【課題を解決するための手段】
【0010】
技術的課題は、特許請求の範囲及び以下に記載される実施形態によって解決される。
【0011】
したがって、本発明は、細菌カンジダタス・サバゲラの抗原に結合して、(i)該細菌の腸上皮細胞、好ましくはヒト腸上皮細胞への付着を阻害する及び/又は(ii)該細菌を減少させる抗体又はその抗原結合性フラグメントに関する。好ましくは、該抗体又はその抗原結合性フラグメントは、細菌カンジダタス・サバゲラの抗原に結合して、該細菌の腸上皮細胞、好ましくはヒト腸上皮細胞への付着を阻害し、該細菌を減少させる。
【0012】
本発明による抗体又はその抗原結合性フラグメントは、細菌カンジダタス・サバゲラ(英語で「segmented filamentous bacteria」、SFB)の抗原、好ましくは細菌壁タンパク質に特異的に結合する。
【0013】
この場合に抗原は、本発明による抗体又はその抗原結合性フラグメントの結合により細菌の腸上皮細胞への付着が阻害されるか又は細菌が減少するように選択される。本発明による抗体又はその抗原結合性フラグメントが抗原に結合すると、細菌の増殖も阻害され得る。これらのメカニズムの組合せも本発明の意味の範囲内に含まれる。例えば、抗原は、本発明による抗体が細菌カンジダタス・サバゲラの抗原に結合し、該細菌の腸上皮細胞への付着を阻害し、該細菌を減少させるように選択され得る。代替的に、抗原は、本発明による抗体が細菌カンジダタス・サバゲラの抗原に結合し、該細菌の腸上皮細胞への付着を阻害し、該細菌の増殖を阻害するように選択され得る。また、3つ全てのメカニズムの組合せも含まれているので、抗原は、本発明による抗体又は抗原結合性フラグメントが細菌カンジダタス・サバゲラの抗原に結合し、該細菌の腸上皮細胞への付着を阻害し、該細菌の増殖を阻害し、該細菌を減少させるように決定されている。
【0014】
Fraunhofer細胞療法・免疫学研究所(IZI)及び毒物学・実験医学研究所(ITEM)で実施された研究では、SFBのコロニー形成密度が経口抗体治療によって低下し得ること、及びこの特定の微生物叢の矯正が免疫介在性疾患の範囲における免疫寛容につながることを示すことができた。SFB特異的抗体はSFBタンパク質で免疫されたニワトリの卵から取得されたものであり、この方法は、更にまた特別の酸安定性を有するため経口治療に良好に適した結合力の強い抗体を迅速かつ非常に安価に作製することを可能にする[5]。
【0015】
本発明の基礎となる概念は
図1に図説されている:糸状カンジダタス・サバゲラ細菌(「segmented filamentous bacteria」、SFB)は腸壁にコロニー形成し、樹状細胞を介して自己免疫病及びアトピーに寄与するTh17細胞を活性化する。最初に上述の細菌の適切な細菌壁タンパク質を特定し、合成し、ニワトリに注射する。これらのニワトリは高特異的な中和抗SFB抗体を形成し、該抗体は卵から単離することができ、経口抗体療法に利用可能である。腸内のSFB菌数が低減するとTh17エフェクター細胞活性の低減が引き起こされ、したがって免疫寛容に導かれ得る。
【0016】
経口投与された抗体によるSFBの特異的中和は、実質的に抗体の循環への移行が起こらないため、抗体療法の頻繁な副作用、又は例えばアレルギー性気道疾患に対するデキサメタゾンで観察されるような副作用が回避され得るという大きな利点を有する。腸病原性ウイルス[14]、真菌[15]及び細菌[16、17]の低減のための抗体の経口利用の成功例は既に記載されている。しかしながら、免疫調節を目的とした経口抗体療法は、これまで免疫系を直接標的としてのみ実施されてきた。これについての成功例はT細胞表面タンパク質CD3に対する抗体の利用である([18]、US7,883,703B2)。
【0017】
本発明の本質的な利点は、免疫されたニワトリの卵由来の治療用IgY抗体を使用することである。この方法により多くの利点がもたらされる:製造が非常に安価であることに加えて、抗体を迅速かつ大量に生産することができる。IgYはIgGよりも耐酸性が高いため、経口投与に特に良好に適している。ニワトリは年間最大30gの純粋な抗体を産生することができ、それに加えてその抗体は高い結合強度を有する。最後に、IgYは哺乳動物のIgGとは異なるFc領域を有するため、レシピエント補体系の活性化による副作用は起こらない[5]。
【0018】
「概念実証」実験では、抗SFB IgY抗体の経口投与が、腸内SFBコロニー形成の相関があるSFB排泄の明らかな低減をもたらすことを既に立証することができた。この微生物叢の変化の治療的関連性の示唆は、アレルギー性気道疾患の動物モデルにおいて最終的に観察された(Fraunhofer毒物学・実験医学研究所(ITEM)):腸内SFBコロニー形成の低減は標準的治療薬のデキサメタゾンと同程度で肺への炎症性細胞浸潤の減弱化をもたらした。
【0019】
細菌カンジダタス・サバゲラ(SFB)のIgY抗体媒介性の阻害は免疫介在性疾患に直接的な影響を及ぼし得る。この場合に、免疫疾患、例えば多発性硬化症、関節リウマチ及びアレルギー性喘息は、Th17免疫細胞の活性によってかなり決定される。しかし、Th17活性によって決定される他の免疫疾患又は腫瘍性疾患もSFBの減少によって予防的又は治療的に処置することができる。
【0020】
これらのIgY抗体の使用は、免疫介在性疾患、とりわけTh17依存性疾患の予防又は治療用の医薬として考慮することができる。これは微生物叢矯正用の治療薬であるということになる。この場合これは「機能性食品」又は「栄養補助食品」としても使用することができるため、場合により、例えば「新規食品」としての大幅に簡易化された承認の可能性がある。
【0021】
本発明による抗体の使用は、好ましくは人間での経口投与のために意図されている。
【0022】
細菌「カンジダタス・サバゲラ」(英語で「segmented filamentous bacteria」、SFB)は、例えばSchnupfら(Curr Opin Microbiol. 2017 Feb; 35: 100-109. doi: 10.1016/j.mib.2017.03.004. Epub 2017 Apr 25、Semin Immunol. 2013 Nov 30; 25(5): 342-51. doi: 10.1016/j.smim.2013.09.001. Epub 2013 Oct 31)によって、並びにUS2012/276149及びWO2011/047153において記載されている。
【0023】
本発明による抗体又は該抗体の抗原結合性フラグメントが特異的に結合する細菌カンジダタス・サバゲラの「抗原」は、該細菌の腸上皮細胞、好ましくはヒト腸上皮細胞への付着、該細菌の増殖に関与し、及び/又は該細菌の減少、つまり死滅を介在する。カンジダタス・サバゲラ細菌由来の適切な抗原は、機能決定する「セグメント糸状細菌」(SFB)特異的タンパク質の群から選択される。このようなタンパク質は、例えば、該タンパク質が細菌壁に位置し(細菌壁タンパク質)、カンジダタス・サバゲラ又は「セグメント糸状細菌」(SFB)の腸上皮への付着及び/又はその生存に不可欠な又は極めて独特な役割を担うということにより特徴付けられる。
【0024】
上述の細菌由来の適切な抗原は、例えば以下により詳細に記載される「ミオシン交差反応性抗原」(MCRA)タンパク質であり、そのアミノ酸配列は配列番号1に示されている。「ミオシン交差反応性抗原」(MCRA)タンパク質からの特異的エピトープは、例えばアミノ酸配列SVLDEFYWLDKKDPYSL(配列番号2)、PDFKAVRFTRRNQYESMI(配列番号3)又はQATSIKILRDGKEEEIKL(配列番号4)を含む。
