【実施例1】
【0013】
図1に示すように、本発明である燃料製造装置1は、熱媒体加熱部3と、熱分解用搬送部4と、燃料分離部5と、熱媒体回収部6と、液体燃料生成部7と、必要に応じて、木炭気流分離部8と、液体貯溜タンク9、気体燃料10の貯溜部を備えてなり、バイオマス原材料から常温・常圧環境において液体である液体燃料を高効率で生成、回収して製造する装置である。なお、燃料製造装置1の全体を断熱材で覆い、伝熱効率を上げることもできる。
【0014】
バイオマス原材料としては、有機物、例えば、木材、作物、食品残渣などが例示できる。木材としては、間伐材、建築廃材、製材屑などが例示できる。これら、廃棄物から、常温・常圧で液体である燃料が高収率で回収できるので、低コストでバイオマス燃料を製造することができる。また、小型であるので、設置場所、移動の制限も少ない、可搬型となる。なお、投入されるバイオマス燃料は水分が少ない状態に乾燥されていることが望ましい。
【0015】
液体燃料は、重油、軽油成分に相当するもので、
図2に示すように、バイオマスの熱分解物で揮発性成分であり、特に、常温・常圧環境下で液体となる液成分を冷却してなるバイオ燃料である。また、使用するバイオマス原材料によっては、加熱により木炭も生成される。
【0016】
図2に示すように、本発明で得られる液体燃料は、バイオマス成分の熱分解物で、分子量の異なる多種多様な有機物として回収される。バイオマスの分解反応は、初期の熱分解反応によって室温でガスになるガス成分と室温で液体になるが反応温度においては気体である液成分の混合物である揮発性成分と、固体成分である木炭を生成する。
【0017】
本発明において、回収されるそれぞれの成分の収率は、ガス成分が10mass%、液体成分70mass%、木炭が20mass%程度となる。なお、これからが高温部に長時間滞在すると、室温で液体となる液成分が分解・析出し、液成分の収率の減少、ガス成分および木炭の収率が増加する。
【0018】
特許文献1では、高温部における揮発性分の滞留時間の確保、および、触媒性を付与した金属製トロイドの接触によって、液成分の分解を促進し、ガス成分の生成を促進するものであり、本発明と根本的な技術思想を異にする。
【0019】
通常、
図2に示すガス成分に相当する有機ガスは、凝縮(液化)温度が常圧において−70℃度以下であり、液体成分は−70℃〜400℃程度の凝縮(液化)温度の性質を指す。ガス成分を液化するためには、大掛かりな設備が必要で、小型な可搬型とすることは困難である。他方、気体状で移送するためには、パイプライン設置などのインフラ整備、輸送コストが高く、低コストのバイオマス燃料の製造はできない。
【0020】
熱媒体粒子2は、熱媒体加熱部3で加熱され、熱分解用搬送部4でバイオマス現在料と混合、接触し、バイオマス原材料に熱を伝え、バイオマス原材料から熱分解で、
図2に示す揮発性成分を発生させる。
【0021】
熱媒体粒子2の素材としては、発生する揮発性成分を低分子化する触媒作用が小さく、熱に安定で、搬送の障害にならず、破損することがない、バイオマス燃料との接触面積を大きくとれる素材であれば特に限定されない。例えば、金属、酸化金属、セラミックなどが例示でき、金属としては鉄、ステンレス、セラミックスとしてはアルミナなどが例示できる。コスト、加工性、熱安定性、破損しづらさの観点から、金属の鉄、ステンレスが好ましい。
【0022】
移送手段が、後述のスクリューである場合には、鉄は破損してスクリューの回転を止めることがない。また、熱媒体粒子2が、球形であれば移送を阻害しづらい。
【0023】
