特表2022-501351(P2022-501351A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2022-5013516−(1−アクリロイルピペリジン−4−イル)−2−(4−フェノキシフェニル)ニコチンアミドの結晶形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-501351(P2022-501351A)
(43)【公表日】2022年1月6日
(54)【発明の名称】6−(1−アクリロイルピペリジン−4−イル)−2−(4−フェノキシフェニル)ニコチンアミドの結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20211210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211210BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211210BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20211210BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20211210BHJP
【FI】
   C07D401/04CSP
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P29/00
   A61P37/02
   A61K31/4545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2021-515106(P2021-515106)
(86)(22)【出願日】2019年9月18日
(85)【翻訳文提出日】2021年5月17日
(86)【国際出願番号】CN2019106433
(87)【国際公開番号】WO2020057549
(87)【国際公開日】20200326
(31)【優先権主張番号】62/732,994
(32)【優先日】2018年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516095419
【氏名又は名称】ベイジン・イノケア・ファーマ・テク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing InnoCare Pharma Tech Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ズオペン
(72)【発明者】
【氏名】イー、リーチン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC12
4C063DD10
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC21
4C086GA08
4C086GA12
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドのさまざまな結晶形に関する。本発明は、また、前記結晶形を含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折のピークが5.4°±0.2°、8.4°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、16.1°±0.2°、21.9°±0.2°、10.1°±0.2°(2θ)にあり、最も強いピークが5.4±0.2(2θ)にある、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドの結晶形。
【請求項2】
X線回折のピークが16.1°±0.2°、22.1°±0.2°、21.6°±0.2°、8.8°±0.2°、13.6°±0.2°、23.2°±0.2°(2θ)にあり、最も強いピークが16.1±0.2(2θ)にある、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドの結晶形。
【請求項3】
X線回折のピークが8.4°±0.2°、5.4°±0.2°、16.3°±0.2°、16.1°±0.2°、18.7°±0.2°、21.8°±0.2°(2θ)にあり、最も強いピークが8.4±0.2(2θ)にある、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドの結晶形。
【請求項4】
X線回折のピークが5.2°±0.2°、15.0°±0.2°、18.9°±0.2°、19.0°±0.2°、20.4°±0.2°、12.6°±0.2°(2θ)にあり、最も強いピークが5.2±0.2(2θ)にある、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドの結晶形。
【請求項5】
