(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2022-502848(P2022-502848A)
(43)【公表日】2022年1月11日
(54)【発明の名称】有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶又は多結晶層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 51/48 20060101AFI20211217BHJP
H01L 51/44 20060101ALI20211217BHJP
【FI】
H01L31/04 180
H01L31/04 112Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2021-516620(P2021-516620)
(86)(22)【出願日】2019年9月23日
(85)【翻訳文提出日】2021年4月26日
(86)【国際出願番号】GB2019052669
(87)【国際公開番号】WO2020065282
(87)【国際公開日】20200402
(31)【優先権主張番号】1815547.3
(32)【優先日】2018年9月24日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517427978
【氏名又は名称】オックスフォード フォトボルテイクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,アリス エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ミランダ ペレス,ローラ
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151CB11
5F151CB24
(57)【要約】
本発明は、式AMX
3で表される三次元結晶構造を含む有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の結晶層又は多結晶層を形成する方法であって、
ここで、Aは、有機カチオン又は2つ以上の異なるカチオンの混合物を表し、そのうちの少なくとも1つは有機カチオンであり、
Mは、2価の金属カチオン又は2つ以上の異なる2価の金属カチオンの混合物を表し、且つ
Xは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表す、当該方法は、以下のステップ:
(i) 基板の表面に第1の層を形成するステップであって、前記第1の層は、平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含むステップ、
(ii) 式AMX
3を有する有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む結晶層又は多結晶層を形成するため、前記第1の層を1つ以上の有機ハロゲン化物と反応させるステップ、
を含む方法、を提供する。式AMX
3で表される三次元結晶構造を含む有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む活性層を包含する光電子又は光起電力デバイス、ここで、材料は、上記で定義された方法を使用して入手可能である、も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式AMX3で表される三次元結晶構造を含む有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の結晶層又は多結晶層を形成する方法であって、
ここで、Aは、有機カチオン又は2つ以上の異なるカチオンの混合物を表し、そのうちの少なくとも1つは有機カチオンであり、
Mは、2価の金属カチオン又は2つ以上の異なる2価の金属カチオンの混合物を表し、且つ
Xは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表す、当該方法は、以下のステップ:
(i) 基板の表面に第の1層を形成するステップであって、前記第1の層は、平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含むステップ、
(ii) 式AMX3を有する有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む結晶層又は多結晶層を形成するため、前記第1の層を1つ以上の有機ハロゲン化物と反応させるステップ、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の結晶層又は多結晶層を形成する方法であって、ここで、ステップ(ii)は、
a) 1つ以上の有機ハロゲン化物を含む材料を前記第1の層に堆積させること;及び
b) 式AMX3を有する有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む前記結晶層又は多結晶層を形成するため、前記第1の層とその上に堆積した材料を反応させること;
を含む方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、ここで、ステップi)において、前記第1の層は、L2L’n−1MnX3n+1、L2Kn−1MnX3n+3、LL’n−1MnX3n+1又はL2L’nMnX3n+2から選択される式を有する材料を含み、ここで、L及びL’同じ又は異なることができる有機又は無機カチオンを表し、Kは有機カチオンを表し、Lとは異なり、Mは二価金属カチオン又は2つ以上の異なる二価金属カチオンを表し、Xは同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表す、方法。
【請求項4】
L、L‘及びKは、ナフチルエチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、フェニルアンモニウム、n−ペンチルアンモニウム、2−チオフェンエチルアンモニウム、t−ブチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、1,4−ブタンジアンモニウム、及びシスタミン二水素化物、からなる群から独立して選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の層は、平面の層状二次元結晶構造を有する前記有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の物理的又は化学的蒸着によって形成される、請求項1から4のいずれかに記載方法。
【請求項6】
前記第1の層は、溶液からの前記有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の堆積によって形成される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の層は、1つ以上の金属ハロゲン化物材料を含む前記基板の表面に前駆体材料を堆積させることによって、続いて、前記金属ハロゲン化物前駆体材料を、平面の層状二次元結晶構造を有する前記有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層に変換することによって、形成される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
平面の層状二次元結晶構造を有する前記有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む前記第1の層を形成するため、1つ以上の有機ハロゲン化物材料を金属ハロゲン化物前駆体材料上に堆積させること、且つ有機ハロゲン化物及び金属ハロゲン化物材料を反応させることによって、金属ハロゲン化物前駆体材料が第1の層に変換される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の有機ハロゲン化物材料は、ヨウ化ナフチルエチルアンモニウム、ヨウ化n−プロピルアンモニウム、ヨウ化ベンジルアンモニウム、ヨウ化フェニルアンモニウム、ヨウ化n−ペンチルアンモニウム、ヨウ化2−チオフェンエチルアンモニウム、ヨウ化t−ブチルアンモニウム、ヨウ化ジエチルアンモニウム、ヨウ化イソブチルアンモニウム、ヨウ化シクロヘキシルアンモニウム、ヨウ化シクロヘキシルメチルアンモニウム、ヨウ化エチルアンモニウム、2ヨウ化(diodide)1,4−ブタン二アンモニウム、及びジヒドロヨウ化シスタミン、からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の有機ハロゲン化物材料を含む基板の表面に前駆体材料を堆積させることによって、続いて、1つ以上の金属ハロゲン化物材料を堆積すること、続いて、有機ハロゲン化物及び金属ハロゲン化物材料を、平面の層状二次元結晶構造を有する前記有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層に変換することによって、前記第1の層が形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体材料が溶液から堆積される、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の有機ハロゲン化物材料が、溶媒に溶解された1つ又は複数の有機ハロゲン化アンモニウムの溶液から1つ以上の金属ハロゲン化物材料上に堆積され、続いて前記溶媒が除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、1−ブタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシ−メタノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノ−tert−ブチル(buyl)エーテル及びトルエンからなる群から選択される1つ以上の溶媒を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機ハロゲン化アンモニウムが、ヨウ化ナフチルエチルアンモニウム、ヨウ化n−プロピルアンモニウム、ヨウ化ベンジルアンモニウム、ヨウ化フェニルアンモニウム、ヨウ化n−ペンチルアンモニウム、ヨウ化2−チオフェンエチルアンモニウム、ヨウ化t−ブチルアンモニウム、ヨウ化ジエチルアンモニウム、ヨウ化イソブチルアンモニウム、ヨウ化シクロヘキシルアンモニウム、ヨウ化シクロヘキシルメチルアンモニウム、ヨウ化エチルアンモニウム、2ヨウ化(diodide)1,4−ブタンジアンモニウム、及びジヒドロヨウ化シスタミン、からなる群から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
