(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-502447(P2022-502447A)
(43)【公表日】2022年1月11日
(54)【発明の名称】治療剤および診断剤のその場での送達のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/46 20060101AFI20211217BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20211217BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20211217BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20211217BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20211217BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20211217BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20211217BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20211217BHJP
C12Q 1/6897 20180101ALI20211217BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20211217BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20211217BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20211217BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20211217BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20211217BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20211217BHJP
【FI】
A61K47/46
A61P7/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K38/00
A61K31/7052
A61K39/395 D
C12Q1/34
C12Q1/6897 Z
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
C12N15/09 Z
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2021-517687(P2021-517687)
(86)(22)【出願日】2019年9月23日
(85)【翻訳文提出日】2021年5月6日
(86)【国際出願番号】US2019052467
(87)【国際公開番号】WO2020068687
(87)【国際公開日】20200402
(31)【優先権主張番号】62/735,608
(32)【優先日】2018年9月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/854,617
(32)【優先日】2019年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521124397
【氏名又は名称】シンライフ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】モーザー,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】アダマラ,カタルジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ボイデン,エドワード,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルトハイマー,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】マネリー,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】エデルマン,エレーザー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
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4C086EA16
4C086NA13
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4C086ZB26
(57)【要約】
【課題】治療剤および診断剤のその場での送達のための組成物および方法に関する。
【解決手段】治療剤または診断剤を、治療または診断を必要とする対象または対象内の部位に送達するための合成最小細胞(SMC)が提供される。SMCは、該部位を標的とするか、または該部位を感知して、該治療剤または診断剤の産生および放出を開始することができる。SMCは、センサ、少なくとも1つの遺伝子回路、および該治療剤を送達するための出力手段を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤または診断剤の産生および送達のための合成最小細胞(SMC)またはSMCのコンソーシアムであって、各SMCが、
(a)前記治療剤または診断剤が産生および送達される少なくとも1つの条件を検出する少なくとも1つのセンサと、
(b)前記センサによる前記少なくとも1つの条件の検出時に前記治療剤または診断剤の前記産生を制御する少なくとも1つの遺伝子回路と、
(c)前記SMCの外部に前記治療剤または診断剤を送達するための少なくとも1つの出力手段と、を含む、合成最小細胞(SMC)またはSMCのコンソーシアム。
【請求項2】
治療剤または診断剤を送達するための合成最小細胞(SMC)またはSMCのコンソーシアムであって、各SMCが、
(a)治療剤または診断剤と、
(b)前記治療剤または診断剤が送達される少なくとも1つの条件を検出する少なくとも1つのセンサと、
(b)前記センサによる前記少なくとも1つの条件の検出時に、前記SMCの外部に前記治療剤または診断剤を送達するための出力剤の産生を制御する少なくとも1つの遺伝子回路と、を含む、合成最小細胞(SMC)またはSMCのコンソーシアム。
【請求項3】
前記治療剤、診断剤、または出力剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、または小分子である、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項4】
前記核酸が、DNA、RNA、shRNA、siRNA、CRISPR sgRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項3に記載のSMC。
【請求項5】
前記薬剤が、タンパク質もしくは核酸酵素、抗体、抗体フラグメント、触媒ペプチド、抗生物質、抗菌ペプチド、膜破壊タンパク質、トランスポーター、シグナルタンパク質、サイトカイン、またはケモカインである、請求項3に記載のSMC。
【請求項6】
前記遺伝子回路が前記SMC内の前記治療剤、診断剤もしくは出力剤またはそれらの前駆体の産生を活性化するまで、前記治療剤または診断剤が産生または送達されない、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項7】
前記センサが膜結合型であるか、SMC内で可溶性であるか、または前記検出された条件に感受性のある膜を含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項8】
前記センサが、前記治療剤または診断剤の送達が望まれる部位に存在する1つ以上の条件を検出する、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項9】
前記条件が、前記治療剤が望ましく送達される疾患の結果である部位に存在する、請求項8に記載のSMC。
【請求項10】
前記治療剤が有益に送達される部位に前記1つ以上の条件が生じる、請求項8に記載のSMC。
【請求項11】
前記条件が、放射線、熱、pH変化、または有益な治療剤の放出が望まれる部位を標的とし、前記SMCセンサ、産生、出力、もしくはそれらの任意の組み合わせを活性化する薬剤の投与から選択される、請求項10に記載のSMC。
【請求項12】
前記産生が翻訳を含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項13】
前記産生が遺伝子発現を含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項14】
前記産生が転写因子によって制御される、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項15】
前記出力手段が前記SMCからの受動的または制御された放出によるものである、請求項1に記載のSMC。
【請求項16】
前記出力手段が、前記センサの条件とは異なる条件に応答する、請求項1に記載のSMC。
【請求項17】
前記治療剤の産生または出力を低減する負のフィードバックセンサをさらに含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項18】
前記治療剤または診断剤の前記センサ手段、産生手段、および出力手段が、1つまたは2つまたは3つの異なるSMCで発生する、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項19】
前記出力剤が、タンパク質、ペプチド、小分子、膜チャネルポリペプチド(本明細書では「細孔」とも呼ばれる)、膜ポンプポリペプチド、トラフィキングポリペプチド、シグナルポリペプチド、またはエクスポートポリペプチドである、請求項2に記載のSMC。
【請求項20】
少なくとも1つの多遺伝子の遺伝子回路の少なくとも一部を含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項21】
前記SMCが少なくとも1つの多遺伝子の遺伝子回路を含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項22】
前記SMCが多遺伝子の遺伝子回路の一部を含み、第2のSMCが前記多遺伝子の遺伝子回路の第2の部分を含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項23】
前記多遺伝子の遺伝子回路が、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の遺伝子成分を含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項24】
前記多遺伝子の遺伝子回路の前記部分が、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の遺伝子成分を含む、請求項1または2に記載のSMC。
【請求項25】
前記SMCを活性化因子と接触させることが、前記遺伝子回路の少なくとも1つの遺伝子成分の活性を調節する、請求項23または24に記載のSMC。
【請求項26】
前記SMCの第1の遺伝子成分の活性が、(1)前記SMCの前記多遺伝子の遺伝子回路、および(2)別のSMCの多遺伝子の遺伝子回路、のうちの少なくとも1つの、1つ以上の追加の遺伝子成分の活性を調節する、請求項23または24のいずれか1項に記載のSMC。
【請求項27】
前記(2)の多遺伝子の遺伝子回路が前記(1)の多遺伝子の遺伝子回路とは異なる、請求項26に記載のSMC。
【請求項28】
前記多遺伝子の回路の活性が、前記遺伝子成分によってコードされる1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポリペプチドの発現を含む、請求項23〜27のいずれか1項に記載のSMC。
【請求項29】
前記活性化因子が小分子であり、任意選択で可溶性である、請求項25に記載のSMC。
【請求項30】
前記活性化因子が、体内の疾患部位上またはその近位に存在する、請求項25に記載のSMC。
【請求項31】
第1の多遺伝子の遺伝子回路の活性が、少なくとも1つの追加の多遺伝子の遺伝子回路の活性を調節し、任意選択で、前記SMCまたは少なくとも1つの追加のSMCにおける前記多遺伝子の遺伝子回路の1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の追加の遺伝子成分の活性のカスケードを活性化する、請求項20〜30のいずれか1項に記載のSMC。
【請求項32】
前記SMCが、原核生物または真核生物の転写/翻訳(TX/TL)成分のうちの1つ以上を含む、請求項20〜30のいずれか1項に記載のSMC。
【請求項33】
前記SMCが、前記遺伝子成分のうちの1つ以上を含む1つ以上の発現ベクターを含む、請求項20〜30のいずれか1項に記載のSMC。
【請求項34】
前記発現ベクターが、プロモーター配列およびポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列のうちの1つ以上を含む、請求項33に記載のSMC。
【請求項35】
前記ポリヌクレオチド配列が、膜チャネルポリペプチドおよび検出可能な標識ポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする、請求項34に記載のSMC。
【請求項36】
前記SMCが、前記SMCの外面に関連する融合誘導ポリペプチドを含む、請求項20〜30のいずれか1項に記載のSMC。
【請求項37】
前記融合誘導ポリペプチドが、SNAREポリペプチドまたはSNAREポリペプチド模倣物である、請求項36に記載のSMC。
【請求項38】
前記SMCが、少なくとも1つの独立して選択された多遺伝子の遺伝子回路を含む少なくとも第2のSMCに融合されている、請求項20〜30のいずれか1項に記載のSMC。
【請求項39】
前記SMCおよび前記第2のSMCが、前記独立して選択された多遺伝子の遺伝子回路を含む、請求項38に記載のSMC。
【請求項40】
前記SMCが、前記第2のSMCの、前記独立して選択された多遺伝子の遺伝子回路を含まない、請求項38に記載のSMC。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の複数のSMCを含む組成物であって、前記SCMの前記多遺伝子の遺伝子回路が独立して選択される、組成物。
【請求項42】
