【発明を実施するための形態】
【0012】
以下より、本発明に係る実施形態について説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されない。
【0013】
[光学シート]
実施形態の光学シートは、透明基材と着色層とを有している。
【0014】
また、実施形態の光学シートは、赤外光の透過率T
1が、下記の式(A)に示す関係を満たすと共に、可視光の透過率T
2が下記の式(B)に示す関係を満たす。
【0015】
さらに、実施形態の光学シートは、色度座標x、yが、下記の式(C)および下記の式(D)に示す関係を満たす。
【0016】
さらに、実施形態の光学シートは、ヘイズhが、下記式(E)に示す関係を満たす。
【0017】
T
1≧80% ・・・(A)
T
2≦25% ・・・(B)
0.150≦x≦0.350 ・・・(C)
0.150≦y≦0.350 ・・・(D)
h≦15% ・・・(E)
【0018】
実施形態の光学シートは、赤外光の透過率T
1が、式(A)を満たすため、赤外線センサの受光光量が十分であり、センサとして良好に機能する。
【0019】
実施形態の光学シートは、可視光の透過率T
2が式(B)を満たすため、赤外線センサが周辺の部材に対して目立つことがなく、良好な黒色を呈する。
【0020】
実施形態の光学シートは、色度座標xが、式(C)を満たすため、緑味または赤味をおびることなく、良好な黒色を呈する。
【0021】
実施形態の光学シートは、色度座標yが、式(D)を満たすため、青味または黄味をおびることなく、良好な黒色を呈する。
【0022】
実施形態の光学シートは、ヘイズhが、式(E)を満たすため、外光の反射光が白くぼやけず、クリアで自然な反射光となる効果を奏することができる。
【0023】
[透明基材]
光学シートにおいて、透明基材は、透明なフィルムであって、可視光を透過すると共に、赤外光を透過する。たとえば、透明基材は、PET(Polyethylene terephthalate)などの透明樹脂で形成されており、着色層を支持している。
【0024】
[着色層]
光学シートにおいて、着色層は、透明基材の面に設けられている。着色層は、色素と、バインダとを含み、色素がバインダ中に点在している。着色層においては、色素とバインダとの他に、添加剤を任意に含有させてもよい。
【0025】
着色層の層厚は、所望な特性に応じて任意であるが、0.3〜100μmが好ましく、0.5〜50μmがより好ましい。
【0026】
(色素)
着色層のうち、色素は、たとえば、可視光を吸収することによって色を発する物質である。ここでは、色素として、染料を用いることが好ましい。また、アンスラキノン系色素、キノフタロン系色素などの色素が使用可能であって、複数種の色素を、適宜、組み合わせて使用することができる。
【0027】
アンスラキノン系色素としては、例えば、下記の一般式(1)および、一般式(2)で表される化合物を使用することが好ましい。
【0029】
式(1)において、R
1〜R
8のそれぞれは、下記の(1a)〜(1i)に示す、いずれかである。
(1a)水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基のいずれか
(1b)1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルキル基
(1c)フェニル基
(1d)1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基
(1e)炭素数1〜12のアルコキシル基
(1f)1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルコキシル基
(1g)−CO−R
h(ただし、R
hは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)
(1h)−S−R
i(ただし、R
iは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれか)
(1i)−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基)
【0030】
式(1)で表される化合物のうち、R
8は、−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)であることが好ましい。また、R
1、R
4、R
5、およびR
6は、こららのうち1つが、水酸基、フェニル基、および1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基から選ばれる1つであり、これらのうちの残りの3つが水素原子であることが好ましい。R