【0025】
本発明による抗体又はそのフラグメントの細菌カンジダタス・サバゲラ由来の抗原への「特異的結合」は、抗体の結合特性、例えば結合親和性、結合特異性及び結合アビディティーを言い表しており、例えばDavid J. King、Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies、pp. 240 (1998)を参照のこと。抗原-抗体相互作用の詳細な分析は、例えば表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance、SPR)により可能である。抗体とその抗原との結合特性の動態特性評価は、様々な方法へのそれらの適用可能性を評価し得るための不可欠な前提条件である。結合強度(親和性、KD値)に加えて、会合に関する速度定数(kass)及び解離に関する速度定数(kdiss)も決定される。それにより複合体の形成速度及び崩壊速度について述べることもできる。これらの情報は診断的、生物工学的又は治療的用途における本発明による抗体の効率を評価し、それらの用途における工程を最適化し得る手助けとなる。特異的結合に関する上述の用語及び略語はそれらの標準的な意味で使用される。
【0026】
「抗体」という用語はポリクローナル抗体とモノクローナル抗体(mAb)の両方を包含し、該抗体は以下に記載されるように改変されていてもよい。抗体は細菌カンジダタス・サバゲラの抗原に特異的に結合し、好ましくは中和抗体である。
【0027】
その場合に「中和抗体」は、抗体による細菌カンジダタス・サバゲラの(好ましくはヒト)腸上皮細胞への付着若しくは結合の阻害、上述の細菌の増殖の阻害及び/又は該細菌の減少若しくは死滅を指す。
【0028】
細菌カンジダタス・サバゲラの「中和」は、in-vitro調査で測定されて、上述の細菌の腸上皮細胞への付着若しくは結合、又は細菌の増殖の少なくとも50%、60%、70%若しくは75%、好ましくは80%若しくは85%、特に好ましくは90%若しくは95%の阻害、或いは該細菌の総数又は集団の少なくとも50%、60%、70%又は75%、好ましくは80%又は85%、特に好ましくは90%又は95%が減少することを指す。
【0029】
「改変抗体」とは、選択された宿主細胞での発現によって取得することができる改変された免疫グロブリンコード領域によってコードされるタンパク質を指す。そのような改変抗体には、遺伝子改変で製造された抗体(例えば、キメラ、再構成(umgeformt)、ヒト化又はベクター化(vektorisiert)抗体)又は免疫グロブリン定常領域の全て若しくは一部を欠く抗体フラグメント、例えばFv、Fab若しくはF(ab)
2等が含まれる。
【0030】
「改変された免疫グロブリンコード領域」とは、改変抗体をコードする核酸配列を指す。改変抗体がCDRグラフト又はヒト化抗体である場合に、非ヒト免疫グロブリン、例えばニワトリ抗体由来の相補性決定領域(CDR)をコードする配列が、ヒト可変フレームワーク配列を含む第1の免疫グロブリンパートナーへと挿入される。場合により、第1の免疫グロブリンパートナーを第2の免疫グロブリンパートナーと作動可能に連結させて、例えば二重特異性抗体が製造される。
【0031】
「第1の免疫グロブリンパートナー」とは、天然の(すなわち天然に存在する)CDRコード領域がドナー抗体、例えばニワトリ抗体のCDRコード領域によって置き換えられているヒトフレームワーク領域又はヒト免疫グロブリンの可変領域をコードする核酸配列を指す。ヒト可変領域は免疫グロブリンの重鎖、軽鎖(又は両方の鎖)、それらの類似体又は機能的フラグメントであり得る。抗体(免疫グロブリン)の可変領域内にあるこのようなCDR領域は、当該技術分野で公知の方法によって決定され得る。例えばKabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest、第4版、U.S. Department of Health and Human Services、National Institutes of Health (1987))はCDRの位置決めのための規則を開示している。更に、CDR領域/構造を特定するのに有益なコンピュータープログラムが公知である。
【0032】
「第2の免疫グロブリンパートナー」とは、第1の免疫グロブリンパートナーがインフレームで又は任意選択の慣用のリンカー配列によって融合された(すなわち作動可能に連結された)タンパク質又はペプチドをコードするもう1つのヌクレオチド配列を指す。好ましくは、第2の免疫グロブリンパートナーは免疫グロブリン遺伝子である。第2の免疫グロブリンパートナーには、対象の同じ(すなわち同種-第1及び第2の改変抗体は同じ起源に由来する)又は追加的(すなわち異種)抗体に関する定常領域全体をコードする核酸配列が含まれ得る。第2の免疫グロブリンパートナーは免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖(又は単独のポリペプチドの部分としての両方の鎖)であり得る。第2の免疫グロブリンパートナーは特別の免疫グロブリンクラス又はアイソタイプには限定されない。更に、第2の免疫グロブリンパートナーは、Fab又はF(ab)
2中に見られるような免疫グロブリンの定常領域の一部、すなわちヒト定常領域又はフレームワーク領域の別個の部分を含み得る。このような第2の免疫グロブリンパートナーはまた、例えばファージディスプレイライブラリーの一部として宿主細胞の外表面上に露出した内在性膜タンパク質をコードする配列又は分析的若しくは診断的検出用のタンパク質、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ等をコードする配列を含み得る。
【0033】
Fv、Fc、Fd、Fab又はF(ab)
2という用語は、それらの標準的な意味で使用される(例えばHarlowら、Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory (1988)を参照)。
【0034】
本明細書で使用される場合に「遺伝子改変で製造された抗体」は、改変抗体のタイプ、すなわち選択されたアクセプター抗体の軽鎖及び/又は重鎖の可変ドメインの一部が、選択されたエピトープに対する特異性を有する1つ以上のドナー抗体(例えばニワトリ抗体)由来の類似の部分によって置き換えられた全長の合成抗体(例えば抗体フラグメントとは対照的にキメラ、未構成又はヒト化抗体)を記載している。例えば、このような分子には、非改変型の軽鎖(若しくはキメラ軽鎖)と会合されたヒト化重鎖又はその逆を特徴とする抗体が含まれ得る。遺伝子改変で製造された抗体はまた、例えばニワトリ抗体のドナー抗体結合特異性を維持するようにアクセプター抗体の軽可変及び/又は重可変ドメインのフレームワーク領域をコードする核酸配列を改変することも特徴とし得る。これらの抗体はアクセプター抗体由来の1つ(例えばCDR-H3)又は複数のCDR(好ましくは全てのCDR、すなわちCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)を本明細書に記載されるドナー抗体、すなわちニワトリ抗体由来のCDRと交換することを含み得る。
【0035】
「キメラ抗体」とは、ドナー抗体(例えばニワトリ抗体)由来の天然に存在する可変領域(軽鎖及び重鎖)をアクセプター抗体由来の軽鎖及び重鎖の定常領域と連結して含む、遺伝子改変で製造された抗体のタイプを指す。
【0036】
