【解決手段】スケール10が、少なくとも1つの基準マーク12を有する。この場合、基準信号が、基準マーク12を光学走査することによって生成可能である。さらに、スケール10が、走査ビーム束でこれらの領域マーク13.1、13.2を光学走査することによって、走査装置が、基準マーク12の第1側に存在するのか又は第2側に存在するのかが識別可能である。周期的な1つの遮光回折格子が、スケール10と領域信号検出器との間に配置されている。領域信号検出器の検出面内の複数の領域マーク13.1、13.2の光学走査時に、干渉縞が発生するように、遮光回折格子が形成されていて且つ配置されている。少なくとも2つの識別可能な走査信号が、基準マーク12に対する走査装置の位置に応じて干渉縞から生成可能である
前記基準マーク(12)の前記第1側の前記領域マーク(13.1)が、反射するように形成されていて、前記基準マーク(12)の前記第2側の前記領域マーク(13.2)が、反射型回折格子として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
前記複数の領域マーク(13.1,13.2)は、前記スケール(10)上の1つの領域マークトラック内に配置されていて、前記基準マーク(12)は、このスケール(10)上の1つの基準マークトラック内に配置されていて、この領域マークトラックとこの基準マークトラックとが、前記測定方向(x)に沿って平行に延在することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンコーダ。
前記スケール(10)は、複数のリミット領域(50.1,50.2)を有し、これらのリミット領域(50.1,50.2)は、前記複数の領域マーク(13.1,13.2)又は前記基準マークトラックの光学作用を部分的に変更することによって形成されていることを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。
前記複数のリミット領域(50.1,50.2)は、前記領域マークトラック又は前記基準マークトラックの少なくとも部分領域内に形成されていて、前記測定目盛(11)に対して垂直に配向された複数の透過型回折格子又は複数の反射型回折格子が、これらのリミット領域(50.1,50.2)に内に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のエンコーダ。
発散放射する1つの光源(21)が設けられていて、この光源(21)は、中間接続された光学素子なしに周期的な1つの透過型回折格子(22)を照射し、前記測定目盛(11)と少なくとも1つの基準マーク(12)と前記複数の領域マーク(13.1,13.2)とを有する前記スケール(10)と、前記遮光回折格子(29)と、前記領域信号検出器(26)と1つのインクリメンタル検出器(27)と1つの基準信号検出器(28)とを有する1つの検出装置(25)とが、ビームの伝播方向に前記透過型回折格子に後続して配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のエンコーダ。
前記領域信号検出器(26)は、周期的に交互に配置された複数の検出素子(26.1,26.2)による2つのグループから構成され、1つのグループごとのこれらの検出素子が(26.1,26.2)それぞれ、互いに接続されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエンコーダ。
前記回折格子は、+/−1次の回折光と減衰した0次の回折光とを発生させる位相型回折格子として形成されている結果、前記走査ビーム束が、前記複数の領域マーク(13.1,13.2)間を移行するときに、前記検出面内の干渉縞が、位置的に移動することを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ。
前記回折格子は、0次の回折光と+/−1次の回折光とを発生する振幅型回折格子又は位相型回折格子として形成されている結果、当該複数の異なる領域マークの走査時に、平均化された異なる強度(I1′,I2′)を有する干渉縞が、前記検出面内で発生することを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、発散光をスケールに照射するエンコーダの場合に、基準マークに対する走査装置の相対位置を示す領域信号の確実な生成を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載の特徴を有するエンコーダによって解決される。
【0010】
本発明のエンコーダの好適な構成は、従属請求項に記載されている解決手段によって実現される。
