【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者:公益社団法人地盤工学会、刊行物名:第48回地盤工学研究発表会 平成25年度発表講演集(DVD−ROM版) 908、刊行物の配布日:平成25年6月 発行者:公益社団法人地盤工学会、刊行物名:第48回地盤工学研究発表会 平成25年度発表講演集(DVD−ROM版) 909、刊行物の配布日:平成25年6月 The 18th International Conference on Soil Mechanics and Geotechnical Engineering,CHALLENGES AND INNOVATIONS IN GEOTECHNICS,Paris 2013、開催日:平成25年9月2日〜6日 第10回地盤工学会関東支部発表会 GeoKanto2013、開催日:平成25年10月4日 発行者:公益社団法人地盤工学会、刊行物名:第10回地盤工学会関東支部発表会GeoKanto2013(講演集DVD−ROM版) A0009、刊行物の配布日:平成25年10月4日
【解決手段】液状化層5が存在する地盤Gに互いに離間するように構築される複数の杭3と、各杭3の頭部3aを囲繞するように設けられた板状構造体6とを有し、各杭3の頭部3aを所定の高さ(t)にわたって板状構造体6に固定して杭式液状化対策構造体1とする。杭3を構築する際には、板状構造体6を設置した後に行う。このようにすべての杭3を頭部3aの側面で板状構造体6により固定することにより、杭3の転倒が防止され、液状化層5の側方流動が抑制される。
前記板状構造体は、互いに連結され、かつ前記各杭の位置に対応して複数の孔が予め形成された複数の板片からなることを特徴とする、請求項1に記載の杭式液状化対策構造体。
前記板状構造体と前記杭との間に充填された充填材によって前記各杭の頭部が前記板状構造体に固定されたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の杭式液状化対策構造体。
前記板状構造体を設置するステップでは、前記地盤上に複数の板片を敷き並べるとともに互いに隣接する板片同士を連結することで、互いに離間する複数の孔を有する板状構造体を設置し、
前記複数の杭を構築するステップでは、前記孔の位置に各杭を構築することを特徴とする、請求項5に記載の杭式液状化対策構造体の構築方法。
前記各杭の頭部を前記板状構造体に固定するステップでは、前記板状構造体の孔と前記杭との間に充填材を充填することを特徴とする、請求項6に記載の杭式液状化対策構造体の構築方法。
【背景技術】
【0002】
液状化層が存在する地盤を改良するために、セメント系固化剤を撹拌混合して地盤を柱状に固化する深層混合処理工法が広く用いられている。深層混合処理工法は、施工中の振動や騒音が少ないことから、市街地での施工や既設構造物に近接する施工に対する適用性の高さが評価されている。深層混合処理工法の改良形式としては、
図13(A)に示すような独立した複数の杭3を連続配置した正方形の頂点に配置する整列配置や、
図13(B)に示すような独立した複数の杭3を、合同な2つの正三角形を組み合わせて連続配置した斜方形の頂点に配置する千鳥配置等の杭式改良の他、
図13(C)に示すように、各列に配置された杭3をオーバーラップした状態で連設することで壁状の改良体を形成する壁式改良、
図13(D)に示すように、壁状の改良体を正方格子状に配置した格子式改良、および地盤全体を改良するブロック式改良が知られている。
【0003】
これら改良形式のなかでは、地盤の支持力向上や地盤の液状化防止などの改良効果は、ブロック式改良で最も高く、杭式改良で最も低いとされている。一方で、杭式改良は、杭のオーバーラップ部がないため、ブロック式改良や格子式改良に比べて施工効率が良く、且つ材料コストを低く抑えることができるという特長を有している。したがって、上部に重量構造物が構築されない港湾部などの地盤改良では、一定の有利性が杭式改良にはある。なお、このように互いに離間するように複数の杭を配置することで地盤改良を行う場合には、上記深層混合処理工法による改良杭(杭状改良地盤)だけでなく、既製杭や場所打ち杭を用いることも可能である。
【0004】
杭式改良による液状化防止効果を高める工法として、特許文献1には、改良対象区域の外周に沿って深層混合処理工法による壁状の改良体を環状に形成し、壁状の改良体に囲繞された改良対象区域内に、硬化の際に膨張するセメント系材料を用いて深層混合処理工法による杭式改良を行う液状化対策工法が提案されている。
