【実施例】
【0198】
本開示の様々な特徴および実施形態は、下記の代表的な実施例で示され、これらは、例示を意図するものであり、限定するものではない。当業者は、特定の実施例が、その後に続く特許請求の範囲でより完全に説明されるように、本発明の例示にすぎないことを容易に理解するであろう。本出願に記載されている全ての実施形態および特徴は、その中に含まれる全ての実施形態と互換性があり、組み合わせ可能であると理解されるべきである。
【0199】
実施例1:IL1RAPポリペプチドの生成
本実施例は、本開示の抗IL1RAP抗体を誘発およびスクリーニングする際に抗原として使用される様々なIL1RAPポリペプチド構築物の調製を例示する。
【0200】
hu−IL1RAPの細胞外ドメインは、Wang et al.,Nat.Immunol.,11:905−912(2010)の構造情報に基づいて、完全長の個々のドメイン(すなわち、D1、D2、D3)として組換え精製された。発現構築物のアミノ酸配列境界は、上記の表1および添付の配列表で提供される。全ての組換えIL1RAPポリペプチド構築物は、精製および検出の目的で、下記の「GGGS−V5−6XHis」C末端タグを有した。GGGSGKPIPNPLLGLDSTHHHHHH(配列番号319)。個々のドメイン(例えば、D1、D1D2、D3)の構築物は、精製および検出の目的で、下記の「GGGS−V5−Avi−6XHis」C末端タグ(「Avi」タグも含む)を有した。GGGSGKPIPNPLLGLDSTGLNDIFEAQKIEWHEHHHHHH(配列番号320)。
【0201】
IL1RAP構築物タンパク質は、製造業者のプロトコルに従って、Expi293F細胞(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で発現させた。5日後に細胞を採取し、清澄化した上清に20mMイミダゾールpH7.5を補充し、20mM Tris−HCl、150mM NaCl(TBS)、20mMイミダゾールpH7.5で平衡化したHisTrap FF粗カラム(GE Healthcare、米国イリノイ州シカゴ)に適用した。タンパク質は、20CV勾配で100%TBS、500mMイミダゾールpH7.5に溶出した。タンパク質を含む溶出画分をプールし、タンパク質の分子量に応じて、Superdex75またはSuperdex200増加カラム(GE Healthcare、米国イリノイ州シカゴ)に充填した。単量体タンパク質を含むピーク画分をプールし、1XPBS、pH7.5または25mM HEPES、150mM NaCl(HBS)、pH8.0に保存した。
【0202】
実施例2:ハイブリドーマ法を使用した抗ヒトIL1RAP抗体の生成、さらなる特性評価のためのスクリーニングおよび選択
この実施例は、マウスハイブリドーマ技術を使用して抗hu−IL1RAP抗体を生成する方法、ならびにさらなる特性評価のために抗体をスクリーニングおよび選択する方法を例示する。
【0203】
免疫および融合:Balb/c、Swiss Webster、およびSJ/Lマウスを、50μg/マウスの使用で、hu−IL1RAPの膜型細胞外ドメインを含む配列番号3のhu−M−IL1RAPポリペプチド構築物(表1を参照)で免疫した。初回免疫に続いて、下記の3つの異なるIL1RAP免疫原のその後の追加免疫が、抗IL1RAP抗体の好適な力価を誘導するのに必要なスケジュールおよび期間で、マウスに投与された。25μg/マウスの配列番号3ポリペプチド(hu−M−IL1RAP)、25μg/マウスの配列番号9ポリペプチド(mo−M−IL1RAP)、または25μg/マウスの配列番号6ポリペプチド(hu−M−IL1RAP−D3)。アジュバントMagic Mouse(Creative Diagnostics、ニューヨーク州シャーリー)を全ての免疫に使用した。力価は、以下に記載されるようにELISAによって決定された。力価に基づいて選択されたマウスには、融合前にアジュバントなしで最終の追加免疫を与えた。1日後、脾臓を採取し、標準プロトコルに従って処理した。標準プロトコルに従って、PEGを使用して、脾細胞を骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクションCRL 1580)と融合させ、標準的な技法を使用して96ウェルプレートに約50,000骨髄腫細胞/ウェルで播種し、得られたコロニーのクローン性を最大化した。親ハイブリドーマは、AH(アザセリン+ヒポキサンチン)を補充した選択培地を使用して選択された。
【0204】
ELISAアッセイ:培養の12〜14日後、ハイブリドーマ上清を収集し、配列番号3のhu−M−IL1RAP細胞外ドメインでコーティングされた96ウェルプレートを用いたELISAによる一次スクリーニングに供した。ELISAアッセイは、一般に、Baker et al.,Trends Biotechnol.,20:149−156(2002)に記載されているように実施した。簡潔に述べると、96ウェルMAXISORP(登録商標)平底プレート(Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム、カタログ番号439454)を、50μL/ウェルのタンパク質を用いて、コーティング緩衝液(0.05Mカーボネート緩衝液、pH9.6またはホスフェート緩衝生理食塩水、PBS)中1μg/mLの濃度で、4℃で一晩コーティングした。コーティング溶液を除去した後、ホスフェート緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4(ELISA希釈液)に1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む200μLのアッセイ/ブロッキング溶液を添加し、室温で攪拌しながら1時間または4℃で攪拌せずに一晩、インキュベーションすることにより、非特異的結合をブロッキングした。次にプレートを300μLのPBS、0.05%TWEEN(登録商標)−20(洗浄緩衝液)で3回洗浄した。個々のハイブリドーマクローン(または指示濃度の精製抗体)からの100μLの培養上清を各ウェルに添加し、続いて撹拌しながら室温で1時間インキュベーションした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した50μL/ウェルのヤギ抗マウスIgG Fc(Bethyl Laboratories、米国テキサス州モントゴメリー、カタログ番号A90−131P)を1:3,000希釈で、または西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch,Inc.、米国ペンシルベニア州ウェストグローブ、カタログ番号109−035−088)をELISA希釈液の1:10,000希釈で、添加した。プレートを室温で1時間撹拌しながらインキュベーションし、洗浄緩衝液で6回洗浄し、50μL/ウェルのテトラメチルベンジジン(TMB)マイクロウェルペルオキシダーゼ基質(Scytek Laboratories,Inc.、米国ユタ州ローガン、カタログ番号TM1999)を添加して3〜10分間発色させた。50μL/ウェルの2N H
2SO
4(Sigma−Aldrich Corporation、米国ミズーリ州セントルイス、カタログ番号258105)で酸性化することにより、酵素による発色を停止させた。プレートは、SpectraMax i3Xプレートリーダー(Molecular Devices LLC、米国カリフォルニア州サンノゼ)を使用して450nmの波長で分析した。
【0205】
この一次ELISAアッセイスクリーニングは、配列番号3のhu−M−IL1RAPポリペプチドおよび配列番号6のhu−M−IL1RAP−D3ポリペプチドで免疫された3匹のSwiss Websterマウスによって生成されたハイブリドーマから合計470の抗ヒトIL1RAPバインダーを同定した。これらの470個の親ハイブリドーマを24ウェルプレートに増殖させ(expand)、上記の通りに確認のELISAスクリーニングを実行した結果、315個のhu−IL1RAPバインダーを確認した。
【0206】
ハイブリドーマのHEK−Blue細胞ブロッキングアッセイ、サブクローニングおよび精製のためのスクリーニング
hu−M−IL1RAP結合が陽性であることが確認された315個のハイブリドーマは、以下に記載されるHEK−Blue細胞ブロッキングアッセイを使用して、IL−1媒介性IL1R1/IL1RAPおよびIL−33媒介性ST2/IL1RAPのシグナル伝達経路を阻害する能力についてさらに特性評価された。
【0207】
HEK Blue細胞株:この実施例および次の実施例に記載するHEK−Blue細胞株は、元の親系統としてHEK−293細胞株(ヒト胎児腎臓上皮細胞)を使用する。IL−1α、IL−1β、およびIL−33による刺激に応答するHEK−Blue IL−1/IL−33センサー細胞は、インビボGen(インビボGen、米国カリフォルニア州サンディエゴ、カタログ番号hkb−il33)から入手した。これらのIL−1/IL−33センサー細胞は、IL−33受容体ST2を発現するヒトST2遺伝子を用いたHEK−Blue IL−1βセンサー細胞(インビボGen、カタログ番号hkb−il1b)の安定したトランスフェクションによって生成された。HEK−Blue IL−1β細胞は、NF−κB/AP−1 SEAP(分泌型胚性アルカリホスファターゼ)レポーター遺伝子を発現し、不活性化TNF−α応答を含み、SEAP産生がIL−1またはIL−33経路の活性化を示すことを確実にする。HEK−Blue IL−1/IL−33応答性細胞は、製造業者のガイドラインに従って維持した。簡潔に述べると、細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)(Atlanta Biologicals,Inc.、米国ジョージア州フラワリー・ブランチ)、100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを補充したDMEM(Corning,Inc.、米国ニューヨーク州コーニング)からなる標準成長培地で維持した。成長培地には、SEAPをコードするプラスミドを維持するために100μg/mLゼオシン、IL−1特異性を維持するために200μg/mLハイグロマイシンB、およびST2をコードするプラスミドを維持するために100μg/mLブラスチシジンをさらに補充した。
【0208】
HEK−Blue SEAPアッセイ:HEK−Blue IL−1/IL−33応答性センサー細胞は、IL−1α、IL−1β、またはIL−33刺激が生じた全てのHEK−Blue SEAPアッセイに使用された。アッセイで使用されるアゴニストの半数効果濃度(EC
50)の推定値を提供するために、全アッセイに先立って8ポイントの段階希釈系列からなるアゴニストの用量応答曲線が生成された。実験使用の24時間前に、使用時に最低80%の集密度になる濃度で細胞を96ウェル平底プレートに播種した。所望のアゴニストを最終容積200μLまで細胞に加え、細胞を37℃、5%CO
2で24時間インキュベーションした。SEAP産生は、SEAP検出アッセイを使用して定量化した。SEAP検出媒体QUANTI−Blue(インビボGen)を使用して、様々な指示条件で、一般製造業者のガイドラインによって、SEAPのレベルを決定した。具体的には、20μLの細胞培養上清(アゴニスト添加の24時間後に収集)を130μLのQUANTI−Blue検出培地に添加した。反応を37℃で1時間進行させ、その時点で、SoftMax Proソフトウェア(Molecular Devices)と共にSpectraMax(Molecular Devices)分光光度計を使用して、波長650nmでの吸光度を測定した。生アッセイデータは、GraphPad Prism7ソフトウェアを用いて分析し、アッセイでアゴニストEC
50値の非線形回帰決定を実施した。
【0209】
ハイブリドーマ細胞培養上清(SN)の未精製抗hu−IL1RAP抗体のHEK−Blue SEAPアッセイは、上記のように実施されたが、以下の改変が加えられた。抗hu−IL1RAP抗体を含む未精製のハイブリドーマ細胞培養SNを、50μLの最終容量の4倍でHEK−Blue IL−1/IL−33細胞に添加した。細胞および抗体を含有するハイブリドーマ細胞培養SNは、37℃、5%CO
2で1時間インキュベーションした。1時間の抗体インキュベーションに続いて、アゴニストを、細胞および抗体を含むウェルに、所望濃度の4倍で、200μLの総量内で最終的な所望濃度の1倍になるように添加した。阻害率は、試料(この場合、抗hu−IL1RAP抗体を含むハイブリドーマ細胞培養SN)から得られた値から陰性対照から得られた吸光度値を差し引くことによって算出した。次に、陰性対照で調整した試料を使用して、陽性対照(抗体を含むハイブリドーマ細胞培養SNの不在下でのみアゴニストに曝露した細胞)に対する比率を決定した。
【0210】
精製ハイブリドーマ由来の抗hu−IL1RAP抗体を使用して実施されたHEK−Blue SEAPアッセイは、ハイブリドーマ細胞培養SNを用いた上記のアッセイと同様に実施された。簡潔に述べると、抗体は、37℃、5%CO
2で1時間、標準成長培地中、アゴニストの不在下で、細胞とインキュベーションした。1時間のインキュベーション後、推定EC
50濃度の目的のアゴニストを最終容量200μLまで添加し、実験をさらに24時間進行させた。陰性対照(NC)は、成長培地のみに曝露された細胞を表す一方、陽性対照(PC)は、アゴニストのみに曝露された細胞を表す(アンタゴニストまたは対照抗体の不在下)。
【0211】
抗体(以下の実施例に記載されるFabを含む)の半数阻害濃度(IC
50)を決定するために、7点段階希釈系列を使用した(指示濃度で開始)。前述のアゴニスト用量応答曲線と同様に、GraphPad Prism 7ソフトウェアを使用して非線形回帰分析を実施し、アッセイ結果からIC
50値を決定した。
【0212】
下記の市販のヒトサイトカインをHEK−Blueアッセイのアゴニストとして使用した。IL−1α(Gibco/Thermo Fisher Scientific)、IL−1β(インビボGen、米国カリフォルニア州サンディエゴ)およびIL−33(インビボGen、またはPeproTech US、米国ニュージャージー州ロッキーヒル)。
【0213】
ELISAスクリーニングおよびHEK−Blue細胞ブロッキングアッセイの結果を使用して、サブクローニングおよび精製のために15個の親ハイブリドーマ系統のパネルを選択した。選択したハイブリドーマおよびHEK−Blue細胞ブロッキングアッセイの結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0214】
ハイブリドーマのサブクローニングおよび精製:サブクローニングは、ELISAスクリーニングによって確認されたサブクローンを用いた標準限界希釈によって実施された(上記の通り)。サブクローンは、無血清培地で30mLの培養物にスケールアップされた。抗体は以下のように精製した。細胞を除去するために300gで10分間遠心分離し、孔径0.22μmのフィルターで濾過することにより、上清培地を清澄化した。清澄化した上清培地を、PBS緩衝液で平衡化したPOROS MabCapture A樹脂(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)と混合し、穏やかに回転させながら室温で1.5時間インキュベーションした。インキュベーション後、スラリーをカラムに充填し、樹脂を、0.5M NaClを含む20カラム容量(CV)のPBS緩衝液で洗浄した。IgG分子は、3CVの0.1M酢酸、0.15M NaClで溶出した。溶離液を1M MOPS、pH7.0でpH5.2にすばやく中和し、PD−10脱塩カラム(GE Healthcare)を使用して緩衝液をPBS緩衝液に交換した。
【0215】
精製ハイブリドーマ抗体の特性評価
ELISAアッセイ:ELISAアッセイ(上記の通り)を使用して、15個の親ハイブリドーマから得られた精製抗体がhu−M−IL1RAPポリペプチドおよび可溶性hu−S−IL1RAPポリペプチド(配列番号7)に結合できることを確認し、ならびにマウスmo−M−IL1RAPポリペプチド(配列番号9)、およびカニクイザルcyno−M−IL1RAPポリペプチド(配列番号8)に対する交差反応性の程度を決定した。ハイブリドーマから精製された15個の抗体の段階希釈を20nMから試験し、それぞれのEC
50を以下の表4に示すように算出した。
【表4】
【0216】
結合ドメインマッピング:15個の精製抗体の結合ドメインマッピングは、アッセイプレート上に1μg/mlでコーティングされた下記のIL1RAPポリペプチド構築物を用いて、上記のELISAアッセイを使用して実行された。hu−M−IL1RAP、hu−M−IL1RAP−D1、hu−M−IL1RAP−D1D2、およびhu−M−IL1RAP−D3。15mAbを10nMの濃度で試験し、ELISAアッセイの結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0217】
HEK−Blueアッセイ:15個の親ハイブリドーマに由来する精製抗hu−IL1RAP抗体を試験して、上記のHEK−Blueアッセイを使用してIL1R1/IL1RAPおよびST2/IL1RAP経路のIL−1βおよびIL−33媒介性活性化をブロッキングする能力を決定した。全てのmAbについて用量応答を実行し、IL−1βおよびIL−33媒介性活性化の阻害度の決定を、100nMの抗体濃度で、アゴニストのみに曝露した細胞から得られた最大シグナルのパーセンテージとして算出した。これらのHEK−Blueアッセイの結果を以下の表6に示す。
【表6】
【0218】
表6のHEK−Blueアッセイ結果に示されているように、試験した全ての抗体のうち、ハイブリドーマ11C5由来のmAbのみが、100nMの濃度で、IL−1βおよびIL−33活性化経路の両方を完全ブロッキングまたはほぼ完全ブロッキングする活性を示した(それぞれ、99%および93%)。
【0219】
OCTET結合親和性:11C5ハイブリドーマ(以下、「11C5(Hy)」)から精製したmAbのhu−M−IL1RAPおよびcyno−M−IL1RAPポリペプチド構築物への結合親和性をOCTET(登録商標)Bio−Layer Interferometry(BLI)結合分析(Pall ForteBio USA、米国カリフォルニア州フリーモント)を使用して測定した。BLI実験方式は、溶液中のIL1RAP抗原を用いて抗体をバイオレイヤー表面に固定化する。配列番号3のhu−M−IL1RAPポリペプチド、配列番号8のcyno−M−IL1RAPポリペプチド、またはハイブリドーマ11C5から精製されたmAbを、それぞれ最終容量200μLに、実験緩衝液(0.01%Tween−20を含むPBS緩衝液)で希釈した。全試料を黒色の96ウェルプレートに入れ、25℃で実験を実施した。ハイブリドーマ11C5から精製したmAbを最終濃度35nMに希釈し、抗マウスIgG Fcキャプチャー(AMC)バイオセンサー(Pall ForteBio)に固定化した。分析対象を0.9〜25nMの範囲で実験緩衝液で段階希釈した。バイオセンサーは、実験を開始する前に、25℃の実験緩衝液中で10分間平衡化した。
【0220】
