特表2021-532565(P2021-532565A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-532565R−T−B永久磁石材料およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532565(P2021-532565A)
(43)【公表日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】R−T−B永久磁石材料およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20211029BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20211029BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20211029BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20211029BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20211029BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   H01F1/057 170
   H01F41/02 G
   B22F1/02 G
   C22C33/02 K
   C22C33/02 J
   C22C38/00 303D
   C21D6/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-561144(P2019-561144)
(86)(22)【出願日】2019年7月26日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月29日
(86)【国際出願番号】CN2019097906
(87)【国際公開番号】WO2020119133
(87)【国際公開日】20200618
(31)【優先権主張番号】201910652042.6
(32)【優先日】2019年7月18日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519390438
【氏名又は名称】寧波科田磁業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嚴長江
(72)【発明者】
【氏名】錢尼健
(72)【発明者】
【氏名】傅万成
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K018BA18
4K018BC28
4K018CA11
4K018DA12
4K018DA13
4K018DA19
4K018HA08
4K018KA44
5E040AA04
5E040BD01
5E040CA01
5E040NN01
5E062CD04
5E062CG01
(57)【要約】
本発明は、R−T−B永久磁石材料に関し、R−T−B永久磁石材料はRTmであり;その中で、13≦x≦15.5、0.5≦q≦3、0.85≦z≦1、y=100−x−q−zであり;その中で、RはLRHR1−aであり、LRはPrとNdとPrNdのうちの一つまたはいくつかの組み合わせであり、HRはDyとTbのうち一つまたは二つの組み合わせであり、0.95≦a≦1;その中で、TはFeとCoのうちの一つまたは二つの組み合わせであり;その中で、Tmは遷移金属である。またR−T−B永久磁石材料の調製方法に関する。その利点は、希土類膜がマグネトロンスパッタリング装置によって合金シート上にめっきされ、長期拡散熱処理が不要であり、「コア−シェル」構造が得られ、磁石の保磁力を大幅に改善し、従来のプロセスと比較して、重希土類の含有量が同じ場合、その調製方法によるR−T−B永久磁石材料の保磁力と磁気エネルギー積は高い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TmであるR−T−B永久磁石材料であって、
ここで、13≦x≦15.5、0.5≦q≦3、0.85≦z≦1、y=100−x−q−z;
ここで、RはLRHR1−aであり、LRはPrとNdとPrNdのうちの一つまたはいくつかの組み合わせであり、HRはDyとTbのうち一つまたは二つの組み合わせであり、0.95≦a≦1;
