特表2022-501310(P2022-501310A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2022-5013104−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールのスルファメート誘導体、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールの誘導体、それらの医療用途、および4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体を得る方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-501310(P2022-501310A)
(43)【公表日】2022年1月6日
(54)【発明の名称】4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールのスルファメート誘導体、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールの誘導体、それらの医療用途、および4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体を得る方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/06 20060101AFI20211210BHJP
   A61K 31/4192 20060101ALI20211210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211210BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20211210BHJP
   A61P 5/32 20060101ALI20211210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211210BHJP
【FI】
   C07D249/06 501
   C07D249/06CSP
   A61K31/4192
   A61P35/00
   A61P31/04
   A61P5/32
   A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2020-570953(P2020-570953)
(86)(22)【出願日】2018年8月20日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月3日
(86)【国際出願番号】PL2018000080
(87)【国際公開番号】WO2019245393
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】P.425970
(32)【優先日】2018年6月18日
(33)【優先権主張国】PL
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520494105
【氏名又は名称】ポリテクニカ グダンスカ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】デムコビック,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ダスコ,マテウシュ
(72)【発明者】
【氏名】レイション,ヤーヌシュ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC60
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC11
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、新規化合物としての、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体および4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールの誘導体に関する。本発明の主題は、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体の医療用途、および4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール誘導体の医療用途である。本発明の主題は、ステロイドスルファターゼ阻害剤および/またはエストロゲン受容体モジュレーターの特性を有する薬剤としての新規化合物の使用である。本発明は、抗微生物薬および/またはエストロゲン受容体モジュレーターとして使用される新規化合物の医療用途に関する。具体的には、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体はがん治療における医薬品として使用される。本発明は、これらの新規化合物の調製プロセスにも関し、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールの誘導体は、スルファメート誘導体が得られる中間生成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロイド系を模倣し、かつスルファメート部位を含有する化合物であって、一般式1で定義される化合物:
【化1】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCF
【請求項2】
一般式1で定義される化合物であって:
【化2】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCFであり、医薬品として使用される化合物。
【請求項3】
ステロイドスルファターゼ阻害剤の作用を有する医薬品として、および/またはエストロゲン受容体モジュレーターの作用を有する医薬品として使用される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
ステロイドスルファターゼ阻害剤またはエストロゲン受容体モジュレーターとして使用される化合物であって、一般式1で定義される化合物:
