特表2021-532273(P2021-532273A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-532273カルシウム、アルミニウム、ケイ素合金、ならびにその生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532273(P2021-532273A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】カルシウム、アルミニウム、ケイ素合金、ならびにその生産方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 30/00 20060101AFI20211029BHJP
【FI】
   C22C30/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2021-522938(P2021-522938)
(86)(22)【出願日】2019年7月3日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月1日
(86)【国際出願番号】US2019040514
(87)【国際公開番号】WO2020010206
(87)【国際公開日】20200109
(31)【優先権主張番号】1020180136445
(32)【優先日】2018年7月3日
(33)【優先権主張国】BR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521001962
【氏名又は名称】ボゼル・ブラジル・ソシエダ・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】BOZEL BRASIL SA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン・クルーガー,パウロ
(72)【発明者】
【氏名】デ・オリヴェイラ,ルペルシオ・タルチシオ
(72)【発明者】
【氏名】ラージェ,ウイルソン・アルヴェス
(72)【発明者】
【氏名】ダ・シルヴァ・ネト,フランシスコ・シャヴィエル
(57)【要約】
金属合金の加工に有用なカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金、およびその生産方法について記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約15〜45%のCaと、20〜40%のAlと、20〜40%のSiとを含むことを特徴とする、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金。
【請求項2】
Ca、Al、およびSiが、化学的に結合していることを特徴とする、請求項1に記載のカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金。
【請求項3】
前記カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金が、Ca、Al、およびSi間の前記化学結合から生じる相乗的な脱酸効果を有することを特徴とする、請求項2に記載のカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金。
【請求項4】
カルシウム源が、一次石灰、消石灰、石灰石、および他の炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1に記載のカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金。
【請求項5】
アルミニウム源の源が、ボーキサイトおよびケイ酸アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載のカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金。
【請求項6】
ケイ素源が、石英、珪岩、およびケイ酸アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載のカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金。
【請求項7】
