特表2021-535849(P2021-535849A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-535849高レベルの塩化物塩およびデンプン層を有する石膏からの石膏ボードおよびそれらに関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-535849(P2021-535849A)
(43)【公表日】2021年12月23日
(54)【発明の名称】高レベルの塩化物塩およびデンプン層を有する石膏からの石膏ボードおよびそれらに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20211126BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20211126BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20211126BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20211126BHJP
   E04B 2/76 20060101ALI20211126BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20211126BHJP
【FI】
   B28B1/30
   C04B28/14
   C04B22/10
   E04C2/26 P
   E04B2/76
   E04B2/74 541P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2021-506550(P2021-506550)
(86)(22)【出願日】2019年8月12日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月30日
(86)【国際出願番号】US2019046101
(87)【国際公開番号】WO2020036842
(87)【国際公開日】20200220
(31)【優先権主張番号】62/718,599
(32)【優先日】2018年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/401,719
(32)【優先日】2019年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】リ、チンファ
(72)【発明者】
【氏名】ル、ランハイ
(72)【発明者】
【氏名】コクラン、チャールズ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘンプヒル、マーク
【テーマコード(参考)】
2E162
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
2E162CA16
2E162CC06
2E162FA14
4G052DA01
4G052DB14
4G112MB08
4G112PB09
(57)【要約】
合成石膏および塩化物塩濃度の高い他の石膏源から形成された石膏ボード。石膏ボードは、凝結石膏を含むボードコアを含む場合がある。ボードコア内の塩化物アニオンの総濃度は、硫酸カルシウム半水和物の重量に基づいて、約500ppm〜約3000ppm、通常、約1000ppm〜約3000ppmの範囲である。前側紙カバーシートの内面は、ボードコアの第1の面に接触する。後側紙カバーシートの内面は、ボードコアの第2の面に接触する。デンプン層は、前側および後側のカバーシートの少なくとも一方の内面を覆っている。石膏ボードを作製する方法、および石膏ボードを使用するための壁システムも提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ボードであって、
凝結石膏を含むボードコア層、
外面および内面を有し、前記内面が前記ボードコアの第1の面に接触する前側紙カバーシート、および
外面および内面を有し、前記内面が前記ボードコアの第2の面に接触する後側紙カバーシートを含み、
前記前側紙カバーシートおよび前記後側紙カバーシートのうちの少なくとも一方の前記内面は、デンプン層でコーティングされており、
前記コア層は、前記第1のカバーシートと前記第2のカバーシートとの間にあり、
前記コア層は、前記前側紙カバーシートと前記後側カバーシートとの間に、水とスタッコの混合物を含む水性スラリーを凝結させた結果であり、前記スタッコは硫酸カルシウム半水和物を含み、前記水性スラリーは、
乾燥ベースにおける少なくとも60重量パーセントの前記硫酸カルシウム半水和物、
1,000,000重量部の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの塩化物アニオン、および
0.2:1〜1.2:1の前記水と前記硫酸カルシウム半水和物の重量比における前記水、を含む、石膏ボード。
【請求項2】
前記デンプン層が、前記前側紙カバーシートおよび前記後側カバーシートのうちの少なくとも一方の前記内面全体上の連続的なデンプン層であり、
前記デンプン層が未調理のデンプンを含む、請求項1記載の石膏ボード。
【請求項3】
前記デンプン層が、前記前側紙カバーシートおよび前記後側カバーシートの少なくとも一方の前記内面全体上の連続的なデンプン層であり、前記デンプン層が、未調理デンプンおよび調理済みデンプンの混合物を含む、請求項1記載の石膏ボード。
【請求項4】
前記水性スラリーが、1,000,000重量部の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約1000ppm〜約3000ppmの塩化物アニオンを含む、請求項1記載の石膏ボード。
【請求項5】
前記デンプン層が、約0.5ポンド/MSF〜約15ポンド/MSFの量で前記内面にコーティングされている、請求項1記載の石膏ボード。
【請求項6】
石膏ボードを製作する方法であって、
水およびスタッコの混合物を含む水性スラリーを調製し、前記スタッコは硫酸カルシウム半水和物を含み、前記水性スラリーは、
乾燥ベースにおける少なくとも60質量パーセントの前記硫酸カルシウム半水和物、
1,000,000重量部(pbw)の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの塩化物アニオン、および
0.2:1〜1.2:1の、前記水と前記硫酸カルシウム半水和物との重量比における前記水、の混合物を含み、
前側紙カバーシートと後側カバーシートとの間に水性スラリーを配置し、各カバーシートは内面および外面を有し、
前記前側紙カバーシートおよび前記後側紙カバーシートの少なくとも一方の内面がデンプン層でコーティングされており、前記水性スラリーが前記デンプン層と接触し、
硫酸カルシウム二水和物を含む石膏コアを含むパネルを形成するために前記硫酸カルシウム半水和物を凝結させ、
前記パネルを乾燥させ、前記パネルを1つ以上の所定の寸法を有する石膏ボードに切断することを含む、石膏ボードを製作する方法。
【請求項7】
前記内面全体を覆う連続的なデンプン層として、前記前側紙カバーシートおよび前記後側紙カバーシートの少なくとも一方の前記内面に前記デンプン層を適用することをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記前側紙カバーシートおよび前記後側紙カバーシートの少なくとも一方の前記内面に、前記内面全体を覆う連続的なデンプン層として前記デンプン層を適用することをさらに含み、前記後側紙カバーシートは孔を有する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記硫酸カルシウム半水和物が、前記1つ以上の塩化物塩を含む合成石膏を含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記前側紙カバーシートの外面が前記フレーミングとは反対側を向いている、請求項1記載の少なくとも1つの石膏ボードが取り付けられているフレーミングを含む壁システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成石膏、および高塩化物塩濃度を有する他の石膏源から形成された石膏ボードに関する。本発明はまた、デンプン層のない石膏ボードと比較して、紙カバーシートへの石膏ボードコアの接着を改善するためにデンプン層を有する石膏ボードを調製する方法、および石膏ボードを使用するための壁システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
建物の建設において、建設および改造のためのより一般的な建築要素の1つは、しばしば乾式壁、石膏ボード、石膏パネル、石膏パネリング、および天井タイルとして公知の石膏壁板である。化学用語では、石膏は、硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2HO)である。
【0003】
凝結石膏(硫酸カルシウム二水和物)は、そのような製品に使用されるよく知られた材料である。凝結石膏を含むパネルは、しばしば石膏ボードと呼ばれ、石膏ボードは、2枚のカバーシート、特に紙カバーシートの間に挟まれたボードコア(凝結石膏コア)を含む。このようなパネルは、建物の内壁および天井の乾式壁の建設に一般的に使用される。しばしば「スキムコート」と呼ばれる1つ以上のより密度の高い領域が、ボードコアのいずれかの面、通常はボードコアと、カバーシートまたはその上のコーティングの内面との間の境界面に層として含まれる場合がある。より密度の高い領域は、石膏ボードの石膏コア層を提供する石膏層のより密度の低い領域と隣接している場合がある。
【0004】
石膏ボードの製造中に、水性石膏スラリーを形成するために、スタッコ(硫酸カルシウム半水和物を含む)、水、および必要に応じて他の成分が、通常はミキサにおいて混合される場合がある。水性石膏スラリーまたは水性スラリーまたは石膏スラリーという用語は、通常、硫酸カルシウム半水和物が硫酸カルシウム二水和物に変換される前および後の両方のスラリーに使用される。石膏スラリーは、形成され、ミキサから、任意でスキムコートを有する第1のカバーシートを運ぶ移動コンベヤ上へ排出される。存在する場合、スキムコートは、石膏スラリーが最初のカバーシート上に排出される場所の上流において適用される。石膏スラリーを第1のカバーシートに適用した後、所望の厚さを有するサンドイッチアセンブリを形成するために、やはり任意でスキムコートを有する第2のカバーシートが石膏スラリーに適用される。成形プレート、ローラーなどが、所望の厚さを設定するのを助ける場合がある。次に、石膏スラリーは、結晶性水和石膏(すなわち、凝結石膏としても知られる硫酸カルシウム二水和物)のマトリックスを形成するために、焼石膏と水との反応を介して、凝結(すなわち、再水和)石膏を形成することによって、硬化させられる。焼石膏の所望の水和は、凝結石膏結晶のインターロッキングマトリックスの形成を促進し、これにより、石膏ボードに強度を付与する。残りの遊離(すなわち、未反応)水を追い出し、乾燥生成物を得るために、(例えば、窯内で)熱が加えられる場合がある。次に、所望の長さを有する石膏ボードを形成するために、凝結石膏製品が切断される。
【0005】
壁板での使用に適した石膏(硫酸カルシウム二水和物および不純物)は、天然資源と合成資源の両方から入手される場合があり、その後、さらに処理される。
【0006】
天然石膏は、半水和物の形態を生成するために、その硫酸カルシウム二水和物をか焼することによって使用される場合がある。天然資源からの石膏は天然に存在する鉱物であり、岩の形態で採掘することができる。天然に存在する石膏は、古い塩湖層、火山堆積物、および粘土層に通常見られる鉱物である。採掘されるとき、生の石膏は一般に二水和物の形態で発見される。石膏は、硫酸カルシウム二水和物、テラアルバまたはランドプラスターとしても知られている。この材料は、さまざまな工業プロセスの副産物としても生成される。たとえば、合成石膏は、発電所からの排煙脱硫プロセスの副産物である。石膏には、硫酸カルシウムの各分子に関連する約2つの分子の水が存在する。
【0007】
プラスター・オブ・パリスは、焼石膏、スタッコ、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム半水和物、または硫酸カルシウム半水和物としても知られている。
【0008】
いずれかのソースからの硫酸カルシウム二水和物が、焼成またはか焼と呼ばれるプロセスにおいて十分に加熱されると、水和水は少なくとも部分的に追い出され、温度と曝露時間に応じて、硫酸カルシウム半水和物(CaSO4・1/2H2O)(一般に「スタッコ」と呼ばれる材料において提供される)または硫酸カルシウム無水石膏(CaSO)を形成することができる。本明細書で使用される場合、「スタッコ」および「焼石膏」という用語は、そこに含まれる場合がある硫酸カルシウムの半水和物および無水石膏の両方の形態を指す。半水和物形態を生成するための石膏のか焼は、次の式によって行われる。
CaSO・2HO→CaSO・0.5HO+1.5H
【0009】
焼石膏は、水と反応して硫酸カルシウム二水和物を形成することができ、この硫酸カルシウム二水和物は、剛性製品であり、本明細書では「凝結石膏」と呼ばれる。
【0010】
