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特開2015-103617有機半導体層形成用の識別標識組成物、識別標識付き有機半導体層、および発光素子の有機半導体層の識別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-103617(P2015-103617A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】有機半導体層形成用の識別標識組成物、識別標識付き有機半導体層、および発光素子の有機半導体層の識別方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20150508BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20150508BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-242084(P2013-242084)
(22)【出願日】2013年11月22日
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 浩
(72)【発明者】
【氏名】安達 千波矢
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD58
3K107DD68
3K107FF14
3K107GG56
(57)【要約】
【課題】本発明は、特性を損なうことなく識別標識を有機半導体層に付与することができる有機半導体層形成用の識別標識組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を100重量部と、該発光材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量部以上5重量部未満の量で含むことを特徴とする、有機半導体層形成用の識別標識組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を100重量部と、該有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量部以上5重量部未満の量で含むことを特徴とする、有機半導体形成用の識別標識組成物。
【請求項2】
重水素原子含有有機半導体材料の量が、分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料100重量部に対して1重量部未満である請求項1に記載の発光素子形成用の識別標識組成物。
【請求項3】
分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を100重量部と、該有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量部以上5重量部未満の量で含む有機半導体層を質量分析して重水素原子を検出する工程を含むことを特徴とする、発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項4】
重水素原子を有さない有機半導体材料と重水素原子含有有機半導体材料との含有比率を求めて識別する請求項3に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項5】
重水素原子含有有機半導体材料の重水素原子の結合位置を検出して識別する請求項3又は4に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項6】
重水素原子含有有機半導体材料の分子内の重水素原子の数を検出して識別する請求項3〜5のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項7】
有機半導体層に重水素原子含有有機半導体材料が2種以上含まれており、当該2種以上の重水素原子含有有機半導体材料を検出して識別する請求項3〜6のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項8】
前記2種以上の重水素原子含有有機半導体材料の含有比率を求めて識別する請求項7に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項9】
前記発光素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項10】
前記有機半導体層が発光層であることを特徴とする請求項9に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項11】
前記有機半導体材料がホスト材料であることを特徴とする請求項10に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項12】
特定の重水素原子含有有機半導体材料を特定量含む有機半導体層を有する発光素子製造群の中に、識別対象となる発光素子が含まれるか否かを判別する請求項3〜11のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項13】
前記発光素子が真正品か偽造品かを判別する請求項3〜11のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【請求項14】