また、バイオマス原材料への熱伝導効率を高めるために、熱媒体粒子2の伝熱面接を大きく確保でき、またスクリュー4dとパイプ4cとのクリアランスに挟みこまれスクリュー4dの回転を阻害しないように、球体の直径は、5mm程度とするとよい。さらに、伝熱面積の観点から2mm以下とするとなおよい(
図3)。
【0024】
図3に示すように、伝熱面積比(Ap/Ar)は、熱媒体粒子経が小さくなるほど、反比例して大きくなる。
図3のグラフの横軸は熱媒体粒子経(mm)で、縦軸は伝熱面積比(Ap/Ar)である。
図3のグラフは、熱媒体粒子経及びバイオマス原材料を直接接触させ、熱分解させる搬送するパイプ径を0.5m、熱媒体粒子の前記パイプへの充填率を体積比で0.1%として、計算で求めたものである。熱媒体粒子がパイプに充填されていない場合(パイプ壁のみの場合)を基準(Ar)として、何倍になるかを表している。
【0025】
パイプDrの反応装置に粒子径Dpの熱媒体粒子を体積充填率eで充填する場合、筒内部の表面積Arおよび熱媒体粒子の表面積Apの比はAp/Ar=3/2×(Dr/Dp)×eと表せる。したがって、Dp<3/2×Dr×eの場合、熱媒体粒子を用いる事で、伝熱面積は外熱式よりも大きくなり、熱媒体粒子径の減少に伴い、反比例して大きくなる。したがって、有効な伝熱面積を大幅に増大可能となる。従って、熱分解部を小さくできる。
【0026】
熱媒体加熱部3は、容器3aと、加熱装置3bとからなる。容器3a内で熱媒体粒子2のみが加熱される。加熱装置3bは、熱媒体粒子2を加熱する装置であり、例えば、熱風の導入、電気ヒータ、火力による直接加熱、スクリーンヒーターなどが例示でき、熱媒体粒子2を加熱することができれば、直接、間接加熱の手段も含め、限定されない。
【0027】
熱分解用搬送部4のバイオマス熱分解区間でのバイオマスの加熱温度は、加熱装置3bによる熱媒体粒子2の加熱温度を制御すればよい。さらに、原材料の投入量、バイオマス原材料と熱媒体粒子の混合物4hの量、スクリュー4dによる移送速度を制御することでも、混合物4hの温度は制御される。
【0028】
また、熱分解用搬送部4においては、加熱された熱媒体粒子2の熱は、バイオマス原材料から有機ガスが発生する熱分解反応へ吸熱され、また系外へ放熱される。したがって、熱分解用搬送部4の温度は、熱媒体加熱部3で加熱された以上の温度には上昇しない。
【0029】
熱分解用搬送部4は、熱媒体加熱部3の底部に接続し、熱媒体加熱部3により加熱された熱媒体粒子2を導入する導入口4a、導入口4aの下流側に設けられたバイオマス原材料の投入口4bを備えるパイプ4cと、加熱された熱媒体粒子2と投入されたバイオマス原材料とを接触させ、攪拌しながら搬送するスクリュー4dと、スクリュー4dを回転させるモータ4eと、熱媒体粒子2とバイオマス原材料の混合物4hを熱媒体回収部6に送る連絡路4fと、からなり、熱分解区間で投入されたバイオマス原材料を熱分解させ、有機ガスを発生させる。
【0030】
パイプ4c内の熱分解区間における混合物4hの上方には、熱分解で発生した有機ガス(
図2の揮発性成分)をすばやく燃料分離部5に流すために流路となる空間4gを確保するとよい。
【0031】
空間4gは、バイオマスから発生した有機ガスと熱媒体粒子2との直接接触を低減させる効果と、燃料分離部5に素早く流す作用があり、
図2における揮発性成分の内の液成分がガス成分への分解を抑制させることの要因の一つでもある。空間4gは、大きい程、有機ガスの分解を抑制できる。
【0032】
なお、本発明で、液成分からガス成分への分解が抑制され、液成分(常温・常圧で液体の液体燃料の気化物)を高収率で回収するためには、発生した有機ガスを素早く燃料分離部5に送ることが最も重要である。そのためには、有機ガスの低分子化を抑制するためには、パイプ4c内での滞留時間を短くすることである。
