【解決手段】エポキシ樹脂(a)と硬化剤(b)を含む光学用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂(a)は、エポキシ当量が500〜2000g/eqで、軟化点が80〜150℃で、屈折率(n
)が1.55〜1.63であり、芳香族環と脂肪族環とを同時に分子構造中に有し、かつ、1H-NMRスペクトルにおける脂肪族プロトン(A)と芳香族プロトン(B)の強度比(B/A)が0.3〜0.7である光学用エポキシ樹脂組成物。
エポキシ樹脂(a)と硬化剤(b)を含む光学用エポキシ樹脂組成物において、該エポキシ樹脂(a)は、エポキシ当量が500〜2000g/eqで、軟化点が80〜150℃で、20℃、波長589.3nmでの屈折率(nD20)が1.55〜1.63であり、芳香族環と脂肪族環とを同時に分子構造中に有し、かつ、1H-NMRスペクトルにおける脂肪族プロトン(A)と芳香族プロトン(B)の強度比(B/A)が0.3〜0.7であることを特徴とする光学用エポキシ樹脂組成物。
エポキシ樹脂(a)が、末端カルボキシル基の脂肪族環含有エステル化合物(c)と2官能芳香族エポキシ樹脂(e1)との反応から得られるエポキシ樹脂、または2価フェノール化合物(d)と2官能の脂肪族環含有エポキシ樹脂(e2)との反応から得られるエポキシ樹脂である請求項1に記載の光学用エポキシ樹脂組成物。
末端カルボキシル基の脂肪族環含有エステル化合物(c)が、脂肪族環含有2価アルコールと酸無水物、2価アルコールと脂肪族環含有酸無水物、または脂肪族環含有2価アルコールと脂肪族環含有酸無水物との反応から得られた末端カルボキシル基の脂肪族環含有エステル化合物である請求項2に記載の光学用エポキシ樹脂組成物。
エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1モルに対し、硬化剤(b)の活性水素基が0.4〜1.2モルの範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の光学用エポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0019】
本発明の光学用エポキシ樹脂組成物は、一般的な光ディスク、レンズ、導光板、または光ファイバー等の他に、透明性を強く要求されているガラス基板代替え樹脂基板、LED(Light Emitting Diode)封止材、フィルム状接着剤、カラーフィルター用保護膜に適する。光学用はこれらの用途を含む意味である。本発明の光学用エポキシ樹脂組成物は、特にフィルム状接着剤、またはカラーフィルターや光半導体基板表面の保護膜用として適する。
【0020】
本発明の光学用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(a)と硬化剤(b)を含む。エポキシ樹脂(a)は、エポキシ当量が500〜2000g/eqであり、軟化点が60〜130℃であり、20℃、波長589.3nmでの屈折率(n
D20)が1.55〜1.63であり、芳香族環と脂肪族環とを同時に分子構造中に有し、かつ、プロトンNMRスペクトルにおける脂肪族プロトン(A)と芳香族プロトン(B)の強度比(B/A)が0.3〜0.7であることが必須である。
【0021】
エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量の範囲は、500〜2000g/eqであり、700〜1500g/eqがより好ましく、850〜1200g/eqがさらに好ましい。エポキシ当量が小さいと高屈折率と良好な耐熱黄変色性の効果が見込めない恐れがあり、逆にエポキシ当量が大きいと得られるエポキシ樹脂の軟化点が高くなってしまい成形や塗工が困難となる恐れがある。ここでエポキシ当量とは1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定される。
【0022】
エポキシ樹脂(a)の軟化点の範囲は、80〜150℃であり、100〜145℃がより好ましく、110〜140℃がさらに好ましい。軟化点が低いとブロッキング性が高くなり、作業性が悪化する恐れがあり、逆に軟化点が高いと成形や塗工が困難となる恐れがあり、高温で処理しなければならず、それが着色の原因となる。
【0023】
エポキシ樹脂(a)の20℃、波長589.3nmでの屈折率(n
D20)の範囲は、1.55〜1.63である。この範囲は光学用途でよく使用される範囲であるので好ましく、エポキシ樹脂(a)の骨格や芳香族の含有量を調整することでこの範囲にすることができる。
【0024】
エポキシ樹脂(a)は、芳香族環と脂肪族環とを同時に分子構造中に有する。脂肪族環を含まないと、芳香族環があったとしても耐熱性が悪化する恐れがある。また、芳香族環を含まないと、透明性や耐光性は十分満足できるものとなるが、耐熱黄変色性(耐熱性)が著しく悪化して、発熱の大きい光学用途での使用が難しい。芳香族環と脂肪族環の割合は、後記する1H-NMRスペクトルにおける脂肪族プロトン(A)と芳香族プロトン(B)の強度比(B/A)にも関係する。
【0025】
芳香族環と脂肪族環とを同時に分子構造中に有するエポキシ樹脂(a)は、例えば、つぎのような方法で得ることができる。
1) 芳香族環と脂肪族環の両方を有するフェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合重合、2) 芳香族環、脂肪族環、またはその両方を有するエポキシ樹脂と、芳香族環、脂肪族環、またはその両方を有するフェノール化合物との付加重合(但し、エポキシ樹脂とフェノール化合物が、同時に芳香族環又は脂肪族環のみを有する場合を除く)、3) 芳香族環、脂肪族環、またはその両方を有する酸無水物と、芳香族環、脂肪族環、またはその両方を有するエポキシ樹脂の付加重合(但し、エポキシ樹脂と酸無水物が、同時に芳香族環又は脂肪族環のみを有する場合を除く)、4)芳香族環、脂肪族環、またはその両方を有する末端カルボキシル基のエステル化合物と芳香族環、脂肪族環、またはその両方を有するエポキシ樹脂の付加重合(但し、エポキシ樹脂とエステル化合物が、同時に芳香族環又は脂肪族環のみを有する場合を除く)。