動態実験は、段階名、溶液、および時間が列挙されている下記の段階で実施した。ベースライン(緩衝液−60秒)、充填(抗体−200秒)、ベースライン2(緩衝液−最小120秒)、結合(分析対象−200〜300秒)および解離(緩衝液−1000秒)。分析対象の会合および固定化抗体からの抗原の解離から生じるBLIシグナルは、OCTET(登録商標)データ分析ソフトウェア(Pall ForteBio)を使用して分析した。最初に、参照ウェル(実験ウェルと同じ段階を経たが、結合段階の分析対象を含まないバイオセンサー)を使用して、記録された全てのトレースに対して参照減算を実施し、次に全てのトレースを結合段階の開始に合わせた。各分析対象とのmAb 11C5(Hy)のK
Dを算出するために、結合および解離の段階全体を1:1結合モデルでGlobal fit(4個の分析対象濃度トレースの最小値)に使用した。このOCTET BLI分析の結果を以下の表7に示す。
【表7】
【0221】
要約:ハイブリドーマ11C5、11C5(Hy)に由来する精製抗M−IL1RAP抗体は、上記のアッセイにおけるその優れた特性に基づいて、さらなる特性評価と親和性成熟のために選択された。すなわち、11C5(Hy)mAbは、IL1RAPのドメイン3(D3)に結合し、ELISAで決定された場合、hu−M−IL1RAP、hu−S−IL1RAP、およびcyno−M−IL1RAPポリペプチドに等しくよく結合し、HEK−Blueアッセイで決定された場合、IL−1βおよびIL−33活性化経路の両方を完全ブロッキングまたはほぼ完全ブロッキングする活性を示す。しかしながら、11C5(Hy)mAbは、配列番号9のマウス−M−IL1RAPポリペプチドと交差反応しない。
【0222】
実施例3:選択された抗ヒトIL1RAP抗体の配列決定
本実施例は、ハイブリドーマに由来する抗hu−IL1RAP抗体の配列の決定を例示する。
【0223】
下記のプロトコルを使用して、選択したハイブリドーマから抗体の重鎖断片および軽鎖断片をコードする遺伝子を同定、クローン化、および配列決定した。
【0224】
目的のハイブリドーマを、標準ハイブリドーマ培地(DMEM/F12、10%FBS、1%Glutamax、1%pen/strep)において、80%超の生存率で、7〜10日間、T75フラスコで1〜3x10
5の密度まで成長させた。培養物から1〜300万個の細胞を15mL falconチューブに300gで5分間ペレット化した。ペレット細胞を5mLの氷冷PBSに再懸濁して洗浄した。300gで5分間遠心分離した後、PBSを除去し、細胞を再懸濁し、1mLのTRIZOL試薬(Life Technologies、米国カリフォルニア州カールズバッド)に溶解した。細胞の完全な溶解を確実にするために、溶解物を20G1ゲージ針(BD 305175)を備えた1mLシリンジに20回通した。TRIZOL/細胞懸濁液を直ちにドライアイスで凍結し、処理するまで−80℃で保存した。
【0225】
Direct−zol RNA Miniprep Plusキット(Zymo Research、米国カリフォルニア州アービン)を使用して溶解物から全RNAを単離し、5μgの全RNAを使用して、SMARTer RACE5’キット(タカラバイオ、日本)を使用して、5’−RACE対応ハイブリドーマcDNAを生成した。下記のマウスV
Hファミリー特異的可変領域プライマーを使用して、cDNAから重鎖および軽鎖の特異的遺伝子断片を増幅した。TCTTGTCCACCTTGGTGCTGCTGGCCGG(配列番号321)、およびTTTGTCCACCGTGGTGCTGCTGGCTGGT(配列番号322)。下記のマウスVカッパファミリーに特異的な可変領域プライマー、GATCAGTCCAACTGTTCAGGACGCC(配列番号323)、またはマウスVラムダファミリーに特異的な可変領域プライマー、ACACTCAGCACGGGACAAACTCTTCTCCACAGT(配列番号324)、ACACTCTGCAGGAGACAGACTCTTTTCCACAGT(配列番号325)、およびACACTCAGCACGGGACAAACTCTTCTCCACATG(配列番号326)は、5’−RACE PCR反応においてキットに含まれるユニバーサルプライマーと組み合わせて使用された。
【0226】
PCR産物を精製し、In−Fusionクローニングキット(タカラバイオ、日本)を使用してpRACEにクローニングした。両鎖は、M13順方向およびM13逆方向のプライマーを備えたSangerシーケンサーを使用して配列決定された。
【0227】
ハイブリドーマ11C5に由来するmAbについて決定された軽鎖および重鎖の可変ドメインアミノ酸配列のV
LおよびV
Hは、上記の表2に列挙され、添付の配列表にそれぞれ配列番号257および279として提供される。
【0228】
さらに、ハイブリドーマ10A11、9D5、8H1、および13D8に由来するmAbについて決定されたV
LおよびV
Hの配列を表2に列挙し、添付の配列表にそれぞれ配列番号311、312、313、314、315、316、317、および318として提供される。
【0229】
実施例4:11C5ハイブリドーマ由来の抗Hu−IL1RAP mAbによるIL−1、IL−33、およびIL−36刺激性細胞内シグナル伝達の阻害
この実施例は、HEK−Blue細胞ブロッキングアッセイで決定されたように、11C5、11C5(Hy)に由来する精製抗hu−IL1RAP mAbが、IL−1α、IL−1β、IL−33、およびIL−36α、IL−36β、およびIL−36γ刺激性細胞内シグナル伝達をブロッキングすることができることを例示する。簡潔に述べると、HEK−Blue IL−1/IL−33センサー細胞、またはIL−36受容体IL1RL2で一過性トランスフェクションされたHEK−Blue IL−33センサー細胞を使用して、11C5(Hy)がIL−1、IL−33、およびIL−36依存性シグナル伝達経路をブロッキングするか否かを決定した。これらのHEK−Blue細胞株は両方ともNF−κB/AP−1 SEAPレポーター遺伝子を発現しており、簡単なSEAP検出アッセイにより、IL−1、IL−33、またはIL−36の活性化を監視することができる。
【0230】
材料および方法
HEK−Blue細胞:この実施例で使用されるHEK−Blue IL−1/IL−33センサー細胞は、上記の実施例2に記載されている。HEK−Blue IL−33センサー細胞(インビボGen、カタログ番号hkb−hil33)は、HEK−Blue IL−1/IL−33細胞に類似しているが、IL−1およびTNF−αの両応答がブロッキングされた。HEK−Blue IL−33細胞は、製造業者のガイドラインによって、前述の標準成長培地を使用し、1X HEK−Blue Selection抗生物質(インビボGen、カタログ番号hb−sel)を補充して、SEAP、ST2、およびIL−33の特異性をコードするプラスミドを維持した。
【0231】
IL−36受容体によるHEK−Blue IL−33細胞の一過性トランスフェクション。IL−36受容体をコードするヒトIL1RL2遺伝子を含むプラスミドは、AvantGen(カスタムオーダー)によって生成された。HEK−Blue IL−33センサー細胞は、製造業者のガイドラインに従って、LyoVec(インビボGen)を使用して一過性トランスフェクションされた。簡潔に述べると、トランスフェクションの24時間後に最低80%の集密度を生じる濃度で、標準成長培地に懸濁した細胞にLyoVec−DNA複合体を直接添加し、すぐに96ウェル平底プレートに播種した。トランスフェクションの24時間後、細胞を標準的なHEK−Blue SEAPアッセイで使用した。
【0232】
HEK−Blue SEAPアッセイ。HEK−Blue IL−1/IL−33細胞は、IL−1またはIL−33刺激が生じた全てのHEK−Blue SEAPアッセイに使用され、上記の実施例2に記載されている。IL−36刺激によるアッセイでは、IL−36受容体であるIL1RL2を一過性発現するHEK−Blue IL−33細胞を使用した。これらの一過性トランスフェクションされたHEK−Blue IL−33センサー細胞は、IL−36α、IL−36β、およびIL−36−γによる刺激に応答する。ヒトIL−36α、IL−36β、およびIL−36γのサイトカインをN末端配列から切断して、完全に成熟なサイトカインを産生した。前述のように、アゴニストEC
50およびアンタゴニスト抗体IC
50の値が得られた。陰性対照(NC)は成長培地のみに曝露された細胞を表す一方、陽性対照(PC)はアゴニストのみに曝露された細胞を表す(アンタゴニスト抗体または対照抗体がない場合)。
【0233】
結果
11C5(Hy)mAbをHEK−Blue IL−1/IL−33細胞と1時間インキュベーションした後、以前にEC
55〜60とほぼ同等であると決定された濃度でIL−1α(
図1A)またはIL−1β(
図1B)を添加した。11C5(Hy)mAbは強いブロッキング活性を示し、IL−1αおよびIL−1βのIC
50は、それぞれ4.7E−09Mおよび1.0E−09Mに相当した。100nMの抗体濃度では、それぞれの陽性(PC)および陰性(NC)対照と比較した場合、ほぼ完全な阻害(IL−1αおよびIL−1βでそれぞれ94%および99%)が観察された。
【0234】
同様のアッセイを実施して、IL−33で刺激されたHEK−Blue IL−1/IL−33細胞におけるブロッキング効力および有効性を決定した(
図1C)。IL−1ブロッキングアッセイで観察されたように、11C5(Hy)はIL−33刺激時に強いブロッキング活性を示し(IC
50=3.71E−09M)、試験抗体の最大濃度(100nM)でほぼ完全なブロッキング(93%)が観察された。
【0235】
HEK−Blue IL−36応答性細胞(すなわち、IL−36受容体IL1RL2を一過性発現するIL−33細胞)を11C5(Hy)と1時間インキュベーションした後、IL−36α(
図1D)、IL−36β(
図1E)またはIL−36γ(
図1F)で刺激した。100nMの11C5(Hy)抗体濃度で、IL−36依存性シグナル伝達のほぼ完全な阻害、具体的には、IL−36α、IL−36β、およびIL−36γのそれぞれ98%、98%、および99%の阻害が観察された。IC
50値は、IL−36α、IL−36β、IL−36γでそれぞれ2.52E−09M、9.81E−10M、および6.65E−10Mであった。
【0236】
HEK−BlueアッセイにおけるmAb 11C5(Hy)のIC
50値および%阻害は、以下の表8に要約する。
【表8】
【0237】
上記の表8の結果に示されているように、精製されたハイブリドーマ由来抗体11C5(Hy)は、HEK Blue細胞ブロッキングアッセイにおいて、全6つのサイトカイン(IL−1α、IL−1β、IL−33、IL−36α、IL−36βおよびIL−36γ)の刺激時に全3つの目的経路(IL−1、IL−33、およびIL−36)を強くブロッキングすることができる。
【0238】
実施例5:抗IL1RAP mAb 11C5(Hy)のヒト化、キメラ、およびC59変異体型の調製
この実施例は、ハイブリドーマ11C5に由来するマウス抗IL1RAP mAb 11C5(Hy)のヒト化およびキメラ型の調製を例示する。さらに、この実施例は、59番目の重鎖システイン残基を一連の代替アミノ酸、すなわちC59A、C59S、C59T、C59V、およびC59Yで置換した、11C5(Hy)mAbのマウス、ヒト化およびキメラ変異体の調製を例示する。
【0239】
マウス抗IL1RAP 11C5可変領域配列のヒト化
配列番号257のマウス11C5(Hy)抗体軽鎖可変領域(V
L)配列および配列番号279の重鎖可変領域(V
H)配列を、ヒト生殖系列抗体配列に対して整列させた。ヒト生殖系列カッパ軽鎖(遺伝子ID−V遺伝子:IGKV1−NL1*01、J遺伝子:IGKJ4*02)およびヒト生殖系列重鎖(遺伝子ID−V遺伝子:IGHV3−7*03、J遺伝子:IGHJ4*03)は、最も近縁のヒトフレームワークとして同定された。マウス11C5(のHy)のV
LおよびV
Hドメイン、最も近縁のヒト生殖系列配列、およびヒト化h11C5のアミノ酸配列アラインメントは、は、
図2に示す。
【0240】
マウス11C5(Hy)軽鎖および重鎖の相補性決定領域(CDR)を、同定された最も近縁の軽鎖および重鎖のヒトフレームワークにそれぞれグラフティングし、ヒト化抗体クローン(以下、「h11C5」と呼ぶ)を生成した。マウス11C5(Hy)V
L配列(配列番号257)におけるCDR−L1の24〜34番目、CDR−L2の50〜56番目およびCDR−L3の89〜97番目をヒトカッパ軽鎖フレームワークアクセプターにグラフティングした。マウス11C5(Hy)V
H配列(配列番号279)におけるCDR−H1の31〜35番目、CDR−H2の50〜65番目、およびCDR−H3の95〜102番目をヒト重鎖フレームワークアクセプターにグラフティングした。マウス11C5(Hy)軽鎖のフレームワーク領域2の48番目も、この位置が、V
H−V
L相互作用界面の一部であるか、CDR構造を調整し、抗原に適合するように微調整することができる「バーニア」ゾーンとして作用するフレームワーク残基であると見出されたため(例えば、Foote et al.,J.Mol.Biol.,224:4887−499(1992)を参照)、ヒトカッパ軽鎖フレームワークアクセプターにグラフティングした。
【0241】
V
Lについては5’隣接制限酵素部位としてAgeI、3’隣接制限酵素部位としてKpnI、V
Hについては5’隣接制限酵素部位としてAgeI、3’隣接制限酵素部位としてBstEIIを用いて、ヒト化可変ドメイン配列をDNA断片として合成した。h11C5の軽鎖発現プラスミドは、完全ヒトカッパ軽鎖定常領域を含むpRKプラスミドにおいて、AgeI−KpnI断片を合成h11C5 V
L DNA断片と置換することによって得られた。h11C5の重鎖発現プラスミドは、完全ヒトIgG1重定常ドメインを含むpRKプラスミドにおいて、AgeI−BstEII断片を合成h11C5 V
H DNA断片と置換することによって得られた。
【0242】
ヒト化h11C5抗体との比較のために、マウス11C5(Hy)V
LおよびV
H配列のDNA断片を上記のように合成した。マウス11C5(Hy)の軽鎖および重鎖、または11C5のキメラ型(マウスV
LおよびV
Hドメイン、ならびにヒトCLおよびCH1〜CH3ドメインを含む)を発現するプラスミドは、それぞれマウスIgG2aまたはヒトIgG1定常ドメインを保有するpRKプラスミドに合成DNA断片をクローニングすることによって構築された。
【0243】
抗IL1RAP11C5の重鎖Cys59変異体の生成
マウス11C5(Hy)のV
HのCDR−H2配列には、59番目(Cys59)に不対システイン残基が含まれており、これは抗体のさらなる治療開発において主な易罹病性であり得る。この易罹病性を除去するため、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)またはチロシン(Y)のいずれかを用いて、59番目のシステイン(C)がアミノ酸置換された一連のV
Hドメイン配列の変異体を合成した。置換は、システイン(アラニン、セリン、スレオニン、およびバリン)とのアミノ酸側鎖の類似性に基づいて、または59番目(チロシン)の最も近縁の生殖系列配列に基づいて選択された。マウス11C5(「11C5(Hy)」)、キメラ11C5(「c11C5」)、およびヒト化11C5(「h11C5」)の各V
H配列に即して生成された一連のCys59 mAb変異体は、5’隣接制限酵素部位としてAgeI、3’隣接制限酵素部位としてBstEIIを用いてDNA断片として合成された。Cys59変異体の重鎖発現プラスミドは上記のように生成された。
【0244】
11C5(Hy)由来のマウス、キメラおよびヒト化抗IL1RAP mAbおよびそれらのCys59変異体の組換え型の生成
組換えIgG分子の発現は、Expi293F発現システム(Life Technologies、米国カリフォルニア州カールズバッド)を使用して、製造業者の指示に従って実施した。トランスフェクション反応では、重鎖と軽鎖のプラスミドの比率を1対1に保ち、トランスフェクション細胞を6日間培養してから採取した。
【0245】
組換えIgG分子は下記のプロトコルで精製された。上清培地は、300gで10分間遠心分離して細胞を除去し、孔径0.22μmのフィルターで濾過することにより、清澄化した。清澄化した上清培地を、PBS緩衝液で平衡化したPOROS MabCapture A樹脂(Thermo Scientific)と混合し、穏やかに回転させながら室温で1.5時間インキュベーションした。インキュベーション後、スラリーをカラムに充填し、樹脂を、0.5M NaClを含む20カラム容量のPBS緩衝液で洗浄した。次に、組換えIgG分子を3カラム容量の0.1M酢酸、0.15M NaClで溶出した。溶離液を1M MOPS、pH7.0でpH5.2にすばやく中和し、PD−10カラム(GE)で緩衝液をPBS緩衝液に交換した。
【0246】
11C5(Hy)由来のマウス、キメラおよびヒト化抗IL1RAP mAbおよびそれらのCys59変異体の組換え型の結合親和性
11C5(Hy)に由来するマウス(「m11C5」)、キメラ(「c11C5」)、およびヒト化(「h11C5」)の組換え型mAbの配列番号3のhu−M−IL1RAPポリペプチドに対する結合親和性は、OCTET Bio−Layer Interferometry(BLI)結合分析(Pall ForteBio)によって測定した。
【0247】
実験方式では、抗体がバイオレイヤー表面に固定化されており、抗原IL1RAPが溶液中に存在した。組換えhu−M−IL1RAPおよび全ての11C5変異体を、実験緩衝液(0.01%Tween−20を含むPBS緩衝液)で希釈した(それぞれ最終容量200μL)。全試料を黒色の96ウェルプレートに入れ、25℃で実験を実施した。マウスおよびキメラ11C5変異体(35nM)は、抗マウスIgG Fcキャプチャー(AMC)バイオセンサー(Pall ForteBio)に固定化された。抗ヒトIgG Fcキャプチャー(AHC)バイオセンサー(Pall ForteBio)は、ヒト化11C5変異体(35nM)に使用した。hu−M−IL1RAP分析対象溶液は、実験緩衝液で1〜81nMの範囲で段階希釈した。バイオセンサーは、実験開始前に、25℃の実験緩衝液中で10分間平衡化した。
【0248】
動態実験は、段階名、溶液、および時間が列挙されている下記の段階で実施した。ベースライン(緩衝液−60秒)、充填(抗体−200秒)、ベースライン2(緩衝液−最小120秒)、結合(分析対象−200〜300秒)および解離(緩衝液−1000秒)。
【0249】
分析対象の結合および固定化抗体からの解離から得られたBLIシグナルを、Octet Data Analysisソフトウェア(Pall ForteBio)を使用して分析した。最初に、参照ウェル(実験ウェルと同じ段階を経たが、結合段階の分析対象を含まないバイオセンサー)を使用して、記録された全てのトレースに対して参照減算を実施し、次に全てのトレースを結合段階の開始に合わせた。hu−M−IL1RAPとの各11C5変異体のK
Dを算出するために、結合および解離の段階全体を1:1結合モデルでGlobal fit(4個の分析対象濃度トレースの最小値)に使用した。算出されたK
D値を以下の表9に列挙する。
【表9】
【0250】
実施例6:ヒト化11C5の非特異的結合評価
