(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-501227(P2022-501227A)
(43)【公表日】2022年1月6日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20211210BHJP
【FI】
B28B1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2021-516636(P2021-516636)
(86)(22)【出願日】2019年6月24日
(85)【翻訳文提出日】2021年5月13日
(86)【国際出願番号】EP2019066716
(87)【国際公開番号】WO2020057788
(87)【国際公開日】20200326
(31)【優先権主張番号】18195308.4
(32)【優先日】2018年9月18日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521115133
【氏名又は名称】モブボット エスアー
【氏名又は名称原語表記】MOBBOT SA
(74)【代理人】
【識別番号】100217434
【弁理士】
【氏名又は名称】万野 秀人
(72)【発明者】
【氏名】プティ・アニエス
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥッキ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】リュラン・シモン
(72)【発明者】
【氏名】ガレ・バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ズリアーニ・ファビオ
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
本発明は、コンクリート材料を吹付けるための噴射ヘッド(1)を備える3次元コンクリート構造物製造装置に関する。噴射ヘッド(1)がコンクリート材料を吹付けるための噴射ノズル(11)と、噴射ノズル(11)の両側に設けられ、その間の体積を画定して噴射ノズル(11)が上記の体積にコンクリート材料を吹付けるように適合させる少なくとも2つのガイド面(12)と、を有し、複数の噴射されたコンクリート層で作られる3次元コンクリート構造物を作るように、噴射ヘッド(1)が、制御手段により所定の経路に沿って繰り返し移動し、かつ噴射ノズル(11)の移動中に2つのガイド面(12)の位置を調整するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート材料を吹付けるための噴射ヘッド(1)であって、前記コンクリート材料を吹付けるための噴射ノズル(11)と、前記噴射ノズル(11)の片側に設けられ、第2の壁部品を用いて体積を画定して、前記噴射ノズル(11)を前記体積に前記コンクリート材料を吹付けるように適合させる少なくとも1つのガイド面(12)と、を有し、
制御手段によって所定の経路に沿って繰り返し移動し、かつ前記噴射ノズル(11)の前記移動中に前記少なくとも2つのガイド面(12)の位置を調整するように構成されて、複数の噴射されたコンクリート層で作られる3次元コンクリート構造物を作る噴射ヘッド(1)を備える、
3次元コンクリート構造物製造装置。
【請求項2】
前記第2の壁部品が、前記噴射ノズル(11)の両側に設けられ、その間の体積を画定する少なくとも2つのガイド面(12)を含むようなガイド面でもあることを特徴とする、
請求項1に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項3】
前記噴射ヘッド(1)の後部に位置し、前進方向に垂直な掻き取り部品をさらに備えることを特徴とする、
請求項1または2に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガイド面(12)が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、ポリオキシメチレン(POM)と、ポリジメチルシロキサンと、セラミックと、POMシリコーン表面と、を含む群から選択される撥水性で非粘着性の材料で作られることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項5】
前記ガイド面(12)の少なくとも1つが、滑性液体注入多孔質表面(SLIPS)でコーティングされていることを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項6】
