特表2022-500507(P2022-500507A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2022-500507クエン酸及びアルギニンリガンド含有亜鉛錯化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-500507(P2022-500507A)
(43)【公表日】2022年1月4日
(54)【発明の名称】クエン酸及びアルギニンリガンド含有亜鉛錯化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 3/06 20060101AFI20211203BHJP
   C07C 55/22 20060101ALI20211203BHJP
   C07C 251/08 20060101ALI20211203BHJP
【FI】
   C07F3/06CSP
   C07C55/22
   C07C251/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-541001(P2021-541001)
(86)(22)【出願日】2019年9月20日
(85)【翻訳文提出日】2021年4月28日
(86)【国際出願番号】KR2019012192
(87)【国際公開番号】WO2020060255
(87)【国際公開日】20200326
(31)【優先権主張番号】10-2018-0113704
(32)【優先日】2018年9月21日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】521116510
【氏名又は名称】パク,レ オク
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】パク,レ オク
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB28
4H006AB29
4H006BB31
4H006BC53
4H006BN10
4H006BS10
4H048AA01
4H048AA02
4H048AB28
4H048AB29
4H048AC90
4H048BB31
4H048BC16
4H048VA66
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は亜鉛を中心金属とし、クエン酸及びアルギニンをリガンドとして含む新規亜鉛錯化合物に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)の錯化合物またはその水和物。
【請求項2】
亜鉛化合物、クエン酸及びアルギニンを混合することを特徴とする下記化学式(1)の錯化合物の製造方法。
【請求項3】
水溶液で製造し、溶液のpHを調節することを特徴とする請求項2に記載の化学式(1)の錯化合物の製造方法。
【請求項4】
前記溶液のpH調節は水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液からなる群で選択される1種以上の塩基性溶液で、反応溶液のpHを6〜8に調節することを特徴とする請求項3に記載の化学式(1)の錯化合物の製造方法。
【請求項5】
前記亜鉛化合物が酸化亜鉛(ZnO)または塩化亜鉛(ZnCl)であることを特徴とする請求項3に記載の化学式(1)の錯化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亜鉛を中心金属とし、クエン酸及びアルギニンをリガンドとして含む新規亜鉛錯化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛(zinc、Zn)は1900年代の初めから生命体の必須微量元素として認識され、亜鉛欠乏症は1960年代に初めて認知された。亜鉛は細胞成長、生殖機能成熟、免疫など体内の様々な作用に必須的な微量無機質として我々の体に約1.5〜2.5g含有されており、その内約60%は筋肉に、残りは骨格などに分布されている。
【0003】
亜鉛は脂肪細胞に葡萄糖が流入されることを調節するインシュリン作用に影響を及ぼす。成長ホルモン、性ホルモン、甲状腺ホルモン、プロラクチンなどのホルモン活性とも関連がある。亜鉛は酵素の構成要素として炭水化物、タンパク質、脂質、核酸の合成と分解に関与する。特に核酸DNAとRNAの合成に関与して細胞の分化、増殖及び遺伝子発現過程で必須的な役割を果たし、成長、組職及び骨格形成、生殖、免疫機能などが円滑に行われるようにする。亜鉛は細胞膜タンパク質、特定ホルモン、遺伝子転写因子(gene transcription factor)の構造を安定化させる。細胞膜安定性は収容体に影響を及ぼし、この収容体が細胞内の全ての種類の反応を信号化するため、細胞膜機能は非常に重要である。
【0004】
