特表2022-501173(P2022-501173A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2022-501173高度に多孔質な潤滑剤調整および浄化媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-501173(P2022-501173A)
(43)【公表日】2022年1月6日
(54)【発明の名称】高度に多孔質な潤滑剤調整および浄化媒体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20211210BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20211210BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20211210BHJP
   C10M 175/06 20060101ALI20211210BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20211210BHJP
   C08J 5/20 20060101ALI20211210BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20211210BHJP
【FI】
   B01J20/26 J
   B01J20/26 G
   B01J20/28 Z
   B01D15/00 K
   C10M175/06
   C08J9/04 101
   C08J9/04CEY
   C08J9/04CFC
   C08J9/04CFF
   C08J5/20CET
   C10N70:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2021-507860(P2021-507860)
(86)(22)【出願日】2019年8月13日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月9日
(86)【国際出願番号】IB2019000909
(87)【国際公開番号】WO2020035731
(87)【国際公開日】20200220
(31)【優先権主張番号】62/718,638
(32)【優先日】2018年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521061748
【氏名又は名称】1441413・アルバータ・インコーポレイテッド・ディービーエー・イーピーティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ティー・ジュニア・デュフレスネ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ホッブス
【テーマコード(参考)】
4D017
4F071
4F074
4G066
4H104
【Fターム(参考)】
4D017AA05
4D017BA03
4D017CA13
4D017CB01
4D017DA01
4D017EA05
4D017EB01
4F071AA22
4F071AA28
4F071AA33
4F071AA42
4F071AA53
4F071AA78
4F071FB01
4F071FB02
4F071FC12
4F074AA32
4F074AA48
4F074AA64
4F074AA78
4F074DA03
4F074DA43
4G066AC13B
4G066AC14B
4G066AC17B
4G066AC22B
4G066AC24B
4G066AC35B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066CA21
4G066DA09
4G066DA10
4H104BB31A
4H104BH03A
4H104DA02A
4H104PA09
(57)【要約】
本発明は、潤滑剤と接触させ、該潤滑剤を浄化および調整するのに適し、常にではないが、通常はビーズ形態である、固体の潤滑剤処理媒体である。通常は高分子樹脂である本媒体の重要な特徴は、比較的非常に大きい細孔の存在であり、該細孔は、微細な潤滑剤汚染物質および分解生成物(小さいリン酸エステルワニス、煤、コークス、溶解した金属、または他の小さい半可溶性もしくは不溶性粒子など)を捕捉し、除去することができる。先行技術の樹脂および吸着剤は、産業機械の性能および信頼性に有害な影響を有するリン酸エステルワニスのような微細な汚染物質を除去できないことが証明されている。本媒体の平均細孔サイズ直径は、約8,000Åから100,000Åの間であり、より好ましくは、約20,000Åから約80,000Åの範囲である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤の調整または浄化に使用するためのポリマー樹脂媒体であって、ある量のポリマー樹脂が複数の細孔を含み、さらに、前記細孔が、水銀ポロシメトリによって測定した場合、8,000から100,000Åの間の平均直径を有する、ポリマー樹脂媒体。