しかし、これらの方法に限定されない。また、これらの方法を組み合わせて、エポキシ樹脂(a)を得ても良い。そして、いずれの場合も必ず脂肪族環と芳香族環を有する原料を使用する必要がある。原料の1つが脂肪族環と芳香族環を有してもよく、原料の1つが脂肪族環を有し、他の原料の1つが芳香族環を有してもよい。
【0026】
上記の製法の内、エポキシ樹脂(a)を得る好ましい製法は、(1)2官能エポキシ樹脂とフルオレン骨格を有する2価フェノール化合物と末端カルボキシル基の脂肪族環含有エステル化合物との付加重合反応であり、(2)フルオレン骨格を有する2官能エポキシ樹脂と末端カルボキシル基の脂肪族環含有エステル化合物との付加重合反応であり、(3)2官能の脂環式エポキシ樹脂と末端カルボキシル基のエステル化合物とフェノール化合物の付加反応であり、(4)2官能の脂環式エポキシ樹脂とフェノール化合物の付加重合反応である。より好ましい製法は、(1)2官能エポキシ樹脂とフルオレン骨格を有する2価フェノール化合物と末端カルボキシル基の脂肪族環含有エステル化合物との付加重合反応である。なお、2官能の脂環式エポキシ樹脂を単独で使用する場合は、芳香族環の導入量の調整が難しため、一般的な2官能エポキシ樹脂を併用した方が好ましい。
【0027】
なお、本発明において、脂肪族環とは、脂肪族炭化水素の環状部を指し、酸素等のヘテロ原子を含んでいても良いが、オキシラン環やオキセタン環等のように硬化時に開環し硬化物となった状態で環状を示さないものは、脂肪族環に含まない。好ましい脂肪族環は、環構成原子に炭素を3以上含み、不飽和結合を有しない環であり、C4〜C8の単環のシクロアルキル、C8〜C16のビシクロアルキル、C7〜C16の縮合又はスピロ型のシクロアルキルがより好ましい。具体的には、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の単環構造や、ビシクロペンタン、ビシクロオクタン、ビシクロウンデカン等の橋かけ環や、スピロオクタン、スピロビシクロペンタン等のスピロ環等の多環構造やオキサン環、オキセパン環、チアン環等のヘテロ環が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0028】
そして、エポキシ樹脂(a)の1H-NMR(プロトンNMR)スペクトルにおける脂肪族プロトン(A)と芳香族プロトン(B)の強度比(B/A)の範囲は、0.3〜0.7であり、0.35〜0.65がより好ましく、0.4〜0.6がさらに好ましい。芳香族プロトンが多いと、耐熱性が向上し、屈折率を高くする効果があるが、透明性や耐光性が悪化し、光学用途に使用できなくなる恐れがあり、逆に芳香族プロトン少ないと耐熱黄変色性(耐熱性)が悪化する恐れがある。
【0029】
強度比(B/A)を、合成例で得られたエポキシ樹脂(a)の1H-NMRを示す
図1を用いて説明すると、芳香族プロトン(B)に基くピークはaであり、脂肪族プロトン(A)に基くピークはアルコール、エーテル、またはエポキシドのプロトンのbとエステルのプロトンのcとメチレンのプロトンのdの全部であり、脂肪族プロトン(A)と芳香族プロトン(B)の強度比(B/A)は、[a/(b+c+d)]となる。
ここで、芳香族プロトン(B)は、芳香族環構成炭素に結合するHを意味し、脂肪族プロトン(A)は、芳香族プロトン(B)以外のHを意味する。
【0030】
上記脂肪族環を導入する方法で使用される脂肪族環を有するフェノール化合物として、具体的には、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−シクロヘキシルフェノール)、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール等が挙げられ、単独あるいは2種以上の混合物として使うことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0031】
2官能の脂肪族環含有エポキシ樹脂(e2)として、具体的には、3−オキシラニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、3’,4’−エポキシシクロヘキセニルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、リモネンジオキサイド等の2官能の脂環式エポキシ樹脂や、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビシクロヘキシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水添ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スピログリコール)、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン、イソソルビド等の脂肪族環を有する2価アルコールのジグリシジルエーテル樹脂や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸等の脂肪族環を有するジカルボン酸のジグリシジルエステル樹脂等が挙げられ、単独あるいは2種以上の混合物として使うことができるが、これらに限定されるわけではない。なお、2価アルコールのジグリシジルエーテル樹脂やジカルボン酸のジグリシジルエステル樹脂は、全塩素分が高いものが多く電子材料用途では使用できない恐れがあるため、全塩素分を低減した蒸留品を使用することが好ましい。また、耐熱性の点から2官能の脂環式エポキシ樹脂がより好ましい。
【0032】
脂肪族環を有する酸無水物として、具体的には、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられ、単独あるいは2種以上の混合物として使うことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0033】
上記脂肪族環を導入する方法で使用される末端カルボキシル基の脂肪族環を有するエステル化合物(c)は、次のような方法で得ることができるが、これらに限定されない。
脂肪族環を有する2価アルコールと酸無水物と付加反応、
2価アルコールと脂肪族環を有する酸無水物との付加反応、
脂肪族環を有する2価アルコールと脂肪族環を有する酸無水物との付加反応、
脂肪族環を有する2価アルコールとジカルボン酸と脱水縮合反応、
