(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-105952(P2015-105952A)
(43)【公開日】2015年6月8日
(54)【発明の名称】マルチターン‐ロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20150512BHJP
【FI】
G01D5/244 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-235283(P2014-235283)
(22)【出願日】2014年11月20日
(31)【優先権主張番号】10 2013 224 375.8
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・フォン・ベルク
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA23
2F077AA24
2F077AA28
2F077AA30
2F077CC02
2F077CC10
2F077PP01
2F077PP06
2F077PP19
2F077QQ03
2F077QQ11
2F077QQ13
2F077QQ17
2F077RR11
2F077RR15
2F077RR22
2F077RR23
2F077TT62
2F077TT66
2F077TT71
2F077TT82
2F077TT87
2F077WW08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い安全性要求を満たすマルチターン−ロータリーエンコーダを提供する。
【解決手段】マルチターン−ロータリーエンコーダを、第1、第2位置信号PS1、PS2を生成するための第1、第2走査装置40、140、第1、第2位置信号PS1、PS2から第1、第2シングルターン‐コードワードSC1、SC2とを形成するための第1/第2シングルターン‐評価ユニット100、200および第1、第2マルチターン‐コードワードMC1/MC2を形成するための第1/第2マルチターン‐評価ユニット110、210、主電源装置300が故障した場合に少なくともマルチターン‐コードワードMC1,MC2を形成するために必要な構成要素にエネルギーを供給可能なバッテリ320と、バッテリ320の機能を監視し、バッテリ‐状態信号を出力する第1バッテリ‐監視ユニット400で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチターン‐ロータリエンコーダであって、
軸の角度位置を絶対的に符号化する少なくとも1つの目盛トラック(20,30)を備える測定基準器(10)と、
第1位置信号(PS1)を生成するために前記少なくとも1つの目盛トラック(20,30)を走査可能な第1走査装置(40)と、
第1位置信号(PS1)から第1シングルターン‐コードワード(SC1)を形成するための第1シングルターン‐評価ユニット(100)と、
前記第1位置信号(PS1)から第1マルチターン‐コードワード(MC1)を形成するための第1マルチターン‐評価ユニット(110)と、
第2位置信号(PS2)を生成するために前記少なくとも1つの目盛トラック(20,30)を走査可能な第2走査装置(140)と、
前記第2位置信号(PS2)から第2シングルターン‐コードワード(SC2)を形成するための第2シングルターン‐評価ユニット(200)と、
前記第2位置信号(PS2)から第2マルチターン‐コードワード(MC2)を形成するための第2マルチターン‐評価ユニット(210)と、
主電源装置(300)が故障した場合に少なくともマルチターン‐コードワード(MC1,MC2)を形成するために必要な構成要素にエネルギーを供給可能なバッテリ(320)と
を備えるマルチターン‐ロータリエンコーダにおいて、
前記バッテリ(320)の機能を監視し、少なくとも1つのバッテリ‐状態信号(BAT1,BAT2)により示すことができる第1バッテリ‐監視ユニット(400)が設けられていることを特徴とするマルチターン‐ロータリエンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダにおいて、
前記第1バッテリ‐監視ユニット(400)が充電状態‐監視ユニット(410)を含み、該充電状態‐監視ユニット(410)によって前記バッテリ(320)の充電状態を確認し、第1バッテリ‐状態信号(BAT1)によって示すことができるマルチターン‐ロータリエンコーダ。
【請求項3】
請求項2に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダにおいて、
