特表2022-502465(P2022-502465A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-502465(P2022-502465A)
(43)【公表日】2022年1月11日
(54)【発明の名称】バボルバクタムの簡便な調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20211217BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20211217BHJP
   A61P 13/02 20060101ALN20211217BHJP
   A61K 31/69 20060101ALN20211217BHJP
【FI】
   C07F5/02 C
   C07B61/00 300
   A61P43/00 111
   A61P13/02 105
   A61K31/69
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2021-519605(P2021-519605)
(86)(22)【出願日】2019年9月29日
(85)【翻訳文提出日】2021年4月20日
(86)【国際出願番号】CN2019108981
(87)【国際公開番号】WO2020073850
(87)【国際公開日】20200416
(31)【優先権主張番号】201811191076.1
(32)【優先日】2018年10月12日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519016251
【氏名又は名称】新発薬業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】王 保林
(72)【発明者】
【氏名】戚 聿新
(72)【発明者】
【氏名】徐 欣
(72)【発明者】
【氏名】劉 月盛
【テーマコード(参考)】
4C086
4H039
4H048
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086DA43
4C086GA16
4C086NA20
4C086ZA82
4C086ZC20
4H039CA71
4H039CA91
4H039CF30
4H039CF40
4H039CG10
4H048AA02
4H048AC90
4H048BB25
4H048BC10
4H048VA20
4H048VA22
4H048VA30
4H048VA42
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】
バボルバクタムの簡便な調製方法を提供する。S-3-ヒドロキシ-6-オキソヘキサノエートを出発物質として使用し、ヒドロキシル基の保護、イミド化、ボランまたはホウ酸塩化合物に対する不斉付加、アミノ基の保護基の脱保護、アミド化、環化、加水分解などの反応を経てバボルバクタム(I)を調製して得る。 本発明に用いられる原材料は安価で入手容易で、コストが低い。本発明の反応経路は安全で操作性がよく、過酷な反応条件が要らず、反応プロセスは環境に優しく、工業的生産に適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II化合物をヒドロキシ保護基の試薬と反応させて、式III化合物を調製する工程(1)と、
【化1】
(式II化合物および式III化合物の構造式において、Rはメチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルであり、式III化合物の構造式において、保護基PGは、トリメチルシリル(TMS)、ジメチルtert-ブチルシリル(TBDMS)、ベンジル(Bn)、メタンスルホニル(Ms)、p-トルエンスルホニル(Ts)、トリフルオロアセチル(TFA))またはアセチル(Ac)である。)
式III化合物およびアミン化合物をイミド化反応させて、式IV化合物を調製する工程(2)と、
【化2】
(化合物IVの構造式において、R3はヒドロキシ基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、2−チオフェンアセチル基またはアルキルスルフィニル基であり、R、PGの意味は、化合物IIIの構造式におけるR、PGと同じ意味である。)
式IV化合物をボランまたはホウ酸塩化合物と反応させて式V化合物を調製する工程(3)と、
【化3】
(式V化合物の構造式において、nは0、1、2または3である;nが0である場合、R1、R2はアルキル基またはアリール基である;nが1、2、または3の場合、R1、R2は炭素数1〜4のアルキル基である; R1とR2は同じまたは異なる。R、PG、R3の意味は、式IV化合物の構造式におけるR、PG、およびR3と同じ意味である。)
式Vの化合物を脱保護反応によりアミノ保護基を除去し、式VI化合物を調製する工程(4)と、
【化4】
(式VI化合物の構造式において、R1、R2、n、R、およびPGの意味は、化合物Vの構造式におけるR1、R2、n、R、およびPGと同じ意味である。)
式VI化合物のとアミド化試薬とをアミド化反応させて式VII化合物を調製する工程(5)と、
【化5】
(式VII化合物の構造式において、R1、R2、n、R、およびPGの意味は、化合物Vの構造式におけるR1、R2、n、R、およびPGと同じ意味である。)
式VII化合物を環化および加水分解することによってバボルバクタム(I)を調製して得るという工程(6)とを含む
ことを特徴とするバボルバクタムの調製方法。
【請求項2】
前記工程(1)において、式II化合物とヒドロキシ保護基試薬との間の反応は、塩基の存在下に溶媒A中で行われるという条件(a)と、
前記工程(2)において、式III化合物とアミン化合物とのイミド化反応は、触媒Cの作用下で溶媒B中で行われるという条件(b)と、
前記工程(3)において、式IV化合物とボランまたはホウ酸塩化合物との間の反応は、触媒Eおよび配位子の存在下に溶媒D中で行われるという条件(c)と、
前記工程(4)において、式Vの化合物の脱保護反応は、脱保護試薬の存在下に溶媒F中で実施されるという条件(d)と、
前記工程(5)において、式VIの化合物とアミド化試薬との間のアミド化反応は、塩基Hの作用下で溶媒G中で行われるという条件(e)と、
前記工程(6)において、式VIIの化合物の環化および加水分解反応は、酸の存在下に溶媒Jの中で行われるという条件(f)と、のいずれか一項又は複数項を含む
請求項1に記載のバボルバクタムの調製方法。
【請求項3】
工程(1)において、前記溶媒Aは非アルコール溶媒であり、より好ましくは酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶媒からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Aと式II化合物の質量比が(4〜20):1であるという条件(i)と、
