(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532322(P2021-532322A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】荷役車両用の制御弁組立体
(51)【国際特許分類】
F16K 11/07 20060101AFI20211029BHJP
B66F 9/22 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
F16K11/07 Z
B66F9/22 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2021-524112(P2021-524112)
(86)(22)【出願日】2019年7月11日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2019068767
(87)【国際公開番号】WO2020011957
(87)【国際公開日】20200116
(31)【優先権主張番号】1811366.2
(32)【優先日】2018年7月11日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521016346
【氏名又は名称】パーカー ハネフィン・エメア・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルクス,アンドリース
(72)【発明者】
【氏名】リードリー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】マッカン,トーマス
【テーマコード(参考)】
3F333
3H067
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333FH05
3H067AA17
3H067CC32
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD33
3H067FF11
3H067GG22
(57)【要約】
フォークリフト等の荷役車両用の制御弁組立体は、穿孔を有する弁体と、上記穿孔内に配置され、少なくとも2つの動作構成の間で上記穿孔に沿って軸方向に可動であるスプールとを備える。上記弁体は、油圧アクチュエータに接続されるサービスポートと、ポンプに接続される圧力ポートと、油圧タンクリザーバに接続されるように配設されるタンクポートとを含む。上記弁は、第1の動作構成と第2の動作構成との間で再構成可能である。上記第1の動作構成では、上記スプールは、第1の流れ方向において流体が上記圧力ポートから上記サービスポート及び上記タンクポートへと流れることができ、第2の流れ方向において流体が上記サービスポートから上記圧力ポート及び上記タンクポートへと流れることができるように、上記ポンプポート、上記サービスポート、及び上記タンクポートを接続する流体経路を画定する。上記スプールはまた、上記第1の動作構成において、上記タンクポートへの流れを可変的に制限するように制御可能である。上記第2の動作構成では、上記スプールは、上記圧力ポートと上記アクチェータポートとを接続する流体経路を画定し、また上記圧力ポートと上記アクチュエータポートとの間の流れを可変的に制限するように制御可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役車両用の制御弁組立体であって、
制御弁は:
穿孔を有する弁体;
前記穿孔内に配置され、少なくとも2つの動作構成の間で前記穿孔に沿って軸方向に可動である、スプール;
前記弁体に形成され、油圧アクチュエータ等の油圧消費部品に接続されるように配設される、サービスポート;
前記弁体に形成され、ポンプ等の油圧動力供給部品に接続されるように配設される、圧力ポート;及び
前記弁体に形成され、油圧タンクリザーバに接続されるように配設される、タンクポート
を備え、
第1の動作構成では、前記スプールは、第1の流れ方向において流体が前記圧力ポートから前記サービスポート及び前記タンクポートへと流れることができ、第2の流れ方向において流体が前記サービスポートから前記圧力ポート及び前記タンクポートへと流れることができるように、前記ポンプポート、前記サービスポート、及び前記タンクポートを接続する流体経路を画定するよう、構成及び配設され、前記スプールは、前記タンクポートへの流れを可変的に制限するように制御可能であり;
第2の動作構成では、前記スプールは、前記タンクポートを閉鎖して、前記圧力ポートと前記アクチェータポートとを接続する流体経路を画定するよう、構成及び配設され、前記スプールは、前記圧力ポートと前記アクチュエータポートとの間の流れを可変的に制限するように制御可能である、荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項2】
第3の動作構成では、前記スプールは、前記圧力ポートを閉鎖して、前記サービスポートと前記タンクポートとの間の流体経路を画定するよう構成及び配設され、前記スプールは、前記サービスポートと前記タンクポートとの間の流れを可変的に制限するように制御可能である、請求項1に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項3】
前記スプールは、前記第1の動作構成において、前記タンクポートへの流れが可変的に制御されるときに、前記圧力ポートと前記サービスポートとの間の前記流路が完全に開放されたままとなるように構成される、請求項2に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項4】
前記スプールの軸方向位置を制御するためのコントローラを更に備える、請求項3に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項5】
前記スプールを前記第1の動作構成へと偏移させる偏移手段を更に備える、請求項4に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項6】
前記ポンプの起動中に前記スプールが前記第1の動作構成に配置される第1の供給動作モードでは、前記タンクポートが開放されており、これにより、ポンプ起動中の前記圧力ポートから前記タンクポートへの流れが可能となる、請求項4又は5に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項7】
前記スプールが前記第1の動作構成である第2の供給動作モードでは、前記コントローラは、前記作動ポートへの流れが開始され、かつ前記アクチュエータへの必要な供給流が、前記ポンプの最小供給流より少ない場合に、前記タンクポートを比例的に閉鎖して前記作動ポートと前記タンクポートとの間で流れを共有するように、前記スプールを制御するよう構成される、請求項6に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項8】