前記バッテリ(320)の充電状態が、比較ユニット(420)におけるバッテリ電圧(VBAT)と参照電圧(VREF)との比較によって確認可能であるマルチターン‐ロータリエンコーダ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダにおいて、
前記充電状態‐監視ユニット(410)に、前記バッテリ(320)の誤った充電状態を故意に生成する第1テスト信号(TEST1)を供給することができるマルチターン‐ロータリエンコーダ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダにおいて、
前記第1バッテリ‐監視ユニット(400)が、さらに、前記バッテリ(320)のバッテリ電圧(VBAT)の連続性を監視し、第2バッテリ‐状態信号(BAT2)によって示すことができる連続性‐監視ユニット(450)を含むマルチターン‐ロータリエンコーダ。
【請求項6】
請求項5に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダにおいて、
前記連続性‐監視ユニット(450)に、前記バッテリ電圧(VBAT)の非連続性を故意に誘起する第2テスト信号(TEST2)を供給することができるマルチターン‐ロータリエンコーダ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダにおいて、
前記バッテリ電圧(VBAT)の非連続性が、メモリユニット(460)のメモリ内容の変更をもたらすマルチターン‐ロータリエンコーダ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダにおいて、
前記第1バッテリ‐監視ユニット(400)の他に、重複する第2バッテリ‐監視ユニット(500)が設けられているマルチターン‐ロータリエンコーダ。
【請求項9】
マルチターン‐ロータリエンコーダを作動する方法であって、
軸の角度位置を絶対的に符号化する少なくとも1つの目盛トラック(20,30)を備える測定基準器(10)と、
第1位置信号(PS1)を生成するために前記少なくとも1つの目盛トラック(20,30)を走査可能な第1走査装置(40)と、
前記第1位置信号(PS1)から第1シングルターン‐コードワード(SC1)を形成するための第1シングルターン‐評価ユニット(100)と、
前記第1位置信号(PS1)から第1マルチターン‐コードワード(MC1)を形成するための第1マルチターン‐評価ユニット(110)と、
第2位置信号(PS2)を生成するために前記少なくとも1つの目盛トラック(20,30)を走査可能な第2走査装置(140)と、
前記第2位置信号(PS2)から第2シングルターン‐コードワード(MC2)を形成するための第2シングルターン‐評価ユニット(200)と、
前記第2位置信号(PS2)から第2マルチターン‐コードワード(MC2)を形成するための第2マルチターン‐評価ユニット(210)と、
主電源装置(300)が故障した場合に少なくともマルチターン‐コードワード(MC1,MC2)を形成するために必要な構成要素にエネルギーを供給可能なバッテリ(320)と
を備えるマルチターン‐ロータリエンコーダを作動する方法において、
前記バッテリ(320)の機能を監視し、少なくとも1つのバッテリ状態信号(BAT1,BAT2)によって示す第1バッテリ‐監視ユニット(400)を設けることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記第1バッテリ‐監視ユニット(400)が、前記バッテリ(320)の充電状態を確認し、第1バッテリ‐状態信号(BAT1)により示す充電状態‐監視ユニット(410)を含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
比較ユニット(420)におけるバッテリ電圧(VBAT)と参照電圧(VREF)との比較により前記バッテリ(320)の充電状態を確認する方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法において、
前記充電状態‐監視ユニット(410)に、前記バッテリ(320)の誤った充電状態を故意に生成する第1テスト信号(TEST1)を供給する方法。
【請求項13】
請求項9から12までのいずれか一項に記載の方法において、
前記第1バッテリ‐監視ユニット(400)が、さらに、前記バッテリ(320)の前記バッテリ電圧(VBAT)の連続性を監視し、第2バッテリ‐状態信号(BAT2)によって示す連続性‐監視ユニット(450)を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記連続性‐監視ユニット(450)に、前記バッテリ電圧(VBAT)の非連続性を故意に誘起する第2テスト信号(TEST2)を供給する方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の方法において、
