特表2021-532332(P2021-532332A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-532332ベータコア断片hCGをマーカーとして含む新規な妊娠診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532332(P2021-532332A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】ベータコア断片hCGをマーカーとして含む新規な妊娠診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20211029BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   G01N33/543 521
   G01N33/531 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-563176(P2019-563176)
(86)(22)【出願日】2019年7月31日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月11日
(86)【国際出願番号】KR2019009573
(87)【国際公開番号】WO2021002528
(87)【国際公開日】20210107
(31)【優先権主張番号】10-2019-0080618
(32)【優先日】2019年7月4日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.韓国の「東洋日報『この地の青い旗』」(http://www.dynews.co.kr)の2019年6月9日付の第1面 2.18th International Conference on Emergency Medicine(ICEM 2019)EXHIBITION、大韓民国ソウル、COEX、3階D2ホールでの2019年6月12〜15日の展示
(71)【出願人】
【識別番号】519401929
【氏名又は名称】エイディーテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADTECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジン ドン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソン ジン
(57)【要約】
本発明の免疫装置は、1)分析しようとする被検試料を収容する検体領域と、2)前記検体領域と連動しており、探針物質-標識が接合された抗I-hCG抗体、及び、探針物質-標識が接合された抗βcf hCG抗体を含むコンジュゲート領域と、3)前記検体領域に繋がっており、抗I-hCG抗体が固定された第1検出ライン、抗βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン、及び、対照ラインを含む、前記コンジュゲート領域と連動する信号検出領域と、4)信号検出反応が終了した被検試料を吸収する、前記信号検出領域のダウンストリームに位置する吸収領域とを含み、高濃度のhCGによるHook効果及び/又はhCG-βcfの干渉効果による偽陰性を最小化し、正確な妊娠診断が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)分析しようとする被検試料を収容する検体領域と、
2)前記検体領域と連動しており、探針物質-標識が接合された抗I-hCG抗体、及び、探針物質-標識が接合された抗βcf hCG抗体を含むコンジュゲート領域と、
3)前記検体領域に繋がっており、抗I-hCG抗体が固定された第1検出ライン、抗βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン、及び、対照ラインを含む、前記コンジュゲート領域と連動する信号検出領域と、
4)信号検出反応が終了した被検試料を吸収する、前記信号検出領域のダウンストリームに位置する吸収領域と、
を含む妊娠診断用免疫装置。
【請求項2】
前記2)の探針物質は、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、量子ドット(quantum dot)ナノ粒子、カーボンナノ粒子、ラテックスビーズ/蛍光ナノ粒子、セルロースナノ粒子、磁気ナノ粒子、シリカナノ粒子、ポリマービーズ(polymer bead)、蛍光物質(fluorescein)、発光物質(Luminescent substances)、色素(dye)及びタンパク質で構成された群より選択された1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の妊娠診断用免疫装置。
【請求項3】
前記2)の探針物質は、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、量子ドット(quantum dot)ナノ粒子、カーボンナノ粒子、ラテックスビーズ/蛍光ナノ粒子、セルロースナノ粒子、磁気ナノ粒子、シリカナノ粒子、ポリマービーズ(polymer bead)、蛍光物質(fluorescein)、発光物質(Luminescent substances)、色素(dye)及びタンパク質で構成された群より選択された1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の妊娠診断用免疫装置。
