特表2021-534929(P2021-534929A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-534929(P2021-534929A)
(43)【公表日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】注射器ペン
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20211119BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20211119BHJP
【FI】
   A61M5/315 550C
   A61M5/315 550X
   A61M5/24 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-523768(P2021-523768)
(86)(22)【出願日】2020年3月25日
(85)【翻訳文提出日】2021年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2020058428
(87)【国際公開番号】WO2020193661
(87)【国際公開日】20201001
(31)【優先権主張番号】1904051.8
(32)【優先日】2019年3月25日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520383278
【氏名又は名称】シェイリー エンジニアリング プラスチックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHAILY ENGINEERING PLASTICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】ノウルズ,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ウフマン,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066HH03
4C066HH13
4C066HH22
4C066QQ32
(57)【要約】
固定用量注射器ペンは、回転されて、複数用量カートリッジ8から薬剤の用量をセットして送達する伝達要素30を備える。環状ラチェット34は、その周囲に少数の係合位置を画定し、伝達要素30の回転をピストンロッド駆動部24に選択的に伝達する。具体的には、環状ラチェット34は、伝達要素30が用量送達方向に回転されたときで、伝達要素30が、係合位置の1つに到達するのに十分な角度だけ反対方向の用量設定方向に予め回転されている場合にのみ、伝達要素30の回転をピストンロッド駆動部24に伝達する。好ましくは、軸方向に移動する注射器要素4は、螺旋状の連結部31,32を介して伝達要素30の回転を駆動するために使用される。ピストンロッド16が所定の軸方向位置まで前進したとき、最後の用量ロックアウト機構42,44は、係合時に環状ラチェット34を維持し、更なる用量が設定されるのを防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドガイド(20)と、
前記ピストンロッドガイド(20)に対して軸方向に移動することなく回転するように構成されたピストンロッド駆動部(24)と、
前記ピストンロッド駆動部(24)の回転が前記ピストンロッドガイド(20)に対する軸方向移動を駆動するように、前記ピストンロッド駆動部(24)及び前記ピストンロッドガイド(20)に連結されたピストンロッド(16)と、
前記ピストンロッド駆動部(24)を第1の回転方向にのみ回転させ、前記ピストンロッド(16)を第1の軸方向に移動させる第1の環状ラチェット(26)と、
前記ピストンロッドガイド(20)に対して軸方向に移動することなく前記第1の回転方向または反対側の第2の回転方向に回転するように構成された伝達要素(30)と、
前記伝達要素(30)と前記ピストンロッド駆動部(24)に対して選択的に係合する第2の環状ラチェット(34)と、を備えており、
前記第2の回転方向における前記伝達要素(30)の回転は、前記ピストンロッド駆動部(24)に伝達されず、
