【実施例】
【0119】
実施例1:非経口投与された抗CD154抗体の毒性を評価するためのアカゲザルにおけるin vivo反復投与試験
静脈内(IV)又は皮下(SC)投与した抗CD154抗体のアカゲザルにおける忍容性及び潜在的な血栓塞栓症リスクを評価した。ヒトにおいて血栓塞栓症を誘発することが知られている抗CD154 IgG1抗体の投与は、アカゲザルにおいて肺血栓塞栓症の発症を起こすが、投与を受けていないカニクイザルでは起こさないため、標的抗CD154抗体の非臨床安全性評価においてより感受性の高い種として、両種とも薬理学的に適切ではあるものの、カニクイザルよりもアカゲザルを選択した。
【0120】
より具体的には、カニクイザルにおける薬物動態(PK)/薬力学(PD)試験では、22例のサルに、IV投与によって0.05mg/kg〜5mg/kgの範囲の単回用量のC4LB231を、又は皮下投与によって5mg/kgの単回用量のC4LB231を投与した。C4LB231のピーク血清中濃度(C
max)の用量に比例した増加が観察された。しかしながら、C4LB231のC
max血清中濃度は、恐らくは抗薬物抗体(ADA)の高い発生率によって、急速に減少した。C4LB231処理された22例のサルのうち、C4LB231投与を受けた10例のサルに、2日目に単一用量のKLH負荷を行った。これらのKLH負荷動物におけるC4LB231のPKは、KLH負荷なしの同用量のC4LB231投与を受けた動物と同等であった。
【0121】
したがって、カニクイザルもまた薬理学的に適切である(PK/PD)が、血栓塞栓症の潜在的リスクを評価するための標的抗CD154抗体の毒性試験には、アカゲザルがより感受性の高い種であると考えられる。
【0122】
I.8週間投与試験
アカゲザルに、1週間1回、8週間にわたり、抗CD154抗体C4LB231を静脈内(IV)又は皮下(SC)に投与した。試験の実験デザインを以下の表1に示す。これまでの臨床試験中の観察結果に基づき血栓塞栓症を誘発することが知られている抗CD154 1gG1抗体5c8(Biogen)を、陽性対照として使用した。対照ビヒクルは、10mMヒスチジン、8.5%スクロース、0.04% PS20、20μg/mL EDTA、pH5.6とした。計16例のサルに抗CD154抗体C4LB231を投与し、8例のサルに陽性対照抗体を投与し、4例のサルに対照ビヒクルを投与した。
【0123】
【表1】
1IV=静脈内低速ボーラス注射;SC=皮下注射
【0124】
群1〜4には、対照ビヒクル、陽性対照抗体、又は試験抗体C4LB231を、低速のボーラスIV注射により末梢静脈内に投与し、群5は、週1回、1、8、15、22、29、36、43、及び50日目に計8回、肩甲骨部にSC注射により試験抗体C4LB231を投与した。血液サンプルを動物から採取し、以下のように評価した。
【0125】
結果
肺組織病理学的評価によって判定したとき、30mg/kg IV、150mg/kg IV、及び100mg/kg SCのC4LB231処置により、IV又はSC投与動物のいずれにおいても血栓症は生じなかった。凝固パネル(プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、フィブリノーゲン(fib)及びD−ダイマー(フィブリン分解産物))に影響はなく、血小板数及び形態学的パラメータ(平均体積、成分、及び分布幅)の変化は、高用量群(150mg/kg/wk IV)において観察されなかった。臨床病理学的パラメータにおけるC4LB231に関連する変化は、56日目に150mg/kg IV投与の雌個体における中等度のリンパ球減少に限定された。C4LB231に関連する注射又は注射部位反応は観察されなかった。150mg/kgまでのC4LB231用量について、他の有害事象は観察されなかった。
【0126】
採取した血液サンプル由来の血清を分析し、C4LB231の血清中濃度を測定した。各抗体投与群において測定したC4LB231の平均血清中濃度を、以下の表2に示す。C4LB231を投与された全ての動物は、週1回のIV又はSC投与後のサンプル採取期間(1日目〜57日目)を通して定量化可能な抗体濃度を有した。陽性対照抗体を投与された全ての動物もまた、週1回のIV投与後のサンプル採取期間を通して定量化可能な血清中濃度を有した。高用量(150mg/kg)でのC4LB231曝露量は、50mg/kgの陽性対照抗体を上回った。
【0127】
【表2】
1投与からの経過時間
2個々の比の平均
