特開2015-105344(P2015-105344A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-105344(P2015-105344A)
(43)【公開日】2015年6月8日
(54)【発明の名称】燃料製造装置及び燃料製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 49/18 20060101AFI20150512BHJP
   C10B 53/02 20060101ALI20150512BHJP
   C10L 5/44 20060101ALI20150512BHJP
【FI】
   C10B49/18
   C10B53/02
   C10L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-248581(P2013-248581)
(22)【出願日】2013年11月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、農林水産省「平成24年度林地残材を原料とするバイオ燃料の製造技術の開発委託事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】592141053
【氏名又は名称】明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】細貝 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善三
(72)【発明者】
【氏名】北野 滋
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩之
(72)【発明者】
【氏名】畑中 祐樹
【テーマコード(参考)】
4H012
4H015
【Fターム(参考)】
4H012JA03
4H015AA03
4H015AA13
4H015AB01
4H015BB03
4H015CA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バイオマス原材料から、貯溜、移送が簡易な液体燃料を高効率で回収し、かつ容易に液化させることができ、さらに小型で可搬型とすることもできる燃料製造装置を提供する。
【解決手段】熱媒体粒子2を加熱する熱媒体加熱部3と、加熱された熱媒体粒子2を導入する導入口4a、バイオマス原材料の投入口4bを備え、加熱された熱媒体粒子2と投入されたバイオマス原材料とを接触させ、攪拌しながら搬送することでバイオマス原材料を熱分解させ有機ガスを発生させる熱分解用搬送部4と、熱分解用搬送部4内で発生した有機ガス及び固形燃料を分離する燃料分離部5と、熱分解用搬送部4を通過した加熱された熱媒体粒子2を熱媒体加熱部3に返送する熱媒体回収部6と、燃料分離部5の下流に有機ガスを液化する液体燃料生成部7とを備えてなり、熱媒体粒子2を系内で循環使用するとともに、バイオマス原材料から液体燃料を高効率で回収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体粒子を加熱する熱媒体加熱部と、
前記熱媒体加熱部により加熱された熱媒体粒子を導入する導入口、前記導入口の下流側にバイオマス原材料の投入口を備え、加熱された熱媒体粒子と投入されたバイオマス原材料とを接触させ、攪拌しながら搬送することにより投入されたバイオマス原材料を熱分解させ有機ガスを発生させる熱分解用搬送部と、
前記熱分解用搬送部内で発生した有機ガス及び固形燃料を分離する燃料分離部と、
前記熱分解用搬送部を通過した前記加熱された熱媒体粒子を前記熱媒体加熱部に返送する熱媒体回収部と、
前記燃料分離部の下流に有機ガスを液化する液体燃料生成部と、
を備えてなり、
前記熱媒体粒子回収部から回収された前記熱媒体粒子を前記熱媒体加熱部に戻し、再加熱し、前記導入口から前記熱分解用搬送部に再導入し、前記熱媒体粒子を循環させるとともに、バイオマス原材料から液体燃料を高効率で回収することを特徴とする燃料製造装置。
【請求項2】
前記熱媒体粒子径が、直径5mm以下の球体であることを特徴とする請求項1に記載の燃料製造装置。
【請求項3】
前記熱媒体粒子が、金属、酸化金属、セラミックの内から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の燃料製造装置。
【請求項4】