石膏はまた、例えば、発電所からの排煙脱硫などの工業プロセスの副産物として合成的に得られる場合がある(当技術分野では「シンジプ」と呼ばれる)。天然石膏または剛性石膏を、典型的には150℃より高い高温でか焼することができ、これにより、スタッコ(すなわち、硫酸カルシウム半水和物および/または硫酸カルシウム無水石膏の形態の焼石膏)を形成し、スタッコは、引き続き、ボードなどの所望の形状に凝結石膏を形成するために再水和が行われる場合がある。
【0011】
発電所から得られる合成石膏は、通常、建設プロジェクト向けの石膏パネルでの使用に適している。合成石膏は、発電所からの排煙脱硫プロセスの副産物である(脱硫石膏またはデサルフォジプサムまたはDSGとしても知られる)。特に、二酸化硫黄を含む排煙は、石灰または石灰石で湿式洗浄され、石灰または石灰石は、次の反応において亜硫酸カルシウムを生成する。
CaCO+SO→CaSO+CO
次に、亜硫酸カルシウムは次の反応で硫酸カルシウムに変換される。
【数1】
次に、半水和物の形態は、天然石膏に使用されるのと同様の方法でか焼によって生成される場合がある。
【0012】
しかし、多くの従来の石炭火力発電所は、より環境に優しいエネルギー源を優先して閉鎖されている。石炭火力発電所の閉鎖により、石膏パネルの製造に適した合成石膏がますます不足している。低品質の合成石膏は、発電所やその他の代替源から入手できるが、この代替源からの石膏はしばしば、かなり高い濃度の外来塩、特にマグネシウムまたはナトリウム塩、特に塩化マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む。少量の塩化カリウムおよび塩化カルシウムも、代替源からの合成石膏に存在する場合がある。外来塩は、ボードコアと、カバーシート、特に後側紙カバーシートとの間の接着力を低下させる傾向があるため、問題となる可能性がある。
【0013】
この背景技術の記載は、読者を補助するために発明者らによってなされており、従来技術の引用でも、示された課題のうちのいずれもそれ自体が当該技術分野において認識されたことを示すものでもないことが認識されるであろう。記載される原理は、いくつかの点および実施形態では、他のシステムに固有の問題を軽減できるが、保護される技術革新の範囲は、本明細書に記述される任意の特定の問題を解決する特許請求の発明の能力によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることが理解されるであろう。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、かなりの量の外来塩、特に塩化物塩、より具体的にはNaCl、KCL、MgClおよび/またはCaClが存在する場合でさえ、ボードコアと、1つ以上の紙カバーシートとの間に著しい接着を有する石膏ボードに関する。塩含有石膏源、特に低品質の合成石膏から石膏ボードを製造するための方法が提供される。ボードコアと紙カバーシートとの間の改善された接着は、紙カバーシート、特に後側紙カバーシートの少なくとも1つの内面にコーティングされたデンプン層を提供することによって実現される場合がある。
【0015】
したがって、一態様では、本発明は、凝結石膏を含むボードコアを含む石膏ボードを提供する。典型的には、本発明はまた、NaCl、KCl、MgCl、またはCaCl、またはそれらのあらゆる組み合わせなどの1つ以上の塩化物塩を含む。
【0016】
特に、本発明は、石膏ボードであって、
凝結石膏を含むボードコア層、
外面および内面を有し、内面がボードコアの第1の面に接触する前側紙カバーシート、および
外面および内面を有し、内面がボードコアの第2の面に接触する後側紙カバーシートを含み、
前側紙カバーシートおよび後側紙カバーシートのうちの少なくとも1つの内面は、デンプン層でコーティングされており、
コア層は、第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間にあり、
コア層は、前側紙カバーシートと後側カバーシートとの間に、水とスタッコの混合物を含む水性スラリーを凝結させた結果であり、スタッコは硫酸カルシウム半水和物を含み、水性スラリーは、
乾燥(水を含まない)ベースでの、少なくとも60質量パーセントの前記硫酸カルシウム半水和物、
1,000,000重量部の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの塩化物アニオン、および
0.2:1〜1.2:1の水と硫酸カルシウム半水和物の重量比における水、を含む、石膏ボードを提供する。
【0017】
外面および内面を有する前側紙カバーシートの内面は、ボードコアの第1の面に接触している。外面および内面を有する後側紙カバーシートの内面は、ボードコアの第2の面に接触している。前側紙カバーシートおよび後側紙カバーシートの少なくとも一方の内面は、デンプン層でコーティングされている。より具体的には、石膏ボードが取り付けられると、後側紙カバーシートの外面が壁に取り付けられる場合があり、石膏ボードが取り付けられると、前側紙カバーシートの外面が壁から外側を向く場合がある。カバーシートの一方または両方は、同じまたは異なる紙材料である場合がある紙カバーシートを含む場合がある。
【0018】
硫酸カルシウム半水和物は、本発明の堆積された水性スラリー中に、水性スラリーの乾燥(水を含まない)材料の少なくとも60質量%の量で存在する。好ましくは、硫酸カルシウム半水和物は、水性スラリーの乾燥(水を含まない)材料の少なくとも70質量パーセント、より好ましくは水性スラリーの乾燥(水を含まない)材料の少なくとも80質量%、さらに好ましくは水性スラリーの乾燥(水を含まない)材料の少なくとも90質量%である。本発明の典型的な壁板配合物において、水性スラリーの乾燥(水を含まない)材料は、少なくとも90質量パーセントまたは少なくとも95質量%の硫酸カルシウム半水和物を有する。硫酸カルシウム無水石膏の使用も考えられるが、好ましくは、水性スラリーの乾燥(水を含まない)材料の20質量%未満の少量で使用される。
【0019】
同様に、硫酸カルシウム二水和物は、水性スラリーを凝結させた結果として生じる本発明の石膏ボードのボードコア層に存在し、コアの少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%である。典型的な壁板配合物では、水性スラリーの乾燥(水を含まない)材料は、少なくとも90質量%または少なくとも95質量%の硫酸カルシウム二水和物を有する。
【0020】
本発明の1つ以上の他の態様では、本発明は、ボードコア内にかなりの量の1つ以上の外来塩を有する石膏ボードを調製するための方法を提供する。石膏ボードは、1つまたは複数の外来塩が存在する場合でも、ボードコアと、1つ以上のカバーシート、特に後側紙カバーシートとの間に著しい接着を示す場合がある。この方法は、デンプン層を有さない石膏ボードと比較して石膏ボードコアのカバーシートへの接着を改善するために、デンプン層を備えた石膏ボードを調製する。
【0021】
その方法に関して、本発明は、
水とスタッコの混合物を含む水性スラリーを調製し、スタッコは硫酸カルシウム半水和物を含み、水性スラリーは、
乾燥ベースで少なくとも60質量パーセントの前記硫酸カルシウム半水和物、
1,000,000重量部(pbw)の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの塩化物アニオン、および
0.2:1〜1.2:1の、水と硫酸カルシウム半水和物との重量比における水、の混合物を含み、
パネルを形成するために前側紙カバーシートと後側紙カバーシートの間に水性スラリーを配置し、各カバーシートは内面と外面を有し、
前側紙カバーシートおよび後側紙カバーシートの少なくとも一方の内面がデンプン層でコーティングされており、石膏スラリーがデンプン層と接触し、
硫酸カルシウム二水和物を含む石膏コアを含むパネルを形成するために硫酸カルシウム半水和物を凝結させ、
パネルを乾燥させ、パネルを1つ以上の所定の寸法を有する石膏ボードに切断することを含む、石膏ボードを製作する方法を提供する。
【0022】
1,000,000重量部の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの塩化物アニオンとは、1,000,000重量部の前記硫酸カルシウム半水和物に対して、存在する塩化物アニオンの量が約500ppm〜約3000ppmであることを意味する。
【0023】
石膏ボード製品を製作しかつ本発明の方法を実行するために使用される水性スラリー中の塩化物アニオンの濃度は、1,000,000重量部の硫酸カルシウム半水和物あたり、約500ppm〜約3000ppm、典型的には約1000ppm〜約3000ppm、より典型的には約2000ppm〜約3000ppmの範囲である場合がある。
【0024】
本発明の製品および方法に使用される水性スラリー中の塩化物アニオンは、あらゆる供給源から発生する場合がある。一般に、1つ以上の塩化物塩は、本発明のボードコアを形成するために使用される石膏源に存在する。石膏源は、合成石膏源、特に発電所の排煙流から得られる低品質の合成石膏である場合がある。したがって、一般に、塩化物アニオンの供給源は、水性スラリーを作製するために使用されるスタッコ中の1つ以上の塩化物塩である。塩化物アニオンは、スタッコが水性スラリーにおいて使用される場合、スタッコ中の1つ以上の塩化物塩の塩化物原子に由来する。典型的には、1つ以上の塩化物塩は、NaCl、KCl、MgCl、CaClのいずれか、またはそれらのあらゆる組み合わせである。ただし、塩化物アニオンは、石膏スラリーを作製するために使用される水の中の、1つ以上の塩化物塩などの不純物から発生する場合がある。
【0025】
通常、本発明の製品および方法に使用される水性石膏スラリー乾燥(水を含まない)成分、およびその結果、ボードコアは、10質量%未満のポルトランドセメントまたは他の水硬性セメントまたはそれらの組み合わせを有し、より通常は、ポルトランドセメントまたは他の水硬性セメントまたはそれらの組み合わせが存在しない。通常、水性スラリー乾燥(水を含まない)成分、およびその結果、ボードコアは、10質量%未満のフライアッシュを有し、より通常は、フライアッシュが存在しない。通常、水性スラリー乾燥(水を含まない)成分、およびその結果、ボードコアは、10質量%未満の炭酸カルシウムを有し、より通常は、炭酸カルシウムが存在しない。
【0026】
この開示の目的のために、乾燥ベースは水を含まないベースである。
【0027】
本明細書で使用されるすべての平均分子量、パーセンテージ、および比率は、別段の定めがない限り、質量による(すなわち、質量%)。
【0028】
本発明の1つ以上の他の態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つの石膏ボードが取り付けられたフレーミングを含む壁システムを提供し、前側紙カバーシートの外面はフレーミングとは反対側を向いている。この壁システムでは、石膏ボードは建物の内壁または天井にある場合がある。通常、フレーミングは木製または金属製である。通常、少なくとも1つの石膏ボードは、ねじ、釘、接着剤、またはその他の機械的留め具のいずれか1つ以上によってフレーミングに取り付けられる。
【0029】
本発明の利点は、実施例および添付の特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明の検討から、当業者に明らかになる場合がある。しかしながら、本発明は様々な形態を許容する一方、本開示は例示的なものとして意図されており、本発明を限定することを意図するものではないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ボードコア(石膏コア)が、前側紙カバーシートと後側カバーシートの間に挟まれており、そのうちの少なくとも一方がデンプン層でコーティングされている、本発明の石膏ボードの断面図を示す。
図2】後側カバーシートにおける複数の孔の配列をよりよく見ることができる、図1の石膏ボードの平面図(軸方向の図)を示す。
図3】本発明の壁システムに適した金属スタッド壁の片面に取り付けられた本発明の石膏ボードの斜視図を示す。
図4】百万部分の硫酸カルシウム半水和物あたりMgClからの1200ppmのClを含有する12インチ×12インチ×1/2インチの石膏ボードに対する希釈されたデンプン溶液の効果を示す写真を示す。
図5】百万部分の硫酸カルシウム半水和物あたりMgClからの2100ppmのClを含有する12インチ×12インチ×1/2インチの石膏ボードに対する希釈されたデンプン溶液の効果を示す写真を示す。
図6】百万部分の硫酸カルシウム半水和物あたりNaClからの2000ppmのClを含有する12インチ×12インチ×1/2インチの石膏ボードに対する希釈されたデンプン溶液および孔の効果を示す写真を示す。
図7】百万部分の硫酸カルシウム半水和物あたりNaClからの30ppmのClを含有する12インチ×12インチ×1/2インチの石膏ボードに対する希釈されたデンプン溶液の効果を示す写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、石膏ボードのボードコアに比較的大量の外来塩を含む石膏を使用する能力を提供する。通常の状況下では、ボードコア中の高い塩濃度は、ボードコアと、前側紙カバーシートおよび後側カバーシートのうちの少なくとも一方、特に後側カバーシートとの間の不十分な接着をもたらす場合がある。