前記バッテリ電圧(VBAT)の非連続性によりメモリユニット(460)のメモリ内容の変更をもたらす方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の確実なマルチターン‐ロータリエンコーダ、および請求項9に記載の、このようなマルチターン‐ロータリエンコーダを作動する方法に関する。マルチターン‐ロータリエンコーダは、軸の角度位置および軸が進んだ回転数を測定するために自動化技術で使用されることが多い。
【背景技術】
【0002】
軸の角度位置を測定するための位置測定装置は、多数の刊行物により既知である。このような位置測定装置はロータリエンコーダと呼ばれる。さらに位置測定装置が軸の角度位置だけではなく軸によって進められた回転数を測定することもできる場合、マルチターン‐ロータリエンコーダと呼ばれる。
【0003】
マルチターン‐ユニット、すなわち、軸が進んだ回転数を確認するユニットを構成するためには、基本的に2つの解決手段が既知であり、1つはギアに基づいたマルチターン‐ユニットであり、もう1つはカウンタに基づいたマルチターン‐ユニットである。
【0004】
カウンタに基づいたマルチターン‐ユニットは、コード担体の回転数により、軸が進んだ回転数を検出する。コード担体は軸によって直接に駆動され、したがって測定される軸と同じ回転数を進む。コード担体には、走査ユニットにより走査されるコードが配置されている。走査ユニットによって検出される位置信号により、カウント用電子回路においてカウンタのためのカウント信号が生成される。カウンタは、コード担体、ひいては軸の完全な回転の数を回転方向に応じてカウントする。
【0005】
主電源装置がスイッチオフされた場合、すなわち、例えば、マルチターン‐ロータリエンコーダを作動する機械がスイッチオフされた場合にもカウンタのカウント状態を保存し、さらにカウント機能を保持するために、カウンタに基づいたマルチターン‐ユニットは、主電源装置が故障した場合に少なくともロータリエンコーダのマルチターン‐ユニットのエネルギー供給を引き受けるバッテリを備えていることが多い。
【0006】
例えば、欧州特許第1462771号明細書に記載されているマルチターン‐ロータリエンコーダは、スイッチオフ状態でバッテリによって作動されるカウンタに基づいたマルチターン‐ユニットを備える。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008015837号明細書は、バッテリモードを備える誘導式の走査原理に基づいた位置測定装置を記載している。この位置測定装置もマルチターン‐ロータリエンコーダとして構成するために適している。
【0008】
安全技術上の理由から、例えば、測定エラーによりマルチターン‐ロータリエンコーダを作動する装置が損傷されるか、または機械の操作員に危険が及ぶ可能性がある場合には、軸の回転数を重複して測定することが必要となる場合もある。
【0009】
そこでドイツ連邦共和国特許出願公開第102009029431号明細書は、互いに独立した2つのマルチターン‐ユニットを備えるマルチターン‐ロータリエンコーダを提案している。これらのマルチターン‐ユニットの測定値の比較により、常にマルチターン‐ロータリエンコーダの機能性を点検することが可能である。したがって、このようなマルチターン‐ロータリエンコーダは安全性が重要な用途において使用するために適している。
【0010】
しかしながら、このようなマルチターン‐ロータリエンコーダにおいてカウンタに基づいた2つのマルチターン‐ユニットが使用され、これらのマルチターン‐ユニットをスイッチオフ状態で作動するためにバッテリによってエネルギーが供給される場合に、エラー状態が生じ、両方のマルチターン‐ユニットに等しい影響を及ぼすため、直接に発見することのできないことが稀にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1462771号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008015837号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102009029431号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、作動の確実性が改善されたマルチターン‐ロータリを提案することである。さらに本発明の課題は、このようなマルチターン‐ロータリエンコーダを作動する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題の第1部分は、請求項1に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダによって解決される。