この実施例は、ヒト化11C5(h11C5)が非特異的結合を示さないことを示すバキュロウイルス(BV)粒子ELISAアッセイを例示する。
【0251】
下記のプロトコルを使用して、Hotzel et al.,mAbs,4(6):753−760(2012)に記載されているプロトコルに従って、h11C5のバキュロウイルス(BV)粒子への非特異的結合を評価した。簡潔に述べると、BV粒子を96ウェルELISAプレートに2.5%懸濁液として4℃で一晩コーティングした。次に、プレートを、1%BSA、0.05%Tween−20を含むPBSで室温で1時間ブロッキングした。段階希釈したh11C5抗hu−IL1RAP抗体をプレートに1時間添加し、結合抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)で検出した後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(Thermo Fisher Scientific)および2N硫酸を添加した。450nmでの吸光度を測定し、参照抗体と比較した。
【0252】
結果:
図3のプロットに示されているように、h11C5抗体は450nmで検出可能なBV ELISAシグナルを示さず、BV粒子への非特異的結合がないことを示している。
【0253】
実施例7:11C5に基づくマウス、キメラ、およびヒト化抗IL1RAP抗体の機能アッセイ
この実施例は、IL−1、IL−33、およびIL−36刺激性細胞内シグナル伝達を阻害するそれぞれの能力を決定するため、実施例4および5に記載の組換えマウス、キメラ、およびヒト化抗IL1RAP抗体の細胞ブロッキングアッセイを例示する。
【0254】
材料および方法
細胞株およびHEK−Blueアッセイ。この実施例7で使用される細胞株およびHEK−Blueアッセイは、上記の実施例2および4に記載されている。
【0255】
初代ヒト肺線維芽細胞および関連アッセイ。初代ヒト肺線維芽細胞(PHLF)は市販されており、Lonza(カタログ番号CC−2512)から入手した。細胞は、正常な(無病)提供ヒト組織から単離され、製造業者によって凍結保存された。細胞は、製造業者が推奨する一般的なガイドラインを使用して解凍および維持された。PHLFは、使用前に熱不活化(56℃で30分間)された2%ヒトAB血清(Corning)、7.5mM Glutamax(Gibco)、 100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを補充したFibroLife Basal Medium(LifeLine)からなる成長培地で維持された。実験使用の前日、PHLFを平底の96ウェルプレートに、使用日に約80〜85%の集密度になる濃度で播種した。
【0256】
抗体ブロッキングアッセイで使用する前に、アゴニストEC
50は、以下の改変を加えながら、HEK−Blue細胞について実施例2に記載されているのと同様の様式(manner)でアゴニスト用量応答曲線を実施することによって決定された。PHLF成長培地のみ(最終容量200μL)を含むウェルのPHLFにアゴニストを添加した後、細胞を組織培養インキュベーター(37℃、5%CO
2)に4時間戻した。次に、組織培養上清を収集し、4℃で1〜3日間保存した。IL−8(ヒト)AlphaLISA検出キット(Perkin Elmer)を使用して、収集した上清に存在するIL−8のレベルを定量化した。アッセイは、製造業者のガイドラインの指示通りに実施された。EnVision−Alpha Reader(Perkin Elmer)を使用して取得した生データは、GraphPad Prismソフトウェアを使用して分析し、非線形回帰分析(曲線適合)、Sigmoidal、4PLを使用して補間を実施し、Xはlog(濃度)であり、重量は「重量×1/Y
2」により定義する。次に、標準的な非線形回帰分析を使用して、補間データを分析した。
【0257】
細胞ブロッキングアッセイは、実施例4の通りであるがIC
50値を得るのに役立つ様式で、PHLFの使用を具体的に説明するように改変を加えて、実施された。簡潔に述べると、c11C5_C59Y、または適切な抗体対照(例えば、Hu IgG1対照)を37℃で1時間PHLFと共にインキュベーションした後、アゴニスト(IL−1αまたはIL−36β)を添加した。実験をさらに4時間(37℃、5%CO
2)進行させ、細胞培養上清を収集し、上記のようにIL−8の定量を実施した。
【0258】
初代ヒト単球および関連アッセイ。「アンタッチド」としても知られる、負の免疫磁気選択によって単離された初代ヒト単球(PHMO)は市販されており、STEMCELL Technologiesから入手した。単球は、一般的な製造業者のガイドラインに従って解凍され、実施例4に記載されるように標準成長培地で維持された。抗体ブロッキングアッセイでは、PHMOをアッセイの前日に80,000/ウェルで平底の96ウェルプレートに播種した。抗体c11C5_C59Y、または適切な抗体アイソタイプ対照(Hu IgG対照)を、5%CO
2、37℃で1時間PHMOと共にインキュベーションした後、目的のアゴニスト(例えば、IL−1β)を添加した。全ウェルの最終容量は200μLであり、陽性対照(PC)は成長培地およびアゴニストのみを示し、陰性対照(NC)はPHMOおよび成長培地のみを示す。
【0259】
アゴニスト添加の24時間後に組織培養上清を収集し、ELISAアッセイを実施して存在するIL−6のレベルを決定できるまで−80℃で保存した。ヒトIL−6 ELISAキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、上清中のIL−6のレベルを定量化した。生データ分析および補間は、GraphPad Prismソフトウェアおよび非線形回帰分析を使用して実施した。抗体ブロッキングアッセイの前に、アゴニスト用量応答曲線を生成して、実施例2に一般的に記載されているように、PHMOの使用を具体的に説明するように改変して、上記のようにEC
50値を決定した。抗体IC
50値も同じ様式で決定した。
【0260】
初代ヒトNK細胞および関連アッセイ。負の免疫磁気選択によって単離された初代ヒトNK細胞は、STEMCELL Technologies(カナダ、バンクーバー)から購入した。実験使用日に、NK細胞は、一般的な製造業者のガイドラインに従って下記の改変を加えて解凍した。細胞は、0.05mg/mL DNAse I(STEMCELL Technologies)を補充したRPMI(Corning)からなる解凍培地で解凍した。解凍後、実験使用前に、細胞に最低1時間の回復時間(37℃、5%CO
2)を与え、使用前に熱不活化(56℃で30分間)した10%ヒトAB血清(Corning)、1mMピルビン酸ナトリウム(Corning Cellgro)、2mM Glutamax(Gibco)、および1X MEM非必須アミノ酸(Gibco)を補充したRPMI(Corning)からなるNK成長培地で維持した。
【0261】
抗体ブロッキングアッセイで実験使用前に、アゴニストEC
50は、以下の改変を加えながら、実施例2にHEK−Blue細胞について記載されているのと同様の様式でアゴニスト用量応答曲線を実施することによって決定された。NK細胞を丸底96ウェルプレートに50,000/ウェルで播種した。NK成長培地のみ(最終容量200μL)に懸濁したNK細胞にアゴニストを添加した後、細胞を組織培養インキュベーター(37℃、5%CO
2)に24時間戻した。NK成長培地のみを含む標準的な陰性対照(NC)に加えて、陽性対照(PC)は、IL−33(指定濃度)および0.1ng/mLのIL−12の両方を含むNK成長培地で構成されていた。追加の「IL−12のみ」の対照も含まれた。
【0262】
アゴニスト添加の24時間後に組織培養上清を収集し、4℃で1〜3日間保存した。上清に存在するIFN−γのレベルは、製造業者のガイドラインに従って、ヒトIFN−γ ELISAキット(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific)を使用して決定された。非線形回帰分析は、最終EC
50値を得るために、GraphPad Prism7ソフトウェアを用いて実施した。
【0263】
抗体ブロッキングアッセイを同様に実施したが、実施例2に一般的に記載されるようにIC
50値を得るのに役立つ様式で、上記に詳述したように、NK細胞の使用を具体的に説明するように改変された。簡潔に述べると、c11C5_C59Y、または適切な抗体アイソタイプ対照(Hu IgG対照)をNK細胞と共に37℃で1時間インキュベーションした後、アゴニスト(IL−33+IL−12、またはIL−12のみ)を添加した。実験をさらに24時間(37℃、5%CO
2)進行させ、細胞培養上清を収集し、上記のようにIFNγの定量を実施した。
【0264】
結果
組換えヒト化11C5(「h11C5」)のブロッキング効力および有効性を決定するために、HEK−Blue IL−1/IL−33ブロッキングアッセイを実施した。元のマウスハイブリドーマに由来する抗体(「11C5(Hy)」)および組換えマウスエフェクターレス型(「m11C5」)もアッセイし、ヒト化の結果としてブロッキング活性の潜在的な損失、およびエフェクターレスヒトIgGアイソタイプ対照(「Hu IgG1対照」)を評価した。
【0265】
ヒト化は、IL−1β(
図4A)およびIL−33(
図4B)で刺激された両細胞においてブロッキング活性のわずかな損失をもたらした。ヒト化抗体h11C5は、100nMの(IC
50=0.705nM)で完全な阻害を示したm11C5、ハイブリドーマ由来11C5(のHy)の組み換え型と比較して、IL−1β刺激性細胞を用いて98%阻害(IC
50=3.12nm)を実証した。同様に、IL−33刺激性細胞の場合、100nMのh11C5は、m11C5で観察された96%の阻害(IC
50=2.25nM)と比較して、80%の阻害(IC
50=24.0nM)を示した。
図4Cおよび4Dに示されるように、h11C5のIL−1βおよびIL−33ブロッキング活性は、C59の易罹病性を除去する11C5_C59Y変異体によって部分的に回復した。h11C5_C59Yについては、IL−1βブロッキング活性のIC
50は1.03nMに改善し、IL−33ブロッキング活性のIC
50は3.75nMに改善した。
【0266】
要約すると、ハイブリドーマ由来の抗Hu IL1RAP抗体である11C5(Hy)は、IL−1およびIL−33依存性経路をブロッキングする能力がわずかに低減するだけでヒト化に成功し、V
H領域のC59Y置換によって部分的に回復した。
【0267】
これまでに利用されたHEK−Blue細胞株は、IL−1、IL−33、またはIL−36経路の活性化を評価するための迅速かつ簡単な方法を提供したが、これらのような細胞株は、インビボで起こり得るものを表していない可能性がある。したがって、本発明者らは初代ヒト細胞を利用して11C5のブロッキング活性を評価しようとした。ヒト肺線維芽細胞は、IL−1受容体(IL1R1)およびそれに関連する共受容体であるIL1RAPを発現することが知られている。さらに、それらは自然免疫応答および炎症性免疫応答の両方に寄与すると考えられている(Suwara,Green et al.,2014)。11C5抗体が初代ヒト肺線維芽細胞(PHLF)のIL−1シグナル伝達を阻害する程度を決定するために、HEK−Blue細胞株アッセイに利用される一般的な実験アプローチを改変して、PHLFの特定の技術的要件を説明した。さらに、エフェクターレスN297G変異(「c11C5_C59Y」)を特徴とする11C5抗体の組換えキメラ型をアッセイで使用した。
【0268】
図4Eに示されるように、c11C5_C59Yは、HEK−Blueアッセイ(
図1Aを参照)のIL−1α刺激性活性で観察されたように、PHLFにおいてIL−1α媒介性IL−8産生の著しく類似したブロッキング活性を実証し、両場合で約4nMのIC
50が観察された(PHLFsにおける100nMのc11C5_C59YでIC
50 3.96nMおよび87%阻害)。
【0269】
IL−1経路は気道の炎症に寄与すると考えられており、ヒト単球はIL−1に応答することが知られている(Sims and Smith 2010)。
図4Fに示されるように、初代ヒト単球(PHMO)がc11C5_C59Yの存在下でIL−1βで刺激された場合、IL−6産生の100%阻害が観察され、IC
50は0.733nMであった。これは、c11C5_C59YがPHMOにおけるIL−1β媒介性シグナル伝達を完全ブロッキングすることができることを実証している。
【0270】
喘息の症状に対するIL−33経路の役割および寄与は十分に考証されている(例えば、Sims and Smith,Nat.Rev.Immunol.,10(2):89−102(2010)、Garlanda et al.,Immunity,39(6):1003−1018(2013)、Saluja et al.,Clin.Transl.Allergy,5:33(2015)を参照)。c11C5_C59Yが初代ヒト細胞のIL−33経路をブロッキングすることができるか否かを確認する(ascertain)ために、ヒトNK細胞を使用してアッセイを実行した。IL−12は、NK細胞によるST2(IL−33受容体)の発現を刺激することが知られており、一般的なNK刺激因子とみなされ、IFN−γの産生および増殖を増加させ、ならびに細胞傷害を増強する(例えば、Liew et al.,Nat.Rev.Immunol.,16(11);676−689(2016),Granzin et al.,Front.Immunol.,8:458(2017)を参照)。IL−12の存在下で、IL−33で刺激された初代ヒトNK細胞は、IFN−γを産生する一方、IL−12のみに曝露されたNK細胞は検出可能なIFN−γを産生しない。
【0271】
c11C5_C59YがヒトNK細胞のIL−33/IL−12シグナル伝達をブロッキングする程度を決定するために、c11C5_C59Yまたはエフェクターレスアイソタイプ対照抗体(「IgG対照」)をヒトNK細胞と共に1時間インキュベーションした後、24時間IL−33/IL−12刺激をした。
図4Gに示すように、IFN−γ産生は、対照抗体とインキュベーションしたヒトNK細胞において検出可能であったが、c11C5_C59Yと共にインキュベーションしたNK細胞ではNC値近くのレベルまで低減し、2.90nMのIC
50および100nMでの87%阻害であった。
【0272】
気道上皮、上皮細胞および免疫細胞のクロストーク、ならびに上皮細胞と線維芽細胞との相互作用は、免疫炎症および喘息におけるそれらの役割についてますます注目を集めている(例えば、Lambrecht and Hammad(2012);Nowarski et al.,Cell,168(3):362−375(2017)を参照)。気管支上皮細胞は、ウイルスまたは細菌の感染およびタバコの煙への曝露などの損傷またはストレスに続いて、IL−1およびIL−36などの炎症性サイトカインの産生に寄与することが知られている。さらに、肺線維芽細胞は、IL−1およびIL−36に応答して炎症反応を誘導することが知られている(例えば、Suwara et al.,Mucosal Immunol.,7(3):684−693(2014);Bassoy et al.,Immunol.Rev.,281(1):169−178(2018)を参照)。
図4Hに示されるように、c11C5_C59Yは、PHLFのIL−36β刺激をブロッキングすることが示され、NC群のPHLFに匹敵するレベル(100%阻害)にIL−8産生を低減させることが見出され、0.28nMのIC
50であった。
【0273】
以下の表10に要約されるc11C5_C59Yの結果を含む本実施例7の結果によって示されるように、ハイブリドーマ由来の抗hu−IL1RAP抗体、11C5(Hy)に基づく組換え抗体は、HEK−Blue細胞株および初代ヒト細胞の両方において、IL−1、IL−33およびIL−36シグナル伝達をブロッキングすることができる。さらに、初代ヒト細胞アッセイは、HEK−Blue細胞株アッセイの使用をさらに検証する。
【表10】
【0274】
実施例8:ファージライブラリーパニングを使用したヒト化抗IL1RAP抗体の親和性成熟
この実施例は、ヒトIL1RAPへの結合を改善するために、ヒト化抗IL1RAP抗体h11C5の親和性成熟に使用されるファージライブラリー構築およびパニング技法を例示する。
【0275】
ヒト化11C5C59Y/A43S親和性成熟NNKライブラリーの構築
hu−IL1RAPに対するh11C5_C59Y抗体の結合親和性をさらに改善するために、親和性成熟プロセスを実行した。ライブラリーの構築を開始する前に、アラニン(A)からセリン(S)への置換(A43S)がh11C5_C59Y軽鎖のフレームワーク領域2に導入された。A43S置換は、ヒト化プロセスによるV
H−V
L相互作用界面の変更の潜在的な影響を最小限に抑えるために導入された(Foote et al.,J.Mol.Biol.,224:487−499(1992))。したがって、ファージライブラリーは、h11C5_C59Y/A43S変異体を親配列として使用することに基づいて構築された。ファージライブラリーは、全20個のアミノ酸をコードするNNK縮重コドンを使用して軽鎖または重鎖CDR残基のいずれかの残基ランダム化を用いて、一価Fabファージディスプレイ用のFab−amber方式で構築された(Brenner et al.,Proc.Natl,Acad.Sci.USA,89(12):5381−5383(1992))。変異誘発オリゴヌクレオチドは、3つの軽鎖または重鎖CDRのそれぞれのCDR残基に1つのNNK変異を適用するように設計された。したがって、ライブラリーの各メンバーは、軽鎖または重鎖の各CDRに1つずつ、3つのNNK縮重コドンを保有する。次に、合成変異誘発オリゴヌクレオチドを使用して、クンケル変異誘発を用いて軽鎖または重鎖ライブラリーを構築した(Kunkel et al.,Methods Enzymol.,154:367−382(1987))。得られたライブラリーDNAは、E.coli XL1細胞に電気穿孔し、約1.3×10
9の形質転換体を得た。
【0276】
配列番号3(2μg/mL)のhu−M−IL1RAPポリペプチド構築物を、Maxisorpプレート上4℃で一晩コーティングした。第1パニングラウンドでは、プレートおよびファージライブラリーを0.05%TWEEN(登録商標)20および1%BSAを含むPBS緩衝液で1時間(プレート)または30分(ファージライブラリー)ブロッキングした。プレートをWash Buffer(0.05%TWEEN(登録商標)20を含むPBS緩衝液)で洗浄し、ブロッキングされたファージライブラリーと共に振とうしながら2時間インキュベーションした。非特異的に結合したファージは、Wash Bufferで激しく洗浄することにより除去した。特異的に結合したファージを0.1N HClで溶出し、1/10体積/体積の1.3M Tris塩基を使用して中和した。非特異的相互作用は、1/10体積/体積の1%BSAを添加することにより阻害された。
【0277】
第2パニングラウンドは、ブロッキング段階にSUPERBLOCK(商標)PBS緩衝液(Pierce)および0.05%TWEEN(登録商標)20を使用したことを除いて、1回目と同一であった。
【0278】