「ヒト化抗体」とは、CDRが非ヒトドナー免疫グロブリン、例えばニワトリ抗体に由来し、免疫グロブリンに由来する分子の残りの部分が1つ(又は複数)のヒト免疫グロブリンに由来する、遺伝子改変で製造された抗体のタイプを指す。更に、結合親和性を保持するようにフレームワーク支持残基が改変されていてもよい(例えばQueenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86: 10029-10032 (1989)、Hodgsonら、Bio/Technology、9:421 (1991)を参照)。
【0037】
抗体に薬剤を結合させて、例えば腸への輸送を改善することができる。その場合に、例えば抗体に結合された薬剤によって、腸内の輸送タンパク質が能動的又は受動的に影響され得る。結合は化学的であってもよく、又は代替的にその単位が遺伝子改変で抗体に組み込まれてもよい。
【0038】
「ドナー抗体」という用語は、第1の免疫グロブリンパートナーにその可変領域、CDR又は他の機能的フラグメント若しくはそれらの類似体の核酸配列を付与して、改変された免疫グロブリンコード領域及び取得される発現された改変抗体に、ドナー抗体、例えばニワトリ抗体の抗原特異性及び中和活性特性を与える抗体(モノクローナル又は組換え)を指す。
【0039】
「アクセプター抗体」という用語は、重鎖及び/若しくは軽鎖のそれらのフレームワーク領域並びに/又は重鎖及び/若しくは軽鎖のそれらの定常領域をコードする全ての(又は一部であるが、好ましくは全ての)核酸配列を第1の免疫グロブリンパートナーに付与する、ドナー抗体にとって異種である抗体(モノクローナル又は組換え)を指す。好ましくは、アクセプター抗体はヒト抗体である。
【0040】
「CDR」は、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域のアミノ酸配列として定義される。例えばKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第4版、U.S. Department of Health and Human Services、National Institutes of Health (1987)を参照のこと。免疫グロブリンの可変部分には3つの重鎖のCDR(CDR-H1、-2及び-3)及び3つの軽鎖のCDR(CDR-L1、-2及び-3)(又はCDR領域)が存在する。こうして「CDR」は、本明細書で使用される場合に3つ全ての重鎖のCDR又は3つ全ての軽鎖のCDR(又は適切であれば全ての重鎖のCDRと全ての軽鎖のCDRの両方)を指す。抗体の構造及びタンパク質フォールディングは、他の残基が抗原結合領域の一部とみなされ、当業者によってそのように理解されるであろうことを意味し得る。例えばChothiaら(1989)、Conformations of immunoglobulin hypervariable regions; Nature 342、第877頁〜第883頁を参照のこと。
【0041】
CDRは抗体が抗原又はエピトープに結合するための接触残基の大部分を与える。本発明における対象のCDRはドナー抗体、例えばニワトリ抗体の可変重鎖及び軽鎖の配列に由来し、天然に存在するCDRの類似体を含み、類似体は元となるドナー抗体と同じ抗原結合特異性及び/又は中和能力を共有するか又は維持する。
【0042】
「機能的フラグメント」は、該フラグメントの元となる抗体と同じ抗原結合特異性及び/又は中和能力を維持する重鎖又は軽鎖の部分的な可変配列(例えば免疫グロブリンの可変領域のアミノ又はカルボキシ末端でのわずかな欠失)である。
【0043】
「類似体」は、少なくとも1つのアミノ酸で改変されたアミノ酸配列であり、この改変は化学的、又はほんの数個のアミノ酸(すなわち好ましくは10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個以下のアミノ酸残基)の置換若しくは再配置であってもよく、このアミノ酸配列の改変により非改変配列の生物学的特性、例えば抗原特異性及び高親和性を保持することができる。例えば、特定のエンドヌクレアーゼ制限部位がCDRコード領域の範囲内又はそれらを取り囲んで作られている場合に、置換によって(サイレント)突然変異を構築することができる。本発明は本発明の抗体の類似体の使用を企図している。アミノ酸又は核酸配列のわずかな改変が、例えば本質的に同様の特性を維持する当初のタンパク質のアレル形をもたらし得ることは一般的に公知である。したがって、本発明の抗体の類似体には、重鎖及び軽鎖の超可変領域におけるCDRがCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3として上記で定義されるCDRに対して少なくとも80%相同、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%相同、特に好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%相同であり、細菌カンジダタス・サバゲラの抗原への特異的結合及び中和活性を維持している類似体が含まれる。アミノ酸配列は、配列が最適に整列されており、ギャップ又は挿入を非同一残基として数えるときに配列が同様の位置に80%の同一のアミノ酸残基を有する場合に少なくとも80%相同である。配列同一性を決定するアルゴリズム及び配列比較のためのプログラムは従来技術で周知である。
【0044】
類似体はアレル変異として生じる場合もある。「アレル変異又は改変」は核酸配列における改変である。そのような変異又は改変は、遺伝暗号の縮重に起因し得るか、又は所望の特性をもたらすために意図的に遺伝子改変で若しくは組換えにより製造し得る。これらの変異及び改変はコードされたアミノ酸配列における改変をもたらし得るか又はもたらし得ない。
【0045】
「エフェクター剤」という用語は、改変抗体及び/又はドナー抗体、例えばニワトリ抗体の天然若しくは合成の軽鎖若しくは重鎖又はドナー抗体の他のフラグメントが慣用の手段によって会合され得る非タンパク質の担体分子を指す。そのような非タンパク質担体は、診断分野で使用される慣用の担体、例えばポリスチレン若しくは他のプラスチックビーズ、例えばBIAcoreシステム(Phamacia)で使用されるような多糖類、又は医療分野で有用であり、人間及び動物に投与するのに安全な他の非タンパク質物質を含み得る。他のエフェクター剤は、重金属原子又は放射性同位元素を錯化する大環状化合物を含み得る。そのようなエフェクター剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)は改変抗体の半減期を増加させるのにも有用であり得る。
【0046】
細菌カンジダタス・サバゲラに特異的な中和抗体は、これまでまだ従来技術には記載されておらず、本発明によって初めて提供される。
【0047】
本発明の更なる一態様は、本発明による抗体を薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0048】
