(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明の血栓除去システムは、遠位端を有し且つ近位部分および遠位部分を有する流体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、真空源と、通気液源と、真空・通気制御システムと、を備える。真空・通気制御システムは、真空源と通気液源とを周期的に接続または切断するように構成される。これにより、遠位端における真空のレベルを変化させ、前方流を実質的に防止することができる。真空源および通気液源は、真空弁および通気弁にそれぞれ流体的に接続される。マニホールドは、これらの弁を介して、近位部分と真空源および通気液源とに接続する。弁の制御は、各サイクルの間、遠位端から外への遠位部分の前方流を防止する。各サイクルは、真空のみ、第1の二重閉鎖、通気のみ、および第2の二重閉鎖を含む状態を含むことができる。二重閉鎖状態の時間は、30ms以下であることができる。
前記コントローラは、前記真空弁が閉鎖され且つ前記通気弁が閉鎖されている二重閉鎖状態を含む繰り返しサイクルで、前記真空弁と前記通気弁とを周期的に開閉するように構成される、請求項1に記載のシステム。
前記コントローラは、前記真空弁が閉鎖され且つ前記通気弁が開放されている通気のみの状態を含む繰り返しサイクルで、前記真空弁と前記通気弁とを周期的に開閉するように構成される、請求項1に記載のシステム。
前記コントローラは、繰り返しサイクルで、前記真空弁と前記通気弁とを周期的に開閉するように、および前記通気弁のタイミングを調整して、各周期の間に、前記遠位端から外への前記遠位部分の前方流を防止するように構成される、請求項1に記載のシステム。
前記コントローラは、前記遠位端における圧力のレベルを生理的圧力よりも低いレベルで保持するように、前記真空弁と前記通気弁とを周期的に開閉するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上述したような先行技術のシステム、設計およびプロセスの問題点を克服する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載されたシステム、装置および方法は、一般的なタイプの既知の装置および方法の上述した欠点を克服し、完全に塞栓を引き抜くことによって一次再疎通率を増加させて塞栓による吸引カテーテル閉塞/詰まりの事案を減少させるような特徴を提供する、吸引式血栓除去システム、および吸引式血栓除去システムを用いた血栓除去方法を提供する。
【0012】
本システム、本装置および本方法は、血栓を完全に吸い込む吸引式血栓除去システムを提供する。これにより、血栓は、カテーテルの先端から半分垂れ下がっている状態で血管内から引きずり出されることがない。吸引式血栓除去システムは、吸い込まれた血栓を真空チャネルの近位端まで完全に移動させ、外科医による、血栓がかつて存在していた血管の再疎通の確認(例えば、血栓除去後に所定の位置に残るカテーテルを介した造影剤の注入による確認)を可能にし、外科医に、血栓が除去されて血流が回復したことを示すための構造を提供する。
【0013】
本システム、本装置および本方法は、従来の吸引カテーテルと結合可能な吸引式血栓除去システムを提供して、そのようなカテーテルおよびポンプシステムの有効性を著しく増大させる。真空のレベルは、本明細書では、以下の2つの異なる方法で示される:
(1)「高真空」が絶対圧力ゼロに近づく、圧力の絶対レベル。これは、「絶対圧」と呼ばれる真空の測定方法である。完全な真空はゼロであり、大気圧は標準的な雰囲気下(760mmHg)で維持される水銀カラムの高さを測定することによって示される。したがって、値が低いほど、周囲の大気圧に対して真空のレベルが高くなることを示している。
(2)大気圧に対する相対的な圧力。標準的な大気圧に対する圧力を測定するこの手段は、「ゲージ圧」と呼ばれる。(大気圧を下回る)真空領域の圧力を測定する最も一般的な方法は、1つの大気がゼロ(標準的な大気圧)となり、可能な限り最大の真空のレベルが「29.92インチの水銀」として表示されるように較正されたゲージを使用することである。一般的な機械式の真空ゲージはこのように動作するため、この使用法は一般的になっている。
【0014】
ここでは、真空のレベルを示す方法として、「ゲージ圧」を使用する。すなわち、「ゼロインチの水銀」とは、大気圧で吸引がまったくないことを意味する。高い数字(例えば、25”Hg)は、高いレベルの真空吸引を意味する。(このように測定された可能な限り最大の真空のレベルは、29.92”Hgとなる。)本明細書で使用される「真空」という用語は、通常の大気圧を下回る状態を意味する。本願では、真空のための圧力の単位は、平方インチあたりのポンド(「PSI」「psi」)、〇インチの水銀、またはmmHgである。真空という用語が使用される文脈に応じて、「高」真空は、本明細書では、大気圧を下回る低圧を指す。また、真空は負の圧力とも呼ばれ、大気圧を上回る圧力は正の圧力とも呼ばれる。ただし、圧力について「高い」という用語は、文脈に応じて、より大きい負の圧力を意味する場合があり、より大きい正の圧力を意味する場合もある。同様に、圧力について「低い」または「より低い」という用語は、文脈に応じて、より小さい負の圧力を意味する場合があり、より小さい正の圧力を意味する場合もある。
【0015】
血栓は、その血栓を吸引するために使用されるカテーテルよりも大きい直径を有することが多い。吸引を成功させるには、血栓を吸引カテーテルの内径に合わせて変形させる必要がある。従来の吸引では、真空を加えて吸引カテーテルの管腔の遠位開口部に血栓を部分的に引き込むのが一般的である。この時点で、血栓の一部がカテーテルの内径内に留まり、血栓の他の一部が遠位端から突出した状態になり、血栓は動けなくなる。
【0016】
本システム、本装置および本方法は、吸引カテーテルの遠位端における真空を一時的に停止し、血栓を管腔から遠位方向に押し出し、その後、真空を再度加えて、つまり、閉塞−真空−圧迫の一連の動作を行う、詰まり防止構造および技術を有する吸引式血栓除去システムを提供する。真空を再度加えると、血栓は、加速してカテーテル内に戻り、完全に吸引されるように直径が変形する。真空の停止、血栓の押し出し、および真空を再度加えることは、外科医が制御する。
【0017】
本システムおよび本方法は、真空を停止して遠位流体カラム(distal fluid column)を逆方向に押す機構、すなわち逆止弁なしの正の変位である、本明細書ではカラムシフトとも呼ばれる機構を用いて、吸引/吸い込みカテーテルを動作させる。単一のハンドルを使用して、カラムシフトのための量および力を制限しながら真空の遮断およびカラムシフトを含むすべての機能を制御することができる。コントローラが作動されたときに、一時的な過剰反応(overshooting)の可能性なしに正の量の出口流れが生成される。流体の出口の動きは、特定の容積および/または圧力に制限され、自動的且つ正確に制御される。カラムシフトがいつ生じて、いつ戻るかを制御するのはユーザである。出口には、血栓を捕捉して見やすくするためにトラップが配置される。トラップ内の流体を除去し、血栓が残っていることを見やすくするために、通気孔が大気に向けて開口していてもよい。
【0018】
上述した目的およびその他の目的を鑑みて、人体の血管内から物体を除去するための真空カテーテルが提供される。真空カテーテルは、真空を加えるための近位開口部、および近位開口部に流体的に接続された遠位捕捉開口部を含む内部真空チャネルを画定する真空管を備える。遠位捕捉開口部は、真空を加えたときに反応する物体を内部で受容するように構成される。また、近位開口部と遠位捕捉開口部との間に中間部分が形成される。また、真空カテーテルは、真空遮断コントローラを備える。真空遮断コントローラは、中間部分の一部が通過する本体と、中間部分の一部に向けてまたは離れるように本体に対して移動可能に配置された押出圧縮機と、を備える。これにより、押出圧縮機は、静止状態では、真空チャネルを閉塞せず、作動状態では、まず真空チャネルを閉塞し、次いで中間部分の一部と遠位捕捉開口部との間に位置する流体を、遠位捕捉開口部に向けて所定の距離だけ遠位方向に移動させることができる。
【0019】
別の特徴によれば、近位開口部に真空を選択的に加える真空ポンプが提供される。
【0020】
さらなる特徴によれば、真空管は、近位部分を有し、真空管を取り囲み且つ真空管の少なくとも近位部分を操舵するように構成されたカテーテル本体をさらに備える。
【0021】
追加の特徴によれば、真空管は、脳内のウィリス動脈輪(circle of Willis)内に収まるように大きさが調整された近位部分を有する。ここで、物体は、ウィリス動脈輪に隣接する血栓である。
【0022】
上述した目的およびその他の目的を鑑みて、遠位端を有し且つ近位部分および遠位部分を有する液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、制御可能な真空弁と、真空弁に流体的に接続された真空源と、通気液入口を有する制御可能な通気弁と、通気液を含み、通気液入口において通気液を保持するように通気弁に流体的に接続された通気液源と、カテーテル、真空弁および通気弁に接続されたマニホールドであって、真空弁を介して管腔内の液体カラムの近位部分と真空源とを流体的に接続し、通気弁を介して管腔内の液体カラムの近位部分と通気液源とを流体的に接続するマニホールドと、真空弁および通気弁に接続されたコントローラであって、コントローラは、真空弁と通気弁とを選択的に開閉するように構成されており、これにより、真空弁の開放に応答して真空源と管腔内の液体カラムとが流体的に接続され、通気弁の開放に応答して通気液源と管腔内の液体カラムとが流体的に接続される、コントローラと、を備える血栓除去システムが提供される。ここで、コントローラは、真空弁と通気弁とを周期的に開閉するように構成される。これにより、遠位端における真空のレベルを変化させ、各サイクルの間に、遠位端から外への遠位部分の前方流を防止することができる。
【0023】
また、上述した目的を鑑みて、遠位端を有し且つ近位部分および遠位部分を有する液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、制御可能な真空弁と、真空弁に流体的に接続された真空源と、通気液入口を有する制御可能な通気弁と、通気液を含み、通気液入口において通気液を保持するように通気弁に流体的に接続された通気液源と、カテーテル、真空弁および通気弁に接続されたマニホールドであって、真空弁を介して管腔内の液体カラムの近位部分と真空源とを流体的に接続し、通気弁を介して管腔内の液体カラムの近位部分と通気液源とを流体的に接続するマニホールドと、真空弁および通気弁に接続されたコントローラであって、コントローラは、真空弁と通気弁とを選択的に開閉するように構成されており、これにより、真空弁の開放に応答して真空源と管腔内の液体カラムとが流体的に接続され、通気弁の開放に応答して通気液源と管腔内の液体カラムとが流体的に接続される、コントローラと、を備える血栓除去システムが提供される。ここで、コントローラは、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が閉鎖されている二重閉鎖状態を含む繰り返しサイクルで、真空弁と通気弁とを周期的に開閉するように構成される。これにより、遠位端における真空のレベルを変化させ、各サイクルの間に、遠位端から外への遠位部分の前方流を防止することができる。二重閉鎖状態の時間は、約30ms以下である。
【0024】
また、上述した目的を鑑みて、遠位端を有し且つ近位部分および遠位部分を有する液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、真空源と、通気液源と、真空源および通気液源を周期的に接続または切断するように構成された真空・通気制御システムと、を備える血栓除去システムが提供される。これにより、遠位端における真空のレベルを変化させ、前方流を実質的に防止することができる。
【0025】
また、上述した目的を鑑みて、遠位端を有し且つ近位部分および遠位部分を有する液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、真空源と、通気液源と、真空・通気制御システムと、を備える血栓除去システムが提供される。ここで、真空・通気制御システムは、真空源からの真空、通気液源からの通気液、および真空または通気液のいずれでもないもの、のうちの少なくとも1つと近位部分とを周期的に流体的に接続するように構成される。これにより、遠位端における真空のレベルを変化させ、前方流を実質的に防止することができる。
【0026】
別の特徴によれば、コントローラは、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が閉鎖されている二重閉鎖状態を含む繰り返しサイクルで、真空弁と通気弁とを周期的に開閉するように構成される。
【0027】
さらなる特徴によれば、二重閉鎖状態の時間は、30ms以下である。
【0028】
追加の特徴によれば、コントローラは、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が開放されている通気のみの状態を含む繰り返しサイクルで、真空弁と通気弁とを周期的に開閉するように構成される。
【0029】
追加の特徴によれば、通気のみの状態の時間は、50ms以下である。
【0030】
さらに別の特徴によれば、コントローラは、真空弁が開放され且つ通気弁が閉鎖されている真空のみの状態と、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が閉鎖されている第1の二重閉鎖状態と、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が開放されている通気のみの状態と、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が閉鎖されている第2の二重閉鎖状態と、を含む繰り返しサイクルで、真空弁と通気弁とを選択的に開閉するように構成される。
【0031】
さらなる特徴によれば、通気弁の開放と通気弁の閉鎖との間の時間は、約10ms〜約50msの範囲である。
【0032】
さらに追加の特徴によれば、サイクルの周期は、約6Hz〜約16Hzの範囲である。
【0033】
さらに追加の特徴によれば、サイクルの周期は、約8Hz〜12Hzの範囲である。
【0034】
さらに別の特徴によれば、遠位端における真空のレベルの変化は、約15inHgよりも大きく、約50ms以下である。
【0035】
さらに別の特徴によれば、遠位端における真空のレベルの変化は、約20inHgよりも大きく、約30ms以下である。
【0036】
さらに別の特徴によれば、遠位端における真空のレベルの変化は、約25inHgよりも大きく、約20ms以下である。
【0037】
さらに追加の特徴によれば、管腔は、約0.038”〜約0.106”の範囲の内径を有し、コントローラは、2〜16Hzの範囲の周波数で真空弁と通気弁とを周期的に開閉するように構成される。
【0038】
さらに追加の特徴によれば、管腔は、約0.068”〜約0.088”の範囲の内径を有し、コントローラは、2〜16Hzの範囲の周波数で真空弁と通気弁とを周期的に開閉するように構成される。
【0039】
さらに別の特徴によれば、コントローラは、繰り返しサイクルで、真空弁と通気弁とを周期的に開閉するように、および通気弁のタイミングを調整して、各周期の間に、遠位端から外への遠位部分の前方流を防止するように構成される。
【0040】
さらなる特徴によれば、コントローラは、遠位端における圧力のレベルを生理的圧力よりも低いレベルで保持するように、真空弁と通気弁とを周期的に開閉するように構成される。
【0041】
併存する特徴によれば、シャフトが設けられており、シャフトには、真空弁と通気弁とが共に取り付けられる。
【0042】
後述するように、ROARプロセスの動作は、2つの理由で血栓を正常に除去する。第1に、ROAR効果は、一定の吸引下でカテーテルの先端に固定または「付着」した血栓の静的摩擦を克服する。ROARプロセスは、静的摩擦力を克服するために、血栓を前後に「往復」させる振動/交互の変位を提供する。第2に、異なる血栓の形態を克服し、微小解剖学的環境によって決定される固定された小さい管腔内の容積と直径の制約を無効にする血栓の細分化が挙げられる。
【0043】
本明細書に記載された本システムおよび本方法は、遠位端における圧力が正になるのを防止するために十分に迅速に反応する。真空弁および通気弁を十分に速い速度で循環させることにより、カテーテル管腔の遠位端における一部分あたり1000サンプルの割合での圧力測定は、ROARカテーテルの遠位端が正の圧力を受けず、前方流を実質的に抑えることを証明する。真空弁および通気弁を作動させるタイミングは、遠位端の正の圧力を引き起こす物理的メカニズムが、開放フロー状態および栓がしてある状態の両方において回避されるように調整され得る。
【0044】
例示的な実施形態によれば、遠位端から出る液体カラムの遠位部分は、約2マイクロリットル以下に制限される。
【0045】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、遠位端を有し且つ近位部分および遠位部分を有する液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、真空源と、通気液を含む通気液源と、真空・通気制御システムと、を備える。真空・通気制御システムは、真空源からの真空、および通気液源からの通気液のうちの少なくとも1つと近位部分とを周期的に流体的に接続または切断するように構成されており、これにより、遠位端における真空のレベルを変化させ、液体カラムの遠位部分が遠位端から出ることを実質的に防止することができる。
【0046】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、遠位端を有し且つ近位部分を有する液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、真空・通気制御システムと、を備える。真空・通気制御システムは、近位部分の真空および通気液に周期的に接続されるかそれらから切断されるように構成される。これにより、前方流の圧力パルスが生じて、液体カラム内の逆流を生じさせて、前方流の圧力パルスが遠位端に到達するのを実質的に防止することができる。
【0047】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、遠位端を有し且つ近位部分を有する液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、真空・通気制御システムと、を備える。真空・通気制御システムは、近位部分の真空および通気液に周期的に接続されるかそれらから切断されるように構成される。これにより、前方流の圧力パルスが生じて、前方流の圧力パルスが遠位端に到達する前に液体カラム内の逆流を生じさせて、前方流の圧力パルスが遠位端に到達するのを実質的に防止することができる。
【0048】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、遠位端を有し且つ近位部分を有する液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、真空・通気制御システムと、を備える。真空・通気制御システムは、近位部分の真空および通気液に周期的に接続されるかそれらから切断されるように構成される。これにより、液体カラムが移動および停止して、前方流の圧力パルスを生じさせ、且つ前方流の圧力パルスが遠位端に到達する前に交互に制御して液体カラム内の逆流を生じさせて、前方流の圧力パルスが遠位端に到達するのを実質的に防止することによって、前方流の圧力パルスを制御することができる。
【0049】
例示的な実施形態によれば、コントローラは、液体カラムの遠位部分の遠位移動を防止すると同時に、サイクル内で遠位端における真空のレベルを変化させるように構成される。
【0050】
例示的な実施形態によれば、コントローラは、真空弁が開放され且つ通気弁が閉鎖されている第1の状態と、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が閉鎖されている第2の状態と、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が開放されている第3の状態と、真空弁が閉鎖され且つ通気弁が閉鎖されている第4の状態と、を含む繰り返しサイクルで、真空弁と通気弁とを選択的に開閉するように構成される。
【0051】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、近位部分から遠位端まで液体カラムで満たされた管腔を画定するカテーテルと、ウォーターハンマーコントローラと、を備える。ウォーターハンマーコントローラは、真空および/または大気圧または体圧またはそれよりも低い圧力の流体と、管腔とを交互に接続するように構成される。これにより、液体カラムが移動および停止して、ウォーターハンマーを生じさせ、且つウォーターハンマーが遠位端に到達する前に交互に制御して逆流を生じさせて、ウォーターハンマーが遠位端に到達するのを実質的に防止することによって、ウォーターハンマーを制御することができる。
【0052】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、管腔を有するカテーテルと、真空源と、制御可能な真空弁と、通気液源と、制御可能な通気弁と、カテーテル、真空弁および通気弁に接続されたマニホールドと、真空弁および通気弁を制御するコントローラと、を備える。
【0053】
例示的な実施形態によれば、コントローラは、カテーテルに加えられる真空に応答して、カテーテルの伸展性(compliance)が容積を減少させるようなサイクルにおいて、真空弁および通気弁を調整するように構成される。これにより、真空弁が閉鎖され且つ通気便が開放されているときに、伸展性がばねとして作用し、管腔が通気液を遠位方向に取り込み、取り込んだ流体によって誘導される推進力がカテーテルの遠位端に到達する前に、コントローラが弁を調整して流体の方向を反転させて流体の動きを抑え、流体がカテーテルの遠位端から出ることを防止することができる。