【請求項2】
前記細孔が、水銀ポロシメトリによって測定した場合、20,000から80,000Åの間の平均直径を有する、請求項1に記載のポリマー樹脂媒体。
【請求項3】
前記ポリマー樹脂が、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ、ポリビニル、ビニルエステル、ジビニルベンゼンまたはアクリル材料からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー樹脂媒体。
【請求項4】
前記細孔が、水銀ポロシメトリによって測定した場合、8,000から60,000Åの間の平均直径を有する、請求項1に記載のポリマー樹脂媒体。
【請求項5】
前記ポリマー樹脂がビーズの形態である、請求項1に記載のポリマー樹脂媒体。
【請求項6】
前記ビーズが、約100〜2,000μmの間の平均直径を有する、請求項5に記載のポリマー樹脂媒体。
【請求項7】
前記ビーズが、潤滑油の処理のために他の媒体ビーズと混合、混和、または層状化するのに適している、請求項6に記載のポリマー樹脂媒体。
【請求項8】
ある量の潤滑剤を洗浄する方法であって、洗浄される前記潤滑剤の全部または一部を、全体にわたり分布した細孔を有する、ある量のポリマー媒体と接触させることを含み、4μm未満の不溶性および半可溶性潤滑剤汚染物質ならびに分解生成物を前記細孔により捕捉し、前記細孔はさらに、水銀ポロシメトリによって測定した場合、8,000Åから100,000Åの間の平均直径を有する、方法。
【請求項9】
前記ポリマー媒体が、ビーズの形態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー媒体が、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ、ポリビニル、ビニルエステル、ジビニルベンゼン、およびアクリルからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
リン酸エステル系潤滑剤のMPCワニス可能性を20.0未満の値に大幅に改善することができる、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願は、2018年8月14日に出願された米国特許仮出願第62/718,638号の優先権を主張し、参照により本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、工業用潤滑剤の調整または浄化に使用するための固体で非常に多孔質な媒体である。
【背景技術】
【0003】
重要な産業機械の効率的で信頼性の高い運用は、潤滑剤または他の機能性流体の使用に依存している。しかしながら、工業用潤滑剤(潤滑油、油圧作動油、リン酸エステル系制御油を含む)は、使用中に劣化および汚染を受け、その役割を効果的に果たす能力が損なわれる。したがって、重要な機械が確実に機能することを保証するために、これらの潤滑剤を許容可能な状態に維持する必要がある。潤滑流体が許容可能な状態に保たれていない場合、コストのかかる機械の故障およびダウンタイムが生じる可能性がある。したがって、メンテナンス戦略を成功させるには、使用中に発生する有害な潤滑剤汚染物質および劣化生成物の蓄積を特定し、対処する手段を提供する必要がある。オイル分析および様々なろ過または調整システムは、一般に、それぞれ潤滑剤の状態を監視および維持するために使用される。
【0004】
潤滑剤の使用中、汚染および劣化は避けられない。不溶性粒子、水、およびガスは、非水系潤滑剤における一般的な汚染物質であり、機械性能および信頼性に対するそれらの悪影響は十分に確立されている。潤滑剤の劣化は、酸化、加水分解、および熱分解を含む多くの経路を介して発生する。劣化から生じる分解生成物は、しばしば酸性であり、それ自体が潤滑剤に難溶性または不溶性である可能性がある。分解生成物が、最初は潤滑剤中に可溶なままである場合でも、他の分解生成物および汚染物質とさらに反応して、一般に「ワニス」と呼ばれる不溶性粒子または堆積物を生成する可能性がある。起源に関係なく、これらの潤滑剤汚染物質および劣化生成物はすべて、機械性能および信頼性に悪影響を及ぼす。
【0005】
