(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-10047(P2015-10047A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】スチルベン単量体を含む溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/72 20060101AFI20141216BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20141216BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20141216BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20141216BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20141216BHJP
A61K 36/18 20060101ALI20141216BHJP
A61K 36/00 20060101ALI20141216BHJP
A61K 36/70 20060101ALI20141216BHJP
A61K 8/97 20060101ALI20141216BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20141216BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20141216BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20141216BHJP
C07C 39/21 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
C07C37/72
A61K8/34
A61K31/05
A61K8/49
A61K31/343
A61K35/78 C
A61K35/78 B
A61K35/78 E
A61K35/78 X
A61K8/97
A61Q17/04
A61P17/16
A61P43/00 111
C07C39/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-135127(P2013-135127)
(22)【出願日】2013年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川上 晋平
(72)【発明者】
【氏名】栗田 郁子
(72)【発明者】
【氏名】梅原 将洋
(72)【発明者】
【氏名】西村 栄作
(72)【発明者】
【氏名】織谷 幸太
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC151
4C083AC152
4C083AC841
4C083AC842
4C083CC01
4C083CC02
4C083EE07
4C083EE16
4C083FF01
4C086AA01
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4C086BA06
4C086NA20
4C086ZA89
4C086ZC20
4C088AB04
4C088AB12
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4C088AB57
4C088BA08
4C088BA23
4C088BA32
4C088NA20
4C088ZA89
4C088ZC20
4C206AA01
4C206AA02
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4C206NA20
4C206ZA89
4C206ZC20
4H006AA02
4H006AD10
4H006AD16
4H006BB14
4H006BB31
(57)【要約】
【課題】スチルベン単量体を含む溶液の製造方法を提供すること。
【解決手段】スチルベン単量体及びポリフェノール多量体を含む、植物抽出物を含む溶液にゼラチンを添加し、生成した澱を除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチルベン単量体を含む溶液の製造方法であって、スチルベン単量体及びポリフェノール多量体を含む、植物抽出物を含む溶液にゼラチンを添加する工程を含む、製造方法。
【請求項2】
前記ポリフェノール多量体が、スチルベン多量体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記スチルベン多量体が、スチルベン二量体である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記スチルベン単量体及び前記スチルベン二量体が、ピセアタンノール及びスキルプシンB、またはレスベラトロール及びグネチンCである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記植物が、パッションフルーツ、テンニンカ、メリンジョ、リンゴンベリー、イタドリ、ブラシノキである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ゼラチンの濃度が、0.01%(w/v)以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ゼラチンの濃度が、0.05%(w/v)以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