前記熱媒体回収部と前記熱媒体加熱部の間に、前記バイオマス原材料が加熱されて生成する木炭と前記熱媒体粒子を気流で分離し、前記木炭を系外に排出し、前記熱媒体粒子を前記熱媒体加熱部に返送する木炭気流分離部を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料製造装置。
【請求項5】
前記パイプが略水平に配置され、前記パイプ内において、前熱媒体粒子と原材料との混合物上方に発生した有機ガスの前記燃料分離部への流路となる空間を確保したことを特徴とする請求項1に記載の燃料製造装置。
【請求項6】
前記空間にキャリアーガスを送風し、有機ガス成分を前記燃料分離部に送る送風機を備え、
又は、
前記空間の有機ガスを前記燃料分離部に吸引する引き抜きポンプを備え、
前記空間へ気化した大分子量の液体燃料成分の気化成分を自然流出より短時間で前記燃料分離部へ移送することを特徴とする請求項1に記載の燃料製造装置。
【請求項7】
前記燃料分離部が、前記熱分解用搬送部の終端部に接続し、前記熱分解用搬送部で生成した有機ガスを通す流路と、
前記流路の他端に接続し、有機ガス成分と固体燃料成分とを分離し、前記気体ガス成分を冷却し液化させる液体燃料生成部に流し、前記固体燃料成分を排出するサイクロンとからなることを特徴とする請求項1に記載の燃料製造装置。
【請求項8】
前記液体燃料が、常温・常圧で、液体であることを特徴とする請求項1に記載の燃料製造装置。
【請求項9】
前記燃料製造装置が、可搬型であることを特徴とする請求項8に記載の燃料製造装置。
【請求項10】
熱媒体粒子を加熱する第一工程と、
バイオマス原材料と第一工程を経て加熱された熱媒体粒子を混合移送しながら前記バイオマス原材料を熱分解する第二工程と、
第二工程のバイオマス原材料の熱分解により発生した有機ガスを分離する第三工程と、
第二工程を経た熱媒体粒子を第一工程に返送する第四工程と、
第三工程で分離した有機ガスを濃縮する第五工程と、
からなることを特徴とする燃料製造方法。
【請求項11】
前記有機ガスを、キャリアーガスによって、又は吸引することで、前記第三工程が行われる位置に自然流出より短時間で移送させることを特徴とする請求項10に記載の
燃料製造方法。
【請求項12】
前記第二工程で発生した有機ガスの前記第二工程内の滞留時間を10秒以下とすることを特徴とする請求項11に記載の燃料製造方法。
【請求項13】
前記バイオマス原材料が、木材の場合には、前記熱分解温度を、400℃〜600℃に制御することを特徴とする請求項11に記載の燃料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物、特に液体及び固体のバイオマス燃料を製造するための燃料製造装置及び燃料製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料製造装置として、特許文献1の技術が知られている。特許文献1に記載の燃料製造装置は、密閉空間を形成する垂直炉(1)の内部に、予め高温に加熱された(500〜1100℃)金属トロイド(2)と熱分解される有機材料(3)が投入される。垂直炉1内の熱分解によりガス化された燃料は、垂直炉1下部の排気口6から抽出され、その後、分離器11により、熱分解された残渣から分離された金属トロイド(2)は、スクリュー18により分離され、バーナー18により再加熱され、エアロック5から投入される有機材料(3)とともに、再度垂直炉1に循環する、というものである。
【0003】
その他に、特許文献2(バイオマス燃料製造装置)、3(バイオマス燃料の製造方法と製造装置)の技術も公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012−528222号公報
【特許文献2】特開2010−77201号公報
【特許文献3】特開2010−275406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、図5に示すように、金属トロイド(2)が、垂直炉(1)内において有機材料(3)を熱分解するための熱媒体として利用されている。しかしながら、有機材料(3)は、熱分解当初は分子量が大きく、液化しやすい状態の有機ガスであるが、垂直炉1下部の排気口6に到るまでに、500〜1100℃の高温に長期間曝されるため、排気口6から排出されるガスが熱分解され、常温、常圧で液化しない、低温、高圧で液化する、液化しにくい低分子量の有機ガスとなってしまうため、液化が困難になってしまう。
【0006】
