(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-535998(P2021-535998A)
(43)【公表日】2021年12月23日
(54)【発明の名称】水の組成を測定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20211126BHJP
【FI】
G01N33/18 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2021-500810(P2021-500810)
(86)(22)【出願日】2019年8月13日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月9日
(86)【国際出願番号】US2019046264
(87)【国際公開番号】WO2020036912
(87)【国際公開日】20200220
(31)【優先権主張番号】62/718,085
(32)【優先日】2018年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217135
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】グレン ピー サンドストローム
(57)【要約】
水溶液の組成を決定する方法を開示する。この方法は、水溶液を得るステップと、水溶液から酸素を取り出すステップと、溶解酸素の濃度を決定するステップと、水溶液から過酸化水素を取り出すステップと、溶解酸素の濃度を決定するステップとを含む。この方法は、溶解酸素濃度差を計算して過酸化水素の濃度を決定するステップを含む。また、水溶液の組成を決定するシステムを開示する。このシステムは、水溶液の源に接続可能な送給ラインと、酸素取出しユニットと、過酸化水素取出しユニットと、溶解酸素アナライザとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液の組成を決定する方法であって、
過酸化水素濃度及び溶解酸素濃度を有する水溶液を得るステップと、
前記水溶液の少なくとも一部分から酸素を取り出して第1サンプルを作り出すステップと、
前記第1サンプル内における溶解酸素の第1サンプル濃度を決定するステップと、
前記第1サンプルの少なくとも一部分から過酸化水素を取り出して第2サンプルを作り出すステップと、
前記第2サンプル内における溶解酸素の第2サンプル濃度を決定するステップと、
溶解酸素の第2サンプル濃度と溶解酸素の第1サンプル濃度との差を計算して、前記水溶液における過酸化水素の濃度を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記水溶液の前記少なくとも一部分から酸素を取り出すステップは、前記水溶液の前記少なくとも一部分を酸素取出しプロセスに導入させるステップを含む、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記水溶液の前記少なくとも一部分を、真空脱ガスプロセス、ガス転移膜、酸素除去媒体、真空機械的撹拌プロセス、及びそれらの組合せから選択した酸素取出しプロセスに導入させるステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記第1サンプルの前記少なくとも一部分から過酸化水素を取り出すステップは、前記第1サンプルの前記少なくとも一部分を過酸化水素分解プロセスに導入させるステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記第1サンプルの前記少なくとも一部分を過酸化水素分解プロセスに導入させるステップは、前記第1溶液の前記少なくとも一部分を触媒駆動過酸化水素分解プロセスに導入させるステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記第1溶液の前記少なくとも一部分を、パラジウムドープ陰イオン交換樹脂を含む不均一系触媒、基材上に固定化した金属を含む不均一系触媒、酵素を含む均一系触媒、及びこれらの組合せから選択された、触媒駆動過酸化水素分解プロセスに導入させるステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記水溶液における過酸化水素の濃度を決定するために、溶解酸素の前記第2サンプル濃度と溶解酸素の前記第1サンプル濃度との前記差に対して2.125を乗算するステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、溶解酸素の前記第1サンプル濃度を決定するステップ及び溶解酸素の前記第2サンプル濃度を決定するステップのうち少なくとも一方は、前記第1サンプル又は前記第2サンプルを少なくとも1つの溶解酸素アナライザに導入させるステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、該方法は、約10ppb以下の過酸化水素濃度を検出することができる、方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、該方法は、約2ppb以下の過酸化水素濃度を検出することができる、方法。
【請求項11】
水溶液の組成を決定するシステムであって、
過酸化水素濃度及び溶解酸素濃度を有する水溶液の源に流体接続可能な送給ラインと、
前記送給ラインに流体接続された入口を有する酸素取出しユニットと、
前記酸素取出しユニットに流体接続された入口を有する第1溶解酸素アナライザと、
前記酸素取出しユニットに流体接続された入口及び前記第1溶解酸素アナライザに流体接続された出口を有する過酸化水素取出しユニットと、
を備える、システム。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、さらに、前記酸素取出しユニットと前記第1溶解酸素アナライザとの間に配置された第1バルブを備える、システム。
【請求項13】
請求項12記載のシステムにおいて、さらに、前記過酸化水素取出しユニットと前記第1溶解酸素アナライザとの間に配置された第2バルブを備える、システム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムにおいて、さらに、前記過酸化水素取出しユニットと排出出口との間に配置され、かつ、前記第2バルブが閉じているときに前記水溶液を排出するように構成された第3バルブを備える、システム。
【請求項15】
請求項11記載のシステムにおいて、前記第1溶解酸素アナライザは、溶解酸素濃度を表示するように構成されたディスプレイユニットを有する、システム。
【請求項16】
請求項11記載のシステムにおいて、さらに、前記第1溶解酸素アナライザに電気接続され、かつ、前記過酸化水素取出しユニットの上流における前記水溶液の第1溶解酸素濃度と前記過酸化水素取出しユニットの下流における前記水溶液の第2溶解酸素濃度との間の差を計算して前記水溶液における過酸化水素濃度を決定するように構成された制御モジュールを備える、システム。
【請求項17】
請求項16記載のシステムにおいて、前記制御モジュールは、約10ppb以下の過酸化水素濃度を決定することができる、システム。
【請求項18】
請求項17記載のシステムにおいて、前記制御モジュールは、約2ppb以下の過酸化水素濃度を決定することができる、システム。
【請求項19】
請求項11記載のシステムにおいて、前記第1溶解酸素アナライザは、複数の溶解酸素アナライザを備える、システム。
【請求項20】
請求項11記載のシステムにおいて、前記酸素取出しユニットは、真空脱ガスユニット、ガス転移膜、酸素除去媒体、及び真空機械的撹拌ユニットのうち少なくとも1つを備える、システム。
【請求項21】
請求項11記載のシステムにおいて、前記過酸化水素取出しユニットは、触媒駆動過酸化水素取出しユニットを備える、システム。
【請求項22】
請求項21記載のシステムにおいて、前記触媒駆動過酸化水素取出しユニットは、パラジウムドープ陰イオン交換樹脂を含む不均一系触媒、基材上に固定化したプラチナを含む不均一系触媒、及び酵素を含む均一系触媒、のうち少なくとも1つを備える、システム。
【請求項23】
請求項11記載のシステムにおいて、さらに、前記過酸化水素取出しユニットに流体接続された入口を有する第2溶解酸素アナライザを備える、システム。
【請求項24】