生成した澱を除去する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチルベン単量体を含む溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッションフルーツは、トケイソウ科トケイソウ属(Passiflora)の果物である。パッションフルーツの種子抽出物は、シミ、ソバカス、日焼けなどによる色素沈着の原因となるメラニンの生成を抑制する効果があり、この抑制効果の有効成分は、パッションフルーツの種子抽出物に含まれるピセアタンノールであることが報告されている(特許文献1を参照)。
また、テンニンカは、フトモモ科テンニンカ属(Rhodomyrtus)の常緑低木である。テンニンカ抽出物は、紫外線ダメージ回復効果があり、この回復効果の有効成分は、テンニンカ抽出物に含まれるピセアタンノールであることが報告されている(特許文献2を参照)。
ブラシノキはフトモモ科ブラシノキ属(Callistemon)の常緑の木本である。マキバブラシノキ(Callistemon rigidus)抽出物はMMP-2の阻害作用を有することが明らかとなっており、この阻害作用の有効成分の一つは、マキバブラシノキ抽出物に含まれるピセアタンノールであることが報告されている(非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−102298号公報
【特許文献2】特開2012− 46448号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】佐々木健郎他、東北薬科大学研究誌、57、61−65(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スチルベン単量体を含む溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、パッションフルーツ種子抽出物に、ゼラチンを添加するゼラチン処理によって、処理温度に関わらず、ピセアタンノールに比べスチルベン二量体を、またレスベラトロールに比べグネチンCを、効果的に除去することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
ずなわち、本発明の一実施態様は、スチルベン単量体を含む溶液の製造方法であって、スチルベン単量体及びポリフェノール二量体を含む、植物抽出物を含む溶液にゼラチンを添加する工程を含む、製造方法である。
【0008】
また、本発明の一実施態様は、ポリフェノール多量体に対するスチルベン単量体の濃縮方法であって、スチルベン単量体及びポリフェノール二量体を含む、植物抽出物を含む溶液にゼラチンを添加する工程を含む、濃縮方法である。
【0009】
上記いずれの方法においても、前記ポリフェノール多量体が、スチルベン多量体であってもよく、前記スチルベン多量体が、スチルベン二量体であってもよい。その場合、前記スチルベン単量体及び前記スチルベン二量体が、ピセアタンノール及びスキルプシンB、またはレスベラトロール及びグネチンCであってもよい。
【0010】
なお、本明細書で、「ポリフェノール多量体に対するスチルベン単量体の濃縮」、「スチルベン多量体に対するスチルベン単量体の濃縮」、「スチルベン二量体に対するスチルベン単量体の濃縮」や、「ポリフェノール多量体に対してスチルベン単量体を濃縮する」、「スチルベン多量体に対してスチルベン単量体を濃縮する」、「スチルベン二量体に対してスチルベン単量体を濃縮する」などの表現は、それぞれ、処理前後で、ポリフェノール多量体、スチルベン多量体、あるいはスチルベン二量体の減少の割合がスチルベン単量体の減少の割合より大きく、ポリフェノール多量体、スチルベン多量体、あるいはスチルベン二量体に対するスチルベン単量体の割合が、処理前に比べ、処理後に増大すること、言い換えると、処理前のポリフェノール多量体、スチルベン多量体、あるいはスチルベン二量体量及びスチルベン単量体量をそれぞれ1とした時の、ポリフェノール多量体、スチルベン多量体、あるいはスチルベン二量体の残存率に対するスチルベン単量体の残存率の割合が増大することを、意味する。
【0011】
また、上記いずれの方法においても、前記植物が、パッションフルーツ、テンニンカ、メリンジョ、リンゴンベリー、イタドリ、またはブラシノキであってもよく、ブドウの芽、蔓、茎、葉であってもよい。また、前記ゼラチンの濃度が、0.01%(w/v)以上であってもよく、0.05%(w/v)以上であってもよい。
【0012】
さらに、上記いずれの方法においても、生成した澱を除去する工程をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、スチルベン単量体を含む溶液の製造方法を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例において、パッションフルーツ種子抽出物を含む溶液(溶媒は水)に対して、様々な濃度のゼラチンでゼラチン処理を行なったときの、スキルプシンBの残存率とピセアタンノールの残存率を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施例において、パッションフルーツ種子抽出物を含む溶液(溶媒は20%エタノール)に対して、様々な濃度のゼラチンでゼラチン処理を行なったときの、スキルプシンBの残存率とピセアタンノールの残存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。なお、本発明の目的、特徴、利点、および、そのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をこれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0016】