前記ガイド面(12)の少なくとも1つが、垂直軸および/または水平軸に沿って旋回できるように旋回可能に取り付けられることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項7】
前記ガイド面(12)の少なくとも1つが、互いに対して、および/または、前記噴射ヘッドに対して移動可能であって、互いの間、および/または、前記噴射ヘッドとの間の距離、および/または、位置を変更可能であることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項8】
前記ガイド面(12)の少なくとも1つの前に配置されたローラ(15)をさらに備えることを特徴とする、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガイド面(12)が膜などの軟質材料で作られることを特徴とする、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項10】
前記装置のさまざまなレベルでコンクリートの密度および/または前記層の高さを確認する少なくとも1つの特定のセンサを含む品質管理システムをさらに備えることを特徴とする、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項11】
前記噴射ノズル(11)を維持する回転装置をさらに備えることを特徴とする、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項12】
前記ガイド面(12)の側面にこぼれた前記コンクリートを廃棄するように適合された掻き取り部品をさらに備えることを特徴とする、
請求項1〜11のいずれか1項に記載のコンクリート部品製造装置。
【請求項13】
制御手段を介し、前記噴射ヘッド(1)を所定の経路に沿って移動させながら、ガイド面(12)と前記第2の壁部品との間にコンクリート材料を噴射して、第1の高さおよび第1の厚さを有する第1の層を生成するステップと、
前記噴射ヘッド(1)をコンクリートのレオロジおよび動作条件に応じて層ごとに適合される高さまで持ち上げるステップと、
前記コンクリート材料を噴射するステップを繰り返して第2の層を前記第1の層の少なくとも一部分の上に重ねて生成するステップと、を含み、
終了するまで上記の複数のステップを繰り返す、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を使用する3次元構造物の製造方法。
【請求項14】
先行するコンクリート層に吹付けが行われる際、前記吹付けられたコンクリート層が前記先行するコンクリート層の上側のコンクリートを再活性化してコールドジョイントの形成を防止する、
請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記コンクリート層が高密度流吹付けプロセスにより噴射される、
請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
受動的補強材(17)を前記噴射ヘッド(1)経路に沿って前記ガイド面と前記第2の壁部品(12)との間に提供し、前記噴射ヘッド(1)が前記コンクリート材料を、噴射し、かつ、取り囲むことによって、受動的補強材(17)を前記製造される壁に一体化させるステップをさらに含む、
請求項13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造装置を制御して、請求項12〜15に記載の製造方法を実行するように適合された、コンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元コンクリート構造物、鉄筋3次元コンクリート構造物の製造装置、およびそれらの製造方法に関する。より具体的には、3次元コンクリート構造を製造することと、吹付および機能的なコンクリート表面を備えるコンクリートの成型を組み合わせることとのための、付加製造方法および付加製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの付加製造は80年代から存在する。コンクリートの付加製造には、最も広く使用されているコンタークラフト法と、スマートダイナミックキャスティングと、メッシュモールド技術と、従来の高速吹付けコンクリートとの4種類がある。
【0003】