ここで、Mは、Pb、Sn、Sb、及びCuからなる群から選択される金属のうち1つ以上を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項2に記載の、又はそれに従属する場合は請求項3から15のいずれかに記載の方法であって、ここで、ステップa)の材料は、ハロゲン化物AY及びAZを含む蒸気に前記第1の層を曝すことによって堆積される、ここで、Y及びZは同じ又は異なるハロゲン化物アニオンであり、カチオンAは同じ又は異なるものであり、且つ以下の金属のカチオンからなる群から選択される: Cs、Rb、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、又は有機イオンR3NH+、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基、又は非置換もしくは置換アルキル基から選択され、又はH+R2NR’NR2H+、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得、R’は非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得る、方法。
【請求項17】
請求項2に記載の、又はそれに従属する場合は請求項3から15のいずれかに記載の方法であって、ここで、ステップa)の材料は、ハロゲン化物AY及びAZの溶液から堆積される、ここで、Y及びZは同じ又は異なるハロゲン化物アニオンであり、カチオンAは同じ又は異なるものであり、且つ以下の金属のカチオンからなる群から選択される: Cs、Rb、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、又は有機イオンR3NH+、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基、又は非置換もしくは置換アルキル基から選択され、又はH+R2NR’NR2H+、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得、R’は非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得る、方法。
【請求項18】
ステップii)の反応が、材料を室温より上に加熱することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記加熱することは、摂氏200度未満、好ましくは摂氏100度から180度の間の温度で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式AMX3で表される三次元結晶構造を含む有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む活性層を包含する光電子又は光起電力デバイスであって、
ここで、Aは有機カチオン又は2つ以上の異なるカチオンの混合物を表し、そのうちの少なくとも1つは有機カチオンであり、
Mは、2価の金属カチオン又は2つ以上の異なる2価の金属カチオンの混合物を表し、
Xは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表す、
ここで、前記材料は、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法によって入手可能である、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、結晶化度が改善された三次元ペロブスカイト材料の層を作製する方法に関する。本発明の結晶性ペロブスカイト材料は、改善された形態(morphology)及び改善された光電子特性を示すことができる。本発明はさらに、この方法を使用して作製されたペロブスカイト材料の層を含む光電子デバイス及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
太陽エネルギー変換は、再生可能エネルギーを提供するための最も有望な技術の1つである。しかし、高い材料費を包含する、太陽エネルギーを取り込むデバイスの製造コストが高いため、歴史的にその広範な使用が妨げられてきた。
【0003】
通常の日光条件下で太陽電池などの光起電力デバイスに使用される材料の効率は、その材料のバンドギャップの関数である。バンドギャップが大きすぎると、ほとんどの昼光光子は吸収できず、透過又は反射によって失われる。それが低すぎると、ほとんどの光子はバンドギャップを越えて電子を励起するのに必要なエネルギーよりもはるかに多くのエネルギーを持ち、残りは熱化によって失われる。Shockley−Queisserの限界は、単一接合太陽電池で得られる理論上の最大効率を指す。最高の理論効率は約33%で、1.34eVのバンドギャップで得られる。
【0004】
異なるバンドギャップと直列に接続されたタンデムセル又は多接合セルを使用すると、さらに高い理論効率を得ることができる(例えば、J.Nelson“ThePhysics of SolarCells”pp297−309,Imperial College Press [2003] ISBN−13 978− 1−86094−340−9を参照)。
【0005】
太陽電池の製造に特に有望なクラスの材料の1つは、金属ハロゲン化物ペロブスカイトである(“Photovoltaic Solar Energy − from Fundamentals to Applications” [2017], edited by A Reinders et al. Wiley ISBN 9781118927465、特に6.3章を参照)。3次元(3D)ペロブスカイト材料の一般式はAMX
3で、A及びMはカチオン、Xはアニオンである。それらの構造は、MX
6八面体(12倍環境)の間の十二面体サイトにあるAカチオンを使用して、コーナー、エッジ、又は面を介してリンクできるMX
6の3Dネットワークによって形成される。MX
6八面体がコーナーでリンクされた3Dペロブスカイトの例を
図1に示す。A、M、Xの相対的なサイズによって、ペロブスカイトの安定性と、形成される特定の結晶構造の対称性が決まる。ペロブスカイトは、より一般的には、3Dペロブスカイト構造のセクションを含有する結晶構造と見なすことができる。
【0006】
ハイブリッド有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト(HOP)は、ペロブスカイトグループのサブファミリーである。ここで、Aは有機カチオン又は有機カチオンと無機カチオンとの混合物、Mは金属、通常はPb、Sn、Ge、Cu、Bi、又はそれらの混合物であり、Xはハロゲン化物、通常はCl、Br、I、又はそれらの混合物である。最近、薄膜HOPは、集光媒体としても電荷キャリア輸送体としても機能する独自の能力により、特に光起電材料として、オプトエレクトロニクス用途に非常に優れた材料であることが発見された。
【0007】
これまで、コーナーリンクされたBX
6八面体を備えた単相3D構造を採用したHOP材料は、単一接合光起電力デバイスで最高の性能を示し、2017年には22.7%の変換効率が記録されている。太陽電池の優れた吸収体であることが判明した第1のHOPであるCH
3NH
3PbI
3(MAPbI
3)は、安定性の問題のために商品化が制限されていた。しかし、それ以来、(CH(NH
2)
2)
1−xCs
xPbI
3(FA
1−xCs
xPbI
3)及び(FA、MA、Cs、Rb)
1PbI
3など、安定性と高性能が向上した代替組成物が開発されていた。
【0008】
WO2016/194317は、金属ハロゲン化物化合物とメチルアミンガスとの間に化学反応を誘発することによってペロブスカイト膜を形成する方法を開示している。当該方法は、基板上に金属ハロゲン化物膜を形成し、次にメチルアミンガスに曝露して反応を誘発してペロブスカイトを形成することを含み、ペロブスカイトは、ガス状ヨウ化水素酸及びガス状メチルアミンに協調して又は連続して曝露することによってさらに処理することができる。
【0009】
CN108539025は、高配向性の二次元ハイブリッドペロブスカイト薄膜とその作製方法を開示している。ペロブスカイト薄膜は、高配向性で厚さ400乃至450nmの二次元シート薄膜であり、塩化第二スズに沈められた導電性ガラスから生成された結晶性の高い二次元酸化第二スズナノシートを取り、その上にペロブスカイト薄膜を堆積させる。
【0010】
