(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-534918(P2021-534918A)
(43)【公表日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】ヘルペス疾患治療用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20211119BHJP
【FI】
A61F7/08 332S
A61F7/08 332V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2021-512416(P2021-512416)
(86)(22)【出願日】2019年9月5日
(85)【翻訳文提出日】2021年4月8日
(86)【国際出願番号】EP2019073632
(87)【国際公開番号】WO2020049071
(87)【国際公開日】20200312
(31)【優先権主張番号】18192698.1
(32)【優先日】2018年9月5日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】18192693.2
(32)【優先日】2018年9月5日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520476352
【氏名又は名称】デルマファーム アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュンガー フォン バーンブ、ダニエル
(57)【要約】
本発明は、皮膚、好ましくは唇のヘルペス疾患を温熱治療するデバイスに関する。制御デバイスは、加熱段階で少なくとも1つの発熱要素を加熱することによって、皮膚に面する治療面の外側を、治療面が皮膚、好ましくは唇と接触している間、43〜47℃の接触温度に調節し、治療段階で接触温度を1から10秒の間の期間維持するよう構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚、好ましくは唇のヘルペス疾患を治療するためのデバイスであって、
(a)最大サイズが60mm2である、少なくとも1つの治療面と、
(b)前記治療面の温度を調節する制御デバイスと
を有し、
前記制御デバイスは、加熱段階において少なくとも1つの発熱要素を加熱することによって、前記治療面と前記皮膚、好ましくは前記唇との接触の間に、前記皮膚に面する外側の前記治療面を43℃〜47℃の接触温度に調節するように、そして治療段階において前記接触温度を1から10秒の間の期間維持するように構成されていることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記加熱段階は、1秒から5秒、好ましくは3秒未満、具体的には1から2秒であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記接触温度は、44.5℃〜46.5℃の間、好ましくは45℃〜46℃の間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記治療面のサイズは、30mm2から50mm2の間であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記治療面の前記サイズは30mm2から50mm2の間であり、前記接触温度は44.5℃〜46.5℃の間、好ましくは45℃〜46℃の間であり、前記制御デバイスは、前記接触温度を2から5秒の間の期間維持するように構成されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイスは、前記皮膚との接触の間に前記治療面の前記温度を測定するための少なくとも1つの温度センサを有し、前記制御デバイスは、前記少なくとも1つの発熱要素を、前記温度センサの測定データに基づいて調節することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記温度センサは前記治療面の内側にあり、且つ前記治療面は、50μmから2000μmの間の層厚を有するセラミックの層で形成されること、及び/又は前記温度センサは前記治療面の前記内側にあり、且つ前記治療面は、50μmから2000μmの間の層厚を有する金の層で形成されることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記治療面はセラミックで形成され、前記温度センサは前記治療面内に一体化されていることを特徴とする、請求項6又は7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記デバイスは少なくとも1つの接触センサを有し、前記接触センサは、好ましくは光学検出器、容量センサ、触覚センサ、及び/又は高温計を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記制御デバイスは、前記温度センサの前記測定データと前記発熱要素の動作に関するデータとの相関に基づいて、前記治療面が前記皮膚と接触しているかどうかを決定できることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記制御デバイスは、前記治療面が前記皮膚又は空気と接触している場合の、前記治療面の前記温度と前記発熱要素の制御との相関に関する参照データを有することを特徴とする、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記制御デバイスは、前記治療面と前記皮膚との接触が決定されたときに応じて、前記治療段階の期間が決定されるように構成されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記制御デバイスは、前記治療面と前記皮膚との接触が決定されると、前記発熱要素の加熱が初期化のみされるように構成され、又は
前記制御デバイスは、前記治療面と前記皮膚との接触がないと決定されるとすぐに、前記発熱要素の加熱が中断されるように構成されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、防水ハウジングを有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
ハードウェア実装温度モニタが、前記治療面の最高温度を54℃から58℃の間の値、好ましくは約56℃に制限し、且つ/又は、短絡若しくは制御されていない連続不正行為があった場合に安全ヒューズが前記デバイスを遮断することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、好ましくは唇のヘルペス疾患を温熱治療するためのデバイスであって、制御デバイスが、加熱段階で少なくとも1つの発熱要素(heating element)を加熱することによって、皮膚に面する治療面の外側を、治療面が皮膚、好ましくは唇と接触している間、43〜47℃の接触温度に調節し、また治療段階で接触温度を1から10秒の間の期間維持するように構成されている、デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスは一般的に、ヘルペス・ウイルスの感染で生じる、皮膚及び粘膜の急性、原発性又は続発性、ウイルス性疾患として知られている。ヘルペスは通常、局所的に群がる小水疱として、特に顔(顔面疱疹)、頬(頬部疱疹)、鼻(鼻部疱疹:Herpes nasalis)、生殖器(陰部疱疹)に発生する。初期の感染は、幼児期に、検出されることなく発生することが多いが、抗体の形成、並びに多くの場合、ウイルスの不顕在化及び体組織の細菌定着をもたらし、免疫系の弱い状態でウイルス・キャリアに戻ることにつながる。再発性口唇疱疹の痛み及びかゆみを和らげる治療では、たとえば、有効成分アシクロビルを含む唇ヘルペス用クリームが使用される。こうしたクリームは、ある種のウイルスの増殖を阻害する(抗ウイルス、抗ウイルスDNAポリメラーゼ阻害剤)ので、ヘルペスの最初の兆候(灼熱感、かゆみ、緊張、及び発赤)のときに使用する必要がある。治療の持続期間は、通常5日間である。
【0003】
そのようなクリームの欠点は、副作用や不耐性が生じる可能性があること、又は期待される効果が全体的又は部分的に生じない可能性があることである。
【0004】
DE102005002946A1から、ヘルペス疾患を治療するデバイスが知られている。デバイスは、20mm
2の好ましいサイズの加熱プレートを有し、加熱プレートは、好ましくは10〜15秒の治療持続期間、49℃〜53℃に加熱される。同様に、WO2018/011262A1、EP3 269 340A1、及びWO2018/011263A1も、ヘルペス疾患の温熱治療を提供し、WO2018/011263A1は、10〜15秒の期間の、49〜53℃の好ましい範囲を示唆している。
【0005】
治療期間中、加熱プレートが、唇の患部の皮膚エリア、たとえば赤くなったエリア又は膨れが既に形成されている位置に接触する。熱を加えると、一方では、単純疱疹ウイルスに対する中和効果によって、原因となる病原体の増殖の抑制につながる。他方では、短期間の熱治療により、温度に敏感な神経への刺激で、ヘルペス疾患のかゆみが紛らわされる。
【0006】
上記のパラメータ範囲で加熱プレートを加熱すると、特に唇に使用されたときに、主観的な温度変動及び強い痛みの知覚が生じる場合がある。唇の皮膚はより薄いことが知られており、細胞層がより少ないので、熱によるストレスは、生理学的損傷を一層容易に引き起こす可能性がある。このために、唇の痛みに対する感受性も一層高い。これは、患者が治療を中止し、療法の成功率の低下につながる可能性がある。WO2006/125092A2は、熱を加えることによる、ヘルペスを含む皮膚障害の局所治療用デバイスを提示している。WO2006/125092A2の注目点は、デバイスに交換可能なキャップを備えることである。皮膚障害を治療するための好ましい温度範囲は、48°〜53℃を含み、温度は、好ましくは、少なくとも30秒間維持される。