請求項11記載のシステムにおいて、さらに、前記酸素取出しユニットの上流に配置された第3溶解酸素アナライザを備える、システム。
【請求項25】
請求項24記載のシステムにおいて、さらに、前記送給ラインと前酸素取出しユニットとの間に配置された第4バルブを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本件出願は、あらゆる目的で参照により全体が本明細書に組み入れられるものとする、2018年8月13日出願の「高溶解酸素背景を有する水における低レベル過酸化水素を測定する方法(Method for Measuring Low Levels Hydrogen Peroxide in Water with a High Dissolved Oxygen Background)」と題する米国仮出願第62/718,085号に対して米国特許法第119条(e)の下で優先権を主張する。
【0002】
本明細書記載の態様及び実施形態は、概して、水溶液の組成を測定することに関し、より具体的には、溶解酸素バックグラウンドがある水溶液における低レベル過酸化水素を測定するシステム及び方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1態様によれば、水溶液の組成を決定する方法を提供する。本発明方法は、過酸化水素濃度及び溶解酸素濃度を有する水溶液を得るステップを含むことができる。本発明方法は、前記水溶液の少なくとも一部分から酸素を取り出して第1サンプルを作り出すステップを含むことができる。本発明方法は、前記第1サンプル内における溶解酸素の第1サンプル濃度を決定するステップを含むことができる。本発明方法は、前記第1サンプルの少なくとも一部分から過酸化水素を取り出して第2サンプルを作り出すステップを含むことができる。本発明方法は、前記第2サンプル内における溶解酸素の第2サンプル濃度を決定するステップを含むことができる。本発明方法は、溶解酸素の第2サンプル濃度と溶解酸素の第1サンプル濃度との差を計算して前記水溶液における過酸化水素の濃度を決定するステップを含むことができる。
【0004】
ある実施形態において、前記水溶液の前記少なくとも一部分から酸素を取り出すステップは、前記水溶液の前記少なくとも一部分を酸素取出しプロセスに導入させるステップを含むことができる。
【0005】
本発明方法は、前記水溶液の前記少なくとも一部分を、真空脱ガスプロセス、ガス転移膜、酸素除去媒体、真空機械的撹拌プロセス、及びそれらの組合せから選択した酸素取出しプロセスに導入させるステップを含むことができる。
【0006】
ある実施形態において、前記第1サンプルの前記少なくとも一部分から過酸化水素を取り出すステップは、前記第1サンプルの前記少なくとも一部分を過酸化水素分解プロセスに導入させるステップを含むことができる。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記第1サンプルの前記少なくとも一部分を過酸化水素分解プロセスに導入させるステップは、前記第1溶液の前記少なくとも一部分を触媒駆動過酸化水素分解プロセスに導入させるステップを含むことができる。
【0008】
本発明方法は、前記第1溶液の前記少なくとも一部分を、パラジウムドープ陰イオン交換樹脂を含む不均一系触媒、基材上に固定化した金属を含む不均一系触媒、酵素を含む均一系触媒、及びこれらの組合せから選択された、触媒駆動過酸化水素分解プロセスに導入させるステップを含むことができる。
【0009】
本発明方法は、前記水溶液における過酸化水素の濃度を決定するために、溶解酸素の前記第2サンプル濃度と溶解酸素の前記第1サンプル濃度との前記差に対して2.125を乗算するステップを含むことができる。
【0010】
ある実施形態において、溶解酸素の前記第1サンプル濃度を決定するステップ及び溶解酸素の前記第2サンプル濃度を決定するステップのうち少なくとも一方は、前記第1サンプル又は前記第2サンプルを少なくとも1つの溶解酸素アナライザに導入させるステップを含むことができる。
【0011】
ある実施形態において、本発明方法は、約10ppb以下の過酸化水素濃度を検出でき得る。
【0012】
ある実施形態において、本発明方法は、約2ppb以下の過酸化水素濃度を検出し得る。
【0013】
本発明の他の態様によれば、水溶液の組成を決定するシステムを提供する。本発明システムは、過酸化水素濃度及び溶解酸素濃度を有する水溶液源に流体接続可能な送給ラインを備えることができる。本発明システムは、前記送給ラインに流体接続された入口を有する酸素取出しユニットを備えることができる。本発明システムは、前記酸素取出しユニットに流体接続された入口を有する第1溶解酸素アナライザを備えることができる。本発明システムは、前記酸素取出しユニットに流体接続された入口及び前記第1溶解酸素アナライザに流体接続された出口を有する過酸化水素取出しユニットを備えることができる。
【0014】
本発明システムは、前記酸素取出しユニットと前記第1溶解酸素アナライザとの間に配置された第1バルブを備えることができる。
【0015】
本発明システムは、前記過酸化水素取出しユニットと前記第1溶解酸素アナライザとの間に配置された第2バルブを備えることができる。
【0016】
本発明システムは、前記過酸化水素取出しユニットと排出出口との間に配置された第3バルブを備えることができる。前記第3バルブは、前記第2バルブが閉じているとき前記水溶液を排出するように構成され得る。
【0017】
ある実施形態において、前記第1溶解酸素アナライザは、溶解酸素濃度を表示するように構成されたディスプレイユニットを有することができる。
【0018】
本発明システムは、前記第1溶解酸素アナライザに電気的に接続された制御モジュールを備えることができる。前記制御モジュールは、前記過酸化水素取出しユニットの上流における前記水溶液の第1溶解酸素濃度と前記過酸化水素取出しユニットの下流における前記水溶液の第2溶解酸素濃度との差を計算して前記水溶液における過酸化水素濃度を決定するように構成され得る。
【0019】
前記制御モジュールは、約10ppb以下の過酸化水素濃度を決定し得る。
【0020】
前記制御モジュールは、約2ppb以下の過酸化水素濃度を決定し得る。
【0021】
ある実施形態において、前記第1溶解酸素アナライザは、複数の溶解酸素アナライザを備えることができる。
【0022】
ある実施形態において、前記酸素取出しユニットは、真空脱ガスユニット、ガス転移膜、酸素除去媒体、及び真空機械的撹拌ユニットのうち少なくとも1つを備えることができる。
【0023】
ある実施形態において、前記過酸化水素取出しユニットは、触媒駆動過酸化水素取出しユニットを備えることができる。
【0024】
ある実施形態において、前記触媒駆動過酸化水素取出しユニットは、パラジウムドープ陰イオン交換樹脂を含む不均一系触媒、基材上に固定化したプラチナを含む不均一系触媒、及び酵素を含む均一系触媒、のうち少なくとも1つを有することができる。
【0025】
本発明システムは、前記過酸化水素取出しユニットに流体接続された入口を有する第2溶解酸素アナライザを備えることができる。
【0026】
本発明システムは、前記酸素取出しユニットの上流に配置された第3溶解酸素アナライザを備えることができる。
【0027】
本発明システムは、前記送給ラインと前酸素取出しユニットとの間に配置された第4バルブを備えることができる。
【0028】
本開示は、上述した態様及び/又は実施形態の任意な1つ又はそれ以上のすべての組合せ、並びに本明細書記載の実施形態のうち任意な1つ又はそれ以上及び任意な実施例の組合せを想定している。
【0029】
添付図面は縮尺通りに描くことを意図していない。図面において、種々の図で示される各同一又はほぼ同一のコンポーネントを同一符号で示す。簡明のため、すべてのコンポーネントに符号を付していない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】一実施形態による、水溶液の組成を決定するシステムのブロック図である。
【
図1B】一実施形態による、水溶液の過酸化水素濃度を決定するシステムのブロック図である。
【
図2】一実施形態による、水溶液の過酸化水素濃度を決定するシステムのブロック図である。
【
図3】一実施形態による、水溶液の過酸化水素濃度を決定するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