前記塩基は有機塩基または無機塩基である;有機塩基は好ましくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾールからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;無機塩基は好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムより選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記塩基と式II化合物とのモル比が(1.0〜2.0):1であるという条件(ii)と、
前記ヒドロキシ保護基試薬はトリメチルクロロシラン、トリメチルシリルヨージド、ジメチルtert-ブチルクロロシラン、ジメチルtert-ブチルヨージドシラン、メタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、塩化ベンジル、臭化ベンジル、トリフルオロ酢酸または無水酢酸である;前記ヒドロキシル保護基試薬と式II化合物とのモル比が(1.0〜2.0):1であるという条件(iii)と、
前記式II化合物とヒドロキシ保護基試薬との反応温度は0〜60℃であり、好ましくは20〜40℃であるという条件(iv)と、のいずれか一項又は複数項を含む
請求項2に記載のバボルバクタムの調製方法。
【請求項4】
工程(2)において、前記溶媒Bはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶媒からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Bと式III化合物との質量比は(1〜20):1であるという条件(i)と、
前記触媒Cは酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ピリジンp-トルエンスルホン酸、硫酸銅、酢酸銅、塩化銅、塩化第一銅、塩化第二鉄からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである; 前記触媒Cと式III化合物とのモル比は1〜3:1であるという条件(ii)と、
前記アミン化合物はヒドロキシルアミン、ベンズアミド、フェニルアセトアミド、チオフェネアセトアミドまたはアルキルスルフィンアミドである;前記アミン化合物と式III化合物とのモル比が(1.0-2.0):1 であるという条件(iii)と、
前記イミド化反応温度は、-10〜100℃であり、さらに好ましくは0〜70℃であり、よりさらに好ましくは30〜50℃であるという条件(iv)と、のいずれか一項又は複数項を含む
請求項2に記載のバボルバクタムの調製方法。
【請求項5】
工程(3)において、前記溶媒Dはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、水、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Dと式IV化合物との質量比は(2〜20):1であるという条件(i)と、
前記触媒Eは硫酸銅、塩化銅、塩化第一銅、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(トリフェニルホスフィン)塩化ロジウム、グラブス触媒、イリジウム/アルミナ、(1,5-シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスファートである;前記触媒Eのモル数は、式IV化合物のモル数の1.0〜10.0%であるという条件(ii)と、
前記配位子は窒素配位子またはリン配位子より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;好ましくは、前記配位子は窒素配位子とリン配位子の組み合わせである;好ましくは、前記窒素配位子は置換イミダゾールまたはベンジルアミンであり、前記リン配位子はトリフェニルホスフィンまたはトリフェニルホスフィンオキシドであり、前記配位子のモル数は、式IVの化合物のモル数の1.0〜10.0%であるという条件(iii)と、
前記ボランはジアルコキシボランまたはピナコールボランである;前記ホウ酸塩化合物はトリアルキルホウ酸塩またはビホウ酸塩である;前記ボランまたはホウ酸塩化合物と式IV化合物とのモル比は1.0〜2.0:1であるという条件(iv)と、
式IVの化合物とボランまたはホウ酸塩化合物との反応温度は20〜120℃であり、さらに好ましくは20〜40℃であるという条件(v)と、のいずれか一項又は複数項を含む
請求項2に記載バボルバクタムの調製方法。
【請求項6】
工程(4)において、前記溶媒Fはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、水、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶媒からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Fと式V化合物の質量比は1〜20:1であるという条件(i)と、
前記脱保護反応試薬は酸または塩基である;前記酸は塩化水素、硫酸、またはリン酸であり、前記酸中の水素イオン濃度は3〜8 mol / Lである。前記塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムである;前記脱保護試薬と式V化合物とのモル比は3〜7:1であるという条件(ii)と、
前記脱保護反応温度は-10〜100℃である;好ましくは、前記脱保護反応温度は-5〜30℃であるという条件(iii)と、のいずれか一項又は複数項を含む
請求項2に記載バボルバクタムの調製方法。
【請求項7】
工程(5)において、前記溶媒Gはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,4-ジオキサン、1,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶媒からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Gと式VI化合物との質量比は4〜20:1であるという条件(i)と、
前記アミド化試薬は、2-チオフェンアセチルクロリドまたは2-チオフェン酢酸であり、アミド化試薬と式VIの化合物のモル比は1-2.0:1である;
好ましくは、アミド化試薬が2−チオフェン酢酸である場合、脱水縮合剤が必要である;前記脱水縮合剤はN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド (DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記脱水縮合剤と式VI化合物とのモル比が1.0〜3.0:1である。いう条件(ii)と、