【0033】
図4は、有機ガスであるフランの500℃における保持時間と分解率の関係を示すグラフである。縦軸分解率(減少率)、横軸が保持時間である。
【0034】
図4に示すように、パイプ4c内での有機ガスの滞留時間が短いほど、液体成分の分解率は低く抑えられる。例えば、滞留時間が10秒程度であれば、分解率は、20〜30%で、80%〜70%の発生した有機ガスの液成分は残存する。
【0035】
即ち、空間4g体積が小さくとも、燃料分離部側の下流への吸引、或いはキャリアーガスによる追い出しによって、発生した有機ガスが自然流出(流速非調整)より短時間でパイプ4c内から流出すれば、分子量の低い有機ガスへの熱分解を極力抑制することができる。キャリアーガスの導入には、パイプ4c内の上流側からキャリアーガスを送風機などで導入すること、パイプ4c内の下流側に有機ガスを吸引する引き抜きポンプを備えればよい。なお、発生した有機成分を吸引すると、パイプ4c内部で圧力低下が起こり、パイプ4cなどの装置内部の気密性確保の構造を別途考慮する必要がある。但し、内部圧力が低いと有機ガスの生成を促進する効果もある。
【0036】
熱分解区間での加熱温度は、バイオマス原材料を熱分解して有機ガス、特に液成分の揮発性ガスを高効率で生成させる温度とする。バイオマス原材料の種類により、至適加熱温度は異なるが、概ね、200〜700℃が好ましく、バイオマス原材料が木材の場合には400℃〜600℃に制御するとよい。
【0037】
燃料分離部5は、熱分解用搬送部4の終端部に接続し熱分解用搬送部4で生成した有機ガスを通す流路5bと、流路5bの他端に接続し有機ガス成分(気化ガス)と固体燃料成分(木炭)とを分離し、有機ガス成分を冷却し液化させる液体燃料生成部7に流し、固体燃料成分を排出する本体5aとからなる。本体5aとして、例えば、既知のサイクロンが採用できる。
【0038】
なお、ここで回収される木炭は、浮遊して流路5bに流れた木炭成分であって、流路5bフィルタを設けることでサイクロンを通すことなく、液体燃料生成部7で液化して液体燃料にすることもできる。)
【0039】
熱媒体回収部6は、端部が連絡路4fに接続し、他端部が熱媒体加熱部3に連絡する第二パイプ6aと、熱馬体粒子を移送する例えば第二スクリュー6bと、第二スクリュー6bを回転させる第二モータ6cとからなり、熱分解用搬送部4を通過した加熱された熱媒体粒子2を熱媒体加熱部3に返送する。移送する手段としては、コンベアであってもよい。
【0040】
液体燃料生成部7は、燃料分離部5の下流に位置し、有機ガスを液化する。例えば、冷却、加圧する装置である。有機ガスを室温程度に冷却することで、液体燃料が回収される。回収された液体燃料は、常温・常圧で、液体貯溜タンク9に送られ、貯溜され、使用場所に移送される。液体燃料は、常温・常圧で液体であるため、移送が容易である。
【0041】
他方、液体燃料生成部7で、液化されなかった気体燃料10は、使用場所にパイプライン移送されるか、タンクなどに圧縮貯溜してもよい。可搬型の場合には、圧縮装置、パイプライン移送が小型化を阻害するため、常温・常圧で気体の気体燃料は貯溜することなく、大気中に排気、あるいは燃焼して利用してもよい。
【0042】
木炭気流分離部8は、熱媒体回収部6と熱媒体加熱部3の間に配置され、バイオマス原材料が加熱されて生成する木炭と熱媒体粒子2を気流で分離し、木炭を系外に排出するとともに、熱媒体粒子2を熱媒体加熱部3に返送する。
【0043】
このようにしてなる燃料製造装置1では、熱媒体粒子2は、熱媒体加熱部で再加熱され、導入口4aから熱分解用搬送部4に再導入され、熱媒体粒子2は循環使用される。