特表2022-502033(P2022-502033A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2022-502033誘導されたエキソソームを含む毛髪再生組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-502033(P2022-502033A)
(43)【公表日】2022年1月11日
(54)【発明の名称】誘導されたエキソソームを含む毛髪再生組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20211217BHJP
   C12N 13/00 20060101ALI20211217BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20211217BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20211217BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20211217BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20211217BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20211217BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20211217BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20211217BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20211217BHJP
【FI】
   C12N5/071
   C12N13/00
   C12N5/074
   A61K35/12
   A61P17/14
   A61K8/98
   A61Q7/00
   A61L27/38 300
   A61L27/54
   A61K48/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-516778(P2021-516778)
(86)(22)【出願日】2019年9月19日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月24日
(86)【国際出願番号】KR2019012134
(87)【国際公開番号】WO2020071662
(87)【国際公開日】20200409
(31)【優先権主張番号】10-2018-0117263
(32)【優先日】2018年10月2日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】518320579
【氏名又は名称】ステムオン インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】STEMON INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン スン
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4C081
4C083
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B033NH04
4B033NH06
4B033NJ05
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BD14
4B065CA23
4B065CA44
4B065CA50
4C081AB20
4C081BA12
4C081CD34
4C083AA071
4C083AA072
4C083CC37
4C083EE11
4C084AA13
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA92
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA92
(57)【要約】
細胞に直接的または間接的に超音波刺激を提供する段階と、前記細胞および培地の混合物を一定時間培養する段階と、前記混合物からエキソソームを分離する段階と、を含み、前記直接的に刺激を提供することは、細胞を含む培地に超音波刺激を加えることであり、前記間接的に刺激を提供することは、細胞を含まない培地に超音波刺激を加えた後、前記培地と前記細胞を混合することである、毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法を開示する。このようなエキソソームの製造方法は、扱い難い幹細胞だけではなく、容易に得られて維持することができる体細胞からも、超音波処理という簡単な過程によって、短時間かつ高収率で毛髪再生効果を有するエキソソームを得ることができる。このように得られたエキソソームは、含まれた様々な因子の量及び数も高く、前記エキソソーム及びそれを含む組成物は、毛髪の再生を誘導する様々な因子が増加されており、エキソソームは、リン脂質からなる膜構造を有し、頭皮への浸透が容易であり、物質の伝達効率が高いので、毛髪の再生を効果的に誘導することができ、合成医薬品の使用において現れる副作用がないという長所がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞に直接的または間接的に超音波刺激を提供する段階と、
前記細胞および培地の混合物を一定時間培養する段階と、
前記混合物からエキソソームを分離する段階と、
を含み、
前記直接的に刺激を提供することは、細胞を含む培地に超音波刺激を加えることであり、前記間接的に刺激を提供することは、細胞を含まない培地に超音波刺激を加えた後、前記培地と前記細胞を混合することである
