特表2021-535264(P2021-535264A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-535264低遊離2−メルカプトエタノールエステルおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-535264(P2021-535264A)
(43)【公表日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】低遊離2−メルカプトエタノールエステルおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20211119BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20211119BHJP
   C07C 319/28 20060101ALI20211119BHJP
   C07C 321/04 20060101ALI20211119BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/37
   C07C319/28
   C07C321/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2021-510947(P2021-510947)
(86)(22)【出願日】2019年8月28日
(85)【翻訳文提出日】2021年4月26日
(86)【国際出願番号】US2019048612
(87)【国際公開番号】WO2020047129
(87)【国際公開日】20200305
(31)【優先権主張番号】62/723,943
(32)【優先日】2018年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/878,040
(32)【優先日】2019年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518322698
【氏名又は名称】ピーエムシー オルガノメタリクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロス,ケビン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ノリス,ジーン ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ダンラップ,ジェレミー
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB48
4H006AD16
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC19
4H006TA04
4J002AA001
4J002BD031
4J002EV026
4J002FD036
(57)【要約】
新規の低遊離2−メルカプトエタノールエステルは、アルキルスズ逆エステル安定剤を調製するために使用されており、同様にPVCの配合、処理中の臭気、または最終PVC物品の臭気が、アルキルスズ逆エステル安定剤の広範な使用を妨げているPVC用途のための、それらのアルキルスズ逆エステル安定剤、またはアルキルスズチオグリコール酸安定剤、またはアルキルスズメルカプチドの熱性能を向上するために使用されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準的な2−メルカプトエタノールエステルからの2−メルカプトエチルエタノールの除去を通じて得られる低遊離2−メルカプトエタノールエステル(LFMEE)であって、得られる前記LFMEEが、1.0重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する、低遊離2−メルカプトエタノールエステル。
【請求項2】
前記得られるLFMEEが、0.7重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する、請求項1に記載のLFMEE。
【請求項3】
前記得られるLFMEEが、0.5重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する、請求項1に記載のLFMEE。
【請求項4】
アルキルスズチオグリコール酸エステル安定剤の熱性能を向上させるために、請求項1〜3に記載のLFMEEを使用する、方法。
【請求項5】
アルキルスズ逆エステル安定剤の熱性能を向上させるために、請求項1〜3に記載のLFMEEを使用する、方法。
【請求項6】
アルキルスズメルカプチド安定剤の熱性能を向上させるために、請求項1〜3に記載のLFMEEを使用する、方法。
【請求項7】