前記発光素子の製造ロットを特定する請求項3〜11のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真正品と偽造品との判別や製品ロットの特定等に用いられる識別標識を有機半導体層に付与することができる有機半導体層形成用の識別標識組成物、識別標識付き有機半導体層、および発光素子の有機半導体層の識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)等の有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機発光素子を構成する有機半導体層の材料を新たに開発することにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、重水素原子を有する化合物を利用した有機発光素子に関する研究も見受けられ、これまでにも幾つかの提案がなされてきている。
【0003】
例えば特許文献1には、水素原子を重水素原子で置換した芳香族複素環化合物を発光層のホスト材料等として用いることが開示されている。ここでは、水素原子を重水素原子で置換した芳香族複素環化合物を用いることにより、高い発光効率を有し、長超寿命が得られる有機電界発光素子が得られることが記載されている。
また、特許文献2には、重水素置換された配位子を有し、中心金属がアルミニウムまたは亜鉛である金属錯体からなる発光材料用ドーパント材が開示されている。ここでは、このドーパントをホスト材と混合して発光層を構成することで、発光効率が高く、ドーパント材の使用量が抑えられる有機エレクトロルミネッセンス素子が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−224763号公報
【特許文献2】特開2010−59265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機エレクトロルミネッセンス素子をはじめとした有機発光素子の有機半導体層の材料開発には、多くの労力や時間、開発費用が費やされる。しかし、こうして有機半導体層の材料が開発されても、該材料が市販デバイスに採用されて一旦市場に出回ると、そのデバイスが分解され、材料の化学構造等の情報が容易に外部に流出してしまう。その結果、その材料を模倣した偽造品、すなわち海賊版材料が市場に流通し、それを使用した製品を製造販売する等の違法行為が多発する事態になる。
偽造品の製造を抑止するための方法としては、灯油等の非課税油にクマリンを標識として添加し、混和軽油と識別し得るようにした方法が周知である。
しかし、有機発光素子の有機半導体層(特に発光層)に用いられる材料には、その機能の発現に極めて高い純度が要求される。このため、標識材料として、構造が全く異なる他の材料を添加することは妥当でない。このため、有機半導体層の海賊版材料の使用に関しては、効果的な抑止方法は見出されておらず、デバイスメーカー等の利用ユーザーの良識に委ねるしかないのが実情である。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、発光等の特性を損なうことなく識別標識を有機半導体層に付与することができる有機半導体層形成用の識別標識組成物を提供することを目的として鋭意検討を進めた。また、優れた特性を有し、かつ真正品と偽造品との判別や製造ロットの特定等が可能な識別標識付き有機半導体層、および発光素子の有機半導体層の識別方法を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のように、有機発光素子の発光層に重水素化された発光材料を使用することは知られている。しかし、これらの重水素原子含有有機半導体材料を用いた既知の発明は、いずれも重水素原子含有有機半導体材料を用いることにより発光効率や寿命を向上させうることを見出したものであり、そのような効果を発揮させるためには重水素原子含有有機半導体材料を重水素原子非含有発光材料に対して比較的多量に使用することが不可欠なものでばかりある。このような状況の中で、本発明者らは、重水素原子含有有機半導体材料を識別標識として用いるという、まったく新しい観点の元で研究を進め、従来にない技術思想を有する斬新な発明をなした。具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1] 分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を100重量部と、該有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量部以上5重量部未満の量で含むことを特徴とする、有機半導体形成用の識別標識組成物。
[2] 重水素原子含有有機半導体材料の量が、分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料100重量部に対して1重量部未満である[1]に記載の発光素子形成用の識別標識組成物。
[3] 分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を100重量部と、該有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量部以上5重量部未満の量で含む有機半導体層を質量分析して重水素原子を検出する工程を含むことを特徴とする、発光素子の有機半導体層の識別方法。