ことを特徴とする毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項2】
前記細胞に直接的または間接的に超音波刺激を提供する過程は、
細胞と培地を混合した後、前記混合物に超音波刺激を提供するか、
培地に超音波刺激を提供した後、前記培地と細胞を混合するか、
細胞に超音波刺激を提供した後、前記細胞と培地を混合するか、
細胞に超音波刺激を提供した後、前記細胞と培地を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するか、
培地に超音波刺激を提供した後、前記培地と細胞を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するか、
細胞と培地にそれぞれ超音波刺激を提供した後、前記細胞及び前記培地を混合するか、
細胞と培地にそれぞれ超音波刺激を提供した後、前記細胞及び前記培地を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するか
の方式の中から選択されるいずれか一つの方式により行われる
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項3】
前記直接的な超音波刺激は、強度が0.1〜3W/cmであり、周波数が20kHz〜20MHzであり、持続時間が0.1秒〜20分であることを特徴とし、
前記間接的な超音波刺激は、強度が1〜20W/cmであり、周波数が20kHz〜20MHzであり、持続時間が0.1秒〜20分である
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項4】
前記細胞は、それぞれ哺乳類由来の幹細胞、前駆細胞、繊維芽細胞、角質細胞、または器官内の組織細胞からなる群から選択される
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項5】
前記培養培地は、胚性幹細胞培地、毛乳頭細胞培地、または毛包幹細胞培地のいずれかである
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項6】
前記混合物の培養は、1時間〜10日間行われる
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項7】
前記エキソソームを分離する段階は、超遠心分離、密度勾配、ろ過、サイズ排除クロマトグラフィー、免疫親和性分離、沈殿、及びマイクロ流体による分離の方法のうちの少なくとも一つを用いる
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項8】
前記エキソソームを分離する段階は、
前記培養後の混合物を遠心分離して上澄み液を得る段階と、
前記上澄み液をフィルタでろ過してろ液を得る段階と、
前記ろ液を濃縮する段階と、を含む
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項9】
前記エキソソームを分離する段階は、
前記上澄み液をフィルタでろ過する前に、4℃以下で、7日〜1ヶ月間保管する段階をさらに含む
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項10】
前記分離されたエキソソームは、直径が50〜200nmである
請求項1に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法で製造された
ことを特徴とする毛髪再生効果を有するエキソソーム。
【請求項12】
前記エキソソームは、請求項1に記載の製造方法に入る前の細胞から分泌されたエキソソームに比べて、毛髪の再生を促進する遺伝子のRNAが増加されており、前記毛髪の再生を促進する遺伝子は、β−カテニン、Shh、KRT25、Lef1、VCAN、Ptc1、Tcf3、Mitf、Tyr、Tyrp1、Gli1、及びDctのうちの少なくともいずれか一つである
請求項11に記載の毛髪再生効果を有するエキソソーム。
【請求項13】
前記エキソソームは、請求項1に記載の製造方法に入る前の細胞から分泌されたエキソソームに比べて、皮膚への塗布時、皮膚における毛髪の再生を促進する遺伝子のRNA発現をさらに増加させ、毛髪の再生を阻害する遺伝子のRNA発現をさらに減少させ、
前記毛髪の再生を促進する遺伝子は、Shh、β−カテニン、KRT25、VCAN、Gli1、Lef1、Ptc1、Tyrp1、Tyr、Mitf、及びDctのうちの少なくともいずれか一つであり、
前記毛髪の再生を抑制する遺伝子は、Sfrp4及びDKKのうちの少なくともいずれか一つである
請求項11に記載の毛髪再生効果を有するエキソソーム。
【請求項14】
請求項11に記載の毛髪再生効果を有するエキソソームを含む
ことを特徴とする組成物。
【請求項15】
前記エキソソームが10個/ml以上の濃度で含まれた
請求項14に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪再生効果を有するエキソソーム、及びその製造方法、並びに、該エキソソームを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、一定の毛周期(hair cycle)を経ているが、毛乳頭(dermal papilla)の刺激を受けた毛母細胞(keratinocyte)が盛んに分裂・増殖して毛髪が伸びる成長期(anagen)、毛球(hair bulb)への血液供給が停止し、毛乳頭が毛包から分離される退行期(catagen)、及び細胞増殖が止まり、毛髪が成長しない休止期(telogen)を経て、再び成長期に入り、または毛髪が頭皮から抜け落ちる脱落期(exogen)に入ることになる。ヒトの毛髪は、それぞれ独立した成長周期を有し、一部は脱落期に、もう一部は成長期に入って全体的に同じ水準の毛髪数を維持するようになるが、このような均衡が脱落期に陥り、毛髪が本来あるべき部位に生えなくなった状態を脱毛症(alopecia)という。
【0003】
