(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-532949(P2021-532949A)
(43)【公表日】2021年12月2日
(54)【発明の名称】ニードルハブ・シリンジ装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20211105BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20211105BHJP
【FI】
A61M5/315 500
A61M5/158 500H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2021-523543(P2021-523543)
(86)(22)【出願日】2019年7月10日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月17日
(86)【国際出願番号】NL2019050430
(87)【国際公開番号】WO2020013692
(87)【国際公開日】20200116
(31)【優先権主張番号】2021294
(32)【優先日】2018年7月12日
(33)【優先権主張国】NL
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521013220
【氏名又は名称】エスジェージェー ソリューションズ ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】SJJ Solutions B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ショートストラ, サンデル
(72)【発明者】
【氏名】ショートストラ, ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】ショートストラ, ヤスペル
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066CC01
4C066LL23
(57)【要約】
シリンジ内の流体の総体積は、シリンジ外部に押し出すことが可能な流体の総体積と等しくない場合がある。シリンジおよびシリンジが設けられているニードルハブを有する装置内にデッドボリュームが残る場合があるとしてよい。デッドボリュームを小さくするべく、互いに相補的な形状を持つニードルハブおよびシリンジを備えるニードルハブ・シリンジ装置が提供される。より具体的には、シリンジが含むピストンの端面の形状は、ニードルハブのカニューラボアの開口が設けられている面の形状と相補的である。これらの形状は、シリンジ内部の体積が、流体で満たされると、ピストンを最後まで押し込んだ後はピストンで充満されるように、または、非常に少量の流体のみがカニューラ開口とシリンジとの間に残るように、決められる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードルハブ・シリンジ装置であって、ニードルハブと、シリンジとを備え、前記シリンジは、バレルおよびピストンを有し、
前記ニードルハブは軸方向に配向されているカニューラボアを有し、前記カニューラボアはカニューラ開口を持ち、前記カニューラ開口の周囲には当接面が設けられており、
前記バレルは、軸方向に延伸している中空の円筒部材を含み、
前記ニードルハブおよび前記バレルのうち一方は雄型部材として構成されており、前記雄型部材は、雌型部材として構成されている前記ニードルハブおよび前記バレルのうち他方に挿入されるよう、構成されており、
前記ピストンは、前記当接面の少なくとも一部と相補的な形状を持つ端面を近位端において持ち、前記ピストンは、前記バレルの内部を、第1の位置と第2の位置との間において、軸方向に並進するよう構成されており、
前記第1の位置において、流体を保持するよう構成されている体積は、前記バレルの内壁の一部と、前記ピストンの前記端面と、前記当接面の少なくとも一部とによって画定されており、
前記第2の位置において、前記ピストンの前記端面は、前記当接面に当接している、
装置。
【請求項2】
