(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-535983(P2021-535983A)
(43)【公表日】2021年12月23日
(54)【発明の名称】特にクラッチアクチュエータ用の操作機構
(51)【国際特許分類】
F16D 23/14 20060101AFI20211126BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20211126BHJP
【FI】
F16D23/14 Z
F16D7/02 A
F16D7/02 Z
F16D7/02 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2021-510818(P2021-510818)
(86)(22)【出願日】2019年7月29日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2019070342
(87)【国際公開番号】WO2020043409
(87)【国際公開日】20200305
(31)【優先権主張番号】102018214881.3
(32)【優先日】2018年8月31日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ガイス−エッサー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン シュディ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー コッホ
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA32
3J056AA57
3J056AA62
3J056BA04
3J056BB44
3J056BC01
3J056BE30
3J056CC00
3J056CC02
3J056CD10
3J056DA22
(57)【要約】
本明細書には、クラッチアクチュエータ用の操作機構が開示されており、この操作機構は、操作力(F
B)が加えられ、これによって、操作方向(X)において移動させられるように形成された操作要素(6)と、操作方向(X)における移動を実施するように形成された伝達要素(1)とを有しており、操作要素(6)と伝達要素(1)との間にテンション要素(4)が設けられており、このテンション要素(4)は、伝達要素(1)への操作力(F
B)の伝達のために、操作力(F
B)を伝達するための摩擦力(F
R)を生ぜしめるテンション押付け力(F
S)を生ぜしめるように形成されており、摩擦力(F
R)は、最大操作力を伝達することができるように形成されている。本明細書においてはさらに、このような操作機構を備えたクラッチアクチュエータが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチアクチュエータ用の操作機構であって、当該操作機構は、
− 操作力(FB)が加えられ、これによって、操作方向(X)において移動させられるように形成された操作要素(6)と、
− 前記操作方向(X)における移動を実施するように形成された伝達要素(1)と
を有しており、
前記操作要素(6)と前記伝達要素(1)との間にテンション要素(4)が設けられており、該テンション要素(4)は、前記伝達要素(1)への前記操作力(FB)の伝達のために、前記操作力(FB)を伝達するための摩擦力(FR)を生ぜしめるテンション押付け力(FS)を生ぜしめるように形成されており、前記摩擦力(FR)は、最大操作力を伝達することができるように形成されている、操作機構。
【請求項2】
補償機構が設けられており、該補償機構は、前記操作力(FB)が前記操作要素(6)に加えられた場合に、前記伝達要素(1)と前記操作要素(6)との間の補強押付け力(FV)を加えるように、かつ前記操作力(FB)が前記操作要素(6)に加えられない場合に、前記伝達要素(1)と前記操作要素(6)との間の前記補強押付け力(FV)を低減する、好ましくは0に低減するように形成されており、
前記補強押付け力(FV)は、前記テンション押付け力(FS)に追加されて全押付け力(FG)として作用し、ひいては、最大操作力を高める、請求項1記載の操作機構。
【請求項3】
前記補償機構は、前記補強押付け力(FV)を前記伝達要素(1)の接触面(5)とクランプ要素(2)の接触区分(7)との間において生ぜしめるように形成されている、請求項2記載の操作機構。
【請求項4】
前記操作要素(6)および前記伝達要素(1)は、前記操作力(FB)によるまたは前記伝達要素(1)に導入された力による、前記最大操作力の超過時に、前記操作方向(X)における前記操作要素(6)と前記伝達要素(1)との間の相対運動が始まるように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項5】