当業者に周知のように、抗体、改変された抗体及びフラグメントは非ヒト種(例えばウシ、ヒツジ、サル、ニワトリ、齧歯類動物(例えば、マウス、ハムスター及びラット)等)を免疫化して構築することができ、こうして細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然又は組換え抗原に対して交差反応性である抗体が産生され得るあらゆる種、例えば人間又はニワトリから、細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然又は組換え抗原での提示の際に望ましい免疫グロブリンが産生される。慣用のハイブリドーマ技術を使用して、細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然抗原に対する非ヒトモノクローナル抗体、例えばニワトリ抗体を分泌するハイブリドーマ細胞系統が提供される。次いで、そのようなハイブリドーマを384個又は96個のウェルを有するプレートに施与された細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然若しくは組換え抗原を使用して(ここで細菌カンジダタス・サバゲラ由来のビオチニル化された天然又は組換え抗原がストレプトアビジン被覆されたプレートに結合されている)又は均質なヨーロピウム-APC結合イムノアッセイにおいて細菌カンジダタス・サバゲラ由来のビオチニル化された天然若しくは組換え抗原を使用して、結合についてスクリーニングする。
【0049】
天然のヒト抗体は、例えばヒト抗体-マウス、例えばマウスの免疫グロブリン遺伝子を取り除き、ヒト免疫グロブリンをコードする遺伝子をマウス染色体に挿入した「ゼノマウス」(Abgenix)において産生され得る。マウスは正常に免疫化され、ヒト遺伝子に由来する抗体反応を発生する。したがって該マウスは、陽性ハイブリドーマの選択の後にヒト化する必要性を回避してヒト抗体を産生する(L.L. Green、J. Immunol. Methods、10. Dez. 1999; 231 (1-2):11-23を参照)。
【0050】
Fabフラグメントは、軽鎖全体及び重鎖のアミノ末端部分を含み、F(ab')
2フラグメントはジスルフィド結合によって結合された2つのFabフラグメントによって形成されたフラグメントである。Fabフラグメント及びF(ab')
2フラグメントは慣用の手段、例えば適切なタンパク質分解酵素のパパイン及び/又はペプシンによるモノクローナル抗体(mAb)の切断によって又は組換え法によって取得することができる。Fab及びF(ab')
2フラグメントはそれ自体で治療薬又は予防薬として、並びに本明細書に記載される組換え若しくはヒト化抗体の形成に有用な可変領域及びCDR配列を含む配列についてのドナーとして有用である。
【0051】
Fab及びF(ab')
2フラグメントは、コンビナトリアルファージライブラリーを介して(例えばWinterら、Ann. Rev. Immunol.、12:433-455 (1994)を参照)又は免疫グロブリンのチェーンシャフリング(「chain shuffling」)を介して(例えばMarksら、Bio Technology、10:779-783 (1992)を参照)構築することもできる。
【0052】
こうして、細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然又は組換え抗原に対して特異的なヒト抗体フラグメント(Fv、scFv、Fab)をヒト抗体フラグメント-ファージディスプレイライブラリーを使用して単離することができる。ヒト抗体フラグメントタンパク質を提示するバクテリオファージ粒子のライブラリーを細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然又は組換え抗原に対して試験する。細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然又は組換え抗原に結合する抗体フラグメントを提示するファージをライブラリーから確保し、クローニングにより増幅させる。次いで、ヒト抗体遺伝子を特定のバクテリオファージから切り出し、ヒトIgGの定常領域を含むヒトIgG発現コンストラクトに挿入して、細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然又は組換え抗原に対して特異的な単離されたバクテリオファージから可変領域を有するインタクトなヒトIgG分子を形成させる。
【0053】
ドナー抗体は、配列、例えば可変重鎖及び/又は可変軽鎖のペプチド配列、フレームワーク配列、CDR配列、それらの機能的フラグメント及び類似体、並びにそれらをコードする、ドナー抗体、例えばニワトリ抗体の抗原結合特異性を特徴とする様々な改変抗体の構築及び取得に有用である核酸配列を付与することができる。
【0054】
遺伝暗号の縮重を考慮して、ドナー抗体、例えばニワトリ抗体の抗原特異性を共有する可変重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列、並びにCDR配列並びにそれらの機能的フラグメント及び類似体をコードする様々なコード配列を構築することができる。可変鎖又はCDRのペプチド配列をコードする単離された核酸配列又はそれらのフラグメントを使用して、これらを第2の免疫グロブリンパートナーと作動可能に組み合わせる場合、改変抗体、例えばキメラ若しくはヒト化抗体又は他の遺伝子改変で製造された抗体を産生することができる。
【0055】
改変された免疫グロブリン分子は、遺伝子改変抗体、例えばキメラ抗体及びヒト化抗体を含む改変抗体をコードし得る。所望の改変された免疫グロブリンコード領域は、第1の免疫グロブリンパートナー(ヒトフレームワーク領域又はヒト免疫グロブリンの可変領域)中に挿入された抗カンジダタス・サバゲラ抗原抗体、好ましくは高親和性抗体の抗原特異性を有するペプチドをコードするCDRコード領域を含む。
【0056】
好ましくは、第1の免疫グロブリンパートナーは第2の免疫グロブリンパートナーと作動可能に連結される。第2の免疫グロブリンパートナーは上記に定義されており、対象の第2の抗体領域、例えばFc領域をコードする配列を含み得る。第2の免疫グロブリンパートナーは、軽鎖又は重鎖の定常領域がインフレームで又はリンカー配列によって融合された別の免疫グロブリンをコードする配列も含み得る。細菌カンジダタス・サバゲラ由来の天然又は組換え抗原の機能的フラグメント又は類似体に向けられた遺伝子改変で製造された抗体を構築して、結合の増大をもたらすことができる。
【0057】
第2の免疫グロブリンパートナーは上記定義のエフェクター剤と結合されていてもよく、第2の免疫グロブリンパートナーが慣用の手段によって作動可能に連結されていてもよい非タンパク質担体分子が含まれる。
【0058】
第2の免疫グロブリンパートナー、例えば抗体配列とエフェクター剤との間の融合又は結合はあらゆる適切な手段、例えば慣用の共有若しくはイオン結合、タンパク質融合又はヘテロ二官能性架橋剤、例えばカルボジイミド、グルタルアルデヒド等によって行われ得る。そのような技術は当該技術分野で公知であり、一般に慣用の化学及び生化学のテキストに記載されている。
【0059】
更に、第2の免疫グロブリンパートナーとエフェクター剤との間に単純に所望の量の空間を設ける慣用のリンカー配列を、改変された免疫グロブリンコード領域中にも構築することができる。そのようなリンカーの構築は一般的に当業者に公知である。
【0060】
もう1つの更なる実施形態では、抗体は追加の薬剤をそこに取り付けられた状態で有し得る。例えば、組換えDNA技術の方法を使用して、完全な抗体分子のFcフラグメント又はCH2-CH3ドメインが酵素又は別の検出可能な分子(すなわちポリペプチドエフェクター又はレポーター分子)によって置き換えられた遺伝子改変で製造された抗体を産生することができる。
【0061】