US2018/0247769は、真空蒸着に基づいて鉛フリーのペロブスカイト膜を形成する方法を開示しており、第1のSnハロゲン化物材料を基板上に堆積して第1の層を形成し、次に第2の有機ハロゲン化物材料を堆積して第1の層上に第2の層を形成して基板上に順次堆積された2層膜を得ることを含む。次に、これをアニールして、層の相互拡散を誘発し、目的のペロブスカイト膜を形成する。
【0011】
US2016/0049585は、ペロブスカイト太陽電池を製造する方法を開示しており、その上に、2段階の真空蒸着プロセスによってペロブスカイト層が形成される透明な導電性基板上に正孔輸送層が形成される。その後、電子輸送層と電極層が順番に形成される。2段階真空蒸着は、正孔輸送層上の第1の材料を真空蒸着し、次に第2の材料を真空蒸着して、第1の材料をin situで第2の材料と反応させてペロブスカイト層を形成することを包含する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ペロブスカイト薄膜の品質は、デバイスの性能にとって非常に重要であり、膜の製造方法に大きく影響される。オプトエレクトロニクス用途向けの3DHOP薄膜を製造するための一般的なルートは、2つの一般的なカテゴリー、いわゆる1ステップ又は2ステッププロセス、に分類される。1ステップのプロセスでは、基板上に3Dペロブスカイトを直接形成するための1つの材料堆積段階が含まれる。2ステップのプロセスでは、基板上にPbI
2などの前駆体金属ハロゲン化物又は金属ハロゲン化物−有機錯体(PbI
2−ジメチルスルホキシド又はPbI
2−チオ尿素など)膜を形成するための1つの材料堆積段階が含まれる。続いて、第2の材料堆積段階と、その前駆体層の三次元結晶構造を有するペロブスカイト層への変換が続く。これらの各プロセスは、溶液からの化学蒸着、物理的又は化学的蒸着、又は2ステッププロセスの2つの組み合わせを利用して実現できる。どちらのプロセスも、添加剤を使用し、異なる雰囲気を使用し、加熱ステップを使用して最終的なペロブスカイト膜を最適化することができる。以前に報告された最高の効率は、2ステップのプロセスから得られる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、3D HOP薄膜を調製するための新規なプロセスを提供することである。当該プロセスにより、例えば、結晶化度の向上、形態の改善、密度の向上、粒子サイズの拡大、キャリア寿命の延長などを備えた、より高品質のフィルムが製造される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明の第1の態様によれば、請求項1から19のいずれかに指定されているとおり、式AMX
3によって表される三次元結晶構造を含む有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の結晶層又は多結晶層を形成する方法が提供される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、式AMX
3によって表される三次元結晶構造を含む有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む活性層を含む光電子デバイス又は光起電力デバイスが提供される。ここで、Aは有機カチオン又は2つ以上の異なるカチオンの混合物を表し、そのうちの少なくとも1つは有機カチオンであり、
Mは、2価の金属カチオン又は2つ以上の異なる2価の金属カチオンの混合物を表し、且つ、Xは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表す。
ここで、材料は、本発明の第1の態様による方法によって入手可能である。
【0016】
当該方法では、最終的な3Dペロブスカイトに変換できる2ステッププロセスの金属ハロゲン化物又は金属ハロゲン化物有機錯体の代替前駆体膜を利用する。新しい前駆体は、2次元(2D)結晶構造を持つ平面層状ペロブスカイト材料である。これを以下に定義する。このタイプの2Dハイブリッド有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜は、本発明の方法を使用して、3次元(3D)結晶構造を有する非常に高品質の有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜に変換される。
【0017】
2Dペロブスカイトはペロブスカイトのファミリーであり、3Dペロブスカイトの層が中間層によって分離されている。いくつかの例を
図3に示す。2D HOPの場合、中間層は有機ブロックで構成され、有機ブロックにはいくつかの無機イオン成分又は置換が含まれる場合がある。対象となる2D HOPは、ペロブスカイト層がコーナーリンクされたMX
6八面体を持ち、現在太陽電池で最高の性能を示している3D HOPフィルムと構造的に類似している。
【0018】
好ましい実施形態では、2Dペロブスカイトの平面層は、平面層が堆積される基板の表面の法線に対して垂直に配向される。
【0019】
2Dペロブスカイトのペロブスカイト層は、
図4に示すように、異なる数のAMX3スラブ(n)、及び/又は、
図3に示すように、層が分離される軸の異なる配向を持つことができる。層間有機ブロックの化学的及び物理的性質とペロブスカイト(AMX
3)層間の相対位置に応じて、2Dペロブスカイト材料のいくつかの異なる構造形態を実現することができる。例えば、:
a) 「Ruddlesden−Popperペロブスカイト」(RP)、
図3a、一般式A’
2A
n−1M
nX
3n+1を持つ材料ファミリー。ここで、Aはペロブスカイトシート内の12倍環境(12−fold environment)のカチオンであり、A’は2D層を分離するカチオン(層間カチオン)であり、Mはペロブスカイト層内の6倍位置(6−fold position)のカチオンであり、且つXはペロブスカイト層の9倍位置にあるアニオンである。AとA’は、同じカチオンでも異なるカチオンでもかまわない。また、Aはユニークなカチオン又は混合物であり得る。A’は、ユニークなカチオン又は混合物であり得る。Xは、ユニークなアニオン又は混合物であり得る。且つMは、ユニークなカチオン又は混合物であり得る。
図4は、Ruddelsden−Popperファミリーのn=1、n=2、及びn=3のメンバーを示す。ここで、nは、各2Dペロブスカイト層のAMXスラブの数を定義する整数である。
b) 一般式 A’
2A
n−1M
nX
3n+3を持つ「Aurivilliusペロブスカイト」、
図3b、ここで、有機中間層ブロックは、式A’
2X
2を持つ。A、M、及びXは上記のように定義され、A’は、ユニークなカチオン又は混合物であり得るが、Aと同じであり得ない。
c) 一般式A’A
n−1M
nX
3n+1を持つ「Dion−Jacobsonペロブスカイト」、
図3c、ここで、有機ブロックは、Aとは異なる有機分子A’によって形成される。
【0020】
これらの最初の3つの例について、
図3に示すように、ペロブスカイト層(与えられたnに対して)は互いに同一のままであり、ここで、ペロブスカイト層は{100}結晶学的方向に平行である。
【0021】
一般式A’
2A
nM
nX
3n+2を持つ第4のファミリー「{110}パラレルペロブスカイト」(
図4d)も示されている。ここで、ペロブスカイト層が{100}結晶学的方向ではなく{110}結晶学的方向に平行であり、且つ、有機中間層は、Ruddlesden−Popperペロブスカイトと同じ方法で定義されたA’カチオンで形成されている。
【0022】
上記の2Dペロブスカイトの例は完全なリストを含まない − 他のファミリーが存在し、現在の方法で使用できまする − 例えば、Aurivillius又はD−J中間層のように見える{110}平行の中間層、又はスタッキングのための異なる結晶学的方向を持つ。
【0023】
本発明の目的は、優れた三次元結晶性、改善された形態、改善された光電子特性、及び優れた光起電力性能を備えた有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を提供することである。本発明のプロセスによって作製された改良ペロブスカイト材料は、改良された結晶化度を示し、粒界が減少し(及び好ましくはなし)、テクスチャが滑らかで、粒径が大きく、他の報告された3Dペロブスカイト結晶と比較して一般に平坦な表面を有する。本発明はまた、既存の方法を使用して作製された3Dペロブスカイト材料よりも潜在的に高い安定性を有する、改良された結晶性3Dペロブスカイト材料を提供する。結果として、これらの材料は、改善された特性を備えた光起電力デバイスを製造するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面の簡単な説明
次に、本発明は、添付の図面を参照して、例としてのみ、より具体的に説明される。
【
図1】
図1は、2Dペロブスカイト構造からMX6コーナー八面体を持つ3Dペロブスカイト構造への変換を示す;
【
図2B】
図2Bは、本発明の代替プロセスフローの概略図を示す;
【
図3】
図3aからdは、n=2のRuddlesden Popper、Aurivillius、Dion−Jacobson、及び{110}パラレルタイプの2Dペロブスカイトを示す;
【
図4】
図4aからcは、Ruddelsden−Popper2Dペロブスカイトファミリーのn=1、n=2、及びn=3のメンバーと{110}パラレルタイプの2Dペロブスカイトを示す;
【
図5】
図5は、異なるルートで作成された同じ2Dペロブスカイト材料のXRDパターンを示す;(a) 金属ハロゲン化物前駆体層上のA’カチオンを含む溶液のスピンコーティングによる変換、(b) 金属ハロゲン化物前駆体層のA’カチオンを含有する溶液中の化学浴による変換、及び(c) 金属ハロゲン化物とA‘カチオンを含有する溶液のスピンコーティングによる2D材料の1ステップ形成;