【0054】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、管腔を有するカテーテルと、管腔に流体的に接続された近位端および遠位端を含む内部管腔を有する実質的に非圧縮性の接続管と、真空源と、近位端に流体的に接続された出口を有するマニホールドチャンバを含む真空/通気マニホールドと、マニホールドおよび真空源に流体的に接続され、真空源からマニホールドチャンバに真空を供給するための真空ラインと、マニホールドおよび大気圧において流体浴に流体的に接続された通気ラインと、を備える。
【0055】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、複数のピンチ弁と、複数のピンチ弁に機械的に結合した複数のカムと、を有する固定サイクルを含む。これにより、カムの向きを変更できないようにすることができる。
【0056】
例示的な実施形態によれば、前方流パルスが抑えられる時間は、約20ms以下である。
【0057】
例示的な実施形態によれば、血栓除去システムは、脈動真空コントローラを備える。脈動真空コントローラは、管腔と、真空および/または大気圧、体圧、体圧よりもやや低い圧力、または体圧よりもやや高い圧力の流体とを交互に接続するように構成される。これにより、液体カラムが移動および停止して、前方流の圧力パルスを生じさせ、(前方流の圧力パルスが遠位端に到達する前に交互に制御して逆流を生じさせて)前方流の圧力パルスが遠位端に到達するのを実質的に防止することによって、前方流の圧力パルスを制御することができる。
【0058】
本システム、本装置および本方法が、吸引カテーテルを用いた血栓除去のための吸引式血栓除去システムおよび方法を包含するものとして図に示し且つ本明細書に記載される。によって包含されるものとして例示される。しかしながら、これらは図に示す詳細に限定されるものではなく、本発明の精神および特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変形および構造的変更を行うことができる。また、本システム、本装置および本方法に関連する詳細が不明確にならないように、例示的な実施形態における既知の要素は、詳細には説明されないか、その説明自体を省略する。
【0059】
本システム、本装置および本方法の特徴的な追加の利点およびその他の特徴は、以下の詳細な説明に記載され、この詳細な説明から明らかになるか、例示的な実施形態の実現によって得ることができるであろう。また、本システム、本装置および本方法のさらなる利点は、添付の特許請求の範囲に特に記載された機器、方法またはそれらの組み合わせのいずれかによって実現されてもよい。
【0060】
本システム、本装置および本方法に特徴的であると考えられるその他の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載される。必要に応じて、本システム、本装置および本方法の詳細な実施形態が、本明細書に記載される。しかしながら、これらの実施形態は、様々な形態で包含され得る例示的なシステム、装置および方法の一例に過ぎないことに留意されたい。そのため、本明細書に記載される特定の構造的および機能的な詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の基礎として、また、実質的に適切に詳細な構造のシステム、装置および方法を様々に採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきであることに留意されたい。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定を意図するものではなく、本システム、本装置および本方法を理解できるような説明を提供するように意図されている。本明細書は、新規とみなされる本発明のシステム、装置および方法を定義する特許請求の範囲で締めくくられる。ただし、本システム、本装置および本方法は、同様の参照符号を示す添付の図面を参照して以下の説明を考慮することにより、よりよく理解されると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
必要に応じて、本システム、本装置および本方法の詳細な実施形態が本明細書に記載される。しかしながら、記載される実施形態は、様々な形態で包含され得る例示的なシステム、装置および方法に過ぎないことに留意されたい。そのため、本明細書に記載される特定の構造的および機能的な詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の基礎として解釈されるべきであり、実質的に詳細な構造においてシステム、装置および方法に様々に採用されることを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定を意図するものではなく、本システム、本装置および本方法を理解できるような説明を提供することを意図している。本明細書は、新規とみなされるシステム、装置および方法の特徴を定義する特許請求の範囲で締めくくられる。ただし、本システム、本装置および本方法は、同様の参照符号を示す添付の図面を参照して以下の説明を考慮することにより、よりよく理解されると考えられる。
【0063】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を構成し、実現可能な実施形態を示す添付の図面を参照する。他の実施形態が利用されてもよく、特許請求の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な変更が行われてもよいことに留意されたい。そのため、以下の詳細な説明は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、その実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【0064】
また、代替実施形態が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく実現されてもよい。また、本システム、本システム、本装置および本方法に関連する詳細が不明確にならないように、本装置および本方法の例示的な実施形態の既知の要素は、詳細には説明されないか、その説明自体を省略する。
【0065】
本システム、本装置および本方法を記載および説明する前に、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用され、限定的なものではないことに留意されたい。「備える(comprises、comprising)」またはその他の変化形は、要素のリストを備えるプロセス、方法、成形品または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、明示的に記載されていないその他の要素、またはそのようなプロセス、方法、成形品または装置に固有のその他の要素を、非排他的に包含できることを意図している。「〜を備える(comprises ... a)」の前に記載された要素は、さらなる制約なしに、その要素を構成するプロセス、方法、成形品または装置において追加的に同一の要素が存在することを排除するものではない。本明細書において使用される「含む(including)」および/または「有する(having)」という用語は、備える(すなわちオープンランゲージ)として定義される。本明細書において使用される不定冠詞(a、an)は、1つまたは複数として定義される。本明細書において使用される「複数(plurality)」という用語は、2つ以上として定義される。本明細書において使用される「別の(another)」という用語は、少なくとも2つ以上として定義される。本明細書は、「実施形態(embodiment、embodiments)」という用語を、1つの実施形態、複数の同様の実施形態、または複数の異なる実施形態として使用する場合がある。
【0066】
「結合(coupled)」および「接続(connected)」という用語ならびにそれらの派生用語が使用される場合がある。これらの用語は、互いに同義語として意図されていないことに留意されたい。むしろ、特定の実施形態において、「接続」は、2つ以上の要素が互いに物理的または電気的に直接接触していることを示すために使用される場合がある。「結合」は、2つ以上の要素が物理的または電気的に直接接触(例えば直接結合)していることを意味する場合もある。ただし、「結合」は、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、互いに協働または相互作用(例えば間接的な結合)することを意味する場合がある。
【0067】
本説明の目的のために、「A/B」の形態の表現、または「Aおよび/またはB」の形態の表現、または「AおよびBの少なくとも一方」の形態の表現は、(A)、(B)、または(AおよびB)を意味する。ここで、AおよびBは、特定の物体または属性を示す不定要素である。使用される場合、この表現は、「および/または」という表現に類似する、AまたはB、またはAとBの両方を選択することを意図することをここに定義する。このような表現の中に2つ以上の不定要素が存在する場合、この表現は、不定要素のうちの1つだけ、不定要素のうちのいずれか1つ、不定要素のいずれかの組み合わせ、およびすべての不定要素を含むものとしてここに定義する。例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」の形態の表現は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)、または(A、BおよびC)を意味する。
【0068】
第1および第2、上部および下部などの関係性を有する用語は、ある物(entity)または行動と別の物または別の行動とを区別するためにのみ使用される場合がある。この場合、そのような物の間または行動の間の実際の関係または順序を必ずしも必要としたり示したりするものではない。本明細書は、上/下、後ろ/前、上部/下部、および近位/遠位のような、視点に基づく説明が使用される場合がある。このような説明は、単に説明を容易にするために使用され、本明細書に記載される実施形態への適用を制限することを意図していない。実施形態の理解に役立つように、様々な動作が、複数の個別の動作として順番に記載される場合がある。しかしながら、説明の順番は、これらの動作がこの順序に依存することを意味すると解釈されるべきではない。
【0069】
本明細書において使用される「約(about、approximately)」という用語は、明示的に記載されているか否かにかかわらず、すべての数値に適用される。これらの用語は、一般的に引用された値と同等(すなわち同じ機能または結果を有する)であると当業者であれば想定できる数値の範囲を指す。多くの場合、これらの用語には、最も近い有効数に四捨五入された数値が含まれる。本明細書において使用される「実質的(substantial、substantially)」という用語は、様々な部分を互いに比較したときに、その比較された部分が、当業者であれば同じと想定できる寸法に等しいか、または十分に近いものであることを意味する。本明細書において使用される「実質的」は、単一の寸法に限定されるものではなく、具体的には、比較される部分の値の範囲を含む。値の上下の範囲(例えば「+/−」または以上/未満またはより大きい/より小さい)は、本明細書に記載の部分に対する許容可能な公差内であることが当業者であれば分かるような変動を含む。
【0070】
本明細書に記載されるシステム、装置および方法の実施形態は、本明細書に記載される装置、システムおよび方法の機能の一部、大部分またはすべてを、特定の非プロセッサ回路およびその他の要素と組み合わせて実現するように、1つまたは複数のプロセッサを制御する1つまたは複数の従来型プロセッサおよび固有のプログラム命令で構成されてもよいことに留意されたい。非プロセッサ回路には、信号ドライバ、クロック回路、電源回路、ならびにユーザ入力および出力要素が含まれてもよいが、これらに限定されるものではない。代替的に、一部の機能またはすべての機能は、記憶されたプログラム命令を持たないステートマシンによって、または、各機能または特定の機能の組み合わせがカスタムロジックとして実装される1つまたは複数のASIC(application specific integrated circuits)またはFPGA(field-programmable gate arrays)によって実現され得る。むろん、これらのアプローチの組み合わせも使用され得る。このように、これらの機能のための方法および手段が、本明細書に記載される。
【0071】
本明細書において使用される「プログラム」、「ソフトウェア」、「ソフトウェアアプリケーション」などの用語は、コンピューターシステムまたはプログラム可能な装置上で実行されるように設計された一連の指示として定義される。「プログラム」、「ソフトウェア」、「アプリケーション」、「コンピュータープログラム」または「ソフトウェアアプリケーション」には、サブルーチン、関数、プロシージャー、オブジェクトメソッド、オブジェクトの実装、実行可能なアプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、任意のコンピュータ言語ロジック、共有ライブラリ/ダイナミックロードライブラリ、および/またはコンピューターシステム上で実行するように設計されたその他の命令のシーケンスが含まれてもよい。
【0072】
本明細書において、本システム、本装置および本方法の様々な実施形態が記載される。様々な実施形態の多くでは、特徴が類似している。そのため、冗長な説明を避けるために、これらの類似した特徴は一部でその説明を省略する。しかしながら、初めて現れた特徴の記載が、繰り返し記載されることなく、後に記載された類似の特徴にも適用されて、そこに組み込まれることに留意されたい。
【0073】
ここで、例示的な実施形態を説明する。まず、特に
図1〜
図13を詳細に参照すると、真空管2を利用する吸引式血栓除去システム1のための、片手で操作可能なコントローラ10の例示的な第1の実施形態が示されている。コントローラ10は、第1のハンドル部分20と、第2のハンドル部分40と、を備える。第1のハンドル部分20は、真空管2に接続されてそれを保持するため、ハンドル基部とも呼ばれる。第2のハンドル部分40は、第1のハンドル部分20に対して移動するため、圧縮・作動装置40とも呼ばれる。
【0074】
例示的な実施形態では、第1のハンドル部分20は、遠位管アンカー22と、近位管アンカー24と、を有する。本実施形態では、遠位管アンカー22および近位管アンカー24は、真空管2が通過する中空管の形態を有する。遠位管アンカー22および近位管アンカー24は、真空管2を圧縮することなく(それにより、内側真空チャネル3を縮小または閉鎖することなく)、真空管2を実質的にその場に保持する。真空管2は、ラテックス、シリコーン、Pebax(登録商標)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、またはその他の合成ゴムを含む多くの材料から形成され得る。真空管2の例示的な大きさは、約0.055〜0.095インチの内径(I.D.)を有する。真空管2を保持するための例示的な実施形態は、真空管2の材料を管状管アンカー22、24の内部管腔に接着する接着剤である。例示的な本実施形態では、真空管2は、第1のハンドル部分20に固定される。代替的な実施形態では、第1のハンドル部分20は、2つの第1のハンドル部(図示せず)を有する二枚貝状の部分である。これは、円筒状の真空管2を受けるように開放され、閉鎖されると、真空管2の真空チャネル3を閉鎖または閉塞したりすることなく、管状アンカー22、24が真空管2を実質的にしっかりと把持する。例示的な二枚貝状の部分の一実施形態では、第1のハンドル部分20は、
図2の破線において水平方向にヒンジで分割されており、真空管2の一部を遠位管アンカー22および近位管アンカー24に挿入したりそこから取り外したりすることができる。ロックは、ユーザが取り外しを望むまで、真空管2を固定する。ヒンジは、外科医が真空管2に沿ってコントローラ10を再配置することを可能にするのに有用である。
【0075】
例示的な実施形態では、遠位管アンカー22および近位管アンカー24は、互いに距離を隔てて離間している。第1のハンドル部分20の遠位管アンカー22と近位管アンカー24との間には、圧縮床26が設けられる。第1のハンドル部分20内に設置されると、真空管2は、真空チャネル3を閉鎖または閉塞することなく、遠位管アンカー22と近位管アンカー24との間の圧縮床26に実質的に当接する。
図13は、真空管2が取り外された状態にある、第1のハンドル部分20の圧縮床26を示す。
【0076】
第1のハンドル部分20は、真空管2の両側に平行な1組の側壁32を画定する中空の内部を有する。第1のハンドル部分20は、第2のハンドル部分40が第1のハンドル部分20に対して2方向に移動することを許容する圧縮カムアセンブリ30を備える。より具体的には、例示的な実施形態では、圧縮カムアセンブリ30は、第1のハンドル部分20の側壁32に形成された1組のスロット34を備える。
図3の拡大図に示すように、これらのスロット34は、垂直方向延長部35と、角度付き延長部36と、を有する。垂直方向延長部35は、垂直方向長さを有し、角度付き延長部36は、第2の垂直方向延長部37および水平方向延長部39からなるベクトル長さを有する。したがって、後述するように、スロット34は、スロット34と同じ形状の第2のハンドル部分40の移動のためのカム面を提供する。
【0077】
例示的な実施形態では、第1のハンドル部分20と第2のハンドル部分40とを共に接触させるために、第2のハンドル部分40は、中空の内部を有し、その中空の内部には、第1のハンドル部分20が挿入されて突出する。(代替的な実施形態では、第1のハンドル部分20は、中空の内部を有し、その中空の内部に第2のハンドル部分40が挿入されて突出する)。第2のハンドル部分40の中空区画の内部に面する側面の間の幅は、側壁32の外面の幅とほぼ等しく、これにより、第2のハンドル部分40は、第1のハンドル部分20上で密接に、そしてほとんどまたは実質的に摩擦を伴わずに、滑らかに上下に移動することができる。比較すると、第2のハンドル部分40の中空区画の内部に面する長手方向面の間の長さは、長手方向壁38の外面の長さよりも大きい。この長さの差は、第2のハンドル部分40が、水平方向延長部39全体にわたって、真空管2と長手方向に平行な水平方向延長部39に沿って移動することを可能にするのに十分な長さである。
【0078】
圧縮・作動装置40の中空区画の側壁42の内部に面する表面から突出するボス42を圧縮・作動装置40に提供することにより、ハンドル基部20に対する圧縮・作動装置40の動きがスロット34に追従することができる。1つの円形のボス42は、スロット34の各々に関連している。このようにして、圧縮・作動装置40の動きは、スロット34の形状によって案内および制限される。
図1、
図2および
図4に示すコントローラ10の非作動状態では、ボス42は、垂直方向延長部35の端部に存在する。これは、例示的な実施形態では、スロット34の最上端にある。(なお、
図1〜
図13に示す実施形態は、4つのスロット34および4つのボス42を提供することに留意されたい。この数は、単に例示的なものである。スロット34のカム面、スロット34の延長部35、36、およびボス42のカムフォロワは、本明細書に記載されるように、コントローラを動作させる任意の形態または形状であり得る)。
図4に最も明確に示すように、圧縮・作動装置40の近位長手方向壁38の内部と第1のハンドル部分20の近位壁の外部との間の距離Aは、水平方向延長部39よりも長い(すなわち、|A|>|39|)。
図5に示すように、圧縮・作動装置40が完全に作動されたときに、ボス42は、スロット34の反対側の(最下端の)端部に移動する。したがって、圧縮・作動装置40は、垂直方向延長部35内および角度付き延長部36内のボス42の垂直方向の移動に等しい垂直距離を移動し、水平方向延長部39に等しい水平距離を移動している。第1のハンドル部材20および第2のハンドル部材40の例示的な実施形態では、圧縮・作動装置40の遠位長手方向壁の内面は、ハンドル基部20の遠位長手方向壁の外面に接触する。この接触は、
図4において矢印Bで示されている(すなわち、|B|=0)。したがって、圧縮・作動装置40が完全に作動されたときに、これら2つの遠位長手方向壁は、水平方向延長部39に等しい距離まで離れる。同様に、ハンドル基部20の近位長手方向壁の外面と、圧縮・作動装置40の近位長手方向壁の内面との間の距離は、
図5に示すように、水平方向延長部39に等しい長さだけAから短くなる(すなわち、(A−|39|))。代替的に、カムスロットおよびボスと同じ動きを生じさせるために、4本バーのリンク機構が、20と40とを結合するために提供され得る。
【0079】
スロット34に追従する圧縮・作動装置40の動きから明らかになるのは、圧縮・作動装置40に接続された押出圧縮機50が、この動きの間にどのように動作するかである。
図1、
図2および
図4〜
図13に示す押出圧縮機50の例示的な実施形態では、押出圧縮機50は、圧縮・作動装置40の中空区画の天井の内面からハンドル基部20に向けて下方に突出する。特に、押出圧縮機50は、ハンドル基部20の圧縮床26に向けて下方に突出する。押出圧縮機50は、第2のハンドル部分40に取り付けられた基部52を有する。フレックスアーム54が、基部52から突出し、圧縮床26に向けて延在する。例示的な実施形態では、フレックスアーム54は、基部52よりも薄い。基部52およびフレックスアーム54を形成するための材料は、実質的に剛性が高くない。したがって、圧縮・作動装置40の全体的な垂直移動が完了する前に押出圧縮機50の一部が圧縮床26に接触するように下方に移動することに応答して、フレックスアーム54が撓む。基部52およびフレックスアーム54のための例示的な材料として、ABS、ポリカーボネートおよびナイロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリウレタン、またはその他の熱可塑性材料、または熱可塑性エラストマーおよび/または繊維が充填されたABS、ポリカーボネートおよびナイロン(登録商標)が挙げられる。フレックスアーム54の遠位端には、圧縮ローラ60を保持するような形状を有するギアフランジ56が設けられる。ギアフランジ56は、圧縮ローラ60の心棒(axle)62が配置される心棒ポートを有する。ギアフランジ56の内部側面間に取り付けられると、圧縮ローラ60は、ローラ60の回転軸64を中心とした圧縮ローラ60の回転運動を除いて、すべての方向でギアフランジ56に固定された状態になる。換言すると、ローラ60は、軸64を中心に回転することができる。