前記伝達要素(30)が前記第2の環状ラチェット(34)の係合を可能にするのに十分な所定の角度だけ前記第2の回転方向に予め回転されている場合にのみ、前記伝達要素(30)の前記第1の回転方向への回転が前記ピストンロッド駆動部(24)に伝達される、
注射器ペン。
【請求項2】
前記第2の環状ラチェット(34)は、その円周の周りに等間隔に配置されたn個の係合位置を含み、前記所定の角度は360/n度であり、前記ピストンロッド駆動部(24)の360/n度の回転は、前記ペンから所定の用量の薬剤を送達するのに必要な距離だけ前記ピストンロッド(16)を前進させる、請求項1に記載の注射器ペン。
【請求項3】
n=2である、請求項2に記載の注射器ペン。
【請求項4】
前記第2の環状ラチェット(34)の各係合位置は、ラチェットアーム(38)が凹部(36)に係合可能な角度位置であり、前記凹部(36)と前記ラチェットアーム(38)との断面形状は、前記伝達要素(30)が前記第2の回転方向に回転するときに前記ラチェットアーム(38)が前記凹部(36)を乗り越えるが、前記伝達要素(30)が前記第1の回転方向に回転するときに前記ラチェットアーム(38)が前記凹部(36)に係合するようになっている、請求項2または請求項3に記載の注射器ペン。
【請求項5】
前記凹部(36)は、前記伝達要素(30)の内周面に形成された軸方向溝であり、前記ラチェットアーム(38)は、前記ピストンロッド駆動部(24)から外方に延びている、請求項4に記載の注射器ペン。
【請求項6】
さらに最後の用量ロックアウト機構(42,44)を含んでおり、前記ピストンロッド(16)が所定の軸方向位置に移動したときに、前記第2の環状ラチェット(34)の離脱が防止されると共に、前記第1及び第2の環状ラチェット(26,34)が、前記伝達要素(30)が前記第2の回転方向に回転するのを防止する、請求項4または請求項5に記載の注射器ペン。
【請求項7】
前記最後の用量ロックアウト機構(42,44)は、前記第2の環状ラチェット(34)の前記アーム(38)の後方で駆動されるとき、前記アーム(38)が前記第2の環状ラチェット(34)の前記凹部(36)から外れることを防止する楔(52)を含む、請求項6に記載の注射器ペン。
【請求項8】
前記ピストンロッドガイド(20)に対して回転することなく、第1の軸方向又は反対の第2の軸方向に移動するように構成された注射器要素(4)と、
前記第1又は第2の軸方向における前記注射器要素(4)の軸方向の移動により、前記伝達要素(30)が前記第1又は第2の回転方向にそれぞれ回転するように構成される、前記注射器要素(4)と前記伝達要素(30)との間の螺旋状の連結部(31,32)と、
をさらに含んでいる、請求項1〜7のいずれかに記載の注射器ペン。
【請求項9】
前記ピストンロッド(16)と前記ピストンロッド駆動部(24)との間のねじ連結部(17,25)と、前記ピストンロッド(16)と前記ピストンロッドガイド(20)との間に非回転連結部(18,21)とを含んでおり、
前記ねじ連結部(17,25)回りの前記ピストンロッド駆動部(24)の回転により、前記ピストンロッド(16)を前記ピストンロッドガイド(20)に対して回転させることなく軸方向に移動させる請求項1〜8のいずれかに記載の注射器ペン。
【請求項10】
前記ピストンロッド(16)と前記ピストンロッド駆動部(24)との間の共回り結合部と、前記ピストンロッド(16)と前記ピストンロッドガイド(20)との間のねじ結合部とを含んでおり、
前記ピストンロッド駆動部(24)の回転により前記ピストンロッド(16)が回転し、前記ピストンロッドガイド(20)の前記ねじ結合部内の前記ピストンロッド(16)の回転が前記ピストンロッド(16)を軸方向に移動させる請求項1〜8のいずれかに記載の注射器ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
注射器ペンは、薬剤の所定の用量を設定し、その用量を薬剤カートリッジから患者に送達するための機構を提供する。薬剤カートリッジは、典型的には、チャンバ内に複数の用量の薬剤を含み、注射器ペンは、ペンから徐々に延びて、チャンバから用量を送達するピストンロッドを備え、ピストンロッドは、送達される用量の体積を決定する距離を移動する。このペン機構は、部分的な用量のみが設定された場合に、薬剤の送達を防止する。