前記塩基Hは有機塩基または無機塩基である;前記有機塩基はトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、モルホリンまたはN-メチルモルホリンである;前記無機塩基は炭酸カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムより選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記塩基Hと式VI化合物とのモル比が(1.0〜3.0):1であるという条件(iii)と、
前記アミド化反応の温度は0〜120℃である;好ましくは、前記アミド化反応の温度は15〜80℃であるという条件(iv)と、のいずれか一項又は複数項を含む
請求項2に記載バボルバクタムの調製方法。
【請求項8】
工程(6)において、前記溶媒Jはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶媒からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Jと式VII化合物の質量比は4〜20:1であるという条件(i)と、
前記酸は、塩酸、硫酸、ホウ酸、またはトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記酸と式VII化合物とのモル比が5〜7:1であるという条件(ii)と、
前記環化、加水分解反応温度は10〜100℃であり、好ましくは、前記環化、加水分解反応温度は70〜95℃であるという条件(iii)と、のいずれか一項又は複数項を含む
請求項2に記載バボルバクタムの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バボルバクタムの簡便な調製方法に関し、医薬生化学の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
バボルバクタム(I,Vaborbactam)は、環状ボロン酸のファーマコフォアに基づく新規の非β-ラクタムβ-ラクタマーゼ阻害剤であり、A型およびC型β-ラクタマーゼ広域スペクトル阻害剤である。 開発者はThe Medicines Companyと米国保健福祉省であり、創薬研究会社はRempex Pharmaceuticalsである。
2017年8月、メロペネムとバボルバクタムの組み合わせ(Vabomere)は米食品医薬品局(FDA)に承認されて、敏感なエンテロバクターによって引き起こされる腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症(cUTI)の成人患者への臨床使用が開始された。
バボルバクタム(I)のCAS番号は1360457-46-0で、化学名は(3R、6S)−2−ヒドロキシ−3 - [[2−(2−チエニル)アセチル]アミノ] −1,2−オキサボリナン−6酢酸であり、構造式が下記に示される。
【0003】
【化1】
【0004】
先行技術において、技術文献1と特許文献1には、ともに3-ヒドロキシペント-4-エン酸TERT-ブチルを使用してボルバクタム(I)を調製することが記載されている。具体的には、イミダゾールの作用下で、3-ヒドロキシペント-4-エン酸TERT-ブチルとジメチルtert-ブチルクロロシランを反応させ、ヒドロキシ基保護されたペンタン酸ブチルを得る。次に、金属イリジウムを触媒として、ピナコールボランと反応させて、末端にホウ素を付加した中間体4を得る。この中間体4を(1S、2S、3R、5S)-(+)-2,3-ピナンジオールと反応させて中間体5を得る。次に、n-ブチルリチウムを利用して-95°Cの低温でジクロロメタンと反応させ、キラル炭素鎖を増加させる中間体6を得る。中間体6に-78°Cの低温でリチウムビストリメチルシリルアミドを滴下した後、室温で16時間反応させて、その後、0°Cで、カルボキシル活性化因子EDCIおよびHOBtの作用下で2-チオフェン酢酸と縮合させて中間体7を得る。中間体7を3N塩酸を利用して環化反応し、加水分解して、目的物Iを得られ、反応経路1に示される。
【0005】
【化2】
【0006】
上記の反応経路1は使用される原料が高価で入手難しく、反応条件が厳しくて、反応経路のなかの2つの反応は温度が非常に低く、リチウム試薬が必要であるため、安全性と操作性が悪く、工業的生産に不利である。
【0007】
特許文献2では、反応経路1に類似している調製方法が記載されている。が、当該方法の違う点はまずホウ酸ピナコールを加水分解して、次にアミノエタノールを使いてスピロ化合物を生成させて、その化合物を(1S、2S、3R、 5S)-(+)-2,3-ピナンジオールと反応させることにある。その後の反応は同じで、最後に1N希硫酸とホウ酸で環化と加水分解して目的物Iを得て、反応経路2に示される。
【0008】
【化3】
【0009】
上記の反応経路2は相変わらず欠点を回避できていない。使用される原料が高価で入手難しく、反応条件が厳しくて、反応経路の中の2つの反応は温度が非常に低く、リチウム試薬が必要であり、安全性と操作性が悪く、現場化に不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】CN103180328A
【特許文献2】US20170057979
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journalof Medicinal Chemistry、2015、58,3682-3692
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、先行技術の欠点を考慮して、(3R、6S)−2−ヒドロキシ−3 - [[2−(2−チエニル)アセチル]アミノ] −1,2−オキサボリナン−6酢酸、すなわちバボルバクタムの簡便な調製法を提供することにある。
本発明は用いられる原材料が安価で入手容易であり、コストが低く、反応経路が安全的で操作性がよく、過酷な反応条件が要らず、反応過程が環境に優しく、工業的生産に適している。
【0013】
本明細書で用いられる「式II化合物」はS-3-ヒドロキシ-6-オキソヘキサノエートをさす;
本明細書で用いられる「式III化合物」はS-3-保護基オキシ-6-オキソヘキサノエートを指し、構造式においてPGが保護基である;
本明細書で用いられる「式IV化合物」はS-3-保護基オキシ-6-(N-置換イミノ)カプロエートを指す;
本明細書で用いられる「式V化合物」は(3S、6R)-3-保護基オキシ-6-(N-置換アミノ)-6-ホウ酸ヘキサノエートを指す;
本明細書で用いられる「式VI化合物」は(3S、6R)-3-保護基オキシ-6-アミノ-6-ホウ酸ヘキサノエートを指す;
本明細書で用いられる「式VII化合物」は(3S、6R)-3-保護基オキシ-6-ホウ酸塩-6- [2-(2-チオフェン)アセトアミド]ヘキサノエートを指す。
【0014】
本明細書で用いられる化合物の番号は、構造式の番号と完全に一致しており、いずれも同じ化合物を指す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願に係る発明は以下のとおりである。
工程(1)〜工程(6)を含むバボルバクタムの調製法である。
【0016】
式II化合物をヒドロキシ保護基の試薬と反応させて、式III化合物を調製する工程(1)と、