亜鉛は抗酸化酵素[copper(Cu)、zinc−superoxide dismutase(Zn−SOD)]の安定化に重要な役割を果たし、糖代謝、インシュリンの作用にも関連がある。第2型糖尿病患者に亜鉛を補充すると、耐糖能を悪化させ、LDLコレステロールの酸化に影響を与えないことと報告されたが、第1型糖尿病患者に亜鉛を補充すると亜鉛欠乏を好転させてLDLコレステロールの酸化を減少させると報告された。
【0005】
亜鉛は穀類中心の食事では吸収率が低いが、肉類中心の食事では吸収率が高い。世界保健機関(WHO)は亜鉛の利用率の推定に関して、食事の種類を亜鉛利用率が約50〜55%である亜鉛利用率が高い食事、約30〜35%である亜鉛利用率が中程度の食事、約15%である亜鉛利用率が低い食事などの三種類に分類した。我が国の一般的な食生活は亜鉛利用率が中程度(30%)の食事と見なされる。亜鉛利用率が高い食事とは肉類の摂取量が多く、搗精された穀類を少量摂取する精製された食事を言う。亜鉛利用率が中程度の食事とは肉類と魚を含み、搗精されていない穀類に全面的に依存しない混合型食事である。亜鉛利用率が低い食事とは搗精されていない非発酵穀類食品に主に依存する植物性食品中心の食事を言う。
【0006】
亜鉛は小腸で吸収される時、フェリチンが鉄と結合する同じ方式で、亜鉛と結合するタンパク質であるメタロチオネイン(metallothionein)の合成を誘導する。またシュウ酸塩(oxalate)、フィチン酸塩(phytate)などは亜鉛と不溶性化合物を作るので亜鉛の吸収を阻害する。一方、ヒスチジン(histidine)、シスチン(cystine)、トリプトファン(tryptophan)などのアミノ酸は亜鉛と可溶性複合体を形成するので、亜鉛の吸収を向上させる。
【0007】
亜鉛は膵臓を経由して腸管を経て大便で排泄される。また小便と汗で少量排泄される。
【0008】
クエン酸(citric acid)はヒドロキシ基(−OH)を有する多塩基カルボン酸の一つで、枸椽酸とも言い、多くの植物の種や果汁の中に遊離状態の酸で含有されている。枸櫞とはシトロン(citron)の漢名で、枸櫞を含めてレモンや半熟の蜜柑など柑橘類の果物に特に多く含まれていることから由来する。英語名であるクエン酸(citric acid)のクエン性(citric)も柑橘類を意味するギリシャ語のシトラス(citrus)から由来したのである。水で結晶させれば1分子の結晶水を有する大きい柱状結晶が生じて、水・エタノールによく溶ける。糖類を基質として微生物を培養した時、培養液の中にクエン酸が蓄積される現象がみられるが、これをクエン酸発酵と言う。各種培養方法が研究されて今は世界で生産されるクエン酸の総量の90%がこの発酵法によって作られる。
【0009】
クエン酸は高等動物の物質代謝で重要な役割を果たす。また、体内のカルシウムの吸収を促進させる作用も知られている。用途としては果汁・清凉飲料に添加するか、医薬品・利尿性飲料に酸味を出す以外に分析試薬としても用いられる。また、血液凝固にはカルシウムイオンが必要であるが、クエン酸はカルシウムイオンを捕捉するので血液凝固阻止制として用いられる。
【0010】
アルギニンは塩基性アミノ酸の一種で、グアニジン(guanidine)を有するもので、天然ではL−形態で存在する。タンパク質構成成分として広く分布され、特に魚の白子(魚精)のプロタミン(protamine)にたくさん入っている。遊離型で植物種子や肉エキスの中でも発見される。水に可溶性で、アルコールやエーテルには不溶性で、グアニジン基の存在で強塩基性を現わす。オルニチン(Ornithine)、シトルリン(citrulline)と同時に要素cycleの一つでアルギナーゼ(arginase)の作用によりオルニチン(ornithine)と要素に分解される。従って、血中アンモニアを要素として排泄するのに役に立ち、そのアンモニア血症、肝機能障害に有効である。
【0011】
アルギニンは抽出法または糖からの直接発酵法で生産される。食品としての用途は限定されているが、ヨーロッパでは疲労回復を目的とした医薬品に利用されている。
【0012】
一方、本発明者は亜鉛、クエン酸及びアルギニン成分を含む組成物を利用した抗癌剤及び抗ウイルス剤を開発したことがある。
【0013】
しかしながら、前記抗癌剤または抗ウイルス剤組成物は組成物の中で各成分の含量比を適切に合わせなければならない一方、組成比の経時変化が発生する可能性があるという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明者は亜鉛、クエン酸及びアルギニンを含む組成物ではない、亜鉛、クエン酸及びアルギニンを含む新規化合物を製造することを発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は下記化学式(1)の錯化合物またはその水和物を提供する。
【0016】
【化1】
【0017】
また、本発明は亜鉛化合物、クエン酸及びアルギニンを反応させることを特徴とする前記化学式(1)の錯化合物またはその水和物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は亜鉛を中心金属とし、クエン酸及びアルギニンをリガンドとして含む新規化合物を提供するという効果を奏する。