【請求項4】
前記4)の吸収領域は、多孔性支持体の空隙(pore)に分散されているか、または、多孔性支持体の繊維糸に吸着又はコーティングされている吸収剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の妊娠診断用免疫装置。
【請求項5】
1)対照ライン及び第1検出ラインに、
2)対照ライン及び第2検出ラインに、または、
3)対照ライン、第1検出ライン及び第2検出ラインに、
発色線が現れたとき、妊娠であると判定することを特徴とする請求項1に記載の妊娠診断用免疫装置。
【請求項6】
1)被検試料を請求項1〜5の何れか一項に記載の免疫装置に適用して、試料内のI-hCG及びβcf hCGは、探針物質-標識が接合された抗I-hCG抗体、及び、探針物質-標識が接合された抗βcf hCG抗体と反応する段階と、
2)第1検出ライン及び第2検出ラインにより、試料内のI-hCG及びβcf hCGの反応を確認する段階であって、I-hCG、βcf hCGは、それぞれの検出ラインでサンドイッチ複合体の存在により発生する信号によって検知される段階と、
3)対照ライン及び第1検出ラインに発色線が現れたか、対照ライン及び第2検出ラインに発色線が現れたか、または、対照ライン、第1検出ライン及び第2検出ラインに発色線が現れたとき、妊娠であると判定する段階と、
を含む妊娠診断に必要な情報を提供する方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は妊娠診断用免疫装置、そしてこれを用いた妊娠診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin;hCG)は、妊娠中に生産される糖タンパク質ホルモンである。hCGは胎盤の絨毛細胞栄養膜で生産され、妊娠初期にプロゲステロンを継続して生産するようにし、胎盤の機能が完成する妊娠10週まで着床を維持させる機能をする。体内活性形態である完全型hCG(Intact hCG;I-hCG)は約37kDaの分子量を有し、244個のアミノ酸で構成される。I-hCGは大きく分けてアルファ(α)とベータ(β)の2つのサブユニット(subunit)からなり、アルファ-サブユニットは92個のアミノ酸を含んでおり、ベータ-サブユニットは145個のアミノ酸を含む。I-hCGは一般に妊娠期間中に多様な段階にて存在し、体内に存在する主な構造であり、妊娠初期にはこのような活性型構造が、高い割合で多糖鎖hCG(hyperglycosylated hCG;H-hCG)の形態で存在する。前記活性型の他にもhCGの多様な解離及び分解生成物が血液及び尿から見つかり、これらは、断片化hCG(nicked hCG;N-hCG)、遊離ベータhCG(free β-hCG)、遊離アルファhCG(free α-hCG)、遊離ベータコア断片hCG(free β-core fragment hCG)などとして存在する。
【0003】
ベータコア断片hCG(βcf hCG)は、hCGの1つの明確な分解産物であるfree β-hCGの断片であり、約14kDaの分子量を有する。βcf hCGは、妊娠2週以降から尿で、I-hCGと比べて少ない量である約0.01pmol/mLの濃度で現れ始め、妊娠週数が経過するにつれて次第に増加し、5週目が経過すると、I-hCGよりも高い濃度で現れる。また、βcf hCGは、他の代謝産物とは異なり、専ら尿にのみ存在する(J ClinEndocrinolMetab,76,1993,704-10)。
【0004】
I-hCGの濃度は、血清及び尿で9〜12週頃に最も高い数値を示し、妊産婦の尿中の濃度は10週目に150、000mIU/mLであり、個人差によって900、000mIU/mLの高い濃度で検出されることもある。現在用いられる妊娠診断キットは、妊娠初期(最終生理日基準3〜5週目)にI-hCGを定性診断して妊娠か否かを判定する。しかし、妊娠と判定された11,760人に対して従来の妊娠診断キットで試験を行った結果、約0.2%に当たる22人が偽陰性(False negative)であることが分かり、これらに対するI-hCGの濃度は最大268、022.5IU/mLと測定(J. Emergency Medicine 2013,44:155)され、現在の妊娠診断キットに、フック現象(Hook Effect)による偽陰性の問題が発生していることを示唆する。
【0005】
妊娠診断における偽陰性は、救急室(emergency department、ED)の状況で深刻な結果をもたらす恐れがある。例えば、女性患者が妊娠しているにも拘らず、尿を利用して一般の妊娠診断キットで測定した際に偽陰性という結果が出されると、女性患者の治療において、胎児を考慮せずに治療を行ってしまうという医療事故が発生し得る。即ち、子宮外妊娠を診断できなかったり、妊娠時に禁止される薬物の投与又は胎児の放射線被爆、及びこれに起因する争訟などの問題を引き起こす。FDAのMAUDE(Manufacturer and user facility device experience database)調査の結果、妊娠定性検査で陰性と判定されて子宮頸部生検を実施したが、その後に血清検査でI-hCGが探知された事例や、尿を利用した妊娠テストで陰性と判定されてCT撮影を行ったが、その後に妊娠8週目であることが判明した事例、妊娠陰性と判断されて子宮内避妊具を挿入したり、外科的手術を敢行したが、その後の検査で妊娠と判定された事例などが報告されている(Nerenz et al.,Clinical Chemistry 61:3,483-486,2015)。
