S、SO、SO
2、N、NH、NCH
3、NAc、NCO(CMe
2OH)、NSO
2Me、又はNR72であり;R72は、アルキル、アリール、ヘテロアリールであり;R70は、アリール、ヘテロアリール、置換アリール、及び置換ヘテロアリールであり、R71は、アリール、ヘテロアリール、置換アリール、及び置換ヘテロアリールである。
【0137】
[0183] 本明細書に開示される化合物のいずれかに存在するアリール基は、単環式芳香族基又は二環式芳香族基のいずれかであり、芳香族基(例えば、ヘテロアリール)にヘテロ原子を含み得る。例示的なアリール基の非限定的な構造を表1に示す。
【0140】
[0184] 本明細書に開示される特定の化合物に存在する炭素環は、単環式又は二環式非芳香族環系のいずれかである。表2は、いくつかの例示的な炭素環の非限定的な構造を示し、X1及びX2は独立に、O、S、N、NH、又はNR70である。R70は、得られる構造が安定である場合、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、分岐ハロゲン化アルキル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環−アルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、ハロゲン化アルキルカルボニル、分岐ハロゲン化アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、又はF、Cl、Br、CH
3、CH
2CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、n−Pr、n−Bu、i−Bu、sec−Bu、i−Pr、t−Bu、CN、OH、OMe、OEt、0−i−Pr、メトキシカルボニル、フェニル、ベンジル、ホルミル、若しくはアセチルから選択される小さな置換基であり得る。炭素環は、1つ又は複数の二重結合を含み得るが、炭素環内の二重結合の分布は、芳香環系を構成しない。
【0142】
シグナルバイアス
[0185] Gタンパク質共役MORの活性化は、GDP/GTP交換、ERKリン酸化、β−アレスチン(即ち、β−アレスチン1、β−アレスチン2、及びβ−アレスチン3)の動員及びcAMP産生の阻害を含む、いくつかの下流効果をもたらす。いくつかの研究により、GPCR活性化の下流のシグナル伝達事象が生理学的プロセスに重大な影響を及ぼすことが示されている。Kenakin, T. (2015b) British Pharmacological Society 173:4238-4235。例えば、動物ノックアウト研究(Soergel et al., supra及びその中の参考文献)は、アデニル酸シクラーゼ活性をβ−アレスチン動員を刺激するよりも強く阻害するリガンドの利点を実証している。β−アレスチン経路の活性化は、疼痛の改善に悪影響を与えるだけでなく、オピエートの胃腸の副作用に直接寄与すると考えられている。Raehal et al., (2005) J. Pharmacol. Exp. Therapeutics 314:1195-1201;Thompson et al. (2015) Molecular Pharmacology 88:335-346;Rivero et al. (2012) Molecular Pharmacology, (2012) 82:178-188;Pradham et al. (2012) British Journal of Pharmacology 167(5):960-969。実際、MORのオルソステリック部分アゴニストの治療指数が、シグナルにバイアスをかけてアデニル酸シクラーゼ阻害を誘導してβ−アレスチンシグナル伝達を回避することによって、増加することが臨床的に実証されている。従って、オピエート及びオピオイドの治療効果を改善するための1つのアプローチは、それらが選択的シグナルバイアスを示すようにオルソステリックリガンドを修飾することであった。
【0143】
[0186] 本明細書に開示される特定のMOR PAMはまた、MORシグナル伝達から生じる下流プロセスに異なる効果を及ぼすという点で、選択的シグナルバイアスを示す。例えば、表3は、特定の化合物が、アデニル酸シクラーゼ阻害と比較して、β−アレスチン動員に対して定量的に異なるEC
50及び最大応答値を有することを示す。表4は、さらなる化合物の同様の分析結果を示す。
【0155】
[0187] 従って、オルソステリックリガンドを修正して選択的シグナルバイアスを与える前述のアプローチに加えて、本明細書に記載の組成物及び方法は、アロステリックモジュレーターによってアロステリック調節の利点と選択的シグナルバイアスの利点を組み合わせる改善された代替手段を提供する。
【0156】
[0188] 特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料は、本明細書に記載される組成物及び化合物の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。加えて、材料、方法、及び例は、限定することを意図するものではなく、単なる例示にすぎない。本明細書に記載の組成物及び化合物の他の特徴及び利点は、詳細な説明、反応スキーム、実施例、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0157】
反応スキーム
[0189] 以下の代表的なスキームは、本明細書に記載の化合物をどのように調製できるかを例示する。言及される特定の溶媒及び反応条件は例示的なものであり、限定することを意図するものではない。記載されていない化合物は、市販のものであるか、又は入手可能な出発材料を使用して当業者によって容易に調製される。
【化18】
【0158】
方法1
[0190] ステップ1:マグネシウム粉末(1.2当量)を丸底フラスコに加え、真空下で加熱乾燥させた。室温まで冷却したら、容器に窒素を再充填し、ヨウ素の結晶を加え、フラスコを再び真空下で加熱乾燥させてヨウ素を昇華させた。フラスコが室温まで冷却されたら、THF(1.0M対ヨウ化アリール)を加え、続いてヨウ化アリール(1.0当量)を加えた。次に、得られた懸濁液を30分間還流してから、室温まで冷却し、その後0℃に冷却した。
【0159】
[0191] 別のフラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、CuI(1.1当量)及び4−クロロブチリルクロリド(n=1、1.1当量)又は5−クロロバレリルクロリド(n=2、1.1当量)又は6−クロロカプロイルクロリド(n=3、1.1当量)をTHF(0.5M対ヨウ化アリール)に充填し、0°Cに冷却した。調製したばかりのグリニャール試薬を、窒素下でカニューレを介して、この溶液にゆっくりと移した。得られた混合物を室温まで温め、質量スペクトル分析によって完了が決定されるまで(約2時間)攪拌した。完了したら、反応混合物を飽和NH
4Cl水溶液でクエンチし、ジエチルエーテルで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、シリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0160】
[0192] ステップ2:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、N,N−ジメチルアセトアミド中の必要な塩化アルキル(1.0当量)(0.4M対塩化アルキル)及びNaN
3(2.0当量)を加えた。バイアルを密封し、反応混合物を60℃に2時間加熱した。反応が完了したら、溶液を室温まで冷却し、飽和NaCl水溶液で希釈し、Et
2Oで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、シリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0161】
[0193] ステップ3:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、THF中の適切なアジド(1.0当量)(0.2M対アジド)を入れた。次に、トリフェニルホスフィン(2.0当量)を加え、反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物に水を加え(1.0M対アジド)、反応混合物を16時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、粗残留物をEt
2Oに溶解してから、0℃に冷却した。沈殿物を濾別し、このプロセスをさらに2回繰り返してから、濾液を減圧下で濃縮した。粗残留物を、さらに精製することなく次のステップで使用した。
【0162】
[0194] ステップ4:粗アミノケトンをMeOH(0.2M対ケトン)に取り込み、−20℃に冷却してから、NaBH
4(10.0当量)を一度に加えた。得られた懸濁液を室温まで温め、完了するまで撹拌してから、飽和NaHCO
3水溶液でクエンチした。反応混合物をDCMで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物をEt
2O(0.1M対アミン)に溶解し、HClを加えて(10.0当量、Et
2O中、2.0N)、所望の物質を塩酸塩として沈殿させた。
【0163】
[0195] ステップ5a:スルホンアミドの合成。テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、アミン塩酸塩(1.0当量)、DCE(0.1M対アミン)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.0当量)を入れた。反応混合物を0℃に冷却してから、適切な塩化スルホニル(1.2当量)を加えた。反応混合物を室温まで温めながら撹拌した。反応が完了したら、反応混合物を0.1N HCl水溶液で希釈し、DCMで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物を分取LC−MSによって精製した。
【0164】
[0196] ステップ5b:ヘテロアニリンの合成:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、アミン塩酸塩(1.0当量)、1−ブタノール(0.1M対アミン)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.0当量)、及び適切なクロロヘテロアレーン(1.2当量)を入れた。反応混合物を50℃で14時間撹拌した。反応が完了したら、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物を分取LC−MSによって精製した。
【0165】
[0197] ステップ5c:ベンジルアミンの合成:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、アミン塩酸塩(1.0当量)、MeCN(0.1M対アミン)、Cs
2CO
3(3.0当量)、及びKI(0.1当量)を入れた。適切な臭化ベンジル(1.0当量)(ニート又はMeCN中、1M溶液として)を滴加した。反応混合物を80℃で撹拌した。反応が完了したら、反応混合物を室温まで冷却し、飽和Na
2CO
3水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物を分取LC−MSによって精製した。
【0166】
[0198] ステップ5d:反応性の低いヘテロアニリンの合成:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、アミン塩酸塩(1.0当量)、無水NMP(0.1M対アミン)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.0当量)、適切なクロロ−ヘテロアレーン(5.0当量)、及びアルミナ上のフッ化カリウム(5.0当量、40%w/wローディング)を入れた。反応混合物を180℃で18時間撹拌した。反応が完了したら、固体を濾別し、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物を分取LC−MSによって精製した。
【0167】
【化19】
方法2
[0199] ステップ1:Int−Aはまた、以下の経路を介して得ることができ、最終化合物は、方法A1のステップ2〜5に従うことによって達成される。
【0168】
[0200] 丸底フラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、DCM中の必要なアレーン(1.0当量)(1M対ケトン)を入れた。三塩化アルミニウム(1.1当量)を一度に加えてから、4−クロロブチリルクロリド(n=1、1.1当量)又は5−クロロバレリルクロリド(n=2、1.1当量)又は6−クロロカプロイルクロリド(n=3、1.1当量)を加えた。反応混合物を2時間加熱還流した。反応が完了したら、反応混合物を冷3N HC1水溶液(2×V
DCM)に注ぎ、DCMで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaHCO
3水溶液(1回)及び飽和NaCl水溶液(1回)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、シリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0169】
[0201] 最終生成物を、方法1のステップ2、3、4、5a、5b、5c、又は5dに従って得た。
【0170】
【化20】
方法3
[0202] Int−Cはまた、以下の経路を介して得ることができ、最終化合物は、方法1、ステップ5a〜dに従うことによって達成される。
【0171】
[0203] ステップ1:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、Ir[dF(CF
3)ppy]
2(dtbbpy)PF
6(0.01当量)、NiCl
2・glyme(0.1当量)、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジル(0.15当量)、所望のハロゲン化アリール(1.0当量)、適切なBoc保護アミノ酸(1.5当量)、Cs
2CO
3(1.5当量)、及びDMF(0.02M対臭化アリール)を入れた。反応混合物を20分間窒素で通気することによって脱気し、次に2つの26W蛍光灯を(光源から約2cmの距離で)照射した。72時間後、反応混合物を、飽和NaHCO
3水溶液で希釈し、Et
2Oで抽出した(3回)。合わせた有機層を、水(1回)及び飽和NaCl水溶液(1回)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗残留物を、シリカのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0172】
[0204] ステップ2:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、Boc保護アミン(1.0当量)及びジオキサン(0.1M対カルバメート)を入れた。ジオキサン中の4.0N HCl(過剰)を加え、完全な脱保護が達成されるまで反応混合物を撹拌した。反応が完了したら、反応混合物を飽和Na
2CO
3水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物をEt
2O(0.1M対アミン)に溶解し、HCl(10.0当量、Et
