(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532235(P2021-532235A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】廃ゴム材料からの燃料製品の製造
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20211029BHJP
C10L 1/04 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
C10G1/10
C10L1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-504150(P2021-504150)
(86)(22)【出願日】2019年7月26日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月9日
(86)【国際出願番号】EP2019070266
(87)【国際公開番号】WO2020021104
(87)【国際公開日】20200130
(31)【優先権主張番号】18185720.2
(32)【優先日】2018年7月26日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521030364
【氏名又は名称】ヤンチャップ テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハーパー,ロバート デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ティンパニ,エドワード アレン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129BA07
4H129BB03
4H129DA03
4H129FA00
4H129NA21
(57)【要約】
廃ゴムからの燃料製品の抽出方法であって、廃ゴムを熱分解にかけて熱分解蒸気を生成する工程と;熱分解蒸気を凝縮工程にかけて45〜400℃の沸点範囲及び25℃よりも下の引火点を有する熱分解油を生成する工程と;次いで、55℃よりも上の引火点、140℃以上から始まる沸点範囲、990kg/m
3未満の15℃での密度、12以下の全酸価TAN、3000ppm未満のスチレン含有量、及び50ppm未満の有機ハロゲン(Clとしての)含有量を有する第1成分を有する留分と、大気圧下で75℃を超えない初留点、790kg/m
3超の15℃での密度、少なくとも1.25容積%のベンゼン含有量、10mg/100ml超の実在ガム(洗浄された)含有量、50mg/kg未満の有機ハロゲン(Clとしての)含有量、及び5.0未満の色を有する第2成分とを回収するために熱分解油を真空水蒸気ストリッピング工程にかける工程とを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃ゴムの熱分解とそれに続く結果として生じた油の分離とから得られる組成物であって、
ASTM D93手順Bに従って測定される55℃よりも上の引火点、
ASTM D86に従って測定される大気圧下で140℃以上から始まる沸点範囲、
ASTM D4052に従って測定される990kg/m3未満の15℃での密度、
ASTM D664に従って測定される12以下の全酸価(TAN)、
ガスクロマトグラフィーに従って測定される3000ppm未満のスチレン含有量、
及びIP510に従って測定される50mg/kg未満の有機ハロゲン(Clとしての)含有量
を有する組成物。
【請求項2】
ASTM D6866方法B(AMS)に従って測定されるように、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%の生物源炭素含有量を好ましくは有する、生物源炭素を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
IP391に従って測定されるように、少なくとも20%m/m、より好ましくは少なくとも35%m/m、最も好ましくは少なくとも50%m/mの全芳香族炭化水素含有量を好ましくは有する、芳香族炭化水素を含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
145℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、最も好ましくは170℃以上から始まる沸点範囲を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下、最も好ましくは220℃以下で始まる沸点範囲を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物がそれから誘導される前記廃ゴムが廃タイヤを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
