特表2021-534190(P2021-534190A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-534190スルフォラファン−メラトニン様化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-534190(P2021-534190A)
(43)【公表日】2021年12月9日
(54)【発明の名称】スルフォラファン−メラトニン様化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4045 20060101AFI20211112BHJP
   A61K 31/26 20060101ALI20211112BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20211112BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20211112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211112BHJP
【FI】
   A61K31/4045
   A61K31/26
   A61K45/00
   A61P17/00
   A61P29/00
   A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2021-508273(P2021-508273)
(86)(22)【出願日】2019年8月27日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2019072895
(87)【国際公開番号】WO2020043748
(87)【国際公開日】20200305
(31)【優先権主張番号】18191253.6
(32)【優先日】2018年8月28日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】18199005.2
(32)【優先日】2018年10月5日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521065322
【氏名又は名称】パーペチュウム ベンチャーズ エヌブイ
【氏名又は名称原語表記】PERPETUUM VENTURES NV
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】トロッシュ,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ホーフェンク,ジェロエン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084MA02
4C084MA24
4C084MA37
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZB11
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA37
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA70
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA44
4C206MA57
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB11
4C206ZC75
(57)【要約】
6−ヒドロキシメラトニンおよび6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートのコンジュゲートを含むまたはそれからなる化合物を含む組成物、ならびに薬剤として使用するためのこの組成物が開示される。さらに、上皮組織の疾患および/または障害を治療および/または予防する方法で使用するためのこの組成物が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−ヒドロキシメラトニンおよび6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートのコンジュゲートを含むまたはそれからなる化合物を含む組成物。
【請求項2】
薬剤として使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上皮組織の疾患および/または障害を治療および/または予防する方法で使用するための、6−ヒドロキシメラトニンおよび6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートのコンジュゲートを含むまたはそれからなる化合物を含む組成物。
【請求項4】
前記使用は、皮膚炎および/または粘膜炎を治療する方法における使用である、請求項3に記載の使用のための請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記使用は、放射線誘発皮膚炎および/または放射線誘発粘膜炎を治療する方法における使用である、請求項4に記載の使用のための請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記使用は、放射線療法および/または化学療法の副作用を治療する方法における使用である、請求項3から5のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記使用は、前記組成物の局所適用を含む、請求項3から6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記局所適用は、前記皮膚および/または前記粘膜への前記組成物の投与を含む、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記使用は、前記組成物の経口投与、粘膜投与、皮下投与、筋肉内投与および/または非経口投与を含む、請求項3から8のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記組成物はさらに、可溶化剤、皮膚浸透促進剤、防腐剤、保湿剤、ゲル化剤、緩衝剤、界面活性剤、乳化剤、エモリエント剤、増粘剤、安定剤、保湿剤、分散剤および/またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項3から9のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物は、体内または体内での前記組成物の取り込みを促進するために、担体、希釈剤および/または賦形剤を含む、請求項3から10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記担体および/または前記賦形剤は、前記化合物を少なくとも一時的にカプセル化するためのカプセル化材料を含む、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記担体および/または前記賦形剤は、リポソームを含む、請求項11から12のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記組成物はさらに、抗生物質、抗菌剤および/または抗真菌剤を含む、請求項3から13のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、薬学の分野に関し、より詳細には、皮膚および/または粘膜の状態を治療するための医薬組成物の分野に関する。より具体的には、本発明は、皮膚炎および/または粘膜炎を治療および/または予防する方法において使用するための組成物、関連する組成物、ならびに薬剤として使用するための関連する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
皮膚炎および/または粘膜炎は、電離放射線への曝露による酸化ストレスなどの酸化ストレスによって引き起こされ得る。例えば、放射線療法または放射線治療(RT)は、例えば、癌治療において、または癌治療戦略の構成要素として、悪性細胞を制御および/または殺すために電離放射線が適用される治療様式である。人はまた、例えば宇宙旅行で遭遇され得るような自然に発生する大量の電離放射線に曝露され得、または例えば原子力施設の故障または放射性源(例えば、病院では、非破壊検査装置または放射性同位体熱電発電機)の遮蔽の失敗で、大量の電離放射線に誤って曝露され得る。
【0003】
放射線治療では、電離放射線は、脳、乳房、子宮頸部、喉頭、肺、膵臓、前立腺、皮膚、脊椎、胃、子宮の癌、および軟部肉腫を含む、癌細胞を殺すため、および/または、ほぼすべての既知の種類の固体腫瘍の腫瘍を縮小するために使用される。放射線はまた白血病およびリンパ腫の治療に使用され得る。放射線療法は、腫瘍の局所制御もしくは症候性放出の治療法がない場合の対症療法として、または患者の寿命を延ばすための治療法として使用され得る。
【0004】
ただし、放射線療法の適用は、必ずしも癌治療に限定されるわけではなく、例えば、三叉神経痛、動静脈奇形、甲状腺眼症、翼状片の治療、およびケロイド瘢痕の成長または異所性骨化の予防に使用され得る。骨髄移植の前に全身照射が行われ得る。さらに、温熱療法、または深部組織加熱は、治療に対する大きな腫瘍または進行した腫瘍の反応性を高めるために、放射線と組み合わせて使用されることがよくある。例えば、体内の進行した腫瘍および/または大きな腫瘍は、温熱療法と放射線療法の組み合わせによって治療され得る。体のかなりの深さの癌性組織は、深部組織を、皮膚の火傷を引き起こし得る、43℃から50℃の範囲の温度に曝露することによって破壊され得る。
【0005】
残念ながら、放射線療法の使用は、健康な細胞、特に毛包、表皮、および粘膜内の幹細胞を含む上皮細胞集団に対するそのような治療の誘発された毒性のために、重篤な副作用を伴う。放射線療法は、細胞のDNAに損傷を与え、シグナル伝達経路を改変し、そしてアポトーシスを誘導することにより、標的組織の細胞を破壊する。放射線治療の細胞毒性効果は、DNAのイオン化を引き起こし得る電子のエネルギーレベルの上昇、ならびにスーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素ラジカルおよびヒドロキシルラジカルを含む活性酸素種(ROS)の産生に関係しており、それは細胞、タンパク質、およびDNAにダメージを与え得る。放射線に対する細胞の反応は、とりわけ、放射線の種類、エネルギー、放射線量、および組織の特定の感度に依存する。しかし、物理的および幾何学的な制約により、送達された線量のかなりの部分が健康な組織にも沈着する。
【0006】
放射線治療は、皮膚の紅斑、刺激および炎症を含む短期的な副作用、ならびに浮腫、痛み、線維症および拡張した表在血管(毛細血管拡張症)などの中期的および長期的な副作用を伴うことがよくある。乳房切除術後の胸壁の治療、頭頸部腫瘍および皮膚腫瘍の治療のための放射線治療では、急性反応を起こし、皮膚および粘膜に重篤な損傷を与え得る。皮膚反応は、急性紅斑から落屑および壊死まで様々であり得る。同様に、口腔、咽頭、食道、気管、腸、膀胱、および直腸の粘膜も損傷を受け得る。口腔内の痛みおよび潰瘍化は、電離放射線治療後の患者さんによくみられる症状である。放射線の急性影響は唾液および粘液を分泌する付属腺で感じられるため、副作用はまた口腔乾燥症(ドライマウス)、眼球乾燥症(ドライアイ)、膣および肛門粘膜の乾燥を含む。
【0007】
長期的な合併症は概して、高線量の放射線(例:35Gy超)で起こり得る。数ヵ月または数年の間に発現し得る晩期の副作用は、例えば結合組織の増加による組織の瘢痕化、乳癌、胃癌、肺癌、およびメラノーマなどの二次癌(照射領域に近い体の領域に発生し得る)、ならびに甲状腺障害を含む。
【0008】
放射線誘発皮膚炎または放射線皮膚炎は、放射線療法患者の大多数に起こることが知られている、よく知られた痛みを伴う副作用である。さらに、温熱療法はまた皮膚炎を誘発することがあり、放射線療法および温熱療法の併用は、皮膚炎のリスクおよび重症度を大幅に高め得る。
【0009】
放射線皮膚炎の重症度は、治療法および患者の固有の因子によって異なり得る。ほとんどの急性放射線皮膚炎反応は数週間後に消失するが、一部の反応は持続し、合併症を引き起こし得る。遅発性放射皮膚炎は、萎縮した脆弱な皮膚に形成される毛細血管拡張症を特徴とし、これは曝露された組織の炎症を引き起こし、表皮バリア機能を著しく損なう。
【0010】
粘膜炎は、癌治療のもう1つの重要で費用のかかる副作用である。粘膜表面の炎症として、粘膜炎は化学療法および/または放射線療法の頻繁に起こる、潜在的に重篤な合併症であり得る。それは、紅斑、落屑、潰瘍形成、出血および滲出液として現れ得る。粘膜炎は、口腔から腸および直腸に至るまで、消化管および泌尿生殖器管全体に存在し得る。
【0011】
放射線皮膚炎および粘膜炎は、化学療法または放射線療法によるDNA複製および表皮および粘膜幹細胞増殖に対する直接的な阻害効果に起因すると一般に認められている。これらの事象は、DNAのイオン化を引き起こす電子のエネルギーレベルの上昇と、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素ラジカルおよびヒドロキシルラジカルを含む活性酸素種(ROS)の産生に関係しており、これは、細胞、タンパク質およびDNAに損傷を与え、基底上皮の再生能力の低下、表皮および粘膜の萎縮、コラーゲン破壊、および潰瘍化を引き起こし得る。二次的な影響としては、保護された表皮および粘膜バリアが破壊された後の多くの病原体からの感染である。
【0012】
放射性皮膚炎と粘膜炎の両方は、併用治療およびその後の治療プロトコルに大きな悪影響を及ぼし、特に患者の生活の質に大きな影響を与え得る。なぜなら、それは、栄養異常、全身感染の増加、痛みを軽減するための麻薬の使用、癌治療の延期につながり得るからである。したがって、このような状態はまた、質調整生存率(Quality−Adjusted Life Years:QALY)の観点から治療後の予後に悪影響を及ぼし得る。
【0013】
今日、これらの病態に対する治療の選択肢は非常に限られている。しかし、放射線皮膚炎および粘膜炎を予防および/または軽減するための権威ある推奨事項を形成するために利用可能な証拠は不十分であるが、いくつかの進歩がなされている。例えば、放射線皮膚炎の症状を制御するために低レベルレーザー治療(LLLT)または血管レーザーを使用することは有益であるように思われる。最近の前臨床および臨床研究では、LLLTには生体刺激特性があり、組織の再生と治癒を早くし、炎症を抑え、そして線維化を防ぐことができることが示唆されている。また、末期の放射線性皮膚炎では、パルス色素レーザー治療が放射線誘発性毛細血管拡張症の治癒に有効であることが示されている。
【0014】
粘膜炎に対する現在の治療法には、症状を最小化するための努力において、基本的な衛生原則の適用、局所麻酔薬および/または全身性鎮痛薬による痛みの緩和を含む。しかし、このようなアプローチは、放射線皮膚炎および/または粘膜炎の根本的な原因に対処するものではない。
【0015】
癌治療の副作用としての皮膚炎および/または粘膜炎に対する有効な治療法の望ましさにかかわらず、放射線治療後もしくは放射線治療中に、および/または化学療法剤の存在下で、正常細胞の日常的な成長および増殖を促進する保護療法の成功した実施は、より高用量の、より攻撃的な癌治療の使用を可能にし得るであろう。従って、これらの保護療法は、癌およびその治療の副作用に対処するだけでなく、現在の癌治療の治療効果を改善する可能性さえある。
