(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-533302(P2021-533302A)
(43)【公表日】2021年12月2日
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 25/02 20060101AFI20211105BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20211105BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20211105BHJP
【FI】
F04C25/02 B
F04C18/16 F
F04C25/02 K
F04C25/02 M
F04D27/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-505280(P2021-505280)
(86)(22)【出願日】2019年8月1日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2019070782
(87)【国際公開番号】WO2020025754
(87)【国際公開日】20200206
(31)【優先権主張番号】202018003585.8
(32)【優先日】2018年8月1日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】508206070
【氏名又は名称】レイボルド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】コクルベルグ,ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】ゲレロ ルレ,ヴィセンテ ポール
【テーマコード(参考)】
3H021
3H129
【Fターム(参考)】
3H021AA08
3H021BA13
3H021CA01
3H021CA03
3H021CA04
3H021CA06
3H021DA04
3H021EA04
3H129AA03
3H129AA06
3H129AA24
3H129AB06
3H129BB42
3H129CC52
3H129CC56
3H129CC57
3H129CC58
3H129CC62
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、入口(14)及び出口(15)を有するハウジング(12)を備えた真空ポンプに関し、入口(14)から出口(15)にガス状媒体を運ぶために、ロータ(16, 20)がハウジング(12)に配置されている。更に、ロータ(16, 20)を回転させるためのモータ(24)が設けられており、モータ(24)を制御するためにモータ(24)に連結されている制御装置(30)が設けられている。真空ポンプ(10)の少なくとも1つの動作パラメータ(42)を検知するための少なくとも1つのセンサ(36, 38)が設けられている。センサ(36, 38)は制御装置(30)に連結されている。制御装置(30)は相関モジュール(44)を有している。相関モジュール(44)は、検知される動作パラメータ(42)を少なくとも1つの臨界パラメータ(46)と相互に関連付けるように構成されている。モータ(24)は臨界パラメータ(46)を使用して制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ、特にドライ圧縮二軸ポンプであって、
入口(14)及び出口(15)を有するハウジング(12)と、
前記入口(14)から前記出口(15)にガス状媒体を運ぶために前記ハウジング(12)に配置されているロータ(16, 20)と、
前記ロータ(16, 20)を回転させるためのモータ(24)と、
前記モータ(24)、特に速度を制御するために前記モータ(24)に連結されている制御装置(30)と
を備えており、
前記真空ポンプ(10)の少なくとも1つの動作パラメータ(42)を検知するための少なくとも1つのセンサ(36, 38)が設けられており、前記センサ(36, 38)は前記制御装置(30)に連結されており、
前記制御装置(30)は、検知される動作パラメータ(42)を少なくとも1つの臨界パラメータ(46)と相互に関連付けるように構成されている相関モジュール(44)を有しており、
前記モータ(24)は前記臨界パラメータ(46)に基づき制御されることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
