(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-501198(P2022-501198A)
(43)【公表日】2022年1月6日
(54)【発明の名称】軸受胴減摩層銅合金充填装置及び軸受胴バイメタル複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/00 20060101AFI20211210BHJP
B22D 11/01 20060101ALI20211210BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20211210BHJP
C22C 9/08 20060101ALI20211210BHJP
【FI】
B22D11/00 N
B22D11/00 F
B22D11/01 B
C22C1/02 503B
C22C9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2021-510887(P2021-510887)
(86)(22)【出願日】2020年7月17日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月22日
(86)【国際出願番号】CN2020102636
(87)【国際公開番号】WO2021027486
(87)【国際公開日】20210218
(31)【優先権主張番号】201910733305.6
(32)【優先日】2019年8月9日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,IT,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521078562
【氏名又は名称】ダーリェン ユニバーシティー オブ テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】DALIAN UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ティンジー
(72)【発明者】
【氏名】ジエ,ジンチュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,トンミン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ジーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,イーピン
(72)【発明者】
【氏名】カン,フイジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,イーボー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ゾンニン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,エンイー
(57)【要約】
【課題】
軸受胴減摩層銅合金充填装置及び軸受胴バイメタル複合材料の製造方法を開示する。
【解決手段】
本発明は、金属合金材料の技術分野に属する。本発明の提供する軸受胴減摩層の銅合金充填装置は、銅合金溶錬装置および銅合金支持装置を含む。本発明は、銅合金溶錬装置における溶錬炉1で銅合金原料を溶錬し、銅合金溶湯を得ることができる。本発明は、流量制御装置2を使用して、溶湯の流出速度を制御し、流体が導流構造3の流路を流れるとき、分流棒6の分流効果により、銅合金溶湯を銅合金支持装置8上に均一に平らに広げ、あらゆる場所の減摩層銅合金の厚さの均一性をより適切に制御し、軸受胴材料の至る所に湯境及び不十分な鋳造を回避することができる。同時に、分流棒6の分流効果により、支持基板8への銅合金溶湯の衝撃を低減することができ、それにより、銅合金溶湯の酸化介在物を低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受胴減摩層銅合金充填装置であって、銅合金溶錬装置と銅合金支持装置を含み、
前記銅合金溶錬装置は、
溶錬炉(1)と、
溶錬炉(1)の内部にある流量制御装置(2)と、
溶錬炉(1)の底部出口と連通して、ハウジング(4)、前記ハウジング(4)によって形成される内部空洞である流路(5)及び前記流路(5)の内部にある分流棒(6)を含む導流構造(3)と、