【0080】
なお、図に示す押出圧縮機50は、例示的な実施形態であることに留意されたい。同じ機能を実行する異なる機械的構造を使用することもできる。例えば、基部52およびフレックスアーム54は、単一の梁に置き換えることができる。梁は、圧縮・作動装置40の内部中空部の天井にヒンジで固定され、付勢装置(例えば、ばね)によって圧縮床26に向けて付勢される。これにより、
図2に示すように真空管2を把持するのに十分であるように、且つ真空チャネル3の断面積を実質的に減少させないように、圧縮ローラ60の点が真空管2に接触する。
【0081】
ローラ60の回転は、ローラ60が真空管2に向けて、真空管2に沿ってどのように移動するかに依存する。これに関して、圧縮ローラ60は、圧縮・作動装置40がハンドル基部20に向けて移動されたときに、様々な方法で真空管2に接触する外部接触面66を有する。
図6に示すように、外面66の長手方向断面は、オウムガイの形状にほぼ等しい(代替的に、円筒形であり得る)。外面66は、
図2に示すように、圧縮・作動装置40の非作動状態において真空管2の外面に接触する接触点67を有する(真空チャネル3は、実質的に開存している開放された断面を有する非閉塞状態にある)。圧縮・作動装置40が作動されたときに、圧縮・作動装置40は、垂直方向延長部35に沿って移動する。これにより、接触点67が圧縮床26に向けて移動する。
図7および
図8に示すように、圧縮・作動装置40が垂直方向延長部35の全体に沿って移動したときに、接触点67は、真空管2に対して移動して、真空チャネル3を完全に閉塞させる。ボス42が垂直方向延長部35から角度付き延長部36へのこの移行点にある段階では、真空管2の厚さが圧縮床26に向けて接触点67のさらなる移動を妨げているため、接触点67は、圧縮床26に向けて、その方向に移動できる限り移動する。
【0082】
真空管2が血栓除去術で使用される手順では、真空チャネル3は、流体すなわち血液で満たされる。真空チャネル3が完全に閉塞されているときに、圧縮ローラ60の接触点67から遠位方向にある真空チャネル3の遠位端まで真空チャネル3を満たす血液は、圧縮性ではない流体のカラムを画定する。コントローラ10は、押出圧縮機50および圧縮ローラ60を適用して、流体のカラムを遠位方向にシフト距離70だけ移動させるように構成される。シフト距離の例示的な容積は、約0.001ml〜約1.0ml、特に約0.1ml〜約0.5mlである。シフト距離70の例示的な長さは、約0.5mm〜約30mm、特に約0.5mm〜約15mmである。このような移動をもたらすために、圧縮・作動装置40は、ハンドル基部20に向かう方向にさらに移動される。これは、ボス42が角度付き延長部36の端部に沿っておよび通って移動することを意味する。接触点67は、すでに圧縮床26に向けてその方向に可能な限り移動している(すなわち、ボス42が垂直方向延長部35から角度付き延長部36への移行点にある)ので、押出圧縮機50は、フレックスアーム54を撓ませること、および/または圧縮ローラ60を転動させること以外に移動する手段を有しない。圧縮ローラ60の接触面66は、真空管2の上面に対して(
図2および
図8〜
図12において反時計回りに)転動するように形成される。
図9および
図10は、ボス42が角度付き延長部36内のスロット34の遠位端の約半分の位置にある時点での圧縮ローラ60の転動開始を示す。(なお、
図9〜
図12を生成するコンピュータ・ソフトウェアの制限により、圧縮ローラ60が回転するときに真空管2がどのように圧縮されるかについての現実的な絵を示すことができないことに留意されたい。したがって、これらの図は、圧縮ローラ60が真空管2のシフト距離70上を転動する様子を模式的に示している。)圧縮ローラ60の接触点67は、回転軸64から接触面66に向けてオフセットされている。これは、圧縮ローラの最初の転動運動が最初に接触点67を回転軸64の中心を越えて強制的に転動させなければならないような、偏心部すなわちトグルを形成する。このような構成では、圧縮・作動装置40のボス42が角度付き延長部37内を移動し始めると、圧縮ローラ60が転動するだけでなく、心棒62がわずかに前方に移動して、圧縮・作動装置40に伝達される触覚フィードバックもある。このフィードバックは、ユーザが感じた場合、圧縮ローラ60の接触面66が真空管2の一部の上で転動したことをユーザに示し、真空管2に沿って移動する際に、その部分を圧迫して真空管2の遠位方向に流体カラムを移動させる。
図11および
図12に示すように、ハンドル基部20に向けて圧縮・作動装置40を完全に移動させると、圧縮ローラ60は、真空管2上でのその定義された回転を完了し、そうすることにより、真空チャネル3の一部分をその長さにわたって近位側から遠位側に圧迫して、流体カラムをシフト距離70に等しい長さに遠位方向にシフトさせる。
【0083】
コントローラ10を例えば
図1および
図2に示す初期の非作動状態に戻すために、圧縮・作動装置40の内部中空部の任意の表面とハンドル基部20の内部中空部の任意の表面との間に、付勢装置12が介在する。
図2および
図8に示す例示的な実施形態では、付勢装置12は、圧縮・作動装置40の内部中空部内の天井の表面と、近位管アンカー24の上面との間に配置される。付勢装置12のためのこの構成は、単に例示的なものであり、任意の戻りばねまたは同様の機械的装置を配置して使用することができる。ユーザが圧縮・作動装置40への圧力を解放すると、フレックスアーム54および/または付勢装置12は、圧縮・作動装置40を初期の非作動状態に戻す動作を引き起こす。この動作は、圧縮ローラ60を逆方向(すなわち、
図11から
図9から
図8に示す進行方向)に転動させる。真空チャネル3の遠位端が患者からの正の圧力を受け、また、潰された管が跳ね返る際の容積の増加からも正の圧力を受けると、流体カラムは、真空チャネル3内に近位方向に後退する。圧縮ローラ60が真空管2から解放して真空チャネル3の閉塞を止めると、コントローラ10の近位側にある真空ポンプ80から真空チャネル3内に置かれた真空は、コントローラ10内の真空管2の一部分を通って流体カラムを自動的に再確立して引き込む。
【0084】
本明細書に記載されるように、真空管2は、一方の側の圧縮床26に当接するような、且つ圧縮ローラ60の点が真空管2を把持するのにわずかに十分なだけ真空管2の外面に接触しながら、真空チャネル3の断面積を実質的に減少させないような大きさになっている。真空管2がハンドル基部20内に固定されていない実施形態では、圧縮ローラ60には、図示しない付勢装置が設けられる。付勢装置は、
図2に示す位置まで圧縮ローラ60を回転するように付勢する。この付勢は、圧縮・作動装置40の非作動位置において、真空管2が圧縮ローラに接触していない状況を補償する。
【0085】
上述したような構成では、コントローラ10は、血栓除去用吸引カテーテルであるまたはその一部である真空管2と共に使用される。
図14および
図15には、そのような使用に関する状態が示されており、ここで、真空管腔3は、吸引コントローラとして示されている。吸引コントローラは、コントローラ10の遠位側で、血管系を通って、真空チャネル3の遠位開口部内またはその遠位開口部を閉塞している血餅の形態の血栓4まで通される。コントローラ10の近位側では、真空チャネル3は、真空ポンプ80に流体的に接続される。上述したように、血栓は、典型的には吸引カテーテルの端部に捕捉されるため、その際にカテーテル全体を患者から除去することは好ましくない。本発明者らは、コントローラ10を用いてカテーテルの除去を防止することができることを発見した。より具体的には、真空管2の遠位端が血栓によって詰まっている場合、コントローラ10は、真空チャネル3を通るすべての流れを閉塞するように作動される。これは、ハンドル基部20に向かう圧縮・作動装置40の第1の動きによって生じる。コントローラ10は、流体カラムがシフト距離70まで遠位方向にシフトするように作動される。これは、真空チャネル3内の流体カラムに制御された流れの反転を加え、真空チャネル3の遠位開口部に対して遠位方向に所定のシフト距離70だけ血栓をわずかに並進させる。第3の最終段階の間に、ユーザは、コントローラ10の作動を解除して、真空チャネル3内の流体カラムをリセットし、再び、流体が自由に流れることを可能にする。本発明者らは、このような動きによって、血栓の再配置、または血栓の変形、またはその両方が引き起こされて、以前はそのような通過が不可能であったところに、血栓が真空チャネル3内を通って真空チャネル3を完全に通過することを可能にすることを発見した。
【0086】
コントローラ10の動作を、
図24のシステムサイクル図を参照して説明する。
・ 状態1:正常な吸引が行われている。真空チャネル3は、閉塞していない。コントローラ100は、真空ポンプ80と真空チャネル3とが接続されている静止状態にある。
・ 移行A−閉塞:血栓4は、真空チャネル3の遠位端を閉塞する。詰まり解除コントローラ10は、真空チャネル3を閉塞し、コントローラ10の遠位側にある真空流を停止するように作動される。
・ 状態2:真空チャネル3内の流れが停止している。
・ 移行B−詰まり解除:コントローラ10は、計量された容積のカラムシフトのために真空チャネル3内に逆流を引き起こすように作動を継続する。
・ 状態3:フローの反転が停止する。
・ 移行C−戻りカラムシフト:コントローラ10は、真空ポンプ80と真空チャネル3とを再接続することにより、カラムを戻して血栓4をカテーテル先端に加速するように、反転される。
・ 状態1に戻り、繰り返し:正常な吸引が行われる。
【0087】
本発明者らはさらに、カテーテル内での血栓の加速が大きいほど、吸引が比例して速くなることを発見した。吸引カテーテルの遠位先端に衝突するときの血栓の衝突速度、すなわち運動エネルギーの大きさは、真空チャネル3の直径内に収まるように変形する血栓の量に影響を与える。カテーテルが血管、例えば脳内の血管に滞留している血栓に向けて延ばされたときに、コントローラ10は、血栓4が真空チャネル3の遠位開口部に滞留するまでは不要である。したがって、血栓は、真空チャネル3の開口部に向けて加速するために移動する距離を有していない。上述したように血栓にシフト距離を付与することは、カテーテルの先端に衝突する時点での血栓の運動エネルギーを最大化する。血栓の加速(したがって、その運動エネルギー)は、頭蓋内圧力とカテーテルの先端の有効吸引圧力との間の圧力差によって発生する。血栓が加速するには、血栓とカテーテルシステム内の流体カラムとの両方が速度を達成しなければならない。カテーテルが閉塞した後、カテーテル内の流体速度は実質的にゼロである。従来のカテーテル構造では、この流体カラムを加速させようとする圧力は、外部の真空ポンプのみによって供給される。しかしながら、この圧力は、真空ポンプをカテーテルの近位端に接続する管内のヘッドロスによって著しく低下する。したがって、従来のカテーテルは、血栓が真空チャネルの遠位開口部内で栓をしているため、完全に血管系から釣り出される必要がある。
【0088】
この欠点は、コントローラ10によって取り除かれる。真空チャネル3の遠位開口部が血栓によって閉塞された後、カテーテル内の流体速度は実質的にゼロである。コントローラ10は、真空チャネル3の詰まりを開放し、血栓4を遠位開口部から遠位方向に変位させる。次いで、コントローラ10は、真空を再度加える。真空を再度加えることに伴って、流体カラムが加速され、血栓4が真空チャネル3内に再び加速される。このような加速により、血栓は、吸引されるような直径まで変形する。コントローラ10によるシフト距離70によって血栓を変位させるための1つまたは複数の用途では、真空チャネル3は詰まりがなくなり、血栓4は、真空管2を通って真空管2から完全に吸引されるように十分に加速される。コントローラ10によって、管内のヘッドロスが最小化され、それにより、従来の製品構成よりもはるかに大きい範囲で血栓を加速させることができる。
【0089】
血栓の近位方向の加速が望ましい形態であることを認識すると、真空を再確立するためにコントローラ10の休止が生じたときに、近位方向の加速を増強することが可能になる。真空管2の遠位先端との衝突時に血栓の運動エネルギーを最大化する目的で、血栓および真空チャネル3内の流体カラムの加速を最大化するために、
図16に示す真空ブースタ100が、真空管2の真空チャネル3に流体的に接続されている。一般的に、真空ブースタ100は、吸引カテーテルの近位端の領域で流体カラムに吸引を加えて、ユーザが選択した時間にカテーテルの流体カラムの加速を最大化する。真空ブースタ100の例示的な本実施形態は、プランジャボア112を画定するブースタ本体110と、ボア112内に収容されたプランジャ120と、付勢装置130と、を備える。プランジャボア112は、真空チャンバ114および周囲チャンバ116を画定する形状を有する。例示的な実施形態では、真空チャンバ114は、円筒形であり、第1の内径を有し、周囲チャンバ116は、円筒形であり、第1の内径よりも大きい第2の内径を有する。真空チャンバ114は、周囲チャンバ116の容積よりも小さい容積を有する。
【0090】
プランジャ120は、真空ピストン122と、ロッド123を介して真空ピストン122に接続された周囲ピストン124と、を有する。例示的な実施形態では、真空ピストン122は、真空チャンバ114の第1の内径と実質的に等しい直径を有し、真空チャンバ114内で移動可能である。周囲ピストン124は、周囲チャンバ116の第2の内径と実質的に等しい直径を有し、周囲チャンバ116内で移動可能である。真空ピストン122と周囲ピストン124との間には、例えば非対称のダンベルの形状であるように2つのピストン122、124を互いに接続するロッド123が配置された圧力チャンバ118が設けられる。圧力チャンバ118を真空チャンバ114と周囲チャンバ116の両方から遮断するために、真空ピストン112と真空チャンバ114の壁との間には、真空シール126が配置され、周囲ピストン124と周囲チャンバ116の壁との間には、周囲シール128が配置される。ブースタ本体110は、圧力チャンバ118と、圧力チャンバ118をブースト制御弁またはスイッチ150に流体的に接続する圧力ポート119と、を画定する。この接続は、
図23に示されている。
【0091】
真空チャンバ114は、接続部140において真空チャネル3と動作可能に連通する。プランジャ120および付勢装置130は、付勢装置130が弛緩状態にあるときに、真空ピストン122が接続部140から真空チャネル3までの所定の距離にあるように配置される。この弛緩状態は、
図17に示されている。弛緩状態では、ばねは定常状態にある。すなわち、ばねには蓄積された位置エネルギーは存在しない。圧力に関しては、弛緩状態では、圧力チャンバ118および周囲チャンバ116の両方が周囲圧力にあり、すなわち、実質的に等しい。(
図16に示すように)プランジャ120が通電状態になるように真空チャネル3に向けて移動されるときに、付勢装置130(例えば、延伸されたばねの形態)は、プランジャ120を接続部140から遠ざけるようにするひずみエネルギーを蓄積する。そのような動きは、この動きが生じたときに、真空チャンバ114および真空チャンバ114と連通する真空チャネル3内に吸引を生じさせる。
【0092】
空気圧作動式真空ブースタ100の実施形態を作動させるために、圧力チャンバ118は、比較的高いインピーダンスの導管152を介して真空ポンプ80(真空源)に接続される。また、圧力チャンバ118は、ブースト制御弁150に接続される。ブースト制御弁150は、周囲圧力に接続され、圧力チャンバ118から環境(Patm)への流れを防止するために通常は開放されている。真空ブースタ100がコック(cocked)状態(
図16)にあるときに、ブースト制御弁150は(図に示すように)開放されている。これにより、真空ポンプ80は、圧力チャンバ118内の圧力を大幅に低下させることができる。ブースト制御弁150が作動される(すなわち、圧力チャンバ118を周囲環境に接続する)と、圧力チャンバ118と周囲チャンバ116との間に圧力の均等化が生じる。圧力チャンバ118とブースト制御弁150との間の接続のインピーダンスは、圧力チャンバ118と真空ポンプ80との間のインピーダンスよりも実質的に小さくなるように設計されている。これにより、ブースト制御弁150の作動時(すなわち、閉鎖時)に、迅速な圧力均等化が可能になる。
【0093】
真空ブースタ100の動作を、
図24のシステムサイクル図を参照して説明する。
・ 状態1:正常な吸引が行われている。真空チャネル3は、閉塞していない。コントローラ100は、真空ポンプ80と真空チャネル3とが接続されている静止状態にある。真空ブースタ100はコック状態にある。血栓トラップ200は、ブリードパージが行われていない状態で動作している。
・ 移行A−閉塞:血栓4は、真空チャネル3の遠位端を閉塞する。詰まり解除コントローラ10は、真空チャネル3を閉塞し、コントローラ10の遠位側にある真空流を停止するように作動される。
・ 状態2:真空チャネル3内の流れが停止している。
・ 移行B−詰まり解除:コントローラ10は、計量された容積のカラムシフトのために真空チャネル3内に逆流を引き起こすように作動を継続する。
・ 状態3:フロー反転が停止する。
・ 移行C−真空ブースト:真空ブースタ100は、公称方向の流れを再び開始し、カテーテル先端への血栓4の吸引を促進するために作動される。その少し前、同時に、またはその直後に、コントローラ10は、真空チャネル3を開放し、ポンプ80の真空を流体の流れのために再始動させ、血栓4を血栓トラップ200内に吸引する。同時にまたはその後、血栓トラップ200の制御されたパージまたは自動パージが生じて、血栓4の検査が可能になる。
・ 状態1に戻り、繰り返し:真空ブースタ100とセルフパージトラップ200が作動されなくなる。正常な吸引が行われる。
【0094】
コントローラ10の動作における閉塞およびカラムシフトフェーズの間、プランジャ120は、通電状態に保持され、プランジャ120を上昇させて真空ピストン122を接続部140に近づける。反転段階の間、またはその直後に、プランジャ120は解放され、真空チャネル3の局所的に連通する管腔内に吸引を生じさせ、それにより、流体カラムを真空方向に近位方向に加速させる。どのような流体が真空チャンバ内に、または真空チャンバに向けて引き込まれ始めるかは、真空ブースタ100の効率に影響を与える。より具体的には、作動時に流体が真空ブースタ100の下流側からのみ到達する場合、流体カラムは所望のように近位方向に加速されない。コントローラ10が真空チャネル3を閉塞させると、真空チャンバ114内への流体および真空チャンバ114に向かう流体は、実質的に真空チャネル3の上流側から到着して、流体カラムが所望の方向に加速される。流体が上流および下流の両方から到着する中間段階では、下流部分は、例えば、血栓トラップ200と接続部140との間、特に接続部140とコントローラ10との間に図示しない逆止弁を配置することによって制限され得る。逆止弁は、外付けのものであってもよいし、詰まり解除ハンドルの閉塞機能を利用してもよい。
【0095】
以下の説明では、真空ブースタ100の空気圧方式実施形態における力を要約する。プランジャ120のコック解除状態では、圧力チャンバ118および周囲チャンバ116は周囲圧力にあり、付勢装置130は実質的に弛緩状態にあり、ひずみエネルギーをほとんどまたは全く蓄積していない。プランジャ120のコック状態では、圧力チャンバ118は、ブースト制御弁118によって、周囲チャンバ116よりも著しく低い圧力にあるように引き起こされる。チャンバ114、116、118およびピストン122、124の幾何学的形状、および付勢装置130の特性は、この構成では、周囲の(より大きい)ピストン全体にわたる圧力差によって生じる力が、ばねを膨張させるのに必要な力よりも著しく大きいように選択される。このように、所与の圧力が保持されているときに、ピストンおよびばねシステムは、「コックされた」位置に上方に並進する。真空ブースタ100が作動されると、圧力チャンバ118は、周囲圧力の迅速な均等化が可能になる。周囲ピストン124(2つのピストンのうち大きい方のピストン)からの正味の力の入力がないため、ピストンおよびばねシステムのいかなる動きも、付勢装置130の作用およびより小さい真空ピストン122全体にわたる圧力差によって引き起こされるようになっている。コックした構成における付勢装置の復元力が、周囲圧力と真空チャネル3内の圧力との間に配置された、より小さい真空ピストン122全体をわたる圧力差によって引き起こされる対向力よりもはるかに高いように、チャンバ114、116、118およびピストン122、124の幾何学的形状、および付勢装置130の特性が選択される。このように、真空ブースタ100が作動され、圧力チャンバ118が周囲圧力に等しくなるように許容されると、ピストンおよびばねシステムは、力強く「下向き」に駆動し、負の変位および真空チャンバ114内の劇的な圧力低下を生じさせ、これにより、吸引装置の真空チャネル3内の圧力を低下させる。
【0096】
本明細書に記載されるように、現在の血栓除去装置は、患者の人体から装置を完全に引き出さなければ、血栓が除去されたことを外科医に知らせることができない。外科医は、吸引された内容物が堆積される貯蔵部を見ることができない。これは、貯蔵部が手術室の設定において無菌領域の外側に位置しているだけでなく、除去された血栓が貯蔵部内に含まれる多量の血液内に存在しているからである。
【0097】
実際に回収された血栓を可視化できないことを克服するために、可視化を補助する血栓トラップ200が提供される。これは、
図18〜
図21に示されている。血栓トラップ200は、吸引システム、特に真空チャネル3と整列して配置される。例示的な実施形態では、血栓トラップ200は、吸引カテーテルと真空源との間、特に、コントローラ10と真空ポンプ80との間の、カテーテル操作者の近傍にある。これにより、外科医は、コントローラ10の使用中に血栓トラップ200を見ることができるようになる。使用時には、すべての吸引された物質は、血栓トラップ200を通って流れる。