検知される動作パラメータ(42)は、前記入口でのガス温度、前記出口でのガス温度、前記入口での冷媒温度、前記出口での冷媒温度、回転速度、モータ出力、冷媒の流量、振動、前記入口での圧力及び前記出口での圧力の値の内の一又は複数であることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記臨界パラメータ(46)は、前記ロータ(16, 20)とステータ若しくはハウジング(12)若しくは別のロータ(16, 20)との距離、及び/又は軸受温度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記相関モジュール(44)は、回帰及び/又はファジー論理及び/又は機械学習アルゴリズムにより、前記動作パラメータ(42)及び前記臨界パラメータ(46)を相互に関連付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記相関モジュール(44)は、相関関数により前記動作パラメータ(42)及び前記臨界パラメータ(46)を相互に関連付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記相関モジュール(44)は、特に再帰型のニューラルネットワークを有しており、前記動作パラメータ(42)及び前記臨界パラメータ(46)を前記ニューラルネットワークによって相互に関連付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記ニューラルネットワークはトレーニングされており、少なくとも1つの臨界パラメータのための少なくとも1つのセンサが最初に設けられ、トレーニングのために、検知される動作パラメータ(42)は入力値として使用され、前記臨界パラメータは出力値として使用されることを特徴とする請求項6に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記臨界パラメータのためのセンサが設けられていないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記制御装置(30)は、前記臨界パラメータ(46)が所定の限界値(48)を超過する場合、前記ロータ(16, 20)の回転速度を低下させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項10】
前記臨界パラメータ(46)が所定の限界値(48)を下回る場合、前記ロータ(16, 20)の回転速度が上昇することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項11】
特に請求項1〜10のいずれか1つに記載の真空ポンプを作動させる方法であって、
前記真空ポンプの少なくとも1つの動作パラメータを測定するステップ、
測定された動作パラメータを前記真空ポンプの少なくとも1つの臨界パラメータと相互に関連付けるステップ、
決定された臨界パラメータを所定の限界値と比較するステップ、及び
比較結果に応じて前記真空ポンプのモータを制御し、特に前記速度を適合するステップ
を有することを特徴とする方法。
【請求項12】
特にニューラルネットワークを有する相関モジュールが設けられており、前記相関モジュール、特に前記相関モジュールのニューラルネットワークは、
a) 少なくとも1つの動作パラメータを決定するステップ、
b) 少なくとも1つの動作パラメータを少なくとも1つの臨界パラメータの値と相互に関連付けるステップ、
c) 前記臨界パラメータの決定された値を、トレーニングのために設けられたセンサによって測定された臨界パラメータと比較するステップ、
d) 不一致又は余りにも大きい偏差の場合、前記相関モジュール、特に前記ニューラルネットワークを適合して、ステップa)〜ステップd)を再度行うステップ、
e) 一致又は所定の限界値未満の偏差の場合、トレーニングを終了するステップ、及び
f) トレーニングされたニューラルネットワークを同一タイプの真空ポンプに伝えるステップ
でトレーニングされていることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ、特にドライ圧縮二軸ポンプ、及び真空ポンプを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の真空ポンプは、入口及び出口を有するハウジングを備えている。ハウジングには、電気モータによって駆動されて回転するロータが配置されている。ガス状媒体が入口から出口に運ばれるように、ロータは、ステータ又は第2のロータのロータ要素と協働するロータ要素を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特にドライ圧縮二軸ポンプの場合、送出媒体の逆流を回避して、ひいては優れた送出性能を達成するために、ロータのロータ要素間及びロータ要素とステータとの間に夫々僅かな距離しかないことが必要である。しかしながら、距離は、真空ポンプの動作温度及びロータの回転速度によって定められる。従って、例えば入口での高温、流入するガスの高温又は冷却液の高温のような最適でない動作パラメータの場合であっても、ロータ及びハウジング及び/又は第2の軸の接触を防ぐように、距離が設定される。従って、従来のポンプでは、距離が安全マージンを含むように、ロータ要素とステータと第2のロータのロータ要素との間の夫々の距離の大きさが選択されている。しかしながら、そのためにポンプ出力が低下する。