【背景技術】
【0002】
注射器ペンの多くのデザインが知られている。典型的には、ペンは円筒形のペン本体および用量選択器を有する。操作の用量設定フェーズにおいて、使用者は、用量選択器をペン本体に対して軸方向および/または回転方向に、送達のための用量を決定する位置まで移動させ、次いで、薬物送達段階において、使用者が用量選択器をペン本体内に軸方向に押して、用量を送達する。ペンは、薬剤カートリッジをペンに取り付けるための手段と、ペンの軸に沿って移動して薬剤カートリッジのピストンに作用するピストンロッドとをさらに含む。薬物送達段階では、ペンの近位端は、例えば、使用者の親指によって押されて、用量選択器をペン本体に押し込む。薬物送達の間、ペン本体内の駆動機構は、用量選択器の移動を、カートリッジから必要な用量を送達するのに適した距離におけるピストンロッドの軸方向移動に変換する。したがって、ピストンロッドによって移動される距離は、用量選択器によって移動される距離によって決定されるが、2つの距離は等しい必要はない。同じカートリッジから薬剤を送達するためにペンを使用するたびに、ピストンロッドはさらに軸線に沿って前進する。ピストンロッドは、用量設定段階中に軸方向に移動しない。
【0003】
多くの場合、注射器ペンによって送達される薬物の用量は、使用者によって自由に選択されるべきではなく、所定の用量に適合するように予め決定した一定の体積であることが望ましい。使用者は、部分的な用量のみを設定して送達することが防止されるべきである。
【0004】
注射器ペンは、単一のカートリッジから複数の用量の薬物を送達することができるので、繰り返し使用された後、カートリッジは、薬剤の完全な投与量よりも少ない状態に達することができる。その場合、典型的には、さらなる使用を防止するためにペンを自動的にロックする規制が必要である。この機能は、“最後の用量ロックアウト”と呼ばれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、請求項1に記載の固定用量注射器ペンを提供する。
【0006】
本発明の好ましいが非必須の特徴は、従属請求項に定義されている。
【0007】
本明細書において、用語“薬物”は、測定された用量でペンによって送達される任意の流体物質を記述するために使用される。それは、典型的には、例えば医薬または美容目的のために、人または動物の被験体の体内に注入される生物学的に活性な物質である。しかしながら、本発明は、固定された量の物質を分配することが望まれる他の用途で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による注射器ペンを通る長手方向の断面であり、(a)は注射器要素が、完全に挿入された位置にあるものであり、(b)は注射器要素が、完全に引き出された位置にあるものである。
図2図2は、図1の注射器ペンの一部の切断斜視図である。
図3図3は、注射器ペンのピストンロッドガイドを通る径方向断面であり、図1のC−C断面である。
図4図4は、注射器ペンの第1の環状ラチェットを通る径方向断面であり、図1のD−D断面である。
図5図5は、注射器ペンの第2の環状ラチェットを通る径方向断面であり、図1のE−E断面である。
図6図6は、図1の注射器ペンの最後の用量ロックアウト機構を通る縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
注射の好ましい実施形態である注射器ペンは、図1図6に示されている。注射器ペンは、ペンの長手方向軸3に中心を有する略円筒形の中空のペン本体2を備えている。注射器要素4は、ペン本体2に取り付けられ、薬剤の用量を設定または薬剤を送達するためにペン本体2に対して軸方向にスライドするように構成されている。ペン本体2と注射器要素4との間の相対的な回転は、一対の平坦部やキーおよびキー溝(図示せず)のような相補的な特徴によって防止される。注射器要素4の近位端は、ペン本体2の近位端から突出して、ペン本体2から引き出したり(図1b)、ペン本体2に押し戻したり(図1a)するために使用者が手動で握ることができる注射器ボタン6を形成している。
【0010】