燃料製品としての、好ましくは船舶用燃料成分としての請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項8】
廃ゴムの熱分解とそれに続く結果として生じた油の分離とから得られる組成物であって、
ASTM D86に従って測定される大気圧下で75℃を超えない初留点、
ASTM D4502に従って測定される790kg/m3超の15℃での密度、
ASTM D6839に従って測定される少なくとも1.25容積%のベンゼン含有量、
ASTM D381に従って測定される10mg/100ml超の実在ガム(洗浄された)含有量、
IP510に従って測定される50mg/kg未満の有機ハロゲン(Clとしての)含有量、
及びASTM D1500に従って測定される5.0以下の色
を有する組成物。
【請求項9】
ASTM D6866−16方法B(AMS)に従って測定されるように、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の生物源炭素含有量を好ましくは有する、生物源炭素を含有する請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ASTM D6839に従って測定されるように、少なくとも40%v/v、より好ましくは少なくとも45v/vの全芳香族炭化水素含有量を好ましくは有する、芳香族炭化水素を含有する請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
燃料製品としての請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
廃ゴムからの燃料製品の抽出方法であって、
(a)廃ゴムを熱分解にかけて熱分解蒸気を生成する工程;
(b)前記熱分解蒸気を凝縮工程にかけて45〜400℃の沸点範囲及び25℃よりも下、好ましくは18℃よりも下の引火点を有する熱分解油を生成する工程;
(c)前記熱分解油を0.85バールa未満の圧力で及び塔の最上部において140℃未満の温度での真空水蒸気ストリッピング工程にかけ、大気圧以上の下で140℃から始まる沸点範囲を有する、及び請求項1〜6のいずれか一項に記載の特性を有する第1成分と、大気圧下で75℃を超えない初留点を有する、及び請求項8〜10のいずれか一項に記載の特性を有する第2成分とを回収する工程
を含む方法。
【請求項13】
前記第1及び第2成分が一緒になって、前記真空水蒸気ストリッピング工程(c)から得られる全生成物の少なくとも98容積%を占める、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記真空水蒸気ストリッピング工程(c)の前に、前記凝縮熱分解油がその固形分を下げるために固形分除去段階に通される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱分解油の固形分が0.5重量%未満に下げられる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤなどの廃ゴムの熱分解から得られる組成物に、そのような組成物を含む燃料製品に及びまた燃料製品を製造するための廃ゴムの熱分解とそれに続く結果として生じた油の分離とを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム及びプラスチックなどの廃炭素質材料からガソリン及びディーゼルを調製するための多くの方法が知られている。例えば、米国特許第5,744,668号は、廃ゴム及び/又は廃プラスチックからのガソリン、ディーゼル及びカーボンブラックの製造方法であって、熱分解と、残存硫黄 窒素及び塩素の除去と、接触分解と、次いでガソリン、ディーゼル及び重質残留物留分を分離するための接触分解反応生成物の一部の分別との逐次段階を含む方法を開示している。重質残留物留分は、この場合に熱分解工程へリサイクルされるが、究極的にかなりの割合は、プロセスの終わりに残るであろうし;更に、残留留分の割合は、米国特許第5,744,668号に記載されている(一般に非経済的な)接触分解工程を行わないプロセスにおけるよりもはるかに大きいであろう。国際公開第90/14409号は、タイヤ由来の熱分解油からの化学物質の抽出方法であって、これらの油を分別蒸留にかけること及び範囲43〜204℃で沸騰する留分を回収すること、並びに次いで特定化学製品を単離する及び抽出するためにこの留分を更なる分別蒸留にかけることを含む方法を開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
我々は、タイヤなどの廃ゴム製品が、特に価値ある組合せの特性を有する製品を得るように処理できることを発見した。
【0004】
したがって第1態様において、本発明は、廃ゴムの熱分解とそれに続く分離とから得られる組成物であって、
ASTM D93手順Bに従って測定される55℃よりも上の引火点、