過酸化水素(H
2O
2)は処理水に一般的に見られ、またときには水処理添加物として導入される。過酸化水素検出方法は、過酸化水素が水における望ましい構成成分か又は望ましくない汚染物質か否かのいずれかで採用され得る。しばしば過酸化水素濃度は目標濃度の公差範囲内となるよう注意深く制御される。例えば、プロセス水における過酸化水素濃度は、目標濃度の10ppb内又は2ppb内となるよう制御される場合があり得る。このようにして、有効検出方法は、過酸化水素濃度を目標閾値の狭い公差範囲内となるよう制御することが必要となる場合があり得る。
【0032】
過酸化水素は工業用途で酸化剤として使用することができる。過酸化水素は、一般的に例えば、塩素及び過マンガン酸塩よりも強い酸化剤である。過酸化水素の1つの用途は、除草剤及びポリ塩化ビフェニル(PCB)のような厄介な有機汚染物質を水から除去するのに採用される進化した酸化プロセスにおける用途である。例えば、有機不純物を含む水は、過酸化水素を約1%添加し、それに続いての紫外線(UV)曝露によって処理することができる。さらに、圃場規模では揮発性有機化合物により汚染された地下水を処理するのにUVとともに過酸化水素及びオゾン(O
3)を使用することができる。
【0033】
厄介な化合物の部分的酸化は過酸化水素で実施することもできる。例えば、塩素化芳香族化合物は、2:1〜6:1の間における、例えば、4:1のモル比で過酸化水素による予酸化を行って生物分解することができる。過酸化水素は、一般的に熱的に安定している。過酸化水素は、概して現場で保管することができる。過酸化水素は一般的に水に溶解することができる。過酸化水素の使用は、関連するガスの物質移動の複雑化要因を減少することができる。
【0034】
過酸化水素は、例えば、繊維工業における漂白剤として色除去に使用することができる。過酸化水素は、製紙において、また古紙リサイクリング中に使用することができる。過酸化水素の他の用途としては、臭気制御、排水管腐食制御、過剰活性汚泥設備のための付加的酸素源、及び活性汚泥糸状バルキング制御のための、硫化物酸化があり得る。
【0035】
場合によっては、過酸化水素は望ましくない構成成分となり得る。所定の水における過酸化水素の存在は有害なことがあり得る。過酸化水素は、185nm波長UV光による水の光分解中における副生成物として形成され得る。185nm波長UV光は、一般的に全有機体炭素(total oxidizable carbon;TOC)の還元に使用される。例えば、半導体工業において、185nm波長UV光は超純水のTOC濃度を1ppb以下に減少するのに使用することができる。このプロセスにおいて望ましくない過酸化水素が形成される場合があり得る。
【0036】
過酸化水素の光分解は、一般的にヒドロキシルラジカル(OH・)を産生する。例えば、過酸化水素の存在の下でFe
3+からFe
2+への光化学的還元は、一般的にヒドロキシルラジカルの発生を増大する。ヒドロキシルラジカルは、概して高い酸化性がある種であり、また所定の水においては望ましくない場合があり得る。
【0037】
過酸化水素は、さらに、半導体製造プロセスでしばしば使用される。例えば、このようなプロセス中に過酸化水素は、概して、酸素及び水素に分解し、またひいては溶液に対する汚染には関与しない。いかなる残留過酸化水素濃度をも10ppb以下にまで減少することが望ましい場合があり得る。例えば、残留過酸化水素濃度をできるだけ2ppb程度の低いものに減少するのが望ましい場合があり得る。
【0038】
水における過酸化水素の従来の検出方法は、特に、他の構成成分のバックグラウンド濃度が高い場合におけるような低過酸化水素濃度を正確に測定できない場合があり得る。従来方法は、さらに、過酸化水素濃度測定をインラインで実施することができない場合があり得る。例えば、従来の過酸化水素検出の試験細条は、インラインで過酸化水素検出に採用され得ず、また一般的には水内における1〜50ppmの過酸化水素を検出することができる。
【0039】
本明細書記載のシステム及び方法は、約20ppb未満の過酸化水素濃度を検出するのに使用することができる。ある実施形態において、本明細書記載のシステム及び方法は、約10ppb未満の過酸化水素濃度を検出するのに使用することができる。本明細書記載のシステム及び方法は、約12ppb以下、約10ppb以下、約8ppb以下、約6ppb以下、又は約4ppb以下の過酸化水素濃度を検出するのに使用することができる。特に、本明細書記載のシステム及び方法は、約2ppb程度の低い、又は約1ppb程度の低い過酸化水素濃度を検出するのに使用することができる。
【0040】
本明細書記載の水処理で採用又は形成される過酸化水素の濃度は、効率的で費用効果的な使用のために注意深く制御及びモニタリングすることができる。都合よくは、過酸化水素は、滴定法、ガス定量法、電気化学的熱量測定法、化学発光法、及び超音波法によってモニタリングする。例えば、滴定法としては、過マンガン酸塩による過酸化水素の酸化と、その後の酸性ヨウ化カリウムによる溶液の還元に基づくモニタリング方法がある。これらモニタリング方法の結果を使用して過酸化水素レベルを制御することができる。しかし、過酸化水素をモニタリングする従来の方法は、時間がかかり、干渉を受け易く、また耐用期間が悪いことがある。したがって、これら方法はプロセスのモニタリング及び制御にそれほど効果的でない場合があり得る。
【0041】
過酸化水素を測定する方法は、例えば、カタラーゼのような酵素を液体サンプルに添加するステップを含む。サンプルは、過酸化水素を分解させ、また酸素ガスを発生させるよう撹拌することができる。酸素ガスは、サンプル測定のためにサンプル量を置き換えることができる。サンプル量は、直接又は間接的に、過酸化水素の存在量を表す値に変換することができる。
【0042】
液体サンプルにおける過酸化水素を取り出す及び/又は測定するのに触媒を使用することができる。この方法は、液体サンプルにおける溶解酸素(dissolved oxygen;DO)を測定するステップと、このサンプルを触媒で処理するステップと、この処理済みサンプルの溶解酸素濃度を測定するステップと、2つのサンプル間における溶解酸素濃度の差を計算するステップとを含むことができる。溶解酸素濃度の変化を使用して、サンプル内の過酸化水素の濃度を決定することができる。過酸化水素の触媒破壊に起因する溶解酸素増加は次式に従う。すなわち、
2H
2O
2→(触媒)→O
2+2H
2O
【0043】
しかし、サンプルが溶解酸素の高いバックグラウンド濃度を含む場合、過酸化水素の比較的低い濃度は触媒で検出するのは困難なことがあり得ると認識されている。例えば、サンプルにおける溶解酸素と過酸化水素との間の差は、溶解酸素アナライザの精度又は解像度の範囲外であり得る。一実施例において、検査すべき生水は約9000ppbの溶解酸素濃度を有することがあり得る。このサンプルは、触媒処理後に0.94ppbに相当する約2ppbの過酸化水素濃度を有することができる。このサンプルにおける2つの濃度間の差は生水サンプルの0.01%である。生水サンプルと触媒処理サンプルとの間におけるこのような小さい差を検出するのは困難である。
【0044】
本明細書記載のシステム及び方法は、水溶液における組成を測定するのに使用することができる。特に、このシステム及び方法は、溶解酸素の高いバックグラウンド濃度を有する水溶液の組成を測定するのに使用することができる。例えば、本明細書記載のシステム及び方法は、水溶液の過酸化水素濃度を測定するのに使用することができる。
【0045】
一態様によれば、水溶液の組成を決定する方法を提供する。水溶液は、概して、過酸化水素及び溶解酸素を含む場合があり得る。本発明方法は、本明細書記載の供給源から水溶液を得るステップを含むことができる。例えば、水溶液源は、浄水、原子力発電、マイクロエレクトロニクス製造、半導体製造、食品加工、紡織業、製紙業、及びリサイクリング、並びに製薬、化学処理、及び金属抽出システム又はプロセスに関連させることができる。水溶液源は、工業用途、例えば、工業廃水から有害な有機汚染物質除去に関連させることができる。水溶液源は、廃水及び/又は地方自治体の水処理に関連させることができる。水溶液源は、活性汚泥水処理システム又は方法に関連させることができる。概して、水溶液は、処理水からTOCを除去するシステム又は方法に関連させることができる。
【0046】