【0014】
マルチターン‐ロータリエンコーダであって、
軸の角度位置を絶対的に符号化する少なくとも1つの目盛トラックを備える測定基準器と、
第1位置信号を生成するために少なくとも1つの目盛トラックを走査可能な第1走査装置と、
第1位置信号から第1シングルターン‐コードワードを形成するための第1シングルターン‐評価ユニットと、
第1位置信号から第1マルチターン‐コードワードを形成するための第1マルチターン‐評価ユニットと、
第2位置信号を生成するために少なくとも1つの目盛トラックを走査可能な第2走査装置と、
第2位置信号から第2シングルターン‐コードワードを形成するための第2シングルターン‐評価ユニットと、
第2位置信号から第2マルチターン‐コードワードを形成するための第2マルチターン‐評価ユニットと、
主電源装置が故障した場合に少なくともマルチターン‐コードワードを形成するために必要な構成要素にエネルギーを供給可能なバッテリと
を備え、
バッテリの機能を監視し、少なくとも1つのバッテリ‐状態信号により示すことができる第1バッテリ‐監視ユニットを含むマルチターン‐ロータリエンコーダが提案される。
【0015】
課題の第2部分は、請求項9に記載のマルチターン‐ロータリエンコーダを作動する方法により解決される。
【0016】
マルチターン‐ロータリエンコーダを作動する方法であって、
軸の角度位置を絶対的に符号化する少なくとも1つの目盛トラックを備える測定基準器と、
第1位置信号を生成するために少なくとも1つの目盛トラックを走査可能な第1走査装置と、
第1位置信号から第1シングルターン‐コードワードを形成するための第1シングルターン‐評価ユニットと、
第1位置信号から第1マルチターン‐コードワードを形成するための第1マルチターン‐評価ユニットと、
第2位置信号を生成するために少なくとも1つの目盛トラックを走査可能な第2走査装置と、
第2位置信号から第2シングルターン‐コードワードを形成するための第2シングルターン‐評価ユニットと、
第2位置信号から第2マルチターン‐コードワードを形成するための第2マルチターン‐評価ユニットと、
主電源装置が故障した場合に少なくともマルチターン‐コードワードを形成するために必要な構成要素にエネルギーを供給可能なバッテリと
を備えるマルチターン‐ロータリエンコーダを作動する方法が提案され、バッテリの機能が第1バッテリ‐監視ユニットによって監視され、少なくとも1つのバッテリ状態信号によって示される。
【0017】
本発明によるマルチターン‐ロータリエンコーダ、および、このようなマルチターン‐ロータリエンコーダを作動する本発明による方法の他の利点を以下の実施形態の説明に示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるマルチターン‐ロータリエンコーダを示すブロック回路図である。
【
図2】充電状態‐監視ユニットを示す概略的な回路図である。
【
図3】連続性‐監視ユニットを示す概略的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明によるマルチターン‐ロータリエンコーダのブロック回路図を示す。このマルチターン‐ロータリエンコーダは、例えば、ここで明示的に言及するドイツ連邦共和国特許出願公開第102008015837号明細書に記載のように、誘導式の走査原理に基づいている。
【0020】
しかしながら、本発明は、物理的な走査原理に規定されていないことを明示的に指摘しておく。したがって、例えば、光電式、磁気式または容量式の走査原理を用いることもできる。
【0021】
マルチターン‐ロータリエンコーダは、少なくとも1つの目盛トラックを有する測定基準器10を備え、目盛トラックにより軸の角度位置が絶対的に符号化されている。図示の実施例では、測定基準器10は2つの目盛トラック20,30を含み、この場合、測定基準器10および目盛トラック20,30は抽象的に簡略化して示されている。実際の実施形態では、測定基準器10は、例えば、角度位置/回転数が測定される軸に回動不能に結合されたコードディスクとして構成されていてもよい。目盛トラック20,30は、導電性部分と非導電性部分とからなり、これらの導電性部分および非導電性部分は異なる半径でコードディスクの回転中心を中心として同心的に配置されている。
【0022】