コンタークラフト(輪郭作成)法は、名前が示すように、モルタルのフィラメント(4mm未満の微細材料)を連続する薄層で、通常は高さを数mmから2〜4cmに制限して押し出していくものである。この付加製造では、程度に差はあるがジグザグの補強を備えて部品の剛性を高めた、中空の部品を作る。このようにして構築された部品は、型枠を構成し、その後コンクリートが充填される。
【0004】
コンタークラフトの主な欠点は、米国特許出願公開第2005/196484号明細書で説明されているように、細かいモルタルの薄層が積み重ねられているに過ぎないことである。層間の結合力が弱く、製造されたコンクリート部品は補強材を組み込むことができず、後からコンクリートで充填される必要がある。材料の細粒は構造用途に適しておらず、表面のテクスチャも不均一で、これが顧客には重要な問題となる。
【0005】
スマートダイナミックキャスティング法は、コンクリート構造物の垂直スリップ成形のための装置および方法である。スリップ成形とは、コンクリートの硬化速度に応じた速度で垂直方向に移動させていく型枠にコンクリートを流し込む単一のステップでコンクリート構造物を製造する動的プロセスであり、型枠が離れる時点でコンクリートは自立する。コンクリートは型枠に入れられ、振動によって締固められる。このようなプロセスでは、重力の影響のみによってコンクリートが流し込まれ、積層される。コンクリートの硬化速度が非常に遅いため、2mの柱1本を4〜5時間以上かけて製造することになる。
【0006】
詳細については、米国特許出願公開第2015/367588号明細書に記載されている。この明細書には、動的に移動して垂直構造物に適合する装置が記載されている。上面と下面とが開口されて連結されており、コンクリートを垂直方向にのみ押し出すことができる。
【0007】
メッシュモールド法は、欧州特許出願公開第3042008号明細書に記載されている。それは、ロボットで組み立てられ、コンクリートで充填された補強材である。この方法は時間がかかり、補強材の特別な設計と、補強材部品の間に流し込まれたコンクリートの表面を平滑化する第2の製造ステップとが必要である。
【0008】
吹付けコンクリートは、技術のさまざまな構成部品、すなわち材料として、打設プロセスとして、および、工法としてのショットクリートを表す単一の用語である。ショットクリートは1914年から存在し、絶えず適合されてきた。ショットクリートの用途は幅広く、本来、地盤の安定化が含まれる。トンネルおよび地下の工事、鉱山、コンクリートおよび歴史的建造物の補修、保護ライニング、遮水工事、またはプール建設などで掘削面の安定化に使用される。主な用途は、地下工事と鉱山である。2つの異なる吹付けコンクリートプロセスである、乾式吹付けと湿式吹付けとがあり、ノズルに送り込まれ吹付けられる材料の過剰な圧力が発生するポイントに供給される材料の種類を示す。コンクリートは自然の地面に吹付けられる。結果として得られる吹付けコンクリートの表面は不均一なものとなる。
【0009】
ここ数年で、吹付けコンクリートが付加製造に使用され始めた。米国特許出願公開第2015/059408号明細書では、コンクリートは、掘削時に垂直に配置された補強材に吹付けられる。この装置およびこの方法では、結果として得られる製造されたコンクリート部品の側面が粗面となり、層ごとに、さらには同一層内でも完全に不規則な形状となって、全体的に凹凸のある表面をもたらすことが主な欠点である。このため、コンクリート表面を平滑化するために、ツールを使用して表面を削るか、または表面および設計された構造体を平滑化する追加のステップが必要になり、その結果、時間と費用の無駄が生じる。
【0010】
この点において、本発明の主な目的は上記の問題を解決することであり、より具体的には、改良されたコンクリート構造物を提供し、受動的補強材の一体化を可能にする方法および装置を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、非常に迅速な方法でさまざまな種類のコンクリート部品の製造を可能にする方法および装置を提供することである。
【発明の概要】
【0012】
上記の問題は、本発明によって解決される。
【0013】
あらゆる3次元構造物および層間にコールドジョイントを残すコンクリートの押し出しを使用する付加製造法とは異なり、本発明は、吹付けコンクリートを使用することによってこの問題を解決する。
【0014】
実際、本発明では、コンクリート材料が最下層に噴射され、その結果層間の良好な接着および再活性化が達成されるため、層間のいわゆるコールドジョイントは存在しない。
【0015】