[4] 重水素原子を有さない有機半導体材料と重水素原子含有有機半導体材料との含有比率を求めて識別する[3]に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[5] 重水素原子含有有機半導体材料の重水素原子の結合位置を検出して識別する[3]又は[4]に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[6] 重水素原子含有有機半導体材料の分子内の重水素原子の数を検出して識別する[3]〜[5]のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[7] 有機半導体層に重水素原子含有有機半導体材料が2種以上含まれており、当該2種以上の重水素原子含有有機半導体材料を検出して識別する[3]〜[6]のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[8] 前記2種以上の重水素原子含有有機半導体材料の含有比率を求めて識別する[7]に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[9] 前記発光素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする[3]〜[8]のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[10]前記有機半導体層が発光層であることを特徴とする[9]に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[11]前記有機半導体材料がホスト材料であることを特徴とする[10]に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[12] 特定の重水素原子含有有機半導体材料を特定量含む有機半導体層を有する発光素子製造群の中に、識別対象となる発光素子が含まれるか否かを判別する[3]〜[11]のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[13] 前記発光素子が真正品か偽造品かを判別する[3]〜[11]のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
[14] 前記発光素子の製造ロットを特定する[3]〜[11]のいずれか1項に記載の発光素子の有機半導体層の識別方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特性を損なうことなく識別標識を有機半導体層に付与することができる。また、優れた特性を有し、かつ真正品と偽造品との判別や製造ロットの特定等が可能な識別標識付き有機半導体層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
図2】重水素原子含有有機半導体材料を含むサンプル溶液1の質量分析スペクトルである。
図3】重水素原子含有有機半導体材料を含まない比較サンプル溶液1の質量分析スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
<有機半導体層形成用の識別標識組成物>
本発明の有機半導体層形成用の識別標識組成物は、分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を100重量部と、該有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量部以上5重量部未満の量で含むものである。以下の説明では、分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を「重水素原子非含有機半導体材料」ということがある。
【0013】
このような識別標識組成物を用いて形成された有機半導体層は、重水素原子含有有機半導体材料が識別標識として機能し、この重水素原子含有有機半導体材料を検出することにより、有機半導体材料が重水素原子非含有有機半導体材料のみからなる有機半導体層や、重水素原子含有有機半導体材料の濃度、重水素原子含有有機半導体材料の分子内に存在する重水素原子の数や位置が異なる有機半導体層と識別することができる。
したがって、例えば、この識別標識組成物を用いて形成された有機半導体層の有機半導体材料を模倣した有機発光素子や有機発光素子を搭載したディスプレイ等が非正規に製造販売された場合でも、その偽造品からは真正品で検出されるべき重水素原子含有有機半導体材料が検出されないため、偽造品であると判別することができる。これにより、その違法行為の立証が容易になるとともに、こうした違法行為を抑止する効果も得ることができる。
また、製造者や製造ロット毎に、識別標識組成物における重水素原子含有有機半導体材料の濃度、重水素原子含有有機半導体材料の分子内に存在する重水素原子の数や位置を変えた場合には、検出された重水素原子含有有機半導体材料の分析パターン(ピークの数、位置、強度等)に基づいて製造者や製造ロットを特定することができる。したがって、例えば、この分析パターンを追跡マーカーとして用いることにより、ディスプレイ等の末端製品の異常発生時に、異常発生製品を精度よく特定して適切な対応を取ることができる。
また、重水素原子含有有機半導体材料は、水素原子の少なくとも一部が重水素原子で置換されている以外は重水素原子非含有有機半導体材料と同じ構造を有し、また、その含有量が重水素原子非含有有機半導体材料100重量部に対して0.0001重量部以上5重量部未満と極めて微量であるため、重水素原子非含有有機半導体材料の発光等の特性に悪影響を及ぼすことがない。したがって、本発明の識別標識組成物によれば、こうした識別標識を、特性を損なうことなく有機半導体層に付与することができる。