測定される角度位置は、この実施例ではアナログ式に符号化されている。すなわち、目盛トラック20,30を走査した場合にはアナログ走査信号が生じ、これらの走査信号の振幅および/または位相から入力軸Wの角度位置を決定することができる。しかしながら、これに対して代替的に、角度位置はデジタル式に符号化されていてもよい。この場合、例えば、目盛トラックが複数トラックのデジタルコード、例えばグレイ‐コードを備えているか、または単一トラックのチェーンコード、いわゆる「疑似ランダムコード」(PRC)を備えている。デジタル式の符号化は、例えば、好ましくは光電式の走査原理において使用される。
【0023】
第1位置信号PS1を生成するために第1走査装置40が設けられている。第1走査装置は励磁ユニット50を含み、励磁ユニット50は励磁コイル60と接続されて電磁場を生成し、電磁場の強度は目盛トラック20,30によって影響される。電磁場を検出するためには、2対の第1受信器コイル70,80が設けられており、それぞれの対の受信器コイル70,80は、回転方向に応じた位置検出を可能にする互いに位相をずらされた位置信号を生成する。この場合、第1受信器コイル対70は第1目盛トラック20を走査するために用いられ、第2受信器コイル対80は第2目盛トラック30を走査するために用いられる。受信器コイル70,80では作動時に電圧が誘起され、誘起された電圧の振幅はコードディスクの角度位置に依存している。誘起された電圧は第1信号処理ユニット90に供給され、第1信号処理ユニット90で、例えばフィルタ処理され、増幅され、次いで第1位置信号PS1として、一方では第1シングルターン‐評価ユニット100に出力され、他方では第1マルチターン‐評価ユニット110に出力される。
【0024】
第1シングルターン‐評価ユニット100は、第1位置信号PS1を、測定される軸の角度位置を示す第1シングルターン‐コードワードSC1として処理する。
【0025】
これに対して、第1マルチターン‐評価ユニット110は、第1位置信号PS1を、測定される軸が進んだ回転数を示す第1マルチターン‐コードワードMC1として処理する。このために、第1マルチターン‐評価ユニット110は、例えば、第1位置信号PS1の適切な事象を回転方向に応じてカウントするカウンタを含んでいてもよい。
【0026】
測定のゼロ点は、手動で決定するか、または例えばリミットスイッチなどの到達により決定することができる。回転のカウントを開始するゼロ点を調節するためには、多くの場合、機械の本作動前に参照運転を行うことが不可欠である。
【0027】
第1シングルターン‐コードワードSC1および第1マルチターン‐コードワードMC1は、最終的に第1コード接続ユニット120に供給され、第1コード接続ユニット120は2つの値から、現在の角度位置および進んだ回転数を含む共通の第1位置値POS1を形成する。
【0028】
重複する第2位置値POS2を形成するために、励磁コイル60を備える励磁ユニット50を除いて、全ての上記ユニットについて同一のものが2つずつ設けられている。
【0029】
したがって、第2位置信号PS2を形成するために第2走査装置140が設けられている。この走査装置140には、共に電磁場を生成する励磁ユニット50および励磁コイル60が同様に割り当てられている。目盛トラック20,30によって調整された電磁場を検出するために、2対の第2受信コイル170,180が設けられており、それぞれの対の受信コイル170,180は、回転方向に応じた位置検出を可能にする互いに位相をずらされた位置信号を生成する。この場合、第1受信コイル対170は第1目盛トラック20を走査するために用いられ、第2受信コイル対180は第2目盛トラックを走査するために用いられる。第2信号処理ユニット190が、誘導された電圧を第2位置信号PS2として処理する。
【0030】
第2走査装置は、第1走査装置40と分け合う励磁ユニット50および励磁コイル60の他に、第2受信コイル170,180および第2信号処理ユニット190を含む。
【0031】
第2位置信号PS2は、第2シングルターン‐コードワードSC2を形成するための第2シングルターン‐評価ユニット200と、第2マルチターン‐コードワードMC2を形成するための第2マルチターン‐評価ユニット210とに供給される。第2コード接続ユニット220は、最終的に第2シングルターン‐コードワードSC2および第2マルチターン‐コードワードMC2から第2位置値POS2を形成する。
【0032】
後続電子回路280(図示しない)との通信のためにインタフェイスユニット250が設けられており、データ伝送路260を介して後続電子回路280からコマンドおよびデータを受信するか、もしくは(受信したコマンドに続いて)データを後続電子回路280に送信する。インタフェイスユニット250は、直列のインタフェイスとして構成されていてもよい。すなわち、データ伝送は、データ伝送路260を介して、必要に応じて周期信号により同期された直列のデータストリームの形態で行われる。