【0032】
驚くべきことに、カバーシートの内面に配置されたデンプン層は、硫酸カルシウム半水和物および大量の外来塩を含むスタッコの水性スラリーから作製されたボードコアへの接着を改善することができる。好ましくは、デンプン層は、後側カバーシートの内面全体に配置された連続的なデンプン層である。任意で、別のデンプン層もまた、前側カバーシートの内面全体に配置される。カバーシートの一方または両方は、同じまたは異なる紙材料である場合がある紙カバーシートである場合がある。任意で、追加のデンプンおよび/または他の添加剤が、ボードコア、またはボードコアを形成するために使用される水性石膏スラリーに存在する場合がある。
【0033】
ボードコアは、より密度の低い領域(層)を含んでもよく、さらに、前側紙カバーシートまたは後側紙カバーシートまたはその上にコーティングされたデンプン層の内面と接触する、1つ以上のより高密度の領域(層)を含む場合がある。
【0034】
大量の外来塩を含むボードコアと組み合わせて少なくとも1つのデンプン層が存在する場合、これらのボードのいずれも、同じであるがデンプン層を有さないボードと比較して、ボードコアとカバーシートとの間の改善された接着から恩恵を受ける場合がある。したがって、本発明は、ボードコアにかなりの量の外来塩を含む石膏ボード、およびかなりの量の外来塩を含む石膏源を使用してそのような石膏ボードを製造するための方法を提供する。したがって、カバーシートの少なくとも一方にコーティングされたデンプン層は、過剰な外来塩を含む低品質の石膏源を石膏ボードの形成に使用することを可能にする場合がある。そうでなければ、そのような石膏源は、ボードコアとカバーシートとの間に十分な接着力を有する石膏ボードを形成するのに不適切である場合がある。有利には、本発明はこの問題に対処する。
【0035】
石膏ボード
図1は、石膏コア12(例えば、厚さ0.5インチ)が、それぞれ単層または多層の紙であってもよいバッカー紙カバーシート(後側カバーシート)14とフェイサー紙カバーシート(前側カバーシート)16との間に挟まれている本発明の壁板パネル10を示す。バッカー紙カバーシート14の内面は、石膏コアに面するバッカー紙カバーシート14の結合面24を形成している。フェイサー紙カバーシート16の内面は、石膏コア12に面する結合面26を形成している。バッカー紙カバーシート14の外面は、壁板パネル10が内壁として設置された後、部屋の壁フレーミング(図3を参照)に面する。壁板パネル10を内壁として設置した後、フェイサー紙カバーシート16の外面が室内に面する。
【0036】
デンプン層20は、バッカーシート14の結合面24上に存在する。任意のデンプン層20は、フェイサー紙カバーシート16の結合面26上に存在する。任意の薄くて密度の高い石膏層22は、石膏コア12とフェイサー紙カバーシート16との間に存在し、石膏コア12およびフェイサー紙カバーシート16と接触する。薄くて密度の高い石膏層22が存在する場合、デンプン層20は、薄くて密度の高い石膏層22とフェイサー紙カバーシート16との間にある。別の任意の薄くて密度の高い石膏層(図示せず)は、石膏コア12とバッカー紙カバーシート14との間に存在する場合がある。一般に、石膏コア12および薄くて密度の高い石膏層22は、同じ組成を有し、互いに隣接している。しかしながら、石膏コア12を形成するために使用されるコアスラリー(水性スラリー)は発泡させられており、薄くて密度の高い石膏層22を形成するために使用される水性スラリーは発泡させられていないので、薄くて高密度の石膏層スラリーはコアスラリーよりも密度が高い。
【0037】
デンプン層20は、驚くべきことに、石膏コア12とバッカーシート14との間の結合性能を向上させる。改善された結合性能は、石膏の塩濃度が高い場合に特に顕著になる。
【0038】
デンプン層は、約0.5〜15ポンド/MSF、好ましくは約0.5〜5ポンド/MSF、より好ましくは約1〜2ポンド/MSF(MSF=1000平方フィート)の範囲の量で後側紙上に配置される。デンプンは結合剤として使用され、天然(未調理)デンプン、プレゲル化デンプン、または天然デンプンとプレゲル化デンプンの組み合わせであることができる。
【0039】
一般に、比較的低密度の内部領域(石膏コア12)と比較的高密度の領域(薄くて密度の高い石膏層22)は同じ組成を有し、互いに隣接している。しかしながら、低密度の内部領域は、発泡状態の石膏スラリーから形成される場合があるが、高密度領域は、より高密度の層が形成されるように、発泡させられない石膏スラリーから形成される場合がある。すなわち、高密度領域は、低密度内部領域よりも、それに関連した、より低い空隙率を有する場合がある。通常、薄くて密度の高い石膏層22は、選択されたカバーシートの内面に適用される。高密度領域が、選択されたカバーシートにも存在する場合、デンプン層20は、カバーシートと高密度領域(薄くて密度の高い石膏層22)との間にある。
【0040】
本開示のボードコア12には、1つ以上の塩化物塩が存在する場合がある。高密度領域(薄くて密度の高い石膏層22)が含まれる場合、1つ以上の塩化物塩もその中に存在する場合がある。一般に、1つ以上の塩化物塩は、ボードを作製するための水性スラリーを作製するために使用されるスタッコまたは他の成分からのあらゆる塩化物塩を含む。
【0041】
石膏ボード12、および存在するならば高密度領域(薄くて密度の高い石膏層22)を製作するために使用される水性スラリーにおける塩化物アニオンの濃度は、1,000,000重量部の硫酸カルシウム半水和物あたり、約500ppm〜約3000ppm、典型的には約1000ppm〜約3000ppm、より典型的には約2000ppm〜約3000ppmの範囲である場合がある。
【0042】
製造方法
硫酸カルシウム半水和物および大量の塩化物塩を含む水性石膏スラリーから本発明の石膏ボードを調製するために様々な方法を使用することができる。しかしながら、従来の石膏源の代わりに、上記のように、1つ以上の塩化物塩を含む石膏源が、製造プロセスにおいて代用される場合がある。
【0043】
石膏壁板および他の石膏製品を製造するための基材は、硫酸カルシウムの水和物形態(CaSO)の熱変換によって製造される「焼石膏」または「スタッコ」と一般に呼ばれる、硫酸カルシウムの半水和物形態(CaSO・1/2HO)である。
【0044】
本発明は、石膏ボードを製作する方法であって、
水およびスタッコの混合物を含む水性スラリーを調製し、スタッコは硫酸カルシウム半水和物を含み、水性スラリーは、
乾燥ベースで少なくとも60質量パーセントの前記硫酸カルシウム半水和物、
1,000,000重量部(pbw)の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの塩化物アニオン、および
0.2:1〜1.2:1の、水と硫酸カルシウム半水和物との重量比における水、の混合物を含み、
パネルを形成するために前側紙カバーシートと後側紙カバーシートの間に水性スラリーを配置し、各紙カバーシートは内面と外面を有し、
前側紙カバーシートおよび後側紙カバーシートの少なくとも一方の内面がデンプン層でコーティングされており、石膏スラリーがデンプン層と接触し、
硫酸カルシウム二水和物を含む石膏コアを含むパネルを形成するために硫酸カルシウム半水和物を凝結させ、
パネルを乾燥させ、パネルを1つ以上の所定の寸法を有する石膏ボードに切断することを含む、石膏ボードを製作する方法を提供する。
【0045】
本発明による石膏ボードを形成するのに適した例示的な製造技術および装置は、例えば、米国特許第7,364,676号および米国特許出願公開2010/0247937号に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。簡単に言えば、そのようなプロセスは、移動するコンベヤにカバーシートを排出することを含む場合がある。石膏ボードは通常「裏返し」で形成されるため、このカバーシートは、製造プロセスの完了時にフェイサー紙カバーシート16に対応する。石膏スラリーは、カバーシート上に配置するための適切な水/硫酸カルシウム半水和物比で製作することができる。
【0046】
石膏ボードを製造するために、スタッコを水および添加剤と混合して水性スラリーを形成し、水性スラリーは、ボードマシン上の紙の連続層の間に連続的に供給される。一方の紙カバーシートはフェイス紙シートまたはフェイサーと呼ばれ、他方の紙カバーシートは後側紙シートまたはバッカーと呼ばれる。パネルを形成するためにボードがコンベヤに沿って移動するとき、硫酸カルシウムが再結晶化または再水和し、元の岩の状態に戻る。石膏が凝結するとき、紙は化学的および機械的にボードコア層に結合される。次に、パネルは、所定の長さに切断され、あらゆる自由水分を除去するために乾燥機に通過させられる。
【0047】
石膏スラリーの乾燥成分および/または湿潤成分がミキサ(例えばピンミキサ)に供給され、ミキサにおいて撹拌され、石膏スラリーを形成する。ミキサは、本体と、排出導管(例えば、当技術分野において公知のゲート−キャニスタ−ブート配列、または引用によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,494,609号および同第6,874,930号に記載のような代替的な配列)とを備える。いくつかのプロセス構成では、排出導管は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0168527号および第2012/0170403号に記載のような、単一の供給入口または複数の供給入口のいずれかを備えたスラリー分配器を含むことができる。複数の供給入口を備えるスラリー分配器を使用する場合、排出導管は、米国特許出願公開第2012/0170403号に記載のような適切なフロースプリッタを含むことができる。発泡剤(一般に石けん)は、望まれるならばミキサの排出導管(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,683,635号および第6,494,609号に記載のようなゲート)または本体において加えることができる。発泡剤を含む、全ての成分が加えられた後に排出導管から排出されるスラリーは、一次石膏スラリーであり、ボードコアを形成するために使用される。この石膏スラリーは、移動する前側カバーシート上に排出される。
【0048】
上記のように、石膏ボードにおけるカバーシートの一方または両方は、任意で、スキムコートとしても知られるボードコアの高密度の領域または層と界面接触する場合がある。スキムコートは、凝結後、ボードコアと隣接している場合がある。泡が排出導管に挿入される実施形態では、スキムコートを形成するためのスラリーを提供するために、二次石膏スラリーの流れをミキサ本体から除去することができる。存在する場合、ボードコアを形成するための石膏スラリーの主要部分が堆積させられる前にスキムコートが移動する前側紙カバーシート上に堆積させられてもよく、スキムコートの堆積は通常、ミキサの上流で生じる。
【0049】
上記のように、デンプン層は、少なくとも1つのカバーシート上、特に後側カバーシート上に存在し、それへの接着を増大させる。デンプン層は、前側紙カバーシートおよび後側カバーシートのうちの少なくとも一方の内面にプレコートされる場合がある。代替例では、方法は、前側紙カバーシートおよび後側カバーシートのうちの少なくとも1つの内面にデンプン層を適用することをさらに含む場合がある。デンプンは、上で定義されたように、連続的なデンプン層として内面に適用される場合がある。より具体的には、デンプンは、約0.5〜15ポンド/MSF、好ましくは約0.5〜5ポンド/MSF、より好ましくは約1ポンド/MSF〜約2ポンド/MSFの量で、前側紙カバーシートおよび/または後側紙カバーシートの内面に適用される場合がある。後側紙カバーシートまたは前側紙カバーシートのいずれかにデンプン層を適用するための適切な方法は、例えば、噴霧、塗装、インクジェット印刷、ステンシル、ステンシル印刷、ローラーコーティング、ディップコーティング(浸漬)などを含む場合がある。
【0050】
混合後、水性スラリーは、任意で、製品密度を低下させるために加えられた泡を有する。泡は、石けんと水を組み合わせることによって生成される。次に、泡は、ホースまたはシュートを通ってミキサから出た後、水性スラリーに注入される。泡リングは、ホースの軸線に対して垂直なリングに配置された複数のポートを有する装置であり、水性スラリーが泡リングを通過するときに、泡が圧力下で水性スラリーに押し込まれる。泡は通常、密度の低いコア層のスラリーの部分に加えられるが、スキムコートのスラリーの部分には加えられない。
【0051】
泡およびスラリーが合わされると、結果として生じるスラリーは、一片のフェーシング材料で裏打ちされたコンベヤに向かって移動し、コンベヤ上に注がれる。フェーシング材料の別のピースがスラリーの上に配置され、2つのフェーシング材料の間にスラリーを備えたサンドイッチアセンブリを形成する。サンドイッチアセンブリは成形プレートに供給され、その高さがボードの厚さを決定する。次に、連続的なサンドイッチアセンブリは、カッティングナイフで適切な長さ、通常は8フィート〜12フィートに切断される。この処理中に、スラリーは硬化(凝結)させられ、凝結石膏のインターロッキング結晶マトリックスを含むボードコアを形成する。
【0052】