第3の供給動作モードでは、前記コントローラは、前記アクチュエータへの必要な供給流が前記ポンプの最小供給流以上である場合に、前記スプールを前記第2の動作構成に配置して、前記タンクポートを閉鎖することにより、前記圧力ポートからの全ての流れを前記作動ポートへと配向するように構成される、請求項7に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項9】
前記コントローラは、前記タンクポートが完全に閉鎖され、前記アクチュエータへの必要な供給流が前記ポンプの最小供給流を超えたときに、前記ポンプを制御して速度を上昇させるよう構成される、請求項8に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項10】
第4の供給動作モードでは、前記コントローラは、必要なシステム圧力が前記アクチュエータへの必要な供給圧力を超える場合に、前記スプールを前記第2の動作構成に配置し、前記圧力ポートと前記サービスポートとの間の流路を比例的に閉鎖して、前記ポンプから前記アクチュエータへの流れを絞るよう構成される、請求項4〜9のいずれか1項に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項11】
第5の再生荷降ろし動作モードでは、前記コントローラは、前記スプールを制御して前記第2の動作構成へと移動させることにより、流体を前記アクチュエータから前記ポンプへと流すことができるよう、構成される、請求項3〜8のいずれか1項に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項12】
前記第5の再生荷降ろしモードでは、前記コントローラは、前記スプールを制御して、前記圧力ポートと前記サービスポートとの間の流体流路を比例的に閉鎖することにより、前記アクチュエータから前記ポンプへの流れを絞るよう構成される、請求項11に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項13】
第6の重力荷降ろし動作モードでは、前記コントローラは、前記ポンプを介したエネルギ再生が必要ない場合、前記スプールを前記第3の動作構成に配置して、流体が前記サービスポートから前記タンクポートへと直接流れるようにするよう構成される、請求項3〜10のいずれか1項に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項14】
前記第6の重力荷降ろし動作モードでは、前記コントローラは、前記スプールを制御して、前記サービスポートと前記タンクポートとの間の流体流路を比例的に閉鎖することで、前記アクチュエータから前記タンクへの流れを絞ることにより、前記アクチュエータの下降を制御するよう、構成される、請求項13に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項15】
前記弁体は、前記スプール弁の運動を制御するための加圧流体を受け取るよう配設されたパイロットポートを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項16】
前記パイロットポートにおける流体圧力を制御するための、前記パイロットポートに接続された比例的減圧弁を更に備える、請求項15に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項17】
前記スプールは第1の端部に荷重面を含み、前記荷重面は、前記圧力ポートに入った加圧流体が前記荷重面に力を印加して、前記スプールの第1の方向の軸方向移動を引き起こすように配設され、また前記偏移手段は前記スプールの第2の端部に配置され、前記スプールに、軸方向に対向する第2の方向の偏移力を付与するよう配設される、請求項15又は16に記載の荷役車両用の制御弁組立体。
【請求項18】
荷役車両用の油圧制御システムであって、
前記システムは:
油圧アクチュエータ;
ポンプ;
タンクリザーバ;及び
請求項1〜17のいずれか1項に記載の弁組立体を備え、
前記ポンプは、前記弁の前記圧力ポートに流体接続され、前記油圧アクチュエータは前記サービスポートに接続され、前記タンクリザーバは前記タンクポートに接続される、荷役車両用の油圧制御システム。
【請求項19】
請求項18に記載の油圧制御システムを含む、車両。
【請求項20】
第1の油圧アクチュエータ;
ポンプ;
タンクリザーバ;及び
請求項1〜17のいずれか1項に記載の弁組立体
を備える荷役車両のための、流れ制御方法であって、
前記ポンプは、前記弁の前記圧力ポートに流体接続され、前記油圧アクチュエータは前記サービスポートに接続され、前記タンクリザーバは前記タンクポートに接続され、
前記方法は、前記スプールを、3つの前記動作構成の間で、前記穿孔に沿って軸方向に選択的に移動させるステップを含む、荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項21】
第1の供給動作モードにおいて、前記タンクポートが開放されることにより、ポンプ起動中の前記ポンプから前記タンクへの流れが可能となるように、前記スプールを前記第1の動作構成に配置して前記ポンプを起動するステップを更に含む、請求項20に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項22】
第2の供給動作モードにおいて、前記アクチュエータへの必要な供給流が前記ポンプの最小供給流未満である場合に、前記ポンプの起動後に、前記スプールを制御して前記タンクポートを比例的に閉鎖することにより、前記アクチュエータと前記タンクとの間で流れを共有するステップを更に含む、請求項21に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項23】
第3の供給動作モードにおいて、前記アクチュエータへの必要な供給流が前記ポンプの最小供給流以上である場合、前記第1の動作構成にあるときに前記スプールを制御して前記タンクポートを閉鎖し、前記ポンプからの全ての流れを前記アクチュエータに配向するステップを更に含む、請求項21に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項24】
前記タンクポートが完全に閉鎖され、前記アクチュエータへの必要な供給流が前記ポンプの最小供給流より多い場合に、前記ポンプの速度を上昇させるステップを更に含む、請求項23に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項25】
前記荷役車両は、前記ポンプによって流体が供給される少なくとも1つの第2の油圧アクチュエータを更に備え、
前記方法は、第4の供給動作モードにおいて、前記第2のアクチュエータが必要とする圧力が、前記第1のアクチュエータへの必要な供給圧力より高い場合、前記スプールを前記第2の動作構成に配置し、前記スプールを制御して、前記圧力ポートと前記サービスポートとの間の流路を比例的に閉鎖することにより、前記ポンプから前記第1のアクチュエータへの流れを絞るステップを更に含む、請求項20〜24のいずれか1項に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項26】