【0033】
この実施例ではインタフェイスユニット250に位置値POS1,POS2が供給され、例えば位置要求コマンドに続いて、これらの位置値を後続電子回路280に伝送することができる。代替的に、マルチターン‐コードワードMC1,MC2およびシングルターン‐コードワードSC1,SC2は、後続電子回路280に別個に伝送するためにインタフェイスユニット250に直接に供給してもよい。この場合、必要に応じてコード接続ユニット120,220を省略してもよい。
【0034】
通常モードで、位置値POS1,POS2を形成し、後続電子回路280と通信するために必要な全ての構成要素に主電源装置300によってエネルギーが供給される。
図1では、これは領域310に位置する全ての構成要素について該当する。
【0035】
主電源装置300が故障した場合に、引き続きマルチターン‐コードワードMC1,MC2を保存し、進んだ回転のカウントを行うことができるように、カウントに必要な構成要素がバッテリ支援領域330に配置されており、バッテリ320によりエネルギーを供給される。主電源装置300により供給を行う通常モードから、バッテリ320によりバッテリ支援領域330の供給を行うバッテリモードへの切換、およびその逆の切換は、好ましくは、主電源装置300の出力電圧V+の最小値を下回った場合/超過した場合に自動的に行われる。
【0036】
本発明によるマルチターン‐ロータリエンコーダではマルチターン‐コードワードMC1,MC2が広範囲に互いに独立して生成されることにより高い作動安定性が得られる。特にバッテリモードにおいて、マルチターン‐コードワードMC1,MC2を生成する場合の誤作動を検出する確率をさらに高めるために、本発明によれば、マルチターン-ロータリエンコーダに第1バッテリ‐監視ユニット400が設けられており、第1バッテリ‐監視ユニット400は、バッテリの機能を監視し、少なくとも1つのバッテリ‐状態信号によりインタフェイスユニットに示す。これにより、後続電子回路280に、例えばバッテリの故障(または故障の兆候)を示すことができる。
【0037】
さらに高い安全性要求を満たすために、好ましくは、重複する第2バッテリ‐監視ユニット500が設けられている。
【0038】
バッテリの適正な機能は、一方では、バッテリが十分な充電状態を示している場合、すなわち、バッテリ電圧V
BATが機能のために必要な最小値に到達している場合に得られる。他方では、バッテリモードにおいてバッテリ電圧V
BATが連続的に印加されていることが不可欠である。なぜなら、作動のために不可欠な最小限の電圧が短時間だけでも遮断されるか、または最小限の電圧を下回ることは、対応した構成部材(カウンタなど)にエネルギーが供給されないか、または不十分しか供給されずに、マルチターン‐コードワードMC1が消去されてしまうことを意味するからである。遮断は、例えば、機械がスイッチオフされた場合にバッテリ320が不適切に交換された場合に生じる。
【0039】
バッテリの充電状態が要求を満たしているかどうかことを確認するために、第1バッテリ‐監視ユニットには充電状態‐監視ユニット410が配置されている。
図2は、例として充電状態‐監視ユニット410の概略的な回路図を示す。
【0040】
充電状態‐監視ユニット410にはバッテリ電圧V
BATが供給される。充電状態‐監視ユニット410は、例えば、バッテリ電圧V
BATと参照電圧V
REFとの比較により、バッテリ電圧V
BATが要求される最小値に到達したかどうかを確認するために適切に構成されている。充電状態‐監視ユニット410は比較の結果を第1バッテリ‐状態信号BAT1として出力する。比較は、簡単な比較器であってもよい比較ユニット420で行われる。
【0041】
第1バッテリ‐状態信号BAT1は、インタフェイスユニット250に供給され、そこから後続電子回路280に伝送されてもよい。これはコマンドによる直接質問に応じて行うか、または位置データPOS1,POS2も含むデータパケットの一部として自動的に行ってもよい。
【0042】
充電状態‐監視ユニット410は複数の比較ユニット420を含んでいてもよい。これにより、例えば、バッテリ電圧V
BATと、作動のためにかろうじて許容される電圧との比較により、故障‐警告として解釈され得る別のバッテリ‐状態信号を生成することができ、これにより、実際に故障する前にバッテリ交換を行うことができる。
【0043】
低いバッテリ電圧V
BATは、一般にはバッテリ320の静止状態を示すので、主電源装置300から充電状態‐監視ユニット410にエネルギーが供給される。
【0044】