前記SMCの前記多遺伝子の遺伝子回路が、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の独立して選択された遺伝子成分を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記複数のSMCにおける前記SMCが、同じ多遺伝子の遺伝子回路を含む、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項44】
前記複数のSMCにおける前記SMCが、独立して選択された多遺伝子の遺伝子回路を含む、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項45】
前記複数のSMCのうちのSMCを外部に送達された薬剤と接触させることが、前記接触したSMCの前記多遺伝子の遺伝子回路の少なくとも1つの遺伝子成分の活性を調節する、請求項40〜44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
前記複数のSMCにおける前記SMCのうちの少なくとも1つが、前記複数のSMCにおける前記SMCのうちの別のSMCに融合されている、請求項41〜44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記複数のSMCのうちの2つ以上のSMCにおける1つ以上の多遺伝子の遺伝子回路が、並行して活性である、請求項41〜43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
前記複数のSMCのうちの第1のSMCにおける1つ以上の多遺伝子の遺伝子回路の活性が、(1)前記複数のSMCのうちの前記第1のSMCにおける多遺伝子の遺伝子回路の活性、および(2)前記複数のSMCのうちの第2のSMCにおける多遺伝子の遺伝子回路の活性、のうちの少なくとも1つによって調節される、請求項41〜45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記複数のSMCのうちの2つ以上が、ネットワークとして互いに連動して動作する、請求項41〜48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
互いに連動して動作することが、互いに化学的に連絡していることを含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記多遺伝子の遺伝子回路の活性が、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポリペプチドの発現を含む、請求項39〜48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記複数のSMCのうちの1つのSMCの第1の遺伝子成分の活性が、(1)前記SMCの前記多遺伝子の遺伝子回路、および(2)前記複数のSMCのうちの別のSMCの多遺伝子の遺伝子回路、のうちの少なくとも1つの1つ以上の追加の遺伝子成分の活性を調節する、請求項39〜49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項53】
前記(2)の多遺伝子の遺伝子回路が、前記(1)の多遺伝子の遺伝子回路とは異なる、請求項50に記載の組成物。
【請求項54】
前記複数のSMCのうちの1つのSMCの第1の多遺伝子の遺伝子回路の活性が、前記複数のSMCのうちの1つのSMCの少なくとも1つの追加の多遺伝子の遺伝子回路の活性を調節し、任意選択で、前記SMCまたは前記複数のSMCにおける少なくとも1つの追加のSMCにおける、前記第1の多遺伝子の遺伝子回路の1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の追加の遺伝子成分の活性のカスケードを活性化する、請求項39〜51のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項55】
前記複数のSMCが、細菌の転写/翻訳(TX/TL)成分および哺乳動物のTX/TL成分のうちの1つ以上を含む、請求項39〜52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項56】
前記複数のSMCが、1つ以上の独立して選択された発現ベクターを含む、請求項39〜66のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
前記発現ベクターが、プロモーター配列およびポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列のうちの1つ以上を含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
前記ポリヌクレオチド配列が、膜チャネルポリペプチドおよび検出可能な標識ポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
前記複数のSMCにおける前記SMCの少なくとも一部が、前記SMCの外面に関連する融合誘導ポリペプチドを含む、請求項39〜56のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
前記融合誘導ポリペプチドが、SNAREポリペプチドまたはSNAREポリペプチド模倣物である、請求項57に記載の組成物。
【請求項61】
融合誘導ポリペプチドを含む前記複数のSMCの第1の部分において前記SMCの外面に関連する前記SNAREポリペプチドまたはSNAREポリペプチド模倣物が、前記複数のSMCの第2の部分において前記SMCの外面に関連する前記SNAREポリペプチドまたはSNAREポリペプチド模倣物に相補的である、請求項58に記載の組成物。
【請求項62】
前記複数のSMCのうちの1つ以上のSMCにおける第1の多遺伝子の遺伝子回路の活性が、前記複数のSMCのうちの1つ以上のSMCにおける少なくとも1つの追加の多遺伝子の遺伝子回路を活性化する、請求項39〜60のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項63】
前記複数のSMCのうちの1つのSMCにおける多遺伝子の遺伝子回路の活性が、前記複数のSMCのうちの1つ以上のSMCにおける多遺伝子の遺伝子回路活性化のカスケードをもたらす、請求項60に記載の組成物。
【請求項64】
前記複数のSMCのうちの第1のSMCにおける第1の多遺伝子の遺伝子回路の活性が、(1)前記第1のSMC、および(2)前記複数のSMCの第2のSMC、のうちの1つ以上における、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の追加の多遺伝子の遺伝子回路を活性化する、請求項39〜61のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項65】
前記追加の多遺伝子の遺伝子回路が、(1)前記第1の多遺伝子の遺伝子回路と同じ遺伝子回路、および(2)前記第1の多遺伝子の遺伝子回路と異なる多遺伝子の遺伝子回路から選択される、請求項62に記載の組成物。
【請求項66】
前記複数のSMCのうちの少なくとも1つのSMCを外部に送達された薬剤と接触させることが、前記接触したSMCの多遺伝子の遺伝子回路のうちの少なくとも1つの活性を調節する、請求項39〜63のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項67】
前記複数のSMCのうちの1つのSMCの多遺伝子の遺伝子回路の活性が、前記SMCの1つ以上の多遺伝子の遺伝子回路を、前記1つ以上の多遺伝子の遺伝子回路の活性を調節する薬剤と接触させることをもたらす、請求項39〜64のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項68】
治療剤から利益を得る状態または疾患を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、請求項1または請求項2に記載のSMCを投与することを含む、方法。
【請求項69】
前記SMCが疾患部位を標的とする、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記疾患が、癌、血栓症または酵素欠損症である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記治療が、
(a)外部から適用されたシグナルを検出するセンサを含むSMCを投与することと、
(b)前記治療剤の送達が望まれる体の部分に前記シグナルを適用することと、を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸または小分子である、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記核酸が、DNA、RNA、shRNA、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA阻害剤、抗miRNA、またはsgRNAである、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記タンパク質が、抗体、毒素、ホルモン、マーカー、または酵素である、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
前記ペプチドが、抗生物質または抗菌ペプチドである、請求項68に記載の方法。
【請求項76】
状態または疾患を診断するための方法であって、それを必要とする対象に、請求項1または請求項2に記載のSMCを投与することを含む、方法。
【請求項77】
前記SMCが疾患部位を標的とする、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記疾患が、癌、血栓症または酵素欠損症である、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記診断が、
(a)外部から適用されたシグナルを検出するセンサを含むSMCを投与することと、
(b)前記疾患の診断が望まれる体の部分に前記シグナルを適用することと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項80】
前記診断剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、または小分子である、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記核酸が、DNA、RNA、shRNA、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA阻害剤、抗miRNA、またはsgRNAである、請求項76に記載の方法。
【請求項82】
前記タンパク質が、抗体、毒素、ホルモン、マーカー、または酵素である、請求項76に記載の方法。
【請求項83】
前記ペプチドが、抗生物質または抗菌ペプチドである、請求項76に記載の方法。
【請求項84】
前記診断剤が、前記対象の体液中で検出される、請求項76に記載の方法。
【請求項85】
前記体液が、血液、尿、唾液、脳脊髄液、腹水、またはリンパ液である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記診断剤が、画像化によって検出される、請求項76に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
スマートな薬物送達と呼ばれることもある標的化薬物送達は、体のある部分の医薬品濃度を他の部分と比較して増加させる様式で患者に医薬品を送達する方法である。この送達手段は主に、従来の薬物送達の特定の欠点を克服するためにナノ粒子を介した薬物送達を採用するナノメディシンに主に基づいている。ナノ粒子には薬物が充填され、例えば病変組織がある体の特定の部分を標的とするため、健康な組織との相互作用が回避される。標的化薬物送達システムの目標は、病変組織との薬物相互作用を延長、局在化、標的化し、かつ保護することである。
【0002】
この技術の対象となる性質にもかかわらず、送達のプロセスは、どこでおよびどのような条件下で薬物が放出されるべきか、または放出されるべきでないかを同定するための特定の局所シグナルの存在に基づかないか、またはそれに応答しない。よりスマートな薬物送達システムには、検出、次に応答が含まれる。そのようなシステムは、より良い標的化およびより正確な送達を提供する。治療および診断の目的で、そのような送達方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、治療剤または診断剤の産生および送達のための合成最小細胞(SMC)またはSMCのコンソーシアムであって、
(a)治療剤または診断剤が産生および送達される少なくとも1つの条件を検出する少なくとも1つのセンサと、
(b)センサによる少なくとも1つの条件の検出時に治療剤または診断剤の産生を制御する少なくとも1つの遺伝子回路と、
(c)SMCの外部に治療剤または診断剤を送達するための少なくとも1つの出力手段と、を含む、合成最小細胞(SMC)またはSMCのコンソーシアムに関する。
一実施形態では、本発明は、治療剤または診断剤を送達するための合成最小細胞(SMC)またはSMCのコンソーシアムに関するものであり、各SMCは、
(a)少なくとも1つの治療剤または診断剤と、
(b)治療剤または診断剤が送達される少なくとも1つの条件を検出する少なくとも1つのセンサと、
(b)センサによる少なくとも1つの条件の検出時に、SMCの外部に少なくとも1つの治療剤または診断剤を送達するための出力剤の産生を制御する少なくとも1つの遺伝子回路と、を含む。
【0004】
一実施形態では、治療剤、診断剤、または出力剤は、タンパク質、ペプチド、核酸、または小分子である。一実施形態では、核酸は、DNA、RNA、shRNA、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA阻害剤、抗miRNAまたはsgRNAである。一実施形態では、SMCの出力は、FabまたはscFvなどの抗体または抗体フラグメントである。
【0005】
一実施形態では、遺伝子回路がSMC内で治療剤またはその前駆体の産生を活性化するまで、治療剤、診断剤、または出力剤は産生されない。
【0006】
一実施形態では、センサは、SMC内で膜結合型または可溶性である。一実施形態では、センサは、治療剤の送達が望まれる部位に存在する1つ以上の条件を検出する。一実施形態では、部位に存在する1つ以上の条件は、治療剤または診断剤が望ましく送達される疾患の結果であり、1つ以上のバイオマーカー、細胞表面受容体、代謝物、微小環境マーカー、ペプチド、核酸もしくはそれらのフラグメント、またはタンパク質もしくはそのフラグメントの存在などであるがこれらに限定されない。一実施形態では、1つ以上の条件は、治療剤が有益に送達される部位に提供される。一実施形態では、1つ以上の条件は、放射線(電離、赤外線、可視光線、紫外線および任意の他の電磁放射線など)、熱、pH変化、あるいは、有益な治療剤もしくは診断剤の放出が望まれる部位を標的とし、SMCセンサ、または治療剤もしくは診断剤の産生または出力、またはそれらの任意の組み合わせを活性化する、薬剤の投与から選択される。
