【解決手段】穿孔成形用土壌切断後刃22Aは、前方向に刃が付き、下後方に伸びる。穿孔成形用土塊スライド22Bは、穿孔成形用土壌切断後刃22Aの下端に接続されており、地表面から下方に向かって長方形に切断された上部方形土塊を持ち上げて、その直下に断面が四角形の土塊持ち上げ空洞を成形する。穿孔成形用土塊スライド22Bの後部に接続された穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dと穿孔成形用通水孔成形側面刃22Cとは、土塊持ち上げ空洞の横において、下部方形土塊を切り出す。穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eと穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22Fが、切り出された下部方形土塊を土塊持ち上げ空洞内に寄せると同時にその側壁に押しつけて固定することで下部方形土塊を切り出した元の位置に穿孔を構築する。
前記穿孔成形用土壌切断後刃の前方に第1の所定の間隔を空けて、かつ前記穿孔成形用土壌切断後刃の横方向に第2の所定の間隔を空けて配置されており、前側に刃が付き、下後方に伸び、前記上部方形土塊の他方の側面となる切断細溝を形成する切断穿孔成形用土壌切断前刃を有する切断穿孔成形用土壌切断前刃部を備えることを特徴とする請求項2に記載の穿孔成形作業機。
地表面から下方に向かって長方形に切断された上部方形土塊を所定の高さに持ち上げて、当該上部方形土塊の直下に断面が四角形の土塊持ち上げ空洞を成形する土塊持ち上げ空洞成形工程と、
前記土塊持ち上げ空洞成形工程で成形された土塊持ち上げ空洞の横において、断面が四角形であって、当該土塊持ち上げ空洞を満たす大きさの下部方形土塊を切り出す下部方形土塊切り出し工程と、
前記下部方形土塊切り出し工程で切り出された下部方形土塊を前記土塊持ち上げ空洞内に寄せると同時に当該土塊持ち上げ空洞の側壁に押しつけて固定することで前記下部方形土塊を切り出した元の位置に穿孔を構築する穿孔構築工程と、
を備えることを特徴とする穿孔成形方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来技術には、排水性に劣る農地を優良農地化する技術として暗渠排水管を用いる暗渠排水や有材の補助暗渠がある。しかし、これらの技術は、資材を用いるため多量の資材とその準備が必要であって、高コストとなり、施工効率が低く、資材の有無により施工可能地域が限定される。
もう一つの方法の無材の土層改良法である心土破砕や弾丸暗渠は、低コスト且つ高速であり機動的な排水改良法である。しかし、心土破砕は土に対して強制的に圧力を与えて破砕する。また、弾丸暗渠は破砕された土の最下部に円形の物体を引き込み、円状に土を押しよけて空洞を成形する。このため、これらの排水改良法によって改良された土壌は、土壌の性質による崩落性のため耐久性や効果に劣る場合が多い。また、営農用のため空洞の成形深さが30cm程度と浅く十分な排水効果や耐久性がない。
【0007】
本発明の目的は、排水性に劣る土壌を有する土地をより高生産性化するために、土壌の攪乱を最小限に抑えて、余剰水を集水する排水路として機能する1つ以上の連続した穿孔を任意の間隔と深さで構築することができ、高い施工性と低コストを具備した排水性改良のための穿孔成形作業機および穿孔成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成すべく、本発明の穿孔成形作業機は、
地表面から下方に向かって長方形に切断された上部方形土塊を所定の高さに持ち上げて、当該上部方形土塊の直下に断面が四角形の土塊持ち上げ空洞を成形し、
前記成形された土塊持ち上げ空洞の横において、断面が四角形であって、前記土塊持ち上げ空洞を満たす大きさの下部方形土塊を切り出し、
前記切り出された下部方形土塊を前記土塊持ち上げ空洞内に寄せると同時に当該土塊持ち上げ空洞の側壁に押しつけて固定することで前記下部方形土塊を切り出した元の位置に穿孔を構築する、
穿孔成形用土壌切断後刃部を備えることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、本発明の穿孔成形作業機は、
前記穿孔成形用土壌切断後刃部が、
前側に刃が付き、下後方に伸びる穿孔成形用土壌切断後刃と、
前記穿孔成形用土壌切断後刃の下端に接続され、前方に向かって下るように配置された長方形の平板であって、前記穿孔成形用土壌切断後刃とともに土壌を切断してL字状の切断細溝を形成し、当該L字状の切断細溝を一方の側面および底面とする前記上部方形土塊を所定の高さに持ち上げて、当該持ち上げられた上部方形土塊の直下に断面が四角形の土塊持ち上げ空洞を成形する穿孔成形用土塊スライドと、