【0004】
ロータ要素とハウジングと第2の軸のロータ要素との間の夫々の距離をセンサによって検知することが可能である。しかしながら、このような検知は複雑であり、ひいてはコストがかかる。
【0005】
真空ポンプの動作中の別の臨界パラメータは、ロータを支持する軸受の温度である。ロータの回転により軸受が加熱され、限界温度を超えると既存の潤滑剤が腐食し、ひいては潤滑性能を失うので、限界温度を超過してはならない。更に、熱変形によって軸受温度が更に制限される。しかしながら、高速、入口での高圧、入口でのガスの高温、及び冷却水の高温は軸受の温度の一因となるので、最悪な動作条件でも軸受が限界温度に達しないように、ロータの速度を相応して適合しなければならない。このために、ロータの最高限度の回転速度を低下させることにより、ポンプ出力も低下する。
【0006】
本発明は、製造コストが安く最適性能を有する真空ポンプ、及び真空ポンプを作動させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に係る真空ポンプ及び請求項11に係る方法によって達成される。
【0008】
特にドライ圧縮二軸ポンプである本発明に係る真空ポンプは、入口及び出口を有するハウジングを備えている。ハウジングには、特に軸受によって回転自在に支持されているロータが配置されている。ロータは、特に少なくとも1つのロータ要素を有している。更に、ロータが回転するようにロータを駆動するためのモータが設けられており、ロータの回転によって、ガス状媒体が入口から出口に運ばれる。更に、真空ポンプは、モータ、特にモータの速度を制御するためにモータに連結されている制御装置を備えている。
【0009】
本発明によれば、真空ポンプの少なくとも1つの動作パラメータを検知するためのセンサが設けられており、センサは制御装置に連結されている。制御装置は、検知される動作パラメータを真空ポンプの臨界パラメータと相互に関連付けるように構成されている相関モジュールを有している。そのため、モータが臨界パラメータに基づき制御装置によって制御され、特にモータの速度が制御される。従って、真空ポンプの少なくとも1つの検知された動作パラメータから、真空ポンプの臨界パラメータが得られ、真空ポンプの臨界パラメータに基づきモータが制御される。真空ポンプのあらゆる動作状況で臨界パラメータの限界値の超過を防止することを保証する夫々の臨界パラメータの安全マージンを設けることが必要ではなくなる。従って、本発明に係る真空ポンプは、既存の動作パラメータに応じて最適な出力を常に与えることができる。
【0010】
2以上のセンサが設けられていることが好ましい。2以上のセンサが設けられていることにより、真空ポンプの2以上の動作パラメータ、特に複数の動作パラメータを検知することが可能になる。従って、臨界パラメータと相互に関連付けられ得る複数の動作パラメータが使用可能である。或いは、2以上のセンサによって特に真空ポンプの様々な位置で動作パラメータを検知することが可能である。
【0011】
検知される動作パラメータは、入口でのガス温度、出口でのガス温度、流入する特には水である冷媒の温度、流出する特には水である冷媒の温度、モータの回転速度、特には電力消費量又は電気モータの励磁電圧とロータの回転との位相シフトによって決定されるモータ出力、冷媒の流量、振動、入口での圧力及び出口での圧力の値の内の一又は複数であることが好ましい。これらは、測定が簡単な動作パラメータである。特に、このために必要なセンサは安価である。
【0012】
臨界パラメータはロータ及び/又はステータ又はハウジングの距離であることが好ましい。特に、二軸ポンプが設けられている場合、臨界パラメータは、設けられている2つのロータ間の距離とすることが更に可能である。或いは又は更に、軸受温度が臨界パラメータとして選択され得る。特に、2以上の臨界パラメータを考慮することが可能である。一般的に、臨界パラメータは、真空ポンプの限界値を超過すると、真空ポンプの損傷又は真空ポンプの故障の原因となる真空ポンプのパラメータである。
【0013】
相関モジュールは、回帰又はファジー論理、又は一般に機械学習アルゴリズム、好ましくは機械学習に基づく回帰又は回帰モジュールによって、動作パラメータ及び臨界パラメータを相互に関連付けるように構成されていることが好ましい。
【0014】
相関モジュールは、相関関数によって動作パラメータ及び臨界パラメータを相互に関連付けるように構成されていることが好ましい。ここで、基礎となる相関関数は真空ポンプのモデルに基づくことが可能である。従って、検知される一又は複数の動作パラメータから一又は複数の臨界パラメータを直接得ることができるように、各動作パラメータ又は複数の動作パラメータが、相関関数に基づき一又は複数の臨界パラメータの特定の値に割り当てられる。