【0011】
本発明のエンコーダは、1つのスケールと、このスケールに対して測定方向に可動な1つの走査装置とを有する。このスケールは、1つの測定目盛を有する。この場合、周期的な測定信号が、この測定目盛を光学走査することによって生成可能である。さらに、このスケールは、少なくとも1つの基準マークを有する。この場合、基準信号が、当該基準マークを光学走査することによって生成可能である。さらに、このスケールは、光学走査可能な複数の領域マークを有する。この場合、領域信号が、走査ビーム束でこれらの領域マークを光学走査し、1つの領域信号検出器を通じて当該走査ビーム束を検出することによって生成可能である。この走査装置が、この基準マークの第1側に存在するのか又は第2側に存在するのかが、この領域信号によって識別可能である。これらの領域マーク上に照射される走査ビーム束が、この基準マークの当該第1側と第2側とで異なる回折角度で出射する。周期的な1つの遮光回折格子が、このスケールとこの領域信号検出器との間に配置されている。この領域信号検出器の検出面内のこれらの領域マークの光学走査時に、干渉縞が発生するように、この遮光回折格子が、形成されていて且つ配置されている。少なくとも2つの識別可能な走査信号が、この基準マークに対するこの走査装置の位置に応じてこの干渉縞から生成可能である。
【0012】
この場合、この遮光回折格子の周期が、
P
BM=λ/(sin(atan(P
SG(u+v))))
にしたがって選択され得る。
【0013】
このとき、
P
BM:=領域マークの反射型回折格子の周期
u:=透過型回折格子からスケールを経由して遮光回折格子までの走査ビーム束の進行光路長
v:=遮光回折格子と領域信号検出器の検出面との間の走査ビーム束の進行光路長
λ:=使用された光源の波長
P
SG:=透過型回折格子の周期
【0014】
好ましくは、当該基準マークの第1側の領域マークが、反射するように形成されていて、当該基準マークの第2側の領域マークが、反射型回折格子として形成されている。
【0015】
この場合、当該領域マークの反射型回折格子が、上記測定目盛と異なる周期を有することが可能である。
【0016】
可能な実施の形態では、当該反射型回折格子の周期が、
P
BM=2・v・λ/P
BD
にしたがって選択されている。
【0017】
このとき、
P
BM:=領域マークの反射型回折格子の周期
v:=遮光回折格子と領域信号検出器の検出面との間の走査ビーム束の進行光路長
λ:=使用された光源の波長
P
BD:=領域信号検出器の周期
【0018】
さらに、当該領域マークが、スケール上の1つの領域マークトラック内に配置されていて、当該基準マークが、このスケール上の1つの基準マークトラック内に配置されていることが提唱され得る。この場合、この領域マークトラックとこの基準マークトラックとが、測定方向に沿って平行に延在する。
【0019】
さらに、当該スケールが、複数のリミット領域を有することが可能である。この場合、これらのリミット領域は、当該領域マーク又は当該基準マークトラックの光学作用を部分的に変更することによって形成されている。
【0020】
したがって、当該リミット領域は、当該領域マークトラック又は当該基準マークトラックの少なくとも部分領域内に形成され得る。この場合、当該測定目盛に対して垂直に配向された複数の透過型回折格子又は複数の反射型回折格子が、当該リミット領域内に配置されている。
【0021】
可能な実施の形態では、発散放射する1つの光源が、中間接続された光学素子なしに周期的な1つの透過型回折格子を照射する。当該測定目盛と少なくとも1つの基準マークと当該領域マークとを有するスケールと、当該遮光回折格子と、当該領域信号検出器と1つのインクリメンタル検出器と1つの基準信号検出器とを有する1つの検出装置とが、ビームの伝播方向にこの透過型回折格子に後続して配置されている。
【0022】
好ましくは、当該領域信号検出器が、周期的に交互に配置された複数の検出素子による2つのグループから構成される。この場合、1つのグループごとの検出素子がそれぞれ、互いに接続されている。
【0023】
当該回折格子が、+/−1次の回折光と減衰した0次の回折光とを発生させる位相型回折格子として形成されていることが提唱され得る。その結果、走査ビーム束が、複数の領域マーク間を移行するときに、当該検出面内の干渉縞が、位置的に移動する。
【0024】
この場合、
・当該走査装置の位置が、基準マークの第1側にあるときに、複数の検出素子による第1グループが、最大走査信号を記録し、複数の検出素子による第2グループが、最小走査信号を記録し、