【0005】
また、杭式改良では上記したように整列配置や千鳥配置が一般的であるが、このような配置では杭列間に未改良領域が存在し、この未改良領域が列方向に延在するように存在するために液状化しやすいことに着目し、複数の杭を一定の規則性をもって配置しつつも、あたかも無作為に配置したような配列とし、未改良領域の列方向の延在長さを短くして地盤の液状化を抑制するようにした杭の配置方法(特許文献2)も提案されている。特許文献2では、地盤の上部に改良層を構築し、改良層によって複数の杭の頭部を連結することによって地震時などにおける各杭の転倒防止を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の液状化対策工法では、硬化の際に膨張する特殊な材料を用いるために材料コストが上昇する。また、同工法は杭の転倒を防止することはできないため、地盤が液状化した際には地盤の側方流動を抑制することは困難である。
【0008】
一方、特許文献2のように杭の頭部を連結するように改良層を構築したとしても、改良層と杭の上面との摩擦力を超える横方向の力に対しては杭の転倒を防止できない。そして、護岸部などの偏土圧が存在する地盤では、液状化によってこのような大きな力が発生することがあり、このような地盤で液状化が発生すると、杭がその上面を改良層に対して滑動させるように転倒し、液状化により大きくなった偏土圧および液状化した地盤の側方流動によって護岸壁が損傷を受ける虞がある。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、特殊な材料を用いることなく、安価かつ容易に液状化層の側方流動を抑制することができる、地盤の杭式液状化対策構造体およびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る地盤の杭式液状化対策構造体(1)は、液状化層(5)が存在する地盤(G)に互いに離間するように構築される複数の杭(3)と、各杭の頭部(3a)を囲繞するように設けられた板状構造体(6)とを有し、各杭の頭部が所定の高さ(t)にわたって前記板状構造体に固定された構成とする。
【0011】
この構成によれば、板状構造体が各杭の頭部を所定の高さにわたって固定するため、液状化層が液状化した際に杭の転倒を防止し、液状化した地盤の側方流動を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の一側面によれば、前記板状構造体は、互いに連結され、かつ前記各杭の位置に対応して複数の貫通孔(10)が予め形成された複数の板片(プレキャストコンクリート板7)からなる構成とすることができる。
【0013】
改良層によって板状構造体を構成する場合、地盤が液状化した際に杭の転倒を防止できる程度に杭の頭部を固定するためには、改良層の厚さを大きくしなくてはならないため、コストと手間がかかる。一方、この構成によれば、板状構造体を容易に構築できる。また、板状構造体を所定の強度を有するものとし、かつ予め地盤上に設置すれば、地盤が杭構築用の重機のために敷鉄板などの足場対策が必要な程度に軟弱であっても、このような対策をとることなく、杭構築用の重機を地盤上に搬入することができる。また、複数の貫通孔が予め板状構造体に形成されているため、板状構造体を定規として用いることができ、杭の位置出しを不要にできる。なお、位置出しを行う場合には、施工中に印がなくなって再度位置出しを行うまで施工が中断するような虞もあるが、貫通孔が杭の位置を示しており、その位置がわからなくなるようなことはないため、このような事態の発生も防止できる。
【0014】
また、本発明の一側面によれば、前記板状構造体と前記杭との間に充填された充填材(13)によって前記各杭の頭部が前記板状構造体に固定された構成とすることができる。
【0015】
この構成によれば、杭の種類にかかわらず、杭の頭部を確実に板状構造体に固定することができる。
【0016】
また、本発明の一側面によれば、前記複数の杭(3)は高圧噴射工法を少なくとも併用して形成された深層混合杭であり、固化材を前記板状構造体の貫通孔の内面に達するように噴射して杭頭を形成されたことにより、各杭が前記板状構造体に固定された構成とすることができる。
【0017】