【化3】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCF
【請求項5】
一般式2で定義される、ステロイド系を模倣する化合物:
【化4】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCF
【請求項6】
一般式2で定義される化合物であって:
【化5】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCFであり、医薬品として使用される化合物。
【請求項7】
抗微生物薬、好ましくは抗菌薬として、および/またはエストロゲン受容体モジュレーターの作用を有する医薬品として使用される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
一般式2で定義される化合物であって:
【化6】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCFであり、抗微生物化合物および/またはエストロゲン受容体モジュレーターとして使用される化合物。
【請求項9】
一般式1で表される化合物の調製方法:
【化7】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCFであり、また次の模式図1に従ったいくつかのステップで実施される方法であって:
【化8】
第1のステップにおいて、4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)がp−ヨードフェノールおよびトリメチルシリルアセチレンの薗頭カップリング反応によって得られ、かつこのステップが還流下で実施され、また第2のステップにおいて、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール誘導体が、アジド誘導体と、好ましくはフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)存在下での4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)との、または4−エチニルフェノールとの1,3−双極性環化付加反応の結果として得られ、さらに第3のステップにおいて、最終生成物が、in situで生成されたスルファモイルクロリドと4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール誘導体(4)の反応によって得られ、かつこのステップが無水条件下で実施される方法。
【請求項10】
前記第1のステップが、最低1時間、好ましくは2〜24時間にわたって実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のステップが室温で実施される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のステップが、中間体を分離せずに、または分離してin situで実施される、請求項9〜11のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のステップが、少なくとも12時間、好ましくは12〜48時間にわたって実施される、請求項9〜12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第3のステップが、無水条件下で15〜40℃、好ましくは30〜40℃、好ましくは室温で実施される、請求項9〜13のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第3のステップが、最低6時間にわたって実施される、請求項9〜14のうちいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物としての4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体および4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールの誘導体に関する。本発明の主題は、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体の第1の医療用途、および4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール類似体の第1の医療用途である。本発明は、ステロイドスルファターゼ阻害剤の作用を有する、および/またはエストロゲン受容体モジュレーターの作用を有する(医薬品として用いる)調合薬としての4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体の医療用途、ならびにステロイドスルファターゼ阻害剤および/またはエストロゲン受容体モジュレーターの特性を有する化合物としての誘導体の使用に関する。さらに本発明の主題は、抗菌薬など抗微生物作用を有する(医薬品として用いる)調合薬、および選択的エストロゲン受容体モジュレーターの作用を有する薬剤としての4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール誘導体の医療用途、ならびに、抗微生物薬および/またはエストロゲン受容体モジュレーター剤としてのそれらの使用である。特に、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート類似体はがん治療、具体的には、動物、特にヒトを含む哺乳類のホルモン依存性がんの治療の薬剤として使用される。また本発明は、これらの新規化合物の調製工程にも関し、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールの誘導体は、スルファメート誘導体を得るための中間生成物である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、次の一般式を有するステロイド構造が既知である。
【0003】
【化1】
【0004】
これらの環はそれぞれ、複素環でも非複素環でも置き換えることができる。ステロイド環を模倣した構造のさまざまな組み合わせとスルファメート基を結合させることも知られている。