導流構造(3)の外側にある加熱装置(7)と、を含み、
前記銅合金溶錬装置は、可動支持基板(8)と、前記支持基板(8)を加熱するための加熱コイル(9)と、支持基板(8)の底部にある冷却装置(10)と、を含み、
前記銅合金溶錬装置の導流構造(3)は、銅合金支持装置より高い
ことを特徴とするベアリングシェル減摩層銅合金充填装置。
【請求項2】
前記溶錬炉(1)は中周波溶錬炉であり、前記導流構造(3)の材料は、グラファイト、マグネシア砂、石英セラミックの1つまたは複数であることを特徴とする請求項1に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項3】
前記導流構造(3)は上半分と下半分に分けられ、前記上半分の導流構造(3−1)と縦軸との間の夾角は10〜30°であり、下半分の導流構造(3−2)と縦軸との間の夾角は60〜80°であり、前記上半分導流構造(3−1)の流路(5−1)の形状は長方形であり、前記下半分導流構造(3−1)の流路(5−2)の形状は三角形であり、前記三角形の頂角は20〜60°であることを特徴とする請求項1に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項4】
前記分流棒(6)の数量は3〜10個であり、導流構造(3)の出口端にある隣接する分流棒(6)間のギャップは5〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項5】
前記分流棒(6)は流路(5)に完全に固定されず、銅合金溶湯が流路(5)を通過するとき、前記分流棒(6)は銅合金溶湯と一緒に移動できることを特徴とする請求項1に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項6】
前記銅合金溶錬装置の導流構造(3)は、銅合金支持装置より5〜10mm高いことを特徴とする請求項1に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項7】
前記支持基板(8)は10#炭素鋼板であり、前記加熱コイル(9)は高周波誘導加熱コイルであることを特徴とする請求項1に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項8】
前記支持基板(8)は、厚さが3mmであり、幅が100〜400mmであることを特徴とする請求項7に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項9】
前記冷却装置(10)と支持基板(8)の間隔は10〜100mmであることを特徴とする請求項1に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項10】
前記冷却装置(10)は、水冷却装置であり、前記冷却装置(10)は、扇形のノズルを有し、前記扇形のノズルの水出口角度は、30〜65°であり、水出口直径は、1〜4mmであることを特徴とする請求項1に記載の軸受胴減摩層銅合金充填装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置を使用することにより、軸受胴バイメタル複合材料を製造する方法であって、
銅合金原料を溶錬炉(1)に加えて溶錬し、銅合金溶湯を得るステップ(1)と、
不活性ガスの保護下で加熱装置(7)及び加熱コイル(9)をオンにして、銅合金溶湯を、導流構造(3)を介して支持基板(8)の表面に平らに広げて銅合金溶湯層が得られ、同時に支持基板(8)は水平方向に沿って平行に移動するステップ(2)と、
前記銅合金溶湯を支持基板(8)の表面上に広げてから30〜120s以内に、冷却装置(10)をオンにして前記銅合金溶湯層および支持基板(8)を冷却して、軸受胴バイメタル複合材料を得るステップ(3)と、を含むことを特徴とする軸受胴バイメタル複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(1)では、銅合金の組成は、Pbが24wt.%、Snが2wt.