【0019】
前記化合物は抗癌剤または抗ウイルス剤として用いられることができる。
【0020】
本発明は亜鉛化合物、クエン酸及びアルギニンを反応させる一段階反応で化学式(1)の錯化合物またはその水和物を大量に製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の化学式(1)の錯化合物の3次元構造の例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は下記化学式(1)の錯化合物またはその水和物を提供する。
【0023】
【化2】
【0024】
前記化学式(1)の錯化合物は亜鉛中心金属に対してクエン酸及びアルギニンがリガンドに配位結合している。
【0025】
図1は本発明の化学式(1)の錯化合物の3次元構造の例である。
【0026】
本発明の化学式(1)の錯化合物で亜鉛は2価状態の酸化数を有し、6配位結合を有する。
【0027】
クエン酸はヒドロキシ基(−OH)を有する3塩基カルボン酸で、前記3塩基カルボン酸のイオン化程度は互いに異なり、従って、クエン酸は中心金属と多様な錯化合物を形成することができる。前記クエン酸は金属イオンの溶解度を高めるのに寄与をし、その結果、生体吸水性を高めることができる。
【0028】
本発明の化学式(1)の錯化合物でクエン酸は中心金属の亜鉛にヒドロキシ基及び2つのカルボン酸のヒドロキシ基を通じて配位結合している。
【0029】
アルギニンはグアニジン基を有するアミノ酸である。本発明の化学式(1)の錯化合物でアルギニンは中心金属の亜鉛にアミノ酸基のヒドロキシ基を通じて配位結合している。
【0030】
従って、本発明の化学式(1)の錯化合物でアルギニンのグアニジン基とクエン酸の1つのカルボン酸は活性基形態で存在することができる。
【0031】
一方、化学式(1)の錯化合物で亜鉛には追加で2つの水分子が配位結合している。
【0032】
化学式(1)の錯化合物は追加で1つ以上の水分子による水和物の形態で存在することができる。
【0033】
化学式(1)の錯化合物は抗癌剤または抗ウイルス剤として用いられることができる。
【0034】
前記化学式(1)の錯化合物は亜鉛化合物、クエン酸及びアルギニンの反応によって製造されることができる。
【0035】
前記化学式(1)の錯化合物の製造は水溶液で行われることができ、塩基性溶液でpHを調節することができる。前記塩基性溶液としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などがあるが、これに限定されない。本発明は前記塩基性溶液を利用して反応溶液のpHを好ましくは6〜8に調節することができる。
【0036】
上記製造は常温で行われることができ、必要時、30〜90℃で加温して行うことができ、反応時間は2〜48時間であることができる。
【0037】
前記亜鉛化合物は、好ましくは、2価亜鉛化合物で、酸化亜鉛(ZnO)、塩化亜鉛(ZnCl2)などを挙げることができる。
【0038】
反応後、溶媒除去段階によって化学式(1)の錯化合物を得ることができる。または反応溶媒を濃縮した後テトラヒドロフランのような非溶媒を入れて析出される沈殿物形態で得ることができる。
【0039】
酸化亜鉛を一例として、化学式(1)の錯化合物の製造反応式を表すと、以下の反応式1の通りである。
【0040】
【化3】
【0041】
以下、実施例を通じて化学式(1)の錯化合物の製造を説明する。ただし、本発明を以下の実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0042】
化学式(1)の錯化合物の製造
【0043】
8.1g(0.1mole)の酸化亜鉛、19.2g(0.1mole)のクエン酸及び17.4g(0.1mole)のアルギニンに2Lの水を加えてKOH水溶液でpHが7になるようにした。前記溶液を60℃で反応させ、その後、反応液を濃縮し、濃縮液にテトラヒドロフランを入れて常温で放置した。
【0044】
得られた結晶を回収して分析した。
【0045】
ブルカー(Bruker)スマートアペックス回折計で結晶構造を分析した。
【0046】
結晶構造は2分子の化合物がダイマー(dimer)形態で存在した。
【0047】
図2に結晶構造の一例を図示した。
【0048】
Empirical formula C24 H48 N8 O24 Zn2
【0049】
Formula weight 965.46
【0050】
Temperature 296(2)K
【0051】
【0052】
Crystal system Monoclinic
【0053】
Space group P2
【0054】
Unit cell dimensions
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
化学式(1)の化合物は抗癌剤または抗ウイルス剤として用いられることができる。
図1
【国際調査報告】