第2の免疫グロブリンパートナーは、抗カンジダタス・サバゲラ抗原抗体の抗原特異性を有するCDR含有配列に対して異種である非免疫グロブリンペプチド、非免疫グロブリンタンパク質又はそれらのそのようなフラグメントと作動可能に連結されていてもよい。生成するタンパク質は、発現時に抗カンジダタス・サバゲラ抗原特異性と非免疫グロブリンの特性の両方を有し得る。融合パートナーの特性は、機能的特性、例えば別の結合若しくは受容体ドメイン、又は融合パートナー自体が治療用タンパク質である場合に治療的特性又は追加の抗原特性であり得る。
【0062】
本発明の別の望ましいタンパク質は全長の重鎖及び軽鎖を有する完全抗体分子又はそのあらゆる別個のフラグメント、例えばFab若しくはF(ab')
2フラグメント、重鎖の二量体若しくはその任意の最小組換えフラグメント、例えばFv又は一本鎖抗体(SCA)又は選択されたドナー抗体、例えばニワトリ抗体と同じ特異性を有するあらゆる別の分子であり得る。そのようなタンパク質は改変抗体の形態で使用することもできるか、又はその非融合形態で使用することもできる。
【0063】
第2の免疫グロブリンパートナーがドナー抗体、例えばニワトリ抗体とは異なる抗体に由来する場合は常に、遺伝子改変で又は組換えにより製造された抗体が生成する。遺伝子改変で又は組換えにより製造された抗体は免疫グロブリン(Ig)の定常領域及び或る起源、例えばアクセプター抗体由来の可変フレームワーク領域並びにドナー抗体、例えばニワトリ抗体由来の1つ以上の(好ましくは全ての)CDRを含み得る。更に、核酸若しくはアミノ酸レベルでのアクセプターモノクローナル抗体(mAb)の軽鎖及び/又は重鎖可変ドメインのフレームワーク領域、又はドナーCDR領域の改変、例えば欠失、置換又は付加を実施して、ドナー抗体、例えばニワトリ抗体の抗原結合特異性を維持することができる。
【0064】
そのような遺伝子改変で又は組換えにより製造された抗体を構築して、抗カンジダタス・サバゲラ抗原抗体の可変重鎖及び/若しくは軽鎖の1つ(又は両方)又は重鎖若しくは軽鎖のCDRの1つ以上を使用する。遺伝子改変で又は組換えにより製造された抗体は上記定義のように中和作用を有し得る。
【0065】
そのような遺伝子改変で又は組換えにより製造された抗体は、選択されたヒト免疫グロブリン若しくはサブタイプのフレームワーク領域を含むヒト化抗体又は抗カンジダタス・サバゲラ抗原抗体の機能的フラグメントに融合されたヒト重鎖及び軽鎖の定常領域を含むキメラ抗体を含み得る。適切なヒト(又は別の動物)のアクセプター抗体は慣用のデータベース、例えばKABAT(登録商標)データベース、Los Alamosデータベース及びSwiss Proteinデータベースからドナー抗体、例えばニワトリ抗体のヌクレオチド及びアミノ酸配列との相同性によって選択された抗体であり得る。ドナー抗体のフレームワーク領域との相同性(アミノ酸ベースで)を特徴とするヒト抗体は、重鎖の定常領域及び/又は重鎖の可変フレームワーク領域を、ドナーCDRの挿入のために与えるのに適切となり得る。軽鎖の定常又は可変フレームワーク領域を与えることができる適切なアクセプター抗体を同様にして選択することができる。アクセプター抗体の重鎖及び軽鎖が同じアクセプター抗体に由来する必要はないことに留意されたい。
【0066】
望ましくは、異種フレームワーク領域及び定常領域はヒト免疫グロブリンクラス及びアイソタイプ、例えばIgG(サブタイプ1〜4)、IgM、IgA及びIgEから選択される。しかしながら、アクセプター抗体はヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む必要はない。例えば、ヒト免疫グロブリン鎖の一部をコードするDNA配列が非免疫グロブリンアミノ酸配列、例えばポリペプチドエフェクター又はレポーター分子をコードするDNA配列に融合されている遺伝子が構築され得る。
【0067】
好ましくはヒト化抗体では、可変ドメインをヒト重鎖においても軽鎖においても1つ以上のCDR交換によって遺伝子改変で製造した。6つ全てのCDR又は6つ未満のCDRからの様々な組合せを使用することが可能である。好ましくは6つ全てのCDRが交換される。CDRをヒト重鎖でのみ交換することが可能であり、軽鎖としてヒトアクセプター抗体由来の非改変型の軽鎖が使用される。代替的に、適合可能な軽鎖は慣用の抗体データベースに頼ることによって別のヒト抗体から選択され得る。遺伝子改変で製造された抗体の残部はあらゆる適切なヒトアクセプター免疫グロブリンに由来し得る。
【0068】
したがって、遺伝子改変で又は組換えにより製造されたヒト化抗体は天然のヒト抗体又はそのフラグメントの構造を有し、有効な治療的使用に必要な特性の組合せを有する。
【0069】
ドナー抗体、例えばニワトリ抗体の特異性及び高親和性に必ずしも影響を及ぼすことなく、遺伝子改変で製造された抗体を可変ドメインのアミノ酸の改変によって更に改変することができることを当業者は理解するであろう(すなわち、類似体)。重鎖及び軽鎖のアミノ酸が可変ドメインのフレームワーク若しくはCDR又は両方のいずれかで他のアミノ酸によって置換され得ることが予測される。
【0070】
更に、定常領域を改変して、本発明の分子の選択的特性、例えば二量体化、Fc受容体への結合又は補体に結合して活性化する能力を増加又は減少させることができる(例えばAngalら、Mol. Immunol. 30:105-108 (1993)、Xuら、J. Biol. Chem. 239:3469-3474 (1994)、Winterら、EP307,434-Bを参照)。
【0071】
キメラ抗体である改変抗体は、フレームワーク領域を含む非ヒトドナー抗体、例えばニワトリ抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域全体を両方の鎖についてヒト免疫グロブリンの定常領域と連結して与えることによって、上記のヒト化抗体とは異なる。
【0072】
抗原に特異的に結合する抗体の製造は、例えばSambrookらに記載される技術(Molecular Cloning (A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory (1989; 2001))によって従来技術に十分に記載されている。ヒト化モノクローナル抗体の製造を以下に簡単に概説する。少なくともCDRコード領域、並びにアクセプターmAbの軽可変及び/又は重可変ドメインのフレームワーク領域の、ドナーmAb、例えばニワトリモノクローナル抗体の結合特異性を維持するのに必要な部分を含む可変重領域及び軽領域並びにヒト免疫グロブリンに由来する抗体鎖の免疫グロブリンに由来する残りの部分はポリヌクレオチドプライマー及び逆転写酵素を使用して取得される。CDRコード領域は既知のデータベースを使用して、及び他の抗体との比較によって特定される。
【0073】
次いでニワトリ/ヒトキメラ抗体を製造し、結合能力を調査することができる。そのようなキメラ抗体は、非ヒトのニワトリドナー抗体のVH及びVL領域全体を両方の鎖についてヒトIgの定常領域と連結して含む。
【0074】
ヒト抗体由来の重鎖の可変領域の同種のフレームワーク領域をコンピューター化されたデータベース、例えばKABAT(登録商標)を使用して特定することができ、ニワトリドナー抗体に対して相同性を有するヒト抗体がアクセプター抗体として選択されることとなる。軽鎖の適切な可変フレームワーク領域を同様にして作ることができる。
【0075】
ヒト化抗体は、キメラ抗体に由来し得るか、又は好ましくは合成により重鎖及び軽鎖からのニワトリドナーmAbのCDRコード領域を重鎖及び軽鎖の選択されたフレームワーク内に適切に挿入することによって製造され得る。代替的に、ヒト化抗体は標準的な突然変異誘発技術を使用して製造され得る。したがって、生成するヒト化抗体は、ヒトフレームワーク領域及びニワトリドナーmAbのCDRコード領域を含む。引き続いてのフレームワーク残基の操作が加えられ得る。生成するヒト化抗体は、組換え宿主細胞、例えばCOS、CHO又は骨髄腫細胞において発現し得る。