前記穿孔成形用土塊スライドの後部に接続されており、前面の幅が前記穿孔成形用土塊スライドの幅より広く、穿孔成形用土塊スライドが接続されていない前面に穿孔成形用通水孔成形上面刃が形成されており、中央において幅が徐々に狭くなっている穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板と、
前記穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板の側部前側に直角に接続されており、前記穿孔成形用通水孔成形上面刃とともに、前記下部方形土塊を切り出すための逆L字状の刃を形成する穿孔成形用通水孔成形側面刃と、
前記穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板の中央において側部に直角に接続されており、前記切り出された下部方形土塊を前記土塊持ち上げ空洞内に寄せる穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板と、
前記穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板の側部後側に直角に接続されており、前記土塊持ち上げ空洞内に寄せられた下部方形土塊を、前記土塊持ち上げ空洞の側壁に押しつけて固定する穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、本発明の穿孔成形作業機は、
前記穿孔成形用土壌切断後刃の前方に第1の所定の間隔を空けて、かつ前記穿孔成形用土壌切断後刃の横方向に第2の所定の間隔を空けて配置されており、前側に刃が付き、下後方に伸び、前記上部方形土塊の他方の側面となる切断細溝を形成する切断穿孔成形用土壌切断前刃を有する切断穿孔成形用土壌切断前刃部を備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、本発明の穿孔成形作業機は、
前記穿孔成形用土壌切断前刃部と前記穿孔成形用土壌切断後刃部を2組以上備えることを特徴とする請求項3に記載の穿孔成形作業機。
【0012】
また、本発明の穿孔成形方法は、
地表面から下方に向かって長方形に切断された上部方形土塊を所定の高さに持ち上げて、当該上部方形土塊の直下に断面が四角形の土塊持ち上げ空洞を成形する土塊持ち上げ空洞成形工程と、
前記土塊持ち上げ空洞成形工程で成形された土塊持ち上げ空洞の横において、断面が四角形であって、当該土塊持ち上げ空洞を満たす大きさの下部方形土塊を切り出す下部方形土塊切り出し工程と、
前記下部方形土塊切り出し工程で切り出された下部方形土塊を前記土塊持ち上げ空洞内に寄せると同時に当該土塊持ち上げ空洞の側壁に押しつけて固定することで前記下部方形土塊を切り出した元の位置に穿孔を構築する穿孔構築工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排水性に劣る土壌を有する土地をより高生産性化するために、土壌の攪乱を最小限に抑えて、余剰水を集水する排水路として機能する1つ以上の連続した穿孔を任意の間隔と深さで構築することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0016】
図1に示す本発明の実施形態に係る穿孔成形作業機1は、農業用トラクターなどの牽引作業機の後方にある各種作業装置を装着する3点リンクに、作業機取付フレーム10により連結される。この穿孔成形作業機1は、穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22を地中に挿入して牽引作業機の牽引力により穿孔されながら作業を行うことで通水孔を構築する。
なお、以下では、穿孔成形作業機1が牽引作業機に取り付けられる側を前側、前方、前部または前面、その反対側を後側、後方または後部という、
【0017】
穿孔成形作業機1の前側には、牽引作業機と連結するための作業機取付フレーム10がある。作業機取付フレーム10は、作業機据え置き支柱と、作業機取付フレーム三点リンク上部接続部10Aと、作業機取付フレーム三点リンク下部接続部10Bとを有する。
この作業機取付フレーム10の後方に穿孔成形装置20がある。穿孔成形装置20は、穿孔成形装置フレーム20Aと、土壌切断刃保持部20Bと、穿孔成形装置可動用シリンダー20Cと、穿孔成形装置可動用シリンダー油圧伝達部20Dと、穿孔成形用土壌切断前刃部21と、穿孔成形用土壌切断後刃部22とを有する。