【0017】
【化4】
【0018】
そのなか、式II化合物および式III化合物の構造式において、Rはメチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルであり、式III化合物の構造式において、保護基PGは、トリメチルシリル(TMS)、ジメチルtert-ブチルシリル(TBDMS)、ベンジル(Bn)、メタンスルホニル(Ms)、p-トルエンスルホニル(Ts)、トリフルオロアセチル(TFA))またはアセチル(Ac)である。
【0019】
式III化合物およびアミン化合物をイミド化反応させて、式IV化合物を調製する工程(2)と、
【0020】
【化5】
【0021】
そのなか、式IV化合物の構造式において、R3は、ヒドロキシ基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、2-チオフェンアセチル基またはアルキルスルフィニル基であり、RおよびPGの意味は、式III化合物の構造式におけるR、PGと同じ意味である。
【0022】
式IV化合物をボランまたはホウ酸塩化合物と反応させて式V化合物を調製する工程(3)と、
【0023】
【化6】
【0024】
そのなか、式V化合物の構造式において、nは0、1、2または3である;nが0である場合、R1、R2はアルキル基またはアリール基であり、好ましくは、R1、R2は、フェニル基、メチルフェニル基、クロロフェニル基または炭素数1〜4のアルキル基である;nが1、2、または3の場合、R1、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくは、R1、R2は、エチレン基(−CH2CH2−)または置換エチレン基である。R1とR2は同じまたは異なる。R、PG、R3の意味は、式IV化合物の構造式におけるR、PG、R3と同じ意味である。
【0025】
式Vの化合物を脱保護反応によりアミノ保護基を除去し、式VI化合物を調製する工程(4)と、
【0026】
【化7】
【0027】
そのなか、式VI化合物の構造式において、R1、R2、n、R、およびPGの意味は、化合物Vの構造式におけるR1、R2、n、R、およびPGと同じ意味である。
式VI化合物のとアミド化試薬とをアミド化反応させて式VII化合物を調製する工程(5)と、
【0028】
【化8】
【0029】
そのなか、式VII化合物の構造式において、R1、R2、n、R、およびPGの意味は、化合物Vのの構造式におけるR1、R2、n、R、およびPGと同じ意味である。
【0030】
式VII化合物を環化および加水分解することによってバボルバクタム(I)を調製して得るという工程(6)を含むバボルバクタムの調製方法。
【0031】
本発明において、工程(1)における式II化合物は市販され得るか、または先行技術に従って調製され得る。
【0032】
本発明において、好ましくは、工程(1)における式II化合物とヒドロキシ保護基試薬との間の反応は、塩基の存在下に溶媒Aの中で行われる。
【0033】
本発明において、好ましくは、工程(1)における前記溶媒Aは、非アルコール溶媒であり、さらに好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶媒からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Aと式II化合物の質量比が(4〜20):1である;好ましくは、前記溶媒Aと式II化合物の質量比が(5〜10):1である。
【0034】
本発明において、好ましくは、工程(1)における前記塩基は有機塩基または無機塩基であり、有機塩基はさらに好ましくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたはイミダゾールであり、無機塩基はさらに好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記塩基と式II化合物とのモル比が(1.0〜2.0):1である;さらに好ましくは、前記塩基と式II化合物とのモル比が(1.1〜1.5):1である。
【0035】
本発明において、好ましくは、工程(1)における前記ヒドロキシ保護基試薬は、トリメチルクロロシラン、トリメチルヨードシラン、ジメチルtert−ブチルクロロシラン、ジメチルtert−ブチルヨードシラン、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、塩化ベンジル、臭化ベンジル、トリフルオロ酢酸または無水酢酸である;前記ヒドロキシ保護基試薬と式II化合物とのモル比が(1.0〜2.0):1である;さらに好ましくは、ヒドロキシ保護基試薬と式II化合物とのモル比が(1.1〜1.5):1である。
【0036】
本発明において、好ましくは、工程(1)における前記式II化合物とヒドロキシ保護基試薬との反応温度は0〜60℃であり、さらに好ましくは20〜40℃である;式II化合物とヒドロキシ保護基試薬との反応時間は1〜7時間であり、さらに好ましくは2〜5時間である。
【0037】
本発明において、好ましくは、工程(2)における式III化合物とアミン化合物とのイミド化反応は、触媒Cの作用下に溶媒B中で行われる。
【0038】
本発明において、好ましくは、工程(2)における前記溶媒Bは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、ハロゲン化炭化水素溶媒またはベンゼン溶媒からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Bと式III化合物との質量比が(1〜20):1である;さらに好ましくは、前記溶媒Bと式III化合物との質量比が(2〜10):1である。
【0039】
本発明において、好ましくは、工程(2)における前記触媒Cは、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ピリジンp-トルエンスルホン酸、硫酸銅、酢酸銅、塩化銅、塩化第一銅または塩化第二鉄からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記触媒Cと式III化合物とのモル比が1〜3:1である。
【0040】
本発明において、好ましくは、工程(2)における前記アミン化合物は、ヒドロキシルアミン、ベンズアミド、フェニルアセトアミド、チオフェンアセトアミドまたはアルキルスルホンアミドである;前記アミン化合物と式III化合物のモル比が(1.0〜2.0):1である。
【0041】
本発明において、好ましくは、工程(2)における前記イミド化反応温度は、−10〜100℃であり、さらに好ましくは0〜70℃で、よりさらに好ましくは30〜50℃である。
【0042】
本発明において、好ましくは、工程(3)における式IV化合物とボランまたはホウ酸塩化合物との間の反応は、触媒Eおよび配位子の存在下に溶媒D中で実施される。
【0043】