この構成によれば、板状構造体の貫通孔と前記杭との間に固化する充填材を充填することなく、杭の頭部を板状構造体に固定することができる。したがって、施工を容易にすることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る地盤の杭式液状化対策構造体(1)の構築方法は、液状化層(5)が存在する地盤(G)上に板状構造体(6)を設置するステップと、前記板状構造体上において前記地盤中に互いに離間する複数の杭(3)を構築するステップと、各杭の頭部(3a)を所定の高さ(t)にわたって前記板状構造体に固定するステップとを含む構成とする。
【0019】
この方法によれば、板状構造体を予め地盤上に設置することができるため、地盤が杭構築用の重機のために敷鉄板などの足場対策が必要な程度に軟弱であっても、このような対策をとることなく、杭構築用の重機を地盤上に搬入することができる。また、板状構造体が各杭の頭部を所定の高さにわたって固定するため、液状化層が液状化した際に杭の転倒を防止し、液状化した地盤の側方流動を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の一側面によれば、前記板状構造体(6)を設置するステップでは、前記地盤上に複数の板片(プレキャストコンクリート板7)を敷き並べるとともに互いに隣接する板片同士を連結することで、互いに離間する複数の貫通孔(10)を有する板状構造体を設置し、前記複数の杭(3)を構築するステップでは、前記貫通孔の位置に各杭を構築する構成とすることができる。
【0021】
改良層によって板状構造体を構成する場合、地盤が液状化した際に杭の転倒を防止できる程度に杭の頭部を固定するためには、改良層の厚さを大きくしなくてはならないため、コストと手間がかかる。一方、この方法によれば、板状構造体を容易に構築できる。また、この構成によれば、複数の貫通孔が予め板状構造体に形成されているため、板状構造体を定規として用いることができ、杭の位置出しを不要にできる。なお、位置出しを行う場合には、施工中に印がなくなって再度位置出しを行うまで施工が中断するような虞もあるが、貫通孔が杭の位置を示しており、その位置がわからなくなるようなことはないため、このような事態の発生も防止できる。
【0022】
また、本発明の一側面によれば、前記各杭の頭部(3a)を前記板状構造体に固定するステップでは、前記板状構造体の貫通孔(10)と前記杭(3)との間に固化する充填材(13)を充填する構成とすることができる。
【0023】
この方法によれば、杭の種類にかかわらず、杭の頭部を確実に板状構造体に固定することができる。
【0024】
また、本発明の一側面によれば、前記複数の杭(3)を構築するステップでは、高圧噴射工法を少なくとも併用して深層混合杭を構築し、前記各杭の頭部(3a)を前記板状構造体に固定するステップでは、固化材を前記板状構造体の貫通孔(10)の内面に達するように噴射して杭頭(3a)を形成することにより、各杭を前記板状構造体に固定する構成とすることができる。
【0025】
この方法によれば、板状構造体の貫通孔と前記杭との間に固化する充填材を充填することなく、杭の頭部を板状構造体に固定することができる。したがって、施工を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明によれば、特殊な材料を用いることなく、安価かつ容易に液状化層の側方流動を抑制することができる、地盤の杭式液状化対策構造体およびその構築方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る杭式液状化対策構造体1およびその構築方法について図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る杭式液状化対策構造体1は、護岸構造体2により区画された、非液状化層4の上に液状化層5が存在する地盤Gに適用されている。護岸構造体2は、陸地と海との境界に鉛直に設置された鋼矢板や鋼管矢板などから構成されており、所定の根入れ長L
1をもって非液状化層4に突入している。護岸構造体2としては、自立式であってもタイロッド式であってもよく、その他の形式であってもよい。護岸構造体2の上部には偏土圧が作用しており、液状化層5が液状化すると、偏土圧が大きくなって護岸構造体2が損傷する虞があることから杭式液状化対策構造体1が適用されている。
【0030】
杭式液状化対策構造体1は、地盤Gに構築された複数の杭3と、複数の杭3の頭部3aを連結するように地盤Gの上部に構築された板状構造体6とを備える杭式構造体である。杭3は、本実施形態では既製杭を用いており、非液状化層4に所定の根入れ長L
2もって突入している。