第1バッテリ‐状態信号BAT1の値が実際の電圧比較によって得られ、例えば比較ユニット420の誤作動によって生じないことを保障することができるように、さらに充電状態‐監視ユニット410には第1テスト信号TEST1によって制御される第1回路素子430が配置されており、この第1回路素子は、点検したい電圧を比較ユニット420の入口でバッテリ電圧V
BATからテスト電圧V
TESTに切り換える。テスト電圧V
TESTは、比較ユニット420がバッテリ320の低すぎる充電状態を検出し、第1バッテリ‐状態信号BAT1によって通知しなければならないように選択されている。このようにして、バッテリ320の低すぎる充電状態を故意に誘起し、充電状態‐監視ユニット410の機能を点検することができる。テスト信号TEST1は、例えば、データ伝送路260を介してマルチターン‐ロータリエンコーダのインタフェイスユニット250に送信される後続電子回路280のコマンドにより制御することができる。
【0045】
バッテリ電圧V
BATの連続性を点検するために、第1バッテリ‐監視ユニット400は連続性‐監視ユニット450を含む。この連続性‐監視ユニット450は、少なくとも主電源装置300がスイッチオフされた場合、すなわちバッテリモードにおいて、確実な作動のために不可欠な最小電圧が短時間遮断されるか、場合によっては最小電圧を下回ったことを確認し、第2バッテリ‐状態信号BAT2によって示すために適切に構成されている。
図3はこのようなユニットの概略的な回路図を示す。
【0046】
連続性‐監視ユニット450は、バッテリ電圧V
BATを供給されるメモリユニット460を含む。メモリユニット460は、主電源装置300がスイッチオンされた場合に、設定信号SETを介して所定値にプログラムすることができ、この値はバッテリ電圧V
BATの非連続性の結果として変化する。
【0047】
極めて簡単な実施形態では、メモリユニット460は、(後続電子回路280からのコマンドによる)設定信号SETにより所定の論理レベル、例えば高レベルにプログラムすることができるフリップフロップ素子(例えば、D‐フリップフロップ)を含む。高レベルは、第2バッテリ‐状態信号BAT2として(例えばインタフェイスユニット250に)出力され、エラーのない作動を通知する。バッテリ電圧V
BATが消失した場合(例えばバッテリ320を取り出したことによる)、または閾値未満に低下した場合には、論理高レベルが消去される(フリップフロップ素子がリセットされる)。バッテリ電圧V
BATが再び作動に必要な値に到達した場合、フリップフロップ素子はリセットされた状態に保持され、生じたバッテリ電圧V
BATの非連続性がメモリユニット460によって第2バッテリ‐状態信号BAT2により論理低レベルとして示される。バッテリ電圧V
BATを監視し、バッテリ電圧が必要な値に再び到達した後に所定の状態を形成する(上記実施例では第2バッテリ‐状態信号BAT2を論理低レベルに明確に設定する)ために、メモリユニット460にリセット素子が設けられていてもよい。
【0048】
連続性‐監視装置450には、第2テスト信号TEST2により制御することのできる第2切換素子470を用いてバッテリ電圧V
BATの非連続性を故意に誘起する可能性が設けられていてもよい。第2切換素子470の開放は、バッテリ電圧V
BATとメモリユニット460との接続を遮断し、メモリユニット460の消去を強制する。第2テスト信号TEST2も後続電子回路280によって制御することができる。遮断ではなく、第2切換素子470の接続によりバッテリ電圧V
BATが、メモリユニット460の消去が行われる値を下回るテスト電圧に切り換えられるように構成してもよい。
【0049】
当然ながら、本発明は上記実施例に制限されていない。むしろ専門家であれば特許請求の範囲内で代替的な実施形態を構成することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 測定基準器
20,30 目盛トラック
40 第1走査装置
100 第1シングルターン‐評価ユニット
110 第1マルチターン‐評価ユニット
200 第2シングルターン‐評価ユニット
210 第2マルチターン‐評価ユニット
140 第2走査装置
300 主電源装置
320 バッテリ
400 第1バッテリ‐監視ユニット
410 充電状態‐監視ユニット
420 比較ユニット
430 第1回路素子
450 連続性‐監視ユニット
460 メモリユニット
500 第2バッテリ‐監視ユニット
BAT1 第1バッテリ‐状態信号
BAT2 第2バッテリ‐状態信号
MC1 第1マルチターン‐コードワード
MC2 第2マルチターン‐コードワード
PS1 第1位置信号
PS2 第2位置信号
SC1 第1 シングルターン‐コードワード
SC2 第2 シングルターン‐コードワード
TEST1 第1テスト信号
TEST2 第2テスト信号
V
BAT バッテリ電圧
V
REF 参照電圧