【0015】
相関モジュールは、特に再帰型ニューラルネットワークとして構成されているニューラルネットワークを有していることが好ましい。ここで、動作パラメータ及び臨界パラメータはニューラルネットワークによって相互に関連付けられる。ニューラルネットワークによって、特定のモデルに戻ることなく一又は複数の動作パラメータを臨界パラメータと相互に関連付けることが可能になる。
【0016】
ニューラルネットワークはトレーニングされており、少なくとも1つの臨界パラメータのための少なくとも1つのセンサが最初に設けられることが好ましい。トレーニングのために、検知される動作パラメータが入力値として使用され、臨界パラメータが出力値として使用される。ここで、出力値を、トレーニングのために使用されるセンサによって決定された臨界パラメータと比較することにより、ニューラルネットワークをトレーニングする。トレーニングは、ポンプタイプ毎、つまり異なる真空ポンプ毎に一度だけ行う必要がある。適切にトレーニングされたニューラルネットワークが存在すると、ニューラルネットワークは、同一のタイプの更なる真空ポンプ又は単に無視できる程度に変更された真空ポンプの制御に実施され得る。従って、少なくとも1つの臨界パラメータのためのセンサがトレーニング中のみ必要である。実際の動作中、臨界パラメータのためのセンサは必要ではない。
【0017】
真空ポンプは、臨界パラメータのためのセンサを備えないことが好ましい。特に、真空ポンプは、あらゆる臨界パラメータのためのセンサを備えない。臨界パラメータのためのセンサは特に高価なセンサであるので、これらのセンサを省くことにより、真空ポンプのためのコストを大幅に下げることが可能になる。
【0018】
制御装置は、臨界パラメータが所定の限界値を超過すると、ロータの回転速度を低下させるように構成されていることが好ましい。従って、真空ポンプの損傷が防止される。
【0019】
臨界パラメータが所定の限界値に達しない場合、回転速度が上昇することが好ましい。特に、この限界値は上述したような基本的に同一の限界値である。そのため、様々な動作パラメータによって定められる既存の動作条件に応じて最適な動作性能を達成することが保証される。
【0020】
更に本発明は、真空ポンプ、特に上述したようなポンプを作動させる方法に関する。
【0021】
以下に、本発明を、添付図面を参照して好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る二軸ポンプを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図示された例示的な実施形態ではスクリューポンプとして構成された本発明に係る真空ポンプ10は、入口14及び出口15を有するハウジング12を備えている。ハウジング12には、螺旋状のロータ要素18を有する第1の軸16が配置されている。第1の軸16と平行に第2の軸20がハウジング12に配置されており、前記第2の軸は、第1の軸16のロータ要素18と係合する螺旋状のロータ要素22を有している。更に、歯車26を介して2本の軸16, 20を駆動して回転させる電気モータ24が設けられている。このために、軸16, 20は軸受28に回転自在に支持されている。2本の軸16, 20及び軸16, 20に連結されているロータ要素18, 22が反対方向に回転するため、ガス状媒体が入口14から出口15に送出される。
【0024】
本発明に係る真空ポンプ10は、電気モータ24を制御するための制御装置30を更に備えている。制御装置30は、真空ポンプ10の動作パラメータを検知するための様々なセンサに連結されている。例えば、
図1では、センサ36が、ハウジング12の冷媒供給システム34の入口32に配置された温度センサとして構成されている。このセンサ36は、流入する冷媒の温度を検知し、冷媒は特には水である。制御装置30に連結されている別のセンサ38が、入口14でのガスの温度を検知する。センサによって更なる動作パラメータを更に検知することが可能であり、更なる動作パラメータは、例えば、出口15での温度、冷媒供給システム34の出口40で流出する冷媒の温度、ロータ要素18, 22の回転速度、電気モータ24のモータ出力、冷媒供給システム34の冷媒流量、ハウジング12での真空ポンプ10の振動、入口14での圧力及び/又は出口15での圧力である。
【0025】