本発明において、好ましくは、工程(3)における前記溶媒Dは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、水、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Dと式IV化合物との質量比が(2〜20):1である。さらに好ましくは、前記溶媒Dと式IV化合物との質量比が、(2〜10):1である。
【0044】
本発明において、好ましくは、工程(3)における前記触媒Eは、硫酸銅、塩化銅、塩化第一銅、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(トリフェニルホスフィン)塩化ロジウム、グラブス触媒、イリジウム/アルミナ、(1,5-シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスファートである;前記触媒Eのモル数は化合物のモル数の1.0〜10.0%である。さらに好ましくは、前記触媒Eのモル数は式IV化合物のモル数の1.0〜5.0%である。
【0045】
本発明において、好ましくは、工程(3)における前記配位子は、窒素配位子とリン配位子より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;さらに好ましくは、前記配位子は、窒素配位子とリン配位子の組み合わせである;さらに好ましくは、前記窒素配位子は、置換イミダゾールまたはベンジルアミンであり、前記リン配位子は、トリフェニルホスフィン、またはトリフェニルホスフィンオキシドである;前記配位子のモル数は式IV化合物のモル数の1.0〜10.0%である;さらに好ましくは、前記配位子のモル数は式IV化合物のモル数の1.0〜7.0%である。
【0046】
本発明において、好ましくは、工程(3)における前記ボランはジアルコキシボランまたはピナコールボランである;前記ホウ酸塩化合物はトリアルキルホウ酸塩または二ホウ酸塩である。前記ボランまたはホウ酸塩化合物と式IV化合物とのモル比は1.0〜2.0:1である。
【0047】
本発明において、好ましくは、工程(3)における式IV化合物とボランまたはホウ酸塩化合物との反応温度は20〜120℃であり、さらに好ましくは20〜40℃である。
【0048】
本発明において、好ましくは、工程(4)における式V化合物の脱保護反応は、脱保護試薬の存在下に溶媒F中で実施される。
【0049】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記溶媒Fは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、水、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Fと式V化合物との質量比が1〜20:1である。
【0050】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記脱保護試薬は酸または塩基である;前記酸は塩化水素、硫酸またはリン酸であり、前記酸中の水素イオン濃度は3〜8 mol / Lである。前記塩基は水水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムである;前記脱保護試薬と式V化合物とのモル比が3〜7:1である。
【0051】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記脱保護反応温度は−10〜100℃である。さらに好ましくは、前記脱保護反応温度は−5〜30℃である。
【0052】
本発明において、好ましくは、工程(5)における式VI化合物とアミド化試薬とのアミド化反応は塩基Hの作用下も溶媒G中で行われる。
【0053】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記溶媒Gはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,4-ジオキサン、1,4-ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert-ブチルエーテル、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶媒からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Gと式VI化合物との質量比が4〜20:1である;さらに好ましくは、前記溶媒Gと式VI化合物との質量比が4〜10:1である。
【0054】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記アミド化試薬は2-チオフェンアセチルクロリドまたは2-チオフェン酢酸である;前記アミド化試薬と式VI化合物とのモル比が1.0〜2.0:1である。
【0055】
本発明において、さらに好ましくは、工程(5)における前記アミド化試薬が2−チオフェン酢酸である場合、脱水縮合剤が必要である;前記脱水縮合剤はN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド (DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記脱水縮合剤と式VI化合物とのモル比が1.0〜3.0:1である。
【0056】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記塩基Hは有機塩基または無機塩基である;前記有機塩基はトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、モルホリンまたはN−メチルモルホリンである;前記無機塩基は炭酸カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムより選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記塩基Hと式VI化合物とのモル比が(1.0〜3.0):1である。
【0057】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記アミド化反応の温度は0〜120℃である;さらに好ましくは、前記アミド化反応の温度は15〜80℃である。
【0058】
本発明において、好ましくは、工程(6)における式VII化合物の環化および加水分解反応は、酸の存在下に溶媒J中で行われる。
【0059】
本発明において、好ましくは、工程(6)における前記溶媒Jは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メトキシシクロペンタン、メチルtert−ブチルエーテル、ハロゲン化炭化水素溶媒、ベンゼン溶剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒Jと式VII化合物との質量比が4〜20:1である;好ましくは、前記溶媒Gと式VI化合物との質量比が2〜10:1である。
【0060】
