特表2021-532263(P2021-532263A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-532263有機−無機ハイブリッド材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532263(P2021-532263A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】有機−無機ハイブリッド材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20211029BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20211029BHJP
   C08J 7/12 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   C23C16/455
   C08J7/04 A
   C08J7/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2021-503861(P2021-503861)
(86)(22)【出願日】2019年7月24日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2019069970
(87)【国際公開番号】WO2020020972
(87)【国際公開日】20200130
(31)【優先権主張番号】18382552.0
(32)【優先日】2018年7月24日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】511196744
【氏名又は名称】セーイーセー、ナノグネ−アソシアシオン、セントロ、デ、インベスティガシオン、コオペラティバ、エン、ナノシエンシアス
【氏名又は名称原語表記】CIC NANOGUNE−ASOCIACION CENTRO DE INVESTIGACION COOPERATIVA EN NANOCIENCIAS
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】イトサスネ、アスピタルテ
(72)【発明者】
【氏名】マト、クネス
【テーマコード(参考)】
4F006
4F073
4K030
【Fターム(参考)】
4F006AA15
4F006AA22
4F006AA31
4F006AA35
4F006AA38
4F006AA39
4F006AB64
4F006AB65
4F006AB66
4F006AB67
4F006AB73
4F006AB74
4F006CA04
4F006CA08
4F006CA09
4F073BA18
4F073BA19
4F073BA23
4F073BA29
4F073BA31
4F073BA34
4F073DA08
4K030AA11
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA43
4K030BA44
4K030BA46
4K030BA47
4K030BB12
4K030CA07
4K030CA13
4K030DA02
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA16
4K030LA24
(57)【要約】
本発明は、ALDおよびMPI技術の組み合わせを含んでなる、有機−無機ハイブリッド材料を製造する方法、該方法によって得られる有機−無機ハイブリッド材料、および該有機−無機ハイブリッド材料の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子を前記反応チャンバにパルスし、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記パルスと前記パージとの間に曝露時間がない工程;
iii)第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上である工程;
iv)共反応剤を前記反応チャンバにパルスし、次いで、場合により曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記共反応剤が、工程(ii)で単官能性またはオリゴ官能性有機分子がパルスされない場合には、前記第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサと反応し、かつ/あるいは、前記共反応剤が、前記第2の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサと反応する工程;および、
v)必要に応じて、共反応剤を前記反応チャンバにパルスし、次いで、場合により曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記共反応剤が、未反応の前記第1または第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる、有機−無機ハイブリッド材料を製造する方法であって、
工程(iv)の前記共反応剤が、工程(v)の前記共反応剤とは異なり、
前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサが、前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサとは異なる、前記方法。
【請求項2】
以下の工程:
i)前記反応チャンバ内に前記ポリマー基板を準備する工程;
ii)前記第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または前記単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子を前記反応チャンバにパルスし、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記パルスと前記パージとの間に曝露時間がない工程;
iii)前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)前記共反応剤を前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上であり、かつ、前記共反応剤が、工程(ii)で単官能性またはオリゴ官能性有機分子がパルスされない場合には、前記第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサと反応し、かつ、前記共反応剤が、前記第2の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程:
i)前記反応チャンバ内に前記ポリマー基板を準備する工程;
ii)前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサを前記反応チャンバにパルスし、次いで、前記反応チャンバをパージして、前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間に曝露時間がない工程;
iii)前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージして、前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされ、かつ、前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)前記共反応剤を前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分でコーティングされ、かつ、第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上であり、かつ、前記共反応剤が、前記第1および第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
以下の工程:
i)前記反応チャンバ内に前記ポリマー基板を準備する工程;
ii)前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサを前記反応チャンバにパルスし、前記反応チャンバをパージして、前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間に曝露時間がない工程;
ii’)前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子を前記反応チャンバにパルスし、次いで、前記反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分と、前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子とでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間に曝露時間がなく、かつ、前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子が前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程;
iii)前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージして、前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサと、前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子とでコーティングされ、かつ、前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)前記共反応剤を前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分と、前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子とでコーティングされ、かつ、前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上であり、かつ、前記共反応剤が前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下の工程:
i)前記反応チャンバ内に前記ポリマー基板を準備する工程;
ii)前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子を前記反応チャンバにパルスし、次いで、前記反応チャンバをパージして、前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子でコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間に曝露時間がない工程;
iii)前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージして、前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子でコーティングされ、かつ、前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)前記共反応剤を前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージして、前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子でコーティングされ、かつ、前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上であり、かつ、前記共反応剤が前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー基板が、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアルキレン、ポリアクリレート、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリビニル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリスチレンおよびポリケトンから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー基板が、芳香族ポリアミド、例えば、パラアラミドおよびメタアラミドポリマーから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2の金属、半金属または半導体のプリカーサ、または前記第1および第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分が、独立して、Al、Zn、Si、Ti、W、Sb、As、Ba、Bi、B、Cd、Ca、Ce、Cr、Co、Cu、Er、Eu、Gd、Ga、Ge、Hf、Fe、La、Mg、Mn、Mo、Ni、Nb、Os、Pt、Pr、Re、Rh、Ru、Sm、Se、Sr、Ta、Te、Tb、Tm、Sn、Ti、W、V、Yb、Y、Zr、Pd、In、IrまたはLiを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分が、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物およびゼロ価金属から独立して選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分が、Al、ZnO、SiO、InおよびTiOから独立して選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子が、ヒドロキシル、アミノ、カルボン酸、エステル、アミド、シラン、チオール、エポキシ、ニトロおよび酸ハロゲン化物から選択される1個以上の官能基を有する脂肪族または芳香族の単官能性またはオリゴ官能性有機分子である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子が単官能性有機分子である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により得ることができる有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項14】
ポリマー基板と、
第1の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子、またはそれらの混合物を含んでなる、前記ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、前記ポリマー基板内の含浸層と
を備える有機−無機ハイブリッド材料であって、
前記第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分と、前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分とは異なり、かつ、
前記コーティング層は、前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含まない、前記有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項15】
前記ポリマー基板と、
前記第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、前記ポリマー基板の表面上の前記コーティング層と、
前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、前記ポリマー基板内の前記含浸層と
を備える、あるいは、
前記ポリマー基板と、
前記単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子を含んでなる、前記ポリマー基板の表面上の前記コーティング層と、
前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、前記ポリマー基板内の前記含浸層と
を備える、あるいは、
前記ポリマー基板と、
前記ポリマー基板の表面と接触する第1の層と、前記第1の層と接触する第2の層とを備える、前記ポリマー基板の表面上の前記コーティング層であって、前記第1の層が、前記第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなり、前記第2の層が、前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子を含んでなる、前記コーティング層と、
前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、前記ポリマー基板内の前記含浸層と