特定の一実施形態において、水溶液源は、マイクロエレクトロニクス製造システム又はプロセスに関連させることができる。水溶液源は、半導体製造システム又はプロセスに関連させることができる。例えば、水溶液は、半導体チップ又はウェハー製造に使用される溶液とすることができる。ある事例において、本開示は半導体製造システムに言及する場合があり得る。しかし、本明細書記載のシステム及び方法は、過酸化水素の正確な検出及び/又は注意深い制御が適切又は必要となり得る任意な水溶液に関連して同様に採用できることに留意されたい。
【0047】
概して、水溶液は、脱イオン水、超純水、高純水、蒸留水、精密濾過水、逆浸透に供した水、粒状活性炭処理水、又は、他の汚染物質を除去するように処理された水であるか、これらを含むことができる。水溶液は、高純水、例えば、脱イオン水、超純水、蒸留水、精密濾過水、超精密濾過水、逆浸透に供した水、粒状活性炭処理水、又は、他の汚染物質を除去するように処理された水を生成するシステムに関連させることができる。幾つかの実施形態において、水溶液は、紫外線酸化に供した水を含むことができる。ある実施形態において、水溶液は、超純水を含むか、又は超純水を生成するプロセスに関連させることができる。本明細書に記載のように、超純水は、25℃で18.18MΩ・cmの抵抗によって定義することができる。超純水は、10ppb未満、例えば約1ppb以下のTOC濃度を有することができる。高純水は、25℃で約10MΩ・cm〜18.18MΩ・cmの間、例えば、約10MΩ・cm〜18MΩ・cmの間における抵抗によって定義することができる。高純水は、100ppb未満、例えば約10ppb以下、約5ppb以下、又は約2ppb以下のTOC濃度を有することができる。
【0048】
ある実施形態において、水溶液のサンプル部分は、検査のために採取又は抽出することができる。したがって、本発明方法は、水溶液から検査サンプルを抜き出すステップを含むことができる。他の実施形態において、水溶液の大部分を検査することができる。水溶液は実質的に均質なものとすることができる。例えば、水溶液から得たいかなるサンプルも、水溶液の大部分と実質的に同様の特性を有することができる。このような特性としては、例えば、組成、温度、粘性、pH、及び導電率があり得る。特に、水溶液から得たいかなるサンプルも、水溶液の大部分と実質的に同様の組成を有することができる。
【0049】
システム及び方法は、水溶液から又は水溶液の少なくとも一部分から、例えば水溶液の検査サンプルから酸素を取り出すステップを含むことができる。酸素は、含水サンプルから酸素を取り出すことが知られている任意な方法によって水溶液又はサンプルから取り出すことができる。ある実施形態において、水溶液又はサンプルから酸素を取り出すステップは、水溶液又はサンプルを酸素取出しプロセスに導入させるステップを含むことができる。酸素取出しシステム及び方法の非限定的な例としては、真空ガス抜き、ガス転移(例えば、ガス転移膜との接触)、脱酸素(例えば、脱酸素媒体との接触)、及び真空機械的撹拌がある。酸素取出し方法の他の例としては、熱的ガス抜き及び放散がある。さらに他の方法も本開示の範囲内である。
【0050】
システム及び方法は、本明細書記載の1つ又はそれ以上の酸素取出し方法を採用することができる。酸素取出しシステム又はプロセスは、水溶液又はサンプルから酸素の少なくとも80%を取り出すように構成することができる。酸素取出しは、水溶液又はサンプルにおける酸素の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、又は少なくとも99.999%を取り出すように構成することができる。ある実施形態において、酸素の所望取出し率を得るよう1つより多い酸素取出し方法を採用することができる。
【0051】
真空ガス抜きを、ときに真空ガス抜き装置と称される特殊化真空チャンバ内で実施することができる。真空ガス抜きは、概して、水溶液をガス抜きするため減圧を伴う。簡単に説明すると、水溶液におけるガスの溶解度はヘンリーの法則に従う。液体における溶解ガスの量は、典型的にはその分圧に比例する。真空ガス抜きは、概して、水溶液を減圧下に置いて、溶解ガスの溶解性を少なくする。真空ガス抜き中、溶液は、ガス抜き効率を高めるため超音波処理する及び/又は撹拌することができる。したがって、真空チャンバは超音波処理器及び/又は撹拌器を有することができる。
【0052】
ガス転移膜によるガス転移は、ときに膜ガス抜きと称される。ガス転移は、概して膜との接触を伴う。この膜は、ガス浸透性かつ液体非浸透性であることによってガス-液体分離を可能にするように構成することができる。例えば、ガス転移膜内への水溶液流入は、溶解ガスを選択的に通過させ、濾液側に実質的に純水の溶媒が残る。膜ガス抜きは真空条件の下で実施することができる。膜ガス抜きは、窒素、アルゴン又はヘリウムのような不活性掃引ガスにより実施することができる。任意な不活性掃引ガスを採用することができる。この膜は、ガスの液体への再溶解を防止するように構成することができる。1つの例示的なガス転移膜は、Cel
TM Membrane Contactor(ミネソタ州メープルウッドの3M
TM社が販売)である。
【0053】
脱酸素は、概して脱酸素媒体との接触を伴う。脱酸素媒体は、水溶液から酸素を取り出すように構成された組成物及びパッケージを有することができる。幾つかの実施形態において、脱酸素媒体は、二酸化炭素も除去することができる。脱酸素媒体は、液体、固体、又はゲルの形態とすることができる。概して、脱酸素媒体は水溶液透過性パッケージ内に収納することができる。水溶液透過性パッケージは、脱酸素媒体並びに脱酸素媒体の任意な副生成物及び分解成分に対して実質的に非透過性とすることができる。水溶液透過性パッケージは水溶液に対して不活性とすることができる。脱酸素媒体は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、カルボヒドラジド、タンニン、及びジエチルヒドロキシルアミンのうち1つ又はそれ以上を含むことができる。
【0054】
真空機械的撹拌は、概して、水溶液のかき回し雰囲気との表面接触を増大させるよう、真空条件の下で水溶液を機械的に撹拌することを伴う。かき回し雰囲気としては、窒素、アルゴン、又はヘリウムのような不活性ガスがあり得る。機械的撹拌は、水溶液の微細液滴又は薄膜を生じさせることによって実施することができる。機械的撹拌は、スプレー噴射(spraying)、霧状化(atomizing)、及び流下(cascading)のうち1つ又はそれ以上を含むことができる。したがって、機械的撹拌ユニットは、真空スプレーユニット、真空アトマイザー、又は真空流下トレイを有することができる。機械的撹拌は、温度制御条件の下で実施することができる。したがって、真空機械的撹拌ユニットは温度制御することができる。
【0055】
熱的ガス抜きは、概して、溶解ガスを追い出すために水溶液を熱処理するステップを含むことができる。熱処理は、溶媒及びガスに応じて、加熱又は冷却とすることができる。典型的には、水溶液は高温でガスを追い出す。したがって、水溶液の熱的ガス抜きは水溶液の加熱ステップを伴うことができる。熱的ガス抜きは、温度制御ユニット内で実施することができる。熱的ガス抜き中、溶液は、ガス抜き効率を高めるよう、超音波処理及び/又は撹拌することができる。したがって、温度制御ユニットは超音波処理器及び/又は撹拌器を有することができる。
【0056】
スパージングは、典型的には、望ましくない溶解ガスを追い出すために溶液に対して不活性ガスを泡立てるステップを伴う。スパージャー(放散器)を使用して溶液内に微細な泡を注入することができる。不活性ガスは、スパージング条件(例えば、スパージング温度及び圧力)下で、水溶液内において溶解性が低いかまたは溶解性が実質的にないガスとすることができる。不活性ガスは、組成を制御してもよいし、且つ/又は、実質的にピュアなものとしてもよい。例示的な不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、及びヘリウムが挙げられる。他の不活性ガスを採用することもできる。スパージング中、溶液は、一般的にガス抜き効率を高めるため激しく撹拌される。したがって、スパージャーは撹拌器を含むことができる。
【0057】