・当該走査装置の位置が、基準マークの第2側にあるときに、複数の検出素子による第1グループが、最小走査信号を記録し、複数の検出素子による第2グループが、最大走査信号を記録するように、当該遮光回折格子の周期と当該領域信号検出器の周期とが選択されていて、この遮光回折格子とこの領域信号検出器とが配置されていることが可能である。
【0025】
この場合、複数の検出素子による第1グループの走査信号と、複数の検出素子による第2グループの走査信号とが、当該領域信号を生成するために1つの減算素子に入力可能であり、領域信号が、後続に配置された1つの比較素子を経由して当該発生した減算信号から生成可能であることが提唱され得る。
【0026】
さらに、当該回折格子が、0次の回折光と+/−1次の回折光とを発生する振幅型回折格子又は位相型回折格子として形成されていることも可能である。その結果、当該複数の異なる領域マークの走査時に、平均化された異なる強度を有する干渉縞が、当該検出面内で発生する。
【0027】
この場合、複数の検出素子による第1グループの走査信号と、複数の検出素子による第2グループの走査信号とが、当該領域信号を生成するために1つの減算素子に異なって増幅されて入力可能であり、領域信号が、後続に配置された1つの比較素子を経由して当該発生した減算信号から生成可能であることが提唱され得る。
【発明の効果】
【0028】
したがって、本発明の解決手段によれば、発散光をスケールに照射するエンコーダでも、基準マークに対する走査装置の相対位置を示す領域信号が、確実に生成され得る。
【0029】
当該検出面内で発生した当該周期的な干渉縞は、静的であり、且つスケールに対する走査装置の移動時でも、当該周期的な測定信号の生成に起因した振動する信号成分を有しない。これにより、領域信号を生成するために、領域信号検出器の走査信号を回路技術的に簡単に再処理することが可能である。
【0030】
本発明の解決手段では、当該複数の領域マークのために独立した工程ステップが、スケールを製造するために不要である。回折格子として形成される領域マークは、測定目盛と基準マークとに必要な構造体と一緒に1つの共通の工程ステップで製造され得る。
【0031】
以下に、本発明のさらなる詳細及び利点を、図面に関連する本発明の設備の実施の形態に基づいて説明する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
測長機として構成された本発明のエンコーダの第1の実施の形態が、
図1及び2の断面で概略的に示されている。この場合、
図1には、複数の異なる走査ビーム路が示されていて、
図2には、走査装置の構成が示されている。当該図示されたエンコーダは、スケール10と、直線測定方向xに沿ってこのスケール10に対して相対に可動な走査装置20とを有する。この実施の形態では、当該本発明のエンコーダは、照射式に稼働される。すなわち、スケール10が、反射スケールとして構成されている。このスケール10上には、インクリメンタル測定目盛11が、中央に配置された測定目盛トラック内に配置されている。つまり、測定方向xに対して垂直に、当該測定目盛トラックに対して両側に隣接して、少なくとも1つの基準マーク12を有する基準マークトラックと、2つの領域マーク13.1,13.2を有する領域マークトラックとが配置されている。スケール10上のこれらの異なるトラックはそれぞれ、測定方向xに沿って又は平行に延在する。こうして形成された当該スケールは、
図3に平面図で示されている。
【0034】
当該スケール10を光学走査するため、走査装置20が、キャリア基板23上に配置された、発散放射する光源21、例えば、中間接続された光学素子なしに周期的な透過型回折格子22を照射する発光ダイオードを有する。当該透過型回折格子22は、周期P
SGを有する透過型振幅回折格子として形成されていて、透過性の走査板24の、光源21に面した側面上に配置されている。この実施の形態の可能なバリエーションでは、P
SG=1129μmによる透過型回折格子の周期が選択される。この実施の形態では、別の振幅型回折格子が、透過型回折格子22の透過性の領域内に配置されている。当該振幅型回折格子は、スケール10に設けられている測定目盛11の周期P
MTに相当する周期P
SG,INCを有する。このとき、この振幅型回折格子は、測定目盛11の走査時に透過型回折格子として機能する。透過型回折格子22の透光後に、スケール10に照射された発散光が、測定目盛11と基準マーク12と領域マーク13.1,13.2で位置に応じて反射され、次いで検出装置25上に到達する。この実施の形態では、この検出装置25は、領域信号検出器26とインクリメンタル信号検出器27と基準信号検出器28とを有する。領域マーク13.1,13.2から戻り反射した走査ビーム束のビーム路内の、スケール10と検出装置25との間において、遮光回折格子29が、走査板24上に配置されている。この遮光回折格子29は、周期P