【0016】
WO2012/142511は、抗炎症性および細胞外マトリックス安定化オルソモレキュラー組成物、ならびにその医薬製剤を開示する。これらの組成物は、複数の植物化学的に活性な栄養補助食品化合物を含み、その中にはスルフォラファンおよびメラトニンを含む。予防的および治療的用途が開示されており、それは、例えば、急性または長期の炎症を媒介する状態を治療し、哺乳類の細胞外マトリックスを安定化させるためのものである。
【0017】
WO2012/122295は、複数の栄養補助剤成分および非化学療法剤成分を含む組成物を記載し、その中にはスルフォラファンおよびメラトニンを含み、そして膵臓癌の治療のための関連する方法を記載している。
【0018】
WO2009/051739は、放射線治療の望ましくない副作用から皮膚および粘膜を保護するためのNrf2誘導剤、例えばスルフォラファンの局所使用に関する方法および組成物を記載している。
【0019】
US 2014/243384は、例えば放射線療法および/または化学療法によって引き起こされる(例えば口腔内の)粘膜炎を治療および/または予防するための医薬組成物を調製するための、2.5%〜5%w/vの割合でメラトニンまたはその誘導体を含む組成物の使用に関する。
【0020】
DUNAWAY SPENCERら、“Natural antioxidants: multiple mechanisms to protect skin from solar radiation.”, in FRONTIERS IN PHARMACOLOGY 2018, vol. 9, 392, pp. 1−14は、スルフォラファンおよびメラトニンを含む天然フィトプロダクツ(phytoproducts)による光保護の複数のメカニズムを記載している。
【0021】
TALALAY Pら、“Sulforaphane mobilizes cellular defenses that protect skin against damage by UV radiation”, in PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES OF THE UNITED STATES OF AMERICA, NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES, US, vol. 104, no. 44, pp. 17500−17505,には、ブロッコリースプラウトのスルフォラファンを豊富に含む抽出物の外用塗布による紫外線保護効果が開示されている。
【0022】
WO 97/06779は、皮膚の日焼け防止のための化粧品用外用組成物を開示している。この組成物は、メラトニンまたはその類似体を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の実施形態の目的は、上皮組織疾患、例えば口腔、胃腸管および/もしくは泌尿生殖器管を覆うような上皮細胞に影響を与える疾患ならびに/または毛包および表皮を含む皮膚の上皮細胞に影響を与える疾患の治療のための、良好で、効率的で、効果的で、および/または手頃な薬剤を提供することである。
【0024】
このような上皮組織疾患の治療において、当技術分野で知られている既存のアプローチと比較して、より高い有効性および適用の容易さが達成され得ることは、本発明の実施形態の利点である。
【0025】
本発明の実施形態の利点は、放射線療法および/または化学療法の副作用が除去され、緩和され、および/または予防され得ることである。
【0026】
本発明の実施形態の利点は、組成物が、有利には(かつ相乗的に)腫瘍細胞の放射線感受性を増強するとともに、照射によって引き起こされる酸化ストレスから健康な上皮細胞を保護する(または回復を助ける)ことができるということである。
【0027】
本発明の実施形態の利点は、上皮細胞に影響を与える疾患の予防および治療のための安全で効果的な薬剤.および方法が提供されることであり、これにより、放射線皮膚炎および粘膜炎のような癌治療の副作用を減少させることができることである。
【0028】
NF−E2関連因子2(Nrf2)を誘導する効果的で非毒性の化合物を、リスクのある非腫瘍組織に、例えば局所的、経口的、または他の方法で投与することができ、それゆえに、例えば放射線治療中またはそれに続く放射線治療中に、有害な酸素フリーラジカル形成を減少させるか、または中和することができるということは、本発明の実施形態の利点である。
【0029】
組成物が、例えば局所的に適用される場合に、局所作用性の調製物として考えられ得ることは、実施形態の利点である。
【0030】
顕著な抗酸化活性を有する組成物が提供されることは、実施形態の利点である。
【0031】
照射された組織における酸化還元プロセスを正常化し、細胞膜における脂質の過酸化型酸化およびその崩壊のプロセスの発達を妨げ、表皮および細胞下構造の細胞における構造変化の発達を防ぎ、毛細血管の透過性を低下させ、解毒効果を示し、組織代謝の正常化を促進し、および/または再生プロセスを刺激することができる組成物が提供されることは、実施形態の利点である。
【0032】
低毒性であり、および/または変異原性、発生毒性および/または発癌性を有さない組成物が提供されることは、実施形態の利点である。
【0033】
腫瘍組織に対して放射線保護効果をもたらさない組成物が提供されることは、実施形態の利点である(例えば、これは、放射線療法および/または化学療法と組み合わせた場合に(例えば、その副作用を治療するために)特に有利であり得る)。
【0034】
酸化状態に迅速に代謝され、生体から追放される組成物が提供されることは、実施形態の利点である。
【0035】
上記の目的は、本発明による使用のための組成物および組成物によって達成される。
【0036】
第1の態様において、本発明は、上皮組織の疾患および/または障害を治療および/または予防する方法、例えば皮膚炎および/または粘膜炎を治療および/または予防する方法における使用のための、スルフォラファンまたはスルフォラファン類似体とメラトニンまたはメラトニン類似体との化合物を含む組成物に関する。すなわち、化合物は、スルフォラファン(またはスルフォラファン類似体)とマラトニン(malatonin)(またはメラトニン類似体)とのコンジュゲート、すなわち、少なくともスルフォラファン(またはスルフォラファン類似体)とマラトニン(またはメラトニン類似体)とが一緒に結合して形成された化合物であり得る。化合物は、6−ヒドロキシメラトニンと6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートとのコンジュゲートを含むまたはからなる化合物、例えば、少なくとも6−ヒドロキシメラトニンと6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートとの結合により形成された化合物を含むまたはからなる。
【0037】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、使用は、放射線誘発性皮膚炎および/または放射線誘発性粘膜炎を治療する方法における使用であり得る。
【0038】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、使用は、放射線療法および/または化学療法の副作用を治療する方法における使用であり得る。
【0039】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、使用は、組成物の局所適用を含み得る。
【0040】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、そのような局所適用は、組成物を皮膚および/または粘膜上に投与することを含み得る。
【0041】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、使用は、組成物の経口投与、粘膜投与、皮下投与、筋肉内投与および/または非経口投与を含み得る。
【0042】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、組成物はさらに、可溶化剤、皮膚浸透促進剤、防腐剤、保湿剤、ゲル化剤、緩衝剤、界面活性剤、乳化剤、エモリエント剤、増粘剤、安定剤、湿潤剤、分散剤および/またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0043】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、組成物は、体内または体上への組成物の取り込みを容易にするために、担体および/または賦形剤をさらに含み得る。
【0044】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、担体および/または賦形剤は、非毒性の充填材、すなわちヒト生体に対して実質的に非毒性である充填材を含み得る。
【0045】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、担体および/または賦形剤は、希釈剤を含み得る。
【0046】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、担体および/または賦形剤は、化合物を少なくとも一時的にカプセル化するためのカプセル化材料を含み得る。
【0047】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、担体および/または賦形剤は、リポソームを含み得る。
【0048】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、組成物はさらに、抗生物質、抗菌剤および/または抗真菌剤を含み得る。
【0049】
第2の態様において、本発明は、化合物を含む組成物であって、該化合物は、6−ヒドロキシメラトニンと6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートとのコンジュゲートを含むまたはからなる組成物に関する。
【0050】
第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様の実施形態による組成物の薬剤としての使用に関する。
【0051】
本発明の特に好ましい態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と適宜組み合わせてもよく、単に請求項に明示的に記載されているだけではない。
【0052】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下に記載される実施形態(複数可)を参照して明らかになり、また解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の実施形態を説明するための実施例において、焦点ガンマ線照射を行ったミニブタの背部皮膚の照射病変を示す。
図2】本発明の実施形態を説明するための、図1の実施例の概略図である。
図3】ビヒクルおよび本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの、照射前、照射7日後、照射21日後、および照射35日後の皮膚外観の写真を示す、図1および図2の実施例の結果を示す。
図4】本発明の実施形態を説明する図1および図2の実施例における、照射後のブタの臨床スコアの時間依存的変化を示す。
図5】ビヒクルおよび本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射35日後の組織学的皮膚変化を示す。画像は、ヘマトキシリン&エオシン染色で、400×の倍率で取得された。
図6】ビヒクルおよび本発明の実施形態による組成物で処置されたミニブタの皮膚における基底細胞密度の時間依存性変化を示す。(*p<0.05および**p<0.01対ビヒクル処置照射動物)
図7】ビヒクルおよび本発明の実施形態による組成物で処置された照射後のミニブタの皮膚の表皮厚さの時間依存性変化を示す。(*p<0.05および**p<0.01対ビヒクル処置照射動物)
図8】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)−2の発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。照射前の皮膚におけるCOX−2の発現を示す。
図9】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)−2の発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。照射7日後、照射21日後および照射35日後にそれぞれビヒクル処置されたミニブタの皮膚におけるCOX−2の発現を示す。
図10】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)−2の発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。照射7日後、照射21日後および照射35日後にそれぞれビヒクル処置されたミニブタの皮膚におけるCOX−2の発現を示す。
図11】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)−2の発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。照射7日後、照射21日後および照射35日後にそれぞれビヒクル処置されたミニブタの皮膚におけるCOX−2の発現を示す。
図12】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)−2の発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。それぞれ照射7日後、照射21日後および照射35日後に本発明の実施形態による組成物で処置されたミニブタの皮膚におけるCOX−2の発現を示す。
図13】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)−2の発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。それぞれ照射7日後、照射21日後および照射35日後に本発明の実施形態による組成物で処置されたミニブタの皮膚におけるCOX−2の発現を示す。
図14】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)−2の発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。それぞれ照射7日後、照射21日後および照射35日後に本発明の実施形態による組成物で処置されたミニブタの皮膚におけるCOX−2の発現を示す。
図15】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚における核内因子(NF)−κBの発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。照射曝露前の皮膚におけるNF−κB発現を示す。