X線回折のピークが6.2°±0.2°、11.8°±0.2°、12.4°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、22.8°±0.2°(2θ)にあり、最も強いピークが18.7±0.2(2θ)にある、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドの結晶形。
【請求項6】
X線回折のピークが21.4°±0.2°、20.7°±0.2°、19.7°±0.2°、17.7°±0.2°、15.0°±0.2°、16.3°±0.2°(2θ)にあり、最も強いピークが21.4±0.2(2θ)にある、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドの結晶形。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の結晶形及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドの異なる結晶形に関する。
【背景技術】
【0002】
6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(化合物I)は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤である。化合物Iの製造並びに癌、炎症及び自己免疫疾患の治療における使用は、国際公開第2015/028662号に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、A形のXRPDパターンである。
図2図2は、水和物の形態のA形のDSC曲線である。
図3図3は、水和物の形態のA形のTGA曲線である。
図4図4は、B形のXRPDパターンである。
図5図5は、B形のDSC曲線である。
図6図6は、B形のTGA曲線である。
図7図7は、C形のXRPDパターンである。
図8図8は、C形のDSC曲線及びTGA曲線である。
図9図9は、D形のXRPDパターンである。
図10図10は、D形のDSC曲線である。
図11図11は、D形のTGA曲線である。
図12図12は、E形のXRPDパターンである。
図13図13は、F形のXRPDパターンである。
図14図14は、F形のDSC曲線である。
図15図15は、F形のTGA曲線である。
図16図16は、A〜F形結晶形の相互変換を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明は、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド (化合物I)の特定の結晶形に関する。化合物Iの結晶形は、安定性、溶解性及び吸湿性の少なくとも1つにおいて利点を有し、医薬の研究や製造に適している。
【0005】
【化1】
【0006】
A形結晶形
A形結晶形は、国際公開第2015/048662号に記載されているように、出発物質である化合物Iから製造される。A形結晶形は、化合物Iをジクロロメタンに溶解し、次いで、酢酸エチルで沈殿させることにより得ることができる。
【0007】
本発明のA形のXRPDを図1に示し、2θ値で5.4°±0.2°、8.4°±0.2°、18.7°±0.2°のピークが最も強い。
【0008】
また、A形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で19.1°±0.2°、16.1°±0.2°、21.9°±0.2°、10.1°±0.2°に示す。
【0009】
さらに、A形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で13.2°±0.2°、11.1°±0.2°、14.3°±0.2°に示す。
【0010】
A形のXRPDのデータを表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
本発明のA形は同形であり、すなわち、結晶構造中に適当な大きさのさまざまなゲスト分子が入ることができる空洞/空隙を有する。同形は、類似する格子構造と実質的に同じXRPDパターンを有する。
【0013】
溶媒の種類、乾燥などの製造条件に応じて、A形は無水物、溶媒和物又は水和物の可能性がある。それらは実質的に同じXRPDパターンを有する。
【0014】
水和物の形態のA形は、加熱すると約63℃(ピーク開始温度)及び約99℃(ピーク開始温度)から吸熱ピークを示し、ピーク温度はそれぞれ70.3℃と105.7℃である。DCS曲線を図2に示す。
【0015】
無水物の形態のA形は、加熱すると約97℃(ピーク開始温度)から吸熱ピークを示し、ピーク温度は105.7℃である。
【0016】
水和物の形態のA形は、250℃まで加熱すると重量が2.8%減少し、そのTGA曲線を図3に示す。
【0017】
無水物の形態のA形は、200℃まで加熱するとTGA曲線で2.2%の重量減少を示す。
【0018】