第5の再生荷降ろし動作モードにおいて、前記スプールを前記第2の動作構成に配置して、流体が前記アクチュエータから前記ポンプに流れることができるようにするステップを更に含む、請求項21〜25のいずれか1項に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項27】
前記ポンプはポンプ発電機であり、
前記方法は、前記アクチュエータからの前記流体の流れを用いて前記ポンプ発電機を駆動し、前記ポンプ発電機を動作させて電力を生成するステップを更に含む、請求項26に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項28】
前記圧力ポートと前記サービスポートとの間の前記流体の流路を比例的に閉鎖して、前記アクチュエータから前記ポンプへの流れを絞ることにより、前記アクチュエータの下降を制御するステップを更に含む、請求項26又は27に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項29】
第6の重力荷降ろし動作モードにおいて、エネルギ再生が必要ない場合、前記スプールを制御して前記スプールを前記第3の動作構成に配置し、流体が前記サービスポートから前記タンクポートに流れることができるようにするステップを更に含む、請求項28に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項30】
前記スプールを制御して、前記サービスポートと前記タンクポートとの間の前記流体の流路を比例的に閉鎖することにより、前記アクチュエータから前記タンクへの流れを絞ることによって、前記アクチュエータの下降を制御するステップを更に含む、請求項29に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【請求項31】
前記弁体はパイロットポートを含み、
前記方法は、加圧流体を前記パイロットポートに供給して、前記スプールの運動を制御するステップを更に含む、請求項21〜30のいずれか1項に記載の荷役車両のための流れ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両用の制御弁組立体、及び上記制御弁組立体を動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動フォークリフトトラック又は電動オーダーピッカー等の電動荷役車両は、車両に運動を提供するための電気駆動手段と、フォークリフトの荷揚げ回路等の油圧アクチュエータに動力を提供するための油圧システムとを含む。電動フォークリフトトラックは、積荷の垂直な荷揚げ及び荷降ろしのための一次油圧アクチュエータを含む。一次荷揚げアクチュエータは、一次油圧回路を介して油圧ポンプによって駆動される。一次油圧回路は典型的には、一次油圧アクチュエータが最大負荷圧力下で動作する際に、加圧された油圧流体をポンプから一次アクチュエータに直接供給するように配設される。積荷の垂直な荷揚げ及び荷降ろしに加えて、荷役車両は通常、積荷の前方及び後方へのリーチ(reach)、又は横方向及び/若しくは横断方向の傾斜といった更なる機能を実施するための、補助油圧アクチュエータを含む。
【0003】
一次シリンダ及び補助シリンダの流体供給需要は異なっており、多くの場合同時に発生する。油圧システムのコスト及びサイズを最小限に抑えるためには、一次シリンダ及び補助シリンダ両方を、単一のポンプを用いて動作させることができることが望ましい。従って、複数の油圧シリンダを異なる負荷条件下で同時に動作させることができるようにするために、流れ供給システムが必要となる。また、荷降ろし中に補助機能が必要となる場合に、電気エネルギを用いてポンプを駆動する代わりに、荷降ろし負荷圧力を用いて補助シリンダを動作させることができることが望ましい。
【0004】
また、電気荷役車両に、積荷の油圧荷降ろし中にエネルギを再生する能力を設けることが知られている。このようなシステムでは、荷降ろし中の油圧を用いてモータ発電機を動作させることによって、電力を生成できる。
【0005】
従って、上述の要件を包含するよう構成された電気荷役車両の油圧システムが必要とされる。上記油圧システムは、流れ共有要件を管理するために、多数の弁を含む流れ制御デバイスを含まなければならない。典型的には、電気車両用の流れ共有油圧システムは、流れ制御システムの様々な側面を制御するように構成された複数の弁を備え、これらは、必要な流れ制御機能を提供するために協働する。これらの別個の弁を制御するために制御アルゴリズムも必要となり、弁及び他の制御要素の個数が増加すると、制御アルゴリズムの実装及びプログラムは大幅に複雑化する。更に、電子制御システム及びハードウェアは、複数の電流を比例的に駆動できる必要がある。
【0006】
必要な機能を達成するように油圧システムを構成できる方法は多数存在する。しかしながら、システムのコスト及び保守要件を最小限に抑えるために、流れ制御要素の個数、サイズ、及び複雑さを最小限に抑えることが望ましく、これはまた、油圧システムの制御に必要なアルゴリズムのコスト及び複雑さを低減する効果も有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上述の課題に対処する、及び/又は全体的な改善を提供する、荷役車両用の改良された制御弁組立体を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、添付の特許請求の範囲に記載されているような、荷役車両用の制御弁組立体が提供される。本発明によると、添付の特許請求の範囲に記載されているような、荷役車両用の流れ制御の方法も提供される。
【0009】
本発明のある実施形態では、フォークリフト等の荷役車両用の制御弁組立体が提供される。制御弁は、穿孔を有する弁体と、上記穿孔内に配置され、少なくとも2つの動作構成の間で上記穿孔に沿って軸方向に可動であるスプールとを備える。サービスポートが上記弁体に形成され、油圧アクチュエータ等の油圧消費部品に接続されるように配設される。圧力ポートも上記弁体に形成され、ポンプ等の油圧動力供給部品に接続されるように配設される。更にタンクポートが上記弁体に形成され、油圧タンクリザーバに接続されるように配設される。上記弁は、第1の動作構成と第2の動作構成との間で再構成可能である。上記第1の動作構成では、上記スプールは、第1の流れ方向において流体が上記圧力ポートから上記サービスポート及び上記タンクポートへと流れることができ、第2の流れ方向において流体が上記サービスポートから上記圧力ポート及び上記タンクポートへと流れることができるように、上記ポンプポート、上記サービスポート、及び上記タンクポートを接続する流体経路を画定するよう、構成及び配設され、上記スプールは、上記タンクポートへの流れを可変的に制限するように制御可能である。上記第2の動作構成では、上記スプールは、上記タンクポートを閉鎖して、上記圧力ポートと上記アクチェータポートとを接続する流体経路を画定するよう、構成及び配設され、上記スプールは、上記圧力ポートと上記アクチュエータポートとの間の流れを可変的に制限するように制御可能である。