2価アルコールと脂肪族環を有するジカルボン酸との脱水縮合反応、
脂肪族環を有する2価アルコールと脂肪族環を有するジカルボン酸との脱水縮合反応等
これらの反応では、2価アルコールに対して、等モル以上の酸無水物及び/またはジカルボン酸が使用される。これらの反応では、酸無水物を完全に開環させ、未反応酸無水物として残存させないことが必要であり、さらに両末端が水酸基である化合物が単独で残らないことが必要である。なお、2価アルコールの具体例は、上記の脂肪族環を有する2価アルコールの他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族グリコールが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、酸無水物、及びジカルボン酸は、上記の酸無水物、及びジカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。反応の簡便さから、脂肪族環を有する2価アルコールと酸無水物と付加反応、2価アルコールと脂肪族環を有する酸無水物との付加反応、または脂肪族環を有する2価アルコールと脂肪族環を有する酸無水物との付加反応が好ましい。
また、この他の反応機構で得られたエステル化合物であっても、末端カルボキシル基の脂肪族環を有するエステル化合物であれば構わない。これらのエステル化合物を単独あるいは2種以上の混合物として使うことができる。
【0034】
エポキシ樹脂(a)の骨格に芳香族環を導入する方法としては、2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合重合や、2官能フェノール化合物とエポキシ樹脂との付加重合、芳香族環を有するエポキシ樹脂とフェノール化合物との付加重合、または、芳香族環を有する酸無水物とエポキシ樹脂の付加重合、末端カルボキシル基の芳香族環を有するエステル化合物とエポキシ樹脂の付加重合等の様々な方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるわけではない。また、これらの方法を組み合わせて、エポキシ樹脂(a)を得ても良い。
【0035】
芳香族環を有するエポキシ樹脂として、2官能フェノール化合物のグリシジルエーテル化物である2官能芳香族エポキシ樹脂であり、2官能フェノール化合物としてはビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9H−フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9H−フルオレン等の2官能芳香族フェノールが挙げられ、単独あるいは2種以上の混合物として使うことができるが、これらに限定されるわけではない。耐熱性の点から9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9H−フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9H−フルオレンが好ましい。
【0036】
芳香族環を有する酸無水物としては、無水フタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物等が挙げられ、単独あるいは2種以上の混合物として使うことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0037】
芳香族環を有するジカルボン酸としては、フタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸、1−フェニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、単独あるいは2種以上の混合物として使うことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0038】
エポキシ樹脂に脂肪族環を導入して、エポキシ樹脂(a)とすることは、芳香族環を導入するより比較的難しい。電材用途や光学材料用途では、エポキシ樹脂は高純度品であることが重要であるが、脂環式エポキシ樹脂以外の脂肪族環を有するエポキシ樹脂のほとんどは純度が低く高純度化が必要である。そのために、エポキシ樹脂の蒸留分離や再精製反応の繰り返しによる高純度化やエポキシ樹脂の水素添加化による芳香族環の脂肪族環化による方法があるが、いずれの方法でも工程数が増え、煩雑化し、コスト的にも不利益で、商業上好ましい方法ではない。そのためエポキシ樹脂以外の原料であって、エポキシ基と反応可能な官能基を有する原料より導入することが好ましく、具体的には脂肪族環を有する酸無水物、ジカルボン酸、または末端カルボキシル基のエステル化合物をエポキシ樹脂との反応により導入することが好ましい。
【0039】
エポキシ樹脂がフェノール化合物のジグリシジルエーテル化物、いわゆる芳香族エポキシ樹脂の場合、上記の末端カルボキシル基の脂肪族環含有エステル化合物との反応でエポキシ樹脂(a)を得ることが好ましい。この場合、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し、末端カルボキシル基のエステル化合物のカルボキシル基を0.2〜0.7モルの範囲で用いることが好ましく、この範囲内ではカルボキシル基の含有量を増やすことにより、屈折率および耐熱黄変性は高くなる。末端カルボキシル基のエステル化合物が少な過ぎるとエポキシ樹脂(a)の耐熱性に劣り、多すぎると得られるエポキシ樹脂(a)の軟化点が高くなり実用性に劣るものとなる。
【0040】
また、2価フェノール化合物を併用しても良い。この場合、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し、末端カルボキシル基のエステル化合物のカルボキシル基と2価フェノール化合物の水酸基の合計がを0.2〜0.7モルの範囲で用いることが好ましい。脂肪族プロトン(A)と芳香族プロトン(B)の強度比(B/A)が0.3〜0.7の範囲内であれば、2価フェノール化合物の含有量が増やすことで耐熱性が向上する。フルオレン骨格を含有する2価フェノール化合物の場合は、その効果が著しく、より好ましい。
【0041】