【0076】
慣用の発現ベクター又は組換えプラスミドは、抗体に関するこれらのコード配列を宿主細胞での増殖及び発現及び/又は宿主細胞からの分泌を制御することができる慣用の調節性制御配列との作動可能な連係で配置することによって製造される。調節性配列には、プロモーター配列、例えばCMVプロモーター及び他の公知の抗体に由来し得るシグナル配列が含まれる。同様に、抗体の相補的な軽鎖又は重鎖をコードするDNA配列を使用して、第2の発現ベクターが製造され得る。好ましくは、この第2の発現ベクターは、各ポリペプチド鎖が機能的に発現されることを可能な限り保証することにコード配列及び選択可能なマーカーが関連している点を除き、第1の発現ベクターと同一である。代替的に、改変抗体についての重鎖及び軽鎖のコード配列は単一のベクターを基礎とし得る。
【0077】
選択された宿主細胞を慣用の技術によって第1の及び第2のベクターの両方で同時トランスフェクション(又は単純に個々のベクターでトランスフェクション)して、組換え又は合成の軽鎖及び重鎖の両方を含むトランスフェクションされた宿主細胞を産生する。次いで、トランスフェクションされた細胞を慣用の技術によって培養して、本発明の遺伝子改変で又は組換えにより製造された抗体を産生する。組換え重鎖及び/又は軽鎖の会合を含むヒト化抗体は、適切なアッセイ、例えばELISA又はRIAによって培養物からスクリーニングされる。同様の慣用の技術を使用して、他の改変抗体分子を構築することができる。
【0078】
本明細書で提供される方法及び組成物の構築において使用されるクローニング及びサブクローニング工程に適したベクターは当業者によって選択され得る。例えば、慣用のpUCシリーズのクローニングベクターを使用することができる。ベクターpUC19は、供給元、例えばAmersham(英国、バッキンガムシャー)又はPharmacia(スウェーデン、ウプサラ)から市販されている。更に、容易に増幅でき、多数のクローニングサイト及び選択可能な遺伝子(例えば抗生物質耐性)を有し、操作が簡単なあらゆるベクターをクローニングのために使用することができる。
【0079】
同様にして、抗体の発現に使用されるベクターはあらゆる慣用のベクターから当業者により選択され得る。ベクターは選択された宿主細胞における異種DNA配列の増幅及び発現を指示する選択された調節性配列(例えばCMVプロモーター)も含む。これらのベクターは抗体又は改変された免疫グロブリンコード領域をコードする上記のDNA配列を含む。更に、ベクターは、簡単な操作のために所望の制限部位を挿入することによって改変された選択された免疫グロブリン配列を収容することができる。
【0080】
発現ベクターは、例えば哺乳動物のジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)の異種DNA配列の発現を増幅するのに適した遺伝子によっても特徴付けられ得る。他の好ましいベクター配列は、例えばウシ成長ホルモン(BGH)からのポリAシグナル配列及びβ-グロビンプロモーター配列(Betaglopro)を含む。本明細書で有用な発現ベクターは一般的に当業者に公知の技術によって合成され得る。
【0081】
そのようなベクターの構成要素、例えばレプリコン、選択遺伝子、エンハンサー、プロモーター、シグナル配列等は、商業的若しくは天然供給源から又は公知の方法によって取得して、選択された宿主における組換えDNAの産物の発現及び/又は分泌の指示において使用することができる。この分野で哺乳動物、細菌、昆虫、酵母及び真菌の発現に数多くの種類が公知の他の適切な発現ベクターを同様にこの目的のために選択することができる。
【0082】
ベクターは、抗体又はその改変された免疫グロブリン分子のコード配列を含む組換えプラスミドでトランスフェクションされた細胞系統の作製のために使用され得る。これらのクローニングベクターのクローニング及び他の操作に有用な宿主細胞も同様に慣用なものである。例えば、細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)の様々な菌株からの細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞を、クローニングベクターの増幅のために、及び本発明の改変抗体の構築における他の工程のために使用することができる。
【0083】
本発明の抗体の発現に適した宿主細胞又は細胞系統は、好ましくは哺乳動物細胞、例えばNS0、Sp2/0、CHO、COS、線維芽細胞(例えば3T3)及び骨髄細胞、特に好ましくはCHO又は骨髄細胞である。ヒト細胞を使用することができ、それにより分子をヒトのグリコシル化パターンで修飾することが可能となる。代替的に、他の真核細胞系統を使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞の選択並びに形質転換、培養、増幅、スクリーニング及び製品の製造及び精製のための方法は当該技術分野で公知であり、例えば上記で引用したSambrookらを参照のこと。
【0084】
細菌細胞は本発明の組換えFabを発現するのに適した宿主細胞として有用であることが明らかとなり得る(例えばA. Plueckthun、Immunol. Rev.、130:151-188 (1992)を参照)。しかしながら、細菌細胞で発現されるタンパク質がフォールディングされていないか若しくは不適切にフォールディングされた形態又はグリコシル化されていない形態で存在する傾向に基づいて、細菌細胞において産生された全ての組換えFabを抗原結合能力の維持についてスクリーニングせねばならないこととなる。細菌細胞によって発現される分子が適切にフォールディングされた形態で産生されるならば、細菌細胞は望ましい宿主となるであろう。例えば、発現に使用される大腸菌の様々な菌株は生物工学の分野で一般的に宿主細胞として公知である。
【0085】
枯草菌(B. subtilis)、放線菌(Streptomyces)、他の桿菌(Bacilli)等の様々な菌株をこの方法で使用することもできる。
【0086】
所望であれば、当業者に公知の酵母細胞の菌株も昆虫細胞、例えばショウジョウバエ(Drosophila)及び鱗翅目(Lepidoptera)並びにウイルス発現系と同様に宿主細胞として利用可能である。例えばMillerら、Genetic Engineering、8: 277-298、Plenum Press (1986)及びそこに引用される引用文献を参照のこと。
【0087】
ベクターを構築することができる一般的な方法、宿主細胞を産生するのに必要なトランスフェクション方法及びそのような宿主細胞から本発明の改変抗体を産生するのに必要な培養方法は全て慣用の技術である。同様に本発明の抗体は産生されたら、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含むこの分野の標準的な方法に従って細胞培養内容物から精製され得る。そのような技術は当業者の技能の範囲内である。
【0088】
抗体が所望の方法により発現されたら、次いで抗体を適切な試験(アッセイ)を使用することによってin-vitro活性について調査する。現在、慣用のELISA試験形式はMAGへの抗体の定性的及び定量的な結合を判定するために使用されている。抗原への特異的結合及び中和作用を検証する他のin-vitroアッセイを本明細書に記載されるように使用した後に、引き続き通常のクリアランスメカニズムにもかかわらず体内での抗体の持続を評価するためにヒト臨床試験が実施される。