【
図6A】
図6aは、i)本発明のプロセスを使用して作製され、及びii)2ステップの先行技術プロセスを使用して作製された、3Dペロブスカイト材料についての重複するXRDパターンを示す;
【
図6B】
図6bは、本発明のプロセスによって作製された3Dペロブスカイト材料の半値全幅(FWHM)値及びカウント数を示す;
【
図6C】
図6cは、2ステップの先行技術プロセスによって作製された3Dペロブスカイト材料の半値全幅(FWHM)値及びカウント数を示す;
【
図7】
図7aは、ハロゲン化物アニオンY:Zの3つの異なる比率を持つ、本発明によるプロセスを使用して作製された3つの3Dペロブスカイト膜のXRDパターンを示している。
図7bは、同じ3つのフィルムのUV−Visスペクトルを示す。
【
図8】
図8aは、本発明によるプロセスを使用して作製された3Dペロブスカイト材料の2つの原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。
図8bは、2ステップの先行技術プロセスを使用して作製された3Dペロブスカイト材料の2つの原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。
【
図9】
図9aは、本発明によるプロセスを使用して生成された3Dペロブスカイト材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像から生成された上面図(上のプロット)及び断面図(下のプロット)を示す。
図9bは、2ステップの先行技術プロセスを使用して生成された3Dペロブスカイト材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像から生成された上面図(上のプロット)及び断面図(下のプロット)を示す。
【
図10】
図10は、i)本発明のプロセスを使用して作製された(グレー)、及びii)2段階の先行技術プロセスを使用して作製された(ブラック)、3Dペロブスカイトのオーバーラップするフォトルミネッセンス測定を示す。
【
図11】
図11は、2ステップの従来技術プロセスを使用して製造された3Dペロブスカイト材料と比較した、本発明のプロセスを使用して製造された3Dペロブスカイト材料の電荷キャリア寿命を示す重複する時間分解フォトルミネッセンス(TRPL)測定を示す。
【
図12A】
図12Aは、A‘=アリールアンモニウムイオン(グレー)又はA’=アルキルアンモニウムイオン(ブラック)を有する2D材料の直接化学蒸着を含む本発明のプロセスを使用して得られた3Dペロブスカイト材料の重なり合うX線回折パターンを示す。
【
図12B】
図12Bは、第2のハロゲン化物蒸着ステップがない本発明の方法に従って作製されたペロブスカイトのXRDを示す;
【
図13】
図13は、2Dルートと2ステッププロセスによって準備された単一接合デバイスの電流−電圧スイープのプロットを示す。ここで、より高いPLQEから予想されるように、2Dルートを介したVocゲインが見られる;
【
図14】
図14は、本発明のプロセスを使用する方法の全体的なプロセスフロー、及び2ステップの従来技術のプロセスの全体的なプロセスフローの概略図を示している;
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される「光活性」という用語は、光に光電的に応答することができる領域、層、又は材料を指す。したがって、光活性領域、層、又は材料は、光子によって運ばれるエネルギーを光で吸収することができ、その結果、電気が生成される(例えば、電子正孔対又は励起子のいずれかを生成することによって)。
【0026】
本明細書で使用される「ペロブスカイト」という用語は、CaTiO
3の結晶構造に関連する三次元結晶構造を有する材料、又はその層がCaTiO
3の構造に関連する材料の層を含む二次元材料を指す。CaTiO
3の構造は、式AMX
3で表すことができ、ここで、A及びMは異なるサイズのカチオンであり、且つXはアニオンである。ユニットセルでは、Aカチオンは(0,0,0)にあり、Mカチオンは(1/2、1/2、1/2)にあり、Xアニオンは(1/2、1/2、0)にある。Aカチオンは通常Mカチオンよりも大きい。当業者は、A、M、Xを変化させると、イオンサイズが異なると、ペロブスカイト材料の構造が歪んで、CaTiO
3で採用されている構造から対称性の低い歪んだ構造になる可能性があることを理解するであろう。材料がバルクCaTiO
3の構造に関連する構造を持つ層の形である場合、対称性も低くなる。ペロブスカイト材料の層を含む材料はよく知られている。例えば、K
2NiF
4ペロブスカイトはn=1 RP構造を採用している(導入部で定義されているように)。当業者は、ペロブスカイト材料が式[A][M][X]
3で表すことができることを理解するであろう。ここで、[A]は少なくとも1つのカチオン、[M]は少なくとも1つのカチオン、[X]は少なくとも1つのアニオンである。ペロブスカイトが複数のAカチオンを含む場合、異なるAカチオンがAサイト全体に規則正しく又は無秩序に分布する可能性がある。ペロブスカイトが複数のMカチオンを含む場合、異なるMカチオンがMサイト全体に規則正しく又は無秩序に分布する可能性がある。ペロブスカイトが複数のXアニオンを含む場合、異なるXアニオンがXサイト全体に規則正しく又は無秩序に分布する可能性がある。
【0027】
前の段落で述べたように、本明細書で使用される「ペロブスカイト」という用語は、(a)CaTiO
3の結晶構造に関連する3次元結晶構造を持つ材料、又は(b)材料の層を含む材料、ここで、層は、CaTiO
3の構造に関連する構造を有する、を指す。これらのカテゴリーのペロブスカイトは両方ともデバイスで使用できるが、状況によっては、第1のカテゴリーのペロブスカイト、(a)、すなわち、3次元(3D)結晶構造を有するペロブスカイトを使用することが好ましい。両方のタイプのペロブスカイトは、導入部で詳細に説明されている(
図1、3、及び4)。2D層状ペロブスカイトは、励起子結合エネルギーが高い傾向があり、光励起下での自由電荷キャリアではなく、結合した電子正孔対(励起子)の生成に有利に働く。結合した電子正孔対は、p型又はn型の接触に到達するのに十分な可動性がない可能性があり、そこで転送(イオン化)して自由電荷を生成することができる。その結果、自由電荷を生成するために、励起子結合エネルギーを克服する必要があり、これは、電荷生成プロセスにエネルギーコストを表し、太陽電池のより低い電圧及びより低い効率をもたらす。対照的に、3D結晶構造を持つペロブスカイトは、励起子結合エネルギーがはるかに低い傾向があり(熱エネルギーのオーダー)、及びしたがって、光励起の直後に自由キャリアを生成できる。したがって、本発明のデバイス及びプロセスで使用されるペロブスカイト半導体は、好ましくは、第1のカテゴリーのペロブスカイトである、(a)、すなわち、特に光電子デバイスが太陽電池などの光起電力デバイスである場合に、三次元結晶構造を有するペロブスカイト。
【0028】
本発明の方法を使用して製造された3Dペロブスカイト材料は、一般式(I):
[A] [M] [X]
3 (I)
を有する。ここで、[A]は、有機カチオン又は2つ以上の異なるカチオンの混合物であり、その少なくとも1つは有機カチオンであり;[M]は、二価金属カチオン、又は2つ又は1つ以上の異なる二価金属カチオンの混合物であり;且つ、[X]は1つ以上のハロゲン化物アニオンである。
【0029】
[X]は、好ましくは、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物から選択され、好ましくは塩化物、臭化物、及びヨウ化物から選択される1つ以上のハロゲン化物アニオンを含む。より好ましくは、[X]は、臭化物及びヨウ化物から選択される1つ以上のハロゲン化物アニオンを含む。いくつかの例において、[X]は、好ましくは、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物から選択され、好ましくは塩化物、臭化物及びヨウ化物から選択される2つの異なるハロゲン化物アニオンを含み、より好ましくは臭化物及びヨウ化物を含む。
【0030】
好ましくは、[A]は、1つ以上の一価カチオンから選択される。[A]は、メチルアンモニウム(CH
3NH
3+)、ホルムアミジニウム(HC(NH)
2)
2+)、及びエチルアンモニウム(CH
3CH
2NH
3+)から選択される1つ以上の有機カチオンを含むことが好ましく、及び好ましくは、メチルアンモニウム(CH
3NH
3+)及びホルムアミジニウム(HC(NH
2)
2+)から選択される1つの有機カチオンを含む。[A]は、Cs
+、Rb
+、Cu
+、Pd
+、Pt
+、Ag
+、Au
+、Rh
+、及びRu
+から選択される1つ以上の無機カチオンを含み得る。
【0031】
[M]は、好ましくは、Pb
2+及びSn
2+から選択される少なくとも1つの二価無機カチオンを含み、好ましくは、Pb
2+を含む。
【0032】
好ましい例では、ペロブスカイト材料は一般式:
A
xA’
1−xM(X
yX’
1−y)
3 (IA)
を有する。ここで、Aはホルムアミジニウム(FA)であり、A‘はセシウムカチオン(Cs
+)であり、MはPb
2+であり、Xはヨウ化物であり、X’は臭化物であり、ここで、0<x≦1及び0<y≦1である。したがって、これらの好ましい実施形態では、ペロブスカイト材料は、2つの一価カチオンの混合物を含むことができる。さらに、好ましい実施形態では、したがって、ペロブスカイト材料は、単一のヨウ化物アニオン、又はヨウ化物アニオンと臭化物アニオンの混合物のいずれかを含むことができる。本発明者らは、そのようなペロブスカイト材料は、1.50eVから1.75eVのバンドギャップを有することができ、そのようなペロブスカイト材料の層は、好適な結晶形態及び相で容易に形成できることを見出した。より好ましくは、ペロブスカイト材料はFA