本発明の第1の態様は、コンクリート材料を吹付けるための噴射ヘッドを備える3次元コンクリート構造物製造装置であって、噴射ヘッドがコンクリート材料を吹付けるための噴射ノズルと、噴射ノズルの片側に設けられ、噴射ノズルと別の部品との間の体積を画定して、噴射ノズルが上記の体積にコンクリート材料を吹付けるように適合させる少なくとも1つのガイド面と、を備え、噴射ヘッドが制御手段により所定の経路に沿って繰り返し移動し、かつノズルの移動中にガイド面の位置を調整するように構成されて、複数の噴射されたコンクリート層で作られる3次元コンクリート構造物を作る。それにより、本発明は、改良されたコンクリート構造物を提供する方法および装置を提供し、受動的補強材を備えた3次元構造物をより高速で構築することを可能にする。さらに、片持ち梁構造も可能である。
【0016】
好ましくは、噴射ヘッドは、噴射ノズルの両側に設けられ、互いの間の体積を画定する少なくとも2つのガイド面を備える。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、コンクリート部品製造装置は、噴射ヘッドの後部に位置付けられ、かつ噴射ヘッドの前進方向に平行な掻き取り部品をさらに備える。このような方法により、各層の高さを均一に揃えることができる。層間の表面を平滑化するために、前進方向に垂直な第2の掻き取り部品をさらに備えることもできる。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つのガイド面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリオキシメチレン(POM)、ポリジメチルシロキサンおよびシリコーン表面、またはナイロンを含む群に含まれる不活性で撥水性の非粘着性材料で作られる。これにより、ガイド面は、積み重ねられたコンクリート層の側面に平滑で稠密な横方向表面を提供する。
【0019】
ガイド面においてフィンガおよび型を一体化することは、コンクリートにおいて統合された制限の条件を可能にする。
【0020】
さらにより好ましくは、最良の結果を示すためにPTFEをガイド面材料として選択する。
【0021】
有利には、ガイド面は、滑性液体注入多孔質表面(SLIPS)でコーティングされる。このような方法により、吹付けられたコンクリートはガイド面の表面に付着することなく、さらに平滑で稠密な側面をコンクリート層に提供する。有利には、ガイド面は、ガイド面を回転可能にするシステムに取り付けられる。本発明の好ましい実施形態によれば、ガイド面は、垂直軸および/または水平軸に沿って旋回できるように旋回可能に取り付けられる。このような方法により、噴射ヘッドは湾曲した壁を作ることができる。
【0022】
好ましくは、ガイド面は、ガイド面間の距離および/または位置、ならびに/あるいは噴射ノズルに対する距離および/または位置を変化させることができるように、互いに対して移動可能である。したがって、噴射ヘッドは、生成される壁の厚さを変えることができる。2つのガイド面は、互いに横方向に移動することもでき、複雑な形状に対応することができる。
【0023】
少なくとも1つのガイド面は、湾曲させることができ、複雑な形状にすることができるように軟らかい。他方、ガイド面は、平坦なガイド面、湾曲したガイド面、ローラ形状を有する円形のガイド面などで構成されうる。
【0024】
有利には、コンクリート部品製造装置は、ガイド面の前に配置されたローラをさらに備える。このような方法により、噴射ヘッドはより安定して移動する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、ガイド面の少なくとも1つは、膜などの軟質材料で作られる。これにより、障害物に遭遇し、余剰水を排出する場合には、ガイド面はそれに応じた形となる。
【0026】
コンクリート部品製造装置は、好ましくは、コンクリートの密度を装置のさまざまなレベルで確認する少なくとも1つの特定のセンサを備えうる品質管理システムをさらに備える。このような方法により、ユーザは使用するコンクリートの種類を絶えず制御することができる。
【0027】
さらに、装置は、検出された吹付けコンクリート層の高さに応じてシステムの高さを絶えず適合させるために、システムの高さを制御するセンサを備えることができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、装置は、噴射ノズルを維持する回転管をさらに備える。これにより、コンクリート供給ホースの巻き付きを防止することができる。
【0029】
