特表2021-535646(P2021-535646A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-535646マイクロ静電トランスデューサの量産
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-535646(P2021-535646A)
(43)【公表日】2021年12月16日
(54)【発明の名称】マイクロ静電トランスデューサの量産
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/02 20060101AFI20211119BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20211119BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20211119BHJP
   H04R 7/02 20060101ALI20211119BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20211119BHJP
【FI】
   H04R19/02
   H04R19/04
   H04R31/00 C
   H04R7/02 A
   H04R7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2021-506633(P2021-506633)
(86)(22)【出願日】2019年8月7日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月2日
(86)【国際出願番号】US2019045486
(87)【国際公開番号】WO2020033534
(87)【国際公開日】20200213
(31)【優先権主張番号】62/716,062
(32)【優先日】2018年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521051299
【氏名又は名称】グラフオーディオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(72)【発明者】
【氏名】チョウ・ハリー
(72)【発明者】
【氏名】マーグ・ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ファウラー・バート
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン・ローレンス
【テーマコード(参考)】
5D016
5D021
【Fターム(参考)】
5D016AA05
5D016DA01
5D016DA02
5D016EB01
5D016EB04
5D016EB06
5D021CC04
5D021CC06
5D021CC09
5D021CC12
5D021CC20
(57)【要約】
【課題】従来の静電トランスデューサをより小型化より量産可能にする。
【解決手段】マイクロ静電トランスデューサとそのような装置の製造方法が記載されている。マイクロ静電トランスデューサは、低コストで大量生産を可能にする材料から製造された統合部品の変換装置である。この装置は、音声信号を導入するため、ダイアフラムの上下に2つの電極層を備えたダイアフラムを形成するグラフェンのシートを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元材料を備えるダイアフラムと、
ダイアフラムの一方の側が接着される複数の装置のためのパターンを持つ、大きな円い形状、シート状、又はロール形状の第1スペーサと、
ダイアフラムのもう一方の側が接着される複数の装置のためのパターンを持つ、大きな円い形状、シート状、又はロール形状の第2スペーサと、であって、第1スペーサ及び第2スペーサは、ダイアフラムの上下に実質的に円形の部分を画定する実質的に円形開放領域で接着されていて、
ダイアフラムの前記円形の部分の一方の側及び第1スペーサの近くに複数装置のパターンを備えている、大きな円い型式、シート型式又はロール型式の第1電極と、
ダイアフラムの前記円形の部分のもう一方の側及び第2スペーサの近くに複数装置のパターンを備えている、大きな円い型式、シート型式又はロール型式の第2電極と、
とを備える、静電トランスデューサ。
【請求項2】
二次元材料を備えるダイアフラムは、原子的に単一又は複数層のグラフェン膜である、請求項1に記載の静電トランスデューサ。
【請求項3】
二次元材料を備えるダイアフラムは、
h−BN(六方晶窒化ホウ素)と、
MOS(二硫化モリブデン)と、
原子的に単一又は複数層のグラフェン及びh−BN(六方晶窒化ホウ素)と、MOS(二硫化モリブデン)と、別の単一層の二次元膜とのいずれかを備える二層膜と
からなる群から選択されている、請求項1に記載の静電トランスデューサ。
【請求項4】
第1電極及び第2電極用の1つのそれぞれのリードと、ダイアフラムの外周全体の一部又は外周全体の周り用の1つのリードとを備え、外部の音響電気信号への、複数のパターン化された導電性の相互接続部と、
信号検出能力、あるいはダイアフラムを変調して音波を発するために可聴音波又は超音波を電極に付与する能力を持つ、複数のパターン化された導電性部に接続されている電気回路と
とをさらに備える、請求項1に記載の静電トランスデューサ。
【請求項5】
ダイアフラムは、開いた動作トランスデューサ領域を備え、開いた動作トランスデューサ領域は、円形、正方形、楕円形、腎臓、直方、丸い直方、又は左記の形状以外の不等形状である、請求項1に記載の静電トランスデューサ。
【請求項6】
前記トランスデューサは、
約0.1mm及び約1mmの間の値であるダイアフラムと電極との間の間隙と、
約20V及び約4kVの間の値であるダイアフラム上のVDCと、
約20V及び約4kVの間の値である、VRMSの第1及び第2電極上のVsignalとの、
前記の間隙と電圧にて作動する、請求項1に記載の静電トランスデューサ。
【請求項7】
前記トランスデューサは、
約1mmであるダイアフラムと電極との間の間隙と、
約4kVであるダイアフラム上のVDCと、
約4kVである、VRMSの電極上のVsignalとの、
前記の間隙と電圧にて作動する、請求項6に記載の静電トランスデューサ。
【請求項8】
前記トランスデューサは、
約0.1mmであるダイアフラムと電極との間の間隙と、
20Vまでの値であるダイアフラム上のVDCと、
20Vである、VRMSの第1及び第2電極上のVsignalとの、
前記の間隙と電圧にて作動する、請求項6に記載の静電トランスデューサ。
【請求項9】
ダイアフラムの一方の側又は両側に形成された、アクリル、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン又はハロゲン化プラスチックの層をさらに備えて、前記層はグラフェンの全面を覆うように連続してもよく、あるいは前記層はパターン化されて、グラフェン方面の中央領域から除去されてダイアフラムの外縁が挟まれるところに追加の物理的強度を提供するようにダイアフラムの外縁に沿ってだけ残っている、
請求項2に記載の静電トランスデューサ。
【請求項10】
グラフェンの少なくとも一つの面に形成される二酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、又はダイヤモンドの被覆層と、疑似ダイヤモンド層との少なくとも一方をさらに備え、被覆層は実質的にグラフェン膜の上表面と、下表面との少なくとも一方を覆っている、請求項2に記載の静電トランスデューサ。
【請求項11】
被覆層はパターン化されたのちグラフェン膜の中央領域から除去されていて、グラフェン膜の外縁が挟まれるところに追加の物理的強度を提供するように被覆層はグラフェン膜の外縁に沿ってだけ残っている、請求項10に記載の静電トランスデューサ。
【請求項12】
グラフェンの表面を実質的に覆うように、ダイアフラムの一方の側又は両側に形成された、フォトレジストのような感光活性層をさらに備え、加えられた静電力に応答してダイアフラムの可動域形状を調整、強化又は変調するように、その感光活層が任意のパターンで選択的に除去可能である、請求項2に記載の静電トランスデューサ。
【請求項13】
フォトレジストのような感光活性層が、グラフェンの表面を実質的に覆うようにダイアフラムの一方の側又は両側に形成されていて、加えられた静電力に応答してダイアフラムの可動域形状を調整、強化又は変調するように、フォトレジスト層及びグラフェンの両方が任意のパターンで選択的に除去可能である、請求項10に記載の静電トランスデューサ。
【請求項14】
予め配線された電極又はスペーサ部材に電気的に接続される、平面内の層にされた装置接点をさらに備える、請求項1に記載の静電トランスデューサ。
【請求項15】