【0007】
一実施形態では、治療剤または診断剤の産生は、翻訳を含む。一実施形態では、治療剤または診断剤の産生は、遺伝子発現を含む。一実施形態では、産生は転写因子によって制御される。一実施形態では、治療剤または診断剤の産生は、多酵素生合成経路を含む。
【0008】
一実施形態では、出力手段は、SMCからの受動的または制御された放出によるものである。一実施形態では、出力手段は、治療剤の受動的放出を可能にするSMCの物理化学的変化によるものである。一実施形態では、出力手段は、センサの条件とは異なる条件に応答する。一実施形態では、出力手段は、治療剤または診断剤の産生または出力を低減する負のフィードバックセンサをさらに含む。
【0009】
一実施形態では、出力剤は、タンパク質、ペプチド、小分子、膜チャネルポリペプチド(本明細書では「細孔」とも呼ばれる)、膜ポンプポリペプチド、トラフィキングポリペプチド、シグナルポリペプチドまたはエクスポートポリペプチドである。
【0010】
一実施形態では、治療剤または診断剤のセンサ、産生および出力手段は、1つ、2つ、または3つの異なるSMCで発生する。一実施形態では、治療剤または診断剤の送達は、複数のSMC間で協調的に発生する。
【0011】
一実施形態では、治療剤によって恩恵を受ける状態または疾患を治療するための方法であって、それを必要とする対象または当該対象の部位に本明細書に記載のSMCを投与することを含む、方法が提供される。一実施形態では、SMCは、治療剤の送達によって恩恵を受ける部位を標的とする。一実施形態では、対象は、本発明のSMCが次に標的化されて活性化される部位を標的化する薬剤を投与される。
【0012】
一実施形態では、状態または疾患を診断するための方法であって、それを必要とする対象または当該対象の部位に本明細書に記載のSMCを投与することを含み、SMCが診断剤を放出する、方法が提供される。一実施形態では、診断剤は、血液または尿などの対象の体液中で検出される。一実施形態では、診断剤は、画像化によって検出可能である。
【0013】
一実施形態では、SMCのコンソーシアムは、治療または診断の目的で使用され、コンソーシアムは、異なる病原体または状態に応答する複数の異なるセンサ特異的SMCを含み、病原体または状態は、その病原体または状態に特異的なSMCによる産生を活性化し、その病原体または状態に特異的な治療剤または診断剤は、SMCによって放出される。
【0014】
本発明のこれらおよび他の態様は、図面の説明および本発明の詳細な説明から理解されよう。
【0015】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に特許請求される。しかしながら、本発明は、その目的、特徴、および利点と共に、操作構成および方法の両方に関して、添付の図面と共に読まれる場合、以下の詳細な説明を参照することによって最良に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】プログラム可能な治療剤としてSMCを使用する本発明の全体的な概念を示す。
【
図2】治療剤を産生および放出することにより、疾患組織を感知し、それに応答するための本発明のSMCの潜在的な使用のうちのいくつかを示す。
【
図3】血栓溶解剤をオンサイトで産生することにより塞栓症に応答するSMCを示す。
【
図4】SMCが癌代謝物の特定の組み合わせに応答して化学療法分子を生成するようにプログラムできることを示す。
【
図5】
図5A、5Bおよび5Cは、特定の細菌種またはタイプを感知し、(A)その細菌種またはタイプに特異的な抗生物質または抗菌剤の産生を活性化するSMCを示し、(B)SMCに存在する細菌種またはタイプに特異的な抗生物質または抗菌剤の放出を可能にする細孔または他の膜溶解剤の産生を活性化するSMCを示し、または(C)その細菌種またはタイプのレポーターまたはマーカー、すなわち、対象からの体液サンプルで同定でき、その細菌種またはタイプを治療するための適切な治療レジメンを示すことができるレポーターまたはマーカーの産生を活性化するSMCを示す。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、化学療法剤ドキソルビシンを含む入れ子型リポソームおよび青色光感受性分割T7RNAポリメラーゼを発現する回路を含むSMCのスキームを示す。このシステムのT7プロモーターは、アルファ溶血素(aHL)細孔複合体を発現し、青色光で分割T7が活性化されると、入れ子型リポソームおよびSMCからドキソルビシンを放出する。
図6Bは、分割T7システムがラパマイシン感受性システム(Rapa−T7)および青色光感受性システム(Opto−T7)などの無細胞系で機能することを示すデータを示している。ここで、出力T7プロモーターは、蛍光を測定することができるGFPタンパク質を生成する。分割されていないT7(「T7全体のコントロール」)およびドメインを感知しない分割T7システム(「分割T7のコントロール」)がコントロールとして示されている。
【
図7】無細胞系でのGFPおよびチロシナーゼ(melA)の発現を示している。白色光(上)の下で、melA遺伝子、L−チロシン、および銅イオンが存在する場合、茶色の色素(メラニン)が産生される。青色光(下)の下で、GFP産生がコントロールとして観察される。メラニンは、広域スペクトルの光を吸収し、結果として熱を生成することができる茶色の色素である。このようなシステムは、SMCを使用して標的組織の熱焼灼を行うのに役立つ可能性がある。
【
図8】HEK293細胞の組織培養に異なる細胞毒性タンパク質を生成する無細胞系を添加した場合の生存率アッセイの結果を示している。ここでは、ジスルフィド結合エンハンサー(DBE)を含むPURE無細胞系が使用される。アルファ溶血素を発現するSMCを培養に添加すると、ほとんどの細胞が死滅する。他のどのタンパク質からも毒性は観察されない。これは、SMCが特定の毒性作用を有するさまざまなタンパク質をどのように生成できるかを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載および/または示される特定の製品、方法、条件またはパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、例としてのみ特定の実施形態を説明することを目的としており、請求された発明を限定することを意図した。
【0018】
本明細書で別段の定義がない限り、本出願に関連して使用される科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0019】
上記および本開示全体で使用されているように、以下の用語および略語は、特に明記しない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0020】
本開示において、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形の参照を含み、特定の数値への参照は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「化合物」への言及は、当業者に知られているそのような化合物およびその同等物のうちの1つ以上への言及などである。本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2つ以上を意味する。値の範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。
【0021】
同様に、先行詞「約」を使用することにより、値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。すべての範囲は包括的かつ組み合わせることができる。本開示の文脈において、「約」特定の量とは、その量が、記載された量の±20%以内、好ましくは記載された量の±10%以内、またはより好ましくは、記載された量の±5%以内であることを意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、または「療法」(およびそれらの異なる形態)という用語は、予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段を含む治療的処置(therapeutic treatment)を指し、その目的は、疾患または状態に関連する望ましくない生理学的変化を予防または緩和する(減少させる)ことである。有益なまたは望ましい臨床結果には、検出可能であろうと検出不可能であろうと、症状の軽減、疾患または状態の程度の低下、疾患または状態の安定化(すなわち、疾患または状態が悪化しない場合)、疾患または状態の進行の遅延または減速、疾患または状態の改善または緩和、および疾患または状態の寛解(部分的であろうと全体的であろうと)が含まれるが、これらに限定されない。治療を必要とするものは、疾患もしくは状態を有しやすいもの、または疾患もしくは状態が抑制されるべきものと同様に、すでに疾患もしくは状態を有するものを含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「成分」、「組成物」、「製剤」、「化合物の組成物」、「化合物」、「薬物(drug)」、「薬理学的活性剤」、「活性剤」、「治療剤」、「療法」、「治療薬」または「薬物(medicament)」という用語は、文脈が指示するように、本明細書において交換可能に使用され、対象(ヒトまたは動物)に投与されたときに、局所的および/または全身的作用による所望の薬理学的および/または生理学的効果を誘導する化合物(複数可)または物質の組成物を指す。パーソナライズされた組成物または方法は、対象において同定または企図された特定の必要性を満たすように調整(tailor)または個別化されたレジメンにおける産物または産物の使用を指す。
【0024】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、本発明による組成物または製剤による治療が提供される動物、例えばヒトを指す。本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳動物」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマなどの哺乳動物、および爬虫類、両生類、ニワトリ、七面鳥などの非哺乳動物を含む。本明細書に記載の組成物は、サルおよびヒトなどの霊長類、馬、ウシ、ネコ、イヌ、ウサギ、ならびにラットおよびマウスなどのげっ歯類を含む任意の好適な哺乳動物を治療するために使用することができる。一実施形態では、治療される哺乳動物はヒトである。ヒトは、あらゆる年齢のあらゆるヒトでよい。一実施形態では、ヒトは成人である。別の実施形態では、ヒトは子供である。ヒトは、男性、女性、妊娠中、中年、青年、または高齢者である可能性がある。本発明の方法のいずれかによれば、一実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対象は非ヒト霊長類である。別の実施形態では、対象はネズミ科(murine)であり、これは、一実施形態ではマウスであり、別の実施形態ではラットである。別の実施形態では、対象は、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ラプリン(laprine)またはブタである。別の実施形態では、対象は哺乳動物である。
【0025】
特定の薬物、化合物、組成物、製剤(またはそれらの組み合わせ)が本明細書で「示される」と言われる対象の状態および障害は、その薬物または化合物または組成物または製剤が規制当局によって明示的にされている状態および障害に限定されず、医師または他の健康または栄養の専門家によって、その薬物または化合物または組成物または製剤またはそれらの組み合わせによる治療に適していることが知られている、または合理的に信じられている他の状態および障害も含まれる。
【0026】
本明細書の本発明者らは、治療用分子を送達する手段として合成最小細胞(SMC)をプログラミングおよび使用する新しい手段を発見した。SMCは、生細胞と同様に、DNA翻訳または遺伝子発現が可能な高分子と試薬との混合物をカプセル化するリン脂質二重層(リポソームの膜)で構成されている。以下で詳細に説明するように、SMCは、複雑な分子計算を可能にする遺伝子回路でプログラムすることができる。SMCには、薬物送達のための貴重なプラットフォームとなるいくつかの独自の機能を有する。一実施形態では、SMCは毒性が低い:リポソームはすでにいくつかの医薬品のビヒクルとして使用されており、免疫系から保護することができる。一実施形態では、SMCは多様性を有する:SMC膜および成分は、それらを特定の臨床的必要性に適応させるためにいくつかの方法で製剤化することができる。一実施形態では、SMCはプログラム可能性を有する:SMCは、さまざまな条件を感知し、診断的または治療的価値を有するRNA、タンパク質または他の分子を条件付きで生成するように遺伝的にプログラムすることができる。一実施形態では、SMCは適応性を有する:SMCの感知および応答システムは、どれだけの量の治療用分子がどれだけ長く作製されるかを条件付きで制御することができ、それによって過剰産生を防ぎ、安全性を改善する。本明細書の説明では、前述の実施形態のうちのいずれか1つ以上が本発明のSMCに組み込まれる。
【0027】
前述の機能により、SMCは、さまざまな医療的必要性に対応できるスマートな治療薬のプラットフォーム技術となる可能性のある独自の製剤になっている。一実施形態では、これらの機能は、薬物のより具体的なオンサイト展開を可能にするので、より安全でより効果的な方法で現在の薬物の送達を可能にする。
【0028】
一実施形態では、SMCはそれらの動作を一緒に制御する少なくとも3つのモジュールを含む(
図1)。
1.感知。これらのモジュールは、膜に組み込まれている、またはSMC内で可溶性である天然タンパク質またはRNAベースのセンサシステムを使用して、SMCが環境の変化を感知することを可能にする。これらの変化には、物理的(例えば、温度)および化学的(例えば、pH、特定の分子)の変化が含まれ、特定の組織タイプ(例えば、血栓、腫瘍)周辺の環境を検出するために使用することができる。これらの変化には、受容体、細胞表面マーカー、代謝物、微小環境マーカー、またはセンサを活性化し、SMCによる部位への治療剤の送達をもたらす他の細胞成分またはそれらの組み合わせの存在が含まれる。SMC膜脂質組成物またはその中の他の成分は、検出された条件に敏感でよい。センサによって検出されるこれらの1つ以上の条件または分子は、本明細書では活性化因子と呼ばれ得る。以下に記載されるように、SMCを活性化するための2つ以上の活性化因子の要件は、特定の標的への送達を最適化するために利用され得る。
