(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-502737(P2022-502737A)
(43)【公表日】2022年1月11日
(54)【発明の名称】ベイジアンネットワークによるボイラーの運転データの監視方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G06N 7/00 20060101AFI20211217BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20211217BHJP
【FI】
G06N7/00 150
G05B23/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2021-514420(P2021-514420)
(86)(22)【出願日】2019年9月25日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月10日
(86)【国際出願番号】CN2019107944
(87)【国際公開番号】WO2020082972
(87)【国際公開日】20200430
(31)【優先権主張番号】201811227347.4
(32)【優先日】2018年10月22日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521101789
【氏名又は名称】新智数字科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ENNEW DIGITAL TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】楊 杰
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA17
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223FF04
3C223FF22
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH08
(57)【要約】
本発明は、ボイラーシステムの各部材、及び各部材の異なる位置間の関係に基づいて、ボイラーシステムの状態モデルを確立するステップS1と、センサを介して、各部材及び各部材の異なる位置の運転状態を収集することにより、ボイラーシステムの観測モデルを取得するステップS2と、ボイラーシステムの状態モデルとボイラーシステムの観測モデルを組み合わせて、ボイラーシステムモデルを取得するステップS3と、ボイラーシステムモデルに基づき、欠落観測データを推定するとともに、観測データが異常であるかどうかを判断するステップS4と、を含むベイジアンネットワークによるボイラーシステムの運転データ監視方法及び装置を開示する。本発明は、ベイジアンネットワークに基づいてデバイスの運転するモデルを構築し、システムモデルによってデータの正しさを監視するとともに、欠落しているデータを補足することで、その後のデバイスのリモート診断の便利さに寄与する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラーシステムの各部材、及び各部材の異なる位置間の関係に基づいて、ボイラーシステムの状態モデルを確立するステップS1と、
センサを介して、各部材及び各部材の異なる位置の運転状態を収集することにより、ボイラーシステムの観測モデルを取得するステップS2と、
ボイラーシステムの状態モデルとボイラーシステムの観測モデルを組み合わせて、ボイラーシステムモデルを取得するステップS3と、
ボイラーシステムモデルに基づき、欠落観測データを推定するとともに、観測データが異常であるかどうかを判断するステップS4と、
を含むことを特徴とするベイジアンネットワークによるボイラーシステムの運転データ監視方法。
【請求項2】
ステップS1において、ボイラーシステムの状態モデルの全体的な状態分布は、次の式で表される、
ことを特徴とする請求項1に記載のベイジアンネットワークによるボイラーシステムの運転データ監視方法。
【請求項3】
ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの関係は下記の通りである、
ことを特徴とする請求項2に記載のベイジアンネットワークによるボイラーシステムの運転データ監視方法。
【請求項4】
ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの間の条件付き確率分布は下記の通りである、
ことを特徴とする請求項3に記載のベイジアンネットワークによるボイラーシステムの運転データ監視方法。
【請求項5】
ステップS2において、ボイラーシステムの観測モデルは、次の式で表される、
ことを特徴とする請求項2に記載のベイジアンネットワークによるボイラーシステムの運転データ監視方法。
【請求項6】
センサ観測値とシステム観測モデルの関数は下記の式を満たす、
ことを特徴とする請求項5に記載のベイジアンネットワークによるボイラーシステムの運転データ監視方法。
【請求項7】
ステップS3において、ボイラーシステムモデルは、次の式で表される、