請求項1に記載の静電トランスデューサを複数備えるアレイにおいて、複数の静電トランスデューサは、装置にカスタムアレイ又は組み立てられる隣接している多重化アレイに構成されている、アレイ。
【請求項16】
複数の静電トランスデューサは電気的に接続されていて、モノラルスピーカー又は広域マイクとして機能する、請求項15に記載のアレイ。
【請求項17】
複数の静電トランスデューサは、個々のスピーカー又はスピーカーの群は多重化できて、異なるスピーカチャンネル及び異なるマイクとして同時に使用可能であるように電気的に接続されていて、請求項15に記載のアレイ。
【請求項18】
請求項1に記載の静電トランスデューサの製造方法において、
第1電極及び第1スペーサ部品を備える第1複数層構造と、二次元材料を備えるダイアフラムと、第2電極及び第2スペーサ部品を備える第2複数層構造とを提供することと、
続いて、ダイアフラムを第1複数層構造に整合させて第1接着剤を使って取り付けることと、
第2複数層構造をダイアフラムに整合させて第2接着剤を使って取り付けることと
を備える、方法。
【請求項19】
二次元材料は原子的に単一又は複数層のグラフェンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも、第1接着剤又は第2接着剤は、電流が接着を通ってダイアフラムに届くのを許容する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ダイアフラムの第1複数層構造への位置決め及び取り付けは、転写基板を使って実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
グラフェンの取り付けに先立って、ダイアフラムのグラフェン上のグラフェン以外の材料の追加の薄層をパターン化することを備え、追加の薄層が
(a)ダイアフラムの外縁に沿ってだけ位置するか、
(b)加えられた静電力に応答するダイアフラムの可動域形状を基本的に調整又は強化すべく所望の変位パターンをダイアフラムの表面にわたって作るか、あるいは
(c)ダイアフラムに複数の孔の所望のパターンを作るために一部範囲でグラフェンの選択的除去ができるように、
パターン化される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
パターン化することは、フォトリソグラフィ、シャドウマスク、リフトオフ、研磨、インクジェット印刷、三次元印刷、スクリーン印刷からなる群から選択される技術を利用する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ダイアフラムは、ダイアフラムが整合されて取り付けられた後に除去される犠牲層を備えて設けられる、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法(35 U.S.C.)第119条(e)の下で、2018年8月8日に仮出願された米国特許仮出願第62/716,062号に基づく優先権を主張し、米国特許仮出願第62/716,062号の全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、マイクロ静電トランスデューサ、そのようなトランスデューサのアレイ、及びそのような装置の製造方法に関連する。マイクロ静電トランスデューサの例示的な実施形態は、以下を備える、低コストで量産を可能にする材料から製造された統合部品トランスデューサである。
ダイアフラムを形成するためのグラフェンのシートと、
グラフェンダイアフラムの片側が結合されている多くの装置用のパターンを備えた、大きな円形、シート、又はロール形式の第1スペーサと、
グラフェンダイアフラムの片側及び第1スペーサの隣にある第1電極と、
グラフェンダイアフラムの前記片側の反対側に結合されている、同様の型式の2番目のスペーサと、
グラフェンダイアフラムの前記反対側及び第2スペーサの隣にある第2電極である。第1及び第2スペーサは両方とも、グラフェンダイアフラムの上下の実質的に円形の部分を画定する実質的に円形、正方形、楕円形、腎臓、星、任意の多角形などの開放領域を備える。この装置には、多くの装置用のパターン化された大きな円形、シート、又はロール型式の第1電極もある。第1電極は、グラフェンダイアフラムの円形部分の片側及び第1スペーサの隣にある。この装置はまた、グラフェンダイアフラムの円形部分及び第2スペーサの反対側の隣に、同じ型式の第2電極を有する。この装置は、外部音響電気信号へのパターン化された導電性相互接続を備えている。合計3つの相互接続があり、2つの電極のそれぞれと、ダイアフラムの全周に1つ接続されている。装置はさらに、電極に接続された電気回路と、信号検知(電流、電圧、静電容量)機能を備えたダイアフラムの相互接続を備えているため、装置はマイクとして機能し、可聴周波の信号又は超音波信号を電極に加えてダイアフラムを変調して音波を出すことで、装置はスピーカーとして機能可能である。
【0003】
そのようなトランスデューサのアレイの例示的な実施形態は、電気的に接続されていて、モノラルスピーカー又は広域用マイクロフォンのいずれかとして機能する複数の静電トランスデューサを備える。別の例示的な実施形態では、複数の静電トランスデューサは電気的に接続されていて、個々のスピーカー又はスピーカーの群を多重化して、異なるスピーカーチャネル及びマイクロフォンとして同時に使用するものである。さらに別の例示的な実施形態では、複数の静電トランスデューサは、例えば、ダイシングされた1つの部分ごとに複数の静電トランスデューサを持つダイシングされた部分を製造すべく、個別に、又は一つずつ分離するなどして、製造中にダイシングされてよい。
【0004】
マイクロ静電トランスデューサを作製する方法の例示的な実施形態は、第1電極及び第1スペーサ構成要素を備える第1複数層構造、2D(二次元)材料を備えるダイアフラムと、第2電極及び第2電極を備える第2の複数層構造とを提供し、続いて、第1の接着剤を使用して、ダイアフラムを第1複数層構造に位置合わせして取り付けて、そして最後に、第2の接着剤を使用して、第2複数層構造をダイアフラムに位置合わせして取り付けることを備える。選択的に、少なくとも、第1の接着剤又は第2の接着剤は、電流が接着剤を横切ってダイアフラムに流れることを可能にする。好ましい実施形態では、2D材料はグラフェンを含む。
【背景技術】
【0005】
静電トランスデューサ技術は十分に確立されていて、スピーカーやマイクなどの多くの高価格帯のオーディオ製品で使用されている。これらのトランスデューサを「ミニ」又は「マイクロ」型式に寸法を変える又は小さくすることは、静電トランスデューサのオーディオ機能が空気減衰の効果に関係しているため、困難だった。特に、ダイアフラムのサイズが音の波長を下回ると、空気の減衰係数が大幅に低下するためである。許容できる性能を備えたミニ又はマイクロサイズのトランスデューサを作成する唯一の方法は、ダイアフラムをより薄く、より軽くすることであるが、この解決策は従来の材料では不可能であった。しかし、非特許文献1(LBNL(ローレンスバークレー国立研究所)(Appl.Phys.Lett.Appl.102、223109(2013、https://doi.org/10.1063/1.4806974)での最近の発明では、超低質量で高強度のグラフェン膜が使用されていたため、広帯域オーディオ応答を維持しながら、はるかに小さな型式のトランスデューサを製造することが可能になった。
【0006】
特に、このようなグラフェン膜を使用した静電トランスデューサは、現在の世代の材料よりも優れた性能を発揮する。例えば、図1は、同じトランスデューサと比較した、ダイアフラムとして標準の金属化ポリマー膜を使用した市販のSTAX(登録商標)SRS−002静電イヤースピーカーの性能を示す。ただし、低質量のグラフェンダイアフラムをトランスデューサに挿入して標準ダイアフラムと交換した。グラフェンダイアフラムを使用すると、低周波数応答の改善が顕著になる。
【0007】
さらに、高品質又は高価格のマイクロスピーカーとマイクには多くの可能性があり、それらを製造する費用対効果の高い方法が非常に重要である。ロジック又はメモリチップ、パワーチップ、wifiチップ、アンテナ、フレキシブル回路基板、ディスクリート(単機能)装置、コネクタなど、当社の電子製品を構成する他の多くの部品と同様に、それらは低コストで量産する必要がある。ミニ又はマイクロ静電トランスデューサがそのような製品で実現可能になった今、それらを製造するための低コストで量産の方法が不可欠である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zhou及び Zettl et al.、「Electrostatic Graphene Loudspeaker」、LBNL(ローレンスバークレー国立研究所)、Applied Physics Letter 102, 223109 (2013)、インターネット<https://doi.org/10.1063/l.4806974>