その後、ボードは乾燥のために窯に移動させられる。窯内の温度は通常、最高450°F〜500°Fの範囲である。好ましくは、窯内に3つ以上の温度ゾーンが存在する。湿ったボードによって接触される最初のゾーンでは、温度が最高温度まで上昇するが、最後の2つのゾーンでは温度がゆっくりと低下する。最初のゾーン用のブロワーはゾーンの出口に配置されており、ボードの進行方向に対して逆流で空気を吹き込む。第2および第3のゾーンでは、ブロワーはゾーンの入口に配置されており、ボードの移動と並流で熱風を送る。最後のゾーンでのより強くない加熱は、ボードの乾燥した領域のか焼を防ぎ、紙の結合不良を引き起こす。窯での通常の滞留時間は約40分であるが、ライン容量、ボードの湿り具合および他の要因に応じて時間は変化する。
【0053】
デンプン層およびスキムコートの両方がカバーシートに適用される場合、デンプン層は、スキムコートをその上に堆積させる前に、カバーシート上にコーティングされる。このように、デンプン層は、存在する場合、スキムコート(高密度領域)と、カバーシートとの間に配置される。より具体的には、デンプン層はカバーシートの内面と界面接触し、スキムコートが存在する場合、デンプン層と界面接触する。スキムコートが所与の場所に存在しない場合、ボードコアはデンプン層と界面接触する。上記のように、石膏ボードを乾燥させて凝結石膏を形成した後、スキムコートは、ボードコアの低密度領域と一体となり、ボードコアの高密度の領域(層)は、後側紙カバーシートまたはその上にコーティングされたデンプン層および/または前側紙カバーシートまたはその上に配置されたデンプン層と界面接触する。
【0054】
凝結した石膏コアスラリーから結果として生じた石膏コア(例えば、図1の石膏コア)は、一般に、0.25インチ〜1.5インチの厚さおよび15〜55ポンド/立方フィートの密度を有する。発泡した場合、凝結した発泡石膏スラリーから結果として生じた石膏コア層は、10〜92体積パーセント、特に25〜90体積パーセント、より具体的には30〜85体積パーセントの合計空隙体積を有する。対照的に、結果として生じたスキム層は、存在する場合、30体積パーセント未満の合計空隙体積を有する。
【0055】
石膏およびスタッコ(焼石膏)
石膏パネルコアの結晶マトリックスを形成するために使用される硫酸カルシウム半水和物(通常、スタッコまたは焼石膏として知られる原材料で提供される)成分は、通常、天然源または合成源から得られる、ベータ硫酸カルシウム半水和物、水溶性硫酸カルシウム無水石膏、アルファ硫酸カルシウム半水和物、またはこれらのいずれかまたはすべての混合物を含む。いくつかの態様において、スタッコは、石膏源に関連した、またはスタッコのか焼、加工および/またはミキサへのスタッコの送達中に加えられる少量のクレーまたは他の成分などの、非石膏鉱物を含む場合がある。スタッコは、繊維質または非繊維質であり得る。通常は、生のスタッコは、少なくとも70質量%の硫酸カルシウム半水和物、好ましくは少なくとも80質量%の硫酸カルシウム半水和物、より好ましくは少なくとも85質量%の硫酸カルシウム半水和物、さらに好ましくは少なくとも90質量%の硫酸カルシウム半水和物を有する。
【0056】
塩化物塩
本発明の石膏ボードを形成するための水性石膏スラリーは、水およびスタッコを含み、水性石膏スラリーはまた、塩化物アニオンを含む。塩化物アニオンは、あらゆる供給源からの1つ以上の塩化物塩から生じる場合がある。一般に、1つ以上の塩化物塩は、本発明のボードのコアを形成するために使用される石膏源に存在する。したがって、1つ以上の塩化物塩のすべてまたは少なくとも大部分は、使用される石膏の供給源から石膏スラリーに導入される場合がある。石膏源は、合成石膏源、特に発電所の排煙流から得られる低品質の合成石膏である場合がある。そのような低品質の石膏源は、本発明による少なくとも1つのデンプン層を使用せずには壁板を形成するのに適していない場合がある。1つ以上の塩化物塩は、水性石膏スラリーを作製するために使用される水中の1つ以上の塩化物塩などの不純物から生じる場合もある。
【0057】
塩化物塩は、塩化物を含むあらゆる塩である。したがって、塩化物塩は、塩化物アニオンの一価塩およびナトリウムまたはカリウムなどの一価カチオンを含む。したがって、塩化物塩は、塩化物アニオンの二価塩およびカルシウムまたはマグネシウムなどの二価カチオンを含む。塩化物アニオンの三価塩および三価カチオンなどの他の塩化物塩も考えられる。
【0058】
本発明のボードコア、および存在する場合、高密度領域(薄く密度の高い石膏層)を製作するために使用される水性スラリー中の1つ以上の塩化物塩の塩化物アニオンの濃度は、1,000,000重量部の硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの範囲、通常、約1000ppm〜約3000ppm、より通常は1,000,000重量部の硫酸カルシウム半水和物あたり約2000ppm〜約3000ppmの範囲である場合がある。
【0059】
デンプン
本発明のデンプン層には様々なデンプンを使用することができ、必要であれば、水性石膏スラリーに添加することもできる。ただし、水性石膏スラリーにはデンプンが含まれていない場合がある。
【0060】
デンプン層は、石膏コア、または存在する場合は高密度の石膏層に接触するときに、湿っているまたは乾燥している(プレコートされている)ことができる。石膏コアは、デンプン層が接触するまでに凝縮しない。
【0061】
デンプン層には、石膏、無機充填剤、有機充填剤、およびラテックスまたは他のポリマーが含まれていない。デンプン層は、基本的にデンプンおよび水から構成されているが、任意で少量のSTMPを有することができる。
【0062】
デンプン層(例えば、デンプン層20)のいずれかは、後側紙カバーシート14または前側紙カバーシート16の内面の少なくとも90%または好ましくは100%に接触する連続的なデンプン層である場合がある。「連続的」であるデンプン層20は、後側紙カバーシート14または前側紙カバーシート16の内面上に実質的に不連続性がない層を指す。すなわち、デンプンは、後側紙カバーシート14または前側紙カバーシート16のすべてまたはほぼすべて(90%以上)に層として配置される。あるいは、デンプン層20が連続している場合、層のパターン形成は存在しない。したがって、後側紙カバーシート14または前側紙カバーシート16のいずれかにデンプン層20を適用するための適切な方法は、例えば、噴霧、塗装、インクジェット印刷、ステンシル、ステンシル印刷、ローラーコーティング、ディップコーティング(浸漬)などを含む場合がある。デンプン層20は、石膏スラリーと接触する前に、後側紙カバーシート14または前側紙カバーシート16上にプレコートされる場合がある。デンプン層20中のデンプンは、石膏スラリーと接触したときに湿っているまたは乾燥している場合がある。以下に説明するように、石膏は、デンプン層20に対するより効果的な結合を形成するために、デンプン層20と接触したときに湿潤状態にある。すなわち、石膏スラリーは、ボードコア12を形成するために石膏を凝結させる前に、デンプン層20と接触させられる。
【0063】
デンプン層20中のデンプンは、アルファ化された(調理された)デンプンおよび/または未調理のデンプンであることができる。これに関して、デンプンは炭水化物として分類され、2種類の多糖類、すなわち直鎖アミロースおよび分岐アミロペクチンを含む。デンプン顆粒は、例えば、偏光下で見られたときに半結晶性であり、室温または近室温において水に不溶性である。未処理デンプンは、冷水不溶性であり、半結晶構造を有することを特徴とする。典型的には、未処理デンプンは湿潤粉砕によって得られ、処理デンプンの場合のように湿潤デンプンを加熱することによって変性されない。アルファ化されたまたは調理されたデンプンは、冷水可溶性でありかつ非結晶構造を有するという特徴を有する。
【0064】
未調理のデンプンは、水中で最大50質量%のデンプン固体の懸濁液(分散液)として提供される場合がある。調理済みデンプンは、水に溶解させられた最大10質量%の固体に限定された溶液である。デンプン分散液において最大で50質量%の合計調理済みデンプンおよび未調理デンプンが存在する。調理済みデンプンは未調理デンプンを懸濁状態に保つのに役立つので、水と調理済みデンプンおよび未調理デンプンとのブレンドは有用である。しかしながら、本発明は、水と混合した後にデンプン懸濁液が極めて迅速に混合される場合、未調理デンプンのみを使用することができる。好ましくは、デンプン懸濁液は、0.5から5質量%の調理済みデンプン、より好ましくは1〜3質量%の調理済みデンプンを含む。デンプンおよび水は、場合により、デンプンの0〜10質量%、好ましくは3質量%の範囲の量において、STMP(トリメタリン酸ナトリウム)をさらに含む場合がある。
【0065】
天然(未調理)デンプンが好ましい。デンプンゲルは、デンプン粒子を水に分散させることによって調製される場合がある。デンプンを予め調理しないと、デンプンは乾燥プロセス中にゲルを形成する場合がある。
【0066】
未調理デンプンは、アルファ化されたデンプンにおいて見られるよりも低い可変性とともに、より高いバルク密度を有する。これは、たとえば、均一な密度により、定量供給装置がデンプンをより正確に、かつむらなく添加できるため、有用である。例えば、ポンド毎立方フィート(pcf)におけるかさ密度は、約35pcf〜約50pcf、約35pcf〜約45pcf、約37pcf〜約50pcf、約37pcf〜約45pcf、約40pcf〜約50pcf、約40pcf〜約47pcf、約40pcf〜約45pcf、約41pcf〜約45pcfなどであることができる。
【0067】
未調理のデンプンは通常、天然の顆粒状の形態である。未調理のデンプンのピーク粘度は、デンプンの平均分子量に関係している場合がある。顆粒状の未調理のデンプンは、石膏ボードの製造プロセス中(例えば、窯の乾燥中)に少なくともある程度のゼラチン化を受ける可能性がある。
【0068】
未調理デンプンが使用される場合、未調理デンプンは、100BU〜900BUのピーク粘度によって示される、中程度の分子量を有することができる。未調理のデンプンのピーク粘度は、以下の方法に従って決定される場合がある。ブラベンダーのピーク粘度は、75rpm、700cmgに設定されたビスコグラフE(C.W.Brabender)を使用して測定される。粘度測定のために、デンプンは、水中で15%の濃度を有するスラリーである。デンプンスラリーを、3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱する。その後、デンプンスラリーは、−3℃/分の速度で50℃に冷却されるまで、95℃で10分間保持される。
【0069】
典型的には、中程度の分子量を有する未調理デンプンのピーク粘度は、約100ブラベンダーユニット〜約850ブラベンダーユニット、約120ブラベンダーユニット〜約875ブラベンダーユニット、約250ブラベンダーユニット〜約750ブラベンダーユニット、約400ブラベンダーユニット〜約700ブラベンダーユニット、約100ブラベンダーユニット〜約460ブラベンダーユニット、約100ブラベンダーユニット〜約300ブラベンダーユニット、約500ブラベンダーユニット〜約850ブラベンダーユニット、または約550ブラベンダーユニット〜約850ブラベンダーユニットであることができる。
【0070】
未調理デンプンの特性は、アルファ化されたデンプンの特性とは対照的に、冷水(すなわち、77°F(25℃)の温度)中で低粘度を有することを含み、冷水中で瞬間的な高粘度を有することを含む。本発明による未調理のデンプンは、あらゆる適切な冷水粘度を有することができる。一般に、冷水粘度は、約1センチポアズ〜約500センチポアズ、例えば、約1センチポアズ〜約400センチポアズ、約1センチポアズ〜約300センチポアズ、約1センチポアズ〜約200センチポアズ、または約1センチポアズ〜約100センチポアズである。必要であれば、未調理デンプンは、冷水中で約50センチポアズ以下、例えば、約40センチポアズ以下、約30センチポアズ以下、約20センチポアズ以下、または約10センチポアズ以下(例えば、約1センチポアズ〜約50センチポアズ、約1センチポアズ〜約40センチポアズ、約1センチポアズ〜約30センチポアズ、約1センチポアズ〜約20センチポアズ、約5センチポアズ〜約50センチポアズ、約5センチポアズ〜約30センチポアズ、約5センチポアズ〜約20センチポアズなど)の冷水粘度を有することができる。
【0071】
冷水粘度は、ブルックフィールド粘度計法を使用して、以下のような試験プロファイルで測定される場合がある。デンプン(20g、乾燥)を、Waringブレンダー(モデル31BL92)の水(180g)中に、低速で15秒間混合しながら加える。デンプン溶液(200g)を計量カップに移す。2番パドルおよび60RPMを選択する。20秒で測定した粘度値をデンプンの粘度として使用する。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「未調理」という用語は、デンプンが、デンプン層として配置される前に、約5%未満(例えば、約3%未満、または0%を含む、約1%未満)のゼラチン化の程度を有することも意味する。例えば、ボードコアから過剰な水分を除去するための乾燥ステップのために使用される窯において、石膏ボード製造プロセスにおいて高温にさらされると、未調理デンプンは、部分的または完全にゼラチン化させられることができる。
