(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-533529(P2021-533529A)
(43)【公表日】2021年12月2日
(54)【発明の名称】Liイオン電池用アノード
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20211105BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20211105BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20211105BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/40
H01M4/1395
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-504419(P2021-504419)
(86)(22)【出願日】2019年7月25日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月11日
(86)【国際出願番号】FR2019051842
(87)【国際公開番号】WO2020021204
(87)【国際公開日】20200130
(31)【優先権主張番号】1857007
(32)【優先日】2018年7月27日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス・ドス・サントス,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,グレゴリー
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA15
5H050BA17
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA09
5H050EA24
5H050GA02
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA08
(57)【要約】
本発明は、Liイオン二次電池用のアノードに関するものであり、該アノードはフッ素化コポリマー(複数可)をベースにした保護フィルムで覆われる。また、本発明は、このアノードを製造するための方法に関する。本発明はまた、本発明によるアノードを含むLiイオン二次電池に関する。本発明は、最後に、負極活物質を含むリチウムイオン電池のアノードを覆うフィルムとしてのフッ素化コポリマー(複数可)の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質を含む、リチウムイオン電池用のアノードであって、該アノードが、
− フッ化ビニリデン単位及びトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE)のコポリマー、
− フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE)のコポリマー、並びに
− フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CTFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDf−TrFE−HFP)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CTFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDf−TFE−HFP)のターポリマーから選択されるフッ素化ターポリマー
から選択される少なくとも1つのコポリマー
又はP(VDF−TrFE)コポリマーとP(VDF−TFE)コポリマーとのブレンド、P(VDF−TrFE)コポリマーと前記ターポリマーの1種とのブレンド、P(VDF−TFE)コポリマーと前記ターポリマーの1種とのブレンド、及び前記ターポリマーの中の2種のターポリマーのブレンドから選択されるブレンド
を含むフィルムで覆われており、
前記負極活物質がアルカリ金属である、
アノード。
【請求項2】
前記負極活物質がリチウムである、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
前記フィルムが、1〜14μm、好ましくは1〜10μm、より優先的には2〜10μmの範囲の厚さを有する、請求項1又は2に記載のアノード。
【請求項4】
前記フィルムが、1.2〜2g/cm3の範囲の密度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項5】
前記負極活物質上に堆積された前記フッ素化フィルムが、コポリマーとターポリマーとのブレンドで形成される場合、これらは50:50〜1:99、好ましくは45:55〜1:99、より特に好ましくは40:60〜5:95の重量比で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項6】
式P(VDF−TrFE)のコポリマーにおいて、トリフルオロエチレンに由来する単位の割合が、フッ化ビニリデンに由来する単位及びトリフルオロエチレンに由来する単位の合計に対して55モル%未満で、18モル%より多い、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項7】