図2に併せて示すように、杭3はここでは水平面上を直交する2方向(以下、X方向およびY方向と称する。)に等間隔となる格子状に配置(整列配置)されている。杭3としては、例えば、コンクリート杭、鋼管杭、SC杭(Steel and Concrete Composite pile)などを用いることができる。
【0031】
なお、杭3として、深層混合処理により構築される深層混合杭を用いることもできる。杭3を深層混合杭とする場合、機械撹拌工法、機械撹拌併用型高圧噴射工法、および高圧噴射工法のいずれの工法によって深層混合杭を構築してもよい。
【0032】
板状構造体6は、複数のプレキャストコンクリート板7を連結機構8(連結手段)によって連結することで一体化されている。なお、最も護岸構造体2寄りのプレキャストコンクリート板7と護岸構造体2との間には、現場打ちコンクリートによる接続部9が構築されており、これにより、板状構造体6が護岸構造体2側(海側)へ移動しないようになっている。板状構造体6における杭3に対応する位置には、複数の貫通孔10が形成されており、各貫通孔10の内部に頭部3aが収まるように杭3が構築されている。
【0033】
各プレキャストコンクリート板7は、平面視でX方向およびY方向にそれぞれ杭3の間隔L
3の2倍の寸法L
4を有する大きさの正方形とされており、すべてのプレキャストコンクリート板7が同一寸法および同一形状とされている。各プレキャストコンクリート板7には4つの貫通孔10が形成されている。
【0034】
図3に示すように、プレキャストコンクリート板7の各辺の近傍には、上面に開口するように凹設され、その内面とプレキャストコンクリート板7の側面とに開口するボルト挿通孔11を備えたボルトボックス12(凹部)が2つずつ形成されている。すなわち、本実施形態では、互いに隣接するプレキャストコンクリート板7が、対峙するそれぞれのボルトボックス12に設置される図示しない寸切りボルト(全ねじ)およびナットにより連結され、これらボルト、ナットおよびボルトボックス12により連結機構8が構成されている。
【0035】
プレキャストコンクリート板7の貫通孔10は、杭3(頭部3aの外周面)とプレキャストコンクリート板7(貫通孔10の内面)との間に隙間Sが生じるように、杭3の外径よりも大きな径とされ、ここでは断面形状が一定の円柱形状とされている。ただし、プレキャストコンクリート板7を製造する際の手間を考慮し、脱型の容易なテーパ形状としてもよい。
【0036】
貫通孔10の内部に設置された杭3は、上端3bが板状構造体6の上面と面一になるように構築されている。そして、杭3とプレキャストコンクリート板7との隙間Sには、無収縮モルタルなどの充填材13が充填されている。このように、板状構造体6は、その厚さtの全体にわたって杭3の頭部3aを囲繞し、下端が非液状化層4により固定されたすべての杭3の頭部3aを連結するようにその厚さtの全体で各杭3を固定している。プレキャストコンクリート板7の厚さtは、500mm以上かつ1000mm未満とすることが好ましい。厚さtが500mmよりも小さいと杭3の頭部固定の効果が低くなる一方、厚さtが1000mm以上になると、杭頭固定には有利になるもののコンクリート板7の取り扱いが煩雑になるからである。
【0037】
次に、
図4および
図5を参照して、杭式液状化対策構造体1の構築方法について説明する。まず、
図4(A)に示すように、護岸構造体2により区画された地盤Gを整地し、平坦にする。この際、地盤Gの高さを護岸構造体2の上端よりも低くし、構築する板状構造体6を護岸構造体2の側面に連結できるようにする。その後、地盤G上に構築する板状構造体6の位置出しを行う。なお、板状構造体6の位置出しは、角になる点を1つとその角を構成する1辺の方向だけを印せばよいが、4隅および4辺を印すとよい。
【0038】
次に、
図4(B)に示すように、プレキャストコンクリート板7を所定の位置に敷設しながら隣接するプレキャストコンクリート板7同士を連結機構8(
図3参照)により連結し、板状構造体6を構築する。すべてのプレキャストコンクリート板7を連結した後、最も護岸構造体2寄りのプレキャストコンクリート板7と護岸構造体2との間に、コンクリートを打設して接続部9を構築する。
【0039】
板状構造体6の構築後、
図4(C)に示すように、板状構造体6上において、板状構造体6の貫通孔10から地盤G中に杭3を構築する。なお、杭3は、圧入工法、打撃工法、プレボーリング工法、中掘工法、回転工法など、如何なる工法で構築してもよい。いずれの工法においても、杭3を構築する際には通常、重機を用いるが、板状構造体6を先に構築しているため、地盤G上にそのまま重機を搬入することができる。杭3は、非液状化層4に対して所定の根入れ長L