有利には、装置は、ガイド面の側面にこぼれたコンクリートを廃棄するように適合された掻き取り部品を備える。これにより、ガイド面をきれいに保つことができる。
【0030】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の装置を使用するコンクリート部品製造方法であり、第1の高さおよび第1の厚さを有する第1の層を生成するように、制御手段を介し、所定の経路に沿って噴射ヘッドを移動させながらガイド面と別の面との間にコンクリート材料を噴射するステップと、噴射ヘッドをコンクリートのレオロジおよび動作条件に応じて層ごとに適合される高さまで持ち上げるステップと、第2の層を第1の層の少なくとも一部分の上に重ねて生成するように、コンクリート材料を噴射するステップを繰り返すステップと、を含み、終了するまで上記の複数のステップを繰り返す。本発明のこの装置の特有の利点は、本発明の第1の態様の方法の特有の利点と類似しており、ここでは繰り返さない。
【0031】
好ましくは、先行するコンクリート層に吹付けが行われる際、吹付けられたコンクリート層は、運動エネルギーを介して上記の先行するコンクリート層の上側のコンクリートを再活性化し、コールドジョイントの形成を防止する。このような方法により、異なる層が互いに強固に連結される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、コンクリート部品製造方法は、鉄筋および/またはカーボンメッシュのガラス繊維で作られた受動的補強材を、噴射ヘッドがその上にコンクリート材料を噴射して取り囲むように噴射ヘッド経路に沿って提供することにより、上記の製造される壁に一体化させるステップをさらに含む。このような方法により、作り出される壁の種類を増やし、補強材を壁に簡単に一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明のさらなる特有の利点および特徴は、添付の図面を参照する本発明の少なくとも1つの実施形態の以下の非限定的な説明からより明らかになる。
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における噴射ヘッドの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態における噴射ヘッドの詳細を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、コンクリート部品製造方法の第1の実施形態における、本発明の噴射ヘッドの動作の概略図である。
【
図3B】
図3Bは、コンクリート部品製造方法の第1の実施形態における、本発明の噴射ヘッドの動作の概略図である。
【
図4A】
図4Aは、コンクリート部品製造方法の第2の実施形態における、本発明の噴射ヘッドの動作の概略図である。
【
図4B】
図4Bは、コンクリート部品製造方法の第2の実施形態における、本発明の噴射ヘッドの動作の概略図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の好ましい実施形態におけるガイド面を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の好ましい実施形態におけるガイド面を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の好ましい実施形態におけるガイド面を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の別の好ましい実施形態におけるガイド面を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の別の好ましい実施形態におけるガイド面を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の別の好ましい実施形態におけるガイド面を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の噴射ヘッドと、コンクリートポンプと、空気および促進剤の供給部と、を含む吹付けシステム一式の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の詳細な説明は、実施形態の任意の特徴を他の任意の異なる実施形態の特徴と有利な方法で組み合わせることができるため、本発明を非限定的な方法で説明することを意図している。
【0035】