以下、本発明の有機半導体層形成用の識別標識組成物を構成する各材料について説明する。
【0014】
[重水素原子非含有有機半導体材料]
重水素原子非含有有機半導体材料は、該識別標識組成物を用いて形成された有機半導体層において有機半導体材料の主成分となるものである。重水素原子非含有有機半導体材料としては、蛍光材料、りん光材料、遅延蛍光材料等がいずれも使用でき、所望の発光特性に応じて適宜選択することができる。
ここで、本明細書中における「遅延蛍光材料」とは、励起エネルギーの吸収によって一重項励起状態および三重項励起状態に励起され、このうち励起三重項状態に励起された励起子の少なくとも一部が励起一重項状態に逆項間交差し、その後、励起一重項状態から基底状態に戻るときに蛍光を放射する有機化合物のことを言う。なお、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差に起因する蛍光の寿命は、通常の蛍光(即時蛍光)やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した発光として観察される。遅延蛍光材料としては、特に熱エネルギーの吸収によって励起三重項状態から励起一重項状態に逆項間交差する熱活性化型の遅延蛍光体(TADF)であることが好ましい。熱活性化型の遅延蛍光体は、デバイスが発する熱を吸収して励起三重項状態から励起一重項へ比較的容易に逆項間交差し、その励起三重項エネルギーを効率よく蛍光発光に寄与させることができる。
【0015】
[重水素原子含有有機半導体材料]
重水素原子含有有機半導体材料は、有機半導体層を識別するための識別標識として機能するものである。重水素原子含有有機半導体材料は、上記の重水素原子非含有有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有するものであり、上記の[重水素原子非含有有機半導体材料]の欄で例示した有機半導体材料の重水素化物を好ましく用いることができる。
重水素原子含有有機半導体材料の各分子における重水素原子の数は特に制限されず、分子内の全ての水素原子が重水素原子で置換されていてもよいし、水素原子の一部が重水素原子で置換されていてもよい。また、分子内における重水素原子が結合する位置も特に限定されない。また、重水素原子含有有機半導体材料は、分子内に存在する重水素原子の数および位置が等しい1種類の重水素原子含有有機半導体材料によって構成されていてもよいし、重水素原子の数および位置の少なくともいずれが異なる2種類以上の重水素原子含有有機半導体材料を組み合わせたものであってもよい。2種類以上の重水素原子含有有機半導体材料を用いた場合には、各重水素原子含有有機半導体材料の含有比率を変えることによって有機半導体層から様々な分析パターンを得ることができ、それに応じて細かい識別項目および各識別項目に関する情報を設定することができる。
【0016】
重水素原子含有有機半導体材料は、重水素原子非含有有機半導体材料の水素原子を重水素原子で置換することによって得ることができる。また、重水素原子含有有機半導体材料は、有機半導体材料の合成原料や合成過程で生じる中間体の水素原子を重水素原子で置換し、この重水素化した合成原料又は中間体から有機半導体材料を合成することによっても得ることができる。なお、本明細書中では、化合物の水素原子を重水素原子に置換することを「重水素化」といい、重水素化された化合物を含む組成物において、化合物の任意に設定した各位置における水素原子が重水素原子で置換された割合(重水素原子の量)/(水素原子と重水素原子との合計量)を「重水素化率」という。重水素化率は、重水素化の条件を変化させることによって制御することができる。
【0017】
重水素原子含有有機半導体材料は、具体的には特許5009922号公報に記載される方法等によって合成することができ、コストと実用性の観点から、化合物の重水素化は重水(D2O)を用いて行うことが好ましい。重水による重水素化では、その温度条件の制御や触媒の選択によって、所望の位置の水素原子を所望の数だけ重水素原子に置換することが可能である。
【0018】
[重水素原子含有有機半導体材料の濃度]
本発明において、重水素原子含有有機半導体材料は識別標識として機能するものであることから、その含有量が重水素原子非含有有機半導体材料100重量部に対して0.0001重量部以上5重量部未満と微量であることが重要であり1重量%未満であることが好ましく、0.001重量部以上1重量部未満であることがより好ましく、0.01重量部以上1重量部未満であることがさらに好ましい。これにより、この識別標識組成物を用いて形成された有機半導体層から重水素原子含有有機半導体材料を確実に検出することができ、さらに重水素原子含有有機半導体材料の濃度や分子内における重水素原子の数および位置に応じた分析パターンを確実に得ることができる。
【0019】
[溶媒]
本発明の識別標識組成物は、必要に応じて溶媒を含有していてもよい。これにより、重水素原子含有有機半導体材料および重水素原子非含有有機半導体材料の濃度を調整することができる。また、識別標識組成物を塗料として塗布することが可能になり、コーティング法を用いて有機半導体層を容易に形成することができる。溶媒としては、重水素原子非含有有機半導体材料および重水素原子含有有機半導体材料に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0020】
[識別標識組成物の調製方法の具体例]