%であり、残りが銅であり、前記溶錬温度は1100〜1250℃であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(2)において、加熱装置(7)の温度は1100〜1200℃であり、前記加熱コイル(9)の加熱電力は30〜80kWであり、加熱温度は600〜900℃であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(2)では、不活性ガスはArガスであり、前記不活性ガスの流量は20〜40L/minであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(2)において、銅合金溶湯の流速は0.2〜0.5m/sであり、前記支持基板8の移動速度は0.5〜3m/minであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却後に支持基板の温度は20〜50℃であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年8月9日に中国特許庁に提出され、出願番号201910733305.6、発明の名称「軸受胴減摩層銅合金充填装置及び軸受胴バイメタル複合材料の製造方法」の中国特許出願の優先権を要求し、そのすべての内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、金属合金材料の技術分野、特に軸受胴減摩層銅合金充填装置及び軸受胴バイメタル複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高速、高負荷、高出力などの方向でのさまざまな自動車エンジンの開発に伴い、軸受胴材料の品質要件はますます厳しくなっている。
【0004】
現在、広く使用されている軸受胴材料は、銅鉛スズ合金/炭素鋼軸受胴材料であり、主な製造方法は、静的鋳造法、遠心鋳造法、粒子誘導遠心鋳造法、粉末冶金焼結圧延複合法などの方法である。ただし、上記の方法にはそれぞれ弱点があり、たとえば、静的鋳造法には鋳造欠陥やPb元素の偏析等の問題があり、遠心鋳造法や粒子誘導遠心鋳造法にはPb元素の偏析が激しく、品質安定性が低く、粉末冶金焼結圧延複合法を使用して得られた軸受胴材料は、構造密度が低く、界面結合が不十分である。
【0005】
現在、鋳造圧延法による軸受胴材料の製造の潜在力が高く、製造したスチールバック/減摩銅合金バイメタル複合材料は、界面接合性能が高く、鉛リッチな潤滑相が小さくて均一に分布している。ただし、鋳造複合プロセスでは、銅合金溶湯が不規則に流れるので、湯境や不十分な鋳造などの鋳造欠陥が発生し易い。また、この方法で得られる合金層の厚さは均一ではなく、例えば、軸受胴複合材料では、鋳片の中間層とエッジの厚さの差が2〜6mmに達する可能性があり、後の軸受胴の加工難しさと銅合金層原材料の無駄さを増加させる。したがって、軸受胴減摩層銅合金を均一に充填するための方法と装置を探すことは、重要な応用価値と工学的重要性を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これを考慮して、本発明は、軸受胴減摩層銅合金充填装置及び軸受胴バイメタル複合材料の製造方法を提供することを目的とする。本発明により提供される軸受胴減摩層銅合金充填装置は、鋳造プロセス中の銅合金溶湯の均一な充填を促進し、不十分な鋳造および湯境などの鋳造欠陥を回避することができる。本発明の製造方法を使用して得られた軸受胴バイメタル複合材料は、良好な平坦性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術解決手段を提供する。
本発明は、銅合金溶錬装置および銅合金支持装置を含む、軸受胴減摩層の銅合金充填装置を提供し、
前記銅合金溶錬装置は、
溶錬炉1と、
溶錬炉1の内部にある流量制御装置2と、
溶錬炉1の底部出口と連通して、ハウジング4、前記ハウジング4によって形成される内部空洞である流路5、及び前記流路5の内部にある分流棒6を含む導流構造3と、
導流構造3の外側にある加熱装置7と、
を含み、
前記銅合金支持装置は、可動支持基板8と、前記支持基板8を加熱するための加熱コイル9と、支持基板8の底部にある冷却装置10と、を含む。
【0008】
前記銅合金溶錬装置の導流構造3は、銅合金支持装置より高い。
【0009】
好ましくは、前記溶錬炉1は中周波溶錬炉であり、前記導流構造3の材料は、グラファイト、マグネシア砂、石英セラミックの1つまたは複数である。
【0010】