ここで、TはFeとCoのうちの一つまたは二つの組み合わせであり;
ここで、Tmは遷移金属である、R−T−B永久磁石材料。
【請求項2】
上記のTmはZr、Al、Cu、Ga、Sn、Siのうちの一つまたはいくつかの組み合わせであることを特徴とする請求項1の上記のR−T−B永久磁石材料。
【請求項3】
上記のR−T−B永久磁石材料の主相粒子は「コア−シェル」構造であることを特徴とする請求項1の上記のR−T−B永久磁石材料。
【請求項4】
上記のシェル内のHRの濃度は、上記のコア内のHRの濃度より大きいことを特徴とする請求項3の上記のR−T−B永久磁石材料。
【請求項5】
R−T−B永久磁石材料の調製方法であって、請求項1〜5の任意の一つの上記のR−T−B永久磁石材料を調製するためのR−T−B永久磁石材料の調製方法は
Tmに従って原材料を準備し、ここで、13≦x≦15.5、0.5≦q≦3、0.85≦z≦1、y=100−x−q−zであるステップS1と;
上記の原材料を溶融鋳造用の真空溶解装置に加えて、第1の合金シートを得るステップS2と;
上記の第1の合金シート上に重希土類膜をめっきして、第2の合金シートを得るステップS3と;
上記の第2の合金片を粗く粉砕し、研磨して微粉を得るステップS4と;
上記の微粉を造粒及びプレス成形して生の圧粉体を得るステップS5と;
上記の生の圧粉体に拡散焼結および多段階焼戻し処理を施して、R−T−B永久磁石材料を得るステップS6を含む、R−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項6】
上記のステップS1において、上記のRはLRHR1−aであり、LRはPr、Nd、PrNdのうちの一つまたはいくつかの組み合わせであり、HRはDy、Tbのうちの一つまたは二つの組み合わせである;
ここで、0.95≦a≦1であることを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項7】
上記のTmは遷移金属であり、上記のTmはZr、Al、Cu、Ga、Sn、Siのうちの一つまたはいくつかの組み合わせであることを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項8】
上記のステップS2において、上記の原材料は不活性ガス下で溶融される;
上記の原材料は、溶融後に1400〜1500℃で鋳造されることを特徴とする請求項6の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項9】
上記の不活性ガスはArまたはHeであることを特徴とする請求項8の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項10】
上記の第1の合金シートの厚さは200〜300μmであることを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項11】
上記のステップS3において、上記の重希土類膜の材料は、DyとTbのいずれかの一つまたは二つの組み合わせであることを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項12】
上記のステップS3において、上記の重希土類膜の厚さは0〜3μmであることを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項13】
上記のステップS3において、上記のマグネトロンスパッタリング装置を用いて、上記の重希土類膜を上記の第1の合金シート上にめっきすることを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項14】
上記のステップS3において、上記のマグネトロンスパッタリング装置に使用されるターゲット材料は、Tb、Dy、およびHRE−X合金のうちのいずれかの一つであることを特徴とする請求項13の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項15】
上記のHRE−X合金において、上記のHREは、Tb、Dyのうちのいずれかの一つまたは二つの組み合わせである;
上記のXは、FeとCuのうちのいずれかの一つまたはいくつかの組み合わせであることを特徴とする請求項14の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項16】
上記のR−T−B永久磁石材料の主相粒子は「コア−シェル」構造である;