前記カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金が、より少ない含有量で、他の元素、とりわけ、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金。
【請求項8】
前記カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金が、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、および他の金属を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、およびケイ素(Si)合金。
【請求項9】
前記源が、スラグ、炉フィルター粉末、ならびにCa、Al、およびSi以外の合金であることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一項に記載のカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年7月3日に出願されたブラジル特許出願番号第BR10 2018 013644 5の優先権の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0002】
[技術分野]
以下に記載の製品および方法は、鉄鋼業界、より具体的には鉄鋼および他の合金の生産に適用され得る。
【0003】
[基礎]
鉄鋼生産プロセスは、合金の形成およびその精錬という2つの基本的な工程に集約でき、これらは連続して実行される。鉄鋼は、様々な金属合金の添加によって形成され、その後、様々な技術によって精錬される。
【0004】
精錬工程は、脱気、すなわち酸素、窒素、および水素含有量の還元に加えて、球状介在物などの非金属介在物の脱硫、改質、および除去を含み得る。
【0005】
介在物は製品の機械的特徴に影響を与える可能性があるため、非金属介在物の脱硫および改質および除去は、高品質の鉄鋼を得るための基礎である。非金属介在物は、鉄鋼中に存在する不純物であり、その量、サイズ、形態、および化学組成に応じて、鉄鋼の特性が多かれ少なかれ変化する。ほとんどの場合、非金属介在物は、製品に有害であると考えられ得る。例えば、硫化鉄(FeS)の介在物は、鉄鋼の融点に比べて融点が非常に低いため(FeSは約1000℃で溶融する)、通常1000℃を超えて実行される高温の機械的成形プロセスにおける介在物の存在によって、鉄鋼にいわゆる「熱脆性」が与えられる。
【0006】
これらの理由から、鉄鋼業界は、「より清浄な鉄鋼」、その結果としてより均質でより良好な機械的特性を備えた鉄鋼を生産するために、鉄鋼中の非金属介在物のレベルを低減および制御しようと努めてきた。
【0007】
非金属介在物は、一般に、製造プロセス中の反応、冷却中の析出、または溶鋼が接触する材料の機械的組み込みの結果として生じる。これらの介在物は、形態学的に改質され得るか、または例えばカルシウム合金、シリコン合金、アルミニウム合金での処理によって排除され得る。
【0008】
カルシウム、ケイ素、およびアルミニウムを含む鉄鋼の精錬に使用される金属合金は、当技術分野で広く知られており、世界中の多くの製造業者および供給業者によって大規模に生産および商品化されている。
【0009】
このような合金には、例えば、カルシウム−ケイ素(CaSi)合金、鉄−ナトリウム−マンガン(FeSiMn)合金、およびアルミン酸カルシウム合金が含まれ、1つ目は、脱酸剤および介在物の形態学的制御剤であり、2つ目は、複合脱酸剤であり、3つ目は、精錬効率を高め、かつ他の可能な用途も有する。
【0010】
前述の既存の合金は、それぞれの目的で比較的有用であるが、例えば、生産の中間段階での非金属介在物の排除、および鉄鋼の脱酸ならびに脱硫のために、鉄鋼のより良好な生産要件を満たす、新しいより安価でより効率的な製品、例えば、品質がより高く、物理的特性および耐久性がより良好で、かつ鉄鋼を得るためのプロセスが改善された製品を開発する必要性がある。
【0011】
以上のことから、カルシウム−ケイ素−アルミニウム合金が、理論的には非常に効率的な脱酸剤であることを推定することができ、これは、この合金が、例えば、ケイ素およびアルミニウムの同時作用に依存し、介在物の制御におけるカルシウムの利用度が高いためである。
【0012】
しかしながら、Ca、Al、およびSiの純粋な物理的混合物の場合、各元素は、それ自体が独立した挙動を有する。したがって、酸化鋼浴の環境では、優先的な脱酸反応は、最も反応性の高い元素との反応になる。
