特表2022-500031(P2022-500031A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2022-500031ファット・スプレッド製品、当該製品を調製するためのプロセス、および食卓用スプレッドとしての当該製品の使用またはパンにおける当該製品の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-500031(P2022-500031A)
(43)【公表日】2022年1月4日
(54)【発明の名称】ファット・スプレッド製品、当該製品を調製するためのプロセス、および食卓用スプレッドとしての当該製品の使用またはパンにおける当該製品の使用
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20211203BHJP
【FI】
   A23D7/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2021-513312(P2021-513312)
(86)(22)【出願日】2019年9月13日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月9日
(86)【国際出願番号】EP2019074466
(87)【国際公開番号】WO2020053378
(87)【国際公開日】20200319
(31)【優先権主張番号】18194402.6
(32)【優先日】2018年9月14日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520274909
【氏名又は名称】ブンジ ヌヴィーニョライパリ ザーコルエン ムクド リースウィンターシャシャーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピイスパ エイヤ
(72)【発明者】
【氏名】ホーンヤク ラスロ
(72)【発明者】
【氏名】コザキヴィッチ エルビエタ
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC03
4B026DC05
4B026DG04
4B026DG08
4B026DH01
4B026DH02
4B026DH10
4B026DL01
4B026DL02
4B026DX05
(57)【要約】
少なくとも5重量%の水と、10〜95重量%の脂肪組成物とを備えるファット・スプレッド製品であって、脂肪組成物は、HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む、10〜100重量%の分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物と、85重量%以下の1つの液状油と、5重量%以下の少なくとも1つの脂溶性添加物とを含む、ファット・スプレッド製品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5重量%の水と、
10〜95重量%の脂肪組成物と、
を備えるファット・スプレッド製品であって、前記脂肪組成物は、
HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む、10〜100重量%の分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物と、
85重量%以下の1つの液状油と、
5重量%以下の少なくとも1つの脂溶性添加物と、
を含む、
ファット・スプレッド製品。
【請求項2】
請求項1に記載のファット・スプレッド製品であって、
15〜95重量%、より好ましくは25〜90重量%、さらにより好ましくは35〜85重量%の脂肪組成物を含む、
ファット・スプレッド製品。
【請求項3】
請求項1または2に記載のファット・スプレッド製品であって、
5〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、さらにより好ましくは20〜70重量%の水を含む、
ファット・スプレッド製品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品であって、
前記脂肪組成物中のHSHOヒマワリ油は、14〜27重量%のステアリン酸(C18:0)、より好ましくは16〜25重量%のステアリン酸(C18:0)を含有する、
ファット・スプレッド製品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品であって、
HSHOヒマワリ油は、20〜35重量%の飽和脂肪酸、より好ましくは22〜33重量%の飽和脂肪酸を含有する、
ファット・スプレッド製品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品であって、
前記脂肪組成物は、10〜100重量%の分子内エステル交換HSHOヒマワリ油を含む、
ファット・スプレッド製品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品であって、
前記脂肪組成物は、
20〜100重量%の分子内エステル交換HSHOヒマワリ油と、
80重量%以下の少なくとも1つの液状油と、