【0007】
米国特許第6 245 093B1号は、熱によってかゆみを治療するデバイスに関する。ヘルペス治療のための最適化されたパラメータ又は温度パラメータの最適化された制御について開示することなく、46℃から62℃の、広い範囲でのかゆみの治療温度が開示されている。
【0008】
WO2007/082648A1は、熱を加えることによる、虫刺され治療用デバイスについて説明している。デバイスは、セラミック又は金で作ることができる接触面として、平坦な本体を備えている。温度は、温度依存抵抗器、並びに治療を開始及び終了するための手動スイッチによって、好ましくは50℃〜65℃の範囲で受動的に調節される。
【0009】
WO01/34074A1から、虫刺され用温熱治療デバイスが知られており、50〜65℃の好ましい治療温度が、2〜12秒の治療持続期間、維持される。
【0010】
やはり、他の既知の温熱デバイスの場合、前述のパラメータ範囲での加熱プレートの加熱は、特にヘルペス治療のために敏感な唇に使用されると、主観的に知覚される温度変動及び痛みの強い知覚につながる可能性があり、それにより、治療はより頻繁に中止され、その結果治療の成功率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE102005002946A1
【特許文献2】WO2018/011262A1
【特許文献3】EP3 269 340A1
【特許文献4】WO2018/011263A1
【特許文献5】WO2006/125092A2
【特許文献6】米国特許第6 245 093B1号
【特許文献7】WO2007/082648A1
【特許文献8】WO01/34074A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、先行技術の欠点を解消するデバイスを提供することであった。具体的には、ヘルペス、好ましくは唇ヘルペスの治療に好適であり、高い有効性、使いやすさ、及び関連するコンプライアンスを特徴とするデバイスが提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、独立請求項によるデバイスによって解決される。従属請求項は、本発明の好ましい実施例に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、好ましい実施例では、本発明は、皮膚、好ましくは唇のヘルペス疾患を温熱治療するデバイスであって、該デバイスは、
(a)最大サイズ60mm
2の、少なくとも1つの治療面と、
(b)治療面の温度を調節するデバイスと
を有し、制御デバイスは、加熱段階で少なくとも1つの発熱要素を加熱することによって、治療面が皮膚、好ましくは唇と接触している間、治療面の外側を43℃〜47℃の接触温度に調節し、治療段階で接触温度を1から10秒の間の期間維持するよう構成されることを特徴とする、デバイスに関する。
【0015】
本発明での意味として、「皮膚のヘルペス治療の温熱治療」という用語は、好ましくは、所定の熱量を加えることにより、ヘルペスの症状を緩和し、疾患を治療するか又は疾患の進行を阻害する、ヘルペス疾患、好ましくは口唇疱疹の治療を説明するために使用される。
【0016】
したがって、ヘルペス疾患の治療は、特に、ヘルペス、具体的には唇ヘルペスに関連する発赤、腫れ、かゆみ、又は他の症状の治療にも関係する。
【0017】
温熱治療を実施するために、本発明による制御デバイスは、治療面が皮膚、好ましくは唇と接触している間、少なくとも1つの発熱要素を加熱することによって、治療面が確実に、43℃〜47℃の接触温度に導かれる。本発明での意味として、接触温度は、皮膚に面する外側が皮膚エリア、好ましくは唇エリアと接触している間に、治療面が当該外側で示す温度を指す。したがって、本発明によれば、治療面の接触温度と非接触温度との間で、区別がなされる。ここで、非接触温度は、皮膚又は唇と接触していないが、たとえば熱負荷がなく、ただ単に空気に触れている場合の、治療面の温度に相当する。
【0018】
既知の温熱デバイスでは、治療面の温度は通常、非接触温度に基づいて、発熱要素によって調節される。これは、制御デバイスのパラメータが、熱負荷のない温度曲線の標準化された測定に基づいて判断されることを意味する。かかる調節は、皮膚に面する側面、又は皮膚とは反対側に面する側面との、治療面の温度の調節を必ずしも区別していない。
【0019】
発明者らは、特に唇などの敏感なエリアのヘルペスの治療において、かかる調節が十分に正確ではないことに気づいた。これは、変動及び主観的に知覚される痛みをもたらす可能性があり、患者のコンプライアンス(患者が積極的に参加する意欲)の低下に、したがって治療の成功につながる。皮膚がより薄いので、唇への生理学的損傷も一層生じやすい。このため、痛みに対する感受性も一層高くなる。
【0020】
一方、本発明によるデバイスは、接触温度が、ヘルペスに治療効果のある43℃〜47℃、好ましくは44.5℃〜46.5℃、特に好ましくは45℃〜46℃の狭い範囲内に保たれるという事実を特徴とする。
【0021】
本発明での意味として、治療面の外側は、デバイスの外側から接近可能であり、したがって、デバイスが使用されるときに皮膚に面する側に対応する、治療面の側を指す。「皮膚に面する治療面の外側」という用語は、主として説明上使用する。温熱デバイスでは、治療面の外側及び内側が常に定義されることになる。内側は、好ましくは、皮膚とは反対側に面する側を指す。ハウジングの場合、治療面がハウジング表面に一体化され、それにより、外側とは対照的に内側は、外側から接近できない又は見えないことが好ましいであろう。
【0022】
正確に接触温度を調整するために、デバイスは、皮膚、好ましくは唇と接触している間、治療面の温度を測定し、それに応じて発熱要素を調節する、温度センサを備え得る。たとえば、温度センサが、治療面の内側に取り付けられているために、皮膚に面する治療面の外側の温度を直接測定していない場合、温度センサの測定値に対する制御デバイスの目標温度は、接触温度が指定された範囲内に正確に保たれるように調整され得る。たとえば、実験的試験又は熱流の計算に基づいて、その分だけ高い目標温度が設定され得る。これにより、治療面が皮膚、好ましくは唇に接触したときに、接触温度が確実に維持される。有利なことに、実験は、人の皮膚、特に唇が、異なる患者にわたり同様の熱特性を有し、その結果、実験的又は理論的な結果が確実に移行可能であることを示している。具体的には、ある患者の相異なる手足は、多くの場合、別の患者の同じ手足よりも熱特性が異なることも示されているため、熱特性を使用して接触温度を判断できる。
【0023】
温熱治療のサイクルの間に、皮膚に面する治療面の外側が、最初に接触温度まで加熱される。加熱段階は、より長い期間を必要としないことが好ましい。好ましくは、加熱段階は10秒を超えてはならず、特に3秒以下が好ましい。1〜3秒の加熱時間で、優れた結果が得られた。加熱段階に続いて、接触温度は、治療段階の持続期間に、43℃〜47℃、好ましくは44.5℃〜46.5℃、特に好ましくは45℃〜46℃の範囲に維持される。治療段階の間、接触温度が一定であることが好ましい場合がある。しかし、治療段階の間、接触温度が指定された限度内で変化することが好ましい場合もある。
【0024】
本発明での意味として、治療段階は、好ましくは、制御デバイスが、治療面の皮膚に面する側を43℃〜47℃、好ましくは44.5℃〜46.5℃、特に好ましくは45℃〜46℃の指定された範囲の接触温度に維持する、連続した期間を指す。治療段階の前、すなわち加熱段階の間、接触温度は上記の値未満である。治療段階の終了後、制御デバイスは、好ましくは、少なくとも1つの発熱要素をもはや加熱せず、その結果接触温度は、43℃〜47℃、好ましくは44.5℃〜46.5℃、特に好ましくは45℃〜46℃の範囲を下回る。
【0025】
治療面の外側を、1秒から10秒の間、好ましくは2秒から5秒の間の治療段階に、43℃〜47℃、好ましくは44.5℃〜46.5℃、特に好ましくは45℃〜46℃の接触温度に調節することによって、皮膚エリアに所定の熱量が、制御された形で加えられる。所定の熱パルスは、不快な痛み又はやけどさえもせずに、ヘルペス疾患、特に唇ヘルペスの驚くほど効果的な療法をもたらす。
【0026】
研究によると、44℃から51°の温度レベルでの火傷のリスクは、摂氏1度ごとに2倍に増加することが示されている。被験者はまた、47.5℃から48.5℃の温度で、皮膚、特に唇に刺すような痛みの形で熱が知覚されると報告している。47℃未満の温度は、はるかに耐えられるように思われる。
【0027】
対照的に、DNA結合タンパク質ICP8の易熱性を利用して、ヘルペス・ウイルスDNAの複製を効果的に防止できることがわかった。研究によると、45℃の温度で、タンパク質のウイルスDNAへの結合活性が約50%低下することが示されている。
【0028】
具体的には、温度受容体及びカプサイシン受容体であるTRPV1が、当該の皮膚エリアで局所的に活性化されると、かゆみ感覚の特に強い重なりに達する可能性があることがわかった。TRPV1は、健康な皮膚での急性の熱誘発性の痛みに関与し、たとえば約45℃から50℃の温度で、熱感覚を調節する。TRPV1を活性化すると、緊張感及びかゆみ、並びにそれに伴うヘルペス疾患の症状がさらに抑えられる。
【0029】
一方では、ヘルペスに対して熱を加えるために可能な限り高い温度を選択する必要があり、他方では、これに伴う痛みが、治療の早すぎる中止につながる可能性があり、その結果、治療が成功しない。
【0030】
本発明に従って、1〜10秒の治療段階に、43℃〜47℃の範囲内で接触温度を正確に調節することにより、どんな刺すような痛みを訴えることもなく、数日以内にヘルペス水疱が減るという、非常に良好な結果を得ることができた。コンプライアンス及び療法の成果は、本発明によるデバイスに関して、一貫して良好であった。