【発明の概要】
【0009】
したがって、本願の課題の1つは、例えば図1に示すように現在の世代の静電トランスデューサと同等の応答プロファイルを持つ高品質でありかつ低コストで量産できるトランスデューサを提供することである。そのようなトランスデューサの例示的な実施形態は、2D材料を含むダイアフラムを備える。例示的な装置は、グラフェンダイアフラムの片側が結合されている複数装置用のパターンを有する大きな円形、シート、又はロールの形状である第1スペーサを備えるだろう。例示的な装置はまた、グラフェンダイアフラムの反対側に結合され、複数装置用のパターンを有する大きな円形、シート、又はロール形状である第2スペーサを備えるだろう。ここで、第1スペーサ及び第2スペーサは、両方とも実質的に円形開放領域に結合されていて、当該開放領域は、グラフェンダイアフラムの上下に実質的に円形部分を画定している。例示的な装置は、グラフェンダイアフラムの円形部分の片側及び第1スペーサの隣にある、複数装置のためのパターン化を備えた大きな円形、シート又はロールの型式である第1電極を有する。例示的な装置は、グラフェンダイアフラムの円形部分の反対側及び第2スペーサの隣にある、複数装置のためのパターン化を備えた大きな円形、シート又はロールの型式である第2電極を有する。
【0010】
好ましい実施形態では、二次元ダイアフラム材料は、原子的に単一又は複数層のグラフェン膜(最大数千層のグラフェン)である。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、h−BN(六方晶窒化ホウ素)、MOS(二硫化モリブデン)、及び二次元グラフェンダイアフラム材料とh−BN、MOS、又は別の単層又は複数層の二次元膜を備える二層膜からなる群から選択される。
【0011】
別の実施形態では、トランスデューサは、グラフェンの表面を実質的に覆う、アクリル、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ハロゲン化プラスチック層、又はポリイミドなどのフォトレジスト、又はグラフェンダイアフラムの片側又は両側に形成されたSU−8又はPMMAなどのエポキシベースのポリマーを含有する。二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、ダイヤモンドなどの他の膜、及び/又は片面又は両面を覆うダイヤモンドのような膜も可能性がある。そのような層は、選択的に、グラフェン表面全体を覆うように連続的であるか、又はグラフェン表面の特定の領域からパターン化及び除去可能である。いずれの場合も、連続的又はパターン化されたものとして、目的は、表面全体又は重要な領域のみで膜を強化すること、及び/又は共振ピークを抑制するのに役立つダイアフラムの調整を提供することである。1つの製造可能性としては、パターン化は、ダイアフラムが周囲に沿ってしっかりとクランプされている領域に追加の機械的強度を提供するために、ダイアフラムの外周に沿ってのみ残るようなものであってもよい。別の製造可能性では、ダイアフラムを減衰又は調整する手段として、膜がエッジから除去され、中央領域に残されるようなパターン化もありえる。
【0012】
さらに別の実施形態では、トランスデューサは、光活性層、又はノボラックなどのフォトレジスト、SU−8などのエポキシベースのポリマー、又はPMMA材料を有する。それらは、グラフェンダイアフラムの片側又は両側に形成され、グラフェン表面を実質的に覆う。層は、任意の所望のパターンで選択的に除去して、加えられた静電力に応答してダイアフラムの可動域プロファイルを調整、強化、又は変調し、及び/又は膜の耐衝撃性及び耐久性を改善可能である。さらに別の実施形態では、光活性層は、グラフェンダイアフラムの片側又は両側に任意選択で形成されて、グラフェン表面をブランケットで覆う。したがって、フォトレジスト層とグラフェンの両方を任意の所望のパターンで選択的に除去して、加えられた静電力に応答してダイアフラムの偏位プロファイルを調整、増強、又は変調可能である。あるいは、微小汚染の蓄積を防止するため、及び/又はダイアフラムの動きによる気流をさらに制御し、圧力波の位相キャンセル(破壊的干渉)を低減するための換気流路を提供するためもあろう。後者の場合、グラフェンダイアフラムに所望の孔のパターンを形成するためにいくつかの領域でグラフェンを選択的に除去することは、フォトリソグラフィ、シャドウマスク、リフトオフ、インクジェット印刷、三次元印刷、又はスクリーン印刷などの技術によって行われるパターン化ステップを利用する。パターニングステップの後に、イオンエッチング又は溶液エッチングによってグラフェンが除去される除去ステップが続く。
【0013】
好ましい実施形態では、トランスデューサは、第1及び第2電極のそれぞれに1つのリード線と、ダイアフラムの全周の一部又は周囲に配置された1つのリード線とを備える、外部音響電気信号への複数のパターン化された導電性相互接続を備える。この実施形態は、複数のパターン化された導電性構成要素に接続された電気回路を有する可能性があり、したがって、信号感知、又はオーディオ又は超音波信号を電極に適用してダイアフラムを変調し、音波を放出する能力を有する。
【0014】
好ましい実施形態では、ダイアフラムは、ダイアフラムの両側に開いた動作トランスデューサ領域を有し、ここで、開いた動作トランスデューサ領域は、円形、正方形、楕円形、腎臓、星形、任意の数の多角形などの形状である。
【0015】
さらに他の実施形態では、トランスデューサは、以下の間隙距離及び電圧で動作する。(1)端点を含めて、約0.1mmから約1mmの間のダイアフラムと電極間の間隙。(2)エンドポイントを備える約20Vから約4kVのダイアフラム上のVDC。(3)VRMSの第1電極と第2電極のVsignalは、端点を含めて、約20Vから約4kVの間である。
【0016】
さらに別の好ましい実施形態では、トランスデューサは、予め配線された電極又はスペーサ構成要素に電気的に接続された面内層状装置接点を有する。
【0017】
本出願の別の目的は、従来型のダイアフラム材料を使用する、現在の世代の比較的大型の静電トランスデューサアレイと肩を並べるか、より優れた、「マイクロ」トランスデューサを低コストで量産できるような製造方法を提供することである。特に、ほとんどの現世代のトランスデューサは、許容可能な低音応答を達成するために従来のダイナミックスピーカーを利用するハイブリッドアプローチを依然として必要とするが、本アプリケーションのトランスデューサは、グラフェンダイアフラムを使用すると、可聴範囲の他の部分の現世代装置の応答と一致又は超過するのに加えて、低周波低音応答の大幅な改善を示す。少なくとも例示的な実施形態の装置からアレイを形成可能であるが、そのような実施形態に限定されると見なされるべきではない。そのようなアレイは、オプションで、カスタムアレイ又は製造されたままの連続した装置のマルチプレックスアレイに配置してもよい。
【0018】
そのようなアレイの1つの例示的な実施形態では、複数の静電トランスデューサが電気的に接続され、モノラルスピーカー又は広域マイクロフォンのいずれかとして機能する。別の例示的な実施形態では、複数の静電トランスデューサが電気的に接続され、スピーカーの個々のクラスター又はクラスターを多重化して、異なるスピーカーチャネル及びマイクロフォンとして同時に使用可能である。
【0019】
新しい技術の歩留まりの問題は、アレイ構成で直接製造する可能性に影響を与える可能性があるため、多くの場合、装置を個別化し、パッケージング方法を利用してトランスデューサアレイを製造する方が賢明である。グラフェンの製造方法が改善され、歩留まりが向上するにつれて、機能していない装置のシングルカーブアウトや交換品のドロップなどの他の方法が可能になる場合がある。さらに、ソート及び試験方法は、直接使用又はさらなるパッケージングのために、機能するトランスデューサのグループ又はブロックへの分離方法を最適化できる。
【0020】
したがって、一実施形態では、静電トランスデューサを製造する方法は、
第1電極と、第1スペーサ構成要素と、二次元材料を備えるダイアフラムとを備える第1複数層構造と、
第2電極と、第2スペーサ構成要素とを備える第2の複数層構造と
を提供し、
続いて、第1の接着剤を使用し、ダイアフラムを第1の複数層電極及びスペーサ構造に位置合わせして取り付け、
最後に、第2の接着剤を使用し、第2電極及びスペーサ複数層構造をダイアフラムに位置合わせして取り付けることを備える。
選択的に、少なくとも第1の接着剤又は第2の接着剤は、電流が接着剤を横切ってダイアフラムに流れることを可能にする。好ましい実施形態では、二次元材料はグラフェンを含む。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムを第1の複数層構造に位置合わせして取り付けることは、転写基板を使用して実行される。