脱毛症は、当事者に深刻な精神的な苦痛を引き起こし、近年では、症状が発生する年齢層が低くなり、関心がさらに高まっている。脱毛の原因は、様々であり、大いに、男性ホルモンの変性、自己免疫疾患、内分泌疾患、出産、閉経、老化等の内的な要因、及び栄養欠乏、薬物、ストレス、頭皮の汚染、頭皮乾燥、毛包虫等の外的な要因がある。
【0004】
このような脱毛現象を改善するために、数種の脱毛改善または発毛誘導製剤が開発されている。現在、公認されたアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認薬物治療剤のうち、ミノキシジル(Minoxidil)製剤及びフィナステリド(Finasteride)以外には、検証された治療剤がない実情であり、上記2種の合成医薬品は、持続的に服用してこそ効果があるので、長期露出による副作用、費用及び不便さの問題があった。また、このうち、フィナステリドは、脱毛防止効果はあるが、長期間の休止期状態にある毛髪の成長効果が微々たるものであり、ホルモン剤として様々な副作用があった。
【0005】
生物由来のタンパク質、遺伝子、細胞等を原料とした医薬品であるバイオ医薬品(biologics)は、合成医薬品のように生体内で作り出される代謝産物がなくて、毒性が低く、疾患の発症機序に選択的に作用して、効果が良く、副作用が少ないという長所を有する。近年では、このような長所が脚光を浴びながら、脱毛を、バイオ医薬品、特に幹細胞を用いて治療する方法が開発されている。特許文献1には、脂肪組織由来成体幹細胞及び頭皮組織由来毛包細胞を混合して造成された脱毛に対する細胞治療剤、特許文献2には、幹細胞抽出物を含む脱毛治療剤、特許文献3には、TGF−βで刺激して培養された幹細胞培養液を含む脱毛防止及び発毛促進用組成物について記載されている。しかしながら、幹細胞を用いる上記組成物は、幹細胞の分離及び増幅が難しいという効率性及び経済性の問題を共通して有しており、幹細胞治療剤の場合、癌細胞への転移等の危険性があり、幹細胞抽出物の場合、細胞から有効性分を精製することが困難であり、多くの費用と時間を要するという短所があり、幹細胞培養液の場合、有効性分のほか、細胞から分泌した老廃物や、汚染防止のために添加された抗生剤、及び血清等のような、人体への使用時の危険性が検証されなかった物質が含まれているという問題点があった。
【0006】
エキソソームは、自然に分泌される30〜200nmの直径のナノ小胞であって、由来細胞から様々な物質を運ぶ重要なナノ媒介として作用することが知られている。エキソソームが、mRNAの伝達を介して標的細胞の表現型を変化させ得ることを発見して以来、多くの研究によってエキソソームが細胞分化等に関与することが明らかになった。近年では、エキソソームを治療目的で人体に直接使用できる可能性について、色んな角度から検討されている。特に、エキソソームは、このようなバイオ医薬品の分野において、小さな分子、ペプチド、成長因子、抗体、核酸等の生物学的製剤(biopharmaceuticals)に比べて、様々なタンパク質及び核酸を含有しており、より複雑で長続きする効果を奏することができ、細胞のように大きな医薬品に比べて、転移等の危険がなく、細胞の注入時に生じる小胞体形態への分解が必要ないので、細胞とは異なる時空間的効果を有するという長所がある。近年では、特に多くの症状改善及び治癒効果を有すると知られた幹細胞から得られたエキソソームを、治療組成物として使用する技術が開発されている。特許文献4には、成体幹細胞またはその培養液由来エキソソームを有効性分として含む脱毛防止または治療用組成物について開示されている。しかしながら、上記した公開特許の技術を含めて、エキソソームを使用する治療組成物関連技術によっては、エキソソームを量産し難いため、殆ど分離及び増幅が難しい幹細胞を使用している。このため、エキソソームを臨床的に使用するためには、幹細胞ではなく、容易に得て増幅・維持が可能な細胞からエキソソームを得るとともに、その収率を高めることができる技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許10−1425653(2014.08.05)
【特許文献2】韓国登録特許10−1781526(2017.09.19)
【特許文献3】韓国登録特許10−1836029(2018.03.08)
【特許文献4】韓国公開特許10−2017−0044999(2015.10.16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述した問題を解決するために案出されたものであり、細胞に直接的または間接的に超音波刺激を提供する段階と、前記細胞および培地の混合物を一定時間培養する段階と、前記混合物からエキソソームを分離する段階と、を含み、前記直接的に刺激を提供することは、細胞を含む培地に超音波刺激を加えることであり、前記間接的に刺激を提供することは、細胞を含まない培地に超音波刺激を加えた後、前記培地と前記細胞を混合することである、毛髪再生効果を有するエキソソームが容易に得られる細胞から短時間かつ高収率で得られる製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、前記製造方法で製造され、毛髪の再生を促進する遺伝子のRNAが増加されたエキソソームを提供する。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、前記エキソソームを含み、安全であり、毛髪再生効果が持続する組成物を提供する。
【0011】
本発明が成し遂げようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に限定されるものではなく、言及していない他の技術的課題は、以下の記載から、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に明確に理解される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一態様による毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法は、細胞に直接的または間接的に超音波刺激を提供する段階と、前記細胞および培地の混合物を一定時間培養する段階と、前記混合物からエキソソームを分離する段階と、を含み、前記直接的に刺激を提供することは、細胞を含む培地に超音波刺激を加えることであり、前記間接的に刺激を提供することは、細胞を含まない培地に超音波刺激を加えた後、前記培地と前記細胞を混合することである。