ここで、上記のシェルのHRの濃度は、上記のコアのHRの濃度よりも大きいことを特徴とする請求項6の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項17】
上記のステップS4において、更に、
上記の第2の合金シートを粗く粉砕して粗粉を得、上記の粗粉砕条件は、HとArの混合ガスが十分に反応した後、350〜500℃で脱水素するステップS41と;
上記のステップS41で得られた粗粉を研磨して微粉を得、上記の研磨条件はNとOの混合ガス中での高速研磨であり、粒径は1〜4μmであるステップS42とを含むことを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項18】
上記のステップS5において、更に、
上記の微粉を有機物と混合して攪拌して混合物を得るステップS51と;
上記のステップS51の上記の混合物をNに入れて磁場配向成形を行い、生の圧粉体を得るステップS52とを含むことを特徴とする請求項5のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項19】
上記のステップS6において、上記の拡散焼結の条件は上記の生の圧粉体を1000〜1055℃で6〜10の時間に保温することであることを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【請求項20】
上記のステップS6において、上記の多段階焼戻し処理の条件は、
第1段階の焼戻し処理:温度は850〜950℃で、保温時間は2〜3hであり;
第2段階の焼戻し処理:温度は450〜580℃で、保温時間は1〜5hであることを特徴とする請求項5の上記のR−T−B永久磁石材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は希土類磁性材料を調製する技術分野に関し、特に、R−T−Bを含む永久磁石材料およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NdFeB永久磁石材料は第3世代の希土類永久磁石材料として、高い磁気エネルギー積を有する。永久磁石モータの小型化、軽量化、高効率化を促進することができる。現在、永久磁石モータはすでに電気自動車、ハイブリッドカー、省エネのエアコンのコンプレッサーなどの分野で使用されている。これらの分野で、永久磁石の作業環境温度は比較的高く、常に120〜200℃である。したがって、磁性体の保磁力を高めるようにするだけで、高温における作業要求を満たすことができる。
【0003】
伝統的なNdFeB磁性体を焼結する調製プロセスは速硬、水素破壊、ジェットミリング、磁場配向、焼結焼戻しなどである。この方法の中で、磁性体の保磁力を高める主な方法は原料に希土類を添加することである。この方法は簡単で生産的に操作しやすいが、高保磁力グレードの磁性体を大量に添加すると、磁性体の残留磁気が悪化し、例えば従来市販の42SHグレード磁性体には2−3wt%Dyの添加が必要となる。通常、単位重量あたりのDyが追加され、保磁力が2kOe増加し、残留磁気が0.2〜0.3kGs低下する。このため、このプロセスにつながった別の主な問題は、48MGOe以上の磁気エネルギー積と20kOe以上の保磁力を持つ磁性体のような高性能で高保磁力の磁性体を製造できないことである。これにより、NdFeB磁石の応用が軽量と高効率性が要求されるデバイスに制限される。重希土類を大量に追加すると、残留磁気と保磁力の矛盾のバランスが取れなくなるだけでなく、永久磁石のコストも増加する。
【0004】
現在、業界における粒界拡散技術の開発は、上記の欠点を効果的に回避し、希土類永久磁石研究の分野でホットスポットとなっている。粒界拡散技術は、磁性体で蒸発(H.Sepehri−Amin,T.Ohkubo,and K.Hono,Grain boundary structure and chemistry of Dy−diffusion processed Nd−Fe−B sintered magnets JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 107,09A745 2010)、マグネトロンスパッタリング(BinghuiWu, Xuefeng Ding , QingkeZhang et.al, The dual trend of diffusion of heavy rare earth