【0098】
血栓トラップ200は、真空チャネル3に流体的に接続された入口開口部212を有する流入部分210と、血栓が捕捉される透明な中間トラップ部分220と、真空ポンプ80に流体的に接続された流出部分230と、を有する容器を備える。動作において、吸引された物質および流体は、真空チャネル3から流入部分210を通ってコントローラ10を通過し、トラップ部分220へと移動する。トラップ部分220は、例示的な実施形態では、吸引された流れのすべてが通過しなければならないスクリーンまたはフィルタであるトラップフィルタ222を含む。フィルタ222は、血栓物質を停止して捕捉するように、且つ最小限のインピーダンスで空気および流体の通過を許容するように構成される。これにより、流体は、流出部分230から真空ポンプ80および任意の関連する真空ポンプ貯蔵部82へ流出することができる。
図18〜
図22に示す例示的な実施形態では、フィルタ222は、流体および空気が通過するのに十分に大きい、且つ血栓がフィルタ222を通ってトラップ部分220の流入またはトラップチャンバ224からトラップ部分220の流出チャンバ226に通過するのを実質的に防止するのに十分に小さい開口部を有する格子またはスクリーンの形態である。本明細書で使用される「フィルタ」という用語は、特定の物質が通過するのを防止しながら、流体が構造物を通過することを可能にすることによって、流体を粒子状物質から分離することができる任意の構造物を含む。フィルタ222の他の例示的な実施形態として、多孔質ポリマー、織物、または焼結された半透過性ポリマーが挙げられる。流出部分230は、生成された真空を直接受け取るために、流出チャンバ226と真空ポンプ80とを流体的に接続する出口開口部232を有する。
【0099】
血栓トラップ200の容器は、閉鎖された状態で、且つ外科手術で使用中に、密封される。例示的な実施形態では、血栓トラップ200は、血栓トラップチャンバ224から血栓を除去し、外科医または病理医による検査のために、また、血栓トラップ200が再利用可能である場合の滅菌のために、分解して開くことができる。
【0100】
なお、血栓4がトラップチャンバ224内に捕捉されるときに、真空が加えられているか否かにかかわらず、トラップチャンバ224も血液で満たされることに留意されたい。したがって、ユーザが内部を見ることができるように血栓トラップ200の全体が透明であっても、血栓4を可視化することはできない。トラップチャンバ224内に収容された血栓4の可視化を補助するために、血栓トラップ200は、捕捉された血栓物質の検査を視覚的に妨げる流体を一時的にパージするように構成される。したがって、例示的な実施形態では、流入部分212は、真空チャネル3およびトラップチャンバ224に流体的に接続された吸入ブリード弁214を有するように形成される。ブリード弁214は、ブリード弁214を通ってトラップチャンバ224(または真空チャネル3)に流入する空気および/または流体の任意の流れが完全に制限される閉モードと、ブリード弁214が流体、特に周囲空気を吸入するブリードモードと、で動作するように構成される。(代替的に、ブリードモードでは、必要に応じてブリード弁214が生理食塩水のような透明な流体を吸入することができる。)閉モード動作の間、ブリード弁214の出口は閉鎖され、吸引された物質は、入口開口部212から血栓トラップ200を通って、出口開口部232を通って真空源に向けて離れるように流れることを妨げられない。吸引された血栓および他の固形物は、トラップチャンバ224内に残る。したがって、外科医が血栓除去手術の間にトラップチャンバ224内の血栓4を捕捉した場合、外科医は、ブリード弁214をブリードモードに設定して、その血栓4を直ちに可視化することができる。これは、ブリード弁214の入口開口部の比較的大きいため、および周囲空気への開放による真空に対する抵抗が減少するため、真空ポンプが周囲空気をトラップチャンバ224内に迅速に引き込んで、トラップチャンバ224からすべての流体を退避させることができる。検査中、ブリード弁214は、トラップチャンバ224と真空チャネル3との間の流体的接続を閉塞するように構成することができる。ブリード弁214の作動は、コントローラ10とは別個のものであり得る。これにより、コントローラ10が、吸引が生じている非作動状態にあるときに、コントローラ上のブリードスイッチがブリード弁214を作動させることができるように、コントローラ10に機械的に接続されていてもよい。トラップチャンバ224への空気の迅速な流入は、外部環境と、トラップチャンバ224と真空ポンプ80との間に存在する容積内に存在する比較的低い圧力との間の下降圧力勾配によって誘導される。このように、ブリード弁214が開放されている間、空気流は、血栓トラップ200の容積から流体を変位させて、容積の大部分を、不透明な血液の代わりに透明な空気で満たす。この一時的な透明性は、フィルタ222によって捕捉された物質を容易に検査することを可能にする。その後、外科医は、トラップチャンバ224内の血栓4を閉塞されていない状態で見ることができる。この検査の間、ブリード弁214の(機械的またはプロセッサ基部のコントローラであり得る)制御によって、必要に応じて少なくとも外科医が血栓除去手術を継続する準備ができるようになるまで、真空ポンプ80が真空を減少させるか、完全に遮断することができる。ブリード弁214が閉モードに戻され、トラップチャンバ224の真空チャネル3への再接続が起こると、通常の吸引が再開される。代替的に、ブリード弁は、生理食塩水点滴バッグのような流体を流すラインに接続することができる。
【0101】
血栓4の検査は、視覚的コントラストのために最適化された光学フィルタ、上述した透明なトラップ筐体、ビルトインの拡大または可視化システム、照明、および/またはセンサに基づく血栓検出方法を有する血栓トラップ200を提供することによって強化されてもよい。
【0102】
例示的な構成では、真空ブースタ100は、
図21に示すように、血栓トラップ200の上流側に配置され、血栓トラップ200に対向するコントローラ10の側にある。したがって、すべての吸引された血栓4の末端としての血栓トラップ200の有効性を維持するために、血栓を巻き込むか、または著しく損傷させるか、または中和させる可能性のある真空ブースタ構成は、あまり好ましくない。
図16および
図17に示すピストンの設計の代わりに、より緩やかな真空ブースタ200の例示的な実施形態は、機械的作動機構を有するように、変形可能な内部容積を有する真空管2の管の一部分を結合する。この機構は、その長さに沿った圧力の増加または減少を提供するために、真空チャネル3の長さの内部断面を崩壊および拡張することができる。空気圧作動を持たない真空ブースタのための別の機械的実施形態は、コントローラ10の作動によって加えられたエネルギーから、または別のエネルギー入力から、真空ブースタのためのエネルギーを取る。例えば、ユーザが流れを遮断して一時的にカラムシフトを引き起こすコントローラ10のレバーを押すと、レバーの動きは、真空ブーストを生成するために付勢されたピストンをコックして解放する。真空ブースタの別の例示的な実施形態では、真空ブースタ100の真空チャンバ114と吸引システムの真空チャネル3との間にスクリーンを配置する。このスクリーンは、2つの内部容積間の流体連通を可能にするが、粒子状物質が真空チャンバ114によって画定されたピストンボアに入るのを防止する。血栓の詰まり/偶発的な浸潤を防止するさらなる例示的な実施形態では、接続部140が、真空ピストン122の表面と真空チャネル3への開口部との間に機械的に配置された柔軟性を有するダイアフラムであることによって、
図16および17のピストン構成が変更される。ダイアフラムは、例えば、真空チャネル3の実際の開口部内に収容され、且つ横断することができる。そのような膜は、すべての流れを排除しながら、容積的な変位を伝達する。膜は、真空ピストン122から分離されていてもよく、流体的に接続されていてもよく、そこに取り付けられていてもよい。これらの構成において、真空ブースタ100が通電状態にあるか静止状態にあるかにかかわらず、流体カラムが流れる量は、移動する際に血栓4の巻き込みまたは損傷を防止するために妨げられない。
【0103】
真空ブースタおよび血液バージ式血栓トラップは、装置の特定の部分、すなわち血栓トラップ200のブリード弁214または真空ブースタ100のプランジャ120に、真空または周囲圧力のいずれかを、適時および制御されるように加えることに依存している。本明細書に記載され且つ図に示す自己詰まり解除式血栓吸引カテーテルは、コントローラ10におけるまたはコントローラ10による自己詰まり解除機能と同じユーザ入力によって作動され、且つ自己パージ式血栓トラップ200および/または真空ブースタ100のような装置の機能を制御する真空または大気圧空気のための追加の導管を開閉させるのに役立つ追加の機能を提供することができる。
【0104】
真空管2(およびカテーテル内の他の任意の管)の真空チャネル3は、吸引時のヘッドロスを減少させるために、例えばカルナバワックスのような疎水性コーティングでコーティングすることができる。
【0105】
適切な圧力センサ(例えば、圧電ダイアフラム変換器、電磁ダイアフラム変換器、ストレインゲージダイアフラム変換器、またはMEMS圧力集積回路変換器)を用いて、コントローラ10は、血栓によって真空チャネル3が詰まっていることを判断し、本明細書に記載される詰まり解除手順を自動的に実行することができる。例示的な実施形態では、センサに接続されたコンピュータは、真空チャネル3内または真空チャネル3での血栓の詰まりに関連した圧力低下および流量不足を検出することができる。詰まりが検出されると、センサは、真空チャネル3内で真空を加えることを停止し、カラムシフトシーケンスを実行するシーケンスを始動させる。センサの別の例示的な実施形態は、装置内の血栓4の可視化に関して、真空チャネル3の遠位開口部および血栓トラップ200のいずれか一方または両方における血栓の存在を検出する光学センサを含む。後者の構成では、トラップ部分220に関連付けられた光学センサは、血栓4が存在することを検出し、ブリード弁214を開放して流体のパージを引き起こす。
【0106】
本明細書に記載されるように、真空管2は、様々な材料から形成され得る。真空管2を形成する一部の材料は、ラテックス、シリコーンおよびその他の合成ゴムのような比較的低い圧縮強度を有する。真空管2を形成するその他の材料は、例えば、ペバックス(登録商標)、ポリウレタンおよびポリ塩化ビニルのような比較的高い圧縮強度を有する。コントローラ10内の真空管2は、真空チャネル3内で正の圧力がかかると膨張し、負の圧力がかかると収縮するため、真空管2を構成する材料のこのような柔軟性のある属性は、効果の低いカラムシフトに寄与する可能性がある。真空管2に対する圧力(正および負の両方)のこれらの影響を低減するために、真空管2は、編組(braid)またはコイルまたはその他の機械的構造によって補強され得る。これにより、圧力の変化に対してコントローラ10内の真空管2の部分を支持することができる。真空管2が比較的低い圧縮強度を有する材料から形成されている場合、コントローラ10内に存在する真空管2の部分は、膨張/収縮の影響を最小限に抑えるために、可能な限り短く形成される。
【0107】
圧縮ローラ60を介して真空チャネル3を間接的に作動する
図1に示すコントローラ10の代替的な実施形態が、
図22に示されている。
図22に示す例示的な実施形態では、押出圧縮機は、真空管3の真空チャネル3に直接流体的に接続された容積変更コントローラ300に置き換えられる。容積変更コントローラ300は、真空チャネル3に流体的に接続された入口開口部312を画定する内部311を含むバレル本体310を有する。また、バレル本体310は、プランジャ開口部314、ポンプ開口部316およびパージ開口部318を画定する。プランジャ320は、入口開口部314に向けておよびそれから離れるように移動可能であるように、バレル本体310の内部311に密封可能に接続される。
図22に示す位置にあるときに、真空ポンプ80によって加えられた真空は、物質の吸引のための真空チャネル3の遠位開口部に接続される。遠位開口部で血栓が詰まると、外科医は、プランジャ320を内側に押す。内向き運動の第1の部分では、プランジャ320の表面は、ポンプ開口部316を密閉して、真空チャネル3に真空を加えることを停止する。内向き運動の第2の部分では、プランジャ320は、内部311および真空チャネル3内に含まれる流体をすべて遠位方向に移動させ、カラムシフトを引き起こす。プランジャの逆転は、カラムシフトを逆転させ、真空チャネル3に真空を再度加える。
【0108】
プランジャ320は、血栓トラップ200のパージを制御するために使用することもできる。プランジャには、パージ導管322が設けられる。プランジャ320がパージ位置に配置されると、プランジャ320は、真空ポンプ80からの真空チャネル3を閉鎖し、パージ導管322を介してポンプ開口部316とパージ開口部318とを流体的に接続する。この位置では、パージ開口部に接続された流体、例えば周囲空気が、パージ導管322を通って、パージ開口部318を通って、血栓トラップ200内に引き込まれる。
【0109】
容積変更コントローラ300の動作を、
図24のシステムサイクル図を参照して説明する。
・ 状態1:正常な吸引が行われている。真空チャネル3は、閉塞していない。容積変更コントローラ300は、真空ポンプ80と真空チャネル3とが接続されている静止状態にある。
・ 移行A−閉塞:血栓4は、真空チャネル3の遠位端を閉塞する。コントローラ300は、真空チャネル3を閉塞し、コントローラ300の遠位側にある真空流を停止するように作動される(差し込まれる)。
・ 状態2:真空チャネル3内の流れが停止している。
・ 移行B−詰まり解除:コントローラ300は、定量的なカラムシフトのために、真空チャネル3で逆流を引き起こすためにプランジを継続する。
・ 状態3:フロー反転が停止する。
・ 移行C−戻りカラムシフト:コントローラ300は、真空ポンプ80と真空チャネル3とを再接続することにより、カラムを戻して血栓4をカテーテル先端に加速するように、反転される。
− 状態1に戻り、繰り返し:正常な吸引が行われる。
【0110】
図25〜
図41は、自動且つ迅速な圧力変化の繰り返し開始で動作する吸引式血栓除去システム400の例示的な実施形態を示している。
図26には、例示的な本実施形態ではピンチ弁420、440である1対の弁420、440の遠位開口部から延在するように、吸引カテーテル410が模式的に示されている。一方の弁は、真空の流れを制御するためのピンチ弁420であり、吸引カテーテル410と吸引ポンプ(例えば、真空ポンプ80)との間に接続される。他方の弁は、通気流を制御するためのピンチ弁440であり、通気液の供給源に接続される。例示的な実施形態では、通気液は、アルブミン、d5W水、生理食塩水、2分の1生理食塩水および乳酸リンゲル液のうちの任意のものであり得る。また、通気液は、造影剤または組織プラスミノゲン活性化因子(tPa)のような他の生体適合性流体のいずれかであり得る。このような流体では、カテーテル410は、異なる機能を果たすことができる。例えば、血栓が正常に除去されたと考えられた後に、通気液を造影剤に切り替えることにより、外科医は、血栓の除去を確認するために、その造影剤を血管内に注入することができる。これは、血管内での大きい動きなしに、カテーテル410が吸引機能から造影剤注入機能に切り替わるので、重要である。血栓が遠位端に留まった状態になる標準的な吸引カテーテルでは、カテーテル全体を患者から取り出す必要があり、造影剤をその部位に注入する必要がある場合には、この可視化を実行するためだけに、血管系を通してカテーテルを再導入する必要がある。通気液は、大気圧であってもよいし、大気圧よりも高い圧力であっても低い圧力であってもよい。
【0111】
例示的な構成では、これらの弁420、440は、基部401に取り付けられる。真空カム430および通気カム450のそれぞれのカムが、ピンチ弁420、440に動作可能に関連付けられる。これらのカム430、450は、カムシャフト460に接続される。カムシャフト460の第1のシャフト端部462は、シャフトベアリング470に回転自在に固定的に接続される。シャフトベアリング470は、基部401に取り付けられたベアリング本体472を有する。カムシャフト460の第2のシャフト端部464は、シャフト駆動アセンブリ500に接続される。シャフト駆動アセンブリ500は、モータ510と、トランスミッションまたはギアボックス520と、シャフトカプラ530と、モータ制御アセンブリ550と、を備える。
【0112】
トランスミッション520は、出力シャフト522を有する。トランスミッション520をカムシャフト460に接続するために、シャフトカプラ530の第1のカプラ端部532が出力シャフト522に接続され、シャフトカプラ530の第2のカプラ端部534が第2のシャフト端部464に接続される。このようにして、モータ510の回転は、真空カム430および通気カム450の対応する回転とカムシャフト460の(トランスミッション520のギアに基づいて同じまたは異なる速度での)回転に対応する。
【0113】
モータ510の制御は、コントローラ560と、位置エンコーダ570と、位置リセットアセンブリ580と、を備えるモータ制御アセンブリ550から生じる。例示的な実施形態では、コントローラ560は、例えば、後述する様々な状態で吸引式血栓除去システム400を操作するための制御ボタンを含むユーザ入力を備えるユーザインタフェース(UI)を有するマイクロコントローラである。UIを有するコントローラ560が、
図30に模式的に示されている。例示的な実施形態では、部分的に流体から隔離するために、モータ510、トランスミッション520、シャフトカプラ530、およびモータ制御アセンブリ550、560、570、580が、モータアセンブリハウジング552内に収容される。モータアセンブリハウジング552とカムシャフト460との接続部は、シャフトシール554によって流体的に密閉される。同様に、カム430、450、カムシャフト460、およびシャフトベアリング470は、カムハウジング466で覆われる。
図30において、コントローラ560は、モータアセンブリハウジング552とは別個のもの(有線または無線のいずれか)として示されているが、モータアセンブリハウジング552と一体化されてもよく、モータアセンブリハウジング552に取り付けられてもよい。無線構成では、コントローラ560は、例えば、コンピュータまたはUIのすべてがタッチスクリーンを介して利用可能であるスマートフォン上のアプリケーションであり得る。
【0114】
真空カム430および通気カム450は、カムシャフト460に回転可能に固定される。これらのカム430、450は、弁420、440を作動させるための様々なカムプロファイルを有する。コントローラ560が弁420、440を所望の状態に設定することができるように、カム430、450すなわちカムシャフト460の正確な回転位置を知ることが望ましい。モータ510は、自由に回転し、任意の回転位置でその回転を終了させることができるので、カムシャフト560の正確な回転位置をすべての所与の時間で知ることが望ましい。したがって、モータ制御アセンブリ550は、モータ510に関連付けられた位置エンコーダ570を含む。この関連付けにより、コントローラには、カムシャフト460すなわちカム430、450の正確な回転状態に関する情報が提供される。位置エンコーダ570は、エンコーダディスク572とエンコーダ回路574と、を備える。エンコーダ570は、任意の時点でのモータ510の現在の相対回転位置を検出し、コントローラ560にそれを報告することができる。
【0115】
当業者であれば、モータ510および/または位置エンコーダ570が使用中に横滑りする可能性があることを理解するであろう。モータ制御アセンブリ550は、あらゆる横滑りを考慮して修正するように、位置リセットアセンブリ580を備える。この位置リセットアセンブリ580は、カムシャフト460の単一の回転位置をリセットポイントとして割り当て、その位置がゼロ線を越えるたびに、位置エンコーダは、モータ510の位置をゼロにリセットする。これにより、システムは、カムシャフト460の絶対位置を知ることができる。例示的な実施形態では、位置リセットアセンブリ580は、フォトダイオード582と、フラグまたは遮断器(interrupter)584と、を備える。
図30に示すように、フラグ584は、シャフトカプラ530に固定される。フォトダイオード582は、カムシャフト460の各回転に対してフラグ584が1回フォトダイオード582を遮断するように、フラグ584の経路に配置される。例示的な本実施形態は、エンコーダ570の任意にとばされたステップを即座に修正することを可能にする。
【0116】
ここで、
図31〜33を参照して、ピンチ弁420、440の例示的な実施形態を、通気ピンチ弁440を用いて説明する。各弁420、440は、真空または通気管腔424、444を画定する弁本体422、442を備える。弾性管426、446は、管426、446の各端部において、管腔424、444内に固定される。この接続のための例示的な実施形態には、融剤、圧縮シーリングおよび接着剤による固定が含まれる、これらに限定されるものではない。したがって、管426、446は、管426、446の中間部分が管腔424、444に未接着の状態で、管腔424、444の範囲にまたがっている。管426、446の管腔は、管腔424、444の遠位端(
図31および
図32の左側)と管腔424、444の近位端(
図31および
図32の右側)とを流体的に接続する。弁本体422、442の中間部分は、カムフォロワ421が移動可能に固定されたフォロワ接続部を画定する。カムフォロワ421の第1の端部は、図示しない付勢装置を用いてカム430、450の外面に対して付勢されているか、または単に所定の位置に閉じ込められる。カムフォロワ421の反対側の第2の端部は、管426、446の中間部分に当接する。したがって、
図32に示すように、カム430、450が管426、446に向けて移動するときに、カムフォロワ421は、管426、446の管腔を流体的に封鎖して、
図31に示すように、管426、446から離れるように戻るときに、カムフォロワ421は、管426、446の管腔を開放する。例示的な実施形態では、カムフォロワ421は錠剤のような形状を有するが、管426、446を閉鎖する機能を提供するために、任意の形状に形成することができる。