2.回路。タンパク質転写因子およびその他の手段を使用して、SMC内の情報の流れを制御する高度な遺伝子回路を設計することができる。これは基本的に、感知された入力のどの組み合わせがどの出力を制御するかを制御する。回路については、以下で詳しく説明する。
3.出力。システムの出力は、1つ以上のタンパク質、核酸、それらのフラグメント、もしくは成分、またはセンサおよび回路によって決定される特定の条件が満たされた場合にのみ生成される小分子のいずれかである。例示的な条件には、特定の組織へのSMC局在化、または血餅を同定するフィブリン、腫瘍を同定する腫瘍細胞表面マーカー、および、細胞または組織の疾患状態を示す任意の細胞表面マーカーまたは代謝物の発現の増加などの特定のマーカー分子の存在が含まれる。他のマーカーには、酸素分圧またはpHの変化などの微小環境マーカーが含まれる。生成される可能性のあるタンパク質には、抗体、毒素、ホルモン、マーカー、および酵素が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質は、診断マーカーとして機能し、または標的組織に治療的価値をもたらすことができる。生成されたRNAは、治療部分(例えば、siRNA)として、または後で配列決定によって評価できる診断マーカーとして機能する。治療剤中に自己集合する(または多量体タンパク質複合体などの集合する薬剤を必要とする)サブコンポーネントもまた、本明細書に含まれる。
【0029】
本明細書に記載されているように、本発明の一実施形態では、本発明のSMCは、治療剤または診断剤を含み、センサおよび遺伝子回路は、SMC内容物の送達を容易にする。したがって、SMCは必ずしもSMC内の前駆体(またはインビボ環境内の代謝物)から治療剤または診断剤を生成するわけではないが、遺伝子回路はSMCの内容物の放出を可能にする。いくつかの実施形態では、SMCは、治療剤および診断剤の両方を含み得、遺伝子回路は、追加の薬剤、およびSMC内容物を送達するための手段を生成する。
【0030】
一実施形態では、SMCのコンソーシアムは、治療または診断の目的で使用され、コンソーシアムは、それぞれが異なる病原体または状態に応答する複数の異なるセンサ特異的SMCを含み、病原体または状態は、その病原体または状態に特異的なSMCによる産生を活性化し、その病原体または状態に特異的な治療剤または診断剤はSMCによって放出される。
【0031】
一実施形態では、SMCのコンソーシアムは、治療または診断の目的で使用され、コンソーシアムは、それぞれが異なる病原体または状態に応答する複数の異なるセンサ特異的SMCを含み、病原体または状態は、その病原体または状態に特異的なSMCによる治療剤または診断剤の産生を活性化し、その病原体または状態に特異的な治療剤または診断剤はSMCによって放出される。一実施形態では、治療剤または診断剤はSMC内に存在し、SMCの活性化は、SMCに特異的な病原体または状態からの治療剤または診断剤の放出または送達をもたらす。
【0032】
一実施形態では、異なるタイプのSMCの集団が、特定の目的のために一緒に使用される。1つの非限定的な例では、SMCの集団は、それぞれが細菌の個々の種または細菌のタイプを感知することができる異なるタイプのSMCを含み、そのようなタイプのSMCのそれぞれは、その細菌種またはタイプの存在下で、細菌種またはタイプ特異的な治療薬または診断剤を放出することができる。例えば、異なる細菌種には、非限定的な例として、[黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、コリネバクテリウム・ジフテリアエ(Corynebacterium diphtheriae)、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acne)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)、ナイセリア属(Neisseria sp.)など)が含まれる。例えば、異なる細菌種には、非限定的な例として、[グラム陰性、グラム陽性、放線菌、シアノバクテリア、スピロヘータ、フィルミクテス、プロテオバクテリア、クラミジアなど)が含まれる。ここでの目的のためのSMCのこの集団は、SMCのコンソーシアムと呼ばれる。SMCのコンソーシアムは、細菌感染に幅広く対処するために調製され得るか、または、特定の細菌の種もしくはタイプをルールインもしくはルールアウトする特定のすでに確立された特徴に基づいて感染を治療または診断するための異なるSMCのサブセットを含むことがある。1つの非限定的な例では、患者は肺炎または原因不明であり、SMCコンソーシアムは、肺炎を引き起こすことが知られているさまざまな細菌種を感知するSMCで構成されている。本明細書に記載されているように、そのようなSMCは、特定の細菌種またはタイプを感知すると、(A)遺伝子回路を活性化して、抗菌産物を産生し、放出することができ、(B)遺伝子回路を活性化して、細菌感染のタイプを示す患者の体液で検出することができるレポーターまたはマーカーを産生し、放出することができ、(C)SMC内に含まれる抗菌産物または診断レポーターもしくはマーカーの放出を可能にする遺伝子回路を活性化することができ、あるいは、(D)他のSMCが前述の機能のうちのいずれか1つ以上を実行するように誘発する産物を産生する遺伝子回路を活性化することができる。
【0033】
本発明のSMCの前述の各態様を、本発明の範囲に関して例示的かつ非限定的であることを意図した例と共に、以下に説明する。各実施例は、本発明の実施形態である。
【0034】
1.SMC成分
SMCは、いくらかの物理化学的入力に応じてSMCの物理化学的組成または動作を調整する(modulate)ことができる1つ以上の高分子をカプセル化するリポソームである。合成最小細胞(SMC)のリポソームカプセル化により、化学反応は、十分に単離された、分子が密集した環境で進行することができる。SMCには、区画化された遺伝子回路またはカスケードが含まれる。本明細書で使用される場合、「遺伝子回路」という用語は、化学物質のセットを指し、その一部は、遺伝子産物の生成を開始、調節、または他の方法で改変し、次に、直接的または間接的に、遺伝子回路の別の部分によってコード化された別の遺伝子産物の生成を開始、調節、または他の方法で改変することができる。遺伝子回路の使用は、産生のスケーリングを可能にし(その非限定的な例は、ポリペプチド産生のための遺伝子発現である)、産生プロセスにおける低、中、および/または高レベルの複雑さを可能にし、これは、本発明のSMCおよび遺伝子回路の操作によって決定され得る。本発明の特定のSMCは、内部刺激または外部化学刺激のうちの1つ以上によって誘発、調節、低減、または誘導することができる遺伝的カスケードを含むように調製される。本発明のいくつかの態様は、遺伝的カスケードを互いに並行して操作することができ、かつ/あるいは交換された小分子メッセンジャーを介してそれらのカスケードを共同で調節することができるSMCの集団の調製および/または使用を含む。「リポソーム」、「シネル」、および「合成最小細胞」(SMC)という用語は、生細胞の生化学的機能のうちのいくつか、特に治療上の関心および有用性のある核酸およびタンパク質のための転写または翻訳、を実行するリポソームバイオリアクターに関して本明細書で交換可能に使用される。
【0035】
本発明の方法および組成物は、いくつかの態様では、合成生物学における複数成分の遺伝子回路およびカスケードのモジュール性を可能にする。遺伝子回路およびカスケードをSMC内にカプセル化し、SMCを調整して、並列に動作するか、互いに通信するか、または制御された方法で互いに融合することにより、本発明の方法を使用して、リポソームの区画化によって可能になるモジュール性を利用する遺伝的カスケードを形成し、利用することができる。したがって、本発明のいくつかの態様では、遺伝的カスケードを、所望の程度の制御および通信を可能にしながら、十分に単離された環境で進行させることができる方法が提供される。本発明のSMCは、単独で、他のSMCと組み合わせて、他のSMCのネットワークにおいて、または、複数の反応の互いの高い忠実的単離ならびにこれらの反応間の制御された通信および規制シグナルの両方から利益を得る複雑な化学反応を支持する、他のSMCを有する他のコンフォメーションにおいて使用され得る。そのような調節は、療法を必要とする対象において、最も必要とされる、または最も効果的であり、副作用が最も少ない部位での治療的に有用な分子の送達を同定および制御する際に治療的使用に供することができる。そのような調節はまた、例えば対象の血液または尿などの体液中で同定され得るレポーターまたはマーカーの送達を同定および制御することによって診断的使用に供され、疾患の診断および特定の治療の指示を助けることができる。一例では、生合成経路の中間体が前または後のステップの効率を妨げる可能性がある場合、生合成経路を異なるSMCに分離することができる。
【0036】
異なる反応ネットワークの統合を可能にし、治療的に有用な薬剤の標的化送達に適用可能なそれらの拡張性および柔軟性を最適化するために、それらの設計のモジュール性の最大化を可能にする組成物が調製されている。本発明の一態様は、SMC内に遺伝子回路および反応カスケードをカプセル化する方法を含み、それにより、化学反応が十分に単離された環境で進行することを可能にする。遺伝子回路を含むSMCを操作して、複数の部分からなる遺伝的カスケードを含めることが可能であり、これらのカスケードは、クロストークなしで外部シグナルおよびリポソーム間通信によって制御することができることが実証されている。本発明の方法は、適合しない反応の産物を一緒にすることができるように、制御された方法で融合される異なるカスケードを含むSMCをもたらすことが今や実証された。そのような方法は、治療剤の送達、ならびに送達の期間および程度の制御に適応可能である。本発明のいくつかの態様では、1つ以上のSMCを含む組成物が提供される。本発明の方法は、いくつかの実施形態では、合成生物学カスケードのよりモジュール化された形成を可能にするためのそのようなSMCの使用、それらのプログラム可能性に向けた本質的なステップ、および目的の部位に治療剤を送達するための有用性を含む。
【0037】
本発明の特定の態様は、少なくとも1つの多遺伝子の遺伝子回路の少なくとも一部を含むSMCを含む。多遺伝子の遺伝子回路の一部は、あるSMCに存在する多遺伝子の遺伝子回路の一部であり、別のSMCに存在する多遺伝子の遺伝子回路の一部でよい。本発明の特定の態様では、完全な多遺伝子の遺伝子回路未満が本発明のSMCに存在し得、完全な多遺伝子回路の残りが1つの追加のSMCに存在し得る。別の非限定的な例では、本発明の特定の態様では、完全な多遺伝子の遺伝子回路未満(本明細書では「一部」とも呼ばれる)は、本発明のSMCに存在し得、多遺伝子回路の別の部分は1つの追加のSMCに存在し得、多遺伝子の遺伝子回路のさらなる部分は、別の追加のSMCに存在し得る等である。したがって、本発明の多遺伝子の遺伝子回路は、本発明の異なるSMCで発現される遺伝子を含み得、例えば本発明のSMCは、多遺伝子の遺伝子回路の1つ以上の遺伝子を含み得、本発明の第2のSMCは、同じ多遺伝子の遺伝子回路の1つ以上の独立して選択された遺伝子を含んでよい。また、SMCのうちの1つは、別のSMCにおいてポリペプチドの発現を直接的または間接的に誘導するポリペプチドを発現し得る。したがって、2つ以上のSMCが同じ多遺伝子の遺伝子回路の一部である可能性がある。本発明の特定の態様では、SMCは、多遺伝子の遺伝子回路を構成するすべての遺伝子を含んでよい。多遺伝子の遺伝子回路は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の遺伝子を含み得、これらは、本明細書では、多遺伝子の遺伝子回路の「遺伝子成分」とも呼ばれる。治療剤の感知および送達におけるそのような多遺伝子回路の有用性は、本明細書に提供される実施例において明らかであろう。
【0038】
本発明のいくつかの態様は、本発明のSMCを調製する方法、およびそれらの使用方法を含む。本明細書で使用される場合、「多遺伝子の遺伝子回路」という用語は、互いに直接的または間接的に相互作用する2つ以上の遺伝子を意味する。例えば、本発明のSMCにおけるベクター中の遺伝子によって発現されるポリペプチドは、治療剤の送達を調節することを目的として、SMCおよび/または別のSMCにおける第2、第3、第4、第5またはそれ以上の遺伝子のうちの1つ以上の発現を誘発、調節、低減、または誘導し得る。回路の存在は、ある遺伝子の発現活性が、本発明の同じまたは別のSMCのうちの1つ以上における別の遺伝子の発現を調節することを示す。
【0039】
多遺伝子の遺伝子回路の遺伝子の発現は、遺伝子の「活性」とも呼ばれる。本発明のSMCを薬剤と接触させることは、多遺伝子の遺伝子回路の一部である遺伝子の活性を調節(増加または減少)させ得る。特定の例では、遺伝子の活性を調節する薬剤は、SMCと接触する外因性薬剤である。本明細書に記載されているように、そのような外因性薬剤は、腫瘍などの病変組織の近くにある化合物もしくは細胞表面タンパク質または他の因子でよく、腫瘍部位に治療化合物を送達するために本発明のSMCが標的とされる。他の実施形態では、例えば体液中で検出可能であり、疾患を同定し、適切な療法を指示する診断剤が放出され得る。他の実施形態では、部位は、熱、電磁もしくは電離放射線の適用、または部位での治療剤の産生を活性化する別の物理化学的変化などの外部刺激によって境界を定めることができる。別の実施形態では、SMCの所望の部位を標的とする薬剤を対象に投与して、その部位のSMCが所望の治療剤を産生することができる。前述の説明は、本発明の態様に関して例示的であり、非限定的であることを意図している。
【0040】
外因性薬剤は、SMCの環境の外部のソースから、SMCの外部環境に追加され得るか、またはSMCの環境に存在する別のSMCによって産生もしくは放出され得る。場合によっては、遺伝子の活性を調節する薬剤は、SMC内で発現される内因性薬剤であり、発現された薬剤は、そのSMC内の別の遺伝子の活性を調節する。本発明の特定の態様では、多遺伝子の遺伝子回路の一部である遺伝子は、SMCにおいてポリペプチドを発現し得、ポリペプチドは、SMCの内部環境を改変させ、したがって、SMCにおける多遺伝子の遺伝子回路の別の遺伝子成分の発現を調節する。例えば、限定することを意図するものではないが、SMC内の遺伝子は、SMCで発現され、SMCの多遺伝子の遺伝子回路における別の遺伝子の発現を調節する(例えば、増加または減少する)小分子などの薬剤の侵入を可能にする、チャネルタンパク質をコードし得る。本明細書で使用される場合、薬剤に関連して使用される「外部送達される」という用語は、外因性薬剤である薬剤を意味する。本発明のいくつかの態様では、薬剤は小分子であり、特定の実施形態において、薬剤は可溶性である。
【0041】