【0010】
第1の動作モードでは、荷揚げ圧力による負荷なしに上記ポンプを動作させるオフロードポンプ始動が可能である。上記タンクポートは始動時に完全に開放できるため、油圧の制限がなく、従って上記ポンプは負荷なしに動作する。この構成により、従来技術の構成で見られるような別個のバイパス弁の必要が回避される。更に、上記第1の動作構成において、上記タンクポートを可変的に制限するように上記スプールを動作させることができるため、製造元が推奨する最低動作速度での動作時に、上記アクチュエータの流れ需要が上記ポンプの出力流未満である場合に不要である過剰な流れをタンクに流すこともできるようにしながら、上記アクチュエータへの流れを開始させることができる。第1及び第2の動作構成によって提供される機能を単一のスプール弁に組み込むことにより、本発明は、複数のカートリッジ弁及び大幅に複雑な制御システムを用いて同一の機能を提供する従来技術の構成に対して、大幅な改良を提供する。
【0011】
上記油圧アクチュエータの流れ需要が上記ポンプの最小出力流以上になる時点において、上記スプールを上記第2の動作構成で動作させることができ、この第2の動作構成では、タンクへの流れが閉鎖され、上記アクチュエータへの流れが、上記ポンプの速度を制御することによって制御される。上記第2の動作構成は、エネルギ再生のために上記ポンプを通る流れが必要となる荷降ろし中にも使用できる。上記スプールを上記第2の動作構成で動作させることにより、圧力ポートと上記サービスポートとの間の流れを可変的に制限できるため、上記アクチュエータから上記ポンプへの流れを制御できる。
【0012】
好ましくは、上記弁は第3の動作構成へと再構成可能であり、この第3の動作構成では、上記スプールは、上記圧力ポートを閉鎖して、上記サービスポートと上記タンクポートとの間の流体経路を画定するよう構成及び配設され、上記スプールは、上記サービスポートと上記タンクポートとの間の流れを可変的に制限するように制御可能である。これにより有利なことに、流れが上記アクチュエータからタンクへと直接流れる状態での、重力による荷降ろしが可能となる。流路を可変的に制限できることにより、荷降ろし速度を制御できる。第3の動作構成で達成される機能をスプール弁に組み込むことにより、従来技術に対する更なる利点が提供され、同一の機能を達成するために従来技術では採用されていた追加の弁及び制御用構成が必要なくなる。
【0013】
上記スプールは好ましくは、上記第1の動作構成において、上記タンクポートへの流れが可変的に制御されるときに、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の上記流路が完全に開放されたままとなるように構成される。
【0014】
好ましくは、上記スプールの軸方向位置を制御するために、コントローラを設ける。従って上記コントローラは、上記第1、第2、及び第3の構成位置の間で上記スプールを移動させるよう構成される。
【0015】
上記制御弁組立体は更に、上記スプールを上記第1の動作構成へと偏移させる偏移手段を備えてよい。従って、上記タンクポートが完全に開放されている上記第1の動作構成は、上記スプールのデフォルト静止位置となる。上記コントローラは、上記スプールを、上記偏移部材の作用に対抗して動作させて、上記第1の動作構成において上記タンクポートを可変的に制限するように上記スプールを移動させ、また上記スプールを上記第2及び第3の動作構成へと移動させる。
【0016】
好ましくは、上記ポンプの起動中に上記スプールが上記第1の動作構成に配置される第1の供給動作モードでは、上記タンクポートが開放されており、これにより、ポンプ起動中の上記圧力ポートから上記タンクポートへの流れが可能となる。これは、上記アクチュエータへの流れが存在しない完全なオフロード始動位置に対応する。
【0017】
上記スプールが上記第1の動作構成である第2の供給動作モードでは、上記コントローラは、上記作動ポートへの流れが開始され、かつ上記アクチュエータへの必要な供給流が、上記ポンプの最小供給流より少ない場合に、上記タンクポートを比例的に閉鎖して上記作動ポートと上記タンクポートとの間で流れを共有するように、上記スプールを制御するよう構成される。この状況では、上記ポンプからの流れは上記アクチュエータの需要を超えている。流れは上記アクチュエータに向かって始まり、過剰な流れはタンクに配向される。
【0018】
第3の供給動作モードでは、上記コントローラは、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流以上である場合に、上記スプールを上記第2の動作構成に配置して、上記タンクポートを閉鎖することにより、上記圧力ポートからの全ての流れを上記作動ポートへと配向するように構成できる。
【0019】
上記コントローラは好ましくは、上記タンクポートが完全に閉鎖され、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流を超えたときに、上記ポンプを制御して速度を上昇させるよう構成される。
【0020】
第4の供給動作モードでは、上記コントローラは好ましくは、必要なシステム圧力が上記アクチュエータへの必要な供給圧力を超える場合に、上記スプールを上記第2の動作構成に配置し、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の流路を比例的に閉鎖して、上記ポンプから上記アクチュエータへの流れを絞るよう構成される。これにより、一次アクチュエータよりも高い圧力で補助アクチュエータを動作させることができる、単純かつ効率的な手段が提供される。
【0021】
第5の再生荷降ろし動作モードでは、上記コントローラは、上記スプールを制御して上記第2の動作構成へと移動させることにより、流体を上記アクチュエータから上記ポンプへと流すことができるよう、構成できる。この構成では、上記タンクポートは閉鎖され、上記アクチュエータと上記ポンプとの間の直接の流路が形成される。
【0022】
上記第5の再生荷降ろしモードでは、上記コントローラは、上記スプールを制御して、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の流体流路を比例的に閉鎖することにより、上記アクチュエータから上記ポンプへの流れを絞るよう構成される。これにより、エネルギ再生中に上記ポンプへの流れを制限して、上記バッテリの過充電を防止できる。
【0023】
好ましくは、第6の重力荷降ろし動作モードでは、上記コントローラは、上記ポンプを介したエネルギ再生が必要ない場合、上記スプールを上記第3の動作構成に配置して、流体が上記サービスポートから上記タンクポートへと直接流れるようにするよう構成される。
【0024】
上記第6の重力荷降ろし動作モードでは、上記コントローラは、上記スプールを制御して、上記サービスポートと上記タンクポートとの間の流体流路を比例的に閉鎖することで、上記アクチュエータから上記タンクへの流れを絞ることにより、上記アクチュエータの下降を制御するよう、構成できる。