BGを有する透過型振幅回折格子として形成されている。つまり、可能な実施の形態では、この周期P
BGは、172μmである。
【0035】
それぞれの信号を生成するための上記の異なる検出器26,27,28を有する検出装置25の平面図が、
図5に示されている。
図4は、走査板24上に配置された遮光回折格子29と、測定目盛11と基準マーク12との領域からの走査ビーム束のための透過性の領域30,31又は光学的に能動でない領域30,31とを有する当該走査板24の、スケール10に面する側面の平面図である。
【0036】
移相されている複数のインクリメンタル信号としての周期的な測定信号が、測定目盛11の光学走査から生成される。この測定目盛11は、周期P
MTを有し、可能な実施の形態ではP
MT=8μmである。この場合、インクリメンタル信号を生成するために具体的に使用される光学走査は、本発明にとって重要でない。これに対しては、例えば、R.Pettigrew著の題名「Analysis of Grating Imaging and its Application to Displacement Metrology」(SPIE Vol.36,1st European Congress on Optics applied to Metrology(1977),第325頁〜第332頁)の刊行物から公知の原理に基づく異なる光学走査原理を使用することが可能である。次いで、当該インクリメンタル信号が、後続に配置された−図示されていない−制御装置によって公知の方法でさらに処理され得る。こうして、走査装置20とスケール10とに結合されている相対に可動な機械部品を位置決めすることが可能である。
【0037】
こうして生成されたインクリメンタル信号に対して、絶対位置を所定の基準位置x
REFに関連付けるため、スケール10が、その基準マークトラック内に少なくとも1つの基準マーク12を有する。上記制御装置によってさらに制御可能な基準信号REFが、当該基準マーク12の光学走査から生成可能である。本発明の範囲内では、当該基準マーク12の形成及びこの基準マーク12の光学走査に関しては、様々な可能性が、基本的に存在する。この場合、例えば、本出願人の独国特許出願公開第102008044858号明細書又は独国特許出願公開第102011076055号明細書から公知であるような、光学走査が使用され得る。
【0038】
本発明の設備では、領域信号Bが、領域マークトラックを光学走査することによって生成される。走査装置20が、基準マーク12の左側に存在するのか又は右側に存在するのかが、この領域信号Bによって識別可能である。このために、領域マーク13.1,13.2が、スケール10上に形成されている。何処に、走査装置20が、基準マーク12に対して相対して存在するかが、これらの領域マーク13.1,13.2によって識別され得る。この場合、以下では、
図3のスケール内の左側を第1側と呼び、その右側を第2側と呼ぶ。
【0039】
本発明のエンコーダのこの第1の実施の形態では、領域マーク13.1が、領域マークトラック内の第1側に反射するように形成されていて、位相型回折格子として形成された反射型回折格子が、この領域マークトラック内の第2側に領域マーク13.2として配置されている。したがって、これらの領域マーク13.1,13.2上に照射される走査ビーム束が、基準マーク12の当該第1側と第2側とで異なる回折角度で出射する。こうして、−以下で詳しく説明されるように−基準マーク12に対する走査装置20の位置を相対的に示す領域信号Bが生成され得る。
【0040】
当該領域マーク13.2の反射型回折格子は、測定目盛トラック内の測定目盛11のように、領域マークトラック内で測定方向xに沿って周期的に延在する。本発明のエンコーダの可能な実施の形態では、領域マーク13.2の反射型回折格子が、周期P
BM=3μmを有し、したがってP
MT=8μmを有する測定目盛の当該周期と相違する。この場合、好ましくは、反射型回折格子の周期P
BMが、以下のように大まかに選択される:
P
BM=λ/(sin(atan(P
SG(u+v)))) (方程式1)
P
BM:=領域マークの反射型回折格子の周期
u:=透過型回折格子からスケールを経由して遮光回折格子までの走査ビーム束の進行光路長
v:=遮光回折格子と領域信号検出器の検出面との間の走査ビーム束の進行光路長
λ:=使用された光源の波長
P
SG:=透過型回折格子の周期
【0041】
本発明のエンコーダのこの第1の実施の形態では、領域マーク13.2の回折格子が、+/−1次の回折光と減衰した0次の回折光とを発生させる位相型回折格子として形成されている。
【0042】