【0073】
調理された(アルファ化された)デンプンは、あらゆる適切な形式において、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2015/0010767号に記載されている押出機において、調製することができる。調理済みデンプンは、あらゆる所望の特性(例えば、粘度、冷水溶解度、冷水粘度など)を有するように調製することができる。
【0074】
調理済みデンプンは、湿ったデンプンを加熱することによって調製することができ、例えば、それぞれ参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0010767号、第2014/0113128号および第2014/011312号に記載されているような押出し技術によって調製することができる。調理済みデンプンは、アルファ化されたデンプンと呼ばれる。なぜならば、デンプン顆粒の結晶構造が溶解し、その結果としてデンプンゼラチン化を生じるからである。これは、偏光を用いる顕微鏡下での複屈折の消失によって特徴づけられる。ゼラチン化とは、その間にデンプンが水中に配置され、デンプンが溶融しながらデンプン顆粒の結晶構造が変換するように加熱(「調理」)され、その後、良好な分散が生じるようにデンプン分子が水中に溶解することができるプロセスである。デンプン顆粒をゼラチン化形態に変換する場合、デンプン顆粒は水不溶性であるため、最初に、デンプン顆粒は、水中でほとんど粘度を提供しないことが分かった。温度が上昇するにつれて、デンプン顆粒は膨潤し、デンプンがゼラチン化温度において溶融しながら結晶構造が変換する。ピーク粘度は、デンプン顆粒が最大の膨潤を有するときである。さらに加熱すると、デンプン顆粒が破壊され、デンプン分子が水に溶解し、粘度が急激に低下する。冷却後、デンプン分子は再結合して、3Dゲル構造を形成し、ゲル構造の存在により粘度が上昇する。
【0075】
本発明における石膏ボードおよび関連する方法において使用するための適切な場合があるデンプンの例は、天然穀物デンプン、天然根茎デンプン、天然塊茎デンプン、および/または化学的に改質されたデンプンを含むがこれらに限定されず、特定の代表的な例は、例えば、コーンスターチ(ノーマル、ワキシー、および/または高アミロース)、Aタイプ小麦デンプン、Bタイプ小麦デンプン、豆デンプン、デンプンヒドロキシル基に置換基(酢酸塩、リン酸塩、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アルキルスルホネートなど)を有する置換/官能基化されたデンプン、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む。
【0076】
デンプンは、未調理および/または調理済みにかかわらず、任意の好適な粘度を有し得る。デンプンの特定の粘度は、デンプン層における特定の厚さの形成を補助することができる。通常、約20センチポアズ〜約700センチポアズの中間粘度(VMA法に従って測定)を有するアルファ化されたデンプン、または本明細書に記載の方法に従って測定したときに、約100ブラベンダーユニット〜約900ブラベンダーユニットのピーク粘度の未調理デンプンのうちの1つ以上を使用することができる。粘度特性は、本明細書に記載のそれぞれの粘度測定方法に従って特定の条件下でデンプンが配置されるときに決定されるが、これらの条件下でデンプンを石膏ボードに組み込む必要がないことが理解されよう。
【0077】
未調理または調理済みデンプンのピーク粘度を低下させるために、例えば、所望の分子量を達成するためにグルコース単位の間のグリコシド結合を加水分解するために、デンプン分子を変性させることができる。例えば、このような変性は、酸変性、酵素修飾、および/または他の方法を含むことができる。最も一般的に使用されるデンプン変換酵素は、α−アミラーゼ(アルファ−アミラーゼ)である。酵素加水分解反応は、pHを調整するか、または加熱することにより停止することができる。酸変性デンプンを調製するために、非変性デンプンの水性懸濁液を、例えば、少量の酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸などの強酸で処理することができることが認識されるであろう。反応時間を調整することによって、解重合の程度を所望の範囲に変更することができる。例えば、例えば、製造過程の実験室管理によって決定された適切な流動性が達成された場合、酸を中和し、加水分解を停止させるために弱アルカリが導入される場合がある。したがって、酸変性デンプンは、様々な流動性(粘度)で調製することができる。また、酸変性デンプンは、中和後、さらに精製することなく直接使用されるか、または塩を除去するために精製される場合がある。酸変性デンプンの最終用途は、精製の望ましさを決定する場合がある。例えば、硫酸によって変性され、水酸化カルシウムによって中和されたデンプンは、硫酸イオンおよびカルシウムイオンを含む場合があり、これらのイオンはスタッコからすでに存在するので、スタッコおよび水スラリーに添加するか、またはスラリーと接触させることができる。したがって、酸変性デンプンの精製の望ましさを決定するための検討事項は、例えば、酸塩基およびアルカリ性塩基の同一性、およびそこから形成される特定のイオンの導入が所与の場所で許容される場合があるかどうかを含む。例えば、デンプンに過剰な量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物を導入することを回避することが望ましい場合があり、そのような状況では精製が有利である場合がある。
【0078】
適切なアルファ化されたデンプンは、以下の典型的な分析:水分7.5%、タンパク質8.0%、油0.5%、粗繊維0.5%、灰0.3%を有し;0.48psiの生強度を有し;かつ35.0ポンド/フィートのルーズかさ密度を有する、例えば、ミズーリ州セントルイスのBungeから入手可能なアルファ化されたトウモロコシ粉を含む場合があるが、これに限定されない。他の有用なアルファ化されたデンプンは、アルファ化米デンプンおよびアルファ化小麦デンプンを含む場合があるが、これらに限定されない。
【0079】
アルファ化デンプンは、任意の好適な粘度を有することができる。アルファ化デンプンと水との総重量の15質量%の量でアルファ化デンプンが水中にある状態で、アルファ化デンプンが、VMA法による条件を与えられる場合、アルファ化デンプンの粘度は、「中間」粘度を有する(すなわち、約20センチポアズ〜約700センチポアズの粘度を有する)として特徴付けられる。
【0080】
通常、適切なアルファ化デンプンの粘度は、約20センチポアズ〜約1000センチポアズ、例えば約20センチポアズ〜約900センチポアズ、約20センチポアズ〜約800センチポアズ、約20センチポアズ〜約700センチポアズ、約20センチポアズ〜約500センチポアズ、約30センチポアズ〜約200センチポアズ、または約100センチポアズ〜約700センチポアズであることができる。例としては、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0113124号に記載のVMA法に従って測定された、約773センチポアズまたは100センチポアズの粘度を有する、アルファ化コーンスターチが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
いくつかの実施形態では、アルファ化デンプンは、所望の冷水溶解度を有するように調製することができる。従来のアルファ化技術は、デンプンを冷水に可溶にすることを伴い、一般に過剰な量の水でデンプンを調理する必要がある。押出成形は、加熱と機械的せん断との組み合わせを可能にし、冷水可溶性とともに低い含水率を有する1ステッププロセスにおいてアルファ化デンプンを製造するために使用することができるエネルギー効率のよい方法である。冷水溶解度は、室温(約25℃)で水に任意の量の溶解度を有すると定義される。冷水可溶性デンプンは、約30%より大きい冷水溶解度を有することができ、石膏ボードの強度を高めることができる。アルファ化デンプンの水への溶解度は、室温の水に溶解するデンプンの量を、デンプンの総量で割ったものとして定義される。
【0082】
例えば、アルファ化デンプンの冷水溶解度は、約30%〜約100%である場合がある。より具体的な例では、アルファ化デンプンの冷水溶解度は、約50%〜約100%であることができる。
【0083】
一般に、アルファ化デンプンは、ブラベンダー法に従って測定された、約10BU〜約120BU、例えば、約20BU〜約110BU、約30BU〜約100BU、または約60BU〜約70BUの冷水粘度(10%固形分、25℃)を有する場合がある。本明細書で言及されるブラベンダー粘度測定手順によると、粘度は、C.W.ブラベンダービスコグラフ、例えば、動的測定に反作用トルクを使用するビスコグラフEを使用して測定される。本明細書で定義されるように、ブラベンダーユニット(BU)は、75のRPMにおいて700cmgのカートリッジで、16液量オンス(約500cc)の試料カップサイズを使用して測定されることに留意されたい。当業者であれば、ブラベンダーユニットが、本明細書に記載のように、センチポアズ(例えば、測定カートリッジが700cmgの場合、cP=BU×2.1)またはクレブスユニットなどの他の粘度測定値に変換することができることも容易に認識するであろう。
【0084】
本発明の石膏ボード内のデンプン層は、未調理のデンプンを含む場合がある。または、デンプン層は、未調理のデンプンと調理済みのデンプンの混合物を含む場合がある。未調理のデンプンと調理済みのデンプンとの比率は、例えば、後側紙カバーシートおよび/または前側紙カバーシート、特に後側カバーシート、より具体的には後側紙カバーシートの内面へのデンプンの適用のための所望の程度の流動性を提供するように選択される場合がある。選択される流動性は、デンプンをカバーシートの内面に適用するための技術に依存する場合がある。流動性は、例えばスランプ試験によって測定することができる。好ましくは流動性は、デンプンまたはデンプン混合物の粘度に関連していることができ、例えば、No.5Spindleを用いて60rpmにおけるBrookfield粘度計試験に従って測定すると、その粘度、例えば、約50cps〜約2000cps、例えば、約200cps〜約1500cpsである。
【0085】
調理済みデンプンに対する未調理デンプンのあらゆる適切な比率がデンプン層に含まれる場合があり、例えば、0:100〜100:0(組み合わせは任意であるため)、または1:100〜100:1である。調理済みでんぷんに対する未調理デンプンの比率は、約90:10〜約10:90、約70:30〜約30:70、約60:40〜約40:60、約90:10〜約60:40、約90:10〜約70:30、約90:10〜約80:20、約80:20〜約60:40、または約80:20〜約70:30などである場合がある。必要であれば、調理済みでんぷんに対する未調理デンプンの比は、約25:75、約30:70、約35:65、約50:50、約65:35、約70:30、約75:25などであることができる。
【0086】
調理済みデンプンと未調理デンプンの組み合わせは、後側紙カバーシートおよび/または前側紙カバーシートの内面に適用するために、乾式混合または湿式混合される場合がある。同様に、調理済みまたは未調理のデンプンのみが、後側紙カバーシートおよび/または前側紙カバーシートの内面に乾式または湿式で適用される場合がある。調理済みおよび未調理のデンプンの組み合わせが、同時にまたは一度に1つずつ内面に適用される場合がある。調理済みおよび未調理のデンプンは、デンプン層において互いに混合される場合があり、または調理済みおよび未調理のデンプン自体は、あらゆる順序でそれらの上に重ねられる場合がある。
【0087】
デンプン層のデンプンは一般に、非移動性デンプンである。この点で、移動性酸変性デンプンは、デンプン層におけるデンプンとは異なり、より小さい分子鎖を有するものとして当技術分野において公知である。これらのより小さな鎖状移動性デンプンは、一般に、石膏スラリー内で移動する可能性があり、ボードの強度を高めるために有益ではない。酸変性移動性デンプンは、通常、約6000ダルトン未満の分子量を有する。通常、本発明のデンプン層内に組み込むためのデンプンは、移動性デンプンよりも高分子量、例えば、少なくとも約15,000ダルトン、または少なくとも約30,000ダルトンを有する。平均分子量は、ピーク粘度によって示される場合がある。
【0088】
あらゆる適切な量のデンプンがデンプン層に存在する場合がある。例えば、デンプン層は、例えば、約0.1ポンド/MSF(MSF=1000平方フィート)〜約35ポンド/MSF、例えば、約1ポンド/MSF〜約2ポンド/MSF、または約2ポンド/MSF〜約35ポンド/MSF、または約1ポンド/MSF〜約5ポンド/MSF、または約6ポンド/MSF〜約20ポンド/MSFの範囲のデンプンの量を含む場合がある。
【0089】
特定の例では、本発明の石膏ボードのデンプン層は、石膏、無機充填剤、有機充填剤、およびラテックスまたは他の合成ポリマーを含まない。場合によっては、デンプン層は、基本的にデンプンおよび水からなる場合があり、任意で少量のトリメタリン酸ナトリウム(STMP)を含む。
【0090】