==植物抽出物を含む溶液へのゼラチンの添加工程==
本発明に係る、スチルベン単量体を含む溶液の製造方法、及びポリフェノール二量体に対するスチルベン単量体の濃縮方法は、スチルベン単量体及びポリフェノール二量体を含む、植物抽出物を含む溶液にゼラチンを添加する工程を含む。
【0017】
ここで、ポリフェノールは、複数のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物の総称であって、特に限定されない。例えば、フラボノイド骨格を有するフラボノイド(例えば、カテキン、アントシアニン、タンニン、ルチン、イソフラボンなど)、及びそれ以外の非フラボノイド(スチルベン、フェノール酸、エラグ酸、リグニン、クルクミン、クマリンなど)が例示できるが、スチルベンであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る、スチルベン単量体を含む溶液の製造方法、及びスチルベン多量体に対するスチルベン単量体の濃縮方法は、スチルベン単量体及びスチルベン多量体を含む、植物抽出物を含む溶液にゼラチンを添加する工程を含む。この工程によって、スチルベン単量体及びスチルベン多量体を含む、植物抽出物を含む溶液から、スチルベン多量体を効率的に澱として分離することができ、スチルベン単量体を効率的に上清中に残存させることができる。スチルベン多量体は、苦みや渋みなどの味に対する悪影響を溶液にもたらすため、このようにスチルベン多量体を減少させることによって、スチルベン単量体を含む溶液の味の改善を図ることができる。なお、溶液の味を改善するためには、必ずしも澱を除去する必要はなく、澱が沈殿した時に上清を味わえばよい。
【0019】
スチルベン単量体及びスチルベン多量体とは、それぞれ、スチルベン類の化合物のうち、単量体及び多量体を意味する。多量体は、二量体、三量体、四量体・・・といった、単量体が複数多量化した化合物を意味する。スチルベン類とは、スチルベン骨格を基本とした化合物の総称であり、例えば、スチルベン、ピセアタンノール、スキルプシンA、スキルプシンB、スキルプシンC、グネチンC、ラポンチゲニン、イソラポンチゲニン、プテロスチルベン、レスベラトロール、オキシレスベラトロール、ピセイド、アストリンジン、ラポンチシン、及び、ε-ビニフェリンなどが挙げられる。スチルベン類は、配糖体やメチル化体・エチル化体などのアルキル化体であっても良い。スチルベン類の分子量は、特に限定されないが、例えば、2000以下であっても良く、1000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。以下に、スチルベン骨格及び代表的なスチルベン類の化合物の構造式を記載する。
【化1】
【0020】
ポリフェノール多量体を含む溶液は、ポリフェノール多量体のうち、一種類または複数種類の多量体を含んでもよいが、スチルベン多量体を含むことが好ましく、スチルベン二量体を含むことがさらに好ましい。
【0021】
また、植物の種類は、ポリフェノールを含む植物であれば特に限定されないが、スチルベン類を含む植物が好ましく、パッションフルーツ(例えば、Passiflora edulis、Passiflora alata、Passiflora amethystine、Passiflora antioquiensis、Passiflora biflora、Passiflora buonapartea、Passiflora capsularis、Passiflora cearensis、Passiflora coccinea、Passiflora cochinchinesis、Passiflora filamentosa、Passiflora herbertiana、Passiflora laurifolia、Passiflora ligularis、Passiflora lunata、Passiflora lutea、Passiflora maliformis、Passiflora mixta、Passiflora mucronata、Passiflora mollissima、Passiflora nibiba、Passiflora organensis、Passiflora pallida、Passiflora parahypensis、Passiflora pedeta、Passiflora pinnatistipula、Passiflora popenovii、Passiflora quadrangularis、Passiflora riparia、Passiflora rubra、Passiflora serrate、Passiflora tiliaefolia、Passiflora tripartite、Passiflora villosa、Passiflora warmingiiなど)、テンニンカ(例えば、Rhodomyrtus tomentosaなど)、ブラシノキ(例えば、Callistemon rigidusなど)(例えば茎)、カラガナチベチカ(Caragana tibetica)(例えば茎)、イタドリ(Fallopia japonica)(例えば根)、落花生(Arachis hypogaea)、ブドウ(Vitaceae)(例えば芽、蔓、茎、葉)、ブルーベリー(Cyanococcus)(例えば果実)、ディアベリー(Vaccinium stamineum)(例えば果実)、メリンジョ(Gnetum gnemon Linn)(例えば種子)、リンゴンベリー(Vaccinium vitis-idaea L.)(例えば果実)などが挙げられる。なかでも、ピセアタンノールを高濃度で含むことが知られている、パッションフルーツ、テンニンカ、または、ブラシノキや、レスベラトロールを高濃度で含むことが知られている、メリンジョ、またはリンゴンベリーであることが好ましい。テンニンカである場合には、植物全体のうち、どの部分であっても良いが、例えば、果実、花、種子、葉、枝、樹皮、幹、茎、または、根であっても良く、果実であることが好ましい。ただし、添加するゼラチンの濃度が0.05%(w/v)以下あるいは0.1%(w/v)以下の場合、ブドウ(特に、果実、種子、果皮、梗)を除く植物を用いるのが好ましいが、ブドウの芽、蔓、茎、葉などは用いてもよい。