当該操作機構は、前記操作要素(6)が終端位置にある場合に、前記伝達要素(1)と前記操作要素(6)との間の前記全押付け力(FG)を低減するように形成されており、この低減は、好ましくは、これによって、前記最大操作力が、前記操作方向(X)における前記操作要素(6)と前記伝達要素(1)との間の相対運動が可能になるように低減されるように行われる、請求項1から4までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項6】
前記終端位置は、前記伝達要素(1)および前記操作要素(6)に対して位置固定に形成されているストッパ(3)によって確定されている、請求項5記載の操作機構。
【請求項7】
前記クランプ要素(2)は、前記操作要素(6)と一体に形成されているか、またはジョイント結合部、好ましくはモーメントフリーのジョイント結合部を介して前記操作要素(6)に結合されている、請求項3から6までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項8】
前記クランプ要素(2)は、前記操作要素(6)に作用する前記操作力(FB)を前記補強押付け力(FV)に変向するように形成されており、かつ
前記補強押付け力(FV)の大きさは、前記操作力(FB)の大きさに比例している、請求項3から7までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項9】
前記クランプ要素(2)は、前記操作要素(6)の前記終端位置において前記ストッパ(3)に接触するように、かつ前記ストッパ(3)と前記クランプ要素(2)との間において、前記全押付け力(FG)を低減する力が作用するように形成されている、請求項6から8までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項10】
前記テンション要素(4)は、前記テンション押付け力(FS)を前記伝達要素(1)と前記クランプ要素(2)との間において加えるばね要素として形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項11】
前記ばね要素は、閉鎖されていて、特にリングとして形成されていて、前記テンション押付け力(FS)を完全に前記伝達要素(1)と前記操作要素(6)との間において加えるように形成されている、請求項10記載の操作機構。
【請求項12】
前記伝達要素(1)の前記接触面(5)および/または前記クランプ要素(2)の前記接触区分(7)は、前記伝達要素(1)の、前記接触面(5)に属していない表面に比べて高められた摩擦値を有している、請求項3から11までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項13】
前記接触面(5)は輪郭形成部を有していて、該輪郭形成部は、前記接触面(5)への前記クランプ要素(2)の支持力(FK)が、前記接触面(5)における前記操作方向(X)に沿った種々様々な位置(A)において、前記位置(A)における前記接触面(5)への接線に対して70°〜90°、好ましくは80°〜90°、特に好ましくは90°である接触角度(W1)を有するように形成されている、請求項3から12までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項14】
当該操作機構は、前記操作力(FB)を空気力式に、液圧式に、機械式に、電気式に、かつ/または磁力式に前記操作要素(6)に加えるように形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の操作機構。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の操作機構を有しているクラッチアクチュエータであって、
当該クラッチアクチュエータは、クラッチを伝達要素(1)によってレリーズするように形成されており、
操作機構は、操作力(FB)が操作要素(6)に作用しない場合に、前記操作要素(6)と前記伝達要素(1)との間の相対運動を解放するように形成されている、クラッチアクチュエータ。
【請求項16】
前記伝達要素(1)に、ばね要素によって生ぜしめられる弾性の予荷重が操作方向(X)において加えられており、
前記弾性の予荷重は、前記操作力(FB)が前記操作要素(6)に加えられない場合に、クラッチばねの弾性の予荷重と釣り合うように形成されている、請求項15記載のクラッチアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作力を伝達要素の移動に変換するための操作機構に関する。さらに本発明は、このような操作機構を有しているクラッチアクチュエータに関する。