【0025】
上記弁体は好ましくは、上記スプール弁の運動を制御するための加圧流体を受け取るよう配設されたパイロットポートを含む。上記パイロットポートへの上記加圧流体の供給は、上記コントローラによって制御される。
【0026】
上記制御弁組立体は更に、上記パイロットポートにおける流体圧力を制御するための、上記パイロットポートに接続された比例的減圧弁を備えてよい。上記比例的減圧弁を上記コントローラで制御して、上記パイロットポートへの上記加圧流体の供給を制御する。
【0027】
上記スプールは好ましくは、第1の端部に荷重面を含み、これは、上記圧力ポートに入った加圧流体が上記荷重面に力を印加して、上記スプールの第1の方向の軸方向移動を引き起こすように配設され、また上記偏移手段は上記スプールの第2の端部に配置され、上記スプールに、軸方向に対向する第2の方向の偏移力を付与するよう配設される。
【0028】
本発明の別の態様では、荷役車両用の油圧制御システムが提供される。上記システムは:油圧アクチュエータ;ポンプ;タンクリザーバ;及び上述のような弁組立体を備える。上記ポンプは、上記弁の上記圧力ポートに流体接続され、上記油圧アクチュエータは上記サービスポートに接続され、上記タンクリザーバは上記タンクポートに接続される。
【0029】
本発明の更に別の態様では、上述のような油圧制御システムを含む車両が提供される。
【0030】
本発明の別の態様では、第1の油圧アクチュエータ;ポンプ;タンクリザーバ;及び上述のような弁組立体を備える荷役車両のための、流れ制御方法も提供できる。上記ポンプは、上記弁の上記圧力ポートに流体接続され、上記油圧アクチュエータは上記サービスポートに接続され、上記タンクリザーバは上記タンクポートに接続される。上記方法は、上記スプールを、上述の3つの動作構成の間で、上記穿孔に沿って軸方向に選択的に移動させるステップを含む。
【0031】
上記方法は更に、第1の供給動作モードにおいて、上記タンクポートが開放されることにより、ポンプ起動中の上記ポンプから上記タンクへの流れが可能となるように、上記スプールを上記第1の動作構成に配置して上記ポンプを起動するステップを含む。
【0032】
上記方法は好ましくは、第2の供給動作モードにおいて、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流未満である場合に、上記ポンプの起動後に、上記スプールを制御して上記タンクポートを比例的に閉鎖することにより、上記アクチュエータと上記タンクとの間で流れを共有するステップを含む。
【0033】
上記方法は好ましくは、第3の供給動作モードにおいて、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流以上である場合、上記第1の動作構成にあるときに上記スプールを制御して上記タンクポートを閉鎖し、上記ポンプからの全ての流れを上記アクチュエータに配向するステップを含む。
【0034】
上記方法は好ましくは、上記タンクポートが完全に閉鎖され、上記アクチュエータへの必要な供給流が上記ポンプの最小供給流より多い場合に、上記ポンプの速度を上昇させるステップを含む。
【0035】
上記荷役車両は好ましくは、上記ポンプによって流体が供給される少なくとも1つの第2の油圧アクチュエータを更に備え、上記方法は更に、第4の供給動作モードにおいて、上記第2のアクチュエータが必要とする圧力が、上記第1のアクチュエータへの必要な供給圧力より高い場合、上記スプールを上記第2の動作構成に配置し、上記スプールを制御して、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の流路を比例的に閉鎖することにより、上記ポンプから上記第1のアクチュエータへの流れを絞るステップを含む。
【0036】
上記方法は更に、第5の再生荷降ろし動作モードにおいて、上記スプールを上記第2の動作構成に配置して、流体が上記アクチュエータから上記ポンプに流れることができるようにするステップを含んでよい。
【0037】
上記ポンプは好ましくはポンプ発電機であり、上記方法は更に、上記アクチュエータからの上記流体の流れを用いて上記ポンプ発電機を駆動し、上記ポンプ発電機を動作させて電力を生成するステップを含んでよい。
【0038】
上記方法は更に、上記圧力ポートと上記サービスポートとの間の上記流体の流路を比例的に閉鎖して、上記アクチュエータから上記ポンプへの流れを絞ることにより、上記アクチュエータの下降を制御するステップを含んでよい。
【0039】
上記方法は更に、第6の重力荷降ろし動作モードにおいて、エネルギ再生が必要ない場合、上記スプールを制御して上記スプールを上記第3の動作構成に配置し、流体が上記サービスポートから上記タンクポートに流れることができるようにするステップを含んでよい。
【0040】
上記方法は更に、上記スプールを制御して、上記サービスポートと上記タンクポートとの間の上記流体の流路を比例的に閉鎖することにより、上記アクチュエータから上記タンクへの流れを絞ることによって、上記アクチュエータの下降を制御するステップを含んでよい。
【0041】
上記弁体は好ましくはパイロットポートを含み、上記方法は更に、加圧流体を上記パイロットポートに供給して、上記スプールの運動を制御するステップを含む。
【0042】
これより、以下の説明用の図面を参照して、単なる例として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態による油圧システムの回路図である。
【
図2】
図2は、本発明のある実施形態による弁の概略図である。
【
図3】
図3は、第1の動作構成における、本発明のある実施形態による弁の概略図である。
【
図4】
図4は、第2の動作構成における、本発明のある実施形態による弁の概略図である。
【
図5】
図5は、第3の動作構成における、本発明のある実施形態による弁の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、フォークリフトトラック等の荷役車両用の油圧回路1である。上記回路は一次油圧アクチュエータ2を備え、これは使用時に、車両のマストに可動設置されたフォークリフトトラックの荷揚げ用フォークに接続される。上記回路はまた、第1の補助油圧アクチュエータ4を含み、これは、フォークをマストに対して前方及び後方に移動させるリーチ機能を実行するために配設される。第2の補助油圧シリンダ6は、車両のマストを傾斜させて、前方及び後方の方向における積荷の角度を変化させるために配設される。第3の補助油圧シリンダ8は、フォークをマストに対して横方向に端から端まで移動させるために配設される。これは補助機能の一構成の例であること、及び上記回路は車両の動作要件に応じて、追加の又はより少数の補助油圧シリンダを含んでよいことが理解されるだろう。
【0045】