好ましくは、前記導流構造3は上半分と下半分に分けられ、前記上半分の導流構造3と縦軸との間の夾角は10〜30°であり、下半分の導流構造3と縦軸との間の夾角は60〜80°であり、前記上半分導流構造3の流路5の形状は長方形であり、前記下半分導流構造3の流路5の形状は三角形であり、前記三角形の頂角は20〜60°である。
【0011】
好ましくは、前記分流棒6の数量は3〜10個であり、導流構造3の出口端にある隣接する分流棒間のギャップは5〜10mmである。
【0012】
好ましくは、前記銅合金溶錬装置の導流構造3は、銅合金支持装置より5〜10mm高い。
【0013】
好ましくは、前記支持基板8は10#炭素鋼板であり、前記加熱コイル9は高周波誘導加熱コイルである。
【0014】
本発明は、上記の装置を使用して軸受胴バイメタル複合材料を製造するための方法を提供し、
銅合金原料を溶錬炉1に加えて溶錬し、銅合金溶湯を得るステップ(1)と、
不活性ガスの保護下で加熱装置7及び加熱コイル9をオンにし、導流構造3を介して銅合金溶湯を支持基板8の表面に平らに広げさせて銅合金溶湯層が得られ、支持基板8は水平方向に沿って平行に移動するステップ(2)と、
前記銅合金溶湯を支持基板8の表面上に広げさせてから30〜120s以内に、冷却装置10をオンにして前記銅合金溶湯層および支持基板8を冷却して、軸受胴バイメタル複合材料を得るステップ(3)と、
を含む。
【0015】
好ましくは、前記ステップ(1)における銅合金の組成は、Pbが24wt.%、Snが2wt.%、残りが銅であり、前記溶錬温度は1100〜1250℃である。
【0016】
好ましくは、前記ステップ(2)において、加熱装置7の温度は1100〜1200℃であり、前記加熱コイル9の加熱電力は30〜80kWである。
【0017】
好ましくは、前記ステップ(2)において、銅合金溶湯の流速は0.2〜0.5m/sであり、前記支持基板8の移動速度は0.5〜3m/minである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、銅合金溶錬装置および銅合金支持装置を含む、軸受胴減摩層の銅合金充填装置を提供し、本発明は、銅合金溶錬装置の溶錬炉1を使用して銅合金原料を溶錬し、銅合金溶湯を得ることができる。本発明は、流量制御装置2を使用して、溶湯の流出速度を制御し、流体が導流構造3の流路5を通過するとき、分流棒6の分流効果により、銅合金溶湯を銅合金支持装置上に均一に平らに置き、あらゆる場所の減摩層銅合金の厚さの均一性をより適切に制御し、軸受胴材料の至る所に湯境及び不十分な鋳造を回避することができる。同時に、分流棒6の分流効果により、支持基板8への銅合金溶湯の衝撃を低減することができ、それにより、銅合金溶湯の酸化介在物を低減することができる。
【0019】
本発明は、軸受胴バイメタル複合材料の製造方法を提供し、この方法は、上記の軸受胴減摩層銅合金充填装置を利用して、良好な平坦性を有する軸受胴バイメタル複合材料を得て、同時に、この方法はシンプルで実行しやすく、工業生産を実現しやすい。実施例の結果は、本発明の方法によって得られた軸受胴バイメタル複合材料の平坦度が±0.02mmに達することができることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、軸受胴減摩層の銅合金充填装置の構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、銅合金溶錬装置および銅合金支持装置を含む、軸受胴減摩層の銅合金充填装置を提供し、銅合金溶錬装置と銅合金支持装置を含む構造の模式図を
図1に示し、前記銅合金溶錬装置は、溶錬炉1と、
溶錬炉1の内部にある流量制御装置2と、
溶錬炉1の底部出口と連通して、ハウジング4、前記ハウジング4によって形成される内部空洞である流路5及び前記流路5の内部にある分流棒6を含む導流構造3と、
導流構造3の外側にある加熱装置7と、を含み、
前記銅合金支持装置は、可動支持基板8と、前記支持基板8を加熱するための加熱コイル9と、支持基板8の底部にある冷却装置10と、を含む。
【0022】
前記銅合金溶錬装置の導流構造3は、銅合金支持装置より高い。
【0023】