【0117】
選択的に開放可能な弁420、440を介して、真空ライン402および通気ライン404の両方が、吸引カテーテル410の近位端に接続される。動作中、真空カム430および通気カム450は、それぞれのカムフォロワ421を押し下げて、カムフォロワ421は、真空ライン402および通気ライン404にそれぞれ流体的に接続された管426、446の短い部分を挟み込んで押し下げる。真空ライン402が開放され且つ通気ライン404が閉鎖されると、真空は、吸引カテーテル410に引き込まれる。カテーテル410の遠位端が血栓で詰まっている場合、閉鎖によって、カテーテル410内の真空のレベルが最大(真空ポンプによって生成された最大電流の真空)まで上昇する。この閉鎖によって、カテーテル410の内部管腔とカテーテル410の外部環境との間に圧力の差分が生じる。この変化によって、半径方向および長手方向の両方でカテーテル410の本体が圧迫される(例えば、直径および長さが漸進的に小さくなる)。また、この変化は、カテーテル410の管腔内から少量の流体を引き出す。例示的な実施形態では、その量は、約0.2mlである。最終的な効果は、カテーテル410をその定常状態に戻して膨張させ、真空ライン402が閉鎖されているときにそれが起こらないように、カテーテル410内にばねのような力を生じさせる。したがって、真空は、通気ライン404が開放されるまで(例えば、
図26に示すように、真空ライン402と通気ライン404が、弁420、440の遠位側に共に接続されるまで)、潜在的なエネルギーとして貯蔵される。通気ライン404が開放されると、圧力差分による流体の急流が生じる。この流体の急流は、カテーテル410の半径方向の力をバランスさせ、流体を引き込んで、弁420、440の遠位側にあるカテーテル410内に存在する流体のカラムに、遠位方向に向けられた推進力を生じさせる。この推進力によって、少量の流体がカテーテル410の遠位部分を通って移動し、カテーテル410の端部の遠位開口部内に滞留している血栓の遠位方向への小さい動きを生じさせる。血栓が遠位開口部で付着しなくなると、後続の真空がカテーテル410に加えられて、血栓をカテーテル410内およびカテーテル410を通過するように近位方向に移動させることができる。真空および通気の選択的な作動を繰り返すことにより、血栓を遠位開口部で浸軟化させて、カテーテル410の管腔内に完全に引き込まれて血管系から排出されるように変形させることができる。例示的な本実施形態における流体の前方流は意図的であり、これは、前方流が実質的に生じない本明細書の他の例示的な実施形態とは対照的である。
【0118】
システム400は、血管内の血栓を除去するために、様々なモードで作動させることができる。カムの回転は度数で測定され、完全な回転は360°の移動である。第1の例示的な実施形態では、真空カム430は、約220°の回転を介してカテーテル410内に真空を確立するように構成される。通気カム450は、約80°の回転を介して通気をオンするように構成される。カム430、450の構成は、真空および通気をそれぞれ加えている間、例えば30°の回転で、通気および真空の両方を停止させる。したがってこの構成は、以下の表1に示す動作状態をもたらす。
【0120】
通気が開放されるとすぐに、真空圧をバランスさせるために流体が流入し、次いで通気ライン404が閉鎖され且つ真空ライン402が開放され、急激な圧力の低下を引き起こす。これは、カテーテルに向けて血栓を強制的に引っ張るのに役立つ。したがって、真空を再開する前に、真空ラインと通気ラインの両方を閉鎖することが望ましい。
【0121】
別の例示的な実施形態では、真空カム430は、約220°の回転を介してカテーテル410内に真空を確立するように構成される。通気カム450は、約80°の回転を介して通気をオンするように構成される。このように、望ましい第2の例示的な構成において、カテーテル内の真空の引き込みとカテーテルの通気との間の一時停止と、カテーテルの通気とカテーテル内の真空の引き込みの再開との間の別の一時停止と、が形成される。この例示的な構成では、一時停止は、約30°の回転を介して行うことができる。真空と通気が同時に起こるパージ状態を生じさせるために、通気カム450は、長い真空オン段階の間(例えば、+30°〜+250°)に起こる通気カム450の位置に小さい内向きの窪みを有する。通気の程度は、圧力の著しい変化または真空エネルギーの変化を提供しないように構成されるが、代わりに、カム430、450の単一の回転位置を形成するように構成される。ここで、モータ制御アセンブリ550は、真空ライン402および通気ライン404の両方がカテーテル410に接続されているその向きでカムシャフト460の回転を停止することができる。これにより、ユーザは、システム内(例えば、真空ライン402、通気ライン404および/またはカテーテル410内)に存在するかもしれない空気をパージすることができる。窪みの程度は、このパージ状態の間に引き込まれる通気液の量を減少させるために、通気を部分的にのみ開放するようなものであり得る。このパージは、カム回転の既知の位置とすることができ、システム400内のすべてのラインから空気が解放されるように、その位置に配置される。このような構成は、以下の表2に示す動作状態をもたらす。
【0123】
システム400の動作のための第3の代替構成は、以下の表3に示す動作状態を含むパルス通気を有する常時真空を含むことができる。
【0125】
表3の状態とは反対の構成は、真空のオーバーラップを有する常時通気を含むことができる。
【0126】
システム400の動作のための第4の代替構成は、以下の表4に示す動作状態を含む通気中に真空を含むことができる。
【0128】
表3の状態とは反対の構成は、真空中のオーバーラップを有する常時通気を含むことができる。
【0129】
システム400の動作のための第5の代替構成は、以下の表5に示す動作状態を含む真空中の通気を含むことができる。
【0131】
さらなる代替的な構成は、通気と真空の様々なオーバーラップを有することができる。これは、上記の表のオフ状態のうちの1つまたは複数を消すことになる。
【0132】
カム駆動される弁420、440によって、位置エンコーダによって駆動されるモータが、真空、通気、オフおよびパージのための位置が画定される。モータ制御アセンブリ550は、カム420、440を任意の周波数で制御することができ、例えば、4Hzなどの任意の所与の速度のような様々な状態を通って移動するように設定することができる。モータが動作する周波数は、0.5Hz、1Hzまたは2Hzのような低い周波数で動作する方がより適切である場合がある。代替的に、8Hz、12Hzまたは16Hzのようなより高い周波数で動作することがより効果的である場合がある。また、モータ制御アセンブリ550は、回転周波数を掃引するためにカムシャフト460の回転速度を動的に変化させることができる。例示的な実施形態では、速度の段階は1Hz〜約4Hzの範囲であり、増分の変化は約0.25秒〜約5秒の範囲であり、回転の範囲は、約2Hz〜約12Hzの範囲である。この段階、増分および範囲のための一例として、次に示す2Hzで1秒の増分が挙げられる:2Hz/4/6/8/10/12/10/8/6/4/2/...。別の例として、次に示す4Hzで0.5秒の増分が挙げられる:4Hz/8/l2/8/4/...。例示的な実施形態では、システムは、カテーテル410の遠位端で動けなくなった血栓の近位端の動きが少ないことが観察されている8Hz〜12Hzの範囲のより高い周波数を使用する。代替的に、さらなる増分を使用して、正弦波、鋸歯波、ステップ波、および脈動変動などの複雑な形態を介して、周波数を掃引することができる。
【0133】
ピンチ弁420、440の例示的な代替例では、弁は、電磁駆動式ピンチ弁またはボイスコイルアクチュエータであり得る。別の例示的な代替例では、
図42〜
図46に示すように、回転式ピンチ弁を使用することができる。
図42〜
図44に示す第1の弁状態は、例えば、真空オン/通気オフ状態であり得、
図45および
図46に示す第2の弁状態は、真空オフ/通気オン状態であり得る。
【0134】
真空および通気の最も迅速な発現が望ましいと判断されている。この迅速な発現を生成するために、カム430、450は、カム430、450の形状を有する絶壁部452を用いて、それぞれ真空および通気を開始する。真空の急激な生成によって、カテーテル410内の圧力の急激な低下が生じて、カテーテル410の遠位端に対して積極的に血栓が引き込まれる。上述したように、通気によって、血栓を剥がす遠位方向の推進力が生じる。真空および通気を繰り返すことにより、血栓が完全にカテーテル410の管腔に入って血管系から除去されるまで、遠位開口部における血栓の機械的に浸軟化を引き起こすことができる。したがって、本システム400は、急速吸引リピータ(Rapid Onset Aspiration Repeater)またはROARとして記述することができる。
【0135】
モータ制御アセンブリ550によって実行される制御は、ユーザが作動する様々なボタンを有する。例示的な実施形態では、1つのボタンが真空および通気の両方を遮断させる(すなわち、オフ動作を引き起こす)。別のボタンが真空を連続させる(すなわち、手動制御させる)。別のボタンが通気を連続させる(すなわち、手動制御させる)。別のボタンによって、カムシャフト460が、真空ライン402および通気ライン404がパージされ得る位置にカム430、450を回転させる(すなわち、パージ機能)。別のボタンによって、システムは、段階、増分および範囲のための任意の数のセットの選択と共に、(例えば、表1から表5のいずれかに示す)所望の状態のセットに応じて繰り返し実行またはパルスを発する。外科医がシステム400を単純な血栓除去装置として使用することを望む場合、外科医は、真空ボタンを使用するだけでよい。この状態では、エンコーダ570は、真空が開放される位置までカムシャフト460の回転を補助する。真空ポンプは、真空が完全に開放された状態で、外科医がボタンを離すまで動作する。外科医が、例えば造影剤をパージまたは注入したい場合、外科医が通気ボタンを使用することにより、エンコーダ570は、通気が開放される位置までカムシャフト460の回転を補助することができる。同様に、オフボタンは、カム430、450が真空ライン402、404と通気ライン404の両方を閉鎖する位置まで、カムシャフト460を回転させる。パージボタンは、カム430、450が真空および通気を同時に可能にする位置まで、カムシャフト460を回転させる。
【0136】
実行またはROARモードの例示的な実施形態では、カムシャフト460の回転は、約0.5Hz〜約25Hzの範囲、さらに約6Hz〜約16Hzの範囲、特に約8Hz〜約12Hzの範囲である。この例示的なROARサイクルでは、カムシャフト460は、約10秒〜約30秒の範囲で回転され、その間、モータ制御アセンブリ550は、モータ410に、約2Hz〜約12Hzの範囲の周波数を掃引させる。
【0137】
上述したように、弾性管426、446は、弁管腔424、444の遠位および近位側の位置に取り付けられる。カテーテル410に真空を加えて遠位端において血栓が詰まっているときの真空弁の遠位側のシステム400における伸展性(上述したように、カテーテル410の直径および/または長さの減少と管426、446の伸展性とを含む)は、システム400が完全な真空状態にあるとき引き出される流量と、その状態が解除されたときにシステム400内に戻る流量を決定する。換言すると、弁420、440の遠位方向の伸展性が大きくなると、流体のカラムによって固着した血栓に加えられる推進力が増加する。血栓を十分に剥がすために固着している血栓への流体カラムからの推進力の伝達は、最小限であることが望ましい。これにより、次の真空サイクルでは、カテーテル410の遠位端に対して血栓を浸軟化して、血栓をカテーテル410の管腔に侵入させて血管から除去することができる。この(所与のカテーテル410に対して固定される)伸展性を最小限に抑えるために、管426、446は、カムフォロワによる弁動作が可能であるように、可能な限り短くされる。本明細書で使用される伸展性という用語は、カテーテル410および管426、446の機械的伸展性を意味し、システム400内に存在する、本明細書で記載されるような使用前にパージされる空気を意味するものではない。伸展性の低下が望ましいことが、弁システムとカテーテル410の近位端とが直接接続される理由の1つである。この密接な接続は、全体的な伸展性を最小限に抑える。例示的な実施形態では、弁システムは、カテーテル410から離れた位置に配置することができ、そのような場合には、実質的に伸展性のない管が望まれる。この構成は、過剰な伸展性のために、パフォーマンスを低下させる可能性がある。
【0138】
カテーテル410の遠位端にある血栓の状態を判断するために、システム400は、ROARモードに置かれる。システム400に関連付けられたセンサがない場合、外科医は、ROAR中に、血栓が栓をしているか否かを区別することができない。外科医は、ROARをオフして、カテーテルが栓をされている状態(カテーテル410によって何も引き込まれない状態)か、栓をされていない状態(カテーテル410に血液が引き込まれる状態)かを可視化する必要がある。流れに基づいてパルスを中止する状況と、栓がされなくなるまでパルスを発する状況との異なる状況では、血栓が栓をしているどうかを知ることは困難である。
【0139】
通気ライン404は、通気液貯蔵部(図示せず)に接続されており、この貯蔵部は、例えば、アルブミン、d5水、生理食塩水、2分の1生理食塩水および乳酸リンゲル液のうちの任意のものを含むことができる。上述したように、システム400を通気するために流体が使用されると、すべての空気をシステム400からパージすることができる。さらに、所与の量の通気液が血栓除去の様々な段階で使用されることを知ることにより、ユーザは、遠位端に固着した後のカテーテル内への血栓の除去と、通気液の使用率とを相関させることができる。換言すると、血栓が栓をしているときと栓をしていないときとでは、通気液の量が異なる。したがって、ユーザまたはセンサは、システムをオフするかどうかを決定するために、通気液使用量を確認したり測定したりすることができる。カテーテル410が閉塞されずに(栓をされずに)吸引している場合、多量の血液がシステム400から流れ出る。カテーテル410が栓をされた状態で吸引している場合、真空出口に血液は出現しない。ROAR動作中且つカテーテル410が栓をされていない間に、ユーザ/センサは、真空出口でいくらかの血液を検出する。最後に、ROAR動作中且つカテーテル410が栓をされている間に、真空出口は、血液と通気液の組み合わせである流体を受け取る。この状態では、通気液の流量は、カテーテルが栓をされているか否かを示すことができる。
【0140】
外科医が真空中に自由な流れを可視化し、捕捉された血栓(例えば、血栓トラップ200内)を見た場合、外科医は、カテーテル410を用いて造影剤を注入して、吸引カテーテル410を動かしたり取り外したりすることなく血管再生を確認することができる。これは、栓をしている血栓をカテーテルの端部で保持して、外科医がカテーテル全体を引っ込めて栓をしている血栓を引きずり出すようにして血栓を除去する現在の最先端の吸引カテーテルとは対照的である。より小さい直径のカテーテルが、より多くの量の血栓をカテーテル内に引き込むことにより、血栓を十分に取り込んだり、より良い把持力を確保したりすることができるようになったことは、大きい利点である。多くの血栓は、解剖学的に非常に深い位置にあり、大きいカテーテルを血栓の部位に到達させることは困難である。より小さい直径のカテーテルが、ROARを介してより効果を高めることができれば、より多くの血栓に接近して回収することができる。
【0141】
システム400で達成すべき1つの望ましい目標は、血栓を完全に摂取して、標準的な吸引容器(典型的な血栓除去側貯蔵部内)または血栓トラップ200に戻すことであることに留意されたい。標準的な吸引容器および血栓トラップ200を使用する場合、システム400は、空気を使用する代わりに、通気液を使用して、吸入ブリード弁214を介して血栓トラップ200を洗い流すことができる。これにより、吸引容器内の真空圧の保持が可能となる。
【0142】
ここで、前方流を伴わずに浸軟性を生じさせる実施形態を参照すると、
図47は、ROARモードで動作する吸引式血栓除去システム600の例示的な実施形態を模式的に示している。システム600は、制御可能な真空弁620の入口に流体的に接続された真空源610を備える。(収集容器などの真空源610の一部は、図を明確にするために
図47には示されていない。その詳細は、後述する。)真空弁620は、マニホールド630の真空入口632に流体的に接続される。接続は、直接接続であってもよく、シリコーン管などの導管を介して接続されてもよい。通気液642を含む通気液源または貯蔵部640は、制御可能な通気弁650に流体的に接続される。通気液642は、例えば、アルブミン、d5水、生理食塩水、2分の1生理食塩水および乳酸リンゲル液のうちの任意のものであり得る。本明細書で使用される「制御可能」という用語は、装置が様々な状態の間で選択可能であることを意味し、その選択は、アナログおよび/またはデジタル間の切り替えを含む。例示的な実施形態では、単一のコマンド(例えば、ビット1/0の変更)で開位置と閉位置との間のデジタル切り替えが行われる。吸引式血栓除去システム600の作動チャネル全体には、使用中に空気またはその他の気体状の気泡がないことが望ましい。
【0143】
通気液源640は、所定の外科的処置の間に終了しない十分な量の通気液を貯蔵部内に有しており、これにより、空気がシステムに入ることを防止することができる。通気液源640が、非経口流体封じ込めバッグまたは静脈内治療用バッグから供給される流体のように柔軟性を有する場合、気体のない容器は、通気液642が使用されるにつれて収縮する。通気液源640の柔軟性が低く、交換可能/取り外し可能で滅菌可能な容器のように空気または気体のポケットを有する場合、通気液642を通気液源640から通気弁650に移送する導管は、所定の手順を通して導管の入口が通気液642内に沈められた状態であるように、貯蔵部内のレベルにある。
【0144】
ROARカテーテル660は、その遠位端664と、ROARカテーテル660の近位端にある近位マニホールドコネクタアセンブリ670とを流体的に接続する作動管腔662を画定する。このアセンブリ670の詳細については、後述する。ROARカテーテル660は、比較的小さい血管内で作動するように構成される。したがって、例示的な実施形態では、管腔は、約0.038”〜約0.106”の範囲の内径を有し、特に約0.068”〜約0.088”の範囲の内径を有する。近位マニホールドコネクタアセンブリ670は、管腔662とマニホールド630の内部とを流体的に接続する。すなわち、マニホールド630は、真空弁620を介して、管腔662と真空源610とを流体的に接続し、通気弁650を介して、管腔662と通気液源640とを流体的に接続する。血管内での使用において、管腔662は、近位部分および遠位部分を有する液体カラムで満たされる。カテーテル660に対する使用に応じて、液体カラムの近位部分および遠位部分は、所定の量(例えば、20マイクロリットル未満または5マイクロリットル未満)であってもよく、所定の長さ(例えば、数mmまたは数cm)であってもよく、または統計的な流量分析を使用して概算されたカラムのインスタンスであってもよい。例えば、流体カラムの遠位部分が管腔662の遠位端から出るかどうかに関しては、その遠位部分は、管腔の遠位端の平面に存在する液体のインスタンスに等しい、液体カラムの遠位端における測定可能な距離である。本実施例の統計解析の領域では、遠位部分は、液体カラムの有限要素解析(FEA)における最後の遠位有限要素である。ここでは、システム600は、前方流を実質的に防止するために使用される。本明細書における「前方流」という用語は、遠位方向に遠位端664から出て行く管腔662内の液体の量を定義するために使用される。前方流は、6マイクロリットル(ID0.071”=5.7μLで約1mmのカテーテル長さ)よりも多い流体として定義される。また、この定義は、より少ない前方流も包含する。例えば、前方流の量は、2マイクロリットル以下に制限することができる。代替的に、特に有益な実施形態では、前方流は、約0マイクロリットルである。いずれの場合においても、前方流がないということは、実質的に液体が遠位方向に遠位端664から出ないことを意味する。
【0145】
吸引式血栓除去システム600の動作は、アナログコントローラまたはデジタルコントローラであり得るコントローラ700を介して行われる。アナログコントローラの例が、
図25〜
図46に示されている。デジタルコントローラの例を、以下にさらに詳細に説明する。デジタルコントローラの例示的な構成として、Microchip Technology社によるマイクロコントローラが挙げられる。コントローラ700は、真空弁620および通気弁650のそれぞれに(および後述する真空モータに)動作可能に接続される。コントローラ700は、真空弁620と通気弁650とを選択的に開閉する。これにより、真空弁620が開放されたときに、真空源610と管腔662内の液体カラムとが流体的に接続され、通気弁650が開放されたときに、通気液642と管腔662内の液体カラムとが流体的に接続され。これらの弁のタイミングは、コントローラ700が遠位端664における真空のレベルを変化させることができ、管腔662内の液体カラムの遠位部分が遠位端664から出ることを防止すること(すなわち実質的に前方流なし)ができるため、重要である。弁620、650の動作時に、前方流に寄与する2つの重要な作用がある。すなわち、カテーテルシステムの伸展性と、ウォーターハンマー効果である。それぞれを順番に説明する。真空弁および通気弁の例示的な構成は、
図25〜
図36および
図42〜
図46に示されている。弁に関する構成は、スプール弁、ピンチ弁、回転弁およびピントル(pintel)形状を有する回転弁を含む。
【0146】
前方流を排除するための弁のタイミングを、まず
図47に示すシステムを参照して説明する。ここで、ROARカテーテル660は、柔軟性を有する本体であり、半径方向および長手方向の両方で伸展性を有することに留意されたい。(