本発明において、好ましくは、工程(6)における前記酸は、塩酸、硫酸、ホウ酸、またはトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記酸と式VII化合物とのモル比が5〜7:1である。
【0061】
本発明において、好ましくは、工程(6)における前記環化および加水分解反応温度は10〜100℃である;さらに好ましくは、前記環化、加水分解反応温度は70〜95℃である;前記環化、加水分解の反応時間は1〜10時間である。
【0062】
本発明の反応過程は、反応経路3に示される。
【0063】
【化9】
【0064】
そのなか、Rはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、セク−ブチルまたはtert−ブチルであり;PGは、トリメチルシリル(TMS)、ジメチルtert-ブチルシリル(TBDMS)、ベンジル(Bn)、メタンスルホニル(Ms)、p-トルエンスルホニル(Ts)、トリフルオロアセチル(TFA)、またはアセチル(Ac)である;nは0、1、2、または3である;nが0の場合、R1とR2はアルキル基またはアリール基である;nが1、2、または3の場合、R1およびR2は1〜4個の炭素原子を持つアルキル基である;R1とR2は同じまたは異なる;R3は、ヒドロキシル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、2-チオフェンアセチル基、またはアルキルスルフィニル基である。
【発明の効果】
【0065】
1、本発明は原料が安価で入手容易であり、3-ヒドロキシペント-4-エン酸TERT-ブチル等の原料を使用わず、コストが低い。本発明における化学反応はいずれも代表的で、過酷な低温条件を回避していることで容易に実現できるし、エネルギー消費を削減できる。本発明はリチウム試薬の使用を回避して、安全で操作が簡単である。反応過程が環境に優しく、バボルバクタムのエコな工業的生産の実現に有利である。
2、本発明の各工程における化学反応はいずれも代表的で、各工程における化学反応は本発明の過酷ではない条件下でいずれも高収率を達成することができ、各工程による反応生成物の純度および収率が比較的高くて、工業的生産に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明を詳しく説明するが、なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例に用いられた原料および試薬はいずれも市販品であり、そのなか、S-3-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン酸(II)の光学純度は99.6%である。
【0068】
特に断らない限り、実施例で記載されている「%」は、いずれも質量百分率を意味するものとする;記載されている収率はいずれもモル収率である。
【0069】
ガスガスクロマトグラフまたは液体クロマトグラフを使用して反応過程と製品の純度をモニターし、キラルカラム(ES-OVS、150mm×4.6mm、アジレント(Agilent)を装備された液体クロマトグラフを使用して光学純度(面積比%)を測定し、収率と純度のee値を算出する。
【0070】
<実施例1:tert-ブチルS-3-トリメチルシリルオキシ-6-オキソヘキサノエート(III1)の調製>
窒素雰囲気下で、撹拌および温度計を装備された250mlの4つ口フラスコに120gのジクロロメタン、20.2 g(0.1モル)tert-ブチルS-3-ヒドロキシ-6-オキソヘキサノエート(II1)、12.1 g(0.12モル)トリエチルアミンを入れて、内部温度15〜20°Cでトリメチルクロロシラン13.1g(0.12 mol)とジクロロメタン20 gの溶液を30分間をかけて点滴する。その後、反応物を20〜25℃で3時間撹拌する。反応溶液を50gの水に加え、有機層と水層に分離し、水層を毎回30gのジクロロメタンで2回抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で2回、毎回20g洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、26.0gのtert-ブチルS-3-トリメチルシリルオキシ-6-オキソヘキサノエート(III1)が得られ、液相の純度は99.9%であり、収率は94.9%であった。
【0071】
【化10】
【0072】
<実施例2:S-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-オキソヘキサノエートtert-ブチルエステル(III2)の調製>
窒素雰囲気下で、撹拌および温度計を装備された250mlの4つ口フラスコに120gのジクロロメタン、20.2 g(0.1モル)tert-ブチルS-3-ヒドロキシ-6-オキソヘキサノエート(II1)、8.2 g(0.12モル)のイミダゾールを加えて、15〜20℃の内部温度で16.6g(0.11mol)のジメチルtert-ブチルクロロシランと30gのジクロロメタンの溶液を30分間かけて点滴する。その後、反応物を20〜25℃で4時間撹拌する。得られた反応液を50gの水に加え、有機層と水層に分離し、水層を毎回30gのジクロロメタンで2回抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で2回、毎回20g洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、30.4gのS-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-オキソヘキサノエートtert-ブチルエステル(III2)が得られ、液相の純度は99.9%であり、収率は96.0%であった。
【0073】
【化11】
【0074】
<実施例3:S-3-トリメチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)イミノ)tert-ブチルヘキサノエート(IV1)の調製>
窒素雰囲気下で、撹拌、温度計、および還流装置を装備された250mlの4つ口フラスコに120gのジクロロメタン、実施例1の方法で得られた27.4g(0.1モル)のtert-ブチルS-3-トリメチルシリルオキシ-6-オキソヘキサノエート(III1)、2.5 g(0.01モル)のピリジンp-トルエンスルホン酸塩、31.9g(0.2モル)の硫酸銅、13.3 g(0.11モル)R-tert-ブチルスルフィンアミドを加えて40〜45°Cまで温めて還流させ、40〜45℃でHPLCで反応完了が判明されたまで撹拌する。ろ過して不溶性物質を除去し、減圧蒸留によりジクロロメタンを回収し、残留物をカラムクロマトグラフィーの分離・精製し(PE / EA = 10:1)、あるいは蒸留をした後、36.0gのS-3-トリメチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)イミノ)tert-ブチルヘキサノエート(IV1)が得られる。液相の純度は99.9%で、収率は95.3%であった。