を備える、請求項13または14に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項16】
前記ポリマー基板が、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアルキレン、ポリアクリレート、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリビニル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリスチレンおよびポリケトンから選択される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項17】
前記ポリマー基板が、芳香族ポリアミド、例えば、パラアラミドおよびメタアラミドポリマーから選択される、請求項13〜16のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項18】
前記第1および第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分が、独立して、Al、Zn、Si、Ti、W、Sb、As、Ba、Bi、B、Cd、Ca、Ce、Cr、Co、Cu、Er、Eu、Gd、Ga、Ge、Hf、Fe、La、Mg、Mn、Mo、Ni、Nb、Os、Pt、Pr、Re、Rh、Ru、Sm、Se、Sr、Ta、Te、Tb、Tm、Sn、Ti、W、V、Yb、Y、Zr、Pd、In、IrまたはLiを含む、請求項13〜17のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項19】
前記第1および第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分が、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物およびゼロ価金属から独立して選択される、請求項13〜18のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項20】
前記第1および第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分が、Al、ZnO、SiO、InおよびTiOから独立して選択される、請求項13〜19のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項21】
前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子が、ヒドロキシル、アミノ、カルボン酸、エステル、アミド、シラン、チオール、エポキシ、ニトロおよび酸ハロゲン化物から選択される1個以上の官能基を有する脂肪族または芳香族の単官能性またはオリゴ官能性有機分子である、請求項13〜20のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項22】
前記単官能性またはオリゴ官能性有機分子が単官能性有機分子である、請求項13〜21のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項23】
前記含浸層が1nmを超える厚みを有する、請求項13〜22のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項24】
前記含浸層が1〜200nmの厚みを有する、請求項13〜23のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項25】
柔軟で軽いポリマートランジスタ、コンデンサ、光電子デバイス、バリア、吸収体、個人用安全装置、スポーツ用品、保護ラミネート、建築材料、繊維製品、自動車材料および航空機材料の製造における、請求項13〜24のいずれか一項に記載の有機−無機ハイブリッド材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、有機−無機ハイブリッド材料を製造するための気相処理の分野に関する。より具体的には、本発明は、有機−無機ハイブリッド材料の製造方法、該方法によって得ることができる有機−無機ハイブリッド材料、有機−無機ハイブリッド材料、および該有機−無機ハイブリッド材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド有機−無機材料は、その独自の特性により、様々な用途で使用されている。これらの材料は、有機材料(柔軟性、軽さ、加工容易性など)および無機材料(優れた熱的および化学的安定性、導電性など)の特徴的な無機特性を兼ね備えているだけでなく、それらの個々の特性を上回るか、または新しい特性を取り入れることもある。ハイブリッド材料を合成するための最も一般的な戦略は、湿式化学方法に基づいている。しかしながら、これらの方法では、相乗的な相互作用のない物理的な混合が頻繁に生じる。さらに、それらはハイブリダイゼーションレベルを十分に制御することができない。さらに、溶媒分子は、反応を遮蔽することにより、あるいは、機械的、電子的または光学的特性に悪影響を与える空洞を材料に単に生成することにより、得られるハイブリッド材料の特性に深刻なダメージを与える可能性がある。対照的に、無溶媒の気相プロセスは、高品質のハイブリッド材料を合成するための優れた代替手段である。
【0003】
原子層堆積(ALD)は、気相コーティング技術であり、1種または2種以上のプリカーサを基板表面に順次供給して、結合および順次反応させ、これにより、優れた厚み制御の下でコーティングを形成することにより、基板上に薄膜を生成する。J. W. Elam et al. [Spatially controlled atomic layer deposition in porous materials, Applied Physics Letters 91, 243105 (2007)]には、2種類のプリカーサを使用するALD技術に基づいて、多孔質基板内に材料を堆積させ、「ストライプコーティング」を生成することが記載されている。ALD技術では、プリカーサは基板の表面とのみ反応し、含浸(infiltration)または基板とのハイブリダイゼーションは得られない。その結果、ALD技術によって得られる製品は、層状構造に限定される。
【0004】
ALDの改変である、最近開発された気相含浸(VPI)技術は、化学物質が基板の表面に付着するだけでなく、拡散してポリマーのバルクと反応することを可能にすることにより、ハイブリッド有機−無機材料を製造する。VPIを使用すると、通常は無機特性を有することができない、密に詰まった秩序だったポリマーに無機材料を導入することができる。VPIに基づく方法には、複数パルスされる気相含浸(VPI)、連続蒸気含浸(SVI:sequential vapor infiltration)および連続含浸合成(SIS)が含まれ、いくつかの先行技術の文献に開示されている。例えば、米国特許出願第2018127870号(A1)には、プリカーサをポリマー基板に拡散する方法であって、連続的な堆積プロセスを必要とせずに、反応チャンバ内で生成された静的雰囲気環境(static atmosphere environment)において、ポリマーを気体プリカーサに長期間曝露する方法が記載されている。しかしながら、この技術はまた、含浸に加えて、基板の表面上に含浸材料のコーティング層を生成する。
【0005】
含浸技術とそれに続くALDの使用も開示されている。例えば、米国特許出願第US2014346142号(A1)には、無機特性を有するパターン化されたナノ構造を製造する方法であって、ポリマー基板中の無機材料(アルミナ、二酸化チタンまたはZnO)の連続含浸合成(SIS)および任意選択で表面に無機コーティングを成長させるための連続的ALDプロセスを含んでなる方法が記載されている。Gong et al. [Hydrophilic mechanical buffer layers and stable hydrophilic finishes, J. Va. Sic. Technol. A 30(1), Jan/Feb 202]には、ポリマー基板に含浸させてからコーティングすることにより、親水性の安定したポリマー材料を製造する方法が記載されている。すなわち、まず、基板を有機金属プリカーサに数時間さらしてからパージし、水に数分間さらし、次いで、数回のALDサイクルを実施し、含浸させた基板にコーティングする。それでもやはり、処理時間は長く、異なる材料の組み合わせはこの技術では十分に制御されていない。さらに、含浸工程中に、第1のプリカーサは、基板の表面およびバルクの両方で利用可能な官能基と非特異的に反応し、したがって、コーティング層が常に基板の表面に生成され、これは、いくつかの用途では望ましくなく、含浸の効果を減少させることもある。
【0006】
テクニカルポリマーの中で、ケブラー(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)は、機械的な要求の厳しい用途、例えば、個人の安全、スポーツ用品および航空機向けの高強度ポリマーおよび選択材料として高い評価を得ている。ケブラーの卓越した機械的特性は、高分子繊維の押し出し中に発達する高度に秩序化された結晶構造から生じる。そのほとんどの用途で、ケブラーは紫外線、湿気および/または高温にさらされる。これらの環境要因は、その秩序だった構造を乱し、ポリマーの機械的性能に大きな影響を与え、その結果、その信頼性を損なう可能性がある。
【0007】
1965年の発見以来、紫外線および高温に対するケブラーの安定性を向上させることを目的として、多大な努力が払われてきた。樹脂にケブラー繊維を埋め込むと、紫外線がケブラー繊維に到達するのを妨げ、劣化を防止することが見出されたが、得られた複合材料は、熱安定性がまだかなり低い、重くて硬い材料からなっていた。続く研究では、ケブラー繊維を金属酸化物でコーティングすると、その機械的特性および安定性にプラスの影響があり、軽量性が維持されることが示された。しかしながら、無機コーティングの脆い性質のため、機械的処理により繊維から剥がれる可能性がある。原子層堆積(ALD)は、機械的特性を改善するための、ポリマー繊維への金属酸化物の堆積に効果的であることが示されている。ALDによって堆積された無機膜はポリマーの表面に化学的に結合しているため、延伸してもその接着性は高くなる。しかしながら、繊維のUV保護のために、ケブラーの上に非常に厚い金属酸化物膜を堆積する必要があり、その柔軟性が損なわれる。最後に、Azpitarte et al. [Suppressing the Thermal and Ultraviolet Sensitivity of Kevlar by Infiltration and Hybridization with ZnO, Chem. Mater. 2017, 29, 10068-10074]では、ケブラーの熱およびUV感度が、複数パルスされた含浸(MPI:multiple pulsed infiltration)によるZnOの含浸によって抑制され得ることが見出された。しかしながら、この方法では、繊維の機械的特性が低下する。特に、繊維の靭性係数は、元のケブラー繊維に比べて低下する。
【0008】
要約すると、有機−無機ハイブリッド材料を製造するための従来技術の方法では、含浸材料による基板のコーティングが起こらないように、異なる材料で基板を選択的に含浸およびコーティングすることができない。したがって、選択的な方法が依然として必要である。さらに、安定性、機械的特性および耐久性が強化された有機−無機ハイブリッド材料を製造する新しい汎用性のある方法も必要である。
【発明の概要】
【0009】
発明の簡単な説明
本発明の発明者は、含浸中に生成される、基板の表面上の含浸材料の望ましくない特徴的なコーティングを回避しながら、基板に選択的に含浸させることを可能にする方法を見出した。それどころか、本発明の方法は、第1の材料を含浸させ、第2の材料でコーティングされている有機−無機ハイブリッド材料を製造することを可能にし、その結果、第1の(含浸)材料が基板の表面をコーティングせず、第2の(コーティング)材料は、基板の表面と直接相互作用する。
【0010】
この方法は、ALDおよびMPIの技術の組み合わせを基礎とする。例えば、金属、半金属または半導体のコーティングが必要な場合、方法は、金属、半金属または半導体含有プリカーサのALDタイプのパルスと、それに続く第2の金属、半金属または半導体含有プリカーサのMPIタイプのパルスと、2つの固定化された金属、半金属または半導体含有プリカーサと反応する1種または2種以上のカウンタープリカーサ(counter precursor)の最後のMPIタイプのパルスとからなる。このように、ALDタイプのサブサイクルでパルスされた第1のプリカーサは、基板の表面官能基とのみ反応し、それらを飽和させる。この飽和は、後続のMPIタイプのパルス中に、第2の金属、半金属または半導体含有プリカーサの結合を防止する。その結果、この段階において、第2のプリカーサは表面に結合しないが、表面を突き抜け、表面下の領域でさらに利用可能な官能基に結合し、その結果、基板に含浸する。最後に、パルスされたカウンタープリカーサは、表面上で1種の材料によりコーティングを生成する金属、半金属または半導体含有プリカーサと、別の材料である含浸させた金属化合物との両方と反応する。
【0011】
あるいは、2種の異なるカウンタープリカーサまたは共反応剤を使用することができる。この場合、第1および第2の金属、半金属または半導体含有プリカーサのうちの1種に対して選択的である第1の共反応剤が最初にパルスされる。次いで、その他の未反応の金属、半金属または半導体含有プリカーサと反応する第2の共反応剤をパルスする。このようにして、異なる性質の含浸層およびコーティング層を形成することができる。
【0012】
本発明によるALD/MPIの組み合わせはまた、有機分子または有機分子含有コーティングと共に使用することができる。例えば、基板の表面官能基と反応する有機分子のALDタイプのサブサイクル、または金属、半金属もしくは半導体含有プリカーサおよび有機分子のALDタイプのサブサイクルの1種または2種以上に基板がさらされると、表面は非反応性層で飽和しているため、続くMPIサブサイクルで使用されるプリカーサは基板の表面に結合しないが、含浸し、表面下の基板の官能基と反応する。
【0013】
この新しい方法は、ハイブリッド有機−無機材料の合成の制御におけるブレークスルーを表す。基板をコーティングする材料の選択とともに、含浸させる別の材料の選択を決定する機会を与え、基板の特性を十分に変更する可能性を与える。このアプローチは、ハイブリッド材料を製造するこのような方法の現在の制限を解決するため、様々な技術分野におけるハイブリッド材料の多種多様な用途にとって非常に重要である。
【0014】
本発明の方法は、コーティングおよび含浸のために異なる材料を可変に選択する結果、得られる有機−無機ハイブリッド材料の特性の調整可能範囲を拡張することを可能にする。したがって、正確に調整可能な特性を備えた材料を得ることができる。特に、本発明の方法に従うことにより、耐久性および機械的特性が改善された有機−無機ハイブリッド材料が得られた。
【0015】
したがって、第1の態様において、本発明は、以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子を前記反応チャンバにパルスし、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記パルスと前記パージとの間に曝露時間がない工程;
iii)第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを前記反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記パルスと前記パージとの間の前記曝露時間が5秒以上である工程;
iv)共反応剤を前記反応チャンバにパルスし、次いで、場合により曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記共反応剤が、工程(ii)で単官能性またはオリゴ官能性有機分子がパルスされていない場合には、前記第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサと反応し、かつ/あるいは、前記共反応剤が、前記第2の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサと反応する工程;および、
v)必要に応じて、共反応剤を前記反応チャンバにパルスし、次いで、場合により曝露時間を設け、次いで、前記反応チャンバをパージする工程であって、前記共反応剤が、未反応の前記第1または第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる、有機−無機ハイブリッド材料を製造する方法であって、
工程(iv)の前記共反応剤が、工程(v)の前記共反応剤とは異なり、
前記第1の金属、半金属または半導体のプリカーサが、前記第2の金属、半金属または半導体のプリカーサとは異なる、前記方法に関する。