【0006】
尿を利用した妊娠診断キットは、一般にI-hCGに対する抗体を標識物質として用いて検出ライン(Test line)でI-hCGを検出するが、次の場合、妊娠診断において偽陰性の結果が出され得る。I-hCGが尿に多量に存在して、診断キットメンブレンに固定された検出抗体、及び、ゴールド又は蛍光などの探針物質-標識が接合された抗体を飽和させて、診断キットのI-hCG検出ラインでのサンドイッチの形成を妨げる場合、即ちフック現象の場合、偽陰性の結果が出される可能性があるのであり、βcf hCGが尿に高い濃度で存在して、探針物質-標識が接合された自由浮遊I-hCG抗体がβcf hCGと結合することにより、I-hCGとの結合を妨げ、干渉することによって、たとえI-hCGが診断キットの検出ラインに固定された検出抗体と結合していたとしても、βcf hCGと結合した自由浮遊I-hCG抗体が、抗原であるI-hCGと結合できず、サンドイッチの形成を妨げる場合が発生する(Griffey et al.,The journal of Emergency Medicine,44,2013,155-160)。
【0007】
即ち、尿を利用した妊娠診断キットは、I-hCGが高農渡である場合にはフック現象により妊娠診断において偽陰性の結果が出される可能性があり、またβcf hCGが高濃度である場合にも偽陰性の結果を招く恐れがあると報告されている(Diwan,Med. Lab. Obeserver,2011,18-20;Cervinski et al.,Clin. Chem. Lab. Med. 48(7),2010,935-942;Gronowski et al.,Clin. Chem.,55(7),2009,1389-1394)。従って、最終生理日(last menstrual period、 LMP)から約2週以降にはβcf hCGの濃度が増加してI-hCGのサンドイッチの形成を妨げる干渉効果を示し、偽陰性の結果が出され得る。
【0008】
従来の妊娠診断キットは、I-hCGのみを検知するのが大半であり、診断において偽陰性の問題を解決するために、一部の妊娠診断キットの場合、I-hCG以外にhCG-H及びhCG-βの一部の組み合わせを検知している。従って、高濃度のI-hCGによるフック現象による偽陰性或いはβcf hCGによる正常なサンドイッチ形成の妨害による偽陰性の結果がもたらされた。また、I-hCGとβcf hCG、そして他の種類のhCGホルモンを1つの検出ラインで同時に検知する製品の場合は、βcf hCGに反応性を示すが、高濃度のI-hCG及びβcf hCGが混合されている検体に対して、1つのラインで相互干渉効果による偽陰性の結果を引き起こした。例えば、C&D社製の妊娠診断キットは、1つの検出ラインにI-hCG以外に、βcf hCG、及び、他の種類の変移したhCGを検知する抗体を含んでいるが、相互干渉効果により検出ラインでの敏感度が低下して、偽陰性の結果が出されるという問題が発生している。
【0009】
そこで、本発明者らは、妊娠診断キットと関連する従来技術の問題を解決すべく鋭意研究した結果、I-hCGを検知する検出ライン以外に、βcf hCGを検知する検出ラインを別途に追加し、相互干渉現象が発生しないI-hCG抗体及びβcf hCG抗体をそれぞれ配置することによって、高濃度のI-hCGによるフック現象が発生してもβcf hCG検出ラインの発色によって妊娠か否かを正確に診断し、偽陰性の結果を最小化した妊娠診断キットを発明するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、妊娠診断キットと関連する従来技術の問題であるフック現象などによる偽陰性の結果を最小化したものとして、I-hCGを検知する第1検出ライン以外にβcf hCGを検知する第2検出ラインを別途に追加した免疫装置を開発することで、高濃度のI-hCGによるフック現象が発生してもβcf hCGの検知によって妊娠か否かを診断し、βcf hCGの干渉現象による偽陰性を最小化した免疫装置及び妊娠診断方法を発明し、正確な妊娠診断を可能にするようにした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明はβcf hCGを特異的に認識する抗体を含む妊娠診断キットを提供する。
【0012】