本発明によって提供される軸受胴減摩層の銅合金充填装置は、銅合金溶錬装置を含み、前記銅合金溶錬装置は、溶錬炉1を含む。本発明において、前記溶錬炉1は、好ましくは中周波溶錬炉であり、前記溶錬炉1の出力は、好ましくは10〜30kW、より好ましくは20kWであり、前記溶錬炉1の周波数は好ましくは1000〜8000Hz、より好ましくは3000〜6000Hzである。前記溶錬炉1により溶錬される銅合金の質量は、好ましくは10〜30kg、より好ましくは15〜25kgである。本発明は、前記溶錬炉1の構造および動力供給様式について特別な要件はなく、その構造および動力供給様式が当業者に周知である溶錬炉1を使用すればよい。本発明において、前記溶錬炉1は、銅合金原料を銅合金溶湯に溶錬することができる。
【0024】
本発明により提供される銅合金溶錬装置は、溶融炉1の内部にある流量制御装置2を含む。本発明において、前記流量制御装置2は、好ましくは、溶錬炉1の底部出口に対して垂直である。本発明は、前記流量制御装置2のタイプ、仕様およびモデルに関して特別な要件はなく、当業者に周知の流量制御装置2を使用すればよい。本発明は、流量制御装置2を介して溶錬炉1の底部の開口部のサイズを制御することで、溶錬炉1からの銅合金溶湯の流速を制御する。
【0025】
本発明によって提供される銅合金溶錬装置は、溶錬炉の底部出口と連通する導流構造3を含む。本発明において、前記導流構造3の材料は、好ましくは、グラファイト、マグネシア砂、石英セラミックの1つまたは複数である。本発明において、前記導流構造3は、好ましくは、上半分と下半分に分けられ、導流構造の上半分3−1と縦軸との間の夾角βは小さく、好ましくは10〜30°であり、導流構造の下半分3−2と縦軸との間の夾角θは比較的大きく、好ましくは60〜80°である。本発明は、導流構造3と縦軸との間の夾角を設計することにより、銅合金溶湯の流速を変化させることができ、その結果、銅合金は、銅合金支持装置の表面に滑らかに流れる。
【0026】
本発明において、前記導流構造は、ハウジング4、流路5及び分流棒6を含む。本発明において、前記導流構造3の最外層はハウジング4であり、ハウジングによって形成される空洞は流路5であり、前記流路5は溶錬炉1の底部出口と連通している。本発明において、前記上半分導流構造3−1の流路5−1の形状は、好ましくは長方形であり、前記下半分導流構造3−2の流路5−2の形状は、好ましくは三角形であり、前記三角形の頂角αは、好ましくは20〜60°、より好ましくは30〜50°である。本発明において、前記導流構造3の上半分および下半分は、好ましくはボルトによって接続されている。本発明は、前記流路5の長さに関する特別な要件がなく、流路5の長さは、軸受胴の銅合金層の幅および導流構造3と縦軸との間の夾角に従って設計すればよい。
【0027】
本発明において、分流棒6は流路5の内部にあり、且つ具体的には下半分導流構造3の流路の内部にある。本発明において、前記分流棒6の数量は、好ましくは3〜10個、より好ましくは5〜8個である。前記分流棒6は、中実構造の棒状であり、その幅は、好ましくは10〜20mmであり、長さは、前記下半分導流構造3−2の流路の長さと同じである。本発明において、導流構造3の出口端にある前記隣接する分流棒6間のギャップは、好ましくは5〜10mm、より好ましくは6〜8mmである。本発明において、前記分流棒6は流路5に完全に固定されず、銅合金溶湯が流路5を通過する時、前記分流棒6は銅合金溶湯と一緒に移動でき、具体的には、銅合金の溶湯が多い箇所では、分流棒6は銅合金の溶湯が少ない箇所に押し込まれ、よってさまざまな位置での溶湯の流量を制御し、溶湯の均一な分布を実現する。本発明は、分流棒6の分流効果を通じて、銅合金溶湯を銅合金支持装置上に均一に平に置き、同時に、銅合金溶湯の支持基板8への衝撃を低減し、それにより、銅合金溶湯の酸化介在物を低減する。
【0028】
本発明により提供される銅合金溶錬装置は、導流構造3の外側にある加熱装置7を含む。本発明において、前記加熱装置7は、好ましくは、シリコン−モリブデンロッド加熱体であり、これは、加熱のために抵抗加熱および放射熱伝達を使用する。前記加熱装置7の形状は、好ましくは平板状であり、前記加熱装置7は、好ましくは、導流構造3の下半分に平行であるが、導流構造3と接触していない。本発明は、加熱温度が予熱要件を満たすことができる限り、前記加熱装置7のサイズおよび仕様に関する特別な要件がない。本発明は、加熱装置7を使用して導流構造3を予熱し、これは、導流構造3を流れるときに銅合金溶湯が凝固するのを防ぐことができる。