次に、識別標識組成物の調製方法の具体例として、2−メチル−8−オキシキノリンを合成原料としてBAlqとBAlqの重水素化物を含む識別標識組成物を調製する方法を説明する。なお、ここでは重水素化率が異なる8種類の識別標識組成物を調製する場合を例にする。
【0021】
まず、下記式に示すように、2−メチル−8−オキシキノリンと重水とを、Pd−C触媒存在下、180℃又は140℃で2時間反応させて重水素化率の異なる2−メチル−8−オキシキノリンの重水素化物(Me8HQ−D1、Me8HQ−D2)を得る。表1に、Me8HQ−D1、Me8HQ−D2の重水素化率を示す。
【化1】
【0022】
【表1】
【0023】
次に、Me8HQ−D1、Me8HQ−D2、および重水素化していない2−メチル−8−オキシキノリン各々を下記式に示すように、Al(O−Pr)3および4−ヒドロキシビフェニルと反応させてBAlqと重水素化率の異なるBAlqを得る。これら3種のBAlqを粉体として異なる比で混合したサンプル4種(D1〜D4−BAlq)の重水素化率を表2に示す。
【化2】
【表2】
【0024】
次に、表3に示すように、各BAlq溶液を0.1重量%又は0.2重量%の割合で重水素化していないBAlqの溶液に添加する。以上の工程により、重水素化率が異なる8種類する識別標識組成物(BAlq−1〜BAlq−8)が得られる。
なお、この識別標識組成物の調製方法では、重水素化の温度や触媒の種類、Me8HQ−D1とMe8HQ−D2との混合比、D1−BAlq〜D4−BAlqの添加量等の条件を変化させることにより、さらに異なる重水素化率の識別標識組成物を得ることができる。
【表3】
【0025】
[有機半導体層の形成方法]
本発明の識別標識組成物は有機半導体層の形成に用いられるものである。この識別標識組成物による有機半導体層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、識別標識組成物の塗料を有機半導体層の被形成面に塗布、乾燥して有機半導体層を形成するコーティング法、識別標識組成物を蒸気にして有機半導体層の被形成面に被着形成する気相成膜法等がいずれも使用できる。識別標識組成物の塗料の塗布方法および気相成膜法の具体例については、下記の<識別標識付き有機半導体層>の欄を参照することができる。
【0026】
<識別標識付き有機半導体層>
次に、本発明の識別標識付き有機半導体層について説明する。
本発明の識別標識付き有機半導体層は、分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を100重量部と、該有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量%以上5重量%未満の量で含むものである。
有機半導体層に含まれる、分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料(重水素原子非含有有機半導体材料)および重水素原子含有有機半導体材料、重水素原子含有有機半導体材料の濃度、必要に応じて用いられる溶媒および有機半導体層中に含まれる他の材料については、上記の<有機半導体層形成用の識別標識組成物>の欄の対応する記載を参照することができる。
【0027】
識別標識付き有機半導体層は、例えば本発明の有機半導体層形成用の識別標識組成物の塗料を、有機半導体層の被形成面に塗布、乾燥することによって形成することができる。これにより、識別標識付き有機半導体層を、コストを抑えて短時間に形成することができる。
塗料の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等を挙げることができる。
また、識別標識付き有機半導体層は、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の気相成膜法によって形成してもよい。例えば、蒸着法によって有機半導体層を形成する場合には、本発明の有機半導体層形成用の識別標識組成物を蒸着源として用いてもよいし、重水素原子非含有有機半導体材料からなる蒸着源と重水素原子含有有機半導体材料からなる蒸着源、さらに必要に応じて有機半導体層に含まれる他の材料からなる蒸着源を別々に用意し、共蒸着することによって識別標識付き有機半導体層を形成してもよい。
【0028】
このような識別標識組成物から形成される有機半導体層では、重水素原子含有有機半導体材料が識別標識として機能し、この重水素原子含有有機半導体材料を検出することによって、有機半導体材料が重水素原子非含有有機半導体材料のみからなる有機半導体層や、重水素原子含有有機半導体材料の濃度、重水素原子含有有機半導体材料の分子内に存在する重水素原子の数や位置を変えた有機半導体層と識別することができる。したがって、例えば、真正品と、重水素原子含有有機半導体材料を含まない偽造品とを判別することができ、また製造者や製造ロット毎に、識別標識組成物における重水素原子含有有機半導体材料の濃度、重水素原子含有有機半導体材料の分子内に存在する重水素原子の数や位置を変えた場合には、検出された重水素原子含有有機半導体材料に分析パターンに基づいて製造者や製造ロット等を精度よく特定することができる。
また、重水素原子含有有機半導体材料は、水素原子の少なくとも一部が重水素原子で置換されている以外は重水素原子非含有有機半導体材料と同じ化学構造を有し、また、その含有量が重水素原子非含有有機半導体材料100重量部に対して0.0001重量部以上5重量部未満と極めて微量であるため、重水素原子非含有有機半導体材料の特性に悪影響を及ぼすことがない。したがって、この識別標識付き有機半導体層は、識別標識を有するとともに、有機半導体材料が重水素原子非含有有機半導体材料のみからなる有機半導体層と同等の光学特性を得ることができる。