機械の信頼性および性能に影響を与えるため、潤滑剤汚染物質および劣化レベルは通常、オイル分析を使用して監視される。一般的な試験方法には、粒子計数、水分分析、分光法、物理的特性(粘度、密度など)の分析、および膜パッチ比色分析(MPC)が含まれる(ただし、これらに限定されない)。最後の試験は、タービン潤滑油における「ワニス可能性」を測定することを目的としている。本発明者らは最近、リン酸エステル系合成潤滑剤における「ワニス可能性」を評価するために使用できる、改善されたMPC方法論を開発した。リン酸エステルは、様々な重要な産業用途において用いられる普遍的な制御流体である。リン酸エステル粒子、水、および酸レベルは、機械性能および信頼性を確保するために定期的に監視されるが、これまで、これらの「ワニス可能性」はオイル分析プログラムには一般的に含まれていなかった。タービン潤滑油において十分に確立されているように、ワニス粒子または堆積物は、リン酸エステル制御流体を用いる重要な産業システムにおいて、コストのかかる故障やダウンタイムにつながる可能性がある。
【0006】
オイル分析によって有害な潤滑剤汚染物質および劣化生成物が特定された後、重要な機械が意図したとおりに機能することを保証するために、ろ過または調整システムによってそれらに対処する必要がある。この点に関して、先行技術は、乾燥システム、静電沈殿/ろ過システム、機械的ろ過システム、吸着剤、および比較的限られた多孔度の固体イオン交換媒体を用いる処理システムを含む。後者のシステムは、リン酸エステル潤滑剤から酸性劣化生成物を除去するために使用され、この点に関するこれらの有用性は、Dufresneの米国特許出願公開第2009/0001023号(以下、「Dufresne特許出願公開」)において開示された。これらのイオン交換樹脂は、酸除去に利用可能な固体媒体の表面積を増やすために、比較的小さい細孔を含む。リン酸エステル水、粒子および酸レベルは、上記の先行技術を使用して長年にわたって効果的に管理されてきた。しかしながら、リン酸エステルワニスは、以前に開示されたこれらの技術を使用して効果的に対処することはできない。改善されたリン酸エステル「ワニス可能性」試験の出現と開示により、リン酸エステルワニス問題の程度が明らかになった。多くのコストのかかる産業上の故障の根本原因は、リン酸エステルの劣化を介して生成される微細なワニス粒子および堆積物に関連している。したがって、本発明以前には、リン酸エステル潤滑剤から有害なリン酸エステルワニスを除去し、一般に同様の性質の他の工業用潤滑剤から類似の汚染物質を除去できる、潤滑剤ろ過、処理または調整システムを開発する必要性が残っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0001023号
【発明の概要】
【0008】
この必要性を満たすために、本発明は、イオン交換樹脂を使用する潤滑剤ろ過および調整システムであり、該樹脂の少なくとも一部の細孔サイズは、先行技術のフィルタおよび樹脂の細孔よりも大幅に(20倍程度)大きい。非常に大きい細孔を特徴とするイオン交換樹脂の使用は、これらの大きい細孔容積がイオン交換/酸除去のために利用可能な表面積を制限するため、これまで直観に反していた。結果として、本発明のイオン交換樹脂は、先行技術の酸捕捉剤と比較して非効率な酸捕捉剤である。非常に大きい細孔サイズを特徴とするイオン交換樹脂は、驚くべきことに、潤滑剤から極度に微細な(直径4μm未満)粒子(リン酸エステルワニスを含む)を捕捉し、保持することができる。イオン交換樹脂の非常に大きい細孔はまた、一般に熱分解性潤滑剤分解から生じる超微細な煤またはコークス粒子を捕捉し、保持することができる場合がある。さらに、本発明の多孔質イオン交換樹脂は、同じ格子間寸法(たとえば1〜4μm)を有する従来の機械的ろ過媒体ではできなかった方法で、これらの微細な不溶性汚染物質および分解生成物(ワニス、煤、コークスなど)を捕捉し、保持し、除去することができる。これに基づくと、本発明の大細孔イオン交換樹脂は単純なふるいとしては機能しない。これは、ポリマーイオン交換樹脂媒体の三次元的に高度に多孔質な構造が、微細な不溶性潤滑剤汚染物質および分解生成物の効率的な捕捉および保持に顕著な役割を果たすことを示唆している。本発明を使用することにより、潤滑剤の状態に関連するコストのかかる産業機械の故障のリスクを効果的に軽減することができる。
【0009】
より具体的には、本発明は、潤滑剤浄化および調整に使用するための非常に多孔質なイオン交換樹脂を含む。本発明の非常に多孔質なイオン交換樹脂は、典型的には、300〜1,500μmのビーズサイズを有するマクロポーラスポリマービーズの形態をとる。洗浄期間中または油の使用中のいずれかに、潤滑油を本発明のイオン交換樹脂と接触させる。本発明のイオン交換樹脂の細孔は、(水銀ポロシメトリによって測定した場合)当技術分野で既に知られているイオン交換樹脂の典型的な細孔サイズ中央値よりも20倍程度大きい。たとえば、典型的な先行技術の樹脂ビーズは、400〜900Å程度の細孔サイズ中央値を有するが、本発明の大細孔イオン交換樹脂は、8,000Å(400Åの20倍)、10,000Å(500Åの20倍)、18,000Å(900Åの20倍)、20,000Å、40,000Å、またはさらには60,000〜100,000Åまで程度の細孔サイズ中央値を有する。多くの場合、本発明の細孔サイズ中央値は、20,000〜80,000Åの範囲内から選択される。本発明者らはまた、8,000〜100,000Åの間の細孔サイズ中央値を特徴とするイオン交換樹脂は、記載された範囲中の細孔よりも小さい(または一見すると大きい)細孔を有する樹脂と比較して、新しく予想外に改善された潤滑剤汚染物質および分解生成物の除去結果を与えると考えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】軸流用に構成された配置の断面図である。