【0029】
本発明により提供される軸受胴減摩層銅合金充填装置は、銅合金支持装置を含み、前記銅合金支持装置は、可動支持基板8を含む。本発明において、前記支持基板8は、好ましくは10#炭素鋼板であり、本発明において、前記支持基板8は軸受胴材料の基板層である。本発明は、前記支持基板8の厚さおよび幅について特別な要件はなく、軸受胴材料基板層の幅に応じて設計すればよい。本発明の具体的な実施例において、前記支持基板8の厚さは好ましくは3mmであり、幅は好ましくは100〜400mmである。本発明において、前記支持基板8の移動モードは、好ましくは機械牽引であり、前記牽引装置は好ましくはロール牽引またはスクリュー牽引である。
【0030】
本発明により提供される銅合金支持装置は、支持基板8を加熱するための加熱コイル9を含む。本発明において、前記加熱コイル9は、好ましくは高周波誘導コイルであり、前記加熱コイル9の加熱電力は、好ましくは30〜80kW、より好ましくは40〜70kWである。本発明において、前記加熱コイル9は、支持基板8の一端にあるが、支持基板8とは接触せず、前記支持基板8は、加熱コイル9をスムーズに通過することができる。本発明は、加熱コイル9の加熱効果により支持基板8を予熱して、銅合金溶湯が支持基板8と複合されたときに支持基板8が変形するのを防ぐことができる。
【0031】
本発明により提供される銅合金支持装置は、支持基板8の底部にある冷却装置10を含む。本発明において、前記冷却装置10は、銅合金溶湯層で覆われた支持基板8の底部にあるが、支持基板8とは接触せず、前記冷却装置10と支持基板8との間の距離は、好ましくは10〜100mm、より好ましくは30〜70mmである。本発明において、前記冷却装置10は、好ましくは水冷装置であり、前記冷却装置10は、扇形のノズルを有し、前記扇形のノズルの水出口角度は、好ましくは30〜65°であり、水出口直径は、好ましくは1〜4mmである。本発明は、冷却装置10を介して銅合金溶湯および支持基板8を冷却し、これは、銅合金溶湯を迅速に凝固させ、支持基板8との軸受胴バイメタル複合材料を形成することができる。
【0032】
本発明において、前記銅合金溶錬装置の導流構造3は、銅合金支持装置より高く、前記高さは好ましくは5〜10mm、より好ましくは6〜8mmである。
【0033】
本発明は、上記の装置を使用することによって軸受胴バイメタル複合材料を製造するための方法を提供し、
銅合金原料を溶錬炉1に加えて溶錬し、銅合金溶湯を得るステップ(1)と、
不活性ガスの保護下で加熱装置7及び加熱コイル9をオンにして、導流構造3を介して銅合金溶湯を支持基板8の表面に平らに広げさせて銅合金溶湯層が得られ、同時に支持基板8は水平方向に沿って平行に移動するステップ(2)と、
前記銅合金溶湯を支持基板8の表面上に平らに広げてから30〜120s以内に、冷却装置10をオンにして前記銅合金溶湯層および支持基板8を冷却して、軸受胴バイメタル複合材料を得るステップ(3)と、を含む。
【0034】
本発明では、軸受胴バイメタル複合材料の製造を開始する前に、支持基板8の表面上の酸化物および油汚れを除去するために、好ましくは、支持基板8を洗浄する。前記洗浄用の洗浄剤は、好ましくは、NaOH及び/又はHClである。
【0035】
本発明において、銅合金原料を、溶錬するために溶錬炉1に添加して、銅合金溶湯を得る。本発明において、前記銅合金の組成は、好ましくはPbが24wt.%、Snが2wt.%であり、残りが銅である。本発明において、前記銅合金の銅原料は、好ましくは電解銅であり、その純度は、好ましくは≧99.97wt.%である。前記銅合金の鉛原料は、好ましくは純鉛であり、その純度は、好ましくは≧99.9wt.%である。前記銅合金のスズ原料は、好ましくは純粋なスズであり、その純度は、好ましくは≧99.9wt.%である。本発明において、前記溶錬の温度は、好ましくは1100〜1250℃、より好ましくは1200℃である。本発明は、前記溶錬時間について特別な要件はなく、前記銅合金は、当業者に周知の溶錬時間を使用して、均一な溶湯に溶錬すればよい。
【0036】