【0013】
ここで、前記細胞に直接的または間接的に超音波刺激を提供する過程は、細胞と培地を混合した後、前記混合物に超音波刺激を提供するか、培地に超音波刺激を提供した後、前記培地と細胞を混合するか、細胞に超音波刺激を提供した後、前記細胞と培地を混合するか、細胞に超音波刺激を提供した後、前記細胞と培地を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するか、培地に超音波刺激を提供した後、前記培地と細胞を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するか、細胞と培地にそれぞれ超音波刺激を提供した後、前記細胞及び前記培地を混合するか、細胞と培地にそれぞれ超音波刺激を提供した後、前記細胞及び前記培地を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するかの方式の中から選択されるいずれか一つの方式により行われることを特徴としてもよい。
【0014】
前記直接的な超音波刺激は、強度が0.1〜3W/cmであり、周波数が20kHz〜20MHzであり、持続時間が0.1秒〜20分であることを特徴とし、前記間接的な超音波刺激は、強度が1〜20W/cmであり、周波数が20kHz〜20MHzであり、持続時間が0.1秒〜20分であることを特徴としてもよい。
【0015】
前記細胞は、それぞれ哺乳類由来の幹細胞、前駆細胞、繊維芽細胞、角質細胞、または器官内の組織細胞からなる群から選択されることを特徴としてもよい。
【0016】
前記培養培地は、胚性幹細胞培地、毛乳頭細胞培地、または毛包幹細胞培地のいずれかであってもよい。
【0017】
前記混合物の培養は、1時間〜10日間行われることを特徴としてもよい。
【0018】
前記エキソソームを分離する段階は、超遠心分離、密度勾配、ろ過、サイズ排除クロマトグラフィー、免疫親和性分離、沈殿、及びマイクロ流体による分離の方法のうちの少なくとも一つを用いることを特徴としてもよい。
【0019】
前記エキソソームを分離する段階は、前記培養後の混合物を遠心分離して上澄み液を得る段階と、前記上澄み液をフィルタでろ過してろ液を得る段階と、前記ろ液を濃縮する段階と、を含んでいてもよい。
【0020】
前記エキソソームを分離する段階は、前記上澄み液をフィルタでろ過する前に、4℃以下で、7日〜1ヶ月間保管する段階をさらに含んでもよい。
【0021】
前記分離されたエキソソームは、直径が50〜200nmであることを特徴としてもよい。
【0022】
本発明の他の一態様は、前述した製造方法で製造されたことを特徴とする、毛髪再生効果を有するエキソソームを提供する。
【0023】
ここで、前記エキソソームは、前述した製造方法に入る前の細胞から分泌されたエキソソームに比べて、毛髪の再生を促進する遺伝子のRNAが増加されており、前記毛髪の再生を促進する遺伝子は、β−カテニン、Shh、KRT25、Lef1、VCAN、Ptc1、Tcf3、Mitf、Tyr、Tyrp1、Gli1、及びDctのうちの少なくともいずれか一つであることを特徴としてもよい。
【0024】
前記エキソソームは、前述した製造方法に入る前の細胞から分泌されたエキソソームに比べて、皮膚への塗布時、皮膚における毛髪の再生を促進する遺伝子のRNA発現をさらに増加させ、毛髪の再生を阻害する遺伝子のRNA発現をさらに減少させ、前記毛髪の再生を促進する遺伝子は、Shh、β−カテニン、KRT25、VCAN、Gli1、Lef1、Ptc1、Tyrp1、Tyr、Mitf、及びDctのうちの少なくともいずれか一つであり、前記毛髪の再生を抑制する遺伝子は、Sfrp4及びDKKのうちの少なくともいずれか一つであることを特徴としてもよい。
【0025】
本発明の他の一態様は、前述した毛髪再生効果を有するエキソソームを含む組成物を提供する。
【0026】
ここで、前記組成物は、前記エキソソームが10個/ml以上の濃度で含まれたものであってもよい。
【0027】
上述した課題を解決する手段は、単に例示的なものであり、本発明を限定しようとするものと解釈されてはならない。上述した例示的な実施形態に加えて、図面及び発明の詳細な説明においてさらなる実施形態が存在することが可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一実施形態によるエキソソームの製造方法は、分離及び増幅過程が難しい幹細胞及び前駆細胞はもとより、容易に得られる体細胞からも、超音波処理という簡単な過程によって、毛髪再生効果を有するエキソソームの分泌を短時間で多量に誘導することができる。このように誘導されたエキソソームは、その収率が既存の方法に比べて高く、前記エキソソーム内に含まれた各種の因子の量及び数も高い。
【0029】
本発明の一実施形態によるエキソソーム、及びそれを含む組成物は、毛髪の再生を誘導する様々な因子、特に毛髪の再生を促進する遺伝子のRNAを多量で含有する。また、エキソソームは、リン脂質からなる膜構造を有し、頭皮への浸透が容易であり、物質の伝達効率が高いので、毛髪の再生を効果的に誘導することができ、合成医薬品の使用において現れる副作用がなく、効果がさらに持続的であるという長所がある。
【0030】
本発明の効果は、上記の効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論できる全ての効果を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームの生成データであって、エキソソームの形態を確認したナノサイト(Nanosight)及び電子顕微鏡イメージ(a−b)、及び実施例1で製造されたエキソソーム及び対照群(HDF−exo)の粒子サイズ及び濃度(c−d)を示すものである。