水溶液から酸素を取り出すのに還元剤を使用することができる。幾つかの実施形態において、水溶液と接触させられるいかなる添加剤も不活性とする。他の実施形態において、水溶液と接触させられるいかなる添加剤も非溶解性とする。非溶解性及び/又は不活性の添加剤は、水溶液内での分散を防止するためパッケージ又は容器内に含めることができる。本明細書記載の水溶液組成分析システム及び方法からの排出液は、概して反応性添加物及び化合物が実質的にないものとすることができる。本明細書記載の水溶液組成分析システム及び方法からの排出液は、概して組成分析添加物が実質的にないものとすることができる。
【0058】
システム及び方法は、水溶液又はサンプルにおける溶解酸素の濃度を決定するステップを含むことができる。溶液又はサンプルは、酸素取出しプロセス前に溶解酸素モニタリングに供することができる。溶液又はサンプルは、酸素取出しプロセス後に溶解酸素モニタリング供することができる。水溶液又はサンプルの溶解酸素濃度は、水溶液の溶解酸素濃度を測定する任意な既知の方法によって決定することができる。特定の特定の実施形態において、溶解酸素濃度は、溶解酸素アナライザを使用して決定することができる。ある実施形態において、溶解酸素濃度は、複数の溶解酸素アナライザを使用して決定することができる。例えば、1〜5個、又は2〜5個の溶解酸素アナライザを使用して、水溶液又はサンプルの溶解酸素濃度を決定することができる。
【0059】
溶解酸素アナライザは、一般的に1つ又はそれ以上の液相溶解酸素計量器を有する。概して、溶解酸素の測定は測定セルにより実施することができる。サンプルの流れは、測定セル内を流動し、電気化学的信号形態の電気化学的プロセスにより酸素を検出する半透膜に接触する。アナライザは電気信号を溶解酸素濃度に変換することができる。アナライザは、数個の測定セルから電気信号を受け取り、各測定セルの溶解酸素濃度を分析する及び/又は報告するように構成することができる。アナライザは、測定セルより取得した各測定値から平均溶解酸素濃度を報告することができる。
【0060】
溶解酸素アナライザは、水溶液における溶解酸素のインライン測定を行うように構成することができる。溶解酸素アナライザは、およそ10ppm〜1ppbの溶解酸素含有量を測定するように較正することができる。幾つかの実施形態において、酸素取出しプロセスから上流に配置される溶解酸素アナライザは、およそ10ppm〜1ppmの溶解酸素含有量を測定するように較正することができる。酸素取出しプロセスから下流に配置される溶解酸素アナライザは、およそ100ppb〜1ppbの溶解酸素含有量を測定するように較正することができる。
【0061】
システム及び方法は、水溶液又はサンプルにおける他の溶解ガスの濃度を決定するステップを含むことができる。このような溶解ガスとしては、例えば、窒素及び二酸化炭素がある。幾つかの実施形態において、溶解酸素アナライザは、他の溶解ガス濃度を測定するように構成することができる。あるいは、追加の溶解ガスアナライザをシステムに採用及び含めることができる。
【0062】
方法は、水溶液又はサンプルの少なくとも一部分から過酸化水素を取り出すステップを含むことができる。概して、過酸化水素は、予め酸素取出しを受けた溶液又はサンプルから取り出すことができる。ある事例において、例えば、水溶液の溶解酸素濃度が所定閾値未満である場合、過酸化水素は、酸素取出しに供されていない溶液又はサンプルから取り出すことができる。概して、過酸化水素は、溶解酸素濃度に対する分析をされている溶液又はサンプルから取り出すことができる。
【0063】
過酸化水素は、過酸化水素分解プロセス又はシステムによって取り出すことができる。したがって、ある実施形態において、溶液又はサンプルから過酸化水素を取り出すステップは、溶液又はサンプルを過酸化水素分解プロセス又はシステムに導入させるステップを含む。過酸化水素分解プロセス又はシステムは、過酸化水素の少なくとも80%を取り出すように構成することができる。過酸化水素分解プロセス又はシステムは、水溶液又はサンプル内の過酸化水素の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、又は少なくとも99.999%を取り出すように構成することができる。ある実施形態において、過酸化水素の所望取出し率を得るよう1つより多い過酸化水素分解プロセス又はシステムを採用することができる。
【0064】
過酸化水素分解システム又はプロセスは、概して、触媒駆動の過酸化水素分解方法を伴うことができる。この触媒駆動の過酸化水素分解方法は、不均一系触媒又は均一系触媒との接触を伴うことができる。場合によっては、方法は、過酸化水素分解触媒を含む容器に溶液又はサンプルを導入させるステップを含むことができる。触媒駆動の過酸化水素分解方法の非限定的な例としては、例えば、イオン交換樹脂との接触、金属との接触、及び酵素との接触がある。他の例示的方法としては、粒状活性炭処理、及び亜硫酸ナトリウム処理がある。容器は、本明細書記載の1つ又はそれ以上の過酸化水素分解触媒を有することができる。
【0065】
過酸化水素分解イオン交換樹脂との接触は、概して、イオン交換樹脂を有する容器に溶液又はサンプルを導入させるステップを伴うことができる。このイオン交換樹脂としては、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、混床樹脂があり得る。イオン交換樹脂には、過酸化水素分解金属をドープすることができる。特定の実施形態において、イオン交換樹脂は、金属ドープ陰イオン交換樹脂とする又はこれを含むことができる。イオン交換樹脂は、パラジウムドープ陰イオン交換樹脂とする又はこれを含むことができる。
【0066】
過酸化水素分解金属は、基材又はイオン交換樹脂上に固定化することができる。したがって、ある実施形態において、過酸化水素分解金属との接触は、概して、基材上に固定化した過酸化水素分解金属を含む容器に溶液又はサンプルを導入させるステップを伴うことができる。過酸化水素分解金属は、貴金属族からの金属を含むことができる。過酸化水素分解金属は、パラジウム、プラチナ、チタン、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、又はロジウムとする又は含むことができる。過酸化水素分解金属は、亜鉛、金、又は銀とする又は含むことができる。過酸化水素分解金属は、水銀、レニウム、又は銅とする又は含むことができる。基材は不活性材料を有することができる。例示的な不活性材料としては、シリコン及びシリコン化合物がある。他の不活性材料を採用することができる。基材は、イオン交換樹脂、ポリマー材料、又はセラミック材料とする又は含むことができる。
【0067】
ある実施形態において、過酸化水素分解方法は、酵素を含む容器に溶液又はサンプルを導入させるステップを含むことができる。酵素は容器内で自由に流動することができる。酵素は不活性パッケージ内に収納することができる。不活性パッケージは、水溶液又はサンプルに対して透過性があるものとすることができる。他の実施形態において、酵素は基材上に固定化することができる。過酸化水素分解酵素の1つの非限定的な例はカタラーゼである。任意の過酸化水素分解酵素を採用することができる。
【0068】
方法は、さらに、上述したように、過酸化水素の取出し処理を済ませたサンプルにおける溶解酸素濃度を決定するステップを含むことができる。サンプルは、過酸化水素取出し前に溶解酸素濃度に関して分析したサンプルとすることができる。サンプル内における溶解酸素濃度決定ステップは、上述した溶解酸素アナライザにサンプルを導入させるステップを含むことができる。方法は、付加的又は代替的に、上述したように、サンプル内における他の溶解ガス濃度を決定するステップを含むことができる。
【0069】
水溶液内における過酸化水素濃度を決定するため、方法は、過酸化水素取出し前の溶液又はサンプルの溶解酸素濃度と、過酸化水素取出し後の溶液又はサンプルの溶解酸素濃度との間における関係を決定するための1つ又はそれ以上の計算を実施するステップを含むことができる。この関係は、2つのサンプルにおける溶解酸素濃度間の差とすることができる。概して、この関係は、化学量論的な差とすることができる。この関係は、以下の化学式によって定義される。すなわち、
2H
2O
2→O
2+2H
2O
【0070】
したがって、計算は、本明細書記載の分析法を実施する前に、水溶液又はサンプルにおける過酸化水素濃度を決定するため、サンプルの過酸化水素濃度の差に2.125を乗算するステップを含むことができる。算出した過酸化水素濃度は、バルク水溶液における過酸化水素濃度と実質的に等価であり得る。
【0071】