【0005】
特に特許文献2に記載されている、スルファメート部位を持つ既知のSTSステロイドスルファターゼ阻害剤のうち、次の一般式のSTS阻害剤が知られている。
【0006】
【化2】
【0007】
非特許文献1では、次の式を有するスルホンアミド基を含む化合物が開示されている。
【0008】
【化3】
【0009】
具体的には次のとおりである。記載の化合物はシクロオキシゲナーゼ阻害剤の特性を示す。
【0010】
【化4】

【0011】
特許文献3から、次の一般式の化合物が知られている。
【0012】
【化5】
【0013】
特に以下が知られている。
【0014】
【化6】
【0015】
本化合物は17β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害剤として有用である。17β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素は、エストロンからエストラジオール、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)からアンドロステンジオールサルフェート、またはデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)からアンドロステンジオールといった17β−ステロイドの還元を触媒し、またステロイドスルファターゼ(STS)の作用に対して、体内でエストロゲンおよびアンドロゲン生合成の異なる経路で活性を示す。17β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素とステロイドスルファターゼの活性部位のトポロジーが異なるため、これらの酵素の阻害には、構造および作用機序が異なる化合物が関与している。
【0016】
非特許文献2には、次の一般式を有する化合物が示されている。
【0017】
【化7】
【0018】
上記化合物も、17β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素の阻害剤として使用されている。17β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素とステロイドスルファターゼの活性部位のトポロジーが異なるため、これらの酵素の阻害には、構造および作用機序が異なる化合物が関与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1608671号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1193250号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/101670号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Kaur J.et al.,“1,4−Diaryl−substituted triazoles as cyclooxygenase−2 inhibitors:Synthesis,biological evaluation and molecular modeling studies”,Bioorganic&Medicinal Chemistry,2013,21(14),4288−4295
【非特許文献2】Bey.E.et al.,“Design,Synthesis,Biological Evaluation and Pharmacokinetics of Bis(hydroxyphenyl)substituted Azoles,Thiophenes,Benzenes,and Aza−Benzenes as Potent and Selective Nonsteroidal Inhibitors of 17β−Hydroxysteroid Dehydrogenase Type 1(17β−HSD1)”,J.Med.Chem.,2008,51(21),pp.6725−6739
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の主題は、具体的には、次の一般式1で定義される新規の化合物である。
【0022】
【化8】
【課題を解決するための手段】
【0023】
上式で、RはHまたはFまたはCFまたはOCFを示し;RはHまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNOを示し;RはHまたはFまたはCFまたはOCFを示し;RはHまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHを示し;RはHまたはFまたはCFを示す。
【0024】
本化合物はステロイド系を模倣した構造を有し、スルファメート部位を持つ。本発明により既知のステロイド構造が変化すると、一般式1の化合物のエストロゲン特性が著しく低下または喪失することになる。その特性は、特にがんの臨床診療においてステロイドスルファターゼ阻害剤の特性を有する医薬品(調合薬)としての化合物の使用を制限するパラメータとなることがよくある。したがって、これらの化合物は、特に、物理化学的特性、(静電相互作用の結果として)STS活性部位における本化合物の様式および結合効率、ならびに酵素阻害の強さに著しい影響を及ぼすR−R置換基において、ステロイド系を模倣した既知の化合物に対して有意な差を示す。この結果、一般式1の化合物は先行技術の化合物と比べて選択性がはるかに高く、これらの阻害剤は副作用が少ないかまったくなく、さらにその生物学的用途、診断用途、および医療用途において、生物学的および医学的特性がいずれも特有かつ重要である。本化合物の例示的実施形態を以下の表1〜3に示す。これらの化合物は、医学的および生物学的な活性効果を有する。したがって本化合物は、医薬品(治療では調合薬)として、具体的には、ステロイドスルファターゼ阻害剤および/またはエストロゲン受容体モジュレーター作用を有する薬剤として、とりわけ抗がん治療、特に動物の、また特にヒトを含む哺乳類のホルモン依存性がんの治療に使用される。本発明の化合物は、例えば、診断およびin vitro検査におけるステロイドスルファターゼ阻害剤および/またはエストロゲン受容体モジュレーターとして用いる生物学的および診断的適用が可能であり、ステロイドスルファターゼ阻害剤および/またはエストロゲン受容体モジュレーターとしての本化合物の生物学的用途が開示される。