3重量%以下の少なくとも1つの脂溶性添加物と、
を含む、
ファット・スプレッド製品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品であって、
液状油は、ナタネ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、HSHOヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、コーン油、サフラワー油、ゴマ油、落下生油およびカメリナ油から選択される、
ファット・スプレッド製品。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品であって、
脂溶性添加物は、乳化剤、ビタミン、保存料、酸化防止剤および脂溶性香味料から選択される、
ファット・スプレッド製品。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品であって、
前記脂肪組成物は、
10℃で2〜10%、好ましくは4〜6%の脂肪固形分と、
20℃で1〜4%、好ましくは2〜3%の脂肪固形分と、
を有する、
ファット・スプレッド製品。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品であって、
前記脂肪組成物は、
前記脂肪組成物に存在する総トリグリセリドに対して少なくとも0.2重量%、より好ましくは少なくとも0.4重量%のStStStと、
前記脂肪組成物に存在する総トリグリセリドに対して32重量%以下、より好ましくは30重量%以下のStOOと、
を含む、
ファット・スプレッド製品。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品の食卓用スプレッドとしての使用またはパン用途のための使用であって、
前記パン用途は、ペイストリー、ケーキ、ドーナッツまたはクッキーにおける使用である、
使用。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のファット・スプレッド製品に含有される前記脂肪組成物を調製するためのプロセスであって、
HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物と、
1つの液状油または液状油混合物と、
少なくとも1つの脂溶性添加物と、
を配合する工程を包含する、
プロセス。
【請求項14】
請求項13に記載の脂肪組成物を調製するためのプロセスであって、
前記配合工程は、
HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む脂肪または脂肪配合物を提供する工程と、
分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物を生成するための前記脂肪または脂肪配合物の酵素的分子間エステル交換を行う工程と、
によって行われる、
プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファット・スプレッド(fat spread)製品、その使用、および当該ファット・スプレッド製品の調製に適した脂肪組成物を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
マーガリンおよび食卓用スプレッドなどのファット・スプレッドは、100年以上も前から利用されてきた。ファット・スプレッドは、油中水滴型(または、脂肪中水滴型)乳化物からなり、水分の小さな液滴が脂肪相全体に均一に分散している。脂肪相は、部分的に結晶形態であるか、または、保存状態において乳化物構造が安定に維持されるような構造にされる。
【0003】
乳化は、脂肪配合物(blend)および乳化剤が液状である温度で行われる。水相を液状脂肪相に加えて、脂肪連続(continuous)乳化物を得る。得られた最終の生成物は、脂肪連続スプレッドである。次いで、得られた乳化物混合物は、晶析され、所望の食感(texture)となるように処理される。晶析状態は、主に脂肪相組成に依存する。
【0004】
いくつかの代替のプロセスにおいて、脂肪連続スプレッドは、相変換プロセスを使用して生成される。相変換プロセスにおいて、乳化物は、最初に水連続であり、次いで、プロセス中に脂肪連続乳化物および最終のマーガリンに変換される。
【0005】
水相は、一般に、水、ミルク、ミルクタンパク質、サワーミルクもしくは他のミルク調製物またはミルクタンパク質、またはそれらの混合物からなり、それらに対して、塩、保存料、水溶性香味料またはpH調製剤などの水溶性成分がさらに添加される。
【0006】
脂肪相(脂肪配合物とも称す)、一般に、液状または半液状油または脂肪と、一般に「ハードストック」を称される構造形成脂肪とを含む。それらに対して、乳化剤、ビタミンおよび/または脂溶性香味料などの脂溶性添加物がさらに添加される。
【0007】
しかし、ファット・スプレッドに水添脂肪およびパーム脂肪を使用することに対する懸念が大きくなってきている。パーム油の使用が心臓病や心血管疾患に関連するとの研究が多くなされており、食事に含まれる過剰な飽和脂肪および/またはトランス脂肪が心血管イベントの大きなリスク因子であることを示唆している。
【0008】