1−xCs
xPbI
3−yBr
yである。
【0033】
本発明で使用されるペロブスカイト材料は、光を吸収し、それによって自由電荷キャリアを生成することができるものである。したがって、使用されるペロブスカイトは、光を吸収するペロブスカイト材料である。しかしながら、当業者は、ペロブスカイト材料が、電子と正孔の両方の電荷を受け入れることによって光を放出することができ、その後再結合して光を放出することができるペロブスカイト材料であり得ることを理解するであろう。したがって、使用されるペロブスカイトは、発光デバイスで使用するための発光ペロブスカイトであり得る。
【0034】
本発明で製造されるペロブスカイト材料は、結晶性又は多結晶性であり、例えば複数の結晶で構成されている。
【0035】
当業者が理解するように、本発明で使用されるペロブスカイト材料は、光ドープされたときにn型の電子輸送半導体として作用するペロブスカイトであり得る。あるいは、それは、光ドープされたときにp型正孔輸送半導体として作用するペロブスカイトであり得る。したがって、ペロブスカイトは、n型又はp型であり得るか、又はそれは、名目上真性半導体であり得る。好ましい実施形態では、使用されるペロブスカイトは、光ドープされたときにn型の電子輸送半導体として作用するものである。ペロブスカイト材料は両極性電荷輸送を示す可能性があるため、n型とp型の両方の半導体として機能する。特に、ペロブスカイトは、ペロブスカイトと隣接する材料との間に形成される接合のタイプに応じて、n型及びp型の両方の半導体として機能し得る。
【0036】
典型的には、本発明で使用されるペロブスカイト半導体は、光増感材料、すなわち、光生成及び電荷輸送の両方を実行することができる材料である。
【0037】
本明細書で使用される「混合アニオン」という用語は、少なくとも2つの異なるアニオンを含む化合物を指す。「ハロゲン化物」という用語は、元素の周期表のグループ17から選択された元素のアニオン、すなわちハロゲンを指す。典型的には、ハロゲン化物アニオンは、フッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン又はアスタチン化物アニオンを指す。本明細書で定義されるペロブスカイト化合物は、複数のハロゲン化物アニオンを有し得る。ハロゲン化物アニオンの好適な組み合わせには、Br/Iが含まれる。
【0038】
本明細書で使用される「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」という用語は、その式が少なくとも1つの金属カチオン及び少なくとも1つのハロゲン化物アニオンを含むペロブスカイトを指す。本明細書で使用される「有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト」という用語は、その式が少なくとも1つの有機カチオンを含有する金属ハロゲン化物ペロブスカイトを指す。
【0039】
「有機カチオン」という用語は、炭素を含むカチオンを指す。カチオンは、さらなる元素を含み得、例えば、カチオンは、水素、窒素又は酸素を含み得る。「無機カチオン」という用語は、有機カチオンではないカチオンを指す。デフォルトでは、「無機カチオン」という用語は、炭素を含まないカチオンを指す。
【0040】
本明細書で使用される「n型」という用語は、正孔よりも電子の濃度が高い外因性半導体を含む領域、層、又は材料を指す。したがって、n型半導体では、電子が多数キャリアであり、正孔が少数キャリアであるため、電子輸送材料である。したがって、本明細書で使用される「n型領域」という用語は、1つ以上の電子輸送(すなわち、n型)材料の領域を指す。同様に、「n型層」という用語は、電子輸送(すなわち、n型)材料の層を指す。電子輸送(すなわち、n型)材料は、単一の電子輸送化合物又は元素材料、又は2つ以上の電子輸送化合物又は元素材料の混合物であり得る。電子輸送化合物又は元素材料は、ドープされていないか、又は1つ以上のドーパント元素又は化合物でドープされていてもよい。
【0041】
本明細書で使用される「p型」という用語は、電子よりも正孔の濃度が高い外因性半導体を含む領域、層、又は材料を指す。p型半導体では、正孔が多数キャリアであり、電子が少数キャリアであるため、正孔輸送材料である。したがって、本明細書で使用される「p型領域」という用語は、1つ以上の正孔輸送(すなわち、p型)材料の領域を指す。同様に、「p型層」という用語は、正孔輸送(すなわち、p型)材料の層を指す。正孔輸送(すなわち、p型)材料は、単一の正孔輸送化合物又は元素材料、あるいは2つ以上の正孔輸送化合物又は元素材料の混合物であり得る。正孔輸送化合物又は元素材料は、ドープされていないか、1つ以上のドーパント元素又は化合物でドープされていてもよい。
【0042】
本明細書で使用される「層」という用語は、実質的に層状の形態である(例えば、実質的に2つの垂直方向に延びるが、第3の垂直方向へのその伸長が制限される)いずれの構造を指す。層は、層の範囲にわたって変化する厚さを有し得る。典型的には、層の厚さはほぼ一定である。本明細書で使用される層の「厚さ」は、層の平均厚さを指す。層の厚さは、例えば、フィルムの断面の電子顕微鏡法などの顕微鏡法を使用することによって、又は例えばスタイラスプロフィロメータを使用する表面プロフィロメトリーによって、容易に測定することができる。
【0043】
反応プロセス
本発明は、3D有機−無機ハイブリッドハロゲン化物ペロブスカイト材料を製造するためのプロセスに関する。このプロセスには、2D有機−無機ハイブリッドハロゲン化物ペロブスカイト材料の目的の3Dペロブスカイト材料への変換が含まれる。好ましくは、3Dペロブスカイトは、高度に結晶性の材料である。さらに好ましくは、得られた3Dペロブスカイト材料は、高品質の光起電力吸収材料としての使用に好適である。
【0044】
図2は、本発明による方法のいくつかの可能なプロセスフローの概略図を示しており、
図14は、本発明の反応プロセス全体に対するこれらのプロセスフローの1つを示し、それを従来技術のルートと比較している。本発明のプロセスは、基板上に2Dペロブスカイト材料の層を形成し、この2Dペロブスカイト材料層を反応ステップに供して、2Dペロブスカイト材料を3Dペロブスカイト類似体に変換することを含む。
【0045】
その最も広い態様において、本発明は、式AMX
3によって表される三次元結晶構造を含む有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の結晶層又は多結晶層を形成する方法を提供する。ここで、Aは有機カチオン又は2つ以上の異なるカチオンの混合物を表し、そのうちの少なくとも1つは有機カチオンであり、Mは、2価の金属カチオン又は2つ以上の異なる2価の金属カチオンの混合物を表し、Xは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表し、当該方法は、以下のステップ:
(i) 基板の表面に第1の層を形成するステップであって、前記第1の層は、平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含むステップ、
(ii) 式AMX
3を有する有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む結晶層又は多結晶層を形成するため、前記第1の層を1つ以上の有機ハロゲン化物と反応させるステップ、
を含む。
【0046】
平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層を形成する様々な方法が存在する。一態様では、本発明は、式AMX
3によって表される三次元結晶構造を含む有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の結晶層又は多結晶層を形成する方法を提供する。ここで、Aは、同じ又は異なる1つ以上のカチオンを表し、少なくとも1つは有機カチオンを含み、Mは、1つ以上の2価金属の混合物を表し、及びXは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンである。当該方法は、以下のステップ:
● 基板の表面に第1の層を形成するステップであって、前記第1の層は、平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含むステップ;
● 1つ以上の有機ハロゲン化物を含む材料を前記第1の層に堆積させるステップ;及び
● 前に定義された式AMX
3を有する有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む多結晶層を形成するため、前記第1の層とその上に堆積した混合物を反応させるステップ;
を含む方法:
【0047】
言い換えれば、請求項1に記載の方法において、ステップ(ii)は、
a) 1つ以上の有機ハロゲン化物を含む材料を前記第1の層に堆積させること;及び
b) 式AMX
3を有する有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む結晶層又は多結晶層を形成するため、前記第1の層とその上に堆積した材料を反応させること;
を含む。
【0048】
他の実施形態では、1つ以上の有機ハロゲン化物を含む材料を第1の層に堆積させる別個のステップはない。ステップ(i)が実行されている間、有機ハロゲン化物はすでに存在している可能性があるため、有機ハロゲン化物を別個に添加する必要はない。これを