また、本発明は、1)分析しようとする被検試料を収容する検体領域(Sample region)と、2)前記検体領域と連動しており、探針物質(Probe)に接合された抗I-hCG抗体、及び、探針物質に接合された抗βcf hCG抗体を含むコンジュゲート領域(Conjugate region)と、3)前記検体領域に繋がっており、抗I-hCG抗体が固定された第1検出ライン、抗βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン、及び、対照ラインを含む、前記コンジュゲート領域と連動する信号検出領域と、4)信号検出反応が終了した被検試料を吸収する、前記信号検出領域のダウンストリームに位置する吸湿領域とを含む妊娠診断用免疫装置を提供する。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記2)の探針物質は、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、量子ドット(quantum dot)ナノ粒子、カーボンナノ粒子、ラテックスビーズ/蛍光ナノ粒子、セルロースナノ粒子、磁気ナノ粒子、シリカナノ粒子、ポリマービーズ(polymer bead)、蛍光物質(fluorescein)、発光物質(Luminescent substances)、色素(dye)、タンパク質で構成された群より1つ以上選択されることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記3)の信号検出領域は、抗I-hCG抗体が固定された第1検出ライン、前記第1検出ラインのダウンストリームに抗βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン、及び、前記第2検出ラインのダウンストリームにある対照ラインを含むことができる。本発明の他の実施例によれば、前記3)の信号検出領域は、抗βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン、前記第2検出ラインのダウンストリームに抗I-hCG抗体が固定された第1検出ライン、及び、前記第1検出ラインのダウンストリームにある対照ラインを含むことができる。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記3)の信号検出領域はニトロセルロース、セルロース、ポリエチレン、ポリエーテルサルフォン(ポリエーテルスルホン)、及び、ナイロンで構成された群より選択された何れか1つであることを特徴とする。
【0016】
前記4)の吸湿領域は、多孔性支持体、及び、前記多孔性支持体の空洞(pore)に分散されるか、多孔性支持体の繊維糸に吸着又はコーティングされている、吸収剤を含むことを特徴とする。
【0017】
前記免疫装置は、1)対照ライン及び第1検出ライン、2)対照ライン及び第2検出ライン又は3)対照ライン、第1検出ライン及び第2検出ラインに発色線が現れたとき、妊娠であると判定することを特徴とする。
【0018】
本発明の他の態様によれば、1)試料を前記免疫装置に適用して試料内のI-hCG及びβcf hCGが探針物質-標識が接合された抗I-hCG抗体及び抗βcf hCG抗体と反応する段階と、2)第1検出ライン及び第2検出ラインにより試料内のI-hCG及びβcf hCGの反応を確認する段階であって、I-hCG、βcf hCGは、それぞれの検出ラインで、サンドイッチ複合体の存在により発生する信号によって検知される段階と、3)対照ライン及び第1検出ラインに発色線が現れるか、対照ライン及び第2検出ラインに発色線が現れるか、対照ライン、第1検出ライン及び第2検出ラインに発色線が現れるかの、いずれかであるときに妊娠であると判定する段階とを含む妊娠診断に必要な情報を提供する方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施例による免疫クロマトグラフィーストリップは、I-hCGを検知する検出ライン以外にβcf hCGを検知する検出ラインを追加で含んでおり、高濃度のI-hCGによるフック現象及び/又はβcf hCGの干渉現象による偽陰性を最小化することで、正確な妊娠診断を可能にするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によって製造された免疫クロマトグラフィーストリップの実現例を示す概要図である。
図2】本発明による免疫クロマトグラフィーストリップをキットに適用する具体例を示す模式図である。1は診断キットの判定窓を示し、2は試験の終了を示す対照ラインである。3と4は検出ラインを示し、5は被検試料を投入する検体領域を示す。
図3】I-hCG及びβcf hCG濃度に応じた、本発明によって製造された免疫クロマトグラフィーストリップを含むキットについての、第1及び第2検出ライン及び対照ラインの様相を示す。
図4】他社の妊娠診断キットと比較した、本発明の免疫クロマトグラフィーストリップを含むキットについてのβcf hCG反応評価結果を示す。
図5】一般の妊娠診断免疫クロマトグラフィーストリップで偽陰性に判定される場合にも、本発明の異種検出ラインを備えた免疫クロマトグラフィーストリップで、妊娠陽性と判定可能であることを比較して示す。
図6】比較例1(C&D社製の妊娠診断キット)と本発明との比較実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている一連の実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現することができる。但し、これらの実施例は本発明の開示を完全なものにし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に理解させるために提供されるものであり、本発明は請求範囲の範疇により定義されるだけである。以下、添付の図面を参照して本発明の実施のための具体的な内容を詳細に説明する。図面と関係なく同一の参照番号は同一の構成要素を示し、「及び/又は」は、言及されたアイテムの、それぞれ及び1つ以上の全ての組み合わせを含む。