2O中、2.0N)を加え、所望の物質を塩酸塩として沈殿させた。
【0173】
【化21】
方法4
[0205] Int−Bは、方法1又は方法2のいずれかから得ることができ、Int−C2に由来する最終化合物は、方法1のステップ5a、5b(50℃の代わりに80℃)、5c、又は5dに詳述される手順に従うことによって得られる。
【0174】
[0206] ステップ1:丸底フラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、DCM中の必要なアジドアリールケトン(1.0当量)(0.2M対ケトン)を入れた。トリエチルアミン(2.0当量)及びトリエチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(2.0当量)を順次加えた。反応混合物を、飽和NaHCO
3水溶液でクエンチする前に、反応が完了するまで(約2時間)撹拌した。反応混合物をDCMで抽出し、合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、シリカの短いプラグにすばやく押し込んだ。次に、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。次に、粗残留物をMeCN(0.2M対ケトン)に溶解し、Selectfluor(登録商標)(1.0当量)を加え、得られた溶液を室温で撹拌した。反応が完了したら、水を加え、反応混合物をEtOAcで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0175】
[0207] ステップ2:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、THF中の適切なアジド(1.0当量)(0.2M対アジド)を入れた。次に、トリフェニルホスフィン(2.0当量)を加え、反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物に水を加え(1.0M対アジド)、反応混合物を16時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、粗残留物をEt
2Oに溶解してから、0℃に冷却した。沈殿物を濾別し、このプロセスをさらに2回繰り返してから、濾液を減圧下で濃縮した。粗残留物を、さらに精製することなく次のステップで使用した。
【0176】
[0208] ステップ3:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、アミノケトン(1.0当量)及びDCE(0.1M対アミン)を入れた。反応混合物を、室温で1時間撹拌してから、STAB(2.0当量)を一度に加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応が完了したら、反応混合物を、飽和Na
2CO
3水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗アミンを、分取LC−MSで精製するか、又は塩酸塩として塩析した(方法1、ステップ4を参照)。
【0177】
【化22】
方法5
[0209] Int−Bは、方法1又は方法2のいずれかから得ることができる。Int−C3は、方法4のステップ2及び3に従って、Int−B3から得ることができる。Int−C3に由来する最終化合物は、方法1のステップ5a、5b(50°Cではなく80°C)、5c、又は5dで詳述される手順に従うことによって得られる。
【0178】
[0210] 丸底フラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、DCM中の必要なアジドアリールケトン(1.0当量)(0.2M対ケトン)を入れた。トリエチルアミン(2.0当量)及びトリエチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(2.0当量)を順次加えた。反応混合物を、飽和NaHCO
3水溶液でクエンチする前に、反応が完了するまで(約2時間)撹拌した。反応混合物をDCMで抽出し、合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、シリカの短いプラグにすばやく押し込んだ。次に、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。オーブン乾燥バイアルに、窒素雰囲気下でTogni試薬(3,3−ジメチル−1−(トリフルオロメチル)−1,2−ベンゾヨードキソール、1.5当量)及びCuSCN(0.1当量)を入れた。これらの固体に、DMA中のシリルエノールエーテル(1.0当量)(0.1M対シリルエノールエーテル)の溶液を加えた。バイアルを密封し、80°Cで12時間撹拌した。反応が完了したら、飽和NaCl水溶液を加え、反応混合物をEt
2Oで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0179】
【化23】
方法6
[0211] ステップ1:丸底フラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、THF中の必要なハロアレーン(1.3当量)(2M対アレーン)を入れた。反応混合物を−15℃に冷却(氷−アセトン浴)してから、i−PrMgCl(1.2当量、THF中、2.0M)を10分かけて滴加した。反応混合物を、3時間撹拌してゆっくりと0℃まで温めた。真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填した別の丸底フラスコに、N−Boc−2−ピペリドン(1.0当量)及びTHF(0.4M対ピペリドン)を加え、反応混合物を−78°Cに冷却(ドライアイス−アセトン浴)した。グリニャール試薬を、カニューレを介して約20分かけてピペリドンに滴加した。移送が完了したら、反応混合物を−78℃でさらに1時間撹拌してから、ジオキサン中の4.0N HCl(100.0当量)を追加した。冷却浴を取り外し、反応混合物を18時間撹拌した。反応が完了したら、揮発性物質を減圧下で蒸発乾固させた。粗残留物を、飽和Na
2CO
3水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、さらに精製することなく使用した。
【0180】
[0212] ステップ2:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、適切なアミノケトン(1.0当量)及び1:1のMeOH:H
2O混合物(0.1M対ケトン)を入れた。Selectfluor(登録商標)(4.0当量)を加え、反応混合物を80℃に16時間加熱した。反応が完了したら、反応混合物を室温まで冷却し、揮発性物質を減圧下で蒸発乾固させた。粗残留物を、飽和NaCl水溶液で希釈し、Et
2Oで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、さらに精製することなく使用した。
【0181】
[0213] ステップ3:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、アミノケトン(1.0当量)及びDCE(0.1M対アミン)を入れてから、NaBH
3CN(1.5当量)を一度に加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応が完了したら、反応混合物を、飽和Na
2CO
3水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗アミンを、分取LC−MSで精製するか、又は塩酸塩として塩析した(方法1、ステップ4を参照)。
【0182】
[0214] 最終化合物は、方法1のステップ5a、5b(50℃の代わりに80℃)、5c又は5dに詳述される手順に従うことによって得られる。
【0183】
【化24】
方法7
[0215] ステップ1:丸底フラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、THF中の2−ピペリドン(1.1当量)(0.5M対ピペリドン)を入れた。反応混合物を−78℃に冷却(ドライアイス−アセトン浴)してから、n−BuLi(2.2当量、THF中、1.0M)を15分かけて滴加した。反応混合物を−78℃で15分間攪拌し、次に0℃で45分間撹拌した。反応混合物を−78℃に冷却し、所望のハロゲン化アルキル(1.0当量)を、THF中の1.0M溶液として滴加した。反応混合物を、−78℃で15分間(ヨウ化物)又は1時間(臭化物)撹拌してから、ジ−tert−ブチル−ジカーボネート(1.35当量)を1.0MのTHF溶液として滴加した。反応混合物を−78℃で15分間撹拌してから、飽和NH4Cl水溶液でクエンチし、水層をEt2Oで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0184】
[0216] ステップ2:丸底フラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、THF中の必要なハロアレーン(1.3当量)(2.0M対アレーン)を入れた。反応混合物を−15℃に冷却(氷アセトン浴)してから、i−PrMgCl(1.2当量、THF中、2.0M)を10分かけて滴加した。反応混合物を、3時間撹拌してゆっくりと0℃まで温めた。別の丸底フラスコで、真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填し、適切なN−Boc−3−アルキル−2−ピペリドン(1.0当量)及びTHF(0.4M対ピペリドン)を加え、反応混合物を−78°Cに冷却(ドライアイス−アセトン浴)した。グリニャール試薬を、カニューレを介して約20分かけてピペリドンに滴加した。移送が完了したら、反応混合物を−78°Cでさらに2時間撹拌してから、TFA(5.0当量)を加えた。反応混合物を冷却浴から取り出し、1時間撹拌した。室温に達したら、揮発性物質を減圧下で蒸発乾固させた。粗残留物を、DCM(0.5M対ケトン)に取り込み、0℃に冷却してから、TFA(DCMの半量)を滴加した。反応混合物を、完全な脱保護が起こるまで室温で撹拌した。反応が完了したら、揮発性物質を減圧下で蒸発乾固させた。粗残留物を、飽和Na2CO3水溶液で希釈し、Et2Oで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、さらに精製することなく使用した。
【0185】
[0217] ステップ3:テフロン(登録商標)セプタム及びマグネチックスターラーを備える、オーブンで乾燥したバイアルに、アミノケトン(1.0当量)及びDCE(0.1M対アミン)を入れた。反応混合物を、室温で1時間撹拌してから、STAB(2.0当量)を一度に加えた。反応混合物を、室温で16時間撹拌した。反応が完了したら、反応混合物を、飽和Na2CO3水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した(3回)。合わせた有機層を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗アミンを、分取LC−MSで精製するか、又は塩酸塩として塩析した(方法1、ステップ4を参照)。
【0186】
[0218] 最終的な目標物は、方法1のステップ5a、5b、5c、又は5dの後に得られた。
【0187】
【化25】
方法8
[0219] ステップ1:丸底フラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、1,2−DCE中の必要なアレーン(1.0当量)(0.5M対アレーン)を入れた。続いて、5−クロロ−5−オキソペンタン酸エチル(1.1当量)及び無水AlCl
3(2.0当量)を反応混合物に加えた。得られた懸濁液を70℃で2時間撹拌した。TLCにより反応完了を判断したら、反応混合物を室温まで冷却し、氷上に注いだ。層を分離し、水層をDCMで抽出した(2回)。合わせた有機層を、1N HCl水溶液(2回)、水、及び飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、さらに精製することなく使用した。
【0188】
[0220] ステップ2:丸底フラスコを真空下で加熱乾燥させ、窒素を再充填してから、Et
2O中のLiAlH
4(xg、1.5当量)(0.4M対Al)を入れた。既に得たEt
2O(0.5M対ケトン)中のケト−エステル(1.0当量)を30分かけて滴加した。添加が完了したら、反応混合物を還流し、5時間撹拌した。TLCにより反応完了を判断したら、反応混合物を0℃に冷却し、Fieserプロセスに従って作業し、x mLのH
2O、x mLの15%NaOH水溶液、及び2x mLのH
2Oをゆっくりと加え、続いてMgSO
4で乾燥させ、1時間撹拌し、濾過し、揮発性物質を蒸発させた。粗残留物を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0189】
[0221] ステップ3:DCM中のジオール(1.0当量)の溶液(0.3M)を、DCM中のPCC(4.0当量)の懸濁液(0.7M)に20分かけてゆっくりと加えた。2時間撹拌してから、Celite(登録商標)を加え、続いてEt
2O(2×V
DCM)及びヘキサン(1×V
DCM)を加えた。反応混合物を20分間撹拌してから、Celite(登録商標)のプラグに通して濾過し、クロム含有塩の大部分を除去した。揮発性物質を蒸発させ、粗残留物をシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、所望のケトアルデヒドを得た。
【0190】
[0222] ステップ4:既に合成したMeOH(0.25M)中のケトアルデヒド(1.0当量)、アニリン(1.0当量)、及び酢酸(1.2当量)を含む丸底フラスコを室温で30分間撹拌した。NaBH
3CN(2.0当量)を加え、反応混合物を40℃まで4時間加熱した。TLCにより反応完了を判断したら、反応混合物をAcOHでクエンチし、蒸発乾固させた。粗残留物を、分取LC−MSによって精製して所望のピペリジン生成物を得た。
【0191】
エナンチオマーの分離
[0223] ラセミint−C変異体を、キラル分離のためにLotus Separations LLC of Princeton, NJに提供した。一般に、超臨界流体クロマトグラフィーは、適切なカラム(Lux Cellulose-4(2×25cm)など)を使用して行った。使用する例示的な溶離液は、10%イソプロパノール/CO
2であり、70mL/分、100バールでポンピングし、220nmでモニタリングした。
【0192】
化合物の例
【化26】
化合物1の例
化合物1の例は、方法1に従って、ステップ1でヨウ化アリールとしての2−クロロ−1−フルオロ−4−ヨードベンゼン及び5−クロロ吉草酸クロリド;並びにステップ5cで臭化ベンジルとして2−(ブロモメチル)−6−クロロピリジンを使用して合成した。
1H NMR(500MHz,DMSO−d6),δ(ppm):7.82(t,1H,J=7.8Hz),7.58(dd,1H,J=7.4,2.1Hz),7.41(m,2H),7.34(m,2H),3.55(d,1H,J=15.0Hz),3.28(dd,1H,J=11.0,2.8Hz),3.07(d,1H,J=15.0Hz),2.85(dd,1H,J=11.7,3.6Hz),2.10(td,1H,J=11.9,2.8Hz),1.71(ddt,2H,J=15.3,12.8,3.1Hz),1.52(m,3H),1.33(qt,1H,J=13.5,3.9Hz).