穿孔成形装置可動用シリンダー20Cは作業機取付フレーム三点リンク上部接続部10Aの後方にあり、穿孔成形装置フレーム20Aは作業機取付フレーム三点リンク下部接続部10Bの後方にある。穿孔成形装置フレーム20Aは後方に向かう直線の支柱を有しており、その支柱の左側と右側にそれぞれ土壌切断刃保持部20Bが前側と後側に所定の間隔をあけて配置されている。前方側の土壌切断刃保持部20Bには穿孔成形用土壌切断前刃部21が固定されており、後方側の土壌切断刃保持部20Bには穿孔成形用土壌切断後刃部22が固定されている。このため、穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22とは、前後に第1の所定の間隔を有し、横方向にも土壌切断刃保持部20Bが配置されている支柱の幅以上の第2の所定の間隔を有している。
穿孔成形装置20は、穿孔成形装置可動用シリンダー20Cを穿孔成形装置可動用シリンダー油圧伝達部20Dの油圧ホースを牽引作業機本体の油圧制御部に接続して油圧の操作によって伸縮させることにより穿孔成形装置フレーム20Aの後方を上下させ、穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22を斜め後方に持ち上げることができる。この機能は、穿孔成形作業機1の移動や施工作業時における穿孔成形作業機1の水平や深さの設定などを簡単に調整可能とするためである。
【0018】
穿孔成形用土壌切断前刃部21は、穿孔成形用土壌切断前刃21Aと穿孔成形用土壌切断前刃下部差し込みピック21Bとを有する。
穿孔成形用土壌切断前刃21Aは、前側に刃が付き、下後方に向かって凹湾曲しながら伸びる。穿孔成形用土壌切断前刃下部差し込みピック21Bは、穿孔成形用土壌切断前刃21Aの下端に付いており、穿孔成形用土壌切断前刃21Aに対する配置角度を変えることができる。穿孔成形用土壌切断前刃21Aは、少ない抵抗で土壌を縦に切断し、細い幅の切断縦溝を形成する。このとき穿孔成形用土壌切断前刃下部差し込みピック21Bの角度を調整して土壌中の下方に向かって刺さるようにすることで穿孔成形用土壌切断前刃21Aの浮き上がりを防止することができる。
【0019】
図2に示すように、穿孔成形用土壌切断後刃部22は、穿孔成形用土壌切断後刃22Aと、穿孔成形用土塊スライド22Bと、穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dと、穿孔成形用通水孔成形側面刃22Cと、穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eと、穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22Fとを有する。
穿孔成形用土壌切断後刃22Aは、前側に刃が付き、下後方に伸びる。穿孔成形用土壌切断後刃22Aも、少ない抵抗で土壌を縦に切断し、細い幅の切断縦溝を形成する。
穿孔成形用土塊スライド22Bは、穿孔成形用土壌切断後刃22Aの下端に接続され、前方に向かって下るように配置された長方形の平板である。穿孔成形用土塊スライド22Bの先端にはくさび状のくさび刃または平板の刃が形成されている。穿孔成形用土塊スライド22Bの後部は穿孔成形用通水孔上面刃付き板接続部22Gで穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dに接続されている。穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dの前部の幅は穿孔成形用土塊スライド幅L1より広く、穿孔成形用土塊スライド幅L1が接続されていない前部に幅L2の穿孔成形用通水孔成形上面刃が形成されている。また、穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dは、中央において幅が徐々に狭くなっている。
穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dの側面には、前方から順に穿孔成形用通水孔成形側面刃22C、穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22E、および穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22Fが直角に接続されている。