前記メルカプチドが、ドドシルメルカプタンまたはカルボキシレートであり得る、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記メルカプチドが、マレエートである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記安定剤が、C1〜C8の範囲のアルキル基のスルフィド架橋をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
アルキルスズ基のモノ構成成分およびジ構成成分が、100%ジ〜100%モノの範囲、およびその間のすべての組み合わせの比である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記LFMEEの量が、5重量%〜75重量%の範囲であり得る、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記LFMEEの量が、10重量%〜40重量%の範囲であり得る、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記得られる安定剤が、Ca/Zn系向上剤、有機系安定剤、および/またはBHT、ポリオール、金属塩、もしくは他の共安定剤などの他の従来の性能向上剤をさらに含む、請求項4〜6に記載の方法。
【請求項14】
(a)アルキルスズ逆エステル安定剤と、
(b)請求項1〜3に記載のLFMEEと、を含む組成物であって、
アルキルスズ逆エステル安定剤:LFMEEの比が、95重量%:5重量%〜25重量%:75重量%の範囲である、組成物。
【請求項15】
前記アルキルスズ逆エステル安定剤:LFMEEの比が、85重量%:15重量%〜60重量%:40重量%の範囲である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載のLFMEEを、配位子として、2−EHMA、カルボキシレート、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトタノール、チオグリコール酸、アルコキシド、または硫化物と共に使用する方法。
【請求項17】
前記LFMEEが、2−EHMA、カルボキシレート、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトタノール、チオグリコール酸、アルコキシド、または硫化物と組み合わせた他の配位子と共に使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PVC安定剤を調製する方法であって、
(a)請求項1に記載の1.02当量のLFMEE、および硫化二ナトリウムを、水性水酸化ナトリウム水溶液を使用して、1.0当量の塩化物を表す、三塩化モノオクチルスズ(95重量%)と二塩化ジオクチルスズ(5重量%)との混合物と反応させることと、
(b)前記混合物を沈降させることと、
(c)前記底部水性層を除去することと、
(d)前記残留有機相を乾燥させることと、
(e)前記乾燥させた有機相を濾過することと、を含む、方法。
【請求項19】
前記乾燥ステップ(d)が、真空下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥ステップ(d)が、加熱下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥ステップ(d)が、真空および加熱下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(e)が、透明な液体が得られるまで実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
実質的に示され、本明細書に記載される、本発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:ROSS,Kevin,John(Rockwood,Ontario,CA在住米国市民)、NORRIS,Gene,Kelly(West Chester,OH,US在住米国市民)、およびDUNLAP,Jeremy(Walton,KY,US在住米国市民)
【0002】
譲受人:PMC Organometallix,Inc.(所在地1288 Route 73,Suite 401,Mount Laurel,NJ 08054、Delawareの企業)
【0003】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月28日出願の米国仮特許出願第62/723,943号、および2019年7月24日出願の米国仮特許出願第62/878,040号の利益を主張し、これらの両方は、参照により本明細書に組み込まれる。2018年8月28日出願の米国仮特許出願第62/723,943号および2019年7月24日出願の米国仮特許出願第62/878,040号の優先権は、本明細書で主張される。
【0004】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する記載