新規のファット・スプレッド組成物を開発する場合、その栄養価に注意を払う必要がある。市場におけるファット・スプレッド組成物の多くは、不飽和脂肪酸(オレイン酸など)の含有量が高いので栄養価が高いが、ステアリン酸含有量は、相対的に高くない。
【0009】
オレイン酸の含有量が高いにもかかわらず、ステアリン酸含有量も増大された油をファット・スプレッド組成物において使用することが報告されている。高ステアリン酸・高オレイン酸(一般に「HSHO」と称される)ヒマワリ油は、そのような油の一例である。そのような油は、伝統的な交配技術によって得られるので、「天然」とされる。HSHOヒマワリ油は、異なる種類のステアリンおよびオレイン画分(fraction)を得るようにさらに分別(fraction)され得る。画分は、パン、菓子、フライまたはアイスクリームなどの様々な食品用途に使用され得る。
【0010】
特許文献1は、総脂肪酸含有量に対して、オレイン酸含有量が40重量%よりも大きく、ステアリン酸含有量が12重量%よりも大きな油を含む植物種子であって、油を構成するTAG分子のsn−2位における脂肪酸基の最大10重量%が飽和脂肪酸基である、植物種子に関する。
【0011】
特許文献2は、野生型種子と比較してステアリン酸含有量が増大されたヒマワリ油を含むヒマワリ種子であって、ステアリン酸生合成に関与する遺伝形質において1つ以上の突然変異を誘導して、ステアリン酸の生成を増大させるのに十分な期間と濃度で親種子を変異原性剤で処理し、処理した種子を発芽させ、その種子からの後代植物を栽培し、後代種子を採取および分析し、所望の遺伝形質を獲得した種子を選択し、必要に応じて種子を発芽、栽培および採取するサイクルを繰り返すことによって得られ得る、ヒマワリ種子を記載する。
【0012】
特許文献3は、高ステアリン酸・高オレイン酸ヒマワリ油のステアリン画分を含むトリグリセリド脂肪、および当該ステアリンと液状植物油を20:80〜80:20の重量比で混合したものを含むマーガリン脂肪相に関する。
【0013】
特許文献4は、脂肪または油における1種以上のトリグリセリドを変更するための方法であって、高ステアリン酸・高オレイン酸ヒマワリ油、高ステアリン酸・高オレイン酸大豆油、高ステアリン酸・高オレイン酸ナタネ油、および高ステアリン酸・高オレイン酸綿実油からなる群から選択される1つの油または脂肪に対して、分子内エステル交換(intraesterification)プロセスを行う方法を教示する。分子内エステル交換プロセスにおいて、当該油または脂肪のトリグリセリドの脂肪酸は、トリグリセリド間でランダムに再分配され、脂肪固形分(SFC)プロフィールが変更された油または脂肪を得る。ここで、SUS型、SSU型およびSSS型トリグリセリドの量が増大される。
【0014】
特許文献5は、HUUトリグリセリドおよび少なくとも18重量%のHOHおよびHLHトリグリセリドを、30/70〜85/15の範囲のHOH:HLH比で、含むトリグリセリド脂肪であって、当該脂肪は、少なくとも20重量%のHUUおよび8〜30重量%のSOOトリグリセリドを含むことを特徴とし、ここで、Oは、オレイン酸の残基を表し、Sは、ステアリン酸を表し、Lは、リノール酸を表し、Uは、オレイン酸またはリノール酸を表し、Hは、炭素数が15より大きい飽和脂肪酸の残基を表し、ただし、HOH、HLHおよびHUUにおける飽和脂肪酸の少なくとも50重量%は、ステアリン酸である、トリグリセリド脂肪を記載する。
【0015】
特許文献6は、高ステアリン酸・高オレイン酸ヒマワリ油と、硬(hard)脂肪と、必要に応じてセルロースファイバとを含むショートニング組成物であって、硬脂肪がパーム脂肪以外である、ショートニング組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開WO00/74470
【特許文献2】国際公開WO95/20313
【特許文献3】欧州特許出願公開第1290119号
【特許文献4】欧州特許出願公開第2880142号
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0161934号
【特許文献6】米国特許出願公開第2017/0049121号
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】示差走査熱量分析によって得られる晶析サーモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
許容可能な構造、食感、外観および感覚受容性を数か月の保存期間にわたって維持可能でありながらも、飽和脂肪酸レベル(SAFA)を低減した、より健康的なファット・スプレッドが要求され続けている。
【0019】
また、ファット・スプレッドのプロセスおよび取り扱いを容易にするために、晶析挙動を向上させた、より健康なファット・スプレッド、特に短時間で晶析し、晶析開始温度が高いファット・スプレッドの要求も残っている。
【0020】
本発明によると、
少なくとも5重量%の水と、
10〜95重量%の脂肪組成物と、
を含むファット・スプレッド製品であって、当該脂肪組成物は、
HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む、10〜100重量%の分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物と、