【0016】
第2の態様において、本発明は、本発明の方法によって得ることができる有機−無機ハイブリッド材料に関する。
【0017】
第3の態様において、本発明は、
ポリマー基板と、
第1の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子、またはそれらの混合物を含んでなる、前記ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、前記ポリマー基板内の含浸層と
を備える、有機−無機ハイブリッド材料であって、
前記第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分と、前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分とは異なり、かつ、
前記コーティング層は、前記第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含まない、前記有機−無機ハイブリッド材料に関する。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、柔軟で軽いポリマートランジスタ、コンデンサ、光電子デバイス、バリア(barrier)、吸収体、個人用安全装置(例えば、防弾ベストおよび軍事用装備)、スポーツ用品、保護ラミネート、建築材料、繊維製品、自動車材料および航空機材料の製造における、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、a)アルミナでコーティングされたケブラー(C−Al)、b)アルミナを含浸させたケブラー(I−Al)およびc)アルミナでコーティングされ、ZnOを含浸させたケブラー(TMAパルス)のFIBで作製した断面のTEM画像、ならびにd)TMAパルスサンプルのEDSカラーマップを示す図である。
図2図2は、未処理のケブラー繊維、Alによる含浸(I−Al)またはコーティング(C−Al)後の繊維、ならびにZnOによる含浸およびAlによるコーティング(TMAパルス)後の繊維の機械的特性[a)靭性、b)応力]を示す図である。
図3図3は、a)UV光照射前のケブラー繊維、ならびにUV光照射後のb)オリジナルのケブラー繊維、c)コーティング後のケブラー繊維、d)含浸後のケブラー繊維、およびe)コーティングおよび含浸後のケブラー繊維の破断末端のSEM画像を示す図である。
図4図4は、コーティング、含浸、コーティング+含浸の前後のケブラー繊維の指紋領域(1200〜800cm−1)のATR−FTIRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数形の言及を含む。
【0021】
有機−無機ハイブリッド材料の製造方法
本発明は、第1の態様において上で規定されたような有機−無機ハイブリッド材料を製造する方法に関する。
【0022】
工程v)の「必要な場合」という用語は、工程iv)で使用される共反応剤が第1および第2のプリカーサの一方のみと反応する場合には、すなわち、それらの一方に対して選択的である(そして、他方と反応しない)場合には、この工程が方法に含まれることを意味する。その場合には、異なる共反応剤が工程v)でパルスされて、未反応の第1または第2のプリカーサと反応する。
【0023】
「未反応の」第1または第2のプリカーサは、工程iv)の共反応剤と反応しないプリカーサ、すなわち、工程iv)の共反応剤がそのプリカーサーに対して選択的でないプリカーサを指す。言い換えると、工程iv)の共反応剤が第1のプリカーサに対して選択的である(したがって反応する)場合には、未反応のプリカーサは第2の金属、半金属または半導体のプリカーサである。工程iv)の共反応剤が第2のプリカーサに対して選択的である(したがって反応する)場合、未反応のプリカーサは第1の金属、半金属または半導体のプリカーサである。工程v)の共反応剤は、未反応のプリカーサに対して選択的である必要はなく、これは、その他の金属、半金属または半導体のプリカーサが該共反応剤との反応にもはや利用可能でないためである。
【0024】
本方法の工程(iv)または工程(v)は、共反応剤を反応チャンバにパルスした後、独立して曝露時間を有する場合がある。
【0025】
工程iv)の共反応剤が第2のプリカーサとのみ反応する場合には、工程iv)は、好ましくは、5秒以上の曝露時間を含み、その結果、共反応剤は、含浸させた第2のプリカーサと反応することができる。工程iv)の共反応剤が第1のプリカーサとのみ反応する場合には、曝露時間は必要ない。それでもなお、特定の実施形態において、工程iv)は、曝露時間、好ましくは、1秒以上、または2秒以上、または3秒以上、または4秒以上、または好ましくは5秒以上の曝露時間を含み得る。
【0026】
同様に、工程v)の共反応剤が第2のプリカーサと反応する場合には、工程v)は、好ましくは、5秒以上の曝露時間を含み、その結果、共反応剤は、含浸させた第2のプリカーサと反応することができる。工程v)の共反応剤が第1のプリカーサとのみ反応する場合には、曝露時間は必要ない。それでもなお、特定の実施形態において、工程v)は、曝露時間、好ましくは、1秒以上、または2秒以上、または3秒以上、または4秒以上、または好ましくは5秒以上の曝露時間を含む。
【0027】
特定の実施形態において、工程iv)は、第1の共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージすることを含んでなる工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、第1の共反応剤が、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサとのみ反応する工程であり、工程v)は、第2の共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、場合により曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージすることを含んでなる工程であって、第2の共反応剤が、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程であり、その結果、コーティングされ含浸されたポリマー基板を得る。
【0028】
別の実施形態において、工程iv)は、第1の共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、場合により曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージすることを含んでなる工程であって、第1の共反応剤が、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサとのみ反応する工程であり、工程v)は、第2の共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージすることを含んでなる工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、第2の共反応剤が、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程であり、その結果、コーティングされ含浸されたポリマー基板を得る。
【0029】
その他のものと比較して1種の共反応剤に対して選択性を有するプリカーサは、当技術分野で知られている。したがって、当業者は、適切な第1および第2のプリカーサ、ならびに第1または第2のプリカーサのみと選択的に反応する共反応剤を選択する方法を知っている。例えば、DEZ(亜鉛プリカーサ)は硫化物(例えば、HS)と反応してZnSを形成することができるが、TMA(アルミニウムプリカーサ)は反応しないことが知られている。したがって、TMA−DEZ−HS−HOを使用した方法では、ZnSを含浸させ、Alでコーティングされる結果となる。
【0030】
好ましくは、工程iv)の共反応剤は、第1および第2の金属、半金属または半導体のプリカーサの両方と反応し、すなわち、それらのうちの一方に対して選択的ではなく、したがって、工程v)を実施しない。その場合には、パルスとパージとの間に5秒以上の曝露時間があり、その結果、共反応剤は第1および第2のプリカーサと反応する。この場合、2種のプリカーサに同じ共反応剤が使用されるため、コーティング層および含浸層は同じ性質になる。したがって、一実施形態において、本発明の方法は、以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子を反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージする工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間がない工程;
iii)第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージする工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、コーティングされ含浸されたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、共反応剤が第1の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応し(単官能性またはオリゴ官能性有機分子がパルスされていない場合)、かつ、共反応剤が第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる方法であって、
第1の金属、半金属または半導体のプリカーサが、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサとは異なる、方法である。
【0031】
本方法の各工程を、所望の回数、例えば、(コーティングおよび含浸の)所望の厚みが達成されるまで、独立して繰り返すことができる。回数は、特に10回以上、さらにとりわけ100回以上である。
【0032】
上記のように、工程ii)は、ポリマー基板の表面を飽和させて、工程iii)の第2の金属、半金属または半導体のプリカーサがポリマー基板の表面と反応せず、基板に含浸するようにする。したがって、一実施形態において、ポリマー基板の表面の官能基が飽和するまで、すなわち、工程iii)の第2の金属、半金属または半導体のプリカーサとの反応に使用されなくなるまで、工程ii)を実施する。
【0033】
したがって、特定の実施形態において、工程ii)の後および工程iv)の後に得られるコーティングされたポリマー基板の表面は、完全にコーティングされ、好ましくは完全かつ均一にコーティングされる。
【0034】
金属、半金属または半導体のプリカーサは、金属、半金属または半導体の成分を含むプリカーサであると理解され得る。一実施形態において、それは金属プリカーサである。
【0035】
単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、好ましくは単官能性有機分子である。一実施形態において、金属、半金属または半導体のプリカーサは金属プリカーサであり、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は単官能性有機分子である。
【0036】
特定の実施形態において、工程ii)は、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサをパルスすることを含んでなる。したがって、一実施形態において、本発明の方法は以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)第1の金属、半金属または半導体のプリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間がない工程;
iii)第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされ、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;および
iv)共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、場合により曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージする工程であって、共反応剤が、第1および/または第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程;および
v)必要に応じて、共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、場合により曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分でコーティングされ、第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、共反応剤が未反応の第1または第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる。
【0037】
好ましくは、工程(iv)の共反応剤は、第1および第2のプリカーサと反応し、したがって、工程v)は必要ない。
【0038】
特定の実施形態では、工程ii)〜iv)を、それぞれ1〜1,000回、好ましくは50〜1,000回繰り返す。一実施形態では、工程ii)〜iii)またはii)〜iv)のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは50〜1,000回繰り返す。
【0039】
好ましい実施形態では、工程ii)〜iv)を連続して実施し、工程ii)〜iv)のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは50〜1,000回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返す。
【0040】
本発明の文脈において、「サイクル」という用語は、例えば、本発明の方法の工程のうちの一連の工程、例えば、工程(ii)〜(iv)を含む。
【0041】
この方法の一実施形態において、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされたポリマー基板上にパルスされる。この場合には、単官能性またはオリゴ官能性有機分子の官能基の1個または2個以上が、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応して、非反応性有機層を生成し、この非反応性有機層は、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサがポリマー基板の表面に結合するのを防止する。好ましくは、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサの共反応剤である。すなわち、それは、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応して、第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分を生成する。この場合には、単官能性またはオリゴ官能性有機分子が、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされたポリマー基板上にパルスされると、第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分(ポリマー基板の表面にコーティングされている)および単官能性またはオリゴ官能性有機分子(第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分の上にコーティングされている)でコーティングされたポリマー基板が得られる。
【0042】
したがって、特定の実施形態において、本方法は、以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)第1の金属、半金属または半導体のプリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間がない工程;
ii’)単官能性またはオリゴ官能性有機分子を反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分と、単官能性またはオリゴ官能性有機分子とでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、単官能性またはオリゴ官能性有機分子が第1の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程;
iii)第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサと、単官能性またはオリゴ官能性有機分子とでコーティングされ、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;