【0021】
本出願のさらなる目的、特徴、及び利点は、図面の図と一緒に検討されたときに以下に記載される好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0022】
本願の一部の図はカラー表示される。さらに、本願の一部の図には、パターン化された陰影が含まれている。ただし、このようなパターン化された陰影は、MPEP(米国特許商標庁の特許審査便覧)第608章の§608.02(IX)(「図面記号」)(2014年3月第9版R−08.2017)に示されている材料に対応していない。
【0023】
本願のいくつかの例示的な実施形態は、図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、標準の金属化ポリマーフィルムを使用するダイアフラムに替えて、低質量のグラフェンダイアフラムをトランスデューサに挿入した、市販のSTAX(登録商標)SRS−002静電イヤースピーカー(市販品は標準の金属化ポリマーフィルムを使用)の性能を示す。
図2図2は、本出願による装置の例示的な実施形態を示す。
図3図3は、これから単数化されるトランスデューサのシートを示す。
図4図4は、個々のトランスデューサの分解図を示す。
図5図5は、個々のトランスデューサを分解しない状態で示す。
図6図6は、モノラルチャンネル構成のスピーカーとして構成されたトランスデューサアレイを示す。
図7図7は、マルチチャネル構成でスピーカー及びマイクとして構成されたトランスデューサアレイを示す。
図8a図8aは、ダイアフラム全体に広がるダイアフラムの一部である追加の層を示す。ダイアフラムは灰色で示される。
図8b図8bは、ダイアフラムの外周からわずかな距離だけ延在するダイアフラムの一部である追加の層を示す。
図8c図8cは、ダイアフラムを「調整」して可聴周波品質を向上させるために、所望の設計でパターン化されたダイアフラムの一部である追加の層を示す。
図9a図9aから図9dは、パターン化された追加の層をダイアフラムに適用するための例示的なフォトリソグラフィ技術を示す。
図9b図9aから図9dは、パターン化された追加の層をダイアフラムに適用するための例示的なフォトリソグラフィ技術を示す。
図9c図9aから図9dは、パターン化された追加の層をダイアフラムに適用するための例示的なフォトリソグラフィ技術を示す。
図9d図9aから図9dは、パターン化された追加の層をダイアフラムに適用するための例示的なフォトリソグラフィ技術を示す。
図10a図10aから図10cは、ダイアフラムの一部の領域でグラフェンを除去するためのマスクとして使用されるパターン化された材料部を示す。
図10b図10aから図10cは、ダイアフラムの一部の領域でグラフェンを除去するためのマスクとして使用されるパターン化された材料部を示す。
図10c図10aから図10cは、ダイアフラムの一部の領域でグラフェンを除去するためのマスクとして使用されるパターン化された材料部を示す。
図11図11は、スタンドオフ層のある表面に取り付けられたトランスデューサのアレイを示す。
図12図12は、ダイアフラム処理プロセス用の溶剤及び真空吸引で除去できる犠牲膜又は犠牲構造を示す。
図13図13は、複数の層で製造されたトランスデューサの1×3アレイを示す分解図を示す。
図14図14は、図13に示す1×3のトランスデューサアレイの分解しない状態を示す斜視図を示す。
図15図15は、転写基板が上に配置され、バッチダイアフラムボンディングのために下げようとしている下部組立体を示す。
図16図16は、バッチダイアフラムボンディング処理のために所定の位置に下げられた転写基板を示す。
図17図17は、転写基板が直交して配置され、単一のダイアフラムボンディングのために下げようとしている下部組立体を示す。
図18図18は、単一ダイアフラムボンディング処理のために所定の位置に下げられた転写基板を示す。
図19図19は、図13から図14に示すように、1×3トランスデューサのアレイ内の1つのトランスデューサの断面図を示す。
図20図20は、図14によるトランスデューサの分解した状態を示す斜視図を示す。
図21図21は、図16による分解しないトランスデューサを示す斜視図を示す。
図22図22は、グラフェンダイアフラムが結合された単一10mm試験装置の「下部」組立体を示す。
図23図23は、ダイアフラムボンディング処理中に転写基板を下げた2位置を持つ単一10mm試験装置の「下部」組立体を示す。
図24図24は、オーディオ試験中に完全に組み立てられた単一の10mm試験装置を示す。
図25図25は、従来の静電トランスデューサの完全に分解した状態を示す。
図26図26は、標準製品のダイアフラムを置き換えるために特別に製造されたグラフェンダイアフラムを示す。
図27図27は、ダイアフラム性能を直接比較するための、グラフェンダイアフラムを備えたトランスデューサの再組み立てを示す。
図28図28は、グラフェンダイアフラムを備える組み立てられたトランスデューサを示す。
図29図29は、製造時の50mmのグラフェンダイアフラムを示す。
図30図30は、転写基板上の28mmのグラフェンダイアフラムサスペンションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
「約」又は「おおよそ」などの用語は同義であり、用語によって変更された値がそれに関連付けられて理解される範囲を有することを示すために使用され、その数値範囲は+20%、+15%、+10%、+ 5%、又は+ 1%のことがある。「実質的に」という用語は、値が目標値に近いことを示すために使用される。ここで、近いとは、例えば、値が目標値の80%以内、目標値の85%以内、目標値の90%以内、目標値の95%以内、又は目標値の99%以内のことがある。
【0026】
音波を指して「超低周波音」という用語は、音波が人間の可聴範囲より低い、すなわち20Hz未満の周波数を持つことを意味する。音波を指して「超音波」という用語は、音波が人間の可聴範囲を超える、すなわち20kHzを超える周波数を持つことを意味する。音波を指して「人間の可聴範囲」などの用語は、音波が人間の可聴範囲内、すなわち20Hzから20kHzの間の周波数をもつことを意味する。
【0027】
音波(acoustic wave)は、本願においてさまざまなところで音波(sound wave)ということがあり、その逆もある。
【0028】
図1は、標準ダイアフラムの代わりに低質量グラフェンダイアフラムをトランスデューサに挿入したことを除いて、ダイアフラムとして標準金属化ポリマー膜を使用した市販のSTAX(有限会社スタックスの)SRS−002静電イヤースピーカーの性能を示す。X軸は20Hzから20kHzまでの周波数を対数的に示し、Y軸は0dBから約110dBまでのデシベル(dB)を示する。図1に示されている周波数範囲は、人間の可聴範囲に対応している。本出願のトランスデューサは、グラフェン層を製造し、それらの層を装置に整列及び取り付けるための新しい手順を利用することによって製造可能である。一実施形態では、図1に示されているグラフェン材料は、非特許文献1に記載された手順により作製されてもよい。別の実施形態では、装置は、以下で詳細に説明されるような新規の手順を使用して作製されてよい。グラフェン材料は、本出願の様々な実施形態の主題に従って使用可能である。図1は、グラフェン材料が、特に範囲の下限を含む、人間の可聴範囲全体で従来の最先端の変換材料よりも優れていることを表現している。グラフェン材料は全範囲で一貫した応答を維持するが、市販のSTAX社の材料は低周波数での応答が弱い。
【0029】
一般に、図2図3図6、及び図7で、青色又は紺色の材料は、FR4(「難燃剤4」として知られるガラス強化エポキシラミネート材料群)、ガラス、セラミック、又はポリマーである。低い熱膨張係数(低CTE)と高いガラス転移温度を有するFR4材料は、FR4材料群の中で好ましい。このような材料には、例えば、IS400HR(ISOLA社の製品)(150°Cのガラス転移温度(T)、Tを下回る13ppm/°CのCTE)、TERRAGREEN(ISOLA社の製品)(200°Cのガラス転移温度(T)、Tを下回る16ppm/°CのCTE)、あるいは過酷な動作環境への暴露に使用される高いガラス転移温度を持つ耐熱樹脂系を持つこの同じ群の他の製品が、含まれる。当業者は、他のそのような適切な誘電体材料を知っているであろう。このような層には、図2図3図6、及び図7に示すような層(16、20)が含まれる。同様に、オレンジ色の材料は、銅やアルミニウムなどの導体、又は電子装置に適した他の導体である。このような層には、図2図3図6、及び7図に示すような層(17、21)が含まれる。さらに、バーガンディ(暗い紫味の赤)色の層は、非導電性エポキシ、ガラス、セラミック、又はポリマーコーティングなどの誘電体絶縁体である。当業者は、他のそのような適切な誘電体材料を知っているであろう。このような層には、図2図3図6、及び図7に示すような層(18)が含まれる。紫色と緑色の層は、接着用の接着剤又はエポキシ層である。当業者は、その他の、そのように適切な結合材料を知っているであろう。このような層には、図2図3図6、及び図7に示すような層(19)が含まれる。特に、本願は、この段落に記載されている材料に限定されず、当業者によって容易に想像されるであろう全ての同様な材料を含む。