式P(VDF−TFE)のコポリマーにおいて、テトラフルオロエチレンに由来する単位の割合が、フッ化ビニリデンに由来する単位及びテトラフルオロエチレンに由来する単位の合計に対して60モル%未満で、10モル%より多い、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項8】
前記ターポリマー中のTrFE単位又はTFE単位に対するVDF単位のモル比が、85/15〜30/70、好ましくは75/25〜40/60の値を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項9】
CFEモノマー、HFPモノマー又はCTFEモノマーに由来する単位の割合が、ターポリマーの全ての単位に対して、1〜15モル%、より好ましくは1〜12モル%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のフッ素化コポリマーのフィルムで覆われた負極活物質の層を含む負極の製造方法であって、前記負極活物質の表面に前記フッ素化コポリマーのフィルムを堆積させる工程を含む、方法。
【請求項11】
前記フィルムの堆積が溶媒経路により行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炭酸塩、カルバメート、ニトリル、アミド、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、スルホラン、ニトロメタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1,H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒に、前記フッ素化コポリマー又は前記フッ素化ターポリマーを溶解する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルムの堆積が乾燥経路により行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の負極、陽極及び電解質を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項15】
− フッ化ビニリデン単位及びトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE)のコポリマー、
− フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE)のコポリマー、並びに
− フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CTFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDf−TrFE−HFP)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CTFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDf−TFE−HFP)のターポリマーから選択されるフッ素化ターポリマー
から選択されるコポリマーの、
又はP(VDF−TrFE)コポリマーとP(VDF−TFE)コポリマーとのブレンド、P(VDF−TrFE)コポリマーと前記ターポリマーの1種とのブレンド、P(VDF−TFE)コポリマーと前記ターポリマーの1種とのブレンド、及び前記ターポリマーの中の2種のターポリマーのブレンドから選択されるブレンドの、
負極活物質を含むリチウムイオン電用アノードを覆うフィルムとしての使用であって、前記負極活物質内のリチウムデンドライトの形成を阻害するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、Liイオンタイプのリチウム二次電池における電気エネルギー貯蔵の分野に関する。より具体的には、本発明は、Liイオン二次電池のためのアノードであって、フッ素化コポリマー(複数可)をベースとする保護フィルムを含むアノードに関する。また、本発明は、このアノードを調製するための方法に関する。本発明は、最後に、本発明によるアノードを含むLiイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のリチウムイオン電池は、溶媒及びリチウム塩をベースとする可燃性の液体電解質を含む。コンピュータ、タブレット又は携帯電話(スマートフォン)などの電子消費材の分野のみならず、輸送、特に電車による輸送の分野でもこの種の電池の使用が増加しているが、これらのリチウム電池の安全性の向上及び製造コストの削減が大きな課題となっている。これらの電池には、充電時にLiイオンが挿入されるグラファイトアノードが使用されている。生成する化合物はC
6Li、すなわちグラファイト72g当たり1Li当量である。
【0003】
Li金属アノードによるグラファイトの置換によりエネルギー密度の大幅な増加が可能になることが長い間知られているが、リチウム金属で作られたアノードの使用に関する主な課題は、金属の還元の間のLiデンドライトの形成に関連し、これは低いクーロン効率、電池体積の増加、電解質の分解の加速、セパレータの穿孔、したがって短絡及び熱暴走を引き起こす可能性がある。
【0004】
添加剤を用いて界面を安定化させること、又は遮蔽剤として作用する薬剤により又はセラミックで機械的に成長を遮断することにより堆積物を修復することが可能である。
【0005】
Liアノードの安定化は、溶媒/塩対をベースとする電池、及び固体高分子電解質(SPE)をベースとし、液体溶媒を用いない電池のいずれにおいても有利であろうし、従来のLiイオン電池における可燃性液体成分の使用を回避し、より薄く、おそらくより可撓性である電池の製造を可能にする。
【0006】