iv)共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属、半金属または半導体化合物または成分と、単官能性またはオリゴ官能性有機分子とでコーティングされ、第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パージとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、共反応剤が第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる。
【0043】
特定の実施形態では、工程ii)〜iv)を、それぞれ1〜1,000回、好ましくは50〜1,000回繰り返す。一実施形態では、工程ii)〜iii)またはii)〜iv)のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは50〜1,000回繰り返す。一実施形態では、工程ii)〜iv)を連続して実施し、工程ii)〜iv)のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは50〜1,000回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返す。別の実施形態では、工程ii)からii')を連続して実施し、工程ii)〜ii')のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは10〜500回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返した後に、工程iii)を実施する。一実施形態では、工程iii)およびiv)を、別個にまたは連続して、1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは50〜1,000回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返す。
【0044】
本発明の方法の別の選択肢において、工程ii)は、単官能性またはオリゴ官能性有機分子でポリマー基板をパルスすることを含んでなる。この場合、単官能性またはオリゴ官能性有機分子の官能基の1個または2個以上は、ポリマー基板の表面の官能基と反応して、非反応性有機層を生じさせ、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサがポリマー基板の表面へ結合するのを防止する。したがって、別の実施形態において、本発明のプロセスは、以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)単官能性またはオリゴ官能性有機分子を反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、単官能性またはオリゴ官能性有機分子でコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間がない工程;
iii)第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、単官能性またはオリゴ官能性有機分子でコーティングされ、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;
iv)場合により、共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、単官能性またはオリゴ官能性有機分子でコーティングされ、第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、共反応剤が第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる。
【0045】
工程ii)〜iv)を、それぞれ1〜1,000回、好ましくは50〜1,000回繰り返す。一実施形態では、工程ii)〜iii)またはii)〜iv)のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは50〜1,000回繰り返す。一実施形態では、工程ii)〜iv)を連続して実施し、工程ii)〜iv)のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは50〜1,000回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返す。別の実施形態では、工程ii)からii')を連続して実施し、工程ii)〜ii')のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは10〜500回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返した後に、工程iii)を実施する。一実施形態では、工程iii)およびiv)を、別個にまたは連続して、1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは50〜1,000回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返す。
【0046】
本明細書の以下に開示される特定の好ましい実施形態は、本発明の上記のすべての方法に適用される。
【0047】
一実施形態では、工程(ii)〜(iv)を連続して実施し、工程(ii)〜(iv)のサイクルを、1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは10〜500回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返す。この場合、得られた基板は、第1の材料のコーティングを示し、第2の材料を含浸させている。
【0048】
別の実施形態では、工程ii)および/またはii')を1回実施し、次いで、工程(iii)および(iv)を実施し、工程(iii)〜(iv)のサイクルを1〜1,000回、好ましくは10〜1,000回、より好ましくは10〜500回、さらにより好ましくは50〜500回繰り返す。この場合、得られる基板は、第1の材料のコーティングを実質的に示さない。第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサおよび/または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子の単一のコーティングは、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサによるコーティングを阻害するのに十分であり得る。
【0049】
本発明の文脈において、「ポリマー基板」という用語は、コーティングおよび含浸され得る有機ベースのポリマー材料、例えば、ポリマー、生体高分子、ハイブリッド材料、層状構造およびそれらの組み合わせを指す。
【0050】
一実施形態において、ポリマー基板は有機ベースのポリマーである。一実施形態において、それは、ホモポリマー、コポリマー、多成分ポリマーまたはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0051】
本発明の実施形態において、本発明のポリマー基板は、ヒドロキシル、エーテル、アミノ、ケトン、ハロゲン、カルボン酸、エステル、アミド、酸ハロゲン化物、イミド、イミン、アクリレート、テレフタレート、アルケニルおよびアリールから選択される1個または2個以上の官能基を有する有機ポリマーを含有する。
【0052】
特定の実施形態において、ポリマー基板は、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアルキレン、ポリアクリレート、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリビニル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリスチレンおよびポリケトンから選択される。さらなる実施形態において、本発明のポリマー基板は、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアルキレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリビニル、ハロポリマー、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリスチレンおよびポリケトンから選択され、好ましくは、芳香族ポリアミド、ナイロン、ポリアニリン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(プロピルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選択される。より好ましくは、それは、芳香族ポリアミド(アラミド)、例えば、パラアラミドおよびメタアラミドポリマーから選択される。さらにより好ましくは、それはポリパラフェニレンテレフタルアミドである。
【0053】
一実施形態において、ポリマー基板は、ケブラーまたはケブラー繊維である。
【0054】
別の特定の実施形態において、ポリマー基板は、ホモポリマーおよびコポリマー、例えば、交互共重合体、ブロック共重合体およびランダム共重合体から選択され得る。
【0055】
別の実施形態において、ポリマー基板は、代わりに、無機−有機ハイブリッドポリマー、または有機ポリマーと無機−有機ハイブリッド材料とのブレンドであり得る。無機−有機ハイブリッドポリマーは、従来技術からの従来の方法によって製造可能である。
【0056】
一実施形態において、バイオポリマーは、ポリペプチド、核酸、および多糖類、例えば、デンプン、ペクチン、キトサン、アルギン酸塩、カラギーナン、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース)から選択される。
【0057】
特定の実施形態において、本発明のポリマー基板は、1つまたは複数の層、例えば、1つまたは複数の異なるポリマーの層を備える。
【0058】
別の実施形態では、本発明のポリマー基板は多孔質であり、好ましくは、マクロ多孔性またはミクロ多孔性を有する。
【0059】
特定の実施形態において、本発明のポリマー基板は、球、円柱、薄板(lamella)、薄膜、繊維および双連続構造(bicontinuous structure)の形態である。好ましくは、それはポリマー繊維である。
【0060】
一実施形態において、ポリマー基板は、1〜250μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜50μmの厚みを有する。別の実施形態において、ポリマー基板は、0.5〜40cm、好ましくは0.5〜20cmの間、より好ましくは1〜10cm、さらにより好ましくは1〜8cmの長さを有する。
【0061】
一実施形態において、ポリマー基板は、直径が1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜30μm、さらにより好ましくは5〜20μmであるポリマー繊維である。別の実施形態において、ポリマー基板は、直径が1〜100μm、好ましくは2〜20μmであり、長さが0.5〜40cm、好ましくは0.5〜10cmであるポリマー繊維である。
【0062】
本発明に適した別個の繊維の非限定的な例には、直線上の繊維、捲縮繊維またはロービング繊維が含まれる。
【0063】
特定の実施形態において、本発明の反応チャンバは、表面に対するガスの反応のために配置されている。好ましくは、「反応チャンバ」という表現は、当技術分野で知られている化学気相処理装置(chemical vapor processing apparatus)、例えば、化学蒸着(CVD)、気相含浸(VPI)または原子層堆積(ALD)装置のチャンバを指す。好ましくは、本発明の反応チャンバは、原子層堆積反応チャンバ、例えば、マサチューセッツ州ケンブリッジのケンブリッジナノテック社から入手可能なものである。一実施形態において、反応チャンバは原子層堆積チャンバである。
【0064】
本発明の方法で使用されるすべての試薬(金属、半金属または半導体のプリカーサ、単官能性またはオリゴ官能性有機分子、共反応剤、パージガス)は、ガスの形態で反応チャンバに注入またはパルスされる。
【0065】
本発明の文脈において、「パルス」という用語は、化合物(例えば、金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ;有機分子;水;または任意のその他の反応剤もしくは共反応剤)が反応チャンバに投入される期間に関連する。この意味で、「パルス」という用語は、(短い)期間中に本発明の反応チャンバに化合物を投入することを指す。パルス時間は、プリカーサ、反応器のタイプ、チャンバの容積などに応じて、当技術分野の専門家によって適合させることができ、数百分の1秒〜数秒続く。
【0066】
特定の実施形態において、パルス時間は独立して0.01〜20秒、好ましくは0.01〜10秒、より好ましくは0.01〜5秒、さらにより好ましくは0.01〜2秒である。さらなる実施形態において、パルス時間は、独立して、0.01〜1秒、好ましくは0.02〜0.50秒、より好ましくは0.02〜0.15秒、さらにより好ましくは0.05〜0.1秒である。
【0067】
本発明の文脈において、「パージ」という用語は、反応チャンバ内の未反応の化合物が除去される期間に関連する。パージ時間は、プリカーサ、反応チャンバの特性、パルス時間などに応じて当技術分野の専門家によって適合させることができ、サイクル当たり数秒〜数分続いてもよい。特定の実施形態において、パージガスを反応チャンバに流すことによって、または真空によって反応チャンバを排気することによって、好ましくは不活性パージガスを流すことによって、本発明のパージを実施する。一実施形態において、不活性パージガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンおよびそれらの混合物から選択され、好ましくは、それは窒素である。
【0068】
特定の実施形態において、パージ時間は独立して1〜300秒、好ましくは1〜200秒、より好ましくは5〜200秒、さらにより好ましくは5〜200秒である。さらなる実施形態において、パルス時間は、独立して5〜150秒、好ましくは5〜90秒、より好ましくは10〜60秒、さらにより好ましくは20〜40秒である。
【0069】
本発明の文脈において、「曝露時間」という用語は、チャンバ内に静的雰囲気または非流動雰囲気が生成されていて、かつ、チャンバ内にそれ以前に導入された化合物または化合物の混合物(1回または2回以上のパルスによる)がポリマー基板の表面下に拡散することができる期間または「保持」時間に関連する。曝露時間は、ポリマー基板の特性、プリカーサ、ポリマー基板の密度、所望の含浸深さなどに応じて、当技術分野の専門家によって適合させることができる。それは数秒〜数分続いてもよい。特別な場合には、それは数時間続く場合もある。当技術分野で使用されているように、曝露時間は、一般に、パルスの終了とパージの開始との間の時間を指す。
【0070】
特定の実施形態において、曝露時間は5秒以上、好ましくは5〜300秒、より好ましくは1〜200秒、より好ましくは5〜200秒、さらにより好ましくは5〜200秒である。さらなる実施形態において、曝露時間は、5〜150秒、好ましくは5〜90秒、より好ましくは10〜60秒、さらにより好ましくは20〜40秒である。
【0071】
「パルスとパージとの間に曝露時間がない」または「パルスとパージとの間に曝露時間を伴わない」という表現は、パルスとパージとの間に時間遅延を設定せずに工程ii)またはii’)を実施すること、すなわち、パルスをパージのすぐ後または直後に実施することを意味する。好ましくは、パルスとパージとの間の時間間隔は、ゼロ秒または実質的にゼロ秒であり、すなわち、方法を実施するために使用されるシステムの許容誤差によって可能な限りゼロ秒に近い。特定の実施形態において、それは、パルスとパージとの間の曝露時間が、0.01秒未満、好ましくは0.001秒未満であることを意味する。
【0072】
単官能性またはオリゴ官能性有機分子、すなわち、1個またはいくつかの官能基を有する有機分子は、非結合部分が第2の金属、半金属または半導体のプリカーサに関して不活性である(すなわち、反応しない)限り、本発明のすべての実施形態で使用され得る。適切な単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、使用されるポリマー基質、第1のプリカーサおよび第2のプリカーサを考慮して当業者によって決定され得る。一実施形態において、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、金属、半金属または半導体の成分を含まない。好ましくは、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、単官能性有機分子である。