13C NMR(125MHz,DMSO−d6),δ(ppm):160.5,157.1,155.1,149.2,142.7(d,J=4Hz),140.1,129.2,127.7(d,J=7Hz),122.3,121.2,119.3(d,J=18Hz),116.9(d,J=21Hz),66.2,60.0,53.3,36.3,25.4,24.4.
【0193】
【化27】
化合物2の例
化合物2の例は、方法3に従って、臭化アリールとして2−ブロモ−6−(トリフルオロメチル)ピリジン及びBoc保護アミノ酸としてN−Boc−ピペコリン酸を使用して合成した。2−(ブロモメチル)−4−クロロ−1−フルオロベンゼンは、ステップ5cで臭化ベンジルとして使用した。
1H NMR(500MHz,DMSO−d6),δ(ppm):8.06(t,1H,J=7.8Hz),7.84(d,1H,J=7.9Hz),7.77(d,1H,J=7.5Hz),7.40(dd,1H,J=6.3,2.8Hz),7.32(ddd,1H,J=8.8,4.4,2.8Hz),7.15(t,1H,J=9.2Hz),3.44(dd,1H,J=11.1,2.9Hz),3.37(d,1H,J=14.2Hz),3.17(d,1H,J=14.1Hz),2.88(dt,1H,J=11.5,3.5Hz),2.12(td,1H,J=11.8,2.8Hz),1.75(m,2H),1.64(dq,1H,J=13.0,2.9Hz),1.53(m,2H),1.36(m,1H).
13C NMR(125MHz,DMSO−d6),δ(ppm):165.2,160.7,158.8,146.1(q,J=34Hz),139.6,130.8(d,J=5Hz),129.1(d,J=9Hz),128.5(d,J=3Hz),127.8(d,J=16Hz),125.6,122.1(q,J=274Hz),119.8(d,J=3Hz),117.5(d,J=24Hz),69.3,52.9,52.2,34.9,25.6,24.3.
【0194】
【化28】
化合物3の例
化合物3の例は、方法3に従って、臭化アリールとして2−ブロモ−6−(トリフルオロメチル)ピリジン及びBoc保護アミノ酸としてN−Boc−ピペコリン酸を使用して合成した。4−クロロフェニルスルホニルクロリドは、ステップ5aでスルホニルクロリドとして使用した。
1H NMR(500MHz,DMSO−d6),δ(ppm):8.08(t,1H,J=7.8Hz),7.74(dd,2H,J=7.9,3.6Hz),7.65(m,2H),7.52(m,2H),5.29(dd,1H,J=6.1,2.1Hz),3.80(ddd,1H,J=13.4,4.4,2.5Hz),3.39(td,1H,J=12.7,3.3Hz),2.14(ddt,1H,J=12.6,4.1,2.5Hz),1.68(tdd,1H,J=13.3,5.8,3.8Hz),1.59(m,1H),1.44(m,1H),1.28(m,2H).
13C NMR(125MHz,DMSO−d6),δ(ppm):160.8,145.8(q,J=34Hz),139.8,139.0,138.0,129.7(2x C),128.9(2x C),126.1,122.9(q,J=273Hz),119.5(d,J=3Hz),56.3,43.1,28.9,24.5,18.3.
【0195】
【化29】
化合物4の例
化合物4の例は、方法2に従って、ステップ1でアレーンとしての1−ブロモ−2−メトキシベンゼン及び5−クロロ吉草酸クロリドを使用して合成した。ステップ5aで、塩化スルホニルとして4−クロロフェニルスルホニルクロリドを使用した。
1H NMR(500MHz,DMSO−d6),δ(ppm):7.88(m,2H),7.68(m,2H),7.39(dd,1H,J=2.3,0.9Hz),7.29(ddd,1H,J=8.6,2.4,1.0Hz),7.10(d,1H,J=8.6Hz),5.12(t,1H,J=3.6Hz),3.84(s,3H),3.75(m,1H),2.92(ddd,1H,J=14.2,12.7,3.0Hz),2.14(dd,1H,J=14.4,3.5Hz),1.41(m,3H),1.22(tdd,1H,J=14.2,10.6,5.7Hz),1.08(tdt,1H,J=12.3,8.2,4.4Hz).
13C NMR(125MHz,DMSO−d6),δ(ppm):154.7,140.2,138.1,132.9,131.6,130.1(2x C),129.0(2x C),127.8,113.1,111.3,56.7,54.7,42.1,27.5,24.1,18.8.
【0196】
化合物5の例は、上記のようなキラル分離後の化合物4の例の初期溶出エナンチオマー型である。
【0197】
化合物6の例は、上記のようなキラル分離後の化合物4の例の後期溶出エナンチオマー型である。
【0198】
【化30】
化合物7の例
化合物7の例は、方法3に従って、臭化アリールとして3−トリフルオロメチル−ブロモベンゼン及びBoc保護アミノ酸としてN−Boc−ピペコリン酸を使用して合成した。ステップ5bでは、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジンをクロロ−ヘテロアレーンとして使用した。
1H NMR(500MHz,DMSO−d6),δ(ppm):8.24(d,1H,J=6.5Hz),7.66(m,1H),7.63(m,3H),5.78(t,1H,J=4.2Hz),4.30(dd,1H,J=13.7,3.7Hz),3.02(ddd,1H,J=14.7,10.3,4.7Hz),2.45(dd,1H,J=14.3,3.7Hz),2.01(dddd,1H,J=14.1,12.5,5.5,3.5Hz),1.64(m,3H),1.41(m,1H).
13C NMR(125MHz,DMSO−d6),δ(ppm):153.4(d,J=27Hz),153.3(d,J=30Hz),146.2(d,J=256Hz),145.0(d,J=28Hz),141.2,131.2,130.4,130.0(q,J=31Hz),124.7(q,J=272Hz),124.2(q,J=4Hz),123.5(q,J=4Hz),55.9(d,J=6Hz),42.7(d,J=9Hz),28.3,25.1,19.3.
【0199】
化合物8の例は、上記のようなキラル分離後の化合物7の例の初期溶出エナンチオマー型である。
【0200】
化合物9の例は、上記のようなキラル分離後の化合物7の例の後期溶出エナンチオマー型である。
【0201】
【化31】
化合物121の例
化合物121の例は、方法3に従って、ヨウ化アリールとして2−クロロ−1−フルオロ−4−ヨードベンゼン及びBoc保護アミノ酸としてN−Boc−ピペコリン酸を使用して合成した。ステップ5bでは、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジンをクロロヘテロアレーンとして使用した。
1H NMR(500MHz,DMSO−d6),δ(ppm):8.22(d,1H,J=6.6Hz),7.53(ddd,1H,J=7.1,2.4,1.0Hz),7.41(t,1H,J=8.9Hz),7.32(dddd,1H,J=8.4,4.7,2.4,1.0Hz),5.70(s,1H),4.27(m,1H),3.02(ddd,1H,J=14.4,11.1,3.7Hz),2.40(m,1H),1.95(dddd,1H,J=14.2,12.5,5.4,3.5Hz),1.62(m,3H),1.43(m,1H).
13C NMR(125MHz,DMSO−d6),δ(ppm):156.6(d,J=246Hz),153.3(d,J=39Hz),153.3(d,J=40Hz),146.2(d,J=256Hz),145.0(d,J=28Hz),137,5(d,J=4Hz),129.2,127.8(d,J=7Hz),120.4(d,J=18Hz),117.6(d,J=21Hz),55.3(d,J=5Hz),42.6(d,J=9Hz),28.3,25.2,19.3.