図16】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚における核内因子(NF)−κBの発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。照射7日後、照射21日後および照射35日後にそれぞれビヒクル処置されたミニブタの皮膚におけるNF−κBの発現を示す。
図17】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚における核内因子(NF)−κBの発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。照射7日後、照射21日後および照射35日後にそれぞれビヒクル処置されたミニブタの皮膚におけるNF−κBの発現を示す。
図18】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚における核内因子(NF)−κBの発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。照射7日後、照射21日後および照射35日後にそれぞれビヒクル処置されたミニブタの皮膚におけるNF−κBの発現を示す。
図19】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚における核内因子(NF)−κBの発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。それぞれ照射7日後、照射21日後および照射35日後に本発明の実施形態による組成物で処置されたミニブタの皮膚におけるNF−κBの発現を示す。
図20】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚における核内因子(NF)−κBの発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。それぞれ照射7日後、照射21日後および照射35日後に本発明の実施形態による組成物で処置されたミニブタの皮膚におけるNF−κBの発現を示す。
図21】本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚における核内因子(NF)−κBの発現の減少を示す。画像は、ヘマトキシリンカウンターステインを用いて、400×の倍率で取得した。それぞれ照射7日後、照射21日後および照射35日後に本発明の実施形態による組成物で処置されたミニブタの皮膚におけるNF−κBの発現を示す。
図22】前述の実施例のミニブタの焦点照射前、照射3日、照射7日後、照射21日後、および照射35日後の末梢血数を、ビヒクル処置した状態および本発明の実施形態による組成物で処置した状態について、それぞれ示すものである。血球の集団を示す。平均値の平均±標準誤差を示す。
図23】前述の実施例のミニブタの焦点照射前、照射3日、照射7日後、照射21日後、および照射35日後の末梢血数を、ビヒクル処置した状態および本発明の実施形態による組成物で処置した状態について、それぞれ示すものである。好中球数を示す。平均値の平均±標準誤差を示す。
図24】前述の実施例のミニブタの焦点照射前、照射3日、照射7日後、照射21日後、および照射35日後の末梢血数を、ビヒクル処置した状態および本発明の実施形態による組成物で処置した状態について、それぞれ示すものである。好酸球数を示す。平均値の平均±標準誤差を示す。
図25】前述の実施例のミニブタの焦点照射前、照射3日、照射7日後、照射21日後、および照射35日後の末梢血数を、ビヒクル処置した状態および本発明の実施形態による組成物で処置した状態について、それぞれ示すものである。リンパ球数を示す。平均値の平均±標準誤差を示す。
図26】前述の実施例のミニブタの焦点照射前、照射3日、照射7日後、照射21日後、および照射35日後の末梢血数を、ビヒクル処置した状態および本発明の実施形態による組成物で処置した状態について、それぞれ示すものである。赤血球数を示す。平均値の平均±標準誤差を示す。
図27】前述の実施例のミニブタの焦点照射前、照射3日、照射7日後、照射21日後、および照射35日後の末梢血数を、ビヒクル処置した状態および本発明の実施形態による組成物で処置した状態について、それぞれ示すものである。血小板数を示す。平均値の平均±標準誤差を示す。
図28】前述の実施例において、照射3日後に、本発明の実施形態による組成物によって刺激された生検病変の創傷治癒を示す。左から右へ、それぞれ、生検後32日目の非照射生検病変の外観、ビヒクル処置との組み合わせでの照射35日後の生検病変の外観および本発明の実施形態による組成物を用いた処置と組み合わせでの照射35日後の生検病変の外観を示す。
図29】ビヒクル処置されたブタおよび本発明の実施形態による組成物で処置されたブタの照射後の皮膚における生検傷の時間依存性変化(臨床スケールでスコア化されたもの)を示す。6OHM−6−HITCの投与は、皮膚における生検傷形成に影響を与えた。平均値の平均±標準誤差を示す。
図30】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、X線照射後のマウスの体重の経時変化を示す。
図31】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、X線照射後の生存の時間経過を示す。
図32】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、口腔粘膜炎(n=10)の平均±SEM臨床スコアを示す。マウスの舌は、0日目に20Gyで照射した。*p<0.05、対照値(Steel−Dwass検定)と有意に異なる。
図33】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、各群の0日目から12日目までの口腔粘膜炎の総スコアの平均±SEM値を示す*p<0.05、対照値(Steel−Dwass検定)と有意に異なる。
図34】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、X線照射後の舌標本の組織写真を示す。舌標本を10%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ。切片(3mm)をヘマトキシリンおよびエオジン(×200)で染色した。a:無傷、b:対照(口腔粘膜炎)、c:6OHM−6−HITC 30mg/kg、d:6OHM−6−HITC 300mg/kg。
図35】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、X線照射後の舌標本の組織写真を示す。舌標本を10%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ。アポトーシス細胞を、TUNEL染色(×400)により評価した。a:無傷、b:対照(口腔粘膜炎)、c:6OHM−6−HITC 30mg/kg、d:6OHM−6−HITC 300mg/kg。
図36】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、TUNEL染色後のアポトーシスの観察されたパーセンテージを示す。*p<0.05、対照値(Steel−Dwass検定)と有意に異なる。
図37】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、口腔粘膜炎に供されたマウスの舌におけるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性(単位)に対する本発明の実施形態による組成物の効果を示す。*p<0.05、対照値(Steel−Dwass検定)と有意に異なる。
図38】本発明の実施形態を説明するための第2の実施例における、口腔粘膜炎を受けたマウスの舌における2−チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)活性(単位)の決定に対する本発明の実施形態による組成物の効果を示す。*p<0.05、対照値(Steel−Dwass検定)と有意に異なる。
【0054】
図は模式的なものにすぎず、限定するものではない。図面では、いくつかの要素のサイズは誇張されていてもよく、例示目的のために縮尺で描かれていない。
【0055】
特許請求の範囲に記載された参照符号は、範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
本発明を特定の実施形態に関して、また特定の図面を参照して説明するが、本発明はそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は、模式的なものに過ぎず、限定するものではない。図面では、いくつかの要素のサイズは誇張されていてもよく、例示目的のために縮尺で描かれていない。寸法および相対的な寸法は、本発明の実施形態に対する実際の縮小に対応していない。特許請求の範囲で使用される「含む(comprising)」という用語は、その後に記載された手段に限定されていると解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを排除するものではないことに留意すべきである。したがって、言及されているように、記載されている特徴、整数、ステップまたは要素の存在を特定していると解釈されるべきであるが、1または複数の他の特徴、整数、ステップもしくは要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。本明細書全体を通して「1つの実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造または特長が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所での「1つの実施形態において」または「実施形態において」という表現の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すものではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造または特長は、本開示から当業者であれば明らかであろうように、1または複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせられ得る。同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、開示を合理化し、様々な発明的態様の1または複数の理解を助ける目的で、1つの実施形態、図、またはその説明にまとめられていることがしばしばあるということが理解されるべきである。しかし、開示のこの方法は、クレームされた発明が、各請求項に明示的に記載されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、本発明の態様は、前述の開示された1つの実施形態のすべての特徴よりも少ないところにある。したがって、詳細な説明の後の請求項は、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は、それ自体が本発明の別個の実施形態を主張する。さらに、本明細書に記載されたいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含み、他の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者であれば理解されるであるように、本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成することが意図される。例えば、以下の請求項では、クレームされた実施形態のいずれかは任意の組み合わせで使用され得る。本明細書で提供される説明では、多数の具体的な詳細が記載される。しかし、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしに実施され得ることが理解される。他の実施例では、本明細書の理解を曖昧にしないために、周知の方法、構造、および技術が詳細に示されていない。
【0057】
第1の態様において、本発明は、上皮組織の疾患および/または障害を治療および/または予防する方法、例えば皮膚炎および/または粘膜炎を治療および/または予防する方法における使用のための、スルフォラファンまたはスルフォラファン類似体、例えば合成スルフォラファン類似体と、(例えば、融合または結合された)メラトニンまたはメラトニン類似体、例えば合成メラトニン類似体との化合物を含む組成物に関する。すなわち、化合物は、スルフォラファン(またはスルフォラファン類似体)とマラトニン(malatonin)(またはメラトニン類似体)とのコンジュゲート、すなわち、少なくともスルフォラファン(またはスルフォラファン類似体)とマラトニン(またはメラトニン類似体)とが一緒に結合して形成された化合物であり得る。化合物は、6−ヒドロキシメラトニンと6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートとのコンジュゲートを含むまたはからなる化合物、例えば、少なくとも6−ヒドロキシメラトニンと6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートとの結合により形成された化合物を含むまたはからなる。
【0058】
スルフォラファンは、グルコシノレートであるグルコラファニンのアグリコン分解産物であり、スルフォラファン・グルコシノレート(SGS)とも呼ばれる。スルフォラファンの分子式は、C11NOSであり、その分子量は177.29ダルトンである。スルフォラファンは、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、および(−)−1−イソチオシアネート−4(R)−(メチルスルフィニル)ブタンとしても知られている。スルフォラファンの構造式は:
【化1】
である。
【0059】
スルフォラファン類似体への言及は、一般にイソチオシアネート、例えば6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを指してもよい。スルフォラファン類似体は、イソチオシアネートファミリーの代謝物、またはその合成誘導体を指すことがある。スルフォラファン類似体は、少なくとも1つのイソチオシアネートを含有する植物または野菜の抽出物から得られてもよいし、合成されてもよい。
【0060】
メラトニン(N−アセチル−5−メトキシトリプタミン)は、セロトニンのアセチル化およびメチル化によって合成され得る修飾トリプトファンである。メラトニンの構造式は:
【化2】
である。
【0061】
メラトニン類似体への言及は、特定の例では、6−ヒドロキシメラトニンを指してもよい。メラトニン類似体は、メラトニンの任意の代謝物、またはその合成類似体を指してもよい。
【0062】
実施形態による使用のための組成物は、NF−E2関連因子2(Nrf2)第II相酵素の活性化を介して、活性酸素種(ROS)および炎症を減少させ得る。特に、化合物は、Nrf2/Keap1/ARE経路の活性化によるフリーラジカルの中和を特異的に標的とし得る。化合物は、多元的効果を有してもよく、例えば、複数の遺伝子および/または関連する経路が標的とされてもよく、そのような場合、メラトニン(様)およびスルフォラファン(様)の両方の特性の相乗作用によって驚くほど強力な効果が達成される。
【0063】