該当なし
【0005】
「MICROFICHE APPENDIX」への参照
該当なし
【0006】
1.技術分野
本発明は、低遊離2−メルカプトエタノールエステルおよびその使用に関する。より具体的には、本発明は、ハロゲン含有ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル、すなわちPVCの熱安定剤を向上させるための低遊離2−メルカプトエタノールエステルの使用に関する。
【背景技術】
【0007】
2.背景技術
PVCは、従来の処理温度では熱的に不安定なポリマーであり、その固有の熱不安定性に対処する試みのために多くの安定剤系が開発されている。これらの技術としては、有機、混合金属、およびスズ系の安定剤が挙げられる。スズ系安定剤は、大きくは、2つの主要な技術:チオグリコール酸(TGA)または逆エステル(RE)に分類される。TGAまたは2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)系の安定剤は、1950年代から成功裏に使用されており、逆エステル、すなわちRE、安定剤は、1970年代に導入された。スズ系PVC熱安定剤の大部分は、モノアルキル構成成分とジアルキル構成成分との両方を含有する。この部類の安定剤はまた、イオウ架橋を含有するように改変されており、それらの非架橋対応物と比較して性能とコストとの両方を改善することができる(米国特許第3,565,931号を参照されたい)。
【0008】
Kugeleによる米国特許第4,062,881号は、遊離メルカプタンがスズメルカプタンに添加されると、相乗的安定剤性能が生じることを教示している。Herzigらによる米国特許第6,846,861号からより最近の発展は、有機スズメルカプトアルキルヘプトナオート(organotin mercaptoalkyl heptonaote)が、2−メルカプトエチルタレート(2−mercaptoethyl tallate)、2−メルカプトエチルオレエートなどの従来のメルカプトエステルを上回り改善された香りを提供することを教示している。しかしながら、このアプローチは規制上および商業上の理由により遅れており、このアプローチは商業的成功には至っていない。2−メルカプトエタノールエステル(以後、2MEエステルと称される)の使用は、PVCパイプ、PVCサイディング基材、およびPVCフェンス基材などの、一般に臭気に対する懸念が見出されていないPVC用途では、一般に許容されている。窓枠およびカレンダリングなどの他の用途では、ブレンド、押し出し、カレンダリング、切断、溶接などを通じた下流工程中に生じる臭気が許容不可であることが見出されている。スズ系安定剤の生成を意図する、典型的な2ME系エステルは、最大3重量%の残留または遊離2MEを含有し得る。2ME系エステル中の残留2MEは、所望の2MEエステルの収率を増加させるために使用される過剰な2MEの結果であり得る。同様に、それから生成されるスズ安定剤も、最大2重量%の残留2−MEを含有し得る。さらにまた、後で追加の2MEを逆エステル安定剤に添加して、最終的な2ME系エステル安定剤の性能のいくつかの側面を改善することができる。
【0009】
以下の米国特許は、参照により本明細書に組み込まれる:
Kugele、米国特許第4,062,881号、およびHerzigら、米国特許第6,846,861号。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、ハロゲン含有ポリマー用の安定剤組成物である。2MEエステル、およびそれに由来して生じるスズ系安定剤の臭気は、エステルからの残留2−メルカプトエタノールを顕著に低減することによって劇的に改善することができることが最近見出された。この効果は、限定されないが、水での洗浄、熱および真空下でのストリッピング、追加の水を使用して加熱および真空下での除去の補助、分子ふるい、または膜分離技術を含むいくつかの様式で達成することができる。
【0011】
また、一般に、ハロゲン含有ポリマー用のスズ系安定剤の性能は、スズ安定剤のスズ含有量に直接関連することが認識されていることに留意するべきである。しかしながら、2MEエステルに由来する安定剤は、それらの熱性能が安定剤のより高いスズ含有量に則し、したがって、単にスズ含有量に基づいて予想されるであろう熱性能有効性よりも高い熱性能有効性を示すことを考慮すると、驚くべき性能を提供する。
【0012】
スズ系安定剤の向上剤として使用されると、2ME系エステルは、通常ESOと称されるエポキシ化大豆油などの他のアプローチを上回るコストの利点を提供する。ESOは、Ca/Zn系とスズ系の安定化系との両方の性能を向上させるための共安定剤として、柔軟性PVC用途と剛性PVC用途との両方で長年使用されてきた。ESOは、典型的には、スズ系安定剤と比較した低コスト性と併せて、その低臭気のために使用されてきた。表1に概説されるような発色性は、低遊離2−メルカプトエタノールエステル(LFMEE)がESOと同様の性能を提供することを示しているが、LFMEEの使用はまた、ESO系スズ安定剤で通常見られる保存安定性の問題を回避する。