elements during the grain boundary diffusion process for sintered Nd−Fe−B magnets, Scripta Materialia 148(2018)29−32)、表面コーティング(Deshan LI, Shunji SUZUKI, Takashi KAWASAKI et.al,Grain Interface Modification and Magnetic Properties of Nd−Fe−B Sintered Magnets,Japanese Journal of Applied Physics Vol.47,No.10,2008,pp.7876−7878)などの特別なプロセスを使用し、DyまたはTbを先に磁性体の表面に付着させてから低温熱拡散処理を行う。粒界拡散処理により、磁生体の保磁力を6〜10kOe増加させ、残留磁気が低下せず、磁気エネルギー積が48MGOe以上、保磁力が約25kOe以上の磁性体を作製することができ、同時に重希土類の量が少ない。現在、この技術は、インバーターエアコンのコンプレッサーモーターで使用される1.5〜3mm厚の永久磁石など、いくつかのより薄い製品に適用されている。しかし、この方法にはいくつかの制限がある。この技術は、すべてすでに焼結された高密度の磁性体を使用して完了する。表面に重希土類源を配置した後、長期間の拡散時効処理が必要であり、全磁性体の製造プロセスのサイクルが長くなる。重希土類は表面から粒界に沿って内部に拡散するため、拡散深さが制限され、よってシート磁性体しか作製できず、また磁性体の保磁力の一貫性が悪くなることにつながる。
【0005】
したがって、使用される重希土類の量を削減する高性能で高保磁力の永久磁石材料およびその調製方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、既存技術の不足に対して、R−T−B永久磁石材料およびその調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の目的は、R−T−B永久磁石材料を提供することである。
【0008】
R−T−B永久磁石材料はRTmであり;
ここで、13≦x≦15.5、0.5≦q≦3、0.85≦z≦1、y=100−x−q−zであり;
ここで、RはLRHR1−aであり、LRはPrとNdとPrNdのうちの一つまたはいくつかの組み合わせであり、HRはDyとTbのうち一つまたは二つの組み合わせであり、0.95≦a≦1であり;
ここで、TはFeとCoのうちの一つまたは二つの組み合わせであり;
ここで、Tmは遷移金属である。
【0009】
好ましくは、Tmは、Zr、Al、Cu、Ga、Sn、Siのうちの一つまたはいくつかの組み合わせである。
【0010】
好ましくは、R−T−B永久磁石材料の主相粒子は「コア−シェル」構造である。
【0011】
好ましくは、シェルにあるHRの濃度は、コアのHRの濃度より大きい。
【0012】
本発明の第2の目的は、R−T−B永久磁石材料を調製する方法を提供することである。
【0013】
R−T−B永久磁石材料を調製する方法は、
Tmに従って原材料を準備し、ここで、13≦x≦15.5、0.5≦q≦3、0.85≦z≦1、y=100−x−q−zであるステップS1と;
上記の原材料を溶融鋳造用の真空溶解装置に加えて、第1の合金シートを得るステップS2と;
上記の第1の合金シート上に重希土類膜をめっきして、第2の合金シートを得るステップS3と;
上記の第2の合金片を粗く粉砕し、研磨して微粉を得るステップS4と;
上記の微粉を造粒及びプレス成形して生の圧粉体を得るステップS5と;
上記の生の圧粉体に拡散焼結および多段階焼戻し処理を施して、R−T−B永久磁石材料を得るステップS6を含む。
【0014】
好ましくは、ステップS1において、上記のRはLRHR1−aであり、LRはPr、Nd、PrNdのうちの一つまたはいくつかの組み合わせであり、HRはDy、Tbのうちの一つまたは二つの組み合わせである;
ここで、0.95≦a≦1。
【0015】
好ましくは、上記のTmは遷移金属であり、上記のTmはZr、Al、Cu、Ga、Sn、Siのうちの一つまたはいくつかの組み合わせである。好ましくは、ステップS2において、原材料は不活性ガス下で溶融される;
上記の原材料は、溶融後に1400〜1500℃で鋳造される。
【0016】
好ましくは、上記の不活性ガスはArまたはHeである。
【0017】