2を有し、上端3bが板状構造体6の上面に一致する長さとしておき、すべての貫通孔10に杭3を構築する。
【0040】
杭3を構築した状態では、
図5(C)に示すように、板状構造体6の貫通孔10の内部に杭3の頭部3aが収まり、杭3と板状構造体6(貫通孔10の内面)との間には隙間Sが形成されている。あるいは、この隙間Sに地盤Gの土砂が侵入してきている場合には、土砂を取り除き、板状構造体6の厚さtにわたって隙間Sを形成する。
【0041】
そして、
図5(D)に示すように、この隙間Sに無収縮モルタルなどの充填材13を充填する。これにより、充填材13が固化すると、杭3と板状構造体6とが一体化され、すべての杭3の頭部3aが板状構造体6によって固定される。
【0042】
なお、プレキャストコンクリート板7には、
図3に想像線で示すように、上下に貫通するグラウト注入孔21を適所に設けておくとよい。なお、グラウト注入孔21は不使用時には詮により閉塞される。グラウト注入孔21を設けておけば、プレキャストコンクリート板7と地盤Gとの間に生じる空隙を埋めたい場合などに、グラウト注入孔21からグラウトを注入することができる。このような作業を行う場合には、
図5(D)の充填材13の充填作業の後に行うとよい。また、杭式液状化対策構造体1の構築時に板状構造体6の下面にグラウトを注入する必要がない場合であっても、グラウト注入孔21を設けておけば、杭式液状化対策構造体1の構築後の地震による液状化によって板状構造体6の下に空洞が生じてしまった場合などに、この空洞にグラウトを充填するための注入孔として利用することができ、杭式液状化対策構造体1の復旧工事を容易にすることができる。
【0043】
このように構成ないし構築された杭式液状化対策構造体1によれば、杭3が平面視において間隔L
3および杭径に応じた所定の密度で設置されることによって液状化層5の液状化が抑制されるとともに、大きな揺れによって液状化層5が液状化したとしても、液状化した液状化層5の側方(海側)への流動が杭3によって抑制される。さらに、液状化した液状化層5は、杭3を転倒させながら側方流動しようとするが、杭3が頭部3a(側面)を板状構造体6によって固定されていることにより、杭3の転倒が防止されるため、液状化層5の側方流動を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、汎用品である既製杭を杭3に用いているため、容易に杭3を構築することができるうえ、安価に板状構造体6を構築することができる。また、複数のプレキャストコンクリート板7を連結して板状構造体6を構築するため、予め貫通孔10が形成された板状構造体6を地盤G上に設置した後に杭3を構築でき、重機搬入のための敷鉄板などを敷設する必要がない。また杭3の位置出しを行う必要もない。加えて、位置出しを行う場合には施工中に印がなくなって再度位置出しを行うまで施工が中断するような虞があるが、貫通孔10が杭3の位置を示しており、その位置がわからなくなるようなことはないため、このような事態は発生しない。したがって施工が容易である。
【0045】
本実施形態では、板状構造体6と杭3との間に充填材13を充填して各杭3の頭部3aを板状構造体6に固定しているため、杭3の種類にかかわらず、杭3の頭部3aを確実に板状構造体6に固定することが可能である。
【0046】
なお、変形例を示す
図6に示すように、板状構造体6の内面および杭3の頭部3aの側面の少なくとも一方に凹凸14を設けておくことにより、板状構造体6と杭3との結合強度を向上させることができる。
【0047】
次に、
図7を参照して、他の実施形態に係る杭式液状化対策構造体1について説明する。なお、上記実施形態と共通する部材や部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。以下に示す他の実施形態についても同様とする。
【0048】
本実施形態では、連結機構8として、ボルトナットの代わりにほぞ継ぎを用いている。すなわち、プレキャストコンクリート板7の対向する2辺の一方となる2つの辺には、平面視で先端に向けて拡幅するほぞ15(突起)が設けられ、他方となる2つの辺には、平面視で溝底に向けて拡幅するほぞ溝16(あり溝)が形成されている。ほぞ15およびほぞ溝16は、一定の断面形状を有して上下方向に延在しており、先に敷設されたプレキャストコンクリート板7のほぞ15またはほぞ溝16に、後から敷設するプレキャストコンクリート板7のほぞ溝16またはほぞ15を上方から嵌め込むことで、ほぞ15およびほぞ溝16が係合し、互いに隣接するプレキャストコンクリートが連結される。