【0075】
【化12】
【0076】
<実施例4:S-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)イミノ)tert-ブチルカプロエート(IV2)の調製>
窒素雰囲気下で、攪拌、温度計、還流装置を装備された250mlの4つ口フラスコに120gのジクロロメタン、31.7g(0.1モル)の実施例2の方法で調製たたS-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-オキソヘキサノエートtert-ブチルエステル(III2)、2.5 g(0.01モル)のピリジンp-トルエンスルホン酸塩、31.9g(0.2モル)の硫酸銅、13.3 g(0.11モル)R-tert-ブチルスルフィンアミドを加えて、40〜45°Cまで温め、還流させ、40〜45℃でHPLCで反応完了が判明されたまで撹拌する。ろ過して不溶性物質を除去し、減圧蒸留によりジクロロメタンを回収し、残留物をカラムクロマトグラフィーの分離・精製し(PE / EA = 10:1)、あるいは蒸留をした後、40.7gのS-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)イミノ)tert-ブチルカプロエート(IV2)を得られる。液相の純度は99.9%、収率は97.0%であった。
【0077】
【化13】
【0078】
<実施例5:(3S、6R)-3-トリメチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-6-(4,4,5,5-テトラメチルY1,3,2-ジオキサボロラン-2 -イル)tert-ブチルヘキサノエート(V1)の調製>
攪拌、温度計を装備された250mlの4つ口フラスコに、100gのトルエン、20gの水、0.2 g(1.2 mmol)の硫酸銅、0.37 g(1.2 mmol)のトリフェニルホスフィンオキシド、0.54 g(5 mmol)ベンジルアミンを加えてかき混ぜる。その後、実施例3の方法で調製された37.7 g(0.1 mol)のS-3-トリメチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)イミノ)tert-ブチルヘキサノエート(IV1)、30.5 g(0.12 mol)ピナコールジボレートを加えて、室温でHPLCで反応完了が判明されるまで撹拌する。その後、上記溶液に酢酸エチル50gを加えて、ろ過後、減圧蒸留・濃縮する。残留物をカラムクロマトグラフィーの分離・精製し(EA / DCM = 10:90)、あるいは蒸留をした後、39.2gの(3S、6R)-3-トリメチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-6-(4,4,5,5-テトラメチルY1,3,2-ジオキサボロラン-2 -イル)tert-ブチルヘキサノエート(V1)が得られる。液相の純度は98.6%、収率は77.6%であった。
【0079】
【化14】
【0080】
<実施例6:(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)tert-ブチルヘキサノエート(V2)の調製>
攪拌、温度計を装備された250mlのフラスコに、100gのトルエン、20gの水、0.2 g(1.2 mmol)の硫酸銅、0.37 g(1.2 mmol)のトリフェニルホスフィンオキシド、0.54 g(5 mmol)のベンジルアミンを加えてかき混ぜる。その後、実施例4の方法で調製した42.0g(0.1モル)のS-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)イミノ)tert-ブチルカプロエート(IV2)、30.5 g(0.12 mol)ピナコールジボレートを加えて、室温でHPLCで反応完了が判明されるまで撹拌する。その後、上記溶液に50gの酢酸エチルを加えて、ろ過後、減圧蒸留・濃縮する。残留物をカラムクロマトグラフィーの分離・精製し(EA / DCM = 10:90)、あるいは蒸留をした後、44.7gの(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)tert-ブチルヘキサノエート(V2)を得られる。液相の純度は98.4%、収率は81.6%であった。
【0081】
【化15】
【0082】
<実施例7:(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-アミノ-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソールAlk-2-yl)カプロエートtert-ブチル塩酸塩(VI)の調製>
攪拌、温度計を装備された250mlの反応フラスコに20%塩化水素メタノール溶液100 gを加え、温度を0℃に下げる。 実施例6の方法で調製した54.8g(0.1モル)の(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)tert-ブチルヘキサノエート(V2)を加え、0度でHPLCで反応完了が判明されるまで撹拌する。減圧蒸留・濃縮する。47.3gの(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-アミノ-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソールAlk-2-yl)カプロエートtert-ブチル塩酸塩を得られる。液相の純度は99.2%、収率は98.6%であった。
【0083】
【化16】
【0084】
<実施例8:(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6- [2-(2-チオフェン)アセトアミド] -6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ヘキサン酸tert-ブチルエステル(VII)の調製>
撹拌および温度計を備えた250mlの反応フラスコに、100gのテトラヒドロフラン、実施例7の方法で調製した24.0g(0.05モル)の(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-アミノ-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソールAlk-2-yl)カプロエートtert-ブチル塩酸塩(VI)、9.6g(0.06 mol)の2-チオフェン塩化アセチル、11.1 g( 0.11 mol)のトリエチルアミンを加えて、室温でHPLCで反応完了が判明されるまで攪拌する。 80gの水を加え、30分間かき混ぜる。 100gの酢酸エチルを加え、分液漏斗に移し、放置して液体分離させる。 有機相を水で2回、毎回30g洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。 硫酸ナトリウムを濾別した後、濾液を減圧下に蒸留して溶媒を除去し、淡黄色の粗生成物を得る。 メチルtert-ブチルエーテルとn-ヘキサンで再結晶させて、21.7gの白色固体の(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6- [2-(2-チオフェン)アセトアミド] -6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ヘキサン酸tert-ブチルエステル(VII)を得られ、液相純度は99.3%、収率は76.4%であった。