85重量%以下の1つの液状油または液状油混合物と、
5重量%以下の少なくとも1つの脂溶性添加物と、
を含む、
ファット・スプレッド製品が提供される。
【0021】
本発明のファット・スプレッドは、特に健康によく、食卓用スプレッドとして、またはパン用途において驚くほど有用であることが分かった。本発明に係るファット・スプレッドは、パルミチン酸および飽和酸レベルが特に低いだけでなく、物性および感覚受容性が驚くほど好ましい。特に、本発明に係るファット・スプレッドは、貯蔵寿命性能および晶析性が良好である。
【0022】
本発明のコンテクストにおいて、
用語「ファット・スプレッド」は、固体であり、展延性(malleable)の乳化物の形態であって、主に油中水滴型であり、人間が食するのに適した固体および/または液状の植物および/または動物脂肪由来であり、3%以下の脂肪含有量であるミルク脂肪含有量を有する、任意の製品を指す。好ましくは、「ファット・スプレッド」は、マーガリン、スリークォーター・ファット・マーガリン、ハーフ・ファット・マーガリン、食卓用スプレッド、またはEC規則1234/2007の付則XVの補遺に記載のファット・スプレッドX%を指す。
【0023】
用語「脂肪」および「ファット」は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド脂肪および油を指すが、いかなる特定の融点も含意しない。用語「油」は、「脂肪」および「ファット」と同義である。
【0024】
用語「分子内エステル交換脂肪」は、トリグリセリド分子内の脂肪酸の位置が化学または酵素プロセスによって変化し、トリアシルグリセロールの化学的、物理的および/または栄養的性質が変更された脂肪を指す。分子内エステル交換は、1つの脂肪に対して行われる。
【0025】
用語「分子間エステル交換脂肪配合物」は、トリグリセリド分子内の脂肪酸の位置が化学または酵素プロセスによって変化し、トリアシルグリセロールの化学的、物理的および/または栄養的性質が変更された脂肪配合物を指す。分子間エステル交換は、異なる脂肪または脂肪の異なる画分の混合物に対して行われる。
【0026】
用語「液状油」は、室温で液状である任意の1つの食用油を指す。
【0027】
用語「脂溶性添加物」は、脂肪配合物に添加され、最終のファット・スプレッドにおいて機能、呈味または栄養効果を有する二次的な脂溶性成分を指す。脂溶性添加物の例としては、乳化剤、ビタミン、脂溶性香味料などがある。
【0028】
本明細書において、用語「脂肪酸」は、炭素数8〜24の直鎖飽和または不飽和(モノおよびポリ不飽和を含む)カルボン酸を指す。炭素数がnであり、x個の二重結合を有する脂肪酸をCx:yと表すこともある。例えば、パルミチン酸は、C16:0と表すことがあり、オレイン酸は、C18:1と表すことがある。本明細書に記載の、組成物における脂肪酸の割合は、グリセリドのうちのトリ、ジおよびモノグリセリド内のアシル基を含み、C8〜C24の脂肪酸の全量に基づく。脂肪酸プロフィール(すなわち、組成)は、例えば、ISO12966−2およびISO12966−4に準拠した、ガスクロマトグラフィーを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定され得る。
【0029】
用語「飽和脂肪酸」(SAFA)および「飽和脂肪」はともに、炭素数が8〜24であり、脂肪酸鎖の個々の炭素原子間に二重結合を有さない(すなわち、炭素原子鎖が水素原子で完全に「飽和」されている)飽和酸を指す。
【0030】
用語「HSHOヒマワリ油由来の画分」は、当該分野で周知の技術である乾式または湿式分別(fractionation)の1つ以上の工程によってHSHOヒマワリ油から得られる油または脂肪を指す。
【0031】
用語「TAG」は、グリセリン骨格を有し、3個の脂肪酸がその骨格にエステル化されているトリアシルグリセリン分子を指す。TAGは、グリセリン分子の異なる3つの位置において当該分子上にエステル化された脂肪酸を表す3つの文字によって命名されている。当該脂肪酸は、飽和([S」)または不飽和(「U])である。
【0032】
「S」は、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸およびベヘン酸などの飽和脂肪酸を表す。
【0033】
「U」は、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸などの不飽和脂肪酸を表す。
【0034】
「SSS」は、詳細なTAG種結果から計算されるトリ飽和TAGを表す。
【0035】
「UUU」は、詳細なTAG種結果から計算されるトリ不飽和TAGを表す。
【0036】
「SUU」は、詳細なTAG種結果から計算されるジ不飽和TAGを表す。
【0037】
「SUS」は、詳細なTAG種結果から計算されるジ飽和TAGを表す。
【0038】