図2】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームの生成データであって、エキソソームマーカーであるCD63の誘導、及びCD63と毛髪再生において重要なタンパク質であるShhの共存を示す免疫蛍光染色イメージである。
図3】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソーム内の毛髪再生関連mRNAを分析したRNA−seqデータである。
図4】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソーム内の毛髪再生関連mRNAを分析したRT−qPCRデータである。
図5】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームによるC57マウスの皮膚における毛髪再生データであって、前記エキソソームの処理濃度及び処理後の経時による毛髪生成イメージである。
図6】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームによるヌードマウスの皮膚における毛髪再生データであって、前記エキソソームの処理濃度及び処理後の経時による毛髪生成イメージである。
図7】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームによるC57及びヌードマウスの皮膚における組織変化データであって、皮膚組織のH&E(Hematoxylin and Eosin:ヘマトキシリン・エオジン)染色イメージである。
図8】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームによるC57及びヌードマウスの皮膚における組織変化データであって、皮下及び全体皮膚組織における毛包数データである。
図9】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームによるC57マウスの皮膚におけるin vivoでの遺伝子発現変化データであって、親油性マーカーのDidで標識したエキソソームの皮膚塗布後の分布を示した蛍光染色イメージ、及び前記エキソソーム処理による毛包再生遺伝子の発現変化と関連したタンパク質免疫蛍光染色イメージである。
図10】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームによるC57マウスの皮膚におけるin vivoでの遺伝子発現変化データであって、前記エキソソーム処理による毛包再生遺伝子の発現変化と関連したmRNA qRT−PCRデータである。
図11】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームによるヌードマウスの皮膚におけるin vivoでの遺伝子発現変化データであって、親油性マーカーのDidで標識したエキソソームの皮膚塗布後の分布を示した蛍光染色イメージ、及び前記エキソソーム処理による毛包再生遺伝子の発現変化と関連したタンパク質免疫蛍光染色イメージである。
図12】本発明の実施例1による毛髪再生効果を有するエキソソームによるヌードマウスの皮膚におけるin vivoでの遺伝子発現変化データであって、前記エキソソーム処理による毛包再生遺伝子の発現変化と関連したmRNA qRT−PCRデータである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、ここで説明する実施形態により限定されるものではなく、後述する特許請求の範囲により定義されるだけである。
【0033】
なお、本発明で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使われるものであって、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本発明の明細書の全般に亘って、ある構成要素を「含む」とは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含んでいてもよいということを意味する。
【0034】
本発明の一態様による、毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法は、細胞に直接的または間接的に超音波刺激を提供する段階と、前記細胞および培地の混合物を一定時間培養する段階と、前記混合物からエキソソームを分離する段階と、を含み、前記直接的に刺激を提供することは、細胞を含む培地に超音波刺激を加えることであり、前記間接的に刺激を提供することは、細胞を含まない培地に超音波刺激を加えた後、前記培地と前記細胞を混合することであることを特徴とする。
【0035】
ここで、前記細胞に直接的または間接的に超音波刺激を提供する過程は、細胞と培地を混合した後、前記混合物に超音波刺激を提供するか、培地に超音波刺激を提供した後、前記培地と細胞を混合するか、細胞に超音波刺激を提供した後、前記細胞と培地を混合するか、細胞に超音波刺激を提供した後、前記細胞と培地を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するか、培地に超音波刺激を提供した後、前記培地と細胞を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するか、細胞と培地にそれぞれ超音波刺激を提供した後、前記細胞及び前記培地を混合するか、細胞と培地にそれぞれ超音波刺激を提供した後、前記細胞及び前記培地を混合し、次いで前記混合物に超音波刺激を提供するかの方式の中から選択されるいずれか一つの方式により行われることを特徴としてもよい。このような超音波刺激は、前記方式の中から選択される一つ以上の組み合わせにより、細胞に直接的または間接的に1回以上提供されてもよく、回数が増加するほど、エキソソームの毛髪再生効果が比例的に高くなる。このように超音波刺激を1回以上提供する場合は、各回の間に細胞が回復できるような時間間隔を設定することが好ましく、前記時間間隔を、好ましくは1日以上、より好ましくは2日以上と設定してもよい。