硬化剤(b)はエポキシ樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されず、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、またはカチオン重合開始剤等の公知の硬化剤が好ましく使用できるが、アルコール性水酸基とも反応する硬化剤が耐熱黄変性の点からより好ましい。より好ましい硬化剤として、具体的には、光カチオン重合開始剤や熱カチオン重合開始剤等のカチオン重合開始剤や上記の酸無水物や3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物や1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等のカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独あるいは2種以上の混合物として使うことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂(a)と硬化剤(b)の配合量は、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1モルに対して、硬化剤(b)の活性水素基が0.4〜1.2モルの範囲が好ましく、0.5〜1.1モルがより好ましく、0.7〜1.0モルがさらに好ましい。例えば、フェノール系、アミン系硬化剤を用いた場合は、エポキシ基に対して活性水素基をほぼ当モル配合し、酸無水物系硬化剤を用いた場合、エポキシ基1モルに対して酸無水物基を0.5〜1.2モル、好ましくは、0.6〜1.0モル配合する。イミダゾール化合物類やカチオン重合開始剤等の様に接触して反応が進行する場合はエポキシ樹脂に対する所定の質量比で配合されることもある。本発明でいう活性水素基とはエポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、1モルのカルボキシル基やフェノール性水酸基は1モルと、アミノ基(NH
2)は2モルと計算される。
【0043】
本発明の光学用エポキシ樹脂組成物には必要に応じて、エポキシ樹脂(a)以外の各種エポキシ樹脂を本発明の特性を損なわない程度に併用することもできる。併用できるエポキシ樹脂としては、具体的にはエポトート YDC−1312、ZX−1027(新日鉄住金化学株式会社製、ハイドロキノン型エポキシ樹脂)、YX−4000(三菱化学株式会社製)ZX−1251(新日鉄住金化学株式会社製、ビフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート YD−127、エポトート YD−128、エポトート YD−8125、エポトート YD−825GS、エポトート YD−011、エポトート YD−900、エポトート YD−901(新日鉄住金化学株式会社製、BPA型エポキシ樹脂)、エポトート YDF−170、エポトート YDF−8170、エポトート YDF−870GS、エポトート YDF−2001(新日鉄住金化学株式会社製、BPF型エポキシ樹脂)、エポトート YDPN−638(新日鉄住金化学株式会社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート YDCN−701(新日鉄住金化学株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ZX−1201(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、NC−3000(日本化薬株式会社製、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、EPPN−501H、EPPN−502H(日本化薬株式会社製、多官能エポキシ樹脂)ZX−1355(新日鉄住金化学株式会社製、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、ESN−155、ESN−185V、ESN−175(新日鉄住金化学株式会社製、βナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN−355、ESN−375(新日鉄住金化学株式会社製、ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN−475V、ESN−485(新日鉄住金化学株式会社製、αナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)等の多価フェノール樹脂等のフェノール化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、エポトート YH−434、エポトート YH−434GS(新日鉄住金化学株式会社製、ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルエーテル)等のアミン化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、YD−171(新日鉄住金化学株式会社製、ダイマー酸型エポキシ樹脂)等のカルボン酸とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく2種類以上併用しても良い。併用する場合は、各エポキシ樹脂の混合物としての物性値で、エポキシ当量が500〜2000g/eqで、軟化点が80〜150℃で、20℃、波長589.3nmでの屈折率(n
D20)が1.55〜1.63であり、1H-NMRスペクトルにおける脂肪族プロトン(A)と芳香族プロトン(B)の強度比(B/A)が0.3〜0.7である必要がある。そのため併用するできるその他のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂(a)100質量部に対し、20質量部以下が好ましく、10質量以下がより好ましい。
なお、本発明の光学用エポキシ樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、エポキシ樹脂と硬化剤の合計が50質量%以上が好ましい。少なすぎると本発明の効果が発現されない。
【0044】