好ましくは、上記の第1の合金シートの厚さは200〜300μmである。
【0018】
好ましくは、上記のステップS3において、上記の重希土類膜の材料は、DyとTbのいずれかの一つまたは二つの組み合わせである。
【0019】
好ましくは、上記のステップS3において、上記の重希土類膜の厚さは0〜3μmである。
【0020】
好ましくは、上記のステップS3において、上記のマグネトロンスパッタリング装置を用いて、上記の重希土類膜を第1の合金シート上にめっきする。
【0021】
好ましくは、上記のステップS3において、上記のマグネトロンスパッタリング装置に使用されるターゲット材料は、Tb、Dy、およびHRE−X合金のうちのいずれかの一つである。
【0022】
好ましくは、上記のHRE−X合金において、上記のHREは、Tb、Dyのうちのいずれかの一つまたは二つの組み合わせである;
上記のXは、FeとCuのうちのいずれかの一つまたはいくつかの組み合わせである。
【0023】
好ましくは、上記のR−T−B永久磁石材料の主相粒子は「コア−シェル」構造である;
ここで、シェルのHRの濃度は、コアのHRの濃度よりも大きい。
【0024】
好ましくは、上記のステップS4において、更に、
上記の第2の合金シートを粗く粉砕して粗粉を得、上記の粗粉砕条件は、HとArの混合ガスが十分に反応した後、350〜500℃で脱水素するステップS41と;
上記のステップS41で得られた粗粉を研磨して微粉を得て、上記の研磨条件はNとOの混合ガス中での高速研磨であり、粒径は1〜4μmであるステップS42とを含む。
【0025】
好ましくは、上記のステップS5において、更に、
上記の微粉を有機物と混合して攪拌して混合物を得るステップS51と;
上記のステップS51の上記の混合物をNに入れて磁場配向成形を行い、生の圧粉体を得るステップS52とを含む。
【0026】
好ましくは、上記のステップS6において、上記の拡散焼結の条件は上記の生の圧粉体を1000〜1055℃で6〜10の時間に保温することである。
【0027】
好ましくは、上記のステップS6において、上記の多段階焼戻し処理の条件は、
第1段階の焼戻し処理:温度は850〜950℃で、保温時間は2〜3hであり;
第2段階の焼戻し処理:温度は450〜580℃で、保温時間は1〜5hである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上記の技術的な解決策を採用して、従来技術と比較して以下の技術効果を有する:
本発明のR−T−B永久磁石材料及びその調製方法は、マグネトロンスパッタリング装置を用いて合金シート上に重希土類膜をめっきし、粗粉砕、微粉研磨、配向成形、拡散焼結および多段階焼戻し処理などの工程を経て焼結NdFeB磁性体を得る。粒界拡散と比較して、全体の調製プロセスは比較的簡単であり、長期間の拡散熱処理を採用する必要がなく、「コア−シェル」構造を得ることができ、磁生体の保磁力を大幅に増加させた同時に、拡散深さの制限を受けない。従来の技術と比較して、同じ重希土類含有量の場合、より高い保磁力と磁気エネルギー積が得られる。これは、重希土類膜がコーティングされたキャストピースが粉砕された後に、重希土類が均一に分布し、焼結された重希土類元素は磁生体の表面から内部に拡散し、各NdFe14B主相結晶の周囲に沿って重希土類リッチなシェル層を形成するためである。これにより、抗磁化核の形成を有効に抑制できるほか、重希土類の主相に過剰侵入を回避でき、同時に「コア−シェル」構造を有する硬磁性相粒子を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る一つの実施形態のR−T−B永久磁石材料の調製プロセスを示すフローチャートである。
図2】本発明に係る一つの実施形態のマグネトロンスパッタリング装置の概略図である。
図3】本発明に係る実施例2のR−T−B永久磁石材料の後方散乱電子像である。
図4】本発明に係る対照例1の永久磁石材料の後方散乱電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態の図面に参照して、本発明の実施形態における技術方案を明確かつ完全に説明するが、記載された実施形態は、本発明の一部の実施形態のみであり、全ての実施形態ではないことは明らかである。本発明の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働を行わずに得られた他のすべての実施形態は、本発明の保護の範囲に属する。