本発明は、従来のコンクリート、高性能コンクリート、超高繊維補強コンクリート、ポリマーコンクリート、軽量コンクリート、ガラスコンクリートおよび他の任意のセメント系材料または水硬性結合剤系材料を含む任意の種類のコンクリート材料を用いて3次元オブジェクトを製造する方法および装置に関する。本発明はコンクリート材料オブジェクトに関するが、プラスチックなどの3D印刷に適合された他の任意の材料にも本発明を使用できることは確実かつ明白である。コンクリート材料は、ガイド面12間の噴射ノズル11を介して吹付けられ、噴射ヘッド1は制御手段、好ましくはロボットアームによって誘導される。ヘッド1に高い自由度を与えるために、噴射ノズル11およびガイド面12は、3軸、4軸または6軸を有するロボットアームによって保持され、方向付けられることが好ましい。
【0036】
本出願は、2つのガイド面を有する好ましい実施形態を説明するが、例えば、本装置を使用して、第2のガイド面として機能する別の壁に対して、コンクリート壁を作る場合、単一のガイド面を有する実施形態も本発明に含まれることに留意されたい。
【0037】
図1は、本発明の第1態様である、コンクリートを吹付けて3次元オブジェクトを生成するコンクリート部品製造装置の第1の実施形態による噴射ヘッド1を示す。
【0038】
噴射ヘッド1は、コンクリートを吹付けるための噴射ノズル11と、この実施形態では噴射ノズル11の両側に、かつ好ましくは噴射ノズル11の前(移動方向)に設けられ、その間の体積を画定して、噴射ノズル11がその体積にコンクリートを吹付けるように適合させる2つのガイドプレート12を備える。この装置では、噴射ヘッド1がロボットアームによって制御され、所定の経路に沿って繰り返し移動して複数のコンクリート層20、21で作られるコンクリート部品を作り出すため、通常の3D印刷と同様の方法で3Dコンクリート構造物が実現されうる。
【0039】
図5A〜
図5Cおよび
図6A〜
図6Cは、ガイド面の2つの異なる例を示す。ガイド面12は、湾曲させることができ、複雑な形状にすることができるように軟らかい。その一方で、ガイド面は、硬質または軟質のいずれかの平坦なガイドプレート、平坦なガイド面、湾曲したガイド面、円形のガイド面(この場合には、連続した円形のガイド面)、さらにはローラ形状を有するガイド面などで構成することができる。ただし、以下では、図面に対応するために「ガイドプレート」という用語を使用するが、任意の種類のガイド面を使用することができることを理解されたい。
【0040】
均一な高さを有するコンクリート層20、21を生成するために、装置の噴射ヘッド1は、噴射ヘッド1の後部に位置付けられ、かつ前進方向に垂直な、好ましくは逆櫛形の形状を有する掻き取り部品をさらに備えることができる。図に示されていないこの部品は、コンクリートの壁の高さを制御するために余剰のコンクリートを掻き取る手段を提供し、次の層へのヘッド1とロボットアームの位置決めを容易にする。
【0041】
これは図からは明確に示されないが、ガイドプレート12は、好ましくはPTFE、PDMS、PVC、セラミックまたはシリコーンなどの撥水性で非粘着性の材料で作られるか、または少なくとも一部分は作られ、あるいは滑性液体注入多孔質表面(SLIPS)でコーティングされる場合もある。一部分という用語は、ここではコンクリート材料と直接接触することが意図されている、ガイドプレート12の部分を指す。
【0042】
したがって、ガイドプレート12は、吹付けられるコンクリートを誘導するだけでなく、平滑で稠密な表面を吹付けコンクリートに提供する。
【0043】
ガイドプレート12を固定し、移動方向と平行に方向づけて直線状の層20、21を提供することもできるが、有利には、ガイドプレート12を回転可能にするシステム3、13を用いて取り付けることができる。これは、ガイドプレート12を、例えば垂直軸および/または水平軸に沿って旋回できるように、回転ヘッドを介して装置フレームまたは噴射ノズル11に旋回可能に取り付けて、コンクリートホースの巻き付き、および角度または曲面のある壁の実現を防止するように提供できることを意味する。
図1は、そのような機構3、13を示すが、これは一例に過ぎず、他の任意の適切な機構が使用され得、それらは、プレートごとに独立した複数の機構であってもよい。
【0044】
また、ガイドプレート12は、好ましくは、ガイドプレート12を開閉するために可動式に取り付けられ、ガイドプレート12間の間隔dを修正して壁/層の厚さまたは相対位置を変更し、生成される壁/層に形状修正を提供する。ガイドプレート12はまた、噴射ヘッドに対しても可動であるように取り付けられて、ヘッドに対する対称性を修正することができ、あるいは振動してコンクリートの締固めを改善することもできる。これは、例えばウォームねじなどの任意の従来のシステム14を使用して行うことができる。