穿孔成形用通水孔成形側面刃22Cは、穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dの側部前側に接続されており、穿孔成形用通水孔成形上面刃とともに逆L字状の刃を形成する。
穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eは、徐々に幅が狭くなっている穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dの中央において側部に接続されている。
穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22Fは、穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dの側部後側に接続されている。
【0020】
穿孔成形用土壌切断後刃部22が前進することで、
図3に示すように、穿孔成形用土塊スライド22Bの先端の刃が穿孔成形用土塊スライド幅L1で上部方形土塊30の下端を切断する。同時に穿孔成形用土塊スライド22Bにより上部方形土塊30を持ち上げながら穿孔成形用土壌切断後刃22Aにより上部方形土塊30の側面を切断する。これにより穿孔成形用土塊スライド22Bの下部後方に穿孔成形用土塊スライド幅L1で穿孔成形用通水孔成形側面刃高さL3の土塊持ち上げ空洞41(
図2参照)が構築される。
穿孔成形用土塊スライド22Bによる土塊持ち上げ空洞41の構築と連続して、穿孔成形用土塊スライド22Bの後方の穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dと穿孔成形用通水孔成形側面刃22Cとが、穿孔成形用通水孔成形上面刃幅L2で穿孔成形用通水孔成形側面刃高さL3の下部方形土塊31を切断して成形する。そして、穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eが、この切断されて成形された下部方形土塊31を土塊持ち上げ空洞41の中に移動させ、穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22Fが下部方形土塊31を土塊持ち上げ空洞41の中に押しつけ固定する。この一連の工程により穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eの後方に土壌中の排水路として構築することを目的とした通水孔40が構築される。
穿孔成形用通水孔成形上面刃幅L2は穿孔成形用土塊スライド幅L1以上であり、L1よりある程度長くすることが望ましい。
【0021】
図3を参照して、穿孔成形作業機1による穿孔成形方法について説明する。
穿孔成形作業機1は、農業で広く用いられるトラクターTRなどの後方にある3点リンクLIに接続される。穿孔成形装置20は、3点リンクLIの上下の調整により土壌中に出し入れされる。
トラクターTRなどを進行方向に前進させると、土壌中に挿入された穿孔成形作業機1の穿孔成形装置20は、まず、地表面から下方に向かって長方形に切断された上部方形土塊30を所定の高さに持ち上げて、上部方形土塊30の直下に断面が四角形の土塊持ち上げ空洞41を成形する(土塊持ち上げ空洞成形工程)。次に、穿孔成形装置20は、成形された土塊持ち上げ空洞41の横において、断面が四角形であって、土塊持ち上げ空洞41を満たす大きさの下部方形土塊31を切り出す(下部方形土塊切り出し工程)。最後に、穿孔成形装置20は、切り出された下部方形土塊31を土塊持ち上げ空洞41内に寄せると同時に土塊持ち上げ空洞41の側壁に押しつけて固定することで下部方形土塊31を切り出した元の位置に通水孔40(穿孔)を構築する(穿孔構築工程)。
上部方形土塊30の上部が通水孔40の略高さ分地表面に盛り上がるが、掘削土は発生せず土壌の溝への埋め戻し作業は不要である。
【0022】
図4を参照して、本実施形態に係る穿孔成形方法の工程を詳細に説明する。
(A)土塊持ち上げ空洞成形工程
図4(A)に示すように、穿孔成形作業機1の穿孔成形用土壌切断前刃部21により切断細溝21’が形成される。次に、
図4(B)に示すように、穿孔成形用土壌切断後刃22Aと穿孔成形用土塊スライド22BによりL字状の切断細溝22’が形成される。そして、切断細溝22’が切断細溝21’とつながることで上部方形土塊30が成形される。その後、
図4(C)に示すように、穿孔成形用土塊スライド22Bのスライド上に上部方形土塊30が押し上げられながら移動し、上部方形土塊30の下に土塊持ち上げ空洞41が成形される。
(B)下部方形土塊切り出し工程