ポンプモータ10は、一次油圧シリンダ及び補助油圧シリンダを動作させるために設けられる。供給動作モードでは、ポンプモータ10は、第1の供給方向に回転して、電気モータからの機械的シャフト動力を油圧動力に変換することにより、油圧システム1に油圧流/圧力を供給するよう構成される。ポンプモータ10は再生モードで動作するようにも構成され、この再生モードでは、ポンプモータ10はシステムから油圧流/圧力を受け取り、ポンプを第2の再生方向に回転させる。油圧動力は機械的シャフト動力に変換され、これは電気エネルギへと変換できる。この双方向ポンプ構成は、2象限(2 Quadrant)ポンプと呼ばれる。油圧システム1は更にタンクリザーバ12を含む。
【0046】
第1のマニホルド14は、ポンプ10から一次油圧シリンダ2への流れを制御するよう構成される。補助油圧シリンダへの流れを制御するために、第2のマニホルド15及び第3のマニホルド17も設けられる。第1のマニホルド14は、第1の圧力ポート16及び第2の圧力ポート17を含む。供給モードでは、第1の圧力ポート16はポンプ10の出口ポートであり、第2のポート17は、流れをタンク12からポンプ10に供給するポンプ入口である。第1の圧力ポート16は、流れチャネル19を介して、流れをインテリジェントに共有するよう構成されたスプール弁18に接続される。スプール弁18は、ポンプ10から第1の油圧アクチュエータ2への流れを制御する。スプール弁18は、流れチャネル22を介して、第1の油圧アクチュエータ2に接続される。油圧負荷保持弁24が、スプール弁18と第1の油圧アクチュエータ2との間に設けられる。弁24は、非起動位置及び起動位置で動作するよう構成される。非起動位置では、弁24は、第1の油圧アクチュエータ2からスプール弁18への流れを遮断しながら、スプール弁18から第1の油圧アクチュエータ2への逆方向の流れを可能とする。これにより、第1の油圧アクチュエータ2に対する負荷を所定の位置で保持できる。起動位置では、流れを第1の油圧アクチュエータ2からポンプ10又はタンク12へと通過させることができる。
【0047】
安全機能として、キャビテーション防止逆止弁20を第1のマニホルド14に設ける。流体回路はまた、制御システムの電気的故障等のシステム故障の際に積荷を安全に荷降ろしするために、第1の油圧アクチュエータ2からタンク12への流れの絞りを提供するよう構成された、緊急荷降ろし弁23を含む。
【0048】
フォークに対する積荷の圧力を測定するために、油圧変換器25を設ける。油圧変換器25は、制御アルゴリズムを更に進化させて特定の油圧弁の起動/停止を最適化するために、制御システムへの入力としても使用できる。入口ポート28、30、及び出口ポート32を有する、油圧シャトル弁26も設ける。弁26は、ポンプ10又は第1の油圧アクチュエータ2それぞれから来る2つの入口ポート28、30からの最高圧力を、スプール弁18への供給を行う出口ポート32に交互に送る。
【0049】
図2は、スプール弁18の説明用の概略図である。弁18は、軸方向穿孔を軸方向に有する弁体と、上記穿孔に内包されたスプール36とを備える。スプール36は上記穿孔内で軸方向に可動である。3つの動作構成がスプール36に概略的に示されているが、これらは、スプールの、圧力ポートP、サービスポートA及びタンクポートTに対する、穿孔に沿った異なる軸方向位置に対応する、3つの動作位置それぞれにおける流れの状態を示している。スプール弁18はパイロット式で動作し、パイロットポート40がスプール36の第1の軸方向端部に設けられており、これは、シャトル弁26の出口32から流体を受け取るよう配設される。パイロットポート40への流れは比例的減圧弁(PPRV)42によって制御され、この比例的減圧弁(PPRV)42は、パイロットポート40における圧力を、弁42内のコイルに供給される電気制御信号に基づいて、比例的に変化させる。
【0050】
PPRV42はコントローラによって制御され、上記コントローラは、油圧システムの流れ需要及び現在の動作パラメータに基づいて、スプール36の位置を制御するよう構成された、制御アルゴリズムを動作させる。パイロットポート40における圧力はスプール36に作用して、スプール36を第1の軸方向に、パイロットポート40から離れるように軸方向移動させる。偏移部材44がスプール36の反対側の端部に設けられ、これは、パイロット圧力と反対の軸方向の偏移力を提供するよう配設される。偏移部材44は、圧縮ばね又はいずれの好適な偏移手段であってよい。偏移部材44は、スプール36を、パイロットポートに向かって第2の軸方向に偏移させる。スプール36を偏移部材44に向かって第1の方向に移動させるために、パイロット圧力は、偏移部材44の偏移ばね力を上回る必要がある。
【0051】
弁体34は、流れチャネル19を介してポンプ10に接続された圧力ポートP、流れチャネル22を介して第1の油圧アクチュエータ2に接続されたサービスポートA、及びタンクリザーバ12に接続されたタンクポートTを備える。スプール36は、パイロット信号の制御下において3つの異なる動作位置の間で軸方向に移動するよう構成される。スプール36は、3つの動作位置において、ポートP、A、Tの間に異なる流れ経路を画定するよう構成される。
【0052】
図3に示されている第1の動作位置では、スプール36は、圧力ポートP、サービスポートA、及びタンクポートTを接続する流体経路を画定するよう構成及び配設される。この第1の位置では、第1の流れ方向において流体が圧力ポートPからサービスポートA及びタンクポートTへと流れることができ、かつ第2の流れ方向において流体がサービスポートAから圧力ポートP及びタンクポートTへと流れるように、3つのポート全てが接続される。下で更に説明するように、第1の位置にあるとき、タンクポートTへの流れを可変的に制限するために、スプール36をパイロット信号によって制御できる。
【0053】
第1の位置では、スプール36は第1の動作モードで機能して、オフロードポンプ始動を促進する。油圧システムでは、油圧ポンプを「オフロード(off‐load)」で始動させること、即ちポンプが回転を始める間、ポンプに荷揚げ圧力による負荷がかからないことが望ましい。従って油圧ポンプを一定の速度で回転させた後で、負荷圧力を導入して徐々に増大させることができる。従来技術の構成では、これは一般にバイパス弁を用いて達成されていたが、追加のバイパス弁を含めると、油圧システムにコスト及び複雑さが追加される。フォークリフト業界におけるコスト競争力のため、バイパス弁は油圧システムから除外されることが多い。その結果、油圧ポンプはオンロード(on‐load)で始動され、負荷が徐々に導入されることはなく、これは油圧ポンプの早期摩耗につながる。
【0054】
スプール弁36の第1の動作モードは、圧力ポートP、タンクポートT、及びサービスポートAが開放されるように制御される。従って、ポンプ10が始動して回転を始めるとき、流体はタンク12へと流れることができるため、ポンプ10に負荷がかからない。第1の油圧アクチュエータ2に負荷がかかっているため、サービスポートAへの流れは、このポートが開放されているにもかかわらず存在しない。タンクポートTが完全に開放されているため、油圧の制限は存在せず、ポンプ10は負荷なしに動作する。このようにポンプ10をオフロードで始動させることができることにより、別個のバイパス弁と同一の機能が提供される。全ての出力流がタンク12へと迂回されるため、油圧ポンプ10は第1の動作モードにおいて、負荷を与えることなく、最小回転速度、例えば5lpmの出力流に相関する回転速度まで上昇させることができる。