【0073】
一実施形態において、工程(ii)または(ii')の単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、ヒドロキシル、アミノ、カルボン酸、エステル、アミド、シラン、チオール、エポキシ、ニトロおよび酸ハロゲン化物から選択される1個以上の官能基を有する有機分子である。好ましくは、それは、1〜3個の官能基を有する有機分子であり、より好ましくは、それは二官能性(2個の官能基を有する)または単官能性(1個の官能基を有する)であり、より好ましくは、単官能性有機分子である。
【0074】
より特定の実施形態において、工程(ii)または(ii’)の単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、脂肪族または芳香族の単官能性またはオリゴ官能性有機分子、好ましくは脂肪族分子である。好ましい実施形態において、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、ヒドロキシル、アミノ、カルボン酸、スルホン酸、エステル、エーテル、アミド、ハロゲン、シラン、チオール、ハロゲン化物、エポキシ、酸ハロゲン化物から選択される少なくとも1個の官能基で置換された、C−C12アルカン、ペルフルオロ化合物またはC−C18アレーンである。一実施形態において、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、C−C12アルカノールである。
【0075】
別の実施形態において、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、単官能性またはオリゴ官能性ペルフルオロ化合物、好ましくはペルフルオロC−C12アルカン、ペルフルオロC−C12アルケンまたはペルフルオロC−C18アレーンである。
【0076】
一実施形態において、単官能性またはオリゴ官能性有機分子は、単官能性有機分子であり、好ましくは、ヒドロキシル、アミノ、カルボン酸、エステル、アミド、シラン、チオール、エポキシ、ニトロおよび酸ハロゲン化物から選択される1個の官能基を有する有機分子である。一実施形態において、それは脂肪族または芳香族の単官能性有機分子であり、好ましくは脂肪族分子である。好ましい実施形態において、単官能性有機分子は、ヒドロキシル、アミノ、カルボン酸、スルホン酸、エステル、エーテル、アミド、ハロゲン、シラン、チオール、ハロゲン化物、エポキシ、酸ハロゲン化物から選択される1個の官能基で置換されたC−C12アルカン、ペルフルオロ化合物またはC−C18アレーンである。一実施形態において、単官能性有機分子はC−C12アルカノールである。別の実施形態において、単官能性有機分子は、単官能性ペルフルオロ化合物、好ましくはペルフルオロC−C12アルカン、ペルフルオロC−C12アルケンまたはペルフルオロC−C18アレーンであり、より好ましくは、ペルフルオロカルボン酸、例えば、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、ペンタフルオロ安息香酸、ペルフルオロオクタン酸またはペルフルオロノナン酸である。本発明の工程(ii)の第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサまたは単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子は、ポリマー基板表面の官能基と反応することができる。したがって、特定の実施形態において、工程(ii)の第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサまたは単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子は、ポリマー基板の表面の官能基に結合する。
【0077】
一実施形態において、工程(ii)の後に得られるコーティングされたポリマー基板は、ポリマー基板の表面に、第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子のコーティング層を備える。好ましくは、第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子は、ポリマー基板表面の官能基に結合している。より好ましくは、第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子が、ポリマー基板表面のすべての官能基に結合している。
【0078】
工程(ii)または(ii’)の後のポリマー基板の表面の完全な飽和は、例えば、過剰量の第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、および/または単官能性もしくオリゴ官能性有機分子を使用して、ポリマー基板の表面のすべての官能基の反応を確実にすることにより、制御され得る。工程(ii)および(ii’)において、パルスとパージとの間に曝露時間は割り当てられていないため、未反応の過剰量はポリマー基板に含浸せず、パージされる。あるいは、ポリマー基板の表面の飽和は、工程(iii)を実施する前に、ポリマー基板の表面のすべての官能基が反応するまで、工程(ii)および/または(ii’)を数回繰り返すことによって達成され得る。
【0079】
特定の実施形態において、工程(ii)、または工程(ii)〜(ii’)のサイクルを、2回以上、好ましくは5回以上繰り返す。好ましくは1〜1000回、より好ましくは5〜500回、さらにより好ましくは10〜200回繰り返す。したがって、工程(ii)を繰り返すことにより、ポリマー基板の表面は、第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、および/または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子によって飽和される。
【0080】
第1の金属、半金属または半導体のプリカーサが工程(ii)で使用される場合には、コーティング層の厚みは、例えば、工程(ii)〜(iv)または(ii)〜(v)のサイクルの反復回数を制御することによって制御され得る。
【0081】
第1の金属、半金属または半導体のプリカーサは、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサとは異なる。より好ましくは、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサ中の金属は、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサ中の金属とは異なる。
【0082】
特定の実施形態において、本発明の第1および第2の金属、半金属または半導体のプリカーサは、金属ハロゲン化物、金属アルコキシド、金属アルキル、金属ジケトネート、金属アルキルアミド、金属アミジネート、金属アリールおよびシクロペンタジエニル金属から独立して選択され、好ましくは金属ハロゲン化物および金属アルコキシドから独立して選択され、より好ましくは金属アルコキシドから選択される。
【0083】
本発明の文脈において、「金属」という用語は、当技術分野で一般に理解されているものを指し、土類金属、アルカリ土類、遷移金属、ランタニド、アクチニドおよびその他の金属(例えば、B、Al、Ga、In、Tl、Nh、Sn、Pb、Fl、MeおよびLv)を含む。本発明の文脈において、「半金属」またはメタロイドという用語は、当技術分野で一般的に理解されているものを指し、As、Sb、Te、SeおよびBiを含む。本発明の文脈において、「半導体」という用語は、当技術分野で一般的に理解されているものを指し、GeおよびSiを含む。
【0084】
特定の実施形態において、本発明の第1および第2の金属、半金属または半導体のプリカーサは、Al、Zn、Si、Ti、W、Sb、As、Ba、Bi、B、Cd、Ca、Ce、Cr、Co、Cu、Er、Eu、Gd、Ga、Ge、Hf、Fe、La、Mg、Mn、Mo、Ni、Nb、Os、Pt、Pr、Re、Rh、Ru、Sm、Se、Si、Sr、Ta、Te、Tb、Tm、Sn、Ti、W、V、Yb、Y、Zr、Pd、In、IrおよびLiから選択される金属を独立して含み、好ましくは、Al、Zn、Si、TiおよびInから選択される。
【0085】
本発明に適した第1および第2の金属、半金属または半導体のプリカーサの非限定的な例は、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、三塩化アルミニウム、トリフェニルアンチモン、トリス(ジメチルアミド)アンチモン、五塩化アンチモン、トリフェニルアルシン、トリフェニルアルシンオキシド、バリウムビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、硝酸バリウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)バリウム、ビス(トリイソプロピルシクロペンタジエニル)バリウム、ビス(アセト−O)トリフェニルビスマス、トリス(2−メトキシフェニル)ビスムチン、トリイソプロピルボレート、トリフェニルボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、カドミウムアセチルアセトナート、ジメチルカドミウム、カルシウムビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、トリス(テトラメチルシクロペンタジエニル)セリウム(III)、ビス(シクロペンタジエニル)クロム(II)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)クロム(II)、クロム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(II)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルト(II)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)コバルト(II)、コバルトトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、銅ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、銅ビス(6,6,7,7,8,8,8,−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)、銅ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス(N,N’−ジイソプロピルアセトアミジナト)銅(I)、エルビウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、トリス(N,N−ビス(トリメチルシリル)アミド)ユーロピウム(III)、トリス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ユーロピウム(III)、トリス(N,N−ビス(トリメチルシリル)アミド)ガドリニウム(III)、トリス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ガドリニウム(III)、トリス(シクロペンタジエニル)ガドリニウム(III)、トリエチルガリウム、トリメチルガリウム、トリス(ジメチルアミド)ガリウム(III)、ヘキサメチルジゲルマニウム(IV)、テトラメチルゲルマニウム、トリブチルゲルマニウムヒドリド、トリエチルゲルマニウムヒドリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、ビス(メチル−η−シクロペンタジエニル)メトキシメチルハフニウム、ビス(トリメチルシリル)アミドハフニウム(IV)クロリド、ジメチルビス(シクロペンタジエニル)ハフニウム(IV)、ハフニウム(IV)tert−ブトキシド、ハフニウムイソプロポキシド、エトラキス(ジエチルアミド)ハフニウム、エトラキス(ジメチルアミド)ハフニウム、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウム(IV)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]テトラカルボニルモリブデン(0)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄(II)、1,1’−ジエチルフェロセン、鉄(0)ペンタカルボニル、鉄(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、シクロヘキサジエン鉄トリカルボニル、フェロセン、ランタン(III)イソプロポキシド、トリス(N,N−ビス(トリメチルシリル)アミド)ランタン(III)、トリス(シクロペンタジエニル)ランタン(III)、トリス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ランタン(III)、トリス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ランタン(III)、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(II)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マンガン(II)、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)マンガン(II)、ブロモペンタカルボニルマンガン(I)、シクロペンタジエニルマンガン(I)トリカルボニル、マンガン(0)カルボニル、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)テトラカルボニルモリブデン(0)、ビス(シクロペンタジエニル)モリブデン(IV)ジクロリド、シクロペンタジエニルモリブデン(II)トリカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、(プロピルシクロペンタジエニル)モリブデン(I)トリカルボニルダイマー、六フッ化モリブデン、アリル(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ニッケル(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ニッケル(II)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ビス(シクロペンタジエニル)ニオブ(IV)ジクロリド、五フッ化ニオブ、五塩化ニオブ、ニオブペンタエトキシド、ニオブ(V)ヨウ化物、ドデカカルボニル三オスミウム、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、プラセオジミウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ジレニウムデカカルボニル、(アセチルアセトナト)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、トリルテニウムドデカカルボニル、トリス(テトラメチルシクロペンタジエニル)サマリウム(III)、セレン化ジメチル、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、N−sec−ブチル(トリメチルシリル)アミン、クロロペンタメチルジシラン、1,2−ジクロロテトラメチルジシラン、1,3−ジエチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ドデカメチルシクロヘキサシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシラザン、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ペンタメチルジシラン、四臭化ケイ素、四塩化ケイ素、テトラエチルシラン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,1,2,2−テトラメチルジシラン、N,N’,N’’−トリ−tert−ブチルシラントリアミン、トリス(tert−ブトキシ)シラノール、トリス(tert−ペントキシ)シラノール、ジシラン、ストロンチウムテトラメチルヘプタンジオネート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ストロンチウム、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル(V)、タンタル(V)エトキシド、トリス(ジエチルアミド)(tert−ブチルイミド)タンタル(V)、トリス(エチルメチルアミド)(tert−ブチルイミド)タンタル(V)、四塩化テルル、テルビウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、トリス(シクロペンタジエニル)テルビウム(III)、トリス(テトラメチルシクロペンタジエニル)テルビウム(III)、トリス(N,N−ビス(トリメチルシリル)アミド)ツリウム(III)、トリス(シクロペンタジエニル)ツリウム(III)、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]スズ(II)、ヘキサフェニルジスズ(IV)、テトラアリルスズ、テトラキス(ジエチルアミド)スズ、テトラキス(ジメチルアミド)スズ、スズ(IV)ヨウ化物、テトラメチルスズ、テトラビニルスズ、スズ(II)アセチルアセトナート、トリメチル(フェニルエチニル)スズ、トリメチル(フェニル)スズ、テトラキス(ジエチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(エチルメチルアミド)チタン(IV)、チタン(IV)ジイソプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、チタン(IV)イソプロポキシド、四塩化チタン、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(tert−ブチルアミノ)タングステン、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)、ビス(シクロペンタジエニル)タングステン(IV)ジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)タングステン(IV)、六フッ化タングステン、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)タングステン(IV)、テトラカルボニル(1,5−シクロオクタジエン)タングステン(0)、トリアミンタングステン(IV)トリカルボニル、タングステンヘキサカルボニル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウム(II)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)バナジウム(II)、バナジウム(V)オキシトリイソプロポキシド、トリス(N,N−ビス(トリメチルシリル)アミド)イッテルビウム(III)、トリス(シクロペンタジエニル)イッテルビウム(III)、トリス(N,N−ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム、トリス(ブチルシクロペンタジエニル)イットリウム(III)、トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム(III)、イットリウム2−メトキシエトキシド、イットリウム(III)トリス(イソプロポキシド)、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタネジオネート)亜鉛(II)、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(メチル−η5−シクロペンタジエニル)メトキシエチルジルコニウム、ジメチルビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)ジブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウム(IV)2−エチルヘキサノエート、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、パラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、シクロペンタジエニルインジウム、トリメチルインジウム、イリジウム(III)アセチルアセトナートおよびリチウムtert−ブトキシドである。
【0086】
好ましい実施形態において、本発明の第1および第2の金属、半金属または半導体のプリカーサは、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、三塩化アルミニウム、トリフェニルアンチモン、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)亜鉛(II)、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、テトラキス(ジエチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(エチルメチルアミド)チタン(IV)、チタン(IV)ジイソプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、チタン(IV)イソプロポキシド、四塩化チタン、シクロペンタジエニルインジウムおよびトリメチルインジウムから独立して選択される。
【0087】
特定の実施形態において、工程(iii)および(iv)におけるパルスとパージとの間の曝露時間は、5秒以上、好ましくは5〜300秒、より好ましくは10〜180秒、より好ましくは20〜60秒、さらにより好ましくは20〜40秒である。
【0088】
本発明の文脈において、「含浸する」または「含浸」という用語は、特に気体状態のプリカーサ、例えば、金属、半金属または半導体のプリカーサのポリマー基板内への拡散に関する。このプリカーサは、ポリマー基板内の官能基と反応し得る。特定の実施形態において、プリカーサは、ポリマー基板の官能基と反応し、特に、この反応は、ポリマーを分解しない。
【0089】
有機−無機ハイブリッド材料の含浸層の厚みは、工程(iii)で曝露時間を制御することによって制御され得る。一方で、含浸層の密度は、工程(iii)の反復回数によって制御され得る。これらのパラメータはすべて、所望の密度および厚みの含浸層を有する最終材料を得るために、使用されるポリマー基板およびプリカーサに応じて、当業者によって制御され得る。特定の実施形態において、含浸層の厚みは、ポリマー中の含浸層が到達する深さとして理解される。
【0090】
特定の実施形態において、工程(iii)の第2の金属、半金属または半導体のプリカーサは、工程(ii)または(ii’)のコーティングされたポリマー基板に含浸し、ポリマー基板内、好ましくはポリマー基板のバルク内の官能基と結合する。
【0091】
一実施形態において、工程(iii)の第2の金属、半金属または半導体のプリカーサは、工程(ii)または(ii’)で得られたコーティング層と反応することができない。特定の実施形態において、工程(iii)の第2の金属、半金属または半導体のプリカーサは、ポリマー基板の表面の官能基に結合した、第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、および/または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子と反応することができず、したがって、コーティングされたポリマー基板のバルク内に拡散する。
【0092】
一実施形態において、工程(iii)で得られる、コーティングされ含浸されたポリマー基板は、
第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ;単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子;または第1の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分、および単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子の、ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属、半金属または半導体のプリカーサの、ポリマー基板内の含浸層と
を備え、好ましくは、第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子がポリマー基板表面の官能基に結合し、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサがポリマー基板のバルクの官能基に結合し、より好ましくは、第1の金属、半金属もしくは半導体のプリカーサ、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子がポリマー基板表面のすべての官能基に結合し、第2の金属、半金属または半導体のプリカーサがポリマー基板のバルクの官能基に結合する。
【0093】
共反応剤という用語は、金属、半金属または半導体のプリカーサを活性化して、金属、半金属または半導体のプリカーサを修飾して、あるいは、金属、半金属または半導体のプリカーサの反応を触媒して、それを所望の金属、半金属または半導体の化合物または成分に変換し、コーティング層または含浸層のいずれかを形成するためにポリマー基板に組み込まれる化合物を指す。適切な共反応剤は当技術分野でよく知られている。
【0094】
特定の実施形態において、工程(iv)または工程(v)の共反応剤は、酸素源、水素源、硫黄源および窒素源から選択され、好ましくは酸素源である。より特定の実施形態において、工程(iv)または工程(v)の共反応剤は、HO、O、O、水素、BH、B、HS、金属水素化物、NHおよびヒドラジンから選択され、好ましくはHO、OまたはOであり、より好ましくはHOである。
【0095】
特定の実施形態において、工程(iv)または工程(v)の共反応剤は、第1の金属、半金属または半導体のプリカーサおよび/または第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応して、金属、半金属または半導体の化合物または成分をもたらす。この金属、半金属または半導体の化合物または成分は、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物およびゼロ価金属から独立して選択され、好ましくは金属酸化物である。
【0096】
一実施形態において、工程(iv)または工程(v)で得られる、コーティングされ含浸されたポリマー基板は、
第1の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分;単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子;または第1の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分、および単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子の、ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含む、ポリマー基板内の含浸層と
を備え、第1および第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分とが異なり、コーティング層が、第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含まない。
【0097】
特定の実施形態において、第1の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分を含むコーティング層および/または第2の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分を含む含浸層は、Al、Zn、Si、TiおよびInから選択される金属を含む。より特定の実施形態において、第1の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分を含むコーティング層および/または第2の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分を含む含浸層は、金属酸化物、好ましくはAl、ZnO、SiO、TiOおよびInから独立して選択される金属酸化物、より好ましくはAl、ZnO、TiOおよびInから独立して選択される金属酸化物を含む。
【0098】
特定の実施形態において、共反応剤は酸素源、好ましくはHOであり、ポリマー基板にコーティングされ、かつ/あるいは含浸する金属、半金属または半導体の化合物または成分は、金属酸化物、好ましくはAl、ZnO、SiO、TiOおよびInであり、より好ましくはAl、ZnO、TiOおよびInから選択される。
【0099】
特定の実施形態において、金属、半金属または半導体の化合物または成分は、1種以上の金属、半金属または半導体の成分、および1種以上の別の成分を含む金属、半金属または半導体である。別の実施形態において、それは、酸化状態がゼロの金属、半金属、または半導体の成分である。
【0100】
特定の実施形態において、本発明の方法を、50〜300℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは約150℃の温度で実施する。一実施形態において、本発明の方法を、1mbar〜1034mbar、好ましくは100mbar〜800mbar、より好ましくは500mbar〜700mbarの圧力で実施する。より特定の実施形態において、本発明の方法を、10〜500標準状態立方センチメートル/分(sccm:standard cubic centimeters per minute)、好ましくは15〜50標準立方センチメートル/分(sccm)、より好ましくは20標準立方センチメートル/分(sccm)の一定の窒素ガス流の下で実施する。
【0101】
特定の実施形態において、本発明のコーティング層は、1〜200nm、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜50nmの厚みを有する。
【0102】
特定の実施形態において、本発明の含浸層は、1〜1000nm、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜100nmの厚みを有する。
【0103】
より特定の実施形態において、本発明の方法は、以下の工程:
i)反応チャンバ内に芳香族ポリアミド基板、好ましくは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド基板を準備する工程;
ii)トリメチルアルミニウム(TMA)、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、ジエチル亜鉛(DEZ)およびトリメチルインジウムから選択された第1の金属、半金属または半導体のプリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、トリメチルアルミニウム(TMA)、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、ジエチル亜鉛(DEZ)またはトリメチルインジウムでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間がない工程;
iii)トリメチルアルミニウム(TMA)、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、ジエチル亜鉛(DEZ)およびトリメチルインジウムから選択された第2の金属、半金属または半導体のプリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、トリメチルアルミニウム(TMA)、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、ジエチル亜鉛(DEZ)およびトリメチルインジウムから選択された第1の金属、半金属または半導体のプリカーサでコーティングされ、トリメチルアルミニウム(TMA)、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、ジエチル亜鉛(DEZ)およびトリメチルインジウムから選択された第1の金属、半金属または半導体のプリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)水を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、Al、TiO、ZnOおよびInから選択されたコーティング層を備え、Al、TiO、ZnOおよびInから選択された無機特性を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、水が、第1および第2の金属、半金属または半導体のプリカーサと反応する工程
を含んでなる。ただし、コーティング層の金属、半金属または半導体の化合物または成分と、含浸層の金属、半金属または半導体の化合物または成分とは異なる。
【0104】