図1および
図2ではそのような機構14も示すが、これは一例に過ぎず、他の任意の適切な機構が使用され得、それらは、プレートごとに独立した複数の機構であってもよい。
【0045】
さらに、起こり得る障害物に対応するために、ガイドプレート12の少なくとも1つを膜などの軟質材料で作ることが可能である。ガイドプレート12を可変の剛性を有する材料で作り、状況に応じてリアルタイムで修正することも可能である。
【0046】
最後に、さらにモジュール化するために、ガイドプレート12の少なくとも1つを、例えば入れ子式または延伸式とすることによって、長さ、または幅も修正できるように作ることが可能である。
【0047】
図2は、2つの組み立てられたガイドプレート12の概略を示す等角図である。この図には、ウォームねじに存在する間隔調整機構14が示されている。また、高さ調整機構16も示されている。さらに、装置は、ガイドプレート12の前に配置されて建設中の壁の側面を転がるように位置付けられたローラ15を備えることもできる。これにより、ヘッド1を安定させ、側面の平滑化を向上させることも可能となる。
【0048】
さらに、これは図面には示されていないが、装置には、装置のさまざまなレベル、例えばポンプ内、または噴射ノズル11内または任意の場所でコンクリートの密度をオンラインで確認可能にする単数または複数の特定のセンサを含むことができる品質管理システムを備えることができる。また、層の高さ、さらには部品全体の高さを確認するためのシステムを備えることもできる。
【0049】
代替の実施形態によれば、装置は、同じ一つの空間にコンクリートを噴射する2つの噴射ノズルを備えることができる。2つのコンクリート流は、好ましくは交差するように噴射され、これにより、噴射されたコンクリートを補強する。
【0050】
本発明は、装置だけでなく、ガイドとして機能して噴射ノズル11と共に移動し、かつ全体がロボットによって制御された速度で動かされる少なくとも2つのガイドプレート12の間の噴射ノズル11を介してコンクリートを噴射/吹付けする方法にも関する。ガイドプレート12は、噴射されるコンクリート流を方向付け、平滑で締固められた表面、またはガイドプレート12がテクスチャも含む場合にはテクスチャ付きの表面を提供する。
【0051】
より具体的には、本発明による3次元構造物を製造する方法では、本発明の上記の装置を制御して、以下のステップが実施される。まず、作り出したいオブジェクトの種類および必要に応じて関連するパラメータなど、あらゆる関連情報を制御手段に入力する。その後開始し、噴射ヘッド1を制御手段によって所定の経路に沿って移動させながら、噴射ノズル11を制御し、2つのガイドプレート12の間にコンクリート材料を噴射して、第1の高さおよび第1の厚さdを有する第1の層20を生成し、完了したら、噴射ヘッド1をコンクリートのレオロジおよび動作条件に応じて層ごとに適合される高さまで持ち上げ、コンクリート材料を噴射するステップを繰り返して第2の層21を第1の層20の少なくとも一部分の上に重ねて生成し、終了するまで上記の複数のステップを繰り返す。この方法では、先行するコンクリート層に吹付けが行われる際、吹付けられたコンクリート層が上記の先行するコンクリート層の上側のコンクリートを再活性化し、層間に起こり得るコールドジョイントを排除および防止して、層間に非常に強力な結合をもたらすようにパラメータが選択される。これは、例えば、高密度流吹付けプロセスで行うことができる。
【0052】
本発明の方法により、鉄筋、カーボンメッシュ、および/または、ガラス繊維などの任意の種類の適切な材料で作られた受動的補強材17を噴射ヘッド経路に沿って2つのガイドプレート12の間に提供し、その上の噴射ヘッドの高さおよび関連するパラメータも適合させて、噴射ヘッド1が補強材17上を簡単に移動し、受動的補強材にコンクリート材料を噴射して取り囲むことによって、上記の製造される壁に一体化させることができる。これは、第1の層が作られるステップを示す
図4A、および第2の層が作られるステップを示す
図4Bに表されている。
【0053】
図3Aおよび
図3Bに示すように、プレート12間の距離が8〜12cm、空気流量が4m
3/min、約30mmの開口部を有する噴射ノズル11の場合、地面または最下層から通常20cm〜40cmの範囲の距離hでコンクリートが噴射される。
【0054】
あるいは、プレート12間の距離が20〜25cmである場合、地面または最下層から通常1mの距離hでコンクリートが噴射されうる。