有機官能基化デンプンは、本明細書に開示される石膏ボードのいずれかにおけるデンプン層に使用される場合がある。有機官能基化デンプンは、デンプンのグルコースモノマー単位のヒドロキシル基のいずれかの反応によって形成される場合があるが、C−6の第一級アルコール基により容易に導入される場合がある。導入される場合がある官能基は、酢酸塩、リン酸塩、ヒドロキシアルキル、アルキルスルホネートなどを含むが、これらに限定されない。
【0091】
本開示の石膏ボードを使用するのに適したスルホン化デンプンは、既知のスルホン化技術によって合成される場合がある。スルホン化により、スルホン酸(−SOOH)またはスルホン酸塩(−SONa)部分がデンプンに導入される。例示的なスルホン化プロセスにおいて、デンプンは、アルキル結合スルホン酸塩を生成するために、含水NaOH中で90℃で4時間、ビニルスルホン酸のナトリウム塩と反応させられる場合がある。
【0092】
より一般的には、スルホン酸またはスルホン酸塩は、アルキル基またはアリールアルキル基、特にC−C18またはC−Cスルホン酸またはスルホン酸塩、より具体的にはC−Cアルキルスルホン酸またはスルホン酸塩でデンプンに連結される場合がある。アルキルまたはアリールアルキル基を介した、スルホン酸またはスルホン酸塩へのスルホン酸のカップリングは、10%水酸化ナトリウム(NaOH)などの適切な塩基の存在下で起こる場合がある。適切なスルホン化剤は、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸、2−クロロエタンスルホン酸、3−クロロプロパンスルホン酸、または1,3−プロパンスルホンを含む場合があるが、これらに限定されない。スルホン化は約50℃〜約100℃の温度で実施される場合があるが、約75℃〜約95℃の温度、特に約85℃〜95℃の温度で実施される場合がある。
【0093】
添加剤
ボードコアを形成するために使用される石膏スラリーに存在する場合がある他の添加剤は、増粘剤、発泡体(適切な発泡剤から調製される)、分散剤、ポリリン酸塩(例えば、トリメタリン酸ナトリウム)、デンプン、遅延剤、促進剤、再焼成阻害剤、バインダー、接着剤、二次分散助剤、レベリング剤または非レベリング剤、増粘剤、殺菌剤、殺菌剤、pH調整剤、緩衝剤、着色剤、補強材、難燃剤、撥水剤(例えばシロキサン)、充填剤、およびそれらの混合物を含む場合があるが、これらに限定されない。
【0094】
石膏スラリーの添加剤および他の成分は、様々な方法でミキサに添加される場合がある。例えば、成分の様々な組み合わせは、1つ以上の乾燥成分として、および/または1つ以上の湿潤成分として、ミキサに入る前に事前に混合される場合がある。同様に、単一の成分が湿式または乾式の形でミキサに導入される場合がある。湿潤形態で導入される場合、成分は、水などの分散媒にあらゆる適切な濃度で含まれる場合がある。
【0095】
繊維は、任意で、本発明の方法および組成物に使用することができる。繊維は、鉱物繊維(ミネラルウールとしても知られる)、ガラス繊維、炭素繊維、これらの繊維の混合物、および壁板に同等の利点を提供する他の同等の繊維を含む場合がある。例えば、ガラス繊維は、石膏コアスラリーおよび/またはスキム層スラリーおよび結果として生じる結晶性コア構造に組み込むことができる。そのような態様におけるガラス繊維は、約0.5〜約0.75インチの平均長さおよび約11〜約17ミクロンの直径を有する場合がある。他の態様において、そのようなガラス繊維は、約0.5〜約0.675インチの平均長さおよび約13〜約16ミクロンの直径を有する場合がある。さらに他の態様では、約800℃を超える、または少なくとも約900℃を超える軟化点を有するEガラス繊維が利用される。ガラス繊維の代わりに、またはガラス繊維と組み合わせて、当業者に知られているようなミネラルウールまたは炭素繊維が使用される場合がある。
【0096】
繊維は、含まれる場合、石膏コアスラリーおよび/またはスキム層スラリー中に、硫酸カルシウム半水和物の100pbwあたり、乾燥ベースで、約0.5〜約10pbw、好ましくは約1〜約8pbw、より好ましくは約2〜約7pbw、最も好ましくは約3〜約6pbwの量で存在することができる。繊維がない場合もある。
【0097】
任意で、必要であれば、1つ以上のリン酸塩含有化合物をスラリーに含むこともできる。例えば、これらのリン酸塩含有成分は、水溶性成分を含むことができ、それぞれが2以上のリン酸単位を含むイオン、塩、または酸、すなわち凝縮されたリン酸、それぞれ2以上のリン酸塩単位を含む、凝縮されたリン酸塩の塩またはイオン、ならびにオルトリン酸塩および水溶性非環式ポリリン酸塩の一塩基塩または1価イオンの形態であることができる。例示的な例は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,342,284号、第6,632,550号、第6,815,049号および第6,822,033号に記載されている。
【0098】
リン酸塩含有成分は、グリーン強度、永久変形(例えば、たるみ)に対する耐性、寸法安定性などを高めることができる。例えば、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸カリウム、トリメタリン酸リチウム、およびトリメタリン酸アンモニウムを含むトリメタホスフェート化合物を使用することができる。トリメタリン酸ナトリウム(STMP)が一般に使用されるが、例えば、テトラメタリン酸ナトリウム、約6〜約27の反復リン酸塩単位を有し、分子式Nan+23n+1(式中、n=6〜27)を有するヘキサメタリン酸ナトリウム、分子式Kを有するピロリン酸四カリウム、分子式Na10を有するトリポリリン酸三ナトリウム二カリウム、分子式Na10を有するトリポリリン酸ナトリウム、分子式Naを有するピロリン酸四ナトリウム、分子式Al(POを有するトリメタリン酸アルミニウム、分子式Naを有する酸性ピロリン酸ナトリウム、1,000〜3,000の反復リン酸塩単位を有し、分子式(NHn+23n+1(式中、n=1,000〜3,000)を有するポリリン酸アンモニウム、または2以上の反復リン酸単位を有し、分子式Hn+23n+1(式中、nは2以上である)を有するポリリン酸を含む、他のリン酸塩が適切である場合がある。
【0099】
リン酸塩は通常、乾燥形態および/または水溶液液体形態で添加され、乾燥成分がスラリーミキサに添加されるか、液体成分がミキサに添加されるか、または他の段階または手順で添加される。
【0100】
存在する場合、リン酸塩は、乾燥形態または水中形態(例えば、約10%水溶液などの、約5%〜約20%のリン酸塩水溶液)において石膏スラリー中に含むことができる。含まれる場合、リン酸塩は、スタッコの約0.01質量%〜約0.5質量%、例えば、スタッコの約0.03質量%〜約0.4質量%、約0.1質量%〜約0.3質量%、または約0.12質量%〜約0.4質量%などのあらゆる適切な量(固形分/固形分ベース)で存在することができる。リン酸塩がない場合もある。
【0101】
石膏スラリーは、任意で、流動性を高めるために少なくとも1つの分散剤を含むことができる。分散剤は、乾燥形態で、任意で他の添加剤とともに、および/または液体形態で、任意で他の液体成分とともに、石膏スラリーに導入される場合がある。適切な分散剤の例は、ポリナフタレンスルホン酸およびその塩(ポリナフタレンスルホン酸塩)などのナフタレンスルホン酸塩およびナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合生成物である誘導体、ならびに例えばポリカルボン酸エーテルなどのポリカルボン酸塩分散剤を含む。適切な分散剤の他の例は、リグノスルホン酸塩またはスルホン化リグニンを含む。リグノスルホネートは、亜硫酸パルピングを使用した木材パルプの製造からの副生成物である、水溶性アニオン高分子電解質ポリマーである。
【0102】
より低分子量の分散剤が望ましい場合がある。より低分子量のナフタレンスルホネート分散剤が好ましい場合がある。なぜならば、それらは、より高い粘度で、より高い分子量の分散剤よりも低い水需要の傾向があるからである。したがって、約3,000〜約10,000(例えば、約8,000〜約10,000)の分子量が、分散剤のための望ましい分子量である場合がある。必要に応じて、ポリカルボン酸塩分散剤の分子量は、約20,000から約60,000であることができ、これは、約60,000を超える分子量を有する分散剤よりも少ない遅延を示す場合がある。
【0103】
典型的なナフタレンスルホン酸塩は、水中のナフタレンスルホン酸塩溶液であり、約35質量%〜約55質量%の範囲のナフタレンスルホン酸塩固形分を有する。しかしながら、必要に応じて、ナフタレンスルホン酸は、乾燥した固体または粉末の形態で使用することができる。
【0104】
存在する場合、分散剤は、例えば、スタッコの約0.1質量%〜約5質量%、例えば、約0.1質量%〜約4質量%、約0.1質量%〜約3質量%、約0.2質量%〜約3質量%、約0.5質量%〜約3質量%、約0.5質量%〜約2.5質量%、約0.5質量%〜約2質量%、約0.5質量%〜約1.5質量%などのあらゆる適切な(固形分/固形分)量で石膏スラリーに含むことができる。ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸エーテルまたはリグノスルホン酸塩のいずれか1つ以上が存在しない場合もある。
【0105】
硫酸カルシウム半水和物の水和反応が起こる速度を変更するために、促進剤および/または遅延剤が石膏コアスラリーおよび/またはスキム層スラリーに添加される場合がある。適切な促進剤は、例えば、湿式石膏促進剤、耐熱性促進剤(HRA)、または気候安定化促進剤(CSA)を含む場合がある。「CSA」は、5%の砂糖と共粉砕された95%の硫酸カルシウム二水和物を含む硬化促進剤であり、砂糖をカラメル化するために250°F(121℃)に加熱される。CSAは、USG Corporationから入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,573,947号および第6,409,825号に従って作製される。硫酸カリウムは、別の好ましい促進剤である。好ましい促進剤であるHRA(耐熱促進剤)は、硫酸カルシウム二水和物100ポンド当たり、砂糖約5〜25ポンドの比率で、砂糖とともに新たに粉砕された硫酸カルシウム二水和物である。これは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,078,199号にさらに記載されている。これらは両方とも好ましい促進剤である。存在する場合、促進剤および/または遅延剤はそれぞれ、石膏スラリー中に固形分ベースで、例えば、スタッコの約0質量%〜約5質量%(例えば、約0.1%〜約5%)などの、スタッコの約0質量%〜約10質量%(例えば、約0.1%〜約10%)の量で組み込むことができる。適切な促進剤は、例えば、硫酸カルシウム二水和物、炭水化物でコーティングされた硫酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物/有機ホスホン酸塩、および硫酸カルシウム二水和物/有機リン酸塩を含む場合がある。促進剤および/または遅延剤がない場合もある。
【0106】
発泡体(発泡水としても知られる)は、任意で、石膏コアスラリーおよび/またはスキム層スラリー(好ましくは石膏コアスラリー)に、上記の低減されたコア密度およびパネル重量を提供する量で導入される場合がある。泡を生成するための発泡剤は、通常、石けんまたは他の適切な界面活性剤である。適切な量、配合、およびプロセスで石膏コアスラリーに泡を導入すると、最終的な乾燥したウォールボードのコア内にボイドの所望のネットワークおよび分布が生成される。このボイド構造により、所望のパネルの構造的特性および強度特性を維持しながら、石膏および他のコア構成要素ならびにコアの密度および重量を削減することができる。存在する場合、発泡剤は、不安定成分の主重量部分と、安定成分の少重量部分(例えば、不安定と、安定/不安定のブレンドとが組み合わされる場合)とを含む。安定成分に対する不安定成分の重量比は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,643,510号、第6,342,284号および第6,632,550号に記載されているように、凝結石膏コア内に空気ボイド分布を形成するために有効である。石膏コアスラリーに泡を添加するためのアプローチは、当技術分野で知られており、そのようなアプローチの一例は、引用によってその開示が本明細書に組み込まれる米国特許第5,683,635号に記載されている。一般に、直径約5μm以下の空隙を有する蒸発水ボイドもまた、前述の空気(泡)ボイドとともに総ボイド分布に寄与する。約5ミクロンより大きい孔径を備えるボイドと、約5ミクロン以下の孔径を備えるボイドとの体積比は、約0.5:1〜約9:1、例えば、約0.7:1〜約9:1、約1.8:1〜約2.3:1である。発泡剤は、石膏スラリー中に、例えば、スタッコの約0.5質量%未満、例えば、約0.01質量%〜約0.5質量%、約0.01質量%〜約0.2質量%、約0.02質量%〜約0.4質量%、約0.02質量%〜約0.2質量%、約0.01質量%〜約0.1質量%などの量で存在する。発泡剤がない場合もある。
【0107】