本明細書に記載のトリグリセリドの量は、脂肪組成物において存在する総トリグリセリドに基づく重量%で表される。トリグリセリドXYZという記法は、グリセリドの1位、2位および3位のいずれかに脂肪酸アシル基X、YおよびZを有するトリグリセリドを表す。A2Bという記法は、AABおよびABAの両方を含む。AB2は、ABBおよびBABの両方を含む。トリグリセリド含有量は、例えば、GCによって決定され得る。トリグリセリドを指す場合、「P」、「St」、「O」、「L」、「Ln」、「A」および「B」は、それぞれパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸およびベヘン酸を表す。各GCピークは、同じ脂肪酸を異なる位置に有するトリグリセリドを含む。例えば、POStは、PStOと同じシグナルピーク内にある。
【0039】
「SFC」は、非安定化脂肪に対するISO8292−1:2008に記載の方法に準拠して、NMR(核磁気共鳴)によって固体状態の脂肪の質量分率として測定された脂肪固形分を指す。
【0040】
用語「X%以下」は、0〜X%の範囲を指す。
【0041】
特に断らない限り、すべての%値は、重量%である。
【0042】
本発明は、少なくとも5重量%の水と、10〜95重量%の脂肪組成物とを含むファット・スプレッド製品であって、当該脂肪組成物は、HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む、10〜100重量%の分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物と、85重量%以下の1つの液状油または液状油混合物と、5重量%以下の少なくとも1つの脂溶性添加物とを含む、ファット・スプレッド製品に関する。
【0043】
好ましくは、本発明は、以下の特徴を単独で有するか、またはそれらの組み合わせを有する、上記のファット・スプレッド製品に関する。
【0044】
−ファット・スプレッド製品は、15〜95重量%の脂肪組成物、より好ましくは25〜90重量%の脂肪組成物、さらにより好ましくは35〜85重量%の脂肪組成物を含有する。
【0045】
−ファット・スプレッド製品は、5〜90重量%の水、より好ましくは10〜80重量%の水、さらにより好ましくは20〜70重量%の水を含有する。
【0046】
−脂肪組成物は、HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む、20〜100重量%の分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物を含む。
【0047】
−脂肪組成物は、10〜100重量%の分子内エステル交換HSHOヒマワリ油、より好ましくは20〜100重量%の分子内エステル交換HSHOヒマワリ油を含む。
【0048】
−ファット・スプレッド製品において使用される脂肪組成物中のHSHOヒマワリ油は、14〜27重量%のステアリン酸(C18:0)、より好ましくは16〜25重量%のステアリン酸(C18:0)を含有する。
【0049】
−ファット・スプレッド製品において使用される脂肪組成物中のHSHOヒマワリ油は、20〜35重量%の飽和脂肪酸(SAFA)、より好ましくは22〜33重量%の飽和脂肪酸(SAFA)を含む。
【0050】
−脂肪組成物は、80%以下の少なくとも1つの液状油を含む。
【0051】
−脂肪組成物は、10℃で2〜10%の脂肪固形分、20℃で1〜4%の脂肪固形分を有する。より好ましくは、脂肪組成物は、10℃で4〜6%の脂肪固形分、20℃で2〜3%の脂肪固形分を有する。
【0052】
−脂肪組成物は、脂肪組成物に存在する総トリグリセリドに対して少なくとも0.2重量%のStStStと、脂肪組成物に存在する総トリグリセリドに対して32重量%以下のStOOとを含む。より好ましくは、脂肪組成物は、脂肪組成物に存在する総トリグリセリドに対して少なくとも0.4重量%のStStStと、脂肪組成物に存在する総トリグリセリドに対して30重量%以下のStOOとを含む。
【0053】
−液状油は、ナタネ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、HSHOヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、コーン油、サフラワー油、ゴマ油、落下生油およびカメリナ油から選択される。
【0054】
−脂肪組成物は、2.5%以下、好ましくは1%以下の脂溶性添加物を含有する。
【0055】
−脂溶性添加物は、乳化剤、ビタミン、保存料、酸化防止剤および脂溶性香味料から選択される。
【0056】
脂肪組成物および水の他に、本発明に係るファット・スプレッドは、ミルク、クリーム、ヨーグルトおよびクアルク(quark)などの乳製品成分、モノおよびジグリセリド(E471)、レクチン、ポリグリセロールポリリシノール酸エステル(E476)、モノおよびジグリセリドのエステル(E472a〜f)、脂肪酸のプロピレングリコールエステル(E477)および脂肪酸のポリグリセリンエステル(E475)などの乳化剤、ベニノキまたはベータカロチン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、塩、クエン酸、ソルビン酸またはその塩およびEDTAなどの保存料、ゼラチン、でん粉およびペクチンなどの増粘剤、香味料、トコフェロールなどの酸化防止剤などのいくつかの通常の成分をさらに含んでもよい。
【0057】
また、本発明は、本発明に係るファット・スプレッド製品の食卓用スプレッドとしての使用、またはパン用途のための使用に関する。ある好適な実施形態において、パン用途は、ペイストリー、ケーキ、ドーナッツまたはクッキーである。