【0002】
操作機構は、操作要素に加えられる操作力を、伝達要素の移動に変換し、これによって、例えば、クラッチの移動を作用させることによってクラッチをレリーズすることができる。しかしながら、このような操作機構を用いて、他の技術的な装置を操作することも可能である。
【0003】
このような操作機構には、特に過負荷防止装置が必要になるという問題がある。過負荷防止装置が設けられていることによって、一方では極めて大きな操作力が伝達要素の移動に変換されなくなり、さもないと例えばクラッチアクチュエータのような後置された装置が損傷してしまうおそれがあり、他方では後置された装置から操作機構に導入される力が、操作機構において支持されなくなり、さもないと操作機構が損傷してしまうおそれがある。さらに、それにもかかわらず所望の操作力による伝達要素の確実な移動を行えることが、保証されていなくてはならない。
【0004】
ゆえに、本発明の課題は、上に述べた問題のうちの少なくとも1つの問題を解決する、上に記載された形式の操作機構とクラッチアクチュエータとを提供することである。
【0005】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。好適な発展形態は、従属請求項の対象である。
【0006】
本発明によれば、クラッチアクチュエータ用の操作機構であって、この操作機構は、
− 操作力が加えられ、これによって、操作方向において移動させられるように形成された操作要素と、
− 操作方向における移動を実施するように形成された伝達要素と
を有しており、
操作要素と伝達要素との間にテンション要素が設けられており、このテンション要素は、伝達要素への操作力の伝達のために、操作力を伝達するための摩擦力を生ぜしめるテンション押付け力を生ぜしめるように形成されており、摩擦力は、最大操作力を伝達することができるように形成されている、操作機構が提案されている。
【0007】
このように構成されていると、操作要素と伝達要素との間の過負荷防止装置が好適に形成される。操作力は、いまや単に伝達要素の移動としての最大力に至るまでしか変換され得なくなる。他方において、後置された装置によって、操作要素に伝達されるおそれがある大きすぎる力が伝達要素に導入されることも阻止することができる。
【0008】
好ましくは、操作機構は補償機構を有しており、この補償機構は、操作力が操作要素に加えられた場合に、伝達要素と操作要素との間の補強押付け力を加えるように、かつ操作力が操作要素に加えられない場合に、伝達要素と操作要素との間の補強押付け力を低減する、好ましくは0に低減するように形成されており、補強押付け力は、テンション押付け力に追加されて全押付け力として作用し、ひいては、最大操作力を高める。
【0009】
補強押付け力とテンション押付け力とは、総和として、好ましくは伝達要素の接触面とクランプ要素の接触区分との間において作用する全押付け力を形成している。これによって、ここでは好適な摩擦力も形成される。
【0010】
操作機構の補償機構は、好ましくは補強押付け力を伝達要素の接触面とクランプ要素の接触区分との間において生ぜしめるように形成されている。
【0011】
好ましくは、複数のクランプ要素が設けられており、これらのクランプ要素は、さらに好ましくは操作方向に対して回転対称に配置されている。さらに好ましくは、クランプ要素は互いに等しい角度間隔をおいて配置されていてもよい。
【0012】
好ましくは、操作機構、特に操作要素および伝達要素は、操作力によるまたは伝達要素に導入された力による、最大操作力の超過時に、操作方向における操作要素と伝達要素との間の相対運動が始まるように形成されている。このように構成されていると、操作機構または操作機構と接触している装置の損傷の原因となり得る、大きすぎる導入される力を伝達することなしに、伝達要素と操作要素とを相互に移動させることができることが保証されている。
【0013】
操作機構は、好ましくは、操作要素が終端位置にある場合に、伝達要素と操作要素との間の全押付け力を低減するように形成されており、この低減は、好ましくは、これによって、最大操作力が、操作方向における操作要素と伝達要素との間の相対運動が可能になるように低減されるように行われる。このように構成されていると、例えば摩耗を被る装置、特に摩擦クラッチを操作するように形成されている伝達要素が、操作力が操作要素に加えられない間に、操作方向における特定の位置、すなわち、装置の閉鎖時においても装置と遊びなしに接触したままになる位置をとれることが、好適に保証されている。これによって、さもないと操作時に克服する必要があるクリアランスが回避される。
【0014】
終端位置は、好ましくは、伝達要素および操作要素に対して位置固定に形成されているストッパによって確定されている。
【0015】