【0055】
ポンプの起動後、ポンプ10が、ポンプ製造元が推奨する最小回転速度に対応する速度で動作している状態で、サービスポートAを介した第1の油圧アクチュエータ2への流れを開始できる。サービスポートAにおける出力流は、2つの条件下で提供され得る。第1の条件は、第1の油圧アクチュエータ2の流れ需要がポンプ10の最小出力流未満であることであり、第2の条件は、第1の油圧アクチュエータ2の流れ需要がポンプ10の最小出力流以上であることである。スプール36は、これら両方の条件下の流れ需要を満たすように、パイロット信号の制御下で動作可能である。
【0056】
ポンプ10が、ポンプ製造元が推奨する最小回転速度に対応する速度で動作しており、サービスポートAにおいて必要な出力流が最小出力流、即ち(ポートTへと戻る)バイパス流未満である、
図4に示されている第2の動作モードでは、ポンプ10からの流れの総量がサービスポートAにおける需要を超えているため、ポンプ10の流れ全てをサービスポートAに配向することはできない。
【0057】
従って、スプール36を制御して、必要な流れがサービスポートAに再配向され、過剰な流れがタンクポートTに流れ続けるよう、タンクポートTを比例的に閉鎖する。このようにして、スプール36はタンクポートTを、圧力ポートPとタンクポートTとの間の可変流量オリフィスとして動作させる。タンクポートTを比例的に閉鎖することにより、ポートAとポートTとの間での流れの共有が形成され、ポートPは入口又は流れ供給口となる。スプール36は、アクチュエータの需要に応じてタンクポートTが閉鎖される程度を比例的に変更するために、パイロット信号によって制御可能である。
【0058】
第2の動作モードでは、サービスポートAへの流れを、ゼロとポンプ10の最小出力流との間、例えば0〜5LPMで制御する。これにより、サービスポートAにおけるアクチュエータ流が、ポンプ10の必要な最小出力流(最小回転速度)未満となる、フォークのクリープ速度を、ポンプに損傷を与えることなく実現できる。例えば、全負荷下での外接歯車ポンプの最小回転速度は500RPMであり得、この速度は、損傷を防止するための軸受の十分な潤滑が保証されるように設定される。典型的なフォークリフトでは、23.0cc/revのポンプ変位を使用できる。500RPMでは、これは11.5LPMの理論上の出力流を提供することになる。サービスポートAにおける必要な出力流が11.5LPM未満であり、ポンプがこの速度で動作させられる場合、ポンプは早期に摩耗する恐れがある。
【0059】
サービスポートAへの流れがポンプ10の最小の流れに等しくなる第3の動作モードでは、タンクポートTを完全に閉鎖できる。サービスポートAにおいて必要な出力流がポンプ10の最小出力流以上となると、タンク12への流れは不要となる。コントローラの制御アルゴリズムは、ポートPで提供される流入流を、タンクポートTへのバイパス流からサービスポートAにおけるアクチュエータ流へと比例的にシフトさせるために、スプール36を制御し始める。
【0060】
圧力ポートPにおける全ての供給流がサービスポートAへと再配向され、タンクポートTが完全に閉鎖されると、サービスポートAへの流れがポンプ10の速度によって完全に制御される。サービスポートAにおける流れ需要がポンプ10の最小出力流を超える場合、ポンプ10の速度を上昇させて、サービスポートAへの流れを増大させる。
【0061】
図4に示されている第2の動作位置では、スプール36は、流れチャネルが圧力ポートPとサービスポートAとの間に確立され、かつタンクポートTが閉鎖されるように、構成される。スプール36をパイロット信号によって制御して、圧力ポートP及び/又はサービスポートAを比例的に閉鎖することにより、ポンプ10と第1の油圧アクチュエータ2との間に制御オリフィスを形成する。従って、スプール36を制御することにより、圧力ポートPとサービスポートAとの間の流れを比例的に絞ることができる。第4の動作モードでは、圧力ポートPとサービスポートAとの間の流れの絞りは、第1の油圧アクチュエータ2と補助アクチュエータ4、6、8のうちの1つ以上との間での流れ共有状態が必要となる場合に、実装できる。この絞りを行わないと、油圧ポンプによって供給される油圧油は常に、抵抗が最小である経路を選択することになる。従って、第1のアクチュエータ2の流れ需要を超える圧力での補助シリンダ4、6、8への流れが必要である場合、第1のアクチュエータ2への流れを絞ることによって、システム圧力を、補助需要圧力のレベルまで上昇させることができなければならない。
【0062】
一例として、積荷を積載したフォークを持ち上げるために第1のアクチュエータ2が100バールを必要とする一方で、補助シリンダ4がリーチ機能を動作させるために150バールを必要とする場合、いずれの流れ共有論理の不在下では、ポンプ10が供給する全ての油が第1の油圧アクチュエータ2の荷揚げ機能へと配向されることになる。これにより、荷揚げ機能が予想外に速度超過となる一方で、リーチ機能が全く動作しなくなる。大半の油圧システムではこれは非常に望ましくないことであり、同時機能が必要とされる場合、何らかの流れ共有論理を回路内に構築する必要がある。しかしながら、流れ共有機能のために必要な追加の部品は典型的には、より複雑で高価なシステムをもたらす。本発明の第4の動作モードでは、流れの共有は、スプール36を制御してサービスポートAへの流れを絞ることにより、システム圧力を補助需要圧力まで上昇させることによって達成される。上述の例では、これには、サービスポートAへの流れに対して50バールの絞りを適用して、ポンプを150バールで動作させながらサービスポートAへの供給を100バールとすることが必要である。これにより、IFSスプール弁18に対して絞りによる50バールの損失が発生するものの、単一のポンプを使用して、複雑で高価な追加の弁及び制御システムを必要とすることなく、一次機能及び補助機能(即ち荷揚げ及びリーチ)を同時に実現できる。
【0063】
ほとんどの流れ共有回路において、流れの共有は、負荷感知論理によって達成され、この負荷感知論理は、パイロット信号を変化させることによってそれ自体を横断する圧力差を絞ることができるパイロット式動作論理素子を制御する。油圧システムでは、ポンプの出口ポートから、負荷感知信号が拾われることになるシステム内の地点までに、圧力の降下が常に存在する。この圧力降下をオフセットするために、ばねによる偏移を論理要素に導入することにより、必要ないときには論理要素を閉鎖したままとする必要がある。いくつかのシステムでは、この偏移ばね力は20バールもの高さとする必要がある場合がある。これらの弁の動作はかなり単純であるものの、これらはある大きな欠点を有する。同時機能が必要ない場合、システムの効率を最大化するためには、論理要素による圧力降下を最小化しなければならない。本発明では、偏移用のばねは不要である。というのは、弁の位置を、パイロット信号の制御下で、スプール36によって直接絞ることができるためである。偏移用のばねが不要であるため、同時機能が必要ないときには弁を最大開放位置に位置決めでき、これによりシステム効率を大幅に向上させることができる。