【0058】
本発明のファット・スプレッドは、それ自体食卓用スプレッドとして使用され得る。食卓用スプレッドは、油および脂肪、ミルク、水、乳化剤、ビタミンおよび他の成分からなり得る。
【0059】
また、本発明のファット・スプレッドは、例えば、パン製品の製造に使用され得る。パン製品は、積層構造を有し得る。本発明のファット・スプレッドは、穀粉および水と組み合わされて、生地を形成し得る。生地は、好ましくは、生地の重量に対して、30〜60重量%の量の穀粉と、10〜40重量%の量の水と、20〜40重量%の量のファット・スプレッドまたは積層脂肪と、0.04〜0.75重量%の乳化剤とを含む。必要に応じて、塩および穀粉改質剤などの1つ以上のさらなる成分を生地に含め得る。パン製品は、生地から製造され得る。生地は、好ましくは積層構造を有する。パン製品は、例えば、パフペイストリー(puff pastry)、クロワッサン、デーニッシュペイストリーおよびパイを含む。
【0060】
ファット・スプレッドを含む生地は、使用される前に、冷蔵、冷凍または他の方法で貯蔵され得る。冷凍生地は、包装され、顧客に販売され得る。パン製品を形成するために、生地は、好ましくはオーブンで焼かれる。
【0061】
ケーキは、バッター(batter)を焼くことで製造され得る。ケーキバッターは、通常、ファット・スプレッド、乳化剤、砂糖、穀粉、ミルクおよび卵を含む。バッターにおけるファット・スプレッドの量は、通常、3〜40重量%の範囲内にある。
【0062】
ドーナッツは、通常、穀粉生地を揚げることによって製造される。ドーナッツは、通常、ファット・スプレッド、穀粉、水、膨張剤(leavening)、卵、ミルク、砂糖、油および香味料を含む。さらに、砂糖、チョコレートまたはグレージング(glazing)などの様々なトッピングおよび香味料が使用され得る。バッターにおけるファット・スプレッドの量は、通常、5〜30重量%の範囲内にある。
【0063】
また、クッキーは、生地を焼くことによって製造され得る。クッキーバッターは、通常、ファット・スプレッド、砂糖、ミルク、穀粉、塩、穀粉、または必要に応じてチョコレートなどの菓子製品を含む。バッターにおけるファット・スプレッドの量は、通常、5〜30重量%の範囲内にある。
【0064】
また、本発明は、本発明に係るファット・スプレッド製品に含有される脂肪組成物を製造するためのプロセスに関する。したがって、また、本発明は、本発明に係るファット・スプレッド製品に含まれる脂肪組成物を調製するためのプロセスであって、当該プロセスは、HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物と、1つの液状油または液状油混合物と、少なくとも1つの脂溶性添加物とを配合する工程を含む。
【0065】
好ましくは、配合する工程は、
HSHOヒマワリ油またはHSHOヒマワリ油由来の画分を含む脂肪または脂肪配合物を提供する工程と、
脂肪または脂肪配合物に対して酵素的分子間エステル交換を行って、分子内エステル交換脂肪または分子間エステル交換脂肪配合物を生成する工程と、
によって行われる。
【0066】
また、本発明のプロセスは、通常、分子内エステル交換または分子間エステル交換の後、配合および任意のオプションの分別の前または後に、漂白および/または脱臭の工程を含み得る。
【0067】
本発明に係るファット・スプレッドは、当業者に公知の従来のプロセスにしたがって調製され得る。一例として、本発明に係るファット・スプレッドは、
計量タンクにおいて所望の割合で水相に溶解された、塩、酸、増粘剤、乳製品固形物、保存料および香味料などの濃縮水溶性成分を調製する工程と、
このように得られた水相および本発明に係る脂肪配合物を、撹拌タンクにおいて、10/90〜85/15の比(脂肪含有量:15〜90%、水:85〜10%)で、水相を脂肪相に加えることによって、乳化する工程、または、代替として、定量ポンプを使用して本発明に係る脂肪配合物および水相を混合する工程と、
最終製品の完全な微生物安全性を確保するために、得られた乳化物を加熱する工程と、
必要な脂肪結晶が成長できるように高いせん断力を与えつつ、晶析を可能にするために、当該乳化物を専用設備内で冷却する工程と、
を含むプロセスによって調製され得る。
【0068】
本発明のある局面、実施形態、特徴またはパラメータに対して好適なものや選択されるものは、特に断らない限り、本発明の他のすべての局面、実施形態、特徴およびパラメータに対して好適なものや選択されるもののすべてと組み合わせて記載されたと考えられるべきである。
【0069】
以下の非限定の実施例によって、本発明を例示するが、それらは、本発明の範囲を限定するものではない。実施例および本明細書全体において、特に断らない限り、パーセンテージ、部、および比はすべて、重量に基づく。
【0070】
実施例
実施例1 高ステアリン酸ヒマワリ油および酵素的分子内エステル交換高ステアリン酸ヒマワリ油
高ステアリン酸ヒマワリ油(HSHO)は、標準の搾油、精製および脱臭プロセスを使用して、高ステアリン酸ヒマワリ種子から得られ得る。脱臭HSHO油は、それ自体ファット・スプレッドの成分として使用され得るし、分子内エステル交換EIE HSHO(酵素的分子内エステル交換によるもの)を調製するための原料として使用され得る。また、分子内エステル交換EIE HSHOは、ファット・スプレッドの成分として使用され得る。