【0031】
デバイスの好ましい実施例によって、接触温度が44.5℃〜46.5℃の間、特に好ましくは45℃〜46℃の間で、優れた結果が達成された。研究では、前述の温度範囲で、ヘルペスの症候的な発生を部分的に回避でき、且つ/又は進行した段階で、ヘルペスの小水胞及び赤みの可視及び/若しくは触知可能な衰微を、2日以内に、時には1日以内に観察できた。これは、上記の範囲が、最適な治療計画を示していることを示唆している。治療計画の治療的に高い成功は、ヘルペス・ウイルスのDNA結合タンパク質の上記の易熱性では、部分的にしか説明できない。同時に、体自体の免疫系は、44.5℃〜46.5℃、特に45℃〜46℃の温度範囲でサポートされているように思われ、それにより、該狭い温度範囲での、ヘルペス・ウイルスの複製の阻害、及び体自体の免疫系の同時活性化又はサポートを含む、相乗効果が治療の成功を招いている。
【0032】
加えて、患者が、好ましくは44.5℃〜46.5℃、特に好ましくは45℃〜46℃の間の接触温度で、かゆみが著しく低減したと報告した。驚いたことに、かゆみの軽減は治療後数時間続いた。副次的な治療効果として、ヘルペス水疱の引っかき傷の減少が観察され、これもまた、より速い治癒に寄与する。
【0033】
本発明での意味として、治療面は、好ましくは、治療中に皮膚と直接熱接触しているデバイスの材料の表面を指す。
【0034】
治療面は、連結された面であり得る。治療面は、いくつかの連結されていない部分的なエリアで構成されることが好ましい場合もある。治療面のサイズは、好ましくは、皮膚の一部が熱衝撃を受ける接触面全体を指す。複数の部分的な面で構成される治療面の場合、治療面のサイズは、好ましくは、個々の部分的な面の合計に一致する。部分的な面へのかかる分割は、ヘルペスの特定の症状発現ばかりでなく、体の特定の部分の治療にも有利であり得る。
【0035】
ヘルペスの治療では、治療面は、最大60mm
2であることが好ましい。20mm
2から50mm
2の間の治療面のサイズが、特に好ましい。このようにして選択された治療面のサイズが、治療を原因に最適に適合させることを可能にし、治療の効率を最適化し、それによってより持続可能な治療の成功に寄与する。円形の治療面を選択することが、特に好ましい。
【0036】
少なくとも1つの発熱要素を補助的に使用して、治療面を所望の接触温度にすることが好ましい。好ましい実施例では、治療面は、発熱要素を補助的に使用して加熱される加熱プレートの表面に対応し、たとえば、半導体部品を使用できる。ただし、治療面は、いくつかの発熱要素によって加減された均質な材料面を選定することもできる。たとえば、治療面を特に均質且つ迅速に接触温度に導くために、2つ又は4つの発熱要素を使用することが好ましい場合がある。発熱要素を有する加熱プレートをコーティングすることが好ましい場合もある。この場合、治療面は、加熱プレートのコーティングとして理解されることが好ましく、その結果、接触温度は、治療面が皮膚と接触している間、治療面が皮膚に面する側にある温度を常に示す。
【0037】
本発明では、制御デバイスは、好ましくは、接触温度に対する所定の値に従って、少なくとも1つの発熱要素を用いて治療面の温度を調節するよう構成されるプロセッサ、プロセッサ・チップ、マイクロプロセッサ、又はマイクロコントローラである。
【0038】
好ましくは、発熱要素という用語は、たとえば電流を印加することで、制御デバイスによって加熱することができる部品を指す。少なくとも1つの発熱要素は、現況技術において様々な実施例が十分に知られている部品である。発熱要素は、電流の流れに応じて適切に定められた温度が生成される、電力抵抗器を有し得る。電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)は、好ましくは、発熱要素を流れる電流の流れを定量的に制御するために使用できる。しかし、FET自体を発熱要素として使用することが好ましい場合もある。この場合は、トランジスタ自体のエネルギー放散を使用して熱を発生させ、治療面を接触温度にする。FETは、寸法が小さいため、デバイスのサイズを小さくできるので、発熱要素として特に好ましい。さらに、FETは特に反応性が高く、非常に動的な発熱及び熱放出により、発熱要素は確実に、特に迅速に応答動作する。
【0039】
制御デバイスは、好ましくは、発熱要素への電流供給を事前設定することによって、どの接触温度にするかを制御できる。たとえば、較正を使用して、発熱要素での電流の流れ及び/又は電圧と、治療面が皮膚と接触している際の接触温度との間の相関を判断でき、その結果、43℃から47℃の間、好ましくは44.5℃〜46.5℃の間、特に好ましくは45℃〜46℃の間の所望の接触温度が、較正に基づいて確実に設定され得る。
【0040】
しかし、帰還ループを使用して、制御デバイスによって接触温度を調節することが好ましい場合もある。たとえば、治療面上のある位置の温度を測定する温度センサを使用することが好ましい場合があり、制御デバイスは、温度データに基づいて発熱要素への電流供給を調節する。この目的のために、制御デバイスは、たとえば、マイクロプロセッサを備え得る。
【0041】
本発明での意味として、マイクロプロセッサは、数mmの範囲の小さな寸法であり、好ましくは、プロセッサのすべての部品がマイクロチップ又は集積回路(IC:integrated circuit)上に存在することを特徴とする、データ処理デバイス、すなわち、プロセッサとして理解されることが好ましい。マイクロプロセッサは、好ましくは、マイクロチップ上に、プロセッサに加えて他の周辺要素を統合し、たとえばデータ・メモリも有する、マイクロコントローラでもあり得る。
【0042】
マイクロプロセッサは、プリント回路基板(PCB:printed circuit board)に取り付けられることがさらに好ましい。マイクロプロセッサに加えて、PCBには、好ましくは、発熱要素及び温度センサもPCB上に取り付けられている。この好ましい実施例は、デバイスの極めてコンパクトで堅牢な構築、及びマイクロプロセッサを使用する特に知的な温度調節を可能にする。したがって、マイクロプロセッサは、測定された温度データを評価して発熱要素の制御に変換できるだけでなく、エラー・メッセージ及びユーザ入力などの追加パラメータを、迅速且つ確実に考慮できる。
【0043】
本発明の好ましい実施例では、デバイスは、マイクロプロセッサ、発熱要素、及び任意選択で温度センサが、プリント回路基板(PCB)上に取り付けられ、少なくとも発熱要素及び温度センサは、保護ラッカでコーティングされていることを特徴とする。本発明での意味として、保護ラッカは、PCBの部品を周囲の影響から保護することを目的とする、ラッカ又は塗料として理解されることが好ましい。
【0044】
この目的のために、保護ラッカは、好ましくは、電気絶縁性及び耐水性である。電気絶縁特性は、好ましくは、表面絶縁抵抗(SIR:surface insulation resistance)によって定量化できる。SIRは、好ましくは、たとえば、プリント回路基板の部品間の漏れ電流によって測定できる。高い抵抗値は、優れた電気絶縁性に相当する。耐水性とは、高湿度条件又は水が浸透した場合でも、ラッカ塗装された電子部品が正常な状態で保持され、短絡が生じないことを優先的に意味する。耐水性は、たとえば、大気湿度の高い条件下でSIRを測定することによって、試験することもできる。
【0045】
使用に優先的に適した多数の保護ラッカが、従来技術で知られている。実例には、アクリレート、シリコーン、又はポリウレタンをベースにした保護ラッカが含まれる。発熱要素及び温度センサのエリアに保護ラッカを塗布することにより、発熱要素及び温度センサは付着物から効果的に保護され、それにより温度センサの誤った測定を回避できる。これにより、一方では、接触温度が設定され得る確度が向上し、他方では、温度の誤った測定による治療面の過熱が防止される。
【0046】
本発明の好ましい実施例では、加熱段階は、1秒から5秒、好ましくは3秒未満、具体的には1から2秒である。かかるすばやい加熱段階によって、所望の温度に特に速く到達できる。したがって、治癒効果は、ユーザに不必要に熱を加えることなく、且つ/又は治療に必要な実効時間を増やすことなく実現できる。加えて、治療中に加えられる熱量は、特に高い精度で判断できる。
【0047】
目標が絞られた、最先端のデバイスを使って一般的なものよりも著しく速い加熱段階により、患者から特に進んで受入れられ、したがって治療の確実な成功を得ことができる。有利なことに、治療的には効果のない加熱段階の間に、被験者の唇が不必要に炎症を起こすことが回避される。それどころか、ヘルペス治療のための、43℃〜47℃、好ましくは44.5℃〜46.5℃、特に好ましくは45℃〜46℃の治療上有効な接触温度に、迅速且つ確実に到達する。
【0048】
加熱段階は、好ましくは、皮膚、好ましくは唇と接触している間、少なくとも1つの発熱要素を加熱することによって、治療面の外側を43℃〜47℃の接触温度にさせる持続期間を示す。治療面の熱負荷が低いため、通常、デバイスを唇に当てると、唇の典型的な皮膚温度(たとえば32℃)に相当する治療面の初期温度に、比較的早く到達するであろう。したがって、加熱段階は、自然の体の皮膚温度から、43℃〜47℃、好ましくは44.5℃〜46.5℃、特に好ましくは45℃〜46℃の、治療段階の間の所望の接触温度までの温度上昇持続期間を、優先的に示す。
【0049】
本発明の特に好ましい実施例では、治療面のサイズは30mm
2から50mm
2の間であり、接触温度は44.5℃〜46.5℃の間、好ましくは45℃〜46℃の間であり、制御デバイスは、接触温度を2から5秒の間の期間維持できる。
【0050】
ヘルペスの最も成功した治療は、44.5℃〜46.5℃、好ましくは45℃〜46℃の接触温度、60mm
2、好ましくは20から50mm
2の間の最大熱放出面積、及び1〜10秒、好ましくは2〜5秒の治療段階で実現した。