ある実施形態において、例えば過酸化水素濃度が約2ppbより高い場合に、方法は、さらに、過酸化水素の取出しのために水溶液又はサンプルの少なくとも一部分を処理するステップを含むことができる。過酸化水素は、上述した過酸化水素取出し方法のうち任意なものによって取り出すことができる。過酸化水素は、過酸化水素が約2ppb未満である処理済み溶液を生ずるよう取り出すことができる。方法は、処理済み溶液を使用ポイントに配送するステップを含むことができる。したがって、ある実施形態において、システムは、使用ポイントに流体接続可能にする又は流体接続することができる。
【0072】
使用ポイントとしては、例えば、浄水、原子力発電、マイクロエレクトロニクス製造、半導体製造、食品加工、紡織業、製紙業、及びリサイクリング、並びに製薬、化学処理、又は金属抽出システム若しくはプロセスのポイントがあり得る。特定の実施形態において、使用ポイントとしては、マイクロエレクトロニクス製造又は半導体製造のシステム又はプロセスがあり得る。ある実施形態において、システムは、後処理ユニットに流体接続可能にする又は流体接続することができる。
【0073】
ある実施形態において、水溶液及び/又は生成物溶液の1つ又はそれ以上のパラメータを考慮することができる。例えば、流量、pH、温度及び導電率のうち1つ又はそれ以上を考慮することができる。方法は、水溶液に対して、1つ又はそれ以上のパラメータの測定値が目標値の公差範囲外にあるのに応答して、本明細書記載の組成を検出する方法を課するステップを含むことができる。方法は、1つ又はそれ以上のパラメータの測定に応答して、酸素及び/又は過酸化水素の取出しのために水溶液を処理するステップを含むことができる。
【0074】
幾つかの実施形態によれば、水溶液の第1サンプルを酸素取出しに供することができる。第1サンプルの溶解酸素濃度は、酸素取出し後に測定することができる。水溶液の第2サンプルを酸素取出し及び過酸化水素分解に供することができる。第2サンプルの溶解酸素濃度は、酸素取出し及び過酸化水素分解後に測定することができる。これらサンプルの溶解酸素濃度間の差を使用して、水溶液の過酸化水素濃度を計算することができる。したがって、過酸化水素濃度は、水溶液の1つより多いサンプルの分析により決定することができる。このような方法は、既存システムを改造するときに使用することができる。この例示的方法は、単独の溶解酸素アナライザで実施することができる。
【0075】
水溶液の組成を決定するためのシステムを本明細書で開示する。
図1Aに示すように、例示的なシステム10は、水溶液100の源に流体接続可能な送給ライン102を備えることができる。水溶液100の源は、過酸化水素濃度及び溶解酸素濃度を含むことができる。システム10は、送給ライン102に流体接続した入口を有する酸素取出しユニット200を備える。このシステムは、バルブ420を介して酸素取出しユニット200に流体接続した入口を有する溶解酸素アナライザ500を備えることができる。システム10は、酸素取出しユニット200に流体接続した入口を有する過酸化水素取出しユニット400を備えることができる。過酸化水素取出しユニット400は、バルブ422を介して溶解酸素アナライザ500に流体接続することができる。
【0076】
図1Bに示すように、システム10は、酸素取出しユニット200に流体接続した入口を有する第2溶解酸素アナライザ300を備えることができる。過酸化水素取出しユニット400は、第2溶解酸素アナライザ300に流体接続した入口を有することができる。このように、システムは、1つ又はそれ以上の溶解酸素アナライザを備えることができる。単一の溶解酸素アナライザは、過酸化水素分解のための処理済みサンプルと未処理サンプルとの間における溶解酸素濃度の比較に正確な結果を生ずることができる。しかし、複数の溶解酸素アナライザは、正確な結果のための較正をすることができる。複数溶解酸素アナライザの規則正しい定期的な較正を実施することができる。
【0077】
第1溶解酸素アナライザ500及び第2溶解酸素アナライザ300各々は、それぞれディスプレイユニット502、302(
図1A及び1Bに示す)を有することができる。ディスプレイユニット502、302は、溶液又はサンプルにおける溶解酸素濃度を表示するように構成することができる。
【0078】
図3に示すように、システムは、溶解酸素アナライザ300及び溶解酸素アナライザ500に電気的に接続した制御モジュール600を備えることができる。制御モジュール600は、過酸化水素分解前に測定された溶解酸素濃度と、過酸化水素分解後に測定された溶解酸素濃度との間の差を計算するように構成することができる。1つより多い溶解酸素アナライザ(
図3に示すような)を含むシステムにおいては、制御モジュール600は、第1溶解酸素アナライザ500によって測定された濃度と、第2溶解酸素アナライザ300によって測定された濃度との間の差を計算することができる。この差は、上述したように、水溶液100における過酸化水素の濃度を決定するのに使用することができる。
【0079】
制御モジュール600は、約20ppb以下の過酸化水素の濃度を決定することができる。例えば、制御モジュール600は、約10ppb以下、約8ppb以下、約6ppb以下、約5ppb以下、約4ppb以下、約2ppb以下、又は約1ppb以下の過酸化水素の濃度を決定することができる。
【0080】
制御モジュール600は、当業者に既知の任意な電子デバイス又は計算デバイスとする又は有することができる。制御モジュールは、入力デバイス、例えばタッチパッド、タッチスクリーン、キーパッド、マイクロフォン、及び/又はマウスを含むことができる。制御モジュールは、出力デバイス、例えば、画面、光(例えば、LED光)及び/又はスピーカーを含むことができる。制御モジュールは、有線又は無線接続を介して1つ又はそれ以上のコンポーネントに電気的に又は動作可能なように接続することができる。制御モジュール及び各コンポーネントは、インターネット接続を介して、例えば、Wi‐Fi又はブルートゥース(登録商標)接続を介して電気的に又は動作可能なように接続することができる。随意的に、この接続は、サーバーに対して、又はコンポーネント間で直接的に行うことができる。制御モジュールは、電源に対して電気的に接続することができる。
【0081】
制御モジュール600は、溶解酸素及び/又は過酸化水素の測定及び/又は計算した濃度を表示するように構成されたディスプレイユニット602を有することができる。
【0082】
制御モジュール600は、1つ又はそれ以上のメモリ記憶ユニット604に接続することができる。例えば、制御モジュール600は、一般的にはメモリ記憶ユニット604に接続した1つ又はそれ以上のプロセッサを含むことができ、メモリ記憶ユニット604は、例えば、ディスクドライブメモリ、フラッシュメモリデバイス、RAMメモリデバイス、又はデータを記憶する他のデバイスのうち任意な1つ又はそれ以上を有することができる。メモリ記憶ユニット604は、システム10及び/又は制御モジュール600の動作中にプログラム及びデータを記憶するのに使用することができる。例えば、メモリ記憶ユニット604は、或る時間的期間にわたりパラメータに関する履歴データ、並びに動作データを記憶するのに使用できる。実施形態を実装するプログラミング・コードを含むソフトウェアは、コンピュータ可読の及び/又は書込み可能な不揮発性の記録媒体に記憶することができ、またこの後、一般的にメモリデバイス604に複製することができ、次に制御モジュール600の1つ又はそれ以上のプロセッサによって実行することができる。このようなプログラミング・コードは、複数のプログラミング言語のうち任意なもの、例えば、Java、ビジュアル・ベーシック、C、C#若しくはC++、フォートラン、パスカル、エッフェル、ベーシック、COBAL、又はこれらの多種の組合せのうち任意なもので記述することができる。
【0083】
ある実施形態において、水溶液100の源及び酸素取出しユニット200のうち少なくとも一方は、水処理サブシステム700(