前記ピストンの前記端面および前記当接面は、実質的に平坦で平行である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ピストンが前記第2の位置にある場合、前記ピストンの前記端面、前記当接面および前記カニューラ開口は、実質的に平行で並んでいる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の位置において、前記ピストンの前記端面と、前記当接面と、前記バレルの前記内壁の前記一部との間に画定されている前記体積は、0.005mL未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ニードルハブが持つ前記当接面は、前記軸方向に対して実質的に垂直に配向されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記雄型部材は前記雌型部材に圧入される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記バレルは外壁にネジ山部が設けられており、前記ニードルハブは、外壁に前記ネジ山部と相補的な突出部が設けられており、前記バレルの前記ネジ山部に螺入されるよう構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ニードルハブは前記雌型部材として構成されており、前記ニードルハブには、前記雄型部材として構成されている前記バレルの少なくとも一部を挿入するための空隙が設けられており、前記バレルの外壁の一部が前記ニードルハブの前記空隙の内壁の少なくとも一部に対して圧入される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ニードルハブは前記シリンジの内部に延在しない、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ニードルハブの前記空隙の前記内壁には1または複数の凹部が設けられ、前記バレルの前記外壁は、前記1または複数の凹部において、前記バレルが前記空隙に挿入されると、前記空隙の前記内壁に接触しない、請求項7から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記バレルの前記外壁および前記空隙の前記内壁のうち一方には突出部が設けられ、前記バレルの前記外壁および前記空隙の前記内壁のうち他方には前記突出部に対応する陥没部が設けられ、前記バレルが前記空隙に挿入されると、前記突出部が前記陥没部に係合して係止係合する、請求項7から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記突出部および前記陥没部は周方向に延在する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ニードルハブの前記空隙および前記バレルのうち前記一方の剛性は、前記ニードルハブの前記空隙および前記バレルのうち他方の剛性よりも低く、前記雄型部材が前記雌型部材に挿入されると、前記ニードルハブの前記空隙および前記バレルのうち前記一方は、前記ニードルハブの前記空隙および前記バレルのうち前記他方の形状にしたがって弾性変形する、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ピストンが前記第2の位置にある場合、前記ピストンの端面の表面積のうち少なくとも50%が前記当接面に接触している、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
バレルを挿入するよう構成されている空隙と、
カニューラ開口を有する、軸方向に配向されているカニューラボアと
を備え、
前記カニューラ開口は、前記空隙と流体連通しており、
前記カニューラ開口は、周囲に実質的に平坦な当接面が設けられており、
前記当接面は、前記軸方向に対して実質的に垂直に配向されている、
ニードルハブ。
【請求項16】
前記空隙の周囲を取り囲むスカート部分を備え、前記カニューラ開口は、前記スカート部分によって周囲が取り囲まれている前記空隙の内部へは延在しない、請求項15に記載のニードルハブ。
【請求項17】
軸方向に延伸している中空の円筒部材を有するバレルであって、ニードルハブの空隙に少なくとも一部分が挿入されるよう構成されているバレルと、
前記バレルの内部で軸方向に並進するよう構成されている、軸方向に延伸するピストンと
を備え、
前記ピストンは、前記軸方向に対して実質的に垂直に配向されている実質的に平坦な端面を持つ、
シリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニードルハブ・シリンジ装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
液体状の薬剤等の流体は、ニードルを用いて所定量の流体を、例えば、患者の身体の一部に提供するためのシリンジ・ニードルハブ装置で投与されることが多い。世界中では、大量の液体状薬剤が、利用後にシリンジ内のいわゆるデッドボリュームとして知られている部分に残っていることにより、使用されることなく破棄されている。シリンジに対して設けられるように構成されている従来のニードルハブは、ISO規格等の特定の規格に基づいて設計されていることが多く、複数の異なるシリンジに篏合するよう構成されている。このため、完全には篏合せず、シリンジとニードルハブとの間にデッドボリュームが発生する。
【0003】