土塊持ち上げ空洞成形工程の直後、穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dと穿孔成形用通水孔成形側面刃22Cとで構成されるL字刃が下部方形土塊31を切断して成形する。
(C)穿孔構築工程
そして、
図4(D)に示すように、穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eと穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22Fとが下部方形土塊31を土塊持ち上げ空洞41の中に移動させ固定する。これにより下方方形土塊31の横に通水孔40(穿孔)が構築される。
なお、泥炭土などの膨軟で圧縮性のある土壌に対しては、穿孔成形作業機1に穿孔成形用土壌切断前刃部21を接続せずに施工することもできる。すなわち、切断細溝21’を形成せずに施工することもできる。
【0023】
図5を参照して、通水孔40の形状の変形例を説明する。
場合により、通水孔40が成形された直後に穿孔成形用土壌切断後刃部22に追加で付属させた変形通水孔40’を成形する器具により通水孔40を変形させて変形通水孔40’を構築することができる。
【0024】
図6を参照して、通水孔40内に施す処理を説明する。
通水孔40をそのまま通水孔とする他に、施工時に併せてパイプP等の資材を通水孔40内に引き込む、あるいは、通水孔40の内面にセメントや樹脂、適当な固化剤を噴霧してコーティング膜Cを形成し、耐久性の高い通水孔を構築することができる。
【0025】
図7を参照して、本実施形態に係る穿孔成形作業機1による穿孔成形方法の工程を説明する。
穿孔成形作業機1の最前方にある穿孔成形用土壌切断前刃部21の下端には穿孔成形用土壌切断前刃下部差し込みピック21Bがある。この穿孔成形用土壌切断前刃下部差し込みピック21Bは、土壌の深い方向に向かって刺さり込む構造になっている。このため、穿孔成形用土壌切断前刃下部差し込みピック21Bは、穿孔成形作業機1全体を土壌に挿入するときの浮き上がる方向の抵抗を押さえる役割を果たす。穿孔成形用土壌切断前刃下部差し込みピック21Bの土壌の深さ方向への刺さり込みの角度を数段階に変更することで抵抗力を調整できる。穿孔成形用土壌切断前刃21Aが後下方に湾曲しながら配置されており、切断刃も複数の波刃となっていることで土壌の内部摩擦を軽減して土壌が崩れることなく穿孔成形用土壌切断前刃部21によって切断細溝21’を形成できる。
【0026】
次に、穿孔成形用土壌切断前刃部21の後方に穿孔成形用土塊スライド幅L1ほど横にずらした形で配置された穿孔成形用土壌切断後刃22Aと、その下端で穿孔成形用土壌切断前刃部21による切断細溝21’の下端に先端がくるように配置された穿孔成形用土塊スライド22Bとにより、L字状の切断細溝22’を形成する。切断細溝22’が穿孔成形用土壌切断前刃部21による切断細溝21’とつながることで上部方形土塊30が成形される。穿孔成形用土壌切断後刃部22による切断細溝22’は、穿孔成形用土壌切断前刃部21による切断細溝21’と同様に、その切断刃が複数の波刃となっていることで土壌の内部摩擦を軽減して土壌が崩れることなく切断細溝22’を形成できる。
これと同時に穿孔成形用土塊スライド22Bの上にある上部方形土塊30は、穿孔成形作業機1の進行に伴って穿孔成形用土塊スライド22Bのスライド上に押し上げられながら移動する。これにより、穿孔成形用土塊スライド22Bの裏側で上部方形土塊30の下に土塊持ち上げ空洞41が成形される。
【0027】
その直後、土塊持ち上げ空洞41の横に、穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dと穿孔成形用通水孔成形側面刃22Cとで構成される逆L字状の刃が下部方形土塊31を切断して成形する。穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eと穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22Fとが下部方形土塊31を土塊持ち上げ空洞41の中に移動させ固定する。これにより穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eの後部で下方方形土塊31の横に通水孔40が構築される。
【0028】
図8を参照して、本実施形態に係る穿孔成形作業機1による穿孔成形方法の別の工程を説明する。