図2Bに示す。
【0049】
ステップi)では、二次元結晶構造は典型的には、一般式L
2MX
4を持つ。ここで、Lは最終的なペロブスカイト生成物には現れない配位子である。好ましくは、Lは、有機又は無機カチオン、又は同じであっても異なっていてもよい有機又は無機カチオンの混合物である。Mは、二価金属カチオン又は2つ以上の異なる二価金属カチオンの混合物である。Xは1つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。
【0050】
好ましくは、2D材料は、式L
2L’
n−1M
nX
3n+1又はL
2K
n−1M
nX
3n+3又はLL’
n−1M
nX
3n+1又はL
2L’
nM
nX
3n+2を有する。ここで、L及びL’は、同じ又は異なる可能性のある有機又は無機カチオンを表し、KはLとは異なる有機カチオンを表し、Mは1つ以上の2価金属を表し、Xは1つ以上の異なるハロゲン化物アニオンを表す。
【0051】
理想的には、3D有機−無機ハイブリッドハロゲン化物ペロブスカイトは本質的に2Dペロブスカイト材料を含まない。これは、3D有機−無機ハイブリッドハロゲン化物ペロブスカイト生成物層が、典型的には5wt%未満、好ましくは2wt%未満、さらにより好ましくは1wt%未満の2dペロブスカイト材料を含むことを意味する。
【0052】
上記のような二次元有機−無機ハイブリッドハロゲン化物ペロブスカイトの基板上に第1の層を形成するステップ(i)は、いずれの便利な方法を使用して達成することができる。好適な方法には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
i) 物理的又は化学的蒸着(vapour desposition)、
ii) 溶液からの堆積(deposition)(これには、オプションでスピンコーティング又は浸漬技術が含まれる場合がある)、及び
iii) 前駆体化合物の堆積、例えば、物理蒸着又は溶液からの1つ以上の金属ハロゲン化物と、それに続くこの前駆体化合物の目的のL
2MX
4材料への変換による。
【0053】
反応プロセスのこの第1のステップは、一般的な反応スキームで表すことができる。
MX
2 + 2LX → L
2MX
4
【0054】
本発明による第1の方法では、第1の層は、2D−ペロブスカイト材料の物理的又は化学的蒸着によって形成される。
【0055】
本発明の代替方法では、第1の層は、溶液からの2Dペロブスカイト材料の堆積によって形成される。
【0056】
本発明によるさらなる代替方法において、第1の層は、少なくとも1つの金属ハロゲン化物前駆体材料を含む前駆体層の物理蒸着と、それに続く2D−ペロブスカイト材料を含む第1の層への前駆体層の変換によって形成される。
【0057】
上記のさらなる代替方法のバリエーションにおいて、第1の層は、少なくとも1つの金属ハロゲン化物前駆体材料を含む前駆体層の溶液からの堆積、続いて前駆体層の2D−ペロブスカイト材料を含む第1の層への変換によって形成される。
【0058】
二次元有機−無機ハイブリッドハロゲン化物ペロブスカイトの第1の層は、いずれの構造形態の複数の2Dペロブスカイト層を含み得る。好ましくは、構造形態は、導入部で論じられたタイプ、例えば、好ましくは一般式 A
n−1A
2’M
nX3
n+1を採用する「Ruddelsden−Popper perovskites」;一般式 A’
2A
nM
nX
3n+2を採用することが好ましい、「{110}パラレルペロブスカイト」;一般式A’
2A
n−1M
nX3
n+3を採用することが好ましい「Aurivilliusペロブスカイト」及び好ましくは一般式CA
n−1M
nX
3n+1を採用する「Dion−Jacobsonペロブスカイト」;である。n=2の場合のこれらファミリーの各々の例を
図4に示す。
【0059】
二次元有機無機ハイブリッドハロゲン化物ペロブスカイトの第1の層が、以下: Ruddelsden−Popperの構造形態、Ruddlesden−Popper形態に類似した、又は派生した構造形態、及び、Ruddelsden−Popper又は同様の構造形態のものと同じ又は実質的に同様の方法で動作する2Dペロブスカイトを生成する構造形態、のうちの少なくとも1つを採用する複数の2Dペロブスカイト層を含むことが特に好ましい。
【0060】
特定の実施形態では、A及びL’は、最終的な3D層に存在する同じカチオンを表し、Cs、Rb、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、又はグアニジニウムから選択される。
【0061】
Lは、最初の2D前駆体層のカチオンであるが、最後の3D層ではなく、次から選択される:Cs、Rb、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、又は有機イオンR
3NH
+、ここで、Rは、H、非置換又は置換アリール基、又は非置換又は置換アルキル基、例えば、メチルアンモニウム又はエチルアンモニウムから選択される。具体的な例は、−フェネチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、n−ペンチルアンモニウム、n−ヘキシルアンモニウム、n−ヘプチルアンモニウム、n−オクチルアンモニウム、ナフチルエチルアンモニウム、2−(2−ナフチル)エタンアンモニウム(ethananammonium)、ベンジルアンモニウム、フェニルアンモニウム、2−チオフェンエチルアンモニウム、t−ブチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、1,4−ブタンジアンモニウム、2,2’−ジチオビス(エチルアンモニウム)、3−(アンモニオメチル)ピペリジン、4−(アンモニオメチル)ピペリジン、2−(4−ビフェニル)エチルアンモニウム、1,4−ブタンジアンモニウム、1,5−ペンタンジアンモニウム、1,6−ヘキサンジアンモニウム、1,7−ヘプチルジアンモニウム、1,8−オクトジアンモニウム、1,9−ノナジアンモニウム、1,4−ベネゼンジアンモニウム、及び4−メトキシ−フェネチルアンモニウム、が含まれる。Kは、最初の2D層の別のカチオンであるが、最後の3D層ではなく、式 H
+R
2NR’NR
2H
+を持つ。ここで、Rは、H、非置換又は置換アリール基又は非置換又は置換アルキル基から選択され、R’は、非置換又は置換アリール基又は非置換又は置換アルキル基であり得る。
【0062】
本発明の一態様によるプロセスのステップii)において、1つ以上のハロゲン化物を含む材料が第1の層上に堆積されるとき、第1の層は、有機ハロゲン化物AY及びAZを含む蒸気に曝され得る。ここで、Y及びZは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンであり、カチオンAは、同じ又は異なるものであり、以下の金属のカチオンからなる群から選択される: Cs、Rb、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、又は有機イオンR
3NH
+、ここで、Rは、H、非置換もしくは置換アリール基、非置換もしくは置換アルキル基、又はH
+R
2NR’NR
2H
+から選択され、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得、且つR’は非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得る。Y及びZハロゲン化物アニオンは、最終的な3Dペロブスカイト生成物のグループXで表されるアニオンになる。
【0063】
ハロゲン化物AY及びAZのA基の優先基は、最終的なAMX
3ペロブスカイト生成物に記載されているものに対応する。
【0064】
この発明による反応のステップii)は、一般的な反応スキームによって表すことができる:
L
2MX
4 + AY + AZ → AMXZY
【0065】
この発明による反応のステップii)は、一般に、200度未満の温度に加熱することによって、好ましくは摂氏100度から180度の間の温度に加熱することによって実行される。
【実施例】
【0066】
実施例
本発明のプロセスの反応スキームの概要を
図2に示す。
【0067】
実施例1(a) − [FA]PbI
2Brの形成
(a)。 厚さ300nmのPbI
2の層をガラス基板上に蒸着する。溶液中に10重量(by weight)パーセントのPEAIを含む1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)に溶解したヨウ化フェネチルアンモニウム(PEAI)の溶液を作成し、0.2μmフィルターで濾過する。次に、この溶液は、典型的には、空気環境で7000rpmの回転速度でPbI
2の層にスピンコーティングされる。次に、基板をオーブンに移し、90℃で30分間焼く。これは、平面層が基板の表面の法線に垂直に配向され、式(PEA)
2PbI
4を有する平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層を形成する。この層の厚さは約400nmになる。
(b)。 ヨウ化ホルムアミジニウム(FAI)と臭化ホルムアミジニウム(FABr)を無水イソプロピルアルコール(IPA)に溶解した溶液、ここで、溶液中の固形分は5重量パーセント、FAI:FABrのモル比は0.7:1、が構成されている。溶液を0.2μmフィルターで濾過し、乾燥窒素環境中で5000rpmの回転速度で上記のステップ(a)で調製した第1の層上にスピンコーティングする。次に、基板をホットプレートに移し、50℃で1分間焼き、次にオーブンに移し、160℃で60分間焼く。これは、式[FA]PbI