【0036】
前記直接的な超音波刺激は、強度が0.1〜3W/cmであり、周波数が20kHz〜20MHzであり、持続時間が0.1秒〜20分であることを特徴とし、前記間接的な超音波刺激は、強度が1〜20W/cmであり、周波数が20kHz〜20MHzであり、持続時間が0.1秒〜20分であることを特徴としてもよい。好ましくは、前記直接的な超音波刺激は、強度が0.5〜2W/cmであり、周波数が20kHz〜2MHzであり、持続時間が0.1秒〜10分であることを特徴とし、前記間接的な超音波刺激は、強度が2〜10W/cmであり、周波数が20kHz〜2MHzであり、持続時間が1秒〜15分であることを特徴としてもよい。
【0037】
前記細胞は、それぞれ哺乳類由来の生殖細胞を除いた細胞から選択されてもよく、好ましくは、それぞれ哺乳類由来の幹細胞、前駆細胞、繊維芽細胞、角質細胞、または器官内の組織細胞からなる群から選択されることを特徴としてもよく、さらに好ましくは、哺乳類由来の繊維芽細胞または器官内の組織細胞のいずれか一方であってもよい。これは、後述する本発明の一態様による毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法によれば、前記エキソソームは、いずれの細胞を用いても得られるので、得難くて増幅が難しい幹細胞や前駆細胞よりも、繊維芽細胞や器官内の組織細胞等のように、修得、維持及び増幅が容易な細胞がさらに容易くて効率的であるからである。前記細胞は、前記エキソソームの後述する生体への以降の用途に応じて、自己(autologous)由来、同種(allogeneic)由来または異種(heterologous)由来のいずれかであってもよく、異種由来である場合、哺乳類から得られるものであってもよい。免疫拒絶反応の可能性を低減するために、好ましくは同種由来、より好ましくは自己由来のものを使用してもよい。
【0038】
前記細胞に超音波刺激を加える段階は、細胞に直接超音波処理を行い、または、細胞が初代培養培地でやっと覆われるほど最小限の量だけ含まれた状態で行われてもよい。このときの初代培養培地は、前記細胞の健康状態を保つために用いられる一般の培地であり、前記細胞の通常の培養に適した培地、例えば、前記細胞が繊維芽細胞であり、抗生剤と血清が含まれたDMEM培地であってもよい。
【0039】
前記培養培地(細胞を含まずに超音波処理される培地)は、胚性幹細胞培地、毛乳頭細胞培地、及び毛包幹細胞培地の中から選ばれるものであってもよいが、これに制限されない。例えば、胚性幹細胞培地、間葉系幹細胞培地、神経幹細胞培地、脂肪幹細胞、造血幹細胞、毛乳頭細胞培地、及び毛包幹細胞培地のうちのいずれか一つであってもよい。これは、本発明の発明者により出願された大韓民国特許出願第10−2018−0060317号の発明によれば、超音波処理された第2細胞培地(第2細胞を培養し、または第2細胞への分化を誘導する培地)及び超音波処理された第1細胞の混合物を培養することにより得られたエキソソームを、他の細胞に処理すると、この細胞を第2細胞によりリプログラミングすることができ、幹細胞、またはその抽出物、培養液等は、全て脱毛治療に効果を奏すると知られている。
【0040】
前記混合物の培養は、1〜10日間行われることを特徴としてもよく、好ましくは1〜6日間、最も好ましくは1〜2日間行われることを特徴とする。これは、エキソソームが、超音波処理後1日目に最も多く分泌され、経時により、その分泌量が減少するが、このような分泌量の減少からみて、成分が変化する恐れがあるからである。
【0041】
前記エキソソームを分離する段階は、超遠心分離、密度勾配、ろ過、サイズ排除クロマトグラフィー、免疫親和性分離、沈殿、及びマイクロ流体による分離の方法のうちの少なくとも一つを用いることを特徴としてもよい。
【0042】
前記エキソソームを分離する段階は、前記培養後の混合物を遠心分離して上澄み液を得る段階と、前記上澄み液をフィルタでろ過してろ液を得る段階と、前記ろ液を濃縮する段階と、を含んでいてもよい。前記遠心分離は、細胞デブリ及び死細胞を除去するために行われ、好ましくは、1000〜5000gで、10分〜60分間行ってもよい。前記上澄み液をフィルタで濾過する段階は、細胞デブリをさらに除去し、特定のサイズ以下の粒子のみを得るために行われるものであり、ここで使用されるフィルタは、好ましくは、シリンジフィルタであってもよい。前記ろ液を濃縮する段階は、好ましくは、遠心分離フィルタ(centrifugal filter)を用いて行ってもよい。遠心分離フィルタを用いれば、前記ろ液を濃縮するとともに、特定のサイズ以下の粒子を除去することができる。前記エキソソームを分離する段階は、前記上澄み液をフィルタで濾過する前に、4℃以下で7日〜3ヶ月間保管する段階をさらに含んでもよい。前記保管は、好ましくは4℃以下で7日以内であり、より好ましくは−20℃以下で1ヶ月以内であり、最も好ましくは−80℃以下で3ヶ月以内であってもよい。エキソソームの有効性分は、mRNAとタンパク質等であり、これらの成分は、温度が高く、または酵素活性の高い温度に近いほど変性または分解されやすい。
【0043】
前記分離されたエキソソームは、直径が50〜200nmであることを特徴とし、好ましくは、直径が100〜150nmであることを特徴としてもよい。
【0044】
本発明の他の一態様による毛髪再生効果を有するエキソソームは、前記製造方法で製造されたことを特徴とする。
【0045】