【0013】
したがって、Ca、Al、およびSiの物理的混合物の場合、主な脱酸剤は、カルシウムになり得るため、介在物の制御という主な目的から逸れてしまう。さらに、成分が単離されているため、それぞれの平衡点に時期尚早に到達し、所望の反応の程度が低減する。
【0014】
[課題および目的に対する解決法]
市場の必要性を満たし、かつ上記の欠点を克服する新しい金属合金を開発する試みにおいて、本発明者らは、Ca、Al、およびSi合金を使用する鉄鋼精錬結果が最適化されるのは、この合金のCa元素、Al元素、およびSi元素が、物理的に連結している合金に関連して、化学的に相互連結されている場合であることを見出した。
【0015】
以下に記載および特許請求の範囲に記載されるカルシウム、アルミニウム、ケイ素合金(CaAlSi)は、これら3つの元素間の化学結合によって形成され、その結果、それらに化学的に結合する場合にカルシウムを保護するアルミニウムおよびケイ素の複合作用の相乗効果により、優れた脱酸剤になり、酸化生成物(ケイ酸塩およびアルミン酸塩)に作用するために完全に利用可能になり、それらを液体球状介在物に変換し、例えば、金属浴の浮揚によって容易に除去可能になる。
【0016】
加えて、広範囲の脱酸およびカルシウム元素の存在は、カルシウム自体による残留硫黄の除去を助長する環境を作り出す。
【0017】
ゆえに、本発明者らは、カルシウム、アルミニウム、およびケイ素の間に、このような元素が化学的に結合されている場合に、鉄鋼精錬中の非金属介在物の改質および排除に対して相乗効果があることを見出したと言える。この事実は、システムの熱力学的条件によって説明される。実際、複合製品を生成する2つ以上の成分の同時作用は、単独で作用する成分の各々の作用よりも広範囲である。
【0018】
ケイ素およびアルミニウムによる脱酸反応、すなわち、以下をより良く説明すると、
【化1】
これらは、平衡に到達し、すなわち、2つの成分の同時反応、つまり、以下よりも広範囲ではない。
【化2】
【0019】
しかしながら、3つの元素すべてが化学的に結合されている、本明細書で提案されるCaAlSi合金の開発中に、本発明者らはいくつかの困難に遭遇した。例えば、Si酸化物、Al酸化物、およびCa酸化物の安定性は、この順序(Si<Al<Ca)で増加しているため、他のものの還元温度ならびにCaのスラグ化およびAlよりも低い温度でSiが優先的に還元される傾向がある。
【0020】
さらに、炭化物の形成は、正確には、AlおよびCaの還元に使用されない過剰な炭素のために、元素Ca、Al、またはSiによってのみ形成される分子の形成よりも優先される。したがって、飽和するまで炭化物が形成される。炭化ケイ素の場合、このような化合物は耐火性であるため、これにより炉が破砕される可能性がある。
【0021】
本明細書に記載および特許請求の範囲に記載される方法は、上述の改善された機能を有するCaAlSi合金を得ると同時に、上記の困難を排除するために開発された。
【0022】
ゆえに、本明細書に記載および特許請求の範囲に記載される製品および方法の目的のうちの1つは、元素C、Al、およびSiが化学的に結合しているCa、Al、およびSiの金属合金を提供することである。
【0023】
非金属介在物、脱酸、および脱硫の制御に対して相乗効果を有するCa、Al、Si合金を提供することも目的のうちの1つである。
【0024】
加えて、目的のうちの1つは、前述の特徴と同じ特徴を有し、他の金属の中でもとりわけ、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)などの他の元素も含む金属合金を提供することである。
【0025】
本明細書に記載および特許請求の範囲に記載される方法の別の目的は、それらの源からの3つの金属の同時炭素熱溶融還元工程を含む、上述のような金属合金を生産することである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一般に、本明細書に記載および特許請求の範囲に記載されるカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金、すなわち合金CaAlSiは、約15〜45%のCa、20〜40%のAl、および20〜40%を含む。これらのパーセンテージは、合金の使用目的によって変動してもよい。
【0027】