【0031】
説明すべきは、本発明の実施形態および実施形態の特徴は、矛盾がない限り、互いに組み合わせることができる。
【0032】
以下に図および具体的な実施形態を結合して、本発明をさらに説明するが、本発明を限定するものではない。
【0033】
実施例1
図1に示すように、本発明のR−T−B永久磁石材料の調製方法は、
Tmに従って原材料を準備し、ここで、13≦x≦15.5、0.5≦q≦3、0.85≦z≦1、y=100−x−q−zであるステップS1と;
上記の原材料を溶融鋳造用の真空溶解装置に加えて、第1の合金シートを得るステップS2と;
上記の第1の合金シート上に重希土類膜をめっきして、第2の合金シートを得るステップS3と;
上記の第2の合金片を粗く粉砕し、研磨して微粉を得るステップS4と;
上記の微粉を造粒及びプレス成形して生の圧粉体を得るステップS5と;
上記の生の圧粉体に拡散焼結および多段階焼戻し処理を施して、R−T−B永久磁石材料を得るステップS6を含む。
【0034】
上記のステップはR−T−B永久磁石材料を得るための基礎ステップである。
【0035】
ここで、ステップS1において、RはLRHR1−aであり、LRはPr、Nd、PrNdのうちの一つまたはいくつかの組み合わせであり、HRはDy、Tbのうちの一つまたは二つの組み合わせであり、0.95≦a≦1。
【0036】
ここで、Tmは遷移金属であり、TmはZr、Al、Cu、Ga、Sn、Siのうちの一つまたはいくつかの組み合わせである。
【0037】
更に、ステップS2において、原材料は不活性ガス下で溶融される。
【0038】
更に、原材料は溶融後に1400〜1500℃で鋳造される。
【0039】
更に、不活性ガスはArまたはHeである。
【0040】
更に、第1の合金シートの厚さは200〜300μmである。
【0041】
更に、ステップS3において、重希土類膜の材料は、DyとTbのいずれかの一つまたは二つの組み合わせである。
【0042】
更に、ステップS3において、重希土類膜の厚さは0〜3μmである。
【0043】
更に、ステップS3において、マグネトロンスパッタリング装置を用いて、上記の重希土類膜を第1の合金シート上にめっきする。
【0044】
更に、ステップS3において、マグネトロンスパッタリング装置に使用されるターゲット材料は、Tb、Dy、およびHRE−X合金のうちのいずれかの一つあるいはいくつかの組み合わせである。
【0045】
ここで、HRE−X合金において、HREは、Tb、Dyのうちのいずれかの一つまたは二つの組み合わせである;
Xは、FeとCuのうちのいずれかの一つまたはいくつかの組み合わせである。
【0046】
更に、R−T−B永久磁石材料の粒子は「コア−シェル」構造である。
【0047】
更に、図2に示すように、マグネトロンスパッタリング装置は、順次に設けられた洗浄室1と、コーティング室2と、一級冷却室3と二級冷却室4とを備え、コーティング室2内の第1の合金シート5の上に重希土類膜をめっきするためにコーティング室2の内部の上方に重希土類またはその合金ターゲット6がある。洗浄室1、コーティング室2、一級冷却室3、二級冷却室4には、それぞれ第1の合金シート5を搬送するための駆動ローラー軸7が設けられている。
【0048】
更に、ステップS4において、
第2の合金シートを粗く粉砕して粗粉を得、上記の粗粉砕条件は、HとArの混合ガスが十分に反応した後、350〜500℃で脱水素するステップS41と;
ステップS41で得られた粗粉を研磨して微粉を得、研磨条件はNとOの混合ガス中での高速研磨であり、粒径は1〜4μmであるステップS42とを更に含む。
【0049】
更に、ステップS41では、200〜450℃のHとArの混合ガスで水素吸収が行われる。
【0050】
更に、ステップS41では、420〜500℃で脱水素が行われる。
【0051】
更に、ステップS5において、
微粉を有機物と混合して攪拌して混合物を得るステップS51と;
ステップS51の混合物をNに入れて磁場配向成形を行い、生の圧粉体を得るステップS52とを更に含む。
【0052】
ここで、有機物質を使用する作用は、微粉の酸化を防ぐことである。
【0053】
更に、ステップS52において、生の圧粉体の配向磁場は1.5〜2Tであり、生の圧粉体の密度は3.5〜4.1g/cmである。
【0054】
更に、配向成形プロセスでは、圧力の方向は磁場の方向に平行で、または圧力の方向は磁場の方向に垂直である。
【0055】