第3〜5のパニングラウンドでは、ファージライブラリーをブロッキング緩衝液(ラウンド3で1%BSAを含むPBS緩衝液、ラウンド4および5でSUPERBLOCK(商標)PBS緩衝液(Pierce)および0.05%TWEEN(登録商標)20)で30分間インキュベーションし、次に低濃度のビオチン化hu−M−IL1RAPで1時間インキュベーションした。Hu−M−IL1RAPに結合したファージを、ブロッキングされたニュートラアビジンでコーティングしたプレートに捕捉し、Wash Bufferで十分に洗浄し、ラウンド1および2と同じ様式で溶出および中和した。最終選択ラウンドでは、1000倍の非ビオチン化hu−M−IL1RAPが競合相手として添加され、選択厳密性が増した。
【0279】
NGSを使用して親和性成熟ライブラリーから配列を抽出するために、ファージミド二本鎖DNAを、最初のファージライブラリー(非選別ライブラリー)ならびに第2および第3ラウンドの溶液選択(選別ライブラリー)からファージミドを保有するE.coli XL−1細胞から単離した。精製されたDNAをテンプレートとして使用し、Illumina 16sライブラリー調製プロトコル(Illumina,Inc.、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用してV
LおよびV
H領域のアンプリコンを生成した。配列決定アダプターおよびデュアルインデックスバーコードは、Illumina Nextera XT Index Kit(Illumina,Inc.)を使用して追加された。Illumina MiSeqでの配列決定用の調製において、アダプターを連結したアンプリコンを、MiSeq Reagent Kit v3(600サイクル)(Illumina,Inc.)を使用して、標準Illuminaライブラリー変性および試料充填プロトコルに供した。ペアエンド配列決定は、200塩基対〜300塩基対の挿入サイズでアンプリコンの全長をカバーするように実施した。
【0280】
h11C5_C59Y/A43S親和性成熟ライブラリーのNGSデータ分析
ペアエンド配列決定データは、最初に、ペアエンドアセンブラPANDAseq(例えば、Masella et al.,BMC Bioinformatics,13:31(2012)を参照)を使用してアセンブルし、完全なアンプリコンを得た。次に、同定されたアンプリコンについて品質管理(QC)を実施し、各アンプリコンが配列の挿入または欠失および終止コドンがないことを確認し(check)、各CDR配列は、最大1つのNNK変異のみを保有し、非NNK変異はなかった。位置特異的重み行列は、ランダム化された全ての位置の全変異頻度を算出することによって生成された。各変異の濃縮比は、前述のように、選別試料の所与の位置での所与の変異頻度を、非選別試料のまったく同じ変異の頻度で割ることによって算出した(Koenig et al.,J.Biol.Chem.,290(36):21773−27896(2015))。NGSデータの分析により、hu−M−IL1RAPに対して高い親和性を保持する抗IL1RAP抗体をもたらす、6つのCDRのそれぞれにおける広範囲のアミノ酸置換が同定され、これらを以下の表11に列挙する。
【表11】
【0281】
親和性成熟ライブラリーからのNGSデータをさらに分析すると、以下の表12に示すように、最も高い親和性改善を示すと予測されるアミノ酸置換を有する変異体h11C5抗体の選択サブセットの濃縮比および予測される親和性改善が得られた。
【表12】
【0282】
親和性成熟V
LまたはV
H領域を有するFab変異体のBiacore分析
高い濃縮比で親和性成熟V
LまたはV
Hライブラリーから同定された変異は、単一、二重、または三重の変異として、8XHisタグを含む哺乳動物Fab発現構築物にクローニングするために選択され、Fabタンパク質を生成した。親和性成熟V
LまたはV
H領域をコードするプラスミドを、HC:LCの1:1比率を使用して、20〜30mL発現用にExpi293F細胞(Thermo Fisher Scientific)にトランスフェクションした。Fabタンパク質は、上清を1Xリン酸緩衝生理食塩水pH7.2(PBS)で1.5倍に希釈し、10mMイミダゾールを添加し、バッチモードで2時間樹脂に結合することにより、HisPur Ni−NTAカラムで精製した。インキュベーション後、スラリーをカラムに充填し、樹脂を20カラム容量(CV)のPBS+20mMイミダゾールで洗浄した。組換えFab分子は、5CV PBS+250mMイミダゾールで溶出した。精製Fabは、PD10脱塩カラム(GE Healthcare)を使用してPBSに緩衝液交換された。
【0283】
表面プラズモン共鳴(SPR)分析を使用して、BIACORE(商標)8K機器を使用して、V
LまたはV
H領域のいずれかに選択された単一、二重、および三重の変異を含む精製Fabのhu−M−IL1RAPに対する結合親和性を決定した。簡潔に述べると、HBS−EP緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20)へのBiotin CAPture試薬(GE Healthcare)の1:4希釈液を2μL/分の流速でチップに適用した。動態測定では、5nMのビオチン化hu−M−IL1RAPを10μL/分で捕捉し、第2フローセル(FC2)で約50の応答ユニットに達した。FC1は参照として保持された。次に、Fabタンパク質を含むHBS−P緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%界面活性剤P20)の低(0.31nM)から高(20nM)までの2倍段階希釈液を25℃または37℃のいずれかで注入した(流速:10μL/分)。センサーグラムは記録され、BIACORE(登録商標)8K評価ソフトウェア(バージョン1.1.1.7442)を用いたデータ分析の前に、参照および緩衝液の減算が行われた。結合率(k
on)および解離率(k
off)は、単純な1対1のラングミュア結合モデルを使用して算出された。平衡解離定数(K
D)は、k
off/k
onの比率として算出された。
【0284】
結果
親和性成熟Fab変異体のBiacore親和性の結果を以下の表13に要約する。変異体の多くは、改善された結合親和性を示した。親配列にA51YおよびW92I変異を導入した変異体K13は、h11C5_C59Y/A43Sの入力親Fabよりも9倍親和性を改善した。
【表13-1】
【表13-2】
【0285】
親和性が改善されたV
LおよびV
H領域変異体の組み合わせのFabタンパク質
最も改善されたK
D値を示すFab変異体は、V
LおよびV
H領域の両変異体を含む変異体を生成するために、V
L領域(K10、K13、およびK17)およびV
H領域(H2およびH3)変異体から選択された。得られる組み合わせ変異体のBIACORE(商標)SPR分析を上記のように実施し、結果を以下の表14に要約する。Fab変異体K10/H2、K13/H2、およびK13/H3の組み合わせは、h11C5_C59Y/A43Sの入力親Fabよりも約12〜13倍改善された親和性を示した。
【表14】
【0286】
実施例9:親和性成熟抗IL1RAP抗体のアッセイ
この実施例は、Fabおよび完全長IgG形態の両方で、実施例8に記載の親和性成熟ヒト化抗IL1RAP抗体変異体の機能活性を特性評価するために使用される細胞ブロッキングアッセイを例示する。
【0287】
材料および方法
細胞株およびHEK−Blueアッセイ。この実施例9の細胞株およびHEK−Blue関連アッセイは、実施例2に記載されているように実行された。
【0288】
完全長h11C5 IgG変異体の産生。重鎖または軽鎖をコードするプラスミドを、30mL発現用に1:1比率のHC:LCを使用して、Expi293F細胞(Thermo Fisher Scientific)にトランスフェクションした。IgGは、HiTrap MabSelect SuReカラム(GE Healthcare)を用いて、上清をカラムに流し、20カラム容量(CV)のPBS+500mM NaClで洗浄し、20CVのPBSで平衡化することにより精製した。IgGは、5CVの0.1M酢酸+150mM NaCl、pH3.0で溶出し、すぐに0.2CVの1.0M MOPS、pH7で中和した。IgGは、2XPBS、pH6.5でS200調製等級サイジングカラム(GE Healthcare)を使用したゲル濾過によってさらに精製された。
【0289】
結果
実施例8の親和性成熟Fab変異体、および変異体抗体の完全長IgG型を用いたHEK−Blueアッセイ(実施例4および7で使用された通り)を実行して、観察されたhu−M−IL1RAPに対する結合親和性の改善が、IL−1、IL−33、およびIL−36シグナル伝達活性のブロッキングの改善と相関したか否かを決定した。
図5A、5B、および5Cに示されるように、実施例8で最大の親和性の改善を示す9つのFab変異体(すなわち、K10、K13、K17、K10/H2、K10/H3、K13/H2、K13/H3、K17/H2、K17/H3)は、HEK−Blueアッセイにおいて、h11C5_C59Y/A43Sの親Fabと比べて、IL−1、IL−33、およびIL−36シグナル伝達活性の阻害の増加も示した。9つの親和性成熟Fab変異体の効力(IC
50)および100nMでの%阻害を以下の表15に要約する。
【表15】
【0290】
同じ親和性成熟変異体も、エフェクターレスN297G変異を有する完全長IgG抗体としてアッセイされた。
図5Dおよび5Fに示されるように、同様の結果が、IL−1βまたはIL−36αで刺激されたHEK−Blue IL−1/IL−33細胞またはIL−33細胞(IL−36受容体のIL1RL2を一過性発現する)をそれぞれ利用するアッセイで観察された。しかしながら、
図5Eに示されるように、全部ではないがほとんどの変異体は、IL−33で刺激されたHEK−Blue IL−1/IL−33細胞に対してブロッキング活性の増加を示した。完全長IgG親和性成熟変異体の効力(IC
50)および100nMでの%阻害を以下の表16に要約する。
【表16】
【0291】
実施例10:h11C5変異体のpH依存性結合
この実施例は、pH6およびpH7.4でのhu−IL1RAPおよびcyno−IL1RAPの結合における、実施例9の親和性成熟h11C5変異体のいくつかの動態を例示する。インビボでの11C5変異体の半減期を延長するために、本発明者らは、pH6で(中性pHでの親和性を変化させずに)新生児Fc受容体であるFcRnに対するh11C5の親和性を高めようとした。投与されると、IgGは最初に細胞に内部移行し、その後エンドソームで処理される(例えば、Kuo et al.,MAbs,3(5),422−430(2011)を参照。エンドソームの酸性化は、IgG Fc断片のFcRnへの結合、低pHでの高親和性相互作用を促進する(例えば、Roopenian et al.,Nature Reviews Immunology,7(9),715−725(2007)を参照。複合体として細胞表面に輸送された後、中性pHでのFcに対するFcRnの親和性が低いため、IgGは放出されて循環に戻る。このリサイクルプロセスは、IgGを分解から保護し、それによってインビボでの長い半減期に寄与する。
【0292】
低pHでFcRnに対するIgGの親和性を高める変異は、抗体を細胞表面に再循環させて循環に戻すことにより、インビボでの治療用抗体の半減期を延ばし得る。しかしながら、IL1RAPによる治療用分子の標的媒介性薬物動態(TMDD)は、FcRnによるリサイクルを妨げる可能性がある。酸性pHでIL1RAPへの解離速度定数(「koff」)が比較的速いh11C5変異体は、TMDDからの干渉を制限し、FcRn結合を増強する変異から最も恩恵を受け得る。
【0293】
実施例9のどのh11C5変異体が低pHでTMDDを回避する確率が最も高いかを決定するために、pH7.4およびpH6でIL1RAPに結合するh11C5変異体の動態を測定した。実施例9のh11C5変異体、K17/H2(または「YKD」)は、試験された4つの11C5変異体のうち、pH6で最も速いk
offを有する。これは、YKDが標的媒介性薬物動態(TMDD)を回避する確率が最も高く、したがってFcRn結合変異から最も恩恵を受け得ることを示唆している。
【0294】
材料および方法
pH7.4およびpH6でのh11C5 IgG変異体のBIACORE SPR分析:pH7.4でhu−M−IL1RAP(配列番号3)およびcyno−M−IL1RAP(配列番号8)に結合する4つのh11C5 IgG変異体のBIACORE(商標)SPR分析を実施例8に記載されているように実施し、0.6nMのビオチン化hu−M−IL1RAPまたは1.8nMのcyno−M−IL1RAPのいずれかをチップ上に捕捉し、低(0.103nM)から高(10nM)までの11C5 IgGの3倍段階希釈を37℃で分析対象として注入した。11C5変異体をpH6でhu−M−IL1RAPおよびcyno−M−IL1RAPに結合する場合、方法は、pH6ランニング緩衝液(10mM MES pH6、150mM NaCl、0.005%(重量/体積)P20)の使用を除いて、pH7.4での結合と同一であり、該緩衝液はBiotin CAPture試薬(GE Healthcare)を1:4に希釈するためにも使用された。
【0295】
結果
pH7.4およびpH6でのBIACORE SPR分析結果は、表17に要約され、ここで、K
Dは測定された見かけの親和性であり(IgGがこの方式での分析対象であるとする)、k
offは解離速度定数である。
【表17】
【0296】
pH6でのh11C5変異体YKDのより速い解離速度定数(すなわち、「YISに対するk
off(6)比」の最大値)は、この変異体が標的媒介性薬物動態(TMDD)を回避する確率がおそらく最も高いことを示唆している。h11C5−IL1RAP複合体がエンドソームに内在化され処理される場合、YKD変異体は他のh11C5変異体と比べて最も速くIL1RAPから解離するであろう。次に、FcRnは遊離のh11C5に結合し、それを細胞表面に送達し、薬物を放出して循環に戻すことができる。したがって、h11C5変異体YKDは、中性pHではなく酸性pHでFcRnに対する親和性を高める、Fc領域の付加的変異から最も恩恵を受ける可能性がある。
【0297】
実施例11:YTE変異を有するh11C5変異体の生成
この実施例は、低pHでIgG Fc断片のFcRnへの結合をより高い親和性で促進するh11C5変異体を生成する方法、および変異体をさらに特性評価する方法を例示する。
【0298】
材料および方法
YTE変異を有する抗体の生成:FcRnに対するFc断片の親和性を高めることが知られているYTE三重変異M252Y/S254T/T256E(Euインデックスによる付番、YTE)(例えば、Dall’ Acqua et al.,J Immunol 169(9):5171−5180(2002)を参照)は、実施例9および10に記載のh11C5変異体のFc部分にYKDおよびYISを遺伝子合成によって導入され、YKD/YTEおよびYIS/YTEを生成した。組換え抗体YKD/YTEおよびYIS/YTEは、実施例5に記載されているように生成した。
【0299】
YTE置換を有する11C5 IgG変異体のBIACORE SPR分析:pH7.4および37℃でのhu−M−IL1RAPおよびcyno−M−IL1RAPに対する変異体h11C5抗体のYIS、YIS/YTE、YKD、およびYKD/YTEのBIACORE(商標)SPR結合分析は、実施例10に記載されているように実施した。
【0300】
pH6.0および7.4でのFcRn結合のアッセイ:ヒトFcRnおよびcyno FcRnに対するYKDおよびYKD/YTEの結合親和性を決定するために、BIACORE(商標)8K機器を用いたSPR測定を実施した。簡潔に述べると、シリーズSセンサーチップCAPを使用して、結合測定のためにビオチン化ヒトFcRnまたはcyno FcRnを捕捉した。HBS−EP緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20)へのBiotin CAPture試薬(GE Healthcare、カタログ番号28−9202−34)の1:4希釈液を2μL/分の流速でチップに適用した。10nMのビオチン化ヒトFcRn(Acro biosystems、カタログ番号FCN−H52W7)またはcyno FcRn(Acro biosystems、カタログ番号FCM−C5284)を10μL/分で捕捉し、第2フローセル(FC2)で約50の応答ユニットに達した。最初のフローセル(FC1)は参照として保持された。次に、YKDまたはYKD/YTE IgGを含むMES緩衝液(10mM MES pH6.0、150mM NaCl、0.005%界面活性剤P20)またはHBS−P緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%界面活性剤P20)の低(1.37nM)から高(1000nM)濃度までの3倍段階希釈液を25℃で30μL/分の流速で注入した。センサーグラムは記録され、BIACORE(登録商標)8K評価ソフトウェア(バージョン1.1.1.7442)により評価する前に、参照および緩衝液の減算が行われた。
【0301】
YTE変異を有するh11C5変異体の非特異的結合を決定するためのバキュロウイルス(BV)ELISA:YIS/YTEおよびYKD/YTEの非特異的結合は、1%BSAを含むPBS(0.05%Tween−20なし)でブロッキングされたプレートを除いて、実施例6に記載されているようにBV ELISAによって評価された。
【0302】
結果
YTE変異を有する抗体の生成:YTE置換を有するFc断片が生成され、そのアミノ酸配列が表2に列挙され、添付の配列表に配列番号327として提供される。
【0303】
YTE変異を有するh11C5変異体のBIACORE SPR分析:YKD/YTEおよびYIS/YTEをそれらの親分子YKDおよびYISとそれぞれ比較する結合結果を表18に要約する。
【表18】
【0304】
K
Dは測定された見かけの親和性(IgGがこの実験方式での分析対象であるとする)であり、k
offは解離速度定数である。hu−M−IL1RAPまたはcyno−M−IL1RAPのいずれかに対するYKD/YTEおよびYIS/YTEの親和性は、2倍以内であるK
D値比(「K
DYTE/K
D親」)によって示されるように、それぞれの親分子の親和性よりも有意に相違しない。したがって、YTE置換の追加はIL1RAPへの結合に影響を及ぼさないと結論付けられる。
【0305】
pH6.0および7.4でのFcRn結合のアッセイ:SPR測定を使用して、pH値6.0および7.4でのhu−FcRnおよびcyno−FcRnに対するYKDおよびYKD/YTEの結合親和性を決定した。平衡解離定数(K
D)値は、定常状態分析を使用して算出され、pH6.0およびpH7.4でのYKDとYKD/YTE間のヒトFcRnおよびcyno FcRnの結合を比較した。表19に示すように、結果は、YKD/YTEがpH6.0ではヒトFcRnおよびcyno FcRnの結合を明らかに改善するが、pH7.4では改善しないことを示している。
【表19】
【0306】
h11C5 YTE変異体の非特異的結合を決定するためのバキュロウイルス(BV)ELISA:表20に示すように、YIS/YTE抗体もYKD/YTE抗体も、450nmの上記培地対照抗体試料で検出可能なBV ELISA吸光度シグナルを示さなかった。したがって、YTE変異の導入により、BV粒子への非特異的結合は導入されていない。