【0051】
こうした実施例では、1秒から5秒、好ましくは3秒未満、具体的には1から2秒と、加熱段階を確実に短くすることが特に有益であることも判明している。
【0052】
本発明の特に好ましい実施例では、治療面のサイズは30mm
2から50mm
2の間であり、制御デバイスは、1秒から5秒、好ましくは3秒未満、具体的には1から2秒の加熱段階の間に、少なくとも1つの発熱要素を44.5℃〜46.5℃の間、好ましくは45℃〜46℃の間の接触温度に加熱することによって、治療面の外側を調節し、制御デバイスは、接触温度を2から5秒の間の期間維持するよう構成されている。
【0053】
特に口内(いわゆる口唇疱疹)のヘルペス疾患の場合、60mm
2の好ましい最大治療面のサイズは、可能性のあるすべての患部のエリアをカバーするのに理想的である。具体的には、20から50mm
2の間の治療面は、デバイスの1回の使用だけで、すべての典型的な患部の皮膚エリアをカバーするのに好適である。さらに、かかる治療面を備えるヘルペス治療デバイスは、特にコンパクトに保持できる。このようにして、口紅のサイズに一致するデバイスのサイズを実現できる。かかるコンパクトなデバイスは、いつでも治療を行うことができるように、多くの場合、好んで、身体上又はバッグ内に恒久的に着用される。これにより、治療の成功率が大幅に大きくなる。治療面は、好ましくは丸みを帯びている。これは、患部の皮膚エリアがほぼ丸い形を示すことが多いヘルペスの治療に、特に好適である。
【0054】
ヘルペスの治療に特に好適な任意の3次元形状、特に凸形状を使用することも可能である。たとえば、口紅の形状を使用して、治療中に、デバイスを優しく押すようユーザを促すことができる。これにより、治療中の幸福感を高める心理的効果を引き起こすことができる。伝達される熱量も改善される可能性がある。唇の治療に特に好適な、有機形態(organic form)を使用することができる。
【0055】
加えて、治療面のサイズ及び好ましい接触温度と、治療段階との組合せが、特に唇エリアのヘルペスの治療に特に効果的であることが示されている。一方では、治療面は、隣接するエリアを効果的にカバーするのに十分な大きさであり、したがって、感染した皮膚エリアの境界エリアも効果的に治療する。他方では、温熱治療であるにもかかわらず、治療面の最大サイズは、どんな痛みを伴う感覚もなしに、特に快適であると知覚される。これは、口の敏感なエリア、特に唇で特に重要である。前述のパラメータを用いた被験者の場合、最良のコンプライアンス値、すなわち、積極的に参加してデバイスを使用する患者の最も高い意欲と、最も成功した療法との両方が観察される。
【0056】
本発明の好ましい実施例では、デバイスは、治療面の温度を測定する少なくとも1つの温度センサを有し、制御デバイスは、温度センサの測定データに基づいて、少なくとも1つの発熱要素を調節する。
【0057】
本発明での意味として、温度センサは、好ましくは、センサの温度に応じて電気信号を生成する、電気部品又は電子部品である。現況技術では、半導体温度センサ、抵抗温度センサ、焦電材料、熱電対、又は振動水晶など、多数の温度センサが知られている。
【0058】
制御デバイスはまた、好ましくは、発熱要素の制御を行うために、温度センサの測定値を記録及び処理できるように構成される。発熱要素は、好ましくは、電流又は電圧を印加することによって調節できる。温度センサが治療面の温度を直接測定すること、すなわち、温度センサが治療面と接触していることが特に好ましく、温度センサは、治療面の内側と治療面の外側との両方に配置され得るか、又は治療面内に現在取り付けられている場合がある温度センサであり得る。
【0059】
制御デバイスは、温度センサで測定された温度に基づいて、接触温度を確実に設定するよう構成される。たとえば、温度センサが治療面の内側に装着されている場合、制御デバイスは接触中に、治療面の内側の目標温度を、当該の治療面の外側での所望の温度よりも高い温度に設定するよう構成されるであろう。かかる目標温度と実現すべき接触温度との差は、皮膚に当てられるときの治療面内の熱流に関する理論的予測に基づく、又は較正測定に基づく、参照データとして制御デバイスに供給され得る。
【0060】
しかし、温度センサが治療面に直接接触して監視するわけではなくて、発熱要素又は発熱要素と治療面との間の材料の1箇所に直接接触して監視することが好ましい可能性もある。治療面を加熱する発熱要素が複数ある場合、発熱要素間に温度センサを配置することが好ましい場合もある。同様に、発熱要素又は治療面からある一定の距離にある測定点を介した温度の測定データから、治療面の温度に関する結論が得られ得る。
【0061】
接触温度は、デバイスを当てている間で治療面が皮膚に接触しているときの、治療面の外側の平均温度を優先的に指す。
【0062】
治療面の温度の評価は、治療面の外側での最適な温度分布、したがって治療されるべき皮膚エリアへの熱伝達を確実にするために、少なくとも1つの発熱要素の、特に正確な調節を可能にする。特に、唇ヘルペスなどの敏感な皮膚エリアへのデバイスの使用に関して、実施例は、より目標が絞られ、制御された調節を特徴とする。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、治療面が、45℃で20W/m Kから400W/m K、好ましくは100から350W/m Kの間の熱伝導率を有する材料からなることを特徴とする。熱伝導率(熱伝達係数としても知られる)は、治療面が作製される材料の熱特性を示すことが好ましい。熱伝導率は、治療面に温度勾配が加えられたときに、治療面を伝導する熱量を示す。
【0064】
熱伝導率に加えて、熱輸送は、治療面の厚さ、治療面のサイズ、及び治療面の(発熱要素と接触する)内側と治療面の(皮膚と接触する)外側との温度差によって変わる。熱伝導率は、好ましくは、ケルビン(K)単位の温度差当り及びメートル(m)当りの、輸送される熱出力ワット(W)の比率として与えられる。熱伝導率は、温度に応じてわずかに変化する可能性があるので、ここでは45℃の基準温度を前提とする。
【0065】
治療面の厚さもまた、皮膚に接触する最も外側の面と発熱要素に接触する最も内側の面との間の、治療面の好ましい伸張部分を示す。いくつかの実施例では、治療面の厚さは、0.2mmから5mmの間、好ましくは0.5mmから2mmの間であり得る。
【0066】
好ましい実施例では、治療面は、セラミック又は金を含む。治療面は、金又はセラミックで作製されていることが特に好ましい。セラミック及び金の材料は、一方では実験的に判断された、熱伝導率の好ましい領域に分類される。
【0067】
加えて、セラミックと金との両方が、ヘルペスの治療に驚くほどよく適している。具体的には、これらの材料は、患者の痛みの感覚の不顕在化を強める。これは、効果が、熱的に同等の材料の純粋な温度効果を超えることができるという点で驚くべきことである。
【0068】
さらに、金、及び特にセラミックは、驚くほど高い生物学的適合性を特徴とし、これらの材料に対する特に低レベルのアレルギーと相まって、主に皮膚疾患の治療用デバイスに使用する材料を特徴付ける。
【0069】
特に好ましいセラミックは、窒化アルミニウムである。窒化アルミニウムは、特にかなりの程度まで、並外れた生物学的耐性及び優れた熱特性を特徴とする。加えて、窒化アルミニウム製の治療面は、特に電気的に高絶縁性であるため、使用時の高い安全性が保証され得る。これは、保護コーティングの使用と組み合わせて特に有利であり、安全性の相乗的な向上につながる。
【0070】
セラミック、具体的には窒化アルミニウムを使用することの利点は、治療面が、表面を劣化させることなく消毒剤で容易に消毒でき、したがって上記の利点を有する抗菌効果を実現するという点で、さらに明らかである。セラミック、特に窒化アルミニウム製の治療面と組み合わせて保護ラッカを使用すると、安全性が向上するため、液体消毒剤を安全に問題なく使用できる。
【0071】
ただし、消毒剤は金の表面にも使用できる。
【0072】
ヘルペスは極めて伝染性であることが知られており、またデバイスは、徹底的に消毒された場合にしか複数人で使用できないので、特にヘルペス疾患の治療に使用されるデバイスには、消毒剤を使用して治療面又はデバイス全体すら消毒することが推奨される。
【0073】
好ましい実施例では、デバイスは、温度センサが治療面の内側にあり、治療面が、50μmから2000μmの間、好ましくは50μmから1500μmの間、特に好ましくは50μmから1000μm、又はさらに50μmから500μmの層厚を有する、セラミック層で形成されることを特徴とする。50μmから100μm、100μmから200μm、200μmから300μm、300μmから400μm、400μmから500μm、600μmから700μm、700μmから800μm、800μmから900μm、900μmから1000μm、1000から1100μm、1100から1200μm、1300から1400μm、1400μmから1500μm、1600μmから1700μm、1700μmから1800μm、1800μmから1900μm、又はさらには1900μmから2000μmなどの、前述の範囲からの中間の範囲もまた好ましい可能性がある。当業者は、上記の限度値もまた組み合わせて、200μmから800μm、100μmから400μm、又はさらには100μmから1000μmなどの、さらに好ましい範囲を得ることができることを理解しよう。
【0074】