本明細書で使用される場合、本発明のSMCにおける遺伝子回路の産物は、タンパク質もしくはペプチド、siRNAなどの核酸、またはその少なくとも1つのステップがSMCの遺伝子回路によって調節される生合成経路の産物である小分子でよい。以下により詳細に示されるように、SMC内の1つ以上の前駆体(前駆体は治療的に有益ではない)からの治療的に有益な小分子の産生は、本発明の実施形態である。
【0042】
本明細書で使用される場合、核酸またはポリペプチドの発現に関して「増加する(increases)」または「増加する(increase)」という用語は、発現レベルをゼロからゼロを超える任意の量に上げるか、または発現レベルを既存のレベルからより高い発現レベルに上げることを意味する。本明細書で使用される場合、ポリペプチド、核酸または小分子の発現に関する「減少する(decreasing)」または「減少する(decrease)」という用語は、発現レベルをある量からより低い量に低下させることを意味し、これはゼロレベルの発現でよいが、そうである必要はない。
【0043】
本発明の特定の態様は、1つ以上の機能的特徴を有するSMCを含み、その非限定的な例には、1つ以上の核酸またはポリペプチドの発現;SMC内部の1つ以上の核酸またはポリペプチドの発現を誘発すること;例えば、1つ以上の追加のSMCにおいて、SMCの外部にある1つ以上の核酸またはポリペプチドの発現を誘発すること;そのコードされたポリペプチドの発現を低減させるためのSMC内部のポリペプチドの活性の調節;別のSMCに存在するポリペプチドの活性を調節して、そのコードされたポリペプチドの発現を低減させること、1つ以上の追加のSMCまたはSMCの外部の他の要素との通信などが含まれる。本発明のいくつかの態様では、活性を調節することは、活性を増加させることを含み、本発明の特定の実施形態では、活性を調節することは、活性を減少させることを含む。本発明のSMCに存在し得る機能的特徴の追加の例が本明細書に記載されている。上記のように、ポリペプチドの任意の活性は、そのポリペプチド(例えば、酵素)を利用する生合成経路の活性でよく、したがって本発明の実施形態である。
【0044】
本発明の特定の態様は、1つ以上の構造的特徴を有するSMCを含み、その非限定的な例には、リポソームカプセル化;1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の発現ベクターを含めること;1つ以上の遺伝子の転写、または転写および翻訳に適した内部環境;それらのコードされたポリペプチドを発現するように誘発または誘導され得るか、またはそれらのコードされたポリペプチドの発現を低減させるように調節され得る、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の遺伝子;融合タンパク質をコードする1つ以上の発現ベクター;コードされた検出可能な標識;検出可能な標識、融合分子、送達分子などのうちの1つ以上による外部リポソーム表面の装飾が含まれる。本発明のSMCに存在し得る構造的特徴の追加の例が本明細書に記載されている。本発明のいくつかの態様はまた、本発明のSMCを調製する方法、およびそれらの使用方法を含む。さらに、とりわけ、mRNA、shRNA、siRNAなどの核酸分子の産生は、本発明の実施形態であり、治療上有用な核酸剤の産生において、mRNAのタンパク質への翻訳は必要でない。
【0045】
本発明に包含されるSMCおよびそれらの使用方法は、遺伝子回路を含むSMCが外部で調節され、互いに通信し、ネットワークで一緒に働くことを可能にする。そのようなネットワークは、発現された腫瘍抗原および腫瘍代謝物などの体からのシグナルの組み合わせに依存して、体の特定の部位に所望の治療剤を送達する手段を包含し得、これは、組み合わせて、すべてのシグナル伝達分子が存在する場合のみ、治療剤の産生をシグナル伝達する。これは、疾患の治療に対して高度に標的化された治療アプローチであり、特定の状況下でのみ治療効果のある分子を微調整して提供することで、特定の疾患を治療するために提供できる「パーソナライズされたSMC」の概念を支持する。1つの非限定的な例では、SMCは、特定の腫瘍マーカーを感知し、特定のバイオマーカーに感受性ではない別のSMCによる毒素産生のシグナルである分子を産生する、腫瘍特異的SMCの組み合わせである。一実施形態では、パーソナライズされかつ一般的なSMCを組み合わせて、特定の個体のために療法を調整することができる。さらなる実施形態では、腫瘍特異的SMCはまた、いくつかのトリガーの中からどの生体分子を産生するかを決定することができる複数の回路を有することができ、その生体分子は、毒素産生SMCの混合物のうちの1つを誘発して、バイオマーカーを発現する腫瘍に最も適した特定の毒素を産生することができる。本明細書の他の場所に記載されるように、それぞれ異なる薬剤によって誘発される異なるSMCの組み合わせは、例えば、特定の感染性因子が知られていない場合に提供され得、それによって、特定の病原体によって誘発される組み合わせにおけるSMCのサブセットがその病原体に特異的な治療剤の産生および放出を誘導し、または別の実施形態では、病原体のタイプを示し、したがって特定の治療を通知する、患者の尿または血液中で検出可能な診断剤を放出する。これらの例は、正確な医療的処置のために治療的または診断的に使用できるSMCの潜在的な組み合わせに関して限定することを意図したものではない。
【0046】
本発明のSMCの利点の非限定的な例は、合成生物学の手順および方法においてモジュール性を提供するためのその使用にある。本発明のSMCの使用方法の追加の非限定的な例は、例えば、疾患の進行を追跡するために使用することができるSMCからのシグナルを生成することによる、疾患プロセスの病態生理学に関する研究にある。他の非限定的な例は診断目的であり、例えば、特定の疾患部位を感知するSMCは、場所に応じて治療を標的化またはパーソナライズするために医療提供者が使用できる検出可能なマーカー、または治療の通知に診断上有用である患者の血液または尿中の検出可能なマーカーを生成する。本発明のSMCが使用され得る追加の方法は、当業者によって認識されるであろう。
【0047】
本発明の特定の態様は、無細胞転写/翻訳(「TX/TL」とも呼ばれる)抽出物または転写(「TX」)抽出物をリポソームにカプセル化して、本明細書でSMCと呼ばれるバイオリアクターを形成することを含む。TX/TL成分は、原核生物または真核生物である可能性がある。単一遺伝子SMCを調製する手段、および人工細胞およびリポソームにおける無細胞TX/TL抽出物の使用は当技術分野で知られている。例えば、Zemella,A et al.,(2015)ChemBiochem Vol.16,Issue 17:2420−2431;Forster,AC.& Church,G.M,(2006)Mol.Syst.Boil 2,45;Brea,R.J.et al.,(2015)Chem.A Eur.J.Vol.21,Issue 36:12564−12570;Luisi,P.L.et al.,2006)Naturwissenchaften 93,1−13;Stano,P.& Luisi,P.L.Curr Opin Biotechnol.(2013)24:633−638;Tan,C.et al.(2013)Nat.Nanotechnol.8,602−8;de Souza,T.P.et al.(2012)Orig.Life Evol.Biosph.42,421−428;de Souza,T.P.,et al.,(2014)J.Mol.Evol.79,179−192;and Caschera,f.& Noireauz,V.& Noireauz,V.Opin.Chem.Biol.22,85−91を参照、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。複数の遺伝子を含む本発明のSMCは、当技術分野で知られている日常的な手順と併せて本明細書に提示される方法を使用して調製することができる。リポソームカプセル化のための方法および成分は当技術分野で知られており、本発明のSMCの調製に使用することができる。
【0048】
本発明のSMCを使用して、組換え無細胞翻訳因子ならびに/または細菌および/もしくは真核細胞からの無細胞抽出物から再構成されたカプセル化システムを使用して、機能性タンパク質または他の治療上有用な分子を作製することができる。単一遺伝子を発現し、SMCの均質な集団内で単一遺伝子産物を合成するために使用された以前のリポソームSMCとは異なり、本発明の特定の実施形態は、複数成分の遺伝子回路、例えばそれぞれ2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の異なった遺伝子産物を合成する2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の異なる遺伝子を含むSMCを含む。加えて、本発明の特定の実施形態は、複数の十分に区画化されたSMCにわたって動作することができる複数成分回路を含むSMCの調製および使用を含む。本発明は、いくつかの態様では、SMCベースの遺伝子回路のそのようなネットワークを構築および利用するための戦略を含み、したがって、SMCの制御および増幅能力を拡張する。一実施形態では、治療上有用な薬剤を産生するための生合成経路は、複数の酵素を含み、それらのそれぞれは活性化時にSMCで産生される。
【0049】
本発明のSMCの工学的ネットワークを使用して、複数の反応を互いに高い忠実性で単離すること、ならびにそれらの反応間の制御された通信および調節シグナル交換の両方から利益を得る複雑な化学反応を支持することができる。上記のように、これらは、特定の薬剤の標的化送達が体内の疾患部位の微小環境に依存し、最良の療法を同定する他の手段を経験的に行うことができない、疾患の療法の調製に特に有用である。一実施形態では、SMCの組み合わせは、特定の条件を感知し、適切な治療剤または検出可能な診断剤を産生および送達することができる。本明細書に記載されるように、治療剤または診断剤は、非限定的な例として、1つ以上の小分子化合物、ペプチド、タンパク質、または核酸でよい。
【0050】
ある遺伝子の産物が次の産生を誘発する本発明のカスケード回路は、シグナル増幅(すなわち、比較的小さい入力シグナルが高出力を誘発できる)、モジュール性(例えば、さまざまなセンサを所与の出力に接続できる)、ネットワーク内のさまざまなポイントでマルチノード制御を可能にする(細胞内の自然なシグナル伝達および代謝経路の構成など)さまざまな理由に有用であり、効率的な合成のためのタイミングおよび濃度で多くの試薬を調整する(regulate)必要がある。本発明のいくつかの態様では、互いに連動して動作する2つ以上のSMCは、本明細書では、SMCの「ネットワーク」とも呼ばれる。本明細書で使用される場合、SMCと併せて使用される「ネットワーク」という用語は、互いに相互作用し、システムとして機能することができる2つ以上のSMCを意味する。2つ以上のSMCが相互作用する手段の非限定的な例は、SMC間の化学的通信である。例えば、制限することを意図するものではないが、SMCのネットワークの少なくとも一部として、第1のSMCは、第2のSMCに接触し、第2のSMCでの作用を誘発するシグナルとして機能する薬剤を放出する。前述の例に加えて、本発明のいくつかの態様では、第1のSMCからシグナルを受信した後、次いで、第2のSMCは、第1のSMC、第3、第4、または他のSMCのうちの1つ以上での作用を誘発するシグナルを放出する。本発明のいくつかの実施形態では、2つのSMC間の通信は一方向通信であり、本発明の特定の実施形態では、2つのSMC間の通信は双方向通信である。上記のように、そのようなトリガーおよびカスケードは、その部位に送達される治療剤をパーソナライズするために提供され得る。別の実施形態では、特定の疾患に対する治療剤の最適な発現または合成のレベルは、SMCによって感知され、SMCの同じまたはネットワークを介して、適切な量の治療剤に変換されて部位に送達される。別の実施形態では、治療の期間は、特定の疾患の最適な療法のために、例えば、送達されない期間によって中断された治療剤のパルス、または異なる時間での異なる治療剤の代替送達を送達するように遺伝子回路にプログラムされる。一実施形態では、2つ以上の治療剤の一時的な局所送達は、適切なSMCによって提供することができる。
【0051】
遺伝子発現に関して本明細書で使用される場合、「カスケード」という用語は、薬剤による2つ以上の事象の誘発(本明細書では「誘導」とも呼ばれる)を意味する。本発明の特定の態様では、誘発された事象は、1つ以上のSMCにおけるポリペプチド、核酸または小分子の発現でよい。例えば、限定することを意図するものではないが、小分子は、本発明のSMCに接触し、SMCに含まれる遺伝子からの1つ以上のポリペプチド、またはポリペプチドを利用する生合成経路の産物である他の小分子の発現を誘発し得る。
【0052】
次に、1つ以上のポリペプチドは、SMC内、または第2のSMCまたは複数のSMC内で、1つ以上の追加のポリペプチドの発現を誘導し得る。本発明のいくつかの態様では、カスケードは、第1のSMC、第2のSMC、または複数のSMCのうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つのポリペプチドの発現を増幅する。カスケードの別の非限定的な例では、膜チャネルまたは膜ポンプを含むポリペプチドは、本発明のSMCで発現され得、その発現に続いて、チャネルは、小分子、ポリペプチド、イオンなどの薬剤のSMCの内外への通過(入口および/または出口)を可能にする。次に、薬剤は、発現されたチャネルを通過した薬剤(複数可)が接触する、SMCまたは第2もしくは複数のSMCにおいて追加の発現を誘発することができる。膜チャネルを含むポリペプチドおよび膜ポンプを含むポリペプチドの非限定的な例は、それぞれ、光活性化イオンチャネルおよび光活性化イオンポンプである。本発明の方法および組成物での使用に適した光活性化イオンチャネルポリペプチドおよび光活性化イオンポンプポリペプチドは、当技術分野で知られている。本発明のSMCにおいてポリペプチドを発現するために発現ベクター、ポリヌクレオチド配列、プロモーター、送達剤、標識剤などを調製および使用するのに適した方法は、当技術分野で知られている。前述の実施形態のいずれも、小分子に等しく適用可能である。
【0053】
SMC内にカプセル化される複数成分の遺伝子回路を調製および使用することに加えて、本発明は、いくつかの態様では、特定の回路要素が同じ外部溶液内のSMCの異なるセット内に区画化される形成されたシステムも含む。このような区画化は、従来の合成生物学では通常利用されない重要な目的に役立つ。例えば、1つの遺伝的カスケードの産物が第2のカスケードの1つ以上の部分に毒性がある場合、または劇的に異なる補助因子の濃度を必要とする2つの遺伝的カスケードを調整する方法などであり、特殊な、したがって必然的に単離された反応条件下で行われる反応の化学全体に多数の例がある。本発明のSMC回路の特定の実施形態(例えば、SMCベースの回路)は、回路間のクロストークなしに、本発明の他のSMC回路と並列に動作することができる。したがって、本発明の特定の態様には、同じ外部活性化因子およびそのようなSMCの使用に対して異なって応答するSMCの集団が含まれる。上記のように、特定の疾患に対する特定の治療剤または診断剤の感度および選択は、そのような区画化が提供できる微調整の別の例である。