【表20】
【0307】
実施例12:YTE変異を有する抗ヒトIL1RAP抗体のブロッキング活性の細胞アッセイ
この実施例は、実施例11に記載のYTE変異を含む変異体抗ヒトIL1RAP抗体を使用したHEK−Blueレポーターおよび初代細胞アッセイにおいて、IL−1、IL−33、およびIL−36経路の機能阻害を例示する。
【0308】
方法および材料
細胞株およびHEK−Blueレポーター細胞アッセイ:細胞株およびHEK−Blueレポーターアッセイは、実施例2および4に記載されているように実行した。
【0309】
初代ヒトNK細胞および関連アッセイ:アゴニスト用量応答および抗体ブロッキングアッセイを含む、初代ヒトNK細胞および関連アッセイは、実施例7で先に記載および考察されている。この実施例の抗体ブロッキングアッセイは、使用するブロッキング抗体、すなわちYKD/YTEおよびYKD(実施例11に記載)を除いて、同じ様式で実施された。陰性および陽性対照は実施例7に記載されている。阻害率は、指示抗体濃度を使用して得られた値から陰性対照で得られた値を差し引くことによって算出した。次に、陰性対照調整値を使用して、陽性対照に対する比率を決定した。陰性対照値を補間できなかった場合(例えば、検出の閾値未満)、阻害率は、陽性対照単独に対する指示抗体濃度を使用して得られた値の比率を反映する。ヒトサイトカインIL−33およびIL−12は購入した(Peprotech)。
【0310】
初代ヒト肺線維芽細胞および関連アッセイ:使用した初代ヒト肺線維芽細胞(PHLF)および関連アッセイは、実施例7に記載された通りであった。陽性対照は、アゴニスト単独(IL−1αまたはIL−36β)の存在下でのPHLFを表す。抗体ブロッキングアッセイは、EC
55に近いアゴニスト濃度またはそれより高い濃度で実施した。陰性対照は、アゴニストまたは抗体に曝露されていないPHLFを表す。阻害率は、初代ヒトNK細胞アッセイについて上記のように算出された。完全に成熟したサイトカインを産生するように処理されたヒトIL−36βは、社内で生成した。ヒトIL−1αは購入した(Gibco)。
【0311】
初代ヒト単球および関連アッセイ:下記を除いて、実施例7に記載されているように単球アッセイを実行した。単球を96ウェルプレートに播種し、実験使用前に3時間の回復時間(37℃、5%CO
2)を与えた。
【0312】
ヒト表皮ケラチノサイトおよび関連アッセイ:複数の新生児包皮から単離されたヒト表皮ケラチノサイト(HEKnプール)は、Thermo Fisher Scientific(カタログ番号13401)から入手した。HEKn細胞は、一般的な製造業者のガイドラインに従って解凍および継代培養され、1%ヒトケラチノサイト成長サプリメント(HKGS)(カタログ番号S−001−5)および1xペニシリン−ストレプトマイシン溶液(Corning、カタログ番号30−002−CI)を補充したEpiLife(登録商標)培地(カタログ番号M−EPI−500−CA)で維持された。抗体ブロッキングアッセイでは、HEKn細胞を解凍し、80%の集密度に達するまで培養した。次に、細胞を平底の96ウェルプレートに10,000/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2で一晩(約18時間)インキュベーションした。一晩のインキュベーション後、HEKn細胞を、11C5−YKD、11C5−YKD/YTE、または適切な抗体アイソタイプ対照(IgG対照)の溶液に曝露し、37℃、5%CO
2で1時間インキュベーションし、続いてアゴニストを添加した(EC
60でIL−36β)。陽性対照条件(PC)には、細胞、成長培地、およびアゴニスト(IL−36β)が含まれた。陰性対照条件(NC)には、細胞および成長培地のみが含まれた。アゴニスト添加の24時間後に組織培養上清を収集し、ELISAを実施してIL−8のレベルを決定するまで−80℃で保存した。ヒトIL−8ELISAキット(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific)を使用し、製造業者の推奨によって、上清中のIL−8のレベルを定量化した。抗体ブロッキングアッセイの前に、アゴニストおよびアンタゴニストの用量応答曲線を生成して、実施例5に記載されているように、EC
50およびIC
50を(それぞれ)決定した。
【0313】
好塩基球細胞アッセイ:下記のプロトコルは、PCT公開第WO2016/077381A1号に記載されているアッセイ方法から改変され、該号は参照により本明細書に組み込まれる。PBMCは、ヘパリンナトリウム(Stemcell Tech)で収集された末梢全血から単離された。血液をPBSで1:1に希釈した。30mLの希釈血を15mLのFicoll Paque Premium(GE Healthcare 17−5442−03)に重層し、試料をブレーキなしで、20℃で20分間400gで回転させた。PBMC含有層を50mLチューブに移し、50mL PBSで2回洗浄した。洗浄したPBMCをPBSに再懸濁し、2,000万細胞/mLに希釈し、v底96ウェルプレートの1ウェル当たり100万細胞(50μL)で播種した。PBSで4×最終濃度で段階希釈した抗体溶液25μLをウェルに添加し、プレートを37℃、5%CO
2でインキュベーションした。60分後、4×最終濃度で25μLのIL−33(Peprotech 200−33)を含むPBSをウェルに添加した(最終容量100μL)。細胞を5%CO
2、37℃で20分間インキュベーションした後、100μLの予熱したPhosflow Fix Buffer I(BD 557870)を添加した。プレートを37℃、5%CO
2で10分間インキュベーションした後、500gで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞をFACS緩衝液(PBS+0.5%BSA+0.05%アジ化ナトリウム)に再懸濁した。プレートを500gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。プレートを短時間ボルテックスすることにより、細胞ペレットを残留量に再懸濁し、100μLの氷冷Phosflow Perm Buffer II(BD 558052)を各ウェルにゆっくりと加えた。プレートをPerm Buffer IIに−20℃で一晩保存した。翌日、プレートを500gで5分間回転させ、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した。下記の抗体を用いて細胞を50μL FACS緩衝液で室温で1時間染色した。抗CD123 FITC(Ebiosciences 11−1239−42、1:10希釈)、抗ホスホp38 PE(Cell Signaling Technology 6908S、1:50に希釈)、抗HLA−DR BV421(Biolegend 307636、1:20に希釈)、および抗CD203c APC(Biolegend 324610 1:200)。一部のウェルでは、アイソタイプ対照(Cell Signaling Technology 4752S)を抗ホスホ−p38 PE抗体の代わりに使用して、ホスホ−p38陽性に染色された集団のゲーティングを促進した。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter)で読み取った。Ultracompビーズ(ThermoFisher 01−2222−41)を使用して補正対照を調製し、細胞と並行して実行した。Flowjoソフトウェア(BD)を使用して、CD123+HLADR−好塩基球でホスホ−p38染色を分析した。CD203c染色は、CD123+HLADR−に基づいてゲーティングされた好塩基球の同一性を検証するために使用した。CD123+HLADR−好塩基球からの%ホスホ−p38陽性データをGraphPad Prism 7ソフトウェアを使用して分析し、アッセイにおける抗体IC
50値を決定した。アゴニストの用量応答は、抗体の用量応答と並行して実行した。抗体用量応答でインキュベーションした細胞は、実験前に基づいて推定EC
50でアゴニストで刺激した。陽性対照は、推定EC
50でアゴニストで処理し、抗体溶液の代わりにPBSで処理した。陰性対照は、抗体およびアゴニスト溶液の両方の代わりにPBSで処理した。データは平均±SDとしてプロットされ、濃度ごとに2回繰り返す。
【0314】
CD4 T細胞アッセイ:下記のプロトコルは、Komai−Koma et al.,Immunobiology,221(3):412−417(2016)に記載されている方法に基づいている。平底96ウェルプレートを4℃で一晩、100μLの3μg/mL抗CD3抗体(Invitrogen16−0037−85)でコーティングした。PBMCは、上記のようにヘパリンナトリウム(Stemcell Tech)で収集された末梢全血から単離された。CD4+T細胞は、製造業者の指示に従って、ネガティブセレクション(Miltenyi Biotec 130−096−533)を使用してPBMCから単離された。単離後、細胞を500,000細胞/mLでT細胞培地(RPMI−1640、5%熱不活化ヒトA/B血清、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、1xMEM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム)に再懸濁した。抗CD3コーティングプレートをPBSで1回洗浄し、1ウェル当たり50,000個のCD4+細胞(100μL)を添加した。抗体をT細胞培地で最終濃度の4倍に段階希釈し、50μLの抗体溶液を各ウェルに添加した。プレートを37℃、5%CO
2でインキュベーションした。1時間後、IL−33(Peprotech 200−33)およびIL−12(Peprotech 200−12)を最終濃度の4倍で含む50μLのT細胞培地を各ウェルに添加し(合計200μL、最終濃度10ng/mL IL−12)、プレートをインキュベーターに戻した。72時間後、T細胞上清中のIFN−γレベルを従来のIFN−γ ELISAキット(Invitrogen88−7316−88)を使用して測定した。GraphPad Prism 7ソフトウェアを使用してデータを補間および分析し、アッセイにおける抗体IC
50値を決定した。アゴニストの用量応答は、抗体の用量応答と並行して実行した。抗体用量応答でインキュベーションした細胞は、実験前に基づいて推定EC
50でアゴニストで刺激した。陽性対照は、推定EC
50でアゴニストで処理し、抗体溶液の代わりにT細胞培地で処理した。陰性対照は、抗体およびIL−33の代わりにT細胞培地で処理した一方、IL−12の最終濃度は10ng/mLのままであった。阻害率は、ピーク抗体濃度での応答低減を総応答の大きさで割ったものとして算出した:%阻害=100%*(陽性対照−処理抗体)/(陽性対照−陰性対照)。データは平均±SEMとしてプロットされ、抗体濃度ごとに3回繰り返す。
【0315】
結果
HEK−BlueアッセイにおけるIL−1、IL−33およびIL−36経路の機能阻害:h11C5変異体YKDのブロッキング効力および有効性がYTE変異の添加によって変化しないことを確認するために、HEK−Blue IL−1/IL−33/IL−36ブロッキングアッセイにおけるYKDおよびYKD/YTEによる機能阻害の比較を実施例2および4に記載されているように実行した。
図6A、6B、および6Cに示されるように、YKD(「11C5−YKD」)およびYKD/YTE(「11C5−YKD/YTE」)は、IL−1β、IL−33、およびIL−36βで刺激された細胞で同様のブロッキング活性を示した。IL1βで刺激された細胞では、YKDおよびYKD/YTEは同一効力(IC
50=0.51nM)を有し、100nMでそれぞれ97%および98%のほぼ完全阻害であった。IL−33で刺激されたHEK−Blue細胞の場合、YKDおよびYKD/YTEの両方が約3nM(11C5−YKD IC
50=3.15nM、11C5−YKD/YTE IC
50=3.3nM)の効力を示し、100nM(YKDおよびYKD/YTEに対してそれぞれ95%および97%の阻害)でほぼ完全に阻害された。最後に、HEK−Blue細胞をIL−36βで刺激すると、両分子は0.9nM(IC
50)の効力で阻害し、100nMで98%以上の阻害であった。要約すると、ヒト化変異体抗hu−IL1RAP抗体のYKDおよびYKD/YTEは、HEK−Blue IL−1、IL−33、およびIL−36のアッセイにおいて、同等の効力およびSEAP産生のほぼ完全なブロッキングを示した。
【0316】
YKD/YTEおよびYKDは、初代細胞でIL−1、IL−33およびIL−36の活性化を阻害する。実施例7で考察したように、HEK−Blueレポーター細胞株は、IL−1、IL−33およびIL−36経路の活性化後、11C5変異体のブロッキング活性を決定するために迅速なアッセイを提供することができる。h11C5変異体のブロッキング活性のさらなる特性評価は、初代ヒト細胞実験を使用して、より生理学的に関連性のあるアッセイで実行された。実施例7に記載される初代細胞アッセイに加えて、本実施例は、ヒト表皮ケラチノサイト(HEKn)、好塩基球およびCD4 T細胞を利用する機能阻害アッセイを含む。
【0317】
ヒト単球(PHMO)およびPHLFでのアッセイを利用して、YKDおよびYKD/YTEが初代ヒト細胞のIL−1経路をブロッキングするのに同等の効力および有効性を有することを確認した。
図7に示されるように、初代ヒト単球(PHMO)がYKDまたはYKD/YTEの存在下でIL−1βで刺激された場合、IL−6産生の完全阻害が観察された。両抗体が同様の効力を示した(YKDおよびYKD/YTEについて、それぞれIC
50=63PMおよび158pM)。PHLFは、YKD/YTE、YKD、またはアイソタイプ対照の存在下でIL−1α(EC
55)で刺激した。
図8のプロットに示されているように、いずれかのh11C5抗体変異体の存在は、IL−1αで刺激されたPHLFにおいて、IL−8産生のほぼ完全な阻害(YKD/YTEおよびYKDについて、それぞれ98%および99%)をもたらし、同様のIC
50値が2抗体について観察された(YKD/YTEおよびYKDについて、それぞれIC
50=6.47nMおよび9.10nM)。要するに、アッセイ結果は、YKD/YTEおよびYKDが同等の効力および有効性を示すことを実証し、IL−1βで刺激されたPHMOにおけるIL−6産生の完全阻害およびIL−1αで刺激されたPHLFにおけるIL−8産生の完全ブロッキングを含む。
【0318】
HEKn細胞およびPHLFでのアッセイを使用して、YKD/YTEおよびYKDがIL−36経路のブロッキングにおいて同等の効力および有効性を示したことを確認した(verify)。IL−36受容体およびその受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)は、ヒトケラチノサイトで発現することが知られている(例えば、Ding et al.,Oncotarget,9(2)2895−2901(2017)を参照)。IL−36βで刺激されたHEKn細胞はIL−8を産生し、これは標準ELISAにより上清で検出することができる。YKD/YTEおよびYKDがIL−36βで刺激されたHEKn細胞でIL−8産生をブロッキングすることができるか否かを決定するために、HEKn細胞をYKD/YTE、YKD、またはアイソタイプ対照(IgG対照)の段階希釈でインキュベーションした。
図9に示されるように、YKDおよびYKD/YTEの両方は、IL−8産生の完全な阻害(100%)を示した。両変異体は、YKDおよびYKD/YTEについて、それぞれ1.39nMおよび1.16nMのIC
50値で、同様の効力を示した。
図10に示されるように、YKD/YTEおよびYKDが、IL−36βで刺激されたPHLFにおけるIL−8産生をブロッキングする能力について試験された場合、両方ともIL−8産生の完全な阻害を示した。さらに、両抗体変異体は、同様の阻害効力を有した(YKD/YTEおよびYKDについて、それぞれIC
50=0.50nMおよび0.39nM)。要約すると、YKD/YTEおよびYKDは、IL−36βで刺激されたHEKn細胞およびIL−36βで刺激されたPHLFにおいて、IL−8産生のブロッキングに同等の有効性および効力を有する。
【0319】
アッセイにより、YKD/YTEが初代ヒトNK細胞、好塩基球、CD4+T細胞のIL−33経路をブロッキングすることができることも確認された。実施例7に記載されるように、IL−12の存在下でIL−33で刺激された初代ヒトNK細胞は、検出可能なIFN−γを産生しないIL−12のみに曝露されたNK細胞とは異なり、IFN−γを産生する。
図11に示すように、IFN−γはアイソタイプ対照抗体とインキュベーションしたNK細胞の上清で検出可能であったが、ヒトNK細胞をYKD/YTEまたはYKDで処理すると、ほぼ全てのIFN−γ産生がブロッキングされた(YKD/YTEおよびYKDについて、それぞれ96%および97%の阻害)。2つの抗体で観察されたIC
50値は、YKD/YTEで1.32nM、YKDで2.93nMであった。好塩基球は、喘息患者の肺において数の増加が観察されている(例えば、Schwartz et al.,European Journal of Pharmacology,778:90−95(2016)を参照)。YKD/YTEは、好塩基球のIL−33刺激をブロッキングする能力について試験した。PBMCのIL−33刺激は、好塩基球でp38MAPKのリン酸化をもたらした。推定EC
50でIL−33による刺激の20分後、PBMCはYKD/YTEと1時間インキュベーションした。
図12の結果によって示されるように、YKD/YTEは、好塩基球でp38リン酸化を本質的に完全ブロッキングし(99%阻害)、アゴニストEC
56で41nMのIC
50であった。CD4+T細胞におけるYKD/YTEの有効性および効力を調べるために、CD4+T細胞をIL−33およびIL−12で共刺激し、IFN−γ産生をアッセイした。CD4+T細胞は、10ng/mLのIL−12および推定EC
50のIL−33による刺激後、YKD/YTEと1時間インキュベーションした。
図13で示されるように、YKD/YTEは、IFN−γ産生をほぼ完全にブロッキングし(89%阻害)、アゴニストEC
34で44nMのIC
50であった。要約すると、YKD/YTEおよびYKDは、IL−33で刺激された初代ヒトNK細胞で同様のブロッキング効力および有効性を示した。さらに、YKD/YTEは、好塩基球におけるIL−33誘導性のp38MAPKのリン酸化を完全にブロッキングし、IL−33刺激性CD4+T細胞におけるIFN−γ産生をほぼ完全にブロッキングした。
【0320】
したがって、この実施例12の結果は、YKD/YTEおよびYKDが、細胞株(HEK−Blueレポーター細胞株)および記載された全ての初代ヒト細胞アッセイにおいて、IL−1、IL−33およびIL−36活性化をブロッキングしたことを実証する。結果には、PHLFおよびPHMOにおけるIL−1活性化のほぼ完全なまたは完全なブロッキング、NK細胞、好塩基球およびCD4 T細胞におけるIL−33活性化、ならびにPHLFおよびHEKnにおけるIL−36活性化が含まれる。さらに、YKD/YTEおよびYKDは、実施された全ての機能アッセイで同等の有効性および効力を示した。