国際公開第2014/011046号は、円錐台形状の雄型スリップ取付部品および円錐台形状の雌型スリップ取付部品を備えるニードル・シリンジ装置を開示している。雄型スリップ取付部品は、雌型スリップ取付部品に挿入可能であり、デッドボリュームを小さく抑制しつつ圧入結合を実現する。このニードル・シリンジ装置では、バレルがニードルに挿入されるとしてよい。ピストンをニードルハブに対して押圧すると、最大量の流体が当該装置から押し出され、ピストンの一部がバレルから突出する。この突出した部分が、バレルと、ピストンと、ニードルハブとの間にデッドボリュームを発生させる。
【0004】
米国特許出願公開公報第2016/0008545A1号は、流体を患者に注入するためのニードル・シリンジアセンブリで、廃棄量が少ないタイプを開示している。略円錐台形状の内部空間を画定しているシリンジ先端部がシリンジの端部壁から延在し、ニードルハブがシリンジに固定されると、ニードルハブの円錐台形状部材がシリンジ先端部の円錐台形状の空間と係合して、流体密に封止する。流体室内に配置されるプランジャーは使用者が押下することが可能で、プランジャーに取り付けられたピストンキャップは、流体室内の流体を室外へと押し出し、この流体はシリンジ先端部を通ってニードルに流入する。ピストンキャップがシリンジの端部壁と係合することにより、略全ての流体を流体室から押し出してニードルへと流入させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国際公開第2014/011046号に記載のニードル・シリンジ装置では、バレル端面が面取りされており、ピストンが当接するニードルハブの当接面は、カニューラ開口に向かってテーパー状になっている。さらに、プランジャー端部の表面のうちニードルハブの当接面に接触しているのは、実際にはごく一部に過ぎない。このため、比較的大量の流体がプランジャーと、バレルと、ニードルハブとの間に残ってしまうことがある。この残った体積が、残留デッドボリュームの一部となる。このため、このようなニードル・シリンジ装置の残留デッドボリュームは、ゼロではなく、ゼロに近いとも言えないであろう。
【0006】
米国特許出願公開公報第2016/0008545A1号に記載のニードル・シリンジアセンブリでは、ニードルハブがバレルの近位端に配置されている場合に、カニューラ開口がシリンジのバレル内に延在している。さらに、ピストンが第2の位置にあるのでデッドボリュームが最小限に抑えられる場合、ピストンは、カニューラ開口の周囲を取り囲む面に当接しているのではなく、ピストン端面のごく少ない面積のみがカニューラ開口の周囲を取り囲む面に当接している。このため、このようなニードル・シリンジアセンブリの残留デッドボリュームは、ゼロではなく、ゼロに近いとも言えないであろう。
【0007】
本発明は、ニードルハブ・シリンジ装置におけるデッドボリュームをさらに少なくすることを目的とする。このようなデッドボリュームは、シリンジのピストンを用いてシリンジ・ニードルハブ装置外部に押し出すことができないシリンジ内部に残る流体の体積と定義されるとしてよい。このように、デッドボリュームは、装置利用後に装置内に残る。しかし、以下の記載で「デッドボリューム」という用語を用いた場合、意味するのはシリンジとニードルハブとの間の形状の不一致に起因するデッドボリュームのみである。ニードルハブのカニューラボアでのデッドボリュームを少なくすることは考慮していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、ニードルハブと、バレルおよびピストンを有するシリンジとを備えるニードルハブ・シリンジ装置が提供される。ニードルハブは、軸方向に配向されているカニューラボアを有し、カニューラボアはカニューラ開口を持ち、カニューラ開口の周囲には当接面が設けられている。バレルは、軸方向に延伸している中空のシリンダを有する。ニードルハブおよびバレルのうち一方は、雄型部材として構成されている。当該雄型部材は、雌型部材として構成されているニードルハブおよびバレルのうち他方に対して、挿入されるよう構成されている。ピストンは、近位端において、当接面の少なくとも一部と相補的な形状を持つ端面を持つ。ピストンは、バレルの内部を、第1の位置と第2の位置との間において、軸方向に並進するよう構成されている。第1の位置において、流体を保持するよう構成されている体積が、バレルの内壁の一部と、ピストンの端面と、当接面の少なくとも一部とによって画定されている。
【0009】
第2の位置において、ピストンの端面は当接面に当接しており、当該装置に残る流体体積はデッドボリュームまで小さくなる。このデッドボリュームは、バレルの内壁の一部、ピストンの端面、および、当接面の少なくとも一部によって画定されているとしてよい。これに代えて、ピストンの端面および当接面の少なくとも一部によって画定されるとしてもよい。特に、ピストンの端面と、当接面の少なくとも一部とが何らかの理由で、例えば、製造時の問題に起因して、不一致となる場合にそうなるとしてよい。