2Brを有する三次元ペロブスカイト構造を有する材料の層を形成する。この層の厚さは約400nmになる。
【0068】
実施例1(b) − [FA]PbI
2Brの形成
方法は上記の通りであるが、PbI
2の最初の層は溶液から堆積される。
【0069】
実施例2 − [FA]
(1−x)Cs
(x)PbI
2Brの形成
(a)。 厚さ300nmのPbI
2とCsIの混合物を含む層は、ガラス基板上に共蒸着(co-evaporation)によって堆積される。混合物は、最終的な3Dペロブスカイトのターゲット組成に応じてCs:Pbの望ましいモル比を持つように制御される。ヨウ化フェネチルアンモニウム(PEAI)を1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)に溶解し、溶液中に10重量(by weight)パーセントのPEAIを含む溶液を作成し、0.2μmフィルターでろ過する。次に、この溶液は、PbI
2+CsIの層上に、典型的には空気環境で7000rpmのスピン速度でスピンコーティングされる。次に、基板をオーブンに移し、90℃で30分間焼く。これは、平面層が基板の表面の法線に垂直に配向され、式 ((PEA)
1−xCs
(x))PbI
4を有する平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層を形成する。この層の厚さは約400nmになる。
(b)。 ヨウ化ホルムアミジニウム(FAI)と臭化ホルムアミジニウム(FABr)を無水イソプロピルアルコール(IPA)に溶解した溶液、ここで、溶液中の固形分は5重量パーセント、FAI:FABrのモル比は0.7:1である、を作成する。溶液を0.2μmフィルターで濾過し、乾燥窒素環境中で5000rpmの回転速度で上記のステップ(a)で調製した第1の層上にスピンコーティングする。次に、基板をホットプレートに移し、50℃で1分間焼き、次にオーブンに移し、160℃で60分間焼く。これにより、式[FA]
(1−x)Cs
(x)PbI
2Brの3次元ペロブスカイト構造を持つ材料の層が形成される。この層の厚さは約400nmになる。
【0070】
実施例3 − [MA]PbI
2Brの形成
(a)。 厚さ300nmのPbI
2の層をガラス基板上に蒸着する。ヨウ化フェネチルアンモニウム(PEAI)を1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)に溶解し、1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)に溶解したヨウ化フェネチルアンモニウム(PEAI)の溶液、ここで、10重量パーセントのPEAIが含まれている、を作成し、0.2μmフィルターでろ過する。次に、この溶液は、典型的には、空気環境で7000rpmの回転速度でPbI
2の層にスピンコーティングされる。次に、基板をオーブンに移し、90℃で30分間焼く。これは、平面層が基板の表面の法線に垂直に配向され、式(PEA)
2PbI
4を有する平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層を形成する。この層の厚さは約400nmになる。
(b)。 ヨウ化メチルアンモニウム(MAI)と臭化メチルアンモニウム(MABr)を無水イソプロピルアルコール(IPA)に溶解した溶液、ここで、溶液中の固形分は5重量パーセント、MAI:MABrのモル比は0.7:1である、を作成する。溶液を0.2μmフィルターで濾過し、乾燥窒素環境中で5000rpmの回転速度で上記のステップ(a)で調製した第1の層上にスピンコーティングする。次に、基板をホットプレートに移し、50℃で1分間焼き、次にオーブン(over)に移し、160℃で60分間焼く。これは、式[MA]PbI
2Brを有する三次元ペロブスカイト構造を有する材料の層を形成する。この層の厚さは約400nmになる。
【0071】
実施例4
平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層、ここで、平面層は、上記の実施例1から3のステップ(a)で述べた基板の表面の法線に対して垂直に配向されている、は、代替の実施形態では、例えば、Masanao Era et al., “Self −Organised Growth of PbI−based Layered Perovskite Quantum Well by Dual−Source Vapour Deposition” Chem. Mater. Vol. 9, No. 1, pp 8 − 10 [1997]、に記載されているように、気相から直接成長させることができる。
【0072】
実施例5
上記の実施例1から3において、有機ハロゲン化物(FAI及びFABr)は、PEAIと共に最初の反応混合物に添加され得る。したがって、有機ハロゲン化物は別のステップ(b)で追加されない。有機ハロゲン化物とPEAIの両方が金属ハロゲン化物膜に送られ、2Dペロブスカイト構造がin situでFAとともに形成される。3Dペロブスカイト構造は、上記の実施例で説明したのと同じ方法で加熱することによって形成される。
【0073】
実施例6
以下に説明するように、18個の機能するデバイスを構築してテストした。デバイスは2つのグループに分けられた: 第1のものは、実施例2で上記したように、本発明の2Dプロセスに従って生成されたペロブスカイト層を有する、第2のものは、従来技術の2ステッププロセスに従って生成されたペロブスカイト層を有する。
【0074】
デバイスは、ガラス基板上に構築され、金電極と接触したn−i−p単一接合であり、両方のグループで同じデバイス構造が使用され、ペロブスカイト堆積のみが変更された。太陽電池の電流−電圧(JV)特性は、ABETクラスAAB太陽2000シミュレーターによって生成されたシミュレートされたAM1.5太陽光(1−Sun、100 mW cm
−2)の下で、周囲空気中で記録された。ソーラーシミュレーターは、認定されたKG3フィルター処理されたシリコンリファレンスセルを使用して、1.6eVペロブスカイトバンドギャップ用に校正された。各デバイスは、Keithley2400ソースメーターを使用して20mVの電圧ステップで測定された。すべてのデバイスは、アクティブ領域を定義し、エッジ効果を排除するために、0.0919cm
2の金属アパーチャでマスクされた。
【0075】
分割(split)あたり18個の機能するデバイスの平均効率は、本発明の2ステッププロセスで14.84、2Dプロセスで15.93であった。
【0076】
抽出されたパラメータと比較データを以下の表に示す。ここで、図は
図13のプロットから導き出される。
【表1】
表中、2D Route 2Dルート;2 step process 2ステッププロセス;
【0077】
データを
図13に示す。この図は、2Dルートと2ステッププロセスによって準備された単一接合デバイスの電流−電圧スイープのプロットを示す。ここでは、より高いフォトルミネッセンス量子効率(PLQE)から予想されるように、2Dルートを介したVocゲインが見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】US2018/0247769
【特許文献2】WO2016/194317
【特許文献3】CN108539025
【特許文献4】US2016/0049585
【非特許文献】
【0079】
【非特許文献1】J.Nelson“ThePhysics of SolarCells”pp297−309,Imperial College Press [2003] ISBN−13 978− 1−86094−340−9
【非特許文献2】“Photovoltaic Solar Energy − from Fundamentals to Applications” [2017], edited by A Reinders et al. Wiley ISBN 9781118927465
【非特許文献3】Masanao Era et al., “Self −Organised Growth of PbI−based Layered Perovskite Quantum Well by Dual−Source Vapour Deposition” Chem. Mater. Vol. 9, No. 1, pp 8 − 10 [1997]
【手続補正書】
【提出日】2020年1月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式AMX3で表される三次元結晶構造を含む有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の結晶層又は多結晶層を形成する方法であって、
ここで、Aは、有機カチオン又は2つ以上の異なるカチオンの混合物を表し、そのうちの少なくとも1つは有機カチオンであり、
Mは、2価の金属カチオン又は2つ以上の異なる2価の金属カチオンの混合物を表し、且つ
Xは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表し、
当該方法は、以下のステップ:
(i) 基板の表面に第1の層を形成するステップであって、前記第1の層は、平面の層状二次元結晶構造を有する有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含むステップ、および
(ii) 式AMX3を有する有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む結晶層又は多結晶層を形成するため、前記第1の層を1つ以上の有機ハロゲン化物と反応させるステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(ii)は、