【0049】
なお、図示の例では、プレキャストコンクリート板7の2辺のそれぞれにほぞ15が2つ形成され、他の2辺のそれぞれにほぞ溝16が2つ形成されているが、各辺にほぞ15またはほぞ溝16が1つまたは3つ以上形成される形態や、各辺にほぞ15およびほぞ溝16が形成される形態などにすることもできる。
【0050】
このように連結機構8としてほぞ継ぎを用いることにより、上記実施形態で必要であったボルトとナットとの締結作業を省略することができ、施工をより容易にすることができる。
【0051】
なお、連結機構8として上記ほぞ継ぎを用いる場合には、施工性の観点からほぞ15とほぞ溝16との係合部に遊びを設ける必要があり、互いに隣接するプレキャストコンクリート板7を密着させることは困難である。そこで、互いに隣接するプレキャストコンクリート板7の間隙に目地材を充填するとよい。目地材を充填しないときには、互いに隣接するプレキャストコンクリート板7は水平方向のみについて連結された状態であるが、目地材を充填することにより、互いに隣接するプレキャストコンクリート板7を上下方向についても連結された固定状態とすることができ、液状化層5が液状化したときの液状化層5の側方流動をより効果的に抑制することができる。
【0052】
更に、
図8を参照して、他の実施形態に係る杭式液状化対策構造体1について説明する。本実施形態では、連結機構8として緊張材17を用いている。各プレキャストコンクリート板7には、貫通孔10を避けた位置に緊張材17を挿通させるための図示しないシースをX方向およびY方向に埋設しておき、すべてのプレキャストコンクリート板7を敷設した後、連続したシースの内部に緊張材17を挿通させ、各列のプレキャストコンクリート板7の両端で緊張材17を緊張してポストテンションを付与することで、複数のプレキャストコンクリート板7を一体化させる。緊張材17としては、PC鋼線やPC鋼棒、PC鋼より線、アラミド繊維などを用いることができる。緊張材17は、シースにグラウトを注入することで定着させてもよく、板状構造体6の両端に図示しない定着具を設置して定着させてもよい。このように緊張材17によって複数のプレキャストコンクリート板7を一体化させる場合には、板状構造体6の一部である接続部9については、すべてのプレキャストコンクリート板7を一体化させた後にコンクリートを打設するようにする。
【0053】
このように連結機構8として緊張材17を用いることにより、複数のプレキャストコンクリート板7を一度に連結することができる。そのため、施工効率を向上させることができる。
【0054】
次に、
図9を参照して、更に別の実施形態に係る杭式液状化対策構造体1およびその構築方法について説明する。本実施形態では、杭3として、機械撹拌併用型高圧噴射工法または高圧噴射工法により構築された深層混合杭を用いており、充填材13を用いることなく杭3を板状構造体6に一体化させている。なお、板状構造体6の貫通孔10には、杭3との結合強度を高めるために、その内面に凹凸14が形成されている。杭3は、上記実施形態と同様に、板状構造体6を構築した後に構築される。
【0055】
以下、杭3の構築手順について説明する。杭3は、地盤G内に固化材を機械撹拌するか高圧噴射することにより、下端から上方に向けて構築される。ここでは、杭3の頭部3a以下の下部3cは、機械撹拌工法によって板状構造体6の貫通孔10よりも小さな一定断面形状を有するように構築されている。一方、杭3の上部(頭部3a)は、少なくとも高圧噴射工法を併用し、械撹拌工法によって構築された下部3cよりも大きな断面形状を有するように構築されている。したがって、板状構造体6の貫通孔10の内部では、貫通孔10内の全領域が杭3とされており、板状構造体6の直下では、杭3の直径が貫通孔10の直径よりも大きくなっている。
【0056】
杭3をこのように構築することにより、杭3は構築と同時(固化と同時)に板状構造体6と一体となり、杭3の構築後に杭3と板状構造体6との間に充填材13を充填する必要がなく、施工が容易である。また、杭3の頭部3aは、高圧噴射工法を併用して構築され、固化材の混入量が下部3cに比べて多くなることにより、下部3cよりも高い強度とされている。そのため、液状化層5の液状化によって転倒するような力が杭3に作用しても、応力が集中する板状構造体6の直下の部分で杭3が破損することも抑制される。