【0013】
試験条件:PVC化合物を標準的な添加順序および温度に従ってブレンドした。各化合物の色安定性を、摂氏190度/60rpmで動作するBrabender実験を使用して評価し、2分間隔で試料を採取した。各チップの色を、標準的な白色タイルおよび以下の表2に報告される「L値」と比較して測定した。

【0014】
上の試料を、ADVASTAB(登録商標)商標TM−181FSで調製したが、同様の組成の一般的な化合物で同様の結果が得られることが予想される。
【0015】
本発明はまた、2−メルカプトエチルエステル生成のために、再生可能な資源の脂肪酸を利用する利点を提供する。対照的に、TGAまたはEHMA系の安定剤は、完全に石油由来中間体に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0016】
残留2−メルカプトエタノールを除去するためのすべての実験は、PMC Organometallixの商業的設備で調製した標準的な2−メルカプトエチルエステルを利用した。プロセスは、酸触媒を使用して、2−メルカプトエタノールをC16〜C18脂肪酸と反応させることを伴う。調製のための代表的な方法として、LFMEE生成の以下の3つの方法を詳細に考察する。
【0017】
標準的な2−メルカプトエチルエステルの合成:
以下の実験では、酸触媒の存在下で1当量の脂肪酸を1.18モルの2−メルカプトエタノールと反応させ、真空下で摂氏80〜85度にゆっくりと加熱することによって、2−メルカプトエチルエステルを調製した。エステル化の水を除去して反応を促進させる。次いで、この反応混合物を水で洗浄して酸触媒を除去し、洗浄水を分離し、次いで、有機層を真空および加熱下で乾燥させる。
標準的な2−MEエステルを調製する任意の他の許容可能な方法を使用してもよい。
【0018】
実験A:300グラムの標準的な2−メルカプトエチルエステルを100グラムのアリコートの水で10回洗浄した。500mlの分液漏斗で洗浄を行い、30分間沈降させた。水(底部相)を排出し、次のアリコートの水を添加した。最終洗浄が完了した後、真空を適用し、110℃に加熱することによって有機相を乾燥させた。
【0019】
実験B:100グラムの標準的な2−メルカプトエチルエステルを4×2.5グラムの水で処理した。標準的な2−メルカプトエチルエステルを70℃に加熱し、次いで2.5グラムの水アリコートを添加した。真空を適用し、70℃に加熱することによって、水を除去した。温度が達成されたら、次の2.5グラムのアリコートの水を添加した。これを4つすべての水アリコートで繰り返した。
【0020】
実験C:450グラムの標準的な2−メルカプトエチルエステルを112グラムの水で処理し、次いで真空下で水を除去し、85℃に加熱した。
【0021】
開始したときの標準的な2−メルカプトエチルエステルと比較した、メルカプトイオウの低下%を測定することによって、除去した2−メルカプトエタノール%を決定した。

【0022】
実験A、B、およびCは、高レベルの遊離2−ME除去を提供した。得られたより低い遊離2−MEエステルを、後続の研究で使用して、より高い遊離2−MEエステルの使用から生じる従来の悪臭を伴わないが、共安定剤としての、および/またはスズ系の安定剤内の結合種として組み込まれた際のそれらの有効性を決定した。2−MEエステルから2−MEを除去する他の許容可能な方法を使用して、本発明の新規のLFMEEを生成してもよい。
【0023】
安定剤調製の説明
ADVASTAB(登録商標)TM−181FSを、以下のプロセスを使用して調製した。
1.03当量(eq)の2−エチルヘキシルチオグリコレート(チオグリコール酸2-エチルヘキシル)を、水性水酸化ナトリウム水溶液を使用して1.0当量の塩化物を表す、三塩化モノメチルスズ(25重量%)と二塩化ジメチルスズ(75重量%)との水性混合物と反応させて、塩化物をメルカプチドに変換した。この混合物を60分間沈降させて、有機相と水相とを分離する。底部有機層を除去し、真空および加熱下で乾燥させる。次いで、この層を濾過して、透明な液体を得た。
*ADVASTAB(登録商標)TM−181FSは、PMC Organometallix,Incによって提供された。これは、多数のPVC用途での業界標準である。他の好適な安定剤を使用してもよい。
【0024】
好ましい安定剤の組成としては、以下に示すADVASTAB(登録商標)TM−181FSの一般的な組成と同様の組成を挙げることができる:

【0025】
表5の安定剤組成を使用するPVCブレンドに、2つのロールミル性能試験を施し、対応する色データ(L値)を表6に概説する。表6に示されるように、最大25重量%のLFMEEを含むスズ安定剤のブレンドは、対照安定剤と同様の性能を提供した。例えば、試料5および6の性能が、顕著に低いスズ含有物で達成されることにさらに留意するべきである。