【0128】
平均遊離及び総sCD154濃度を、電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)によって、乏血小板血漿サンプル中で測定した。血小板は、CD154を低下させてsCD154濃度の測定を困難にするため、乏血小板血漿サンプルを使用した。平均遊離及び総sCD154濃度を
図1A及び1Bに示す。平均遊離sCD154濃度は、初回投与後、定量化可能な最低濃度以下まで直ちに抑制され、定量化可能な最低限度よりも低い遊離sCD154ベースライン濃度であった1例の動物を除いて、50mg/kgの陽性対照抗体又は150mg/kgのC4LB231の週1回IV投与後、最終抗体投与の7日後に最後のサンプルが採取されるまでこの濃度で維持された。
【0129】
30mg/kg C4LB231の1日目及び50日目の投与後、投与1時間後の平均遊離sCD154濃度は定量化可能な最低濃度以下であり、平均sCD154濃度は、各投与間隔終了時にベースラインより少なくとも50%低いままであった。100mg/kg C4LB231の1日目及び50日目のSC投与後、投与6時間後の平均遊離sCD154濃度は定量化可能な最低濃度未満に抑制され、平均sCD154濃度は、サンプリング期間を通して定量化可能な最低濃度レベルのままであった。
【0130】
群1では、ほとんどのサンプル中の全血漿sCD154濃度は、定量化可能な最低濃度以下であった。C4LB231の30及び150mg/kgの週1回IV投与、又は100mg/kgの週1回SC投与、並びに陽性対照抗体の50mg/kgの週1回IV投与後、総sCD154濃度はすぐに増加し、22日目より前にプラトーに達した。陽性対照抗体群における総sCD154濃度は、C4LB231投与群よりも早くプラトーに達した。C4LB231の150mg/kg IV投与群における平均プラトー濃度は、C4LB231の100mg/kg SC投与群における平均プラトー濃度と同様であった。C4LB231の30mg/kg IV投与群における平均プラトー濃度は、C4LB231の150mg/kg IV又は100mg/kg SC投与群よりわずかに低かった。陽性対照抗体の50mg/kg IV投与群における平均プラトー濃度は、有意に低かった。
【0131】
抗KLH抗原負荷試験
15日目及び36日目に免疫化した後の抗キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)抗体の検出によって、一次及び二次液性免疫応答を評価した。左大腿部後面への筋肉内注射によって、投与量1mgのKLHで動物を免疫した。血液サンプルを採取し、比色酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて抗KLH IgG及びIgM抗体分析を行った。結果を
図2A及び2Bに示す。
【0132】
一次免疫7、14、及び21日後の全ての対照群の動物について力価中央(CPT)値の存在によって示されるとき、対照群の全ての動物は、安定した/顕著な一次抗KLH IgM及びIgG抗体応答を引き起こし(IgM及びIgG CPTは、それぞれ約300及び1400の群平均値に達した)、36日目のKLHによる二次免疫化後に群平均値は上昇した(IgM及びIgGについて、それぞれ最大約600及び3600のCPT群平均値)。試験抗体C4LB231及び陽性対照抗体を投与した動物において、抗KLH IgM及びIgG一次及び二次応答における用量依存的減少が存在していた。これらの抗KLH抗体応答の減少は、両抗体の投与に対する予想された薬理学的効果であった。要するに、KLH負荷は、対照動物において安定した応答を示したが、予想されたように、C4LB231処置群における応答の用量依存的抑制を示した。
【0133】
II.3ヶ月間投与試験
アカゲザルに、1週間1回、13週間にわたり、抗CD154抗体C4LB231を静脈内(IV)又は皮下(SC)に投与した。試験の実験デザインを以下の表3に示す。対照ビヒクルは、0.9%滅菌生理食塩水(NaCl)とした。8週間試験について先に記載したように、1、8、15、22、29、36、43、50、57、64、71、78、及び85日目に合計13回、動物にIV又はSC注射によって投与した。29、57、及び155日目(回復試験の動物のみ)に、動物は、KLH抗原負荷試験のため、1mg量のKLH抗原を左大腿部に筋肉内注射を受けた。血液サンプルを動物から採取し、以下のように評価した。
【0134】
