(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532294(P2021-532294A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20211029BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20211029BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20211029BHJP
F16F 7/08 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
E01D19/04 A
E04H9/02 331E
E01D19/04 101
F16F15/02 E
F16F7/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-524088(P2021-524088)
(86)(22)【出願日】2019年6月29日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月10日
(86)【国際出願番号】CN2019093938
(87)【国際公開番号】WO2020011037
(87)【国際公開日】20200116
(31)【優先権主張番号】201821109375.1
(32)【優先日】2018年7月13日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521017103
【氏名又は名称】▲陸▼科
(71)【出願人】
【識別番号】521017114
【氏名又は名称】▲陸▼寿仙
(71)【出願人】
【識別番号】521017136
【氏名又は名称】王玉▲蓮▼
(71)【出願人】
【識別番号】521017158
【氏名又は名称】▲陸▼▲斤▼盈
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲陸▼科
(72)【発明者】
【氏名】▲陸▼寿仙
(72)【発明者】
【氏名】王玉▲蓮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陸▼▲斤▼盈
【テーマコード(参考)】
2D059
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2D059AA36
2D059GG05
2E139AA01
2E139AC19
2E139AC20
2E139BA19
3J048AA07
3J048AC01
3J048BD03
3J048BD04
3J048BG04
3J066AA26
3J066CA05
3J066CB06
3J066CB10
(57)【要約】
本発明は、免震技術分野に属し、揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置関し、下カバープレートを含み、下カバープレートの上方には中空の摩擦材スリーブが配置され、摩擦材スリーブ内の下カバープレート上方には摩擦材が敷設されており、摩擦材スリーブ内の摩擦材の上方には、下から上に、下ライナプレートと、揺動受圧ブロックと、上ライナプレートがこの順で配置されており、上ライナプレートの頂面には上カバープレートが固接され、上カバープレートの底面には中空の衝突スリーブが固接されており、衝突スリーブは摩擦材スリーブの外側に被装され、下密封リング上端と上カバープレートの底面との間にはパッキンが設けられており、上カバープレートと下カバープレートの間の下密封リングとパッキンに囲まれた領域及び隙間内には油脂が満たされている。本発明は、構造設計が合理的で、地震発生時に反応が敏感で、速やかに確実に摩擦面を開くことにより、上部構造と基礎との間に対向摺動を生じさせることができるので、上部構造を破壊する水平せん断力及び転覆モーメントを生じさせないので、上部構造を保護する目的を果たす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置において、下カバープレート(9)を含み、下カバープレート(9)の上方には中空の摩擦材スリーブ(2)が配置され、摩擦材スリーブ(2)内の下カバープレート(9)上方には摩擦材(7)が敷設されており、摩擦材スリーブ(2)内の摩擦材(7)の上方には、下から上に、下ライナプレート(8)と、揺動受圧ブロック(1)と、上ライナプレート(15)がこの順で配置されており、上ライナプレート(15)の頂面には上カバープレート(16)が固接され、上カバープレート(16)の底面には中空の衝突スリーブ(3)が固接されており、衝突スリーブ(3)は摩擦材スリーブ(2)の外側に被装され、かつ衝突スリーブ(3)の底端は下カバープレート(9)とは接触しておらず、下カバープレート(9)の上表面には下密封リング(10)が固設されており、下密封リング(10)は衝突スリーブ(3)の外側に被装され、その上端と上カバープレート(16)の底面との間にはパッキン(11)が設けられており、上カバープレート(16)と下カバープレート(9)の間の下密封リング(10)とパッキン(11)に囲まれた領域及び隙間内に油脂(12)が満たされていることを特徴とする、揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置。