図47に示すように)遠位端664が血栓で栓がしてある状態にあるときに、管腔662に真空が加えられる。したがって、カテーテル660の伸展性は、カテーテルの直径の減少およびカテーテルの長さの減少を引き起こす。カテーテル660に栓がしてあると、管腔内には流れが生じない。管腔662内に大気圧を下回る圧力を有することにより、カテーテル660は、収縮して縮む(半径方向および長手方向に短くなる)。この収縮は、カテーテル内の管腔を圧迫するばねのように作用する。すなわち、これは、潜在的なエネルギーの貯蔵部である。次いで真空源が遮断され(例えば、真空弁620が閉鎖され)、通気液源640に対して通気弁650が開放されると、カテーテル660は、伸長して通気液642に対して引っ張るピストンとして作用する。さらに、通気液642は、管腔662内の流体よりも高い圧力(例えば、大気圧または患者よりも高い物理的位置によるわずかに上昇した圧力)にある。その結果、通気液642の量は、通気弁640を通ってマニホールド630内に入り、次いで、近位マニホールドコネクタアセンブリ670を通って管腔662内に入る。通気液642が流入し、カテーテル660が正常または自由な定常状態まで膨張すると、遠位端664に向けられた流体カラム内に、本明細書では圧力パルスまたは圧力波と呼ぶ推進力が生じる。換言すると、「圧力パルス」または「圧力波」は、カテーテル管腔内の流体カラムの遠位部分を、カテーテルの遠位端から遠位方向に移動させるように作用することができる流体のカラム内の推進力である。この用語は、真空弁620および通気弁650の所与のサイクルに関連しており、そのサイクルでの単一の圧力伝達に限定されるものではない。したがって、圧力パルスは、真空弁620および通気弁650の所与のサイクルにおける複数の圧力差を含むことができる。このように、特定のカテーテルシステム(カテーテルだけでなく、カテーテルに沿ったマニホールドおよび弁、およびその他の管腔も含む)の伸展性および長さに一致するように真空弁および通気弁のタイミングを調整することにより、そのカテーテルに対してROAR効果を得ることができる。特に、通気弁650のタイミングを調整することによって、ROAR効果を得て、各サイクルの間に遠位端から外への遠位部分の前方流を防止することができる。
【0147】
先行技術の吸引式血栓除去システムは、周期的に真空弁を開閉する。真空弁が開放されて、流体カラムに真空が加えられている間、流体は、カテーテルの遠位端に迅速に流れる。真空弁が閉鎖されると、管腔を通って近位から押し寄せてくる流体は、閉鎖された真空弁に当たって止まる。これにより、真空弁で圧力が高まり、跳ね返り波を生じさせる。跳ね返り波は、遠位端に向けて遠位方向に推進力を運び、カテーテルの遠位端から遠位方向に所定の量の流体を排出する。この作用は、ウォーターハンマー効果と呼ばれる。先行技術では、その真空弁を繰り返し開閉する。このように、それらの装置の遠位開口部から、所定の量の液体が周期的に排出される。遠位端から流体が排出され、医師が遠位端を血栓に接近させると、流体は、血栓をさらに遠位方向に移動させるか、血栓を破壊して、破壊された破片を動脈圧によってさらに下流、例えば、より小さい脳動脈血管内に押し込ませる場合があるので、上記の前方流の現象は、血栓除去の分野では望ましくない。したがって、吸引式血栓除去システムにおいて、遠位方向に向けられた圧力パルスが吸引カテーテルの遠位端に到達することを完全に防止することが望ましい。本明細書に記載するように、システム600は、前方流を引き起こすことなく最大の効果を達成するように調整されたウォーターハンマー効果に対する応答を有する。この応答によって、血栓を最も効果的に接触および破壊することができる。
【0148】
近位および遠位圧力測定装置690、692が、
図47に示されている。例示的な本実施形態では、近位圧力測定装置690は、近位マニホールドコネクタアセンブリ670および/または流体カラムの近位部分に隣接するかその中に設けられ、遠位圧力測定装置692は、遠位端664または流体カラムの遠位部分に隣接するかその中に設けられる。測定装置690、692の例示的な実施形態として、Transducers Direct社による圧力変換器が挙げられる。
【0149】
マニホールド630にあるまたはそれに隣接し、遠位端664に隣接するカテーテル660の流体カラム内の測定は、圧力は最初にマニホールド630で圧力が上昇し、その後、遠位端664で圧力が上昇する圧力パルスの移動の時間遅延を明らかにする。時間遅延およびセンサ間の距離を知ることにより、波の速度を計算することができる。最も遠位側のセンサからカテーテル660の先端までの距離を知ることにより、波が遠位側の先端まで移動するのにかかる時間を計算することができる。この情報は、圧力パルスを停止させるために弁のタイミングを適切合わせるように、コントローラによって使用され得る。圧力パルスが遠位端664まで移動することが許容される場合、管腔662内の流体カラムの遠位部分は、遠位端664を出て、例えば前方流となる。この間に、遠位端664が血栓4で栓がされている場合、その圧力パルスは、血栓4を遠位方向に排出することができる。代替的に、遠位端664が血栓4に接近している場合、遠位端664から出る任意の圧力パルスは、血栓4をさらに遠位方向に移動させることができる。カテーテル660の遠位端664で捕捉されて栓がされる前または栓をした後の遠位方向への血栓4の移動は、回避されるべきである。したがって、圧力パルスが遠位方向に遠位端664のさらに下流または遠位端664から外れた位置に血栓4を移動させる可能性がある点に到達する前に、圧力パルスを反転または停止する必要がある。このような反転は、本明細書では、圧力パルスを「抑える」(quelling)と称する。
【0150】
ROAR効果による吸引式血栓除去システム600の動作は、先行技術のカテーテルと同じ結果をもたらさない。遠位端664が妨げられていない状態で動作すると、真空弁620および通気弁650は、周期的に開閉される。真空弁620が開放されて流体カラムに真空を加えている間、流体は、カテーテル660の遠位端664内、および真空源610の容器内に迅速に流入する。真空弁620が閉鎖されると、流れが突然停止して、真空弁620の閉鎖によるウォーターハンマー効果により、上述したような圧力波を生じさせる。コントローラ700は、遠位端664が血管系に対して開放されている場合でも、ROAR効果が生じるように真空弁620および通気弁650を制御するようにタイミングを合わせる。これにより、血栓除去手術の間に前方流が実質的に生じないように、吸引式血栓除去システム600内の任意の遠位側に向けられた圧力パルスが抑えられる。実験により、遠位端664における液体の正味の流れは、近位方向で正のままである。換言すると、栓がされた状態またはされていない状態でROAR効果を有するように動作する間、液体は、遠位端664を通って真空源に向けて移動するか(栓がされていない場合)、または全く流れないか(栓がされていない場合)のいずれかである。両方の状況において、流体は、遠位端610を実質的に出ない。
【0151】
ROAR効果を得るために、遠位端における真空のレベルの変化は、少なくとも約15inHgであり、さらに、少なくとも約20inHgであり、特に、少なくとも約25inHgである。遠位端における真空のレベルが低から高へ、または高から低へと変化する時間は、約50ms以下であり、さらに、約30ms以下であり、特に、約20ms以下である。この変化は、最大圧力差分とも呼ばれる。これらの変数の様々な組み合わせには、約15inHgの真空のレベルの変化と50ms以下の時間、または約20inHgの真空のレベルの変化と30ms以下の時間、または約25inHgの真空のレベルの変化と20ms以下の時間が含まれる。
【0152】
図48のグラフを参照すると、例示的な実施形態では、ROARカテーテル660は、すべての圧力パルスを抑えるように動作する。真空弁620の状態は、グラフの上部の波形で示され、通気弁650の状態は、グラフの下部の波形で示されている。例示的な本実施形態では、繰り返しサイクルは、弁の開放が開始される時間0から開始する。時間1では、真空弁620は完全に開放され、通気弁650は閉鎖される。真空は、真空弁620の閉鎖が開始される時間2まで継続する。真空弁620の閉鎖は、瞬間的ではない。したがって、真空弁の波形が鋭角に減少し、真空弁620は、時間3で完全に閉鎖される。真空弁620が閉鎖された後、時間4で、通気弁650の開放を開始する。この真空弁620の閉鎖は、ウォーターハンマーを開始する。真空弁620の閉鎖およびその後の通気弁650の開放によって、通気液642がマニホールド630(および場合によっては管腔662の近位端)に入る。また、真空源610が生成した負の圧力から、通気液源640内に存在する比較的大きい圧力(例えば、動脈性)への圧力変化によって、伸展性カテーテル660内に蓄積された潜在エネルギーが放出される。このような事象の組み合わせは、管腔662を通って遠位端に向けて遠位方向に移動させる、時間2での圧力パルスを開始する。弁620、650にそれ以上の変化がない場合、カラム内の液体は、遠位端664から排出され、前方流となる。ただし、
図48に示すように、真空オン時間と比較して比較的短い通気開放時間の後、通気弁650は閉鎖され(時間7で)、その後まもなく、真空弁620は開放される。すなわち、圧力波がカテーテル660の管腔662の長さに沿って遠位方向に移動されている間、通気液642をオフするように通気弁650が閉鎖され、真空を再びオンするように真空弁620が開放されると(繰り返し波形の時間0)、これらの弁620、650の切り替えによって、通気液642がマニホールド630内に入るのをやめて、マニホールド630内および管腔662内の流体が近位方向に真空源610の収集容器612内に移動される(例えば
図55参照)。このようにして、逆推進力が流体カラムに加えられる。この逆推進力は、管腔662内の流体カラムの遠位部分が遠位端664から出る地点に圧力パルスが到達するのを防止するのに十分に大きい。これにより、圧力パルスを抑えて、前方流を防止することができる。したがって、ROAR効果は、遠位端における圧力のレベルを、生理学的圧力以下のレベルに保持する。
図48に示す2つの波形の領域690は、圧力パルスが抑えられた時間を含む。波形は周期的に繰り返されて、遠位部分がカテーテル660の遠位端664から出ることなく、遠位そして近位の推進力パルスが継続される。完全真空に近い真空圧からほぼゼロに近い真空圧へのカテーテル先端の圧力の急激な変化が、ROAR効果である。ROAR効果の下では、遠位端664の圧力は、動脈圧のすぐ近くまで上昇することができ、真空の再確立によって、その上昇が反転される。これにより、吸引式血栓除去システム600は、血栓4に遠位運動を加えることなく血栓4に接近し、流体カラム内の圧力変化に起因する血栓4の遠位運動なしに、捕捉された血栓4を遠位端664で保持することができる。
【0153】
真空弁620および通気弁650を利用してカテーテル660でROAR効果を生じさせる別の例示的な実施形態が、
図49の波形に示されている。これらの波形は、約1Hz〜約250Hzの範囲、さらに約2Hz〜約20Hzの範囲、さらに約4Hz〜約12Hzの範囲、特に約6Hz〜約8Hzの範囲の例示的な速度で繰り返される。時間1では、真空弁620は開/オン位置にあり、通気弁650は閉/オフ位置にある。時間2の付近で、真空弁620は閉/オフ位置への移行を開始する。時間3の付近で、真空弁620が閉鎖/オフされる。時間4の付近で、通気弁650は開放され始める。時間5の付近で、通気弁650は完全に開放される。時間6まで、通気弁650は開放され、真空弁620は閉鎖され、時間6で、通気弁650は閉鎖され始める。時間7の付近で、通気弁650は閉鎖される。真空弁620は、時間8で開放され始め、時間9の付近では部分的に開放されている。真空弁620は、グラフの曲線の下側の範囲に近いときに完全に開放される。このプロセスは、周期的に繰り返され、この例では10Hzで繰り返される。
【0154】
本明細書では静的吸引と呼ばれるものにおいて、カテーテル660の遠位端664は、カテーテル660に吸引が加えられている間、血栓4に対して押し付けられる。カテーテル660内の低圧によって、カテーテル660の内径の面積に乗算された血栓4全体の圧力差に等しい力が、血栓4に対して生じる。この力が、血栓4を完全に回収するために、血栓4をカテーテル660の遠位端664に「固着」させる。
【0155】
ROARサイクルでは、弁を迅速に開放することにより、吸引が血栓に加えられて、真空圧の急激な上昇を引き起こす。次いで、吸引源はオフされ、通気液源が迅速に開放される。これにより、カテーテル660内に存在する真空が解放されて、血栓に加えられる圧力が再び迅速に変化する。次いで、通気弁650は迅速に閉鎖され、真空弁620は迅速に開放される。このサイクルは、1秒間に複数回繰り返される。例えば、繰り返しの期間は、約2Hz〜約16Hzの範囲、特に約8Hz〜約12Hzの範囲である。真空弁620が開放されたときの血栓4全体における圧力の急激な低下は、血栓4をカテーテル660の管腔662内に加速させる。通気弁650が開放されたときに真空圧が解放されると、血栓4は、カテーテル660から跳ね返る。真空を再度加えると、血栓4は、再びカテーテル660に向けて加速する。これらの加速および跳ね返りは、血栓4の分散した質量を振動させる。この振動による、分散した質量の大きい内部加速は、血栓4に、血栓4の引張強度を超えるのに十分に高い内部力を生じさせ、血栓4を決壊させる。次いで、血栓4の破片は、カテーテル660を通って真空収集容器612内に至るまで吸引される。血栓内の力を最大化するために、血栓全体における圧力差、およびこの圧力差が加えられる速度が、最大化される。この力が血栓に加えられる速度が速いほど、血栓の分散した質量の内部加速度が大きくなる。したがって、血栓内の内部力が高くなり、血栓が破れる可能性が高くなる。上下方向の圧力変化の時間は、いずれも約20msである。例えば、8Hzでは、各サイクルは125msであり、12Hzでは、各サイクルは83msである。周期の周波数が大きいほど、カテーテルが血栓と相互作用するこれらの衝撃の数が多くなる。したがって、より高い周波数を使用することがより好ましいが、これは各サイクル内で十分に効果的な圧力差分を引き起こすのに十分な時間がない場合までに限られる。
【0156】
ROAR効果を有するカテーテル660の動作中に、近位および遠位圧力測定装置690、692を用いて圧力パルスの測定を実施することができる。
図50のグラフは、
図49の例示的な10Hzパルスの間、これらの装置690、692によって感知された圧力を示している(
図51は、
図49と
図50のグラフを互いに重ね合わせて示している)。近位圧力測定装置690によって感知された圧力は、低い圧力値(約−13psi)から始まり、遠位圧力測定装置692によって感知された圧力は、高い圧力値(約−11psi)から始まる。これは、部分的に栓がされたシステムを表している。ここで、カテーテルに対する血栓の模擬物質の不完全な密閉によって、遠位測定でわずかに低い圧力が生じて、ある程度の流れを生じさせる。時間4で、真空はオフされ、通気弁650は開放され始める。したがって、管腔662内の真空が解放され始める。これは、近位圧力測定装置690における圧力が上昇し始めることを意味し、これは、時間4’付近から始まる上昇曲線によって証明される。その後、圧力の変化が遠位方向にカテーテル660を伝搬すると、遠位圧力測定装置692における圧力が増加し始める。これは、時間4’付近から始まる上昇曲線によって証明される。時間6で、通気弁650は閉鎖され始める。したがって、これ以上の通気液642は、管腔662内の流体カラムに追加または増強するためにマニホールド630に入らない。それにもかかわらず、近位圧力測定装置690における圧力は、真空(負の圧力)が完全に除去されるか、または通気液642の圧力によって補償されるので、上昇し続ける。近位圧力測定装置690における圧力はピークを迎える。
図50に示すように、ピーク時の圧力は、約2psiの正の圧力である。これは、吸引式血栓除去システム600が積極的に流体または管腔662に正の圧力をかけていないにもかかわらず起こる。むしろ、0.0psi超であるこのレベルの圧力は、管腔662内を移動する流体の推進力に起因する。したがって、管腔662内の正の圧力は許容されるが、遠位端に到達する前に抑制される必要がある。時間8で、通気弁650は既に閉鎖され、真空弁620は、近位圧力測定装置690におけるピーク圧力の時点の付近で開放され始める。真空弁620の開放は、管腔662内の圧力を低下させ、近位圧力測定装置690の圧力がそれ以上高くなるのを停止させる(このレベルで停止されない場合、遠位圧力測定装置692の圧力が0.0psi超である可能性があり、これは、遠位端から遠位方向の前方流が生じることを意味する)。圧力パルスの抑制は、遠位圧力測定装置692の圧力トラックの検証によって証明される。
図50のグラフに示すように、遠位圧力測定装置692での圧力上昇は、近位圧力測定装置690での圧力上昇に続く。時間8では、遠位圧力測定装置692で記録された圧力は、まだ負の値(約−5psi)であるが、上昇している。時間9までのおよびそれを過ぎた(真空弁620が完全に開放された時点での)真空の継続的な動作では、遠位圧力測定装置692によって遠位端664で測定されたピーク圧力は、0.0psi(水平破線)未満である。これは、圧力パルスが抑えられ、遠位部分からの液体が遠位端664を出ないことを意味する。換言すると、前方流が実質的にないことを意味する。ROAR効果により、血栓の模擬物質はカテーテルに密封されたままであり、システム600は、両方の測定において−13psiの完全真空を達成することができる。遠位圧力は、ほぼゼロになるまで解放されるが、その後すぐに完全な−13psiの真空に到達するので、図に示す圧力差分は、約13psiである。
【0157】
本明細書に記載されるように、真空と通気との間のサイクル中に、カテーテル660の遠位端664からの流れを強制することができる。真空と通気との間の迅速な切り替えは、流体カラム内に前方流の圧力パルスを生じさせる。これは、管理されていない場合には、カテーテル660の遠位端664から流体カラムを強制的に外に出す。波は、媒体を介して流体カラム内を非常に高速で移動する。この速度は、主に、流体カラムの密度、システムの伸展性(体積弾性係数)、および流体カラムの長さの関数である。これらの波が流体カラムをカテーテルから強制的に押し出すのを防止するために、システムを全体として考慮し、流体カラムを流動させる力が制御されるように、弁の切り替えサイクルのパラメータが設定される。流体カラムがカテーテル660の遠位端664から出ないようにするには、カテーテル660、カテーテル660に接続される任意の延長管、コントローラ700、および弁シーケンスが、システムとして調整されることが重要である。
【0158】
調整プロセスの目的は、少なくとも2つある。それは、ROAR動作中に生じる圧力波が前方流を引き起こすのを防止することと、ROAR効果を最適化することである。システムの調整には、流体カラムの長さが重要である。圧力波は、流体カラム内で迅速に移動する。波がカテーテルの遠位先端に到達するまでの時間は、この速度と流体カラムの長さの関数である。速度は、カラム内の流体の密度、ならびにカテーテルおよび延長部の体積弾性係数の関数である。体積弾性係数は、システムの伸展性を表す。これは、カテーテルおよび延長管の半径方向および長手方向の柔軟性の両方を示す。流体カラムの密度は、流体カラム内に気体(空気)の気泡がある場合のように、大きく変化しない限り、体積弾性係数ほど重要な変数ではない。したがって、ROAR動作を実施する前に、システムからすべての空気をパージすることが重要である。所与のカテーテルおよび延長管の構成では、体積弾性係数およびシステムの長さは固定されている。速度を変化させるため、すなわち圧力波のタイミングを調整するために、伸展性をシステムに追加することができる。管の柔軟な長さは、例えば、比較的剛性の高いカテーテルおよび延長管と整列させることで、追加することができる。この柔軟な長さを有する管は、ROAR動作中に圧力パルスが生じると膨張する。これは、システムの体積弾性係数を減少させ、速度を低下させて、圧力波を遅くし、カテーテルの遠位先端へのその通過時間を増加させる。伸展性は、圧力波がピストンを変位させ、システムの伸展性を増加させるように、カテーテル管腔と連通するボア内にばねで支持されたピストンを含むなど、他の方法でも追加することができる。伸展性と弁のタイミングを調整することにより、カテーテルと延長ラインの多くの異なる組み合わせに対してシステムを調整することができる。慎重に調整することにより、共振状態を得ることができる。カテーテル内の吸引および解放パルスが血栓の固有振動数に一致するように調整されている場合、強化されたROAR効果を得ることができる。
【0159】
調整は、静的または動的に行われ得る。静的に調整されたシステムは、カテーテル660(およびカテーテル660に接続する任意の延長管)が、固定された弁シーケンス(例えば、
図29および
図30に示す例示的な構成)でコントローラ700に嵌合されるように調整される。コントローラ700は、カテーテル660が取り付けられたときにカテーテル660の存在を感知し、そのコントローラ700の同調されたシーケンスに対して正しいものであることを検証する。正しいカテーテルが感知されない場合、同調されたシーケンスは開始されない。その一方で、動的に調整されたシステムは、動作中に調整される。動作に先立って、カテーテル660内に一連の圧力パルスを生成する弁シーケンスが開始される。カテーテル660および/または延長管上のひずみゲージなどのセンサは、これらのパルスを検出し、動作のためにコントローラ700のパラメータを調整して、ROAR効果を生じさせるために使用される。カテーテル660は、その長さなどの重要なデータを記憶して、コントローラ700に送信する。この調整を使用することにより、ROAR動作中に遠位端664からの流体カラムの流れを引き起こすことなく、制限内の任意のカテーテルを使用することができる。代替的に、カテーテル660および延長部を製造業者で調整することができ、弁タイミングの仕様をカテーテル660によってコントローラ700に送信することができる。
【0160】
例示的な実施形態では、弁シーケンスは、以下の通りである:
・ 真空弁620が閉鎖され、
・ 所定の時間が経過した後に通気弁650が開放され、
・ 所定の時間が経過した後に通気弁650が閉鎖され、