皮膚炎および/または粘膜炎を治療するための方法における使用は、動物、例えば哺乳類、例えばヒトの治療を指し得る。また、必ずしも皮膚炎および/または粘膜炎の診断後の治療を指すものではなく、また、皮膚炎および/または粘膜炎の将来的な発症の予後を考慮した条件下での予防的治療を指し得る。例えば、組成物は、既往症を有する患者の治療、または皮膚もしくは粘膜の疾患もしくは障害に素因がある対象の治療に使用され得る。例えば、組成物は、患者における放射線治療の症状を緩和するために、またはそのような患者における予防手段として使用され得る。
【0064】
本組成物は、有利には、放射線関連因子(ただし、これらに決定的に限定されるものではない)によって引き起こされる皮膚炎および粘膜炎に対して治療効果を有し、有利には長い作用持続時間を有し、安全である、例えば、毒性効果および副作用がないと考えられ得る。さらに、治療は、有利には短時間で、迅速に効果を発揮することができ、皮膚損傷および炎症、ならびに放射線治療誘発性皮膚炎および粘膜炎の臨床治療に広く適用され得る。本発明の医薬組成物を含む組成物は、有利には、電離放射線治療を受けている対象の皮膚および粘膜を保護し得る。
【0065】
皮膚炎および/または粘膜炎は、当業者には明らかなように、皮膚もしくは粘膜の損傷または皮膚もしくは粘膜の障害を指してもよく、酸化ストレスが原因または実質的な原因因子として関与している皮膚および粘膜の任意の異常を含んでもよい。照射は、そのような損傷または障害の病因に関与してもよい。組成物が治療に使用され得る損傷または疾患の例は、急性紅斑、皮膚の炎症、炎症、浮腫、落屑、皮膚の壊死、口内の痛みおよび潰瘍化、痛み、線維化、毛細血管拡張症、口腔乾燥症、眼球乾燥症、膣粘膜の乾燥、乳癌、胃癌、肺癌、メラノーマ、および甲状腺障害を含むが、これらに限定されない。
【0066】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、使用は、放射線誘発性皮膚炎および/または放射線誘発性粘膜炎を治療する方法における使用であり得る。本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、使用は、放射線療法および/または化学療法の副作用を治療する方法における使用であり得る。本発明の実施形態による使用のための組成物は、放射線治療誘発性皮膚炎および/または粘膜炎の予防および/または治療のための医薬組成物であり得る。
【0067】
本発明の医薬組成物は、例えば、電離放射線および/または非電離放射線によって引き起こされる皮膚放射線焼灼病変の予防および/または治療のために使用され得る。例えば、組成物は、放射線治療の有毒な副作用から患者の皮膚および粘膜(複数可)を局所的に保護するため、および/または予防のために使用され得る。本発明の組成物は、電離放射線治療を受けている患者の皮膚および粘膜(複数可)を、電離放射線に曝露されている患者の体の領域および/またはその周辺に局所的に塗布(ただし、必ずしもこれに限定されるものではない)したときに、Nrf2相II酵素を誘導することにより保護し得る。
【0068】
例えば、本発明の実施形態の使用により治療される対象は、電離放射線治療の短期的または長期的な影響に悩まされ得る。対象は、急性紅斑、皮膚の炎症、炎症、浮腫、落屑、皮膚の壊死、口内の痛みおよび潰瘍化、痛み、線維化、毛細血管拡張症、口腔乾燥症、眼球乾燥症、膣または直腸粘膜の乾燥および刺激、メラノーマ、乳癌、胃癌、肺癌、または甲状腺障害による影響を受け得る。
【0069】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書の上記に記載された状態および/もしくは疾患のいずれかを治療するための使用のための、ならびに/またはそれらの任意の組み合わせを治療するための、本発明の実施形態による組成物に特に関するものであり得る。
【0070】
しかしながら、治療される対象はまた、ほとんどまたは全く症状がなくてもよく、例えば、皮膚放射線焼灼病変を防止するために、本発明の実施形態による使用のための組成物で治療され得る。組成物は、有利には、低毒性を有してもよく、有利には、電離放射線および非電離放射線の両方から皮膚を保護するのに高い効果を提供し得る。これはまた、より高い線量に対する耐性が増加するので、放射線治療におけるより高い放射線量の使用を可能にし、および/または、例えば、同じまたは類似の線量がより少ない分画で送達され、および/または、線量分画の連続した送達の間のより短い遅延で送達されるようなより積極的な分画スキームを可能にし得る。
【0071】
しかしながら、本発明の実施形態は、放射線療法の副作用に関連する使用に必ずしも限定されるものではなく、例えば、放射線によって誘発されない酸化ストレスによって引き起こされる皮膚炎および/または粘膜炎の治療における使用にも同様に適用され得る。放射線療法は、高レベルの急性酸化ストレスを引き起こす可能性があるが、皮膚炎および/または粘膜炎を引き起こす可能性のある酸化ストレスの他の幅広い原因が知られている。例えば、酸化ストレスは、皮膚の老化だけでなく、皮膚の多くの疾患においても役割を果たし得る。例えば、アトピー性湿疹、またはアトピー性皮膚炎(AD)は、免疫異常および過敏症の遺伝的素因などの因子と組み合わせて、酸化ストレスが関与し得る慢性の再発性炎症性皮膚疾患である。別の例では、皮膚炎または粘膜炎は、高熱によって引き起こされ(または促進され)得る。
【0072】
酸化ストレスとは、これらの細胞の抗酸化防御能力の(急性または慢性の)過剰な状態で、細胞内、すなわち本開示の文脈では皮膚または粘膜内での酸化体の形成を指す。フリーラジカル、活性酸素種(ROS)および窒素酸素種(NOS)などの酸化物質は、通常の代謝活動中に生成されるが、このような酸化体を処理するための細胞防御機構、例えば、酵素ベース系(例えば、ペルオキシレドキシン)および非酵素ベース系(例えば、特定のビタミン、グルタチオン、コエンザイムQ10および他の抗酸化物質に依存し得る)は、過剰な負荷になり得る。適切に制御されていない場合、酸化剤は、細胞内の多くの高分子と反応し得、それはさらに、重度の細胞損傷および/またはアポトーシスにつながる連鎖反応を開始し得る。
【0073】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、化合物は、6−ヒドロキシメラトニンと6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートとのコンジュゲートを含むまたはからなる化合物、例えば、少なくとも6−ヒドロキシメラトニンと6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートとの結合により形成された化合物を含むまたはからなり得る。このような化合物は、メラトニン類似体である6−ヒドロキシメラトニン(6OHM)と、スルフォラファン類似体である6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネート(6−HITC)とのコンジュゲートにより調製され得る。6−ヒドロキシメラトニン(6OHM)の構造式は:
【化3】
であり、6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネート(6−HITC)の構造式は:
【化4】
である。
【0074】
したがって、両分子のハイブリダイゼーションである6−HITC−60HMは、以下の構造式で表され得る。
【化5】
【0075】
したがって、好ましい実施形態では、Nrf2第II相酵素誘導剤と考えられる化合物は、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートからなる合成スルフォラファン類似体と、6−ヒドロキシメラトニン(6OHM)からなる合成メラトニン類似体とを融合させたものであり得る。この化合物は、したがって、本開示において6−HITC−6OHMと呼ばれ得、すなわち、本発明の実施形態による使用のための組成物は、6−HITC−6OHMコンジュゲートを含み得る。
【0076】
6OHMは、メラトニンの一次活性代謝物、すなわちメラトニンは、体内でシトクロムP450アイソザイムによって酸化により6−ヒドロキシメラトニンに変換されると考えられ得る。メラトニンが3−アルキルインドール有機化合物、すなわち−3位にアルキル鎖を有するインドール部分を有するのに対し、6−ヒドロキシメラトニンは有利にはヒドロキシインドール有機化合物、すなわちヒドロキシル基を有するインドール部分を有する。さらに、6OHMは、有利には、安定であり、生物学的に利用可能であり、そして良好なフリーラジカル消去活性を有し、例えば、メラトニンと比較して、より安定であり、より生物学的に利用可能であり、そしてより良好なフリーラジカル消去活性を有する。
【0077】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、ワサビから得ることができ、本発明の実施形態はこれに限定されない。スルフォラファンは、イソチオシアネート基の酸素基が硫黄に置換された4−メチルチオヘキシルイソチオシアネートを酸化することにより合成され得る。一方、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートは、イソチオシアネート基中の酸素基も硫黄で置換された6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートを酸化することにより合成され得る。いずれのイソチオシアネートも対応する構造を有しているが、−N=C=Sであり、それらはアルキル鎖の長さが異なる。6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートは、インビトロで示されているように、Nrf2経路の誘導において有利には(例えば、スルフォラファンよりも)強力である。
【0078】
メラトニンがシトクロムP450アイソザイムによって体内で変換される一方で、これらのアイソザイムはまた、遺伝毒性物質を活性化し、これは、例えば、癌患者における放射性皮膚炎および粘膜炎を予防ならびに/または治療するために好ましくないであろう。しかし、スルフォラファンはシトクロムP450アイソザイムを阻害し得、そのような場合、メラトニンは代謝されないだろう(またはそれよりも少ない程度に代謝される)。したがって、6−HITC−6OHM化合物は、シトクロムP450アイソザイムの作用に依存することなくメラトニンの一次代謝物が提供され、一方、シトクロムP450アイソザイムを阻害して遺伝毒性を回避または低減することさえ可能であるので、Nrf2経路を刺激するのに特に適し得る。
【0079】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、使用は、組成物の局所適用を含み得る。本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、そのような局所適用は、組成物を皮膚および/または粘膜上に投与することを含み得る。局所適用は、電離放射線に曝露された、曝露される、または曝露される予定の対象の体の領域、または周辺領域を含むそのような領域に関連し得る。したがって、組成物は、放射線療法、またはハイパーサーミアなどの別の状態から生じる短期および/または長期の副作用を予防または最小化するために、対象の体の関連部分にわたって皮膚に直接適用され得る。
【0080】
Nrf2第II相酵素誘導剤として考えられ得る化合物の治療的に有効量を対象に投与し得る。局所投与用組成物は、(必ずしもこれに限定されないが)創傷被覆剤、スプレー、軟膏、クリーム、乳液、ローション、ゲル、または日焼け止めの形態で提供され得る。そのような賦形剤は本分野でよく知られている。局所投与は、例えば、肺、胃、膣、口および/または眼の表面を含む皮膚または粘膜への投与を含み得る。
【0081】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、使用は、組成物の経口投与、粘膜投与、皮下投与、筋肉内投与および/または非経口投与を含み得る。したがって、組成物は、様々な適切な担体および/または賦形剤を含み得る。
【0082】
当業者に知られている様々な添加剤が、実施形態による組成物中に含まれ得、例えば、局所適用のためのそのような組成物中に含まれ得る。例えば、本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、組成物はさらに、可溶化剤、皮膚浸透促進剤、防腐剤(例えば、抗酸化剤)、保湿剤、ゲル化剤、緩衝剤、界面活性剤、乳化剤、エモリエント剤、増粘剤、安定剤、湿潤剤、分散剤、医薬担体および/またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0083】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、組成物は、体内または体上への組成物の取り込みを容易にするために、担体および/または賦形剤をさらに含み得る。本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、組成物はさらに、抗生物質、抗菌剤および/または抗真菌剤を含み得る。そのような作用剤の例は、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含むが、これらに限定されない。感染症の予防および/または治療が達成され得ることは、実施形態の利点である。皮膚炎および/または粘膜炎は、(例えば、損傷した皮膚バリアに起因する)感染症のリスクを実質的に増加させる可能性があるため、上記の利点は、皮膚炎および/または粘膜炎を治療することの利点と相乗的である。
【0084】
好適な皮膚浸透促進剤は、本分野でよく知られており、以下のものを含むことができる:メタノールエタノールおよび2−プロパノールなどの低級アルカノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシド(C10MSO)およびテトラデシルメチルスルホキシドなどのアルキルメチルスルホキシド、ピロリドン、尿素、N,N−ジエチル−m−トルアミド、C2−C6アルカンジオール、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)および/またはテトラヒドロフルフリルアルコール。
【0085】
可溶化剤の例は、限定されないが、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール、Transcutol(登録商標)として市販されている)およびオレイン酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Softcutol(登録商標)として市販されている)のような親水性エーテル;ポリオキシ35ヒマシ油、ポリオキシ40水添ヒマシ油、ポリエチレングリコール(PEG)、特にPEG300、PEG400およびPEG−8カプリル/カプリルグリセリド(Labrasol(登録商標)として市販されている)のようなポリエチレングリコール誘導体のような低分子量PEG;DMSOのようなアルキルメチルスルホキシド;ピロリドン、DMA、およびそれらの混合物を含む。
【0086】
本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、担体および/または賦形剤は、非毒性の充填材、すなわちヒト生体に対して実質的に非毒性である充填材を含み得る。そのような充填剤は、固体、半固体または液体であり得る。本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、担体および/または賦形剤は、希釈剤を含み得る。