【請求項2】
摩擦材スリーブ(2)と上カバープレート(16)の間に環状押さえバネ(14)が増設されており、摩擦材スリーブ(2)の上部の直径は階段状に小さくなっており、環状押さえバネ(14)の底端は摩擦材スリーブ(2)の外周の軸ショルダ部分に当接し、頂端は上カバープレート(16)の下底面に当接していることを特徴とする、請求項1に記載の揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置。
【請求項3】
衝突スリーブ(3)の外周にはリセットテーパ螺旋バネ(13)が被装されており、リセットテーパ螺旋バネ(13)の底端大円の外周は密封リング(10)と固接され、頂端小円の内壁が衝突スリーブ(3)と遊動的に嵌接されていることを特徴とする、請求項1に記載の揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置。
【請求項4】
リセットテーパ螺旋バネ(13)の上方において、衝突スリーブ(3)の外壁に密着して衝突防止弾性リング(5)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置。
【請求項5】
パッキン(11)が鉛製品であることを特徴とする、請求項1に記載の揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置。
【請求項6】
下カバープレート(9)の底面に底部補強板(6)が増設されていることを特徴とする、請求項1に記載の揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置。
【請求項7】
下カバープレート(9)と上カバープレート(16)の間は定形ボルト(4)によってセッティングされており、定形ボルト(4)が下密封リング(10)の外周に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置に関し、免震技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
強い地震による災害は、主にその水平地震波(水平振動)、即ち水平加速度により生じるものであり、水平加速度が0.1gに達すると、その震度(破壊度)は7°になると規定されている。地震災害をなくしたければ、地震水平加速度を除去する方法を考えて地震に対抗するよりも、地震を隔絶した方がよい。現在用いられている主な方法は地震の隔離であるが、現在用いられている装置は、摩擦面が長期的に重圧や静圧を受けて摩擦係数が大きくなり、地震発生時に摩擦面が速やかに開かず、免震機能の減弱や失効を招いている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置を提示することにあり、該揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置は反応が敏感で、速やかに確実に摩擦面を開いて、上部構造と基礎との間に対向摺動を生じさせることができ、上部構造を破壊したり傾倒させたりする水平せん断力及び転覆モーメントを生じさせないので、上部構造を保護する目的を果たす。
【0004】
本発明の前記揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置は、下カバープレートを含み、下カバープレートの上方には中空の摩擦材スリーブが配置され、摩擦材スリーブ内の下カバープレート上方には摩擦材が敷設されており、摩擦材スリーブ内の摩擦材の上方には、下から上に、下ライナプレートと、揺動受圧ブロックと、上ライナプレートがこの順で配置されており、上ライナプレートの頂面には上カバープレートが固接され、上カバープレートの底面には中空の衝突スリーブが固接されており、衝突スリーブは摩擦材スリーブの外側に被装され、かつ衝突スリーブの底端は下カバープレートとは接触しておらず、下カバープレートの上表面には下密封リングが固設されており、下密封リングは衝突スリーブの外側に被装され、その上端と上カバープレートの底面との間にはパッキンが設けられており、上カバープレートと下カバープレートの間の下密封リングとパッキンに囲まれた領域及び隙間内には油脂が満たされている。
【0005】
揺動受圧ブロックの上端面及び下端面は曲率半径が非常に大きな球面または亜球面であり、しかも揺動受圧ブロックの両側及び摩擦材スリーブには、いずれもスロットがある。強い地震の水平地震波が到達すると、揺動受圧ブロックの上端面と下端面が球面または亜球面であることから、直ちに水平揺動が発生するが、この場合、実際は地盤の水平震動なので、上部構造はほぼ動かない。この時、下カバープレートと摩擦材との間の摩擦面はまだ開いておらず、地震波の増大に伴って揺動受圧ブロックの揺動力の幅も増大する。この時、下カバープレートと共に震動する摩擦材スリーブが必ず衝突スリーブと衝突するが、衝突スリーブと上カバープレートが剛性接続されていることから、摩擦材スリーブと衝撃スリーブの衝突によって十分な衝撃力が発生し、この衝突力が直ちに下カバープレートと摩擦材との間の摩擦面を開き、下カバープレートと摩擦材との間に対向摺動を生じさせることにより、摩擦免震の効果を生み出す。地震波が徐々に増大する過程では、下カバープレートの揺動の度合いが大きくなり、上カバープレートと下密封リングの間に設けられているパッキンが断裂するので、下カバープレートの動きが上カバープレートや上カバープレートより上の上部構造に影響を及ぼすことはない。同じ理由で、衝突スリーブの底端は下カバープレートとは接触していないので、下カバープレートの動きが上カバープレートや上カバープレートより上の上部構造に影響を及ぼすことはない。また、上カバープレートと下カバープレートの間の下密封リングとパッキンに囲まれた領域及び隙間内に満たされている油脂が内部構造の錆の発生を防止でき、かつ潤滑の役割も果たすので、地震が発生すると、この装置の内部構造が敏感に反応し、免震効果を発揮することができる。摩擦材は、柔らかいグラファイトとポリテトラフルオロエチレンの複合材である。
【0006】
実際に応用する場合、揺動受圧ブロックの数は1個以上であってよい。
また、この装置を組み立てる際には、作業員によって操作手法が異なるため、摩擦材スリーブと衝突スリーブとの間の各所の隙間が同じであることを保証する必要はない。各装置の各所の隙間が必ずしも同じではないので、最も小さい隙間が必ず最初に開く。このようにして、順に打ち破られるようにすべての節点が高速で開かれ、しかも下カバープレートが自由に行き来して摺動することで、さらに大きな地震エネルギー(0.1gを上回る水平加速度)であっても、上カバープレートより上の上部構造に印加(伝達)されることはない。このように、上部構造には過大な水平せん断力及び転覆モーメントが生じないので、上部構造の安全を保証し、かつ震度が大きくなるほど、その免震効果が明らかになるのである。
【0007】
好適には、前記摩擦材スリーブと上カバープレートの間には環状押さえバネが増設されており、摩擦材スリーブの上部の直径は階段状に小さくなっており、環状押さえバネの底端は摩擦材スリーブの外周の軸ショルダ部分に当接し、頂端が上カバープレートの下底面に当接することで、摩擦材スリーブが跳ね上がって上カバープレートと接触することがなく、常に下カバープレートの上表面と接触することで、摩擦材が摩擦材スリーブから飛び出さないことを保証することができる。
【0008】
好適には、前記衝突スリーブの外周にはリセットテーパ螺旋バネが被装されており、リセットテーパ螺旋バネの底端大円の外周は下密封リングと固接され、頂端小円の内壁は衝突スリーブと遊動的に嵌接されている。地震が終わると、リセットテーパ螺旋バネの弾力によって衝突スリーブと上カバープレートがリセットされ、リセットテーパ螺旋バネと衝突スリーブがほぼ同心になる位置まで復帰でき、自動リセットの目的を達成する。
【0009】
好適には、前記リセットテーパ螺旋バネの上方には、衝突スリーブ外壁に密着して衝突防止弾性リングが設けられている。地震波がかなり大きい場合、下カバープレートの可動範囲が大きすぎて衝突スリーブと激しく衝突し、装置全体を損壊してしまうことを防止するよう、衝突防止弾性リングが緩衝作用を果たす。
【0010】
好適には、前記パッキンは鉛製品であり、地震が発生していない時には良好な密封作用を果たすことができ、内部構造を気体から遮断して内部構造に酸化による錆が発生することを防止しており、地震が発生すると、下カバープレートの動きに伴って比較的容易に断裂し、上カバープレートと下カバープレートの間の関係を速やかに断ち切ることにより、下カバープレートの動きが上カバープレートや上カバープレートより上の上部構造に影響を及ぼさないことを保証する。
【0011】
好適には、前記下カバープレートの底面に、下カバープレートの変形を防止する底部補強板が増設されており、補強板は下リングビーム内に埋め込まれ、基礎ボルトの役割を果たして下カバープレートを固定する。
【0012】