【表3】
1IV=静脈内低速ボーラス注射;SC=皮下注射
2主要試験の動物は92日目に剖検を行った;回復試験の動物は185日目に剖検を行った
【0135】
結果
13週間の処置期間にわたり、IV又はSC注射による最大150mg/kg/wkまでのC4LB231投与により、有害事象は観察されなかった。肺組織病理学的評価によって判定される血栓症、及び凝固パラメータに対する影響は、8週間投与試験で観察された結果と同様に、治療群において観察されなかった。
【0136】
採取した血液サンプル由来の血清を分析し、抗体の血清中濃度を測定した。アカゲザルへの週1回IV投与後の平均血清C4BL231トキシコキネティクス(TK)パラメータの推定値を、以下の表4にまとめる。C4BL231で処置された全ての動物は、週1回のIV又はSC投与後のサンプル採取期間を通して定量化可能な血清中C4BL231濃度を有した。曝露量は、1日目の初回IV投与後にほぼ用量比例的に、85日目のIV投与後に用量比例的よりもわずかに大きく増加した。血清中濃度は、92日目に定常状態に達した。血清中濃度は、回復期間全体にわたって定量化できた。血清中C4BL231濃度は、対照群(群1)の全ての動物においてサンプリング期間を通して、定量化可能な最低限界未満であった。C4LB231で処置した30例の動物のうち5例は、抗C4BL231抗体に対して陽性であった(すなわち、抗薬物抗体(ADA)陽性)。ADA陰性の回復動物で推定される平均T
1/2値は、異なる用量群で類似しており、雄動物と雌動物との間に明らかな差はなかった。
【0137】
【表4】
1投与からの経過時間
2個々の比の平均
3ADA陰性回復動物のみ[群2 N=3;群3 N=4;群4 N=3]
【0138】
遊離及び総可溶型CD154(sCD154)を乏血小板血漿サンプル中で評価した。データを
図1C及び1Dに示す。遊離sCD154濃度は、C4BL231のIV又はSC投与後に直ちに減少した。減少の程度は、より高い用量レベルでより大きかった。遊離sCD154の用量依存的減少は、総sCD154の用量依存的増加と共に、血漿中の良好な標的係合を示した。
【0139】
抗KLH IgM及びIgG抗体の産生における、C4BL231に関連する用量依存的変化は、対照(群1)に対して、150mg/kg/投与群(IV及びSC)の両方において、一次免疫化14日後に始まり、全ての群(20mg/kg/投与群:群2を含む)では、KLHによる二次免疫化後の全ての時点で観察された。この変化は、KLHによる二次免疫化後の応答においてより明確であった。この抗KLH IgM及びIgG抗体の減少はまた、20mg/kg(群2)の雌動物の一部の個体、並びに、回復期間中の155日目の三次免疫後の150mg/kg(群3及び4)の雄及び雌動物の一部の個体についても見られ、同じ個体動物における定量化可能な血清中C4LB231濃度と相関していた。これらの結果を考慮すると、3ヶ月間の回復期間は、C4BL231投与後の完全なKLH抗体応答の回復には十分ではなかった。一次及び二次抗KLH IgM及びIgG抗体応答の減少は、C4BL231投与の予想される薬理学的効果であった。
【0140】
要するに、週1回のIV又はSC注射によるC4BL231の投与は、最大150mg/kg(SC及びIV)のレベルで3ヶ月間アカゲザルにおいて十分に忍容された。いくつかの処置関連所見が、150mg/kg IV又はSCの高用量群で観察された(例えば、リンパ球及び単球の減少;脾臓、下顎及び腸間膜リンパ節のリンパ濾胞胚中心の数及びサイズの減少;並びに、T細胞依存性抗体応答(TDAR)の明らかな抑制)。しかしながら、かかる治療関連所見は、CD154拮抗作用の意図される薬理作用の結果である可能性が高い。これらの結果に基づいて、無毒性量(NOAEL)は、150mg/kg/週のIV及びSCと考えられ、それぞれIV及びSC投与において、5172.6及び2809.8μg/mLのC
max、並びに、それぞれIV及びSC投与において、21203.5及び16951.9日*μg/mLのAUC
85〜92日目に対応していた。
【0141】
III.6ヶ月間投与試験
アカゲザルに、1週間1回、6ヶ月間にわたり、抗CD154抗体C4LB231を皮下(SC)に投与する。試験の実験デザインを以下の表5に示す。対照ビヒクルは、0.9%滅菌生理食塩水(NaCl)である。1、8、15、22、29、36、43、50、57、64、71、78、85、92、99、106、113、120、127、134、141、148、155、162、169、及び176日目に合計26回、動物に投与する。