ここで、前記エキソソームは、請求項1に記載の製造方法に入る前の細胞から分泌されたエキソソームに比べて、毛髪の再生を促進する遺伝子のRNAが増加されており、前記毛髪の再生を促進する遺伝子は、β−カテニン、Shh(Sonic Hedgehog:ソニック・ヘッジホッグ)、KRT25(Keratin 25:ケラチン25)、Lef1(Lymphoid Enhancer Binding Factor 1:リンパ系エンハンサー結合因子1)、VCAN(Versican:バーシカン)、Ptc1(Patched 1:タンパク質パッチホモログ1)、TCF3(Trascription Factor 3:転写因子3)、MITF(Microphthalmia Associated Transcription Factor:小眼球症関連転写因子)、Tyr(Tyrosinase:チロシナーゼ)、Tyrp1(Tyrosinase Related Protein 1:チロシナーゼ関連タンパク質1)、Gli1(GLI family zinc finger 1:GLIファミリージンクフィンガー1)、及びDct(Dopachrome Tautomerase:ドーパクロムトートメラーゼ)のうちの少なくともいずれか一つであることを特徴としてもよい。
【0046】
前記エキソソームは、前記製造方法に入る前の細胞から分泌されたエキソソームに比べて、皮膚への塗布時、皮膚における毛髪の再生を促進する遺伝子のRNA発現をさらに増加させ、毛髪の再生を阻害する遺伝子のRNA発現をさらに減少させ、前記毛髪の再生を促進する遺伝子は、Shh(Sonic Hedgehog:ソニック・ヘッジホッグ)、β−カテニン、KRT25(Keratin 25:ケラチン25)、VCAN(Versican:バーシカン)、Gli1(GLI family zinc finger 1:GLIファミリージンクフィンガー1)、Lef1(Lymphoid Enhancer Binding Factor 1:リンパ系エンハンサー結合因子1)、Ptc1(Patched 1:タンパク質パッチホモログ1)、Tyrp1(Tyrosinase Related Protein 1:チロシナーゼ関連タンパク質1)、Tyr(Tyrosinase:チロシナーゼ)、MITF(Microphthalmia Associated Transcription Factor:小眼球症関連転写因子)、及びDct(Dopachrome Tautomerase:ドーパクロムトートメラーゼ)のうちの少なくともいずれか一つであり、前記毛髪の再生を抑制する遺伝子は、Sfrp4(Secreted Frizzled Related Protein 4:分泌された縮れ関連タンパク質4)及びDKK(Dickkopf:ディコップ)のうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とする。
【0047】
本発明の他の一態様は、前記毛髪再生効果を有するエキソソームを含む組成物を提供する。
【0048】
ここで、前記組成物は、前記エキソソームが最小限10個/mlの濃度で含まれたものであり、より好ましくは、前記1012個/mlの濃度で含まれたものであることを特徴としてもよい。これは、含まれたエキソソームの濃度が10個/ml未満であり、または1012個/mlを超過する場合、毛髪再生効果が落ち、特に濃度が高くなり過ぎると、経済性も落ちるからである。
【0049】
前記組成物には、前記エキソソーム以外にも、薬剤学的に許容される担体、前記処理部位への浸透率等を高めて、毛髪再生効果をさらに増進させるその他の添加剤等が、様々に添加され得ることは自明な事項であるので、これについての具体的な説明を省略する。
【実施例】
【0050】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、後述する実施例により限定されるものではない。
【0051】
本発明の全ての実施例及び実験例上の全ての細胞培養は、37℃、5%COの条件下で行われた。
【0052】
実施例1.毛髪再生効果を有するエキソソームの製造、及びそれを用いた毛髪再生の誘導
毛髪再生効果を有するエキソソームを得るために、1×10個のHDF(ヒト真皮線維芽細胞)にUltraRepro 1001(ステムオンインコーポレーテッド(STEMON Inc.)、大韓民国・ソウル市)を用いて、20KHz、1.0W/cmの超音波刺激を5秒間直接加えた。2×10個のUHDFを、35−mmペトリ皿で、超音波処理された(20KHz、5.0W/cm、10分)毛乳頭細胞培養培地(Dermal Papilla cell medium、PromoCell社)と共に1日間培養した。前記UHDFを培養した培養培地から、次のようにエキソソームを分離した。培養培地を3,000×gで20分間遠心分離することで細胞デブリ及び死細胞を除去した後、上澄み液を0.22−mmのフィルタ(Minisart(登録商標)Syringe Filter、ザルトリウス社、ドイツ・ゲッティンゲン)に通過させた。通過した培地をAmicon(登録商標)Ultra−15 100,000kDa device(ミリポア社、アメリカ合衆国・マサチューセッツ州・ビレリカ)に入れ、14,000×gで20分間遠心分離することで、エキソソーム(iExo)を濃縮した。
【0053】
実験例1.毛髪再生効果を有するエキソソームの分析実験
実施例1における毛髪再生効果を有するエキソソームの誘導方法により培養したUHDFを、エキソソームマーカーのCD63に対する免疫蛍光染色により分析した結果(このとき、対照染色は、核染色剤であるDAPI(4’,6−diamidino−2−phenylindole:4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)により行う)、多量のエキソソームが生成され(図2a)、前記マーカーと毛髪の再生に重要なマーカーであるShh(Sonic hedgehog)の免疫蛍光染色の結果、分泌されるエキソソームにおいてShhが発現していることが確認された(図2b)。実施例1における毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法により得られたエキソソームの形を、Nanosight(ナノサイト)及びTEM(transmission electron microscopy:透過型電子顕微鏡)を用いて分析した結果、正常な形態のエキソソームの形が観察された(図1a−b)。