泥炭土などの膨軟で圧縮性のある土壌に対しては、穿孔成形作業機1の最前方にある穿孔成形用土壌切断前刃部21を接続せずに施工することもできる。穿孔成形用土壌切断後刃22Aの切断刃が複数の波刃となっていることで土壌の内部摩擦を軽減して土壌が崩れることなく、切断細溝22’を形成できる。
【0029】
これと同時に穿孔成形用土塊スライド22Bの上にある上部方形土塊30は穿孔成形作業機1の進行に伴って上方に持ち上げられながら移動し、穿孔成形用土塊スライド22Bの裏側で上部方形土塊30の下に土塊持ち上げ空洞41が成形される。
その直後、土塊持ち上げ空洞41の横に、穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dと穿孔成形用通水孔成形側面刃22Cとで構成される逆L字状の刃が下部方形土塊31を切断して成形する。そして、穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eと穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22Fとが下部方形土塊31を土塊持ち上げ空洞41の中に移動させ固定する。これにより穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22Eの後部で下方方形土塊31の横に通水孔40が構築される。
【0030】
図9を参照して、穿孔成形部が一連式である穿孔成形作業機の構成の一例について説明する。
穿孔成形部が一連式の穿孔成形作業機は、通水孔40を一度の走行により1列構築することができる。この穿孔成形作業機の穿孔成形装置20’には、一組の穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22が2つの土壌切断刃保持部20Bにより三角形の穿孔成形装置フレーム20Aの中央に取り付けられている。この一連式の穿孔装置20’は一連式専用となる。
【0031】
図10を参照して、穿孔成形部が一連式から三連式までを選択できる穿孔成形作業機の構成の一例について説明する。
通水孔40を一度の走行により最大3列構築するには、3連式の穿孔成形装置20”を用いる。この穿孔成形装置20”は、四角形の穿孔成形装置フレーム20Aを備えている。この穿孔成形装置フレーム20Aは、トラクターTRの進行方向と平行な支柱を真ん中に有する。真ん中の支柱とその左右の支柱には穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22の組がそれぞれ土壌切断刃保持部20Bにより取り付けられている。
この3連式の穿孔成形装置20”では、穿孔成形装置フレーム20Aの真ん中の支柱にだけ穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22を接続すると一度の走行で1列の通水孔を構築できる。また、穿孔成形装置フレーム20Aの左右の支柱に穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22を二組接続すると一度の走行で2列の通水孔を構築できる。
このように三連式の穿孔装置部20は一連式或いは二連式としても使用できる。
【0032】
図11を参照して、本実施形態に係る穿孔成形作業機1による通水孔の設置方法について説明する。
穿孔成形作業機1により通水孔40を構築するには、圃場内の平らなところから穿孔成形装置20を土壌中に挿入してトラクターTRを走行させる。それに加えて、穿孔成形装置20を排水路50の中に始めに下ろしておきトラクターTRを走行させ穿孔成形作業機1を法面に挿入して排水路50の法面から通水孔40を構築することも可能である。
通水孔40の深さは、トラクターTRの三点リンクLIを上下させたり、穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22の接続位置を上下させたりすることにより任意の通水孔深H1やH2に調整することができる。通水孔40は深いほど耐久性が高いので、通水孔40の深さは望ましくは50cmから60cm程度である。現在のトラクターの馬力により実現可能な通水孔40の最大の深さは1m程度である。
通水孔40は資材を使用していないことから通水孔40同士を任意の角度であるいは望ましくは直行させてつなぐことができる。また、資材を使用した既存の暗渠排水60に対しても通水孔40を疎水材62につなぐことで接続できる。これにより、排水機能の低下した既存の暗渠排水60の排水機能を回復することができる。ただし、暗渠管61のある深さより浅い位置に通水孔40を構築しなければならない。