このように、Yong−Gun Leeら、Chem.Mater.,2017,29(14)、5906−5914頁による刊行物「Dendrite−Free Lithium Deposition for Lithium Metal Anodes with Interconnected Microsphere Protection」において解決策が提案される。この文献は、ポリスチレン−co−ジビニルベンゼンP(S−DVB)のミクロスフェアによって保護されたLi金属アノードについて述べる。これらのミクロスフェアは、特定の領域にイオンを誘導し、その成長中にデンドライトに機械的圧力を加える。
【0007】
Joule 1、2017、643〜650頁に公開されている刊行物「Lithium Metal Anodes: A Recipe for Protection」においてY. Liu及びY. Cuiによって提案された別のアプローチでは、電池の動作中に保護層を形成してSEI(固体電解質界面)を形成することができる。この界面はLi
2S
6及びP
2S
5の混合物(LSPSと表記)により形成されたイオン導体で、ジメトキシエタン(DME)中で特有なポリマー種を生じるように錯体化される。この添加剤はLi金属の表面で還元され、Li
3PS
4の高密度層を与える。この物質の非晶質性は、良好な保護のために極めて重要である。SEIは均一で、高い欠陥密度なしにコンパクトである。
【0008】
前述の2つの方法は実施するには複雑である。ミクロスフェアは、デンドライトが圧力をかけることのできる弱い領域を防ぐために、サイズ及び架橋の高度な均一性を持たなければならない。Li
3PS
4の構造もまた、最良の保護を提供するために十分に制御されなければならない。この制御は容易ではない。さらに、この構造は水分及び酸素に非常に敏感であり、その取り扱いは困難である。
【0009】
J. Am.Chem.Soc.2013,135,135,4450−4456に発行された刊行物「Dendrte−Free Lithium Deposition via Self−Healing Electrostatic Shield Mechanism」において、Dingらはカチオンによりリチウムデンドライトの形成を減少させる静電的自己修復機構を提案し、該カチオンの還元電位はLi/Li
+(Rb,Cs)よりも低い。これらのカチオンは最初のLiクラスタの近傍に蓄積し、静電遮蔽を作る。この遮蔽はすでに存在するクラスタ上での新しいリチウム原子の成長を嫌う。これはリチウム層の方が良質で滑らかであることを意味する。この方法の欠点は、不十分なSEI(固体電極界面)のためにクーロン効率が低いこと、及びRb及びCsのコスト及び利用可能性である。
【0010】
アノードとの界面を安定化させるための別の解決法は、電極をポリマー又は固体層で覆うことである。J. Electrochem.Soc.2014,161,A53−A57に発行されたI.S. Kangらの刊行物「Improved Cycling Stability of Lithium ELectrodes in Rechargeable Lithium Batteries」は、Li金属アノード上のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−co−ポリ(エチレングリコール)コポリマーの層の適用を記述する。
【0011】
文献KR20110082289号には、電極とセパレータとの間にリチウム粉末を含むポリマーフィルムを配置するLiイオン電池が記載されている。前記フィルムは、前記リチウム金属がポリマーバインダー溶液中に分散された溶液を前記電極上に塗布し、その後、乾燥工程を行うことによって調製される。バインダー溶液は、フッ素系ポリマー、アクリルポリマー、SBR(スチレン−ブタジエン)ゴム及びポリアクリロニトリル系ポリマーの少なくとも1種を非水性溶媒に溶解して調製される。
【0012】
しかし、これらのアプローチは閉じ込めに基づいており、デンドライトの成長の本質的な挙動を変えるものではない。
【0013】
したがって、デンドライトの形成に対して有効な手段によって保護され、工業的実施に適合するLiイオン二次電池用のアノードを提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国公開特許第2011−0082289号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Yong−Gun Leeら、Chem.Mater.,2017,29(14)、5906−5914頁、「Dendrite−Free Lithium Deposition for Lithium Metal Anodes with Interconnected Microsphere Protection」
【非特許文献2】Y. Liu及びY. Cui、Joule 1、2017、643〜650頁、「Lithium Metal Anodes: A Recipe for Protection」
【非特許文献3】Dingら、J. Am.Chem.Soc.2013,135,135,4450−4456、「Dendrte−Free Lithium Deposition via Self−Healing Electrostatic SHield Mechanism」
【非特許文献4】I.S. Kangら、J. Electrochem.Soc.2014,161,A53−A57、「Improved Cycling Stability of Lithium ELectrodes in Rechargeable Lithium Batteries」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つ、すなわち、特に高い充電/放電速度の場合に特記すべきデンドライトの形成を解決することである。
【0017】
本発明はまた、フッ素化コポリマーフィルムの堆積によって安定化されるこれらのアノードを製造する方法を提供することを目的とする。最後に、本発明は、安定化されたアノードを含むLiイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、第一に、集電体、及びフッ素化コポリマーのフィルムで覆われた負極活物質の層を含む、リチウムイオン電池のための負極(又はアノード)に関する。用語「フッ素化コポリマー」は、以下に記載するコポリマー及びターポリマーを含む。
【0019】
特徴的に、前記フィルムは、以下のコポリマーの少なくとも1種を含む。
− フッ化ビニリデン単位及びトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE)のコポリマー、又は
− フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE)のコポリマー、又は
− 以下から選択されるフッ素化ターポリマー
− フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CTFE)のターポリマー、
− フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CTFE)のターポリマー、
− フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDF−TrFE−HFP)のターポリマー、
− フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及び1,1−クロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CFE)のターポリマー、
− フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CTFE)のターポリマー、
− フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDF−TFE−HFP)のターポリマー
【0020】
様々な実施形態によると、前記アノードは、必要に応じて組み合わされる、以下の特徴を有する。
【0021】
1つの実施形態によると、前記フィルムは、P(VDF−TrFE)コポリマーとP(VDF−TFE)コポリマーとのブレンドを含む。
【0022】
1つの実施形態によると、前記フィルムは、P(VDF−TrFE)コポリマーと前記ターポリマーの1種とのブレンドを含む。
【0023】
1つの実施形態によると、前記フィルムは、P(VDF−TFE)コポリマーと前記ターポリマーの1種とのブレンドを含む。
【0024】
1つの実施形態によると、前記フィルムは、上で列挙されたものから選択される2種のターポリマーのブレンドを含む。
【0025】
負極活物質はアルカリ金属である。1つの実施形態によれば、負極活物質はリチウムである。
【0026】
1つの実施形態によると、前記フィルムは、1〜14μm、好ましくは1〜10μmの範囲、より優先的には2〜10μmの間の厚さを有し、限界値を含む。
【0027】
1つの実施形態によると、前記フィルムは1.2〜2g/cm
3の範囲の密度を有する。
【0028】
本発明はまた、前記フッ素化コポリマー(複数可)のフィルムで覆われた負極活物質の層を含む負極を製造する方法に関する。この方法は、前記負極活物質の表面にフッ素化コポリマー(複数可)のフィルムを堆積又は形成する工程を含む。
【0029】
1つの実施形態によると、フィルムの形成は、フッ素化コポリマー(複数可)の溶液から溶媒を蒸発させることによって、溶媒経路を介して行われる。
【0030】
1つの実施形態によると、フィルムの堆積は、適切な支持体上にフッ素化フィルムを調製すること、及びこのフッ素化フィルムを負極活物質の層上に転写することからなる乾燥経路を介して行われる。
【0031】
本発明の別の主題は、負極、陽極及び電解質を含むLiイオン二次電池である。
【0032】
本発明の別の主題は、
− フッ化ビニリデン単位及びトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE)のコポリマー、
− フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE)のコポリマー、並びに
− フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CTFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDf−TrFE−HFP)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CTFE)のターポリマー、及びフッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDf−TFE−HFP)のターポリマーから選択されるフッ素化ターポリマー
又はP(VDF−TrFE)コポリマーとP(VDF−TFE)コポリマーとのブレンド、P(VDF−TrFE)コポリマーと前記ターポリマーの1種とのブレンド、P(VDF−TFE)コポリマーと前記ターポリマーの1種とのブレンド、及び上で列挙されたものの中の2種のターポリマーのブレンドから選択されるブレンドから選択されるコポリマーの、負極活物質内のリチウムデンドライトの形成を阻害するための負極活物質を含むリチウムイオン電用アノードを覆うフィルムとしての使用である。