実施例1により製造されたエキソソームは、略50nm〜250nmの直径を有することが明らかになり(図1c)、前記製造方法を経ていない同数の細胞から分泌されたエキソソームに比べて、その数が4倍以上高いことが明らかになった(図1d)。前記エキソソームに対するRNA−Seq分析の結果、毛髪の再生と関連した毛髪組織の発生、毛髪の再生、メラニン形成、Jak−Stat信号伝達体系、及びWnt信号伝達体系のmRNA及びマイクロRNAが、対照群に比べて、大いに増加したことが明らかになった(図3)。前記エキソソームmRNAをリアルタイムPCRで分析した結果、β−カテニン、Shh、KRT25、Lef1、Versican、Ptc1、TCF3、Mitf、Tyr、Gli1、及びTyrp1が対照群に比べて増加したことがわかり(図4a−b)、これは、これらに対するRNA−seqを介した読み取りカウント分析からも確認された(図4c)。まとめると、実施例1のエキソソームの製造方法により、HDFから毛髪再生能を有するエキソソームが成功的に誘導されたことが確認された。
【0054】
実験例2.毛髪再生効果を有するエキソソームによる毛髪再生実験
実施例1における毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法により得られたエキソソームを、D−PBS培養液に希釈して、背側(dorsal side)を剃毛したC57マウス及びヌードマウスの皮膚に、1×10、1×1010、1×1011個/mlの濃度で、それぞれ週1回塗布し、1週間及び2週間後、それぞれの効果を確認した結果、C57マウスは、対照群に比べて、多数の毛が長く伸びたことが確認され(図5)、ヌードマウスの場合、エキソソームを処理しなかった群では、目視で毛が観察されなかったのに対して、エキソソームを処理した群では、1週間目から毛が多数伸びたことが確認され(図6)、前記エキソソームを2週間処理したマウス群は、対照群に比べて、毛が3倍以上長く伸びた(データ未掲載)。これは、前記エキソソームが毛髪再生効果を有することを証明するとともに、もともと毛のないヌードマウスにおいて、週1回の塗布により、毛髪の再生を誘導することができたことから、塗布を1日2回行ってこそ効果が得られるFDA承認薬物に比べて、高い持続性を有することを示す。
【0055】
H&E染色の結果、エキソソームを処理した皮膚において、毛包を示す濃い紫色で染色された部分が多数観察され(図7)、皮膚層の全体、特に皮下組織(subcutis)において、対照群に比べてはるかに多数の毛包が確認され(図8)、毛髪の生成が促進されたことが組織レベルで確認された。前記エキソソームを脂質マーカーのDidで染色後、ヌードマウス及びC57マウスの表皮に塗布した結果、エキソソームが毛穴内に浸透したことが確認された(それぞれ図9a及び図11aに示し、対照染色は、核染色剤のDAPIにより行う)。また、エキソソーム処理群は、対照群に比べて、毛包細胞の再生と関連したタンパク質であるβ−カテニン、Shh、及びKi67の発現が増加したことが、組織免疫蛍光染色により確認され(それぞれ図9b及び図11bに示す)、発毛促進因子であるShh、β−カテニン、KRT25、VCAN、Gli1、Lef1、Ptc1、Tyrp1、Tyr、Mitf、DctのmRNA発現が増加し、発毛抑制因子であるSfrp4及びDKKのmRNA発現が減少したことが、皮膚組織に対するqRT−PCRにより確認された(それぞれ図10及び図12)。まとめると、実施例1により製造されたエキソソームは、in vitroだけでなくin vivoにおいても、毛髪の再生に優れた効果を示したことが確認された。
【0056】
比較例1.毛髪再生効果を有するエキソソームに対する対照群
超音波刺激を与えなかったHDF(NHDF)を、繊維芽細胞培地(10% fetal bovine serum(Gibco)及び1% penicillin/streptomycin(Gibco)が含まれたDMEM(Gibco))で培養した。前記NHDFを培養した培養培地からエキソソーム(HDF−Exo)を分離するときは、実施例1におけるエキソソームの分離方法と同じ過程を経た。
【0057】
比較例2.毛髪再生効果を有するエキソソーム処理マウスに対する対照群
D−PBS培養液(マウスの皮膚に塗布するとき、エキソソームの希釈に用いた溶媒)を、エキソソーム無しに、背側(dorsal side)を剃毛したC57マウス及びヌードマウスの皮膚に塗布した。
【0058】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本願の技術的思想や必須特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能であることが理解できる。よって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではない。例えば、単一型に説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に、分散して説明されている構成要素も結合された形態で実施されてもよい。
【0059】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明による毛髪再生効果を有するエキソソーム及びそれを含む組成物は、毛髪の再生を誘導する様々な因子、特に毛髪の再生を促進する遺伝子の発現産物を多量で含み、リン脂質からなる膜構造を有し、頭皮への浸透が容易であり、物質の伝達効率が高いので、毛髪の再生を効果的に誘導することができ、合成医薬品の使用において現れる副作用がなく、効果がさらに持続的であるので、毛髪の問題を改善、予防及び治療することができる薬物として用いられ得る。
【0061】
また、本発明による毛髪再生効果を有するエキソソームの製造方法は、前述した効果を有する様々な因子を、超音波刺激を細胞に処理する容易な過程により、高濃度の有効性分を含むエキソソームとして高収率で得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】