【0202】
化合物10の例は、上記のようなキラル分離後の化合物121の例の初期溶出エナンチオマー型である。
【0203】
化合物11の例は、上記のようなキラル分離後の化合物121の例の後期溶出エナンチオマー型である。
【0204】
[0224] さらなる例示的な化合物を表5〜表17に示す。
【0227】
MOR PAMの投与により疼痛を緩和するための方法
[0225] 異なるオピオイド受容体型に関して高度に選択的であるアゴニストが存在するが、それらは、依然として多くの副作用の問題を抱えている。これらの受容体選択的アゴニストの副作用の多くは、オフターゲット効果によるものではなく、全身のすべての受容体の無差別な活性化に起因し;それにより、受容体の活性化が望ましくないCNSの組織又は領域(即ち、疼痛が経験されていない領域)でMORを活性化する。そのような副作用は、より選択性の高いアゴニストの開発によって対処できる可能性は低い。
【0228】
[0226] 従って、開示される方法及び組成物の1つの利点は、外因性オルソステリックMORリガンドの非存在下で、インビボで投与された場合、内因性アゴニストが存在する領域でのみ受容体活性を選択的に増加させ、それによって内因性オピオイド応答の時間的及び空間的に制限された性質を維持するMOR PAMの能力である。MOR−PAMのこの特性は、MORアゴニストの使用と比較して、「目的の(on-target)」(即ち、MORを介した)副作用が少なくなる。
【0229】
[0227] 本明細書に開示されるMOR PAMの別の利点は、それらの使用により、投与と外因性オピオイドのクリアランスとの間で生じる持続的な受容体の活性化が回避されることである。従って、MOR PAMを使用すると、耐性及び/又は依存をもたらし得る、受容体のダウンレギュレーション及び脱感作などの代償機構が最小限に抑えられることになる。
【0230】
[0228] 内因性オピオイドの既知の基礎活性のために(Roques et al. (2012) Nat. Rev. Drug Discov. 11:292-310;Levine et al. (1978) Nature 272:826-827)、外因性オピオイドの非存在下でにおいて、MOR PAMの投与は、内因性オピオイドのベースライン活性を高めることによって鎮痛効果をもたらすことになる。実施例9を参照されたい。
【0231】
[0229] 本明細書に記載のMOR PAM化合物は、臨床的急性疼痛、炎症性疼痛の処理、及び他の様々な用途に有用である。或いは、慢性疼痛の状態では、炎症を起こした組織と炎症を起こしていない組織における内因性MORリガンドの生理学的放出の間に時間的及び空間的関係が存在することが知られている。従って、本明細書に開示されるMOR PAMは、慢性疼痛試験の方法をさらに提供し、この方法では、慢性疼痛の発症後の疼痛の測定値が減少し、及び/又は慢性疼痛の発生の強さの減少及び/又は遅延、及び/又は慢性疼痛の発症の遅延が起こるように薬力学的測定が設計されている。
【0232】
[0230] 医薬組成物及び製剤
調製及び使用のための様々な医薬組成物及び技術は、本開示に照らせば当業者に公知である。それらの投与に適した薬理学的組成物及び技術の詳細なリストについては、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed. 1985;Brunton et al.,“Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,”McGraw-Hill, 2005;University of the Sciences in Philadelphia (eds.),“Remington: The Science and Practice of Pharmacy,”Lippincott Williams & Wilkins, 2005;及びUniversity of the Sciences in Philadelphia (eds.),“Remington: The Principles of Pharmacy Practice,”Lippincott Williams & Wilkins, 2008などの文献を参照することができる。
【0233】
[0231] 医薬組成物は、1つ又は複数の生理学的に許容される担体又は賦形剤を用いる標準的な技術によって製剤することができる。製剤は、緩衝剤及び/又は防腐剤を含み得る。化合物及びそれらの生理学的に許容される塩及び溶媒和物は、吸入、局所、経鼻、経口、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、膀胱内、又は髄腔内)又は直腸を含む任意の適切な経路によって、1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含むビヒクルで投与するために製剤することができ、ビヒクルの割合は、化合物の溶解性及び化学的性質、選択される投与経路及び標準的な生物学的及び薬理学的慣習によって決定される。
【0234】
[0232] 追加の投与経路には、限定されるものではないが、経皮、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、心室内、関節包内、脊髄内、槽内、腹腔内、脳室内、髄腔内、鼻腔内、エアロゾル、坐剤、又は経口投与が含まれる。
【0235】
[0233] 医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、及び/又は他の担体と共に、本明細書に記載の有効量の1つ又は複数の化合物を含み得る。そのような組成物は、様々な緩衝液含有量(例えば、TRIS若しくは他のアミン、炭酸塩、リン酸塩、アミノ酸、例えば、グリシンアミド塩酸塩(特に生理学的pH範囲)、N−グリシルグリシン、ナトリウム、若しくはカリウムリン酸塩(二塩基性、三塩基性)など、TRIS−HCI、又はTRIS−アセテート)、pH、及びイオン強度の希釈剤;洗剤及び可溶化剤などの添加剤(例えば、界面活性剤、例えば、Pluronics、Tween 20、Tween 80、ポリソルベート80、Cremophor、ポリオール、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール、パラベンなど)、及び増量物質(例えば、糖、例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン若しくはデキストランなど);及び/又はポリマー化合物、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの粒子状調製物若しくはリポソームへの材料の組み込みを含み得る。ヒアルロン酸も使用することができる。
【0236】
[0234] そのような組成物を使用して、本明細書に記載の化合物の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでのクリアランス速度に影響を与えることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990, Mack Publishing Co., Easton, Pa. 18042) pages 1435-1712を参照されたい。組成物は、例えば、液体形態、又は凍結乾燥形態などの乾燥粉末に調製することができる。そのような組成物を投与する特定の方法は、以下に記載されている。
【0237】
[0235] 本明細書に記載の製剤に緩衝剤を含める場合、緩衝剤は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、又はそれらの混合物から選択することができる。緩衝剤はまた、グリシルグリシン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸ナトリウム、又はそれらの混合物であり得る。薬学的に許容される防腐剤が、本明細書に記載の化合物の1つの製剤中に含められる場合、防腐剤は、フェノール、m−クレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、2−フェノキシエタノール、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、2−フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサール、又はそれらの混合物から選択することができる。防腐剤はまた、フェノール又はm−クレゾールであり得る。
【0238】
[0236] 「薬学的に許容される」及び「治療的に許容される」という用語は、生理学的に許容可能であり、好ましくは、対象(例えば、ヒト)に投与された場合に胃の不調及びめまいなどのアレルギー又は同様の有害な反応を典型的には生じさせない分子実体及び組成物を指す。
【0239】
[0237] いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、限定されるものではないが、吸入、局所、経鼻、経口、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、膀胱内、又は髄腔内)又は直腸を含む任意の適切な経路によって、1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含むビヒクルで投与することができ、ビヒクルの割合は、化合物の溶解性及び化学的性質、選択される投与経路及び標準的な慣習によって決定される。本明細書に記載の化合物の投与は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して行うことができる。例えば、投与は、経皮、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、心室内、関節包内、脊髄内、槽内、腹腔内、脳室内、髄腔内、鼻腔内、エアロゾル、坐剤、又は経口投与であり得る。本明細書に記載の化合物の医薬組成物は、注射の投与用、又は経口、肺、鼻、経皮、若しくは眼の投与用であり得る。
【0240】
[0238] 例示的な製剤には、限定されるものではないが、ミセル、リポソーム、又は薬物放出カプセル(徐放用に設計された生体適合性コーティング内に含められた活性剤)にカプセル化された製剤を含む、非経口投与、例えば、肺内、静脈内、動脈内、眼内、頭蓋内、髄膜下、又は皮下投与に適した製剤;摂取可能な製剤;局所使用、例えば、点眼薬、クリーム、軟膏、及びジェル用の製剤;並びに吸入剤、エアロゾル、及びスプレーなどの他の製剤が含まれる。本開示の組成物の投与量は、処置の必要性の程度及び重大度、投与される組成物の活性、対象の一般的な健康、及び当業者に周知の他の考慮事項に応じて変化することになる。
【0241】
[0239] 追加の実施形態では、本明細書に記載の組成物は局所的に送達される。局所送達は、非全身的な組成物の送達を可能にし、それによって、全身性送達と比較して、組成物の体内負荷量が減少する。そのような局所送達は、例えば、限定されるものではないが、ステント及びカテーテルを含む様々な医学的に植え込まれた装置の使用を通じて達成することができる、又は吸入、注射、若しくは外科手術によって達成することができる。ステント及びカテーテルなどの医療機器に所望の薬剤をコーティングする、植え込む、埋め込む、及び他の方法で取り付けるための方法は、当技術分野で確立されており、本明細書で企図されている。
【0242】
[0240] 経口投与の場合、本明細書に記載の化合物の医薬組成物は、カプセル又は錠剤などの単位剤形に製剤することができる。錠剤又はカプセルは、結合剤、例えば、プレゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、薬学的に許容される賦形剤;充填剤、例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、又はリン酸水素カルシウム;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ;崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム;又は湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを用いた従来の手段によって調製することができる。
【0243】