【0057】
次に、
図10および
図11を参照して、更に別の実施形態に係る杭式液状化対策構造体1およびその構築方法について説明する。本実施形態では、杭3があたかも無作為のように配置される。まず、
図10を参照して杭3の配置について説明する。最初に、改良対象となる地盤Gの平面上に任意のX方向と、X方向に所定の角度(ここでは90度)をもって交差するY方向とを設定する。そして、任意に設定した点p1に杭3を配置するとともに、点p1からX方向へd1の距離をもつ点p2、点p1からY方向へd2(ここではd2=d1)の距離をもつ点p3、および点p2からY方向へd2の距離をもつ(点p3からX方向へd1の距離をもつ)点p4に杭3を配置し、これら4本の杭3を1つの杭群Pとする。なお、d1の中心間距離をもってX方向にm列(mは2以上の整数。ここではm=2)配置するとともに、d2の中心間距離をもってY方向にn列(nは2以上の整数。ここではn=2)配置したm×n本の杭3から1つの杭群Pを構成すればよい。
【0058】
次に、杭群Pの中心、すなわち点p1、点p2、点p4および点p3を順に結んで形成される正方形の中心を群中心Cとする。そして、1つの杭群Pに対し、略X方向に別の杭群Pを隣接配置するとともに、略Y方向に別の杭群Pを隣接配置する。なお、ここで云う「略」については後に説明する。以下、各杭群Pおよび各群中心Cについては、配置に応じた特定を行えるように、図中では、符号PおよびCの後に括弧書きで略X方向,略Y方向への配列番号を示す数字を付して、例えば、基準となる杭群Pを杭群P(1,1)と記し、その略X方向に隣接配置した杭群Pを杭群P(2,1)と記し、その略Y方向に隣接配置した杭群Pを杭群P(1,2)と記す。また、任意の杭群Pを第1の杭群P(n,n)と称し、任意の杭群Pに対して略X方向に隣接配置した杭群Pを第2の杭群P(n+1,n)と称し、任意の杭群Pに対して略Y方向に隣接配置した杭群Pを第3の杭群P(n,n+1)と称して説明する。
【0059】
上記各杭群Pの配置は、具体的には以下のように行う。まず、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX方向へd1×m(ここではd1×2)の距離、およびY方向へd2×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、第2の杭群P(n+1,n)を構成するm×n本(ここでは4本)の杭3を各点(ここではp1〜p4)に配置する。このような所定の規則に則って0.5列分ずらした杭群Pの配置方向を、本説明では「略X方向」と称する。また、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からY方向へd2×n(ここではd2×2)の距離、およびX方向へd1×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、第3の杭群P(n,n+1)を構成するm×n本(ここでは4本)の杭3を各点(ここではp1〜p4)に配置する。このような所定の規則に則った杭群Pの配置方向を、本説明では「略Y方向」と称する。
【0060】
この手順で、すべての杭群Pを第1の杭P(n,n)と仮定したうえで、略X方向に隣接する第2の杭群P(n+1,n)および略Y方向に隣接する第3の杭群P(n,n+1)を配置する。すると、第2の杭群P(n+1,n)に対して略Y方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)と、第3の杭群P(n,n+1)に対して略X方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)とは、ともに第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX方向へd1×(m+0.5)、(ここではd1×2.5)の距離、およびY方向へd2×(n+0.5)、(ここではd2×2.5)の距離だけ離れた位置にくることとなり、互いに一致する。つまり、各杭群Pの群中心Cが平面格子の格子点となり、略X方向に2群および略Y方向に2群の合計4群の杭群Pが重複しながら繰り返し現れる。このようにすべての杭群Pについて上記手順を行って順次m×n本(ここでは4本)の杭3を各点(ここではp1〜p4)に配置することで、一定の規則に則りつつ地盤Gの改良対象区域のすべてに杭3があたかも無作為に配置したように配置される。なお、改良対象区域の外周縁近傍では、杭3の配置を適宜調整する。