【0054】
いくつかの態様では、本発明は、SMCの別個の集団において調製された複数の遺伝子回路を含み、集団間の通信様式が存在する。このように、本発明の組成物は、制御の忠実度、毒性、または試薬の調整可能性の理由で回路を分離する(他から「単離する」とも呼ばれる)ことを可能にし、本発明の1つ以上の区画化された回路を他の区画化された回路に接続することを可能にする、区画化された遺伝子回路全体を含む。本発明のこの態様は、回路要素を異なるSMCに物理的に分離することによって、遺伝子回路間のモジュール性を可能にする。
【0055】
本発明の特定の態様のSMCの十分に区画化された環境を使用して特定の反応が可能であるが、本発明のSMCのいくつかの実施形態を使用して、2つ以上の遺伝的カスケードを特定の時間に1つの環境にまとめることができる。例えば、本発明のSMCは、2つの前駆体が異なる環境での合成を必要とするが、最終的には互いに反応しなければならない状況で使用することができる。別の非限定的な例として、1つ以上のタンパク質は、本発明のSMCを使用する細菌発現系において高収率で発現され得、タンパク質は、真核細胞溶解物から翻訳後修飾を受け得る。上記のように、前述の例のいずれも、薬剤の治療的送達に適用することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、合成最小細胞(SMC)は、好適な条件下で生細胞の生化学的機能のいくつかを実行することができるリポソームバイオリアクターであり、一実施形態では最も顕著に転写であり、一実施形態では核酸またはタンパク質の発現のための転写および翻訳である。本発明のSMCは、当技術分野で知られているベクター調製、遺伝子選択、組換え技術、発現条件などのための既知の方法と併せて、本明細書に記載の方法を使用して調製することができる。一実施形態では、SMCで産生される1つ以上のタンパク質は、同じSMC内の前駆体から、または別のSMCによって産生される、治療的または診断的に有用な小分子化合物を産生し得、一実施形態では、SMCが疾患のトリガーを感知するときに産生され得る。
【0057】
本発明のSMCは、発現構築物とも呼ばれる1つ以上の発現ベクターを含んでよい。本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、異なる遺伝子環境間で、それが作動可能に連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。「ベクター」という用語はまた、核酸分子を輸送することができるウイルスまたは生物を指す。遺伝子が作動可能に連結されているその遺伝子の発現を指示することができるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0058】
本発明のSMCおよび方法で使用される発現ベクターの非限定的な例は、目的の遺伝子、エンハンサー、プロモーターなどのような1つ以上の要素を含むプラスミドまたはウイルスでよい。本発明の特定の態様では、プロモーターは誘導性プロモーターでよい。発現ベクターは、本発明のSMCに目的の1つ以上の遺伝子を導入する。適切な条件下で(非限定的な例として、誘発または誘導された場合)、発現ベクターの存在は、SMCにおいて少なくとも1つの目的のポリペプチドの発現をもたらす。本発明の方法およびSMCにおいて有用なベクターは、ベクターに含まれる目的の遺伝子の効果的な転写に関与するエンハンサー領域およびプロモーター領域のうちの1つ以上などの調節配列を含んでよい。
【0059】
本発明の特定の態様では、目的のポリペプチドの非限定的な例は、膜チャネルポリペプチド(本明細書では「細孔」とも呼ばれる)、膜ポンプポリペプチド、検出可能な標識、アゴニストポリペプチド、アンタゴニストポリペプチド、治療用ポリペプチド、診断用ポリペプチド、第2のポリペプチドの発現を誘発するポリペプチドなどでよい。本発明のいくつかの実施形態では、チャネルポリペプチドまたは膜ポンプポリペプチドは、光遺伝学的ポリペプチドとも呼ばれる光活性化ポリペプチドでよい。本明細書で使用される場合、「チャネル」という用語は、細胞膜を横切る薬剤の輸送を可能にする膜チャネルタンパク質を指す。本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、チャネルに関して使用され得、小分子、イオン、ポリペプチドなどでよい。膜チャネルを通過することは、能動輸送または受動輸送を介して起こり得る。膜チャネルおよび膜チャネルを横切る薬剤は、当技術分野で日常的に調製および利用されており、それらの調製および使用のための手段は、当業者によって理解され、それらの使用は、関連技術において日常的に実施される。
【0060】
本発明のSMCに含まれ得る分子の非限定的な例は、ベクターおよびそれらのコードされたポリペプチドである。本発明のSMCで発現され得るコードされたポリペプチドの例には、チャネルポリペプチド、細孔ポリペプチド、オプシンポリペプチド、検出可能な標識ポリペプチド、トラフィキングポリペプチド、シグナルポリペプチド、エクスポートポリペプチドなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明のSMCで発現され得る検出可能な標識ポリペプチドの非限定的な例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、tdTomato、mCherry、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、遠赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼなどが含まれる。
【0062】
本発明のSMCに含まれ得るプロモーターの非限定的な例は、Lac、T7、P70、ヒトユビキチンC(UBC)、PBAD、プロモーターおよびそれらの機能的変異体などであるがこれらに限定されない哺乳動物および細菌のプロモーターである。ベクターにプロモーターを選択して含める方法は、当技術分野でよく知られている。
【0063】
本発明のSMCによって産生することができる治療剤は、SMCが産生するようにプログラムすることができる任意の薬剤でよい。特定の実施形態では、治療剤はSMC内に存在し、SMCは、治療剤を放出または送達するための手段を産生するようにプログラムされている。特定の実施形態では、SMCは、治療剤およびそれを放出または送達するための手段の両方を産生するようにプログラムされている。
【0064】
治療剤の非限定的な例には、DNA、RNA、mRNA、アンチセンスRNA、shRNA、siRNAまたはCRISPR sgRNAなどであるがこれらに限定されない、核酸ベースの治療剤が含まれる。治療上有用なsiRNAの非限定的な例には、治療上関心のある任意の数の標的転写物へのsiRNAの結合が含まれる。一実施形態では、核酸は、化学的に修飾された糖または核酸塩基を有し得る。
【0065】
一実施形態では、治療剤はタンパク質である。一実施形態では、タンパク質は、抗体分子の一部、または抗体のフラグメント、または抗体の抗原結合フラグメントである。
【0066】
治療剤の非限定的な例には、抗体および他の抗原結合ポリペプチド、酵素、毒性酵素、抗生物質、抗菌ペプチド、プロドラッグ、サイトカイン、およびケモカインを含むタンパク質ベースの治療剤が含まれる。
【0067】
一実施形態では、治療剤は、ホルモンであるインスリン、ACTH、カルシトニン、オキシトシン、バソプレッシン、オクトレオチド、ソマトスタチン、およびリュープロレリンなどのペプチドである。抗癌ペプチドであるヘプシジン、デルマセプチン、PTP7、MGA2、HNP−1、テンポリン、およびNK−2などのペプチドである。これらは、本発明のSMCによって出力され得るペプチドの選択に関して、単なる例示であり、非限定的である。
【0068】
一実施形態では、治療剤は、核酸酵素(リボザイム)、触媒ペプチド、膜破壊タンパク質、トランスポータータンパク質、シグナルタンパク質、ケモカインまたはサイトカインでよい。
【0069】
一実施形態では、治療剤は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、リゾチーム、ウロキナーゼ、プラスミン、ブロメライン、トリプシン、コラゲナーゼ、ラクターゼ、グルコセレブロシダーゼ、アルグルセラーゼ、アスパラギナーゼ、イミグルセラーゼ、テネクタプラーゼ、ベータラクタマーゼおよびヒアルロニダーゼなどの治療上有用な酵素である。これらは、本発明のSMCによって出力され得るタンパク質の選択に関して、単なる例示であり、非限定的である。それらが治療に使用される治療用タンパク質および疾患の他の非限定的な例には、糖尿病に対するヒトインスリン、貧血および慢性腎不全に対するエリスロポエチン、癌に対するインターフェロンベータおよびガンマ、肺治療のためのDNase、B型肝炎に対するワクチン、AIDSに対するインターロイキン−2、ならびに例えば乳癌および肺癌の診断および治療のための多くの異なる種類のモノクローナル抗体が含まれる。一実施形態では、体内の特定の部位での、または体内の特定のシグナルの存在に応答したこれらの治療剤のうちのいずれか1つの標的化送達は、薬剤の非経口または他の送達よりもより特異的な局所効力および全身効果の低減を提供する。
【0070】
一実施形態では、治療剤は、ブレオマイシン、アクチノマイシン、バンコマイシン、デルミシジン、セクロピン、モリシン、メリチン、マガイニン、アベシン、インドリシン、プロテグリン、タキプレシンなどの抗生物質または抗菌ペプチドである。これらは、本発明のSMCによって出力することができる抗生物質および抗菌ペプチドの選択に関して、単なる例示であり、非限定的である。
【0071】
一実施形態では、治療剤は、抗体、抗体フラグメント、または抗体または関連分子の抗原結合フラグメントである。一実施形態では、抗原結合剤は、scFV、FabまたはF(ab’)2である。これらは、本発明のSMCによって出力され得る抗原結合剤の選択に関して、単なる例示であり、非限定的である。
【0072】
一実施形態では、治療剤は、酵素などの少なくとも1つのタンパク質が関与する生合成経路の産物である小分子である。SMCで産生され得る治療上有用な小分子の非限定的な例には、アルテミシニン、ベータカロチン、亜酸化窒素、リコペン、ナタマイシン、プリカマイシン、ノボビオシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、チロスリシン、ダプトマイシン、テトラサイクロシン、バシトラシン、アンピシリン、カナマイシン、トリメトプリム、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、クロランフェニコール、ピペラシリン、バイオマイシン、カプレオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ネオマイシン、バンコマイシン、リストセチン、ダウノルビシン、ストレプトゾシン、フシド酸、リファンピシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、アズトレオナム、ムピロシン、シクロセリン、トブラマイシン、シロリムス、プリスチナマイシン、バージニアマイシン、エルサミトルシン、トヨカマイシン、フリウリミシン、スパルソマイシン、インジルビン、エンビオマイシン、アラノシン、モネンシン、およびバフィロマイシンが含まれる。
【0073】
一実施形態では、治療剤は、プロドラッグまたは前駆体としてSMCに存在し、遺伝子回路は、プロドラッグを治療剤に活性化するポリペプチド、例えば、酵素を産生する。一実施形態では、プロドラッグは抗菌剤プロドラッグである。
【0074】
一実施形態では、治療剤は、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、および抗マイクロRNAなどのRNAサイレンシング剤である。一実施形態では、薬剤はパチシランおよびギボシランである。これらは、本発明のSMCによって出力することができる治療用RNAの選択に関して、単なる例示であり、非限定的である。
【0075】
治療剤の非限定的な例には、薬物、毒素、抗生物質およびプロドラッグなどの小分子が含まれる。一実施形態では、小分子は、SMCの活性化時に小分子の少なくとも1つの前駆体(または中間体)を治療用小分子に変換する、上記のような遺伝子回路の産物である。生合成経路は、複数のステップを含んでよい。生合成経路は、SMCに存在するか、または外部もしくはSMCから、例えば、患者の循環、代謝物、または疾患部位もしくはその近くの他の化合物に存在する前駆体を使用し得る。1つ以上のステップを含むそのような小分子および生合成経路の例には、アルテミシニン、ベータカロチン、亜酸化窒素およびリコピンが含まれる。一実施形態では、SMC内に含まれる前駆体または中間体は、SMC膜に対して透過性ではないが、膜は、治療用小分子に対して透過性である。
【0076】
治療剤に関する前述の例のいずれも、SMCによって放出され、例えば、患者の体液中で検出可能である、レポーターまたはマーカーなどの診断剤に等しく適用可能であり、薬剤は、その後、診断、または最適もしくは適切な治療を通知する。したがって、本発明のSMCによって産生することができる診断剤は、SMCが産生するようにプログラムすることができる任意の薬剤でよい。特定の実施形態では、診断剤はSMC内に存在し、SMCは、診断剤を放出または送達するための手段を産生するようにプログラムされている。特定の実施形態では、SMCは、診断剤およびそれを放出または送達するための手段の両方を産生するようにプログラムされている。治療剤に関する本明細書の任意の説明は、診断剤にも適用可能である。
【0077】
融合タンパク質として発現するためのベクターにおけるトラフィキング配列、シグナル配列、エクスポート配列、プロモーターなどを選択および使用するための方法は、当技術分野で知られている。例えば、Chow,X.et al.,Nature 463,98−102(2010)、Gradinaru,V.et al.、Brain Cell Biol.36,129−139(2009)、およびKugler,S.et al.,Gene Therapy 10,337−347,(2003)を参照。上記の各参考文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、本発明のSMCの特定の実施形態で使用するために、トラフィキング、シグナル配列、エクスポート配列などをコードするベクターを調製するための日常的な方法を使用することができるであろう。
【0078】