[0241] 錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングすることができる。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップ、又は懸濁液の形態をとることができる、又は使用前に水又は他の適切なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することができる。そのような液体調製物は、薬学的に許容される添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化食用脂肪;乳化剤、例えば、レシチン又はアカシア;非水性ビヒクル、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は分別植物油;及び防腐剤、例えば、メチル若しくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸塩又はソルビン酸を用いた従来の手段によって調製することができる。調製物はまた、適宜、緩衝塩、香味料、着色剤、及び/又は甘味料を含み得る。必要に応じて、経口投与用の調製物を適切に製剤して、活性化合物の放出を制御することができる。
【0244】
[0242] 本明細書に記載の化合物はまた、プロドラッグと呼ばれる誘導体を含み得、プロドラッグは、日常的な操作又はインビボのいずれかで、修飾が除去される(例えば、切断される)ように、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製して、親化合物を再生することができる。プロドラッグの例には、化合物のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基に付加された1つ又は複数の分子部分を含み、且つ患者に投与されるとインビボで切断されて、それぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基を形成する本明細書に記載の本発明の化合物が含まれる。プロドラッグの例には、限定されるものではないが、本明細書に記載の化合物中のアルコール及びアミン官能基の酢酸塩、ギ酸塩、及び安息香酸誘導体が含まれる。プロドラッグの調製及び使用は、例えば、共に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、T. Higuchi et al.,“Pro-drugs as Novel Delivery Systems,”Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series、及び“Bioreversible Carriers in Drug Design,”ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987で議論されている。
【0245】
投与量
[0243] 本明細書に記載の化合物は、OR−リガンド相互作用によって全体的又は部分的に媒介される1つ又は複数の疾患及び障害を予防、処置、又は制御するために、治療有効量で対象に投与することができる。化合物はまた、疼痛の軽減、鎮痛の誘導、侵害受容の低減のため、及び/又は内因性若しくは外因性オピオイドの効果を増強するために、単独で又は他の物質と組み合わせて投与することができる。本明細書に記載の化合物の1つ又は複数を含む医薬組成物は、対象において効果的な保護、治療、又は鎮痛反応を誘発するのに十分な量で患者に投与することができる。これらのいずれかを達成するのに十分な量は、「治療有効量」として定義される。治療有効量は、使用される特定の化合物の有効性、及び対象の状態、並びに処置される領域の体重又は表面積によって決定される。用量の量はまた、特定の対象における特定の化合物又はベクターの投与に伴うあらゆる副作用の存在、性質、及び程度によって影響を受け得る。
【0246】
[0244] 化合物の毒性及び治療効果は、細胞培養物又は実験動物における標準的な製剤手順によって、例えば、LD
50(母集団の50%に対して致死量)及びED
50(母集団の50%で治療に有効な用量)を決定することによって決定することができる。毒性効果と治療効果の用量比は治療指数であり、LD
50/ED
50の比として表すことができる。いくつかの実施形態では、大きな治療指数を示す化合物が使用される。有毒な副作用を示す化合物を使用することもできるが、正常細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を低減するために、そのような化合物が罹患組織の部位を標的とする送達システムを設計するように注意する必要がある。
【0247】
[0245] 細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを使用して、ヒトで使用するための投与量範囲を決定することができる。いくつかの実施形態では、そのような化合物の投与量は、ED
50を含み、且つ毒性をほとんど又は全く示さない循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形及び投与経路、並びに対象の状態を含む他の因子に応じて、この範囲内で変動し得る。本明細書に記載のどの化合物でも、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。細胞培養で決定されたIC
50(症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで用量を決定することができる。そのような情報を使用して、ヒトの有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる。一般に、モジュレーターと同等の用量は、典型的な対象では約1ng/kg〜10mg/kgである。特定の実施形態では、用量レベルは、10ng/kg〜1mg/kgであり;他の実施形態では、100ng/kg〜0.1mg/kgであり;他の実施形態では、1μg/kg〜10μg/kgである。追加の実施形態では、本明細書に記載の化合物の用量範囲は、1〜100ng/kg、又は10〜1,000ng/kg、又は0.1〜10μg/kg、又は10〜100μg/kg、又は0.1〜1mg/kg、又は1〜10mg/kgである。
【0248】
[0246] 本明細書に記載の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩の投与の量及び頻度は、対象の年齢、状態、及び体格、並びに処置される症状の重症度などの因子を考慮した主治医の判断に従って調節される。通常の知識を有する医師又は獣医師は、状態の進行を防止する、進行に対抗する、又は進行を阻止するのに適した化合物の有効量を容易に決定及び処方することができる。一般に、有効量は、0.001mg/kg〜10mg/kg体重、特に0.01mg/kg〜1mg/kg体重であろうと考えられる。必要な用量を、1日を通して適切な間隔で2、3、又は4以上のサブ用量として投与することが適切であり得る。前記サブ用量は、例えば、0.01〜500mg、特に単位剤形当たり0.1mg〜200mgの活性成分を含む単位剤形として製剤することができる。
【0249】
医学的使用
[0247] 本明細書に記載の組成物は、例えば、免疫機能障害、炎症、食道逆流症、神経学的状態、精神的状態、泌尿器科的状態、性的機能不全、及び生殖状態などの疼痛又は疼痛関連障害の処置に有用である。本明細書に記載の組成物はまた、薬物及びアルコール乱用のための薬、胃炎及び下痢を処置するための薬剤、心血管作動薬、及び呼吸器疾患や咳を処置するための薬剤としても有用である。
【0250】
[0248] いくつかの実施形態では、疼痛を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ又は複数の化合物は、疼痛を処置するために対象に投与される。いくつかの実施形態では、疼痛は、術後の疼痛であり得る。いくつかの実施形態では、疼痛は、癌によって引き起こされる。追加の実施形態では、疼痛は、化学療法によって引き起こされる(化学療法誘発性神経因性疼痛、CINP)。いくつかの実施形態では、疼痛は、炎症に関連している(即ち、炎症性疼痛)。いくつかの実施形態では、疼痛は神経因性疼痛である。いくつかの実施形態では、疼痛は、外傷、例えば、限定されるものではないが鈍的外傷によって引き起こされる。追加の実施形態では、疼痛は、内分泌の不均衡に起因し得、例えば糖尿病に起因する疼痛である。
【0251】
キット
[0249] 本開示の別の態様は、対象へのMOR PAMの投与を行うためのキットに関する。一実施形態では、キットは、1つ又は複数の別個の医薬製剤中に、適切に(例えば、医薬担体中に)製剤された1つ又は複数のMOR PAMを含む組成物を含む。キットはまた、組成物を投与するための装置及び/又は使用説明書を含み得る。
【実施例】
【0252】
実施例1:受容体活性化アッセイ
[0250] OR媒介シグナル伝達を刺激する化合物の能力は、OR媒介シグナル伝達又はOR活性、又はそのようなシグナル伝達若しくは活性の欠如を検出するための当技術分野で公知の任意のアッセイを使用して測定することができる。「OR活性」とは、シグナルを伝達するORの能力を指す。このような活性は、例えば、異種細胞で、OR(又はキメラOR)をアデニル酸シクラーゼなどの下流エフェクターに結合することによって測定することができる。
【0253】
[0251] 受容体活性に対するMOR PAM及びMOR SAMの効果を、PathHunter酵素相補性アッセイ技術(DiscoveRx, CA)を用いてアッセイした。利用する技術の説明は次の通りである。
【0254】
[0252] β−アレスチン経路:PathHunter β−アレスチンアッセイは、機能的レポーターとしてβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)を用いる、Enzyme Fragment Complementation(EFC)と呼ばれるDiscoveRxによって開発された技術を使用して、均一系非イメージングアッセイフォーマットでGPCRの活性化をモニタリングする。酵素は、細胞内で融合タンパク質として発現される2つの不活性な相補部分(Enzyme AcceptorのEAとEnzyme DonorのED)に分割される。EAはβ−アレスチンに融合し、EDは目的のGPCRに融合する。GPCRが活性化され、β−アレスチンが受容体に動員されると、ED及びEAの補完が生じ、化学発光PathHunter検出試薬を使用して測定されるβ−gal活性が回復する。
【0255】
[0253] cAMP二次メッセンジャー経路:cAMPを介してシグナル伝達する安定なMORを発現する細胞株を使用して、この二次経路のリガンドの活性を定量化する。Hit Hunter(登録商標)cAMPアッセイは、機能的レポーターとしてβ−galを用いる均一系非イメージングアッセイフォーマットEFCにおいてGi及びGs二次メッセンジャーシグナル伝達を介したMORの活性化をモニタリングする。
【0256】
実施例2:選択した化合物のアロステリック活性
[0254] 正のアロステリックモジュレーターの同定を、EC
20濃度(40nM)のMOR特異的オルソステリックアゴニストであるエンドモルフィン−1の存在下で行った。この方法では、各試験化合物のEC
50、及び各試験化合物の最大応答パーセントを、β−アレスチン及びcAMP経路の両方について決定した。所与のシグナルバイアスの薬理学的効果を仮定することはできるが(Raehal et al. (2011) Pharmacol. Rev. 63:1001-1019)、どのバイアス比が臨床環境で最も有利であるかを確実に知ることは不可能である。MORに臨床的に使用される混合アゴニスト/部分アゴニスト薬が大幅に異なるリガンドバイアスを有するという証拠が、この問題を複雑にする。Kenakin 2015a, supra。ここに詳述されている化合物に関連する情報は、MOR PAMのリガンドバイアスの予測に利用できる最初の大きなデータセットである。濃度応答曲線の例を
図1A〜
図5Bに示す。
【0257】
[0255] これらのアッセイに基づいて、化合物を、いくつかのカテゴリー、例えば:(A)β−アレスチン対cAMPのEC
50の相対比(より大きい、等しい、又はより小さい)、(B)β−アレスチン有効性の最大応答(サイレント、部分的有効性、又は完全な有効性)、(C)cAMP有効性の最大応答(サイレント、部分的有効性、又は完全な有効性)、(D)(B)と(C)の相対比、及び(E)化合物間のβ−アレスチン対cAMPのEC
50値の絶対値(高い効力、中程度の効力、低い効力)に分類することができる。例示的なデータは、上記の表3及び表4に示している。化合物番号14(