好ましい実施例では、デバイスは、温度センサが治療面の内側にあり、治療面が、5μmから2000μmの間、好ましくは50μmから1500μmの間、具体的には50μmから1000μmの間、又はさらに50μmから500μmの間の層厚を有する、金の層で形成されることを特徴とする。50μmから100μm、100μmから200μm、200μmから300μm、300μmから400μm、400μmから500μm、600μmから700μm、700μmから800μm、800μmから900μm、900μmから1000μm、1000から1100μm、1100から1200μm、1300から1400μm、1400μmから1500μm、1600μmから1700μm、1700μmから1800μm、1800μmから1900μm、又は1900μmから2000μmなどの、前述の範囲からの中間の範囲もまた好ましい可能性がある。当業者は、前述の限度値もまた組み合わせて、200μmから800μm、100μmから400μm、又はさらには100μmから1000μmなどの、さらに好ましい範囲を得ることができることを認識しよう。
【0075】
特に金又はセラミックを使用した場合の前述の好ましい層厚のために、デバイスの使用中に接触温度を非常に正確に調整し、接触温度を狭い温度範囲内に維持することが可能である。治療面がより厚い場合では、治療面の内側の温度測定に基づく、較正曲線又は理論的計算に基づいて、接触温度に関する結論を得ることが可能である。しかし、好ましくは2000μm未満、1500μm未満、及び1000μm未満、場合によっては500μm未満である上記の層厚は、治療面内の熱流パターンの変化をもたらす可能性がある、製造における公差又はデバイスの変化(湿気、摩耗など)に起因する誤差の発生源を最小限に抑える。
【0076】
治療面の外側下方の、最大距離1000μm、好ましくは最大距離500μm、200μm又はそれ以下の内側に温度センサを実装することにより、接触温度の確実な測定を行うことができる。帰還型の調節に関しては、内側の温度センサの目標温度は、目標接触温度からわずかにずれるだけであり、それによって妨害要因を大幅に排除できる。
【0077】
したがって、前述の薄い治療層は、接触温度を、特に好ましい値である44.5から46.5℃、好ましくは45℃〜46℃に、特に正確に調節することを可能にする。加えて、1℃未満、好ましくは0.5℃、0.4℃、0.3℃、0.2℃、又は0.1°未満の特に小さな公差を実現できる。加えて、治療面のかかる薄い層によって、加熱段階は、1秒から5秒、3秒未満、又は1から2秒の短い好ましい範囲内で、特に信頼性を維持できるので有利である。
【0078】
さらに、薄い層及び小さい熱負荷を使用した結果、遅延を回避できる。また、オーバーシュート、すなわち、所望の範囲、たとえば、44.5から46.5℃、好ましくは45℃〜46℃を超える接触温度へ短時間に上昇するリスクが回避されるように、所望の接触温度を設定するために加熱電力を下げる必要がある。
【0079】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、治療面がセラミックで形成され、温度センサが治療面に一体化されることを特徴とする。この実施例にとって有利なことに、温度センサは、治療面の層厚に関係なく、皮膚に面する外側の極めて近くにもってくることができる。
【0080】
したがって、この実施例は、接触温度の正確な調節と同時に、層厚に関するさらなる設計自由度を特徴とする。たとえば、温度センサが治療面内に薄膜センサとして一体化されている、0.5から2mmの層厚を有するセラミック治療面を使用することが好ましい場合がある。温熱治療に関する既知の測定方法とは対照的に、これにより、治療中の熱流を特に正確に知ることが可能になる。
【0081】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、少なくとも1つの接触センサを有する。本発明での意味として、接触センサは、測定データ及び測定データの分析に基づいて、治療面が皮膚、好ましくは唇と接触しているかどうかについて提示できるユニットを指す。接触センサは、好ましくは、制御デバイスに接続されたセンサ又は測定ユニットを有し、制御デバイスは、測定データを処理できる。
【0082】
たとえば、接触センサは、照明条件に関する測定データを制御ユニットに送信する、光学センサを備え得る。光学センサが治療面の近くにあるか、又は治療面内に取り付けられている場合、明るさの低下は、治療面が皮膚に接触していることを示す。しかし、接触センサが、温度センサ及び発熱要素を調節する制御デバイスからなるユニットを指定することが好ましい場合もあり、接触センサは、電流と実際の温度との間の相関に基づいて、皮膚接触の有無に関して結論を得ることができる。
【0083】
言うまでもなく、本発明での意味としての接触センサは、測定可能なパラメータに基づいて皮膚の接触に関する確率を提示することだけができ、特に空気とは対照的である皮膚を区別する。これは、たとえば、皮膚の熱負荷などの皮膚の熱特性、皮膚の導電率などの皮膚の電気的特性、及び/又は皮膚の不透明度などの光学特性に関係し得る。好ましくは、皮膚との接触の検出は、この意味で、治療面が空気と接触している状態とは対照的である、皮膚との接触の可能性についての、測定に基づく提示として理解されるべきである。
【0084】
接触センサ、及び治療面が皮膚に接触するタイミングに関する情報を用いて、ヘルペスの治療のための熱流の、特に正確な調節が実現できる。たとえば、加熱段階は、皮膚との接触があるかどうかに応じて開始することができる。実行されている治療を監視し、必要であればそれに応じてさらに運用を適合させるために、治療段階の期間も確実に記録できる。接触センサはまた、安全面に関して、制御の向上を可能にする。接触センサの助けを借りて、ユーザが意図するか又は知ることなしに、治療面が熱くなることを回避できる。
【0085】
接触センサを用いて、たとえば、デバイスをズボンのポケット内に持っている場合でも、加熱治療を間違えてトリガすることを確実に回避できる。接触センサの使用は、かゆみ又はヘルペスの治療用携帯型デバイスの柔軟な輸送に、特に有利である。接触センサを用いて、接触センサが実際に皮膚上にある場合にしか加熱がトリガされない、特にエネルギー効率の高い動作が可能である。加えて、たとえばズボンのポケットの中、又はプラスチック部品などを備えたスマートフォンなど、影響を受けやすいデバイスの隣での、意図しない危険な加熱が回避されることになる。
【0086】
加えて、接触温度の治療上有効な温度曲線は、接触センサを用いて、特別な精度で実現できることが示されている。接触センサの情報に基づき、接触センサが、好ましくは1から5秒、好ましくは3秒未満、特に好ましくは1〜2秒の、短い加熱段階の内に供給する情報に基づいて、43〜47℃、好ましくは44.5℃から45.5℃、特に好ましくは45℃から46℃の接触温度を、正確に設定できる。
【0087】
皮膚との接触が確立されているかどうかに関する情報を効率的に使用して、治療面の温度が所定の範囲を超える、起こり得るオーバーシュートを回避できる。代わりに、重点的な温熱治療は、皮膚との実際の接触が確立された後、及び該接触中にのみ実行される。デバイスを皮膚から短期間取り外したときに、熱負荷がないために発生する可能性のある温度ピークを、効果的に防止できる。たとえば、相当する接触センサのない既知の最先端のデバイスでは、一部の患者が、デバイスを使用するのと同時又はいくらか早まってさえも、加熱をトリガするのが観察できる。この段階では治療面に熱負荷がかからないので、温度が所定の値を超える可能性がある。その結果開始時に、既に痛みを伴う感覚が生じる。同様の望ましからざる影響は、治療中にデバイスを皮膚又は唇から短時間だけ取り外し、次いで再度当てた場合に生じる可能性がある。
【0088】
かかるオーバーシュートは、接触センサから供給される情報に基づいて効果的に防止できる。たとえば、加熱段階は、好ましくは、接触センサが皮膚との接触を確認しない限り、抑制され得る。治療が既に進行中の場合は、短期間接触がなくなると、接触センサから供給された情報に基づいて、即座に修正を行うことができる。この目的のために、制御デバイスは、たとえば、接触(したがって、熱負荷)が確認されると、低い熱負荷が伴う接触なしの場合よりも高い加熱出力が供給されるように構成され得る。
【0089】
接触センサの使用は、接触温度又は治療デバイスの全体的な温度経過の、特に目標を絞られた正確な制御の幅広い可能性を広げる。
【0090】
したがって、接触センサの使用は、治療を成功させるために温度経過の特に正確な制御が必要なヘルペス疾患の治療にとって、特別な利点となる。上記で説明したように、具体的には口唇疱疹の治療では、ヘルペス・ウイルスの複製を減らすために、接触温度をできるだけ高くしなければならない。一方、皮膚エリアは特に敏感であるため、所定の治療面をわずかに超えた場合でも、患者は治療を中止する。
【0091】
好ましい実施例では、制御デバイスは、いつ治療面と皮膚との接触が判断されたかに応じて、治療段階の期間が判断されるように構成される。皮膚との接触に応じて治療段階の持続期間を制御することにより、はるかに正確な熱伝達が実現できる。たとえば、加熱が開始され、皮膚との接触が後の時点まで検出されない場合、治療段階を延長できる。これにより、所望の治療効果のある熱伝達が確実に行われる。かかる調節は、再現可能な結果を実現し、デバイスの不適切な使用を効果的に補償することができる。
【0092】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、治療面と皮膚との接触が判断された場合に、発熱要素の加熱が初期化のみされるか、又は治療面と皮膚との接触がないと判断されるとすぐに、発熱要素の加熱が中断されるように、制御デバイスが構成されることを特徴とする。
【0093】
これにより、たとえば輸送中に間違えてスイッチを始動することにより、デバイスが加熱されるのを防止できる。また、ユーザが故意又は無意識の内に治療を中止しても、不必要な再加熱は回避される。これはエネルギーを節約し、不適切な使用から保護する。
【0094】