クランプ要素は、好ましくは操作要素と一体に形成されている。このように構成されていると、クランプ要素がクランプ要素と操作要素との間の結合部の弾性の構成によって弾性に変向可能であることを達成することができる。
【0016】
択一的にクランプ要素は、ジョイント結合部、好ましくはモーメントフリーのジョイント結合部を介して操作要素に結合されている。モーメントフリーのジョイント結合部は、単にクランプ要素と操作要素との間において力だけを伝達するように形成されている。
【0017】
クランプ要素は、好ましくは、操作要素に作用する操作力を補強押付け力に変向するように形成されている。この変向は、好ましくは、補強押付け力の大きさが、操作力の大きさに比例しているように行われる。
【0018】
好ましくは、変向は、操作力の大きさを上回る大きさを有している補強押付け力を生ぜしめるように形成されている。
【0019】
クランプ要素は、好ましくは、操作要素の終端位置においてストッパに接触するように形成されている。このとき、ストッパとクランプ要素との間においては、全押付け力を低減する力が作用する。
【0020】
テンション要素は、好ましくは、テンション押付け力を伝達要素とクランプ要素との間において加えるばね要素として形成されている。このように構成されていると、所望のテンション押付け力を、確定されたばね定数を設けることによって簡単に調節することができる。ばね要素は、好ましくは閉鎖されていて、特にリングとして形成されており、ばね要素は、テンション押付け力を完全に伝達要素と操作要素との間において加えるように形成されている。このように構成されていると、テンション押付け力を伝達要素の周囲に均一に形成することが可能になる。
【0021】
伝達要素の接触面は、好ましくは、伝達要素の、接触面に属していない表面に比べて高められた摩擦値を有している。このように構成されていると、比較的大きな操作力を伝達する必要があることを保証しなくてはならない場合に、最大操作力をさらに高めることができる。摩擦値は、好ましくは接触面の加工によって達成することができる。例えば、操作方向に対して横方向に延在する溝、または全般的に粗く形成された接触面が、目的にかなっていると言える。
【0022】
択一的にまたは追加的に、クランプ要素の接触区分も同様に、高められた摩擦値を有するように形成されていてもよい。
【0023】
接触面は、好ましくは輪郭形成部を有していて、この輪郭形成部は、接触面へのクランプ要素の支持力が、接触面における操作方向に沿った種々様々な位置において、この位置における接触面への接線に対して70°〜90°、好ましくは80°〜90°、特に好ましくは90°である接触角度を有するように形成されている。このように構成されていると、特に接触面への接線に対する接触角度が90°である場合に、クランプ要素の全支持力を補強押付け力に移行することによって、補強押付け力を高めることができる。これによって、好ましくはクランプ要素の支持力のより良好な支持が達成され、これにより操作要素と伝達要素との間の相対運動が、阻止されるまたは少なくとも困難になる。
【0024】
操作機構は、好ましくは、操作力を空気力式に、液圧式に、機械式に、電気式に、かつ/または磁力式に操作要素に加えるように形成されている。操作力が空気力式または液圧式に加えられる場合には、操作要素は、好ましくはピストンシリンダアセンブリと接触しているか、または操作要素は、シリンダの圧力室を閉鎖しているピストンとして形成されている。これによって、操作要素に、操作力としての圧力を加えることができる。操作力が電気式または磁力式に加えられる場合には、操作力を電界または磁界から生ぜしめる相応の要素が設けられている。そのために例えば電動機、特にリニアモータが考えられる。その他、例えば操作要素と接触しているロッドによって、機械式に力を加えることも可能である。
【0025】
本発明によればさらに、上に記載されたように操作機構を有しているクラッチアクチュエータが提案されており、このクラッチアクチュエータは、クラッチを伝達要素によってレリーズするように形成されており、操作機構は、操作力が操作要素に作用しない場合に、操作要素と伝達要素との間の相対運動を解放するように形成されている。このように構成されていると、伝達要素は相対運動によって、操作力が操作要素に作用しない場合に、クラッチフェーシングの摩耗を補償することができるということが好適に保証される。これによって、伝達要素は常に、クラッチと、特にクラッチのレリーズベアリングと接触状態を保つことができ、その結果、操作力を操作要素に加えた場合にまず克服しなくてはならない、摩耗によるクリアランスの発生を回避することができる。
【0026】
伝達要素には、好ましくはばね要素によって生ぜしめられる弾性の予荷重が操作方向において加えられており、この弾性の予荷重は、操作力が操作要素に加えられない場合に、クラッチばねの弾性の予荷重と釣り合うように形成されている。このように構成されていると、伝達要素をクラッチと、特にレリーズベアリングと常に接触させておくことが達成される。