図2】輻流用に構成された配置の断面図である。
図3】流体の流れのための入口および出口を備えた、本発明の媒体を含有するバルク処理容器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のイオン交換樹脂は、非常に大きい細孔サイズを特徴とし、これまで不可能だった微細な潤滑剤汚染物質および分解生成物(リン酸エステルワニス、煤、コークスなど)の捕捉を可能にする。これらの潤滑剤汚染物質および劣化生成物は、通常、サイズが4μm未満である。したがって、先行技術に記載されているふるいタイプの技術を介して除去することは困難または不可能である。先行技術全体にわたって記載されている細孔サイズより20倍程度大きい細孔サイズを有するイオン交換樹脂を使用することにより、本発明の樹脂は、微細な潤滑剤汚染物質および分解生成物の効率的な除去を可能にする。これらの有害な物質は、本発明のイオン交換樹脂の相対的により大きい細孔に入り、次いで、そこで捕捉され、保持される。本発明において使用することを意図した典型的なポリマー樹脂は、(限定されないが)ポリスチレン(架橋ポリスチレンを含む)、ポリウレタン、エポキシ、ポリビニル、ビニルエステル、ジビニルベンゼン、または一般的に理解されているプラスチックファミリーのポリマーである限り、実質的にすべてのタイプのアクリル樹脂である。これらの高分子樹脂は、官能基化されてアニオン性もしくはカチオン性交換樹脂を形成し得るか、またはポリマーは官能基化されないままであり得る。しかしながら、官能基化された陰イオンまたは陽イオン交換樹脂の使用は、潤滑剤から他の望ましくない汚染物質および分解生成物(酸、金属など)を除去する固体媒体の能力を高める可能性がある。
【0012】
本発明の「より大きい細孔」の樹脂が、どのように微細な不溶性リン酸エステル潤滑剤ワニス粒子などを捕捉するかについての上記の説明を考慮すると、本発明の非常に多孔質な樹脂を用いる本発明者らの動機付けは明らかであるように思われる。しかしながら、これらの比較的大きい細孔含有イオン交換樹脂の使用は、まったく直観に反していた。先行技術に記載のイオン交換樹脂は、酸性潤滑剤分解生成物を除去することを目的としているので、潤滑剤処理の当業者は、高い交換(酸除去)能力を有する樹脂を選択するであろう。多くのより小さい細孔を有するイオン交換樹脂は、より大きい表面積を特徴とし、したがって、本質的により大きい酸除去能力を提供する。直観的に、潤滑剤処理の当業者はまた、ワニスを除去するための処理媒体の吸着能力を最大化するために、より小さい細孔およびより大きい表面積を有するイオン交換樹脂を選択するであろう。本発明者らは、本発明のイオン交換樹脂の細孔サイズ中央値を劇的に増加させることにより、この確立された常識と完全に矛盾して行動し、それにより、本発明のイオン交換樹脂の表面積を圧倒的に減少させた。イオン交換樹脂の細孔サイズにおいて、この直観に反する大幅な(20倍程度)増加は、それにもかかわらず、微細な潤滑剤汚染物質および分解生成物(ワニス、煤、コークスなど)のこれまで認識されず、また未解決な問題を処理するための新規で驚くほど改善された結果をもたらした。
【0013】
本発明は、本発明の媒体の酸除去能力を犠牲にして、微細な潤滑剤汚染物質および分解生成物(ワニス、煤、コークスなど)の除去が、これまで困難または不可能であったことに焦点を合わせている。しかしながら、酸除去の先行技術の必要性は、依然として重要である。幸いなことに、本発明のより大きい細孔のイオン交換樹脂を、細孔サイズがより小さく、付随してより大きな酸除去能力を有する他のイオン交換樹脂と組み合わせることが可能である。本発明のイオン交換樹脂とより慣用な先行技術の樹脂との組合せは、2種以上のタイプのイオン交換樹脂ビーズを混合または層状化することによって達成することができる。約20%(w/w)の本発明の「大細孔」イオン交換樹脂を約80%(w/w)の従来の酸捕捉イオン交換樹脂と組み合わせることが可能である。混合物または層状化をそれぞれ約50%にすることも同様に許容される。(本明細書およびDufresne特許出願公開に記載されるように)本発明および先行技術のイオン交換樹脂が働く異なるメカニズムを理解した後、酸削減の必要性と合わせて比率の選択を行う必要がある。主には、従来の酸捕捉媒体量の削減は、化学量論的に、イオン交換樹脂混合物全体の酸除去能力を同時に低下させるためである。本発明のイオン交換樹脂に関しては、およそ20%以上の含有が経験的に適切であることが示されている。なぜなら、本発明におけるより大きい細孔は、かなりの量の微細な潤滑剤汚染物質および分解生成物の捕捉を可能にする、非常に高い空隙をもたらすからである。酸がそれほど懸念されないシステムにおいては、本発明の新規なイオン交換樹脂を、先行技術の酸除去樹脂と混合する必要なく使用できる。