ことを特徴とする請求項5に記載のベイジアンネットワークによるボイラーシステムの運転データ監視方法。
【請求項8】
ボイラーシステムの各部材、及び各部材の異なる位置間の関係に基づいて、ボイラーシステムの状態モデルを確立するための状態モジュールと、
センサを介して、各部材及び各部材の異なる位置の運転状態を収集することにより、ボイラーシステムの観測モデルを取得するための観測モジュールと、
ボイラーシステムの状態モデルとボイラーシステムの観測モデルを組み合わせて、ボイラーシステムモデルを取得するための統合モジュールと、
ボイラーシステムモデルに基づき、欠落観測データを推定するとともに、観測データが異常であるかどうかを判断するための監視モジュールと、
を含むことを特徴とするベイジアンネットワークによるボイラーの運転データ監視装置。
【請求項9】
前記状態モジュールによって確立されたボイラーシステムの状態モデルの全体的な状態分布は、次の式で表され、
ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの関係は下記の通りであり、
前記観測モジュールによって取得されたボイラーシステムの観測モデルは、次の式で表され、
ことを特徴とする請求項8に記載のベイジアンネットワークによるボイラーの運転データ監視装置。
【請求項10】
前記統合モジュールによって取得されたボイラーシステムモデルは、次の式で表される、
ことを特徴とする請求項9に記載のベイジアンネットワークによるボイラーの運転データ監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理の技術分野、特にベイジアンネットワークによるボイラーの運転データの監視方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業生産現場では、産業機器は稼働過程でセンサを介して大量のデータを収集することができ、これらのデータから機器の稼働状況を判断することができる。たとえば、ボイラーは、稼働過程においてセンサを介して温度、圧力等のデータを収集することができ、これらのデータからボイラーの稼働状態を判断できる。
【0003】
しかしながら、実際のシーンでは、例えば、センサの原因、IoTデータ伝送問題などのさまざまな理由で、データ収集が部分的に欠落しているか、精度が不十分であることが多く、一部の欠落または不正なデータについて、対応する補足または検の措置を取っていない。これによって、IoTデータに依存するデバイスのリモート診断が不便になってしまう。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施例は、ベイジアンネットワークによるボイラーの運転データの監視方法及び装置を提供し、ベイジアンネットワークに基づいてデバイスの運転するモデルを構築し、システムモデルによってデータの正しさを監視するとともに、欠落しているデータを補足することで、その後のデバイスのリモート診断の便利さに寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様で、本発明の実施例は、
ボイラーシステムの各部材、及び各部材の異なる位置間の関係に基づいて、ボイラーシステムの状態モデルを確立するステップS1と、
センサを介して、各部材及び各部材の異なる位置の運転状態を収集することにより、ボイラーシステムの観測モデルを取得するステップS2と、
ボイラーシステムの状態モデルとボイラーシステムの観測モデルを組み合わせて、ボイラーシステムモデルを取得するステップS3と、
ボイラーシステムモデルに基づき、欠落観測データを推定するとともに、観測データが異常であるかどうかを判断するステップS4と、
を含むベイジアンネットワークによるボイラーの運転データの監視方法及び装置を提供する。
【0006】
観測データの欠落の問題については、システムの観点から、ほとんどのデータが正しく観測されるとともに、観測データの一部のみが欠落している場合であれば、欠落データと観測データは両方ともシステム全体の状態の一部であるため、それらの間に一定の関係がある(蒸気出口温度と入口温度など)。
【0007】
異常なデータの問題については、システムモデルは、システムの各部分の状態の一貫性に基づいてデータの正しさを推定し、誤ったデータに対して警告を発し、またはさらにエラーを自発的に修正することができる。
【0008】
好ましくは、ステップS1において、ボイラーシステムの状態モデルの全体的な状態分布は、次の式で表される。
【0009】
好ましくは、ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの関係は下記の通りである。
【0010】
好ましくは、ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの間の条件付き確率分布は下記の通りである。
【0011】
好ましくは、ステップS2において、ボイラーシステムの観測モデルは、次の式で表される。
【0012】
好ましくは、センサ観測値とシステム観測モデルの関数は下記の式を満たす。
【0013】
好ましくは、ステップS3において、ボイラーシステムモデルは、次の式で表される。
【0014】
第2の態様で、本発明の実施例は、