図3では水溶液100の源に流体接続可能であるように示す)と流体接続可能とされ得る。制御モジュール600は、水溶液100及び酸素取出しユニット200の排出液のうち少なくとも一方を、過酸化水素濃度が約10ppbより高いと決定されるのに応答して水処理サブシステム700に配送するように構成することができる。幾つかの実施形態において、制御モジュール600は、水溶液100及び酸素取出しユニット200の排出液のうち少なくとも一方を、過酸化水素濃度が約5ppbより高い又は約2ppbより高いと決定されるのに応答して水処理サブシステム700に配送するように構成することができる。制御モジュール600は、水溶液100及び酸素取出しユニット200の排出液をバルブ702の作動により送給することができる。追加のまたは代替的なバルブを送給ライン102及び/又は排出液ライン206に配置することができる。
【0084】
ある実施形態において、水溶液100の源及び酸素取出しユニット200のうち少なくとも一方は、使用ポイント110に流体接続することができる(
図3では水溶液100の源に流体接続可能であるように示す)。制御モジュール600は、水溶液100及び酸素取出しユニット200の排出液のうち少なくとも一方を、過酸化水素濃度が約10ppb以下であると決定されるのに応答して使用ポイント110に配送するように構成することができる。ある実施形態において、制御モジュール600は、水溶液100及び酸素取出しユニット200の排出液のうち少なくとも一方を、過酸化水素濃度が約5ppb以下又は約2ppb以下であると決定されるのに応答して使用ポイント110に配送するように構成することができる。制御モジュール600は、水溶液100を送給ライン102に示されるバルブ202の作動によって送給することができる。制御モジュール600は、酸素取出しユニット200の排出液を排出液ライン206に示されるバルブ204の作動により送給することができる。
【0085】
ある実施形態において、水処理サブシステム700を使用ポイント110に流体接続可能とすることができる。特定の実施形態において、使用ポイント110は半導体製造サブシステムとすることができる。
【0086】
ある実施形態において、送給ライン102は、
図3に排出液ライン506として示した、酸素取出しユニット200の下流で第2溶解酸素アナライザ500に流体接続した入口を有することができる。制御モジュール600は、溶解酸素アナライザ500の排出液を送給ライン102に、及び下流における使用ポイント110に配送するバルブ505を作動させるように構成することができる。幾つかの実施形態において、制御モジュール600は、溶解酸素アナライザ500の排出液を、過酸化水素濃度が約10ppb以下であると決定されるのに応答して送給ライン102に配送するように構成することができる。ある実施形態において、制御モジュール600は、溶解酸素アナライザ500の排出液を、過酸化水素濃度が約5ppb以下又は約2ppb以下であると決定されるのに応答して送給ライン102に配送するように構成することができる。他の実施形態において、制御モジュール600は、溶解酸素アナライザ500の排出液を排出口に配送するように構成することができる。
【0087】
システムは、酸素取出しユニット200の上流に配置した溶解酸素アナライザ104を備えることができる。溶解酸素アナライザ104は、酸素取出しユニット200の前に水溶液100の源における溶解酸素の濃度を決定するように構成することができる。溶解酸素アナライザ104は、制御モジュール600に関連するものとすることができる又は制御モジュール600から独立するものとすることができるフローコントローラ(
図3において、フローコントローラは制御モジュール600として示す)に電気的に接続することができる。フローコントローラは、水溶液又はサンプルにおける溶解酸素濃度が閾値濃度よりも高いことを測定する溶解酸素アナライザ104に応答してユーザーに通知するようプログラミングすることができる。フローコントローラは、水溶液又はサンプルにおける溶解酸素濃度が閾値濃度よりも高いことを測定する溶解酸素アナライザ104に応答して、水溶液又は水溶液のサンプルを酸素取出しユニット200に導入させるようプログラミングすることができる。フローコントローラは、酸素取出しユニット200の上流で送給ライン102に配置したバルブ202を介する、水溶液又はサンプルの酸素取出しユニット200への配送を作動するように構成することができる。
【0088】
ある実施形態においては、溶解酸素の閾値は約500ppbとすることができる。溶解酸素の閾値は約1ppmとすることができる。溶解酸素の閾値は、約2ppm、約3ppm、約4ppm、約5ppm、約6ppm、約7ppm、約8ppm、約9ppm、又は約10ppmとすることができる。したがって、フローコントローラは、水溶液における過酸化水素濃度を決定するための処理及び測定を開始するようユーザーに通知する及び/又はバルブ202を作動させるように構成することができる。過酸化水素の計算した濃度に応答して、制御モジュール600は、使用ポイント110に配送する前に水溶液処理を開始するようバルブ204を作動させることができる。
【0089】
図2は、水溶液における過酸化水素濃度を決定するための例示的システム20の概略図である。システム20は、既存の水溶液システムを改造するために提供することができる。特に、水溶液のサンプルはシステム20に導入して分析することができる。システム20はガス転移膜310を備え、このガス転移膜310は冷水供給源322から供給を受ける真空ポンプ320によって真空脱ガス膜装置として動作する。不活性ガス源312をガス転移膜310に流体接続する。システム20は、さらに、バルブ420及び422によって並列ラインで動作する触媒過酸化水素分解カラム410を備える。システム20は、過酸化水素分解カラム410の下流に配置したバルブ424を備える。バルブ424は、バルブ422が閉じているとき、水溶液を廃液装置に導入させるように構成することができる。バルブ424は、過酸化水素分解カラム410における溶液の連続フローを確実にするために設けることができる。過酸化水素分解カラム410における連続フローは、例えば、カラムの再較正をする必要性を回避することによって、測定を迅速にすることができる。システム20は、さらに、溶解酸素アナライザ510を備える。
【0090】
ある実施形態において、例えば、
図2のシステムに示すように、単一溶解酸素アナライザ510を使用して水溶液における過酸化水素濃度を決定することができる。過酸化水素分解触媒410は、溶液の並列アーム又はサンプルラインに配置することができる。システム20は、水を過酸化水素分解触媒410に導入させる、又は溶解酸素アナライザ510に直接導入させるため、1つ又はそれ以上のバルブ420,422を備えることができる。第1動作モードにおいて、システムは、溶液又はサンプルが過酸化水素分解触媒410をバイパスさせて、溶解酸素アナライザ510に(バルブ420を開き、またバルブ422を閉じて)導入させるように構成することができる。第2動作モードにおいて、システムは、溶液又はサンプルが溶解酸素アナライザ510の上流の過酸化水素分解触媒410に導入させるよう(バルブ420を閉じ、またバルブ422を開いて)構成することができる。第2動作モード及び第1動作モードにおいて測定した溶解酸素濃度間の差を使用して、過酸化水素濃度を計算することができる。
【0091】
水溶液における過酸化水素濃度測定を容易にする方法も本明細書に開示する。この方法は、上述したように、水溶液組成を決定するためのシステムを提供するステップを含むことができる。この方法は、例えば、既存の水溶液システムの改造を容易にするため、本明細書記載のシステムにおける任意の1つ又はそれ以上のコンポーネントを提供するステップを含むことができる。提供することができる1つの例示的コンポーネントは、制御モジュールである。幾つかの実施形態において、既存制御モジュールをプログラミングするためのプログラミング制御スキームを提供することができる。他の実施形態において、既存制御モジュールとは独立的に動作するフローコントローラを提供することができる。既存システムを改造するために1つ又はそれ以上のセンサ、ポンプ、及びバルブ提供することができる。システムに設けることができる例示的なセンサとしては、流量計、pH計、温度計、及び導電率計がある。制御モジュールは、センサが取得した1つ又はそれ以上の測定値を考慮し、1つ又はそれ以上の取得した測定値に応答してシステムに命令するようプログラム又は構成することができる。この方法は、上述したように設けた1つ又はそれ以上のコンポーネントをインストール及び/又は相互接続するための命令を提供するステップを含むことができる。
【0092】