基本的には、特許文献1では、可能な限り有機材料をガス成分に分解することを基本としており、容易に液化回収することについて考慮されていない。通常、常温・常圧で気体のガス燃料は精製が困難であり、エネルギー密度の増加に圧縮が必要となり、圧力容器の使用、法的な制限があり、輸送に不向きであると言われる。一方で、常温・常圧で液体燃料はエネルギー密度が高く、輸送・貯蔵も可能であり、輸送インフラを構築しやすい。生成される液体燃料は希釈されず、中程度の発熱量(10MJ/Nm程度)の燃料となる。
【0007】
また、垂直炉1で熱分解を完結するため、垂直炉1の全体を500〜1100℃に維持する必要があり、大型の加熱炉が必要となり、大規模な設備が必要となり、設置コストが高く、ガス化された抽出ガスを液化など処理するため、大きな液化設備、設置スペースが必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、バイオマス原材料から、貯溜、移送が簡易な液体燃料を高効率で回収し、かつ容易に液化させることができ、さらに小型で可搬型とすることもできる燃料製造装置及び燃料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、
(1)
熱媒体粒子を加熱する熱媒体加熱部と、
前記熱媒体加熱部により加熱された熱媒体粒子を導入する導入口、前記導入口の下流側にバイオマス原材料の投入口を備え、加熱された熱媒体粒子と投入されたバイオマス原材料とを接触させ、攪拌しながら搬送することにより投入されたバイオマス原材料を熱分解させ有機ガスを発生させる熱分解用搬送部と、
前記熱分解用搬送部内で発生した有機ガス及び固形燃料を分離する燃料分離部と、
前記熱分解用搬送部を通過した前記加熱された熱媒体粒子を前記加熱部に返送する熱媒体回収部と、
前記燃料分離部の下流に有機ガスを液化する液体燃料生成部と、
を備えてなり、
前記熱媒体粒子回収部から回収された前記熱媒体粒子を前記熱媒体加熱部に戻し、再加熱し、前記導入口から前記熱分解用搬送部に再導入し、前記熱媒体粒子を循環させるとともに、バイオマス原材料から液体燃料を高効率で回収することを特徴とする燃料製造装置の構成とした。
(2)
前記熱媒体粒子径が、直径5mm以下の球体であることを特徴とする(1)に記載の燃料製造装置の構成とした。
(3)
前記熱媒体粒子が、金属、酸化金属、セラミックの内から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(1)に記載の燃料製造装置の構成とした。
(4)
前記熱媒体回収部と前記熱媒体加熱部の間に、前記バイオマス原材料が加熱されて生成する木炭と前記熱媒体粒子を気流で分離し、前記木炭を系外に排出し、前記熱媒体粒子を前記熱媒体加熱部に返送する木炭気流分離部を備えることを特徴とする(1)に記載の燃料製造装置の構成とした。
(5)
前記パイプが略水平に配置され、前記パイプ内において、前熱媒体粒子と原材料との混合物上方に発生した有機ガスの前記燃料分離部への流路となる空間を確保したことを特徴とする(1)に記載の燃料製造装置の構成とした。
(6)
前記空間にキャリアーガスを送風し、有機ガス成分を前記燃料分離部に送る送風機を備え、
又は、
前記空間の有機ガスを前記燃料分離部に吸引する引き抜きポンプを備え、
前記空間へ気化した大分子量の液体燃料成分の気化成分を自然流出より短時間で前記燃料分離部へ移送することを特徴とする(1)に記載の燃料製造装置の構成とした。
(7)
前記燃料分離部が、前記熱分解用搬送部の終端部に接続し、前記熱分解用搬送部で生成した有機ガスを通す流路と、
前記流路の他端に接続し、有機ガス成分と固体燃料成分とを分離し、前記気体ガス成分を冷却し液化させる液体燃料生成部に流し、前記固体燃料成分を排出するサイクロンとからなることを特徴とする(1)に記載の燃料製造装置の構成とした。
(8)
前記液体燃料が、常温・常圧で、液体であることを特徴とする(1)に記載の燃料製造装置の構成とした。
(9)
前記燃料製造装置が、可搬型であることを特徴とする(8)に記載の燃料製造装置の構成とした。
(10)
熱媒体粒子を加熱する第一工程と、
バイオマス原材料と第一工程を経て加熱された熱媒体粒子を混合移送しながら前記バイオマス原材料を熱分解する第二工程と、
第二工程のバイオマス原材料の熱分解により発生した有機ガスを分離する第三工程と、
第二工程を経た熱媒体粒子を第一工程に返送する第四工程と、
第三工程で分離した有機ガスを濃縮する第五工程と、
からなることを特徴とする燃料製造方法の構成とした。
(11)
前記有機ガスを、キャリアーガスによって、又は吸引することで、前記第三工程が行われる位置に自然流出より短時間で移送させることを特徴とする(10)に記載の
燃料製造方法の構成とした。
(12)
前記第二工程で発生した有機ガスの前記第二工程内の滞留時間を10秒以下とすることを特徴とする(11)に記載の燃料製造方法の構成とした。