ボイラーシステムの各部材、及び各部材の異なる位置間の関係に基づいて、ボイラーシステムの状態モデルを確立するための状態モジュールと、
センサを介して、各部材及び各部材の異なる位置の運転状態を収集することにより、ボイラーシステムの観測モデルを取得するための観測モジュールと、
ボイラーシステムの状態モデルとボイラーシステムの観測モデルを組み合わせて、ボイラーシステムモデルを取得するための統合モジュールと、
ボイラーシステムモデルに基づき、欠落観測データを推定するとともに、観測データが異常であるかどうかを判断するための監視モジュールと、
を含むベイジアンネットワークによるボイラーの運転データ監視装置を提供する。
【0015】
好ましくは、前記状態モジュールによって確立されたボイラーシステムの状態モデルの全体的な状態分布は、次の式で表される。
【0016】
好ましくは、ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの関係は下記の通りである。
【0017】
好ましくは、ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの間の条件付き確率分布は下記の通りである。
【0018】
好ましくは、前記観測モジュールによって取得されたボイラーシステムの観測モデルは、次の式で表される。
【0019】
好ましくは、センサ観測値とシステム観測モデルの関数は下記の式を満たす。
【0020】
好ましくは、前記統合モジュールによって取得されたボイラーシステムモデルは、次の式で表される。
【0021】
従来技術と比較すると、本発明は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
システムの観点からは、システムの物理法則を事前知識として使用し、センサ観測と組み合わせてシステム運転データの統計モデルを構築し、このモデルに基づいてデータ品質の向上及び異常検出を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の実施例または従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下は、実施例または従来技術の説明において使用される必要のある図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、他の図面を、創造的な作業なしにこれらの図面から得ることができる。
【0023】
【
図1】本発明の一実施例によるベイジアンネットワークによるボイラー運転データの監視方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例によるベイジアンネットワークによって構築されたシステムモデルの依頼関係グラフである。
【
図3】本発明の一実施例によるベイジアンネットワークによるボイラー運転データの監視方法の構造ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、本発明の技術案を、本発明の実施例の図面に合わせて明確かつ完全的に説明する。もちろん、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例により、当業者が創造的な労働を行わないうえで取得した他の全ての実施例は、本発明の範囲に属する。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施例は、ベイジアンネットワークによるボイラーの運転データの監視方法及び装置を提供し、この方法は、
ボイラーシステムの各部材、及び各部材の異なる位置間の関係に基づいて、ボイラーシステムの状態モデルを確立するステップS1と、
センサを介して、各部材及び各部材の異なる位置の運転状態を収集することにより、ボイラーシステムの観測モデルを取得するステップS2と、
ボイラーシステムの状態モデルとボイラーシステムの観測モデルを組み合わせて、ボイラーシステムモデルを取得するステップS3と、
ボイラーシステムモデルに基づき、欠落観測データを推定するとともに、観測データが異常であるかどうかを判断するステップS4と、を含んでもよい。
【0026】
本実施例では、システム運転の統計モデルは、ボイラーシステム運転の物理法則および多数システムの運転データに従って確立される。デバイスのIOTデータは、デバイスの各部材の異なる位置上の物理的状態をセンサを介して収集される。まず、デバイスの各部材の異なる位置上の物理的状態は互いに独立しない。各状態は物理法則に従って一定の相関関係がある。これらの状態は異なるサブシステムの入出力を構成する。一つの状態は一方のサブシステムの入力であるとともに、他方のサブシステムの出力である。次に、センサによる状態の観測は、完全に信頼できるわけではないシステムである。観測ノイズを導入するとともに、観測の欠落、不十分な観測、異常な観測などの問題もある。システムの全体的なモデリングを介して、観察の欠落や不正確などの問題を解決できる。
【0027】
本発明の一実施例で、ステップS1において、ボイラーシステムの状態モデルの全体的な状態分布は、次の式で表される。
【0028】
ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの関係は下記の通りである。