【0025】
本発明は、一般式1の化合物の調製経路における中間体である新規化合物にも関する。これらの化合物は、次の一般式2で定義される4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノールの誘導体である。
【0026】
【化9】
【0027】
上式で、RはHまたはFまたはCFまたはOCFを示し;RはHまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNOを示し;RはHまたはFまたはCFまたはOCFを示し;RはHまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHを示し;RはHまたはFまたはCFを示す。
【0028】
一般式2で定義される中間体および一般式1で定義される最終生成物は、同じ重要な化学部分、すなわちステロイド系を模倣した足場を有し、また最終生成物は、中間生成物から直接得られる。一般式2の化合物は、医学的、診断的、生物学的な活性特性を有し、医薬品(調合薬)として、具体的には、抗菌薬などの抗微生物薬、または選択的エストロゲン受容体モジュレーターの作用を有する薬剤として使用される。一般式2の化合物は、抗菌効果などの効果的な抗微生物活性を示し、身体に対する毒性が低く、また薬剤耐性を誘発しにくい。一般式2の化合物は、特に診断およびin vitro検査において抗微生物薬および/またはエストロゲン受容体モジュレーター特性として用いられ、抗微生物化合物および/またはエストロゲン受容体モジュレーターとしての化合物の使用が開示される。一般式2の化合物は、化合物の特性、特にエストロゲン受容体に対するこれらの化合物の結合強度に影響を与えるステロイド系を模倣した足場およびR−R置換基を有するその構造ゆえに、先行技術で開示される化合物と比べて、エストロゲン受容体に対する高い親和性と強い結合性を示し、具体的には、医薬品および一般的な生物化学の両方において、選択的エストロゲン受容体モジュレーターとして使用される。一般式2の好ましい化合物の例を表4〜6に示す。予備結果によれば、これらの化合物は、抗微生物活性、特に抗菌効果も示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
次の一般式1で定義される化合物の調製方法も本発明の主題である。
【0036】
【化10】
【0037】
上式で、R=H、F、CF、OCF;R=H、F、CF、Cl、Br、J、CH、OCH、Et、iPr、NO;R=H、F、CF、OCF;R=H、F、CF、Cl、Br、J、CH、OCH;R=H、F、CFであり、方法は、次の模式図1に従ったいくつかのステップで実施される。
【0038】
【化11】
【0039】
第1のステップでは、4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)は、薗頭カップリング反応によってp−ヨードフェノールおよびトリメチルシリルアセチレンから得られ、このステップは還流下で実施される。第2のステップでは、4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール(4)の誘導体は、対応するアジド誘導体と、好ましくはフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)存在下での4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)との、または4−エチニルフェノールとの1,3−双極性環化付加反応から得られる。第3のステップでは、最終生成物は、スルファモイルクロリド(in situで生成)と4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール誘導体(4)の反応によって得られ、このステップは無水条件下で実施される。
【0040】
好ましくは、第1のステップは最低1時間にわたって、好ましくは2〜24時間にわたって実施される。
【0041】
好ましくは、第2のステップは室温で実施される。
【0042】
好ましくは、第2のステップは分離せずに、または分離してin situで実施される。
【0043】
好ましくは、第2のステップは少なくとも12時間にわたって、好ましくは12〜48時間にわたって実施される。
【0044】
好ましくは、第3のステップは無水条件下で15〜40℃、好ましくは30〜40℃の温度範囲、好ましくは室温で実施される。
【0045】
好ましくは、第3のステップは最低6時間にわたって実施される。
【実施例】
【0046】
A)一般式1の化合物の調製:
【0047】
【化12】
【0048】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCFであり、次の模式図1に示す方法に従って実施された。
【0049】
【化13】
【0050】
第1のステップは、p−ヨードフェノールとトリメチルシリルアセチレンの薗頭カップリング反応による4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)の調製を含む。第2のステップは、アジド誘導体と、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)存在下での4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)との、または中間体を分離せずに、もしくは分離してin situでの4−エチニルフェノールとの1,3−双極性環化付加反応の結果である4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール誘導体(4)の合成を含む。第2のステップでは、一般式2の中間体が得られる。第3のステップは、スルファモイルクロリド(in situで生成)と4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール誘導体(4)の反応の結果である最終生成物を得ることを含む。