【0071】
高ステアリン酸ヒマワリ油(EIE HSHO)の酵素的分子内エステル交換は、下記の表1に記載のプロトコルにしたがって行った。
【0072】
【表1】
【0073】
分子間エステル交換のための別の出発原料として、HSHOヒマワリ油の画分およびそれらの混合物を使用しても同等の性質が得られ得る。特に、HSHOヒマワリ油からのステアリンが有用である。HSHOヒマワリ油の乾式および湿式分別に適した方法の例については、Bootello MA et al.,Food Chem.2015 Apr 1;172:710−7に記載がある。
【0074】
実施例2 ファット・スプレッド組成物を調製するためのプロセス
まず、すべて脂溶性の成分からなる脂肪相およびすべて水溶性の成分からなる水相を調製する。
【0075】
脂肪相および水相を70℃まで加熱し、常に撹拌しながら水相を脂肪相に加えて、乳化物を形成する。
【0076】
乳化物の晶析をGerstenberg&Aggerパイロットパーフェクタ(pilot perfector)を使用して、標準のパイロット規模マーガリンプロセスで行う。
【0077】
最後に、製品をプラスチック容器(tub)に詰め、5℃および10℃の両方で貯蔵した。
【0078】
実施例3 ファット・スプレッド組成物A〜J
ファット・スプレッドA〜Jを実施例2のプロセスにしたがって調製した。
【0079】
得られたファット・スプレッドの組成を下記の表2および3に示す。
【0080】
ファット・スプレッドA〜Eは、本発明の例であり、ファット・スプレッドF〜Jは、比較例である。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
実施例4 ファット・スプレッドA〜Jにおいて乳化剤を使用しない脂肪組成物の脂肪酸組成
ファット・スプレッドA〜Jにおいて乳化剤を使用しない脂肪組成物の脂肪酸組成(総脂肪に対するパーセンテージ(%))を下記の表4に示す。Cx:yは、炭素数がxであり、y個の二重結合を有する脂肪酸を指し、レベルは、GC−FAME(ISO12966−2およびISO12966−4)によって決定される。
【0084】
【表4】
【0085】
実施例5 ファット・スプレッドA、C、F、HおよびIにおける脂肪組成物の脂肪固形分
ファット・スプレッドAおよびC、比較例のファット・スプレッドF、HおよびI、従来のバターならびに容器入り(tub)マーガリンにおける脂肪組成物の脂肪含有量(%)を下記の表5に示す。脂肪固形分(%)は、非安定化脂肪について、10、20、30、35および40℃でNMRによって測定した(ISO8292−1)。
【0086】
【表5】
【0087】
表5から分かるように、本発明のファット・スプレッドは、標準のバターおよび容器入りマーガリンファット・スプレッドと比べて、標準の測定温度10〜40℃において、非常に低レベルの固形脂肪を含有する。
【0088】
脂肪固形分の測定は、脂肪配合物のスプレッド適合性を評価する場合の標準の分析である。10℃で<5%かつ20℃で<3%であるSFCの結果により、本発明に係るファット・スプレッドAおよびCと「容器入りマーガリン脂肪配合物」との間に著しい差異があることが確認される。本発明に係るファット・スプレッドAおよびCが、所望の構造を得るためにハードストックを添加せずにファット・スプレッドを調製することに適していることに、当業者は想到しなかったであろう。
【0089】
しかし、また、比較例のファット・スプレッドF、HおよびIなど、脂肪固形分が10℃で2%未満および20℃で1%未満である場合には、ファット・スプレッドの構造および食感は、適切には維持できないと考えられる。
【0090】
実施例6:ファット・スプレッドにおける脂肪組成物のトリグリセリド組成
TAG種の組成を、Fernandez−Moya et al.,J.Agr.Food Chem.2000,48:764−769にしたがって、水素をキャリアガスとし、FID検出器を使用して、30m Quadrexアルミニウム被覆結合メチル65%フェニルシリコーンキャピラリーカラム(0.25mm ID、0.1ミクロンフィルム膜厚)を備えるAgilent7890ガスクロマトグラフのガスクロマトグラフィーによって分析した。TAG類(SSS、SUS、SUU、UUU)は、詳細なTAG種結果から求めた。各GCピークは、同じ脂肪酸を異なる位置に有するトリグリセリドを含む。例えば、POStは、PStOと同じ信号ピーク内にある。
【0091】
【表6】
【0092】
実施例7 晶析サーモグラム
図1は、以下のプログラムを適用した後に示差走査熱量分析(DSC)によって得られる晶析サーモグラムを示す。
【0093】
1)20℃/分の速度で90℃まで加熱する
2)90℃で5分間等温にする
3)10℃/分の速度で90℃から−80℃に冷却する
この図に示すように、サンプルE−「HSHO部分」(EIE HSHOおよびHSHOを配合、ナタネ油および脂溶性添加物は含まない)およびサンプルE−「総脂肪配合物」(EIE HSHO、HSHOおよびナタネ油を配合するが、脂溶性添加物を含まない)は、非分子内エステル交換脂肪(HSHO)よりも高い温度で晶析を開始する。
【0094】