好適には、前記下カバープレートと上カバープレートの間は定形ボルトによってセッティングされており、定形ボルトはパッキンと下密封リングの外周に設けられている。この装置を据え付ける際には、建築物の上部構造の重量と節点の分布に基づいて、対応する型番及び数の本免震装置を選択する。各装置は基本的に同一水平面上にあればよいが、個々の免震装置については水平に置くことが厳密に要求されており、比較的等級の高いセメントモルタルを用いて下カバープレートを平らに埋め、完全に凝固してから、その上カバープレート上に鉄筋コンクリートの上リングビームを流し込む。定形ボルトは、組立の際に上カバープレートと下カバープレートを予め固定する役割を果たすことで、両者を取り付けたときに大きなずれが出ないことを保証しており、上リングビームが完全に凝固してから、定形ボルトを真ん中から切断することにより、上カバープレートと下カバープレートの間に固定接続がないことを保証する。
【0013】
本発明を従来技術と比較した場合、以下のような有益な効果がある。
本発明は、構造設計が合理的で、地震の発生時に敏感に反応し、下カバープレートと摩擦材との間の摩擦面を速やかに開き、上カバープレートと下カバープレートの間を対向運動させることができる。つまり、上部構造と基礎との間に対向摺動が生じることで、基礎から伝わってくる地震の水平加速度によって上部構造を破壊したり傾倒させたりする水平せん断力及び転覆モーメントが生じることがなく、上部構造を保護する目的を果たすことができるのである。また、地震が終わると、リセットテーパ螺旋バネの弾力によって衝突スリーブと上カバープレートがリセットされ、リセットテーパ螺旋バネと衝突スリーブがほぼ同心になる位置まで復帰し、次の地震が来たときにも引き続き作用を発揮することができる。また、地震波がかなり大きい場合には、衝突防止弾性リングが、下カバープレートの可動範囲が大きすぎて衝突スリーブと激しく衝突し、装置全体を破壊してしまうことを防止する。本装置は、免震効果が高く、製造コストが低く、平時の保守整備の必要がなく、劣化、高温、高輻射の防止、防水、防腐、ネズミ防御といった利点を有するだけでなく、耐圧能力が高く、沈降量が小さく、取付や使用に便利で、適用範囲が広く、自動リセット性能が高く、しかも直列使用により「大きな地震は小さく、小さな地震はなかったことに」することを実現して、大地震を隔絶するというより高い要求を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置の構造概略図である。
【符号の説明】
【0015】
図中:1.揺動受圧ブロック、2.摩擦材スリーブ、3.衝突スリーブ、4.定形ボルト、5.衝突防止弾性リング、6.底部補強板、7.摩擦材、8.下ライナプレート、9.下カバープレート、10.下密封リング、11.パッキン、12.油脂、13.リセットテーパ螺旋バネ、14.環状押さえバネ、15.上ライナプレート、16.上カバープレート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面と結び付けて、本発明に対してさらなる説明を行う。
図1は、本発明の前記揺れや衝撃で直ちに開く摩擦免震装置であり、下カバープレート9を含み、下カバープレート9の上方には中空の摩擦材スリーブ2が配置され、摩擦材スリーブ2内の下カバープレート9上方には摩擦材7が敷設されており、摩擦材スリーブ2内の摩擦材7の上方には、下から上に、下ライナプレート8と、揺動受圧ブロック1と、上ライナプレート15がこの順で配置されており、上ライナプレート15の頂面には上カバープレート16が固接され、上カバープレート16の底面には中空の衝突スリーブ3が固接されており、衝突スリーブ3は摩擦材スリーブ2の外側に被装され、かつ衝突スリーブ3の底端は下カバープレート9とは接触しておらず、下カバープレート9の上表面には下密封リング10が固設されており、下密封リング10は衝突スリーブ3の外側に被装され、その上端と上カバープレート16の底面との間にはパッキン11が設けられており、上カバープレート16と下カバープレート9の間の下密封リング10とパッキン11に囲まれた領域及び隙間内には油脂12が満たされている。
【0017】
本実施例では、摩擦材スリーブ2と上カバープレート16の間に環状押さえバネ14が増設されており、摩擦材スリーブ2の上部の直径は階段状に小さくなっており、環状押さえバネ14の底端は摩擦材スリーブ2の外周の軸ショルダ部分に当接し、頂端は上カバープレート16の下底面に当接しており、摩擦材スリーブ2が跳ね上がって上カバープレート16と接触することがなく、常に下カバープレート9の上表面と接触することで、摩擦材7が摩擦材スリーブ2から飛び出さないことを保証している。衝突スリーブ3の外周にはリセットテーパ螺旋バネ13が被装されており、リセットテーパ螺旋バネ13の底端大円の外周は密封リング10と固接され、頂端小円の内壁は衝突スリーブ3と遊動的に嵌接されており、地震が終わると、リセットテーパ螺旋バネ13の弾力によって衝突スリーブ3と上カバープレート16がリセットされ、リセットテーパ螺旋バネ13と衝突スリーブ3がほぼ同心になる位置まで復帰できる。リセットテーパ螺旋バネ13の上方には、衝突スリーブ3の外壁に密着して衝突防止弾性リング5が設けられており、地震波がかなり大きい場合、下カバープレート9の可動範囲が大きすぎて下密封リング10が衝突スリーブ3と激しく衝突し、装置全体を損壊してしまうことを防止しており、衝突防止弾性リング5が緩衝作用を果たしている。