【0010】
ニードルハブ・シリンジ装置は通常、以下のように利用される。ニードルハブおよびシリンジは、ニードルハブとシリンジとの間を水密に封止するよう、共に圧入する。シリンジの遠位端は、第2の位置の場合にピストンの端面が位置する場所であるが、当接面に当接することが好ましい。
【0011】
ニードルハブにはニードルが設けられているとしてよく、ニードルハブから離れるようにバレル内でピストンを動かすことによって、流体の流入先であるバレルの内部の圧力を低くして、ニードルハブのカニューラボアを通じてシリンジのバレルに流体を吸入する。例えば、透明なバレルの外部に設けられた体積指示部を利用することで、ユーザは所望の体積の流体を吸い上げるとしてよい。続いて、ユーザはピストンを、ニードルから少量が滴下するまで、または、ニュードルハブのカニューラボアまで、ニードルハブに向かって押し戻す。このように滴下することで、デッドボリュームが完全に流体で充填されたことがユーザに分かり、ニードルハブ・シリンジ装置を使用する準備が整ったことが分かる。
【0012】
ニードルハブ・シリンジ装置の別の利用方法では、最初にフィルタニードルをシリンジに篏合させる。フィルタニードルを通してバレルに流体を吸入するが、フィルタニードルは、流体に混入している可能性があるが混入が望ましくない汚染物質を除去するよう構成されている。フィルタニードルは通常、拡径ニードルを含み、このように直径を大きくすることによって、望ましくない気泡がバレルに吸い込まれる危険性が低くなる。さらに、フィルタニードルは、吸い出す流体を保持するアンプルの底部に到達するよう長さを大きくしたニードルを含むとしてよい。流体をシリンジ内に吸い込んだ後、フィルタニードルを取り外して、ニードルハブをバレルに圧入するとしてよい。
【0013】
バレルおよびピストンの形状は相補的であるが、円筒形状に加えて、さまざまな形状が同様に考えられる。バレルの形状が中空で、ピストンの形状が中空のバレルに篏入する対応するものであれば、どのようなものも当該装置で利用することができるとしてよい。
【0014】
ピストンの端面および当接面の形状が相補的であることによって、ピストンを第2の位置に動かしたときに、バレルとニードルとの間に残る残留体積を、小さくすることができ、または無くすこともできる。
【0015】
本発明に係る装置は通常、従来のシリンジ・ニードルハブ装置に比べて、廃棄流体を0.05mL低減するとしてよい。医療用流体のコストおよび世界中で利用されているシリンジ・ニードルハブ装置の量を考えると、関連技術分野で公知の装置に対して本発明が提供する利点は非常に大きい。
【0016】
「ピストン」という用語は実際には、ピストンと共にプランジャーを意味し、または、シリンジのバレルの内部で同様の機能を持つ任意のその他の部品であってよいことに留意されたい。
【0017】
当該装置の一実施形態において、ピストンの端面および当接面は、略平坦で、および/または、平行である。このような実施形態では、ピストンとバレルとの間に流体が残って当該装置に滞留するといった事態を、少なくとも部分的に抑制するとしてよい。このように、デッドボリュームまたは残留体積が、小さくなるとしてよく、または、好ましくは発生が抑止されるとしてよい。
【0018】
当該装置の実施形態において、ピストンが第2の位置にある場合に、ピストンの端面、当接面およびカニューラ開口が、略平行になると共に並ぶことになる。このような実施形態では、ピストンとバレルとの間に流体が残って当該装置に滞留するといった事態を、少なくとも部分的に抑制するとしてよい。このように、デッドボリュームまたは残留体積が、小さくなるとしてよく、または、好ましくは発生が抑止されるとしてよい。
【0019】
当該装置の実施形態において、ピストンの端面と、当接面と、バレルの内壁の一部との間に画定される体積は、0.005mL未満で、ゼロであることが好ましい。
【0020】
当該装置の好ましい実施形態において、ニードルハブが構成する当接面は、軸方向に対して実質的に垂直に配向されている。ピストンの端面は相補的な形状となっているが、同様に軸方向に対して略垂直に配向されている。どちらの形状も平坦である場合、当該実施形態は、ニードルハブに対するバレルの角度方向の配向を気にすることなくシリンジおよびニードルハブを配置し得るという利点がある。
【0021】
ニードルハブは、ニードルを挿入するためのカニューラ開口と反対側に位置する第2の開口を持つとしてよい。
【0022】
当該装置のさらなる好ましい実施形態では、ニードルハブは雌型部材として構成されている。ニードルハブは、雄型部材として構成されているバレルのうち少なくとも一部を挿入するための空隙、または、雄型部材として構成されているバレルのうち少なくとも一部が内部に設けられている空隙を有し、バレルの外壁の一部がニードルハブの空隙に内壁の少なくとも一部に対して圧入される。