本発明者らは、カルシウム、アルミニウム、およびケイ素の間に、このような元素が化学的に結合されている場合に、鉄鋼精錬中の非金属介在物の改質および排除に対して相乗効果があることを見出した。この事実は、システムの熱力学的条件によって説明される。実際、複合製品を生成する2つ以上の成分の同時作用は、単独で作用する成分の各々の作用よりも広範囲である。
【0028】
ケイ素およびアルミニウムによる脱酸反応、すなわち、以下をより良く説明すると、
【化3】
これらは、平衡に到達し、すなわち、2つの成分の同時反応、つまり、以下よりも広範囲ではない。
【化4】
【0029】
しかしながら、3つの元素すべてが化学的に結合されている、本明細書で提案されるCaAlSi合金の開発中に、本発明者らはいくつかの困難に遭遇した。例えば、Si、Al、およびCa酸化物の安定性は、この順序(Si<Al<Ca)で増加しているため、他のものの還元温度ならびにCaのスラグ化およびAlよりも低い温度でSiが優先的に還元される傾向がある。
【0030】
さらに、炭化物の形成は、正確には、AlおよびCaの還元に使用されない過剰な炭素のために、元素Ca、Al、またはSiによってのみ形成される分子の形成よりも優先される。したがって、飽和するまで炭化物が形成される。炭化ケイ素の場合、このような化合物は耐火性であるため、これにより炉が破砕される可能性がある。
【0031】
本明細書に記載および特許請求の範囲に記載される方法は、上述の改善された機能を有するCaAlSi合金を得ると同時に、上記の困難を排除するために開発された。
【0032】
上述の目的による合金は、約40%のCa、25%のAl、および35%のSi、または25%のCa、35%のAl、および40%のSi、または33%のCa、33%のAl、および33%のSi、または35%のCa、20%のAl、および40%のSiを含み得、残りの組成は、例えば、他の元素によって補完される。
【0033】
一実施形態では、合金中に存在する元素Ca、Al、およびSiは、互いに化学的にリンクしている。上で説明したように、このような化学結合は、例えば、非金属介在物の排除、ならびに硫黄除去または脱硫を容易にする反応に関与するようにCaをより利用可能にするため、有益である。
【0034】
ゆえに、一実施形態では、特許請求されるカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金は、相乗活性を有し、これは、単離された元素によって、またはそのような元素が物理的にのみ連結される合金によっては、同じ結果が達成されないからである。
【0035】
これは、存在するアルミナの量に関係なく、カルシウムがより高い親和性を有する成分と化合しない限り、利用可能なすべての酸素と化合する(以下に示す)という事実によって説明される。
CaO−Al2O3の介在物の形成の反応、
【化5】
【0036】
カルシウムがより希な成分であることを考慮すると、技術的かつ経済的に適合性のある競合剤と一緒に添加することが求められ、Caの消費はアルミン酸カルシウムの形成に必要な消費に制限される。
【0037】
単離して考えると、ケイ素およびアルミニウムは、所望の程度まで、余剰酸素の作用に対するカルシウム保護剤の役割を果たさない。既に、金属間化合物Al−Siの形式で、それらはカルシウムよりも優れた酸素親和性を有する「第3の元素」として作用する。
【0038】
一実施形態では、本明細書で特許請求される合金の生産に使用されるカルシウム源は、例えば、一次石灰、消石灰、石灰石、および他の炭酸カルシウムであり得る。アルミニウム源は、例えば、ボーキサイトおよびケイ酸アルミニウムであり得る。次に、ケイ素源は、例えば、石英、珪岩、およびケイ酸アルミニウムであり得る。
【0039】
代替的に、可能な実施形態では、Ca、Al、およびSiの源は、例えば、スラグ、炉フィルター粉末、および他のCa、AlならびにSi合金であり得る。
【0040】
一実施形態では、Ca、Al、およびSiの合金は、他の金属の中でもとりわけ、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)などの他の元素を10%までの割合で含み得る。
【0041】
本明細書で特許請求されるカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金に加えて、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)合金を生産する方法は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、およびケイ素(Si)の同時炭素熱溶融還元の工程を含む。