別の特定の実施形態において、本発明の方法は、以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリパラフェニレンテレフタルアミド基板を準備する工程;
ii)トリメチルアルミニウム(TMA)を反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、トリメチルアルミニウム(TMA)でコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間がない工程;
iii)ジエチル亜鉛(DEZ)を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、トリメチルアルミニウム(TMA)でコーティングされ、ジエチル亜鉛(DEZ)を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が10〜50秒である工程;および、
iv)場合により、水を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、Alでコーティングされ、ZnOを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が10〜50秒であり、水が第1及び第2の金属と反応する工程
を含んでなる。
【0105】
特定の実施形態では、その特定の実施形態のいずれかにおける本発明の方法の工程(ii)〜(iii)または(ii)〜(iv)または(ii)〜(v)のサイクルを、50回以上、好ましくは1〜1000回、より好ましくは10〜400回の間、さらにより好ましくは50〜300回繰り返す。
【0106】
特定の実施形態では、その特定の実施形態のいずれかにおける本発明の方法の各工程を、独立して、所望の回数、好ましくは2回以上、より好ましくは2〜200回、さらにより好ましくは5〜100回繰り返す。
【0107】
特定の実施形態において、本発明の方法は、本明細書に開示されるような工程(i)〜(iv)または(i)〜(v)からなる。しかしながら、本発明の方法はまた、その他のプリカーサでパルスして、さらなる含浸材料を追加することによって、ポリマー基板の表面下領域に異なる組成のセクションを生成する、さらなる工程を含むこともできる。この方法はまた、その他のプリカーサまたは反応剤でパルスして、ポリマー基板の表面上にさらなるコーティング材料を追加する、さらなる工程を含むことができる。
【0108】
第2の態様において、本発明は、上記のその実施形態のいずれかにおける本発明の方法によって得ることができる有機−無機ハイブリッド材料に関する。
【0109】
第3の態様において、本発明は、
ポリマー基板と、
第1の金属、半金属もしくは半導体の化合物もしくは成分、または単官能性もしくはオリゴ官能性有機分子、またはそれらの混合物を含んでなる、ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、ポリマー基板内の含浸層と
を備える有機−無機ハイブリッド材料であって、
第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分と、第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分とは異なり、かつ、
コーティング層は、第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含まない、有機−無機ハイブリッド材料に関する。
【0110】
特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、
ポリマー基板と、
第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、ポリマー基板内の含浸層と
を備える。
【0111】
別の特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、
ポリマー基板と、
ポリマー基板の表面と接触する第1の層と、第1の層と接触する第2の層とを備える、ポリマー基板の表面上のコーティング層であって、第1の層が、第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなり、第2の層が、単官能性またはオリゴ官能性有機分子を含んでなる、コーティング層と、
第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、ポリマー基板内の含浸層と
を備える。
【0112】
別の特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、
ポリマー基板と、
単官能性またはオリゴ官能性有機分子を含んでなる、ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分を含んでなる、ポリマー基板内の含浸層と
を備える。
【0113】
有機−無機ハイブリッド材料に関連する、ポリマー基板;コーティング層;含浸層;第1の金属、半金属または半導体の化合物または成分;第2の金属、半金属または半導体の化合物または成分;および単官能性またはオリゴ官能性有機分子に対する特定の好ましい実施形態は、本発明の方法について既に定義されている。
【0114】
特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料のコーティング層は、金属酸化物、金属窒化物および金属状態の金属、好ましくは金属酸化物、より好ましくはAl、ZnO、InまたはTiOから選択される金属、半金属または半導体の化合物または成分を含む。好ましい実施形態において、コーティング層はAlを含む。
【0115】
特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の含浸層は、金属酸化物、金属窒化物および金属状態の金属、好ましくは金属酸化物、より好ましくはAl、ZnO、InまたはTiOから選択される金属、半金属または半導体の化合物または成分を含む。好ましい実施形態において、含浸層はZnOを含む。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、
芳香族ポリアミド基板、好ましくはポリパラフェニレンテレフタルアミド基板と、
Al、ZnO、InおよびTiOから選択される、基板の表面上のコーティング層と、
Al、ZnO、InまたはTiOを含んでなる、基板内の含浸層と
を備え、コーティング層と含浸層との材料は異なる。
【0117】
より好ましい実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、
ポリパラフェニレンテレフタルアミド基板と、
Alの、ポリパラフェニレンテレフタルアミド基板の表面上のコーティング層と、
ZnOを含んでなる、パラフェニレンテレフタルアミド基板内の含浸層と
を備える。
【0118】
特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料のコーティング層は、0.06nm〜200nm、好ましくは1〜200nm、好ましくは1〜150nm、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜50nmの厚みを有する。
【0119】
一実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の含浸層は、1nmを超える、好ましくは2nmを超える、より好ましくは10nmを超える厚みを有する。特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の含浸層は、1〜1000nm、好ましくは5〜200nm、より好ましくは5〜100nm、さらにより好ましくは10〜100nmの厚みを有する。
【0120】
一実施形態において、コーティング層は1〜200nmの厚みを有し、含浸層は1〜1000nmの厚みを有する。別の実施形態において、コーティング層は5〜100nmの厚みを有し、含浸層は5〜200nmの厚みを有する。さらなる実施形態において、コーティング層は10〜50nmの厚みを有し、含浸層は5〜100nmの厚みを有する。
【0121】
含浸層またはコーティング層の厚みを、電子顕微鏡法、具体的には透過型電子顕微鏡法によって決定することができ、好ましくは集束イオンビームで基板を切断し、Arでのスパッタリングによりスライスを透過型電子顕微鏡による試験に適切な厚みに薄くすることによって得られた断面サンプルの試験後に決定することができる。
【0122】
本発明の別の実施形態において、含浸層の厚みは、ポリマー基板の総厚みの0.05%〜15%、好ましくは0.05%〜10%、より好ましくは0.05%〜5%、さらにより好ましくは0.1%〜1%を表す。
【0123】
特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の靭性係数は、ポリマー基板の靭性係数よりも10%以上増加する。特定の実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の破断ひずみ値は、ポリマー基板の破断ひずみ値と同等であるか、あるいはポリマー基板の破断ひずみ値よりも増加する。好ましくは、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、ポリマー基板よりも10%以上大きい破断ひずみを有する。特定の実施形態において、本発明の照射された有機−無機ハイブリッド材料の靭性係数は、ポリマー基板の靭性係数の90%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは110%以上である。本発明の文脈において、「照射された」という用語は、365nmの波長を有するUV光に24時間さらされることを指す。特定の実施形態において、本発明の照射された有機−無機ハイブリッド材料の靭性係数は、室温(20〜25℃)で30MJ/m以上の値である。
【0124】
一実施形態において、本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、繊維、好ましくは直径が5〜20ミクロンで、長さが1〜5cmである繊維、より好ましくは直径が約10ミクロンで、長さが約3cmである繊維である。
【0125】
本発明では、サンプルの機械的特性を、ASTM規格C1557−03試験(2008)[ASTM C1557−03(2008)、繊維の引張強度およびヤング率の標準試験方法、ASTM International,West Conshohocken,PA,2008]に従って測定する。
【0126】
本発明者らは、本発明の有機−無機ハイブリッド材料が、それらの置換基の別個の特性を驚くほど維持するか、またはそれを上回ることさえあり、特に、ポリマー基板の機械的特性を維持し、あるいは、向上させることを見出した。特に、本発明者らは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド基板と、ポリパラフェニレンテレフタルアミド基板の表面上のAlのコーティング層と、パラフェニレンテレフタルアミド基板内のZnOの含浸層とを含む有機−無機ハイブリッド材料が、基板の機械的特性を維持し、あるいは向上させるとともに、該有機−無機ハイブリッド材料の特性が、基板の別個の特性(特に紫外線に対する耐性)よりも優れていることを見出した。
【0127】
さらなる態様において、本発明は、柔軟で軽いポリマートランジスタ、コンデンサ、光電子デバイス、バリア、吸収体、個人用安全装置(例えば、防弾ベストおよび軍事用装備)、スポーツ用品、保護ラミネート、建築材料、繊維製品、自動車および航空機の製造における、本発明の有機−無機ハイブリッド材料の使用に関する。
【実施例】
【0128】
本発明の範囲を決して制限しない以下の実施例によって、本発明を説明する。
【0129】
例1:Alでコーティングされたケブラー繊維、Alを含浸させたケブラー繊維、およびAlでコーティングされ、Alを含浸させたケブラー繊維の作製、ならびにそれらの引張強度およびUV耐性の特性評価
異なる繊維:
a)Alでコーティングされたケブラー繊維;
b)Alを含浸させたケブラー繊維;
c)ZnOでコーティングされたケブラー繊維;
d)ZnOを含浸させたケブラー繊維;
e)Alでコーティングされ、ZnOを含浸させたケブラー繊維
を作製した。
【0130】
すべての試験で、ケブラー繊維と呼ばれるポリ(p−パラフェニレンテレフタルアミド)繊維(デュポン製のケブラー(登録商標)29繊維)を使用した。繊維の直径は約10μm、繊維の長さは約3cmであった。さらに、市販の原子層堆積(ALD)リアクター(Savannah S100、Cambridge NanoTech Inc)で、サンプルのすべての改変を実施した。繊維の含浸およびコーティングを、20標準立方センチメートル/分(sccm)の一定の窒素ガス流下で、150℃で実施した。
【0131】
アルミニウム源としてトリメチルアルミニウム(TMA、Al(CH、Strem Chemicals)を使用し、亜鉛源としてジエチル亜鉛(DEZ、Zn(C)を使用し、酸素源として脱塩水を使用した。
【0132】
パルス(TMA、0.08秒)/パージ(N、30秒)/パルス(HO、0.08秒)/パージ(N、30秒)からなるサイクルを伴う典型的なALDプロセスに従って、Alコーティングされた繊維を作製した。パルス(DEZ、0.08秒)/パージ(N、30秒)/パルス(HO、0.08秒)/パージ(N、30秒)からなるサイクルを伴う典型的なALDプロセスに従って、ZnOコーティングされた繊維を作製した。その一方、MPIによって含浸繊維を作製した。ここで、基板をプリカーサに規定の期間曝露し、次いで、パージすることによって、プリカーサのポリマーへの拡散を可能にした。Al含浸繊維のMPIサイクルは、パルス(TMA、0.08秒)/曝露(30秒)/パージ(N、30秒)/パルス(HO、0.08秒)/曝露(30秒)/パージ(N、30秒)からなっていた。ZnO含浸繊維のMPIサイクルは、パルス(DEZ、0.08秒)/曝露(30秒)/パージ(N、30秒)/パルス(HO、0.08秒)/曝露(30秒)/パージ(N、30秒)からなっていた。最後に、アルミナでコーティングされ、ZnOを含浸させたサンプルの作製には、ALDおよびMPIの組み合わせを使用した。各サイクルは、パルス(TMA、0.08秒)/パージ(N、30秒)/パルス(DEZ、0.08秒)/曝露(30秒)/パージ(N、30秒)/パルス(HO、0.08秒)/曝露(30秒)/パージ(N、30秒)からなっていた。すべての場合において、ALD、MPIまたはALD/MPIサイクルの反復回数は200であった。
【0133】
繊維の特性評価、引張強度およびUV耐性試験
TEM/EDSの特性評価
STEMモードで300kVを使用し、EDAX SDD検出器を使用するFEI Titan顕微鏡で、透過型電子顕微鏡(TEM)による特性評価およびエネルギー分散型X線分光法(EDS)による分析を実施した。
【0134】
ケブラー繊維を凸状のアルミニウムSEMスタブ(社内で準備)全体にそっと伸ばし、繊維の両端をカーボンテープで固定することによって、FIB薄板を作製した。ブロック抽出の位置を選択すると、沈着したPtで繊維を基板に局所的に固定し、ブロックを標準的な方法で抽出した。最初にPt電子ビーム蒸着を使用してサンプル表面を保護した後、イオンビーム蒸着を実施した。最終的な表面処理のために、8pAの5kVガリウムイオンビームを使用して、銅の「オムニプローブ」グリッド上でブロックを透明になるまで薄くした。
【0135】
図1は、(a)アルミナでコーティングされたケブラー(C−Al)、(b)アルミナを含浸させたケブラー(I−Al)および(c)アルミナでコーティングされ、ZnOを含浸させたケブラー(TMAパルス)のFIBで作製した断面のTEM画像を示す。図1(d)は、TMAパルスサンプルのEDSカラーマップを示す。画像は、2種の異なる材料を使用した混合ALD/MPI法(図1c)に加えて、ALDコーティング法(図1a)とMPI含浸(図1b)との違いを明確に示している。特に、アルミナでコーティングされたケブラー繊維(C−Al)は、Al薄膜とポリマーコアとの間に鮮明な界面を有していたが(図1a)、アルミナを含浸させたケブラー繊維では、TMAがポリマー内に拡散し、第2の密度の低いAl層をポリマーの表面下領域形成した(図1b)。
【0136】
アルミナでコーティングされ、ZnOを含浸させたケブラー繊維のTEM画像は、繊維の表面に約20nmのAlの薄膜と、ポリマーの表面下領域に約10nmの含浸させたZnO層とを示す(図1cおよびd)。
【0137】
したがって、ALD/MPI技術の組み合わせにより、Alの均質で鮮明な層でコーティングされ、異なる材料(ZnO)を含浸させたケブラー繊維を合成可能である。
【0138】
機械的特性とUV照射