通水孔40の通水孔間隔W1とW2は、
図9と
図10の穿孔成形作業機1の使い分けや作業機の走行する位置により自由に調整することができる。
このように、土壌中に通水孔40を自由に配置できることから、通水孔40は、補助暗渠だけでなく暗渠管61を用いた暗渠排水60と同様な排水改良として使用することができる。
【0033】
以下に、本発明の実施例を示す。なお、説明の便宜のため、図面に用いた符号を用いる場合がある。
【0034】
[実施例1]
本発明の実施形態に係る穿孔成形作業機1による通水孔40の試験施工の結果を示す。下記の条件で行った試験では
図12(A)の重粘土圃場の断面の結果となり、上部方形土塊30と下部方形土塊31が適切に成形・移動しており、設定した深さ40cmに連続した通水孔40が成形された。断面の調査のために通水孔40内を観察すると、10m離れた位置に掘削した調査断面に向かって明かりが確認でき、通水孔40が連続してつながっていることが確認された。このことからも、本発明の優れた穿孔の成形能力が確認できた。施工後の降雨時には通水孔40内に余剰水が流れることが確認され、適切な排水機能を有することが確認された。
試験場所:茨城県つくば市観音台農村工学研究所内の水田圃場
土壌条件:重粘土
使用トラクター:68PSホイールトラクター
使用した穿孔成形作業機:1連式
【0035】
[実施例2]
本発明の実施形態に係る穿孔成形作業機1による通水孔40の試験施工の結果を示す。下記の条件で行った試験では
図12(B)の多湿黒ボク土圃場の断面の結果となり、上部方形土塊30と下部方形土塊31が適切に成形・移動しており、設定した深さ60cmに2列の連続した通水孔40が成形された。断面の調査のために通水孔40内を観察すると、10m離れた位置に掘削した調査断面に向かって明かりが確認でき、通水孔40が連続してつながっていることが確認された。このことからも、本発明の通水孔40の深さや間隔を自由に設定できる機能性と優れた穿孔の成形能力が確認できた。
試験場所:北海道北見市豊地の畑圃場
土壌条件:多湿黒ボク土
使用トラクター:68PSホイールトラクター
使用した穿孔成形作業機:3連式
【0036】
[実施例3]
「施工効率」
図12(B)の多湿黒ボク土における試験実施時の穿孔成形作業機1の施工速度は4〜5km/hで従来技術の心土破砕や弾丸暗渠と同等の施工速度であった。
【0037】
[比較例1]
本発明の実施形態に係る穿孔成形作業機1との比較として従来からある弾丸暗渠の作業機により通水孔の試験施工を重粘土の水田圃場で行った。その結果、穿孔は8cm径の円形空洞が深さ30cmの位置に構築できた。しかし、それ以上の深さには作業機が挿入できず施工できなかった。従来技術では通水孔の設置深さの自由度がなかった。
試験場所:茨城県つくば市観音台農村工学研究所内の水田圃場
土壌条件:重粘土
使用トラクター:68PSホイールトラクター
使用した穿孔成形作業機:2連式の弾丸暗渠
【0038】
[比較例2]
本発明の実施形態に係る穿孔成形作業機1との比較として従来からある弾丸暗渠の作業機により通水孔の試験施工を行った。その結果、30cmの深さにも作業機を挿入できず、穿孔を構築することができなかった。そのため心土破砕としての効果しか期待できなかった。従来技術では土壌条件に対する柔軟な対応が困難であった。
試験場所:茨城県つくば市観音台農村工学研究所内の水田圃場
土壌条件:黒ボク土
使用トラクター:68PSホイールトラクター
使用した穿孔成形作業機:2連式の弾丸暗渠
【0039】
以上のことから、本発明の実施形態に係る穿孔成形作業機1は、土壌中の自由な深さに適切な通水孔40を構築できることから、従来の心土破砕や弾丸暗渠より自由度の高い穿孔の構築能力が期待されることが明らかになった。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、トラクターやブルドーザなどの牽引作業機の後部に、穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22が付いた穿孔成形作業機1を取り付けて地中に挿入し、牽引作業機を走行させる。
これにより、まず、1)前部の下部波刃弓曲ナイフ(穿孔成形用土壌切断前刃部21)により地中に幅数cmの切断細溝が地表から地中1m程度以内の任意の深さまで作られ、2)前部の下部波刃弓曲ナイフから10〜50cm程度ほど離れた後方の任意の位置にある後部の下部波刃湾曲ナイフ(穿孔成形用土壌切断後刃部22)により、最初の溝から5cm〜15cm程度ほど横方向に離れた任意の位置において、1)と同様に、地中に幅1cm程度の切断細溝が地表から地中1m程度以内の任意の深さまで作られる。この2つの切断細溝は、任意の一定の幅で、任意の一定の深さまで達する2つの平行溝となる。