【0042】
より正確には、可能な実施形態では、カルシウム(Ca)、Al(Al)、ケイ素(Si)合金を生産する方法は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および酸化カルシウムの混合物の同時炭素熱溶融還元工程を含む。
【0043】
別の可能な態様では、前記方法は、小さい含有量で、他の元素、とりわけ、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)を、最大約10%の含有量での添加で、含む。
【0044】
一実施形態では、特許請求の範囲に記載される方法で使用されるCa、Al、およびSi源の装入は、そのそれぞれの安定性に限定された各源の熱力学的活性を考慮して選択され、同時炭素熱溶融還元工程中に利用可能なエネルギーが、源還元反応中に等しく分散されるようにする。すなわち、特許請求の範囲に記載される方法で使用されるCa、Al、およびSiの源の装入は、その源の選択的還元を可能にするように行われる。
【0045】
より正確には、Ca、Al、およびSi源の装入は、そのそれぞれの安定性に限定された各源の熱力学的活性を考慮して行われる。
【0046】
選択的還元に関しては、金属還元条件が可能な限り近くなるように原材料を選択する必要がある。例えば、カルシウム源は、自由な利用可能性のCaOを可能な限り多く有する必要がある。
【0047】
アルミニウム源は、遊離アルミナを有するものとそれを複合化したものとの2つの種類に分けられる。
【0048】
ケイ素源も、先の場合と同様に、遊離シリカを有するものと複合化シリカを有するものとの2つの種類に分けられる。
【0049】
客観的には、他の成分と比較して、装填におけるCaOの割合が優勢であり、その利用可能性を最大化する必要がある(CaOを含まない)。
【0050】
装入中のAl2O3の割合は、その利用可能性(熱力学的活性)に関する。これは、様々な割合の遊離アルミナ源(ボーキサイトなど)および複合化アルミナ(カオリンなどのケイ酸塩)を使用して調整される。この調整は、アルミニウム還元の熱力学的条件がカルシウムを還元する熱力学的条件に可能な限り近くなるように行われる。
【0051】
装填におけるSiO2の割合は、アルミナの場合と同じ基準に従う。この場合、調整は、様々な割合の遊離シリカ源(石英および珪岩など)および複合化シリカを使用して行われる。
【0052】
利用可能性、つまりそれぞれの酸化物の活性に関連する割合を考慮すると、割合はCa=>Al=>Siの方向に減少する。
【0053】
一実施形態では、本明細書で特許請求される合金の生産のために使用されるカルシウム源、または酸化カルシウムは、例えば、一次石灰、消石灰、石灰石、および他の炭酸カルシウムであり得る。アルミニウム、または酸化アルミニウムの源は、例えば、ボーキサイトおよびケイ酸アルミニウムであり得る。次に、ケイ素、または酸化ケイ素の源は、例えば、石英、珪岩、およびケイ酸アルミニウムであり得る。天然源に加えて、スラグ、ケイ素炉フィルター粉末、およびそれらの合金などの他のものを使用してもよい。
【0054】
この開発で考慮される別の態様は、Ca、Al、およびSiの合金の形成で形成されるスラグの物理化学的特徴に関する。還元温度が高いため、スラグを発生させるためには、スラグの融点が還元温度より高くなければならない。
【0055】
反応を効率的に発生させるには、種(Ca、Al、Siなど)間の移動性/接触が必要であり、これは、スラグの融点を超える温度を意味する。これは、反応ゾーンの位置およびエネルギー濃度が適切になるように、二次変圧器の電圧と電流との関係が正しいことを意味する。この調整は、実施例に示されているように、予備的な理論的評価およびパイロット試験によって行われた。
【0056】
還元剤に関しては、不足の場合は装填のスラッギングが多くなり、過剰の場合は炭化物が形成される。後者の態様に関しては、大幅な過剰は、化学量論に関連して、炉の付着物をもたらす。しかしながら、この炭化物はスラグの融点の調整に寄与するため、わずかな過剰は望ましい。
【0057】
特許請求の範囲に記載される方法で用いられる可能性のある還元剤はコークスであるが、木炭、石油コークス、石炭、または任意の他の同様の炭素源を用いることも可能である。
【0058】