耐火性および/または耐水性の成分を石膏スラリーに含むことができる。例は、例えば、シロキサン(耐水性)、繊維、アルミニウムトリハイドライト(ATH)、水酸化マグネシウムなどのヒートシンク添加剤、および/または高膨張粒子(例えば、1560°Fで約1時間加熱した場合、元の体積の約300%以上まで膨張可能)を含む。そのような添加剤に関するさらなる開示は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第8,323,785号に見出される場合がある。高膨張バーミキュライトが含まれる場合があるが、他の耐火性材料を含むことができる。存在する場合、耐火性または耐水性の添加剤を、例えば、火災等級および同様の性能パラメータに応じて、必要に応じてあらゆる適切な量で含むことができる。例えば、含まれる場合、耐火性または耐水性添加剤は、スタッコの約0.5質量%〜約10質量%、例えば、約1質量%〜約10質量%、約1質量%〜約8質量%、約2質量%〜約10質量%、約2質量%〜約8質量%などの量で個々に存在することができる。含まれる場合、シロキサンは、望ましくは、エマルジョンの形態で導入される場合がある。次いで、スラリーが、高架橋シリコーン樹脂を形成するために、シロキサンの重合を促進する条件下で成形および乾燥させられる場合がある。高架橋シリコーン樹脂を形成するためにシロキサンの重合を促進する触媒が、石膏スラリーに添加される場合がある。無溶媒のメチル水素シロキサン流体をシロキサンとして使用することができる。この製品は、水または溶媒を含まないシロキサン流体である。乾燥原料の重量に基づき、必要であれば約0.3%〜約1.0%のシロキサンが使用される場合があると考えられる。例えば、必要であれば、乾燥スタッコ重量に基づいて、約0.4%〜約0.8%のシロキサンが石膏スラリー中に存在する場合がある。耐火性および/または耐水性のために、これらの成分のいずれか1つ以上が存在しない場合もある。たとえば、シロキサンが存在しない場合がある。
【0108】

水は、流動性スラリーを作製する任意の量でスラリーに添加される。使用される水の量は、それが使用される用途、使用されるまさにその分散剤、硫酸カルシウム半水和物の特性、および使用される添加剤によって大きく変化する。
【0109】
スラリーを作製するために使用される水は、スラリーおよび硬化プラスターの両方の特性の最良な制御のために実用的な純度であるべきである。塩および有機化合物は、スラリーの硬化時間を改変することでよく知られており、促進剤から硬化阻害剤まで幅広く変化する。いくつかの不純物は、二水和物結晶のインターロッキングマトリックスが形成されるときに構造の不規則性をもたらし、硬化製品の強度を低下させる。したがって、製品の強度および一貫性は、実用的に限りなく汚染物質を含まない水を使用することによって、強化される。
【0110】
水は、本発明の石膏コアスラリーおよび/またはスキム層スラリー中に、約0.2:1〜約1.2:1、好ましくは約0.3:1〜約1.1:1、より好ましくは、約0.6:1〜約1:1、最も好ましくは、0.7:1〜0.95:1、通常は約0.85:1の、水と硫酸カルシウム半水和物と重量比で存在することができる。
【0111】
後側紙カバーシートおよび前側紙カバーシート
後側紙カバーシートおよび前側紙カバーシートは、あらゆる適切な坪量を有するあらゆる適切な紙材料から作製される場合がある。
【0112】
後側および前側のカバーシートは紙から形成されている。ただし、各カバーシートの紙材料は、同じまたは異なる場合がある。
【0113】
石膏パネルにはさまざまなグレードの紙を使用することができる。たとえば、滑らかなカレンダー仕上げのマニラグレードの紙がしばしばフェイサー紙カバーシートとして使用され、より粗い仕上げのニュースライン紙がしばしばバッカー紙カバーシートとして使用される。通常、両方の紙グレードは、少なくとも1つのライナー層および複数のフィラー層を備えた多層である。ただし、必要であれば、少なくとも1つの紙カバーシートまたは両方の紙カバーシートは単層紙から形成される
【0114】
必要であれば、特により低密度の石膏ボードの場合に強度(たとえば、釘引抜き強度)を高めるために、カバーシートの一方または両方を、たとえば、少なくとも約45ポンド/MSF(例えば、約45ポンド/MSF〜約65ポンド/MSF、約45ポンド/MSF〜約60ポンド/MSF、約45ポンド/MSF〜約55ポンド/MSF、約50ポンド/MSF〜約65ポンド/MSF、約50ポンド/MSF〜約60ポンド/MSFなど)を有する紙から形成することができる。必要であれば、前側紙カバーシートは、後側カバーシートよりも高い坪量を有する場合があり、これにより、高められた釘引抜き抵抗および取扱いが提供される場合がある。後側カバーシートは、必要であれば、いくらか低い坪量(例えば、45ポンド/MSF未満の坪量、例えば、約33ポンド/MSFから45ポンド/MSF(例えば、約33ポンド/MSFから約40ポンド/MSF)を有することができる。
【0115】
また、必要であれば、後側紙カバーシートは、複数の孔を含む紙シートである場合がある。驚いたことに、紙後側紙カバーシートにおける孔は、ボードコアとカバーシートの間の接着を増大させる場合がある。理論またはメカニズムに拘束されることなく、孔は、ボードコアから放出された塩化物塩の外方への移動のための導管を提供すると考えられ、さもないと、塩化物塩は、ボードコアとカバーシートとの間の界面において有害に凝集する。したがって、孔は、改善された接着に影響を与えるために、本明細書に記載のデンプンコーティングに補完的なメカニズムを提供する場合がある。例えば、前側紙カバーシートの接着を改善するために石膏コアと前側紙カバーシートとの間にデンプン層が適用される場合があり、後側カバーシートの接着を改善するために後側紙カバーシートに孔を設けることができる。また、例えば、それぞれのシートの接着を改善するために石膏コアと前側紙カバーシートおよび/または後側紙カバーシートとの間にデンプン層が適用される場合があり、後側カバーシートの接着を改善するために後側紙カバーシートに孔を設けることができる。本開示と一致する方法で石膏ボード内の1つ以上のカバーシートに穿孔するための例示的な装置は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0065336号に記載されている。
【0116】
後側紙カバーシートの孔は、石膏ボードの乾燥および/または増大した接着を補助するのに適した形状、サイズ、および孔密度として存在する場合がある。
【0117】
通常、孔は実質的に円形の形状を有する。しかしながら、孔は、楕円形、三角形、正方形、長方形などの代替的な幾何学的形状を有する場合があることが認識されるべきである。特定の用途の要件に応じて、円形および非円形の孔のあらゆる組み合わせが存在する場合がある。非円形の孔のあらゆる組み合わせが存在する場合がある。
【0118】
カバーシート、特に後側カバーシートにおける各孔は、その最大横方向寸法において約0.005インチ〜約0.1インチ、好ましくは約0.01インチ〜約0.1インチ、より好ましくは約0.01インチ〜約0.02インチのサイズの範囲のサイズを有する開口部を規定する場合がある。「最大横寸法」という用語は、カバーシートの平面内の各孔を横切って測定された最大寸法を表す。円形孔の場合、最大横方向の寸法は円形の開口部の直径を表す。
【0119】
孔被覆密度とは、後側カバーシートにおける単位面積あたりの孔の数を指す。カバーシート内の孔密度は、約5〜約50孔/in、好ましくは約12〜約25孔/in、例えば、約10〜約15孔/in、または例えば、約15〜20孔/inである場合がある。
【0120】
穿孔された後側カバーシートを使用する場合、石膏ボードの作製方法では、フォームとスラリーが合わせられると、得られたスラリーは、前側紙カバーシート(フェイサー紙カバーシート)であるフェーシング材料の第1のピースで被覆されたコンベヤに向かって移動し、このコンベヤ上へ注がれる。穿孔された後側紙カバーシート(バッカー紙カバーシート)であるフェーシング材料の別のピースがスラリーの上側に配置され、2つのフェーシング材料の間にスラリーを備えるサンドイッチアセンブリを形成する。
【0121】
通常、孔は、後側カバーシートの表面の0.1〜10%、より典型的には0.5〜5%である。
【0122】
図2は、壁板パネル10の平面(軸方向)図を示しており、後側紙カバーシート14内に孔21の例示的な構成が見られる場合がある。図示のように、孔21は、列および行の規則的な配列にパターン化されている。孔21の他のパターン化された配置も本発明の範囲内に存在し、孔21の描写された数、間隔、および被覆密度は、限定的であると見なされるべきではないことを認識されたい。
【0123】
システム
図3は、本発明の壁システムで使用される場合がある典型的な建物壁システム30の斜視図である。図2は、複数の金属スタッド34、上部トラック36、下部トラック38を含む金属スタッド壁「骨格」32を示している。石膏ボード10(図1)は、壁を閉じ、壁または天井の1つ以上の内面を形成するために、あらゆる公知の方法で金属スタッド34の片側または両側に固定される場合がある。典型的な金属スタッド壁「骨格」は、参照により本明細書に組み込まれるコリンズらの米国特許第6,694,695号に従って製造される場合があり、これは、本発明の壁システムを達成するための外部被覆パネルとの組み合わせに適している。この金属フレームシステムは、木または他の金属フレームも使用される場合もあるので、単に例示として提供されている。
【0124】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、当然のことながら、決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0125】
表1に明記されているように、NaClまたはMgClの形態の高塩化物濃度を有する石膏コア(スラリー)配合物を調製した。MgClまたはNaClに加えてデンプンを含むように示された試料は、後側紙カバーシート上にデンプン層を備えるこれらの試料の試験を示している(以下の表2を参照)。したがって、試料#1および#2によって定義されたボードコアは、試料#3および#4と同様に、組成的に互いに同一である。すべての石膏コア配合物には、少量の調理済みコーンスターチが含まれていた。
【表1】
【0126】
12インチ×12インチ×1/2インチのエンベロープを、前側紙カバーシートとしてのマニラ紙(46ポンド/MSF)および後側カバーシートとしてのニュースライン紙(40ポンド/MSF)を使用して作製した。スラリー配合物(表1)をエンベロープに注ぐ前に、希釈されたデンプン溶液(表2)を、試料#2および#4に使用された後側紙カバーシートのコア側(内側)にブラシで塗った。
【表2】
【0127】
スラリー配合物(表1)は、乾燥粉末を溶液に10秒間浸漬し、ホバートミキサで10秒間混合し、続いて、得られた泡を4.5秒間注入し、さらに2秒間混合することによって調製した。このようにして得られたスラリーを各エンベロープに注いだ。スラリーが固まって硬化した後、紙テープを使用してエンベロープを密封した。密封されたボードを450°Fで20分間乾燥させた後、350°Fのオーブンに移した。350°Fで15分間乾燥させた後、ボードをさらに110°Fで一晩乾燥させた。
【0128】
デンプン処理の効果は、紙対コアの結合を試験するために「X」切断法によって評価された。完成したウォールボード試料の後側紙に、いくつかの「X」字型の切断を行った。「X」字型の切断のサイズは約2インチ×2インチであった。切断部の中心から紙をはく離した。はく離後に壁板の石膏コアに残っている紙の量を評価することにより、試料を互いに比較して定性的に評価した。石膏コアへの接着が良好な場合、紙の薄い層がコアに残る。対照的に、コアへの接着が不十分な場合、紙はコアからはく離され、コアのより多くの部分を露出させる。
【0129】
図4は、百万部分の硫酸カルシウム半水和物あたりMgClからの1200ppmのClを含有する12インチ×12インチ×1/2インチのボードに対する希釈されたデンプン溶液の効果を示す写真を示す。対照試料ボード#1は、紙のカバーシートと石膏コアの間にデンプン層を有していなかった。実験用試料ボード#2は、紙カバーシートと石膏コアの間にデンプン層を有していた。
【0130】
図5は、百万部分の硫酸カルシウム半水和物あたりMgClからの1200ppmのClを含有する12インチ×12インチ×1/2インチのボードに対する希釈されたデンプン溶液の効果を示す写真を示す。対照試料ボード#3は、紙のカバーシートと石膏コアの間にデンプン層を有していなかった。実験用試料ボード#4は、紙カバーシートと石膏コアの間にデンプン層を有していた。
【0131】
図4の試料ボード#1および#2を互いに比較すると、デンプン層を有する実験試料ボード#2は、デンプン層を有さない対照試料ボード#1よりも、各「X」切断部で露出した石膏の面積が小さかった。これは、デンプン層が、1200ppmのClアニオンを含む水性石膏スラリーから作製された石膏コア層に対する紙カバーシートの接着を著しく改善したことを示している。
【0132】
同様に、図5の試料#3および#4を互いに比較すると、デンプン層を有する実験試料ボード#4は、デンプン層を有さない対照試料ボード#2よりも、各「X」切断部で露出した石膏の面積が小さかった。これは、デンプン層が、2100ppmのClアニオンを含む水性石膏スラリーから作製された石膏コア層に対する紙カバーシートの接着を著しく改善したことを示している。