【0087】
適切な医薬担体は、本分野で知られている、例えば、任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤、ポリマーなどのそのような任意の材料を含み得、それは、毒性がなく(ヒト生体に対して)、組成物の他の成分または皮膚と著しく有害な方法で相互作用しない。本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、担体および/または賦形剤は、化合物を少なくとも一時的にカプセル化するためのカプセル化材料を含み得る。本発明の第1の態様の実施形態による使用のための組成物において、担体および/または賦形剤は、リポソームを含み得る。
【0088】
感染症の予防および/または治療は、抗生物質、ならびに様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを本発明の組成物中に含有することによって達成され得る。
【0089】
実施形態による使用のための非経口注射用組成物は、滅菌水性または非水性溶液、分散液、懸濁液および/もしくは乳剤、ならびに/または使用前に滅菌注射可能な溶液もしくは分散液に再構成するための滅菌粉末の形態であり得る(例えば、からなり得る)。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの適切な混合物、植物油(オリーブオイルなど)、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散体の場合に必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0090】
本発明の実施形態による使用のための組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤などのアジュバントを含有し得るが、これらに限定されない。本発明の実施形態による使用のための組成物は、糖類、塩化ナトリウムなどのような等張化剤を含み得る。注射可能な医薬形態の組成物の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる作用剤を含むことによって達成され得る。
【0091】
皮下または筋肉内注射時に組成物の吸収を遅らせることにより、組成物の効果を持続させることが望ましい場合には、組成物は、水溶性の悪い結晶性または非晶性物質の液状懸濁液を含み得る。次いで、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し得、その結果、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口的に投与された薬剤形態の吸収の遅延は、薬物をオイルビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成され得る。
【0092】
注射可能なデポ剤形は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作られ得る。ポリマーに対する薬物の比率および採用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御し得る。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポ注射可能な製剤はまた、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を巻き込むことによって調製される。注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過することによって、または使用直前に無菌水または他の無菌注射可能な媒体に溶解または分散させることができる無菌固体組成物の形態で殺菌剤を組み込むことによって、殺菌され得る。
【0093】
本発明の実施形態による使用のための組成物は、カプセル、錠剤、錠剤、粉末、および顆粒などの経口投与のための固体投与形態で提供され得るが、これらに限定されない。このような固体剤形において、活性化合物は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムのような少なくとも1つの賦形剤もしくは担体、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸のような充填剤もしくは拡張剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアのような結合剤、c)グリセロールのような腐植剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えばアセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、そしてi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤と混合され得る。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、剤形はまた、緩衝剤を含み得る。同様のタイプの固体組成物もまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として採用され得る。
【0094】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸薬および顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティングおよび他のコーティング、例えば、医薬製剤技術でよく知られている徐放性コーティング、徐放性コーティング、遅延放出性コーティングおよび即時放出性コーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製され得る。それらは、任意に不透明化剤を含み得、また、それらが腸管の特定の部分でのみ、または優先的に、任意に、遅延的に、有効成分(複数可)を放出するような組成物であり得る。使用され得る埋め込み組成物の例は、高分子物質およびワックスを含む。活性化合物はまた、適切な場合には、上述の賦形剤のうちの1または複数を伴うマイクロカプセル化された形態であり得る。
【0095】
経口投与のための液状剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含み得るが、これらに限定されない。活性化合物に加えて、液体剤形は、本分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み得、それは、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、落花生、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物である。口腔用組成物はまた、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香料(flavoring)、および芳香剤(perfuming agent)などのアジュバント含み得る。懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物としての懸濁剤を含み得る。
【0096】
本分野の通常の当業者であれば、本発明の方法で使用される組成物中の作用剤の有効量が経験的に容易に決定され得ることを理解するであろう。ヒト患者に投与する場合、本発明による組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されるであろう。特定の患者に対する治療的に有効な用量レベルは、達成される応答の種類および程度、採用される特定の組成物の活性、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食生活、治療の持続時間、本発明の実施形態による使用の際に組み合わせてもしくは同時に使用される薬物、ならびに/または医療分野で知られているような他の要因などの様々な要因に依存し得る。薬学的または治療的に有効な量とは、臨床的に有意な細胞応答を引き出すのに有効な量を指す。例えば、本発明の実施形態による使用において、組成物中の化合物の量は、例えば、対象への局所投与のために、約0.005%から約1重量%の範囲の量であり得る。
【0097】
組成物は、活性医薬成分(API)としての化合物を、局所適用のための軟膏または類似の製品に溶解することによって提供され得、例えば、そのような場合、APIの0.005%から約1%(重量による)の範囲内の濃度が達成される。このような組成物は、放射線保護特性および治療特性の両方を特徴とし得る。組成物は、有利には、APIを皮膚に沈着させるために、皮膚を通って部分的に浸透し得る。照射前に皮膚に塗布すると、皮膚の放射線抵抗性が改善され、放射性皮膚炎につながり得る紅斑、湿潤性及び乾性の落屑を防止または最小化し得る。放射性皮膚炎が発生した場合、組成物は、皮膚の浮腫、充血、そう痒症、痛みおよび灼熱感のある刺激を軽減または除去し、皮膚の治癒を促進し、組織および細胞構造の迅速な正常化を促進し得る。
【0098】
第2の態様において、本発明は、化合物を含む組成物であって、該化合物は、6−ヒドロキシメラトニンと6−メチルスフィニルヘキシルイソチオシアネートとのコンジュゲートを含むまたはからなる組成物に関する。本発明の第1の態様の実施形態に関連する本明細書の記載を参照すると、本発明の第2の態様の実施形態による組成物の詳細が記載されているが、これは、本発明の第1の態様の実施形態に関連して記載された医療使用に必ずしも限定されるものではない。
【0099】
第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様の実施形態による組成物の薬剤としての使用に関する。
【0100】
第4の態様において、本発明は、本発明の第2の態様の実施形態による組成物を合成する方法に関する。方法は、化合物を提供することを含み、組成物を形成するために、化合物にさらなる生成物(複数可)、例えば、本発明の第1の態様の実施形態に関連して記載されているさらなる生成物を加えることを含み得る。本方法は、乾燥テトラヒドロフラン(例えば3mL)中の2−(6−ヒドロキシ−5−メトキシ−1H−インドール−3−イル)アセトアミド(例えば0.26mmol、50mg)の溶液にTHF(例えば2mL)中のN,N’−チオカルボニルジイミダゾール(例えば0.26mmol、46.8mg)の溶液を加えることを含み得る。例えば、混合溶液を0℃で10分間保持してもよい。得られたものを室温まで温めてもよく、完了するまで、例えば3時間攪拌してもよい。その後、溶媒を減圧下で除去し、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(例えば、ヘキサン:CHCl0〜60%を使用して)により精製して、生成物を淡黄色の油(例えば、54.4mg、収率90%)として得ることができる。
【0101】
当業者が本発明の態様を理解し、実施する本発明を還元するのを助けるために、理論的考察が本明細書中に提供される。しかしながら、本発明および本明細書の実施形態は、そのような理論的枠組みの正確性および/または完全性によって制限されると解釈されるべきではない。
【0102】
電離放射線への曝露後、フリーラジカルは、曝露された細胞内で形成され得、これは、DNAおよび細胞小器官に対する後続の損傷を誘発し得る。このような損傷は、免疫系からいくつかの応答を引き出し得る。放射線治療による酸化ストレス(必ずしもこれに限定されるものではないが、放射線治療による酸化ストレス、または電離放射線による酸化ストレス)に対する免疫反応は、曝露後数分後に開始され、さらには照射後何年も持続することがある。これらの影響は、放射線量および照射された臓器に依存し得る。さらに、異なる免疫細胞が電離放射線に対して異なる反応をし得る。免疫系の細胞および分子は、自然免疫系と後天的免疫系との2つに分けられる。ほとんどの免疫応答は、サイトカインやケモカインを含む可溶性分子によって媒介される。自然免疫系と後天的免疫系とでは、電離放射線によって誘発されるDNA損傷および細胞死に対する応答が異なる。放射線曝露後には、いくつかの種類の細胞死が起こり得、免疫系のさまざまな経路を刺激し得る。照射後に起こる細胞死のメカニズムには、分裂性壊死、壊死、アポトーシス、オートファジー、および老化を含む。これらの細胞死経路に対する免疫細胞の応答は、正常組織における様々なシグナル伝達経路を刺激するサイトカインの産生を導く。免疫原性細胞死経路は、壊死およびネクロプトーシスを含む。対照的に、細胞の酸化ストレスと酸化的DNA損傷とによって誘発されるアポトーシス死は抗免疫原性である。これらの経路間のバランスが、免疫細胞から分泌されるサイトカインのプロファイル、および照射の免疫原性または忍容性を決定する。アポトーシス細胞はマクロファージと協働して、マクロファージを刺激してTGF−β、IL−10、血小板活性化因子、PGE2などの寛容性サイトカインを合成して放出し、その結果炎症反応を抑制する。細胞死後の高可動性グループボックス1(HMGB1)および酸化DNAなどの損傷関連分子パターン(DAMP)の分泌は、IL−1、IL−2、IL−6、TNF−α、IFN−γなどの炎症性サイトカインの産生をもたらす。電離放射線に対する免疫系細胞の免疫原性応答および忍容性応答の両方が、放射線治療に関連したいくつかの初期および晩期の影響に関与する。
【0103】
マクロファージおよびTリンパ球は、免疫学的挑戦に応答してサイトカインおよびケモカインを放出するために重要である。電離放射線に対するリンパ球の応答は、Tヘルパー1(Th1)およびTヘルパー2(Th2)のサブグループを介して媒介され得る。これらのサブグループを持つ分泌サイトカインは、細胞に対して異なる効果を示す。原子力災害生存者(例えば、チェルノブイリおよび日本)および癌のために放射線治療を受けた患者の長期追跡データには、Th1/Th2サイトカインプロファイルのバランスの変化が示されている。電離放射線への曝露は、Th1の減少とTh2の増加に関連していた。これらの結果から、電離放射線は細胞が介在する免疫を抑制し、体液性免疫を刺激することが示唆された。Th1サイトカインはマクロファージおよびT細胞の活性化を含む炎症反応に関与しているのに対し、Th2サイトカインは免疫系の体液性反応およびアレルギー反応を刺激する。Th1サイトカインおよびTh2サイトカインの産生の間のこの不均衡が、放射線曝露後の長期的な副作用に関与する。
【0104】
放射線治療で見られるような高線量の放射線に対するマクロファージおよびT細胞の応答は、血液を含む照射組織および非照射組織のサイトカインプロファイルの変化をもたらす。放射線誘発免疫応答および非放射線組織損傷に関与する主要な分子には、転写因子(NF−κBなど)、プロテインキナーゼ(MAPKなど)、サイトカイン(IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−33、およびIFN−γなど)、TNF−α、および成長因子(TGF−β、bFGF、IGF−1、およびPDGFなど)を含む。TGF−βおよびIGF−1のような炎症性サイトカインおよび成長因子は、マクロファージ、T細胞、好中球、および非免疫細胞からのプロスタグランジン、ROSおよびNOの産生を刺激する。これらの免疫反応は、炎症、発赤、痛み、さらにはDNA、脂質、およびタンパク質の酸化を引き起こし、発癌および心臓病などの非癌性疾患のリスクを高める。また、大量の放射線を受けた後の炎症性サイトカインならびにTGF−β、bFGF、およびIGF−1などの成長因子の長期的なアップレギュレーションは、細胞外マトリックス(ECM)のリモデリングを引き起こし、これは組織の正常な機能に影響を及ぼし得る萎縮、血管損傷、および線維化などの深刻な影響をもたらす。