【0033】
本発明により、先行技術の欠点を克服することが可能になる。本発明は、より具体的には、負極活物質の表面に堆積したフッ素化コポリマー(複数可)のフィルムの存在により安定化されるアノードを提供し、該フィルムは負極活物質内のデンドライトの形成を阻害する。本発明は、リチウムイオン二次電池の製造に特に適しており、その負極活物質はリチウムである。この電極の安定性により、電池の性能が向上し、耐用年数が延びる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
これから本発明を以下の説明において、より詳細に、及び非限定的な方法で説明する。
【0035】
第1の態様によれば、本発明は、集電体、及びフッ素化コポリマー(複数可)のフィルムで覆われた負極活物質の層を含むリチウムイオン電池用の負極に関する。特徴的には、前記フィルムは、フッ化ビニリデン単位及びトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE)のコポリマー、フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE)のコポリマー、又はフッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及び1,1−クロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TrFE−CTFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、トリフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDf−TrFE−HFP)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CFE)のターポリマー、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びクロロトリフルオロエチレン単位を含む式P(VDF−TFE−CTFE)のターポリマー、及びフッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位を含む式P(VDf−TFE−HFP)のターポリマーから選択されるフッ素化ターポリマー、又は該コポリマーの1種と該ターポリマーの1種とのブレンド、若しくは2種のコポリマーのブレンド、若しくは2種のターポリマーのブレンドを含む。
【0036】
負極活物質は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はホウ素属の元素であることができる。本発明で請求されている負極活物質はアルカリ金属である。
【0037】
様々な実施形態によると、前記アノードは、必要に応じて組み合わされる、以下の特徴を有する。
【0038】
1つの実施形態によると、前記負極活物質はリチウムである。
【0039】
1つの実施形態によると、前記フィルムは、1〜14μm、好ましくは1〜10μmの範囲、より優先的には2〜10μmの範囲の厚さを有し、限界値を含む。フッ素化フィルムの厚さは、電池の電力動作に不利な界面インピーダンスを生じることを避けるために制限されなければならない。厚すぎるフィルムでは、リチウムの拡散が遅くなる。
【0040】
1つの実施形態によると、前記フッ素化フィルムは1.2〜2g/cm
3の範囲の密度を有する。
【0041】
1つの実施形態によると、前記フッ素化フィルムは、100nm〜1μmの間の細孔径を有する多孔質フィルムである。
【0042】
負極活物質の層上にフッ素化フィルムが存在すると、リチウムイオンデンドライトの形成を防止するか、少なくとも大きく減少させることが可能になる。標的とするコポリマー又はターポリマーは、必然的に極性であり、FE相(コポリマーの強誘電相)及び/又はRFE相(ターポリマーのリラクサ強誘電相)であり、これらは非常に特別な条件(例えば、フィルムを延伸したり、特定の溶媒に溶解したり、及び緩慢な蒸発又は添加剤を加えたりすることによる(これらの解決策は工業的に利用可能な方法とは適合しない))下で、PVDFで得られるベータ相と類似している。技術的詳細を詳しく述べることを望まないが、出願人は、記載したコポリマー及びターポリマーから得られるフッ素化フィルムの極性は、デンドライトの形成に有利に働くであろう垂直方向ではなく、むしろ集電体及びLi金属のフィルムに平行な面でのリチウムカチオンの配向を可能にするのに十分であると考えている。
【0043】
したがって、本発明は、負極活物質の表面に堆積されたフィルムの形態の、フッ素化コポリマー若しくはターポリマー、又はそれらのブレンドの使用に基づく。「フッ素化」という用語は、−F基を含むポリマーを意味すると理解される。
【0044】
好ましくは、前記コポリマー及びターポリマーは、強誘電性ポリマー又はリラクサ強誘電性ポリマーである。強誘電性コポリマー又はターポリマーは、高い保持力(典型的には20V/μmのオーダー、又は50V/μmでさえある)及び高い残留分極(典型的には60mC/m
2のオーダー)を有する分極曲線(電荷対印加場)の大きなヒステリシスを有する。リラクサターポリマー又はコポリマーは、低い保持力(典型的には10V/μm未満)、低い残留分極(典型的には20mC/m
2未満)又はまったく残留分極がない、高い飽和分極(典型的には60mC/m
2のオーダー又は70mC/m
2でさえある)及び電場の周波数に依存する温度の関数としての誘電体の最大誘電率を有する。
【0045】
さらに、別の利点は、コポリマー、特にターポリマーのより高い誘電率という利点であり、これによりリチウムとの界面でより顕著な分極、及び電解質のより顕著な解離を得ることが可能になる。