本発明の光学用エポキシ樹脂組成物には必要に応じて、硬化促進剤を使用することができる。使用できる硬化促進剤を具体的に例示すれば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。硬化促進剤は本発明の光学用エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂(a)100質量部に対して0.01〜5.0質量部が必要に応じて用いられる。これら硬化促進剤を選択的に用いることにより、硬化温度を下げたり、硬化時間の短縮することができる。
【0045】
本発明の光学用エポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶剤も用いることができる。用いることができる有機溶剤としては、特に規定するものではないが、具体的に例示すれば、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、N− メチルピロリドン等の非プロトン系極性溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独で使用しても2種類以上混合して使用してもよい。
【0046】
本発明の光学用エポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲でエポキシ樹脂以外の硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を配合してもよい。具体的に例示すれば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニル化合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルホルマール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の光学用エポキシ樹脂組成物において、これらの樹脂を使用する場合の含有量は、エポキシ樹脂(a)と硬化剤(b)の使用量の合計を100質量部とした時、5〜30質量部が好ましく、15〜20質量部がより好ましい。含有量が少なすぎると、これらの樹脂を配合することの効果が十分に得られず、含有量が多すぎると、硬化物の耐湿性等が低下する傾向にある。
【0047】
本発明の光学用エポキシ樹脂組成物には必要に応じてフィラーを用いることができる。具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、水酸化チタン、ガラス粉末、シリカバルーン等の無機フィラーが挙げられるが、有機系または無機系の耐湿顔料、鱗片状顔料等顔料等を配合してもよい。一般的無機充填剤を用いる理由として、耐衝撃性の向上が挙げられる。また、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填剤や、微粒子ゴム、熱可塑性エラストマー等の有機充填剤等を配合することができる。本発明の光学用エポキシ樹脂組成物において、フィラーを使用する場合の含有量は、エポキシ樹脂(a)と硬化剤(b)の使用量の合計を100質量部とした時、5〜80質量部が好ましく、15〜60質量部がより好ましく、30〜50質量%がさらに好ましい。含有量が少なすぎると、配合することの効果が十分に得られず、含有量が多すぎると、組成物の粘度が上昇する傾向や、硬化物の強度が低下して脆くなる傾向となる。
【0048】
また、本発明の光学用エポキシ樹脂組成物中には、必要に応じて、難燃剤、揺変性付与材、流動性向上剤等の添加剤を配合してもよい。揺変性付与材としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げ類ことができる。更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を配合できる。
【0049】
また、本発明の光学用エポキシ樹脂組成物中には、必要に応じて、酸化防止剤及び光安定剤を配合してもよい。酸化防止剤及び光安定剤の添加は、光学用エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性向上及び硬化組成物の耐候性向上のために好ましい。酸化防止剤及び光安定剤としては市販品を使用することができる。例えば、スミライザーBHT、スミライザーS、スミライザーBP−76、スミライザーMDP−S、スミライザーGM、スミライザーBBM−S、スミライザーWX−R、スミライザーNW、スミライザーBP−179、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、スミライザーTNP、スミライザーTPP−R、スミライザーP−16(住友化学株式会社製)、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010(旭電化工業株式会社製)、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン622、チヌビン111、チヌビン123、チヌビン292(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)、ファンクリルFA−711M、FA−712HM(日立化成工業株式会社製)、ダブルChisorb292(ボンドケミカル社製)等が挙げられる。これらの酸化防止剤及び光安定剤の配合量は特に限定されないが、エポキシ樹脂(a)と硬化剤(b)の使用量の合計を100質量部とした時、0.001〜5質量部が好ましくは、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0050】
本発明に係るフィルム状接着剤やカラーフィルター用保護膜を製造するため、光学用エポキシ樹脂組成物をシート状またはフィルム状に加工する方法は、特に限定されずに公知の技術を使用することができる。例えば、(イ)本発明の光学用エポキシ樹脂組成物を押出機にて混練した後に押出し、Tダイやサーキュラーダイなどを用いてシート状に成形する押出成形法、(ロ)本発明の光学用エポキシ樹脂組成物を有機溶剤などの溶媒に溶解又は分散させた後、キャスティングしてシート状に成形するキャスティング成形法、(ハ)従来公知のその他のシート成形法などが挙げられる。