【0023】
このような実施形態では、ニードルハブの空隙の内壁には、1または複数の凹部が設けられているとしてよい。この1または複数の凹部において、バレルの外壁は、バレルが空隙に挿入される際に、空隙の内壁に接触しない。凹部によって、空隙と外壁との間の接触面積が小さくなり、バレルを空隙に挿入し易くなる。
【0024】
当該装置の実施形態において、ニードルハブはシリンジ内に延在しない。例えば、ニードルハブが雌型部材でバレルが雄型部材である場合、バレルはニードルハブ内に延在するが、ニードルハブはどの部分もバレル内に突出することはない。このため、ニードルハブの一部がバレル内に突出することによって、バレル内で流体が流入可能な体積が小さくなることはない。バレルとニードルハブとがぴったり合うように、ニードルハブの一部がバレルの外部に延在するとしてよく、例えば、バレルの外面、または、バレルの外面に設けられている任意の構造と係合するとしてよい。この結果、例えば、当該装置から吐出する流体体積の精度を挙げることができるとしてよい。
【0025】
シリンジとニードルハブとの間の係止状態を、単に両者間の摩擦の場合と比べて改善するべく、バレルの外壁および空隙の内壁のうち一方は突出部を持つとしてよく、バレルの外壁および空隙の内壁のうち他方は、突出部に対応する陥没部を持つとしてよい。この結果、バレルが空隙に挿入されると、突出部が陥没部と係合して、係止係合が得られる。
【0026】
当該装置の実施形態において、バレルの端面が、ニードルハブに向かって延在するシリンジの最遠端を構成するとしてよい。このような実施形態では、また、任意で他の実施形態でも、カニューラ開口はシリンジ内に到達しない。言い換えると、シリンジの近位端において、シリンジはニードルハブの当接面を超えて延在しない。このような実施形態では、ピストンが第2の位置にある場合、残留体積はゼロまで小さくなるとしてよい。これに加えて、他の実施形態でもこれは可能である。
【0027】
当該装置の実施形態では、ピストンが第2の位置にある場合、ピストン端面の表面積のうち、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、更に好ましくは少なくとも40%、または、少なくとも50%、そして、さらに好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または更に好ましくは少なくとも90%が、当接面に接触する。このように、ピストンとバレルとの間に残る流体の体積、つまり、シリンジ外部に押し出すことができない残留体積は、0.005mL未満、または、ゼロにまで少なくなるとしてよい。
【0028】
第2の態様は、ニードルハブを提供する。当該ニードルハブは、バレルを挿入するよう構成されている空隙と、カニューラ開口が設けられている軸方向に配向されているカニューラボアとを備える。カニューラ開口は空隙と流体連通しており、カニューラ開口の周囲には略平坦な当接面が設けられている。さらに、当接面は軸方向に対して略垂直に配向されている。このように配向することで、ピストンは、同様に軸方向に対して略垂直に配向されているピストンの略平坦な端面と並ぶことが可能になる。
【0029】
ニードルハブは、本明細書で説明するシリンジ以外のシリンジを備える装置で利用するとしてもよい。ISO594−1に準拠したシリンジであれば、ニードルハブにおいて、装置で利用され得る。このような装置では本発明に係る装置と同程度までデッドボリュームを少なくすることはできないが、当接面が軸方向に略垂直に配向されていることによって、デッドボリュームは少なくなるとしてよい。
【0030】
第3の態様はシリンジを提供する。当該シリンジは、軸方向に延伸している中空の円筒部材を有するバレルであって、ニードルハブの空隙に少なくとも一部分が挿入されるよう構成されているバレルを備える。当該シリンジはさらに、バレルの内部で軸方向に並進するよう構成されている、軸方向に延伸するピストンを備える。ピストンは、軸方向に対して略垂直に配向されている略平坦な端面を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明のさまざまな態様および実施形態について、各図面に関連して以下で説明する。各図面は以下の通りである。
【
図1】ニードルハブ・シリンジ装置を示す図である。
【
図2B】当該装置の別の実施形態の一部を示す詳細図である。
【
図2C】当該装置の実施形態の一部を示す展開図である。
【