【0142】
【表5】
1SC=皮下注射
【0143】
血液サンプルを採取し、C4BL231及び抗C4BL231抗体(すなわち、抗薬物抗体(ADA))分析のため血清中濃度を測定する。他の分析(例えば、sCD154濃度の測定)を行ってもよく、動物の他の試験(例えば、KLH抗原負荷試験)を行って、C4BL231投与の安全性を更に評価してもよい。
【0144】
この試験は進行中である。これまでに、30mg/kg又は150mg/kg処置群のいずれにも、注目すべき臨床的所見は見られていない。
【0145】
実施例2:非経口投与された抗CD154抗体の安全性及び忍容性を評価するための臨床試験
18〜55歳齢の健康な男性及び女性の参加者において、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。56例の登録済み参加者を、それぞれ8例の参加者の7つのコホートに無作為に分割した。コホートのうち5つに、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、又は30mg/kgの用量で抗CD154抗体C4LB231を静脈内投与し、1つのコホートには、3mg/kgの用量でC4LB231を皮下投与した。最初は、6番目のコホートは、50mg/kgの用量で抗CD154抗体を静脈内投与するために予定されていた。しかしながら、30mg/kg抗体を投与されたコホートについて十分な薬力学的効果が観察されたため、試験において50mg/kgコホートまで増加させないことを決定した(以下の実施例3参照)。各コホート内において、6例の参加者は、C4LB231抗体を投与されるように無作為化され、2例の参加者は、プラセボを投与されるように無作為化された。各コホートにおいてセンチネル投与を実施した。すなわち、各コホートにおいて最初の2例の被験者(1例は活性物質及び1例はプラセボ)を、他の被験者への投与の少なくとも24時間前に投与した。低用量群(0.3mg/kg〜3mg/kg)は、シリンジポンプを使用して点滴投与されたが、高用量群(10mg/kg〜30mg/kg)では、IVバッグと輸液ポンプを使用した。
【0146】
静脈内コホートにおける試験参加者には、最大250mLの体積に希釈した抗体の静脈内点滴によって、総投与量0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、又は30mg/kgを約60分〜120分かけて投与した。皮下コホートにおける試験参加者には、総投与量3mg/kg抗体を投与した。総投与量を、腹部への最大4回の皮下注射(体重に応じる)で投与した。静脈内コホートは漸増投与法で投与され、これは、0.3mg/kgコホートが最初に投与され、薬物動態及び薬力学データ、抗原負荷試験のデータ(例えば、破傷風トキソイド及びKLH)、ウイルスレベル(例えば、EBV及びCMV)などを含む、これまでに投与されたコホートの臨床データ及び検査データの安全評価後に、次に高い用量の投与に進む決定を行ったことを意味する。試験期間は約20週間であり、スクリーニング期間と、4週間後の試験製剤の投与期間、及び16週間のフォローアップ期間を含む。この試験は進行中である。
【0147】
C4LB231の安全性及び忍容性を、理学的検査、バイタルサインの評価(例えば、体温、脈拍/心拍数、呼吸数、血圧など)、心電図、心電図テレメトリー、臨床検査、血栓症検査による評価、早期検出活動性結核(TB)評価、併用薬、並びに、注入及びアレルギー反応及び注射部位反応を含む有害事象及び重篤な有害事象報告によって監視した。
【0148】
以下の実施例で論じられるように、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、及び免疫原性評価のために参加者から血液サンプルを採取した。血液サンプルは、炎症性サイトカイン(血清中)の評価、リンパ球サブセットの免疫表現型、並びに末梢血単核球(PBMC)のT細胞及びB細胞機能分析などの、追加のバイオマーカー分析のためにも採取した。試験が進行中であるため、サンプルは今も試験参加者から採取され、分析されている。これまでに得られたデータは、C4BL231の投与に対する安全性の懸念を示していない(例えば、重度の有害効果(SAE)はなく、凝固安全性パラメータにおける血栓塞栓効果又は傾向はなく、サイトメガロウイルス(CMV)又はエプスタイン−バーウイルス(EBV)再活性化はない)。