周期的な遮光回折格子29と領域信号検出器26とが、領域信号Bを生成するための走査ビーム路内の、さらなるビーム進路方向に沿って、すなわちスケール10の後方に続く伝播方向に沿って配置されている。
図1から分かるように、周期的な遮光回折格子29が、スケール10と領域信号検出器26との間に存在する。
図4に平面図で示された当該遮光回折格子29は、透過型振幅回折格子として形成されている。この透過型振幅回折格子は、測定方向xに周期的に配置された透光性の目盛領域と非透過性の目盛領域とから構成される。この実施の形態では、遮光回折格子29の周期P
BGが、P
BG=172μmに選択されている。特に、当該遮光回折格子29の周期P
BGが、以下の方程式にしたがって得られる。
P
BG=u/(u+v)*P
BD (方程式2)
P
BG:=遮光回折格子の周期
u:=透過型回折格子からスケールを経由して遮光回折格子までの走査ビーム束の進行光路長
v:=遮光回折格子と領域信号検出器の検出面との間の走査ビーム束の進行光路長
P
BD:=領域信号検出器の周期
【0043】
透過型回折格子22に基づく上記放射方程式にしたがう本発明のエンコーダで提唱されている光学走査では、遮光回折格子29が、領域信号検出器26の検出面内に幾何学的に拡大されて投影される。領域信号検出器26が、周期的に交互に配置された複数の検出素子26.1,26.2による2つのグループから構成されることが、
図5に示された検出装置25の検出面の平面図から分かる。この場合、当該2つのグループの検出素子26.1,26.2は、同一に形成されている。この場合、1つのグループごとの検出素子26.1,26.2がそれぞれ、互いに接続されている。さらに、領域信号検出器26内のこれらの検出素子26.1,26.2の周期的な配置が、測定方向xに沿って延在することが、当該図から分かる。この領域信号検出器26の個々の検出素子26.1,26.2が、長方形状に形成されている。この場合、これらの検出素子26.1,26.2の長手軸が、図示されているy方向に測定方向xに対して垂直に配向されている。
【0044】
図5では、当該検出素子26.1,26.2以外のインクリメンタル信号検出器27及び基準信号検出器28は、専ら概略的に示されている。つまり、当該インクリメンタル信号検出器27及び基準信号検出器28の具体的な構成は、本発明にとって重要でない。本発明では、様々な公知の検出器のバリエーションが使用され得る。
【0045】
この実施の形態では、透過型回折格子22からスケール10を経由して遮光回折格子29までの走査ビーム束の進行光路長が、符号uで示される。したがって、符号vは、遮光回折格子29と領域信号検出器26の検出面との間の走査ビーム束の進行光路長に対して使用される。可能な実施の形態では、これらの寸法は、u=3.471mm及びv=0.565mmに選択される。領域信号検出器26の検出素子26.1,26.2は、測定方向xに幅b
BD=100μmを有する。すなわち、領域信号検出器26の周期P
BDは、測定方向xに沿ってP
BD=200μmであり、当該検出面内に投影された遮光回折格子29の周期に等しい。
【0046】
領域信号Bを、スケール10上に形成された複数の異なる領域マーク13.1,13.2の光学走査から生成するため、遮光回折格子29の周期P
BGと領域信号検出器26の周期P
BDとを所定の方法で選択すること、遮光回折格子29と領域信号検出器26とを所定の方法で配置することが提唱されている。この実施の形態では、走査装置20が、基準マーク12の第1側に存在する場合に、検出素子26.1による第1グループが、最大走査信号S
1を記録し、検出素子26.2による第2グループが、最小走査信号S
2を記録するように、当該領域信号Bの生成は実施される。走査装置20が、基準マーク12の第2側に存在する場合には、上記の選択された周期P
BG,P
BDと、上記の遮光回折格子29と領域信号検出器26との配置とは、検出素子26.1による第1グループが、最小走査信号S
1を記録し、検出素子26.2による第2グループが、最大走査信号S
2を記録する。基準位置x
REFの領域内の、又はこの基準マークの左側と右側との、領域信号検出器26の走査信号S
1,S
2に対応する経時変化が、
図7に示されている。この図の下の部分には、生成された基準信号がさらに示されている。
図7から分かるように、スケール10と走査装置20との相対移動時でも、第1領域内と第2領域内とでこうして生成された走査信号S
1,S
2はそれぞれ、ほぼ静的であり、特に、インクリメンタル信号の生成によって引き起こされた振動する信号成分を有しない。これにより、走査信号S
1,S
2のさらなる処理が、著しく簡単になる。さらに処理可能な領域信号Bが、適切な回路を通じた以下でさらに説明する結合によって、こうして生成された当該走査信号S