図3】ルアーロック結合型の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、ニードルハブ102と、バレル106およびピストン108を有するシリンジ104とを備えるニードルハブ・シリンジ装置100の実施形態を図示している。ニードルハブ102は、軸方向に配向されているカニューラボア110を有し、カニューラボア110はカニューラ開口112を持ち、カニューラ開口112の周囲には当接面114が設けられている。バレル106は、軸方向に延伸している中空の円筒部材を有する。
【0033】
装置100において、ニードルハブ102およびバレル106のうち一方は、雄型部材として構成されている。当該雄型部材は、雌型部材として構成されているニードルハブ102およびバレル106のうち他方に挿入されるよう、構成されている。
図1に図示している実施形態において、ニードルハブ102は、雌型部材として構成されている。当該雌型部材は、雄型部材として構成されているバレル106を挿入するように構成されている。
【0034】
ピストン108は、近位端に端面116を持つ。端面116は、ニードルハブ102の当接面114と相補的な形状を持つ。ピストン108は、第1の位置と第2の位置との間でバレル106内を軸方向に並進するよう構成されている。第1の位置において、流体を保持するよう構成されている充填体積118は、バレルの内壁120の一部と、ピストンの端面116と、当接面114の少なくとも一部とによって画定されている。第2の位置において充填体積118はゼロまで小さくなり、第2の位置において、ピストンの端面116は当接面114に当接するので、装置100に残るのはデッドボリュームのみである。
【0035】
ピストン108は、端面116の反対側にあるピストン108の遠位端に、ハンドル117が設けられているとしてよい。ハンドル117は、バレル106内部におけるピストン108の軸方向の位置をユーザが容易に制御することができるよう構成されている。
【0036】
ピストン108をバレル106の内部で第2の位置から第1の位置へと並進させることで、カニューラ開口112を通して体積118へと流体を吸入するとしてよい。第1の位置から第2の位置へと反対に移動させることで、体積118にある流体は、カニューラ開口112を通して体積118から吐出されるとしてよい。
【0037】
シリンジ104にニードルハブ102が設けられない場合、バレル106自体が、バレル106の内部に吸入される流体と接するように配置されるとしてよい。そして、バレル106の内部でピストン108を移動させることによって、流体はバレル106内に吸入されるとしてよい。これに代えて、フィルタニードル装置のような別のニードルを利用するとしてもよい。所望の量の流体がバレル106に入った後、ニードルハブ102がシリンジ104に設けられて、装置100を形成するとしてよい。
【0038】
ニードルハブ102の実施形態において、ニードルハブ102は、カニューラ開口112とは反対側にある、ニードルを挿入するための第2の開口136を含む。カニューラボア110は、ニードルを挿入しやすくなるように、カニューラ開口112から離れるにつれてテーパー状になっているとしてよい。ニードルは、挿入された後、カニューラボア110に接着されるとしてよい。第2の開口136は、これに加えて、または、これに代えて、例えば、医療用チューブ、バッグ、またはカテーテル等、アセンブリ100との間で流体を流入出させるよう構成されている別のデバイスに接続されるよう構成されているとしてよい。
【0039】
ピストン108の端面116の形状は、当接面114の形状と相補的である。このため、ピストン108の端面116と、当接面114と、バレル106の内壁120の一部との間に、端面116と当接面114との間に、画定されている体積118は、ピストン108が第2の位置にある場合、非常に小さい。体積118は、ピストン108が第2の位置にある場合に、0.01mL未満であることが好ましい。さらに、0.005mL未満であることが好ましい。
【0040】
装置100の好ましい実施形態において、ピストン108の端面116は、ピストン108の軸方向に対して垂直に設けられている略平坦な面である。ピストン108のこの実施形態に対して当接面114の相補的な形状は、ニードルハブ102の軸方向に垂直に設けられている略平坦な形状の当接面114である。
【0041】
ピストン108の端面116および当接面114の相補的な形状はさまざまなものが考えられ、例えば、テーパー状の端面116および同様にテーパー状の当接面114であったり、または、実質的に平坦な端面がピストン108の軸方向に対して角度を持つように設けられており、当接面114は同じ角度で略平坦に設けられている。
【0042】
残留体積118を小さくすること、または、ゼロにすることのさらなる利点として、シリンジ104内部の流体の量が体積118と略等しくなるので、シリンジ104内の流体の量の精度が高くなる点が挙げられるとしてよい。デッドボリュームの体積は、分からない場合が多く、または、ある程度の精度でしか分からない。本発明の装置100におけるシリンジ104等のシリンジは通常、通常1mL未満の、または、0.5mLの、さらに0.3mL等の非常に少量の液体に利用される。このように体積が小さい場合、デッドボリュームを可能な限り小さくすることが好ましく、特に装置100から吐出される予定の流体の体積に比べて小さくすることが好ましい。