多数の異なるタイプのポリペプチドの発現のための発現ベクターおよびそれらの使用方法は、当技術分野でよく知られている。好適な発現ベクターおよびそれらを使用するための方法の非限定的な例が本明細書に提供される。当業者は、本明細書で提供される開示と併せて日常的な手順を使用して、本発明の方法およびSMCにおいて発現ベクターを設計および使用する方法を理解するであろう。
【0079】
本明細書で使用される場合、本発明のSMCに関して使用される「複数」という用語は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、1000、10,000個またはそれ以上のSMCを意味する。本発明のいくつかの態様では、複数のSMCにおける各SMCは、同じ1つ以上の発現ベクター、目的の遺伝子を含み、複数のSMCにおける他のSMCと同じ薬剤によって1つ以上の遺伝子を発現するように誘導され得る。本発明の特定の態様では、複数のSMCにおける各SMCは、複数のSMCにおける1つ以上の他のSMCとは異なる1つ以上の発現ベクター、目的の遺伝子、内部環境を含んでよく、複数のSMCにおける他のSMCのうちの1つ以上における目的の遺伝子の発現を誘導する少なくとも1つの異なった薬剤によって1つ以上の遺伝子を発現するように誘導され得る。したがって、本発明のいくつかの態様では、複数のSMCが均質でよく、本発明の特定の態様では、複数のSMCが不均質でよい。
【0080】
本発明の特定の態様では、本発明のSMCは、別のSMCと一緒に融合するようにプログラムすることができる。SMC融合は、それらの融合特性に特異的な相補的対で生成され得る、SNARE/コイルドコイルハイブリッドタンパク質を利用するシステムを含むがこれらに限定されない任意の好適な融合システムを使用して実施され得る[例えば、Meyenberg,K.et al.,Chem.Commun.47,9405(2011)、およびRobson Marsden,H.et al.,Biomater.Sci.1,1046(2013)を参照、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる]。非限定的なSNARE融合システムの例では、相補的な融合要素を、本発明のSNARE融合可能なSMCの別個の集団にパッケージ化することができ、SMCを一緒に融合することができる。本発明の特定の実施形態では、融合要素は、MSCの外面に存在する。本発明のいくつかの態様では、相補的な融合要素が、SMCの集団内の2つ以上のSMCの外面に存在する。各集団内で占有されているSMCの画分を個別に調整できるため、最終出力の全体的な産生、および環境による変調の程度を調整できる。本発明のいくつかの態様では、SNARE媒介融合を受けているSMCは、複数のスターターSMCから作製された大きな凝集体を形成し得る。一実施形態では、特定の疾患の治療または診断に有用な治療剤または診断剤を産生するための特定のSMCの融合が提供され得る。
【0081】
本発明のSMCの使用
本明細書に記載されるように、本発明のSMCは、治療を必要とする患者、より具体的には、送達された薬剤(複数可)の治療効率を最適化する体内の部位への治療剤の送達に有用である。本明細書に記載されているように、SMCのセンサ、産生および出力機能は、(1)治療剤が必要な時期および場所を同定するように設計され、この情報は、(2)治療剤の産生、次に(3)治療剤の身体部位への放出に伝達され、治療を目的とする疾患または状態に有益な効果を発揮する。また、前述のように、1つ以上のセンサSMCが1つ以上の産生SMCにシグナルを送って治療剤または生合成中間体を産生し、それを1つ以上のステップで同じまたは異なるSMCによって所望の治療剤に変換することができ、目的の部位に出力されるように、1つ以上のSMCがこのプロセスに参加し得る。したがって、一実施形態では、前述の3つのステップは、単一のSMCに存在するか、または複数のSMCに分散され得る。したがって、一実施形態では、「SMC」は、一緒になって本発明の目的を果たす複数のSMCを含んでよい。さらに、本発明のSMCはまた、患者の部位または体液中で検出可能な薬剤を放出し、疾患、例えば、感染のタイプを同定し、適切な治療を通知することによって、疾患の診断に有用である。
【0082】
一実施形態では、本発明のSMCは、体内のそのような化合物の供給源が不足しているか不十分である場合に、内因性の生物学的に活性な化合物の産生を増強または完了するのに役立つことができる。1つの限定されない例では、生物学的プロセスに必要であるが対象において欠損しているホルモンまたは神経伝達物質の産生は、化合物の産生に通常関与する部位または細胞型を検出し、その部位でそれを産生するSMCの投与によって増強され得る。別の実施形態では、SMCは、循環または局所化合物のレベルの増加または減少を感知し、それに応答して、化合物のレベルまたは生物学的活性をそれぞれ減少または増加させる薬剤を産生することができる。
【0083】
本発明の潜在的な使用範囲をさらに説明する前に、前述の目的を達成するためのSMCの特定の例の説明が保証される。これらの例は単なる例示であり、本発明の範囲を制限することを決して意図するものではない。当業者は、本発明の範囲および意図に従って、他の治療剤を送達し、そのような治療剤の放出が望まれる条件を感知する他のSMCシステムを設計することができる。
【0084】
1つの非限定的な例では、血管内の血栓を治療するためのSMCの用途が使用され(
図3)、治療剤は、タンパク質(酵素)組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)またはストレプトキナーゼなどの血栓溶解剤である。これらの酵素は、血餅中のフィブリンを分解し、塞栓症を取り除くヒトプラスミンを活性化する。しかしながら、血栓溶解剤の全身投与または局所投与は、最近の手術などの条件によって禁忌となることが多く、血栓摘出術などの他の介入にはリスクが伴う可能性がある。SMCを使用して血餅を標的とし、血餅バイオマーカーの存在に応答してのみtPAを生成することにより、血栓溶解薬の現在の治療指数を著しく改善することができる。一実施形態では、SMCのセンサは、血栓の成分であるフィブリンの存在を検出する。これは、SMCの表面にあるフィブリン結合抗体またはアプタマーを標的部分として使用することで達成できる。別の実施形態では、センサは、ヘムの濃度の増加を検出する。別の実施形態では、センサは低酸素を検出する。複数のセンサを使用して、治療剤が複数のトリガーが配置されている場所でのみ産生されることを保証することができる。これらの条件を感知する標的部分は、SMCの外側に直接結合するか、または他の表面結合分子に結合させることができる。血餅を検出すると、センサは、SMC内のDNA含有構築物から酵素を発現する要素を含む遺伝子回路からの血栓溶解酵素の産生を活性化する。酵素産生を活性化することに加えて、遺伝子回路はまた、治療用酵素のトランスポーターを生成して、SMCから出力する。加えて、一実施形態では、副作用が発生する前に血栓溶解剤の出力を停止するように、または血餅の欠如もしくは血餅を特徴付ける条件を検出したときにセンサが遺伝子回路を停止し、酵素の産生を停止するように、SMCは特定の動作寿命を有するように設計される。一実施形態では、遺伝子回路は、特定の期間の後にSMCの機能的動作をシャットダウンするタイマーを含む。
【0085】
治療剤が小分子である別の例では、小分子薬はカテコール(オルトベンゼンジオール)である。本発明のSMCは、カテコールジエチルエーテル(1,2−ジエトキシベンゼン)を含み、遺伝子回路は、芳香族エーテル結合を加水分解する酵素をコードするDNA、ならびにRNAポリメラーゼおよび無細胞タンパク質翻訳システムを含む。特定の組織で外部刺激を受けると、SMCは酵素を発現し、酵素は1,2−ジエトキシベンゼンのエーテル結合を加水分解してカテコールを産生する。カテコールはSMC膜透過性であるため、能動輸送メカニズムまたは膜細孔を必要とせずにエクスポートされる。
【0086】
別の実施形態では、本発明のSMCは、合成免疫システムとして協調して作用する。特定のSMCは、アデノシンまたはキヌレニンなどの癌バイオマーカーの存在を検出し、それに応じて細胞毒性タンパク質および小分子を産生および放出する。他のSMCは、他の免疫細胞を悪性部位に動員するIL−8またはCLL5などのケモカインなどの走化性分子を産生および放出する。
【0087】
別の例では、SMCのコンソーシアムは、「広域抗生物質」として使用されている。この実施形態では、コンソーシアムは、各メンバータイプが特定の種またはタイプの病原体を検出することができる複数のタイプのSMC(メンバー)を含む。SMCは、病原体の各種またはタイプに特有の分子を特異的に検出する膜結合型センサまたは可溶性センサでプログラムされるか、あるいはSMCメンバーは、細孔タンパク質(例えば、アルファ溶血素)または他の薬剤などの特定の細菌性薬剤と相互作用すると溶解する膜を含むことができる。センサ分子(タンパク質、RNA、DNAなど)は、酵素を産生し次いで適切な抗生物質を産生するための適切な回路(
図1B)、および/またはカプセル化された抗生物質を放出するための細孔を活性化する、特定の病原体に特徴的な分子(代謝物、クオラムセンシング分子、毒素、膜成分など)を検出する。リポソーム自体の膜は、特定の細菌毒素による溶解にも影響を受けやすいように構成することができる。したがって、SMC(メンバー)のタイプの複数の集団をコンソーシアムとして同時に同時投与して、複数のクラスの病原体に対する同時保護を提供することができる。
【0088】
別の実施形態では、上記のように抗生物質および細孔タンパク質を産生することに加えて、SMCはまた、尿または血液中で検出され得、感染症の診断を支援するために使用され得る、レポーター(タンパク質、色素、DNA、RNA、小分子など)を産生するように操作され得る。それぞれが異なる種またはタイプの細菌を報告しているSMCの集団のコンソーシアムは、感染のタイプの診断を提供する。現在、細菌感染症の治療は、病原体のクラスを決定するためのアッセイが24〜48時間かかるという事実によって制限されている。患者が感染している病原体のクラスに関する知識は、投与する抗生物質のタイプを決定するために重要である。細菌感染が急速に進行する可能性があることを考えると、現在の標準治療は、病原体の性質が知られる前に、すぐに広域抗生物質の治療を開始することである。これらの抗生物質は効果的である可能性があるが、それらは重大な毒性を有する可能性があり、それらの乱用は抗生物質耐性菌の発生に寄与する。
【0089】
したがって、細菌種またはタイプ認識SMCのこのようなコンソーシアムを細菌感染症の患者に注入することにより、メンバーSMCは特定の病原体を認識し、これらの病原体が検出された場合に種またはタイプに特異的な抗生物質を放出するにすぎないか、または患者の体液で検出することができるその細菌種もしくはタイプのレポーターを放出する。それによって、患者はすぐに治療を受けることができ、適切な薬物のみを受け取ることが保証される。
【0090】
一実施形態では、本発明のSMCまたはリポソームは、SMCによってその抗生物質に適切な細菌種またはタイプの存在を感知したときにのみ放出される抗生物質を含んでよい。一実施形態では、抗生物質はSMCに存在する。一実施形態では、センサは、抗生物質を産生するために遺伝子回路を活性化する。
【0091】
センサ。他の例では、関連する疾患バイオマーカーを検出するセンサモジュールには、腫瘍の場合、CD19などの癌表面マーカー、およびキヌレニンおよびアデノシンなどの代謝物の放出、低酸素または低pHなどの腫瘍微小環境マーカーが含まれ(
図4)、これは単独でまたは一緒に腫瘍の存在を示している可能性がある。細菌感染の例では、SMCは細菌細胞表面分子または細菌種特異的可溶性分子を検出する(また、本明細書に記載されているように、個々のタイプのSMCを含み、それぞれが異なる細菌種を検出できるSMCのコンソーシアムが提供され得る)。センサモジュールは、膜に固定された受容体モジュールまたはSMC内の浮遊分子で構成されていてもよい。センサモジュールは、感知された化学物質によって化学的に改変するか、または感知された化学物質が、そのコンフォメーションを改変させ、その活性を変化させるような方法でセンサと相互作用することができる。センサは、遺伝子発現を直接変更することも、遺伝子発現を改変する形質導入分子と相互作用することもできる。センサまたは形質導入分子が標的遺伝子のプロモーターの近くに結合すると、遺伝子発現は変更される。センサまたはトランスデューサーの結合は、プロモーターからの転写速度を改変させ、遺伝子発現とそれに続く標的タンパク質のレベルを変化させる。活性化因子という用語は、本明細書では、センサの刺激を指すために使用され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、SMCの遺伝子回路を活性化するための刺激は、治療剤が望まれる部位ですべての条件が満たされる場合を除いて、活性化を防ぐために第2または追加の刺激を必要とし得る。このフェイルセーフメカニズムは、SMCを使用して、例えば脳内の小さな腫瘍の顕微手術を実行する場合など、非特異的な相互作用を制限する。この場合、治療(化学療法)剤が望ましくない場所に放出されると重大な副作用が発生することになる。上記のように、1つの表面マーカーおよび1つの代謝物、1つの表面マーカーおよび1つの微小環境マーカー、1つの代謝物および1つの微小環境マーカー、または、1つの表面マーカー、1つの代謝物、および1つの微小環境マーカーなどの、腫瘍の2つ以上のバイオマーカーが遺伝子回路を活性化するために必要となる場合がある。
【0093】
一実施形態では、刺激は、内部(例えば、固形腫瘍の部位での癌代謝物の存在、または損傷部位での炎症マーカーの存在)でよく、または一実施形態では、外部(例えば、光での部位への照射、電気刺激、またはSMC内の薬物の産生を活性化するための追加の小分子の送達)でよい。一実施形態では、刺激は、コンソーシアム間のSMCの亜集団における遺伝子回路を活性化することができ、亜集団は、特定の刺激に応答するセンサを有する。したがって、SMCのコンソーシアムを使用して、病的因子が不明であるか、または複数の可能性の中にあり得る、疾患を治療または診断することができる。
【0094】
刺激は、別のSMCまたは治療装置からの分子の展開でもある。
【0095】