更に、ステップS6において、拡散焼結の条件は生の圧粉体を1000〜1055℃で6〜10の時間に保温することである。
【0056】
更に、ステップS6において、多段階焼戻し処理の条件は、
第1段階の焼戻し処理:温度は850〜950℃で、保温時間は2〜3hであり;
第2段階の焼戻し処理:温度は450〜580℃で、保温時間は1〜5hである。
【0057】
実施例2
本実施例は、本発明のR−T−B永久磁石材料の具体的な実施例である。
【0058】
本実施形態の調製方法は以下の通りである。
【0059】
ステップS1では、表1の比率に従って原材料を調製した。
【0060】
【表1】
【0061】
ステップS2では、調製した原材料を真空溶解装置に投入して、溶解鋳造し、第1の合金シートを得た。
【0062】
ここで、原材料をArまたはHeで溶解した後、1460〜1470℃で1m/sの線速度を有する水冷銅ロールに鋳造して、厚さ約300μmの第1の合金シートを得た。
【0063】
ステップS3では、表2のめっき条件に従って、第1の合金シートに重希土類膜をめっきして、第2の合金シートを得た。
【0064】
【表2】
【0065】
ステップS3では、具体的なステップは次のとおりである。
【0066】
第1の合金シート5を、洗浄室1に送り、第1の合金シート5の表面をイオン洗浄して、洗浄された第1の合金シート5を、コーティング室2に送り、一定のターゲットスパッタリング電流及び時間を設定して、重希土類膜を第1の合金シート5にめっきし、そして一級冷却室3および二級冷却室4に順次送って冷却した。
【0067】
ステップS4では、第2の合金シートを順次に粗く粉砕し、研磨することにより、微粉を得た。
【0068】
ここで、粗粉砕の条件は、HとArの混合ガスで200〜450℃で水素を吸収し、そして450℃で脱水素により、約200〜500μmの粗粉が得られた。
【0069】
ここで、研磨後の微粉の粒度は表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
ステップS5では、微粉を順次に造粒し、プレス成形することにより、生の圧粉体を得た。
【0072】
ステップS6では、生の圧粉体に拡散焼結および多段階焼戻し処理を施すことにより、R−T−B永久磁石材料を得た。
【0073】
具体的には、拡散焼結の条件は表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
拡散焼結過程において、DyまたはTbは粒子間を移動し、永久磁石材料の主相であるNdFe14Bと置換反応をし、その反応式はHRE+NdFe14B→(Nd、HRE)Fe14B+Ndであり、よって重希土類は均一に分布されて優れた「コア−シェル」構造を形成している。また、本実施形態では、拡散焼結過程は低温焼結過程である。
【0076】
多段階焼戻し処理は二級焼戻し処理であり、条件は以下のようで、
第1段階の焼戻し処理:温度は900℃で、保温時間は2時間であり;
第2段階の焼戻し処理:温度は500℃で、保温時間は4時間である。
【0077】
実施例3
本実施形態は、本発明のR−T−B永久磁石材料の対照例である。
【0078】
対照例の調製方法は、
表1の合金2と合金5の割合で原材料を準備するステップS1と;
調製した原材料を真空溶解装置に投入して、溶解鋳造し、第1の合金シートを得るステップS2とを含む。
【0079】
ここで、原材料をArまたはHeで溶解し、その後、1460〜1470℃で1m/sの線速度を有する水冷銅ロールに鋳造することにより、厚さ約300μmの第1の合金シートを得た。
【0080】
対照例はステップS3に進まなかった。
【0081】
ステップS4では、第2の合金シートが順次に粗く粉砕され、研磨され、微粉が得られる。
【0082】
ここで、粗粉砕の条件は、HとArの混合ガスで200〜450℃で水素を吸収し、それに続く450℃で脱水素することにより、約200〜500μmの粗粉を得た。
【0083】
ここで、粉砕後の微粉の粒度は表5に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
ステップS5では、微粉が順次造粒され、プレス成形されて生の圧粉体が得られる。
【0086】
ステップS6では、生の圧粉体に拡散焼結および多段階焼戻し処理が施されて、R−T−B永久磁石材料が得られる。
【0087】
具体的には、拡散焼結の条件は表6に示す。
【0088】
【表6】
【0089】
また、本実施形態では、拡散焼結過程は低温焼結過程である。