2、R
3、R
7は、水素原子であることが好ましい。このような化合物は、溶剤への溶解性が優れるので好ましい。
【0032】
式(2)において、R
9〜R
22のそれぞれは、下記の(2a)〜(2i)に示す、いずれかである。
(2a)水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、炭素数1〜12のアルキル基のいずれか
(2b)1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルキル基
(2c)フェニル基
(2d)1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基
(2e)炭素数1〜12のアルコキシル基、
(2f)1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているアルコキシル基
(2g)−CO−R
j(ただし、R
jは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれか)
(2h)−S−R
k(ただし、R
kは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれか)
(2i)−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基)
【0033】
アンスラキノン系色素としては、式(1)で表される化合物が、溶剤への溶解性の観点で好ましい。式(1)で表されるアンスラキノン系色素としては、例えば、商品名が「カヤセットViolet A−R」、「カヤセットBlue N」、「カヤセットBlue FR」、「カヤセットGreen A−B」(日本化薬社製)等が挙げられる。
【0034】
本実施形態では、特に、アンスラキノン系の色素を用いることが好ましい。アンスラキノン系の色素を用いた場合には、光学シートの耐久性を向上できる。
【0035】
着色層においては、式(A),式(B),式(C),式(D),式(E)のそれぞれを満たすように、色素が適宜選択されて含有している。具体的には、着色層において、色素の含有量は、100質量部のバインダに対して、0.1〜20質量部にすることが好ましく、さらに、0.2〜10質量部にすることが好ましい。色素の含有量が0.1質量部以下の場合には、可視光の透過率T
2を十分に下げられない場合がある。色素の含有量が20質量部以上の場合には、色素がバインダに十分に溶解しなくなる場合がある。
【0036】
(バインダ)
着色層のうち、バインダは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂材料であり、適宜、選択して使用できる。
【0037】
ここでは、バインダとして粘着剤を用いることによって、着色層を粘着層として機能させてもよい。
【0038】
粘着剤としては、アクリル系、シリコーン系、ブタジエン系、ウレタン系などの粘着材料を、適宜、選択して使用可能である。このうち、アクリル系粘着剤を用いることが、特に好ましい。アクリル系粘着剤は、アクリル系単量体を主成分として構成された重合体である。アクリル系粘着剤は、ガラス転移温度(Tg)が、−40〜40℃が好ましく、−30〜10℃がより好ましい。
【0039】
また、粘着剤の凝集力を高めるために、架橋点になる官能基(たとえば、ヒドロキシル基、グリシジル基等)を有するものを使用することが好ましい。架橋点を有する場合には、架橋剤を用いて架橋させることによって凝集力を確保できる。
【0040】
架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、金属水酸化物、金属キレート、ポリイソシアネート、カルボキシ基含有ポリマー、酸無水物、ポリアミンなどの物質を、適宜、選択して使用可能である。たとえば、粘着剤がアクリル系である場合には、ポリイソシアネートが架橋剤として使用可能である。
【0041】
なお、一般的に、酸性の粘着剤の場合には、色素が劣化して変色する場合があるため、酸価が0mgKOH/gである粘着剤を用いることが好ましい。たとえば、商品名が「NCK101」(東洋インキ社製、酸価=0mgKOH/g)であるものを利用できる。
【0042】
[その他の添加剤]
上記の他に、着色層においては、必要に応じて、色調補正色素、光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等の成分を、適宜、添加剤として含有させてもよい。
【0043】
(色調補正色素)
色調補正色素は、可視光の波長域のうち一部を吸収し、透過可視光の色調を補正するために添加される。