【0022】
本明細書で用いられた用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は特に言及しない限り複数型も含む。明細書で用いられる「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、言及された構成要素以外に1つ以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。
【0023】
他の定義がなければ、本明細書で用いられる全ての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が共通して理解できる意味として用いられうるであろう。また、一般に用いられる辞典に定義されている用語は、明白に特別に定義されていない限り、理想的に又は過度に解釈されない。
【0024】
以下、本発明の実施例による妊娠診断用免疫装置及びこれを用いた妊娠診断方法について説明する。
【0025】
本発明の一実施例による妊娠診断用免疫装置は、1)分析しようとする被検試料を収容する検体領域と、2)前記検体領域と連動しており、探針物質-標識が接合された抗I-hCG抗体と、探針物質-標識が接合された抗βcf hCG抗体とを結合させたコンジュゲート領域と、3)前記検体領域に繋がっており、抗I-hCG抗体が固定された第1検出ライン、抗βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン及び対照ラインを含む、前記コンジュゲート領域と連動する信号検出領域と、4)信号検出反応が終了した被検試料を吸収する、前記信号検出領域のダウンストリームに位置する吸湿領域とを含む。
【0026】
前記検体領域は、妊娠可能年齢の女性の血液又は尿といった液状試料を収容することが好ましいが、I-hCG及び/又はβcf hCGを含むと予想される試料であれば、何れも使用可能である。
【0027】
前記検体領域は、分析物質に対する選択性をより向上させるために、又は前記試料に含まれ得る干渉物質による影響を最小化するために、フィルタリング機能を追加で有することができる。必要な場合、前記検体領域のアップストリームに、分析物質とコンジュゲート間の反応を増加させるか、又は干渉物質により影響を排除できる物質を含む補助領域を追加で備えることができる。
【0028】
前記コンジュゲート領域の対照ラインは、被検試料中のI-hCG又はβcf hCGの濃度と関係なく、一定の信号を出す部分を意味する。前記対照ラインは、I-hCG又はβcf hCGとは結合せずに被検試料と共に移動相により検出領域に沿って移動する、第3コンジュゲートと結合するリガンドを、固定させて形成できる。検体中のI-hCG及びβcf hCGの存在有無と関係なく、一定の信号を放出できるリガンドを固定させるのである。従って、第1コンジュゲート及び/又は第2コンジュゲートがターゲット試料と結合されず、第1検出ライン及び/又は第2検出ラインを行き過ぎても、第3コンジュゲートが試料と結合して、対照ライン上で捕獲されうる。例えば、試料内にターゲット試料が存在しない場合、検出ラインで色などが発現しなくても、対照ラインでは色などが発現する。このように、前記対照ラインでの応答(response)は、液状サンプルがセンサを適切に通過していることを意味する。前記第3コンジュゲートは、マウスIgG又はニワトリIgYなどが用いられるうる。前記対照ラインにて、抗-ウサギIgG、抗-ニワトリIgY、ストレプトアビジン(streptavidin)、ウシ血清アルブミン、ヤギ抗-マウスIgG又はヤギ-抗-ニワトリIgYなどが用いられうる。
【0029】
前記コンジュゲート領域の探針物質は、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、量子ドット(quantum dot)ナノ粒子、カーボンナノ粒子、ラテックスビーズ/蛍光ナノ粒子、セルロースナノ粒子、磁気ナノ粒子、シリカナノ粒子、ポリマービーズ(polymer bead)、蛍光物質(fluorescein)、発光物質(Luminescent substances)、色素(dye)及びタンパク質からなる群より選択される1つ以上の探針物質が用いられうる。本発明の一実施例によれば、探針物質がコロイド状金ナノ粒子であるが、これに限定されない。
【0030】
本発明の一実施例によれば、前記3)の信号検出領域は、抗I-hCG抗体が固定された第1検出ライン、前記第1検出ラインのダウンストリームに抗βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン、及び、前記第2検出ラインのダウンストリームにある対照ラインを含むことができる。本発明の他の実施例によれば、前記3)の信号検出領域は、抗βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン、前記第2検出ラインのダウンストリームに抗I-hCG抗体が固定された第1検出ライン、及び、前記第1検出ラインのダウンストリームにある対照ラインを含むことができる。