これらの前述した動作パラメータの内の1つ、複数又は全てを制御装置30によって検知する。制御装置30は、検知する動作パラメータを真空ポンプ10の臨界パラメータと相互に関連付ける相関モジュールを有している。そのため、制御装置30は、このように決定された臨界パラメータに応じて真空ポンプ10の電気モータ24を制御する。臨界パラメータは、例えばロータ要素18, 22の互いに対する距離、又はハウジング12に対するロータ要素18, 22の夫々の距離である。ロータ要素18, 22が互いに又はハウジング12に接する場合、真空ポンプの著しい損傷又は破壊さえ生じる。制御装置30は、例えば、このような接触を防ぐべく回転速度を低下させるために、決定された動作パラメータ及び相互に関連付けられた臨界パラメータに基づき真空ポンプを制御する。ここで、臨界パラメータの直接検知は不要である。別の臨界パラメータは軸受28の軸受温度である。限界温度を超過する場合、軸受28の潤滑が保証されなくなるので、軸受28が破壊する場合がある。更なる臨界パラメータを更に含んでもよく、真空ポンプの夫々の臨界パラメータは、限界値を超過すると真空ポンプの適切な動作が保証されなくなり、真空ポンプが損傷又は破壊する場合があるように限界値が存在する臨界パラメータとしてみなされる。
【0026】
図2は制御図である。ここで、複数の動作パラメータ42が相関モジュール44に与えられる。
図2に示されている例では、3つの動作パラメータ42が使用されている。しかしながら、より多い又はより少ない動作パラメータ42を使用して相関モジュール44に伝えることができるように、数はこの数に限定されない。
【0027】
特に、相関モジュール44は、動作パラメータ42を真空ポンプの一又は複数の臨界パラメータと相互に関連付ける機械学習に基づくモデルとして構成され得るニューラルネットワークである。このために、相関モジュールのニューラルネットワークを適切な方法でトレーニングする。特に、トレーニングのためだけに使用されるセンサが真空ポンプに設けられ、このセンサは、動作中に動作パラメータに基づき後で得られる臨界パラメータを直接決定/測定する。ここで、複数の臨界パラメータを含むことができる。ニューラルネットワークをトレーニングする方法は、
a) 少なくとも1つの動作パラメータを決定するステップ、
b) 少なくとも1つの動作パラメータを少なくとも1つの臨界パラメータの値と相互に関連付けるステップ、
c) 臨界パラメータの決定された値を、トレーニングのために設けられたセンサによって測定された臨界パラメータと比較するステップ、
d) 不一致又は余りにも大きい偏差の場合、ニューラルネットワークを適合して、ステップa)〜ステップd)を再度行うステップ、
e) 一致又は所定の限界値未満の偏差の場合、トレーニングを終了するステップ、及び
f) このようにしてトレーニングされたニューラルネットワークを同一タイプの真空ポンプに伝えるステップ
を有する。
【0028】
ここで、このようにして伝えられたニューラルネットワークを相関モジュールに備えた真空ポンプは特に、臨界パラメータを直接測定するためのあらゆるセンサを備えない。
【0029】
図2の例示的な実施形態では、ロータ要素のハウジング12に対する距離、ロータ要素の互いに対する距離、軸受28の軸受温度のような2つの臨界パラメータ46が設けられている。そのため、相関モジュール44によって動作パラメータ42から決定された臨界パラメータ46を、比較器50で所定の限界値48と比較する。臨界パラメータを直接測定するためのセンサは設けられていない。相関モジュール44によって決定された臨界パラメータ46が所定の限界値48を超過する場合、制御要素52は回転速度を適合し、特に回転速度を低下させる。2以上の決定された臨界パラメータ46が夫々の限界値48を超過する場合、最大要素54は、より大きい超過量のみを考慮する。より大きい超過量に起因して制御要素52によって回転速度を低下させることにより、他の臨界パラメータのより小さい超過量が解消される。
【0030】
しかしながら、相関モジュール44によって決定された臨界パラメータ46が所定の限界値48を下回る場合、制御要素52は回転速度を上昇させる。しかしながら、このために、回転速度の絶対最大値が限界値55として定められる。制御要素52による回転速度の上昇量を比較器56で限界値55と比較する。最大許容回転速度に未だ達していない場合、回転速度の上昇量を電気モータ24に伝える。このために、
図2の制御図には、電気モータ24に連結されている連結部58が示されている。
【0031】
従って、上述したように真空ポンプを作動させる方法は、
a) 少なくとも1つの動作パラメータを測定するステップ、
b) 測定された動作パラメータを少なくとも1つの臨界パラメータと相互に関連付けるステップ、
c) 決定された臨界パラメータを所定の限界値と比較するステップ、及び
d) 比較結果に応じて電気モータを制御し、特に速度を適合するステップ
を有する。
【0032】
従って、真空ポンプ10は最悪な動作条件用に構成される必要がなく、動作を既存の動作パラメータに動的に適合することができ、真空ポンプの臨界パラメータが所定の限界値を超過しないことに常に留意する。しかしながら、臨界パラメータが限界値を下回る場合、回転速度の上昇、ひいてはポンプ出力の増加が可能になる。
【国際調査報告】