【0026】
安定剤AおよびBの合成のための手順:
評価用のPVCブレンドの調製中に、ADVASTAB(登録商標)TM−181FSとLFMEEとのブレンドの臭気が、非改質ADVASTAB(登録商標)TM−181FSの臭気と同様の臭気を有したことが観察された。標準的な2−メルカプトエチル1エステル、すなわち、>2重量%の遊離2−MEを含むエステルを含むADVASTAB(登録商標)TM−181FSの臭気は、著しく強く、不快な臭気を有した。同様の結果が、同様の組成の一般的な安定剤で達成されるであろうことが予想される。
【0027】
安定剤の合成におけるLFMEEの有用性も調査した。LFMEE系高モノオクチルスズ安定剤の性能を、その2−EHMA類似体、市販のThermolite 895と比較した。本研究の文脈において、高モノオクチルスズとは、対応する25%未満のジ含有量を有し、75%超のモノ含有量を有するスズ系安定剤を指し、以下の実施例は、90%超のモノ含有量を有する材料に基づく。LFMEE系高モノオクチルスズは、実験の項に詳述されているように、従来の方法で高塩化モノオクチルから調製した。スズ含有量は、より狭い範囲のスズ重量パーセンテージ内での安定剤の比較を可能にするスズ含有量を含有する高モノオクチルスズLFMEE安定剤に向けられたものであり、それは、異なる安定剤を、等しいスズ含有量で、したがって同様の担持レベルで比較することを可能にする。このアプローチは、熱安定剤の異なる担持レベルからの、性能に対する任意の影響を低減または除去する。このように、高塩化モノオクチルスズ、LFMEE、および硫化ナトリウムの使用を通じて、安定剤製造当業者に周知の方法論によって、元の高モノオクチルスズLFMEEの硫化バージョンを生成した(詳細については、実施例を参照されたい)。この材料は、高硫化モノオクチルLFMEEとして記載され、安定剤Aと称されるであろう。最初に、これらの安定剤を等しいスズ基準で比較し、2ロールミル安定性試験で評価した。これらの結果を表8に要約する。
【0028】
安定剤調製の説明
THERMOLITE(登録商標)895および安定剤Aを、以下のプロセスを使用して調製した:
1.02当量のメルカプトイオウ含有エステル(THERMOLITE(登録商標)895では、2−エチルヘキシルチオグリコーレートであり、安定剤Aでは、LFMEEと硫化二ナトリウムとの組み合わせである)を、水性水酸化ナトリウム水溶液を使用して1.0当量の塩化物を表す、三塩化モノオクチルスズ(95重量%)と二塩化ジオクチルスズ(5重量%)との混合物と反応させて、塩化物をメルカプチドに変換した。この混合物を60分間沈降させて、有機相と水相とを分離させる。底部水層を除去し、残留有機相を真空および加熱下で乾燥させた。次いで、これを濾過して、透明な液体を得た。一般的な等価物のTHERMOLITE(登録商標)895を使用してもよい。同様の結果が、一般的な等価物のTHERMOLITE(登録商標)895で生じるであろうことが予想される。
【0029】
これらの安定剤は、PVC処理へのそれらの効果、具体的には加熱および時間に相関する発色への影響について評価した。これらの安定剤を、表7に示されるPVC配合物に配合した。

【0030】
一般的な等価物の商標名のある構成成分を使用してもよい。同様の結果が、一般的な等価物の商標名のある構成成分で生じるであろうことが予想される。

【0031】
表8のL値によって示されるように、安定剤Aが、従来のEHMA系安定剤である対照T895に対して、より良好な初期の色、より良好な発色、および期間安定性を提供することが明らかに理解され得る。
【0032】
LFMEE系安定剤の改善された性能を、より低いモノ安定剤にも展開することができるかをより良好に理解するために、25%モノ/75%ジ出発材料からLFMEE系安定剤を調製して、同様のモノ/ジ比を有する市販のT890Fと比較した。T895とT890Fとの両方は、多様な剛性PVC用途で使用されるが、特にフィルムおよびシート用途での使用が見出される。等しいスズ含有量でのこれらの材料の性能を2ロールミルで比較して、発色、期間安定性、ならびに相対臭気およびロール粘着性を評価し、結果を表10および表11に要約する。
【0033】
これらの安定剤は、PVC処理へのそれらの効果、具体的には加熱および時間に相関する発色への影響について評価した。これらの安定剤を、表9に示されるPVC配合物に配合した。

【0034】
一般的な等価物の商標名のある構成成分を使用してもよい。同様の結果が、一般的な等価物の商標名のある構成成分で生じるであろうことが予想される。

【0035】
一般的な等価物の商標名のある構成成分を使用してもよい。同様の結果が、一般的な等価物の商標名のある構成成分で生じるであろうことが予想される。
【0036】