【0027】
上に記載された実施形態は、同様に本発明に係る対象に相当する対象を有しているさらなる実施形態を得るために、互いに任意に組み合わせることができる。以下においては、本発明の好適な実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る操作機構の原理を示す断面図である。
【
図2】
図1に示された操作機構の好適な発展形態を示す図である。
【
図3】
図2に示された実施形態の力経過を示す図である。
【0029】
図1には、本発明に係る操作機構が断面図で示されている。この断面図は、水平な軸線に対して対称であるので、単に、符号を付された操作機構の上側の要素についてだけ記載する。下側の要素は、上側の要素に相当しているので、
図1では符号は不要である。
【0030】
図示された操作機構は、示された図において左から右に向かって延在している円筒形のロッドの形態の伝達要素1を有している。伝達要素1は、同様に左から右に向かって方向付けられている軸線8を有している。円筒形の伝達要素1の代わりに、他の横断面形状も考えられる。例えば正方形または長方形の横断面形状も考えられる。
【0031】
さらに操作要素6が断面図で示されており、この操作要素6は、伝達要素1の軸線8を中心にして回転対称に伝達要素1の周囲に延在している。操作要素6には、操作要素6の左側に示された操作力F
Bを加えることができる。右側において操作要素6は、クランプ要素2に移行している。このクランプ要素2は、操作要素6と一体に形成されていて、操作要素6に向かって屈曲するように方向付けられている。択一的にクランプ要素2は、例えば操作要素6とクランプ要素2との間の屈曲部に設けられたジョイントを介して、操作要素6に結合されてもよい。このような構成は、複数部分から成る構成である。
【0032】
図示の実施形態では、別のクランプ要素2が軸線8を中心にして回転対称に配置されていて、操作要素6と一体に形成されている。
【0033】
クランプ要素2は、操作要素6を起点として伝達要素1に向かって延在している。クランプ要素2の、ここでは接触区分7として形成されている自由端部は、伝達要素1の接触面5に接触している。
【0034】
さらに、接触区分7に配置されているテンション要素4が示されている。接触区分7は、テンション要素4を収容するために相応に形成されている。ここではテンション要素4は、伝達要素1の軸線8を中心にして回転対称に延在しているリング形状のばね要素として形成されている。テンション要素4は、示された図において軸線8から離れる方向に接触区分7によって拡開されるように形成されている。その結果テンション要素4は、テンション押付け力F
Sを外側から接触区分7へと加え、これによって、接触区分7は、伝達要素1の接触面5に押し付けられる。
【0035】
さらにストッパ3が示されており、このストッパ3は、その他の要素、特に操作要素6および伝達要素1に対して位置固定に形成されている。操作要素6の終端位置に相当している示された図において、クランプ要素2はストッパ3に接触している。これによって、クランプ要素2には反応力が加えられ、この反応力によって、接触区分7はテンション押付け力F
Sに抗して負荷が除去される。このことは、反応力が操作方向Xに平行に方向付けられていることによって行われ、このとき、操作要素6とクランプ要素2との間の結合箇所を中心にした曲げモーメントが発生し、この曲げモーメントは、図において上に示されたクランプ要素2に左回りの、下に示されたクランプ要素に右回りの負荷を加える。このことは、接触区分7と接触面5との間の押付け力が完全に消滅するように行うことができる。
【0036】
図示された操作機構の機能形式は、以下に記載のように行われる。
【0037】
示された図において、操作機構、特に操作要素6は、終端位置にある。いまや操作力F
Bを起点として伝達要素1を操作方向Xにおいて移動させるためには、操作力F
Bを伝達要素1に伝達する必要がある。伝達は、接触面5と接触区分7との間の接触箇所において行われる。接触面5と接触区分7とは、テンション要素4のテンション押付け力F
Sによって互いに押し付けられる。これによって、接触面5と接触区分7との間において、最大操作力を伝達することができる摩擦結合部が発生する。これにより操作要素6に操作力F
Bを加えることによって、接触面5と接触区分7との間において摩擦力F
Rが惹起され、この摩擦力F
Rは、操作力F
Bが最大操作力よりも小さい場合に、この操作力F
Bに相当している。
【0038】
これによって、接触面5と接触区分7との間の摩擦結合式の結合は、テンション要素4のテンション押付け力F
Sによって、操作力F