銅合金溶湯が得られた後、本発明は、加熱装置7および加熱コイル9をオンにし、不活性ガスの保護下で、導流構造3を介して銅合金溶湯を支持基板8の表面に平らに広げさせて銅合金溶湯層が得られ、支持基板8は水平方向に沿って平行に移動する。本発明において、前記加熱装置7の加熱温度は、好ましくは1100〜1200℃、より好ましくは1150℃である。前記加熱コイル9の加熱温度は、好ましくは600〜900℃、より好ましくは700〜800℃である。本発明において、前記不活性ガスは好ましくはArガスであり、前記不活性ガスの流量は好ましくは20〜40L/min、より好ましくは30L/minである。本発明は、不活性ガスによって保護され、一方では、銅合金溶湯が流出するときに酸化しないことを保証でき、他方では、支持基板8が加熱されたときに酸化しないことを保証でき、これは、銅合金溶湯と支持基板8の複合に有益である。本発明において、前記銅合金溶湯の流速は、好ましくは0.2〜0.5m/s、より好ましくは0.3〜0.4m/sである。前記支持基板8の移動速度は、好ましくは0.5〜3m/min、より好ましくは1〜2m/minである。本発明において、前記支持基板8の移動方向は、具体的には、加熱コイル9から離れていく方向である。本発明は、銅合金溶湯の流速および支持基板8の移動速度を制御し、その結果、溶湯の平に広げる速度と支持基板8の移動速度とが一致することとなり、これは、銅合金溶湯と支持基板8の冶金学的組み合わせに有益である。
【0037】
前記銅合金溶湯を支持基板8の表面上に広げてから30〜120s以内に、本発明では冷却装置10をオンにして前記銅合金溶湯層および支持基板8を冷却し、軸受胴バイメタル複合材料を得る。本発明において、前記冷却装置10をオンにする時間は、好ましくは、銅合金溶湯が支持基板8の表面に広がった後の30〜120s、より好ましくは50〜100sであり、冷却後の前記支持基板8の温度は、好ましくは20〜50℃である。本発明において、銅合金溶湯が支持基板8の表面に平らに広がった後、銅合金溶湯層のセクションが支持基板8の表面に形成され、本発明の前記冷却装置10は、銅合金溶湯層が形成される前記支持基板8の部分を冷却し、銅合金溶湯層が形成されない支持基板8の部分は冷却されず、依然として予熱状態を維持する。本発明において、銅合金溶湯層および支持基板8を冷却することにより、銅合金溶湯は、急速に凝固され、支持基板との軸受胴バイメタル複合材料を形成することができる。
以下は、実施例と併せて本発明が提供する軸受胴減摩層銅合金充填装置および軸受胴バイメタル複合材料の製造方法について詳細に説明するが、それらは本発明の保護範囲を限定するものとして理解することはできない。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
(1)支持基板として厚さ3mm、幅200mmの10#高品質炭素鋼板を使用し、NaOHとHClを使用して表面の酸化物と油汚れを洗浄した。
(2)軸受胴減摩層銅合金充填装置を取り付け、導流構造では、三角形流路の頂角は20°で、三角形流路に3つの分流棒を取り付けた。
(3)原料のカソード銅(純度99.97wt.%)、純鉛(純度99.9wt.%)、純スズ(純度99.9wt.%)を秤量し、組成がCu−24wt.%Pb−2wt.%Snである銅合金原料を調製し、中周波誘導溶錬炉により、1100℃で均一な組成の銅合金溶湯に溶錬された。
(4)加熱装置の温度を1100℃に加熱し、加熱コイルの温度を600℃に加熱し、Arガス(流量は20L/min)の保護下で、流量制御システムをオンにし、銅合金溶湯を、導流構造を介して支持基板の表面に平らに広げ、ここで銅合金溶湯の流速は0.2m/s、支持基板の移動速度は0.5m/minであり、銅合金溶湯層が得られた。
(5)銅合金溶湯が支持基板の表面に平らに広がってから30s後、冷却装置をオンにし、導流構造の後方に形成された溶湯層及び支持基板を冷却し、前記支持基板を20℃に冷却して、軸受胴バイメタル複合材料が得られた。
【0039】
製造した軸受胴バイメタル複合材料の平坦度を検出し、検出方法は、鋼板と銅合金の長さと幅に沿って10mmごとに超音波厚さ計で減摩銅合金の厚さを測定することであった。
【0040】
検出によれば、得られた軸受胴バイメタル複合材料の平坦度は±1.2mmであり、湯境及び不十分な鋳込みの現象がなかった。
【0041】
(実施例2)
(1)厚さ3mm、幅200mmの10#高品質炭素鋼板を使用し、NaOHとHClを使用して表面の酸化物と油汚れを洗浄した。
(2)軸受胴減摩層銅合金充填装置を取り付け、ここで三角形流路の頂角は30°であり、三角形流路に5つの分流棒を取り付けた。