【0089】
好ましい一実施形態では、抗体又は抗原結合性フラグメントは、免疫グロブリン分子、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフティングによって産生される抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合されたFv、scFv、シングルドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、デュアル特異性抗体(dualspezifischer Antikoerper)及び二重特異性抗体からなる群から選択される。
【0090】
好ましくは、抗体はニワトリの免疫グロブリン分子又は抗体である。抗体は好ましくは細菌カンジダタス・サバゲラの抗原又は適切なペプチドに対して産生され、好ましくはポリクローナル又はモノクローナルのニワトリ抗体である。その場合にニワトリ抗体は別の箇所で定義されているようにヒト化又は改変されていてもよい。
【0091】
特に好ましくは、ニワトリの免疫グロブリン分子はIgY免疫グロブリン分子又はポリクローナルIgY抗体である。
【0092】
IgYと略される免疫グロブリンYはニワトリの血清中に、とりわけ鶏卵の卵黄中に高濃度で含まれている免疫グロブリン分子のクラスである。他の免疫グロブリンの場合と同様にIgYも、免疫系によって特定の外来構造物に対する反応として形成され、これらの構造物を特異的に認識するタンパク質である。
【0093】
免疫グロブリンYは、ニワトリにおいてIgGと機能的に同等であり、これと同様に2つの軽鎖及び2つの重鎖から構成されている。両方の免疫グロブリンクラスは、とりわけ重鎖において構造的に相違し、IgYでの重鎖は約65.1キロダルトンの分子量を有するため、IgGの場合よりも大きい。IgYの軽鎖は約18.7キロダルトンの分子量を有し、IgGと比較して幾らか小さい。そのためIgYの分子量は約167キロダルトンである。IgY分子の立体的柔軟性はIgGよりも低い。
【0094】
IgYは部分的にIgEともIgGとも機能的に同等である。しかしながら、IgYはIgGとは対照的にプロテインA又はプロテインGに結合せず、細胞のFc受容体にも結合しない。更にまた、IgYは補体系を活性化しない。免疫グロブリンYという名称は、鶏卵に見られる免疫グロブリンと免疫グロブリンGとの間に差異を示すことができたため1969年にG.A. Leslie及びL.W. Clemによって提案された。
【0095】
IgYは、抗体の狙い通りの取得及びバイオアナリシスでの使用に関して、哺乳動物の抗体の使用に対して様々な利点をもたらす。抗体は産卵された卵の卵黄から取得されるため、非侵襲的な抗体産生法である。つまり、血清を取得するためにニワトリから血液を採取する必要がない。同じニワトリからの繰り返しの産卵によって、特定の抗体の利用可能な量が大幅に増加する。哺乳動物のタンパク質との交差反応性もIgGより明らかに低い。更にまた、特定の抗原に対する免疫応答はウサギ又は他の哺乳動物よりもニワトリでの方がより大幅に顕著である。免疫応答の間に生ずる免疫グロブリンのうちIgYのみが鶏卵中に見られるため、対応する製剤にはIgA又はIgMの混入物は含まれていない。鶏卵からのIgYの収率は高く、ウサギ血清からのIgGの収率と同等である。IgYがプロテインA/Gに結合せず、補体因子を活性化せず、そして抗体のFc部分に結合しないという事実により、多くの用途でバックグラウンドの低下がもたらされる。
【0096】
更にまた、IgYは、とりわけアジア諸国、例えば日本で食品の成分として使用されている。こうして、例えば特定のIgYを含むヨーグルト製品がそこで販売されている。これはヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の種の細菌が胃の中で付着するのを防ぐ。このために使用されるIgYは免疫化されたニワトリの卵から取得される。抗体はここでサルモネラ菌(Salmonelle)及び他の細菌に対しても、但しウイルスに対しても産生され、これらの病原体から防御する食品の成分として使用される。したがって、本発明によるIgYは、例えば「新規食品」又は「栄養補助食品」の形態で使用され得る。
【0097】
一方、ニワトリの卵黄からのポリクローナル抗体産生又はニワトリからのモノクローナル抗体の製造のための一連の商業的販売業者が存在する(例えばGenosphere Biotechnologies社、Davids Biotechnologie社)。
【0098】
更なる好ましい一実施形態では、抗体又は抗原結合性フラグメントは、Th17細胞増殖、Th17細胞分化又はTh17細胞活性の低減を(間接的に)もたらす。代替又は追加として、抗体又は抗原結合性フラグメントは、B細胞による内因性抗原に対する抗体の形成を阻害する。
【0099】
Th17細胞は、抗原の接触により活性化された後に初めて、いわゆるナイーブTヘルパー細胞、つまりそれらの特異的抗原とまだ接触していないTヘルパー細胞から発生する。Th17細胞の分化にはIL-6及びTGF-βが必要である。Th17細胞は、これらの細胞により産生されるインターロイキンIL-17にちなんで名付けられており、好中性顆粒球の活性化に重要な役割を担うが、慢性炎症及び自己免疫疾患の発症にも関連している。Th17細胞からの更なる分泌産物はTNF-α及びIL-6である。IL-17に対する受容体は、免疫系の様々な細胞型、例えば好中性顆粒球の属する骨髄細胞上及びリンパ球上に存在する。Th17細胞によって放出されるメッセンジャー物質は好中性顆粒球が支配的な役割を担う炎症過程を引き起こす。IL-17は、上述の標的細胞において、とりわけ好中性顆粒球を遊走させて活性化するG-CSF、IL-6及びIL-8の放出を引き起こす。また、炎症促進性タンパク質、例えばIL-1、IL-6、PGE-2、シクロオキシゲナーゼ2及びマトリックスメタロプロテアーゼが強力に発現される。
【0100】
上述のメカニズム、すなわちTh17細胞増殖、Th17細胞分化若しくはTh17細胞活性の低減及び/又はB細胞による内因性抗原に対する抗体の形成の阻害によって、本発明の抗体は免疫寛容の増加に寄与する。免疫疾患、例えば多発性硬化症、関節リウマチ、1型糖尿病及びアレルギー性喘息はTh17免疫細胞の活性によってかなり決定される。腸内細菌であるカンジダタス・サバゲラ(「セグメント糸状細菌」)は、これらのTh17免疫細胞を正確に誘導する(例えば、US2012/276149、WO2011/047153を参照)。本発明は、経口投与された鶏卵の卵白抗体によりこの細菌を中和してTh17免疫細胞介在性疾患を治療することを含む。Th17細胞増殖の低減、Th17細胞分化の低減、Th17細胞活性の低減又はB細胞による内因性抗原に対する抗体の形成の阻害に対する試験は当業者に公知で、従来技術に記載されており、例えばUS2012/276149又はWO2011/047153を参照のこと。
【0101】
好ましい一実施形態では、細菌カンジダタス・サバゲラの抗原は細菌壁タンパク質、特に好ましくは「ミオシン交差反応性抗原」(配列番号1)である。
【0102】
本発明の意味の範囲内での抗原の例は細菌カンジダタス・サバゲラの細胞壁タンパク質、例えば配列番号1にアミノ酸配列が示されている「ミオシン交差反応性抗原」である。
【0103】