ただし、Fはシステム状態モデルの関数であり、uはシステム状態モデルのノイズであり、ガウス分布に合致する。
【0029】
ボイラーシステムの状態モデルでは、入力z
n−1と出力z
nとの間の条件付き確率分布は下記の通りである。
【0030】
本実施例では、システム状態モデルについて、システム内の様々な状態間の関連関係を表す。異なるサブシステムの入力および出力について、一つの状態は一方のサブシステムの入力であるとともに、他方のサブシステムの出力である。入力であるサブシステムは親ノードと呼ばれることができ、出力であるサブシステムは子ノードと呼ばれることができる。各ノード間の相互依存性、ノードの分布は、条件付き確率に従って、その親ノードから子ノードを算出することができる。式は次のとおりである。
【0032】
したがって、状態モジュールによって確立されたボイラーシステム状態モデルの条件付き確率システムの全体的な状態分布は、次の式で表される。
【0033】
本発明の一実施例で、ステップS2において、ボイラーシステムの観測モデルは、次の式で表される。
【0034】
センサ観測値とシステム観測モデルの関数は下記の式を満たす。
【0035】
この実施例では、システム観測とは、センサを介してシステムの運転状態を観測することを指す。センサによる状態の観測は完全に信頼できるわけではないシステムである。ここでは、観察ノイズが導入される。システム観測モデルは下記の式を満たす。
【0036】
よって、システム観測モデルは次の式で表される。
【0037】
本発明の一実施例では、ステップS3において、ボイラーシステムモデルは、次の式で表される。
【0038】
この実施例では、システム状態モデルとシステム観測モデルを合わせて、次の式で表されるシステムモデルを取得することができる。
【0039】
説明されるべきであるものとして、システムモデルの推論計算によって、データから、例えば、センサの観測データが妥当であるかどうか、現在のシステムの運転状態が正常であるかどうかなど、多くの価値がある情報を取得できる。
【0040】
不十分な観測付きの動的確率システムの場合、当該システムには同時に複数の関連する状態があるため、隠された変数を持つベイジアンネットワークを使用してシステムをモデル化するは、効果的な方法である。
図2に示すように、システムモデルを簡単に示す。このシステムモデルは、システム内の複数の状態と、状態に対応するセンサ観測とで構成され、有向非周期グラフで表される。グラフには、4種類のノードが含まれ、それぞれシステムの状態を表すノード(観測不可能な隠れ変数)と、センサによって観測されたノードと、欠落また一部の観測ノードと、異常的な観測ノードである。図の矢印は、ノード間の相互依存関係、つまりシステム内のさまざまな状態間の相互関係を表すものである。
【0041】
本発明の一実施例では、ステップS4において、ボイラーシステムモデルに従って、欠落している観測データを推定するとともに、観測データが異常であるかどうかを判断する。システムモデルは、システムの運転データからトレーニングされて完成できる。システムモデルは、システムが稼働しているときの各状態の結合確率分布を反映する。システムの通常の稼働状態は確率が高く、システムモデルに従って複数のデータ障害耐性タスクを完了することができる。
【0042】
観測データの欠落の問題については、システムの観点から、ほとんどのデータが正しく観測されるとともに、観測データの一部のみが欠落している場合であれば、欠落データと観測データは両方ともシステム全体の状態の一部であるため、それらの間に一定の関係がある(蒸気出口温度と入口温度など)。
【0043】
異常なデータの問題については、システムモデルは、システムの各部分の状態の一貫性に基づいてデータの正しさを推定し、誤ったデータに対して警告を発し、またはさらにエラーを自発的に修正することができる。
【0044】
したがって、ベイジアンネットワークに基づいてデバイスの運転するモデルを構築し、システムモデルによってデータの正しさを監視するとともに、欠落しているデータを補足することで、その後のデバイスのリモート診断の便利さに寄与する。
【0045】
図3に示すように、本発明の実施例は、ボイラーシステムの各部材、及び各部材の異なる位置間の関係に基づいて、ボイラーシステムの状態モデルを確立するための状態モジュールと、
センサを介して、各部材及び各部材の異なる位置の運転状態を収集することにより、ボイラーシステムの観測モデルを取得するための観測モジュールと、
ボイラーシステムの状態モデルとボイラーシステムの観測モデルを組み合わせて、ボイラーシステムモデルを取得するための統合モジュールと、
ボイラーシステムモデルに基づき、欠落観測データを推定するとともに、観測データが異常であるかどうかを判断するための監視モジュールと、
を含むベイジアンネットワークによるボイラーの運転データ監視装置を提供する。
【0046】
本実施例では、システム運転の統計モデルは、ボイラーシステム運転の物理法則および多数システムの運転データに従って確立される。デバイスのIOTデータは、デバイスの各部材の異なる位置上の物理的状態をセンサを介して収集される。まず、デバイスの各部材の異なる位置上の物理的状態は互いに独立しない。各状態は物理法則に従って一定の相関関係がある。これらの状態は異なるサブシステムの入出力を構成する。一つの状態は一方のサブシステムの入力であるとともに、他方のサブシステムの出力である。次に、センサによる状態の観測は、完全に信頼できるわけではないシステムである。観測ノイズを導入するとともに、観測の欠落、不十分な観測、異常な観測などの問題もある。システムの全体的なモデリングを介して、観察の欠落や不正確などの問題を解決できる。