【0043】
シリンジのサイズは用途ごとに異なるので、デッドボリュームは、バレルの最大流体容量に対する割合として特定するとしてもよい。例えば、バレルの一実施形態は、最大流体体積が0.3mLである。好ましいデッドボリュームが0.01mL未満である場合、デッドボリューム割合は3.33%になる。より好ましいのは、デッドボリューム割合が3%未満となることで、より好ましいことはデッドボリューム割合が2%未満で、さらにより好ましいのはデッドボリューム割合が1%未満となることである。
【0044】
デッドボリュームの別の原因として挙げられ得るのは、端面116、バレル106の遠位端および当接面114の製造時の公差である。これによって、上記の二面間の対応関係に不一致が発生する。このため、ピストン108およびニードルハブ102を非常に高精度に製造することが好ましい。
【0045】
このように製造精度を高くするべく、ニードルハブおよびバレルは射出成型で形成するとしてよい。射出成型であってもある程度の誤差は発生するので、ニードルハブおよびバレルのうち少なくとも1方を複数作成する金型を利用するとしてよい。そして、ニードルハブとバレルとの組み合わせを複数用意し、デッドボリュームがより少なくなる最良の組み合わせを探すとしてよい。
【0046】
図2Aは、ニードルハブ102と、バレル106を含むシリンジ104とを備える装置100の一部を示す詳細図である。バレル106にピストン108が挿入されている。
図2Aに図示されているような装置100において、バレル106は雄型部材として構成されている。当該雄型部材は、雌型部材として構成されているニードルハブ102が形成する空隙103の内部に挿入されるように構成されている。バレル106は、ニードルハブ102の空隙103に圧入されるとしてよく、バレル106の外面124と、ニードルハブ102の空隙103の内面126との間を水密に封止する。
【0047】
空隙103へとバレル106を圧入するには、ルアースリップ接続を利用するとしてよい。この場合、バレル106および空隙103は、例えば、ISO80369−7:2016規格に準拠したテーパー状、または、約6%で傾斜したテーパー状とするとしてよい。
【0048】
これに代えて、バレル106とニードルハブ102との間には、ねじ山による接続の一例として、ルアーロック接続を利用するとしてもよい。
図3は、ニードルハブ・シリンジ装置100の実施形態の一部を図示している。バレル106は、ニードルハブ102を受け入れるよう構成されているネジ山部302を持つ。ネジ山部302は、ISO80369−7:2016規格に準拠して設計するとしてよい。
図3のネジ山部302は、バレル106の外壁124から突出しているスカート部分として構成されている。
【0049】
図3に図示するニードルハブ102は、ネジ山部と係合するよう構成されている突出部の一例として、突出部304が設けられている。シリンジ104の一部であるバレル106と、ニードルハブ102との間を軸方向に接続するとしてよい。これに代えて、突出部304は、バレル106のネジ山部302のネジ山と相補的な形状を持つネジ山として構成されているとしてよい。軸方向に接続するべく、ニードルハブ102はシリンジ104のネジ山部に螺入するとしてよい。
【0050】
図2Aに図示したようなニードルハブ102は、スカート部分302を持つ。
スカート部分302は、空隙103の周囲を取り囲むように設けられており、例えば、流体密に篏合させるべく、バレル106の外面124と係合するように構成されているとしてよい。カニューラ開口112は、空隙103の内部には設けられていないので、スカート部分302で周囲を取り囲んでいるわけではない。このため、ニードルは、カニューラ110に挿入されると、空隙103の内部に延在しないとしてよい。そして、バレル106の一部分が近位端で空隙103へと挿入されると、カニューラ開口112はバレル106の内部へと延在せず、ニードルもまたバレル106の内部へは延在しないとしてよい。これによって、バレル106の近位端における内部体積は全て、流体を充填するために利用可能となり、正確な流体投与量を実現するとしてよい。
【0051】
バレル106はバレル端面122を持つ。バレル端面122は、バレル106がニードルハブ102に挿入されると、当接面114に当接するとしてよい。ピストンの第2の位置において、バレル端面122および端面116は実質的に、同じ高さ、つまり、同一平面内にあることが好ましい。このように当接させることで、バレル端面122、当接面114、第2の位置にあるピストン108、そして任意でバレル106の内壁の間に画定される体積は、実質的に無視し得る。