室温で24時間平衡化した後の、本発明のA形の水に対する溶解度は0.013mg/mLである。
【0019】
B形結晶形
B形結晶形は、A形から、例えば、貧溶媒の添加、徐冷及びスラリー法といったさまざまな結晶化方法により得ることができる。
【0020】
本発明のB形のXRPDを図4に示し、2θ値で16.1°±0.2°、22.1°±0.2°、21.6°±0.2°のピークが最も強い。
【0021】
また、B形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で8.8°±0.2°、13.6°±0.2°、23.2°±0.2°に示す。
【0022】
さらに、B形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で17.6°±0.2°、14.5°±0.2°、24.5°±0.2°に示す。
【0023】
B形のXRPDのデータを表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
B形は無水物である。
【0026】
B形は、加熱すると約164℃(ピーク開始温度)から吸熱ピークを示し、そのDSC曲線を図5に示す。
【0027】
本発明のB形は、150℃まで加熱すると重量が3.0%減少し、そのTGA曲線を図6に示す。
【0028】
室温で24時間平衡化した後の、B形の水に対する溶解度は0.006mg/mLである。
【0029】
C形結晶形
C形結晶形は、A形から、例えば、ゆっくりとした蒸発、徐冷、スラリー法及び異なる溶媒系での液体蒸気の拡散といったさまざまな結晶化方法により得ることができる。
【0030】
本発明のC形のXRPDを図7に示し、2θ値で8.4°±0.2°、5.4°±0.2°、16.3°±0.2°のピークが最も強い。
【0031】
また、C形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で16.1°±0.2°、18.7°±0.2°、21.8°±0.2°に示す。
【0032】
さらに、C形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で21.3°±0.2°、17.6°±0.2°、14.3°±0.2°に示す。
【0033】
C形のXRPDのデータを表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
C形は同形であり、すなわち、結晶構造中に適当な大きさのさまざまなゲスト分子が入ることができる空洞/空隙を有する。
【0036】
C形は、加熱すると約116℃(ピーク開始温度)から吸熱ピークを示す。C形は、70℃と150℃の間で8.3%の段階的な重量減少を示す。図8にDSC及びTGA曲線を示す。
【0037】
C形及びA形は、15〜20°の領域での相違を除き、類似のXRPDパターンを有する。C形及びA形は同じ結晶系である、つまり、類似の格子構造を有している可能性がある。
【0038】
D形結晶形
D形結晶形は、A形から室温でメタノールをゆっくりと蒸発させることにより得ることができる。
【0039】
本発明のD形のXRPDを図9に示し、2θ値で5.2°±0.2°、15.0°±0.2°、18.9°±0.2°のピークが最も強い。
【0040】
また、D形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で19.0°±0.2°、20.4°±0.2°、12.6°±0.2°に示す。
【0041】
さらに、D形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で20.9°±0.2°、15.7°±0.2°、12.2°±0.2°に示す。
【0042】
D形のXRPDのデータを表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
本発明のD形は水和物である。
【0045】
本発明のD形は、加熱すると約75℃(ピーク開始温度)及び約109℃(ピーク開始温度)から吸熱ピークを示し、そのDSC曲線を図10に示す。
【0046】
本発明のD形は、100℃まで加熱すると重量が7.1%減少し、そのTGA曲線を図11に示す。
【0047】
室温で24時間平衡化した後の、本発明のD形の水に対する溶解度は0.018mg/mLである。
【0048】
E形結晶形
E形は、D形を窒素ガス下でパージするか、又はD形を100℃以上に加熱することにより得ることができる。
【0049】
本発明のE形のXRPDを図12に示し、2θ値で21.4°±0.2°、20.7°±0.2°、19.7°±0.2°のピークは特徴的である。
【0050】
また、E形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で17.7°±0.2°、15.0°±0.2°、16.3°±0.2°に示す。
【0051】