【0046】
23℃及び1kHzでのコポリマー及びターポリマーの比誘電率は10より大きい。温度の関数としての最大誘電率は、少なくとも30であり、又は40でさえある。比誘電率は、誘電分光法によって測定することができる。
【0047】
P(VDF−TrFE)コポリマーのキュリー温度は50〜140℃の間である。本発明のポリマーのキュリー温度は、示差走査熱量測定又は誘電分光法によって測定することができる。
【0048】
1つの実施形態によれば、式P(VDF−TrFE)のコポリマーにおいて、トリフルオロエチレンに由来する単位の割合は、フッ化ビニリデンに由来する単位及びトリフルオロエチレンに由来する単位の合計に対して55モル%未満であり、18モル%より多い。
【0049】
1つの実施形態によれば、式P(VDF−TFE)のコポリマーにおいて、テトラフルオロエチレンに由来する単位の割合は、フッ化ビニリデンに由来する単位及びテトラフルオロエチレンに由来する単位の合計に対して60モル%未満であり、10モル%より多い。
【0050】
本発明のコポリマー及びターポリマーは、乳化重合、マイクロエマルジョン重合、懸濁重合及び溶液重合などの任意の既知の方法を使用することによって製造することができる。ターポリマーについては、文献WO2010/116105号に記載されている方法を使用することが特に好ましい。この方法により、高分子量、かつ適切に構造化されたターポリマーを得ることが可能になる。
【0051】
1つの実施形態によれば、本特許出願の文脈において、ターポリマーの「分子量」(Mw)とも呼ばれる重量平均モル質量は、200000〜1500000g/mol、望ましくは250000〜1000000g/mol、さらに300000〜700000g/molの値を有する。
【0052】
後者は、反応器内の温度のような方法の特定のパラメータを改変したり、移動剤を加えたりすることによって調整することができる。
【0053】
分子量分布は、ジメチルホルムアミド(DMF)を溶離液とし、多孔度が増加する3つのカラムのセットを用いるSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)により推定できる。固定相はスチレン−DVBゲルである。検出方法は屈折率の測定に基づいており、較正はポリスチレン標準で行われる。試料を0.5g/lでDMFに溶かし、0.45μmナイロンフィルターでろ過する。
【0054】
分子量は、ASTM D1238(ISO 1133)に従った10kgの荷重下で230℃でのメルトフローインデックス(MFI)の測定によっても評価できる。MFIは0.1〜100の間であり、好ましくは0.5〜50の間であり、より具体的には1〜10の間である。
【0055】
また、分子量は、規格ISO 1628に従った溶液中の粘度の測定によっても特徴づけることができる。メチルエチルケトン(MEK)は、粘度指数の決定のためにターポリマーの好ましい溶媒である。
【0056】
より一般的には、本発明のターポリマーのモル組成は、種々の手段によって決定することができる。炭素、フッ素及び塩素又は臭素元素の元素分析のための従来の方法は、2つの独立した未知数(例えば、%VDF及び%TrFE、%Y=100−(%VDF+%TrFE))を有する2つ又は3つの独立した式の系をもたらし、これはポリマーの重量によって組成を明確に計算することを可能にし、該重量からモル組成が推論される。
【0057】
使用はまた、適切な重水素化溶媒中のポリマーの溶液の分析による多核(この例ではプロトン(
1H)及びフッ素(
19F))NMR技術についてなされる。NMRスペクトルは、多核プローブを取り付けたFT−NMR分光計で記録する。次に、どちらかの核に応じて作り出されたスペクトルにおいて異なるモノマーにより与えられた特異的なシグナルが位置づけられる。このように、例えば、TrFE(CFH=CF
2)単位は、プロトンNMRでは、CFH基(およそ5ppm)に特徴的な特異的シグナルを与える。VDFのCH
2基(3ppmを中心とした広範な未分解のピーク)でも同じである。2つのシグナルの相対的な積分により2つのモノマーの相対的な存在量、すなわちVDF/TrFEモル比が得られる。
【0058】
プロトンNMR及びフッ素NMRで得られた様々なシグナルの相対的な積分を組み合わせると、式の系ができ、その分解能によって様々なモノマー単位のモル濃度が得られる。
【0059】
最後に、塩素又は臭素のようなヘテロ原子のための元素分析とNMR分析を組み合わせることができる。したがって、CTFE又はCFEの含有率は、元素分析による塩素含有率の測定によって決定することができる。
【0060】
このように、当業者は、本発明のターポリマーの組成を、曖昧でなく、必要な正確さで決定することができる様々な方法又は方法の組合せを利用することができる。
【0061】
1つの実施形態によると、ターポリマー中のVDF単位とTrFE単位又はTFE単位とのモル比は、85/15〜30/70の値を有し、好ましくは75/25〜40/60の値を有する。
【0062】
1つの実施形態によると、CFEモノマー、HFPモノマー又はCTFEモノマーに由来する単位の割合は、ターポリマーの全ての単位に対して1〜15モル%であり、より好ましくは1〜12モル%である。
【0063】
1つの実施形態によれば、フッ素化コポリマー又はターポリマーは、ラジカル重合の間に導入される、0.1〜10モル%の間、好ましくは0.2〜8モル%の間、及び特に0.5〜5モル%の間の追加の単位を含み得る。この追加の単位により、その電気活性特性を劣化させることなく、酸、アルコール、グリシジル、トリフルオロメタクリル酸のようなホスホネート型の機能単位の導入によって、接着性などのフィルムのある種の特定の特性を改善することが可能になる。