パッキン11は鉛製品であり、地震が発生していない時には良好な密封作用を果たすことができ、内部構造を気体から遮断して内部構造に酸化による錆が発生することを防止しており、地震が発生すると、下カバープレート9の動きに伴って比較的容易に断裂し、上カバープレート16と下カバープレート9の間の関係を速やかに断ち切ることにより、下カバープレート9の動きが上カバープレート16や上カバープレート16より上の上部構造に影響を及ぼさないことを保証する。下カバープレート9の底面には、下カバープレート9の変形を防止する底部補強板6が増設されており、補強板は下リングビーム内に埋め込まれ、基礎ボルトの役割を果たして下カバープレート9を固定している。下カバープレート9と上カバープレート16の間は定形ボルト4によってセッティングされており、定形ボルト4はパッキン11と下密封リング10の外周に設けられており、取付の完了後、定形ボルト4を真ん中から切断することで、上カバープレート16と下カバープレート9の間に固定接続がないことを保証し、また残された上下のボルトは上下カバープレート9の基礎ボルトとしての役割を兼ねる。
【0018】
据付の際には、建築物の上部構造の重量と節点の分布に基づいて、対応する型番及び数の本免震装置を選択する。各装置は基本的に同一水平面上にあればよいが、個々の免震装置については水平に置くことが厳密に要求されており、比較的等級の高いセメントモルタルを用いて下カバープレート9を平らに埋め、完全に凝固させてから、上カバープレート16上に鉄筋コンクリートの上リングビームを流し込む。定形ボルト4は、輸送や取付の際に上カバープレート16と下カバープレート9を予め固定する役割を果たすことで、両者を取り付けたときに大きなずれが出ないことを保証しており、上リングビームが完全に凝固してから、定形ボルト4を真ん中から切断することにより、上カバープレート16と下カバープレート9の間に剛性接続関係がないことを保証する。
【0019】
揺動受圧ブロック1の上端面及び下端面は曲率半径の非常に大きな球面であり(即ち中心に直径の大きくない平面が残され、支持能力を顕著に増加させることができる)、しかも揺動受圧ブロック1の両側及び摩擦材スリーブ2は、いずれもスロットを有している。強い地震の水平地震波が到達すると、揺動受圧ブロック1の上端面と下端面が球面または亜球面であることから、直ちに水平揺動が発生するが、この場合、実際は地盤の水平震動なので、上部構造はほぼ動かない。この時、下カバープレート9と摩擦材7との間の摩擦面はまだ開いておらず、地震波の増大に伴って揺動受圧ブロック1の揺動力の幅も増大する。この時、下カバープレート9と共に震動する摩擦材スリーブ2が必ず衝突スリーブ3と衝突するが、衝突スリーブ3と上カバープレート16が剛性接続されていることから、摩擦材スリーブ2と衝撃スリーブ3の衝突によって十分な衝撃力が発生し、この衝突力が直ちに下カバープレート9と摩擦材7との間の摩擦面を開き、下カバープレート9と摩擦材7との間に対向摺動を生じさせることにより、摩擦免震の効果を生み出す。地震波が徐々に増大する過程では、下カバープレート9の揺動の度合いが大きくなり、上カバープレート16と下密封リング10の間に設けられている鉛製のパッキン11が断裂するので、基本的に下カバープレート9の動きが上カバープレート16や上カバープレート16より上の上部構造に影響を及ぼすことはない。同じ理由で、衝突スリーブ3の底端は下カバープレート9とは接触していないので、下カバープレート9の動きが上カバープレート16や上カバープレート16より上の上部構造に影響を及ぼすことはない。また、上カバープレート16と下カバープレート9の間の下密封リング10とパッキン11に囲まれた領域及び隙間内に満たされている油脂12は、内部構造の錆の発生を防止できるだけでなく、潤滑の役割も果たすので、地震が発生すると、この装置の内部構造が敏感に反応し、免震効果を発揮することができる。摩擦材7は、柔らかいグラファイトとポリテトラフルオロエチレンの複合材である。
【0020】
また、この装置を組み立てる際には、作業員によって操作手法が異なるため、摩擦材スリーブ2と衝突スリーブ3との間の各所の隙間が同じであることを保証する必要はなく、各装置の各所の隙間が必ずしも同じではないので、最も小さい隙間が必ず最初に開く。このようにして、順に打ち破られるようにすべての節点が高速で開かれ、しかも下カバープレート9が自由に行き来して摺動することで、地震エネルギーが0.1gを上回るさらに大きな水平加速度であっても、上カバープレート16より上の上部構造に印加、伝達されることはない。このように、上部構造に過大な水平せん断力及び転覆モーメントが生じないので、上部構造の安全を保証し、かつ震度が大きくなるほど、その免震効果が明らかになるのである。
【国際調査報告】