さらに、E形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で3.5°±0.2°、10.1°±0.2°、14.1°±0.2°に示す。
【0052】
E形のXRPDのデータを表5に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
E形は無水物である。
【0055】
F形結晶形
F形は、A形、B形又はD形から、溶媒又は溶媒混合物(例.メタノール、エタノール、アセトニトリル、メタノール/水又はエタノール/水)中のスラリーを介して得ることができる。
【0056】
本発明のF形のXRPDを図13に示し、2θ値で18.7°±0.2°、12.4°±0.2°、22.8°±0.2°のピークが最も強い。
【0057】
また、F形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で17.9°±0.2°、20.1°±0.2°、11.8°±0.2°に示す。
【0058】
さらに、F形のXRPDは、1つ以上の特徴的なピークを2θ値で23.8°±0.2°、14.2°±0.2°、6.2°±0.2°に示す。
【0059】
F形のXRPDのデータを表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
F形は無水物である。
【0062】
本発明のF形は加熱すると約161℃(ピーク開始温度)から吸熱ピークを示し、そのDSC曲線を図14に示す。
【0063】
本発明のF形は、200℃まで加熱すると重量が1.5%減少し、そのTGA曲線を図15に示す。
【0064】
室温で24時間平衡化した後の、本発明のF形の水に対する溶解度は0.004mg/mLである。
【0065】
医薬組成物
本発明はまた、治療有効量のA形、B形、C形、D形若しくはF形又はそれらの任意の比率の混合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0066】
A形、B形、D形及びF形の結晶形は医薬組成物中の原薬(API)として有用で、F形が好ましい。
【0067】
不活性成分である薬学的に許容される担体は、従来の基準により当業者が選択することができる。薬学的に許容される担体には、非水系の溶液、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、ミセル溶液、ゲル及び軟膏が含まれるが、これらに限定されるものではない。薬学的に許容される担体には、生理食塩水及び電解質水溶液;塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン及びデキストロースなどのイオン性及び非イオン性の等張化剤;水酸化物、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩及びトロラミン塩などのpH調整剤及び緩衝液;亜硫酸水素、亜硫酸、メタ重亜硫酸、チオ亜硫酸の塩、酸及び/又は塩基、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール類並びにパルミチン酸アスコルビルなどの抗酸化剤;ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルイノシトールを含むがこれらには限定されないリン脂質、レシチンなどの界面活性剤;ポロキサマー類、ポロキサミン類、ポリソルベート80、ポリソルベート60及びポリソルベート20などのポリソルベート類、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類;ポリビニルアルコール及びポビドンなどのポリビニル;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース並びにそれらの塩などのセルロース誘導体;鉱油及び白色ワセリンなどの石油誘導体;ラノリン、ピーナッツ油、パーム油、大豆油などの脂肪;モノ、ジ、及びトリグリセリド類;カルボキシポリメチレンゲル及び疎水的に修飾された架橋アクリレートコポリマーなどのアクリル酸の重合体;デキストランなどの多糖類;並びに、ヒアルロン酸ナトリウムなどのグリコサミノグリカン類を含む成分も含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような薬学的に許容される担体は、塩化ベンザルコニウム、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、チメロサール並びにフェニルエチルアルコールを含むがこれらには限定されない周知の防腐剤で、細菌による汚染から保護することができるか、単回又は複数回使用のための非保存製剤として製剤化することができる。
【0068】