【0030】
図2は、本願による静電トランスデューサの例示的な実施形態を示している。図2は、2つの電極層(E1、E2)、2つのスペーサ層(S1、S2)、及び1つのダイアフラム(D1)を示す。ダイアフラム(D1)は、例えば、2D材料であってよい。好ましい実施形態では、ダイアフラムはグラフェンを有するが、支持を提供するか、又は向上したオーディオ品質のためにグラフェン層を「調整」するために含まれる他の材料を備えてもよい。従来の静電トランスデューサと同様に、電極層(E1、E2)は、対称的な装置のダイアフラム(D1)の両側にあるスペーサ層(S1、S2)によってダイアフラム(D1)から分離されている。電極(E1、E2)とダイアフラム(D1)との間には、これらのスペーサ(S1、S2)の厚さによって決定される間隙(G1、G2)もある。直流(DC)充電がダイアフラム(D1)に与えられ、オーディオ信号が電極(E1、E2)に与えられる。通常、プッシュプル型構成を使用して音を生成する。トランスデューサをマイクロフォンとして使用する場合、典型的には構成が異なり、一方の電極は接地され、もう一方の電極は、ダイアフラムの音波変位(D1)から生じる静電容量の変化によって引き起こされる電流の流れが監視されるものとなる。
【0031】
ダイアフラム(D1)には、可変である、トランスデューサの動作変換領域(1)がある。一般に、この出願のトランスデューサの厚さと質量の場合、面積は、可聴周波への適用の場合は1mm、超音波での適用の場合は0.1mmという小さな直径の円形サスペンション部の面積とほぼ同じである。それら(直径)がどれだけ大きくなるかについての制限はない。ここでの重要な問題は、サスペンション部用に同じ厚さのより大きく、より大きく、高品質のダイアフラム膜を製造する能力である。ダイアフラムサスペンション部は、様々な形状、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、腎臓又は他の不規則な形状を有してもよい。
【0032】
特に、ダイアフラム(D1)の例示的な実施形態は、純粋なグラフェン、又は六方晶窒化ホウ素(HBN)又は二硫化モリブデン(MOS)などの他の同様の高強度、低質量膜とのハイブリッドグラフェン複合膜から製造される。そのような膜が、本明細書に記載の主題に従って製造されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、ダイアフラム(D1)において、ダイアフラムに追加の機械的強度を提供するために、グラフェン層の片側又は両側にHBN、MOS又はより従来の材料の薄層を備える複合グラフェン構造を使用することが望ましい場合がある。それは、ダイアフラムの外周に沿ってより柔軟で剛性の低い機械的支持を提供するため、あるいは、加えられた静電力に応答して、ダイアフラムの可動域形状を本質的に「調整」又は「強化」するべく、ダイアフラムの表面全体に望ましい変位パターンを作成するためである。そのようなパターンは、丸いダイアフラムの例では、中心部の円板又は特定の幅及び半径を有する環状部をパターン化して円形ダイアフラムにしたものを含むだろう。使用可能性のある従来の材料には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)などのポリマー、又は広範囲のアクリル、ポリエステル、シリコーン、ポリイミド、ポリウレタン、及びハロゲン化プラスチックが含まれるが、これらに限定されない。パターン化された円板は、パターン化された円板のないダイアフラムと比較して、ダイアフラムの質量を増加させ、その変位が減少する。別のパターン、例えばダイアフラムの外縁にある環状部は、ダイアフラムに剛性を追加し、その変位も低減するが、耐久性を向上させる。例えば、その外周に沿ってパターン化された環状部を備えたダイアフラムは、パターン化されたリングを備えていないダイアフラムと比較して、より高い電圧で駆動可能であろう。
【0034】
これらの追加の層(2)は、図8aに示すようにグラフェンダイアフラム(D1)の表面全体に広がってダイアフラムを完全に覆うか、上記のようにパターン化するか、外側から短い距離だけ延在するようにパターン化してもよい。あるいは、パターン化して図8bに示すようにグラフェンダイアフラム(D1)の周囲(11)、それによってダイアフラム(D1)の中心にコーティングされていない露出したグラフェン領域(12)を残したものとしてもよい。あるいは、層は図8cのように任意の設計でパターン化してもよい。
【0035】
図9aから図9dに示すように、PMMA(ポリ[メチルメタクリレート])、SU−8(エポキシに硬化される有機樹脂溶液)を含むがこれらに限定されない、半導体製造業界で一般的に使用される感光性材料(3)硬化時のエポキシ)及び一般に「フォトレジスト」(3)と呼ばれる他の多くの材料を使用して、ダイアフラムの一部の領域でフォトレジスト材料がグラフェン表面から除去されるブランケット又はパターン化層を形成できる。フォトマスクを通過するUV光に続いて現像剤に浸漬するが、シャドウマスク、リフトオフ、研磨、インクジェット印刷、3D印刷、スクリーン印刷などの他のパターン化方法を使用して、追加された材料をパターン化してもよい。これらの材料は、グラフェンの分離及び転写ステップ中のグラフェンダイアフラム材料の収率を向上させるためのブランケット又はバッカー膜としても使用してもよい。このような材料は、完全に除去されるか(つまり、最終的な装置に組み込まれない)、最終的に製造された装置内に残ってもよい。
【0036】
図9aから図9dに示す例では、感光性材料(3)がグラフェンダイアフラム(D1)に適用されている(図9a)。感光性材料(3)は、次に、光源(6)によって現像される1つ又は複数の露光領域(4)が存在するように、マスク(7)によってマスクされる硬化光源(6)に露光される。この例では、ポジ型フォトレジストが使用されているが、当業者は、ネガ型フォトレジストも使用できることを理解するであろう。次に、マスク(7)が除去され、露光された領域が現像液によって除去される。次に、図9cに示されるように、追加の層(2)が、感光性材料(3)によってもはや覆われていないダイアフラム(D1)の部分に追加される。最後に、図9dに示すように、感光性材料(3)が除去され、ダイアフラム(D1)と追加の層(2)のみが残る。
【0037】
他の実施形態では、図10aから図10cに示されるように、パターン化された材料(3)は、ダイアフラム(D1)のいくつかの領域でグラフェンを除去するためのマスクとしてそれ自体を使用可能であり、したがって、フォトマスクの設計に応じた任意の形状のグラフェンに孔部(8)の所望のパターンを形成する。その後、目的の最終的な絞り構造に応じて、感光性材料(3)を所定の位置に残すか、絞り表面から完全に除去可能である。このようにして、静電刺激に応答するダイアフラムの可動域パターンは、孔部のパターンの設計によって調整可能である。
【0038】
装置のグラフェンダイアフラムは、Zhouらの技術、又はニッケルなどのシード層フォイル上でかなり一般的なプロセス設定でメタン及びHガスを使用するCVD成長によってグラフェンダイアフラム層を製造するこの実施形態で使用される別の方法に従って製造可能である。デポジション後、外側にグラフェンを備えた箔は、それから、選択的に、PMMAスピンコーティングされ、ベークされるか、又は箔の片側に他のそのような同様の膜でコーティングされてもよい。それから、箔は、最小又は場合によってはそれ以上で、いうなれば既定の大きさよりわずかに大きなトランスデューサ動作領域の開口部を持ち、PSA(感圧接着剤)を付けた「転写基板」に裏向きに配置される。転写基板は、トランスデューサ装置の「下部」部分であるE1とS1の積み重ねの特徴に位置合わせできるように、位置合わせ穴又は印でフォーマットされている。この位置合わせは、位置合わせ用のピン、又はその他のより高度な半導体又は半導体パッケージの位置合わせ方法を使用して行ってよい。PMMA、グラフェン、箔が転写基板に裏向きに接着されると、箔の反対側で酸素プラズマアッシング技術を使用してグラフェンが除去される。次に、露出したニッケル箔を塩化第二鉄又は他の同様のタイプのエッチャントでウェットエッチングし、下にあるグラフェン層又は複合膜を攻撃しない。グラフェン又は選択的に2層膜は転写基板の開口部にぶらさげておいてもよい。選択的に転写基板及びサスペンション部は、ポリマー膜を除去するためそれから処理してもよい。あるいは、この膜は、ブランケット又はパターン化された形でそのままにしておいてもよい。