ASTM D86に従って測定される大気圧下で140℃以上から始まる沸点範囲、
ASTM D4052に従って測定される990kg/m
3未満の15℃での密度、
ASTM D664に従って測定される12以下の全酸価(TAN)、
3000ppm未満のスチレン含有量、
及びIP510に従って測定される50mg/kg未満の有機ハロゲン(Clとしての)含有量
を有する組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明の方法の好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のこの第1態様の組成物は、燃料製品としての、特に船舶用燃料成分としてのその使用を可能にする特定の組合せの特徴を有する。したがって、本発明の更なる態様は、燃料製品としての、好ましくは船舶用燃料成分としての上記の組成物の使用を含む。
【0007】
重質の黒色成分の存在のために、従来のゴム熱分解油は、色が黒色である。それらはまた低い引火点を有し、それは、適切な低引火点クラスの貯蔵及び輸送設備の使用を必要とする。しかしながら、低引火点クラス物質を運ぶための必要な安全状態を有するタンク、トランスポータ及び容器は、低引火点クラスの製品の大部分がクリアカラー色であるので、一般にクリアカラー色製品専用である。黒色製品がクリア燃料向けに設計された任意の容器に入れられる場合、引き続いて使用されるクリア製品の汚染を回避するために、その製品が排出された時点で費用のかかる洗浄プロセスが必要とされる。結果として、石油化学及び産業に役立つ大半のタンク、トランスポータ及び容器において低引火点の黒色製品を使用することは非経済的である。船舶用燃料部門は、費用のかかる使用後クリーニングの必要性なしに、黒色着色の物質を受け入れるタンク、トランスポータ及び容器を有するが、これらは一般に、低引火点グラス燃料に対する面倒な追加の安全性要件を遵守しておらず、だから一般に、低引火点クラス製品を受け入れることができない。
【0008】
本発明の第1態様の組成物の更なる特別な特徴は、元のゴム熱分解からの非常に高い沸点の黒色成分を含有するものの、その引火点が、より費用のかからない、高い引火点クラスの、黒色適合性船舶用燃料貯蔵及び輸送インフラにおいて輸送されることを可能にするのに十分に高いことである。これは、最大可能質量のゴム熱分解油を組成物へ組み入れることによって、製品の貯蔵及び輸送の費用を同時に著しく減らしながら、最適な経済的アウトプットを本プロセスのためにもたらす。
【0009】
この組成物の別の利点は、そのスチレン含有量が船舶用燃料としてのその使用を可能にするのに十分に低いことである:高レベルのスチレンは、ライン閉塞をもたらし得る、重合のリスクのために船舶用燃料中に許されない。その全酸価(TAN)もまた、それを船舶用燃料としての使用に好適なものするのに十分に低い。高い全酸価を有する組成物は、エンジンにおいて望ましくない腐食性であり得るし、後続の中和は、沈殿物形成のリスクのために燃料中に望ましくない、塩を生成し得る。低レベルのハロゲン、特に塩素もまた、塩素が望ましくなく、且つ、燃料製品において厳しく規制されているので重要である。
【0010】
本発明のこの態様の組成物の更なる特徴は、ASTM D86の蒸留条件下での低いパーセント回収率レベルである。本組成物は、ASTM D86に従った蒸留試験にかけられた場合に90容積%未満のパーセント回収率を好ましくは有し;より好ましくは、回収率は、80容積%未満であり、より好ましくは更に、それは70容積%未満であり、最も好ましくは、それは60容積%未満である。従来のディーゼル燃料は、より高い、典型的には約97容積%以上の回収率レベルを典型的には有する。
【0011】
燃料としての商業的利用に好適であり、且つ、同時に、普通は商業的価値がほとんどない高レベルの黒色生成物を含有しながら、上記の要件の全てを満たす燃料を製造することが可能であることは特に意外である。
【0012】
本組成物は、廃ゴムの熱分解とそれに続く分離とから完全に得られるが、本発明は、ブレンドの少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%が廃ゴムから及び残りが化石燃料源から得られるブレンドを含む組成物をその範囲内に含む。
【0013】
ブレンドの一部であろうとなかろうと、本発明のこの態様の組成物は、生物源炭素を含有し、ASTM D6866方法B(AMS)に従って測定されるように、少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも40%の生物源炭素含有量を好ましくは有する。生物源炭素含有量は、「再生可能な」(バイオマス又は動物副産物)源対石油(又はさもなければ化石)源からの百分率炭素である。参考のために、100%生物源炭素は、材料が植物又は動物副産物から完全に供給されることを示し、0%生物源炭素は、材料が植物又は動物からのいかなる炭素も含有しなかったことを示し:中間の値は、天然源炭素と化石源炭素との混合物を表す。