【0022】
植物抽出物を含む溶液とは、植物またはその一部をそのまま、または乾燥した後に、破砕、粉砕、または、切断などし、溶媒を用いて抽出すること、またはその後に、濃縮したり希釈したり溶解したりすることによって得られた抽出物を含む溶液であれば、特に限定されず、抽出物そのものであっても良い。
【0023】
抽出に用いる溶媒の種類は、当業者であれば適切に選択することができるが、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、2−プロパノール、1,4−ジオキサン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、または、これらから選択される2以上の溶媒の混合溶媒であっても良く、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール、または、これらから選択される2以上の溶媒の混合溶媒であることが好ましく、水、エタノール、または、水およびエタノールの混合溶媒であることがより好ましい。混合溶媒を用いる場合の、各溶媒の混合比は特に限定されないが、例えば水およびエタノールの混合溶媒を用いる場合には、99%以下のエタノール水溶液であっても良いが、50%以下のエタノール水溶液であることが好ましく、20%以下のエタノール水溶液であることがより好ましく、10%以下のエタノール水溶液であることがさらに好ましく、5%以下のエタノール水溶液であることがさらに好ましく、2%以下のエタノール水溶液であることがさらに好ましく、1%以下のエタノール水溶液であることがさらに好ましい。
【0024】
抽出に用いる溶媒として、水、または、水との混合溶媒を用いる場合には、熱水、または、熱水との混合溶媒であることが好ましい。水、または、水との混合溶媒は塩を含んでいても良く、塩を含む溶媒の例として、バッファー(緩衝液)であっても良い。バッファーのpHは、特に限定されず、酸性、中性、または、アルカリ性のいずれであっても良いが、酸性であることが好ましく、pH6以下の酸性であることがより好ましく、pH1〜pH5の酸性であることがさらに好ましい。バッファーに用いる塩の種類は特に限定されず、例として、クエン酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、酢酸塩および炭酸塩などが挙げられる。
【0025】
抽出物を濃縮する方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、抽出物から溶媒を留去する場合、減圧留去、凍結乾燥、または、スプレードライ(噴霧乾燥)であっても良いが、凍結乾燥、または、スプレードライであることが好ましく、スプレードライであることがより好ましい。抽出物を希釈(抽出物が液体の場合)または溶解(抽出物が固体の場合)する方法も特に限定されず公知の方法を用いることができる。希釈または溶解するための液体としては、上述したような、抽出に用いるための溶媒として記載したものを用いることができる。
【0026】
植物抽出物の形状は、特に限定されず、例えば溶液や懸濁液などの液体状(抽出液とも呼ばれる)、粉体などの固体状、アモルファス状、または、オイル状であっても良い。
【0027】
植物抽出物を含む溶液には、その中に含まれるスチルベン単量体の安定性が著しく損なわれない限り、植物抽出物以外の物質を含んでいても良いが、例えば、ウイルスや生きた細胞は実質的に含まないことが好ましい。なお、植物がパッションフルーツの場合、植物抽出物は、パッションフルーツの果肉の抽出物を含んでいても良く含まなくても良い。
【0028】
植物抽出物を含む溶液に添加するゼラチンは、コラーゲンを加熱したものをそのまま用いてもよく、酵素、酸、アルカリ処理等により部分分解して低分子化して用いてもよい。ゼラチンの由来は特に限定されず、動物性由来であっても良く、植物性由来であっても良い。添加するゼラチンの分子量は、特に限定されず、重量平均分子量が、約1500以上であっても良く、約2000以上であっても良く、約3000以上であっても良く、約5000以上であっても良く、約20000以上であっても良く、約50000以上であっても良く、あるいは約200000以上であっても良い。また、約200000以下であっても良く、約50000以下であっても良く、約20000以下であっても良く、約5000以下であっても良く、約3000以下であっても良く、約2000以下であっても良く、あるいは約1500以下であっても良い。このような分子量のゼラチンは、市販のものを容易に入手できる。例えば、動物性由来のものとしては、「ニッピペプタイドPBF」(ニッピ株式会社製)、「ニッピペプタイドPRA」(ニッピ株式会社製)、「SCP−5000」(新田ゼラチン株式会社製)、「SCP−3100」(新田ゼラチン株式会社製)、「イオクスHDL−30DR」(新田ゼラチン株式会社製)、「コラーゲンペプチドDS」(協和ハイフーズ株式会社製)、「ファルコニックスCTP」(一丸ファルコス株式会社製)、「PeptanF5000HD」(ルスロ社製)などが挙げられる。なお、重量平均分子量は、GPC分析(ゲル浸透クロマトグラフィー/PAGI法)により求めることができる。