【0321】
実施例13:抗ヒトIL1RAP抗体変異体の細胞傷害性の欠如
この実施例は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、および抗体依存性細胞食作用(ADCP)のアッセイを例示し、該アッセイは、抗ヒトIL1RAP抗体のYKD/YTE、11C5−N297G、およびYKDの細胞傷害性の欠如を実証する。
【0322】
材料および方法
試薬:アッセイで使用した抗体は、下記の通りである。YKD/YTE(実施例11に記載)、YKD(実施例8に記載)、11C5−N297G(実施例5および7に記載されているように、N297G変異を含む親11C5分子)、11C5野生型(親和性を高めるN297G変異およびYKD変異を欠く親11C5分子)、アイソタイプ対照hIgG1(N297G)および細胞傷害活性を有することが知られている陽性対照抗体としての抗CD20抗体、リツキシマブ(Genentech、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)。下記の細胞株を利用した。:ジャーカット、ダウディおよびTHP−1(ATCC、バージニア州マナッサス)。PBMC、初代ヒト好中球、および初代ヒト単球は、Stemcell Technologiesから入手した。ジャーカット細胞株は、その有意なIL1RAP発現のため対照として使用された。CD20を発現するダウディ細胞株は、追加の陽性対照として使用され、抗CD20抗体であるリツキシマブの標的細胞株として機能した。
【0323】
ADCCアッセイ:YKD/YTEおよび関連分子がADCC活性を示すか否かを決定するために、単球、好中球、またはジャーカット細胞からなる標的細胞のエフェクター細胞としてNK細胞を使用した。8:1のエフェクター:標的(E:T)比をアッセイに適用した。標的細胞は、CellTrace Violet染色(Invitrogen)で標識した。標識後、標的細胞(96ウェルプレートの1ウェル当たり1×10
4細胞)を4つの異なる濃度で指示抗体と混合した後、さらにNK細胞(96ウェルプレートの1ウェル当たり8x10
4細胞)とRPMI完全培地で混合した。反応は37℃で5時間進行した。インキュベーション後、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで、ヨウ化プロピジウム(PI)(Life Technologies)で15分間染色した。次に、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter)およびFlowjoソフトウェア(BD)を使用して細胞を分析した。細胞死は、CellTrace Violetで染色された生きた標的細胞集団内のPI染色細胞のパーセンテージに基づいて算出された。
【0324】
CDCアッセイ:YKD/YTEおよび関連分子がCDC活性を示したかどうかを決定するために、Quidelの正常なヒト血清(カタログ番号A113、カリフォルニア州サンディエゴ)を細胞傷害エフェクターとして使用し、血清の20%をアッセイ培地に適用した。標的細胞(ヒト単球、好中球およびジャーカット細胞)は、CellTrace Violet染色で標識した。標識後、標的細胞(1ウェル当たり5×10
4細胞、96ウェルプレート)を4つの異なる濃度で指示抗体と混合した後、AIM−V培地CTS(商標)(カタログ番号0870112−DK、Life Technologies)で通常のヒト血清(最終濃度20%)とさらに混合した。反応物を37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで、PIで15分間染色した。ADCCアッセイについて前述したように、フローサイトメトリーを使用して細胞試料を分析し、細胞死(細胞傷害)の割合を決定した。
【0325】
ADCPアッセイ:ADCP活性がYKD/YTEおよび関連分子に存在するか否かを確認するために、ヒトTHP−1由来マクロファージ細胞をエフェクター細胞として使用し、標的細胞はヒト単球、好中球、ジャーカット細胞またはダウディ細胞で構成された。THP−1細胞をホルボールミリステートアセテート(PMA)(Sigma Aldrich)で2日間処理した後、IFN−γ(50ng/ml)およびリポ多糖(LPS)(Sigma Aldrich)でさらに刺激した。ADCP反応のE:T比は2:1であった。標的細胞(ヒト単球、好中球、ジャーカット細胞またはダウディ細胞)をCellTrace Violet染色で標識し、THP−1細胞をPKH26標識キット(カタログ番号PKH26PCL−1KT、Sigma)で標識した。標識後、標的細胞(96ウェルプレートの1ウェル当たり5×10
4細胞)を4つの異なる濃度で指示抗体と組み合わせた後、さらにTHP−1由来マクロファージ細胞(96ウェルプレートの1ウェル当たり1×10
5細胞)とRPMI完全培地で混合した。反応物を37℃で5時間インキュベーションした。インキュベーション後、CellTrace Violetの蛍光(標的細胞を同定するためのPB450チャネル)およびPKH26蛍光(THP−1由来マクロファージエフェクター細胞を同定するためのPEチャネル)について、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。細胞の食作用は、二重蛍光性の細胞、すなわち、PB450チャネルおよびPEチャネルの両方で観察される蛍光によって示される。食作用率は、標識された標的細胞上で二重蛍光を発する細胞の数として算出される。
【0326】
結果
IL1RAPは、好中球および単球などのヒト血液細胞で発現するため、YKD/YTEなどの抗IL1RAP抗体がADCC、CDC、またはADCP活性を示す程度を決定することは、さらなる臨床開発にとって重要であり、これらのそれぞれが、インビボで細胞傷害を引き起こし得る。YKD/YTEのADCC、CDC、またはADCP活性の程度を決定するためのアッセイは、上記のように実施された。表21(下記)に要約されているように、抗IL1RAP抗体、11C5−N297G、YKD、YKD/YTEは、アッセイで細胞傷害活性を示さなかった。(「+」は陽性の細胞傷害性を示し、「−」は細胞傷害性がないことを示す)。
【表21】
【0327】
表21の結果に示されているように、YKD/YTE、11C5−N297G、およびYKDは、ヒト単球および好中球、またはジャーカット細胞に及ぼす細胞傷害効果を示さなかった。エフェクター機能を無効にするN297G変異を欠く親分子11C5野生型は、CDCまたはADCPアッセイで測定した場合、細胞傷害性を示さなかったが、ADCCアッセイではいくらか弱い活性を示した。3つのアッセイにおいて、陽性対照抗体のリツキシマブは予想レベルの細胞傷害活性を示した(データは示していない)。要約すると、抗IL1RAP抗体のYKD/YTE、11C5−N297G、およびYKDは、ADCC、CDC、およびADCP活性を評価するアッセイによって決定された細胞傷害活性を示さなかった。
【0328】
実施例14:変異体抗ヒトIL1RAP抗体の薬物動態
この実施例は、カニクイザルで実施されたYKDおよびYKD/YTEの薬物動態(PK)を特性評価する研究を例示し、YKD/YTEは、FcRnへの結合親和性を改善するFc領域の変更を伴うYKDの変異体である。研究1および2は、広い用量範囲にわたる抗体のPKを特性評価し、潜在的な標的媒介性クリアランス機構を定量化するために、1〜40mg/kg範囲の単回静脈内(IV)用量でのYKDのPKを調べた。研究3は、YKDの薬物動態に及ぼすYTE変異の影響を決定するために、カニクイザルで3〜40mg/kg範囲の単回静脈内IV投与で変異体YKD/YTEのPKを調べた。
【0329】
材料および方法
研究デザインおよび薬物動態サンプリング計画:カニクイザルでのYKDのPKを調べるために、2つの研究(1および2)を実行した。YKD/YTEのPKを調べるために、追加研究3を実行した。全ての研究はIV投与を利用した。試験品は、pH5.5の200mMアルギニンスクシネートで製剤化された。各動物の橈側皮静脈を介して下記の時点で採血した。投与前、10分、2時間、8時間、および第1、2、4、7、10、14、17、21、24、28日目。PK試料を血清に処理した。研究デザインの要約を表22(下記)に示す。
【表22】
【0330】
薬物濃度を測定するための生物分析アッセイ:サル血清中のIL1RAP特異的抗体の濃度は、50〜0.78ng/mLの作業範囲で7つの標準から生成された検量線、さらに0.2%サル血清マトリックスのゼロ標準を使用して較正されたELISAアッセイを使用して測定された。QC試料は、0.2%サル血清で40ng/mL、8ng/mL、および2ng/mLの濃度で調製した。ヒトIL1RAPタンパク質の細胞外ドメイン(配列番号3)をマイクロタイタープレート上にコーティングした後、投与試料、較正標準、および品質管理試料から抗IL1RAP抗体を捕捉するために使用した。捕捉された抗IL1RAP抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合したヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体によって検出された。発色基質のテトラメチルベンジジン(TMB)を添加してHRPと反応させた。次に、酸性溶液で反応を停止し、各ウェルに捕捉された抗IL1RAP量に比例する吸光度シグナルを得た。重み4パラメーターロジスティック(4PL)モデルを使用して、較正標準のシグナル強度およびそれぞれの名目濃度を適合し、較正方程式を生成した。方程式を使用して、各試料の抗IL1RAP濃度を、重複測定の平均から算出した。
【0331】
薬物動態分析の方法:研究1と2のデータを組み合わせて、YKDのPKパラメーターを推定した。研究3からのデータを使用して、YKD−YTEのPKパラメーターを推定した。コンパートメントモデリングおよびパラメーター推定は、PK/PDモデリングソフトウェアADAPT Vを使用して行った(D’Argenio,D.Z.et al.,ADAPT 5 User’s Guide:Pharmacokinetic/Pharmacodynamic Systems Analysis Software,Biomedical Simulations Resource,Los Angeles,CA.(2009))。各用量群について、群平均濃度−時間プロファイルが最初に生成され、次に、複数の用量群からの群平均濃度−時間プロファイルを様々な候補モデル構造に同時に適合させた。両性別のデータを組み合わせて、目視検査での有意な性差の欠如に基づいて、群平均濃度−時間プロファイルを算出した。分析的に報告可能な全てのPKデータは、コンパートメントデータ分析に含まれていた。
【0332】
モデルの選択は、アキアケ情報量基準(Akiake Information criterion)(AIC)を使用して進められた。パラメーターは、最尤推定法(D’Argenio,D.Z.,et al.,ADAPT 5 User’s Guide:Pharmacokinetic/Pharmacodynamic Systems Analysis Software,Biomedical Simulations Resource,Los Angeles,CA.(2009))を使用して推定された。
図14Aに示される非線形2コンパートメントモデルは、群平均データを最もよく説明することが見出された。
【0333】
結果
YKDおよびYKD/YTEの群平均血清濃度の時間プロファイルをそれぞれ
図14Bおよび
図14Cに示す。両抗体について、濃度は高用量に対して低用量でより急速に低下し、おそらく標的IL1RAPへの結合により、1〜40mg/kgの用量範囲にわたって非線形PKが示唆された。群平均データは、上記で説明され、
図14Aに示されるように、非線形2コンパートメントモデルに適合された。抗ヒトIL1RAP抗体のYKDおよびYKD−YTEについて得られたPKパラメーターの推定値を表23(下記)に要約する。
【表23】
【0334】
変異体抗hu−IL1RAP抗体YKDの線形クリアランス(CL
t)およびt
1/2は、それぞれ6.3mL/日/kgおよび7.4日であった。これらの値は、カニクイザルのIgG1について予想範囲内であった。抗hu−IL1RAP抗体変異体YKD/YTEは、YKDと比較して、CL
t(4.9mL/日/kg)の減少およびt
1/2(11.9日)の増加を示し、YKD/YTE変異体がカニクイザルのYKDと比べてPK特性を改善したことを実証している。
【0335】
実施例15:抗ヒトIL1RAP抗体のエピトープ残基マッピング
この実施例は、h11C5変異体K13/H3(または「YIS」)およびK17/H3(または「YKS」)の結合に重要なヒトIL1RAP残基を同定するために、ファージディスプレイ技術を次世代シーケンシング(NGS)と組み合わせて使用する方法を例示する。ヒトIL1RAP変異体のライブラリーがファージ上に提示され、ライブラリーはYIS、YKS、または参照抗体に対するファージパニングに供された。抗体への結合を保持するヒトIL1RAP変異体を保有するファージを精製し、ヒトIL1RAP配列をNGSによって得た。YISまたはYKS結合には有害であるが、参照抗体結合には有害ではないヒトIL1RAPの変異が同定され、エピトープ残基として定義された。
【0336】
材料および方法
Ser21からLys350までのヒトIL1RAPのアミノ酸配列(配列番号1)を選択して、ファージに提示させた。実施例2(上記)の表5に記載されているように、11C5は、ヒトIL1RAPのドメイン3に結合する。したがって、ヒトIL1RAPの変異体を提示するファージライブラリーは、IL1RAPのドメイン3(配列番号1のLys238〜Lys350)のみで全20個のアミノ酸をコードするNNK縮重コドンを使用した残基ランダム化によって構築された。変異誘発オリゴヌクレオチドが、ライブラリーの各メンバーのヒトIL1RAPドメイン3残基で1つのNNK変異のみが起こることを可能にするように設計されたことを除いて、変異誘発は実施例8に記載されているように実行された。得られたライブラリーDNAは、E.coli XL1細胞に電気穿孔し、約4.6×10
9個の形質転換体を得た。
【0337】
1μg/mLの変異体抗体のYIS、YKS、またはヒトIL1RAPドメイン1(配列番号4)に結合する参照抗体がMaxisorpプレート上にコーティングされたことを除いて、ファージパニングの第1ラウンドは実施例8に記載されているように実施した。ヒトIL1RAPドメイン1に結合する参照抗体は、ヒトIL1RAPの一般的な折り畳みに有害であるが、ヒトIL1RAPドメイン3への11C5抗体の結合に必ずしも有害ではない変異を同定するプロセスにおいて対照として役立つ。
【0338】
ブロッキングされたファージライブラリーを、減少濃度のビオチン化YIS、YKS、または参照抗体と1時間インキュベーションしたことを除いて、ファージパニングの第2〜第4ラウンドは実施例8に記載されているように実施した。抗体に結合したファージをブロッキングされたニュートラアビジンでコーティングしたプレートに捕捉し、Wash Bufferで十分に洗浄し、ラウンド1と同じ様式で溶出および中和した。
【0339】
初期ファージライブラリー(非選別試料)の配列およびパニングのラウンド2〜4(選別試料)は、NGSに対してヒトIL1RAPドメイン3アンプリコンが生成されたことを除いて、実施例8に記載のNGSを使用して抽出された。
【0340】
NGSの後、ペアエンド配列決定データアセンブリおよび配列読み取りデータの品質管理が、実施例8に記載されているように実行された。ファージパニングのラウンド2〜4の読み取りデータは、データ分析用に共にプールされた。位置重み行列は、ランダム化された全ての位置の全変異頻度を算出することによって生成された。各変異の濃縮比は、実施例8に記載されるように、選別試料の所与の位置での所与の変異の頻度を、非選別試料のまったく同じ変異の頻度で割ることによって算出した。
【0341】
結果
NGSデータを使用して、YISまたはYKSの結合に関してヒトIL1RAPドメイン3の各アミノ酸位置での置換の影響を分析した。ゼロ未満の濃縮比は、YIS、YKS、または参照抗体の結合に有害なアミノ酸置換を示した。NGSデータはさらに、参照抗体結合に有害ではないがYISまたはYKSの結合に有害であるヒトIL1RAPドメイン3残基の置換にフラグを立てるために使用された。多数のフラグ付き置換が観察されたヒトIL1RAPドメイン3残基位置は、残基ランダム化がドメイン3に適用され、ヒトIL1RAPドメイン1に結合する参照抗体に影響を及ぼさないため、YISまたはYKS結合エピトープの一部である可能性があった。
【0342】
図15に示すように、同定されたIL1RAPエピトープ残基がヒトIL−1β、IL−1R1およびIL1RAP三元複合体(PDB:3O4O)の結晶構造にマッピングされると、それらの分布はクラスター化され、IL1RAPと、IL−1βおよびIL−1R1の二元複合体との結合界面に位置付けされる。したがって、本実施例のエピトープデータは、YISまたはYKSなどの本開示の抗hu−IL1RAP抗体の結合が、どのように三元複合体の形成をブロッキングし、それによって下流の細胞内シグナル伝達事象を阻害できるかについての構造的説明を提供する。さらに、IL1RAPとIL−33/ST2(Gunther et al.,Immunity,47:510−523(2017))またはIL−36/IL1RL2(Yi et al.,The Journal of Biological Chemistry,291(32):16597−16609(2016))との間の構造的相互作用の全般的類似性を考慮して、本実施例のエピトープデータは、YISおよびYKSなどの本開示の抗IL1RAP抗体がこれらの2つの経路もブロッキングする能力についての構造的説明の可能性も裏付けている。
【0343】
表24は、ヒトIL1RAPドメインの3つの位置で観察されたフラグ付き置換の相対数を示す(+++:9個以上のフラグ付き置換、++:6〜8個のフラグ付き置換、+:3〜5個のフラグ付き置換、−:3個未満のフラグ付き置換)。フラグ付き置換の数が多い残基は、エピトープの一部である可能性が高いとみなされた。
【表24-1】
【表24-2】
【0344】
表24に列挙された結果によって実証されるように、主にD3ドメイン内の243〜255番目、257〜268番目および333〜336番目でヒトIL1RAP残基に結合する高親和性抗体11C5のエピトープ。これらの部位のほとんどが、IL1RAPドメイン3の表面に群がっている(
図15を参照)。これらの不連続残基は、本明細書に開示されるように、抗体、11C5、およびその変異体のエピトープであると結論付けられる主要なパッチにマッピングされる。
【0345】
実施例16:代理抗マウスIL1RAP抗体の生成
この実施例は、抗mu−IL1RAP抗体を生成するためのマウスハイブリドーマ技術の使用、抗mu−IL1RAP抗体14F4の特性評価、およびインビボマウス研究のためのこの代理抗体の使用方法を例示する。
【0346】
材料および方法