【0014】
それが廃ゴムに由来することの結果として、本発明のこの態様の組成物はまた、芳香族炭化水素(ベンゼン様の環を持っている有機化合物)を含有する。典型的には、全芳香族炭化水素含有量は、IP391試験方法に従って測定されるように、少なくとも20%m/m、好ましくは少なくとも35%m/m、より好ましくは少なくとも50%m/mである。
【0015】
本発明のこの態様の組成物は、980kg/m
3未満の15℃での密度を有し得る。密度は、ASTM D4052に従って測定される。
【0016】
本発明の組成物は、大気圧下で145℃以上から始まる沸点範囲を有し得、これは、任意選択的に150℃以上、160℃以上又は170℃以上さえであり得る。
【0017】
本発明のこの態様の組成物の沸点範囲は、大気圧下で250℃を超えない温度から始まり得る。或いはまた、それは、240℃、若しくは230℃、若しくは220℃、若しくは210℃、若しくは200℃、若しくは190℃を超えない、又は180℃さえを超えない温度から始まり得る。
【0018】
本発明のこの態様の組成物は、好ましくは、10以下、より好ましくは8以下、最も好ましくは7以下のTANを有する。TANは、ASTM D664に従って測定される。
【0019】
本発明のこの態様の組成物は、好ましくは、2500ppm未満、より好ましくは2000ppm未満のスチレン含有量を有する。スチレン含有量は、ガスクロマトグラフィーによって測定される。
【0020】
本発明のこの態様の組成物は、好ましくは、40mg/kgよりも下、より好ましくは30mg/kgよりも下の有機ハロゲン含有量(Clとしての)を有する。有機ハロゲン含有量は、IP510に従って測定される。
【0021】
その方法が以下に考察される、上記の組成物の製造方法は、また、更なる組成物を製造する。したがって、本発明の第2態様は、廃ゴムの熱分解とそれに続く結果として生じた油の分離とから得られる組成物であって、
ASTM D86に従って測定される大気圧下で75℃を超えない初留点、
ASTM D4502に従って測定される790kg/m
3超の15℃での密度、
ASTM D6839に従って測定される少なくとも1.25容積%のベンゼン含有量、
ASTM D381に従って測定される10mg/100ml超の実在ガム(洗浄された)含有量、
IP510に従って測定される50mg/kg未満の有機ハロゲン(Clとしての)含有量、
及びASTM D1500に従って測定される5.0以下の色
を有する組成物を提供する。
【0022】
本発明の第1態様の組成物と同じように、本発明のこの第2態様の組成物もまた、生物源炭素を含有し、ASTM D6866方法B(AMS)に従って測定されるように、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の生物源炭素含有量を好ましくは有する。
【0023】
本発明のこの第2態様の組成物もまた、芳香族炭化水素を含有する。典型的には全芳香族炭化水素含有量は、ASTM D6839−18に従って測定されるように、少なくとも40%v/v、より好ましくは少なくとも45%v/vである。
【0024】
本発明のこの第2態様の組成物は、800kg/m
3超の15℃での密度を有し得る。
【0025】
本発明のこの第2態様の組成物は、大気圧下で70℃を超えない初留点を有し得る。
【0026】
本発明のこの第2態様の組成物は、少なくとも1.5容積%のベンゼン含有量を有し得る。
【0027】
本発明のこの第2態様の組成物は、30mg/100ml超の実在ガム(洗浄された)含有量を有し得る。
【0028】
本発明のこの第2態様の組成物は、3.0以下の色を有し得る。
【0029】
本発明の更なる態様は、燃料製品としての本発明の第2態様の上記の組成物の使用を含む。
【0030】
上に述べられたように、本発明の両態様の組成物は、同じ方法で得られる。したがって、本発明の更なる態様は、廃ゴムからの燃料製品の抽出方法であって、
(a)廃ゴムを熱分解にかけて熱分解蒸気を生成する工程;
(b)熱分解蒸気を凝縮工程にかけて45〜400℃の沸点範囲及び25℃よりも下、好ましくは18℃よりも下の引火点を有する熱分解油を生成する工程;
(c)熱分解油を0.85バールa未満の圧力で及び塔の最上部において140℃未満の温度での真空水蒸気ストリッピング工程にかけ、大気圧以上の下で140℃から始まる沸点範囲を有する、及び本発明の第1態様の組成物について上で定義された特性を有する第1成分と、大気圧下で75℃を超えない初留点を有する、及び本発明の第2態様の組成物について上で定義された特性を有する第2成分とを回収する工程
を含む方法を提供する。
【0031】
好ましくは、本発明の方法に使用される及び本発明の組成物がそれから誘導される廃ゴムは、廃タイヤを含む。これらは、通常、使用の前に細断されるか又はシュレッダーにかけられる。
【0032】