最後に、装填の調製に関しては、優先的な反応の影響を最小限に抑えるように、成分の混合物を可能な限り接近させることが意図される。したがって、粒子サイズは可能な限り小さくして、床の透過性を確実にする必要がある。別の可能な調製は、還元剤の一部または全部を含有する金属フィラー成分(とりわけ、ペレット、焼結物、ブリケット)を凝集させることによるものである。
【実施例】
【0059】
手順の調整では、原材料、配合、および還元剤の割合を変動させて、いくつかの装填代替をシミュレートした。これらの代替は、パイロット規模で電気還元炉において試験した。
【0060】
10個の試験バッテリーが実行され、そこから前のバッテリー(複数可)に基づいて調整を行った。
【0061】
試験に採用された方法論は以下の通りである。
【0062】
単相のパイロット炉は、50kVAの出力と、15cm〜30cmで調整可能なるつぼの直径と、を有する。
【0063】
当然ながら、これらのシミュレーションで計算された合金を得るには、動作条件および熱力学的条件が良好であることが想定される。
【0064】
動作の観点から、基本的な要件は、炉がシステムの熱要件を満たすのに十分な出力を有することである。
【0065】
基本的な熱力学的条件は、還元反応に適切な温度、合金化元素の酸化物の活性間の比率であり、3つの主要な還元反応間でエネルギーのより均一な分布を確実にするような割合を維持する必要がある。
【0066】
これらの原理に基づいて、配合をステージ1で行い、動作条件を各試験で確立した。
【0067】
最初の作用は、合金化元素の酸化物を含有する装入成分の混合物でペレットを生産することであった。この実施の目的は、これらの成分間の緊密な混合を促進し、装填の良好な透過性を確実にすることであった。
【0068】
還元剤、この場合、補助成分と一緒の冶金コークスは、鉄鉱石および蛍石ペレットの場合、ペレットと一緒に装入される。
【0069】
以下では、試験について記載およびコメントする。
【0070】
試験番号1
この最初の試験は、調整が行われる基本的な参照を確立するための実際の開始点である。
【0071】
選択された配合は、カルシウム源としてのSiおよび石灰の必要性を補完する砂でFeおよびAlを調整することを目的とした2種類のボーキサイトの混合物であった。
【0072】
還元剤の割合は化学量論的であり、補正は合金化元素の期待収率を参照した。
【0073】
装填の配合および炉の動作条件について以下にまとめる。
【表1】
【0074】
試験についてコメントする前に、新しい成分である、Sao Joao Del ReyのBOZELオーブンフィルターからの粉塵を含めなければならない。
【0075】
当初の目的は、この粉末に含有される還元剤を使用することであった。しかしながら、生成は意図された生産に比べて少量であるため、それらの割り当ては低い。しかしながら、依然として、完全に再利用できるという非常に肯定的な態様である。
【0076】
炉の性能に関しては、合金化はほとんどなく、ほとんどすべてのフィラーが溶融せず、小さな合金球を含有する焼結塊を形成した。
【0077】
このことから、装入の溶融および相の分離に十分なエネルギーがなかったことが明らかである。種の移動性の欠如および炉の比較的低い温度の両方により、還元反応の程度も小さかった。
【0078】
実際、スラグの予測溶融温度は高く、これは還元反応に有利に働くことが望ましい。対応するシミュレーションで生成された図(図1)は、これを示す。
【0079】
回収された合金を、SEMに結合されたX線分散エネルギー分光計で分析した。結果は以下の通りである。
【化6】
【0080】
合金化元素の還元反応の優先順位を観察する(当然ながら、反応が優先される)。
【0081】
しかしながら、ほとんどの装入の融合がなかったため、結果は肯定的な兆候である。実際、カルシウムの還元は比較的高く、これは、より好ましい条件下ではこの結果が改善するはずであることを示唆する。
【0082】
エネルギー濃度を増加させるために、2回目の試験では、るつぼの直径を30cmから20cmに縮小した。
【0083】
試験番号2
以下の表に示すように、前の試験と同じ条件を維持した。
【表2-1】
【表2-2】
【0084】
残念ながら、オーブンが沸騰し、試験が損なわれた。
【0085】
試験番号3
スラグ条件とAlおよびCa還元反応の程度を改善するために、蛍石をフィラーに添加し、コークスの割合を化学量論の3倍に増加させた。
【0086】
この試験のデータについて、以下の表にまとめる。
【表3-1】
【表3-2】