表10から理解され得るように、安定剤Bの性能は、発色に関してThermolite(登録商標)890Fの性能を上回り、これは、LFMEE系の安定剤の改善された性能が、広範囲のモノ/ジにわたって見出され得ることを示している。

【0037】
一般的な等価物の商標名のある構成成分を使用してもよい。同様の結果が、一般的な等価物の商標名のある構成成分で生じるであろうことが予想される。
【0038】
同様の担持レベルでは、安定剤Aは、T890FおよびT895と比較して、改善された色安定性および期間安定性を提供した。加えて、処理中に、改善されたロール粘着性および臭気を提供した。これらの性能特徴は、シートまたはフィルムを生成するための、熱処理ロールから熱プラスチック溶融物を剥離する必要があるプロセスである、カレンダリングによって生成されるフィルムには極めて重要である。カレンダリングプロセス中に高温の広い表面積が作り出されるので、臭気の改善はまた、生産環境でも利点を提供し得る。
【0039】
さらなる研究は、EHMA系対応物T895に対する安定剤Aの相対効率を探索することを対象とした。上の表8のデータを生成するために使用した、記載のPVC配合物を使用する安定性試験での2ロールミルを用いて研究するために、試料を調製した。結果を表12に要約する。

【0040】
一般的な等価物の商標名のある構成成分を使用してもよい。同様の結果が、一般的な等価物の商標名のある構成成分で生じるであろうことが予想される。
【0041】
表12は、より低い担持レベルでの安定剤Aが、同様の期間安定性を有し、そのT895良好な発色を提供することを示している。他のすべてが等しい場合、安定剤Aが、そのEHMA系類似体よりも、改善された処理性と共に費用対効果の高い安定剤溶液を提供するであろうと結論付けることができる。
【0042】
2−メルカプトエタノールの悪臭はまた、配位子として2−メルカプトエタノールを、ハロゲンアルキルスズ中間体と反応させることによって対処することができる。2−メルカプトエタノールの、スズ結合メルカプトエタノール配位子へのこの変換により、揮発性が低減され、臭気特徴が改善されるであろう。しかしながら、この潜在的な経路は、化学量論の正確な制御が必要であることが困難であり、制御されなければ、望ましくない副生成物をもたらし得る。
【0043】
残留2−メルカプトエタノールだけでなく、任意の他の活性メルカプタン基を反応させるさらなる代替手段は、メルカプタンと反応してアルキルスズメルカプチドを形成することを通じてメルカプタンを捕捉することが可能である酸化アルキルスズの添加を使用することである。酸化アルキルスズの例としては、限定されないが、酸化ジオクチルスズ、酸化ジブチルスズ、ブチルスタノイン酸、およびオクチルスタノイン酸が挙げられる。
【0044】
本発明では、標準的な2−メルカプトエタノールエステルからの2−メルカプトエチルエタノールの除去を通じて得られる低遊離2−メルカプトエタノールエステル(LFMEE)であって、得られるLFMEEが、1.0重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する、低遊離2−メルカプトエタノールエステル。
【0045】
ある特定の実施形態では、得られるLFMEEは、0.7重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有し得る。
【0046】
ある特定の実施形態では、得られるLFMEEは、0.5重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する。
【0047】
本発明は、アルキルスズチオグリコール酸エステル安定剤の熱性能を向上させるために前述のLFMEEを使用する方法を提示する。
【0048】
本発明は、アルキルスズ逆エステル安定剤の熱性能を向上させるために前述のLFMEEを使用する方法を提示する。
【0049】
本発明は、アルキルスズメルカプチド安定剤の熱性能を向上させるために前述のLFMEEを使用する方法を提示する。
【0050】
ある特定の実施形態では、メルカプチドは、ドドシルメルカプタン(dodocylmercaptan)またはカルボキシレートであり得る。
【0051】
ある特定の実施形態では、メルカプチドは、マレエートであり得る。
【0052】
本発明のある特定の実施形態では、安定剤は、C1〜C8の範囲のアルキル基のスルフィド架橋をさらに含む。
【0053】
本発明のある特定の実施形態では、アルキルスズ基のモノ構成成分およびジ構成成分は、100%ジ〜100%モノの範囲、およびその間のすべての組み合わせの比である。
【0054】
本発明のある特定の実施形態では、LFMEEの量は、5重量%〜75重量%の範囲であり得る。
【0055】
本発明のある特定の実施形態では、LFMEEの量は、10重量%〜40重量%の範囲であり得る。
【0056】
本発明のある特定の実施形態では、得られる安定剤は、Ca/Zn系向上剤、有機系安定剤、および/またはBHT、ポリオール、金属塩、または他の共安定剤などの他の従来の性能向上剤をさらに含む。