サンプルEの晶析曲線は、HSHO(4.06℃)およびEIE HSHO(14.63℃)と比べて、晶析の開始が中間的である。液状油を「サンプルE−総脂肪配合物」に添加すると、晶析の開始を若干低減するが(8.86℃)、まだHSHO油よりも高い。
【0095】
したがって、本発明に係るファット・スプレッドEは、晶析開始温度が高い、改善された晶析挙動を有する。この晶析挙動は、良好なプロセス性および安定した挙動を示す。
【0096】
実施例8:ファット・スプレッドA〜Jの官能評価
ファット・スプレッドA〜Eおよび比較例のファット・スプレッドF〜Jの展延性、乳化安定性および溶融挙動を官能評価し、同じ脂肪含有量、すなわち、それぞれ40%、60%および80%脂肪の市販のファット・スプレッドと比較した。
【0097】
ファット・スプレッドの上記のような特性を評価するように訓練された官能専門家に、良好な製品ついての合意による評点方法を使用して比較を行ってもらった。
【0098】
新鮮なサンプルファット・スプレッドA〜Eおよび比較例のファット・スプレッドF〜Jの官能評価における評点は、市販の製品と同等である。ファット・スプレッドA〜Eおよび比較例のファット・スプレッドF〜Jはどちらも、特に平滑な展延性を有し、乳化破壊は観察されない。また、ファット・スプレッドA〜Eおよび比較例のファット・スプレッドF〜Jは、同じ総脂肪含有量を有する市販のサンプルと同等の溶融挙動を有する。
【0099】
貯蔵寿命期間(4〜6か月)の間に、比較例のファット・スプレッドF〜Jについては、官能評価の結果が許容可能でなく、満足できないようであった。これらのファット・スプレッドは、適切な食感を失い、「ざらざらとした(sandy)」ものになった。これらの構造は、貯蔵寿命の最後には、許容可能でなくなった。しかし、本発明に係るファット・スプレッドA〜Eは、なおも良好な構造、食感、外観および感覚受容性を示した。
【0100】
これらの結果と表4に記載の結果を合わせると、脂肪酸組成が同じであっても、本発明に係るファット・スプレッドA〜Eは、比較例のファット・スプレッドF〜Jと比べて、長期貯蔵寿命テストにおいて特に安定であることが確認される。
【0101】
最後に、ファット・スプレッドA〜E(新鮮な状態および貯蔵寿命の最後の状態)の味は、同じ香味の影響を与える成分(特に塩分および香味料)を有する市販の製品と同等であると評価・判定された。
【0102】
実施例9:ファット・スプレッドA〜Eおよび比較例のファット・スプレッドF〜Jの脂肪酸組成およびコレステロールレベルに対する効果
ファット・スプレッド組成物A〜Eおよび比較例のファット・スプレッドF〜Jのコレステロールレベルに対する効果を表4に記載の脂肪酸組成を参照して求めた。コレステロールレベル効果は、脂肪酸組成からの結果であるので、油の製造プロセス間で差異はなく、したがって、HSHOおよびEIE HSHO油は、コレステロールレベルに対して同じ効果を有する。
【0103】
計算方法
高ステアリン酸ヒマワリ油およびいくつかの比較用脂肪/脂肪配合物のコレステロールレベルに対する効果は、Opinion of the Scientific Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies on a request from the Commission related to the presence of trans fatty acids in foods and the effect on human health of the consumption of trans fatty acids、EFSA Journal (2004),81,1−49の、欧州食品安全機関(EPSA)によって記載された因子を使用して求めた(炭水化物からの食事におけるエネルギーの1%がある特定の脂肪酸によって等カロリーに置き換えられる場合の、1グループの被験者についての、血清脂質およびリポタンパク質における変化に対して推定される効果)。
【0104】
この方法によると、脂肪配合物のコレステロール低減効果は、以下の式を使用して計算できる。
【0105】
全コレステロール(TC)mmol/L変化=+0.031×トランスモノ不飽和脂肪酸+0.069×ラウリン酸+0.059×ミリスチン酸+0.041×パルミチン酸−0.01×ステアリン酸−0.006×シスモノ不飽和脂肪酸−0.021×シスポリ不飽和脂肪酸
LDLmmol/L変化量=+0.040×トランスモノ不飽和脂肪酸+0.052×ラウリン酸+0.048×ミリスチン酸+0.039×パルミチン酸−0.004×ステアリン酸−0.009×シスモノ不飽和脂肪酸−0.019×シスポリ不飽和脂肪酸
結果
脂肪または脂肪配合物のコレステロール低減効果を表す100%脂肪に基づいて、コレステロール低減効果を求めた。また、この効果は、バター脂肪のような既製品の脂肪配合物について求め得る。これにより、異なる脂肪/脂肪配合物のコレステロールレベルに対する効果を比較することができる。
【0106】
得られた計算結果を以下の表7に示す。
【0107】
【表7】
【0108】
本発明に係るファット・スプレッドの上記求められたコレステロール低減効果は、飽和脂肪の含有量がより少ない市販のマーガリン(Vita Hjertego 70%)のコレステロール低減効果よりも大きい。これは、本発明に係るスプレッドがより良好な健康効果を有することを示す。
図1
【国際調査報告】