・ 所定の時間が経過した後に真空弁620が開放され、且つ
・ 所定の時間が経過した後にこのシーケンスが繰り返される。
【0161】
通気弁650が開放されると、少量の通気液642がシステム内に入り、圧力パルスを生じさせる。パルスがカテーテル660の遠位端664に到達する前に、通気弁650が閉鎖されず、且つ真空弁620が開放されない場合、流体カラムは、前方流としてカテーテル660の遠位端664から出ることになる。流体カラムがカテーテル660から出ることを防止するには、圧力パルスがカテーテル全体をわたるのにかかるこの時間に、システムを調整する必要がある。また、流動状態で真空弁620を閉鎖することによる圧力パルスは、圧力上昇を引き起こす。これは、前方流を引き起こす前に通気弁650を開放して抑える必要がある。
【0162】
調整は、真空サイクルおよび通気サイクルのための適切な時間を選択することによって達成される。これに関して、真空サイクルは、Vacon時間622、Vacon期間624、Vacoff時間626、およびVacoff期間628を含み、通気サイクルは、Vnton時間652、Vnton期間654、Vntoff時間656、およびVntoff期間658を含む。ここで、
図52を参照して調整を説明する。サイクル時間は、サイクル全体の繰り返し期間である。8Hzでは、サイクル時間は125msであり、12Hzでは、サイクル時間は83.33msである。サイクル時間は、Vacon期間624と、Vnton期間654と、真空弁620および通気弁650の両方がオフになるサイクル内の第1および第2の時間と、を加算することによって決定され、「二重オフ」または「二重閉鎖」時間または状態と呼ばれる。サイクル時間は、特定のカテーテル660のダイナミクスまたは共振によって最適化される。Vacon期間624は、システムが完全真空までポンプダウンするのに十分な長さである必要がある。特定のサイクルの間の真空オンが長くなるほど、血栓4の吸引は良好になる。本実施形態では、真空弁のみを開放することを「真空のみの状態」と呼ぶ。真空がオフされてから(真空弁620が閉鎖されてから)通気が開始されるまで(通気弁650が開放されるまで)の時間である第1の二重オフ時間は、前方流が生じる程度に影響を及ぼす。この時間が短いので、そのような前方流は、フローバープ(flow burping)と呼ばれる。実験により、0.071”内径のカテーテル660の例示的な実施形態では、第1の二重オフ時間が約30msよりも大きいときにフローバープが生じ、二重オフ時間が長いほどフローバープが大きくなる。ROAR動作中、第1の二重オフ時間は約10msである。これは、フローバープ閾値よりもかなり小さく、実質的にすべての前方流が抑えられることを意味する。Vnton期間654は、栓をしている血栓4が前方流から落とされる前に生じる最大時間によって決定される。Vnton期間654と第2の二重オフ時間との間の比は、最長のVnton時間654と第1の二重オフ時間の最小値との間の妥協点である。本実施形態では、通気弁のみを開放することを「通気のみの状態」と呼ぶ。最後に、第2の二重オフ時間に関して、真空弁620が開放されて真空が再開される前に、通気弁650がオフ(完全に閉鎖)される。
【0163】
図53の弁位置グラフを参照して、計算をさらに説明する。グラフの左側のVacon時間622から開始して、通気弁650が閉鎖され、真空弁620が開放される。Vacon期間624は、システム600が完全真空までポンプダウンするのに十分な長さである(約10ms〜約50msの範囲、特に約10ms〜約30msの範囲)。Vacon期間624が長いほど近位方向の流量が増加するため、カテーテル660は、より良好に機能する。血栓4に対するより多くのヒット/秒についてより高い周波数を達成することに基づく妥協点がある。例示的な実施形態では、Vacon時間622からVacoff時間626までの時間に基づいて計算されるVacon期間624は、サイクル時間629の約40%〜約60%の範囲である。上述したように、サイクル時間629は、Vacon期間624と、第1および第2の二重オフ時間625、627と、Vnton期間654との和によって決定される最小値である。Vnton期間654は、前方流を引き起こすことなく通気液で管腔を満たすのに十分短い(約10ms〜約50msの範囲、特に約10ms〜約30msの範囲)。第1の二重オフ時間625は、オープンフローバープが生じた時期に基づいて設定される。第1の二重オフ時間625の最大値は、Vacoff時間626からVnton時間652までの期間、またはVacoff時間626からVacon時間622’までの期間のいずれか短い方に適用される。これらの値のそれぞれは、特定のカテーテル660および延長セットのダイナミクス/共振/伸展性/長さによって最適化される。
【0164】
このことから、いくつかの観察が可能である。通気が開放されると、圧力パルスが生じる。圧力パルスが遠位端に到達する前に圧力パルスを停止することが重要である。遠位端に到達する前に圧力パルスを停止しないと、カテーテル660は、前方流を受けることになる。圧力パルスを停止させるには、通気を閉鎖し、および/または通気の前に真空がオフであった場合に真空を再びオンする必要がある。真空がオンのままであれば、通気をオフする必要がある。あるいは、真空がオンのままでなければ、通気をオフし、圧力パルスが遠位端664に到達する前に真空をオンに戻す必要がある。換言すると、圧力パルスが遠位端664に到達する前に通気を閉鎖し、真空をオンする必要がある。したがって、通気弁650が開放されたときに単に真空弁620を開放するという条件は、通気と真空との間の抵抗が低いために、圧力パルスを抑えるのに十分では可能性がある。通気は、真空を抑え込むので、真空は、カテーテルの長さにわたって効果を持つことができない。圧力パルスがカテーテル660の先端まで伝搬して前方流を引き起こすのにかかる時間は、通気弁650が開放されている時間を画定するために使用される。通気が開放されている時間は、圧力パルスが遠位端664に伝搬するのにかかる時間よりも短くなるように選択される。
【0165】
図55に模式的に示す例示的な実施形態では、ROARカテーテル660を除く吸引式血栓除去システム600のすべての部分が、真空源610の本体601に組み込まれている。特に、真空源610は、本体601と、収集容器612と、真空モータ614と、を備える。真空モータ614は、収集容器612の出口に流体的に接続され、収集容器612の入口は、マニホールド630の真空側に流体的に接続される。したがって、真空モータ614によって生成された真空は、収集容器612内に真空を加えて、マニホールド630から収集容器612内に流体を引き込むが、真空モータ614には引き込まない。マニホールド630に存在する真空弁620は、マニホールド630で受け取った流体が収集容器612内に入るのを防止して、真空モータ614によって生成された真空からマニホールド630を閉鎖する。通気液642を含む通気液貯蔵部640は、マニホールド630の通気側に流体的に接続される。マニホールド630に存在する通気弁650は、通気液642からマニホールド630を閉鎖し、マニホールド630内の液体が通気液貯蔵部640に入ることを防止する(マニホールド630内の圧力は、典型的には貯蔵部640内の圧力よりも低いので、マニホールド630からの液体は、典型的には貯蔵部640に入らない)。要約すると、マニホールド630のカテーテル入口ポート631は、真空弁620を介して収集容器612に流体的に接続され、通気弁650を介して貯蔵部640内の通気液642に流体的に接続される。カテーテル入口ポート631は、近位マニホールドコネクタアセンブリ670の下流端に流体的に接続される。近位マニホールドコネクタアセンブリ670の上流端は、カテーテル660の近位端に流体的に接続される。
【0166】
ここで、
図54および
図55を参照して、カテーテル660と吸引式血栓除去システム600との直接的な接続を説明する。近位マニホールドコネクタアセンブリ670は、ROARカテーテル660の近位端666とマニホールド630とを接続する。
図54に示す例示的な実施形態では、近位マニホールドコネクタアセンブリ670は、マニホールド630(破線)に取り外し可能にまたは一体的に接続された雄型ルアーロック継手672を備える。アセンブリ670は、ROAR識別(ID)サブアセンブリ680を含む。
図54に示すIDサブアセンブリ680の例示的な実施形態は、マニホールド630に接続された誘導性感知装置またはセンサ682を備える。誘導性センサ682は、近位マニホールドコネクタアセンブリ670内に存在するか、またはそれと一体化している誘導性感知部分684の存在を検出する。マニホールド630が様々な異なるROARカテーテル660と共に使用され得る例示的な実施形態では、ROARカテーテルの各タイプは、固有の誘導性感知部分684を有し、マニホールド630の誘導性センサ682は、取り付けられるROARカテーテル660のタイプを決定することができる。したがって、コントローラ700へのROARカテーテル660のタイプの適切な連通を用いて、コントローラ700は、ROARカテーテル660をその固有の構成に従って動作させることができる。これにより、使用される異なるROARカテーテル660の各々についてROAR効果を生じさせることができる。センサ682が感知部分684を検出しないまま、吸引式血栓除去システム600が操作されると、コントローラ700は、吸引式血栓除去システム600のROAR動作を自動的に防止し、その接続されたカテーテルは、標準的な真空カテーテルとしてのみ動作される。
【0167】
ここで、
図56を参照して、カテーテル660と吸引式血栓除去システム600との間接的な接続を説明する。近位マニホールドコネクタアセンブリ670は、
図54に示すように、単に継手672であってもよく、カテーテル入口ポート631と吸引式血栓除去システム600と共に使用される任意のカテーテル660(標準またはROAR)との間の別個の延長ライン674であってもよく、またはそれを含んでもよい。延長ライン674の例示的な実施形態では、延長ライン674は、カテーテル600を介して吸引するための管腔延長部を備えると同時に、吸引式血栓除去システム600を操作するためのシステム制御部も備える。これらの制御部は、例えば、真空モータ614のオン/オフ、およびROAR動作のオン(例えば、これら各々のための1つのボタン、または真空のためのオン/オフスイッチ、およびROARのためのプッシュスタートボタン)を含む。
図56に示すように、延長ライン674は、吸引式血栓除去システム600と共に使用され得る標準カテーテルおよびROARカテーテル600の両方に接続可能な遠位端を有する。標準カテーテルが延長ライン674に接続されると、吸引式血栓除去システム660は、標準的な真空ポンプとしてのみ機能し、ROARは無効化される。ROARカテーテル660が延長ライン674に接続されると、ROARカテーテル660および延長ライン674内の識別サブアセンブリは、どのROARカテーテル660およびどの延長ライン674が接続されているかをシステム600に通知する。
【0168】
真空弁620および通気弁650のデジタル制御を有する例示的な実施形態では、コントローラ700内のプロセッサおよびメモリは、識別データを記憶し、特定のROARカテーテルが(例えば、異なる長さ、異なる外径、異なる材料で)識別されると、コントローラ700は、弁シーケンスをロードし、真空源610に接続された特定のカテーテルの特性に従って真空弁620および通気弁650を作動させる。例示的な実施形態では、識別データは、現在存在するすべてのROARカテーテル660に対して、製造業者で事前にプログラムされ得る。このように、ROARカテーテル660とシステム600とを直接接続すると、コントローラ700は、カテーテル660の識別情報以外の情報を受信することなく動作することができる。ROARカテーテル660とコントローラ700との間でROAR延長ライン674(すなわち、ROARと互換性があり、接続されるROARカテーテル660の拡張性をシステム600に通知することができる延長ライン)が使用される場合、ROAR延長ライン674との接続によって、システム600が、様々なROARカテーテル660のうちのどのROARカテーテル660がROAR延長ライン674の遠位端に接続されたかを検出し、ROAR延長ライン674を用いて、その特定のROARカテーテル660に適した所定の方法でROARを動作させることが可能になるため、コントローラ700は、カテーテル660のアイデンティティおよび中間延長ライン674のアイデンティティ以外の情報を受信することなく動作することができる。RFIDまたは近距離無線通信(NFC)の場合、ROARカテーテル660に埋め込まれたチップは、そのROARカテーテル660によって要求される特定の弁タイミングでプログラムされる。コントローラ700は、これらの値を読み取り、そのカテーテル660に対して適切に機能する。これにより、異なる調整を必要とする新世代のカテーテルとの将来の互換性が保証され、その調整は、コントローラ700が製造業者でプログラムされた時点では知られていない。使用されるカテーテルがROARカテーテル660でない場合、遠位端における前方流が生じる可能性が高いため、そのカテーテルでROARを使用すべきではない。したがって、システム600は、非ROARカテーテルがROAR延長ライン674の遠位端に接続される場合、またはシステム600に直接接続される場合、または非ROAR延長ライン674の遠位端に接続される場合、ROAR効果の使用を自動的に防止する。
【0169】
識別サブアセンブリは、ROARカテーテル660の少なくとも近位端に存在する様々な手段(例えば、ダラスセミコンダクタの暗号化チップのような誘導性感知システム682、684または1線検出システム、RFID、BLE(Bluetooth Low Energy)、金属製タッチパッド、抵抗器に基づく単純な(例えば、カテーテルおよび延長部用に直列に配置される)受動設計を含む。サブアセンブリでは、2つ以上の電気接点が設けられ得る。例えば、電源、接地およびホールセンサを用いた信号を含む3つの接点が設けられ得る。2接点構成では、抵抗器および機械的スイッチを用いた2線式構成が設けられ得る。2つの接点間の抵抗を測定し、その抵抗に応じてスイッチの状態を検出することができる。電源と信号を1本のライン(さらに接地ライン)に結合して、例えば上述したダラスチップを用いた「1線式」接続を形成することができる。また、識別サブアセンブリは、(ROARカテーテル660の近位端の識別サブアセンブリと接触するように)延長ライン674の遠位接続部(例えば、ルアー継手)に存在することができ、延長ライン674を通って、近位マニホールドコネクタアセンブリ670などの真空源610との通信接続部まで延在することができる。したがって、吸引式血栓除去システム600は、標準カテーテル(すなわち、ROARではない)と区別されるように、ROARカテーテル660が接続されたときに感知/検出する能力を有する。ROARカテーテル660の接続は、ROAR機能の使用を可能にし、非ROARカテーテルの接続(または、例えば回転式止血弁(RHV)の側方ポートへの接続)は、ROAR機能の使用を無効にし、通常の吸引のみが可能である。識別サブアセンブリがROARカテーテル660の電気接点を含む場合、真空モータ614への導電接続は、ROARカテーテル660の1つまたは複数のコイルをこれらの導電体の1つとして利用することができる。代替的に、2つ以上の導電体をROARカテーテル660内に巻き付けることができる。代替的にまたは追加的に、導電体をROARカテーテル660の外側に接着することができる。
【0170】
吸引を実行するための動作パラメータをシステム600が既に記憶しており、ROARカテーテル660および/または延長ライン674が接続されたときにそれらのパラメータを自動的に使用する例示的な実施形態、または吸引を実行するための動作パラメータをROARカテーテル660または延長ライン674が提供する例示的な実施形態に加えて、コントローラ内の選択可能なプログラムをユーザに提供することができる。例示的な実施形態では、これらの選択可能なプログラムは、コントローラ700が製造される場所でプログラムされ得る。ユーザは、特定のROARカテーテル660および/または使用される延長ライン674を、圧力、遅延、タイミングなどの動作パラメータにロードするコードと関連する取扱説明書を有する。これらの動作パラメータは、取扱説明書ではなく、選択可能なプログラムの代わりに、例えば、IFU(Instructions For Use)、またはシステム600、ROARカテーテル660または延長ライン674のパッケージの情報を読み取ることによって、ユーザが手動で入力することができる。また、ユーザが特定の動作方法(例えば、特定のタイミングを増加させる)を所望する場合、ユーザは、システム600上のユーザインタフェースを介してパラメータを直接入力することができる。別の例示的な実施形態では、コード供給部(例えば、QRコード、バーコードまたはRFIDチップ)が、1つまたは複数の構成要素のパッケージ上に設けられ得る。ユーザは、読み取りのためにそのコード供給部をコントローラに提示する。これに関連して、システム600は、バーコードリーダおよび/またはQRコードリーダおよび/またはRFID通信装置を備える。別の例示的な実施形態では、システム600上のディスプレイを用いて、ユーザにパラメータを画面で提示することができる。これらのパラメータは、ユーザによって固定可能または変更可能である。換言すると、ユーザは、示されたパラメータを承認したり変更したりすることができる。特に安価な実施形態では、ROARカテーテル660または延長ライン674と共に供給されるパンチカード上にパラメータを「記憶」することができる。この場合、システム600は、パンチカードリーダーを有す。本実施形態では、ユーザが、安価な(例えば、手術室内に存在する液体から保護するカバーが設けられた)カードをカードリーダに挿入し、コントローラ700は、カード上のパラメータを利用するか、またはカード上のコードを利用する。このコードは、記憶されたパラメータのセットに関連付けられる。
【0171】
これらのすべての実施形態は、操作者に代替プログラムまたはパラメータの選択肢を提示することができる。代替的に、システム600は、個別に利用されるパラメータをディスプレイ画面上にリストアップし、操作者は、それらのパラメータを選択、または提供されたパラメータを変更することができる。同様に、操作者は、パラメータ/プログラムをコントローラ700内の空のメモリに記憶することができる。カテーテル、延長ライン、カード、コードなどによって提供される記憶された情報は、いずれかのROARパラメータであり得る。または代替的に、それらの情報は、カテーテルおよび延長ラインの特性であり得る。これにより、コントローラ700は、カテーテル先端で所定のROAR波形を提供するように補償を行うことができる。換言すると、記憶されたROARプログラムを提供するのではなく、カテーテルおよび延長ラインは、単にコントローラ700に情報を与えることができ、これにより、所定のROAR圧力/時間プロファイルを得るために、各カテーテル/延長ラインの組み合わせについてタイミングおよび圧力を修正することができる。補償パラメータまたは実際の時間/圧力パラメータのいずれかを記憶することにより、コントローラ700は、まだ利用できない将来のカテーテルおよび延長ラインを許容することができる。さらに、システム600の製造業者によって提供されていないカテーテルでのシステム600の使用を防止するために、ならびに/またはカテーテルおよび/または延長部がシステム600によってサポートされていないことを操作者が知ることができるように、警告またはアラーム状態を操作者に提示するために、チップ、抵抗器、RFIDまたはBLEが使用され得る。
【0172】
近位マニホールドコネクタアセンブリ670の例示的な実施形態は、
図56に示す遠隔制御機器678を有するシステム制御ボード676を有する延長ライン674を備える。遠隔制御機器678の例示的な実施形態は、長手方向の位置に基づいて真空をオンまたはオフする機械的なスライドスイッチである。これは、ROAR動作のためのボタンを有する2ポジションスイッチであり得る。代替的に、3ポジションスイッチを設けることもできる。前方位置では真空はオフ、中間位置では真空はオン、後方位置ではROAR動作が行われる。リモートスイッチが接続されると、ポンプ上の制御ボタンはすべてオフになる。ここで、ポンプには、「緊急オフ」スイッチが設けられ得る。これにより、ユーザは、遠隔制御機器の動作に関係なく、必要に応じてポンプをオフすることができる。遠隔制御機器678および/または本体601上には、LEDが設けられ得る。これらのLEDは、例えば赤=オフ、緑=真空オン、緑点滅=ROAR、赤点滅=エラー、および青=通気/パージであるように設けられ得る。例示的な実施形態では、機械的冗長ピンチ弁がカテーテルに対して存在しており、これが作動されたときに、カテーテルの管腔を挟んで閉鎖する。例示的な実施形態では、ROARカテーテル660に接続された近位マニホールドコネクタアセンブリ670の遠位端は、ROARカテーテル660上の別のルアーロック部分に接続するルアーロック部分を備える。様々な例示的な実施形態では、スイッチは、パッシブ(例えば、単純な機械的スイッチ)であるか、アクティブスイッチ(例えば、容量性、圧力、磁気)である。このような場合、スイッチは、延長ライン674を介してワイヤによって給電される。代替実施形態では、スイッチは、延長ライン674に取り付けられた別個のモジュールであり、これは、例えば、バッテリ駆動式である。
【0173】
吸引式血栓除去システム600の第1の利点は、そのような構成によって、同じ真空源610を、以前から任意の外科用吸引装置/真空ポンプに接続することができたすべてのカテーテルで使用することができるということである。第2の利点は、ROAR効果を作用させるためのセキュリティに関する。このような構成では、ユーザは、ROARカテーテル660の近位端を独自の延長ライン674の遠位端に接続するように促される。これは、様々な理由から有益である。第1に、2つの固有のROAR部分が直接接続され、正しいROAR IDが確立されない限り、ROARは機能しないことが挙げられる。第2に、標準的な回転式止血弁が、(外科医/看護師の諸事情により)ROARカテーテル660と延長ライン674との間に接続される場合、識別が拒絶されてROARが無効となる。このような回転式止血弁の管腔内に含まれる流体がROARカテーテルの流体カラムに入り、使用のためにシステムから完全にパージする必要がある気泡が導入されてしまう危険性がある。RHV609は、空気が管腔内に残る確率、または空気が流体システムに入る確率を高める。これについて、