【0029】
ゼラチンの添加量は特に限定されず、0.01%(w/v)以上であっても良く、0.02%(w/v)以上であるのが好ましく、0.05%(w/v)以上であるのがより好ましく、0.1%(w/v)以上であるのがさらに好ましい。また、30%(w/v)以下であっても良く、10%(w/v)以下であるのが好ましく、5%(w/v)以下であるのがより好ましく、1%(w/v)以下であるのがさらに好ましい。特に、ブドウ抽出物を用いる場合、0.05%(w/v)以上であるのが好ましく、0.1%(w/v)以上であるのがより好ましい。
【0030】
植物抽出物を含む溶液にゼラチンを添加した後、十分に混合し、その後、澱が十分生成するまで放置する。放置する時間は特に限定されないが、1分以上240時間以下であることが好ましく1分以上120時間以下であることがさらに好ましい。放置する温度は4℃から60℃まで、特に限定されない。
【0031】
澱が十分生成した後に、澱を除去してもよい。澱を除去する方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、濾過、遠心分離、デカンテーションなどを例示することができる。
【0032】
これらの工程を経ることで、スチルベン単量体及びポリフェノール多量体を含む、植物抽出物を含む溶液において、ポリフェノール多量体に対してスチルベン単量体を濃縮することができる。また、それによって、ポリフェノール多量体に対してスチルベン単量体が濃縮された、スチルベン単量体を含む溶液を製造することができる。
【0033】
また、同様に、スチルベン単量体及びスチルベン多量体を含む、植物抽出物を含む溶液において、スチルベン多量体に対してスチルベン単量体を濃縮することができる。また、それによって、スチルベン多量体に対してスチルベン単量体が濃縮された、スチルベン単量体を含む溶液を製造することができる。
【0034】
こうして製造されたスチルベン単量体を含む溶液の使用方法は特に限定されないが、ヒト及びヒト以外の動物や、それらの細胞などを対象として使用でき、食品(補助食品を含む)、医薬品、医薬部外品、試薬、または、化粧品などに用いることができる。
【実施例】
【0035】
〔実施例1〕植物抽出物を含む溶液へのゼラチンの添加
パッションフルーツ(Passiflora edulis)の種子を破砕し、含水エタノール(水:エタノール=20:80(v/v))で抽出した。含水エタノール抽出液を、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、パッションフルーツ種子抽出物(固体)を得た。この抽出物を再度、水または20%エタノールに溶解させた。
ゼラチンとして、重量平均分子量が約3000のものを用い、表1及び表2に示した量(%(w/v))のゼラチンを添加した。
その後、3000rpm、10分間遠心分離を行った後に上清を回収することで澱を除去し、各上清について、ピセアタンノールの量及びスキルプシンBの量を、下記の条件のHPLCを用いて測定した。
【0036】
[HPLC条件]
・カラム:Mightysil RP-18 GP250-10 径10 mm、長さ250 mm(関東化学株式会社製)
・カラム温度:40℃
・溶出条件:流速3mL/min、0%メタノール−100%純水 → 30%メタノール−70%純水(グラジエント、10min)
・UV検出:280nm
【0037】
各条件で、独立に2度測定を行い、各化合物のピーク面積(Area mAU)の平均を求め、ゼラチンを添加しないサンプルの測定値を100.0(%)とし、ゼラチンを加えた各サンプルのピーク面積と割合(残存率(%))を求めた。また、スキルプシンBの残存率に対するピセアタンノールの残存率を濃縮率とした。その結果を表1(溶媒は水)及び表2(溶媒は20%エタノール)に示し、
図1及び
図2にグラフを示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
添加するゼラチン量を増やすと、それに伴って、両方の化合物の溶液中での残存率は減少する傾向にあるが、どのゼラチン濃度でも、ピセアタンノールに比べ、スキルプシンBの減少が顕著であった。その結果、ゼラチン量が増加するにつれ、濃縮率がほぼ増大した。濃縮率は異なるが、溶媒が水(表1)であってもエタノール水溶液(表2)であっても、ピセアタンノールの濃縮が可能であった。このように、ゼラチン処理により、スキルプシンBに対してピセアタンノールを濃縮することができる。
【0041】
〔実施例2〕スチルベン単量体及び二量体を含有する溶液へのゼラチンの添加
本実施例では、実施例1の植物抽出液の代わりに、表3に示したスチルベン単量体及び二量体を含有する溶液を用いた。ゼラチンとして、重量平均分子量が約3000のものを用い、表4に示した量(%(w/v))のゼラチンを添加した。その後、15000rpm、5分間遠心分離を行った後に上清を回収することで澱を除去し、各上清について、表4に示した各スチルベン類化合物の量を、実施例1と同条件のHPLCを用いて測定した。そして、実施例1と同様に、各スチルベン類化合物の残存率を算出した。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
スチルベン単量体及び二量体を含有する溶液にゼラチン量を添加すると、単量体も二量体も溶液中での残存率は減少するが、単量体に比べ、二量体の減少が顕著であった。このように、ゼラチン処理により、スチルベン類化合物多量体に対して単量体を濃縮することができる。そして、単量体は、配糖体であっても、アルキル化体であってもかまわない。