(13)
前記バイオマス原材料が、木材の場合には、前記熱分解温度を、400℃〜600℃に制御することを特徴とする(11)に記載の燃料製造方法の構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記構成であるので、常温、常圧で液化する高分子の燃料を高効率で回収することができるので、常温、常圧で液体である液体燃料を簡易に製造することができる。また、極高圧、極低温でなくとも液化することができるそのため、常圧で輸送・貯蔵可能かつ高発熱量で、低コストのバイオマス燃料の生産が可能で、かつ抽出ガス成分の凝縮・液化も常温程度への冷却でよいので、小型化も可能であり、バイオマス燃料製造のための設置の制限が少なく、移動させることが容易な可搬型となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明である燃料製造装置の模式図である。
図2】バイオマスの熱分解反応の模式図である。
図3】熱媒体粒子経の違いによる伝熱面接の関係を説明するグラフである。
図4】液体成分の分解率と時間変化の関係を示すグラフ例である。
図5】従来の燃料製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、本発明である燃料製造装置1は、熱媒体加熱部3と、熱分解用搬送部4と、燃料分離部5と、熱媒体回収部6と、液体燃料生成部7と、必要に応じて、木炭気流分離部8と、液体貯溜タンク9、気体燃料10の貯溜部を備えてなり、バイオマス原材料から常温・常圧環境において液体である液体燃料を高効率で生成、回収して製造する装置である。なお、燃料製造装置1の全体を断熱材で覆い、伝熱効率を上げることもできる。
【0014】
バイオマス原材料としては、有機物、例えば、木材、作物、食品残渣などが例示できる。木材としては、間伐材、建築廃材、製材屑などが例示できる。これら、廃棄物から、常温・常圧で液体である燃料が高収率で回収できるので、低コストでバイオマス燃料を製造することができる。また、小型であるので、設置場所、移動の制限も少ない、可搬型となる。なお、投入されるバイオマス燃料は水分が少ない状態に乾燥されていることが望ましい。
【0015】
液体燃料は、重油、軽油成分に相当するもので、図2に示すように、バイオマスの熱分解物で揮発性成分であり、特に、常温・常圧環境下で液体となる液成分を冷却してなるバイオ燃料である。また、使用するバイオマス原材料によっては、加熱により木炭も生成される。
【0016】
図2に示すように、本発明で得られる液体燃料は、バイオマス成分の熱分解物で、分子量の異なる多種多様な有機物として回収される。バイオマスの分解反応は、初期の熱分解反応によって室温でガスになるガス成分と室温で液体になるが反応温度においては気体である液成分の混合物である揮発性成分と、固体成分である木炭を生成する。
【0017】
本発明において、回収されるそれぞれの成分の収率は、ガス成分が10mass%、液体成分70mass%、木炭が20mass%程度となる。なお、これからが高温部に長時間滞在すると、室温で液体となる液成分が分解・析出し、液成分の収率の減少、ガス成分および木炭の収率が増加する。
【0018】
特許文献1では、高温部における揮発性分の滞留時間の確保、および、触媒性を付与した金属製トロイドの接触によって、液成分の分解を促進し、ガス成分の生成を促進するものであり、本発明と根本的な技術思想を異にする。
【0019】
通常、図2に示すガス成分に相当する有機ガスは、凝縮(液化)温度が常圧において−70℃度以下であり、液体成分は−70℃〜400℃程度の凝縮(液化)温度の性質を指す。ガス成分を液化するためには、大掛かりな設備が必要で、小型な可搬型とすることは困難である。他方、気体状で移送するためには、パイプライン設置などのインフラ整備、輸送コストが高く、低コストのバイオマス燃料の製造はできない。
【0020】
熱媒体粒子2は、熱媒体加熱部3で加熱され、熱分解用搬送部4でバイオマス現在料と混合、接触し、バイオマス原材料に熱を伝え、バイオマス原材料から熱分解で、図2に示す揮発性成分を発生させる。
【0021】
熱媒体粒子2の素材としては、発生する揮発性成分を低分子化する触媒作用が小さく、熱に安定で、搬送の障害にならず、破損することがない、バイオマス燃料との接触面積を大きくとれる素材であれば特に限定されない。例えば、金属、酸化金属、セラミックなどが例示でき、金属としては鉄、ステンレス、セラミックスとしてはアルミナなどが例示できる。コスト、加工性、熱安定性、破損しづらさの観点から、金属の鉄、ステンレスが好ましい。