【0105】
放射線治療における免疫応答の変調は、腫瘍応答の有効性を高め、正常組織の副作用を管理するための興味深い目的である。これらの目的のためには、放射線治療に対する免疫応答の管理が最も重要であると思われる。腫瘍および正常組織の両方におけるメラトニンの興味深い特性は、正常組織および放射線治療に対する癌応答の適切な管理を達成するのに役立ち得る。
【0106】
本発明の実施形態による組成物は、例えば、電離放射線に曝露された皮膚および粘膜の領域ならびに/または周囲の領域に局所的に適用される場合、Nrf2第II相酵素誘導剤として考えられ得る。これは、皮膚および粘膜の機械的回復力を著しく向上させることができ、哺乳類、特に放射線療法、熱療法、宇宙環境または原子力事故などの熱および/または電離放射線に曝露されたヒトにおいて、皮膚および粘膜の損傷を予防または軽減することができる。特に、放射線に曝露する前、曝露中、または曝露後に、薬学的有効量の医薬組成物を局所的に投与することにより、皮膚および粘膜に対する短期的および長期的な損傷に対する効果的な免疫調節保護を提供することができる。
【0107】
本発明の実施形態による組成物の化合物は、有利には、例えば放射線療法もしくは他の放射線曝露、および/または異常高熱に起因する、酸化ストレスに起因する皮膚もしくは粘膜への損傷または皮膚もしくは粘膜の障害を予防または治療するために、転写因子NF−E2関連因子2(Nrf2)を誘導することができる。スルフォラファンおよびメラトニンの両方の多面的プロファイルに照らして、相補的な細胞保護効果は、単一分子内のこれらの化合物(またはその類似体)の組み合わせによって達成され得る。実施形態による化合物は、Keap1に存在するシステインと反応してNrf2を遊離させることができ、このNrf2は、その後、細胞内でGSHとコンジュゲートする薬物として作用し、このコンジュゲートのプロドラッグである強力なメラトニン様抗酸化化合物を生成する。この薬物−プロドラッグメカニズムは、治療的用途(例えば、放射線治療のアジュバントとして)を伴う良好な薬理学的プロファイルをもたらす。
【0108】
転写因子NF−E2関連因子2(Nrf2)は、転写因子のCNC(Cap−N−Collar)ファミリーに属し、高度に保存された塩基領域ロイシンジッパー(bZip)構造を有する。Nrf2は、酸化ストレスおよび外来生物ストレスに応答して、グルタチオンSトランスフェラーゼ、NADP(H):キノンオキシドレダクターゼおよびUDP−グルクロン酸転移酵素などの薬物代謝酵素、ならびにヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)およびグルタミルシステイン合成酵素(GCS)などの抗酸化酵素を含む、防御酵素をコードする抗酸化および解毒遺伝子(一般的に第II相遺伝子として知られている)の構成的および誘導的発現において重要な役割を果たす。これらの酵素は、抗酸化応答要素(ARE)または電着応答要素(EPRE)と呼ばれるプロモーターを介して制御される。第II相遺伝子は、活性酸素または窒素種(ROSまたはRNS)の消去、電着物の無害化、および細胞内還元性の維持を含む細胞防御メカニズムを担当する。
【0109】
Nrf2は通常、Keap1と呼ばれるアクチン結合調節タンパク質によって細胞の細胞質内に隔離されている。細胞が酸化的ストレスまたは求電子的ストレスに曝露されると、Keap1−Nrf2の複合体は構造変化を起こし、Nrf2は複合体から解放されて核内に放出される。活性Nrf2は小さなMafタンパク質と二量体化し、AREと結合して第II相遺伝子の転写を活性化する。
【0110】
Keap1−Nrf2系は、抗酸化機能および解毒機能に加えて、ホメオスタシス制御にも関与している。この系を活性化する化合物は、様々な疾患の治療薬として考えられる。
【0111】
第II相酵素誘導剤の9つのクラスが知られている:1)ジフェノール、フェニレンジアミンおよびキノン;2)マイケルアクセプター;3)イソチオシアネート;4)ヒドロペルオキシドおよび過酸化水素;5)1,2−ジチオール−3−チオン;6)ジメルカプタン;7)3価のヒ素;8)2価の重金属;および9)カロテノイド、クルクミンおよび関連するポリエン。これらの第II相酵素誘導剤は、直接的な抗酸化剤とは異なり、酸化還元反応中に化学量論的に消費されず、作用時間が長く、トコフェロールおよびCoQなどの直接的な抗酸化剤の働きをサポートし、強力な抗酸化剤であるグルタチオンの合成を増強するため、非常に効率的な抗酸化剤と考えられている。
【0112】
利尿剤であるエタクリリン酸(EA)、求電子性マイケルアクセプターであるオルチプラズ、およびイソチオシアネートであるスルフォラファンは、免疫賦活マクロファージからの炎症性疾患の発症に関与する炎症性タンパク質である高可動性グループボックス1(HMGB1)のリポ多糖(LPS)誘発分泌を抑制することが示されている。オルチプラズは、発癌物質の解毒作用を増強することにより、肝臓および膀胱の発癌を予防する。傷を負った皮膚を含む傷および炎症を起こした組織におけるケラチノサイト成長因子(KGF)の酸化ストレスに対する細胞保護効果は、皮膚の傷の修復時にKGFがNrf2を刺激することと関連する。
【0113】
主にアブラナ科野菜に由来するイソチオシアネートは、強力な抗酸化物質であり、第II相酵素の活性化、発癌物質活性化第I相酵素の阻害、およびアポトーシスの誘導を介して、腫瘍の化学予防に有効な作用剤である。捕食者による野菜の浸漬、食品の調製、または咀嚼によって細胞が破壊され、その結果、酵素ミロシナーゼの活性化および放出が引き起こされるときに、イソチオシアネートは、植物において、β−チオグルコシド−N−ヒドロキシサルフェートであるグルコシノレートの加水分解から形成される。結果として得られるアグリコンは、非酵素的な分子内転位を経て、イソチオシアネート、ニトリル、およびエピチオニトリルを生成する。
【0114】
スルフォラファンはブロッコリーに含まれていることが確認されており、単離されたマウス肝細胞では強力な第II相酵素誘導剤である。スルフォラファンは、スプラーグドーリー(Sprague−Dawley)ラットにおける乳腺腫瘍の形成を阻害し、マウスの皮膚腫瘍形成の促進を抑制し、ヒト肝細胞HepG2細胞におけるヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)の発現を増加させる。スルフォラファンはまた、ヒトのケラチノサイトにおいて、皮膚発癌の促進因子である活性化タンパク質−1(AP−1)の紫外線(UV)による活性化を抑制し得る。スルフォラファン抽出物の局所投与により、マウスの皮膚表皮における第II相酵素NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼA1、およびヘムオキシゲナーゼ1のレベルが上昇し得る。
【0115】
さらに、スルフォラファンは、強力な細胞毒性物質であり、強力な変異原および発癌性物質である硫黄マスタードからヒト表皮角化細胞を保護し、細胞成長を抑制し、アポトーシスを活性化し、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性を阻害し、ヒト乳癌細胞の乳癌増殖に関与する重要なタンパク質である、エストロゲン受容体−α、上皮成長因子受容体、およびヒト上皮成長因子受容体−2の発現を低下させる。さらに、スルフォラファンは、ヒト胃癌細胞からヘリコバクターピロリ菌を駆除することが示された。
【0116】
また、スルフォラファンによるNHEJおよびHRR経路の障害を介した放射線誘発DNA DSBの修復阻害を示すことに加え、スルフォラファンはヒト腫瘍細胞の放射線感受性をインビトロおよびインビボの両方で有意に向上させる。この修復阻害は、少なくとも部分的には、複合治療によって誘導されたアポトーシスの増強によるもののようである。
【0117】
メラトニンは主に松果体から分泌されるが、それは、例えば、骨髄、免疫細胞、脳、および腸でも合成される。メラトニンは、N1−アセチル−N2−ホルミル−5−メトキシキヌラミン(AFMK)とN1−アセチル−5−メトキシキヌラミン(AMK)という2つの重要な代謝物を有する。これらのうち、AFMKが最も多く含まれる。
【0118】
メラトニンとその代謝物は、強力な抗酸化および放射線保護特性を有する。それは、電離放射線を含む、さまざまな酸化的要因によって誘導されるROS(活性酸素種)/NO(一酸化窒素)の生産を減少する。それはまた、酸化ストレス時には非常に急速に消費される。このことは、メラトニンが増加したROS/NO産生に対する第一選択の保護因子として有効であり得ることを示唆する。
【0119】
強力なROS/NOスカベンジャーとしてのメラトニンは、フリーラジカルおよび酸化的DNA損傷と相互作用し得る。それは、ヒドロキシルラジカル(照射後に最も頻繁に発生するフリーラジカルの種類)、過酸化水素、一酸化窒素(免疫細胞による生成物)、過酸化窒素アニオン、および一重項酸素から細胞を保護し得る。また、メラトニンは、以下で詳しく説明する分子経路および細胞機能の調節など、さまざまなレベルで酸化ストレスを緩和する。メラトニンによるラジカル消去のメカニズムは多くの他のものとは異なるようである。ビタミンCおよびEなどの抗酸化物質は酸化還元系を刺激し、またROS産生を促進し得る。いくつかの研究は、メラトニンは酸化還元系を刺激することなく、ROSおよびRNS(活性窒素種)と相互作用することを提案した。N−アセチル−5−メトキシキヌラミン、N(1)−アセチル−N(2)−ホルミル−5−メトキシキヌラミン、および6−ヒドロキシメラトニンのような安定な生成物は、他の分子とほとんど反応しない。しかし、ある状況では、メラトニンは酸化的リン酸化を介してミトコンドリアのROS産生を刺激し得る。
【0120】
メラトニンの抗酸化作用の別の重要なメカニズムは、Nrf2、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH−Px)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、およびグルタチオン還元酵素(GR)などの遺伝子および酵素の刺激であり、これらはすべて解毒を助けるものである。抗酸化酵素の阻害は、照射臓器および照射外臓器の両方において電離放射線の重要な効果であるため、メラトニンのこの性質は、放射線によって生成されたフリーラジカルの消去を増強し得る。
【0121】
マクロファージ、T細胞、および好中球などの免疫細胞、ならびにミトコンドリア、小胞体、細胞膜、およびリソソームなどの細胞小器官は、放射線に対する細胞および組織の初期および後期応答において重要な役割を果たす。また、ミトコンドリアおよび細胞膜によるROSおよびRNSの産生、リソソームの解毒酵素の放出も放射線損傷に重要な役割を果たす。また、マクロファージ、T細胞、および好中球を含む免疫細胞は、ストレスに応答してROSおよびNOを産生する。他の抗酸化物質および放射線防護物質と比較して、メラトニンの特徴は、ほとんどの臓器およびその細胞内小器官に侵入するその能力である。メラトニンは様々な免疫細胞および小器官に影響を与え、これらの細胞および小器官で電離放射線によって引き起こされる機能変化を緩和し得る。これらの特徴は、メラトニンが異なる組織における放射線毒性の間、正常組織を保護するための良い候補であることを示唆する。ミトコンドリア膜の保護、ミトコンドリア呼吸速度の回復、およびROS/NOに対する膜電位は、他の抗酸化物質では見られなかったメラトニンの固有の特性である。
【0122】
ミトコンドリアは細胞内のROS産生の主な供給源であり、それらは、照射後の酸化損傷に重要な役割を果たす。ミトコンドリアの完全性の保存は、電離放射線への曝露などの酸化ストレス時の酸化的損傷およびROS産生を緩和するためにメラトニンにとって重要であり得る。また、細胞膜およびリソソームの酸化的損傷の軽減および機能低下のいくつかの証拠がある。
【0123】
メラトニンは、免疫細胞上の受容体を介して増殖およびサイトカイン分泌を調節し得る。メラトニンの投与は、骨髄の前駆体B細胞およびNK細胞の生存率を向上させ、数を増加させ得る。電離放射線は、Tリンパ球およびBリンパ球などの免疫細胞に強力な影響を与える。免疫細胞の中でも、これらの細胞は放射線の影響を最も受けやすい細胞である。骨髄の照射によるリンパ球の減少は、腫瘍が受ける放射線量を制限し得る放射線治療の重大な副作用である。メラトニンによる治療は、DNA損傷を大幅に改善し、照射後の末梢および骨髄のリンパ球数を減少させ得る。DNA損傷および細胞死の減少は、特に放射線感受性細胞におけるものであるため、メラトニンは放射線に対する免疫応答の管理に適切な放射線保護剤および免疫調節剤となる。
【0124】
サイトカインは電離放射線に対する正常組織の応答の重要なメディエーターである。電離放射線への曝露は、炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの両方を含むいくつかのサイトカインをアップレギュレートする。研究は、メラトニンが、既存の状況に応じて、分裂促進因子と抗炎症の両方の役割を持つことが示されている。メラトニンは、IL−2、IL−12、およびIFN−γの産生をアップレギュレートし得る。さらに、メラトニンは、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、IL−3、IL−4、およびIL−6に対する単球の応答の増加を誘導する。これらの作用により、メラトニン治療後にNK細胞活性が上昇し、顆粒球、マクロファージ、好中球、および赤血球の産生が増加することをもたらす。一方、メラトニンによる治療はIL−10の産生を増加させ、これもまた抗炎症性のTh2免疫応答を活性化させるという証拠がある。
【0125】
炎症に応答して、メラトニンは強力な抗炎症性化合物として作用し、炎症に関与するTNF−α、IL−1β、およびIFN−γなどのTh1サイトカインの過剰発現を減少させ、Th2応答を促進し得る。メラトニンは、好中球により分泌される2つの炎症性サイトカインであるTNF−αおよびIL−8の放出を抑制する。これらのサイトカインは慢性炎症において特に重要である。したがって、メラトニンは、これらの経路を介して、放射線治療後の炎症によって引き起こされる急性および慢性の両方の結果を減少させ得る。最近の研究では、肺照射前にメラトニンを投与すると、TNF−α、TGF−β、およびIL−6のアップレギュレーションが改善されることが示されている。また、照射のみの場合と比較して、SODおよびカタラーゼ活性、GSHレベルの上昇、および肺組織の酸化的損傷の減少が認められた。TGF−βはSODおよびカタラーゼ遺伝子の発現を抑制する効果がある。したがって、電離放射線曝露後のTGF−βレベルの低下は、酸化損傷の改善に役立ち得る。
【0126】