1,S
2から生成される。
【0047】
この実施の形態では、走査ビーム束が、基準マーク12の第1側又は左側の、反射するように形成されている領域マーク13.1に照射されると、遮光回折格子29が、光軸に対して移動することなしに検出装置25の検出面内に投影される。当該検出面で発生する周期的な明暗の干渉縞の周期が、領域信号検出器26の周期P
BDに一致する。したがって、複数の検出素子26.1による第1グループが、この干渉縞の明るい位置ごとに信号最大値を検出し、複数の検出素子26.2による第2グループが、この干渉縞の暗い位置ごとに信号最小値を検出する。その結果、
図7に示されたように、走査信号S
1,S
2の経時変化が発生する。
【0048】
これに対して、走査装置20が、基準マーク12の第2側又は右側の上に存在し、走査ビーム束が、そこに回折格子として形成された領域マーク13.2に照射されると、先の場合に対して測定方向xに半分の明暗周期だけ移動されている干渉縞が、領域信号検出器26の検出面内で発生する。この干渉縞は、先の場合と同じ周期を有する。すなわち、この周期は、この領域信号検出器26の周期P
BDに一致する。このとき、複数の検出素子26.1による第1グループが、当該検出面内の移動されている干渉縞に起因してこの干渉縞の暗い位置ごとに信号最小値を検出し、複数の検出素子26.2による第2グループが、この干渉縞の明るい位置ごとに信号最大値を検出する。
【0049】
この実施の形態では、領域マーク13.1,13.2内での入射する走査ビーム束に対する上記の異なる光学的な回折作用が、以下のように明瞭に理解される。すなわち、当該入射する走査ビーム束が、平坦な波面とみなされる場合、周期的な干渉縞強度が、上記検出面内で半周期だけさらに移動するように、当該波面が、上記回折格子を有する領域マーク13.2の領域内で所定の角度だけ傾斜する。
【0050】
本発明の設備のこの実施の形態において領域信号検出器26の検出面内で発生する上記の2つの場合の強度分布I
1,I
2が、
図6に示されている。この場合、反射するように形成された第1領域マーク13.1の光学走査から発生する強度分布I
1は、この図では黒色の曲線として示されている。したがって、回折格子を有する第2領域マーク13.2の光学走査から発生する強度分布I
2は、灰色の曲線として示されている。
図6から分かるように、測定方向xに沿った上記の2つの場合に対する強度分布I
1,I
2が、信号周期の半分だけ互いに移動されている。したがって、基準マーク12に対する走査装置20の位置が、領域信号検出器26によってこれらの強度分布から生成される走査信号S
1,S
2から推測され得る。
【0051】
したがって、この実施の形態では、走査装置20が、基準マーク12の第1側の領域マーク13.1の上に存在するときに、遮光回折格子29が、移動することなしに投影されるのとは違って、当該基準マーク12の第2側に回折格子として形成された領域マーク13.2によれば、走査ビーム束に対する異なる回折作用に起因して、上記検出面内で発生する干渉縞が、光軸に対して垂直方向に所定の量だけ移動する。
【0052】
次いで、以下で説明するように、領域信号Bが、こうして生成された走査信号S
1,S
2から生成され得る。この領域信号Bは、現在、走査装置20が基準マーク12のどちらの側に存在するかを一義的に示す。このため、
図8aによれば、当該走査信号S
1,S
2が、減算素子40の2つの入力部に入力される。つまり、この減算素子40の出力部で発生する差信号ΔS=S
1−S
2が、
図8bの左側の部分に示されている。この
図8bから分かるように、この信号ΔSは、基準位置x
REFの領域内に、一定に変化し且つ2つの領域マーク13.1,13.2の移行時の零値と交差する信号エッジを有する。この差信号ΔSの当該零交差を検出するため、この差信号ΔSは、比較素子41の第1入力部に入力される。基準信号GLが、この比較素子41の第2入力部に入力される。この比較素子41の、こうして出力された矩形状の出力信号が、領域信号Bを最終的に表す。この領域信号Bは、
図8bの右側の部分に示されていて、この領域信号Bは、基準位置x
REFに対する走査装置の位置に応じて1つの一義的な信号レベルを有する。すなわち、図示されたこの例では、この領域信号は、走査装置が基準マークの第1(左)側に存在するときに値「0」をとり、走査装置が基準マークの第2(右)側に存在するときに値「1」をとる。
【0053】