熱分解工程(a)に関して、そのようなプロセスは、当技術分野において周知である。好ましいプロセスは、400〜550℃、好ましくは450〜500℃、より好ましくは460〜480℃の温度で操作される。このプロセスは、0.1バール以下、より好ましくは0.02バール以下の大気圧に対する負圧で好ましくは操作される。反応器での滞留時間は、典型的には1〜4時間、好ましくは2〜3時間である。炭素質固形分は、熱分解反応器の底部から排出され、ガス及び炭化水素蒸気を含む残りの熱分解生成物は、次の凝縮段階へ通される。
【0033】
凝縮段階(b)において、任意の好適な方法が用いられ得る。1つの好ましい方法では、第1段階において生の熱分解油生成物は、好ましくは80℃よりも下に冷却され、その後、熱い熱分解ガス及び蒸気生成物が下降する油シャワーを通って上方へ流れる垂直の凝縮器単位装置を通して油シャワーとして噴霧される。油は、蒸気流から凝縮し、残りの蒸気及びガスは、残りの油を凝縮させるために第2凝縮器に通される。凝縮した油流は、組み合わせられて、45〜400℃の沸点範囲及び18℃よりも下の引火点を有する熱分解油を形成し、それは次いで本発明の2つの組成物へ分離され得る。
【0034】
熱分解油は、主としてカーボンブラックを含む、3〜5%の懸濁固体粒子を典型的には含有する。分離段階の前に、熱分解油中の固体レベルは、0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下に下げられることが好ましい。これは、後続の分離段階中に炭素粒子の周りに生じる安定したピッカリングエマルジョンのリスクを減らすためである。懸濁固形分の除去技術は、当技術分野において周知であり、固形分を必要とされるレベルまで下げることができる任意のプロセスが用いられ得る。
【0035】
懸濁固形分のレベルを下げることが必要とされる場合に、それらは、1つ以上の分離工程で除去され得、2つ以上の工程が好ましい。好ましい固形分除去段階では、第1工程において熱分解油は、固形分レベルを1.5重量%よりも下、好ましくは1.2重量%よりも下に下げるために遠心分離機に通される。得られた流れは、次いで、固形分レベルを0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下に下げるために更なる固形分除去工程にかけられる。2つ以上の固形分除去工程の使用が好ましい理由は、非常に最低レベルの固形分を得るのに好適な分離器が典型的には、出発固形分レベルが既に低い場合に最も効率的に機能するためである。
【0036】
分離工程(c)は、真空水蒸気ストリッピング塔を利用する:この方法において、熱分解油は0.2重量%以下の固形分を含有することが好ましく、それ故、分離工程の前に、熱分解油は、上に記載されたなどの固形分除去段階にかけられていることが好ましい。真空水蒸気ストリッピング塔において、熱分解油は、充填垂直塔を下方へ流れ、水蒸気は上方へポンプで送られる。油及び水蒸気流量並びに塔圧力は、妥当な成分が分離されることを確実にするように調整される。塔圧力は、好ましくは0.85バールa未満、より好ましくは0.5バールa未満である(ここで、大気圧は1バールaと定義される)。通常ナフサ生成物と言われる、本発明の第2態様の軽質成分は水蒸気によって運び去られ、その両方とも分離される前に凝縮させられる。本発明の第1態様の組成物である及び通常フラクサント(fluxant)生成物と言われる、残りの液体油を含むより重質の成分は、貯蔵タンクに集められる。ナフサ及びフラクサント生成物は一緒にして、この真空水蒸気ストリッピング工程(c)から得られる全生成物の少なくとも98容積%、好ましくは少なくとも99容積%を占める。
【0037】
ナフサ生成物(本発明の第2態様の組成物)は、ガソリン製品において実用性を有する。
【0038】
フラクサント生成物(本発明の第2態様の組成物)は、140℃以上から始まる沸点範囲を有する。いかなる高温カットオフの不在も、それが、大きい、複雑な炭化水素分子を含有する及び典型的には色が黒色であることを意味する。
【0039】
本発明の好ましい実施形態は、本発明の方法のこの好ましい実施形態の概略図である、
図1に関連して以下に記載される。
【0040】
本発明のこの好ましい実施形態において、原料として使用される廃ゴム材料は、先ず40mm×40mm以下のサイズに細断される、廃タイヤを含む。ゴム原料は、不純物を除去するために任意の公知の方法で前処理され得る。
【0041】
細断されたゴム原料は、酸素が反応器容器に入るのを防ぐためのエアロックを介してチップホッパーから熱分解反応器へ供給される。反応器は、ゴムを反応器の至る所に移動させるためのパドルを持っているゆっくり回転するシャフト付きの水平の丸形容器である。バーナーは、反応器内の温度を約470℃に制御するように反応器に熱を提供する。反応器は、ガス漏洩を防ぐために−14mbのわずかな負圧で動作する。ゴムが反応器を通過する及び熱分解するにつれて、固体成分は炭素質固形分を形成し、それは、不活性ガスでパージされる出口上のエアロック付きアルキメデススクリューによって反応器から排出される。炭化水素ガス及び蒸気は、わずかな負圧を用いて反応器から抜き出され、次の凝縮段階に移される。