Bを伝達要素1に伝達するように形成されている。結果として伝達要素1は、操作方向Xにおいて、操作力F
Bに基づいて惹起される移動を行う。
【0039】
さらに操作要素6、クランプ要素2、および接触区分7から成るアセンブリは、このアセンブリが伝達要素1の接触面5に、操作力F
Bが操作要素6に加えられた場合に、補強押付け力F
Vを加えるように形成されており、この補強押付け力F
Vは、少なくとも部分的にテンション押付け力F
Sをサポートするように方向付けられており、両方の力は、加算されて全押付け力F
Gを形成する。補強押付け力F
Vは、以下に記載のように生ぜしめられる。
【0040】
操作力F
Bが操作要素6に加えられると、これによって、クランプ要素2はストッパ3から解離する。これによって、クランプ要素2とストッパ3との間の反応力が消滅し、これによって、いまや操作力F
Bは、いまや端部が伝達要素1に接触しているクランプ要素2によって支持されねばならない。操作要素6とクランプ要素2とが互いに角度を成して配置されていることに基づいて、これによって、接触区分7と接触面5との間には大きな反応力が発生する。この反応力は、加えられた操作力F
Bに比例していて、接触面5と接触区分7との間において押付け力を生ぜしめるように作用する。これによって、この反応力は、補強押付け力F
Vとして有効になり、この補強押付け力F
Vは、テンション押付け力F
Sと補強押付け力F
Vとの総和としての全押付け力F
Gを高める。全押付け力F
Gが高まることによって、接触面5と接触区分7との間において伝達され得る最大操作力も高められる。これによって、補強押付け力F
Vの発生によって、操作方向Xにおける伝達要素1の移動を確実に行うことができるようになる。これによって、伝達要素1が接触区分7に対して滑ってしまうリスクが最小になる。
【0041】
しかしながら、接触面5と接触区分7との間の図示された結合部は、最大操作力を有しており、これによって、過負荷防止装置が実現されている。この過負荷防止装置は、例えば、大きすぎる反力が操作方向Xとは逆向きに伝達要素1ひいては操作機構に導入される場合に、接触区分7に対する伝達要素1の滑りを可能にする。
【0042】
さらに図示された操作機構は、操作要素6が図示された終端位置にある場合、もしくは図示されたクランプ要素2がストッパ3に接触している場合に作動状態にある自動式の摩耗後調節装置を有している。そのために操作要素6またはクランプ要素2には、操作方向Xとは逆向きの力が加えられ、この力は例えばばね(図示せず)によって生ぜしめられ、これによって、操作要素6もしくはクランプ要素2は、終端位置に押圧され、これによって、ストッパ3とクランプ要素2との間の反応力が高められる。上に記載されたように、ストッパ3とクランプ要素2との間の反応力は、これによって、全押付け力F
Gが低減されることを生ぜしめる。関与する要素は、全押付け力F
Gが、接触区分7に対する伝達要素1の移動が既に、外部から伝達要素1に操作方向Xとは逆向きに導入される小さな力によって得られるように低減されるように形成されている。
【0043】
このような力は、例えばクラッチばねによって伝達要素1に加えることができ、伝達要素1はこの場合、例えばクラッチのレリーズベアリングと接触するように構成されており、クラッチ力はレリーズベアリングを介して伝達要素1に導入される。
【0044】
例えばクラッチフェーシングが強く摩耗している場合には、この摩耗を補償する必要がある。このことは、クラッチばねが比較的強く伝達要素1を押圧することによって行われる。図示の終端位置において接触面5と接触区分7との間の全押付け力F
Gひいては最大操作力は、強く低減されており、好適な実施例では0にまで低減され得るので、操作力F
Bが操作要素6に加えられない限り、伝達要素1は、いまや接触区分7に対して自由に運動することができ、これによって、クラッチ摩耗を補償することができる。操作力F
Bが加えられると、接触面5と接触区分7との間の全押付け力F
Gひいては最大操作力は、再び高められる。このことは遅くても、クランプ要素2がストッパ3から解離した場合に行われる。しかしながら、また好適な実施形態では、このことを既に早期に行うことが可能である。その後で再び接触面5と接触区分7との間に結合部が生ぜしめられ、これによって、クラッチを操作力F
Bによってレリーズすることができる。
【0045】
図2にはさらに、
図1に示された操作機構の好適な発展形態が示されている。
【0046】
図示された機構の構造および機能形式は、
図1に示された操作機構に相当しているので、以下においては単に、構造上の相違とその機能形式についてだけ言及する。
【0047】
伝達要素1は、