遺伝子回路。本発明のSMCの遺伝子回路は、関連する各バイオマーカーシグナルがどの程度存在するかを計算し、それに対応して、出力される治療もしくは診断的核酸または治療もしくは診断的タンパク質、あるいは、治療的または診断的に有用な小薬物を産生するためのSMC内(または、他の実施形態では、不活性タンパク質を活性化タンパク質に変換するか、または細孔もしくはトランスポーター分子を産生して、内部または産生された薬剤のSMCからの放出を可能にするSMC内)の生合成経路に関与するタンパク質(酵素)の量を滴定する回路である。この回路は、遺伝子発現をさらに調節することができるタンパク質の遺伝子システムで構成されている。これらの遺伝子の調節構造の構成は、システムを通る情報の流れを決定する。システムが特定の方法で編成されている場合、デジタルまたはアナログのいずれかの計算を実行できる。センサモジュールは回路の「上流」に統合されており、入力を回路に供給する。治療用分子を産生するためのモジュールは、回路の「下流」に統合されており、回路の活動によって完全に制御される。したがって、治療用または診断用タンパク質の産生は、入力シグナルを条件とする方法で注意深く制御することができる。回路制御により、出力分子の注意深い滴定も可能になり、SMCは必要に応じて出力分子を分配できる。回路はまた、特定の時間的持続時間の後に治療または診断タンパク質(または他の薬剤)の産生を停止するタイマー、または治療剤の正の治療効果を検出することができ、正の治療効果を感知すると、産生を停止する回路を開始するか、診断用タンパク質または他の薬剤を産生して治療の成功を示すことができる、別のセンサを含んでよい。
【0096】
出力。上記のように、治療剤は、SMC膜に対して透過性であり、所望の位置に拡散し得るか、またはSMCは、治療剤または診断剤を出力するための膜細孔タンパク質または他の手段を含んでよい。これらは、受動的出力または放出メカニズムを表す。一実施形態では、出力は制御放出である。一実施形態では、遺伝子回路は、トランスポータータンパク質またはホリンタンパク質などのSMCからの治療剤または診断剤の放出を可能にする分子を産生する。このモジュールは回路によって制御され、特定の条件が満たされた場合にのみ出力を生成する。モジュールはまた、治療用または診断用分子を活性化または修飾するため、またはリポソーム膜を通過するその輸送を促進するために必要な酵素またはシャペロンを含んでよい。制御放出には、第2のタイプの外部刺激が含まれ得、または、SMCが光もしくは化学的脂質変換によって透過性になる可能性がある。
【実施例】
【0097】
図1は、プログラム可能な治療剤としてSMCを使用する本発明の全体的な概念を示している。SMCは、続いて回路を活性化する小分子の侵入を可能にするためのアルファ溶血素細孔を有するなどの感知機能;感知機能に応答する1つ以上の回路であって、その存在または1つ以上のシグナルが1つ以上の遺伝子回路を活性化する回路;および、出力、例えば、オピオイド受容体ミュー(OPRM1)、アデニル酸シクラーゼIIC2(AC−IIC2)、アデニル酸シクラーゼ3(AC3)または緑色蛍光タンパク質(GFP)などのSMCに存在する小分子またはタンパク質、を含むことができる。センサによって検出された特定のシグナルに応答してSMCから放出されると、それぞれに治療的または診断的価値がある。上記のように、感知によって活性化される遺伝子回路は、SMCに存在する無細胞の転写/翻訳成分を介して治療剤または診断剤を産生することができる。別の実施形態では、MCは治療剤または診断剤を含み、感知によって活性化される遺伝子回路は、そこに含まれる治療剤または診断剤を放出する細孔または他の産物を産生することができる。ここで、薬剤は、SMC膜の細孔または破裂を通して放出される。
【0098】
図2は、治療剤または診断剤を産生および放出することによってまたは放出することによって、罹患細胞、組織または他の病状を感知および応答するための本発明のSMCの潜在的な使用のいくつかを示し、例えば、脳または他の場所にあるベータアミロイド、およびアルツハイマー病の診断となるシグナルを産生すること;肝癌に関連する代謝物である2−ヒドロキシグルタル酸の感知であって、SMCは次に抗癌剤を産生および放出、または放出する、感知;癌関連糖タンパク質であるグリピカン−1を感知し、膵臓癌の診断シグナルを産生すること;N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT−proNBP)を感知し、心不全の診断となるシグナルを産生すること;局所シグナル伝達を遮断するための抗オステオポンチン抗体を産生および放出、または放出するSMCをもたらす、オステオポンチンの産生、結腸癌関連シグナル伝達タンパク質およびマーカーの感知に限定されない。これらの例は、本発明のSMCのさまざまな使用の単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【0099】
実施例1:血栓の部位にtPAを送達するSMC
図3に示すように、SMCは血栓(塞栓症)を治療するために作製できる。SMCは、フィブリンのセンサ、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA;アルテプラーゼ)を産生する遺伝子回路、および膜破壊タンパク質、チャネルタンパク質、またはSMCから血餅にtPAを出力する分泌メカニズムを含む。tPAはヒトプラスミンを活性化し、血餅中のフィブリンを分解して塞栓症を取り除く。
【0100】
フィブリン結合抗体またはアプタマーは、標的化部分としてSMCの表面に提供される。血餅を検出すると、センサは、SMC:プロモーターおよびtPA CDS、ならびに転写および翻訳を促進する細胞内成分内のDNA含有構築物から酵素を発現する要素を含む遺伝子回路からの血栓溶解酵素の産生を活性化する。遺伝子回路には、SMC膜を破壊する膜破壊タンパク質も含まれている。遺伝子回路は、血餅の近くでtPAを放出するのに十分な膜破壊タンパク質が産生される前に、SMCが治療的に活性な量のtPAを含むように設計されている。したがって、酵素の放出は血餅の近くにあり、効力が増加し、潜在的な全身への悪影響が回避される。
【0101】
実施例2:カテコールを送達するSMC
カテコール前駆体であるカテコールジエチルエーテル(1,2−ジエトキシベンゼン)および芳香族エーテル結合を加水分解する酵素をコードするDNA、さらにRNAポリメラーゼおよび無細胞タンパク質翻訳システムを含むSMCが作られている。特定の組織で外部刺激を受けると、SMCは酵素を発現し、酵素は1,2−ジエトキシベンゼンのエーテル結合を加水分解してカテコールを産生し、これがSMCからその部位に拡散する。
【0102】
実施例3.腫瘍部位に化学療法剤を送達するSMC
癌を治療するためのSMCは、腫瘍特異的代謝物、マーカー、または環境条件のセンサ、さまざまな入力シグナルをコンパイルするための遺伝子回路、および腫瘍細胞の死滅を促進し、細胞毒性または他のタンパク質を放出するタンパク質を産生する1つ以上の細胞毒性または他のタンパク質を産生するモジュールを含むことができる。別の実施形態では、SMCは抗癌剤で事前に充填されており、モジュールは、SMCから抗癌剤を放出するタンパク質を産生する。
【0103】
腫瘍結合抗体またはアプタマーは、標的部分センサとしてSMCの表面に提供される。腫瘍細胞または腫瘍環境を検出すると、センサは、SMC:プロモーター、タンパク質CDS、ならびに転写および翻訳を促進する細胞内成分内にDNA含有構築物からの治療および/または膜破壊タンパク質を発現するための要素を含む遺伝子回路を介して、治療および膜破壊タンパク質(または抗癌剤が事前に充填されたSMCの場合は膜破壊タンパク質)の産生を活性化する。
図4に示すように、キヌレニンおよびアデノシンの両方のセンサを備えたSMCは、これらの代謝物の検出部位でSMCによる化学療法剤の産生および/または放出を一緒に活性化する。キヌレニンおよびアデノシンが一緒に存在することは、一実施形態では、浸潤性乳癌を示している。これは、特定のシグナルを検出して応答し、治療上有効な薬剤を放出できるSMCの非限定的な例である。この例では、薬剤を放出するために2つのシグナルが存在する必要がある。
【0104】
実施例4.細菌感染を同定し、それを打ち消すSMCのコンソーシアム。
図5に示すように、SMCは、次のいずれかを活性化する特定の細菌種または細菌タイプを感知するように産生することができる。(A)その細菌種またはタイプに固有の抗生物質または抗菌剤の産生、(B)SMCに存在する細菌種またはタイプ特異的な抗生物質または抗菌剤の放出を可能にする細孔または他の膜溶解剤の産生、または(C)その細菌種またはタイプのレポーターまたは検出可能なマーカー、対象からの体液サンプルで同定でき、その細菌種を治療するための適切な治療レジメンを示すレポーターまたは検出可能なマーカーの産生。一実施形態では、細菌の種またはタイプを特定する以外のマーカーまたはレポーターは、細菌と特定の関係を有する必要はない。非限定的な例として、レポーターは、血液サンプルにおいて高感度で検出することができるヌクレアーゼ耐性オリゴヌクレオチドまたはレトロインベルソペプチドでよい。さまざまなオリゴヌクレオチドまたはペプチドが、さまざまな病原体を検出するSMCに関連付けられている。SMCの投与前後のLC−MS/MSやELISAなどによる血液サンプルの分析により、サンプルに出現した特定のオリゴヌクレオチドまたはペプチド、したがって病原体の性質を特定できる。
【0105】
SMCのコンソーシアムは、2つ以上のタイプのそのようなSMCで構成でき、各SMCは、特定の細菌種を検出し、抗生物質を放出または生成することによって応答するように特別にプログラムされている(例えば、
図5Aまたは5Bに示す1つの種に応答できるSMC)。
【0106】
図5Cに示すように、医師はこのコンソーシアムの薬用製剤を患者の感染が疑われる部位に適用することができる。細菌感染が存在する場合、細菌は、クオラムセンシング分子、廃棄物、ペプチド、オリゴヌクレオチド、またはその種に固有に関連するタンパク質などの小分子を産生する。これらは、部位または循環からのサンプルから検出できる。別の実施形態では、コンソーシアム内の1つのタイプのSMCは、そのセンサモジュールを介してそれらの1つ以上の固有の分子の存在を感知する。次に、応答する回路モジュールは、無色の基質を着色されたバイオマーカーに変えることができる酵素(診断)および/または抗生物質分子を生成する酵素の経路および/または共カプセル化された抗生物質分子を放出する細孔タンパク質(治療)を生成する。各タイプのSMCの応答は、感染量に比例する。これにより、SMCは、放出された抗生物質の量を感染の規模に適したレベルまで滴定することができる。これにより、患者への過剰摂取または抗生物質の不必要な産生を防ぐことができる。
【0107】
実施例5.化学療法剤を放出する光感受性SMC。
治療用途を感知して応答できるSMCの別の例を
図6に示す。
図6Aは、化学療法剤のドキソルビシンを含む入れ子になったリポソーム、および青色光感受性分割T7RNAポリメラーゼを発現する回路を含むSMCのスキームを示している。このシステムのT7プロモーターは、アルファ−溶血素(aHL)細孔複合体を発現する。SMCを青色光にさらすと、青色光感受性の分割T7 RNAポリメラーゼが活性化され、遺伝子回路からのaHLの産生が活性化される。aHLは膜細孔を形成し、SMC内のドキソルビシンが青色光による最初の活性化の部位で放出されることを可能にする。ここでの誘導システムは、PgnlAP2(腫瘍近くの酸産生に応答)、PhlF(シュードモナスによって産生される小分子2,4−ジアセチルフロログルシノールに応答)、luxR(感染部位で産生されるアシルホモセリンラクトンなどのクオラムセンシング分子に応答する)などの軽分子または小分子に応答する多くの他の誘導性プロモーターシステムに一般化できる。薬物ラパマイシンに反応する分割T7システムも産生されている。ここで統合されたSMCシステムは、SMCにカプセル化された単一のプラスミドにコードされた、センサ遺伝子、センサプロモーターおよび化学療法出力で構成される。プラスミド構築物では、センサタンパク質は未修飾の野生型T7プロモーターの下流にコードされている。共カプセル化された野生型T7RNAポリメラーゼは、これらのセンサ遺伝子を発現し、本質的にその感知タスクのためにSMCを「プライミング」する。次に、センサタンパク質(例えば、PhlF、分割T7)は、SMCの環境を評価し、出力遺伝子の転写を誘導または抑制することにより、目的の状態のポジティブまたはネガティブな存在(例えば、小分子または青色光の存在)を報告する。次に、出力遺伝子、この例ではaHLは、この例のように他の因子の放出を介して直接的または間接的に目的の機能(例えば、近くの細胞の溶解を誘発する)を実行する。
【0108】
図6Bは、分割T7システムがラパマイシン感受性システム(Rapa−T7)および青色光感受性システム(Opto−T7)などの無細胞システムで機能できることを示す実験結果を示している。この実験では、出力T7プロモーターがGFPタンパク質を生成し、その蛍光を測定できる。分割されていないT7(「T7全体のコントロール」)およびドメインを感知しない分割T7システム(「分割T7のコントロール」)がコントロールとして示されている。このシステムに青色光を当てると、ラパマイシン感受性T7システムと同様のGFPが産生される。そのようなSMCは、心臓毒性などの副作用を有する、腫瘍の部位で局所的に全身的ではなく化学療法剤を産生するためにその場で活性化されるように治療的に使用することができる。腫瘍の近くの高濃度は、全身性の副作用なしに非常に効果的である可能性がある。
【0109】
実施例6.熱焼灼で使用するためにその場で色素を生成するSMC
シグナルに応答してメラニンなどの染料または色素を生成するSMCを調製することができ、これらの染料または色素は、体内のある部位に蓄積し、その後の熱焼灼療法に使用できる。
図7は、無細胞系でのGFPおよびチロシナーゼ(melA)の発現を示している。白色光(上段)では、melA遺伝子、L−チロシン、銅イオンが存在すると、茶色の色素(メラニン)が産生される。青色光(下)の下では、GFP産生がコントロールとして観察される。メラニンは広域スペクトルの光を吸収し、結果として熱を発生させることができる。このようなシステムは、SMCを使用して標的組織の熱焼灼を行うのに有用であり、熱焼灼療法によって治療可能な悪性腫瘍のセンサ、melAを産生する遺伝子回路、およびその存在下でメラニンを産生する分子を含む。腫瘍部位で茶色の色素が産生された後、熱焼灼療法を適用してメラニンの存在を利用し、適用された光を熱に変換して、腫瘍細胞または他の細胞または組織を死滅させることができる。
【0110】
実施例7.aHL産生SMCの細胞毒性
図8は、異なる細胞毒性タンパク質を生成する無細胞システムをHEK293細胞の組織培養に添加した場合の生存率アッセイの結果を示している。ここでは、複数のジスルフィド結合を持つタンパク質を発現させて正しく折りたたむために、ジスルフィド結合エンハンサー(DBE)を含むPURE無細胞転写翻訳システムを使用している。アルファ溶血素(aHL)を発現するSMCを培養に添加すると、ほとんどの細胞が死滅する。他のどのタンパク質からも毒性は観察されない。これは、SMCが特定の毒性作用を持つさまざまなタンパク質をどのように生成できるかを示している。
【0111】
本明細書では本発明の特定の特徴が図示され、説明されてきたが、多くの修正、置換、変更、および同等物がここで、当業者に思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神趣旨に収まるように、すべてのそのような修正および変更を網羅することを意図することを理解されたい。
【国際調査報告】