例えば、化合物IのA形、B形、C形、D形若しくはF形の形態の錠剤又はカプセル剤は、生物活性及び活性化合物との反応性を有さない他の賦形剤を含んでいてもよい。錠剤の賦形剤には、充填剤、結合剤、潤滑剤及び流動促進剤、崩壊剤、湿潤剤並びに放出速度調整剤が含まれていてもよい。結合剤は製剤中の粒子の接着を促進し、錠剤の製造にとって重要である。結合剤としては、カルボキシメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カラヤゴム、デンプン、デンプン、トラガカントガム、ポリ(アクリル酸)及びポリビニルピロリドンが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
例えば、化合物IのA形、B形、C形、D形若しくはF形の形態のパッチ製剤は、1,3-ブチレングリコール、アミノ酢酸ジヒドロキシアルミニウム、エデト酸二ナトリウム、D-ソルビトール、ゼラチン、カオリン、メチルパラベン、ポリソルベート80、ポビドン、プロピレングリコール、プロピルパラベン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、酒石酸、二酸化チタン及び精製水などの不活性成分を含んでいてもよい。パッチ製剤は、乳酸エステル(例.ラウリル乳酸)又はジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの皮膚透過性増強剤も含んでいてもよい。
【0070】
A形、B形、D形及びF形の結晶形は、安定性、溶解性及び吸湿性において少なくとも1つの利点を有し、医薬の研究や製造に適している。
【0071】
A形は、80℃(密閉)で1日、及び25℃/60%RH、40℃/75%RH(開放)で1週間の保存後、安定である。
【0072】
B形は、80℃(密閉)で1日、及び25℃/60%RH、40℃/75%RH(開放)で1週間の保存後、安定である。B形は80%RHにおける吸水率が0.5%で、わずかに吸湿性であり、また、B形はDVS試験後に形の変換がない。
【0073】
D形は、25℃/60%RH、40℃/75%RH(開放)で1週間の保存後、安定である。
【0074】
F形は、80℃(密閉)で1日、及び25℃/60%RH、40℃/75%RH(開放)で1週間の保存後、安定である。F形は80%RHにおける吸水率が1.2%で、わずかに吸湿性であり、また、F形はDVS試験後に形の変換がない。
【0075】
A形、B形及びD形は、さまざまな溶媒系においてスラリー化した後に無水物であるF形に変換されることがスラリー競合実験で確認された。A形及びF形は、1週間の25℃/60%RH及び40℃/75%RHの条件の下で、物理的及び化学的安定性が比較的良好であったが、D形は、80℃で1日間の条件で、B形とD形の混合物に変換した。A形、B形、D形及びF形の水に対する溶解度は、0.013、0.006、0.018及び0.004mg/mLである。B形及びF形はわずかに吸湿性で、A形は吸湿性で、D形は比較的安定した水和物であることがDVSにより確認された。A形は、92.5%RHで約17日間保存した後に、結晶化度が低下した。
【0076】
F形は、室温から50/70℃において、A形、B形、D形よりも熱力学的に安定である。
【0077】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を単に例示することを意図しており、本発明を限定するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0078】
XRPDの測定は、Panalytical Empyrean X線粉末回折計で行った。本実験におけるX線粉末回折のパラメータは以下のとおり:
X線反射:Cu,Kα
Kα1(Å):1.540598;Kα2(Å):1.544426
Kα2/Kα1 強度比:0.50
電圧:45(kV)
電流:40(mA)
測定範囲:3.0°〜40.0°
本実験におけるDSCデータは、TA Q2000で取得した。本実験におけるDSC法のパラメータは以下のとおり:
昇温速度:10℃/分
パージガス:窒素
本実験におけるTGAデータは、TA Q5000で取得した。本実験におけるTGA法のパラメータは以下のとおり:
昇温速度:10℃/分
パージガス:窒素
本実験における動的蒸気収着(DVS)データは、SMS(Surface Measurement Systems)社のDVS Intrinsicで取得した。本実験における動的蒸気収着(DVS)のパラメータは以下のとおり:
温度:25°C
気体及び流速:窒素、200mL/分
dm/dt:0.002%/分
RHの範囲:0%RH〜95%RH
【0079】
実施例1 A形の製造
国際公開第2015/048662号の実施例3に記載された方法で、出発物質である化合物Iを製造した。化合物Iをジクロロメタンに溶解した。次いで、固体が沈殿するまで、かく拌しながら酢酸エチルを滴下した。固体をろ別し、酢酸エチルで洗浄した。
【0080】
A形のXRPDデータは、表1に示す回折ピークを含む。XRPDパターンを図1に示す。DCS曲線を図2に示す。TGA曲線を図3に示す。
【0081】
実施例1 B形の製造
B形は以下に示すさまざまな方法で得ることができる。これらの方法による調製物のXRPDデータは、全て類似する(同じ主要な回折ピークを含む)。