これらの成形法の内、(ロ)のキャスティング成形法が好ましい。本発明の光学用エポキシ樹脂組成物を、有機溶剤で希釈して液状のワニスを調製し、そのワニスを、支持体上にフローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、ワイヤバー法、リップダイコート法等により塗工し、次いで、溶剤を乾燥することにより、任意の膜厚を有するシート状またはフィルム状の組成物を得ることができる。ワニスを塗布する支持体としては特に制限されないが、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリイミド系、フッ素系等のプラスチックフィルムや金属箔、金属板など一般公知のものを使用することができ、これら支持体は予め離型処理や静電処理などを施されていることが好ましい。ワニスの調製に際しては、各成分の配合後に溶剤で希釈することもできるし、または各成分の配合前に予め溶剤で希釈しておくこともできる。また、乾燥条件は特に制限はないが、50〜100℃で3〜15分が好ましい。
【0051】
乾燥後に形成されるフィルムまたはシートの膜厚は、特に限定はされないが、3〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、10〜180μmがさらに好ましい範囲である。カラーフィルターや光半導体基板の保護膜の場合は10〜50μmが最も好ましい。膜厚が3μm以上であれば絶縁性を得ることができるし、300μm以下であれば透明性を確保できる。なお、フィルムまたはシート中の溶媒の含有量は特に限定はされないが、樹脂組成物全体に対し、0.01〜5質量%であることが好ましい。フィルム中の溶媒の含有量が樹脂組成物全体に対し、0.01質量%以上であれば、基板等へ積層する際に密着性や接着性が得られ、また、5質量%以下であれば加熱硬化後の平坦性が得られる。
【0052】
本発明の光学用エポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法により成型、硬化して硬化物とすることができる。成型方法、硬化方法は公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、本発明の樹脂組成物固有の方法は不要である。本発明の光学用エポキシ樹脂硬化物は、積層物、成型物、接着物、塗膜、フィルム等の形態をとることができ、高温に曝される部位に使用される透明性、耐熱信頼性(高耐熱黄変性)が良好であり、光学用途の電気電子部品に用いられる封止材、積層板、絶縁材料、複合材、絶縁接着剤等の材料として有用である。
【実施例】
【0053】
実施例及び比較例に基づき本発明を具体的に説明するが本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。以下の合成例、実施例及び比較例に於いて、「部」は質量部を、「%」は質量%をそれぞれ示す。さらに本発明では以下の試験方法を使用した。
【0054】
(1)エポキシ当量:JIS K−7236により測定した。
(2)軟化点:JISK−7234により測定した。
(3)屈折率:アッベ屈折計(ERMA社製、ER−7MW)を使用し、シクロヘキサノンに固形分30%となるように溶解し、20℃、波長589.3nmで測定を行い、計算により固形分100%の屈折率を求めた。
(4)ガラス転移温度(Tg):示差走査熱量測定装置(SII社製、EXTER DSC6200)を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定した。
(5)耐熱黄変性:測色色差計(東京電色社製、TC−1500MC−88)を使用して測定を行い、熱履歴をかける前のYI値をブランクとして、250℃で恒温を保っているオーブンに所定時間保管した後のYI値との差を示した。数値が小さいほど、耐熱黄変性が良いことを示す。
(6)耐紫外線変色性:測色色差計を使用して測定を行い、光照射前のYI値をブランクとして、照射強度400W/m
2(ATLS社製サンテストXLS使用)で24時間照射後のYI値との差を示した。数値が小さいほど耐紫外線変色性が良いことを示す。
(7)透過度:分光光度計(日本分光株式会社製、V−650)を使用し、波長450nmでの透過率(%)を測定した。熱履歴や光照射を行う前の試験片の測定値を初期値とし、250℃で恒温を保っているオーブンに30分間保持した後の試験片と、照射強度400W/m
2で24時間照射後の試験片もそれぞれ測定した。
【0055】
合成例、実施例、比較例で使用した略号の説明。
(エポキシ樹脂)
エポトートYD‐128;2,2‐ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのジグリシジルエーテル、エポキシ当量187g/eq、粘度13000mPs・s/25℃、新日鉄住金化学株式製
ESF‐300;9,9‐ビス(4−ヒドロキシフェニル)‐9H‐フルオレンのジグリシジルエーテル、エポキシ当量250g/eq、軟化点87℃、新日鉄住金化学株式製
セロキサイド2021P;3’,4’‐エポキシシクロヘキシルメチル‐3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量133g/eq、粘度240mPa・s/25℃、ダイセル化学工業株式会社製
エポトートZX‐1658GS;1,4‐シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、エポキシ当量134g/eq、粘度37mPs・s/25℃、新日鉄住金化学株式製
【0056】
(酸無水物)
リカシッドHH;ヘキサヒドロ無水フタル酸、新日本理化株式会社製
リカシッドMH;4‐メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、新日本理化株式会社製
(2価アルコール)
リカビノールHB;水添ビスフェノールA、新日本理化株式会社製
SPG;スピログリコール、三菱ガス化学株式会社製
HDL;1,6‐ヘキサンジオール、宇部興産株式会社製
(2官能フェノール化合物)
BPF;9,9‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)‐9H‐フルオレン、水酸基当量=175g/eq、大阪ガスケミカル株式会社製