本明細書記載の方法は、付加的に、水溶液の組成を決定するための命令を提供するステップを含むことができる。この方法は、本明細書記載の任意なステップを実施するようユーザーに命令するステップを含むことができる。例えば、水溶液サンプルを得るようユーザーに命令するステップを含むことができる。この方法は、水溶液又はサンプルから酸素を取り出すようユーザーに命令するステップを含むことができる。この方法は、水溶液又はサンプルの溶解酸素濃度を決定するようユーザーに命令するステップを含むことができる。この方法は、水溶液又はサンプルにおける過酸化水素を分解するようユーザーに命令するステップを含むことができる。この方法は、過酸化水素の分解後に、水溶液又はサンプルの溶解酸素濃度を決定するようユーザーに命令するステップを含むことができる。過酸化水素の分前後における溶解酸素濃度の差を決定することによって、過酸化水素濃度を計算するようユーザーに命令するステップを含むことができる。この方法は、適宜、過酸化水素が10ppbより多い又は2ppbより多い計算に応答して、水溶液を処理するようユーザーに命令するステップを追加で含むことができる。
【実施例】
【0093】
これら及び他の実施形態の機能及び利点は以下の実施例からよりよく理解できるであろう。これら実施例は、本来的に説明を意図し、発明の範囲を限定することは考慮していない。
【0094】
予想的実施例1
真空脱ガス膜装置を使用して、サンプルに対して触媒過酸化水素分解を課する前にバックグラウンド溶解酸素の取出しのために生水溶液のサンプルを処理することができる。酸素取出し前に9ppm(9000ppb)の溶解酸素濃度を有するサンプルは、脱ガス化後に約2ppbの溶解酸素濃度を有することが予想される。約2ppbの過酸化水素濃度を有するサンプルは、過酸化水素分解後に約0.94ppbの溶解酸素濃度を有することが予想される。2つの測定値間の差は47%であり、これは従来の溶解酸素アナライザの精度又は分離能の範囲内である。
【0095】
O
2濃度測定後に、初期H
2O
2濃度を化学量論によって計算することができる。過酸化水素濃度の計算は、以下の化学式で行うことができる:
2H
2O
2→O
2+2H
2O
【0096】
簡単に説明すると、1モルのO
2が2モルのH
2O
2の完全分解によって形成される。O
2の分子量(32g/mol)及びH
2O
2の分子量(34g/mol)を使用して、過酸化水素濃度は以下の式によって計算することができる:
H
2O
2(g/L)=O
2(g/L)× 2.125
【0097】
予想的実施例2
過酸化水素濃度計算のためのシステムを
図2に示すようにセットアップすることができる。簡単に説明すると、水溶液サンプルは、真空脱ガス膜装置310からバルブ420を経て(バルブ422は閉)溶解酸素アナライザ510に流入することができる。溶解酸素アナライザ510は、溶解酸素濃度DO
1を測定及び記録することができる。第2水溶液サンプルは、真空脱ガス膜装置310、触媒過酸化水素カラム410からバルブ422を経て(バルブ420は閉)溶解酸素アナライザ510に流入することができる。溶解酸素アナライザ510は、溶解酸素濃度DO
2を測定及び記録することができる。
【0098】
DO
2及びDO
1の差を決定することができる。過酸化水素濃度を計算するため、この差に、以下の式に従って2.125を乗算する:
(DO
2−DO
1)× 2.125=H
2O
2
【0099】
実施例1
超純水を
図2に示すようなシステムにより分析した。このシステムは、不活性掃引ガスとして使用したN
2、及び68.58cmHg(27インチHg)の真空ポンプと直列に配列した3つのLiqui-Cel
TMMiniModule
TMの脱ガス膜装置(ミネソタ州メープルウッドの3M
TM社)を備える。またこのシステムは、27mmのポリビニリデン・ジフルオライド製カラム内に配置された、強塩基性、ゲルタイプのパラジウムドープイオン交換樹脂(Lewatit(登録商標)、オランダ国デルフガウのレンテック社製)450mLを備える。またこのシステムは、AMI Oxytrace溶解酸素アナライザ(米国イリノイ州ホイーリングのスワン・アナリティカル・USA社製)を備える。水の温度は24.5±0.2℃であった。システムは、200mL/分の流量で稼働させた。
【0100】
検査ランは酸素取出し及び過酸化水素分解とともに行った。溶解酸素は種々のプロセス流で測定した。比較ランは酸素取出しなしで同一方法により実施した。過酸化水素濃度は、予想的実施例2に示す式によって計算した。結果を以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示された結果から分かるように、過酸化水素濃度は、バックグラウンド酸素取出しなしでは検出不能であった。しかし、バックグラウンド酸素取出しにより、同様のサンプル流に対して19.7μg/Lの過酸化水素濃度を計算することができた。このように、検査ランにおいて、過酸化水素濃度は溶解酸素濃度によってマスクされていた。本開示の方法を使用して、溶解酸素バックグラウンドを有する水溶液の過酸化水素濃度を計算することができる。
【0103】
実施例2
超純水を実施例1に記載したシステムで分析した。検査した水溶液サンプルは高濃度溶解酸素を有していた。ここで、溶解酸素アナライザの上限値は20mg/Lである。そのため、水サンプルは、溶解酸素濃度が既知であり一定である水と合致するように希釈して、濃度が溶解酸素アナライザの公差範囲内となるようにした。以下の表2で報告された溶解酸素濃度は質量平衡計算によって得た。
【0104】
【表2】
【0105】
表2で示された結果から分かるように、過酸化水素濃度はバックグラウンド酸素の取出しなしでは計算できなかった。しかし、バックグラウンド酸素取出しにより、同様のサンプル流に対して40.65μg/Lの過酸化水素濃度を計算することができた。したがって、溶解酸素濃度は、過酸化水素濃度が計算できない程に、検査ランにおいて結果を歪めるものであった。本開示の方法を使用して、溶解酸素バックグラウンドが高い水溶液の過酸化水素濃度を計算することができる。
【0106】
本明細書で使用した言葉遣い及び用語は説明目的であり、限定するものと解すべきではない。本明細書で使用した用語「複数(plurality)」は2つ又はそれ以上の事項又はコンポーネントを意味する。用語「備える、含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持している(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、及び「伴う(involving)」は、記載された明細書又は特許請求の範囲等々のいずれにおいても、限定のないものである、すなわち「〜を含むがそれに制限するものではない(including but not limited to)」を意味する。したがって、これらの用語の使用は、その後に提示される事項、及びその均等物、並びに付加的事項を包含することを意味する。移行句である「からなる(consisting of)」「から実質的になる(consisting essentially of)」のみが、特許請求の範囲に関してそれぞれ閉鎖型又は半閉鎖型の語句である。請求項要素を修飾する特許請求の範囲での「第1(first)」、「第2(second)」、「第3(third)」等々のような序数的用語は、それ自体或る1つの請求項要素の他の要素に対する優先度、先行性若しくは順序を、又は方法の行為を実施する一時的順序を何ら含意するものではなく、請求項要素を区別するため、所定の名前がある或る1つの請求項要素を同一の名前がある(しかし、序数的用語を用いる)他の要素から区別する標識としてのみ使用される。
【0107】
少なくとも1つの実施形態の態様を幾つか説明してきたが、当然のことながら、種々の改変、変更及び改善は当業者には容易に想起されるであろう。任意な実施形態で説明されたいかなる特徴も任意な他の実施形態におけるいかなる特徴に対して含める又は置換することができる。このような改変、変更及び改善は本開示の一部であり、かつ本発明の範囲内であることを意図する。したがって、上述した説明及び図面は単なる例としてのものである。
【0108】
当業者には、本明細書記載のパラメータ及び構成は例示的なものであり、また実際のパラメータ及び/又は構成は開示された方法及び材料が使用される特定用途に基づくものであることを理解できるであろう。当業者であれば、さらに、単なる通常実験を用いて開示された特定実施形態に等価のものを認識又は確認できるであろう。
【国際調査報告】