【0031】
前記信号検出領域は移動相と試料が展開される媒質であって、移動相と被検試料は、信号検出領域の多孔性メンブレンの毛管現象により移動できる。信号検出領域には、ニトロセルロース、PVDF、ポリビニール(Polyvinyl)樹脂又はポリスチレン(Polystyrene)樹脂でもって合成されたウェルプレート(Well plate)及びガラスで構成されるスライドグラス(Slide glass)からなる群より選択されるものが用いられうる。本発明の一実施例によれば、信号検出領域にはニトロセルロースが用いられるが、これに限定されない。本発明の一実施例によれば、5〜15μmの空孔を有するニトロセルロースメンブレンが用いられうるが、これに限定されない。
【0032】
前記吸湿領域は、多孔性支持体及び前記多孔性支持体の空洞(空隙)に分散されるか、多孔性支持体の繊維糸に吸着又はコーティングされている吸収剤を含むことができ、前記多孔性支持体の上面に、多孔性フィルム層を追加で含むことができるが、これに限定されない。前記吸収剤は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、珪藻土、ベントナイト、苦灰石、石膏、シリカゲル及びこれらの混合物で構成される群より選択されうるが、これに限定されない。
【0033】
本発明において、第1検出ライン及び第2検出ラインの信号強度を通じて試料内の標的物質の濃度を測定する範囲が、I-hCGは25mIU/mL以上であり、βcf hCGは1pmol/mL以上である。
【0034】
従来の免疫クロマトグラフィーストリップは、検体内の標的物質が一定濃度を超えると、フック現象の発生により、検出ラインでの信号強度がむしろ減少する現象を示す。しかし、本発明の2つの検出ラインからなる免疫装置は、検体内のI-hCG濃度が増加しても、I-hCG濃度の増加によるフック現象と関係なく、βcf hCGを検知する検出ラインにより、妊娠と診断可能であり、検体内のβcf hCG濃度の増加により発生する、干渉現象による偽陰性を最小化するために、検出ラインに抗βcf hCG抗体を含む。従って、免疫クロマトグラフィーストリップ上の、対照ライン及び第1検出ライン、対照ライン及び第2検出ライン、又は、対照ライン及び第1、2検出ラインに、着色線が現れたとき、妊娠であると判定する。従って、妊娠約3週以降に、βcf hCGの増加による干渉現象により、偽陰性に判断されていた従来の妊娠診断キットとは異なり、抗βcf hCG抗体を備えた別途の検出ラインにより、βcf hCGの存在を検出して妊娠か否かを正確に診断する。従って、第1検出ラインと第2検出ラインとの組み合わせにより、従来の1つの検出ラインで限界があった妊娠診断の範囲を広げ、正確度を改善したという特徴がある。
【0035】
本発明において、前記コンジュゲート領域内に存在する抗I-hCG抗体の第1コンジュゲートは、妊娠可能年齢の女性の血液又は尿などといった液状検体がメンブレンの側へ移動展開する際に、検体内のI-hCGと結合して、(I-hCG)-コンジュゲートの第1複合体を形成する。前記コンジュゲート領域内に存在する抗βcf hCG抗体の第2コンジュゲートは、液状検体が信号検出領域へ移動展開する際に、検体内のβcf hCGと結合して、βcf hCG-コンジュゲートの第2複合体を形成する。前記第1複合体は、展開される過程で、第1検出ラインに固定された抗I-hCG抗体と反応し、前記第2複合体は、展開中に、第2検出ラインに固定された抗βcf hCG抗体と反応する。I-hCG検出ラインの信号の強度は、検体内のI-hCG濃度が増加するにつれて増加するが、一定濃度以上に増加すると、フック現象により、むしろ信号の強度が減少する結果を示す。本発明の免疫クロマトグラフィーストリップは、多量のI-hCGによりフック現象が発生しても、第2検出ラインによりβcf hCGを敏感に検出することで、フック現象の影響を受けずに陽性と判定できるようにした。
【0036】
本発明のI-hCG濃度の増加による第1検出ライン及び第2検出ラインの結果は、図3に示した。フック現象が発生するI-hCGの濃度で、第2検出ラインは、βcf hCGを検出して妊娠と診断するということを確認した。
【0037】
また、本発明の免疫装置は、下部に固体支持台を含むことができる。
【0038】
前記固体支持台は、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ガラス及びプラスチックからなる群より選択された材料で形成されることができる。前記固体支持台上にストリップを取付・付着して製造するので、ストリップの耐久性を向上させることができ、取り扱い及び保管を容易にすることができる。また、追加的な外部デバイスの装着を容易にすることができる。
【0039】
前記固体支持台として使用され得るプラスチック材質としては、ポリプロピレン(polypropylene)フィルム、ポリエステル(polyester)フィルム、ポリカーボネート(polycarbonate)フィルム、アクリル(acrylic)フィルムなどが用いられうるが、これに限定されない。