NF−κB、AP−1、c−jun、c−fos、およびSTATファミリーなどのいくつかの転写因子ならびにMAPKなどのプロテインキナーゼは、電離放射線に対する細胞応答の制御に重要な役割を果たす。NF−κBは、DNAの転写、細胞周期の進行、DNA損傷への応答、サイトカイン産生(特に炎症性サイトカイン)、細胞の成長および分化、ならびに細胞の生存を刺激する。NF−κBはいくつかのタイプの細胞に見いだされる。異常なアップレギュレーションは、卵巣癌、大腸癌、白血病、およびリンパ腫など多くの悪性腫瘍と関連する。NF−κBは、照射後にIL−1α、IL−1β、およびTNF−αなどの炎症性サイトカインならびにIL−6 mRNAの発現を刺激する。
【0127】
NF−κB、AP−1、およびMAPKシグナル伝達経路の間にはクロストークが存在するようである。したがって、選択的阻害剤によるこれらの転写因子のいずれかの阻害は、放射線曝露後のこれらのサイトカインのアップレギュレーションを管理するのに十分ではない。メラトニンは、照射のようなストレス状況においてNF−κB遺伝子の発現を阻害効果を有する。この作用には、機能性レチノイド関連オーファン受容体−α(ROR−α)転写因子の変調が関与している。このシグナル伝達経路の阻害は、照射後の粘膜炎などの活性酸素産生およびその結果を減少さ得る。さらに、メラトニンは、酸化ストレスによって誘導されるp38およびJNKを含むMAPKの増加をダウンレギュレートし得る。ある報告では、メラトニンのc−jun、c−fos、およびSTATのアップレギュレーションに対する阻害効果が炎症反応を改善することが示されている。このように、転写因子に対するメラトニンの調節効果は、放射線腫瘍学におけるメラトニンの免疫調節特性の良い証拠を構成し得る。
【0128】
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)は、放射線によって誘発される炎症に関与する最も重要な因子の一つであることが認められている。メラトニンはCOX−2の産生を抑制することができる。メラトニンおよびその代謝産物であるAFMK、そしてAMKがCOX−2およびiNOSの活性化を抑制し、PGE2および一酸化窒素を含むその生成物を減少させることによる抗炎症作用については、これまでにも検討が行われてきた。研究は、メラトニンがCOX−1には効果がなく、COX−2のみを選択的に阻害することを明らかにした。これは、メラトニンとその代謝物は、COX−1阻害による胃腸障害などの副作用の一部を伴わずに抗炎症剤として作用することを示唆した。メラトニンのこの抗炎症作用は、その抗酸化作用によるものではなく、他の経路が関与している。
【0129】
マクロファージによるNOの産生は、電離放射線による炎症および酸化損傷に関与する免疫系の微生物性である。メラトニンはマクロファージにおけるiNOSの発現を抑制し、NOの産生とその結果を減少させる。この効果は、STAT−1シグナル伝達の抑制と、NF−κB p50サブユニットの核内転座およびDNA結合活性の抑制を介したNF−κBシグナル伝達の阻害とにより、媒介され得る。PGE2およびNOの過剰産生は、炎症の開始と継続に重要な役割を果たしており、血管拡張、痛み、発熱、および浮腫を含むその症状にも関与する。NO産生の異常な増加は、DNA損傷、脂質過酸化、およびタンパク質酸化を引き起こすニトロ酸化ストレスをもたらす。この損傷は、NF−κBおよびMAPKなどの、慢性炎症を引き起こすいくつかの転写因子を誘導する。
【0130】
COX−2、iNOS、およびNADPHオキシダーゼなどの他の酵素は、酸化還元経路において重要である。これらの酵素は、放射線への曝露後のミトコンドリアなどの炎症および酸化還元系に関与する他の作用を有し、それらはそれによって誘発される酸化的損傷を増幅させる。メラトニンの抗酸化作用および抗炎症作用の両方が、COX−2、iNOS、およびNADPHオキシダーゼの阻害を引き起こす。メラトニンは、ROSおよびNOの両方を消し、過酸化物および過酸化窒素の形成を減衰させ、慢性炎症に関与する転写因子の発現を減少させる。
【0131】
エピジェネティックな調節は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害することで、COX−2およびiNOSの転写活性化に対するメラトニンの効果を抑制する。さらに、メラトニンは、酸化ストレスによって活性化されるNF−κBならびにJNK、ERK、およびp38などのMAPKの活性化をダウンレギュレートする。これらのメラトニンの作用は、TNF−αおよびIL−1βなどの炎症性メディエーターならびにCOX−2、PGE2、およびiNOSなどの抑制をもたらす。これらの酸化還元系に対する阻害効果は、照射後にそれらの活性を高め、電離放射線による毒性に対するメラトニンのその保護効果を発揮する方法の一つである。
【0132】
電離放射線に対する免疫応答の慢性的変化は、放射線療法の遅延効果の重要な例である。炎症性サイトカイン、ケモカイン、成長因子、接着分子、および免疫細胞浸潤の慢性的なアップレギュレーションなどの応答は、照射された組織の病理学的変化をもたらす。電離放射線によって誘発される病理学的損傷は、それらの正常な機能の障害をもたらす組織構造の不可逆的な変化として顕在化する。このような損傷は、曝露後数ヶ月から数年で現れる得る。
【0133】
NF−κB、炎症性サイトカインおよびケモカイン、VCAMおよびICAM−1などの接着分子、免疫細胞浸潤などの長期的なアップレギュレーションは、さまざまな病理学的損傷と関連する。皮膚、肺、心臓、脳、肝臓、腸、腎臓、脾臓、および結腸は、不可逆的な病理学的変化によって影響を受ける最も重要な組織である。電離放射線によって誘発される最も重要な病理学的変化は、肺炎、線維化、壊死、血管の拡張および閉塞、ならびに浮腫を含む。このような損傷は、細胞死および急性炎症などの初期反応が続く。これらの組織変化は、皮膚のバリア機能の変化、呼吸器機能の変化、心臓発作、胃腸障害などの疾患につながる。したがって、放射線に対する免疫系の反応を管理することは、放射線治療後の病理学的変化およびその結果のリスクを低減し得る。
【0134】
メラトニンは、電離放射線によって誘発される病理学的変化を改善し得る。メラトニンの局所投与および/または経口投与は、心臓、肺、耳下腺および顎下腺、腎臓、脊髄、水晶体、尿生殖器系などの様々な組織における慢性炎症および酸化的損傷、線維化、壊死、血栓、血管損傷、および免疫細胞数の増加などを予防または改善し得る。曝露前後の異なる時期にメラトニンを用いて電離放射線によって誘発される病理学的損傷を予防することは、有望な成果である。
【0135】
電離放射線に対する正常組織の保護に加えて、メラトニンが腫瘍の成長の阻害効果があることがいくつかの研究で報告されている。メラトニン投与および放射線治療または化学療法の相乗効果により、癌患者の生存率が向上し、また早期および晩期の副作用が改善され得る。
【0136】
メラトニンの抗癌作用は、腫瘍細胞の増殖および成長を阻害することによって生じる。この性質は、腫瘍細胞周期の阻害に関係し得る。細胞死の刺激および腫瘍細胞増殖の阻害は、再発の確率を低下させ、治療を強化する。メラトニンの抗増殖効果は、NF−κBの負の調節に関連し得る。この因子はサイクリンD1へのその直接作用により増殖効果を有する。また、メラトニンは、NF−κB p65の核内転座を阻害することで、カスパーゼ依存性アポトーシス経路の活性化、腫瘍壊死因子の増強、Bcl−2のダウンレギュレーション、生存によりアポトーシスを誘導する。例えば、ラモス細胞(ヒトバーキットリンパ腫B細胞)は、用量依存的なG1期の細胞周期停止とアポトーシスによって引き起こされるメラトニンに対して非常に敏感である。一方、MCF−7細胞のメラトニンは、TGF−β経路の関与を介して主に媒介される細胞周期の進行の遅延を誘導する。アポトーシスに加えて、メラトニンは、オートファジーおよび老化を含む癌細胞の他の細胞死経路を誘導し得る。
【0137】
血管新生は、腫瘍の成長および転移において極めて重要な役割を果たす。血管新生を阻害することは、放射線治療に対する癌の応答を改善するための有望なアプローチである。放射線治療に応答する腫瘍細胞内の炎症は、血管新生および腫瘍成長を誘発する異なる遺伝子のアップレギュレーションを刺激する。メラトニンは、ROS発生を消去し、HIF−1α、スフィンゴシンキナーゼ1、COX−2、および血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害することにより、血管新生を抑制し得る。また、メラトニンは、癌細胞の血管新生を強力に刺激する、インスリン様成長因子1(IGF−1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、およびエンドセリン1(ET−1)の阻害により、腫瘍細胞に対する成長因子の影響を低減し、メラトニンが胃癌細胞および腫瘍担持ヌードマウスモデルにおいて血管新生を阻害することが示された。その結果は、胃癌細胞における抗血管新生の主なメカニズムが、HIF−1α、VEGF、核内受容体RZR/RORγの発現を低下させることであることを示した。細胞およびマウスモデルを用いた乳癌の血管新生および腫瘍サイズに対するメラトニンの効果は有望である。SPECTイメージングを用いた腫瘍サイズの決定により、メラトニンによる治療は、マウスモデルで移植されたヒト乳癌の血管新生および腫瘍サイズを減少させることが示された。また、インビトロ研究では、メラトニンを用いると乳癌細胞の生存率が低下する。20人の転移患者を含む臨床研究では、メラトニンの投与はVEGF血中レベルの有意な低下をもたらしたが、進行した患者では効果は認められなかった。
【0138】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、腫瘍の成長および転移を抑制する上で重要な役割を持つ。NK細胞は広範囲の腫瘍細胞、特にリンパ腫および白血病由来の腫瘍細胞を死滅させる。研究は、メラトニンのNK細胞活性に対するプラス効果が確認された。マウスの免疫細胞集団に対するメラトニンの効果が評価され、脾臓および骨髄の両方でNK細胞集団が2週間上昇したままであったことが示された。これらの結果は、メラトニンがNK細胞の抗腫瘍機能を高めることを示唆する。
【0139】
NK細胞に対するメラトニンの刺激効果の正確なメカニズムは完全に定義されていないが、T細胞メラトニン受容体の刺激を介してIL−2産生を増加させることが提案された。
【0140】
ここでは、実施例および実験結果は、当業者が本発明を理解し、それを実施するために還元するのに役立つように提供される。しかし、そのような実施例および実験結果は単に例示的なものであり、本発明を限定することを意図したものではない。
【0141】
これらの実施例において、化合物6−HITC−60HMは、本発明の第4の態様の実施形態に関連して、本明細書に記載されているように合成された。Rf 0.87 (ジクロロメタン, 100%);1H NMRおよび13C NMRデータは、以前に報告された所見と一致する;Rf 0.87 (DCM, 100%);1H NMR (300MHz, CDCl3) δH 7.91 (1H, bs, NH), 7.20 (1H, d, J = 8.6Hz, H7), 7.01 (1H, d, J = 2.4Hz, H4), 6.91 (1H, d, J = 2.4Hz, H2), 6.81 (1H, dd, J = 2.4Hz, J = 8.6Hz, H6), 3.81 (1H, s, OCH3), 3.69 (2H, t, J = 6.8Hz, OCH2CH2NCS ), 3.06 (2H, t, J = 6.8Hz, OCH2CH2NCS);13C NMR (75MHz, CDCl3) δC 154.2, 131.4, 127.3, 123.8, 112.5, 112.2, 110.9, 56.1, 45.7, 26.5;HRMS (ES+) 質量測定。C12H12N2SO 232.0670について;測定[(M + H)+] 233.0740, 測定[(M + Na)+] 255.0567;分析. 計算. C12H12N2SOについて: C, 62.04;H, 5.21;N, 12.06, S, 13.80. 測定 C, 62.26;H, 5.38;N, 11.88;S, 13.56。
【0142】
本発明の実施形態による調製物は、ベルギーのAsterion Research & Development社により、動物モデルでインビボで実験的に研究された。これらの試験の結果は以下に記載される。
【0143】
実施例1:皮膚炎の治療および予防
ドイツのゲッティンゲン大学の動物繁殖遺伝学研究所から得られた雄のゲッティンゲンミニブタ(平均体重19kg;範囲、18〜20kg;年齢、6〜7ヶ月)を、これらの実験に使用した。ミニブタには、水道水、粗タンパク質、脂肪、繊維、および灰分、ならびにカルシウム、リン、および水分(それぞれ14.5、4、5、8、0.55、1、および14%)を含有する、ピュリナドイツ(Purina Germany)製の市販の実験用の子豚用餌(ピュリナ実験用子豚用餌−5085(Purina laboratory pig chow−5085))を与えた。加えて、抗生物質のサプリメントは使用しなかった。すべての動物実験は、ドイツ動物福祉法に準拠して実施した。
【0144】
局所投与に適した本発明の実施形態による製剤は、2.5mLの蒸留水に200mgのカルボポール(Carbopol 934P;Lubrizol, USA)を添加し、200mgの6OHM−6−HITCを2 mLのエタノールに可溶化することにより得られた。エタノール分散液の適量をカルボポールの水性分散液に移した。メタノール(1.25mL)をエタノール1mLと混合し、6OHM−6−HITCおよびカルボポールの混合物に加え、徐々に攪拌しながら、カルボポールを2時間浸漬させた。トリエタノールアミン(100mg;Sigma−Aldrich, USA)を加えてカルボポール溶液を中和し、ゲルを形成しやすくした後、pHを6.8に調整した。クリームと同じ成分および同じ方法でビヒクルクリームを調製したが、混合物から6OHM−6−HITCを省略した。この局所用ゲル製剤は、皮膚刺激または抗炎症作用を起こすことなく、6OHM−6−HITCの最高の浸透性をもたらした。局所治療としては、6OHM−6−HITCまたはビヒクルクリーム(濃度、200mg/cm)を1日2回、35日間、照射したブタの皮膚に塗布し、最初の塗布は照射直後に行った。
【0145】
ミニブタ(1群3匹)の皮膚へのガンマ線の影響を観察するために、背部皮膚を照射した。すべての処置について、動物はタイルタミン/ゾラゼパム(Zoletil 50;Virbac, Germany)およびメデトミジン(Domitol;Pfizer Animal Health Germany, Germany)で麻酔した。照射の3〜4日前に、動物の毛を曝露される部位から切り取り、曝露野の位置を墨汁を用いてマーキングし、入れ墨を入れた。照射野は、60Coガンマ線(Theratron 780;AECL, Canada)を用いて、130.1cGy/分の線量率で50Gyのガンマ線を照射した(照射野の大きさ、5×2cm、長方形;線源から皮膚までの距離、80cm;深さ1cm、ボーラス1cm)。利用可能な脇腹皮膚の面積に基づいて、図1に示すように、各ブタに50Gyの照射を行った。図2は、照射および逐次生検21のパンチ部位を示す。パンチ部位は、図1上で三角形のマーカーで示されている。
【0146】