【0014】
したがって、明らかに、本発明の核心は、相対的により大きい(20倍程度)細孔を有するイオン交換樹脂を使用して、リン酸エステルワニス(これまで定期的に監視されていなかったが、それにもかかわらず、回避可能な機械の故障およびダウンタイムならびに早期の潤滑剤寿命につながった)を含む、微細な潤滑剤汚染物質および分解生成物を捕捉するという洞察にある。
【0015】
ここで図1を参照すると、カートリッジ12が設置された状態で断面化した、潤滑剤システムにおける洗浄ループに特有なパイプ10の一部分の断面図が示されている。カートリッジ12はパイプのセクションであり、ある量の本発明による固体媒体の多孔質ビーズ16の上流および下流の両方に、典型的には細孔のあるスクリーンまたはメッシュである2つのバリア14が配置されている。図では、説明のために、ビーズを拡大しており、縮尺どおりに示されていない。バリア14における細孔またはメッシュスクリーン穴は、ビーズ16をカートリッジ12内の位置に保持するため、ビーズ16の最小サイズよりも小さければよい。カートリッジ12は、ビーズ16の交換のために、ねじ部品または圧入、エポキシ封止、溶接、ロボット封止もしくは他の任意の構築手段を含む構造的一体化の同等の手段を介して除去することができる。1つまたは複数の従来の微粒子フィルタ(図示せず)を、流体の流れに沿った任意の点で追加することができるが、任意である。パイプ10のセクションを、潤滑剤システム内の任意の都合のよい場所、好ましくはメンテナンス(固体媒体ビーズの交換)のために容易にアクセスできる場所に配置することができる。図1には示されていないが、一次ろ過システムに対して二次的に、または一次循環システムの一部として、特に潤滑剤浄化のために「キドニーループ」型を導入することも有益である。図2は、カートリッジ22、バリア24、ビーズ26、入口パイプ20、および出口パイプ28を有する、輻流用の代替構成を示す。これらはすべて図1と同様である。図3は、バルク処理代替案の平面図であり、容器30が本発明のビーズ36を保持し、該ビーズをハッチ32を介して容器に充填することができ、流体の流れはパイプ31を介して入り、パイプ33を介して出る。容器は、本発明のビーズを添加または除去するための代替アクセスポイントとして使用することができる、任意のドーム型蓋ハッチ32を含む。繰り返しになるが、これらの図のいずれにおいても、ビーズは縮尺どおりに示されていない。
【0016】
タービン潤滑剤の用途は、通常、400〜20,000ガロンの潤滑剤、またはそれよりも少なくもしくは多くを含むことができ、必要とされる本発明に関連の媒体は、比例して増加または減少する。必要な媒体量はまた、処理される潤滑剤の関数として変化する。本発明において、調整または浄化することができるオイルのタイプ(図1図3に示す特定の構造の有無にかかわらず)は、APIグループI、II、III、IVまたはVに分類される鉱物油系および合成系潤滑剤ならびに絶縁流体である。当業者が認識しているように、リン酸エステル系制御油は、APIグループV中の非炭化水素系合成潤滑剤である。したがって、本発明は、多種多様な媒体量および流体システムに適合する。相対的にはるかに大きい細孔を有する本開示の媒体を使用することを、本明細書から学ぶ当業者は、過度の実験なしに、使用する多孔質樹脂媒体量およびそれを交換する頻度を容易に決定することができるだろう。とはいえ、エステル系合成潤滑剤のための典型的な設備は、約400ガロンの潤滑剤を処理するために、本開示のビーズ(本発明ビーズ100%、本発明ビーズ50%および酸削減ビーズもしくは他の媒体ビーズ50%、または上記の本発明ビーズ20%および酸削減もしくは他の媒体ビーズ80%)を含有する、それぞれ直径6インチおよび長さ18インチの2つのカートリッジを含み得るが、これに限定されない。あるいは、炭化水素系タービン潤滑剤のための典型的な設備は、単に非限定的な例として、約6,000ガロンの潤滑剤を処理するために、それぞれ直径1フィートおよび長さ20インチの2つの樹脂充填カートリッジを含み得る。上記の例において、エステル系合成潤滑剤の設備には、炭化水素系潤滑剤において使用されたものよりも、潤滑剤の体積あたり約3倍多い樹脂を投入したことに留意されたい。
【0017】
本発明を上記で具体的に説明してきたが、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されている場合に限り限定されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】