BPA;2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)プロパン、水酸基当量=114g/eq、新日鉄住金化学株式製
【0057】
(触媒)
ヒシコーリンBTPPBr;n‐ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、日本化学工業株式会社製
TPP;トリフェニルフォスフィン、北興化学株式会社製
キュアゾール2E4MZ;2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール、四国化成株式会社製
【0058】
合成例1
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置に、酸無水物としてリカシッドHHを121.5部と、2価アルコールとしてリカビノールHBを113.6部仕込み、その混合物を窒素ガス雰囲中で撹拌しながら130℃で2時間反応させて、末端カルボキシル基含有エステル化合物を得た後、次いでエポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を567.5部と、2官能フェノール化合物としてBPFを197.4部と、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.43部仕込み、150℃で4時間撹拌混合してエポキシ樹脂1を得た。
【0059】
合成例2
酸無水物としてリカシッドHHを112.9部、2価アルコールとしてリカビノールHBを105.6部、エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を527.5部、2官能フェノール化合物としてBPFを254.0部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.47部、使用した以外は合成例1と同様にして、エポキシ樹脂2を得た。
【0060】
合成例3
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置に、エポキシ樹脂としてセロキサイド2021Pを621.8部と、2官能フェノール化合物としてBPFを131.2部とBPAを247.0部と、触媒としてTPPを0.38部仕込み、150℃で4時間撹拌混合してエポキシ樹脂樹脂3を得た。
【0061】
合成例4
酸無水物としてリカシッドMHを229.9部、2価アルコールとしてリカビノールHBを195.4部、エポキシ樹脂としてESF‐300を574.7部使用し、2官能フェノール化合物を使用せず、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.42部、使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂樹脂4を得た。
【0062】
合成例5
酸無水物としてリカシッドHHを97.6部、2価アルコールとしてリカビノールHBを79.5部、エポキシ樹脂としてエポトートZX‐1658GSを502.9部、2官能フェノール化合物としてBPFを320.0部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.50部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂5を得た。
【0063】
合成例6
酸無水物として無水フタル酸を149.2部、2価アルコールとしてリカビノールHBを125.8部、エポキシ樹脂としてエポトートZX‐1658GSを493.2部、2官能フェノール化合物としてBPFを230.4部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.51部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂6を得た。
【0064】
合成例7
酸無水物として無水フタル酸を131.8部、2価アルコールとしてリカビノールHBを113.4部、エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を493.0部とセロキサイド2021Pを103.7部と、2官能フェノール化合物としてBPAを158.1部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.40部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂7を得た。
【0065】
合成例8
エポキシ樹脂としてESF‐300を334.5部とセロキサイド2021Pを353.3部と、2官能フェノール化合物としてBPAを312.2部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.31部使用した以外は合成例3と同様にしてエポキシ樹脂8を得た。
【0066】
合成例9
酸無水物としてリカシッドHHを95.9部、2価アルコールとしてSPGを106.5部、エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を569.3部、2官能フェノール化合物としてBPFを228.3部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.43部、使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂9を得た。
【0067】
合成例10
エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を698.0部と2官能フェノール化合物としてBPAを302.0部、触媒としてキュアゾール2E4MZを0.03部、使用した以外は合成例3と同様にしてエポキシ樹脂10を得た。
【0068】
合成例11
エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を641.0部と2官能フェノール化合物としてBPFを386.0部、触媒としてTPPを0.39部、使用した以外は合成例3と同様にしてエポキシ樹脂11を得た。