図3A及び
図3B)は、β−アレスチン又はcAMPシグナル伝達のいずれかに関してMORのデュアルサイレントアロステリック調節を有する化合物の一例である。化合物番号44(表8)(
図1A及び
図1B)は、β−アレスチン動員及びcAMPシグナル伝達に対して同等の効果を有すると予想される中程度に強力な化合物の一例である。化合物番号219(表16)(
図2A及び
図2B)は、β−アレスチンよりもcAMPを介した優先的なシグナル伝達を有すると予想されるはずである中程度に強力な化合物の一例である。化合物番号216(表11)(
図4A及び
図4B)は、β−アレスチン動員に関して高いアロステリック調節能力及びcAMPシグナル伝達に関してサイレントアロステリック活性を示す化合物の一例である。化合物番号2(表12)(
図5A及び
図5B)は、β−アレスチン及びcAMPに対してほぼ同等のシグナル伝達を有すると予想されるはずである強力な化合物の一例である。
【0258】
実施例3:化合物によるアゴニスト活性の欠如
[0256] 本明細書に詳述される化合物が、純粋なPAM機構を示し、MORに対して残留アゴニスト又はアンタゴニスト活性を有していないことを実証するために、MOR PAM活性を示す5つの化合物(
図6A〜
図6Jを参照)を、アッセイ標的としてμオピオイド受容体サブタイプOPRM1を用いるβ−アレスチン動員アッセイを使用して、MORに対するアゴニスト及びアンタゴニスト活性の両方について試験した。エンドモルフィン−1のアゴニスト活性を陽性対照として使用した。表18に示す結果は、これらの5つの多様な化合物が、β−アレスチン動員によってアッセイしたように、MORに対してアゴニスト又はアンタゴニスト活性を示さないことを実証している。読み取り値としてcAMPシグナル伝達を使用してアゴニスト及びアンタゴニスト活性をアッセイした場合にも、同様の結果が得られた。
【0259】
【表37】
【0260】
実施例4:濃度依存性
[0257] EM1媒介cAMPシグナル伝達及びβ−アレスチン動員の濃度応答曲線(CRC)を、様々な濃度の化合物番号9(表10)の非存在下又は存在下で作成した。応答の完全な機能的アロステリックモデル(full functional allosteric model for response)(Kenakin (2005) Nature Reviews Drug Discovery 4:919-927;Price et al. (2005) Mol. Pharmacol. 68:1484-1495;Ehlert (2005) J. Pharmacol. Exp. Ther. 315:740-754)を、β−アレスチン及びcAMPのEM1媒介応答のDR曲線に適用した。このモデルは、モジュレーターの平衡解離定数(K
B)、アゴニスト親和性に対するモジュレーターの協同効果(α)、及びアゴニストの有効性に対するモジュレーターの協同効果(β)を推定する。
【0261】
[0258] 化合物9は、β−アレスチン(
図7A)及びcAMP(
図7B)アッセイの両方において、EM1の効力における濃度依存性の飽和左シフトを示した。β−アレスチンシグナル伝達に関して、化合物9は、EM1の親和性(α)を9倍に増加させ、EM1の有効性(β)を3倍に増加させ;その結果、70.8nMのβ−アレスチンのシグナルに関してPAM効果の有効な効力が得られる。cAMPシグナル伝達に関して、化合物9は、EM1の親和性(α)を2倍に増加させ、EM1の有効性(β)を1.8倍に増加させ;その結果、44nMのcAMPのシグナル伝達に関してPAM効果の有効な効力が得られる。
【0262】
実施例5:受容体の特異性
[0259] アロステリックリガンドは、オルソステリックリガンドと比較して、同じファミリー内のGPCRのサブタイプ間でより大きな選択性を示す可能性がある。この効果は、代謝型グルタミン酸受容体、アデノシン受容体、及びムスカリン受容体を含むいくつかのGPCRで実証されている。Birdsall, supra;Conn et al., supra;Gao et al., supra;Gasparini et al. (2002) Curr. Opin. Pharmacol. 2:43-49。この選択性は、同じ内因性リガンドに結合する密接に関連する受容体サブタイプ間のオルソステリック部位に対する進化抑制から生じるとの仮説が立てられている。この提案された進化抑制は、アロステリック結合部位に関しては存在しても存在しなくてもよい。
【0263】
[0260] 本明細書に開示されるMOR PAMが、MOR以外のオピオイド受容体に影響を与えるかどうかを試験するために、化合物60を、PKタグ付きδオピオイド受容体(U20S−DOR1)又はPKタグ付きκオピオイド受容体(U20S−KOR1)のいずれかを発現するU20S Path Hunter(登録商標)細胞を使用するβ−アレスチン動員アッセイで調べた。25μMまでの濃度では、化合物60は、EC
20濃度(0.8nM)のδオピオイド受容体アゴニストである[D−Ala2、D−Leu5]−エンケファリン(DADLE)の存在下で、DORシグナル伝達に対して有意な正のアロステリック効果を有していなかった(
図8A)。DORに対するDADLEのアゴニスト活性を、比較のために
図8Bに示す。
【0264】
[0261] 同様に、25μMまでの濃度では、化合物60は、EC
20濃度(0.8nM)のκオピオイド受容体アゴニストであるダイノルフィンAの存在下で、KORシグナル伝達に対して有意な正のアロステリック効果を有していなかった(
図9A)。KORに対するダイノルフィンAのアゴニスト活性を、比較のために
図9Bに示す。
【0265】
[0262] これらの結果は、これらのリガンドの効果がμオピオイド受容体の活性化を介して媒介され、化合物が、δ及びκオピオイド受容体よりもμに対して選択的であることを示す。
【0266】
実施例6:プローブ特異性
[0263] オピオイド受容体耐性及び最終的な依存は、オピエートへの長期の曝露に起因すると考えられている。これにより、細胞機能が変化し、同じ鎮痛効果を媒介するためにはアゴニストの用量を増やす必要性が生じる。この場合には、本明細書に開示されるアロステリックモジュレーターの1つの治療的有用性は、非内因性アゴニストの活性を調節する能力である。このアプローチを使用すると、MOR PAMの存在下での低用量の所与の外因性オピオイド(例えば、オキシコドン、フェンタニル)は、MOR PAMの非存在下でのより高い濃度の同じプローブの使用によって得られる鎮痛効果と同等の鎮痛効果を提供することになる。これにより、低用量のオピオイドを使用して望ましい治療効果を達成することができ;それによって、より高い治療指数が臨床環境の患者で可能になる。低用量のオピオイドの使用を可能にすることにより;オピオイド/MOR PAMの組み合わせの治療的使用は、耐性の発現を遅らせる又はなくすだけではなく、胃腸障害、呼吸抑制、及びオピオイド使用の他の望ましくない影響を軽減する可能性が高い。
【0267】
[0264] 異なる非内因性MORリガンドに対するMOR PAMの特異性(「プローブ特異性」)を試験するために、フェンタニル、モルヒネ、及びオキシコドンに対するOPRM1受容体のβ−アレスチン及びcAMP応答の最大応答及びEC
50濃度を同定するための濃度応答曲線(CRC)を作成し、EM1に対する応答と比較した。結果を表19に示す。
【0268】
【表38】
【0269】
[0265] 表19のデータを使用して、β−アレスチン動員及びアデニル酸シクラーゼ阻害によって測定される、MORの活性化のためのフェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、及びEM1のEC
20濃度を決定した。次に、EC
20濃度のフェンタニル、モルヒネ、及びオキシコドンをアゴニストとして使用した様々な試験化合物のCRCを作成して、EM1をアゴニストとして使用した場合の結果と比較した。代表的なデータを表20〜表23に示す。
【0270】
【表39】
【0271】
【表40】
【0272】
【表41】
【0273】
【表42】
【0274】
[0266] 表21及び表23に示すように、ほとんどの化合物は、β−アレスチン又はcAMP読み取り値のいずれかによって決定される非内因性合成オピオイドフェンタニルよりも内因性ペプチドEM1に対して高い選択性を示した。特に興味深いのは、非内因性アヘンベースのリガンドであるモルヒネ及びオキシコドンに対する同一のアロステリックモジュレーターの効果を比較したときに観察されたプローブ依存性である(表20及び表22)。これらのデータは、本明細書に開示されるPAMが、治療的使用のための様々な非内因性リガンドを使用するMORの選択的活性化に使用できるという考えを支持する。表20〜表23に示す結果は、リガンド依存性プローブ特異的PAM活性の直接的な証拠を提供し;従って、オピオイドの治療的鎮痛特性とそれらの耐性及び依存形成能とを区別するための、プローブ依存性PAMと組み合わせた低用量のオピオイドの使用の基礎を提供する。さらに、非内因性プローブよりも内因性ORアゴニストEM1に対して示される高レベルの特異性は、EM1特異的MOR PAMの乱用の可能性が低いことを示している。
【0275】
実施例7:選択的シグナル伝達バイアス
[0267] 外因性オピオイドの活性の正のアロステリック調節を提供する本明細書に開示されるMOR PAMの能力は、MOR PAMを外因性オピオイドと組み合わせて使用して耐性の発生の可能性を低減した鎮痛を提供できることを示す。MOR PAMが、受容体の活性化によって誘発される様々な下流プロセスの異なる効果も有しているのであれば、さらなる利点が実現されることになる;そのうちのいくつかは、オピオイド使用の副作用に寄与する。従って、治療効果を媒介するシグナル伝達経路を促進して、耐性、依存性、及び他の望ましくない効果を媒介するシグナル伝達経路を回避するように、オルソステリックアゴニストへの応答をバイアスすることができるMOR PAMが望ましいであろう。
【0276】
[0268] 従って、オキシコドン媒介性β−アレスチン動員及びオキシコドン媒介性アデニル酸シクラーゼ阻害の濃度応答曲線(CRC)を、様々な濃度の化合物6の非存在下又は存在下で作成した。応答の完全な機能的アロステリックモデルを適用して結果を分析する。Kenakin (2005), supra;Price et al., supra;Ehlert, supra。このモデルは、モジュレーターの平衡解離定数(K
B)、アゴニスト親和性に対するモジュレーターの協同効果(α)、及びアゴニスト有効性に対するモジュレーターの協同効果(β)を推定する。化合物6は、β−アレスチン動員(
図10A)及びアデニル酸シクラーゼ阻害(
図10B)の両方で、オキシコドンの効力において濃度依存的な飽和左シフトを示した。β−アレスチンシグナル伝達バイアスに関して、化合物6は、オキシコドンの親和性(α)を2倍に増加させ、オキシコドンの有効性(β)を80倍に増加させた。cAMPシグナル伝達バイアスに関して、化合物6は、オキシコドンの親和性(α)を4倍に増加させ、オキシコドンの効力(β)を4倍に増加させた。これにより、234nMのcAMPシグナルに対するPAM効果に有効な効力が生じる。
【0277】
実施例8:薬物動態
[0269] 治療薬として有用であるためには、MOR PAMは、MORの内因性及び非内因性オルソステリックリガンドを活性化できなければならないだけではなく、そのアロステリック効果を発揮するのに十分な濃度で体内に残存しなければならない。体内での残存性を試験するために、内因性オピオイドを鎮痛機構にリンクする圧倒的多数の利用可能なデータに基づいて、マウスモデルを選択した。化合物9(表10)は、CD−1マウスへの投与用に製剤した。群当たり2匹のマウスを試験し、各群に15mg/kgの化合物を投与した。化合物の濃度を、血液サンプルの質量分析によって測定した。化合物9は、腹腔内投与(intraparential dosing)又は皮下投与のいずれかを使用したインビボ試験に適した曝露及び半減期を有することが見出された(
図11A)。
【0278】
[0270] オピオイド受容体が後根神経節(DRG)及び脳に高度に集中していると仮定して(Martin-Schild et al., supra)、血漿、脳脊髄液、及び脳における濃度を検証するために末端薬物動態試験を行った。
図11Bは、化合物9が、皮下又は腹腔内投与のいずれかの1時間後に、脳及び血漿中に治療的に適切な濃度で残存することを示す。これらの結果は、生きている動物においてMOR PAMがEC