【0022】
移送手段が、後述のスクリューである場合には、鉄は破損してスクリューの回転を止めることがない。また、熱媒体粒子2が、球形であれば移送を阻害しづらい。
【0023】
また、バイオマス原材料への熱伝導効率を高めるために、熱媒体粒子2の伝熱面接を大きく確保でき、またスクリュー4dとパイプ4cとのクリアランスに挟みこまれスクリュー4dの回転を阻害しないように、球体の直径は、5mm程度とするとよい。さらに、伝熱面積の観点から2mm以下とするとなおよい(図3)。
【0024】
図3に示すように、伝熱面積比(Ap/Ar)は、熱媒体粒子経が小さくなるほど、反比例して大きくなる。図3のグラフの横軸は熱媒体粒子経(mm)で、縦軸は伝熱面積比(Ap/Ar)である。図3のグラフは、熱媒体粒子経及びバイオマス原材料を直接接触させ、熱分解させる搬送するパイプ径を0.5m、熱媒体粒子の前記パイプへの充填率を体積比で0.1%として、計算で求めたものである。熱媒体粒子がパイプに充填されていない場合(パイプ壁のみの場合)を基準(Ar)として、何倍になるかを表している。
【0025】
パイプDrの反応装置に粒子径Dpの熱媒体粒子を体積充填率eで充填する場合、筒内部の表面積Arおよび熱媒体粒子の表面積Apの比はAp/Ar=3/2×(Dr/Dp)×eと表せる。したがって、Dp<3/2×Dr×eの場合、熱媒体粒子を用いる事で、伝熱面積は外熱式よりも大きくなり、熱媒体粒子径の減少に伴い、反比例して大きくなる。したがって、有効な伝熱面積を大幅に増大可能となる。従って、熱分解部を小さくできる。
【0026】
熱媒体加熱部3は、容器3aと、加熱装置3bとからなる。容器3a内で熱媒体粒子2のみが加熱される。加熱装置3bは、熱媒体粒子2を加熱する装置であり、例えば、熱風の導入、電気ヒータ、火力による直接加熱、スクリーンヒーターなどが例示でき、熱媒体粒子2を加熱することができれば、直接、間接加熱の手段も含め、限定されない。
【0027】
熱分解用搬送部4のバイオマス熱分解区間でのバイオマスの加熱温度は、加熱装置3bによる熱媒体粒子2の加熱温度を制御すればよい。さらに、原材料の投入量、バイオマス原材料と熱媒体粒子の混合物4hの量、スクリュー4dによる移送速度を制御することでも、混合物4hの温度は制御される。
【0028】
また、熱分解用搬送部4においては、加熱された熱媒体粒子2の熱は、バイオマス原材料から有機ガスが発生する熱分解反応へ吸熱され、また系外へ放熱される。したがって、熱分解用搬送部4の温度は、熱媒体加熱部3で加熱された以上の温度には上昇しない。
【0029】
熱分解用搬送部4は、熱媒体加熱部3の底部に接続し、熱媒体加熱部3により加熱された熱媒体粒子2を導入する導入口4a、導入口4aの下流側に設けられたバイオマス原材料の投入口4bを備えるパイプ4cと、加熱された熱媒体粒子2と投入されたバイオマス原材料とを接触させ、攪拌しながら搬送するスクリュー4dと、スクリュー4dを回転させるモータ4eと、熱媒体粒子2とバイオマス原材料の混合物4hを熱媒体回収部6に送る連絡路4fと、からなり、熱分解区間で投入されたバイオマス原材料を熱分解させ、有機ガスを発生させる。
【0030】
パイプ4c内の熱分解区間における混合物4hの上方には、熱分解で発生した有機ガス(図2の揮発性成分)をすばやく燃料分離部5に流すために流路となる空間4gを確保するとよい。
【0031】
空間4gは、バイオマスから発生した有機ガスと熱媒体粒子2との直接接触を低減させる効果と、燃料分離部5に素早く流す作用があり、図2における揮発性成分の内の液成分がガス成分への分解を抑制させることの要因の一つでもある。空間4gは、大きい程、有機ガスの分解を抑制できる。
【0032】
なお、本発明で、液成分からガス成分への分解が抑制され、液成分(常温・常圧で液体の液体燃料の気化物)を高収率で回収するためには、発生した有機ガスを素早く燃料分離部5に送ることが最も重要である。そのためには、有機ガスの低分子化を抑制するためには、パイプ4c内での滞留時間を短くすることである。
【0033】
図4は、有機ガスであるフランの500℃における保持時間と分解率の関係を示すグラフである。縦軸分解率(減少率)、横軸が保持時間である。
【0034】
図4に示すように、パイプ4c内での有機ガスの滞留時間が短いほど、液体成分の分解率は低く抑えられる。例えば、滞留時間が10秒程度であれば、分解率は、20〜30%で、80%〜70%の発生した有機ガスの液成分は残存する。
【0035】