【0069】
合成例12
酸無水物として無水フタル酸を189.6部、2価アルコールとしてHDLを369.6部、エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を440.8部使用し、2官能フェノール化合物を使用せず、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.56部、使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂12を得た。
【0070】
合成例13
酸無水物としてリカシッドHHを64.0部、2価アルコールとしてリカビノールHBを59.7部、エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を594.8部、2官能フェノール化合物としてBPFを281.5部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.41部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂13を得た。
【0071】
合成例14
エポキシ樹脂としてセロキサイド2021Pを508.9部と2官能フェノール化合物としてBPFを491.1部、触媒としてTPPを0.49部使用した以外は合成例3と同様にしてエポキシ樹脂14を得た。
【0072】
合成例15
酸無水物としてリカシッドHHを220.2部、2価アルコールとしてリカビノールHBを205.4部、エポキシ樹脂としてセロキサイド2021Pを464.4部、2官能フェノール化合物としてBPAを110.0部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.54部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂15を得た。
【0073】
合成例16
酸無水物としてリカシッドHHを302.7部、2価アルコールとしてリカビノールHBを282.4部、エポキシ樹脂としてセロキサイド2021Pを414.9部使用し、2官能フェノール化合物を使用せず、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.59部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂16を得た。
【0074】
合成例17
酸無水物としてリカシッドHHを275.0部、2価アルコールとしてリカビノールHBを256.2部、エポキシ樹脂としてエポトートZX‐1658GSを468.8部使用し、2官能フェノール化合物を使用せず、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.53部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂17を得た。
【0075】
合成例18
酸無水物としてリカシッドHHを248.0部、2価アルコールとしてリカビノールHBを229.0部、エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を523.0部、2官能フェノール化合物を使用せず、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.48部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂18を得た。
【0076】
合成例19
酸無水物としてリカシッドHHを140.0部、2価アルコールとしてリカビノールHBを120.0部、エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を195.0部とESF−300を545.0部、2官能フェノール化合物を使用せず、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.30部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂19を得た。
【0077】
合成例20
酸無水物としてリカシッドHHを127.9部、2価アルコールとしてリカビノールHBを100.6部、エポキシ樹脂としてエポトートYD‐128を527.5部、2官能フェノール化合物としてBPFを254.0部、触媒としてヒシコーリンBTPPBrを0.47部使用した以外は合成例1と同様にしてエポキシ樹脂20を得た。
得られたエポキシ樹脂1〜20の性状を表1〜2に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
実施例1
エポキシ樹脂として合成例1で得られたエポキシ樹脂1を100部と、硬化剤としてリカシッドHHを15部とを、溶剤としてのテトラヒドロフランを75部に溶解した後、硬化促進剤としてヒシコーリンPX‐4ET(有機ホスホニウム塩化合物、日本化学工業株式会社製)0.25部を混合して液状組成物とした。
0.2mm厚のガラス板に乾燥後フィルムとして100μmとなるように液状組成物を塗布し、100℃の熱風循環オーブンに2時間により乾燥させた後に、140℃の熱風循環オーブンで10時間硬化させ、ガラス板付きの試験片を得た。得られたガラス板付きの試験片をそのまま利用して耐熱黄変性と耐紫外線変色性と透過度を測定した。
【0081】
実施例2〜10
エポキシ樹脂として合成例2〜9で得られたエポキシ樹脂2〜9を100部と、表3に示す硬化剤を使用して、実施例1と同様にして試験片を作成し、評価を行った。
エポキシ樹脂、硬化剤の種類と、硬化剤の使用量を表3に示す。評価結果を表5に示す。表3において、HHはリカシッドHHであり、PAは無水フタル酸である。
【0082】
【表3】
【0083】
比較例1〜12
エポキシ樹脂として合成例10〜20で得られた樹脂10〜20を100部と、表4に示す硬化剤を使用して、実施例1と同様にして試験片を作成し、評価を行った。
エポキシ樹脂、硬化剤の種類と、硬化剤の使用量を表4に示す。評価結果を表6に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】