【0055】
これらの範囲は、コンクリート流、プレート12間の厚さ(d)、および後述する他の任意のパラメータが適切であれば、距離hが直前に噴射された層または地面から20cm〜1.5mの範囲に及ぶ可能性があるため、あくまでも目安である。高さは、ここでは噴射ノズル11の出口/開口部と地面または直前に噴射された層との間の距離を指す。これにより、必要性に依存するため特定の好ましい範囲は存在しないことがわかり、この必要性に応じて、最良の組み合わせと最良の結果をもたらすように装置のすべてのパラメータを設定する。例えば、上記のデータで適切な噴射を実現するために、噴射ノズル開口部が40mmの場合、圧力7barで空気圧を5.5m
3/minに高めることができる。その後、距離Hを伸ばすこともでき、その結果、例えば、ガイドプレート12間の距離も同様に広げることができる。
【0056】
コンクリート流は、好ましくは本発明の方法に適合させ、その時点で90〜130kg/min(35〜60L/min)で振動させる。
【0057】
層の高さは、通常15〜30mmの高さである。あるいは、必要性に応じて、さまざまなパラメータが調整されるならば、層の高さを少なくとも2倍にすることができる可能性は高い。
【0058】
選択されたガイドプレート12間の距離に対応するコンクリート壁の好ましい幅(d)は、通常5cm〜25cmまで変化する。本発明の装置および方法は、輪郭だけでなく、壁の厚さ全体に充填されたコンクリート壁を提供する。
【0059】
この方法により、コーナー部材、ケーブル室、電気キャビネット、都市デザイン、建築部材などの壁の極めて短期間での実現が可能になる。ガイドプレート12が垂直軸に沿って旋回可能であって、典型的な曲率半径が50〜60cmの円をたどり、ロボットアームがこれを実現するように制御されるならば、円弧も実現可能である。
【0060】
図7に示すように、コンクリートは好ましくは高密度流動法を使用して吹付けを行う。このような方法では、ポンプは乾式モルタルではなく、セメントおよび結合剤と、砂と、骨材と、水と、を含む調製済みの混合物を押し出す。空気およびコンクリートの凝結を可能にする活性剤は、噴射ノズル11に、または噴射ノズル11に入る数cm前に添加される。これを
図7に示す。ただし、装置はこれに限定されるものではなく、低密度流の湿式吹付けコンクリートまたは乾式吹付けコンクリートを吹付けることができる。本発明の方法および装置では、最大16mm、好ましくは最大8mmの粒径を有するコンクリートを使用することができる。
【0061】
本発明の装置、ならびに関連する方法は、ケーブル室、廃水処理チャンバ、擁壁などの特注の土木製品、またはファサードおよび都市デザインオブジェクトなどの建築およびデザインオブジェクトを含む、多くの用途を有する。
【0062】
例1
コンクリート流量90Kg/min、空気流量4m
3/min、空気圧7barを使用する。コンクリートのレオロジは、5x10x15cmの小型スチールコーンで測定し、得られたフロー値は13cmであった。噴射ノズル11とコンクリートの最下層との間のガイドプレート12の高さは24〜36cmで構成され、2つのガイドプレート12間の距離は8.5cmである。ロボットの速度は、10〜20cm/secで変化させ、最適値は約18cm/secであった。
【0063】
得られたオブジェクトは、側面の平滑性および層間の密着性において非常に満足のいく結果を示した。
【0064】
例2
コンクリート流量95〜110Kg/min、空気流量6m
3/min、空気圧7.5barを使用する。噴射ノズル11とコンクリートの最下層との間のガイドプレート12の高さは、36〜100cmで構成され、2つのガイドプレート12間の距離は、14〜20cmで変化する。ロボットの速度は、5〜15cm/secで変化させた。
【0065】
得られたオブジェクトは、側面の平滑性および層間の密着性において非常に満足のいく結果を示した。
【0066】
本発明の実施形態を複数の実施形態と併せて説明してきたが、当業者には多くの代替、修正、および変形が明らかになるであろうこと、または明らかであることは明白である。したがって、本開示は、本開示の範囲内にあるそのような代替、修正、均等物、および変形をすべて包含することを意図している。これは、例えば、使用可能なさまざまなコンクリートまたは添加剤、あるいはコンクリート流量、空気流量、空気圧またはコンクリートのレオロジなどのコンクリート材料の噴射を最適化するために選択されたさまざまなパラメータに関する場合に特に当てはまる。
【国際調査報告】