【0029】
<発光素子の有機半導体層の識別方法>
次に、本発明の発光素子の有機半導体層の識別方法について説明する。
本発明の発光素子の有機半導体の識別方法は、分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料を100重量部と、該有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量部以上5重量部未満の量で含む有機半導体層を質量分析して重水素原子を検出する工程を有する。
本発明の識別方法の識別対象は、発光素子が有する有機半導体層であって、分子内に重水素原子を有さない有機半導体材料(重水素原子非含有有機半導体材料)を100重量部と、該有機半導体材料に存在する水素原子の少なくとも1つを重水素原子で置換した構造を有する重水素原子含有有機半導体材料を0.0001重量部以上5重量部未満の量で含む有機半導体層である。この有機半導体層の構成については、上記の<識別標識付き有機半導体層>の欄を参照することができる。
本発明では、このような有機半導体層を質量分析し、重水素原子含有有機半導体材料に由来するピークを検出する。
質量分析は、試料分子をイオン化し、その試料分子のイオンや試料分子から解離したフラグメントのイオン、試料分子同士が会合した会合イオンを質量電荷比毎に分離して検出する方法である。質量分析では、重水素原子含有有機半導体材料に由来するピークを重水素原子非含有有機半導体材料に由来するピークから分離して観測することができ、また重水素原子含有有機半導体材料に由来するピークの強度から有機半導体層に含まれる重水素原子含有有機半導体材料の含有濃度を定量することができる。さらに、タンデム型質量分析装置(MS/MS)を用いれば、重水素原子含有有機半導体材料の分子内に存在する重水素原子の数や位置を特定することができる。したがって、質量分析によれば、重水素原子含有有機半導体材料の濃度、分子内に存在する重水素原子の数や位置を有機半導体層毎に変化させたり、分子内に存在する重水素原子の数および位置の少なくともいずれかが異なる2種類以上の重水素原子含有有機半導体材料を使用し、その含有率を有機半導体層毎に変化させたりすることにより、その変化と相関する様々な分析パターンを得ることができ、その分析パターンを指標として有機半導体層を精度よく識別することができる。
【0030】
有機半導体層の識別は、具体的には以下のようにして行うことができる。
(1)重水素原子含有有機半導体材料を検出すること
(2)重水素原子含有有機半導体材料の含有濃度を測定すること
(3)重水素原子非含有有機半導体材料と重水素原子含有有機半導体材料との含有比率を求めること
(4)重水素原子含有有機半導体材料の重水素化されている分子内の位置を特定すること
(5)重水素化されている分子内の位置が異なる複数の分子の含有比率を測定すること
(6)重水素原子含有有機半導体材料の分子内に存在する重水素原子の数を特定すること
(7)分子内に存在する重水素原子の数が異なる複数の分子の含有比率を測定すること
ここで、重水素原子非含有有機半導体材料や重水素原子含有有機半導体材料の有機半導体層における含有量は、予め重水素原子含有有機半導体材料の含有量と質量分析におけるピーク強度との関係を調べて検量線を作成しておけば、容易に確認することができる。
本発明の発光素子の有機半導体層の識別方法は、例えば、発光素子が真正品か偽造品かを判別することに用いることができる。
また、本発明の発光素子の有機半導体層の識別方法は、発光素子の製品情報を特定することにも用いることができる。この場合、発光素子の有機半導体層は、製品情報毎に異なる分析パターンが検出されるように、重水素原子含有有機半導体材料の種類と量を組み合わせて形成する。製品情報の項目としては、特に限定されないが、製造日、製造工場、納入先、受注元、製造責任者、使用対象となる最終製品の種類等を挙げることができる。
【0031】
<発光素子>
本発明の識別方法によって有機半導体層が識別される発光素子としては、例えば有機フォトルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子等の有機発光素子を挙げることができる。以下では、代表として有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
[有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成]
本発明の識別方法によって有機半導体層が識別される有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものである。有機層は、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
本発明の識別方法により識別する有機半導体層は、陽極と陰極の間に存在するいずれの有機層であってもよい。発光層を識別する場合は、発光層に含まれる発光材料を本発明の識別用の有機半導体材料として選択してもよいし、発光層に含まれるホスト材料を本発明の識別用の有機半導体材料として選択してもよい。また、識別する有機半導体層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などの発光層以外の有機層を選択してもよい。
【0032】
上述のような有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