【0149】
実施例3:薬物動態評価
実施例2に記載の試験に従ってC4LB231投与後の様々な時点で、試験の被験者から血漿サンプルを得た。続いて、C4LB231の薬物動態パラメータを、C4LB231投与後の被験者における経時的な血漿中濃度から決定した。決定された薬物動態パラメータとしては、C
max(観察された最大血漿中濃度)、T
max(観察された最大血漿中濃度に達するまでの時間);AUC
inf(終末相を外挿した時間ゼロから無限大までの血漿中濃度対時間曲線下面積);AUC
las(時間ゼロから最後の定量化可能な濃度に対応する時間までの血漿中濃度対時間曲線下面積);T
1/2(終末相半減期);CL(IV投与における、総全身クリアランス);CL/F(SC投与における、血管外投与後の見かけの総全身クリアランス);V
z(IV投与における、終末相に基づく分布容積);V
z/F(SCのみにおける、血管外投与後の終末相に基づく見かけの分布容積);及び、F(%)((AUC
inf,SC/平均AUC
inf,IV)×100によって算出される絶対SC生物学的利用率)が挙げられる。
【0150】
予備薬物動態解析を
図3A〜3Dに示す。データは、0.3mg/kgから30mg/kgまでのC
maxの用量比例的増加と、0.3mg/kgから10mg/kgまでのAUCのほぼ用量比例的増加を示す。10mg/kg〜30mg/kgのAUCでは、用量比例を超える増加が観察された。C4BL231の半減期(t
1/2)は、約7〜11日と予備的に決定されている(現時点で、30mg/kgコホートのt
1/2の決定に十分なデータが入手されていない、後日更新される)。現在入手できるデータに基づくと、SC投与における生物学的利用率(F%)は、71%であると判定されている。
【0151】
これまでのC
maxデータに基づくと、50mg/kgの投与量まで上昇させても、十分な安全マージンが予測される。最も保守的なAUC安全マージン(実施例1で上述したアカゲザルにおける3ヶ月間投与毒性試験の1回の投与間隔にわたるAUC)に基づくと、実施例2に記載の試験におけるAUCはより高かった。しかしながら、実施例1に記載されたアカゲザルにおける3ヶ月間投与毒性試験の累積AUCを使用する、AUC安全マージンを判定する別の許容可能な方法に基づくと、十分な安全マージンもあった。しかしながら、十分な薬力学(PD)効果(例えば、以下に記載される可溶型CD154、抗KLH及び抗破傷風応答)が観察されたため、このことによって、30mg/kgコホートでの中止が正当化された。したがって、試験中に50mg/kgコホートに増加させないことを決定した。
【0152】
実施例4:抗原負荷に対する一次免疫応答及びリコール免疫応答を評価するための臨床試験
実施例2に記載の臨床試験の参加者に、キーホールリペットヘモシアニン(KLH)抗原を投与して一次免疫応答を評価し、破傷風トキソイド(TT)を投与してリコール(メモリー)免疫応答を評価した。
【0153】
KLH抗原の負荷
実施例2に記載の臨床試験の参加者に、C4LB231投与の約3日後、水酸化アルミニウム系アジュバント(Immuncothel(登録商標))で溶解したキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を単回筋肉内注射によって投与した。投与された再溶解KLHの総用量は3mgであった。筋肉内注射は、三角筋又は大腿中央部外側のいずれかに投与される。
【0154】
破傷風トキソイド抗原の負荷
試験への参加者として選択される前に、破傷風に対する防御免疫が予め存在する血清学的証拠を示した実施例2に記載の臨床試験の参加者に、C4LB231投与の約3日後、市販の破傷風トキソイド(0.5単位)を単回筋肉内注射によって投与した。筋肉内注射は、三角筋又は大腿中央部外側のいずれかに投与されたが、1ヶ所あたりの注射は1回のみで投与された(すなわち、三角筋にKLH抗原と大腿部に破傷風トキソイド中、又はその逆)。
【0155】
抗KLH IgG、抗KLH IgM、及び抗破傷風IgGレベルを含むKLH及び破傷風トキソイドに対する免疫応答の分析のために、参加者から血清サンプルを採取した。血清/血漿中のヒト抗KLH抗体を、Aarntzen et.al.Cancer Immunol.Immunother.(2012)61(11):2003−11に記載のELISA法を用いて測定した。予備データを