免疫化および融合:IL1RAPノックアウトマウス(The Jackson Laboratory、品番003284)を25μg/免疫/マウスのmu−M−IL1RAP−D3(残基境界がK239〜T368であるmu−IL1RAPドメイン3)で3回免疫した(配列番号337)。mu−M−IL1RAP(C末端6xヒスチジンタグと融合した細胞外部分)(配列番号9)とmu−M−IL1RAP−D3(配列番号337)の1:1混合物を用いて、各マウスに合計25μg/免疫/マウスで5回以降の免疫を与えた。Sigma Adjuvant System(Sigma−Aldrich)を全ての免疫に使用した。次に、マウスに、アジュバントを含まないmu−M−IL1RAPおよびmu−M−IL1RAP−D3の1:1混合物を25μg/マウスで最終追加免疫を与えた。3日後、脾臓を採取し、標準プロトコルに従って処理した。標準プロトコルに従って、PEGを使用して脾細胞を骨髄腫Sp2/0細胞(ATCC)と融合し、96ウェルプレートに播種した。親ハイブリドーマは、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジンを補充した選択培地を使用して選択された。
【0347】
ELISAアッセイ:培養の12〜14日後、ハイブリドーマ上清を収集し、1μg/mL mu−M−IL1RAPを含むPBSでコーティングされた96ウェルプレートを用いたELISAによる一次スクリーニングに供した。ハイブリドーマ上清(65μL/ウェル)をコーティングプレートで少なくとも1時間室温でインキュベーションし、プレートを洗浄緩衝液(0.05%Tween−20を含むPBS)で3回洗浄した。ヤギ抗マウス−Fc−HRP二次(Jackson Immunoresearch、PBSで1:5000に希釈)を添加し(65μL/ウェル)、室温で1時間インキュベーションした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、1−Step Ultra TMB ELISA基質展開液(Thermo Pierce Scientific、65μL/ウェル)を添加し、室温で20分間インキュベーションした。展開剤を消光せずに650nmでの吸光度を読み取った。
【0348】
一次ELISAスクリーンで陽性であった親ハイブリドーマを、ヒポキサンチン−チミジンを含む培地で24ウェルプレートに増殖させ、1μg/mLでコーティングされたmu−M−IL1RAPを使用して実施例2に記載されているように確認のELISAスクリーンを実行した。目的のハイブリドーマクローンを、0.5細胞/ウェルの密度で限定希釈を使用してサブクローン化し、細胞ペレットを使用して、各抗体クローンの重鎖および軽鎖配列を決定した(以下に記載)。
【0349】
14F4の配列決定および組換え産生:ハイブリドーマ由来の抗mu−IL1RAP抗体の配列決定は、実施例3に記載されているように実施した。組換え抗mu−IL1RAP抗体14F4は、実施例5に記載されているように生成された。
【0350】
組換え14F4結合mu−IL1RAPのBIACORE SPR分析:表面プラズモン共鳴(SPR)分析を使用し、BIACORE(商標)8K機器を使用してmu−IL1RAPに対する14F4の結合親和性を決定した。動態測定では、組換え14F4をHBS−P緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%界面活性剤P20)で10μg/mLに希釈し、第2フローセル(FC2)に10μL/分で抗マウスチップ(GE Healthcare)に捕捉した。FC1は参照として保持された。次に、低(0.14nM)から高(100nM)までmu−M−IL1RAPを含むHBS−Pの3倍段階希釈液を37℃で注入した(流速:30μL/分)。60mM塩酸(流速:90μL/分)を使用して各分析対象を注入する前に、チップを2回再生した。センサーグラムは記録され、BIACORE(登録商標)8K評価ソフトウェア(バージョン1.1.1.7442)によるデータ分析前に、参照および緩衝液の減算が行われた。結合率(k
on)および解離率(k
off)は、単純な1対1のラングミュア結合モデルを使用して算出された。平衡解離定数(K
D)は、k
off/k
onの比率として算出された。
【0351】
組換え14F4の非特異的結合を決定するためのBV ELISA:非特異的結合の程度を決定するために14F4を使用して、実施例11に詳述されるようにBV ELISAを実施した。
【0352】
IL1RAPの特異的結合活性のアッセイ:hu−IL1RAPおよびmu−IL1RAPの異なるドメインに対する14F4の特異性を決定するために、ELISAを実施例2で前述したように使用し、個別に下記のタンパク質を用いて1μg/mLでコーティングした。mu−M−IL1RAP(配列番号337)、mu−M−IL1RAP−D1D2(ドメイン1〜2、S21〜P237)(配列番号338)、hu−M−IL1RAP(配列番号3)、hu−M−IL1RAP−D1(ドメイン1、S21〜Q133)(配列番号4)、およびhu−M−IL1RAP−D3(ドメイン3、K238〜T367)(配列番号6)。組換え14F4を10nMの濃度でアッセイした。
【0353】
結果
抗mu−IL1RAP抗体の生成:IL1RAPノックアウトマウスの免疫およびその後の脾細胞の採取に続いて、mu−M−IL1RAP(配列番号9)への結合について、(PEG融合を介して生成された)親ハイブリドーマをELISAによってスクリーニングした。一次ELISAアッセイスクリーニングにより、ハイブリドーマから合計17の抗マウスIL1RAPバインダーが同定され、24ウェルプレートに増殖させた後、ELISAによってmu−M−IL1RAPに結合することがさらに確認された。実施例2に記載されるように(データは示さず)HEK−Blue SEAPアッセイで全17個の上清をスクリーニングした後、全3つの経路(IL−1、IL−33、およびIL−36)をブロッキングする能力に基づいて14F4を選択した。クローン14F4は、ハイブリドーマ細胞からV
LおよびV
H領域の配列決定、組換え発現および精製のために選択された。
【0354】
mu−IL1RAPへの組換え14F4の結合の動態:表25に示すように、組換え14F4は、K
D=0.219nMでmu−M−IL1RAP(配列番号9)に結合する。
【表25】
【0355】
非特異的結合のBV ELISAの結果:表26に示すように、組換え14F4は、培地対照よりも大きなBV ELISAシグナルを示さず、14F4がBV粒子に非特異的結合しないことを示唆している。
【表26】
【0356】
IL1RAPの特異的結合活性のアッセイ:表27に示すように、組換え抗mu−IL1RAP抗体である14F4は、ヒトIL1RAPへの結合を示さないが、mu−M−IL1RAP(配列番号9)とmu−M−IL1RAP−D1D2(配列番号338)間で同等の結合を示し、14F4がマウスIL1RAPのドメイン1またはドメイン2のいずれかに特異的に結合することを示唆している。
【表27】
【0357】
実施例17:代理抗マウスIL1RAP抗体14F4のIL1RAPブロッキング活性の細胞アッセイ
この実施例は、抗mu−IL1RAP代理抗体の14F4が、マウス細胞株または初代マウス細胞の全3つの経路(IL−1媒介性、IL−33媒介性、およびIL−36媒介性)をブロッキングする能力を例示する。
【0358】
材料および方法
NIH−3T3細胞および関連アッセイ:マウス線維芽細胞株NIH−3T3は購入した(ATCC CRL−1658)。NIH−3T3細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Atlanta Biologicals)、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、1X非必須アミノ酸(Gibco 11140−050、100X溶液)および1X Glutamax(Gibco 35050−61、100X溶液)を補充したDMEM(Corning 10−013−CV)からなる標準成長培地を利用して、製造業者のガイドラインに従って培養で維持した。マウスIL−1β(Peprotech)およびIL−36α(BioLegend)は購入した。
【0359】
抗体ブロッキングアッセイおよびアゴニスト用量応答曲線は、本実施例の条件を説明するためにいくつかの改変を加えて、実施例7に記載されたのと同様の様式で実施された。要するに、実験使用の前日、NIH−3T3細胞を平底の96ウェルプレートに、使用日に約80〜85%の集密度になる濃度で播種した。アッセイの日に、代理抗体14F4またはアイソタイプ対照をNIH−3T3細胞と1時間インキュベーションし(37℃、5%CO
2)、続いてアゴニスト(IL−1βまたはIL−36α)を添加した。実験をさらに24時間進行させた(37℃、5%CO
2)。細胞培養上清を収集し、IL−6産生のレベルをELISA(Thermo Fisher Scientific)によって製造業者のガイドラインに従って決定した。記載された全ての抗体ブロッキングアッセイでは、NIH−3T3細胞を、EC
85以上のアゴニスト濃度で刺激した。陽性対照は、成長培地およびアゴニスト単独(抗体が存在しない)とNIH−3T3細胞で構成される一方、陰性対照試料は、成長培地単独(アゴニスト刺激および抗体の不在下)とNIH−3T3細胞で構成された。
【0360】
J774−Dual細胞および関連アッセイ:J774−Dual細胞は、マウスJ774.1マクロファージ様細胞株に由来した。これらの細胞は、NF−κBレポーター遺伝子である分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)を発現するように操作されている。J774−Dual細胞は市販されており、インビボGen(カタログ番号j774d−nfis)から入手した。J774−Dual細胞を一般的な製造業者のガイドラインに従って解凍し、10%熱不活化ウシ胎児血清(56℃で30分)、100μg/ml Normocin(インビボGen(カタログ番号ant−nr−1)、1xペニシリン−ストレプトマイシン溶液を含み、選択抗生物質ブラストサイジン(インビボGenカタログ番号ant−bl−1))およびゼオシン(インビボGenカタログ番号ant−zn−1)を補充したDMEM(2mM L−グルタミン、3.7g/L炭酸水素ナトリウム、4.5g/Lグルコース、および1.0mMピルビン酸ナトリウム)を含む細胞培養培地で維持した。抗体ブロッキングアッセイでは、J774−Dual細胞を、選択抗生物質(ブラストサイジンおよびゼオシン)を含まない細胞培養培地で、細胞が80%の集密度に達するまで培養した。次に、細胞を平底の96ウェルプレートに50,000/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2で一晩(約18時間)インキュベーションした。アゴニスト(EC
55のマウスIL−33、PeproTech、カタログ番号1209434)を添加する前に、14F4をJ774−Dual細胞と1時間インキュベーションした。細胞をさらに37℃、5%CO
2で24時間インキュベーションした。上清中のSEAP産生は、実施例2に記載のSEAP検出アッセイを使用して定量化した。陽性対照条件(PC)には細胞、成長培地、およびアゴニスト(IL−33)が含まれ、陰性対照条件(NC)には細胞および成長培地のみが含まれた。データはGraphPad Prism7ソフトウェアを使用して分析し、非線形回帰分析を実施してアゴニストEC
50値を決定した。抗体ブロッキングアッセイの前に、アゴニストおよびアンタゴニストの用量応答曲線を生成して、実施例5に記載されているように、EC
50およびIC
50を(それぞれ)決定した。
【0361】
初代マウス胚性線維芽細胞および関連アッセイ:初代マウス胚性線維芽細胞(初代MEF)はLonza(カタログ番号M−FB−481)から入手した。これらの初代細胞は、交尾後14日目および15日目のCD−1マウス胚から分離され、培養で増殖させた後、製造業者によって凍結保存される。細胞を解凍し、製造業者が提供するガイドラインに従って、10%の熱不活化ウシ胎児血清(Atlanta Biologicals、カタログ番号S11150H)、10IUペニシリン、および10μg/mLストレプトマイシン(Corning、カタログ番号30−002−CI)を補充した4.5g/Lのグルコース、L−グルタミン、およびピルビン酸ナトリウム(Corning、カタログ番号10−013−CV)とDMEMを使用して培養を維持した。マウスIL−36βはBiolegend(カタログ番号554506)から入手した。
【0362】
アゴニスト用量応答曲線および抗体ブロッキングアッセイは、以下に言及する改変を加えて、実施例7に記載されているように実施した。簡潔に述べると、初代MEFを平底の96ウェルプレートに15,000細胞/ウェルの密度で前述の成長培地に播種した。細胞を37℃、5%CO
2で一晩インキュベーションした。一晩のインキュベーション後、14F4またはアイソタイプ対照を、37℃、5%CO
2で1時間、初代MEFとインキュベーションした。これに続いて、所定濃度のアゴニスト(マウスIL−1βまたはIL−36β)を添加した。各ウェルの最終容量は200μLであり、抗体ブロッキングアッセイはアゴニストEC
70以上で実施された。
【0363】
アゴニスト刺激後、細胞を37℃、5%CO
2で21時間インキュベーションした。続いて、プレートを遠沈し、上清を収集し、製造業者のガイドラインに従って、市販のマウスIL−6 ELISAキット(Invitrogen/Thermo Fisher Scientificカタログ番号88−7064−88)を使用して、分泌されたマウスIL−6のレベルを決定した。陽性対照ウェルは、成長培地にアゴニストを含む細胞から構成され、陰性対照ウェルは、成長培地のみを含む細胞から構成された。データ解析は、アゴニストEC
50およびアンタゴニストIC
50値を決定するために、非線形回帰(曲線適合)を用いて、Graphpad Prism7ソフトウェアを使用して実施した。
【0364】
結果
代理抗マウスIL1RAP抗体の14F4(実施例16に記載されるように調製された)は、マウスモデルにおけるインビボ有効性を実証するために選択された。インビボ研究の前に、14F4は、マウス細胞株および初代細胞アッセイを使用して、全3つのIL1RAP媒介性経路(IL−1、IL−36およびIL−33)をブロッキングする有効性についてインビトロでアッセイされた。
【0365】
NIH−3T3細胞株を使用して、14F4がインビトロでマウスIL−1およびIL−36経路をブロッキングすることができるか否かを決定した。NIH−3T3細胞は、IL−1刺激に応答することが知られており、したがってIL1RAPを発現する(例えば、Smeets et al.,Arthritis and Rheumatism,52(7):2202−2211(2005)を参照)。NIH−3T3細胞は、上記のようにIL−1βで刺激され、14F4に曝露されてIL1−β刺激をブロッキングするか、アイソタイプ対照抗体に曝露された。IL−6産生は、アイソタイプ対照抗体に曝露された細胞、および陽性対照細胞の上清で測定された。表28(下記)に示すように、抗マウスIL1RAP抗体14F4を投与されたNIH−3T3細胞は、陽性対照と比較して、IL−6の検出レベルでほぼ完全な低減(98%阻害)を示した。14F4は、IC
50=1.36nMでIL−1β誘導性IL−6産生を阻害し、これは、実施例12で記載したHEK−BlueアッセイでYKD/YTE(IC
50=0.51nM)で観察された効力に近い。
【0366】
NIH−3T3細胞は、IL−36に応答し、IL−36αによる刺激時に用量依存的にIL−6を分泌することも見出された(データは示していない)。観察された最大のIL−6産生は、NIH−3T3細胞がIL−1βまたはIL−36αで刺激されたかどうかにかかわらず同様であった。表28に示すように、IL−36αで刺激されたNIH−3T3細胞を使用して実行された14F4ブロッキングアッセイは、IL−6産生の100%阻害をもたらした。さらに、14F4はIL−1β刺激後に観察された効力よりも大きな効力でIL−36α誘導性IL−6産生を阻害することができ(IC
50=0.18nM)、16.7nMで14F4による完全な阻害が観察された。実施例12に記載されるように、14F4のナノモル以下の阻害効力は、IL−36HEK−Blueアッセイにおいて抗ヒトIL1RAP抗体YKD/YTEについて観察された効力に匹敵する。要約すると、代理抗mu−IL1RAPマウス抗体14F4は、マウス細胞株NIH−3T3でIL−1およびIL−36誘導性IL−6産生を効果的に阻害し、抗hu−IL1RAP抗体のYKD/YTEで観察されたのと同等の効力をインビトロで実証した。
【0367】
マクロファージ様J774−Dual細胞株を使用して、14F4がインビトロでマウスIL−33刺激性経路をブロッキングすることができるか否かを決定した。IL−33およびその受容体IL1R1は、マクロファージを含む多くの免疫細胞で広く発現している。IL−33による活性化ST2シグナル伝達は、マクロファージにおけるNF−κBの活性化をもたらす(例えば、Kakkar et al.,Nature Reviews.Drug Discovery,7(10),827−840(2008)を参照)。表28に示すように、14F4はIL−33で刺激されたJ774細胞でブロッキング活性を示し、2μMで97%阻害(IC
50=6.6nM)であった。IL−33刺激によるこの阻害効力は、実施例12のHEK−Blueアッセイ(IC
50=3.30nM)に記載されている抗ヒトIL1RAP抗体YKD/YTEで観察された効力と同様である。
【0368】
代理抗体である14F4がIL−1およびIL−36刺激性経路をブロッキングする能力は、初代MEFで決定された。初代MEFは、IL−1刺激に応答してIL−6を産生する能力を有し、IL1RAPの発現を示唆する(例えば、Nold−Petry et al.,Journal of Biological Chemistry,284(38):25900−25911(2009)を参照)。これらの初代マウス線維芽細胞はIL1RAPを発現し、マウス胚性線維芽細胞株NIH−3T3はIL−36刺激に応答するため、初代MEFもIL−36刺激に応答するはずであると考えられた。実際、IL−36βで刺激すると、初代MEFは用量依存的にIL−6を分泌した(データは示していない)。表28に示されるように、14F4は、IC
50が6.1nMの陽性対照と比較して、IL−1β刺激性IL−6産生の本質的に完全な阻害を示す。同様に、IL−36β刺激性IL−6産生を0.094nMのIC
50値で完全に阻害した。結論として、14F4は、IL−1経路と比較してIL−36の効力がはるかに高いにもかかわらず、初代MEFのIL−1経路およびIL−36経路の両方を完全にブロッキングする能力を有する。
【表28】
【0369】
要約すると、14F4を使用した上記結果は、IL1RAP阻害を通してIL−1、IL−33、およびIL−36経路を同時にブロッキングすることの有効性および効果を決定するため、マウスインビボ研究用の代理抗体として使用することを裏付けている。
【0370】
実施例18:代理抗マウスIL1RAP抗体のインビボ有効性
この実施例は、マウス代理抗体14F4が、少なくとも2つのIL−1ファミリー経路の機能的インビボブロッキング剤であり、喘息のマウスモデルで誘導されるより複雑な表現型の機能的ブロッキング剤でもあることを例示する。