【0044】
色調補正色素としては、例えば、アゾ系、縮合アゾ系、ジイモニウム系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、金属錯体系、ポルフィリン系、テトラアザポルフィリン系などを、適宜選択して使用可能である。これらのうち、アンスラキノン系色素、キノフタロン系色素およびテトラアザポルフィリン系色素の少なくとも1つを用いることが、耐候性、バインダとの相溶性または分散性の観点から好ましい。
【0045】
色調補正色素の含有量は、100質量部のバインダに対して、0.001〜20質量部が好ましく、特に、0.01〜10質量部が好ましい。
【0046】
(光安定剤)
光安定剤としては、公知のものを使用可能であるが、特に、カルバミン酸ニッケルを使用することが好ましい。カルバミン酸ニッケルは、光によって励起された色素からエネルギーを受け取ることによって、色素が分解することを効果的に防止できる。
【0047】
光安定剤の含有量は、100質量部のバインダに対して、0.001〜20質量部が好ましく、特に、0.01〜10質量部が好ましい。
【0048】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、トリアジン系、オキザニリド系、ニッケル錯塩系、無機系等を、適宜、選択して使用可能である。
【0049】
紫外線吸収剤の含有量は、100質量部のバインダに対して、0.1〜30質量部が好ましく、特に、0.5〜20質量部が好ましい。
(黒色部)
黒色部は、例えば、バインダに黒顔料を添加した黒インキが広く使われ、100質量部のバインダに対して、黒顔料が1〜50質量部であることが好ましく、特に10〜30質量部であることが好ましい。
【0050】
[光学シートの製造方法]
以下より、上記の光学シートを製造する製造方法の一例について説明する。
【0051】
上記の光学シートを製造する際には、まず、着色層を構成する色素とバインダ(たとえば、粘着剤)とを少なくとも含む塗布液を調製して準備する。塗布液については、たとえば、メチルエチルケトン(MEK),トルエンなどのケトン系の有機溶媒に、着色層を構成する色素などを溶解させた後に、その溶液にバインダなどを溶解させて形成する。
【0052】
この他に、シリコーンなどで形成された離型膜がPETフィルム上に設けられたセパレータを準備する。また、PETフィルムなどの透明基材を準備する。
【0053】
そして、セパレータ上に上記の塗布液を塗布した後に乾燥することによって、セパレータ上に着色層を形成する。ここでは、アプリケータを用いて塗布を行い、オーブンを用いて乾燥を行う。
【0054】
そして、透明基材が着色層を介してセパレータに対面するように、透明基材をラミネートすることによって、上記の光学シートを完成させる。
【0055】
[光学シートの設置について]
以下より、上記の光学シートの設置に関して説明する。ここでは、フラットディスプレイパネルに光学シートを設置する場合について説明する。
【0056】
図1は、実施形態に係る光学シートが設置された一例を示す断面図である。
図1では、フラットディスプレイパネルの画像表示面に対面して設置されたカバーガラスの外枠部分を、拡大して示している。
【0057】
図1に示すように、光学シート1は、透明基材11と着色層12とを有しており、着色層12がカバーガラス20の側に位置するように設置されている。ここでは、着色層12は、粘着層として機能するように粘着剤を含有している。光学シート1は、セパレータ(図示省略)を着色層12から剥離した後に、その着色層12をカバーガラス20に対面させて貼り付けることによって設置される。そして、光学シート1の着色層12によって、外枠が構成される。この場合、カバーガラス20を透過した光のうち、赤外光が、着色層12と透明基材11とを順次透過して、赤外センサ(図示省略)の本体に設けられた受光面に入射する。
【0058】
図2は、実施形態に係る光学シートが設置された他の例を示す断面図である。
図2では、
図1と同様に、フラットディスプレイパネルの画像表示面に対面して設置されたカバーガラスの外枠部分を、拡大して示している。
【0059】
図2に示すように、カバーガラス20の外枠部分においては、黒色部21が、グラビア印刷、スクリーン印刷などの印刷によって形成されていてもよい。この場合には、光学シート1は、黒色部21を介して、カバーガラス20に対面するように設置される。黒色部21には、開口21Kが形成されており、光がカバーガラス20を透過した後に、黒色部21の開口21Kを通過する。そして、その開口21Kを通過した光のうち、赤外光は、光学シート1によって大部分がカットされずに光学シート1を透過して、赤外センサ(図示省略)の本体に設けられた受光面に入射する。これに対して、その開口21Kを通過した光のうち、可視光は、光学シート1によって大部分がカットされる。