a) 1つ以上の有機ハロゲン化物を含む材料を前記第1の層に堆積させること;及び
b) 式AMX3を有する有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む前記結晶層又は多結晶層を形成するため、前記第1の層とその上に堆積した材料を反応させること;
を含む、請求項1に記載の有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の結晶層又は多結晶層を形成する方法。
【請求項3】
ステップi)において、前記第1の層は、L2L’n−1MnX3n+1、L2Kn−1MnX3n+3、LL’n−1MnX3n+1又はL2L’nMnX3n+2から選択される式を有する材料を含み、ここで、L及びL’同じ又は異なることができる有機又は無機カチオンを表し、Kは有機カチオンを表し、Lとは異なり、Mは二価金属カチオン又は2つ以上の異なる二価金属カチオンを表し、Xは同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
L、L‘及びKは、ナフチルエチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、フェニルアンモニウム、n−ペンチルアンモニウム、2−チオフェンエチルアンモニウム、t−ブチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、1,4−ブタンジアンモニウム、及びシスタミン二水素化物、からなる群から独立して選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の層は、平面の層状二次元結晶構造を有する前記有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の物理的又は化学的蒸着によって形成される、請求項1から4のいずれかに記載方法。
【請求項6】
前記第1の層は、溶液からの前記有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料の堆積によって形成される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の層は、1つ以上の金属ハロゲン化物材料を含む前記基板の表面に前駆体材料を堆積させることによって、続いて、前記金属ハロゲン化物前駆体材料を、平面の層状二次元結晶構造を有する前記有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層に変換することによって、形成される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
平面の層状二次元結晶構造を有する前記有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む前記第1の層を形成するため、1つ以上の有機ハロゲン化物材料を金属ハロゲン化物前駆体材料上に堆積させること、且つ有機ハロゲン化物及び金属ハロゲン化物材料を反応させることによって、金属ハロゲン化物前駆体材料が第1の層に変換される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の有機ハロゲン化物材料は、ヨウ化ナフチルエチルアンモニウム、ヨウ化n−プロピルアンモニウム、ヨウ化ベンジルアンモニウム、ヨウ化フェニルアンモニウム、ヨウ化n−ペンチルアンモニウム、ヨウ化2−チオフェンエチルアンモニウム、ヨウ化t−ブチルアンモニウム、ヨウ化ジエチルアンモニウム、ヨウ化イソブチルアンモニウム、ヨウ化シクロヘキシルアンモニウム、ヨウ化シクロヘキシルメチルアンモニウム、ヨウ化エチルアンモニウム、2ヨウ化(diodide)1,4−ブタン二アンモニウム、及びジヒドロヨウ化シスタミン、からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の有機ハロゲン化物材料を含む基板の表面に前駆体材料を堆積させることによって、続いて、1つ以上の金属ハロゲン化物材料を堆積すること、続いて、有機ハロゲン化物及び金属ハロゲン化物材料を、平面の層状二次元結晶構造を有する前記有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む第1の層に変換することによって、前記第1の層が形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体材料が溶液から堆積される、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の有機ハロゲン化物材料が、溶媒に溶解された1つ又は複数の有機ハロゲン化アンモニウムの溶液から1つ以上の金属ハロゲン化物材料上に堆積され、続いて前記溶媒が除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、1−ブタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシ−メタノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノ−tert−ブチル(buyl)エーテル及びトルエンからなる群から選択される1つ以上の溶媒を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機ハロゲン化アンモニウムが、ヨウ化ナフチルエチルアンモニウム、ヨウ化n−プロピルアンモニウム、ヨウ化ベンジルアンモニウム、ヨウ化フェニルアンモニウム、ヨウ化n−ペンチルアンモニウム、ヨウ化2−チオフェンエチルアンモニウム、ヨウ化t−ブチルアンモニウム、ヨウ化ジエチルアンモニウム、ヨウ化イソブチルアンモニウム、ヨウ化シクロヘキシルアンモニウム、ヨウ化シクロヘキシルメチルアンモニウム、ヨウ化エチルアンモニウム、2ヨウ化(diodide)1,4−ブタンジアンモニウム、及びジヒドロヨウ化シスタミン、からなる群から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
ここで、Mは、Pb、Sn、Sb、及びCuからなる群から選択される金属のうち1つ以上を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップa)の材料は、ハロゲン化物AY及びAZを含む蒸気に前記第1の層を曝すことによって堆積される、ここで、Y及びZは同じ又は異なるハロゲン化物アニオンであり、カチオンAは同じ又は異なるものであり、且つ以下の金属のカチオンからなる群から選択される: Cs、Rb、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、又は有機イオンR3NH+、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基、又は非置換もしくは置換アルキル基から選択され、又はH+R2NR’NR2H+、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得、R’は非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得る、請求項2に記載の、又はそれに従属する場合は請求項3から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ステップa)の材料は、ハロゲン化物AY及びAZの溶液から堆積される、ここで、Y及びZは同じ又は異なるハロゲン化物アニオンであり、カチオンAは同じ又は異なるものであり、且つ以下の金属のカチオンからなる群から選択される: Cs、Rb、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、又は有機イオンR3NH+、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基、又は非置換もしくは置換アルキル基から選択され、又はH+R2NR’NR2H+、ここで、RはH、非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得、R’は非置換もしくは置換アリール基又は非置換もしくは置換アルキル基であり得る、請求項2に記載の、又はそれに従属する場合は請求項3から15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ステップii)の反応が、材料を室温より上に加熱することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記加熱することは、摂氏200度未満、好ましくは摂氏100度から180度の間の温度で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式AMX3で表される三次元結晶構造を含む有機−無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料を含む活性層を包含する光電子又は光起電力デバイスを作成する方法であって、
ここで、Aは有機カチオン又は2つ以上の異なるカチオンの混合物を表し、そのうちの少なくとも1つは有機カチオンであり、
Mは、2価の金属カチオン又は2つ以上の異なる2価の金属カチオンの混合物を表し、
Xは、同じ又は異なるハロゲン化物アニオンを表す、
ここで、当該方法は、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法によって活性層を含む材料を形成することを含む、方法。
【国際調査報告】