【0051】
合成される最終生成物に応じて、さまざまな基質、すなわち、次の芳香環で置換された一般式3のアニリン誘導体が反応に用いられる。
【0052】
【化14】
【0053】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCF
【0054】
基質の置換基は、当業者に既知のように、中間体および最終生成物のために選択される。本発明のバリエーションに対応する合成ステップを以下に示す。
【0055】
ステップ1:
4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)の調製
アセトニトリル(20mL)中の4−ヨードフェノール(0.88g、4mmol)、トリメチルシリルアセチレン(0.855mL、6mmol)、塩化パラジウム(II)(35.8mg、0.20mmol)、トリフェニルホスフィン(0.106g、0.40mmol)、ヨウ化銅(I)(19mg、0.10mmol)、およびトリエチルアミン(3.94mL、28.2mmol)の溶液を丸底フラスコで調製した。反応混合液は、不活性ガス雰囲気下で3時間還流しながら加熱した。その後、反応混合液をろ過し、溶媒を蒸発させた。4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)の生成物は、溶離液として体積比1:4の酢酸エチルとヘキサンの混合液を用い、分取カラムクロマトグラフィー(順相)で分離した。
【0056】
収率70%;融点63〜66℃;νmax(KBr)/cm−1 3308、2956、2160、1606、1508、1434、1356、1206、826;H NMR δ(400MHz、CDCl)7.38(2H、d、J8.8Hz、Ar−H)、6.77(2H、d、J8.8、Ar−H)、6.00−3.40(1H、brs、OH)、0.26(9H、s、CH);13C NMR δ(101MHz、CDCl)155.8、133.7、115.5、115.4、105.1、92.6、0.1。HRMS(m/z)[M−H] 計算値189.0741、観測値189.0951。
【0057】
ステップ2:
4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール誘導体(4)の一般的な調製手順
アセトニトリル(6.1mL)中の適切なアミン(2.63mmol)の冷却溶液に、亜硝酸tert−ブチル(0.325g、3.16mmol)およびアジドトリメチルシラン(0.333g、2.89mmol)を滴加した。室温で4時間撹拌後、4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)(0.5g、2.63mmol)およびTHF(2.89mL)中のフッ化テトラブチルアンモニウム1M溶液を添加した。混合液を0℃で30分間撹拌した。次いで、新たに調製した水0.525mL中のアスコルビン酸ナトリウム(0.104g、0.526mmol)の溶液および硫酸銅(II)五水和物(65.7mg、0.263mmol)を反応混合液に添加した。混合液を不活性ガス雰囲気下で24時間撹拌した。次いで、反応混合液を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチル(30mL)に溶解した。溶液を0.1M HClで洗浄した。分離した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物をアセトニトリルから結晶化した。
【0058】
実施例1−ステップ2
4−[1−(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノールの調製
【0059】
【化15】
【0060】
アセトニトリル(6.1mL)中の3,5−ビス−(トリフルオロメチル)アニリン(0.603g、2.63mmol)の冷却溶液に、亜硝酸tert−ブチル(0.325g、3.16mmol)およびアジドトリメチルシラン(0.333g、2.89mmol)を滴加した。室温で4時間撹拌後、4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)(0.5g、2.63mmol)およびTHF(2.89mL)中のフッ化テトラブチルアンモニウム1M溶液を添加した。混合液は0℃で30分間撹拌した。次いで、新たに調製した水0.525mL中のアスコルビン酸ナトリウム(0.104g、0.526mmol)の溶液および硫酸銅(II)五水和物(65.7mg、0.263mmol)を反応混合液に添加した。混合液を不活性ガス雰囲気下で24時間撹拌した。次いで、反応混合液を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチル(30mL)に溶解した。溶液を0.1M HClで洗浄した。分離した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物をアセトニトリルから結晶化した。
【0061】
収率66%;融点270〜272℃;νmax(KBr)/cm−1 3172、1615、1492、1426、1361、1223、1054、846;H NMR δ(400MHz、DMSO)9.72(1H、s、OH)、9.43(1H、s、CH)、8.65(2H、s、Ar−H)、8.26(1H、s、Ar−H)、7.75(2H、d、J8.6Hz、Ar−H)、6.90(2H、d、J8.7Hz、Ar−H);13C NMR δ(101MHz、DMSO)158.3、148.6、138.4、132.3(m)、127.3、123.3(q、C−F 273Hz)、122.2(m)、121.1、120.8(m)、119.1、116.3。HRMS(m/z)[M+H] 計算値374.0728、観測値374.0757。
【0062】
実施例2−ステップ2
4−[1−(3,5−ジフルオロフェニル)−1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−イル]−フェノールの調製
【0063】
【化16】
【0064】