【0060】
本実施形態の光学シート1は、上述したように、赤外光の透過率T
1が式(A)を満たすと共に、可視光の透過率T
2が式(B)を満たす。つまり、本実施形態の光学シート1は、赤外光の透過率T
1が、可視光の透過率T
2よりも大きい。このため、本実施形態では、赤外センサにおいて効果的に赤外線を検知することできる。なお、赤外光は800〜1000nmの波長域の光、可視光は380〜800nmの波長域の光をいう。
【0061】
また、本実施形態の光学シート1は、上述したように、色度座標x、yが式(C)および式(D)を満たしており、
図2の場合においては、色度座標x、yが黒色部21と同様である。これと共に、本実施形態の光学シート1は、上述したように、ヘイズhが、式(E)を満たしており、ヘイズhが黒色部21と同様である。さらに、本実施形態の光学シート1は、上述したように、可視光の透過率T
2が式(B)を満たし、低い。このため、本実施形態の光学シート1は、赤外センサの本体を効果的に隠蔽可能であるとともに、黒味が高いので、意匠性を向上できる。
【0062】
この他に、
図1に示したように、光学シート1の着色層12によって外枠を構成した場合には、カバーガラス20に黒色部21(
図2参照)を印刷する工程が不要になる。また、光学シート1の着色層12によって、外枠の色が全て統一されるため、見栄えを向上できる。
【0063】
上記の光学シート1では、着色層12が粘着剤を含み、着色層12が粘着剤層としても機能する場合について説明したが、これに限らない。着色層12が粘着剤を含有しなくてもよい。その場合には、別途、粘着剤層(図示省略)を着色層12に積層してもよい。
【実施例】
【0064】
以下より、本発明の実施例等について説明する。表1に示す各例のうち、例1と例2は、実施例であり、例3から例6は、比較例である。以下より、各例の詳細について順次説明する。
【0065】
[例1]
例1の光学シートを製造する際には、まず、着色層を構成する色素とバインダ(粘着剤)とを少なくとも含む塗布液を調製して準備した。
【0066】
ここでは、下記に示すように、複数種のアンスラキノン系色素と、キノフタロン系色素(色調補正色素)と、紫外線吸収剤と、カルバミン酸ニッケル(光安定剤)とのそれぞれをメチルエチルケトン(有機溶媒)に添加した後に、ミキサーを用いて10分間撹拌することによって、溶解させた。そして、下記に示すように、アクリル系粘着剤と架橋剤とを、上記の溶液に添加した後に、ミキサーを用いて更に10分間撹拌することによって、溶解させた(表1参照)。
【0067】
・アンスラキノン系色素(日本化薬社製、商品名「VIOLET A−R」) 0.0490重量部
・アンスラキノン系色素(日本化薬社製、商品名「GREEN A−B」) 0.0481重量部
・アンスラキノン系色素(日本化薬社製、商品名「Red R20) 0.2333重量部
・アンスラキノン系色素(日本化薬社製、商品名「Blue B20) 0.3008重量部
・キノフタロン系色素(山本化成社製、商品名「MS Yellow HD−137」)0.163重量部
・紫外線吸収剤(Chiba社製、商品名「TINUVIN 479」) 3.75重量部
・カルバミン酸ニッケル(和光純薬社製) 0.1099重量部
・メチルエチルケトン(関東化学社製) 35重量部
・アクリル系粘着剤(東洋インキ社製、商品名「NCK101」,酸価;0mgKOH/g,Tg;−20℃) 100重量部
・架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートHL」) 1.1667重量部
【0068】
図3は、実施例等において使用したアンスラキノン系色素等について、波長と透過率との関係を示す図である。
図3(a)は、商品名が「VIOLET A−R」であるアンスラキノン系色素の場合を示している。
図3(b)は、商品名が「GREEN A−B」であるアンスラキノン系色素の場合を示している。
図3(c)は、商品名が「Blue B20」であるアンスラキノン系色素の場合を示している。
図3(d)は、商品名が「MS Yellow HD−137」であるキノフタロン系色素の場合を示している。それぞれにおいて、横軸は、波長λ(nm)であり、縦軸は、透過率T(%)である。
【0069】
図3に示すように、可視光の波長帯域において波長と透過率との関係が異なる複数のアンスラキノン系色素等を用いて、塗布液を調製した。
【0070】