【0039】
電極(E1、E2)及びスペーサ(S1、S2)層は、様々な製造プロセスと互換性のある様々な材料から製造可能である。材料には、金属化コーティングされたポリマー、剛性又は柔軟性、又はFR4、ガラス、プラスチックなどの繊維強化エポキシ材料が含まれる。熱膨張係数が低く(低CTE)、ガラス転移温度が高いFR4材料は、FR4材料群の中で好ましい。 このような材料には、例えば、IS400HR(ISOLA社製品)(150°Cのガラス転移温度(T)、Tを下回る13ppm/°CのCTE)、TERRAGREEN(ISOLA社製品)(200°Cのガラス転移温度(T)、Tを下回る16ppm/°CのCTE)、あるいは過酷な動作環境への暴露に使用される高いガラス転移温度を備えた耐熱樹脂システムを備えたこの同じ群の他の製品が含まれる。
【0040】
電極(E1、E2)は、構造的完全性のための誘電体層(16)と、静電電圧面を作成するための内部の薄い導電層(17)と、任意選択で電圧面の上部の第2の薄い誘電体層(18 )とを備える。これは、装置の内側での電極アーク放電を防ぐためである。電極の「外側」側は、アレイ構成で将来使用するために事前に製造された導電性トレースを備えてもよく、あるいはこれらのトレースは、スクリーン印刷、インクジェット又は他のそのような方法を使用して導電性インクを用いて、後で形成可能である。
【0041】
電極(E1、E2)を備える層を製造する際、銅やアルミニウムなどの導体で予め金属化した材料を使用してもよく、スパッタリングやメッキなどの従来の導電性膜堆積法を使用して電極を「金属化」して導電性を提供してもよい。個別に個別化することを目的とした装置のプロセスを簡素化するために、外部電極導体は必要なく、替わりに、電極とスペーサを組み立てるときに必要なパターンを事前に配線することにより、面内の層状の装置接点をタブ形式で製造してもよい。
【0042】
例えば図3図6図7、及び図13から図17に示すように、アレイ形式で使用することを目的とした装置の場合、(複数の)導体層は、これらの層の「外側」側にあるそれぞれの装置を相互接続するために、マルチレベルPCB、MEMS装置、ディスプレイ、さらには半導体装置用に開発された方法を使用して、パターン化できる。
【0043】
別の実施形態では、アレイ構成は、所望の電気配線を提供する別個のインターポーザスタイルの基板を使用して、単一又はグループ化されたトランスデューサへの電気的接続のためのワイヤボンディングとこれらの装置を接着するための機械的接着とを組み立て及び相互接続可能である。
【0044】
電極層の「内」側(14)は、VAC信号のための金属導電層を必要とし、典型的には銅又はアルミニウムであるが、他の任意の導電性膜であってもよい。この層は、標準的なエッチング及びパターン化方法を使用してパターン化してもよいし、場合によってはシート全体で連続したままにしてもよい。この導電層はまた、ダイアフラムが電極層と接触した場合に潜在的な短絡イベントが発生するのを防ぐのに十分なパッシベーション層をその上に備えてもよい。このパッシベーションは、スクリーン印刷、フォトリソグラフィ、シャドウマスキング又は他のそのような技術を使用してパターン化できる非導電性エポキシ材料又は他の誘電体材料であってよい。
【0045】
電極は、スペーサ開口部の上に配置された音響伝達孔部(15)を有し、これらは、動作トランスデューサ領域を備え、音響伝達を可能にする。これらの音響孔のサイズはさまざまで、1ミクロン(μm)ほど小さく、半導体エッチング法で生成される。また、さまざまな穿孔方法を使用して1mm以上の大きさになることもある。孔のパターンは、音響上の考慮事項、サイズ、アスペクト比、ピッチ、周期性の変化に基づいて変える可能性がある。しかし、一般的には、静電力と音響伝達のバランスを合理的にとるために、25%から40%の開放領域が望まれる。
【0046】
スペーサ(S1、S2)は、全体的に2つの層を備える。1)電極とダイアフラムの間に間隔を作るための誘電体層(20)と、2)ダイアフラムを結合可能な導電層(21)である。導電層(21)はまた、外部接点のための経路指定を提供可能である 誘電体と導電性膜を除去すると、動作トランスデューサ領域が作成される。誘電体膜と導電性膜を合わせた厚さは、電極の電圧面とダイアフラムの間に「間隙」又は空間を生成する。前述のように、スペーサ層の開口部はさまざまな形状にしてよいが、この層の導電性膜部分がこの形状の全周にわたって連続していることが重要である。この周囲の導電性膜は、ダイアフラムが均一な品質の結合で結合される場所であり、トランスデューサの動作する周囲全体の周りに一貫した機械的及び電気的特性を与える。
【0047】
電極層とスペーサ層の両方に、採用される形状と全体的な製造方法に応じて、さまざまな方法でパターン化されたこれらの開口部又は孔部を備えられる。標準的なPCB製造の場合、機械的な穿孔の配線やレーザー穿孔やアブレーション技術などの技術が機能する。また、MEMS、ディスプレイ、又は半導体の製造では、フォトリソグラフィによるパターニングとエッチングの方法も可能性がある。スペーサの開口部は、トランスデューサの設計に応じて形状とサイズを変えてよく、電極の穴のパターンは、必要な音響性能に応じてサイズと配置を変えてよい。
【0048】
シートツーシート方法、又はラウンドツーラウンド方法を次に使用して、電極層をスペーサ層に整列及び結合する。典型的なシートツーシート方法のプリント回路基板(PCB)では、(複数)パネルをさまざまな方法で位置合わせ及び結合して、装置のE1とS1、いいかえると「下部」及びE2とS2の「上部」を製造可能である。
【0049】
装置を完成させるために、ダイアフラムサスペンションを備えた転写基板を「下部」装置上に位置合わせする。下部装置は、装置のスペーサ導電性の周縁の全周囲に接着剤が均一に塗布されている。非常に均一で完全な周辺ボンディングを行うことが重要であるため、スタンピングやその他の制御されたボンディング分配方法が重要である。次に、転写基板を「底部」の所定の位置に下げ、接着剤を所定の位置に硬化させることで周辺接着を完了する。ダイアフラム(D1)層が接着剤(G)によって装置の「底部」に取り付けられた後、転写基板の周囲でダイアフラムを剪断し、転写基板を持ち上げることによって、転写基板が取り外される。接着剤を使用した「上」半分は、ダイアフラムが取り付けられた「下」に位置合わせされて取り付けられ、トランスデューサダイアフラムをカプセル化してその構造を完成させる。これらの接着ステップの少なくとも1つ(2つの部分で行われる緑色の層(G))は、導電性材料で行うか、電流のトンネリング(又はリーク)がダイアフラムを充電できるように十分に薄くする必要がある。
【0050】
通常、最後のステップは、接着剤を適切に硬化させるための加熱処理である。
【0051】
個々のトランスデューサは、図3図6図7、及び図13から図17に示すようなアレイで製造してもよい。個々の装置のアレイを同時に製造するための型式は、プリント回路基板製造者によって使用されるようなシート型式であることもあるし、ロールツーロール型式であることもある。特にダイアフラムサイズを縮小し、重ね合わせ(レイヤーツーレイヤー位置決め)要件がより厳しくなるにつれて、従来の半導体又はMEMS製造で使用されるウェハなどのラウンド型式の可能性もある。しかしながら、装置サイズが比較的大きい場合、製造プロセスと材料はシートツーシート又はロールツーロールプロセスと互換性があり、量産の費用効果が高いことが証明されている。個々の装置間の横方向の間隔は異なる場合がある。ただし、各層間の垂直方向の間隔を一定に保つことが重要である。したがって、高度な平面の結合方法の均一層厚及び使用は、いくつかの実施形態において、特に、ダイアフラムと電極の間の平行性及びダイアフラムから各電極までの等しい「間隙」が重要になる可能性があるダイアフラムと各電極との間の、開いた領域又は間隙において重要である。
【0052】
装置の上部と下部の製造中に、(複数の)層は、接着剤又はエポキシ(紫色の層、図2)を使用して結合される。あるいはPCB方式の場合は、「プリペグ」材料(通常は熱硬化性エポキシを含む複合繊維を事前に含浸)を使用できる。電極層とスペーサ層は両方とも、装置に構造的完全性と平面性を提供する。しかしながら、ロールツーロールのような柔軟な型式でアレイに製造されるときは、動作する変換領域で装置の平面性を維持するために、剛性インサート、又はフレックスポリマー改変区域なしを使用可能なことが着想できる。
【0053】
別の好ましい実施形態における、製造の第1の重要な特徴は、ぶら下げられたダイアフラムの全周に沿って作成された連続電荷伝導経路、及びトランスデューサの様々な層を接触させる方法を備えることである。静電オーディオトランスデューサのダイアフラムは、通常、一定の直流(DC)電圧(VDC)を使用して充電される。典型的には、ダイアフラムへの単純な接触点により、電荷がその表面全体に通常の導電によって分散可能になると想定される場合がある。これは実際に起こるのであるが、このような低電流の装置で、機械的結合が電気的要件と連携して機能する場合、好ましくは、動作トランスデューサ領域の周縁全体に連続する電気的及び機械的結合を持つ。