アセトニトリル(6.1mL)中の3,5−ジフルオロアニリン(0.340g、2.63mmol)の冷却溶液に、亜硝酸tert−ブチル(0.325g、3.16mmol)およびアジドトリメチルシラン(0.333g、2.89mmol)を滴加した。室温で4時間撹拌後、4−((トリメチルシリル)エチニル)フェノール(3)(0.5g、2.63mmol)およびTHF(2.89mL)中のフッ化テトラブチルアンモニウム1M溶液を添加した。混合液を0℃で30分間撹拌した。次いで、新たに調製した水0.525mL中のアスコルビン酸ナトリウム(0.104g、0.526mmol)の溶液および硫酸銅(II)五水和物(65.7mg、0.263mmol)を反応混合液に添加した。混合液を不活性ガス雰囲気下で24時間撹拌した。次いで、反応混合液を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチル(30mL)に溶解した。溶液を0.1M HClで洗浄した。分離した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物をアセトニトリルから結晶化した。
【0065】
収率63%;融点214〜216℃;νmax(KBr)/cm−1 3333、1627、1493、1408、1331、1216、1029、823;H NMR δ(400MHz、DMSO)9.71(1H、s、OH)、9.19(1H、s、CH)、7.85〜7.67(4H、m、Ar−H)、7.47−7.35(1H、m、Ar−H)、6.90(2H、d、J8.7Hz、Ar−H);13C NMR δ(101MHz、DMSO)163.4(d、C−F 247Hz)、158.3、148.4、138.9(m)、127.3、121.2、118.8、116.3、104.3(m)、104.1(m)。HRMS(m/z)[M+H] 計算値274.0792、観測値274.0812。
【0066】
ステップ3:
4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体(5)の一般的な調製手順
無水ジクロロメタン(0.5mL)中のクロロスルホニルイソシアネート(212.3mg、1.50mmol)の溶液に、ギ酸(70.9mg、1.54mmol)およびN,N−ジメチルアセトアミド(1.4mg、0.016mmol)の混合液を添加した。混合液を40℃で3.5時間撹拌した。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド(3.4mL)中の4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェノール(4)(1.00mmol)の溶液を反応混合液に添加した。混合液を室温で24時間撹拌した。この後、反応混合液を水(50mL)に注入した。得られた懸濁液を2時間撹拌した。沈殿した粗生成物をろ過し、水で洗浄して、アセトニトリルから結晶化した。
【0067】
実施例1−ステップ3
4−[1−(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェニルスルファメートの調製
【0068】
【化17】
【0069】
無水ジクロロメタン(0.5mL)中のクロロスルホニルイソシアネート(212.3mg、1.50mmol)の溶液に、ギ酸(70.9mg、1.54mmol)およびN,N−ジメチルアセトアミド(1.4mg、0.016mmol)の混合液を添加した。混合液を40℃で3.5時間撹拌した。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド(3.4mL)中の4−[1−(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール(0.373g、1.00mmol)(実施例1ステップ2に示した手順に従って得た)の溶液を反応混合液に添加した。混合液を室温で24時間撹拌した。この後、反応混合液を水(50mL)に注入した。得られた懸濁液を2時間撹拌した。沈殿した粗生成物をろ過し、水で洗浄して、アセトニトリルから結晶化した。
【0070】
収率79%;融点231〜232℃;νmax(KBr)/cm−1 3358、3145、1493、1373、1277、1153、1052、808、755;H NMR δ(400MHz、DMSO)9.65(1H、s、CH)、8.68(2H、s、Ar−H)、8.30(1H、s、Ar−H)、8.10(2H、s、NH2)、8.02(2H、d、J8.7Hz、Ar−H)、7.45(2H、d、J7.45Hz、Ar−H);13C NMR δ(101MHz、DMSO)150.6、147.6、138.3、132.4(m)、128.6、127.2、123.4、123.3(q、C−F 273Hz)、122.6(m)、121.1(m)、121.0.HRMS(m/z)[M+H] 計算値453.0456、観測値453.0511.
【0071】
実施例2−ステップ3
4−[1−(3,5−ジフルオロフェニル)−1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−イル]−フェニルスルファメートの調製
【0072】
【化18】
【0073】
無水ジクロロメタン(0.5mL)中のクロロスルホニルイソシアネート(212.3mg、1.50mmol)の溶液に、ギ酸(70.9mg、1.54mmol)およびN,N−ジメチルアセトアミド(1.4mg、0.016mmol)の混合液を添加した。混合液を40℃で3.5時間撹拌した。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド(3.4mL)中の4−[1−(3,5−ジフルオロフェニル)−1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−イル]−フェノール(0.273g、1.00mmol)(実施例2ステップ2に示した手順に従って得た)の溶液を反応混合液に添加した。混合液を室温で24時間撹拌した。この後、反応混合液を水(50mL)に注入した。得られた懸濁液を2時間撹拌した。沈殿した粗生成物をろ過し、水で洗浄して、アセトニトリルから結晶化した。
【0074】