【0052】
バレル端面122が当接面114と当接している場合、カニューラ開口112は、バレル106の内部、または、シリンジ104の内部に延在しない。
図2Aの実施形態では、バレル端面122は、バレル106の近位端における、そして、シリンジ104における最遠到達点である。
【0053】
装置100の別の実施形態では、バレル106がニードルハブ102に挿入されると、バレル端面122は当接面114には当接せず、当接面114からわずかに離れた位置に配置される。このような実施形態においては、バレル106とニードルハブ102との圧入は、バレル端面122が当接面114に当接することではなく、バレル106をニードルハブ102に挿入する軸方向の最大深さがバレル108の外面124および空隙103の内面126の直径によって画定されることにより、確実となる。
【0054】
図2Aに図示するように、バレル106または、その少なくとも一方の端部は、実質的に管状部材として具現化されるとしてよく、バレル端面120は内側半径および外側半径を持つドーナツ形状の面である。
【0055】
図2Bは、雄型部材であるニードルハブ102の一部分が、雌型部材であるバレル106の内部へと挿入される装置100の実施形態を示す。本実施形態では、ニードルハブ102はバレル106に圧入され、ニードルハブ102とバレル106との間が水密に封止されて、体積118に流体が存在する場合に、特に、ピストン108が第2の位置へ向かって移動して流体が体積118から押し出されてカニューラボア110を通る場合に、流体および液体を、特に、ニードルハブ102とバレル106との間で漏れないようにする。
【0056】
ここで
図2Aに戻ると、ニードルハブ102の実施形態において、空隙103の内壁126には1または複数の凹部128がある。1または複数の凹部128は、バレル106が空隙103へと挿入される場合に、バレルの外壁124の一部が1または複数の凹部128において空隙103の内壁126に接触しないように、構成されている。凹部128は、カニューラボア110を通るニードルハブ102の軸を中心として同心円状に設けられている。これらの凹部によって、バレル106を空隙103へと挿入し易くなる。
【0057】
これに加えて、または、任意で、空隙103へとバレル106をさらに挿入し易くするべく、空隙103はカニューラボア110に向かってテーパー状にするとしてよい。バレル106の外周124も、空隙103のテーパー形状に対応するようにテーパー形状にされているとしてよい。
【0058】
図2Cは、バレル106を有するシリンジ104と、ニードルハブ102とを備える装置100の実施形態の一部を示す展開図である。本実施形態において、ニードルハブ102の空隙103の内壁126には、バレルの外壁124に設けられている突出部132に対応する陥没部134が設けられている。バレル106を空隙103に挿入すると、突出部132が陥没部134に係合して、バレル106は空隙103から取り外し難くなる。突出部132および陥没部134は周方向に延伸することが好ましい。さらに、突出部および陥没部のうち少なくとも一方を複数設けて、バレル106とニードルハブ102との間に複数の係合点を設けるとしてもよい。
【0059】
装置100の別の実施形態において、空隙103の内壁126には突出部があり、バレルの外壁124には突出部がある。
【0060】
装置100の実施形態において、ニードルハブ103の空隙およびバレル106のうち一方は、ニードルハブ103の空隙およびバレル106のうち他方よりも、剛性が低い弾性材料を含む。材料の剛性は、当該材料を弾性変形させるのに必要な力の量として定義されるとしてよく、例えば、N/mmで表すとしてよい。このように雄型部材の剛性と雌型部材の剛性に差があることで、雄型部材の外周または雌型部材の内周の一方は、雄型部材が雌型部材に挿入される際に、弾性変形することが可能となる。このような弾性変形によって、雄型部材と雌型部材との間で水密に圧入することが可能になるとしてよい。
【0061】
要約すると、シリンジ内の流体の総体積は、シリンジ外部に押し出すことが可能な流体の総体積と等しくない場合がある。シリンジおよびシリンジが設けられているニードルハブを有する装置内にデッドボリュームが残る場合があるとしてよい。デッドボリュームを小さくするべく、互いに相補的な形状を持つニードルハブおよびシリンジを備えるニードルハブ・シリンジ装置が提供される。より具体的には、シリンジが含むピストンの端面の形状は、ニードルハブのカニューラボアの開口が設けられている面の形状と相補的である。これらの形状は、シリンジ内部の体積が流体で満たされるとピストンを最後まで押し込んだ後はピストンで充満されるように、または、流体のうち非常に少量のみがカニューラ開口とシリンジとの間に残るように、決められる。
【国際調査報告】