【0085】
【化17】
【0086】
<実施例9:(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6- [2-(2-チオフェン)アセトアミド] -6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ヘキサン酸tert-ブチルエステル(VII)の調製>
窒素雰囲気下で、攪拌、温度計を装備された250mlの反応フラスコに100 gのジクロロメタン、8.5 g(0.06 mol)のチオフェン酢酸、14.8 g(0.075 mol)のEDC-HCl(EDCI)、8.1 g(0.06 mol)1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を加え、温度を0°Cに下げ、攪拌する。 24.0 g(0.05 mol)の実施例7の方法で調製した(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-アミノ-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソールAlk-2-yl)カプロエートtert-ブチル塩酸塩(VI)を60gのジクロロメタンに溶解して上記溶液に加え、11.1g(0.11mol)のN-メチルモルホリンを加える。その後、温度を室温に上げ、HPLCで反応完了が判明されるまで撹拌する。 80gの水を加え、分液漏斗に移し、放置して液体分離させてから、30gの水で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥させる。減圧蒸留濃縮後得られた残渣をメチルtert-ブチルエーテルとn-ヘキサンで再結させ、白色固体の(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6- [2-(2-チオフェン)アセトアミド] -6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ヘキサン酸tert-ブチルエステル(VII)を得、液相の純度は99.4%、収率は82.1%であった。
【0087】
【化18】
【0088】
<実施例10:バボルバクタム(I)の調製>
攪拌、温度計を装備された250mlの反応フラスコに80gの1,4-ジオキサンと28.4g(0.05モル)の実施例9の方法で調製した(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6- [2-(2-チオフェン)アセトアミド] -6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ヘキサン酸tert-ブチルエステル(VII)を加えて、撹拌する。100mLの3mol / L希塩酸を加え、混合物を90-95°Cに加熱し、還流して2時間撹拌する。 室温まで冷却し、100gの水と150gのメチルtert-ブチルエーテルを加え、分液漏斗に移し、放置して液体分離させる。水相を減圧下での蒸留により濃縮して得られた残渣にアセトニトリルを加え、毎回80gのアセトニトリルを用いて減圧蒸留を3回行う。その後、得られた残渣を20%1,4-ジオキサン/水溶液に溶解し、凍結乾燥して14.3gの白色粉末を得る。得られた白色粉末に酢酸エチル200gと水60gを加え、室温で1時間撹拌した後、静置すると、白色の沈殿物が形成される。吸引ろ過して、フィルターケーキを酢酸エチルで2回、毎回15g洗浄する。真空乾燥後、10.5gの白色固体である製品Iが得られ、液相純度は99.6%、収率は71.0%であった。
【0089】
【化19】
【0090】
得られた生成物のNMRデータは1H NMR(CD3OD)ppm:δ7.35(dd、1H)、7.05(dd、1H)、7.0(dd、1H)、4.15〜4.05(m、1H)、3.98(s、2H)、2.61(br d、 1H)、2.37(dd、1H)、2.24(dd、1H)、1.74(br d、1H)、1.66-1.52(m、2H)、1.03(br q、1H)である。
【0091】
<比較例1>
(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)tert-ブチルヘキサノエート(V2)の調製方法であり、以下のとおり。
撹拌、温度計を装備された250mlの反応フラスコに、10gのトルエン、2gの水、0.02g(0.12ミリモル)の硫酸銅、0.037g(0.12ミリモル)のトリフェニルホスフィンオキシドを加え、撹拌する。 実施例4の方法で調製した4.2g(10ミリモル)のS-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)イミノ)tert-ブチルカプロエート(IV2)、 3.1g(12ミリモル)のピナコールジボロン酸を加えて室温で撹拌して反応させる。反応をHPLCで2日間追跡すると、わずか5%未満の原材料IV2が変換された。さらに100°Cまで温めて反応させ引き続きHPLCで2日間追跡すると、原材料IV2変換率が10%未満だった。
【0092】
比較例1から分かるように、イミンに対する付加反応において、ベンジルアミンの存在が非常に重要であり、ベンジルアミンの欠如が反応時間と温度に大きく影響を与えて、結局に目的生成物をほとんど得られない。
【0093】
<比較例2>
(3S、6R)-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)アミノ)-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)tert-ブチルヘキサノエート(V2)の調製方法であり、以下のとおり。
撹拌、温度計を装備された250mlの反応フラスコに、10gのトルエン、2gの水、0.037 g(0.12 mmol)のトリフェニルホスフィンオキシド、0.054 g(0.5 mmol)のベンジルアミンを加えて攪拌する。実施例4の方法で調製した4.2g(10ミリモル)のS-3-ジメチルtert-ブチルシリルオキシ-6-(N-(R-1-tert-ブチルスルフィニル)イミノ)tert-ブチルカプロエート(IV2)、 3.1g(12ミリモル)のピナコールジボロン酸を加えて室温で撹拌して反応させる。反応をHPLCで2日間追跡すると、原材料IV2が変換されずに、目的生成物が検出されなかった。
【0094】
比較例2から分かるように、イミンに対する付加反応において、触媒が不可欠であり、触媒がなければ反応が起こらない。
【国際調査報告】