(3)原料のカソード銅(純度99.97wt.%)、純鉛(純度99.9wt.%)、純スズ(純度99.9wt.%)を秤量し、組成がCu−24wt.%Pb−2wt.%Snである銅合金原料を調製し、中周波誘導溶錬炉により、1200℃で均一な組成の銅合金溶湯に溶錬された。
(4)加熱装置の温度を1150℃に加熱し、加熱コイルの温度を700℃に加熱し、Arガス(流量は30L/min)の保護下で、流量制御システムをオンにし、銅合金溶湯を、導流構造を介して支持基板の表面に平らに広げ、ここで銅合金溶湯の流速は0.3m/s、支持基板の移動速度は1m/minであり、銅合金溶湯層が得られた。
(5)銅合金溶湯が支持基板の表面に平らに広がってから50s後、冷却装置をオンにし、前記支持基板を30℃に冷却して、軸受胴バイメタル複合材料が得られた。
得られた軸受胴バイメタル複合材料の平坦度を実施例1の方法で検出し、検出によれば、得られた軸受胴バイメタル複合材料の平坦度は±1.2mmであり、湯境及び不十分な鋳込みの現象がなかった。
【0042】
(実施例3)
(1)厚さ3mm、幅200mmの10#高品質炭素鋼板を使用し、NaOHとHClを使用して表面の酸化物と油汚れを洗浄した。
(2)軸受胴減摩層銅合金充填装置を取り付け、ここで三角形流路の頂角は50°であり、三角形流路に8つの分流棒を取り付けた。
(3)原料のカソード銅(純度99.97wt.%)、純鉛(純度99.9wt.%)、純スズ(純度99.9wt.%)を秤量し、組成がCu−24wt.%Pb−2wt.%Snである銅合金原料を調製し、中周波誘導溶錬炉により、1250℃で均一な組成の銅合金溶湯に溶錬された。
(4)加熱装置の温度を1150℃に加熱し、加熱コイルの温度を800℃に加熱し、Arガス(流量は35L/min)の保護下で、流量制御システムをオンにし、銅合金溶湯を、導流構造を介して支持基板の表面に平らに広げ、ここで銅合金溶湯の流速は0.4m/s、支持基板の移動速度は2m/minであり、銅合金溶湯層が得られた。
(5)銅合金溶湯が支持基板の表面に平らに広がってから80s後、冷却装置をオンにし、前記支持基板を40℃に冷却して、軸受胴バイメタル複合材料が得られた。
得られた軸受胴バイメタル複合材料の平坦度を実施例1の方法で検出し、検出によれば、得られた軸受胴バイメタル複合材料の平坦度は±1.2mmであり、湯境及び不十分な鋳込みの現象がなかった。
【0043】
(実施例4)
(1)厚さ3mm、幅200mmの10#高品質炭素鋼板を使用し、NaOHとHClを使用して表面の酸化物と油汚れを洗浄した。
(2)軸受胴減摩層銅合金充填装置を取り付け、ここで三角形流路の頂角は60°であり、三角形流路に10つの分流棒を取り付けた。
(3)原料のカソード銅(純度99.97wt.%)、純鉛(純度99.9wt.%)、純スズ(純度99.9wt.%)を秤量し、組成がCu−24wt.%Pb−2wt.%Snである銅合金原料を調製し、中周波誘導溶錬炉により、1200℃で均一な組成の銅合金溶湯に溶錬された。
(4)加熱装置の温度を1150℃に加熱し、加熱コイルの温度を900℃に加熱し、Arガス(流量は30L/min)の保護下で、流量制御システムをオンにし、銅合金溶湯を、導流構造を介して支持基板の表面に平らに広げ、ここで銅合金溶湯の流速は0.5m/s、支持基板の移動速度は3m/minであり、銅合金溶湯層が得られた。
(5)銅合金溶湯が支持基板の表面に平らに広がってから120s後、冷却装置をオンにし、前記支持基板を50℃に冷却して、軸受胴バイメタル複合材料が得られた。
得られた軸受胴バイメタル複合材料の平坦度を実施例1の方法で検出し、検出によれば、得られた軸受胴バイメタル複合材料の平坦度は±1.2mmであり、湯境及び不十分な鋳込みの現象がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎない。本発明の原理から逸脱することなく、当業者にとって、いくつかの改善および修正を行うことができ、これらの改善および修正もまた本発明の保護範囲と見なされるべきであることを指摘すべきである。
【符号の説明】
【0045】
1−溶錬炉、2−流量制御装置、3−導流構造、4−ハウジング5−流路、6−分流棒、7−加熱装置、8−支持基板、9−加熱コイル、10−冷却装置、11−銅合金溶湯層。
【国際調査報告】