図1におけるものと同様にロッドとして形成されていて、同様に左から右に向かって延在している。しかしながら、伝達要素1の接触面5は、波形の輪郭形成部を有している。この輪郭形成部は、伝達要素1の軸線8を中心にして回転対称に形成されているので、接触面5は、操作方向Xにおいて比較的大きな半径を備えた領域と比較的小さな半径を備えた領域とを交互に有しており、両領域の間の移行部は、連続的に形成されていて、特に縁部を有していない。
【0048】
テンション要素4の作用形式は、
図1に示されたテンション要素4の作用形式に相当している。図示された終端位置における摩耗補償も、
図1において記載された摩耗補償に相当している。
【0049】
輪郭形成された接触面5は、
図1に記載されたような輪郭形成されていない接触面5に比べて、伝達可能な最大操作力に対してポジティブに作用する。そのためにさらに、接触面5の2つの位置A,Bにおける輪郭形成部の作用を例として示す
図3が、補足的に参照される。
【0050】
接触区分7が、接触面5の輪郭形成部の、操作方向Xにおいて上昇する側面に接触する場合(位置Aにおける場合)に、側面の上昇勾配が相応に形成されていると、位置Aにおける接触面5への接線に対する接触角度W
1、つまり、接触面5においてクランプ要素2の支持力F
Kを支持する接触角度W
1は、90°または少なくともほぼ90°を形成することが可能である。クランプ要素2の支持力F
Kは、加えられる操作力F
Bによって生ぜしめられる。支持力F
Kは、操作力F
Bの変向によって形成される。
【0051】
これによって、全支持力F
Kは、接触面5への押付け力に移行し、つまり、この場合、補強押付け力F
Vは、支持力F
Kと同一である。これによって、最大操作力も高められる。
【0052】
この接触によって、伝達要素1が接触区分7に対して操作方向Xとは逆向きに滑ることは、さらに困難になる。これによって、操作方向Xにおける伝達要素1の確実な移動が可能になる。
【0053】
位置Bにおいて接触面5に対する支持力F
Kは、接触面5への接線に対して接触角度W
2を成して加えられ、この接触角度W
2は90°未満である。これによって、補強押付け力F
Vは、もはや全支持力F
Kに相当しない。図示の配置によって補強押付け力F
Vは、これにより位置Aにおけるよりも小さくなり、これによって、操作方向Xにおける伝達要素1の移動が可能であるが、しかしながら、ここでは最大操作力は、位置Aに比べて僅かな押付け力に基づいて低減されている。
【0054】
したがって、接触面5の接触は一種の係止である。それというのは、操作方向Xにおける伝達要素1の確実な移動のために特に好適である、接触面5における位置Aが存在しているからである。
【0055】
このとき、種々様々な輪郭形成部が考えられる。好ましくは例えば、輪郭形成部の上昇する側面は、操作方向Xにおいて可能な限り長い領域にわたって延在していて、次いで下降する側面が続いており、この下降する側面は、操作方向Xにおいて可能な限り短い領域にわたって延在している。
【0056】
さらに、同様にテンション押付け力F
Sを加えることができる別のテンション要素4が考えられる。例えばばね要素の代わりに、テンション押付け力F
Sの調節を例えばねじを用いて可能にする固定金具を使用することも可能である。
【0057】
図示された操作機構は、上に記載されたように、好ましくはクラッチアクチュエータにおいて使用可能である。操作要素6から伝達要素1への操作力F
Bの伝達の原理は、中央に配置されたクラッチアクチュエータのためにも、分散して配置されたクラッチアクチュエータのためにも使用することができる。中央に配置されたクラッチアクチュエータは、例えば、操作方向Xにおける伝達要素1の移動が中央でクラッチのレリーズベアリングと整合して行われるように、クラッチに対して配置されている。クラッチをレリーズするための移動は、ここでは伝達要素1によって直接行われる。分散式のクラッチアクチュエータでは、伝達要素1は操作方向Xにおいて中央でレリーズベアリングと整合しないように配置されている。クラッチをレリーズするための移動は、ここでは間接的に、例えば動きを伝達するロッドによって行われる。さらに中央に配置されたクラッチアクチュエータでは、クラッチ側と結合している軸がクラッチアクチュエータによって案内されていてもよい。例えばこの場合、この軸の軸線は、伝達要素1の軸線8に相当しており、伝達要素1は中空に形成されていて、軸は伝達要素1を貫通している。しかしながら、クラッチアクチュエータのこのような構造形態および他の構造形態は、本発明の対象を制限するものではない。
【符号の説明】
【0058】
1 伝達要素
2 クランプ要素
3 ストッパ
4 テンション要素
5 接触面
6 操作要素
7 接触区分
8 軸線
A 位置
B 位置
F
B 操作力
F
G 全押付け力
F
K 支持力 クランプ要素2
F
R 摩擦力
F
S テンション押付け力
F
V 補強押付け力
W
1 接触角度
W
2 接触角度
X 操作方向
【国際調査報告】