【0061】
このようにして杭3を配置した杭式液状化対策構造体1では、杭3間に形成される未改良領域がX方向およびY方向に延在することが隣接する杭群Pの杭3によって阻止されるため、通常の方法で杭3を配置した同じ改良率の杭式の基礎構造体に比べて改良効果が高まる。
【0062】
次に、このように配置された杭3に対する板状構造体6について説明する。
図11に示すように、本実施形態においても、板状構造体6は、複数のプレキャストコンクリート板7を図示省略した連結機構8(連結手段)によって連結することで一体化されるが、各プレキャストコンクリート板7は矩形ではなく、矩形の一対の対角が直線で切除されたような6角形とされている。このような杭3の配置であっても、同一寸法および同一形状の複数のプレキャストコンクリート板7を同一の向きで順次配置することにより、全ての杭3の頭部3aを固定する板状構造体6を構成することができる。
【0063】
さらに、
図12に示すように、X方向およびY方向のいずれか一方(ここではX方向)に杭群Pを配置する際に、いずれか他方(ここではY方向)へ0.5列分ずらす際に、d×0.5(ここではd2×0.5)の距離と、d×−0.5(ここではd2×−0.5)の距離とを交互に設定することで、杭3があたかも無作為のように配置された場合であっても、同一寸法および同一形状の複数のプレキャストコンクリート板7を交互に向きを変えながら配置するとにより、全ての杭3の頭部3aを固定する板状構造体6を構成することができる。なお、このような配置の場合、各プレキャストコンクリート板7の突出する部分の形状は任意に設定できる。
【0064】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態は組み合わせ可能であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、杭3の上端3bを板状構造体6の上面の高さに合わせるようにしているが、杭3および板状構造体6のせん断耐力を確保できるのであれば、杭3の上端3bを板状構造体6の上面よりも低い位置にして、杭3の板状構造体6によって囲繞ないし固定される高さ寸法を板状構造体6の厚さtよりも小さくしてもよい。このようにした場合には、貫通孔10の上部(杭3の上方)にコンクリートを打設して杭3をコンクリートで覆うようにすれば、美観を向上させることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、1つのプレキャストコンクリート板7にX方向およびY方向ともに2列、合計4つの貫通孔10を形成しているが、両方向ともに2列に限定されるものではない。さらに、貫通孔10を1つのプレキャストコンクリート板7に納まるように配置する必要はなく、例えば、プレキャストコンクリート板7の側縁に半円状の切欠きを形成しておき、2つのプレキャストコンクリート板7を連結した状態で貫通孔10が形成されるようにしてもよい。また、上記実施形態では、杭3を格子状に配置しているが、一定の規則をもって配置すれば、例えば千鳥(三角形)や五角形、六角形に杭3を配置してもよい。この場合には、プレキャストコンクリート板7の平面形状は矩形ではなく、三角形や平行四辺形、五角形、六角形など、適切な形状にすればよい。また、接続部9は任意に設置することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、板状構造体6をプレキャストコンクリートによりにより構成しているが、鋼板やFRP板、浅層混合処理による改良層などにより板状構造体6を構成してもよい。鋼板やFRP板を用いる場合には、コンクリート板の場合と同様に、複数の板片を用意しておき、これらを連結して板状構造体6を構成するとよい。一方、改良層により板状構造体6を構成する場合は、このような構築方法ではなく、一体の板状構造体6を構築すればよい。この場合、先に杭3を構築すると、杭3を損傷させることなく頭部3aの周りに改良層を構築することは困難であるため、先に改良層を構築し、改良層を貫通するように杭3を後から構築するとよい。
【0068】
このほか、各要素の具体的形状や、配置、数量、寸法、および作業手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した本発明に係る杭式液状化対策構造体1の各要素や作業手順は、必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択できる。