収率80%;融点227〜228℃;νmax(KBr)/cm−1 3343、3155、1493、1376、1227、1157、1056、844、756;H NMR δ(400MHz、DMSO)9.42(1H、s、CH)、8.09(1H、s、NH)、7.99(2H、d、J8.7Hz、Ar−H)、7.86−7.76(2H、m、Ar−H)、7.51−7.40(3H、m、Ar−H);13C NMR δ(101MHz、DMSO)163.4(d、C−F 247Hz)、150.6、147.2、138.8(m)、128.7、127.2、123.4、120.6、104.5(m)、104.3(m)。HRMS(m/z)[M+H] 計算値353.0520、観測値353.0548。
【0075】
同様に、一般式1および2の他の化合物が得られる。
【0076】
B)酵素アッセイにおける、得られた誘導体の生物学的および医学的評価 − 薬剤としての使用、診断薬としての使用、および生物学的用途に対する化合物の特性試験。
【0077】
次の一般式1で表される新規化合物のin vitro活性に関する試験。
【0078】
【化19】
【0079】
上式で、R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCHまたはEtまたはiPrまたはNO;R=HまたはFまたはCFまたはOCF;R=HまたはFまたはCFまたはClまたはBrまたはJまたはCHまたはOCH;R=HまたはFまたはCF
【0080】
一般式1で定義される化合物の医学的および生物学的活性を、活性化合物(医薬品)および/またはSTSステロイドスルファターゼ阻害剤、診断薬としての使用について、ならびに生物学的用途について、以下の手順に従って、ヒト胎盤から分離したSTSステロイドスルファターゼ酵素を用いて評価した。
− ヒト胎盤は膜をはがし、0.1%Triton X−100および0.02%NaNを含有する氷冷Tris−HCl緩衝液pH7.4でホモジナイズした。
− ホモジネートは何度か凍結と融解をくり返した後、100000Gで60分間遠心分離した。
− 上澄みを除去し、ホモジネートから遠心分離までの同じ手順を5回行った。
− 最後に、カラム(DEAEセルロース、Con Aセファロース、Bio−Gel A−1.5、および適切な緩衝液)を用いた3ステップクロマトグラフィーで酵素を精製した。すべてのステップを4℃で実施した。
【0081】
一般式1で定義される化合物について、STS阻害剤の生物学的、診断的、医学的活性を、硫酸p−ニトロフェニル(nitrophenyl sulfate)(NPS)を用いて酵素反応の進行を分析することによって評価した。反応混合液の最終量は120μL(pH=7.25)で、0.8μmolのNPS、40μmolのトリスHCl、および適量の酵素を含有していた。反応時間の60分後に0.5mLの1M NaOHを反応混合液に添加した。放出されたp−ニトロフェノールを、分光光度計を用いて405nmで測定した。最終ステップにおいて、パラメータIC50値(得られた化合物のステロイドスルファターゼ活性阻害能を表す)を測定した。好ましい4−(1−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−フェニルスルファメート誘導体として表1〜3に詳細を示した、一般式1を有する可能なすべての化合物で、STS阻害活性が0.036〜0.821μMのIC50で認められた。例えば、4−[1−(3,5−ジフルオロフェニル)1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−イル]−フェニルスルファメートではIC50=0.036μM、4−[1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−イル]−フェニルスルファメートではIC50=0.180μM、4−[1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−1H−[1,2,3]−トリアゾール−4−イル]−フェニルスルファメートではIC50=0.240μM、4−[1−(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェニルスルファメートではIC50=0.821μMであることが示されている。したがって、一般式1の化合物は、生物学的、医学的、診断的活性を有し、医薬品として医療に適用でき、また診断では診断薬として使用できる。一般式1を有する新規化合物は、可能な医学的および生物学的作用機序のひとつとして、低いナノモルまたはマイクロモル濃度で強いSTS阻害活性を示し、これは化合物が、ステロイドスルファターゼ阻害剤として分類される薬剤として作用するのに、または診断検査、in vitro臨床試験、および生物科学における使用においてステロイドスルファターゼ阻害剤として使用される化合物として作用するのに十分である。具体的には、一般式1の化合物は医薬品として使用され、すなわち、がん治療、具体的には、動物、特にヒトを含む哺乳類のホルモン依存性がんの治療における薬剤として有益である。
【0082】
一般式2の化合物の生物学的、診断的、医学的効果についても調べられており、これは、医薬品、特にエストロゲン受容体モジュレーターとして使用される、または診断検査における診断薬として、特にエストロゲン受容体モジュレーターとして使用される。生物科学、特にin vitro検査における本化合物の生物学的用途についても研究した。この研究は、既知のin vitro検査におけるエストロゲン受容体に対する化合物の親和性の予備分析によって実施した。表4〜6に示した本化合物の生物学的および医学的効果が確認された。
【0083】
一般式1の化合物は加水分解されて一般式2の化合物になることができるという事実により、一般式1を有する化合物の生物学的および医学的効果は、エストロゲン受容体モジュレーターとして、またはエストロゲン受容体モジュレーターとして診断検査などの生物科学に役立つ化合物としても有用である。標準的なin vitro検査を用いる研究において、一般式1を有する化合物の高い親和性が、エストロゲン受容体に対して認められた。
【0084】
アンチバイオグラムに基づく予備的な微生物学的試験において、一般式2を有する化合物の生物学的および医学的効果も確認された。表4〜6に示す化合物は、in vitro検査において微生物増殖の抑制を示した。
【国際調査報告】