【0057】
本発明は、
(a)アルキルスズ逆エステル安定剤と、
(b)請求項1〜3に記載のLFMEEと、を含む組成物であって、
アルキルスズ逆エステル安定剤:LFMEEの比が、95重量%:5重量%〜25重量%:75重量%の範囲である、組成物を含み得る。
【0058】
本発明では、組成物は、85重量%:15重量%〜60重量%:40重量%の範囲のアルキルスズ逆エステル安定剤:LFMEEの比を含み得る。
【0059】
本発明は、標準的な2−メルカプトエタノールエステルからの2−メルカプトエチルエタノールの除去を通じて得られるLFMEEを、配位子として、2−EHMA、カルボキシレート、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトタノール(Mercaptothanol)、チオグリコール酸、アルコキシド、または硫化物と共に使用する方法であって、得られるLFMEEが、1.0重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する、方法を含み得る。
【0060】
本発明は、前述のLFMEEが、2−EHMA、カルボキシレート、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトタノール、チオグリコール酸、アルコキシド、または硫化物と組み合わせた他の配位子と共に使用される方法を含み得る。
【0061】
本発明は、PVC安定剤を調製する方法であって、
(a)標準的な2−メルカプトエタノールエステルからの2−メルカプトエチルエタノールの除去を通じて得られる1.02当量のLFMEE、および硫化二ナトリウムを、水性水酸化ナトリウム水溶液を使用して1.0当量の塩化物を表す、三塩化モノオクチルスズ(95重量%)と二塩化ジオクチルスズ(5重量%)との混合物と反応させることであって、得られるLFMEEが、1.0重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有することと、
(b)混合物を沈降させることと、
(c)底部水性層を除去することと、
(d)残留有機相を乾燥させることと、
(e)乾燥させた有機相を濾過することと、を含む、方法を含み得る。
【0062】
本発明は、乾燥ステップ(d)が真空下で行われる前述の方法を含み得る。
【0063】
本発明は、乾燥ステップ(d)が加熱下で行われる前述の方法を含み得る。
【0064】
本発明は、乾燥ステップ(d)が真空および加熱下で行われる前述の方法を含み得る。
【0065】
本発明は、ステップ(e)が透明な液体を得るまで実施される前述の方法を含み得る。
【0066】
頭文字のリスト
2ME 2-メルカプトエタノール
EHMA 2-エチルヘキシルメタクリレート
ESO エポキシ化大豆油
LFMEE 低遊離2-メルカプトエタノールエステル
PHR 100樹脂あたりの部
PVC ポリ塩化ビニル
RE 逆エステル
RPM 1分あたりの回転数
TGA チオグリコール酸
【手続補正書】
【提出日】2020年6月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準的な2−メルカプトエタノールエステルからの2−メルカプトエチルエタノールの除去を通じて得られる、ポリマー安定化に使用するための低遊離2−メルカプトエタノールエステル(LFMEE)であって、得られる前記LFMEEが、1.0重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する、低遊離2−メルカプトエタノールエステル。
【請求項2】
前記得られるLFMEEが、0.7重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する、請求項1に記載のLFMEE。
【請求項3】
前記得られるLFMEEが、0.5重量%未満の残留2−メルカプトエタノールを有する、請求項1に記載のLFMEE。
【請求項4】
アルキルスズチオグリコール酸エステル安定剤の熱性能を向上するために、請求項1、2、または3に記載のLFMEEを使用する、方法。
【請求項5】
アルキルスズ逆エステル安定剤の熱性能を向上するために、請求項1、2、または3に記載のLFMEEを使用する、方法。
【請求項6】
アルキルスズメルカプチド安定剤の熱性能を向上するために、請求項1、2、または3に記載のLFMEEを使用する、方法。
【請求項7】
前記メルカプチドが、ドドシルメルカプタンまたはカルボキシレートであり得る、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記メルカプチドが、マレエートである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記安定剤が、C1〜C8の範囲のアルキル基のスルフィド架橋をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