即ち、空間4g体積が小さくとも、燃料分離部側の下流への吸引、或いはキャリアーガスによる追い出しによって、発生した有機ガスが自然流出(流速非調整)より短時間でパイプ4c内から流出すれば、分子量の低い有機ガスへの熱分解を極力抑制することができる。キャリアーガスの導入には、パイプ4c内の上流側からキャリアーガスを送風機などで導入すること、パイプ4c内の下流側に有機ガスを吸引する引き抜きポンプを備えればよい。なお、発生した有機成分を吸引すると、パイプ4c内部で圧力低下が起こり、パイプ4cなどの装置内部の気密性確保の構造を別途考慮する必要がある。但し、内部圧力が低いと有機ガスの生成を促進する効果もある。
【0036】
熱分解区間での加熱温度は、バイオマス原材料を熱分解して有機ガス、特に液成分の揮発性ガスを高効率で生成させる温度とする。バイオマス原材料の種類により、至適加熱温度は異なるが、概ね、200〜700℃が好ましく、バイオマス原材料が木材の場合には400℃〜600℃に制御するとよい。
【0037】
燃料分離部5は、熱分解用搬送部4の終端部に接続し熱分解用搬送部4で生成した有機ガスを通す流路5bと、流路5bの他端に接続し有機ガス成分(気化ガス)と固体燃料成分(木炭)とを分離し、有機ガス成分を冷却し液化させる液体燃料生成部7に流し、固体燃料成分を排出する本体5aとからなる。本体5aとして、例えば、既知のサイクロンが採用できる。
【0038】
なお、ここで回収される木炭は、浮遊して流路5bに流れた木炭成分であって、流路5bフィルタを設けることでサイクロンを通すことなく、液体燃料生成部7で液化して液体燃料にすることもできる。)
【0039】
熱媒体回収部6は、端部が連絡路4fに接続し、他端部が熱媒体加熱部3に連絡する第二パイプ6aと、熱馬体粒子を移送する例えば第二スクリュー6bと、第二スクリュー6bを回転させる第二モータ6cとからなり、熱分解用搬送部4を通過した加熱された熱媒体粒子2を熱媒体加熱部3に返送する。移送する手段としては、コンベアであってもよい。
【0040】
液体燃料生成部7は、燃料分離部5の下流に位置し、有機ガスを液化する。例えば、冷却、加圧する装置である。有機ガスを室温程度に冷却することで、液体燃料が回収される。回収された液体燃料は、常温・常圧で、液体貯溜タンク9に送られ、貯溜され、使用場所に移送される。液体燃料は、常温・常圧で液体であるため、移送が容易である。
【0041】
他方、液体燃料生成部7で、液化されなかった気体燃料10は、使用場所にパイプライン移送されるか、タンクなどに圧縮貯溜してもよい。可搬型の場合には、圧縮装置、パイプライン移送が小型化を阻害するため、常温・常圧で気体の気体燃料は貯溜することなく、大気中に排気、あるいは燃焼して利用してもよい。
【0042】
木炭気流分離部8は、熱媒体回収部6と熱媒体加熱部3の間に配置され、バイオマス原材料が加熱されて生成する木炭と熱媒体粒子2を気流で分離し、木炭を系外に排出するとともに、熱媒体粒子2を熱媒体加熱部3に返送する。
【0043】
このようにしてなる燃料製造装置1では、熱媒体粒子2は、熱媒体加熱部で再加熱され、導入口4aから熱分解用搬送部4に再導入され、熱媒体粒子2は循環使用される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、バイオマス原材料、例えば、木材、建築廃材、作物、食品残渣から、常温・常圧で液体燃料を生産することができる。よって、間伐材、製材屑を利用することができ、林業分野への応用が期待される。建築廃材を利用することもできるので建築分野での応用も利用できる。また、廃棄物の減容化が可能となり、環境分野での期待も大きい。加えて、生成された燃料を、各種工業分野において低コストで利用することもできる。燃料の他に、多種の化学物質も抽出することができるので、化学分野でも利用できる。
【0045】
また、本発明は、小型化、大型化も自在で、小型であれば、小規模農家、間伐現場、建設現場に設置、利用できる可搬式であるので、燃料製造の場所をとらわれず、利用場所の制限が小さく、製造コスト、移送コストの低い燃料の製造が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 燃料製造装置
2 熱媒体粒子
3 熱媒体加熱部
3a 容器
3b 加熱装置
4 熱分解用搬送部
4a 導入口
4b 投入口
4c パイプ
4d スクリュー
4e モータ
4f 連絡路
4g 空間
4h 混合物
5 燃料分離部
5a 本体
5b 流路
6 熱媒体回収部
6a 第二パイプ
6b 第二スクリュー
6c 第二モータ
7 液体燃料生成部
8 木炭気流分離部
9 液体貯溜タンク
10 気体燃料
図1
図2
図3
図4
図5