【0064】
1つの実施形態によれば、フッ素化コポリマー又はポリマーを官能化することができる。すなわち、重合工程の後に、ポリマー鎖に沿って、例えばアジド官能基を有するターポリマーにより、フィルムの架橋を可能にする、又は例えばイミダゾリジニル、トリアゾリル、トリアジニル、ビスウレイル、ウレイドピリミジル基などの会合官能基を有するターポリマーにより、電極上のフィルムの接着性を改善することを可能にする化学官能基を導入するために化学的に変性される。
【0065】
式P(VDF−TrFE)又はP(VDF−TFE)のコポリマーは、上で列挙したターポリマーと相溶性があり、ターポリマーのキュリー温度とは異なるキュリー温度を有する。「相溶性」という用語は、2つのポリマーのブレンドが単一のガラス転移温度を有する均一相を形成することを意味すると理解される。
【0066】
1つの実施形態によれば、前記負電極活物質上に堆積されたフッ素化フィルムが、コポリマー及びターポリマーのブレンドで形成される場合、これらは、50:50〜1:99、好ましくは45:55〜1:99、より特に好ましくは40:60〜5:95の重量比で存在する。
【0067】
実施形態によると、前記フィルムは、アクリル及び/又はメタクリルタイプの相溶性ポリマーも含む。これらは、フィルムを安定化させる効果、接着性を促進する効果、又は架橋を可能にする効果を有する。
【0068】
第2の態様によれば、本発明は、前記フッ素化コポリマー(複数可)のフィルムで覆われた負極活物質の層を含む負極を製造する方法に関する。この方法は、前記負極活物質の表面にフッ素化コポリマー(複数可)のフィルムを堆積又は形成する工程を含む。
【0069】
1つの実施形態によれば、フィルムの堆積は溶媒経路を介して行われる。溶媒−経路法は、特にアノードがLi金属でできる場合に、アノードを損なわない溶媒又は溶媒の混合物にフッ素化コポリマー及び/又はフッ素化ターポリマーを溶解することからなる。特に、ケトン又はエステルをはじめとする多くの溶媒は、化学反応によりLi金属を損なう。
【0070】
フッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレンをベースとするコポリマー及びターポリマーは多数の溶媒に可溶である。PVDFホモポリマーとは異なり、これらは容易に結晶化し、溶液から極性(強誘電性又はリラクサ強誘電性)相を与える。このようにして、デンドライトの形成を阻害する沈着物を簡単に、迅速かつ安価に製造することが可能になる。
【0071】
本発明で使用する溶媒は、炭酸塩、カルバメート、ニトリル、アミド、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、スルホラン、ニトロメタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1,H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0072】
ニトリルの中では、例えば、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2−メチルグルタロニトリル、3−メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0073】
炭酸塩の中では、例えば、エチレンカーボネート(EC)(CAS:96−49−1)、プロピレンカーボネート(PC)(CAS:108−32−7)、ブチレンカーボネート(BC)(CAS:4437−85−8)、ジメチルカーボネート(DMC)(CAS:616−38−6)、ジエチルカーボネート(DEC)(CAS:105−58−8)、メチルエチルカーボネート(EMC)(CAS:623−53−0)、ジフェニルカーボネート(CAS:102−09−0)、メチルフェニルカーボネート(MPC)(CAS:13509−27−8)、ジプロピルカーボネート(DPC)(CAS:623−96−1)、メチルプロピルカーボネート(MPC)(CAS:1333−41−1)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ビニレンカーボネート(VC)(CAS:872−36−6)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)(CAS:114435−02−8)、トリフロプロピレンカーボネート(CAS:167951−80−6)又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0074】
これらの溶媒は、有利には、0〜100℃の間、好ましくは10〜80℃の間、及び有利には15〜70℃の間の温度の範囲にわたり、1以上の誘電率を有する。誘電体の誘電率測定は、誘電率に比例するキャパシタンスを測定することを可能にするSefelec LCR 819 LCR測定器を用いて行うことができる。
【0075】
負極活物質上にコポリマー及び/又はターポリマー及び溶媒(複数可)の溶液をフィルム形態で堆積させる工程に続いて、溶媒を蒸発させる工程(フィルムを乾燥させる工程)を行う。乾燥後、1つの実施形態によると、前記フィルムは、2〜14μm、好ましくは2〜10マイクロメートルの範囲の厚さを有し、限界値を含む。
【0076】
1つの実施形態によると、フィルムの堆積は、適切な支持体上にフッ素化フィルムを調製し、このフッ素化フィルムを負極活物質の層上に転写することからなる乾燥経路を介して行われる。フッ素化フィルムの転写は、任意の機械的方法によって行われ、これは、ローラー又は積層によって行われ得、続いて100℃を超えない熱供給体を用いてプレスされる。