図4A〜4Dに示す。C4LB231による処置により、≧3mg/kg IVの用量で抗KLH応答(一次応答)をほぼ完全に阻害した。C4LB231による処置により、≧10mg/kg IVの用量で抗破傷風トキソイド応答(二次又はリコール応答)を阻害した。これらのデータは、3mg/kg IVのC4BL231投与は、KLH抗原に対する一次抗体応答を阻害するが、破傷風トキソイドに対するリコール応答に影響を及ぼすには、≧10mg/kg IVのC4BL231投与が必要であり得ることを示す。これは、二次(リコール)免疫応答は、一次免疫応答を阻害するために必要とされる用量よりも高い用量を必要とし得、CD154を遮断することは、T細胞:B細胞相互作用の減少をもたらし、その結果、抗原刺激に対する液性応答が低下することを示唆している。
【0156】
実施例5:免疫原性評価
実施例1に記載の試験に従ってC4LB231が投与された参加者から採取された血清サンプル中の、C4LB231に対する抗体を評価する。C4LB231が投与された被験者由来のサンプルを、C4LB231に結合する抗体についてスクリーニングし、陽性であれば、抗C4LB231抗体について陽性であるサンプルの特異性及び力価が決定される。参加者は、処置後のいずれかのサンプルが抗C4LB231抗体に対して陽性であった場合、C4LB231に対する抗体について陽性であると分類され、参加者は、全ての処置後サンプルにおいて抗C4LB231抗体が検出されなかった場合、C4LB231に対する抗体について陰性であると類される。実施例3に記載され、
図2A及び2Bに示される個々の被験者の薬物動態プロファイルに基づくと、C4LB231投与被験者から得られたサンプル中に抗C4LB231抗体の明白な証拠は存在せず、サンプル分析は進行中である。
【0157】
実施例6:総及び遊離血漿中可溶型CD154の評価
実施例2に記載の試験に従ってC4LB231が投与された参加者から得られた乏血小板血漿サンプル中の、平均遊離及び総可溶型CD154(sCD154)濃度をELISAによって測定した。これまで得られた予備的データを
図5A〜5Bに示す。遊離sCD154濃度は、投与後14日まで検出できなかったが、これは、C4BL231の標的の抑制を示している。総sCD154濃度は、ピーク値に達するまで対応して増加し、その後経時的に減少した。
【0158】
実施例7:血小板活性化試験
抗CD154抗体による血小板活性化の機構を更に評価するために、血小板活性化試験を実施した。健康なヒトドナーから血液を採取した。血小板の活性化は、有効性が確認されている血小板活性化マーカーPAC−1(活性化GPIIb/IIIa)及びCD62p(P−セレクチン)を用い、フローサイトメトリーにより評価した。簡潔に述べると、全血(WB)を緩衝液に添加し、この混合液に、抗PAC1及び抗CD62p抗体を、抗FcγRIIa抗体の存在下又は非存在下で添加し、25分間インキュベートした。CD154:抗CD154のモル比3:1のsCD154及び抗体の予形成複合体を混合液に添加し、又は抗体のみを混合液に添加し、更に20分間インキュベートした。血小板を1%ホルマリンで固定した後、FACS解析を行った。結果を
図6A及び6Bに示す。
【0159】
結果は、血小板活性化がsCD154−「BG9588」(sCD154−5c8IgG1)によって誘導されたことを示す。対照的に、FcサイレントC4BL231又は野生型Fc尾部(血小板Fc結合能がある)活性化血小板のいずれかと組み合わせると、sCD154による血小板活性化は誘導されなかった。単独で血小板を活性化させた抗体はなかった(「可溶型CD154なし」)。様々なFc上にC4LB231可変領域を有する追加のコンストラクト(IgG1を含む)単独、又はsCD154との複合体もまた、血小板活性化を誘導しなかった(
図6B)。これは、活性Fcドメインが、抗CD154抗体による血小板活性化の唯一の決定因子でない場合があることを示唆する。それよりも、このデータは、サイレントFcを有するいくつかの抗体による血小板活性化が可能であることを示し、可変ドメインとより高次の抗体/sCD154複合体形成との両方が血小板活性化に寄与するという結論をもたらす。
【0160】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨及び範囲内の修正をも包含することを意図するものと理解される。
【0161】
参考文献
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