【0087】
オーブンは実行せず、合金を生産しなかった。エネルギー供給に対応するものがない過剰な炭素によって、炭化物の形成をもたらした。合金の生産はなかった。
【0088】
試験番号4
基本混合物を維持しながら、蛍石を除去し、過剰なコークスを維持する。以下の表に示すように、動作側では、オーブンがタップ1に移されて電流が増加し、るつぼの直径を15cmに縮小した。
【表4】
【0089】
合金の生産は少量であり、エネルギー不足の問題が持続を示す。合金の組成は、以下の通りである。
【化7】
【0090】
結果は、試験番号1の結果と同等であると言える。振動は、窯の進行の不安定な状態に起因する可能性がある。
【0091】
とにかく、前の場合のように、コールサインは興味深い。
【0092】
試験番号5および試験番号6
試験番号5および試験番号6では、前の2つと比較して、還元剤が10%増加し、ヘマタイトペレットの形式で鉄鉱石を添加した。
【0093】
この手順の目的は、関連する酸化鉄の還元が合金化元素の還元の程度に及ぼす影響を調査することであった。
【0094】
これら2つの試験のデータについて、以下の2つの表にまとめる。
【表5-1】
【表5-2】
【0095】
所望を下回る合金漏れがあったが、動作条件と適合している。
【0096】
生産された合金には以下の特徴がある。
【化8】
【0097】
観察できるように、この合金は、フェロシリコンの合金と類似している。Caの還元は、Feとの競合により阻害された。
【0098】
これらの結果では、システム内の鉄の影響について結論を出すことは可能ではない。
【0099】
以下の表に示すように、より多くのデータを得るために、この試験を繰り返した。
【0100】
この場合、炉はより長く動作し、2回実行した。
【表6】
【0101】
2回の実行の結果について以下に示す。
【化9】
【0102】
AlおよびCaの回収がより多いことが観察されるが、後者は非常に離散的である。
【0103】
試験番号7
炉の条件での鉄による試験の客観性の欠如を考慮すると、装填を、鉄鉱石を含まずに、10%より多くのコークスを含まずに、前の配合に戻した。しかしながら、この場合、より高い電流による電気的条件が維持された。
【0104】
この試験の条件について以下の表にまとめる。
【表7】
【0105】
合金の生成は、前の同じ基準内で少量であった。合金の組成について以下に示す。
【化10】
【0106】
CaおよびAlの回収の増加が、鉄阻害効果により観察される。
【0107】
試験番号8
この試験では、ボーキサイトおよび砂をカオリンに置き換えて、新しい配合について試験した。
【0108】
目的のうちの1つは、ケイ酸アルミニウムの形式でシリカおよびアルミナの活性を低下させ、CaOを含まないように維持することである。
【0109】
試験の特徴について以下に示す。
【表8-1】
【表8-2】
【0110】
以下の分析は、炉の底で収集された合金である。
【化11】
【0111】
この分析は、装填成分の特徴と適合しない。鉄含有量は、試料または装入の汚染を示唆する。ゆえに、考慮されない。
【0112】
1つのコメントは、スラグを溶融するための炉の資源よりも高いスラグの融点についてである。
【0113】
試験番号9
この試験では、より多くの融解スラグを生成するために、新しい配合を行った。スラグの融点の低下が大きすぎると、炉の温度がより安定した酸化物の還元を阻害するため、スラグの融点が約1600℃になるように配合が指示された。
【0114】
実際、この温度は理想を下回っているが、炉の機能により適合している。
【0115】
より強力な炉を後の段階で使用すると、スラグの溶融温度は再び高くなる。
【0116】
この試験のデータについて以下の表に示す。
【表9-1】
【表9-2】
【0117】
これは最も標準的な試験であるが、装入融合は依然として阻害されていた。
【0118】
2回のレースがあった。電極が上コースの終了時に到達したため、2回目が予想された。
【0119】
分析結果について以下に示す。
【化12】
【0120】
1回目の実行は、興味深い傾向を示しており、より良好な動作条件で改善することができる。
【0121】
2回目の実行は時期尚早に行われたため、鉄の濃度が高くなり、還元が優先された。ゆえに、このデータは代表的なものではない。
【0122】
試験番号10
最終調整を終了した10個目のバッテリーのデータおよび結果について以下に示す。
【表10-1】
【表10-2】
実行:
【表11】
【国際調査報告】