50濃度で残存し得ることを初めて示し、それによってさらなるインビボ試験が正当であることを証明している(EM1媒介MORアゴニズムでは、β−アレスチン動員に対する化合物9のRC
50が360nMであり、アデニル酸シクラーゼ阻害に対する化合物9のRC
50が590nMであることを示す表23を参照されたい)。
【0279】
[0271] 脊髄組織(DRGが位置する部位)に皮下注射した化合物9の濃度も評価した。化合物9は、ICRラットの皮下投与用に製剤し、脊髄組織(DRGを含む)と脳で良好な曝露を示すことが分かり、両方の関連組織でEC
50の範囲であることを示している(
図11C)。
【0280】
実施例9:MOR PAMによるEM1の抗侵害受容効果の増強
[0272] 急性疼痛モデルを使用して、単独で投与した(即ち、外因性オピオイドの非存在下での)MOR PAMの鎮痛効果を決定した。このアプローチは、慢性疼痛試験に必要となることになる、(1)特定のMOR PAM(基礎エンドモルフィン鎮痛を説明するため)及び(2)試験の測定ウィンドウと、疼痛誘発性傷害に応答したエンドモルフィン放出の薬物動態プロファイルとを一致させる複雑さを回避する。従って、傷害直後に薬力学的測定を行う急性疼痛モデルを使用した。これは、傷害の前に存在していた低い基礎レベルのEM1鎮痛を分離し、それによって傷害に応答した内因性オピオイドの放出の時間経過の寄与を排除すると期待された。Mousa et al., supra。
【0281】
[0273] 温水テールフリックアッセイ(warm water tail-flick assay)を、上記の理由から急性疼痛モデルとして選択した。外因的に適用されたEM1は、このモデルで強力な鎮痛効果を示すことが示されている。Przewlocka et al., (1999), supra。最初に、ラットへの髄腔内注射により適用された最小及び有効用量以下の用量のEM1を決定した。最小(3μg/kg)及び有効用量以下の用量(1μg/kg)のEM1で得られた値は、文献に記載されている値と一致している。Horvath (2000), supra。加えて、EM1の髄腔内注射に対する最大応答を観察するのに必要な時間、並びに抗侵害受容の基礎レベルに戻るのに必要な時間を決定し、同様に、文献の記載と一致することが分かった。
【0282】
[0274] 基礎EM1のみが存在する場合の化合物9の抗侵害受容効果の欠如を検証するために、化合物の皮下注射(15mg/kg)をCD1マウス(n=10)に行い、テールフリック潜時(tail-flick latency)(TFL)を投与の30分後にアッセイした。投与の30分後、抗侵害受容効果は観察されなかった(
図12A)。
【0283】
[0275] 次に、単独での抗侵害受容活性の欠如を考慮して、化合物9を、ICRラットにおいて外因的に与えられるEM1と共に、インビボMOR−PAM効果について試験した。これらの実験では、EM1のみによって誘発されるテールフリックの遅延と、最小及び有効用量以下の用量のEM1の髄腔内投与と組み合わせて化合物9をICRラットに投与したときのテールフリックの遅延とを比較した。髄腔内に投与されたEM1の様々な用量の経時的な抗侵害受容効果のデータを
図12Bに示す。EM1の最小有効用量(MED)(3μg)の経時的な抗侵害受容効果に対する2つの用量の化合物9の効果のデータを
図12Cに示す。化合物9は、テールフリックアッセイにおいて最適用量以下の用量のEM−1の効果を増強することが分かり;EM1の最小有効用量の抗侵害受容効果は、小分子MOR−PAMによって用量依存的に調節できることを実証している。この調節は、(a)エンドモルフィンが抗侵害受容効果を示すのに必要な時間の短縮、(b)観察される最大応答の増加、及び(c)応答の持続時間の延長として観察される。これらの影響は、次のいずれかが原因である可能性がある:T
on[Endomorphin]、K
Elim[Endomorphin]、T
off[Endomorphin]、K
I[Endomorphin]、及び場合によっては追加の機構。
【0284】
[0276] EM1応答が弱まった、投与の80分後に啓蒙的な効果が観察された。具体的には、化合物9は、インビトロで観察されたように、エンドモルフィンの有効性に対するβ効果(即ち、最大応答の増加)を示した(
図7A及び
図7Bを参照)。化合物9のインビボ効果は、このPAM(
図7A及び
図7B)で得られたインビトロパラメーターによってかなりの類似性でモデル化することができる。具体的には、
図7Aでモデル化されたインビトロでのβ−アレスチンエンドモルフィン応答では、27のαβの積となり、インビボ効果(
図12C)は31.5のαβの積で一致した。
【0285】
[0277] 有効用量以下の用量のEM−1の抗侵害受容活性に対する化合物9の効果も評価した。有効用量以下の用量のEM1(1μg)の経時的な抗侵害受容効果に対する化合物9の2つの用量の効果のデータを
図12Dに示す。この結果は、化合物9が有効用量以下の用量のオピオイドの効果も増強することを示す。これらの結果は、有効用量以下の用量のエンドモルフィン−1の抗侵害受容効果が、小分子MOR PAMによって用量依存的に調節され得ることを示す。この調節は、(a)エンドモルフィン−1がその抗侵害受容効果を示すのに必要な時間の短縮、(b)観察される最大応答の増加、及び(c)応答の持続時間の延長として観察される。サブタイプ選択的MOR PAMを用いて、治療用量以下の内因性リガンドを用量及び時間依存的に補助する能力は、急性及び慢性疼痛状態におけるMOR PAMの使用の臨床的実行可能性に対して重要な意味を持つ。
【0286】
[0278] エンドモルフィン活性に対する化合物9の正のアロステリック効果は、インビトロで観察されたように、化合物9によって誘導されるエンドモルフィン効力の増加(即ち、β値の増加)と一致する(
図7A及び
図7B)。この効果は、前述のように、低レベルの応答を増加させるという点で価値がある。しかしながら、すべてのPAMの全体的な親和性は、共結合リガンドに依存し、αの大きさにも依存するため、親和性効果(α値)も重要である。Kenakin (2012) Brit. J. Pharmacol. 165:1659-1669。化合物9のαが1よりも大きいという事実は、エンドモルフィンの存在下で、化合物9が脳内で適度に高い親和性でMORに結合することを示す。これは、アロステリックエネルギーの互恵的効果によるものである。つまり、化合物9がEM1の親和性を高めると、EM1も同様に、化合物9の受容体の親和性を高める。化合物9の正のβ効果は、PAM誘導性の有効性の変化が比類なく強力であることを示しているため、特に有益であり得る。
【0287】
実施例10:活性のスイッチング
[0279] GPCRのアロステリックモジュレーターは、しばしば、化学系内で「活性のスイッチング」を示し得ることが観察されている:これは、その化学構造へのわずかな変化により、化合物がPAMから負の(NAM)又はサイレント(SAM)アロステリックモジュレーターに変わったときに起こる。活性のスイッチングに伴って観察されたPAMの有効性の喪失は、結合親和性の喪失、又はPAMからNAM若しくはSAMへの機能的スイッチングが原因であり得る。表24に例を示す。
【0288】
【表43】
【0289】
実施例11:EM2活性に対するEM1特異的MOR PAMの活性
[0280] EM1及びEM2は非常に類似した構造及び活性を有するが、関連する組織で異なる濃度を有するため、EM2活性に対してEM1特異的MOR PAMSの活性を評価する必要がある。3つの例示的な化合物の濃度応答曲線(CRC)を得て、EM1に対するβ−アレスチン及びcAMP応答の最大応答及びEC
20濃度を明らかにした(上記の表23を参照)。次に、これらのアッセイを使用して、EM2活性に対するこれら3つの化合物の効果を評価した。このデータを表25に示す。見て分かるように、化合物は、EM2に対する効力を維持し、EM1と比較して高いシグナルバイアスを有する(上記の表23を参照)。これらの結果に基づいて、EM2染色の強度と本明細書に記載のCCI誘発性神経因性疼痛の病因との間の直接的な相関(例えば、実施例13を参照)をEM2 MOR PAMを使用して調節することができる。
【0290】
【表44】
【0291】
実施例12:炎症性疼痛
[0281] 炎症性傷害時に、体は、後根神経節(DRG)から損傷部位にMORを輸送することが知られている(Stein & Machelska, supra; (Stein et al. (1993) Lancet 342:321-324. このMORの再局在化と同時に起こる、内因性オピオイドペプチドの輸送は、恐らく白血球を介して時間及び空間依存的に発生すると考えられている(Przewlocki et al. (1992), supra;Rittner et al., supra;Stein et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5953-5939;Martin-Schild et al., supra。これらの白血球のいくつか(CD45
+3E7)は、EM1及びEM2を特異的に輸送することが示されており、非炎症組織と比較して炎症組織でアップレギュレートされる。Mousa et al., supra。
【0292】
[0282] マウスモデルにおける炎症性疼痛の軽減に対するMOR−PAMの有効性を試験するために、50〜150μlの完全フロイントアジュバントを足底内注射によって足に導入し;これは、腫張及び機械的痛覚過敏を誘導する。炎症が生じてから、15mg/kgのMOR PAM(例えば、化合物9)を皮下注射によって動物に導入する。MOR PAMの投与前後の様々な時点で、例えば、von Frey装置又はRandal & Selitto装置を用いて、例えば、機械的圧力による足の引き抜きによって疼痛レベルを評価する。例えば、Martinov et al. (2013) J. Vis. Exp. 82:51212を参照されたい。MOR PAMの投与後、疼痛応答は減少し、その後の時点でさらに減少している。
【0293】
[0283] 炎症状態では、さらなる外因性ストレスがEM1を放出し得ることが示されている。これにより、同側の足と対側の足で痛覚過敏から痛覚鈍麻に切り替わることが示されている。Rittner et al., supra。従って、さらなる試験では、炎症の誘発後、げっ歯類は、基礎レベル超のEM1の放出を引き起こすためにストレスにさらされ、MOR PAM(例えば、化合物9)が投与される。これらの条件下では、痛覚鈍麻は、増大し、かつ、より低い内因性ストレスレベルで起きる。
【0294】
[0284] 追加の実験では、化合物9などのMOR PAMを、機械的痛覚過敏の前に投与し、疼痛応答を、機械的痛覚過敏の誘発後の様々な時点で評価する。疼痛応答を、MOR PAMの事前投与を受けていない、機械的痛覚過敏にさらされた動物と比較する。機械的痛覚過敏の誘発後は常に、MOR PAMが投与された動物はより低い疼痛応答を示す。
【0295】
実施例13:神経因性疼痛
[0285] 末梢神経損傷から生じる疼痛は、重度の障害であり、深刻な社会的影響を有する。神経因性疼痛(NP)は、臨床的処置が不十分であり、社会的に非常に重要な満たされていない医療ニーズである。Williams & Christo (2009)“Pharmacological and interventional treatments for neuropathic pain.”In M. Dobretsov, & J. Zhang, Mechanisms of Pain in Peripheral Neuropathy (pp. 295-375). Kerala, India: Research Signpost。
【0296】
[0286] 神経の慢性狭窄損傷(CCI)の動物モデルでは、オピオイド含有白血球の動員及びMOR密度の増加が損傷部位で起こることが示されている。Vasudeva et al. (2014) PLoS One 9:e90589;Truong et al., supra;Stein & Machelska, supra。CCIに応答して動員される白血球のいくつかは、内因性オピオイドを輸送することが示された。Celik et al. (2016) Brain, Behavior and Immunity 57:227-242。コルチコトロフィン放出因子(又は他の物質)への曝露時のこれらの白血球の活性化は、通常は神経因性疼痛に伴う機械的痛覚過敏を取り除く内因性オピオイドの放出を引き起こすとの仮説が立てられている。Labuz et al. (2010) Brain, Behavior and Immunity 24:1045-1053;Celik et al. (2013) Brain, Behavior and Immunity 29:S2-S9。さらに、EM2染色の強度とCCI誘発性神経因性疼痛の病因との直接的な相関が示されている(Smith et al. (2001) Neuroscience 105:773-778。加えて、神経因性疼痛の動物モデルでは、外因的に適用される内因性オピオイドが重要な効果を有するというかなりの前例が存在する(Horvath, supra;Przewlocka et al. (1999a), supra)。