本発明の好ましい実施例では、デバイスは、接触センサが光学検出器(optical detector)であるか、又は光学検出器を有することを特徴とする。本発明での意味として、光学検出器は、好ましくは、可視範囲、すなわち波長範囲が400〜700nmの、電磁放射線用のセンサを指す。可視範囲の光学検出器は、好ましくは光センサと呼ばれる。ただし、光学検出器は、赤外線又は紫外線範囲の電磁放射線を検出することも可能である。フォトセル、光電子増倍管、CMOSセンサ、CCDセンサ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、又はフォト・レジスタなどの様々な光学検出器が、デバイスの目的に好適である。
【0095】
これらの検出器の共通した特徴は、入射電磁放射線の強度の変化を検出する機能に関係し、通常、電気信号の形で制御デバイスに渡すことができる。光学検出器は、好ましくは、治療面内又は治療面のすぐ近くに取り付けられる。したがって、デバイス及び治療面を皮膚に当てると、光学検出器は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、皮膚エリアによってカバーされる。これにより、測定される光強度が変化する。光強度の変化に関する測定データに基づいて、制御デバイスは、皮膚との接触の有無を検出できる。この目的のために、制御デバイスはまた、平均周囲光強度、又は光学検出器が少なくとも部分的に又は完全にカバーされた状態より低い閾値などの、参照データも有することができる。
【0096】
この実施例は、単純だがしかし確実な接触センサの実施態様を特徴とし、接触センサの追加は、低い追加コストしか伴わない。
【0097】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、接触センサが容量センサ(capacitive sensor)であるか、又は容量センサを有することを特徴とする。本発明での意味として、容量センサは、好ましくは、1つ又は複数のコンデンサの電気容量の変化を検出するセンサを指す。容量センサは、好ましくは、治療面内に取り付けられる。治療面が人間の皮膚エリア又は唇に接触するとすぐに、測定された容量は、外部の容量の結合により変化する。したがって、容量センサは、皮膚エリアの接触を確実に示すことができる。
【0098】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、接触センサが触覚センサであるか、又は触覚センサを有することを特徴とする。触覚センサは、好ましくは、機械式のベースで、治療面の接触を検出できるセンサであると理解される。したがって、測定原理は、好ましくは、治療面が皮膚上に置かれると、触覚センサを用いて機械的に検出できる圧力が送信されるという事実に基づく。当業者は、様々な好適な触覚センサをよく知っており、たとえば、触覚センサは、治療面全体のへこみ又は変位を検出する測定ばね又は圧電要素を備え得る。
【0099】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、接触センサが高温計(パイロメータ)であるか、又は高温計を有することを特徴とする。本発明での意味として、高温計は、非接触温度測定のためのセンサである。非接触温度測定は、好ましくは、自身の温度に応じて各物体から放出される熱放射線の測定に基づく。したがって、高温計は、放射線温度計又は赤外線センサとしても説明できる。物体の温度の判断は、物体の放射率によって変わる。放射率は、同じ温度での黒体の放射電力に対する任意の物体の放射電力の比率として理解されるべきである。放射率は、材料によって変わる。ある種の材料では、波長、温度、又は他の物理量によって変化する可能性もある。
【0100】
好ましい実施例では、高温計又は赤外線放射器は、治療面の前に位置するか、又は治療面に接触する物体の温度を測定できるように、オフセットを持って治療面に埋め込まれる。典型的には、皮膚、好ましくは唇の表面温度に相当する温度を判断する場合、高温計の測定データに基づいて、皮膚の接触を判断できる。これに最も好適な温度範囲は、約28℃〜34℃、好ましくは約30℃〜33℃である。こうした温度範囲を測定する好適な波長範囲は、中赤外線範囲にあり、好ましくは3μmから20μmの間である。当業者は、本明細書に記載の目的に好適な、異なる高温計を知っている。当業者はまた、具体的には、非接触医療用体温計で使用される非接触温度測定のための確立された技術にも、頼ることができる。
【0101】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、制御デバイスが、温度センサの測定データと発熱要素の動作に関するデータとの相関に基づいて、治療面が皮膚と接触しているかどうかを判断できることを特徴とする。この実施例では、接触センサは、温度センサと、発熱要素を制御する制御デバイスとによって形成されている。接触測定は、温度に到達するか又は温度を維持するのに必要な電流が、治療面が熱負荷(たとえば皮膚)に接触するかどうかによって変わるという知識に基づく。皮膚との接触中に治療面が加熱されると、熱伝達が起こり、これは、発熱要素へのエネルギー供給の増加によって補償されなければならない。電流及び実際の温度曲線を評価することにより、治療面が皮膚に接触しているかどうかに関して、確実な提示が行われ得る。参照データは、好ましくは、この目的のために制御デバイスに与えられ得る。
【0102】
一方で、この実施例は、接触を検出するのに、別個の光学センサ又は容量センサが不要であるという事実を特徴とする。それどころか、温度監視用にデバイスが有する部品を、皮膚との接触を検出するよう適合させることができる。
【0103】
加えて、この実施例の特別な利点は、実際の皮膚との所望の接触と、治療面の他の材料(たとえば、ズボンのポケットの内布)との過った接触との間の、非常に正確な区別を可能にすることである。(他の材料と同様に)皮膚には固有の熱指紋(thermal fingerprint)があり、熱指紋により、前述の接触センサの構成を用いて、皮膚との接触の有無を特に高い信頼性を持って検出することが可能になる。
【0104】
かかる接触判断に基づいて、特定の皮膚エリアの接触を検出することも可能である。たとえば、唇は、皮膚の他の部分の場合とは異なる熱負荷を伝送できる。したがって、皮膚の特定の部分との接触の有無に応じて、わずかに変化する限度内で接触温度を最適化又は調整することが可能である。
【0105】
本発明の好ましい実施例では、制御デバイスは、治療面が皮膚又は空気と接触している場合の、治療面の温度と少なくとも1つの発熱要素の制御との相関に関する参照データを有する。参照データには、たとえば、測定温度、及び目標を達成するために必要な電力供給条件が含まれ得る。好ましくは、参照データは、温度曲線のかかる条件を含み、それにより、温度と電力供給との現在の比率の測定値を使用して、治療面が皮膚に接触しているかどうかを非常に正確に判断できる。有利なことに、かかる調節を使用して、空気と比較した皮膚との接触だけでなく、他の熱特性を有する任意の材料と比較した皮膚との接触も、確実に区別できる。
【0106】
さらに好ましい実施例では、参照データには、皮膚又は空気に送達される熱の平均量が含まれ得る。参照データには、接触温度と熱出力との相関が含まれ得る。好ましい実施例では、特に意味のある平均値を得るために、又は上記で説明したように、検出された皮膚接触の種類に応じて治療過程を最適化するために、皮膚の異なる部分、たとえば唇又は顔の参照データも記録できる。
【0107】
さらに好ましい実施例では、デバイスは、防水ハウジングを有する。ハウジングは、好ましくは、デバイスの外部筐体であり、そのため、ハウジングは、具体的には、制御デバイス及び他の電子部品を収容する。ハウジングは、ハウジング・ヘッド及びハウジング・ハンドルを備えることが好ましく、治療面は、好ましくは、ハウジング・ヘッドの下部にある。治療面の温度を制御及び管理するために、ハウジングは、好ましくは、適切な位置に切欠きを有する。好ましい実施例では、ハウジングは、すべての切欠き、たとえば、存在し得るどんな電池用小室も水密となるよう設計されている。たとえば、場合によってはエラストマ製のシール又は好適なガスケットが、この目的のために使用できる。しかし、当業者は、防水ハウジングを設計するための、他の多くの技術的可能性をよく知っている。このようにして、液体の浸透による制御デバイス又は他の電子部品への損傷を効果的に回避できるので、ハウジングの防水設計は、追加の安全要素を表している。加えて、防水ハウジングは、腐食が回避され、したがってデバイスの耐用年数が延びるという結果をもたらす。特に保護ラッカの使用と相まって、安全性を相乗的に高めることができる。これは、デバイス、特に治療面の消毒処理にとって特に重要である。したがって、デバイス全体を消毒液に浸し、デバイスをある一定の最小時間そこに保持することにより、デバイスを非常に簡単且つ完全に消毒できる。
【0108】
他の好ましい実施例では、デバイスは、治療面の温度を制御する追加の安全要素を備える。
【0109】
1つには、デバイスは、好ましくは、治療面の最高温度を54℃から58℃の間の値、好ましくは約56℃に制限する、ハードウェアで実装された温度モニタを備え得る。治療面の温度も、54℃から58℃の間の値に制限され得る。ハードウェアで実装された温度モニタにより、有利なことに、最高温度が54℃から58℃の間の値、好ましくは約56℃を超えないことを保証できる。「ハードウェアで実装された温度モニタ」は、治療面の発熱要素の電力供給を遮断できる、ハードウェアをベースとする治療面の温度制御システムを優先的に指す。具体的には、「ハードウェアで実装された温度モニタ」は、制御デバイス、たとえばマイクロプロセッサによる発熱要素の調節とは無関係に、最高温度を超える場合に、発熱要素への電力供給の切断を優先的に可能にする。たとえば、発熱要素を調節するファームウェアが制御デバイスにインストールされており、ファームウェアに障害があるか又は不適当な性能の場合でも、ハードウェアで実装された温度モニタが、治療面の最高温度を確実に制限することが好ましい。
【0110】
他の好適な最高温度、たとえば43℃から47℃の間が好ましい場合もある。
【0111】