薬剤カートリッジ8は、ペン本体2の遠位端に装着されている。薬剤カートリッジ8は、患者への注射のための薬剤の複数の用量を含むチャンバ10を備えている。薬剤カートリッジ8は、薬剤カートリッジ8をペン本体2内に保持するための連結手段を提供するカバー11によって囲まれている。カバー11は、さらに、チャンバ10と流体連通する皮下注射針(図示せず)を取り付けるためのねじ12または他の手段を備えている。チャンバ10内のピストン14は、ペンの軸3に沿って押されて、針を介してチャンバ10から薬剤の用量を押し出すことができる。ペンの遠位端は、使用しないときに、取り外し可能なペンキャップ15によって覆われている。
【0011】
注射器ペンは、軸3に沿ってペン本体2内に部分的に位置すると共に、取り付けられた薬剤カートリッジ8のチャンバ10を貫通するためにペン本体2の遠位端から部分的に延在するピストンロッド16を備えている。軸3に沿って近位端からペン本体2の遠位端に向かう方向(“第1の軸方向”)に移動することにより、ピストンロッド16は、軸3に沿ってピストン14を押して、薬剤の用量をチャンバ10から送出する。
【0012】
本発明のこの実施形態では、ピストンロッド16は、断面が固形であり、その外面に螺旋状のねじ17を担持している。ピストンロッド16はまた、その長さに沿って延在して対向する一対の平坦部18を備え、その結果、ねじ17は不連続である。
【0013】
ピストンロッドガイド20は、回転することができないようにペン本体2内に固定されている。ピストンロッドガイド20は、ピストンロッド16と同心状に取り付けられ、ピストンロッド16の平坦部18に係合してピストンロッド16がピストンロッドガイド20を通じてスライドするのを許容するがピストンロッド16が回転するのを防止する対向する一対の内部平坦部21を備えている(図3)。ピストンロッド16とピストンロッドガイド20との間の同様のスライド及び非回転連結を達成するために、例えば、ピストンロッド16のキー溝に作用するガイド20上のピン、又はピストンロッド16及びピストンロッドガイド20を、他の相補的な非円形断面を有するようにすることなど、平坦部18,21以外の係合方法が使用できることは明らかであろう。
【0014】
ピストンロッド16の軸方向移動は、回転可能であるが軸方向に並進しないようにペン本体2内に同軸に取り付けられたピストンロッド駆動部24によって駆動される。ピストンロッド駆動部24の穴は、ピストンロッド16上の雄ねじ17と係合する雌ねじ25を備えている。ピストンロッド16がピストンロッドガイド20によって回転することが防止されるので、ねじ連結部回りのピストンロッド駆動部24の回転は、ピストンロッド16を軸3に沿ってスライドさせる。第1の環状ラチェット26(図4)は、ピストンロッド16を第1の軸方向に前進させる方向である第1の回転方向のみにピストンロッド駆動部24の回転を許容し、カートリッジ8から薬剤の用量を送達する。図示の実施形態では、第1の環状ラチェット26が、ラチェットアーム27と円形の爪28とを備えている。ラチェットアーム27は、ピストンロッド駆動部24と一体的に形成され、それから外側に延びている。爪28は別個の要素として形成され、ペン本体2に固定的に装着される。ラチェット26は他の形態を取り得ることが明らかである:例えば、ラチェットアーム27は、ペン本体2又はピストンロッドガイド20と一体的に形成されたピストンロッド駆動部24および/または円形の爪28に取り付けられた別個の要素によって提供されることができる。
【0015】
筒状の伝達要素30は、ペン本体2に同心状に、ピストンロッド駆動部24の外側、且つ注射器要素4の内側に取り付けられている。伝達要素30は、軸3を中心に回転可能であるが、軸3に沿って移動することができないように拘束されている。螺旋状の雄ねじ31は、伝達要素30の外側円筒面から突出し、注射器要素4の内側円筒面内の螺旋状の雌溝32と係合する。ねじ31と溝32とによって形成される螺旋状の連結部は、注射器要素4をいずれかの軸方向にスライドさせることにより伝達要素30の回転を引き起こす非自己係止である。螺旋状の連結部が、例えば、雄ねじ31と雌溝32とを相互に交換するなどの代替的な方法で達成できることや、雄部品は完全なねじである必要はなく、溝32に沿って移動する小さな突起を備えることができることは明らかである。図示の実施形態では、ねじ31および溝32は2つの始まりを有しているが、異なる数の始まりが選択され得る。