冒頭で説明した独国特許出願公開第10132521号明細書から公知のエンコーダでは、基準マークの左側の領域マークと右側の領域マークとのほかに、複数の、いわゆる目印(Steuermarken)が、スケールの両端部に付加されている。これらの目印は、走査装置の可能な最大位置を規定し、リミットスイッチ又はリミットマークとも呼ばれる。当該リミットスイッチ又はリミットマークを有するエンコーダは、独国特許第4111873号明細書又は欧州特許第0145844号明細書にも記載されている。
【0054】
当該本発明のエンコーダでは、領域マークトラックの対応する複数の部分領域に配置された領域マーク13.1,13.2の光学作用が、これらの部分領域内で変更して奏されることによって、これらのリミットマークの機能が、非常に有益に実現可能である。このため、
図3中のスケールの平面図にしたがって示された実施の形態では、測定方向xに対して垂直に配向された複数の透過型回折格子を、領域マークトラックのリミット領域50.1,50.2内に配置することが提唱されている。
図3から分かるように、これらの透過型回折格子は、y方向に沿って、すなわち測定方向xに対して垂直に延在する。つまり、これらの透過型回折格子の透光性の目盛領域と非透光性の目盛領域との長手方向が、測定方向xに対して平行に配向されている。可能な実施の形態では、リミット領域50.1,50.2内の透過型回折格子の周期P
LMが、P
LM=250μmに選択される。これとは別に、透過型回折格子の代わりに、反射型回折格子が使用されてもよい。当該反射型回折格子では、凸状部分が、光反射性に形成されていて、凹状部分が、光吸収性に形成されている。
【0055】
リミット領域50.1,50.2内の、ここでは透過型回折格子として形成された、さらに付加して設けられている当該回折格子は、領域信号検出器26の走査信号S
1,S
2に影響を及ぼす。特に、その他の場合とは違ってほぼ一定の和信号ΣS=S1+S2が、当該2つの走査信号S
1,S
2から出力される。走査装置が、リミット領域50.1,50.2のうちの1つのリミット領域の上に存在するときに、走査ビーム束に対する当該透過型回折格子の、そのリミット領域で減少する反射作用に起因して、反射強度が減少する。その結果、和信号ΣSが、領域LB1,LB2内で著しく減少する。この和信号ΣSの経時変化、特に、説明した領域LB1,LB2内の信号の減少が、
図9bの左側の部分に示されている。矩形状のリミット信号Lを生成するため、
図9aの回路によれば、領域信号検出器26の走査信号S
1,S
2を加算素子60に入力し、当該和信号ΣSを生成することが提唱されている。このとき、この和信号ΣSは、比較素子61の第1入力部に入力され、基準信号GLが、この比較素子61の第2入力部に入力される。この場合、この基準信号GLは、同様に光学式に生成され得る。例えば、いわゆる基準マークの連続光が、この基準信号GLのために使用され得る。この比較素子61のこうして出力された出力信号が、
図9bの右側の部分に示されている矩形状のリミット信号Lを最終的に表す。走査装置が、許容される移動範囲のリミット領域50.1,50.2に到達したことが、後続の電子機器側で当該リミット信号Lによって確認され得る。
【0056】
したがって、スケール10の4つの異なる領域、すなわち左側のリミット領域、基準マークの左側の領域、基準マークの右側の領域及び右側のリミット領域が、上記の方法で識別され得る。走査ビーム束の異なる回折が、これらのリミット領域50.1.50.2内で発生するので、領域信号Bに関する−基準マークの右側又は左側の−方向情報が、これらのリミット領域50.1.50.2を有する領域マークトラックの部分領域内にも存在する。
【0057】
これらのリミット領域50.1.50.2を、領域マーク13.1,13.2を挟んで配置された上記透過型回折格子として形成することのほかに、その他の構成も実現可能である。すなわち、これらのリミット領域を、光吸収層として、領域マークトラックの希望した部分領域内に形成すること、スケールをレーザーアブレーションすること、又は遮光構造体をスケールのこれらの領域内に配置することが可能である。基本的には、これらの全てのバリエーションにおいて、走査ビーム束に対するこれらの領域マークの光学作用が、部分的に変更される。この場合、共通して、領域信号検出器の走査信号の信号強度が、20%〜80%の範囲内で減少しなければならない。これにより、領域信号Bが、これらの領域内で確実に生成可能であることが保証される。
【0058】
さらに、
図3に示された実施の形態とは違って、リミット領域を、スケール上の基準マークトラック内に配置することも可能である。上記の説明した例と同様に、この場合にも、基準マークトラックの対応する領域内の光学作用が、部分的に変更されるように、当該リミット領域を形成することができる。当該バリエーションに関するそれ以外の点は、上記の説明した例に対して説明されている。