【0133】
図6は、百万部分の硫酸カルシウム半水和物あたりNaClからの2000ppmCl を含有するスタッコから作製された石膏コアを有する12インチ×12インチ×1/2インチの石膏ボードにおける、上記の例で使用したものと同じ未調理のデンプンの希釈されたデンプン溶液および孔の効果を示す写真を示している。図6は、対照試料ボード#5を本発明の実験試料ボード#6と比較した。対照ボード#5は、孔を有さない後側紙カバーシートを有し、後側紙カバーシートと石膏コアとの間にデンプン層を有していなかった。本発明の実験試料ボード#6は、有孔紙カバーシートと、後側紙カバーシートと石膏コアとの間のデンプン層を有していた。この有孔紙シートの場合、隣接する孔の間の距離は1/4インチであった。孔の直径は約0.01〜0.02インチであった。
【0134】
塩化物アニオンが2000ppmの場合の図6の試料ボード#5および#6を比較すると、デンプン層および孔処理を備える実験試料ボード#6は、露出した石膏の面積がより小さかった。したがって、実験試料ボード#6は、対照試料ボード#5よりも良好な接着性を有していた。
【0135】
また、図6の実験試料ボード#6を、同じデンプン層を備えるが孔を備えない図5の実験試料ボード#2と比較すると、孔はさらに接着性を改善したことが示された。
【0136】
図7は、百万部分の硫酸カルシウム半水和物あたりNaClからの30ppmのClを含有するスタッコから作成された石膏コアを有する12インチ×12インチ×1/2インチの石膏ボードに対して希釈されたデンプン溶液を使用する効果を示す写真を示す。このスタッコは、従来の低塩化物塩スタッコを表している。希釈されたデンプン溶液は、図6の試料ボードと同じであった。図7は、後側紙カバーシートと石膏コアとの間にデンプン層を有さない後側紙カバーシートを備えた対照試料ボード#7を示している。図7はまた、後側紙カバーシートと石膏コアとの間にデンプン層を有する実験試料ボード#8を示している。
【0137】
塩化物アニオンが30ppmの場合の対照試料ボード#7と実験試料ボード#8を比較すると、対照ボード#7の露出面積は実験ボード#8の露出面積と同様である。これは、低レベルの塩化物塩が存在していたこれらの試料では、デンプン層が紙対コアの結合を大幅に改善しなかったことを示している。
【0138】
上記は、本発明の単なる例である。これら各実施例が、本明細書で提供される他の態様の様々な組み合わせにおいて使用される場合があることも、当業者に理解されるであろう。
【0139】
発明の条項
本発明のさまざまな態様が、以下の条項によって記載される。
【0140】
1.石膏ボードであって、
凝結石膏を含むボードコア層、
外面および内面を有し、内面がボードコアの第1の面に接触する前側紙カバーシート、および
外面および内面を有し、内面がボードコアの第2の面に接触する後側紙カバーシートを含み、
前側紙カバーシートおよび後側紙カバーシートのうちの少なくとも1つの内面は、デンプン層でコーティングされており、
コア層は、第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間にあり、
コア層は、前側紙カバーシートと後側カバーシートとの間に、水とスタッコの混合物を含む水性スラリーを凝結させた結果であり、スタッコは硫酸カルシウム半水和物を含み、水性スラリーは、
乾燥ベースにおける少なくとも60質量パーセントの前記硫酸カルシウム半水和物、
1,000,000重量部の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの塩化物アニオン、および
0.2:1〜1.2:1の水と硫酸カルシウム半水和物の重量比における水、を含む、石膏ボード。
【0141】
条項2.デンプン層が、前側紙カバーシートおよび後側カバーシートのうちの少なくとも一方の内面全体上の連続的なデンプン層である、条項1記載の石膏ボード。
【0142】
条項3.デンプン層が未調理のデンプンを含む、条項1または2記載の石膏ボード。
【0143】
条項4.デンプン層が未調理のデンプンと調理済みのデンプンの混合物を含む、条項1〜3のいずれか一項に記載の石膏ボード。
【0144】
条項5.水性スラリーが、1,000,000重量部の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約1000ppm〜約3000ppmの塩化物アニオンを含む、前項のいずれか一項に記載の石膏ボード。
【0145】
条項6.デンプン層が後側カバーシートの内面にコーティングされている、前項のいずれか一項に記載の石膏ボード。
【0146】
条項7.デンプン層が前側紙カバーシートの内面および後側カバーシートの内面にコーティングされている、前項のいずれか一項に石膏ボード。
【0147】
条項8.前側紙カバーシートが前側紙カバーシートであり、後側紙カバーシートが後側紙カバーシートである、前項のいずれか一項に記載の石膏ボード。
【0148】
条項9.ボードコアが低密度領域および少なくとも1つの高密度領域を含み、少なくとも1つの高密度領域は、低密度領域と、前側紙カバーシートまたは後側紙カバーシートとの間の層として挿入されている、前項のいずれか一項に記載の石膏ボード。
【0149】
条項10.低密度領域が、前側紙カバーシートまたはその上にコーティングされたデンプン層に接触する第1の層として配置された第1の高密度領域と、後側紙カバーシートまたはその上にコーティングされたデンプン層に接触する第2の層として配置された第2の高密度領域との間に挟まれている、条項9に記載の石膏ボード。
【0150】
条項11.低密度領域は、発泡石膏スラリーから形成されており、発泡石膏スラリー中に複数のボイドを含む、条項9または10記載の石膏ボード。
【0151】
条項12.デンプン層は、約0.5ポンド/MSF〜約15ポンド/MSF、約0.5ポンド/MSF〜約5ポンド/MSF、より好ましくは約1ポンド/MSF〜約2ポンド/MSFの量で内面にコーティングされている、前項のいずれか一項に記載の石膏ボード。
【0152】
条項13.凝結石膏が、1つ以上の塩化物塩を含む合成石膏から形成されている、前項のいずれか一項に記載の石膏ボード。
【0153】
条項14.石膏ボードを製作する方法であって、
水およびスタッコの混合物を含む水性スラリーを調製し、スタッコは硫酸カルシウム半水和物を含み、水性スラリーは、
乾燥ベースにおける少なくとも60質量パーセントの前記硫酸カルシウム半水和物、
1,000,000重量部(pbw)の前記硫酸カルシウム半水和物あたり約500ppm〜約3000ppmの塩化物アニオン、および
0.2:1〜1.2:1の、水と硫酸カルシウム半水和物との重量比における水、の混合物を含み、
前側紙カバーシートと後側カバーシートとの間に水性スラリーを配置し、各カバーシートは内面および外面を有し、
前側紙カバーシートおよび後側紙カバーシートの少なくとも一方の内面がデンプン層でコーティングされており、石膏スラリーがデンプン層と接触し、
硫酸カルシウム二水和物を含む石膏コアを含むパネルを形成するために硫酸カルシウム半水和物を凝結させ、
パネルを乾燥させ、パネルを1つ以上の所定の寸法を有する石膏ボードに切断することを含む、石膏ボードを製作する方法を提供する。
【0154】
条項15.
内面全体を覆う連続的なデンプン層として、前側紙カバーシートおよび後側紙カバーシートの少なくとも一方の内面にデンプン層を適用することをさらに含む、条項14記載の方法。
【0155】
条項16.
前側紙カバーシートおよび後側紙カバーシートの少なくとも一方の内面に、内面全体を覆う連続的なデンプン層としてデンプン層を適用することをさらに含み、後側紙カバーシートは孔を有する、条項14記載の方法。
【0156】
条項17.石膏スラリーの少なくとも一部が、前側紙カバーシートと後側カバーシートとの間に配置されている間、発泡状態にある、条項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
条項18.石膏スラリーの第1の部分が、前側紙カバーシートまたはその上のデンプン層と接触する層形態の第1の高密度領域として非発泡状態で配置され、石膏スラリーの第2の部分が、第1の高密度領域に接触する低密度領域として発泡状態で配置される、条項17記載の方法。
【0158】
条項19.低密度領域が、後側紙カバーシートまたはその上のデンプン層に接触する層形態で第1の高密度領域と第2の高密度領域との間に挟まれている、条項18に記載の方法。
【0159】
条項20.デンプン層は、約0.5ポンド/MSF〜約15ポンド/MSF、好ましくは約0.5ポンド/MSF〜約5ポンド/MSF、より好ましくは約1ポンド/MSF〜約2ポンド/MSFの量でコーティングされる、条項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
条項21.硫酸カルシウム半水和物が、1つ以上の塩化物塩を含む合成石膏を含む、請求項14〜20のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
条項22.条項1〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの石膏ボードが取り付けられているフレーミングを含む壁システムであって、前側紙カバーシートの外面がフレーミングとは反対側を向いている、壁システム。
【0162】
条項23.石膏ボードが建物の内壁または天井にある、条項22記載の壁システム。
【0163】
条項24.フレーミングが木製である、条項22または23記載の壁システム。
【0164】
条項25.フレーミングが金属製である、条項22または23記載の壁システム。
【0165】
条項26.少なくとも1つの石膏ボードが、ねじ、釘、または接着剤のいずれか1つ以上によってフレーミングに取り付けられている、条項22〜25のいずれか一項に記載の壁システム。
【0166】
本発明を実施するための本発明者らに既知の最良の様式を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形は、上記の記載を読むことで当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形を必要に応じて用いることを期待し、本発明者らは、本発明が、本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用される法律により許容される、本明細書に添付の特許請求の範囲において列挙される主題の全ての修正物および同等物を含む。さらに、全ての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが、本明細書で別途記載のない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。
【0167】
本明細書に引用される全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
本発明を記載する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」、および「an」、および「the」、および「少なくとも1つ」という用語、ならびに同様の指示語の使用は、本明細書で別途記載のない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含するよう解釈されるものである。1つ以上の項目のリストが後に続く「少なくとも1つ」という用語(例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書で別途記載のない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(AまたはB)から選択された1つの項目、または列挙された項目(AおよびB)のうちの2つ以上の任意の組み合わせを意味するよう解釈されるものである。「結合関係」は、2つの層が直接接触していることを意味しない。「備えること」、「有すること」、「含むこと」、および「含有すること」という用語は、特に断りのない限り、非限定的な用語(すなわち、「含むがこれに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内にある各個別の値を個々に参照する簡単な方法として役立つことを単に意図し、各個別の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で別途記載のない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例または例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明の理解をより容易にすることを意図し、特許請求の範囲に別途記載されない限り、本発明の範囲に制限を課さない。本明細書における用語は、特許請求の範囲に記載されていない要素を本発明の実施にとって不可欠であるとして示すものと解釈されるべきではない。
【0169】
別段の定めがない限り、すべてのパーセンテージ、比率、および平均分子量は重量ベースである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】