好ましい一実施形態では、抗体又は抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SVLDEFYWLDKKDPYSL(配列番号2)、PDFKAVRFTRRNQYESMI(配列番号3)又はQATSIKILRDGKEEEIKL(配列番号4)を含む又はそれらからなるミオシン交差反応性抗原由来のエピトープに結合する。
【0104】
本発明はまた、本発明による抗体を製造する方法であって、
a)細菌カンジダタス・サバゲラの抗原由来の免疫原性ペプチドによりニワトリを免疫化すること、及び
b)該ニワトリ又はこれらのニワトリが産んだ卵において形成された抗体を取得して精製すること、
を含む方法に関する。
【0105】
本発明の中和抗体を産生するために、機能決定する「セグメント糸状細菌」(SFB)特異的なタンパク質の群から、細菌壁タンパク質であり、腸上皮への付着及び/又はカンジダタス・サバゲラ若しくは「セグメント糸状細菌」(SFB)の生存についての非冗長性の役割を担うことを特徴とする適切なタンパク質、例えば「ミオシン交差反応性抗原」(MCRA)タンパク質を選択する。引き続き、選択された標的抗原のタンパク質配列内で、例えば「エピトープ予測プログラム」によって及び/又はデータベースを用いて適切なエピトープを決定する。次いで、計算上最良の抗原性/免疫原性を有する標的配列を抗体製造のために選択する。そのアミノ酸配列によって、次の工程で対応するペプチドを十分な量で合成する。抗原として作用し得るためには、低分子量分子、例えばペプチドは担体タンパク質(「担体」)に結合されねばならない。オボアルブミン(鶏卵アルブミン)及びウシ又はヒトの血清アルブミンに加えて、カタツムリタンパク質KLHが、動物の免疫化に際して生物工学で広く使用されている担体タンパク質である。こうして引き続き、該ペプチドを、例えばタンパク質のキーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin、KLH)に結合させることができる。ニワトリを60日以内にペプチド-KLH複合体で4回免疫化し、その場合に初回免疫化の間には動物に2倍量が与えられる。この免疫化段階の後にニワトリは1カ月当たり最大3グラムのIgYを産生する。引き続き、抗体を卵黄から単離し、それらの中和作用を、すなわち抗体が腸上皮細胞への細菌カンジダタス・サバゲラの付着若しくは結合を阻害し、上記の細菌の増殖を阻害し、及び/又は該細菌を減少若しくは死滅させることができるかどうかを試験する。
【0106】
上述の方法に従って本発明による抗体を製造するために、ミオシン交差反応性抗原は細菌カンジダタス・サバゲラの抗原として好ましい。配列番号1のアミノ酸配列を有するミオシン交差反応性抗原由来のエピトープ配列、つまりアミノ酸配列SVLDEFYWLDKKDPYSL(配列番号2)、PDFKAVRFTRRNQYESMI(配列番号3)又はQATSIKILRDGKEEEIKL(配列番号4)を有するペプチドが特に好ましい。
【0107】
既出の定義及び行われた用語の説明は、以下に記載される実施形態に相応して適用される。
【0108】
また、本発明は、本発明の抗体若しくは抗原結合性フラグメント又は本発明による方法によって製造される抗体を含む医薬品に関する。好ましくは、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントは、薬学的に許容可能な担体中に懸濁されている。好ましくは、治療される患者は人間である。
【0109】
本発明の更なる主題は、本発明の抗体若しくは抗原結合性フラグメント又は本発明による方法によって製造される抗体並びに好ましくは適切な添加剤及び/又は補助剤を含む医薬品である。添加剤及び/又は補助剤としては、例えば生理食塩水、適切な安定化剤、プロテイナーゼ阻害剤等が適している。安定化剤としては、例えばTween 80(0.02%)、糖溶液、例えばショ糖溶液(20〜30%)又はアミノ酸溶液、例えばグリシン若しくはシステイン溶液が適している。通常、本発明による医薬品は、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントを適切な添加剤及び/又は補助剤と混ぜることによって製造される。
【0110】
本発明の治療剤は、予防薬として又は他の場合には必要に応じて投与され得る。治療の用量及び期間は、ヒト循環における本発明の分子の相対的な期間に関連性があり、治療される状態及び患者の一般的な健康状態に応じて当業者によって調整され得る。
【0111】
本発明の治療剤の投与様式は、該治療剤が宿主に送達されるあらゆる適切な経路であり得る。本発明の抗体及び医薬組成物/医薬品は経口投与に特に有用である。
【0112】
好ましい一実施形態では、本発明による医薬品は、Th17細胞の活性が介在する腫瘍性疾患、アレルギー性疾患又は免疫疾患、好ましくは自己免疫疾患の予防又は治療に使用するための医薬品である。
【0113】
例えば、アレルギー患者又は自己免疫疾患を伴う患者は、規定された治療スキームにおいて規定された期間にわたって本発明の特異的SFB抗体を経口服用する。引き続き、アレルギー反応の低減を、例えばプリックテストによって測定する。自己免疫疾患を伴う患者に対する特異的SFB抗体の作用は、例えば自己抗体の形成の減少によって実証され得る。参照はSFB抗体治療なしでの反応の強さに相当する。
【0114】
好ましくは、アレルギー性疾患、免疫疾患又は自己免疫疾患は、多発性硬化症、1型糖尿病、関節リウマチ、アレルギー性気道疾患及びアレルギー性喘息からなる群から選択される。
【0115】
更なる好ましい一実施形態では、抗体又はその抗原結合性フラグメントは経口投与される。ニワトリ抗体(IgY)は特に酸安定性であるため、患者に経口適用するのに特に適している。しかしながら、免疫グロブリンの移送に使用されてきた今までのあらゆる経路、例えば筋肉内、静脈内、腹腔内又は髄腔内投与も含まれる。
【0116】
更なる好ましい一実施形態では、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム系及び/又はグリコペプチド系抗生物質と組み合わせて使用される。
【0117】
それに加えて、本発明は、本発明による医薬品を製造する方法であって、
a)本発明による抗体又はその抗原結合性フラグメントを製造すること、及び
b)該抗体又はその抗原結合性フラグメントを医薬品として製剤化すること、
を含む、方法に関する。
【0118】
最後に、本発明は、Th17細胞増殖、Th17細胞分化若しくはTh17細胞活性を低減させる及び/又はB細胞による内因性抗原に対する抗体の形成を阻害するための本発明による抗体又はその抗原結合性フラグメントを含むキットに関する。
【0119】
本発明による抗体又はその抗原結合性フラグメントに加えて、キットはまた抗生物質、例えばベータラクタム系及び/又はグリコペプチド系抗生物質並びにキットの構成要素を適用するための使用説明書を含み得る。
【0120】
本明細書で使用される「約」という用語は、本明細書で参照される特定の値の+/-20%、+/-10%、+/-5%、+/-4%、+/-3%、+/-2%又は+/-1%の範囲内の変動を含む値に関連する。
【0121】
本明細書で使用される「測定する」、「測定」又は「検出」という用語は、定性的、半定量的及び/又は定量的な測定、例えば本発明の抗体が治療目的で投与された患者の血清又は血漿中のこの抗体の定量的な測定を包含する。
【0122】
本明細書で引用される全ての参考文献の内容は、それぞれの個別の開示内容を参照することにより、及びその全体が本明細書に援用される。
【0123】
本発明の更なる特に好ましい実施形態を以下の実施例に示す。