アルキルスズ基のモノ構成成分およびジ構成成分が、100%ジ〜100%モノの範囲、およびその間のすべての組み合わせの比である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記LFMEEの量が、5重量%〜75重量%の範囲であり得る、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記LFMEEの量が、10重量%〜40重量%の範囲であり得る、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記得られる安定剤が、Ca/Zn系向上剤、有機系安定剤、および/またはBHT、ポリオール、金属塩、もしくは他の共安定剤などの他の従来の性能向上剤をさらに含む、請求項4、5、または6に記載の方法。
【請求項14】
(a)アルキルスズ逆エステル安定剤と、
(b)請求項1、2、または3に記載のLFMEEと、を含む組成物であって、
アルキルスズ逆エステル安定剤:LFMEEの比が、95重量%:5重量%〜25重量%:75重量%の範囲である、組成物。
【請求項15】
前記アルキルスズ逆エステル安定剤:LFMEEの比が、85重量%:15重量%〜60重量%:40重量%の範囲である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載のLFMEEを、配位子として、2−EHMA、カルボキシレート、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトタノール、チオグリコール酸、アルコキシド、または硫化物と共に使用する方法。
【請求項17】
前記LFMEEが、2−EHMA、カルボキシレート、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトタノール、チオグリコール酸、アルコキシド、または硫化物と組み合わせた他の配位子と共に使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PVC安定剤を調製する方法であって、
(a)請求項1に記載のLFMEE、および硫化二ナトリウム(LFMEEおよび硫化二ナトリウムの合計当量は、1.02に等しく、前記硫化二ナトリウムの等量が0.1〜0.6であり得る)を、水性水酸化ナトリウム水溶液を使用して、1.0当量の塩化物を表す、三塩化モノオクチルスズ(95重量%)と二塩化ジオクチルスズ(5重量%)との混合物と反応させることと、
(b)前記混合物を沈降させることと、
(c)前記底部水性層を除去することと、
(d)前記残留有機相を乾燥させることと、
(e)前記乾燥させた有機相を濾過することと、を含む、方法。
【請求項19】
前記乾燥ステップ(d)が、真空下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥ステップ(d)が、加熱下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥ステップ(d)が、真空および加熱下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(e)が、透明な液体が得られるまで実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
PVC安定剤を調製する方法であって、
(a)請求項1に記載のLFMEE、および硫化二ナトリウム(LFMEEおよび硫化二ナトリウムの合計当量は、1.02に等しく、前記硫化二ナトリウムの等量が0.1〜0.6であり得る)を、水性水酸化ナトリウム水溶液を使用して、1.0当量の塩化物を表す、三塩化モノオクチルスズ(2重量%)と二塩化ジオクチルスズ(98重量%)との混合物と反応させることと、
(b)前記混合物を沈降させることと、
(c)前記底部水性層を除去することと、
(d)前記残留有機相を乾燥させることと、
(e)前記乾燥させた有機相を濾過することと、を含む、方法。
【請求項24】
前記乾燥ステップ(d)が、真空下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記乾燥ステップ(d)が、加熱下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記乾燥ステップ(d)が、真空および加熱下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(e)が、透明な液体が得られるまで実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
請求項18に記載の方法を使用して生成された材料と、請求項23に記載の方法を使用して生成された材料と、を含む、組成物。
【国際調査報告】