【0371】
材料および方法
インビボマウスモデル研究における研究用プロトコルは、表29に要約されている。
【表29】
【0372】
動物および畜産:雌のBALB/cAnNHsdマウスをEnvigoから購入し、6〜13週齢で使用した。マウスには、照射Harlan Teklad global18%タンパク質のげっ歯類用食餌を与え、自由に摂水させた。動物は、1時間当たり60回の完全換気でトウモロコシ穂軸の寝床を備えたInnovive使い捨て換気ケージで飼育された。環境は70°±2°Fの温度範囲および30〜70%の湿度範囲に制御された。全ての動物実験は、Explora’s Institutional Animal Care and Use Committee(カリフォルニア州サンディエゴ)によって承認された動物管理使用プロトコルに従って実施された。
【0373】
インビボ治療:経鼻投与(i.n.)治療のため、マウスを3〜4%イソフルラン(VetOne、アイダホ州ボイシ)で麻酔し、マイクロピペットで投与された溶液35μlを鼻孔から吸入させた。2.5%の2,2,2−トリブロモエチルアルコール溶液(Sigma Aldrich、ミズーリ州セントルイス)の麻酔用量を投与した後、両側開胸術または頸椎脱臼(単回IL−1β接種のみ)により、マウスを安楽死させた。
【0374】
データ分析:全てのインビボ研究では、GraphPad Prism8ソフトウェアをデータおよび統計分析に使用した。マン−ホイットニー検定は、サイトカインまたはHDMの接種が生物学的応答に統計的に有意な増加を引き起こしたか否かを決定するために、IgG対照投与され接種されていないマウスとIgG対照投与され接種されたマウスで実施された。有意性を決定した後、IgG対照投与され接種されたマウスと14F4投与され接種されたマウスで、マン−ホイットニー検定を実施した。
【0375】
A.単回サイトカイン接種モデルおよび関連アッセイ:単回IL−1β接種の研究プロトコルは、Gabrielsson et al.,European Journal of Pharmaceutical Sciences:Official Journal of the European Federation for Pharmaceutical Sciences,67:144−159(2015)に基づいて改変した。−1日目に、1kgの平均群体重当たり30mgのIgG対照または14F4を総量100〜200μlでマウスに腹腔内(i.p.)投与した。0日目に、マウスにD−PBSまたは50ng IL−1βを総量100μlで腹腔内接種した。接種の2時間後、マウスを安楽死させ、心臓穿刺により採血し、BD Microtainer血清分離チューブ(BD Biosciences)に入れた。少なくとも30分後、チューブを9,300×gで5分間遠心分離し、血清を収集し、−80℃で保管した。マウス血清IL−6濃度は、市販のIL−6 ELISAキット(Invitrogen/ThermoFisher Scientificカタログ番号88−7064−88)により、製造業者の指示に従って測定した。血清試料は、アッセイ用に1:5に希釈した。
【0376】
単回IL−36α接種の研究プロトコルは、Ramadas et al.,PloS One,7(9):e45784(2012)に基づいて改変した。−1日目に、単回IL−1β接種研究と同様に、マウスに抗体を腹腔内投与した。0日目に、マウスにD−PBSまたは10ngのIL−36αを総量35μlで経鼻接種した。1日目に、マウスを安楽死させた。気管支肺胞洗浄(BAL)は、気管を切開し、20Gの平滑末端針または18Gのカテーテルシースを挿入し、1mLのシリンジを使用して0.8mLのHBSS/2mM EDTA緩衝液を注入および回収することによって実施した。この手順を3回実施した。BAL液の細胞型数を決定するために、BAL液を365×gで10分間遠心分離した。上清を除去した後、2mLの1X Lysing Buffer(BD Biosciences、カタログ番号555899)を細胞に添加して、任意の赤血球細胞を溶解した。2分後、5mLのD−PBS/2%FBS緩衝液を添加して反応を停止した。細胞を365×gで5分間遠心分離した。上清を除去した後、細胞をHBSS/2mM EDTAに再懸濁し、96ウェル丸底プレートに移し、570×gで2分間遠心分離し、上清を除去した。全ての染色段階は、氷上および暗所で実施した。死細胞を染色するために、25μlのLIVE/DEAD Fixable Far Red Dead Cell Stain Kit(1:1000希釈、ThermoFisher)を追加した。15〜20分後、25μlの抗CD16/32(2.4G2、BD Biosciences)を含むFACS染色緩衝液を細胞に添加し、Fc受容体結合をブロッキングした。15分後、次いで、抗体を含む50μlのBrilliant Stain Buffer(BD Biosciences)をウェルに添加することにより細胞を染色した。抗体は全て1:200希釈で使用した。下記の抗体は、Tonbo Biosciences(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。Ly6G−FITC(1A8)およびCD11b−APC(M1/70)。下記の抗体はBD Biosciencesから購入した。SiglecF−PE(E50−2440)およびCD11c−BV785(N418)。Ly6C−PerCp−Cyanine5.5(HK1.4)はThermoFisherから購入した。30分後、細胞をFACS緩衝液で2〜3回洗浄した。洗浄後、細胞をFACS緩衝液に再懸濁した後、CytoFlexフローサイトメーターで分析した。FlowJo10ソフトウェアを使用してデータを分析した。細胞をゲーティングし、死細胞および肺胞マクロファージ(SiglecF
+CD11c
+)を除外した後、マーカーの発現に基づいて細胞型を定義した。好酸球(SiglecF
+CD11c
−Ly6G
−)、好中球(Ly6G+LY6C
+CD11b+SiglecF
−CD11c
−)、および単球(LY6C+Ly6G
−CD11b
+SiglecF
−CD11c
−)。BAL液の細胞型数を算出するため、得られた全細胞のうちの各細胞型のパーセンテージに全細胞数を乗じた。全細胞数は、Guava easyCyte 5HTシステムフローサイトメーター(EMD Millipore、マサチューセッツ州ビレリカ)を使用し、製造業者の指示に従ってViaCountアッセイを使用して得られた。
【0377】
B.複数回IL−1βサイトカイン接種モデルおよび関連アッセイ:複数回IL−1β接種の研究プロトコルは、Kim et al.,American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine,196(3):283−297(2017)に基づいた。−1日目および2日目に、単回IL−1β接種研究と同様に、マウスに抗体を腹腔内投与した。0、1、および2日目に、マウスにD−PBSまたは30ngのIL−1βを総量35μlのD−PBSで経鼻接種した。3日目に、マウスを安楽死させた。BALは前述のように実施した。左、中、下、および後ろの大静脈肺葉を2.0mLチューブに収集し、瞬間凍結し、その後のタンパク質ケモカイン/サイトカイン分析用に−80℃で保管した。BALの細胞分析は、細胞をLIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stain Kit(1:250希釈、ThermoFisher)で染色したこと、および下記の抗体を除いて、全て1:200希釈で、前述のように実施した。Ly6G−FITC(Tonbo Biosciences、1A8)、SiglecF−PE(BD Biosciences、E50−2440)、Ly6C−PerCp−Cyanine5.5(ThermoFisher、HK1.4)、CD11b−APC−Cy7(BD Biosciences、M1/70)、CD11c−BV785(Biolegend、N418)、CD3−PE−Cy7(Biolegend、17A2)、CD4−BV605(BD Biosciences、RM4−5)、CD19−BV650(BD Biosciences、1D3)、T1/ST2−BV421(BD Biosciences、U29−93)およびMHCクラスII−APC(ThermoFisher、M5/114.15.2)。FlowJo10ソフトウェアを使用してデータを分析した。細胞をゲーティングし、死細胞および肺胞マクロファージ(CD11c+SiglecF
+)を除外した後、次のマーカーの発現に基づいて、BALの下記細胞型を定義した。好中球(Ly6G+Ly6C+CD11b
+)、好酸球(SiglecF
+CD11c
−Ly6G
−)、樹状細胞(CD11c
+MHCII
+Ly6G
−SiglecF
−)、単球(LY6C
+Ly6G
−CD11b
+SiglecF
−)、CD4 T細胞(CD3
+CD4
+CD19
−CD11b
−Ly6G
−SiglecF
−)、T1−ST2
+CD4 T細胞(CD3
+CD4
+T1/ST2
+CD19
−CD11b
−Ly6G
−SiglecF
−)、CD8 T細胞(CD3
+CD4
−CD19
−CD11b
−Ly6G
−SiglecF
−)、およびB細胞(CD19
+MHCII
+CD3
−CD11b
−Ly6G
−SiglecF
−)。BALの細胞数は上記のように算出した。肺ケモカイン/サイトカインタンパク質分析では、Protease and Phosphatase Inhibitor Cocktail(ThermoFisher Scientific、カタログ番号78443)を含むTissue Extraction Reagent I(ThermoFisher Scientific、カタログ番号FNN0071)で、TissuelyserII(QIAGEN)を使用して、25Hzで2分間を3サイクルで肺試料をホモジナイズした。ホモジネートを9,300×g、4℃で10分間遠心分離した。組織溶解物(上清)のタンパク質量は、Pierceビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(ThermoFisher Scientific、カタログ番号23227)で定量化した。溶解物は、サイトカインアッセイ用に−80℃で保存した。サイトカイン測定に上清を使用した。200μgの総タンパク質肺溶解物におけるマウスサイトカインおよびケモカインのレベル(CXCL1、CXCL2、IFNγ、IL−10、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−25、IL−4、IL−5、IL−6、IL−13、IL−17A、IL−33、TNFα、およびTSLP)を、マウスカスタムProcartaPlex17−plexキット(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific、カタログ番号PPX−17−MXCE4AT)を使用して、製造業者の指示に従って測定した。
【0378】
C.急性ハウスダストダニ(HDM)喘息モデルおよび関連アッセイ:急性ハウスダストダニ(HDM)喘息モデルは、Piyadasa et al.,Biology Open,5(2):112−121(2016)に基づいた。−1、2、6、9、および13日目に、マウスにIgG対照または14F4を30mg/kgで腹腔内投与した。0〜3、6〜10、13、および14日目に、マウスに生理食塩水または25μg HDM(Stallergenes Greer、ノースカロライナ州レノア、カタログ番号XPB82D3A.5)を経鼻接種した。15日目に、マウスを安楽死させ、前述のように血液から血清を収集した。マウス抗体の血清濃度は、HDM特異的IgE(Chondrex、ワシントン州レドモンド、カタログ番号3037)およびHDM特異的IgG1(Chondrex、カタログ番号3034)キットを製造業者の指示に従って使用して測定した。HDM特異的IgEの場合は1:4に、HDM特異的IgG1測定の場合は1:12に、血清試料を希釈した。
【0379】
結果
実施例17の結果によって示されるように、マウス代理抗体14F4は、インビトロ細胞アッセイにおいて全3つのIL−1ファミリー経路をブロッキングすることができる。14F4がインビボでこれらの経路をブロッキングすることができるか否かを決定するために、本実施例18は、短時間の薬力学的(PD)アッセイで個々の経路をブロッキングする14F4の能力を試験した。以前の研究は、IL−1ファミリーサイトカインがインビボで投与された場合に急性効果を有することを実証した(例えば、Gabrielsson et al.,European Journal of Pharmaceutical Sciences:Official Journal of the European Federation for Pharmaceutical Sciences,67:144−159(2015)、Ramadas et al.,PloS One,7(9):e45784(2012)を参照)。同様に、
図16Aおよび16Bに表される結果によって示されるように、IL−1βを全身接種されたマウスは、PBSを接種されたマウスと比較して、血清IL−6レベルの急速な増加で応答した(
図16A)。IL36αを接種されたマウスは、PBSを接種されたマウスと比較して、肺気腔への好中球の急速な流入で応答した(
図16B)。14F4による処理は、これらの観察された免疫応答の両方に影響を及ぼした。
図16Aに示されるように、接種前に14F4を投与されたマウスは、血清IL−6レベルのIL−1β誘導性増加に強い阻害を示した(88%阻害)。さらに、
図16Bに示されるように、接種前に14F4を投与されたマウスは、肺気腔におけるIL−36α誘導性の好中球流入の減少(100%阻害)を示した。これらの結果は、14F4がインビボでIL−1およびIL−36シグナル伝達経路をブロッキングする能力を有することを強く示唆している。
【0380】
本実施例の研究は、14F4がヒト喘息に見られる複雑な表現型をブロッキングする能力を有するか否かを決定するためにも使用した。以前の研究では、4日間にわたって1日1回IL−1βを接種されたマウスは、肺気腔の好中球、マクロファージ、およびリンパ球の数が増加したことが示されている(例えば、Kim et al.,American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine,196(3):283−297(2017)を参照)。IL−1β誘導性の好中球の流入は、重度の制御不能なヒト喘息患者に見られるものと同様に、ステロイド耐性であることが示されている。
図17A〜17Eのプロットで表される結果によって示されるように、3日間にわたってIL−1βを接種されたマウスでは、肺気腔で、好中球(
図17A)、CD4 T細胞(
図17B)、T1−ST2
+ CD4 T細胞(
図17C)、単球(
図17D)、および樹状細胞(
図17E)が有意に増加した。
図18A〜18Cに表されるプロットによって示されるように、複数回IL−1β接種も、肺組織において、炎症性サイトカインIL−1β(
図18A)およびIL−17A(
図18B)、ならびに好中球を誘引するケモカインCXCL1(
図18C)のレベルを増加させた。CXCL2、IFN−γ、IL−10、IL−12、IL−1α、IL−2、IL−25、IL−4、IL−5、IL−6、IL−13、IL−33、TNF−αのレベル、およびTSLPは、複数回IL−1β接種後に、検出限界を下回っているか、上方調節されていなかった(データは示していない)。14F4による処理は、IL−1β接種マウスで観察されたこれらの効果を減少させた。
図17A〜17Eに示されるように、3日間にわたってIL−1βを接種され、14F4で処理されたマウスでは、肺気腔で、好中球(74%阻害)(
図17A)、CD4 T細胞(75%阻害)(
図17B)、T1−ST2
+CD4 T細胞(76%阻害)(
図17C)、単球(58%阻害)(
図17D)、および樹状細胞(64%阻害)(
図17E)の数が減少した。
図18A〜18Cに示されるように、14F4処理により、肺組織で、IL−1β(88%阻害)(
図18A)、IL−17A(89%阻害)(
図18B)、およびCXCL1(68%阻害)(
図18C)のレベルが有意に減少した。これらの結果は、14F4が、数日にわたって発症する、より複雑な免疫応答をブロッキングする能力を有することを強く示唆している。
【0381】
14F4が還元主義のサイトカイン接種モデルで複雑な免疫表現型をブロッキングする能力を有することを決定した後、関連する複雑なヒトアレルゲンであるハウスダストダニ(HDM)によって誘導される喘息のような表現型をブロッキングする14F4の能力をさらに試験した(例えば、Nials et al.,Disease Models&Mechanisms,1(4−5):213−220(2008)を参照)。
図19Aおよび19Bに示すように、以前の研究と同様に(例えば、Piyadasa et al.,Biology Open,5(2):112−121(2016)を参照)、HDMを接種したマウスは、生理食塩水を接種したマウスと比較して、HDM特異的IgE(
図19A)およびIgG1(
図19B)のレベルが有意に上昇した。しかしながら、HDMを接種し14F4で処理したマウスは、IgG対照で処理したマウスと比較して、HDM特異的IgE(64%阻害)(
図19A)およびHDM特異的IgG1(70%阻害)(
図19B)で有意な減少を示した。これらの結果は、IL−1ファミリーのシグナル伝達をブロッキングすると、喘息のような表現型の発症を部分的にブロッキングすることができる可能性があることを示している。
【0382】
本発明の前述の開示は、明確化および理解の目的で例および例示としていくらか詳細に説明されてきたが、本明細書に記載の実施例、説明、および実施形態を含む本開示は、例示を目的とし、本開示を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例、説明、および実施形態に対して様々な改変または変更を行うことができ、本開示および添付の特許請求の範囲の精神および視野内に含まれるべきであることは当業者には明らかであろう。さらに、当業者は、本明細書に記載されているものと同等な多くの方法および手順を認識するであろう。そのような全ての同等物は、本開示の範囲内にあると理解されるべきであり、添付の特許請求の範囲によって網羅される。
【0383】
本発明の追加の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【0384】
そのような個々の出版物、特許、特許出願、または他の文書がそれぞれ参照により、その全体をあらゆる目的で本明細書に組み込むために個別具体的に示され、本明細書にその全体が記載されたかのような場合と同程度に、本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許、または他の文書の開示は、あらゆる目的でその全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合は、規定用語を含む本明細書が優先されるであろう。
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