【0297】
[0287] 例えば、脊椎圧挫(spinal crushing);Bennett、Xie、又はSetzlerモデル;慢性狭窄損傷(CCI);坐骨神経挫滅モデル;脊髄神経結紮;及びレーザー誘起坐骨神経損傷を含む、神経因性疼痛のための多くの動物モデル系が存在する。例えば、Jaggi et al. (2009) Fund. & Clin. Pharmacology 25:1-28を参照されたい。神経因性疼痛の緩和に対するMOR−PAMの有効性を試験するために、15mg/kgのMOR PAM(例えば、化合物9)を、これらのモデル系の1つ又は複数における神経因性疼痛の誘発の前、同時、又は後に動物(例えば、マウス又はラット)に導入する。MOR PAMの投与は、皮下注射又は経口投与(例えば、動物の餌又は水)による。MOR PAMの投与後の様々な時点で、疼痛レベルを評価する。MOR PAMの投与後、疼痛応答は減少し、その後の時点でさらに減少している。
【0298】
[0288] 追加の実験では、動物を、神経因性疼痛を誘発する処置に供し、MOR PAMが投与された動物の疼痛応答を、MOR PAMが投与されていない動物の疼痛応答と比較する。すべての時点で、MOR PAMを投与された動物はより低い疼痛応答を示している。
【0299】
[0289] さらなる実験では、神経損傷時のMOR PAMの予防的添加は、神経因性疼痛の発症又はその強さを遅延させる、又は改善する。
【0300】
実施例14:化学療法誘発性神経障害
[0290] 化学療法から生じる疼痛(化学療法誘発性神経因性疼痛、CINP)は、一般的であり(例えば、卵巣癌のためにシスプラチン又はパクリタキセルを投与されている女性の90〜100%がCINPの症状を示すと推定される)、癌治療の障害となる副作用であり得る。実際、痛みを伴う神経障害の発症は、多くの場合、腫瘍薬の用量制限基準である。これにより、しばしば、潜在的に治癒的又は症状を一時緩和する化学療法剤の用量低減又は中止のいずれかの限られた選択肢が患者に委ねられる。Kaley & DeAngelis (2009) Br. J. Haematology 145:3-14;Williams & Christo, supra。CINPの発生率及び重症度は、用量、処置サイクル数、治療期間などに直接関係している。
【0301】
[0291] CINPの動物モデルでは、脊髄レベルでの外因性EM−1及びEM−2の投与は、モルヒネの投与よりも強い鎮痛効果をもたらすことが示されている。Przewlocka et al. (1999a), supra;Grass et al. (2002) Neurosci. Letts. 324:197-200;Przewlocki et al. (1999b), supra。CINPの動物モデルで観察されたEM−2の脊髄濃度と機械的痛覚過敏の程度との間には線形相関があることが分かっている。Yang et al., supra;(Chen et al. (2015) Neuroscience 286:151-161。さらに、EM2様免疫反応性のレベルの低下が、DPP4のアップレギュレーションの結果であり、EM−2の濃度、従ってCINP媒介性機械的痛覚過敏の発現をDPP4阻害剤の予防的添加によって止めることができることが分かった。
【0302】
[0292] 上に示したEM2に対するMOR PAM効果(実施例11)と合わせて、CINPの軽減におけるEM2の関与を考慮して、MOR PAMSは、CINPの軽減のために使用される。この目的のために、上記のモデル系の1つ又は複数において、15mg/kgのMOR PAM(例えば、化合物9)を、化学療法剤の導入の前、同時、又は後に動物(例えば、マウス又はラット)に導入する。MOR PAMの投与は、皮下注射又は経口投与(例えば、動物の餌又は水)による。対照動物には、化学療法剤を投与せず;さらなる対照には、化学療法剤を投与するが、MOR PAMは投与しない。MOR PAMの投与後の様々な時点で、疼痛のレベルを評価する。MOR PAMの投与後、疼痛反応は減少し、その後の時点でさらに減少している。
【0303】
[0293] CINPの起こり得る寄与機構は、内因性オピオイド系が細胞毒性薬剤によって引き起こされる疼痛を管理できないことである。従って、DPP4阻害剤で内因性オピオイドのレベルを上昇させること、及び/又は内因性オピオイドの効力と持続時間を増加させることは、CINPの発症又は強さを遅延させる予防方法であり得る。これは、多くの細胞毒性薬剤で観察される用量制限毒性を変更することができ、従って、救命薬の投与に関連する疼痛から患者を救済する。化学療法に伴う生理学的ペプチダーゼのアップレギュレーションと一致するMOR PAMの適用は、内因性オピオイドの基礎レベルよりも高いレベルを使用して、機械的痛覚過敏を取り除くことができる。加えて、(EM1及びEM2の濃度を増加させるための)ペプチダーゼ阻害剤の作用と組み合わせたMOR PAMの使用は、機械的痛覚鈍麻をもたらし、神経因性疼痛の発症又は強さを遅延させる、又は改善する。
【0304】
実施例15:性機能障害
[0294] ホルモン及び神経伝達物質のレベルが行動に影響を与えることが示されているのと同様に、同様の効果が、内因性オピオイドで実証されている。従って、疼痛の改善に加えて、本明細書に開示される組成物及び方法はまた、MOR PAMを使用して、内因性リガンドの作用を介して疼痛及び/又はストレスを調節する体の能力を強化することによって、疼痛及び/又はストレスから生じる様々なさらなる状態(例えば、鬱病、不安など)に対処するためにも使用することができる。
【0305】
[0295] そのような状態の1つは、性機能障害である。研究により、オピオイドペプチドは、ヒトを含む哺乳動物の雄の交尾行動に関与していることが示されている。性行動に対するオピオイドの調節効果は、用量依存的であり、注入部位によって異なる。ヒトでは、急性オピオイド投与は、強い陶酔感をもたらすが、長期のオピオイド使用は性機能の低下と関連している。ヒト及び動物の性機能の低下は、限定されるものではないが挿入潜時の増加、マウンティング頻度の減少、及び挿入頻度の減少から明らかなように、長期のオピオイド乱用と関連している。様々な証拠は、性行動が内因性オピオイドを放出する生理学的刺激であることを示唆しており、その後の性行動を促進すること、並びに交尾及び射精の報酬特性を強化することの、2つの効果が起こり得ることを示唆している。体外から投与されたEM1は、マウスモデルにおける挿入潜時、マウンティング、及び挿入頻度に直接影響を与えることが示されている。Parra-Gamez et al. (2009) Physiology and Behavior 97:98-101。射精事象の強さを定量化することはできなかったが、この証拠は、性行動及び射精が内因性オピオイドの放出によって影響を受け得ることを示している。これにより、EM1が交尾に関連する報酬の側面に関与しているという一連の証拠が増加する。
【0306】
[0296] 雄の性行動におけるEM1の関与を考慮して、MOR PAMを使用して、特定のタイプの雄の性機能障害を処置することができる。性機能障害の軽減に対するMOR−PAMの効果を試験するために、性的に活発な異性のパートナーに紹介する前、同時、又は後に、15mg/kgのMOR PAM(例えば、化合物9)を雄又は雌の動物(例えば、マウス又はラット)に導入する。MOR PAMの投与は、皮下注射又は経口投与(例えば、動物の餌又は水)による。MOR PAMの投与後の様々な時点で、挿入潜時、マウンティング、及び挿入頻度を評価する。MOR PAMが投与された動物は、MOR PAMを投与されなかった動物よりも、挿入潜時が短く、マウンティング頻度が多く、挿入頻度が多くなっている。
【0307】
実施例16:胃腸通過
[0297] 胃腸通過の阻害は、急性及び慢性疼痛のオピオイド処置に関連する重大な副作用である。鎮痛を副作用から切り離す鎮痛剤を製造するための取り組みは、公衆衛生の進歩にとって重要である。例えば便秘、腹部収縮、及び下痢を含む腸の機能に影響を与える薬物関連の副作用は、多大な不快感及び疼痛を引き起こし得る。
【0308】
[0298] GI通過モデルは、腸機能に影響を及ぼして腸通過の阻害を引き起こす化合物を同定するように設計されている。オピオイド比較化合物であるモルヒネは、胃腸機能を阻害することが周知である。GI通過は、ボーラス経口投与された木炭が消化管を通過した距離を測定する腸輸送モデルである。便秘を引き起こすことがクリニックでは公知であるオピオイドは、木炭ボーラスの輸送を遅らせる。
【0309】
[0299] 陰性(ビヒクル)及び陽性(モルヒネ)対照と比較して、GI通過速度に対するMOR PAM化合物の効果を調べるために実験を行った。Sprague-Dawleyラットを、試験開始まで18時間絶食させた。モルヒネ(生理食塩水中、10mg/kg)、化合物9(5%DMSO中、15、30、60mg/kg:10%クレモフォールEL:85%H
2O)及びビヒクル(5%DMSO:10%クレモフォールEL:85%H
2O)を、木炭懸濁液の投与の1時間前に皮下投与した。木炭及びアラビアゴムを、10グラムの木炭:2.5グラムのアラビアゴム:100mLの水の比率で蒸留水に懸濁した。木炭懸濁液を、1mL/100g体重の用量でラットに強制経口(by lavage)投与した。木炭投与の20分後、ラットを屠殺し、小腸を摘出した。生理食塩水での洗浄の前後に胃の重さを量り、値を記録した。差(胃内容物)を計算した。小腸を伸ばし、木炭で覆われた距離を測定して記録した。通過率を、次の式を使用して各ラットについて計算した:(移動した木炭の距離/腸の長さ)×100。
【0310】
[0300]
図13に示すように、GI通過は、モルヒネ(10mg/kg)によって有意に減少した。対照的に、GI通過は、化合物9の投与後に変化しなかった。
図14に示すように、モルヒネ(10mg/kg)の投与後に胃重量が増加した。対照的に、MOR PAM化合物9の投与後は、胃重量は変化しなかった。これらの結果は、MOR PAM(15、30、60mg/kgの用量)がオピオイドのようなGI通過の障害を示さないという証拠を提供する。
【0311】
実施例17:呼吸抑制
[0301] 呼吸抑制は、急性及び慢性疼痛のオピオイド処置に関連する重大な副作用である。薬物関連の過剰摂取による死亡はしばしば、オピオイドの使用に伴って発生する呼吸抑制の作用である。鎮痛を副作用から切り離す鎮痛剤を製造するための取り組みは、公衆衛生の進歩にとって重要である。パルスオキシメトリは、呼吸抑制を評価するための信頼できる非侵襲的方法であることが実証されている。覚醒ラットの血中酸素飽和度を測定し、モルヒネを陽性対照として使用して比較する。
【0312】
[0302] 陰性(ビヒクル)及び陽性(モルヒネ)対照と比較して、酸素飽和レベルに対するMOR PAM化合物の効果を調べるために実験を行った。ベースラインパルスオキシメトリ測定後、Sprague-Dawleyラットにモルヒネ(生理食塩水中、10mg/kg)、化合物9(5%DMSO中、15、30、60mg/kg:10%クレモフォールEL:85%H
2O)又はビヒクル(5%DMSO:10%クレモフォールEL:85%H
2O)を経皮投与して、90分間検査した。血中酸素飽和度は、MouseOxオキシメータシステム(Starr Life Sciences, Holliston, MA)を用いて覚醒ラットで評価した。投与前の15分間及び投与後の90分間、5分ごとに最大5つのサンプルを測定した。各動物は、試験前の数日間、装置に慣らした。
【0313】
[0303]
図15に示すように、モルヒネ(10mg/kg)は、酸素飽和度の有意な減少をもたらした。比較すると、MOR PAM化合物9について評価した用量はいずれも、90分間の評価中のどの時点でもビヒクルと比較して酸素飽和度の低下をもたらさなかった。これは、MOR PAM化合物が、モルヒネなどのオピオイド化合物に通常は関連する呼吸抑制を誘発しなかったことを示す。これは、MOR PAMがオピオイドのような呼吸抑制を引き起こさないことを最初に実証している。