【0082】
A形15.1mgをN-メチルピロリドン0.4mLに溶解し、次いで、4mLの水をかく拌しながら滴下して懸濁液を得た。遠心分離後、乾燥してB形を得た。この方法で得たB形のXRPDデータは、表2に示す回折ピークを含む。XRPDパターンを図4に示す。DSC曲線を図5に示す。TGA曲線を図6に示す。
【0083】
A形15.1mgをアセトニトリル1.4mLに溶解し、次いで、8mLの水をかく拌しながら滴下して懸濁液を得た。遠心分離後、乾燥してB形を得た。
【0084】
A形25.2mgをアセトニトリル/水(1:1、v/v)2.0mLに加え、得られた混合物を50℃で2時間かく拌した。ろ過後、ろ液を0.1℃/分で5℃までゆっくりと冷却して懸濁液を得た。遠心分離後、乾燥してB形を得た。
【0085】
A形15.0mgをアセトニトリル0.5mLに加え、得られた混合物を室温で72時間かく拌した。遠心分離後、乾燥してB形を得た。
【0086】
A形15.0mgをアセトニトリル/水(1:1、v/v)0.5mLに加え、得られた混合物を室温で72時間かく拌した。遠心分離後、乾燥してB形を得た。
【0087】
A形15.6mgをN,N-ジメチルホルムアミド0.5mLに加え、次いで混合物を室温で72時間かく拌した。遠心分離、乾燥によりB形を得た。
【0088】
A形79.7mgをエタノール3.5mLに加え、ろ過した。ろ液にB形の種晶1mgを加え、続いて水14mLを室温で滴下して懸濁液を得た。遠心分離後、乾燥してB形を得た。
【0089】
実施例3 C形の製造
A形14.9mgをメチルイソブチルケトン0.3mLに加え、得られた混合物を50℃で72時間かく拌した。遠心分離後、乾燥してC形を得た。
【0090】
実施例4 D形の製造
A形14.4mgをメタノール0.6mLに溶解し、溶液をろ過し、室温で蒸発させて、D形を得た。この実施例で製造したD形のXRPDデータは、表4に示す回折ピークを含む。XRPDパターンを図9に示す。
【0091】
実施例5 D形の製造
E形は、水和物であるD形試料を窒素ガス下、30℃で30分間パージするか、又は105℃に加熱した後にのみ、in situで観察された。E形のXRPDパターンを図12に示す。
【0092】
実施例6 F形の製造
F形は以下に示すさまざまな方法で得ることができる。これらの方法による調製物のXRPDデータは、全て類似する(同じ主要な回折ピークを含む)。
【0093】
A形100.1mgをアセトニトリル2.5mLに加え、得られた混合物を室温で20日間かく拌した。遠心分離及び乾燥後、F形を得た。
【0094】
A形100mgを水15mLに加えた。F形の種晶1mgを添加後、混合物を50℃で2時間かく拌した。真空ろ過及び乾燥後にF形を得た。
【0095】
A形20.9mgをn-プロパノール2mLに加えた。50℃で1時間かく拌後、混合物をろ過し、ろ液にF形の種晶1mgを添加し、次いで、かく拌しながら50℃で水12mLを滴下した。遠心分離、乾燥によりF形を得た。この方法で得たF形のXRPDデータは、表6に示す回折ピークを含む。XRPDパターンを図13に示す。
【0096】
実施例7 A形の安定性の検討
A形の試料約10mgを1.5mLガラスバイアルに入れ、80℃(密閉)で1日、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間保存後、XRPD及びHPLC純度を試験した。検討結果を表7に示す。
【0097】
80℃で1日保管の前後のA形のXRPDパターン、25℃/60%RHで1週間保管の前後のA形のXRPDパターン、及び、40℃/75%RHで1週間保管の前後のA形のXRPDパターンのいずれも、ほとんど又は全く変化を示さない。
【0098】
この結果は、A形は、80℃(密閉)で1日、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間の保管では変化せず、純度の低下がなかったことを示す。
【0099】
【表7】
【0100】
実施例8 B形の安定性の検討
B形の試料約4mgを1.5mLガラスバイアルに入れ、80℃(密閉)で1日、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間保存後、XRPD及びHPLC純度を試験した。検討結果を表8に示す。
【0101】
80℃で1日保管の前後のB形のXRPDパターン、25℃/60%RHで1週間保管の前後のB形のXRPDパターン、及び、40℃/75%RHで1週間保管の前後のB形のXRPDパターンのいずれも、ほとんど又は全く変化を示さない。
【0102】
この結果は、B形は、80℃(密閉)で1日、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間の保管では変化せず、純度の低下がなかったことを示す。
【0103】
【表8】
【0104】
実施例9 B形の吸湿性の検討