【0016】
伝達要素30とピストンロッド駆動部24との間には、伝達要素30の回転をピストンロッド駆動部24に選択的に伝達するための第2の環状ラチェット34が取り付けられている。図5に示すように、第2の環状ラチェット34は、ピストンロッド駆動部24から外方に延びる2つの弾性ラチェットアーム38と、伝達要素30の内側円筒面37に形成された径方向で対向する一対の軸方向溝36とを備えている。本発明の図示された実施形態では、ラチェットアーム38は、ピストンロッド駆動部24に固定された別個のラチェット要素39の一部であるが、代替の実施形態では、ピストンロッド駆動部24と一体に形成することができることは明らかである。各溝36は非対称の断面を有し、一方の壁は浅い角度であり、対向する壁は急角度であり、各ラチェットアーム38の先端は、第1の回転方向において伝達要素30の回転中に溝36の急勾配の壁に対して引っ掛かることができるが、反対方向(以下、“第2の回転方向”)の伝達要素30の回転中には溝36の浅い壁を乗り越えることができる相補的な形状を有している。軸方向に延びる溝36は、ラチェットアーム38を選択的に係合することができる唯一の凹状構造ではないことは明らかである:例えば、内側円筒面37は、同様の機能を達成するために適切な形状の穴または円周方向に面する段差を備えていてもよい。
【0017】
注射器要素4が用量設定段階でペン本体2から引き出されると、それは伝達要素30を第2の回転方向に回転させる。そして、ラチェットアーム38の先端はラチェット溝36を乗り越えて、ピストンロッド駆動部24に回転を伝達しない。第1の環状ラチェット26は、ラチェットアーム38と内側円筒面37との間の摩擦接触から生じる可能性のある第2の回転方向へのピストンロッド駆動部24の回転を防止する。
【0018】
注射器要素4が用量送達段階でペン本体2内に押し込まれると、それは伝達要素30を第1の回転方向に回転させる。次いで、ラチェット溝36は、ラチェットアーム38の先端としっかりと係合し、ピストンロッド駆動部24に回転を伝達することができ、これは、ピストンロッド16を軸3に沿って前進させ、薬剤カートリッジ8から用量を送達する。
【0019】
ラチェットアーム38は、伝達要素30の円周の周りのある係合位置においてのみ溝36に係合することができることに留意されたい。これらの係合位置の間では、ラチェットアーム38は、いずれかの方向に回転すると、伝達要素30の内側円筒面37上を自由にスライドする。
【0020】
注射器ペンが薬剤の投与を完了したとき、注射器要素4は、図1aに示すように、ペン本体2内に完全に押し込まれてその最終位置に到達し、伝達要素30は、第2の環状ラチェット34が係合された状態で第1の回転方向に回転されている。ここで、注射器要素4が新しい投与量を設定するために引き出された場合には、ラチェットアーム38が内側面37上をスライドしつつ、伝達要素30が第2の回転方向に回転させられる。ラチェットアーム38がラチェット溝36に再び係合する前に、伝達要素30が第2の回転方向に180°回転する必要があることが、図5から分かる。180°に達する前に回転が逆転されると、アーム38は係合せず、回転はピストンロッド駆動部に伝達されない。第二の回転方向の用量設定回転が180°を超えると、ラチェットアーム38は最初に溝36を乗り越えて内側面37上をスライドし、その後方向を逆転させて薬剤を送出すると、アーム38は後方にスライドして溝36を180°の係合位置に再係合させる。そこから、第1の回転方向における伝達要素30の継続的な回転は、注射器要素4が再び最終位置に到達するまで、ピストンロッド駆動部24を180°回転駆動させる。
【0021】
ピストンロッド16のねじ17を適当なピッチに選択することにより、ピストンロッド駆動部24の180°の回転がカートリッジ8から所望の固定用量の供給をもたらすように配置することができる。伝達要素30およびピストンロッド駆動部24の180°の回転は、図1bに示す位置までの所定の軸方向距離における注射器要素4の移動に対応する。所定の距離は、螺旋状の連結部31,32のピッチに依存する。注射器要素4は、好ましくは、所定の距離よりも有意に大きい軸方向距離を移動するのを防止するように拘束される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態による注射器ペンはまた、薬剤カートリッジ8が予め定められた一定の投与量よりも少ない場合に、ペンが用量をセットして送達するために使用されることを防止する、最後の用量ロックアウト機構を含む。ペンが繰り返し再使用されると、ピストンロッド16は軸3に沿って前進して、カートリッジ8からの薬剤の用量を変位させる。このように、ピストンロッド16の位置はカートリッジ8内に残っている薬剤の量の尺度である。