照射5週間後はブタを毎週評価し、臨床状態スコアリングシステムを用いて皮膚反応の有無をスコアリングした。皮膚反応の有無および外観、ならびに手術痕の特徴を調べた。以前の皮膚損傷モデルに基づいて反応を測定するために、以下のスコアリングシステムを使用した:グレード1.0、正常な皮膚;グレード1.5、最小の紅斑およびわずかに乾燥性皮膚;グレード2.0、中等度の紅斑および乾燥肌;グレード2.5、著明な紅斑および乾燥性落屑;グレード3.0、乾燥性落屑および最小限の乾燥性痂皮形成;グレード3.5、乾燥性落屑、乾燥性痂皮形成、および最小限の表面的なかさぶた;グレード4.0、パッチ状の湿潤性落屑および中程度のかさぶた;グレード4.5、混和性湿潤性落屑、潰瘍、および大規模な深部のかさぶた;グレード5.0、開放性創傷および全層皮膚の損失;ならびにグレード5.5、壊死。
【0147】
非照射健常皮膚および照射3日後、7日後、21日後、35日後の照射された皮膚領域から、麻酔下で5mmのパンチ生検を行い、皮膚サンプルを採取した。採取後、皮膚生検サンプルをコルクにピンで固定し、5mmのサイズを維持した。照射前の非照射皮膚の生検サンプルを各ブタから採取した。すべての生検サンプルを処理し、10%緩衝ホルマリン中で固定した後、パラフィンワックス中に埋め込み、厚さ4μmの冠状切片に切断し、脱パラフィン化した。次に、切片をヘマトキシリンおよびエオジンで染色し、光学顕微鏡で調べた。各スライド上の最長のレテ隆起を選択し、包接物が斜めに見える領域を避けて、基底層の底から角層の底まで測定した。次いで、各スライド上の各セクションの測定値に基づいて平均値を算出した。基底層の細胞密度は、少なくとも5mmの深さの基底膜の細胞を数えることによって決定した。結果は、基底膜の1ミリ当たりの細胞数として表された。退化した細胞(すなわち、ピクノーシスおよび収縮壊死を示す細胞)は、これらの計算から除外した。
【0148】
非特異的結合を防止するために通常のウマ血清中で60分間インキュベートした後、皮膚切片はマウス抗核因子(NF)κB(sc−109, 1:200;Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)およびマウス抗COX−2(18−7379、1:200;Zymed, USA)でリン酸緩衝生理食塩水−Tween(PBS−T)中4℃において一晩インキュベートされた。続いて、切片をビオチン化ウマ抗マウスIgG(VECTASTAIN Elite ABC Kit;Vector Laboratories, USA)でインキュベートした。免疫反応性は、アビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(VECTASTAIN Elite ABC Kit;Vector Laboratories)を用いて評価した。ペルオキシダーゼ反応は、ジアミノベンジジン基質キット(DAB Substrate Kit SK−4100;Vector Laboratories)を用いて行った。対照として、各実験における少数の試験切片の免疫組織化学分析から一次抗体を省略した。切片は、次に、マウントされる前にヘマトキシリンで対比染色された。
【0149】
血液サンプルを、異なる時点(照射前、照射後3日、7日、21日、および35日)でエチレンジアミン四酢酸を含有するサンプルチューブに耳静脈を介して採取した。末梢好酸球を、Hemavetシステム(Drew Scientific, UK)を用いて自動的に計数した。
【0150】
データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)値として表された。グループ間の差は、Student−Newman−Keulsポストホック検定に続いて、多重比較のための分散の一元分析(ANOVA)によって評価された。すべての場合において、p<0.05が有意と考えられた。
【0151】
照射された皮膚の時間依存性の総体的変化は、照射後35日に、ビヒクルおよび6OHM−6−HITC処置したミニブタの両方で観察された。照射後1週間で、照射部位の皮膚に明赤色の紅斑を伴う落屑が認められた。この反応は照射後5週間で徐々に重症化し、持続的な湿潤性落屑と組織破壊が真皮まで進行した。ビヒクル処置されたミニブタと6OHM−6−HITC処置されたミニブタの両方で、照射後1週間の臨床変化を評価したところ、同様の変化が見られた。しかし、皮膚炎に対する6OHM−6−HITC治療の有益な効果は照射後2週間で現れた。6OHM−6−HITC処置群は、図3および図4に示すように、ビヒクル処置群に比べて皮膚反応の重症度の低下を示した。
【0152】
6OHM−6−HITC処置の有無にかかわらず、ブタの皮膚の基底細胞密度および上皮深さを評価するために、ヘマトキシリンおよびエオシン染色切片が調べられた。照射前に各ブタから採取した皮膚切片は正常な形態を示した。基底細胞密度および上皮層の厚さは、図5図6および図7に示すように、観察された臨床的変化の進行と並行して変化した。
【0153】
皮膚の放射線曝露は、照射後5週間まで表皮の基底細胞密度を徐々に低下させた。しかし、基底細胞数の減少は照射後21日および照射後35日において有意に改善された(それぞれp<0.01およびp<0.05対ビヒクル処置照射群;図6参照)。
【0154】
表皮の厚さは照射後5週間で徐々に減少した。しかし、6OHM−6−HITC処置は、おそらく基底細胞数を維持することにより、照射後35日のこの減少を抑制した(p<0.01対ビヒクル処置照射群)。これらの結果は、6OHM−6−HITCが照射されたブタの皮膚損傷を有意に緩和することを示唆する(図7参照)。
【0155】
正常な豚皮、すなわち未照射・未処置の状態では、図8に示すように、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の染色は、皮脂腺および皮下に若干の染色が見られたが、表皮には目に見える染色は見られなかった。COX−2の発現は照射された皮膚の表皮で検出可能であり、照射後1週間から3週間の間に評価したところ、それぞれ図9および図10に示すように、顆粒層および角質層でCOX−2が発現していることが明らかになった。照射後5週間後には、図11に示すように、すべての皮膚層でパッチ状の染色領域が観察された。しかし、照射された皮膚におけるCOX−2の発現は、図12図13および図14に示すように、6OHM−6−HITC処置した皮膚では、ビヒクル処置した皮膚よりも低かった。
【0156】
正常な豚皮では、NF−κB染色は最小限に見られ、皮脂腺、毛包、および表皮に若干の染色が見られた。また、NF−κBは表皮の基底レベルの細胞質領域で発現していたが、核染色は検出されなかった(図15)。それぞれ図16および図17に示すように、照射された皮膚のNF−κB発現は照射後1〜2週間で増加していた。さらに、図18に示すように、照射後3週間では全表皮層で細胞質のびまん性染色が観察されたが、5週間後には核染色が検出された。それぞれ図19図20および図21で見られ得るように、6OHM−6−HITC処置された照射された皮膚では、NF−κB発現はビヒクル処置された照射された皮膚よりも低く、核発現は急速に減少した。局所放射線曝露は、好中球およびリンパ球を含む末梢血の白血球数を暴露後7日において一過性に減少させた。6OHM−6−HITC処置群の末梢血サンプルを分析しても、当初は6OHM−6−HITCの放射線保護効果は認められなかった。しかし、照射後21日および35日目では、局所放射線誘発性皮膚炎症により末梢血の好中球数が増加した。図22から図27に示すように、逆に、6OHM−6−HITC処置群は、血中の好中球および好酸球の減少を示したが、減少は有意ではなく、6OHM−6−HITCが放射線誘発皮膚炎症を軽減したことを示唆している。生検傷の治癒は時間の経過とともに進行し、照射前には皮膚傷の着実な治癒が観察された。正常な皮膚では生検傷は6日から12日以内に治癒したが、生検病変は照射後3日には治癒していないようであった。照射後の様々な時点で観察されるように、皮膚を照射に曝露させると創傷治癒は著しく遅くなった。しかしながら、図28および図29に示されるように、6OHM−6−HITC処置は、照射後3日における生検傷の放射線誘発性治癒の遅延を低減させた。
【0157】
実施例2:粘膜炎の治療および予防
本発明の実施形態を説明するための第2の実施例では、ドイツのゲッティンゲン大学動物繁殖遺伝学研究所から入手した6週齢のICRマウス(30〜40g)を使用した。動物は、22±2℃に維持された部屋で、午前7時に点灯した12時間の明暗サイクルの下で収容された。マウスには標準的なげっ歯類の食事を与え、水を自由に摂取させた。加えて、抗生物質のサプリメントは使用しなかった。すべての動物実験は、ドイツ動物福祉法に準拠して実施した。マウス(1群あたりn=20)に麻酔(ペントバルビタールナトリウム、50mg/kg体重、i.p.)をかけた後、放射線を照射した。マウスは舌の先端だけを照射する必要があったので、体の残りの部分は鉛装置(厚さ0.5mm)で保護された。舌を粘着テープを用いて鉛装置の外面に固定し、1回の放射線量20Gyを照射した。放射線は、焦点距離350mmの150kV電位(20mA)X線源を使用して生成され、1.0mmアルミニウムろ過システム(MBR−1520R−3;Hitachi, Tokyo, Japan)によってビーム硬化された。線量率は5.1Gy/分であった。6OHM−6−HITC化合物を少量の1MのNaOH溶液に溶解した。pHを1MのHClで7に調整した。0.9%(生理的)食塩水で3mg/mLまたは15mg/mLの濃度に調整した。照射後、体重を記録し、毎日舌の観察を行った。6OHM−6−HITCを照射30分前に腹腔内経路で注射した。対照群は照射したが、6OHM−6−HITC化合物を投与しなかった。
【0158】
口腔粘膜炎のスコアリングは、Sonisらの方法を修正したものを用いた。口腔粘膜炎の重症度を評価するために、マウスを毎日イソフルランで麻酔した。口腔粘膜炎スコアは以下の通りであった:0=正常;1=部分的な充血、発赤および腫脹;2=全身の充血、発赤および腫脹;3=表皮融解、充血および発赤;4=広範囲の表皮融解および出血;5=出血および膿瘍。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性は、炎症を起こした組織における好中球のマーカーである。MPO活性は、Chenらの方法を改変して使用してマウスの舌で測定した。照射後2日でマウスを頸椎脱臼で死滅させた後、舌サンプル(各群n=10)を取り出し、アッセイに必要とされるまで−70℃で保存した。サンプルを秤量し、0.5%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(Sigma−Aldrich, Germany)を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6)の10容量中で1分間ホモジナイズした。ホモジネートを3回凍結融解した後、それらを4℃で10,0000×g、15分間遠心分離した。上清を回収し、50mMリン酸緩衝液(pH6)中の0.167mg/mL o−ジアニシジンジヒドロクロライド(Wako Biochemicals)および0.0005%H2O2(Wako Biochemicals)で反応させた。MPO活性は、マイクロプレートリーダー(NJ−2300;Biotec, Tokyo, Japan)を用いて450nmで測定した。MPO活性は、MPO標準物質(Wako Biochemicals)を用いて較正した吸光度の傾きを測定して算出され、MPO/g舌として表した。TBARSは、生物学的サンプル中に自然に存在する。これらは、酸化ストレスに応答して濃度が上昇する脂質ヒドロペルオキシドおよびアルデヒドを含む。照射後12日で頸椎脱臼でマウスを死滅させた後、舌サンプル(各群n=10)を除去し、アッセイに必要とされるまで−70℃で保存した。サンプルを秤量し、舌100mgあたり0.5〜1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でホモジナイズした。サンプルを1500×g、4℃で10分間遠心分離した。上清を回収し、アッセイ緩衝液で希釈した。TBARSレベルは、マイクロプレートリーダー(Biotec)を用いて540nmで測定した。TBARSレベルは、TBARS標準物質を用いて較正した吸光度の傾きを測定して算出され、TBARS/g舌として表した。さらに、照射後12日でマウスを死滅させた後、病理組織学的分析のために舌を除去した。標本は10%中性緩衝ホルマリンで固定し、脱水してパラフィン(Wako Biochemicals)に埋め込んだ。組織切片を得て、ヘマトキシリン&エオジン(H&E)で染色し、光顕微鏡下(倍率200倍)で調べた。照射12日でマウスを死滅させた後、免疫組織化学的(IHC)分析のために舌を除去した。パラフィン包埋組織切片をTUNEL染色に使用した(倍率400倍)。脱パラフィン化、水和、およびタンパク質消化を行った。その後、DNAの3末端を100μL(または50μL)のTdT反応液で37℃で10分間標識した。切片をPBSで洗浄し、PODコンジュゲート抗体で標識した。室温で5分間、100μLの3,3’−ジアミノベンジジン溶液1を用いて発色現像を行い、次いで二重蒸留水で洗浄し、カウンター染色を行った。これらの動作を行った後、脱水、洗浄、取り付け、および光顕微鏡下での検査を行った。舌先のTUNEL陽性細胞数を計数し、パーセンテージで表した。結果は、平均および平均の標準誤差、または平均値によって報告される。データは、一方向分散分析(ANOVA)を用いて分析され、その後Steel−Dwass検定を行った。P<0.05は有意と考えられた。照射後の体重を毎日測定した。
【0159】
マウスの舌に20Gyを照射すると、12日で最大の体重減少を示した。12日以降は、図30に示すように体重が増加した。食物および水の摂取量も減少し、体重減少を伴っていた。図31は、6OHM−6−HITC(30および300mg/kg)の用量依存性を示す。12日以降、生存したマウスの数が減少した。生存率に有意差は認められなかった。300mg/kgの6OHM−6−HITCではマウスに行動障害は認められなかった。マウスの舌の病理学的変化を巨視的および組織学的手段により評価した。図32は、口腔粘膜炎のスコアリングを示す。口腔粘膜炎は7日間観察されなかったが、8日目で発症した重症度スコアは12日目に最大値に達した。その後,時間の経過とともにスコアは低下した。300mg/kg投与群の6OHM−6−HITCの口腔粘膜炎スコアは、10日目および12日目に対照群のそれと比べて有意に低かった。30および300mg/kgにおける6OHM−6−HITCの0日目および12日目の間の合計スコアは、それぞれ対照群のそれらよりも有意に低かった(図33)。舌サンプルの病理組織学的切片を図34に示す。対照群では、舌の表皮溶解が観察された。しかし、6OHM−6−HITC群では、表皮溶解の程度は維持され、炎症細胞の浸潤は減少した。放射線による細胞傷害を確認するためにTUNEL染色を行った。図35にアポトーシスを評価するためのTUNEL染色写真を示す。対照群ではかなりのアポトーシスが認められた(23.7%のTUNEL陽性細胞)。一方、30mg/kgおよび300mg/kgの6OHM−6−HITCでの処置後で、TUNEL陽性細胞のパーセンテージはそれぞれ9.9%および8.6%に減少した(図36も参照)。MPO活性およびTBARSレベルを照射12日後に測定した。30および300mg/kgでの6OHM−6−HITC投与群におけるMPO活性は、対照群のそれらと比較して有意に低かった(図37参照)。30および300mg/kgでの6OHM−6−HITC投与群のTBARSレベルは、対照群のそれらに比べて低く、6OHM−6−HITC(300mg/kg)は対照群のそれと比べて有意に低下した(図38参照)。
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【国際調査報告】