動的蒸気収着(DVS)機器を用いて本発明のB形の試料約10mgの吸湿性を検討し、その前後にXRPDを測定した。この結果は、B形の吸水率は80%RHにおいて0.5%であったことを示し、B形はわずかに吸湿性である。B形のXRPDパターンは、吸湿性試験の前後で変化しなかった。
【0105】
吸湿性の定義は、中国薬局方2010(試験条件:25℃±1℃、相対湿度80%)である:
潮解性:十分な水を吸収し液体となる
非常に吸湿性:質量増加が15%以上
吸湿性:質量増加が2%以上15%未満
わずかに吸湿性:質量増加が0.2%以上2%未満
非吸湿性:質量増加が0.2%未満。
【0106】
実施例10 D形の安定性の検討
D形の試料約4mgを1.5mLガラスバイアルに入れ、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間保存後、XRPD及びHPLC純度を試験した。検討結果を表9に示す。
【0107】
25℃/60%RHで1週間保管の前後のD形のXRPDパターン、及び、40℃/75%RHで1週間保管の前後のD形のXRPDパターンのいずれも、ほとんど又は全く変化を示さない。しかし、80℃で1日保管の前後のD形のXRPDパターンは、D形がB形とD形の混合物に変換したことを示す。
【0108】
この結果は、D形は、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間の保管では変化せず、純度の大幅な低下がなかったことを示す。
【0109】
【表9】
【0110】
実施例11 F形の安定性の検討
F形の試料約7mgを1.5mLガラスバイアルに入れ、80℃(密閉)で1日、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間保存後、XRPD及びHPLC純度を試験した。検討結果を表10に示す。
【0111】
80℃で1日保管の前後のF形のXRPDパターン、25℃/60%RHで1週間保管の前後のF形のXRPDパターン、及び、40℃/75%RHで1週間保管の前後のF形のXRPDパターンのいずれも、ほとんど又は全く変化を示さない。
【0112】
この結果は、F形は、80℃(密閉)で1日、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間の保管では変化せず、純度の低下がなかったことを示す。
【0113】
【表10】
【0114】
実施例12 F形の吸湿性の検討
動的蒸気収着機器を用いてF形の試料約10mgの吸湿性を検討し、その前後にXRPDを測定した。この結果は、F形の吸水率は80%RHにおいて1.2%であったことを示し、F形はわずかに吸湿性である。F形は、吸湿性試験の後に変化しなかった。
【0115】
実施例13 A形の室温における水への溶解度
A形、B形、D形及びF形の試料10mgそれぞれを1.5mLガラスバイアルに入れ、次いで水1.0mLを加えた。混合物を室温、25rpmで24時間回転させた。懸濁液を遠心分離し、ろ過して、HPLCによる濃度及び純度試験のために上澄みを単離し、残留固形物のXRPDを測定した。A形、B形、D形及びF形の溶解度の要約を表11に示す。
【0116】
【表11】
【0117】
実施例14 A〜F形結晶形の特徴のまとめ
A〜F形結晶形の特性を表12に要約する。
【0118】
【表12】
【0119】
実施例15 A〜F形結晶形の相互変換
A〜F形の結晶形間の関係を、加熱及びスラリー競合実験で調査した。A形とC形はXRPDパターンに類似性があり、かつ、C形は同形の溶媒和物として特定され、このことは、A形とC形が同じ結晶系に属している可能性があることを示す。水和物であるD形は、高温での脱水後に無水物であるE形に変換され、また、RT(室温、25±2℃)におけるメタノール/水(a〜0.5)及びエタノール/水(a=0〜1)溶媒系によるスラリー化後に、無水物であるF形に変換された。溶媒和物であるC形は、50℃で約21日間、水でスラリー化した後、無水物であるB形に変換できた。無水物の形態のA形及びB形は、RT〜50/70℃で、ACN、EtOH、メタノール/水(1:1、v/v)及び水でスラリー化した後、F形に変換された。相互変換の関係を図16に示す。全体的に、F形はRT〜50/70℃においてA/B/D/F形の中でより安定な無水物である。
【0120】
本発明品、並びにそれを製造及び使用する方法及び工程は、現在、それが関係する当業者が同じものを製造し及び使用することを可能にするような完全、明確、簡潔かつ正確な用語で説明されている。これまでの記述は、本発明の好ましい実施の形態を説明するものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、その中で変更を行うことができることを理解されたい。発明とみなされる主題を別途指摘し、明確に主張するために、以下の特許請求の範囲は明細書を結論付けるものである
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】