図72を参照されたい。したがって、ROARカテーテル660のための特に望ましい構成は、ROARカテーテル660の近位端と独自の延長ライン674の遠位端との間の直接接続である。また、ROAR効果がROARカテーテル660のみで利用されることを確実にするための安全性の問題もある。上述したように、各ROARカテーテル660は、伸展性に関連した特定の特性セットを有する。したがって、真空弁620および通気弁650の動作は、その特性セットに対して設定される。システム600は、接続されたROARカテーテル600の長さや管腔の大きさなどの物理的特性に基づいて、特定のROAR構成に反応するように設定される。したがって、システム660は、各ROARカテーテル660のための所与のROAR設定を記憶するように調整/プログラムされる。
【0174】
しかしながら、システム600またはコントローラ700が当該技術分野で提供された後に、新たなROARカテーテル660および新たなROAR延長ライン674が作成される可能性がある。したがって、ROARカテーテル660またはROAR延長ライン674のアイデンティティを提供することは、それらの構成要素の適切な動作を可能にするのに十分ではない可能性がある。そのため、追加的または代替的な実施形態において、ROARカテーテル660およびROAR延長ライン674の各々には、システム600に接続されたときに、そのROARカテーテル660および/またはそのROAR延長ライン674がROAR効果で動作するために必要な変数をコントローラ700に提供するメモリデバイス(例えば、DS28E07 EEPROMメモリチップ)が設けられる。ROARカテーテル660およびROAR延長ライン674のそれぞれのメモリに記憶される例示的な変数として、波形サイクルの周波数、真空がオンになるサイクル内の時間(Vacon時間622)、真空の期間(Vacon期間624)、真空がオフになるサイクル内の時間(Vacoff時間626)、真空がオフになる期間(Vacoff期間628)、通気がオンになるサイクル内の時間(Vnton時間652)、通気がオンになる期間(Vnton期間654)、通気がオフになるサイクル内の時間(Vntoff時間656)、および/または通気がオフになる期間(Vntoff期間658)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような情報をコントローラ700に提供することができることにより、システム600は、システム600で使用するために構成され得る将来のROARカテーテル660および/またはROAR延長ライン674を任意に利用することができる。
【0175】
ここで、
図57〜
図71を参照して、自己完結型の吸引式血栓除去システム600の例示的な実施形態を説明する。システム600は、真空モータ614、コントローラ700、ならびに真空弁620および通気弁650のコントローラ(弁のコントローラの例示的な実施形態は、
図29および
図42〜
図46に示されている)を含む外部本体601を有する。真空モータ614は、収集容器612(破線で模式的に示す)に流体的に接続される。本体601は、システムコントローラ676のセットを収容する(代替的な実施形態では、コントローラ676は、延長ライン674上に配置され得る)。例示的な本実施形態では、オフ、パージおよびROAR/真空の3つのボタンが設けられる。(パージ機能の詳細については後述する。)収集容器612の反対側には、通気液642を含む通気液貯蔵部640(破線で模式的に示す)が設けられる。上述したように、外科的処置の間、カテーテル660の流体経路には、常に気泡/空気が存在しないようになっている。
【0176】
本体601は、その前面にカセット接続アセンブリ602を有する。カセット接続アセンブリ602は、前面から突出しており、そこに取り付けられるカセット710と実質的に同じ外観形状を有する。真空弁620および通気弁650は、カセット接続アセンブリ602の前面608から突出しており、例示的な実施形態では、カセット接続アセンブリ602の窪み内の中央にそれぞれ配置される。本実施形態では、真空弁620および通気弁650は、その最も遠位側の端部にピンチ構造を有するピストンである。例示的な本実施形態では、ピンチ構造は、実質的に標準的なマイナスドライバ(slot screwdriver)のスロット部の形状を有する。真空ピストンおよび通気ピストンが窪みから所与の距離(例えば、8mm)だけ延出するため、スロット部は、(カセット710内の)管を押し付けて、真空ホースまたは通気ホース内のそれぞれの管腔を閉鎖する。ホースの閉鎖は、弁のそれぞれの遮断として作用し、ホースからの分離は、真空または通気の開放に作用する。このように、真空ラインおよび通気ラインのそれぞれのホースがピストンの真正面に配置される場合、弁620、650は、本明細書に記載されるROARプロセスに従って、真空および通気を制御する。(後述するように、カセット710はこれらのホースをそのように配置する。)弁620、650の間には、カセット接続アセンブリ602の前面608から突出するボス604が設けられる。ボス604は、管路のような所与の形状を有する外面と、配向ウィングと、を有する。ボス604の端部には、半円または半楕円形の形状の回転ロック606が設けられる。回転ロック606は、
図57〜
図67に示す位置から90度回転できるように中央ピボットを有する。したがって、回転した向きでは、回転ロック606は、ボス604の突出した範囲に垂直な下面(カセット接続アセンブリ602の前面608とは反対側の面)を画定する。これらの下面は、回転ロック606の下面とカセット接続アセンブリ602の前面608との間に隙間を画定するように距離を置いて設定される。また、カセット接続アセンブリ602の前面608には、導電性コネクタ618が設けられる。導電性コネクタ618は、カセット710がカセット接続アセンブリ602上に存在し且つロックされていることを検出するために使用される。カセット710の検出は、機械的手段(ポゴピンなど)によって、または機械的手段と光学的手段と電気的手段との組み合わせによって、行うことができる。
【0177】
カセット710は、カセット接続アセンブリ602に取り外し可能に接続される。
図68〜
図71には、このカセット710の例示的な実施形態が示されている。
図68に示すように、カセット710は、ボス604の所与の形状に対応する形状を有する内部開口部712を有する。ボス604および内部開口部は、形状が一致している。これにより、カセット710がボス604に適合し、カセット710の後面がカセット接続アセンブリ602の前面608と整列および/または接触するまで、その上を滑り落ちることができる。
図69には、カセット710の後面が示されている。
図69では、配向ウィングに対応する形状のポケット714が、内部開口部712においてカセット710の内面に設けられる。これに関して、カセット710がボス604の下に滑り落ちるときに、カセット710が例えば鍵穴内の鍵のように、最も低い位置で前面608に近づくことができる配向が1つしか存在しない。この配置によって、真空弁620および通気弁650の遠位端エフェクタが、カセット710内の真空弁領域720および通気弁領域750と常に整列していることを保証することができる。
【0178】
ボス604およびウィング605の「T字」形状が開口部712の内部T字形状と一致すると、3つの接続が可能になる。第1の接続では、上述したように、真空弁620および通気弁650の遠位端エフェクタは、カセット710内の真空弁領域720および通気弁領域750と整列する。第2の接続では、カセット710の後面の導電性コネクタ718は、ボス604に隣接するそれぞれの導電性コネクタ618と整列および接触する。これらのコネクタ718、618は、例えば、それぞれのパッドおよびポゴピンであり得、これにより、回転ロック606がカセット610を本体611上にロックするために使用されたときに、正の電気的接続を保証することができる。適切な電気的接続により、これらのコネクタ718、618は、カセット710が設置されて使用可能な状態にあること、および特定のROARカテーテル660に関連して識別を必要とする場合に、設置されたカセット710のタイプをコントローラ700に通知することができる。第3の接続では、回転ロック606は、カセット接続アセンブリ602の前面608の上方に位置し、回転ロック606の底面は、カセット710の外側前面716の上方に位置する。ボス604の突出距離は、回転ロック606の底面(前面608に対向する面)をカセット710の厚さとほぼ等しい距離に配置するように構成される。これにより、ロック606の回転に伴って、ロック606の底面がカセット710の外側前面716と係合して、カセット710を前面608に対してしっかりと押し付けて、コネクタ718、618を共に接触させ、カセット710を本体601にロックすることができる。4分の1回転の回転ロック606は、カセット710を本体601上に固定するとともに、特に、弁620、650がカセット710内に存在する真空管および通気管に対して作動されている間、カセット710をその上に保持するカム力を提供する。例示的な実施形態では、図示しないスイッチが回転ロック606に組み込まれており、このスイッチは、4分の1回転を検出し、電気コネクタ718、618と共に、システム600が準備完了および使用可能な状態にあることを確認する。
【0179】
特に効率的な構成では、カセット710は、
図68〜
図71に示す接続箱と配管セットとを含むセット全体として取り外し可能、交換可能且つ使い捨て可能であることができる。カセット710は、真空源610の収集容器612に流体的に接続された第1の配管ホイップ722と、通気弁650の吸入口に流体的に接続された第2の配管ホイップ752と、延長ライン674またはカテーテル660に直接接続される短い配管であり得る延長ホイップと、を含む比較的短い配管ホイップのセットを有する。一旦接続されると、この効率的な構成により、管腔のシステムは、空気/気泡を自動的に除去することができる。(
図67に示すバッグ640有する)カテーテル660および収集容器のすべての管腔の通気液の位置を特定して、通気液貯蔵部640の出口を開放することで、すべての内部管腔が充填され、使用前にシステム内の空気/気泡を除去することができる。必要に応じて、カムロックを真空モータ614に機械的に接続し(一時的にまたは固定的に)、モータ614を作動させて、すべての空気を積極的に収集容器内に引き込み、それによってシステム600をパージすることができる。カセット710のフロントロード構成の代替例として、カセット710は、使い捨て可能な収集容器612の底部の一部として接続または成形され得る。この構成では、使い捨て可能な2つの部分が、無菌包装で共に提供され、1部材として廃棄され得る。硬質容器(
図57〜
図61)またはバッグ(
図62〜
図67)のいずれかである通気液貯蔵部642を用いることで、通気液642は、生理食塩水で予め充填された管腔すべてを有するカセット700の一部、および使い捨て可能な単一のパッケージの一部であり得る。通気液貯蔵部640および収集容器612のいずれかまたは両方は、使い捨て可能なカセット700システムの一部であり得る。カテーテル処置で使用されるすべての使い捨て可能な部分は、1つの使い捨て可能なパッケージに組み込まれてもよい。
【0180】
上述したように、ROAR効果を得るには、システムの空気をパージすることが重要である。パージには、いくつかの方法がある。システムをパージするために使用される2つの主要な方法は、強制パージとドリブルパージである。強制パージ法は、延長ライン674の先端を生理食塩水のような滅菌流体に沈め、沈めている間に「パージ」機能を作動させることを含む。その後、コントローラ700は、制御弁の一方または両方を所定の時間およびシーケンスで交互に開放し、延長ライン674および弁を介して無菌流体を引き込み、システム内にあった可能性のあるすべての空気を排出する。このパージプロセスが完了すると、両方の弁が閉鎖されて、完全な流体カラムを有する延長ライン674を、同じく脱気されてROARが適用されたカテーテルに接続することができる。対照的に、ドリブル法は、(重力、流体バッグを絞ること、通気液タンクを加圧すること、または蠕動ポンプまたは任意の類似の手段によって形成される)小さな正の圧力に依存する。これにより、通気液が管腔を通って滴り(dribble)、それらをあふれさせることができる。ドリブルパージシステムの例示的な実施例では、通気液源640は、延長ライン674の出口よりも高く、通気液経路は、いかなる空気トラップも含まない。
【0181】
ドリブル法の場合、パージサイクルは、パージバトンを押すことによって開始され、例示的な実施形態では、コントローラ700によって実行される。真空弁620が閉鎖された状態で、真空源610をオンして、真空容器が所望の真空のレベルまでポンプダウンされる。通気弁650が開放され、通気液642が通気ラインおよび延長ライン674をあふれさせることを許容する。すべての空気がマニホールド630から除去されることを確実にするために、通気弁650が開放されている間、真空弁620は、瞬間的に開放される。これにより、通気液642が通気液源640および延長ライン674から引き出され、真空マニホールド通路を通って、空気をパージすることができる。通気弁650は、真空サイクルが延長ライン674から除去した流量が補充されることを確実にするために、真空弁620が閉鎖された後、一定時間開放され続ける。通気液の流れと瞬間的な真空のこのサイクルは、完全なパージを確実にするために数回繰り返され得る。パージポンプは、蠕動ポンプ、柔軟性を有する通気液容器(例えば、IVバッグ)の周りの加圧カフ、および/または真空源610からの排気を使用して加圧された通気液容器であり得る。
【0182】
流体システム内の気泡の存在は、ウォーターハンマー効果に悪影響を及ぼす。したがって、システム600は、流体管腔からの空気のパージを容易にするか、自動的に行う。例示的な実施形態では、(例えば、カテーテル660が血流中に存在するときにパージを防止するために操作者の制御下で)このパージを容易にするか、自動的にパージ機能を作動させるために気泡センサ(光学的、超音波的、または流体圧プロファイルに基づくもののいずれか)がシステム600に組み込まれている。気泡検出のための様々な手段がある。例えば、気泡の存在を感知するために、光学センサをカセット710内に配置することができる。真空源610に結合されたセンサにより、圧力の緩やかな上昇を感知して、誤ったカテーテルまたは延長部の使用を防止することができる。カテーテル660または延長ライン674の特定の伸展性は、システム600をプログラムまたは補償するために使用されるパラメータのうちの1つである。ユーザフィードバック表示は、システムが十分にパージされたときにユーザに通知する。例示的な実施形態では、カテーテル660および延長ライン674の伸展性は、いくつかの最適範囲を下回るように制御される。また、圧力上昇情報は、例えば、ROAR設定を修正するために使用され、栓をされているかを検出し、その状態に最適な圧力プロファイルを提供する。
【0183】
本明細書に記載され且つ図に示すように、吸引式血栓除去システム600の例示的な実施形態は、様々な重要な利点を提供する。ここで、これらの追加の利点を説明するために、延長ライン674およびカテーテル660を有する吸引式血栓除去システム600の例示的な実施形態を示す
図72を参照する。吸引式血栓除去システム600は、収集容器612を有する真空源610と、通気液642を有する通気液貯蔵部640と、マニホールド630と、近位マニホールドコネクタアセンブリ670と、を備える。近位マニホールドコネクタアセンブリ670に取り外し可能に接続されるのは、ROAR延長ライン674である。ROAR延長ライン674の隣には、近位マニホールドコネクタアセンブリ670を介して接続することによりシステム600と、従来の外科用真空源との両方で使用可能な既製の延長ライン674’がある。ROAR延長ライン674は、システム600のフレームの上面にも示されるシステムコントローラ676を備える。また、ROARカテーテル660および既製の吸引カテーテル660’も示されている。近位ルアーコネクタにより、両方のカテーテル660、660’は、いずれかの延長ライン674、674’と共に使用することができる。
【0184】
本明細書に記載され且つ図に示すように、吸引式血栓除去システム600の使い捨て可能、再利用可能、および限定的に再利用可能な構成要素のためのいくつかのトポロジーが存在する。真空源610は、
図72に示すフレームのような再利用可能な電子機器/電源システムに差し込まれる限定的に再利用可能な構成要素であり得る。弁部材カセット710は、ピンチ管を含み、したがって、単一使用に限定される構成要素である。代替的に、例えば、弁アクチュエータが別個の半再利用可能なモジュール内にあるか、ポンプ/制御システムの一部にあるかのいずれかで、弁アクチュエータが別個である場合に、弁部材が再利用可能であってもよい。異なる種類の弁(例えば、回転式、トランペット)は、システム600の使い捨て/再利用可能な部分を分離するための異なる方法を有する。弁アクチュエータは、再利用可能な部分の一部または限定的に再利用可能な部分の一部であり得る(例えば、ポンプモジュールと共に)。代替的に、弁アクチュエータは、限定的に再利用可能な第2のモジュールであり得る。弁部材を有するカセット710は、システム600の再利用可能な部分の機械的アクチュエータによって作動されるダイアフラムまたはピストンを含むことができる。このようなモジュール化により、システム600のアーキテクチャは、任意の真空源、さらには家庭用真空システム(これは、システム600の均一性を確保するための真空圧調整器を含み得る)との使用に適応可能になる。システム600のための電源は、再充電可能な電池であってもよく、システム600に取り付けられた交換可能なモジュールであってもよい。この場合、後者は無菌性を必要としない。代替的に、電源は、使い捨て構成要素の一部として含まれる一次電池であり、これは、使い捨てポンピング要素を含み得る。
【0185】
様々な構成により、異なる使用用途に特化した複数の製品トポロジーが可能になる。例えば、あるトポロジーは、管セットのみが使い捨てである最小経常コストのシステムである。代替的に、別のトポロジーは、最小限の資本コストを必要とするシステムであり、手術ケースごとにコストが容易に償却されるモジュールを組み込んでいる。
【0186】
様々な追加の安全手段をシステム600に追加することができる。例えば、通気液貯蔵部640に、またはそれと共に、液体レベル検出器を設けることができる。これにより、通気液642がタンクまたはパウチ内にあることを確認し、通気液のレベルが低いときにユーザに警告を表示し、通気液が尽きようとしているか、または空になっている場合にシステム600の動作を防止することができる。カセット710を有する構成では、カセット710が所定の位置で正しく取り付けられていない限り、システム600は起動しない。システム600は、使用前に、カテーテル660の様々な管腔、延長ライン674、および通気液貯蔵部640と収集容器612とを接続する任意の管を充填するために使用されるパージ機能を有することができる。管腔内に空気が存在する場合には、システム600を作動させてはならないことに留意されたい。したがって、コントローラ700は、使用前のセットアップ段階で、通気液642を引き込み、様々な管腔を充填するようにシステムを作動させることができる。これは、様々な管腔をパージするための正の圧力をかけるために、真空モータ614を逆に動作させることを含み得る。代替的に、コントローラ700は、管腔を通して通気液をパージするために蠕動ポンプを作動させることができる。コントローラ700は、システム600の動作中に、ROAR中の使用のピークを検出するようにプログラムされ得る。これらのピークが鋭くない場合、空気がシステム内に存在するという結論を決定することができる。気泡検出器(すなわち、超音波)は、それらがカセット内の管をまたぐようなシステムに追加することができ、管が適切にパージされたことを確実にするために、コントローラにフィードバックを提供する。このような結論により、コントローラ700は、動作を停止し、外部の流体源または通気液貯蔵部640から様々な管腔を洗い流すための自動パージルーチンを開始するようにプログラムすることができる。
【0187】
本発明のプロセスおよびシステムの様々な個別の特徴は、本明細書において例示的な実施形態でのみ記載される場合があることに留意されたい。単一の例示的な実施形態に関して本明細書で説明するための特定の選択は、特定の特徴が、記載された実施形態にのみ適用可能であると限定するものではない。本明細書に記載されるすべての特徴が、本明細書に記載される他の例示的な実施形態のいずれかまたはすべてに、任意の組み合わせまたはグループまたは構成で等しく適用、追加、または交換可能である。特に、本明細書において特定の特徴を図示、定義、または説明するために単一の参照符号を使用することは、その特徴を別の図面または説明の別の特徴に関連付けるまたは同等にすることができないことを意味するものではない。さらに、図面で2つ以上の参照符号が使用される場合、これは、それらの実施形態または特徴のみに限定されるものと解釈されるべきではない。これらは、同様の特徴に同等に適用可能であるか、参照符号が使用されないか、別の参照符号が省略される。
【0188】
上述した説明および添付の図面は、本システム、本装置および本方法の原理、例示的な実施形態、および動作モードを示す。しかしながら、本システム、本装置および本方法は、上述した特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。当業者であれば、上述した実施形態の追加の変形例を理解し、上述した実施形態は限定的ではなく、例示的であるとみなすであろう。したがって、添付の特許請求の範囲に記載されたシステム、装置および方法の範囲から逸脱することなく、それらの実施形態の変形例を当業者であれば作製することができることに留意されたい。