つぎに、上記のように調製した塗布液を、ワイヤバーを用いてセパレータ上に塗布した。その後、オーブンを用いて100℃5分間の乾燥条件で乾燥を行うことによって、セパレータ上に着色層を形成した。ここでは、膜厚が25μmになるように、着色層を形成した。
【0071】
つぎに、透明基材が着色層を介してセパレータに対面するように、透明基材をラミネートすることによって、例1の光学シートを完成させた。ここでは、透明基材として、PETフィルム(東洋紡社製、商品名「コスモシャインA4100」)を用いた。
【0072】
[例2〜例6]
例2〜例6のそれぞれにおいては、上述した塗布液の組成(重量比)を表1に示すように設定した点を除き、例1と同様にして、光学シートを作製した。なお、例5ではメロシアニン系化合物として、商品名「YRC−18」(山田化学工業社製)であるものを使用した。
【0073】
[評価]
各例の光学シートについて、光学特性と耐久性とを評価した。評価結果については、表1に示している。
【0074】
(光学特性)
光学特性としては、表1に示すように、「赤外光の透過率T
1」、「可視光の透過率T
2」,「色度座標x,y」、および、「ヘイズh」を測定し、評価を行った。
【0075】
光学特性を測定する際には、各例の光学シートについて、四角形状(縦20mm×横20mm)の試験片を切り出した。そして、分光光度計(島津製作所社製、Solid Spec−3700)を用いて、各試験片に関してスペクトルを測定した。ここでは、380nm〜1000nmの波長範囲について、スペクトルの測定を行った。そして、JIS Z8701(1999年)に従って、視感透過率Tv(%)と、XYZ表色系における色座標(x,y)とのそれぞれを算出することによって、「可視光の透過率T
2」と「色度座標x,y」とのそれぞれを求めた。また、「赤外光の透過率T
1」については、分光光度計で測定することによって求めた。具体的には、800〜1000nmの波長域において、1nm毎に透過率を測定し、そのうち最も低い値を、赤外光の透過率T
1として表1に記載している。さらに、「ヘイズh」については、JISK7136「プラスチック‐透明材料のヘイズの求め方」の規格に準拠したヘイズメーター(日本電色工業製、NDH500W)を用いて測定した。
【0076】
光学特性の判定については、下記の基準で行った。
○:式(A)から式(E)の全てを満たすとき
△:式(A)から式(E)のいずれか一つを満たさないとき
×:式(A)から式(E)のいずれか二つ以上を満たさないとき
【0077】
例1,例2,例5,例6については、優れた光学特性を得ることができた。これに対して、例3は、可視光の透過率T
2(%)が高いため(式(B)参照)、透け感がやや高かった。また、例4は、色度座標x、yの値から判るように(式(C)、式(D)参照)、黄色味が強く、見栄えが悪かった。
【0078】
(耐久性)
耐久性としては、「耐熱性」と「耐光性」とについて評価を行った。
【0079】
「耐熱性」については、定温恒温器(ヤマト社製、DS−44)を用いて、80℃,96時間の条件で各試料について耐熱性試験を行うことによって判定した。ここでは、試験前の試験片と、試験後の試験片との間において、色度座標x、yが変化した変化量を求めることによって判定を行った。
【0080】
耐熱性の判定に関しては、下記の基準で行った。
○:色度座標x、yのそれぞれの変化量が、0.003未満であるとき
△:色度座標x、yの少なくとも一つの変化量が、0.003以上であって0.005未満であるとき
×:色度座標x、yの少なくとも一つの変化量が、0.005以上であるとき
【0081】
「耐光性」については、耐光性試験機(スガ試験機社製、キセノンウェザーメーター X25)を用いて、380nm以上の光を100MJ/cm
2のエネルギー条件で各試料に照射する耐光性試験を行うことによって、判定した。ここでは、試験前の試験片と、試験後の試験片との間において、可視光の透過率T
2(%)(視感透過率Tv(%))と色度座標x、yとが変化した変化量を求めることによって判定を行った。
【0082】
耐光性の判定に関しては、下記の基準で行った。
○:可視光の透過率T
2(%)と色度座標x、yとのそれぞれの変化量が、0.003未満であるとき
△:可視光の透過率T
2(%)と色度座標x、yとの少なくとも一つの変化量が、0.003以上であって0.005未満であるとき
×:可視光の透過率T
2(%)と色度座標x、yとの少なくとも一つの変化量が、0.005以上であるとき
【0083】
例1,例2,例3,例4については、耐熱性および耐光性に関して、優れた結果であった。これに対して、例5については、メロシアニン系化合物を含むため、耐光性が劣る結果であった。また、例6については、カルバミン酸ニッケルを含有していないため、耐光性が劣る結果であった。
【0084】
【表1】