本発明の好ましい実施例では、最高温度は、47℃から58℃の範囲から選択される。47℃〜48℃、48℃〜49℃、49℃〜50℃、50℃〜51℃、51℃〜52℃、52℃〜53℃、53℃〜54℃、54℃〜55℃、55℃〜56℃、56℃〜57℃、又はさらには57℃〜58℃など、前述の範囲からの中間範囲が好ましい場合もある。当業者は、上記の範囲を組み合わせて、47℃から50℃、50℃から54℃、又は48℃から52℃など、最高温度に関する他の好ましい範囲を得ることができることも認識している。
【0112】
本明細書では、簡単な手段を使用して、デバイスの治療面が最高温度を超えないことを保証できる。制御デバイスに障害が発生した場合、たとえば液体が浸透した後でさえも、ハードウェアベースの温度モニタは、有利なことに、治療面が47℃から58℃の間、好ましくは54℃から58℃、好ましくは約56℃の最高温度を超えないことを常に保証できる。温度監視のためのこの追加の技術要素は、温熱治療デバイスの動作を妨げることなく、優れた安全基準を維持することを可能にする。
【0113】
接触センサは、機能している制御デバイスを使って、熱のオーバーシュートを効果的に防止できるので。さらに、ハードウェアで実装された温度モニタ用に、特に低い、又は所望の治療面に特に近い、最高の値を使用することができる。
【0114】
たとえば、43℃から47℃の所望の接触温度の場合、48℃から54℃の間、好ましくは50℃から54℃の間の最高温度を指定することが好ましい場合がある。接触センサがなければ、接触がなくなった、すなわち関連する熱負荷がなくなった場合に、温度範囲に短時間に到達する可能性がある。上記のように、接触センサを使用して、かかるオーバーシュートを防止できる。逆に、これは、接触センサを使用する場合、所望の温度範囲を超えることが、高い確率でのファームウェアの不具合を既に示していることを意味し、これは、温度モニタによる介入を正当化する。
【0115】
追加の安全要素として、デバイスは、デバイス内の短絡又はデバイスの制御されていない連続加熱がある場合に、デバイスへの電力供給を中断する安全ヒューズを有することができる。本発明による意味として、安全ヒューズは、好ましくは、たとえば、未定の時間電流の大きさが限度値を超えるとすぐにヒューズ要素が溶融することによって、電気回路が中断され得る過電流保護の仕組みとして、定義される。安全ヒューズは、デバイス内に位置し、デバイスへの電源電圧の入力とデバイス自体との間に、位置することが好ましい。制御されていない大電流が電源電圧供給部からデバイス内に流れることを特徴とする不具合が発生する場合、安全ヒューズは、有利なことに、デバイスへの電力供給を完全にシャットダウンするであろう。安全ヒューズは、十分に高速であり、他方では、極めて確実な保護作用を提供する。
【0116】
デバイスの完全な設計及びハードウェアで実装された温度モニタの備えがあっても、誤った操作による極めてまれな場合の発熱要素の連続加熱の発生を排除するのは不可能であることが判明している。本発明での意味としての発熱要素の連続加熱は、好ましくは、発熱要素の温度が制御されずに、すなわち、制御デバイスを補助的に使用した温度ベースの調節なしに、上昇することを意味する。かかる破損の際に、ハードウェアで実装された温度モニタが故障した場合、治療面は、所望の接触温度をはるかに超える温度、たとえば65℃をはるかに超える温度まで、制御不能に上昇する可能性がある。
【0117】
かかる望ましからざる連続加熱は極めてまれにしか発生しないが、患者に重傷を負わせる可能性がある。これは特に、温熱療法で治療されるべき唇などの皮膚部分が通常特に敏感であり、たとえば、発赤、腫れ、又は創傷の形成すら特徴とするという事実による。温度が65°を超えて明らかに上昇すると、こうした部位に激しい局所的な痛みをもたらし、皮膚にやけどを引き起こす可能性がある。
【0118】
説明した安全ヒューズは、最も起こり難い不具合の場合でも、治療面の加熱がオフになることを保証できるため、特に有利である。たとえば、安全ヒューズを補助的に使用して、いかなる温度測定とも無関係に、たとえば欠陥のある温度センサによる治療面の過度の加熱を抑制できる。デバイスへの電力供給は、最高の安全要件を満たす、中央規制インタフェース(central regulatory interface)を表すことが認識された。安全ヒューズをデバイスに供給する電流の流れの中に組み込むことにより、最大供給電流を確実に、一定時間超えないようにすることが可能である。所望の温度を超える発熱要素の連続加熱及び制御されない加熱は、電流の流れの増加に関係するので、このようにして、治療面の過熱を特に確実に回避できる。具体的には、電流コントローラは、電流の大きさに対応する温度を生成するほど十分長い間電流が流れる前に、非常に迅速に反応できる。
【0119】
ハードウェアで実装された温度モニタとヒューズとを組み合わせて使用すると、特に有利である。
【0120】
たとえば、安全ヒューズの1つの欠点は、ただ1度のトリガの後、安全ヒューズが、恒久的にデバイスから電源電圧を切断することである。安全ヒューズのトリガ後にデバイスの使用を再開するには、技術者による修理、たとえば安全ヒューズの交換が必要となる。コストの点では、ヒューズがトリガされると、デバイスはほぼ使用できなくなる。
【0121】
ただし、有利なことに、ハードウェアで実装された温度モニタは、デバイスへの電力供給を恒久的に遮断させる必要がないように設定されている。そうではなくて、ハードウェアで実装された温度モニタは、治療面の温度が最高温度を超える場合、超えている期間中に、発熱要素への電力供給が中断されるように設計されている。したがって、ハードウェアで実装された温度モニタによる電流の中断は、有利なことに可逆的、すなわち、治療面の温度が再び最高温度を下回るとすぐに、発熱要素は再び加熱できる。
【0122】
したがって、1度きりの不具合が発生した後でも、デバイスの通常の使用を継続できる。最高温度の選択、温度コントローラの有効性及び独立性の結果として、ユーザが不快と知覚する温度は発生せず、いったん不具合が起こると、デバイスは次の使用時に再び完全に機能できるので、ユーザも不具合に気づかないであろう。
【0123】
ハードウェアで実装された温度モニタの安全機能と安全ヒューズとの組合せが、安全バリアの階層による可能な限り最も経済的な手段で、驚くほど確実な温度制御を可能にする。
【0124】
本発明の好ましい実施例では、ハードウェアで実装された温度モニタは、治療面の温度を測定する少なくとも第2の温度センサと比較器とを有し、比較器は、治療面の温度を最高温度と比較し、最高温度を超えた場合、少なくとも1つの発熱要素への電流供給を停止する。本発明での意味として、比較器は、2つの電圧を比較する電子回路を優先的に指し、出力は、2つの電圧のどちらがより高いかをバイナリ形式で示す。従来技術では、様々な比較器が十分によく知られており、比較器は、2つのアナログ電圧を使用して1つのバイナリ出力信号を出力し、どちらの入力電圧がより高いかを示すのに好適である。比較器回路の実例として、シュミット・トリガが挙げられ得る。分圧器を使用して、比較器の一方の入力に、電圧の基準値が印加されることが好ましい。この基準値は、好ましくは、治療面の温度が最高温度に等しい場合に、第2の温度センサが示す電圧値に相当する。比較器のもう一方の入力には、治療面の温度によって変わる温度センサの出力電圧が入ることが好ましい。特に好ましい温度センサは、NTCサーミスタ、すなわち熱抵抗器を備える。これは負の温度係数を持っているため、温度が上昇すると抵抗値が減少し、より大きい電流が流れる。しかし、正の温度係数を有するポジスタ、すなわち、PTCサーミスタも使用でき、それにより、温度が上昇すると、抵抗値が増加し、より小さい電流が流れる。
【0125】
治療面の温度が上昇すると、第2の温度センサによって調節された比較器での電圧値が、最高温度に対応する電圧基準値に向かって動く。温度が最高温度を超えるとすぐに、比較器上の出力信号がバイナリ方式で変化する。比較器は、好ましくは、発熱要素の電力供給に統合されている。言い換えれば、治療面の温度が最高温度に達する前に、比較器は、好ましくは、発熱要素の電源電圧を利用可能にする。しかし、温度が最高温度より高くなるとすぐに、比較器の出口が発熱要素への電力供給を遮断し、中断する。治療面の温度が再び低下すると、電源電圧は、有利なことに、比較器によって再び利用可能になる。結果として、発熱要素の可逆的なオン及びオフの切替えは、治療面の温度が最高温度を超える期間中にだけ行うことができる。加えて、デバイスの電源がオンになったときに、比較器が制御デバイスによってロック解除されることが好ましい場合がある。したがって、デバイスの正しい起動が行われない場合、比較器は、設定段階で、発熱要素の電流供給が中断されるように構成される。
【0126】
説明されているハードウェアで実装された温度モニタの好ましい実施例は、試験において、特に堅牢で信頼できることが証明されている。好ましい実施例はまた、安全スイッチの可逆性及び単純な設計により、製造及び保守コストが低いことも特徴とする。
【0127】
制御デバイスに依存しない設計、及び専用の温度センサにより、制御デバイスの部品に障害が発生した場合でも、確実な動作が保証され得る。
【0128】
加えて、比較器を使用する説明された形態の、ハードウェアで実装される温度モニタは、比較器が広く使用されている電子部品であり、比較器の信頼性ばかりでなく比較器の高速スイッチング容量によっても特徴付けられるので、特に高速である。したがって、たとえば、スイッチング時間がナノ秒以下の比較器が利用可能である。
【0129】