【0042】
凝縮段階において、熱い炭化水素ガス及び蒸気は、パッキングを含有する垂直凝縮器単位装置を通って下方へ流れ、その単位装置を通して、70℃まで冷却されている以前に凝縮した粗熱分解油のシャワーが噴霧される。パッキングを通っての冷却油の通過は、上方ヘ流れる蒸気の約90%を凝縮させる。この凝縮油は、水−油熱交換器を通過させられ、熱交換器でそれは70℃まで冷却される。そこからそれは、油シャワーの一部を形成するために凝縮器へ再循環されるか、次の段階のための混合タンクに移されるかのどちらかである。70℃で凝縮器を出る残りの蒸気及びガスは、更なる凝縮可能物を除去するために第2凝縮器に通される。第2凝縮器において、ガス及び蒸気は、蒸気を更に凝縮させる、並びに非常に軽質の炭素粒子を除去するために、凝縮熱分解油のより軽質のフラクションを含有する冷却浴(15℃)を通してバブリングされる。残りのガス流は、次いで、任意の最終液体フラクションを凝縮させるためにグリコール熱交換器(7℃)に通される。残っている乾燥ガスは、合成ガスタンクに凝縮させられ、典型的には濾過され、次いで、
図1に示されるように、熱分解反応器を加熱するバーナーに燃料供給するために使用される。
【0043】
本発明のこの好ましい実施形態において、分離の前に、凝縮した熱分解油は、その固形分を減らすために固形分除去段階に通される。油は、固形分をおよそ1重量%まで減らすためにデカンター遠心分離機によって先ず遠心分離され、次いで固形分を0.2重量%よりも下に減らすために第2段階において更に遠心分離される。
【0044】
濾過された熱分解油は、次いで真空水蒸気ストリッピング塔に通される。油は、水蒸気が塔を上方へ流れる状態で油シャワーとして充填垂直塔を下方へ流れる。塔の最上部での温度は、140℃未満に維持される。塔は、0.85バールaよりも下、好ましくは0.5バールaよりも下で動作し、油及び水蒸気流量及び圧力は、より軽質のナフサ生成物(大気圧下で75℃を超えない初留点)が水蒸気によって運び去られることを確実にするように調整される。この水蒸気/ナフサ流は、熱交換器において凝縮させられ、液体ナフサ相は次いで水から分離される。140℃よりも上で沸騰する第2フラクサント生成物は、貯蔵タンクに集められる。
【実施例】
【0045】
実施例
本発明による組成物は、上に記載されたように、細断されたタイヤの原料の熱分解の実施、引き続く凝縮、固形分除去及び真空水蒸気ストリッピングによって得られた。この場合に、集められたナフサ生成物は、48.5℃から始まる沸点範囲を有し、一方、フラクサント生成物は、175℃から始まる沸点範囲を有した。
【0046】
集められた生成物をASTM D86に従った蒸留にかけた。結果を、遠心分離前後の熱分解油、並びに比較のための標準的な市販の自動車ディーゼル製品及び標準的な市販の船舶用ガス油製品についての対応するデータと一緒に、下の表に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
フラクサント生成物はこの試験において丁度50容積%のパーセント回収率を有したことを理解することができる。それに反して、中間留分である、標準的な自動車及び船舶用ディーゼル製品は、97容積%を超えるパーセント回収率を有した。
【0049】
回収されたフラクサント生成物(本発明の第1態様)は、以下の特性を有することが分かった:
引火点(ASTM D93B)−76℃
TAN(ASTM D664)−4.61mg KOH/kg
スチレン含有量(ガスクロマトグラフィー法)−1086ppm
Clとしての有機ハロゲン(IP510)−13mg/kg
15℃での密度(ASTM D4052)−962.3kg/m
3
生物源炭素含有量(ASTM D6866B)−50%
全芳香族含有量(IP 391)−47.2容積%
【0050】
回収されたナフサ生成物(本発明の第2態様)は、以下の追加の特性を有することが分かった:
ベンゼン含有量(ASTM D6839)−1.74容積%
実在ガム(洗浄された)含有量(ASTM D381)−50mg/100ml
Clとしての有機ハロゲン(IP510)−9mg/kg
色(ASTM D1500−12)−1.0
生物源炭素含有量(ASTM D6866B)−59%
全芳香族含有量(ASTM D6839)−47.1容積%
【0051】
上記のデータは、回収されたフラクサント生成物が船舶用燃料の成分としてのその使用を可能にする特性を有する、並びに追加の安全性制約なしにその輸送を可能にするのに十分に高い引火点を有することを示す。更に、それは、さもなければ更に処理される、又は黒色着色がほとんどの輸送燃料製品と相容れないから、それらがほとんど商業的価値がないと見なされるので、別々に廃棄処分される必要がある、高沸点黒色成分を活用する。回収されるナフサ生成物は、ガソリン燃料での成分としてのその使用を可能にする特性を有する。
【国際調査報告】