【0040】
また、一態様として、本発明は前記免疫装置を、さらにデバイス内に固定したキットであって、下部デバイスにはガイド及びストリップ支持部が備えられており、上部デバイスには、検体投入口と、第1検出ライン及び第2検出ライン並びに対照ラインに対応する位置にある結果確認窓とが備えられたキットを提供する。
【0041】
前記上部及び下部デバイスは、通常のプラスチック素材を用いて製造されうるのであり、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene;ABS)などの素材が用いられうるが、これに限定されない。
【0042】
本発明の一実施例によれば、本発明の妊娠診断用免疫装置は、1)対照ライン及び第1検出ライン、2)対照ライン及び第2検出ライン、又は3)対照ライン、第1検出ライン及び第2検出ラインに発色線が現れたとき、妊娠であると判定することを特徴とする。
【0043】
本発明の他の態様によれば、1)被検試料を前記免疫装置に適用して、試料内のI-hCG及びβcf hCGは、探針物質-標識が接合された抗I-hCG抗体、及び、探針物質-標識が接合された抗βcf hCG抗体と、それぞれ反応する段階と、2)第1検出ライン及び第2検出ラインにより、試料内のI-hCG及びβcf hCGの反応を確認する段階であって、I-hCG、βcf hCGは、それぞれの検出ラインで、サンドイッチ複合体の存在により発生する信号によって検知される段階と、3)対照ライン及び第1検出ラインに発色線が現れたか、対照ライン及び第2検出ラインに発色線が現れたか、対照ライン、第1検出ライン及び第2検出ラインに発色線が現れたかの、いずれかであるとき、妊娠であると判定する段階とを含む妊娠診断に必要な情報を提供する方法を提供する。
【0044】
本発明の他の態様によれば、前記免疫クロマトグラフィーストリップを用いて妊娠を診断する方法を提供する。
【0045】
1)被検試料を前記免疫装置に適用して、試料内のI-hCG及びβcf hCGは、探針物質-標識が接合された抗I-hCG抗体、及び、探針物質-標識が接合された抗βcf hCG抗体と、それぞれ反応する段階と、2)第1検出ライン及び第2検出ラインにより、試料内のI-hCG及びβcf hCGの反応を確認する段階であって、I-hCG、βcf hCGは、それぞれの検出ラインで、サンドイッチ複合体の存在により発生する信号によって検知される段階と、3)対照ライン及び第1検出ラインに発色線が現れるか、対照ライン及び第2検出ラインに発色線が現れるか、対照ライン、第1検出ライン及び第2検出ラインに発色線が現れたとき、妊娠であると判定する妊娠診断方法を提供する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を下記の実施例により詳細に説明する。
【0047】
但し、下記の実施例は本発明を例示するものであって、本発明の内容が下記の実施例により限定されるものではない。
【0048】
(実施例1:免疫クロマトグラフィーストリップの製造)
<A.第1検出ライン、第2検出ライン及び対照線が形成されたメンブレンの製作>
3つの分析リガンドをメンブレン(nitrocellulose membrane)に分注した。第1検出ラインのI-hCG抗体として抗-I-hCGモノクローナル抗体(Monoclonal antI-hCG)を、第2検出ラインのβcf hCG抗体として抗-βcf hCGモノクローナル抗体(Monoclonal antI-βcf hCG)を、対照線のリガンドとしてはヤギ抗-マウス免疫グロブリン(Goat antI-Mouse IgG)を分注し、その後に乾燥させた。
【0049】
<B.コンジュゲートパッド(conjugate pad)の製作>
コロイド状金ナノ粒子(colloidal gold nanoparticle)と抗I-hCG抗体(Monoclonal antI-hCG)とが接合された第1コンジュゲート溶液を準備し、コロイド状金ナノ粒子と抗-βcf hCG抗体(Monoclonal antI-βcf hCG)とが接合された第2コンジュゲート溶液を準備した。また、コロイド状金ナノ粒子とマウス免疫グロブリン(Mouse IgG)とが結合された第3コンジュゲート溶液を準備した。前記第1コンジュゲート溶液、第2コンジュゲート溶液及び第3コンジュゲート溶液を、前処理されたコンジュゲートパッドに分注し、完全に乾燥させた後、適切な大きさに切断して準備した。
【0050】
<C.検体パッド(sample pad)の製作>
緩衝剤及び保存剤が含まれている検体パッド前処理溶液に、検体パッドを十分に浸し、完全に乾燥させた後、適切な大きさに切断して準備した。
【0051】
<D. 吸湿パッド(Absorbance pad)の製作>
乾燥している状態の吸湿パッドを適切な大きさに切断して準備した。
【0052】
<E.免疫クロマトグラフィーストリップの製作>
前記各過程を通じて準備したメンブレン、コンジュゲートパッド、検体パッド及び吸湿パッドを図1に示す構造の通りに組み立てる。
【0053】
即ち、検体パッドをコンジュゲートパッドの一端と重なるように付着し、検出パッドの一端を前記コンジュゲートパッドの他端と重なるように付着し、検出パッドの他端と吸湿パッドの一端を互いに重なるように付着した。
【0054】