【0041】
これと同時に、穿孔成形用土塊スライド22Bの先端に形成されたくさび刃を、上述した2つの切断細溝の下端の間にくさび状に差込み、切断細溝の下端の土壌を切断してコの字状に切断細溝をつないで長方形の土壌ブロック(上部方形土塊30)を作る。それに続き、くさび刃に続く穿孔成形用土塊スライド22Bが、5〜25cmの所定の高さまで上部方形土塊30を持ち上げる。これにより、上部方形土塊の直下に方形の土塊持ち上げ空洞41が作成される。
【0042】
穿孔成形用土塊スライド22Bの後部には、穿孔成形用土塊スライド22Bより長い横幅を有する上面の刃付き板(穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22D)と側面の刃付き板(穿孔成形用通水孔成形側面刃22C)とが逆L字状に接続されている。この逆L字状の刃付き板により、土塊持ち上げ空洞41と同じ深さでその横に連続して四角形の土塊(下部方形土塊31)が切断されて成形される。
穿孔成形用通水孔成形上面刃付き板22Dの側部には、側面の刃付き板(穿孔成形用通水孔成形側面刃22C)に続いて順番に土塊寄せ側面板(穿孔成形用通水孔成形土塊寄せ側面板22E)と押し付け版(穿孔成形用通水孔成形用側壁押しつけ板22F)が接続されている。これら土塊寄せ側面板と押し付け版により、四角形の下部方形土塊31を土塊持ち上げ空洞41内に移動させる。
これにより四角形の土塊(下部方形土塊31)を成形した部分に四角形の連続した穿孔(通水孔40)が構築される。
【0043】
このように、本発明によれば、対象土壌を攪乱や掘削することなく、土壌中の30〜100cmの任意の深さに5〜20cm角の四角形の通水孔40を構築することができる。このように未攪乱な壁面をもつ方形の通水孔40とすることで耐久性が向上し、充分な排水効果を発現させることができる。このように、穿孔成形作業機1の走行だけによる無資材で簡単な工事により通水孔40を構築する排水改良技術により、排水不良な農地を簡単かつ低コストに改良し、優良な農地にすることができる。
【0044】
場合によって、土壌中の30〜100cmの任意の深さで5〜20cm角の四角形の通水孔40をさらに特定形状の成形装置により押し付け変形させることで特定の形の穿孔を成形してもよい。
更に、通水孔の施工時に併せてパイプ等の資材を通水孔内に引き込む、あるいは、通水孔内面にセメントや樹脂、適当な固化剤を噴霧して、耐久性の高い通水孔を成形してもよい。
【0045】
これまでの地中に円形の穿孔や破砕亀裂を構築する弾丸暗渠や心土破砕、あるいは、フラスコ型空洞や方形空洞を構築する無材暗渠と異なり、本発明に係る穿孔成形作業機を用いれば、(a)より狭い間隔での穿孔を構築でき、(b)穿孔の間隔や深さも任意に設定でき、(c)圃場全面が攪乱されることなく溝部のみの切断ですみ、(d)且つ穿孔をつくるため持上げた土塊ブロックの状態が崩れても穿孔内に直接的な影響がなく、(e)より牽引動力の小さい農家が所有するトラクターで施工できる。このため、本発明による地下排水組織構築技術は、従来の弾丸暗渠、心土破砕、無材暗渠の各技術より、穿孔の耐久性を高めながら、施工できる構造が多様化でき、利用範囲が広範である。
【0046】
穿孔成形装置20に通水孔を構築するための穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22とを2組以上取り付けることもできる。この場合、一度の牽引作業機の走行で土壌中に通水孔を2ヶ所同時に形成することができる。また、牽引作業機の走行位置を調整することで通水孔の間隔を調整することができる。さらに、穿孔成形装置フレーム20Aの土壌切断刃保持部20Bにおける穿孔成形用土壌切断前刃部21と穿孔成形用土壌切断後刃部22の設置位置を調整すること、および、牽引作業機の三点リンクを上下させて穿孔成形作業機1を上下させることにより、任意の通水孔深に調整することができる。
このように、本発明に係る穿孔成形作業機は、1つ以上の穿孔を任意の間隔と深さで施工することができ、施工の自由度が高い。
【0047】
この結果、本発明に係る穿孔成形作業機による施工は、従来の施工法に比べて、施工の効果や穿孔の耐久性は同等以上となる。このため、本発明によれば、農地の地下排水組織の整備コストをより低下させることが可能となり、より多くの農地を高生産性化して、優良な農地の創出に貢献することができる。