【0023】
ピストンロッド16は、その近位端に拡大頭部40を備えている。図1および図2は、ペンの早期の状態を示しており、ピストンロッド16がその開始位置にあるかまたはその近くにあり、近位方向に完全に延びている。複数の用量の送達では、ピストンロッド16は、ピストンロッド16の頭部40が図6に示された最後の用量ロックアウト機構に近づくまで、遠位方向に前進する。最後の用量ロックアウト機構は、カラー42と、伝達要素30内のピストンロッド16を取り囲むロック要素44とを備えている。カラー42は、第2の環状ラチェット34に固定されている。ロック要素44は、カラー42に対して軸方向に移動可能であり、カラー42とロック要素44との間に取り付けられたばね46によって、第1の軸方向に移動するように付勢されている。しかし、ロック要素44は、カラー42の近位面49に係合する一対のフック48によって移動することが防止される。
【0024】
ピストンロッド16が前進すると、その頭部40はフック48の傾斜したカム面50に接触する。図6の上側黒色矢印で示すように、フック48が近位面49から外れるまで、頭部40における第1の軸方向の更なる前進がフック48を離間させる。ここで、ばね46は、図6の下側黒矢印で示すように、ロック要素44を第1の軸方向に移動させ、それにより、係止楔52が第2の環状ラチェット34のラチェットアーム38から径方向内側の位置に押し込まれる。ピストンロッド16が前進しているので、第2の環状ラチェット34を係合させなければならないことが想起される。したがって、そのラチェットアーム38は、外側に屈曲されて、伝達要素30の溝36に入り、楔52の挿入のためにそれらの背後に空間を残す。
【0025】
後続の試みが注射器要素4を後退させ、伝達要素30を第2の回転方向に回転させて新たな用量を設定すると、楔52はラチェットアーム38が溝36から外れることを防止し、伝達要素30はピストンロッド駆動部24に対して回転がロックされたままである。第1の環状ラチェット26はピストンロッド駆動部24の第2の回転方向への回転を防止する。これにより、伝達要素30の回転が防止され、ペンが動作不能になるように新たな用量を設定することができる。
【0026】
明らかなように、ピストンロッド16の長さは、その頭部40が、最後の用量ロックアウト機構をカートリッジ8における最終的な完全用量の送達の完了か近くまで作動させるように選択されるべきである。
【0027】
本発明の好ましい実施例では、第2の環状ラチェット34の2つの係合位置があり、180度離間している。しかしながら、代替的な実施形態では、360/n度間隔で等間隔に配置された異なる数nの係合位置があり得る。好ましくは、1≦n≦4である。
【0028】
ピストンロッド駆動部24とピストンロッドガイド20との別の構成が可能であり、ピストンロッドガイド20とピストンロッド16との間のねじ結合部と、ピストンロッド16とピストンロッド駆動部24との間のスライド、共回り結合部とを含む。例えば、ピストンロッド駆動部24は、ピストンロッド16の外部平坦部18と係合し、ピストンロッド16をピストンロッド駆動部24と共回転させるための一対の内部平坦部を備えることができる。これにより、ピストンロッドガイド20のねじ結合部内のピストンロッド16の回転は、ピストンロッド16を軸3に沿って前進させるように駆動する。
【0029】
例示された実施形態のいくつかの変形例が上記に記載されている。逆の記載がない場合には、各変形例を他のものとは独立して採用することができ、それらを任意の組み合わせで使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021年4月30日
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【国際調査報告】