【0077】
1つの実施形態によると、溶液は、反応性二重結合の点で二官能性又は多官能性の(メタ)アクリルモノマー、二官能性又は多官能性の第一級アミン、アジド官能基を有する二官能性又は多官能性化合物、有機過酸化物、二官能性又は多官能性アリル化合物などの共架橋剤を含む。フィルム形態での堆積後、本発明による方法は、フィルムを30℃〜200℃の間、好ましくは50℃〜180℃の間、特に60℃〜160℃の間で熱により架橋する工程、又は放射により、好ましくは紫外線放射、特に波長250〜405nmの間の紫外線放射により架橋する工程を含む。フィルムを架橋した後、後者は、溶液を製造するために使用することができるこれらの溶媒の一部又は全部に不溶性であり、電解質の使用がフィルムの溶解度によってもはや制限されないので、架橋フィルムに特別な利点を与える。
【0078】
本発明の別の主題は、負極、陽極及び電解質を含むLiイオン二次電池である。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本発明の範囲を非限定的に説明する。
【0080】
試料を100℃に加熱し、3分間この温度で維持し、それらの熱履歴を消去した。その後製品を−80℃まで冷却した後、5℃/分〜20℃/分の間の速度で200℃に加熱した。
【0081】
[例1(比較)]
Li金属アノード、25μm厚のPPセパレータ、及び2%PVDF、5%Ketjen Black及び93%NMC111(LiNi
0.33Mn
0.33Co
0.32O
2)を含むカソードを用いて、ボタン電池を組み立てる。電解質は、EMC/EC(体積比7/3)との混合物としての1M LiFSIである。
【0082】
サイクリングは、300周期にわたり3〜4.2ボルトの間の充電及び放電における2Cで行う。
【0083】
[実施例2]
体積比3/7のEC/EMC混合物中の、80%VDF及び20%TrFEのモル組成のP(VDF−TrFE)コポリマーの溶液を調製する。次に、乾燥後、4ミクロンのフィルムを得るのに十分な量の液体を、グローブボックス内のLi金属箔上に堆積させる。コポリマー溶液の比較的迅速な蒸発が起こる。
【0084】
フッ素コポリマーで処理したLiアノード、25μm厚のPPセパレータ、及び2%PVDF、5%Ketjen Black、及び93%NMC111(LiNi
0.33Mn
0.33Co
0.32O
2)を含むカソードを用いて、ボタン電池を組み立てる。電解質は、EMC/EC(体積比7/3)との混合物としての1M LiFSIである。
【0085】
サイクリングは、300周期にわたり3〜4.2ボルトの間の充電及び放電における2Cで行う。
【0086】
[実施例3]
これらの2つのボタン電池をグローブボックス内で分解し、Liアノードを走査型電子顕微鏡(SEM)で調べた。実施例2のフッ素化コポリマーで処理したアノードは、デンドライトの始まりが非常に少なく(その大きさは50nm未満である)、表面密度が低い。
【0087】
比較例1からの未処理のアノードはデンドライトを有し、その表面密度ははるかにより大きく、長さは数nm〜約1ミクロンの間である。
【0088】
[実施例4]
P(VDF−TrFE−CTFE)ターポリマーのジメトキシエタン溶液を調製する。TrFE単位に対するVDF単位のモル比は67%に等しく、CTFEのモル比は8%に等しい。次に、乾燥後、無孔性の4μmのフィルムを得るのに十分な量の液体を、グローブボックス中のLi金属箔上に堆積させる。コポリマー溶液の比較的迅速な蒸発が起こる。
【0089】
前記フッ素コポリマーで処理したLiアノード、25μm厚のPPセパレータ、及び2%PVDF、5%Ketjen Black、及び93%NMC111(LiNi
0.33Mn
0.33Co
0.32O
2)を含むカソードを用いて、ボタン電池を組み立てる。電解質は、EMC/EC(体積比7/3)との混合物としての1M LiFSIである。
【0090】
サイクリングは、100周期にわたり3〜4.2ボルトの間の充電及び放電における2Cで行う。
【0091】
[実施例5]
実施例4のボタン電池をグローブボックス内で分解し、Liアノードを走査型電子顕微鏡(SEM)で調べる。実施例4のフッ素化ターポリマーで処理したアノードは、デンドライトの始まりが非常に少なく(その大きさは12〜13nm未満である)、表面密度が非常に低い。検査は、ターポリマーは実施例2のコポリマーよりも有効であるようであることを示す。
【0092】
[実施例6]
80%VDF及び20%TrFEのモル組成のP(VDF−TrFE)コポリマーの1,3−ジオキソラン溶液を調製する。次にそれをガラス支持体上に堆積させ、溶媒を除去するのに必要な時間乾燥させた後、フッ素化コポリマーフィルムを剥離し、グローブボックス内でLi金属片に機械的に適用する。60℃の温度で組み立て体に1MPaの圧力を加え、操作可能なフッ素化フィルム−Liアノード複合体を得る。前記フッ素コポリマーで処理したLiアノード、25μm厚のPPセパレータ、及び2%PVDF、5%Ketjen Black、及び93%NMC111(LiNi
0.33Mn
0.33Co
0.32O
2)を含むカソードを用いて、ボタン電池を組み立てる。電解質は、EMC/EC(体積比7/3)との混合物としての1M LiFSIである。サイクリングは、100周期にわたり3〜4.2ボルトの間の充電及び放電における2Cで行う。
【0093】
ボタン電池をグローブボックス内で分解し、Liアノードを走査型電子顕微鏡(SEM)で検査する。処理したアノードはデンドライトの始まりが非常に少なく(その大きさは50nm未満である)、低い表面密度を有する。
【国際調査報告】