本発明の好ましい実施例では、デバイスは、安全ヒューズが、治療面を65℃から70℃の間、好ましくは65℃の値に1秒間加熱することに対応する、最大電流の閾値を有することを特徴とする。試験によると、65℃を上回る温度への1秒を超える温度上昇のみが、痛みの感覚にとっては非常に危険であり、皮膚の部分に損傷を与える可能性があることが示された。有利なことに、こうしたパラメータ値に対して安全ヒューズを設定することにより、治療面の危機的ではない温度上昇の場合に、安全ヒューズが早まってトリガされることはないであろう。このようにして、安全性を損なうことなく経済効率を高めることが可能である。当業者は、発熱要素の電気的パラメータに基づいて、示された値を保証するためにどの安全ヒューズを選択すべきかを知っている。この目的のために、治療面の温度を測定するのと同時に、電流の流れを測定できる。加えて、好ましくは20ミリ秒未満の電流増加に反応する、速断型の安全ヒューズを使用することが特に好ましい。したがって、電流の20ミリ秒未満の短期間の増加でさえ、治療面の熱慣性のために、1秒を超える温度上昇につながる可能性があることが認識された。
【0130】
同様に、溶融によって機能する、リセット不可能で純粋に温度に依存する温度ヒューズと比較して、ここで使用される電流に依存する安全ヒューズには、いくつかの利点がある。リセット不可能で純粋に温度に依存する温度ヒューズの場合、閾値を超える電流が印加されると溶融が起こるわけではなく、所定の最高温度よりも高い外部温度が加わったときにだけ溶融が起こる。したがって、リセット不可能で純粋に温度に依存する温度ヒューズとは対照的に、電流に依存する安全ヒューズは、比較的長期間作用する電流の上昇した結果として、ある一定の望ましからざる温度に達する前でも反応できる。同様に、リセット不可能で純粋に温度に依存する温度ヒューズは、所定の最高温度を超える外部温度がある場合に、常に一定の反応時間を必要とする。このようにして、危険な、さらなる温度上昇が生じる可能性がある。これとは対照的に、電流に依存する安全ヒューズは、最小限のシステム関連のレイテンシ時間で、より迅速に反応する。
【0131】
本発明の好ましい実施例では、デバイスは、安全ヒューズの閾値が好ましくは1Aから2.5Aの間、特に好ましくは約2Aであることを特徴とする。試験によると、好ましい発熱要素に関して、前述の閾値は、特に十分な信頼性を持って、治療面の温度が1秒以内に65℃から70℃の温度を超えるのを保証することが示されている。したがって、1Aから2.5Aを超える安全ヒューズの溶融により、治療面の温度が確実に、健康に有害な範囲に入り得ないようにすることが可能である。したがって、通常の治療の場合、2.5A未満、好ましくは1Aの通常の治療電流が生じる。不具合が生じる場合、たとえば連続加熱の場合、増加した電流が流れるであろう。この場合、ヒューズが介在し、制御されていない加熱を効果的に防止する。
【0132】
また、ハードウェアで実装された温度モニタ及び/又は安全ヒューズから選択された安全要素の1つだけを使用することが好ましい場合もある。このようにして、特に単純な構造を実装することができ、それによって許容可能なレベルの安全性が実現する。
【0133】
本発明のさらに好ましい実施例では、デバイスは、デバイスが電力供給ユニットと、電力供給ユニットの電圧を監視する電圧モニタとを有することを特徴とする。本発明での意味として、電力供給ユニットは、好ましくは、デバイスを動作させるための電気エネルギーを供給する。好ましい電力供給ユニットは、通常の電池又は充電式電池である。これらは通常、DC電圧を提供することで電気エネルギーを供給する。好ましい実施例では、電力供給ユニットによって供給される電圧は、電圧モニタで監視される。本発明での意味として、電圧モニタは、電力供給ユニットの電圧を測定し、電圧が所定の限界値を下回った場合に動作をトリガできる電気回路を優先的に指す。従来技術では、電圧モニタのいくつかの変形例が知られており、当業者は、どの電圧モニタがどの種類の電力供給ユニット、すなわち具体的には、電池又は充電式電池に好適であるかを知っている。電圧モニタは、電力供給ユニットの電圧がある一定の値を下回るのを検出した場合、割り込み要求(IRQ:interrupt request)を、好ましくはマイクロプロセッサである制御デバイスに送信することが好ましい。このタイミング中に治療サイクル、すなわち加熱段階又は治療段階が実施中である場合、割り込み要求が治療サイクルを中止させる。これは、さらなる安全の仕組みを示している。電力供給ユニットの電圧が不十分であると、制御デバイス、たとえばマイクロプロセッサの障害を引き起こす可能性があることが認識された。この場合、制御デバイスを用いた接触温度の温度調節が正しく実行されないという事象が起こる場合があり、治療面の制御されない加熱が生じる。電圧モニタは、デバイスの安全性を高め、たとえば電池に欠陥があった場合の健康被害を回避するのに、さらに寄与できる。
【0134】
本発明の好ましい実施例では、デバイスは、デバイスが、システム・データ及び/又はエラー・メッセージを格納するデータ・メモリを有することを特徴とする。好ましいシステム・データは、好ましくは相異なる種類の治療サイクルの使用を別々にカウントする、治療サイクル・カウンタを含む。たとえば、より短い又はより長い治療サイクルを選択できる場合、治療サイクルは別々にカウントされることになる。さらにシステム・データは、好ましくは、ブート・カウンタ、すなわち、デバイスが起動された頻度のカウンタばかりでなく、現在のエラー状態と共に、エラー・メッセージに関する情報も有する。
【0135】
好ましくは、以下のエラー・メッセージを格納できる。「リセット」は、電圧モニタがリセットをトリガしたことを示す。「ウォッチドッグ」は、ファームウェアでウォッチドッグ・リセットが発生したこと、すなわちソフトウェア・エラーに起因するシステムの再起動を示す。エラーを報告するために、エラーが発生したときに装置が動作していたプログラム・モードが判断されることがさらに好ましい。「温度が高すぎる」は、温度センサで測定された温度が高すぎるか、又は温度センサに欠陥があることを示し得る。「温度が低すぎる」は、温度センサで測定された温度が低すぎるか、又は温度センサに欠陥があることを示し得る。「接触温度に達した」は、所望の接触温度に達したかどうか、又は予熱段階の際にエラーが発生したことを示し得る。
【0136】
有利なことに、格納されたシステム・データ及びエラー・メッセージは、デバイスの診断及びトラブルシューティングに使用できる。たとえば、これらのデータは、顧客が欠陥のあるデバイスを送ってくるときに読み出すことができる。データに基づいて、発生したエラー、たとえば「温度が高すぎる」を、治療サイクル数又はウォッチドッグ・リセットに関する別のシステム・データと、互いに関連付けることが可能である。したがって、これらのデータに基づいて、開発段階の際及びその後に、デバイスの安全機能を継続的に最適化することが可能である。システム・データ及びエラー・メッセージを格納するデバイスの機能により、有意のデータに基づいて、デバイスのハードウェア及びソフトウェア部品を継続的に改善できる。
【0137】
さらに好ましい実施例では、デバイスは、ファームウェアが、少なくとも治療面の温度調節を制御する制御デバイスにインストールされ、ファームウェアは、ファームウェアが実行されるかどうかを監視するウォッチドッグ・カウンタ(WDC:watchdog counter)を有することを特徴とする。本発明での意味として、ファームウェアは、好ましくは、ソフトウェア、すなわち、制御デバイス、好ましくはマイクロプロセッサに埋め込まれる、コンピュータで実施される処理のための命令と理解される。言い換えれば、ファームウェアは、好ましくは、デバイスのハードウェア、すなわち、特に発熱要素及び温度センサと機能的にリンクされたソフトウェアを有する。好ましくは、ファームウェアは、デバイスが起動されたときに実行され、デバイスのこうしたハードウェア部品の監視及び制御機能を引き継ぐ。したがって、制御デバイスは、治療サイクル中に発熱要素の電力供給を制御するために、好ましくはファームウェアに基づいて、温度センサの測定データばかりでなくユーザ入力も評価する。本発明での意味として、ハードウェアで実装された部品は、好ましくは部品であり、ハードウェアで実装される部品の機能は、ファームウェアの正しい実行とは無関係に保証される。上記のように、温度モニタはハードウェアで実装されているため、温度モニタの機能、すなわち最高温度の制限は、制御デバイス上のファームウェアの正しい実行とは無関係に行うことができる。したがって、ファームウェアのシステム障害の場合でさえも、ハードウェアで実装された温度モニタは、治療面の最高温度を迅速且つ正確に制限できる。
【0138】
特に好ましい実施例では、制御デバイスのファームウェアは、ハードウェアで実装されたウォッチドッグ・カウンタを補助的に使用して監視される。特に好ましいのは、タイムアウト・ウォッチドッグである。タイムアウト・ウォッチドッグは、好ましくは、治療段階を開始する前に、ファームウェアによって作動する。治療段階の間、ファームウェアは、所定の時間間隔の内にタイムアウト・ウォッチドッグに信号を送信し、タイムアウト・ウォッチドッグをリセットする。タイムアウト・ウォッチドッグがリセットされない場合、これは好ましくは、ファームウェアの再起動を引き起こすことになる。時間間隔は、好ましくは、ファームウェアによる発熱要素の温度測定及び調節を実行する、予測される時間に基づき、たとえば、2ミリ秒から10ミリ秒の間とすることができる。かかるタイムアウト・ウォッチドッグは、有利なことに、少なくともデバイスの治療段階の間、ファームウェアが正しく機能し、治療面の温度が監視されることを保証できる。したがって、ハードウェアで実装されたウォッチドッグを使用してファームウェアを監視することにより、好ましくは、たとえばタイムアウト・ウォッチドッグを補助的に使用して、ファームウェアが正しく機能せず、所定の時間間隔が維持されない場合に、治療段階が中断されるのを確実にすることが可能である。したがって、上記の安全機能に加えて、デバイスのさらなる安全機能が利用可能であり、これは、特にハードウェアで実装された温度モニタと組み合わせて、ファームウェアが正しく機能していない場合でも、治療面の過熱を確実に排除する。
【国際調査報告】