【0054】
グラフェンダイアフラム(D1)への電気経路は、必ずしも低抵抗である必要はない。実際、グラフェンを(典型的には)金属導体(21)にグラフェンの周囲に沿って接着するために使用されるエポキシ又は接着剤の線(G)は、直列抵抗として機能して、ダイアフラムに、一定に近い電荷の集中を維持するのに役立つことが好ましい場合がある。ある事例では、周縁の銅トレース上の非導電性エポキシの細い接着線(G)が、ダイアフラムへの好ましい接着方法であり、接着剤であることに加えて、直列抵抗としても機能する。これは、ダイアフラムに一定の電荷を提供するのに役立ち、ダイアフラムの電荷が急速に変化するときに発生する可能性のある歪みやその他の望ましくない影響を減らすことで、トランスデューサの可聴周波性能を向上する。このようにして、接着剤線は、システム内の少なくとも1つの抵抗器を置換できるため、トランスデューサのサイズ、重量、及びコストを削減できる。電荷制御抵抗器として効果を発揮するには、接着剤線抵抗RGLとダイアフラムから電極への静電容量CDEの積が、ダイアフラムの電圧時間応答を1/faudio未満に制限するのに十分大きくある必要がある。ここで、faudioは、トランスデューサの最小可聴周波数でありしたがってRGLDE<1/faudioである。
【0055】
別の好ましい実施形態における、製造の第2の重要な特徴は、装置の導電性表面に接触して、VDCをダイアフラム(D1)に送信し、交流(AC)可聴周波電圧信号(VAC信号)を電極(E1、E2)に送信する方法を備えることである。従来の製造の取り組みでは、これまでの接触させる方法は、PCB層を垂直に貫通する金属化された穴を備えたVIA(垂直相互接続アーキテクチャ)を利用する。これは、通常の電子機器や回路基板の設計では非常にうまく機能する。ただし、静電トランスデューサは通常遭遇するよりも高い電圧を使用し、一部の層(ダイアフラムなど)は正しく機能するために非常に高いインピーダンスを必要とする。異なる接触方法が本明細書に記載されていて、装置の各電気的な面(E1、E2、及びD1)は、装置の分離後に電気的にアクセス可能である「パッド」(複数)を有するタブ(複数)を形成するべく、複数の開放領域を装置アーキテクチャへの統合を求めるエッジコネクタ方法を介して直接接触される。
【0056】
別の好ましい実施形態における、製造の第3の重要な特徴は、2つの電極間に組み立てられるに先立ち、薄いグラフェンダイアフラムを取り扱うことである。グラフェンは大音量の可聴周波信号を生成するのに十分な強度があるが、ダイアフラムは、分離工程の前に穴が開いたり裂けたりするおそれがある。ダイアフラムを位置合わせし、機械的に支持し、物理的に伸ばす工程ステップを使用して、再現性のある装置パフォーマンスを確保する。例えば、図12に示すように、溶媒や真空成形装置で除去できるポリマー膜などの犠牲膜及び構造(24)は、ダイアフラム取り扱い工程の鍵であるが、分離工程後、最終装置に残しても残さなくてもよい。
【0057】
マルチ装置アレイ構成では、インピーダンス及び接触の問題を慎重に検討する必要があり、これらの構成に電気配線を収めるべく、新しい設計規則を検討する必要があるかもしれない。分離された装置及びモノチャネルアレイ装置の場合、エッジコネクタプレーンコネクタは単純なソリューションであり、ビア及び小面積の接触の問題を回避する。装置パッドの接続を最終製品の機能に変換するべく、単純なエッジスタイルのマイクロコネクタを開発してもよい。アレイとして、外部電気配線が両方の外部電極で発生する。これらの装置接続は、タブパッドからワイヤボンディング方式による信号配線に取得してもよい。高電圧の設計規則に基づいて、必要に応じて、装置の接触方式を介したより複雑なスルーホールを開発してもよい。
【0058】
アレイとして、装置は、音波(亜音速、可聴音、超音波)の生成専用にすることも、超広帯域マイクとして完全に専用にすることも、これらの各タスクを同時に実行するトランスデューサで分割してもよい。このようなアレイは、複数のダイアフラム(D1、D2、D3)を持つ。一実施形態では、図6に示されるように、全てのトランスデューサは、スピーカー又はマイクロフォンのいずれかとして決めておくこともあろう。また、図7に示すように、各トランスデューサをマイクからスピーカーに切り替えて、装置全体の構成を意図する適用に合わせて変更することもあろう。このような構成は、導電性材料部(22)を含む少なくとも1つの相互接続配線層(9)と、各トランスデューサを個別にアドレス指定できるようにする誘電体材料部(23)も併せて備える(すなわち、アレイ内の回路は、多重化アレイ内の個々のトランスデューサをアドレス指定する能力と、個々のトランスデューサを制御する能力とを有して、アレイが、オーディオスピーカーとして動作するトランスデューサとマイクとして動作するトランスデューサとを同時に備えられるようにする)。
【0059】
マイクとして、装置アレイは、これまでの記載と同様の方法で、モノチャネル又はマルチチャネルのいずれかを介して音を検出可能にしてもよい。マイクとして使用する場合、1つのトランスデューサ電極をアース端子に接続し、2番目の電極をモノラル又はマルチチャネルモードで、音波がダイアフラムに振動を誘発してダイアフラムを変化させるときに電圧(又は静電容量)の変化を検出する検出回路に接続する。ダイアフラムと電極の間隔により、静電容量と電圧が変化する。
【0060】
図11に示すように、アレイ装置(A)が表面(13)又は他の基板に取り付けられている場合、取り付け点とトランスデューサアレイ(A)との間にスタンドオフ層(10)を使用することも望ましい場合がある。このスタンドオフ層(10)は、トランスデューサのバックボリューム音響の調整を目的としていて、アレイ装置に有益な音響を生成するようにパス(単数又は複数)と断面積で設計できる。
【0061】
図13から17に示されるように、本請求項による変換装置は、アレイ、例えば、1x3アレイで製造されてもよい。これらのアレイは、個別に分離されてもよいし、多重化してもよい。図13は、層状に製造されたトランスデューサの1x3アレイを示す分解図を示す。図14は、図13による装置の分解していない状態のアレイを示す。シートバッチ処理法用に、装置のより大きなシートとして、3×3アレイ又はより大きなアレイを簡単に組み立て製造可能であろうし、あるいは、より長い単一装置ストリップと単一装置製造方法を使用してもよい。図15は、ぶら下げられたダイアフラム(ダイアフラムサスペンション部)が所定の位置にある転写基板を備えた、組み立て製造される「下部」装置を示す。3つの装置全てが、バッチプロセスで接着される、ダイアフラムサスペンション部を持つ場合があってもよい。図16は、下部組立体の所定の位置に下げられた転写基板を示す。図17図18は、持ち上げた位置と下げた位置を示すが、バッチボンドに合わせるのではなく、装置は下部組立体と転写基板の直交ストリップから個別にインデックスが付けられ、各ダイアフラムを一度に1つずつボンディングするように配置されている。このプロセスの後、各ストリップ又はシートの上部組立体が接着されて、それから硬化されて、装置組立体が完成する。それから、この時点で装置を試験してよいし、そして小さなタブを切断することで装置を分離してよい。
【0062】
図19は、図13から図14に示す1×3トランスデューサのアレイ内の1つのトランスデューサの断面図を示す。図20は、図14によるトランスデューサの分解状態を示す斜視図を示している。図21は、図20に対してトランスデューサの分解していない状態の斜視図を示している。