【0090】
多段階焼戻し処理は二級焼戻し処理であり、その条件は以下のようで、
第1段階の焼戻し処理:温度は900℃であり、保温時間は2時間であり、
第2段階の焼戻し処理:温度は500℃であり、保温時間は4時間である。
【0091】
実施例4
本例は、実施例2の実験例と実施例3の対照例の性能検出である。
【0092】
ヒステリシスループアナライザーを用いて、15個の実験例と2つの対照例について性能測定を行った。プラズマ分光計を用いて、15個の実験例と2つの対照例について元素分析を行った。測定結果は表7に示す。
【0093】
【表7】
【0094】
上記の表から分かるように、重希土類膜を第1の合金シートにめっきすることにより、永久磁石材料の保磁力を有効に改善でき、それに残留磁気の低下は0.2kGs以内である。
【0095】
合金2を例として説明し、実験例2、7、10、15および対照例1から、0.5μmDyをめっきした場合、保磁力が2.84kOe増加し、残留磁気が0.08kGs減少した;Dy−Feをめっきした場合、保磁力は4.66kOe増加し、残留磁気は0.18kGs減少した;Tbをめっきした場合、保磁力は7.48kOe増加し、残留磁気は0.16kGs減少した;Tb−Cuをめっきした場合、保磁力は9.06kOe増加し、残留磁気は0.19kGs減少した。以上のことから、Tbターゲットによる増加した保磁力の幅は比較的大きいが、残留磁気は0.2kGs未満しか減少しないことが分かる。
【0096】
合金5を例として説明し、実験例5、13と対照例2から、Dyをめっきするとき、保磁力が2.08kOe増加し、残留磁気が0.09kGs減少した;Tbをめっきするとき、保磁力は6.63kOe向増加し、残留磁気が0.14kGs減少したことが分かる。
【0097】
また、実験例1と対照例1を比較すると、Dy含有量が類似している場合、実験例1の磁性体の残留磁気と保磁力とはすべて対照例1より高いことがわかった。その原因は、コーティングと拡散焼結を行ったため、重希土類の分布を変え、残留磁気と保磁力を増加させたことにある。
【0098】
図3図4は、それぞれ実験例2と対照例1の永久磁石材料の後方散乱電子像であり、その中に、グレーエリアは2−14−1相粒子であり、グレーのコントラストは電子濃度である。図3には、+1位置のライトグレー、+2位置のダークグレー、ライトグレーは高電子濃度、ダークグレーは低電子濃度の2種類のグレーコントラストがあり、すなわち、重希土類の分布が不均一で、「コア−シェル」構造を呈しているが、図4には、グレーのコントラストが1種類しかなく、すなわち、重希土類の分布は均一であることを表わしている。図3から、重希土類は主に粒界に分布していることがわかる。つまり、シェル内の重希土類の濃度は、コア内の重希土類の濃度よりも高い。すなわち、「コア−シェル」構造のシェルに分布しており、よって、粒界の磁気結晶異方性場を増加させ、粒界の減磁の確率を低下させて、永久磁石材料の保磁力を増加させた。
【0099】
上記の測定結果から、本発明のR−T−B永久磁石材料の調製方法により、マグネトロンスパッタリング装置により第1の合金シートに一層の希土類膜がめっきされ、第2の合金シートを得、そして第2の合金シートが粗粉砕され、重希土類が均一に分布されて、拡散焼結過程で重希土類が粉末粒子の外側から内側に拡散され、すべてのNdFe14B主相粒子の周囲に重希土類リッチなシェル層を形成することが分かる。それによって、「コア−シェル」構造を持つ硬磁性相粒子が形成し、抗磁化コアの形成を効果的に抑制できるほか、重希土類の主相への過剰な侵入を回避でき、R−T−B永久磁石材料の保磁力が大幅に増加し、高磁気エネルギー積と高保磁力のR−T−B永久磁石材料を得ることができる。
【0100】
上記はただ本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の実施形態の方式及び範囲を限定することを意図するものではなく、当業者は、本発明の説明書と付図の内容により作られた均等の置換と明らかな変形は、すべて本発明の範囲内に含まれるべきであることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0101】
1…洗浄室、2…コーティング室、3…一級冷却室、4…二級冷却室、5…第1の合金シート、6…重希土類またはその合金ターゲット、7…駆動ローラー軸。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】