【0047】
本実施例では、システム状態モデルについて、システム内の様々な状態間の関連関係を表す。異なるサブシステムの入力および出力について、一つの状態は一方のサブシステムの入力であるとともに、他方のサブシステムの出力である。入力であるサブシステムは親ノードと呼ばれることができ、出力であるサブシステムは子ノードと呼ばれることができる。各ノード間の相互依存性、ノードの分布は、条件付き確率に従って、その親ノードから子ノードを算出することができる。式は次のとおりである。
【0049】
したがって、状態モジュールによって確立されたボイラーシステム状態モデルの条件付き確率システムの全体的な状態分布は、次の式で表される。
【0050】
システム観測とは、センサを介してシステムの運転状態を観測することを指す。センサによる状態の観測は完全に信頼できるわけではないシステムである。ここでは、観察ノイズが導入される。システム観測モデルは下記の式を満たす。
【0051】
よって、システム観測モデルは次の式で表される。
【0052】
要するに、システム状態モデルとシステム観測モデルを合わせて、次の式で表されるシステムモデルを取得することができる。
【0053】
説明されるべきであるものとして、システムモデルの推論計算によって、データから、例えば、センサの観測データが妥当であるかどうか、現在のシステムの運転状態が正常であるかどうかなど、多くの価値がある情報を取得できる。
【0054】
システムモデルは、システムの運転データからトレーニングされて完成できる。システムモデルは、システムが稼働しているときの各状態の結合確率分布を反映する。システムの通常の稼働状態は確率が高く、システムモデルに従って複数のデータ障害耐性タスクを完了することができる。
【0055】
観測データの欠落の問題については、システムの観点から、ほとんどのデータが正しく観測されるとともに、観測データの一部のみが欠落している場合であれば、欠落データと観測データは両方ともシステム全体の状態の一部であるため、それらの間に一定の関係がある(蒸気出口温度と入口温度など)。
【0056】
異常なデータの問題については、システムモデルは、システムの各部分の状態の一貫性に基づいてデータの正しさを推定し、誤ったデータに対して警告を発し、またはさらにエラーを自発的に修正することができる。
【0057】
したがって、ベイジアンネットワークに基づいてデバイスの運転するモデルを構築し、システムモデルによってデータの正しさを監視するとともに、欠落しているデータを補足することで、その後のデバイスのリモート診断の便利さに寄与する。
【0058】
上記装置内の各モジュール間の情報交換および実行過程は、本発明の方法実施例と同じ思想に基づくため、具体的な内容については、本発明の方法実施例の説明を参照してもよいが、ここでは繰り返さない。
【0059】
本明細書では、第一および第二のような関係用語は、1つのエンティティまたはオペレーションを他のエンティティまたはオペレーションから区別するためにのみ使用されるが、必ずしもこれらのエンティティまたはオペレーションの間にそのような実際の関係または順序が存在する必要がないし、暗示する必要もない。さらに、「含む」、「含まれる」という用語、またはその任意の他の変形例は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。これによって、一連の要素を含むプロセス、方法、商品又は機器は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含むことになり、あるいは、そのようなプロセス、方法、商品または装置の固有する要素も含む。これ以上の制限なしの場合、「1つ.....を含む」という文言によって定義される要素は、その要素を含むプロセス、方法、商品または装置内に他の同じ要素が存在することを排除するものではない。
【0060】
当業者であれば、上述方法実施例の全部または一部を実現するためのステップは、プログラム命令に関連するハードウェアによって実行されることができ、前述したプログラムはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよく、このプログラムは、実行時に上述方法実施例を含むステップを実行するものであり、前述した記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスク、光ディスク等のプログラムコードを記憶可能な各種の媒体を含むことを理解できるだろう。
【0061】
最後に、以上述べたことは、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明の特許請求の範囲を説明するためのもので、本発明の保護範囲を限定するためのものではない。本発明の精神および原理の範囲内で行われるあらゆる変更、均等置換、変更などは、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】