【0033】
本発明の識別方法によって発光層が識別される有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれであってもよい。
【0034】
また、本発明の識別方法によって発光層が識別される発光素子は、有機フォトルミネッセンス素子であってもよい。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。基板と発光層の構成については、有機フォトルミネッセンス素子における基板と発光層の説明を参照することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0036】
[有機半導体材料溶液の調製]
(実施例1)
1000mgの6P2NAlq(非重水素化物)および10mgの6P2NAlqの重水素化物を混合調製した。この混合物10mgを1000mgのテトラヒドロフラン(THF)に溶解して非重水素化物と重水素化物の合計含有量が1重量%のサンプル溶液1を調製した。
【0037】
(比較例1)
6P2NAlq10mgをテトラヒドロフラン1000mgに溶解して1重量%の6P2NAlq溶液(比較サンプル溶液1)を調製した。
【0038】
[有機半導体材料溶液の質量分析]
調製したサンプル溶液1および比較サンプル溶液1を、それぞれ単四重極型質量分析装置(Waters社製 商品名ACQUITY SQD)に注入して質量分析を行った。測定された質量分析スペクトルを図2,3に示す。
図2,3からわかるように、1重量%の重水素化物を含有するサンプル溶液1では、346〜351の範囲に顕著なピークが複数観測されるのに対して、重水素化物を含有しない比較サンプル1では、このようなピークが観測されない。
このことから、重水素化物を含有するサンプルと含有しないサンプルとは、質量分析によって明らかに識別できるものであることがわかった。
なお、重水素化物溶液に含まれる6P2NAlqの重水素化物は、非重水素化物溶液に混合するとリガンド交換反応が生じ、1分子に2個のリガンドを有する錯体から1分子に1個のリガンドを有する錯体の2分子に転化する。図2は、このような交換反応が生じた後のサンプル溶液1の質量分析スペクトルである。
【0039】
[有機エレクトロルミネッセンス素子の作製]
(実施例2)
正孔輸送層にα-NPD及び電子輸送層にAlq3を用いた。膜厚110nmのITOからなる陽極が形成された5×5cmのガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0× 10-4 Paで積層させた。まず、ITO上に正孔輸送層としてα−NPDを蒸着速度3.0Å/秒にて50nmの厚さに形成した次に、正孔輸送層上に、発光層のホスト材料としての実施例1で調製した6P2NAlqと6P2NAlq重水素化物の混合物とIr(piq)3とを異なる蒸着源から共蒸着し、50nmの厚さに形成した。この時、Ir(piq)3の濃度は8.0%であった。次に、電子輸送層としてAlq3を蒸着速度3.0Å/秒にて30nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としフッ化リチウム(LiF)を蒸着速度0.1Å/秒にて1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてアルミニウム(Al)を蒸着速度 10Å/秒にて200nmの厚さに形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子を作成した。
【0040】
(比較例2)
発光層のホスト材料として重水素化されていない6P2NAlqのみを用いた以外は実施例2と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作成した。
【0041】
[有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層の質量分析]
(実施例3)
実施例2で作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の電極を剥がし、露出した発光層をテトラヒドロフラン(THF)で溶解、抽出した。このTHF溶液を濃縮、乾固後に同サンプルをTHF0.1mlに再溶解することでサンプル溶液2を得た。このサンプル溶液2を単四重極型質量分析装置に注入して質量分析を行った。その結果、346〜351の範囲に重水素化物由来の顕著なピークが複数観測された。
【0042】
(比較例3)
比較例2で作製した有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた以外は実施例3と同様にして有機エレクトロルミネッセンス材料の質量分析を行った。その結果、346〜351の範囲に重水素化物由来の顕著なピークは観測されなかった。
【0043】
【化3】
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の有機半導体層形成用の識別標識組成物は、発光等の特性を損なうことなく識別標識を有機半導体層に付与することができ、この識別標識を利用することによって真正品と偽造品との判別や製品ロットの特定等を行うことできる。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0045】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
図1
図2
図3