図1において、それぞれの図面符号の意味するところは、以下の通りである。
【0055】
1:検体パッド部(Sample pad)
2:コンジュゲートパッド部(Conjugate pad)
3:ニトロセルロースメンブレン(Nitrocellulose membrane)
4:吸湿パッド(Absorbent Pad)
5:I-hCG抗体が固定された第1検出ライン
6:βcf hCG抗体が固定された第2検出ライン
7:ヤギ抗-マウス免疫グロブリンが固定された対照ライン
【0056】
<F.デバイスの組み立て>
製造された妊娠診断用免疫クロマトグラフィーストリップを、プラスチックの下部デバイスにおけるストリップ固定位置に入れた後、検体投入口と結果確認窓とがある上部デバイスに嵌め込んでから組み立てる。
【0057】
(実施例2:I-hCG及びβcf hCGの濃度による免疫クロマトグラフィーストリップの分析)
I-hCGとβcf hCG標準物質を非妊娠の尿にスパイキングし、混合された標準試料を製造して試験を行った。製造された標準試料溶液をデバイス検体投入口に100μLずつ分注して展開させ、3分以降から最大10分までの結果を確認した。製造された標準試料溶液のI-hCGとβcf hCGの濃度は、以下の通りである(表1)。
【0058】
【表1】
【0059】
図3に示すように、検体内のI-hCGの濃度が増加するほど検出ラインのゴールド粒子の信号強度は次第に増加し、I-hCGの濃度1、000mIU/mLを有する実験群3で最も強い強度を示したが、I-hCG濃度212,000mIU/mL及び800,000mIU/mLである実験群4及び5では、フック現象によりI-hCGを検知する第1検出ラインがはっきりしていないか、検知されなかった。しかし、βcf hCGを検知する第2検出ラインの場合、検体内のI-hCG濃度が増加してフック現象が発生するのと関係なく、βcf hCGを検知することができた(図3)。
【0060】
(実施例3:高濃度のβcf hCGによる偽陰性の評価)
βcf hCGによる干渉現象による偽陰性の評価のために、韓国における同業他社の3つの製品と、本発明の免疫装置とを比較評価したのであり、評価方式はNerenz et al.のスクリーニングを参照した(Nerenz et al., Clinical chem, 2014,Vol. 60:4,667-674)
【0061】
非妊娠の尿にI-hCG 0.5pmol/mL(約200mIU/mL)を混合した試料、非妊娠の尿にβcf hCG 50pmol/mLを混合した試料、非妊娠の尿にI-hCG 0.5pmol/mL、及び、βcf hCG 500pmol/mLを混合した試料を使用して肉眼で判定した。
【0062】
βcf hCG 50pmol/mLの試料を処理する場合と、I-hCG 0.5pmol/mL及びβcf hCG 500pmol/mLの混合試料を処理する場合、他社製品では、バンドが発色されなかったり、非常に薄く発色する偽陰性が確認されたが、これは実際の試料における偽陰性判定の可能性を内包する。しかし、本発明による免疫装置(ADTech)は、前記いずれの試料を処理する場合にも、バンドが発色して妊娠と診断し、偽陰性の問題を解決した(図4)。
【0063】
(実施例4:比較実験)
一般に用いられてきた妊娠検査薬の検出領域は、1つの検出ラインと対照ラインとからなり、2本のラインが発現する場合に妊娠と診断する。従って、高農度のI-hCGによるフック現象による偽陰性が発生するか、妊娠初期のβcf hCGの干渉効果によって偽陰性に診断される可能性がある。反面、本発明の免疫ストリップは、βcf hCGを検知するラインが存在して、高濃度のI-hCGによるフック現象又は妊娠初期(LMP2週以降)から増加するβcf hCGにより干渉現象が発生しても、βcf hCGを別途の検出ラインで検知して妊娠と判定可能であるので、初期及び後期の妊娠で発生する偽陰性の問題を解決した(図5)。
【0064】
また、本発明による妊娠診断装置と、C&D社製の妊娠診断キット(比較例1)とを比較実験した。比較例1の場合、高濃度のβcf hCGの処理時に、1つの検出ラインで陽性反応が現れた。これは比較例1がβcf hCGの干渉によるHook効果を示さないことを立証するが、高濃度のI-hCG(約3、000 IU/mL)をβcf hCGと共に処理したとき、1つの検出ライン上では相互干渉現象を示し、偽陰性が発生した。これに対し、I-hCG、βcf hCG検出ラインを分離したことに特徴がある本発明では、高濃度のI-hCGにより相互干渉現象を受けず、βcf hCG検出ラインが発色して陽性と判定可能であった(表2及び図6)。
【0065】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2019年11月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記3)の信号検出領域はニトロセルロース、セルロース、ポリエチレン、ポリエーテルサルフォン及びナイロンで構成された群より選択された何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載の妊娠診断用免疫装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【国際調査報告】