【0059】
以下に、本発明のエンコーダの第2の実施の形態を
図10及び11に基づいて説明する。この
図10及びこの
図11は、第1の実施の形態の
図7及び8bから表されるものにほぼ対応する。したがって、既に説明した第1の実施の形態と根本的に違う点だけを主に説明する。
【0060】
第1の実施の形態では、0次の回折光が、大幅に減衰され、主に発生した+/−1次の回折光が、信号を得るために使用されるように、第2領域マーク13.2の回折格子が形成された。一方で、当該第2の実施の形態では、+/−1次の回折光のほかに、強く発生する0次の回折光も発生する振幅型回折格子又は位相型回折格子が、第2領域マークの回折格子として設けられている。或る構成の場合には、この回折格子は、位相型回折格子として、例えば位相を90°偏移させる。
【0061】
こうして形成された回折格子が、第2領域マークに対して使用されるので、反射する第1領域マークから当該適切に形成された回折格子を有する第2領域マークへの移行時に、検出面内の静的な干渉縞が、位置的に移動するのではなくて、この干渉縞の強度が、半分に減少する。したがって、これらの異なる領域マークの走査時に、平均化された異なる強度を有する干渉縞が、領域信号検出器の検出面内で発生する。
図6の干渉縞と同様に、第2の実施の形態に対する干渉縞が、
図10に示されている。この第2の実施の形態では、適切に形成された回折格子が、周期P
BM=3μmを有する第2領域マークとして使用される。
図10では、反射する第1領域マークが走査されるときに、検出面内の干渉縞の強度分布が、I
1′(黒色の曲線)で示され、この強度分布は、第1の実施の形態で発生する強度分布I
1に等しい。一方で、強い0次の回折光を発生する回折格子として形成された第2領域マークが走査されるときは、検出面内の干渉縞の強度分布が、
図10ではI
2′(灰色の曲線)で示される。この図から分かるように、この場合には、当該発生した干渉縞は、より低い平均化された強度を有する。一義的な領域信号Bが、生成された走査信号S
1′,S
2′の当該異なって平均化された強度から生成され得る。
【0062】
この場合、検出面内の干渉縞を走査するために使用された領域信号検出器は、上記第1の実施の形態のように構成されていて、互いに接続された複数の検出素子による2つのグループを有する。第2の実施の形態に対して
図11の左側の部分に示されているように、当該2つのグループは、走査信号S
1′,S
2′を生成する。次いで、当該走査信号S
1′,S
2′は、
図8aに示されているような回路に入力される。次いで、さらに処理可能な領域信号B′が、この回路の出力部に出力される。この領域信号B′は、
図11の右側の部分に示されている。しかしながら、この実施の形態において当該領域信号B′を生成するためには、上記の実施の形態とは違って、当該入力された走査信号S
1′,S
2′のための増幅係数V
1,V
2が、減算素子に対して異なって選択される必要がある。すなわち、図示されたこの実施の形態では、例えば、当該増幅係数は、V
1=1,V
2=2に選択されている。
【0063】
本発明のエンコーダの第2の実施の形態の別のバリエーションでは、当然に、別の目盛周期も、第2領域マークの回折格子に対して使用され得る。この回折格子の、代わりに選択された周期P
BM=3μmの場合には、したがって
図10の例において明らかであるように、第2領域マークの走査時の平均化された強度が減少しない。しかし、上述したように、それにもかかわらず、適切な領域信号が、減算素子の増幅係数を適切に選択することによって生成され得る。
【0064】
具体的に説明されている上記の実施の形態のほかに、当然に、その他の可能な実施の形態も、本発明の範囲内で存在する。
【0065】
したがって、例えば、本発明のエンコーダを、透過型スケールが使用される透光システムとして構成することが可能である。
【0066】
さらに、領域信号を生成するための走査ビーム束のビーム路内に設けられている遮光回折格子が、位相型回折格子として形成されてもよい。
【0067】
さらに、遮光回折格子を走査板の各側面上に配置することも可能である。この場合、例えば、遮光回折格子を走査板の表面上に配置し、適切に構成された検出器を対向している裏面上に配置することも考えられる。
【0068】
さらに、測定目盛トラックをスケール上の中央に配置する代わりに、基準マークトラックを中央に配置し、この基準マークトラックの両側面に隣接するように領域マークトラックと測定目盛トラックとをそれぞれ配置することも提唱され得る。
【0069】
さらに、直線移動を検出するためのエンコーダの代わりに、当然に、回転移動を検出するためのエンコーダ等も適切に構成され得る。