図13から図21に示される装置の好ましい実施形態では、装置のダイアフラムは、約10mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約20mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、1μmから10μmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、10μmから100μmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、100μmから1mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、40μmから1mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、1mmから10mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、1mmから35mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、1mmから100mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、10mmから20mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、10mmから100mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、100mmから1000mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは、1000mmから10cmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約1mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約10mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約20mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約30mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約40mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約50mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約60mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約70mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約80mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約90mmの直径を有する。別の好ましい実施形態では、ダイアフラムは約100mmの直径を有する。
【0063】
本主題の好ましい実施形態では、電極とダイアフラムとの間の間隙は500μmから5mmである。別の好ましい実施形態では、間隙は500μmから1mmである。別の好ましい実施形態では、間隙は100μmから1mmである。別の好ましい実施形態では、間隙は1mmから2mmである。別の好ましい実施形態では、間隙は2mmから3mmである。別の好ましい実施形態では、間隙は3mmから4mmである。別の好ましい実施形態では、間隙は4mmから5mmである。
【0064】
本主題の好ましい実施形態では、ダイアフラム及び/又は電極に印加される電圧は、1ボルト(V)から約6kVである。別の好ましい実施形態では、電圧は1Vから10Vである。別の好ましい実施形態では、電圧は10Vから100Vである。別の好ましい実施形態では、電圧は100Vから1kVである。別の好ましい実施形態では、電圧は1kVから4kVである。別の好ましい実施形態では、電圧は1kVから6kVである。別の好ましい実施形態では、電圧は4kVから6kVである。
【0065】
図22は、組立体にグラフェンダイアフラムが接着された10mmの「底部」試験装置を示す。図23は、グラフェンの結合を進めているときに下方にある転写基板を示す。図24は、音を出すために配線された試験装置を示す。
【0066】
図25は、恒久的に統合されたトランスデューサ組立体ではない、より伝統的な静電スピーカーの構成を示す。この方法は、新しいダイアフラム構造の実行可能性を検証するために使用されたが、ダイアフラムに適切な保護を提供しないため、本発明の超薄膜装置に適した媒体ではない。この方法で構築されたトランスデューサは、注意して処理すればうまく機能したが、標準的な製品落下試験には耐えられなかった。初期のHVM試験では、この方法で製造された統合組立体装置がこれらの同じタイプの試験に合格できることが示されている。組立体の追加の欠点は、量産を困難にするかなりの手作業による組立体が必要になることである。図26は、従来の静電スピーカーと互換性のあるリング構造に固定されたグラフェンダイアフラムを示す。図27は、従来のダイアフラムに替えてグラフェンダイアフラムを使用した従来の静電スピーカーの手作業による組み立てを示す。図28は、従来のダイアフラムに替えてグラフェンダイアフラムを内部に備えた、完全に組み立てられた従来の静電スピーカーを示す。
【0067】
別の実施形態では、各可聴周波トランスデューサの開いた「変換」のサイズは、20Hzから約20kHzまでの完全な可聴周波スペクトル応答のために直径1mmまで小さくしてよい。別の実施形態では、超音波トランスデューサの場合、サイズは、20kHzから約0.5MHzまでの超音波スペクトル応答のために、直径40ミクロン(μm)まで小さくできる。小型の可聴周波トランスデューサは、補聴器などの適用に最適である。オーディオ信号は外耳道に直接送られるため、SPL(音圧ラウドネス)が低くても問題ない。ダイアフラムのサイズを小さくするのに合わせて、電極とダイアフラムの間の間隙を小さくしてよい。これにより、電極とダイアフラムの間の電界が増加し(したがって、ダイアフラムにかかる力が増加し)、特定の印加電圧に対してトランスデューサがより強く駆動される。ここで説明するグラフェンの成長性とトランスデューサのパッケージング処理は拡張性があるため、大幅に大きなダイアフラムと間隙のサイズが可能である。実際問題としては、ダイアフラムサスペンション部が大きいほど間隙が大きくなるため、間隙が小さい装置と比較して、同じサウンド出力を生成するには高い電圧が必要になる。
【0068】
本発明の一実施形態では、500μmの間隙が、直径20mmのダイアフラムサスペンション部、580VDCの最大DC電圧、及び230Vrmの最大AC電圧で使用される。特定の実施形態では、電圧要件は間隙サイズとともに増加するため、概算として、直径40mmのトランスデューサは、ダイアフラムの両側に1mmの間隙を必要とし、これは、動作するために約1.5kVを必要とし得る。信号周波数が低下するとダイアフラムの偏位が大きくなるため、通常、低周波数信号には大きな間隙が必要である。結果として、本発明の別の実施形態は、グラフェンベースのトランスデューサをミッドレンジ及びツイータースピーカーとして使用することであり、より小さな間隙を使用してもよく、一方、可聴周波スペクトルの低価格帯をカバーするのに、より従来のスピーカーをサブウーファーとして使用してもよい。この場合、グラフェンベースのトランスデューサの帯域幅は、クロスオーバーネットワークを使用してより高い周波数帯域に制限される。したがって、本出願の主題を使用して、マイクロスピーカーに期待されるサイズをはるかに超えて、デスクトップスピーカーの製造、そして次にルームスピーカーの製造に利用できるトランスデューサを製造可能である。
【0069】
好ましい実施形態の前述の説明は、例示及び説明のみを目的として提示されている。網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、修正及び変形が可能であり、及び/又は上記の教示に照らして明らかであるか、又は本発明の実施から取得されてよい。実施形態は、本発明の原理及びその実際の適用を説明するために選択及び説明され、当業者が本発明を様々な実施形態で、企図される特定の使用に適した様々な修正で利用できるようにする。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲は、開示された実施形態及びそれらの同等物を含む、本発明の全ての実施形態を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0070】
A トランスデューサアレイ
D1 ダイアフラム
D2 ダイアフラム
D3 ダイアフラム
E1 電極層
E2 電極層
G 接着剤
G1 間隙
G2 間隙
51 スペーサ層
52 スペーサ層
1 動作変換領域
2 グラフェンダイアフラムの追加層
3 感光性材料部
4 露出した感光性材料部
5 未露光の感光性材料部
6 光源
7 マスク
8 孔部
9 相互接続
10 スタンドオフ層
11 ダイアフラムの外縁
12 露出したグラフェンの範囲
13 表面
14 電極層の内側
15 電極の開口部
16 電極層の誘電体層
17 電極層の導電層
18 電極層の第2誘電体層
19 スペーサ層のエポキシ層
20 スペーサ層の誘電体層
21 スペーサ層の導電層
22 相互接続する導電性材料部
23 相互接続する誘電体材料部
24 犠牲膜又は犠牲構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図10c
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【国際調査報告】