引張試験は、解像度50μNのBRUKERユニバーサルメカニカルテスターを使用し、ASTM規格C1557−03(2008)[ASTM C1557−03(2008)、繊維の引張強度およびヤング率の標準試験方法、ASTM International,West Conshohocken,PA,2008]に従って実施した。中央に直径6mmのパンチ穴があるボール紙のサンプルホルダーに繊維を固定した。穴を横切って繊維を垂直に位置合わせして固定した後、繊維にひずみがない状態でサンプルホルダーをメカニカルテスターに配置した。最後に、サンプルホルダーを中央ガイドに沿って切断し、繊維が破断するまで引張力を加え、同時に室温でひずみを測定した。
【0139】
UV光下での繊維の安定性を測定するために、サンプルを365nmの波長の光に24時間さらした。次いで、ひずみ−応力曲線を測定し、未曝露繊維の機械的特性と比較した。
【0140】
図2は、未処理のケブラー繊維、Alによる含浸(I−Al)またはコーティング(C−Al)後の繊維、ZnOによる含浸(I−ZnO)またはコーティング(C−ZnO)後の繊維、ならびにZnOによる含浸およびAlによるコーティング(TMAパルス)後の繊維の機械的特性の比較を示している。AlによるI−AlおよびC−Al、ならびにTMAパルスサンプルは、未処理のケブラーと比較して靭性係数の増加を示した(図2a)。しかしながら、靭性係数の13%の増加を示したにもかかわらず、Alでコーティングされたサンプルは、未処理のケブラーと比較して破断ひずみ値の大幅な減少を示した。反対に、I−Alはケブラーと同様の破断ひずみ値を有していたが、靭性係数の増加はわずか5%であった。C−ZnOおよびI−ZnOは、未処理のケブラーと比較して靭性係数の低下を示した(図2a)。それにもかかわらず、ZnOを含浸させ、Alでコーティングされたサンプル(TMAパルスサンプル)は、靭性係数の最大の増加を示し(未処理のケブラー繊維の17%超)、ケブラーと同様の破断ひずみ値およびAlコーティングされたサンプル(C−Al)と同様のヤング率またはUTS値を示した。
【0141】
したがって、ZnOを含浸させ、Alでコーティングされたケブラー繊維(TMAパルスサンプル)は、残りのサンプルよりも優れた機械的特性を示した。
【0142】
繊維をUV光に24時間さらした後、コーティングされ含浸させたサンプルの機械的特性をさらに分析した。図2aはUV光照射前後の靭性係数の結果を示し、図2bはUV光照射前後の応力−ひずみ曲線を示している。
【0143】
未処理のケブラーは、UV光にさらされた後に45%の靭性係数しか維持しなかった(図2a)。I−AlおよびC−Alサンプルは、より高いUV耐性を示し、それぞれ65%および70%の靭性係数を維持した。I−ZnOおよびC−ZnOサンプルは、70%の靭性係数の低下および5%未満の靭性係数の低下を示した。しかしながら、ZnOを含浸させ、Alでコーティングされたサンプル(TMAパルスサンプル)は、UV光に対する耐性の大幅な改善を示した。実際、UV光にさらされた後でも、100%の靭性係数が維持され、UV感受性の完全な抑制が観察された。
【0144】
SEM
引張試験後の繊維の形態もSEMによって分析した。大視野検出器(LFD:large field detector)を備えた環境制御走査型電子顕微鏡Quanta 250FEGによって、SEM顕微鏡写真を撮影した。破断した繊維をカーボンテープに貼り付け、10kVおよび70Paで画像を撮影した。
【0145】
図3は、照射前のケブラーと比較した、UV光照射後の未処理ケブラーサンプル、コーティングされたケブラーサンプル、および含浸させたケブラーサンプルの破断末端のSEM画像を示している。繊維の破断末端は、コーティングまたは含浸である前処理に応じて、破断様式が繊維状または脆性であることを示す。図3は、ケブラー繊維の破断が主にフィブリル化と繊維軸に沿った割裂によって引き起こされたことを示している。対照的に、UV照射されたサンプルの破断領域は、ごくわずかなフィブリル化を示した。この破断様式は、脆性材料の特徴であり、UVによって誘発されるポリマー鎖の切断反応によって引き起こされ、繊維の引張弾性率および強度が弱まる。同じ破断様式が、UV照射後のC−AlおよびI−Alのケブラーサンプルで観察され、AlコーティングがUVによって誘発される連鎖切断反応を防止しないことを示している。反対に、UV光にさらした後の、ZnOを含浸させ、Alでコーティングされたケブラー繊維(TMAパルスUVサンプル)は、未処理のケブラーに特徴的な繊維状タイプの破断を示した。縦方向の割裂およびフィブリル化は、アルミナコーティングおよびZnO含浸の組み合わせが繊維を大幅には脆化させないことを示した。
【0146】
減衰全反射−フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR)
サンプルの減衰全反射−フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR)スペクトルを、ATRサンプリングステージを備えたPerkin ElmerFrontier分光計で取得した。1cm−1の分解能で520〜4000cm−1の範囲で20回のスキャンを収集して、すべてのスペクトルを測定した。各サンプルを5回測定し、結果を平均した。
【0147】
図4は、コーティングおよび含浸の前後のケブラー繊維のATR−FTIRスペクトルの指紋領域(1200〜800cm−1)を示している。ここで、サンプルのATR−FTIRスペクトルの指紋領域(1000〜800cm−1)におけるC−N、C−OおよびC−C結合の伸縮の特徴(stretching signature)は、
ケブラー繊維表面のアミドのC=O結合の酸素に対するルイス酸であるTMAの結合によるC−O単結合の存在に関連する940cm−1のピーク、
新しく生成されたC−C結合に起因するC−C伸縮に割り当てられた約960cm−1のピーク、および、
C−N結合に関連する980cm−1の顕著なピークとして見られる。
【0148】
940および960cm−1ピークの強度は、TMAパルスサンプルの方が低く、AlコーティングサンプルおよびAl含浸サンプルよりも穏やかな程度の化学修飾を示している。さらに、未処理のケブラーのC−N結合に関連する980cm−1のピークは、ZnOを含浸させ、AlでコーティングされたサンプルのATR−FTIRスペクトルで見ることができるが、このピークはC−AlおよびI−Alサンプルではほとんど消失した。したがって、アルミナで処理されたサンプルは、より強く分解されたポリマー鎖を有している。
【0149】
したがって、ZnOを含浸させ、Alでコーティングされたケブラー繊維は、オリジナルのケブラー繊維よりも機械的特性(強度および柔軟性)の改善を示し、UV曝露後の特性の劣化はなかった。
【0150】
実施例2:TiOでコーティングされ、Inを含浸させたケブラー繊維の作製。
ケブラー繊維を、実施例1に記載のプロセスに従ってコーティングし、含浸させたが、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)の0.08秒のパルス、次いで、30秒のパージ(ALD様パルス);トリメチルインジウムの0.08秒のパルス、次いで、30秒の曝露、次いで、30秒のパージ(MPI様パルス);および水の0.08秒のパルス、次いで、30秒の曝露、次いで、30秒のパージ(MPI様パルス)からなるALD/MPIサイクルを使用した。コーティングおよび含浸のプロセスは、200サイクルのALD/MPIで構成されていた。
【0151】
実施例3:Alでコーティングされ、Inを含浸させたケブラー繊維の作製。
ケブラー繊維を、実施例1に記載のプロセスに従ってコーティングし、含浸させたが、トリメチルアルミニウムの0.08秒のパルス、次いで、30秒のパージ(ALD様パルス);トリメチルインジウムの0.08秒のパルス、次いで、30秒の曝露、次いで、30秒のパージ(MPI様パルス);および水の0.08秒のパルス、次いで、30秒の曝露、次いで、30秒のパージ(MPI様パルス)からなるALD/MPIサイクルを使用した。コーティングおよび含浸のプロセスは、200サイクルのALD/MPIで構成されていた。
【0152】
本発明は、以下の実施形態でさらに定義される。
【0153】
実施形態1
以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)第1の金属プリカーサまたは単官能性有機分子を反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージする工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間を伴わない工程;
iii)第2の金属プリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージする工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージする工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、かつ、共反応剤が、工程(ii)で単官能性有機分子がパルスされていない場合には、第1の金属プリカーサと反応し、かつ、共反応剤が、第2の金属プリカーサと反応する工程
を含んでなる、有機−無機ハイブリッド材料を製造する方法。
【0154】
実施形態2
以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)第1の金属プリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属プリカーサでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間を伴わない工程;
iii)第2の金属プリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属プリカーサでコーティングされ、第2の金属プリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属化合物でコーティングされ、第2の金属化合物を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、共反応剤が、第1および第2の金属プリカーサと反応する工程
を含んでなる、実施形態1の方法。
【0155】
実施形態3
以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)第1の金属プリカーサを反応チャンバにパルスし、反応チャンバをパージして、第1の金属プリカーサでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間を伴わない工程;
ii’)単官能性有機分子を反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属化合物と単官能性有機分子とでコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間を伴わずに、単官能性有機分子が第1の金属プリカーサと反応する工程;
iii)第2の金属プリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属プリカーサと単官能性有機分子とでコーティングされ、第2の金属プリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、第1の金属化合物と単官能性有機分子とでコーティングされ、前記第2の金属化合物を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、共反応剤が第2の金属プリカーサと反応する工程
を含んでなる、実施形態1または2の方法。
【0156】
実施形態4
以下の工程:
i)反応チャンバ内にポリマー基板を準備する工程;
ii)単官能性有機分子を反応チャンバにパルスし、次いで、反応チャンバをパージして、単官能性有機分子でコーティングされたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間に曝露時間を伴わない工程;
iii)金属プリカーサを反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、単官能性有機分子でコーティングされ、第2の金属プリカーサを含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上である工程;および、
iv)共反応剤を反応チャンバにパルスし、次いで、曝露時間を設け、次いで、反応チャンバをパージして、単官能性有機分子でコーティングされ、金属化合物を含浸させたポリマー基板を得る工程であって、パルスとパージとの間の曝露時間が5秒以上であり、共反応剤が第2の金属プリカーサと反応する工程
を含んでなる、実施形態1の方法。
【0157】
実施形態5
第1の金属プリカーサが第2の金属プリカーサとは異なる、実施形態1〜4のいずれかの方法。
【0158】
実施形態6
実施形態1〜5のいずれかの方法により得ることができる有機−無機ハイブリッド材料。
【0159】
実施形態7
ポリマー基板と、
第1の金属化合物または単官能性有機分子またはそれらの混合物を含んでなる、ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属化合物を含んでなる、ポリマー基板内の含浸層と
を備える有機−無機ハイブリッド材料であって、
第1および第2の金属化合物は異なり、
コーティング層は、第2の金属化合物を含まない、有機−無機ハイブリッド材料。
【0160】
実施形態8
ポリマー基板と、
第1の金属化合物を含んでなる、ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属化合物を含んでなる、ポリマー基板内の含浸層と
を備える、あるいは、
ポリマー基板と、
単官能性有機分子を含んでなる、ポリマー基板の表面上のコーティング層と、
第2の金属化合物を含んでなる、ポリマー基板内の含浸層と
を備える、あるいは、
ポリマー基板と、
ポリマー基板の表面と接触する第1の層と、第1の層と接触する第2の層とを備える、ポリマー基板の表面上のコーティング層であって、第1の層が第1の金属化合物を含んでなり、第2の層が単官能性有機分子を含んでなる、コーティング層と、
第2の金属化合物を含んでなる、ポリマー基板内の含浸層と
を備える、実施形態7の有機−無機ハイブリッド材料。
【0161】
実施形態9
ポリマー基板が、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアルキレン、ポリアクリレート、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリビニル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリスチレンおよびポリケトンから選択される、実施形態1〜5のいずれかの方法、または実施形態6〜8のいずれかの有機−無機ハイブリッド材料。
【0162】
実施形態10
ポリマー基板が、芳香族ポリアミド、例えば、パラアラミドおよびメタアラミドポリマーから選択される、実施形態1〜5および9のいずれかの方法、または実施形態6〜9のいずれかの有機−無機ハイブリッド材料。
【0163】
実施形態11
第1および第2の金属化合物が、独立して、Al、Zn、Si、Ti、W、Sb、As、Ba、Bi、B、Cd、Ca、Ce、Cr、Co、Cu、Er、Eu、Gd、Ga、Ge、Hf、Fe、La、Mg、Mn、Mo、Ni、Nb、Os、Pt、Pr、Re、Rh、Ru、Sm、Se、Sr、Ta、Te、Tb、Tm、Sn、Ti、W、V、Yb、Y、Zr、Pd、In、IrおよびLiから選択される金属を含む、実施形態1〜5および9〜10のいずれかの方法、または実施形態6〜10のいずれかの有機−無機ハイブリッド材料。
【0164】
実施形態12
第1および第2の金属化合物が、金属酸化物、金属窒化物およびゼロ価金属から独立して選択される、実施形態1〜5および9〜11のいずれかの方法、または実施形態6〜11のいずれかの有機−無機ハイブリッド材料。
【0165】
実施形態13
第1および第2の金属化合物が、Al、ZnO、SiO、InおよびTiOから独立して選択される、実施形態1〜5および9〜12のいずれかの方法、または実施形態6〜12のいずれかの有機−無機ハイブリッド材料。
【0166】
実施形態14
単官能性有機分子が、ヒドロキシル、アミノ、カルボン酸、エステル、アミド、シラン、チオール、エポキシ、ニトロおよび酸ハロゲン化物から選択される1個の官能基を有する脂肪族または芳香族の単官能性有機分子である、実施形態1〜5および9〜13のいずれかの方法、または実施形態6〜13のいずれかの有機−無機ハイブリッド材料。
【0167】
実施形態15
柔軟で軽いポリマートランジスタ、コンデンサ、光電子デバイス、バリア、吸収体、個人用安全装置、スポーツ用品、保護ラミネート、建築材料、繊維製品、自動車材料および航空機材料の製造における、実施形態6〜13のいずれかに規定される有機−無機ハイブリッド材料の使用。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】