【0064】
第2の動作位置では、流れ方向を反転させて、サービスポートAから圧力ポートPへの流れを提供できる。スプール36は、圧力ポートPとサービスポートAとの間の流れを双方向に絞るように動作可能であり、従ってサービスポートAから圧力ポートPへと流れる際の流れを、圧力ポートPからポートAへの流れに関して上述したものと同一の様式で絞ることができ、これは、ポートPからポートAへ、及びポートAからポートPへの流れを絞ることを意味する。
【0065】
第5の動作モードでは、サービスポートAから圧力ポートPに供給することによって、第1の油圧アクチュエータ2からの加圧流体を荷降ろし中に使用して、エネルギ再生のためにポンプ10を駆動でき、ここでポンプモータ10は油圧モータとして動作して、油圧動力を機械的シャフト動力に変換する。これらの条件下では、例えば油圧ユニットが、動力学的性能が良好でない誘導モータ等の電気モータ/発電機で駆動される場合に、ポンプ10への負荷を制御下で開始できることが望ましい。スプール弁18は、スプール36を用いてサービスポートAから圧力ポートPへの流れを絞ることにより、完全に油圧式で、フォークの初期下降を達成できる。この重力荷降ろし段階の間に、電気モータ/発電機の回転を無負荷状態で開始させることができ、これにより、トルクを上昇させた後で再生モータ/発電機ユニットを徐々に開始させることができる。より一般には、スプール弁18の使用により、特にクリープ速度の低下が望ましい場合に、制御性を改善できる。
【0066】
ポンプモータ10を用いて、再生荷降ろし中にバッテリに貯蔵される電気エネルギを生成できる。再生荷降ろし中、上昇する負荷によって加圧される油圧流体からの運動エネルギは、ポンプモータ10を発電機ユニットとして駆動することによって、電気エネルギから変換される。例えばフォークリフトが主に荷降ろしを実施し、荷揚げ動作が限定的である場合等の、特定の動作条件下では、エネルギ再生が電気エネルギ消費を上回るため、バッテリを満充電状態とすることができる。バッテリパックの充電状態が100%になると、過充電によってバッテリが損傷する恐れがある。このシナリオでは、負荷をポンプモータ10から除去してエネルギ再生を停止するように、荷降ろし用の流れを絞ることができる。従ってスプール弁18は、安全で制御された様式での積荷の荷降ろしを可能としながら、バッテリの過充電の保護を提供する。従来技術の構成では、油圧システムは、サービスポートAから圧力ポートPへの流れの絞りを実現するために別個の論理要素弁を必要とする。というのは、このような論理要素弁は一方向にしか制御できないためであり、これにより追加の部品が更に必要となり、システムに複雑さ及びコストが付加される。
【0067】
第6の動作モードでは、第2の動作位置において、サービスポートAから圧力ポートPへの流れチャネルを完全に開放できる。サービスポートAから圧力ポートPへの流れチャネルを完全に開放することにより、スプール弁18による圧力降下を最小化して、システム効率を最大化する。サービスポートAから圧力ポートPへの流れチャネルが完全開放状態となるようにスプール36を制御することにより、積荷から得られる全ての運動エネルギを、モータ/発電機が電気エネルギ回収に使用でき、これにより従来技術のシステムに比べてエネルギ節約の可能性が最大化される。
【0068】
第3の動作位置では、
図5に示されているように、スプール36は、サービスポートAとタンクポートTとの間に流れチャネルを画定し、圧力ポートPを閉鎖するよう構成される。スプール36はパイロット信号によって制御されて、タンクポートT及び/又はサービスポートAを比例的に閉鎖することにより、タンク12と第1の油圧アクチュエータ2との間に制御オリフィスを形成する。従って、積荷の荷降ろし中にスプール36を制御して、サービスポートAとタンクポートTとの間の流れを比例的に絞ることができる。
【0069】
第3の動作位置は、エネルギ再生を伴わない、従来のものに近い積荷の重力荷降ろし手段を提供する。重力荷降ろし中、サービスポートAとタンクポートTとの間のオリフィスを制御することにより、誘起圧力を大気圧まで絞ることによって、全ての利用可能な運動エネルギを油中の熱へと変換する。第1の油圧アクチュエータ2からの全ての流れは、ポンプ10を通らずに直接タンク12に至る。エネルギ回収動作モードに比べて効率は大幅に低いものの、第3の動作位置には重力荷降ろしによって達成できる特定の利点が存在する。
【0070】
重力荷降ろし中の流れの絞りによって生成される熱エネルギは、一般には望ましくない。というのは、油圧油の加熱は、油圧力学上のより強力な冷却システムを必要とするためである。しかしながら、フォークリフトトラックを冷蔵環境で使用する場合、荷降ろしからの運動エネルギを用いて油圧油の温度をその動作ゾーンに可能な限り迅速に移行させるための高効率のシステムに戻すことが可能である可能性がある。エネルギ回収システムをフォークリフトトラックに実装する場合、荷降ろしからのエネルギは有用な電気エネルギに変換され、これによって、油へと伝達される熱の量が本質的に低減される。
【0071】
上述のように、特定の状況においては、バッテリが満充電されてしまうため、再生荷降ろしが不可能である。第2の動作位置での絞りを伴う重力荷降ろし及び油圧ポンプ10の自由な回転の代わりに、スプール弁18を、荷降ろし用の流れが絞られてタンク12へと直接向かう第3の動作位置に切り替えることができる。このようにすると、ポンプ10は回転する必要がなくなり、ポンプ10の動作が削減され、システムのノイズが最小化される。
【0072】
更なる利点として、本発明のIFS弁は、4象限ポンプ技術を必要とすることなく、荷降ろし中の補助シリンダの動作を可能とする。第1の油圧シリンダ2の下降中、「リーチ」等の同時補助機能が必要となる場合がある。再生荷降ろし中にポンプ10を使用して、利用可能な運動エネルギを捕捉し、これを用いてバッテリを充電する。再生荷降ろしイベント中に同時補助機能が必要となる場合、第1の油圧シリンダ2上の誘起負荷を用いて(この圧力が補助需要を満たすために十分なものである場合に)この補助機能を動作させることができる。しかしながら、第1の油圧シリンダ2上の誘起負荷が十分でない場合、補助機能を動作させるためにポンプ10が必要となる。ポンプの戻りラインに負荷をかけることにより、荷降ろし用の流れがポンプを通過する際に、ポンプを動作させて、下降するシリンダからの圧力をブーストできる。しかしながら、これには2Q(2象限)ポンプ技術から4Q(4象限)ポンプ技術への変更が必要であり、これはコスト及び複雑さを大幅に増大させ、このようなエネルギ回収システムで使用できるポンプ技術を制限する。
【0073】
積荷の荷降ろし中に補助シリンダに供給を行うためにポンプ動作が必要である本発明では、スプール36を第3の位置に移動させることによって、第1のアクチュエータ2からタンク12への流れを可能とし、これはポンプ10をバイパスし、ポンプ10を補助需要に対する供給を行うために動作させることができる。
【国際調査報告】